特許異議申立
2024-700159
エポキシ樹脂組成物
- 審判番号
- 2024-700159
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-102765
- 登録番号
- 7337462
- 請求日
- 2024年02月21日
- 審決日
- 2024年11月29日
- 公報発行日
- 2025年03月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】信越化学工業株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人牛木国際特許事務所
- 【異議申立人】斎藤 明子
- 審判長/審判官
- 審判長 ▲吉▼澤 英一
- 審判官 藤原 浩子
- 審判官 小出 直也
- 分類
- P1651.161-YAA(C08G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条の2、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7337462号発明「エポキシ樹脂組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7337462号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。
特許第7337462号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7337462号(以下「本件特許」という。)に係る特願2020-102765号は、令和2年6月15日に特許出願したものであって、令和5年8月25日にその特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、同年9月4日に特許掲載公報が発行され、その後、令和6年2月21日に特許異議申立人斎藤明子(以下「申立人」という。)により、請求項1~5に係る特許について特許異議の申立てがされたものである。
以後の主な手続の経緯は次のとおりである。
令和6年5月16日付け 取消理由通知書
同年7月12日提出 訂正請求書及び意見書(特許権者)
同年同月30日提出 手続補正書(方式)
同年8月 8日付け 訂正請求があった旨の通知書
(申立人からの意見書の提出なし)
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和6年7月12日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、当該訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、一群の請求項〔1-5〕について訂正することを求めるものであって、その内容は以下のとおりである。
なお、上記手続補正(方式)に添付された訂正特許請求の範囲は、訂正請求書に添付された特許請求の範囲の訂正部分に下線を付したものである。以下の下線部は訂正箇所である。
<訂正事項>
特許請求の範囲の請求項1に「(A)エポキシ樹脂」と記載されているのを、「(A)シリコーン変性エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~5も同様に訂正する)。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
本件訂正は、願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の【0014】、【0052】に記載された「シリコーン変性エポキシ樹脂」との記載、及び、実施例8、9、12において、「(A4)エポキシ樹脂:シリコーン変性エポキシ樹脂」が、エポキシ樹脂の成分の一部として用いられていることに基づいて、訂正前の請求項1の「(A)エポキシ樹脂」を、「(A)シリコーン変性エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂」と限定するものである。
したがって、本件訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、新規事項を追加するものでもない。
3 訂正についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正が認められることから、本件特許の請求項1~5に係る発明は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲に記載されたとおりのもの(以下、請求項の番号に従い、「本件発明1」などという。)であり、請求項1~5の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
加熱硬化した成型品により半導体素子を封止するためのエポキシ樹脂組成物であって、
下記(A)~(D)成分:
(A)シリコーン変性エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂
(B)硬化剤
(C)イソシアネート基を有さないポリエステルポリオール
(D)無機充填材
を含み、前記(C)成分の数平均分子量が1,500~10,000の範囲内であり、(C)成分が、芳香族環を含むものであり、(C)成分の75℃における粘度が1,000~20,000mPa.sである、半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
(B)成分がアミン系硬化剤、フェノール硬化剤、酸無水物系硬化剤のいずれか1種類である、請求項1に記載の半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
(C)成分の水酸基価が10~100mg KOH/gである、請求項1または2に記載の半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
(C)成分が(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、1~40質量部である、請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物で封止された半導体素子を備える半導体装置。」
第4 特許異議申立書に記載された申立理由及び取消理由通知書に記載した取消理由
1 申立理由の概要
申立人は、証拠方法として甲第1、2号証(以下「甲1」、「甲2」という。)を提出し、特許異議申立書において、概要、以下の申立理由を主張する。
(1)申立理由1(甲1に基づく拡大先願)
請求項1~5に係る発明は、本件特許の出願の日前の特許出願であって、本件特許の出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた甲1の特許出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の出願の発明者が本件特許の出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないから、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)申立理由2(甲2に基づく拡大先願)
請求項1~5に係る発明は、本件特許の出願の日前の特許出願であって、本件特許の出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた甲2の特許出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の出願の発明者が本件特許の出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないから、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(3)証拠方法
甲1:特願2019-162049号(特開2021-38356号公報)
甲2:特願2020-93146号(特開2021-187923号公報)
2 取消理由の概要
請求項1~5に係る特許に対して、取消理由通知書において通知した取消理由は、申立理由1及び2と同じ内容の取消理由1及び2である。
第5 当審の判断
1 取消理由1及び申立理由1(甲1に基づく拡大先願)について
(1)甲1に記載された発明
甲1には、低熱膨張性を達成することのできる熱硬化性樹脂組成物を提供するという課題を解決するための発明として、特許請求の範囲には、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物、当該熱硬化性樹脂組成物からなる半導体封止材、及び当該半導体封止材を含む半導体装置が記載されている(特許請求の範囲、【0006】)。
また、上記の請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物に対応する「実施例1」(【0120】)として、〔合成例1〕において合成したポリエステル樹脂A(【0117】)を含む、熱硬化性樹脂組成物であるエポキシ樹脂組成物が記載されている。〔合成例1〕において、用いられた「TiPT」は、【0044】に記載された「テトライソプロピルチタネート」の略語であると認められる。
そして、上記の請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物に対応する「実施例1」の記載(【0117】、【0120】)に着目すると、甲1には、以下の「甲1発明」が記載されていると認められる。
<甲1発明>
「以下の組成からなる、半導体封止材用の熱硬化性樹脂組成物であるエポキシ樹脂組成物。
オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(軟化点55℃)100質量部
フェノールノボラック樹脂(硬化剤。軟化点80℃) 52質量部
溶融シリカ粒子 546質量部
トリフェニルホスフィン(硬化促進剤) 1質量部
合成例1で得られた両末端OH基ポリエステル樹脂 30質量部
〔合成例1〕
反応装置に、ビスフェノールA型グリコールエーテル(商標;DIC株式会社製、『ハイプロックス MDB-561』)を779.1質量部と、イソフタル酸を132.9質量部と、セバシン酸を40.4質量部仕込み、昇温と撹拌を開始した。
次いで、内温を230℃に上昇した後、TiPT(テトライソプロピルチタネート)を0.10質量部仕込み、230℃で24時間反応させポリエステル樹脂を合成した。
得られたポリエステル樹脂の水酸基価は36.9mgKOH/g、数平均分子量は3,040、ガラス転移温度は-14℃であった。」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(軟化点55℃)」と本件発明1の「(A)シリコーン変性エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂」とは、「エポキシ樹脂」である限りにおいて一致する。
甲1発明の「フェノールノボラック樹脂(硬化剤。軟化点80℃)」、「溶融シリカ粒子」、は、それぞれ本件発明1の「(B)硬化剤」、「(D)無機充填剤」に相当する。
甲1発明の「半導体封止材用の熱硬化性樹脂組成物であるエポキシ樹脂組成物」は、甲1の実施例1等に記載されるように、当該熱硬化性樹脂組成物を加熱硬化させて封止するものであることは、当業者において明らかであり、その加熱硬化させたものは、ある一定の形状を有するものであるから、「加熱硬化した成形品により」封止するといえる。したがって、甲1発明の「半導体封止材用の熱硬化性樹脂組成物であるエポキシ樹脂組成物」は、本件発明1の「加熱硬化した成型品により半導体素子を封止するためのエポキシ樹脂組成物」に相当する。
甲1発明の「合成例1で得られた両末端OH基ポリエステル樹脂」は、両末端にOH基を有するポリエステル樹脂であるから「ポリエステルポリオール」であり、芳香族環を含む「ビスフェノールA型グリコールエーテル」と「イソフタル酸」を構成成分とし、イソシアネート基を有しないものであり、かつ、「数平均分子量3040」である。したがって、甲1発明の「合成例1で得られた両末端OH基ポリエステル樹脂」は、本件発明1の「(C)イソシアネート基を有さないポリエステルポリオール」であって、「前記(C)成分の数平均分子量が1,500~10,000の範囲内であり、(C)成分が、芳香族環を含むもの」であるものに相当する。
そうすると、両発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「加熱硬化した成型品により半導体素子を封止するためのエポキシ樹脂組成物であって、
下記(A)~(D)成分:
(A)エポキシ樹脂
(B)硬化剤
(C)イソシアネート基を有さないポリエステルポリオール
(D)無機充填材
を含み、前記(C)成分の数平均分子量が1,500~10,000の範囲内であり、(C)成分が、芳香族環を含むものである、
半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物。」
<相違点1>
(A)成分のエポキシ樹脂に関し、本件発明1においては「シリコーン変性エポキシ樹脂を含む」ことが特定されているのに対し、甲1発明においては、「オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(軟化点55℃)」である点
<相違点2>
(C)成分に関し、本件発明1においては「75℃における粘度が1,000~20,000mPa.s」であることが特定されているのに対し、甲1発明においては粘度が特定されていない点
イ 判断
相違点1について検討する。
甲1には、熱硬化性樹脂(A)について、以下の記載がある。
「【0010】
前記熱硬化性樹脂(A)としては、エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン構造含有樹脂、マレイミド樹脂、ビニルベンジル化合物、アクリル化合物、スチレンとマレイン酸無水物の共重合物等が挙げられ、少なくともエポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0011】
前記エポキシ樹脂としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、ジグリシジルオキシナフタレン化合物(1,6-ジグリシジルオキシナフタレン、2,7-ジグリシジルオキシナフタレン等)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、1,1-ビス(2,7-ジグリシジルオキシ-1-ナフチル)アルカン等のナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、これら各種のエポキシ樹脂にリン原子を導入したリン変性エポキシ樹脂等が挙げられる。」
上記記載によれば、甲1には、エポキシ樹脂として様々な例示がされているものの、「シリコーン変性エポキシ樹脂」を用いることは記載も示唆もされていない。
そして、半導体封止材用のエポキシ樹脂組成物において、「シリコーン変性エポキシ樹脂」を用いることが周知慣用の技術であるとする根拠は見いだせない。
したがって、相違点2について検討するまでもなく、相違点1は、実質的な相違点であるから、本件発明1と甲1発明とは同一ではない。
(3)本件発明2~4について
ア 本件発明2~4は、本件発明1の構成を全て含み更に限定したものであり、本件発明5は、本件発明1~4のいずれかに係るエポキシ樹脂組成物で封止された半導体素子を備える半導体装置である。
そうすると、上記(2)と同様の理由により、本件発明2~5と甲1発明との間には、実質的な相違点である相違点1が存在するから、本件発明2~5と甲1発明とは同一ではない。
(4)小括
以上によれば、本件発明1~5は、甲1に記載された発明と同一ではないから、取消理由1及び申立理由1は理由がない。
2 取消理由2及び申立理由2(甲2に基づく拡大先願)ついて
(1)甲2に記載された発明
甲2には、高い接合強度を有し且つ反りの発生が抑制された硬化物を得ることが可能な樹脂組成物、当該樹脂組成物を用いた樹脂シート及び半導体チップパッケージを提供することを課題とする発明として、請求項1に記載の樹脂組成物、当該樹脂組成物の硬化物により形成された硬化物層を含む回路基板上に搭載された半導体チップを含む半導体チップパッケージが記載されている(特許請求の範囲、【0005】)。
また、上記樹脂組成物は、特に半導体を封止するための樹脂組成物(半導体封止用の樹脂組成物)として好適に使用できることが記載されている(【0083】)。
そして、上記の請求項1に記載の樹脂組成物に対応する「実施例1」の記載(【0138】、【0140】)に着目すると、甲2には、以下の「甲2発明」が記載されていると認められる。
<甲2発明>
「以下の組成からなる、半導体封止用の樹脂組成物。
脂環式エポキシ樹脂 6.6部
(ダイセル社製「CEL2021P」、エポキシ当量136g/eq.)
ナフタレン型エポキシ樹脂 8部
(DIC社製「HP4032D」、エポキシ当量142g/eq.)
アミン硬化剤 0.5部
(日本化薬社製「カヤハードA-A」)
シリカA 80部
硬化促進剤 0.4部
(四国化成社製「2MA-OK」)
合成例1で合成した芳香族構造を有するポリエステルポリオール樹脂A
2.5部
〔合成例1〕
反応装置に、ビスフェノールA型グリコールエーテル(ハイブロックスMDB-561、DIC社製)を779.1質量部と、イソフタル酸を132.9質量部と、セバシン酸を40.4質量部仕込み、昇温と撹拌を開始した。
次いで、内温を230℃に上昇した後、テトライソプロピルチタネートを0.10質量部仕込み、230℃で24時間反応させ芳香族構造を有するポリエステルポリオール樹脂Aを合成した。得られた芳香族構造を有するポリエステルポリオール樹脂Aは、両末端にOH基を有し、その水酸基価は36.9mgKOH/g、数平均分子量は3040、ガラス転移温度は-14℃、75℃における粘度は9Pa・sであった。」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「脂環式エポキシ樹脂(ダイセル社製「CEL2021P」、エポキシ当量136g/eq.)」及び「ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製「HP4032D」、エポキシ当量142g/eq.)」と、本件発明1の「(A)シリコーン変性エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂」とは、「エポキシ樹脂」である限りにおいて一致する。
甲2発明の「アミン硬化剤(日本化薬社製「カヤハードA-A」)」、「シリカA」は、それぞれ件発明1の「(B)硬化剤」、「(D)無機充填剤」に相当する。
甲2発明の「半導体封止用の樹脂組成物」は、エポキシ樹脂を含む樹脂組成物であり、また、甲2の【0080】等に記載されるように、当該樹脂組成物を加熱硬化させて封止するものであることは当業者において明らかであり、その加熱硬化させたものは、ある一定の形状を有するものであるから、「加熱硬化した成型品により」封止するといえる。したがって、甲2発明の「半導体封止材用の熱硬化性樹脂組成物」は、本件発明1の「加熱硬化した成型品により半導体素子を封止するためのエポキシ樹脂組成物」に相当する。
甲2発明の「合成例1で合成した芳香族構造を有するポリエステルポリオール樹脂A」は、芳香族環を含む「ビスフェノールA型グリコールエーテル」と「イソフタル酸」を構成成分とし、イソシアネート基を有しないものであるから、本件発明1の「(C)イソシアネート基を有さないポリエステルポリオール」であって、「(C)成分が、芳香族環を含むもの」に相当する。
甲2発明の「合成例1で合成した芳香族構造を有するポリエステルポリオール樹脂A」の「数平均分子量は3040」及び「75℃における粘度は9Pa・s」は、それぞれ本件発明1の「前記(C)成分の数平均分子量が1,500~10,000の範囲内」及び「(C)成分の75℃における粘度が1,000~20,000mPa.s」に相当する
そうすると、本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「加熱硬化した成型品により半導体素子を封止するためのエポキシ樹脂組成物であって、
下記(A)~(D)成分:
(A)エポキシ樹脂
(B)硬化剤
(C)イソシアネート基を有さないポリエステルポリオール
(D)無機充填材
を含み、前記(C)成分の数平均分子量が1,500~10,000の範囲内であり、(C)成分が、芳香族環を含むものであり、(C)成分の75℃における粘度が1,000~20,000mPa.sである、半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物。」
<相違点1’>
(A)成分のエポキシ樹脂に関し、本件発明1においては「シリコーン変性エポキシ樹脂を含む」ことが特定されているのに対し、甲2発明においては「脂環式エポキシ樹脂」及び「ナフタレン型エポキシ樹脂」である点
イ 判断
相違点1’について検討する。
甲2には、エポキシ樹脂について、以下の記載がある。
「【0012】
<(A)エポキシ樹脂>
樹脂組成物は、(A)成分として、(A)エポキシ樹脂を含有する。(A)エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;ビスフェノールS型エポキシ樹脂;ビスフェノールAF型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;トリスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂;グリシジルエステル型エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;線状脂肪族エポキシ樹脂;ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;複素環式エポキシ樹脂;スピロ環含有エポキシ樹脂;シクロヘキサン型エポキシ樹脂;シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂;トリメチロール型エポキシ樹脂;テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂;ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂等の縮合環骨格を含有するエポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、(A)エポキシ樹脂としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、縮合環骨格を含有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。」
上記記載によれば、甲2には、エポキシ樹脂として様々な例示がされているものの、「シリコーン変性エポキシ樹脂」を用いることは記載も示唆もされていない。
そして、半導体封止材用のエポキシ樹脂組成物において、「シリコーン変性エポキシ樹脂」を用いることが周知慣用に技術であるとする根拠は見いだせない。
したがって、相違点1’は、実質的な相違点であるから、本件発明1と甲2発明とは同一ではない。
(3)本件発明2~5について
本件発明2~4は、本件発明1の構成を全て含み更に限定したものであり、本件発明5は、本件発明1~4のいずれかに係るエポキシ樹脂組成物で封止された半導体素子を備える半導体装置である。
そうすると、上記(2)と同様の理由により、本件発明2~5と甲2発明との間には、実質的な相違点である相違点1が存在するから、本件発明2~5と甲1発明とは同一ではない。
(4)小括
以上によれば、本件発明1~5は、甲2に記載された発明と同一ではないから、取消理由2及び申立理由2は理由がない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、請求項1~5に係る特許は、特許異議申立書に記載された申立理由及び取消理由通知書に記載した取消理由によっては、取り消すことはできない。
また、その他の請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由は見いだせない。
よって、結論のとおり決定する。
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