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特許異議申立

2024-700547

ブロックポリイソシアネート組成物、樹脂組成物、樹脂膜及び積層体

審判番号
2024-700547
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-522217
登録番号
7401662
請求日
2024年06月10日
審決日
2025年04月14日
公報発行日
2025年07月25日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】旭化成株式会社
  • 【権利者代理人】松沼 泰史
  • 【権利者代理人】飯田 雅人
  • 【権利者代理人】田▲崎▼ 聡
  • 【権利者代理人】宮本 龍
  • 【異議申立人】林 法子
審判長/審判官
  • 審判長 細井 龍史
  • 審判官 北澤 健一
  • 審判官 藤原 浩子
分類
P1651.113-YAA(C08G) / P1651.121-YAA(C08G) / P1651.161-YAA(C08G)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第113条第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第29条の2、特許法第113条第4号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項、特許法第120条の8、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7401662号発明「ブロックポリイソシアネート組成物、樹脂組成物、樹脂膜及び積層体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7401662号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-17〕について訂正することを認める。 特許第7401662号の請求項1~6、10、11、14~17に係る特許を維持する。 特許第7401662号の請求項7~9、12、13に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7401662号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、2021年(令和3年)5月14日(優先権主張 令和2年5月15日、同年11月13日)を国際出願日とする特願2022-522217号に係るものであって、令和5年12月11日にその特許権の設定登録(請求項の数17)がされ、同月19日に特許掲載公報が発行されたものである。 その後、本件特許の請求項1~17に係る特許に対して、特許異議の申立てがされた。 以降の主な手続の経緯は、以下のとおりである。 令和6年 9月12日付け 取消理由通知 同年11月18日 訂正請求書及び意見書(特許権者)の提出 なお、令和6年12月16日付けで訂正請求があった旨の通知をしたが、特許異議の申立人から意見書は提出されなかった。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、当該訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~17について訂正することを求めるものであって、その内容は以下のとおりである(下線は訂正箇所である。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、「前記活性水素化合物は、数平均分子量が60以上5000以下であり、且つ、平均官能基数が1.6以上2.4以下である」とあるのを、「前記活性水素化合物は、数平均分子量が60以上5000以下であり、且つ、平均官能基数が1.6以上2.4以下であるポリオールAであり」に訂正する。 (請求項1の記載を直接又は間接的に引用する(以下「直接又は間接的に引用する」を単に「引用する」と記載する。)請求項2~6、10、11、14~17も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に、「活性水素化合物とポリイソシアネートから誘導される活性水素化合物変性ポリイソシアネートと、マロン酸エステルを含むブロック剤と、から誘導されるブロックポリイソシアネート」とあるのに、さらに「前記ポリイソシアネートが、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群から選択される1種類以上のジイソシアネートを複数反応させて得られる反応物であり、」の構成を追加する。 (請求項1の記載を引用する請求項2~6、10、11、14~17も同様に訂正する。) (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1に、「活性水素化合物とポリイソシアネートから誘導される活性水素化合物変性ポリイソシアネートと、マロン酸エステルを含むブロック剤と、から誘導されるブロックポリイソシアネート」とあるのに、さらに「前記ブロックポリイソシアネートは、一般式(I)で表される構成単位を含み、 前記一般式(I)で表される構成単位として、前記一般式(I)中、R11、R12及びR13の合計炭素数が4以上20以下であり、R16が水素原子を表す構成単位(I-1)を含む 【化1】 [図:0001424583000001.jpg] 前記一般式(I)中、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基であり、R11、R12及びR13の合計炭素数が、3以上20以下であり、R14、R15及びR16は、それぞれ独立に、水素原子、又はヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基であり、波線は結合手を表す。」の構成を追加する。 (請求項1の記載を引用する請求項2~6、10、11、14~17も同様に訂正する。) (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項2に、「前記活性水素化合物が、ポリオールAである」とあるのを、「前記活性水素化合物が、ポリオールAであり、 前記ポリオールAが、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、グリセロール、及びそれらとε-カプロラクトンとから誘導されるポリカプロラクトンポリオール、並びに、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオールからなる群より選ばれる1種以上のポリオールである、」に訂正する。 (請求項2の記載を引用する請求項3~6、10、11、14~17も同様に訂正する。) (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項7を削除する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項8を削除する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項9を削除する。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項10に、「請求項7~9いずれか1項に記載のブロックポリイソシアネート組成物」とあるのを、「請求項1~6いずれか1項に記載のブロックポリイソシアネート組成物」に訂正する。 (請求項10の記載を引用する請求項11、14~17も同様に訂正する。) (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項11に、「請求項7~10いずれか1項に記載のブロックポリイソシアネート組成物」とあるのを、「請求項1~6及び10いずれか1項に記載のブロックポリイソシアネート組成物」に訂正する。 (請求項11の記載を引用する請求項14~17も同様に訂正する。) (10)訂正事項10 特許請求の範囲の請求項12を削除する。 (11)訂正事項11 特許請求の範囲の請求項13を削除する。 (12)訂正事項12 特許請求の範囲の請求項14に、「請求項1~13いずれか1項に記載のブロックポリイソシアネート組成物」とあるのを、「請求項1~6、10、及び11いずれか1項に記載のブロックポリイソシアネート組成物」に訂正する。 (請求項14の記載を引用する請求項15~17も同様に訂正する。) (13)訂正事項13 特許請求の範囲の請求項15に、「請求項1~14いずれか1項に記載のブロックポリイソシアネート組成物」とあるのを、「請求項1~6、10、11、及び14いずれか1項に記載のブロックポリイソシアネート組成物」に訂正する。 (請求項15の記載を引用する請求項16、17も同様に訂正する。) なお、訂正前の請求項1~17について、訂正される請求項1を、請求項2~17は引用するものであるから、本件訂正は、一群の請求項である請求項1~17についてするものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)【0031】~【0033】の記載に基づいて、請求項1における「活性水素化合物」を、「ポリオールA」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項を追加するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、本件明細書【0090】及び【0091】の記載に基づいて、請求項1における「ポリイソシアネート」を、「脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群から選択される1種類以上のジイソシアネートを複数反応させて得られる反応物」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項を追加するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、本件明細書【0078】~【0089】の記載に基づいて、請求項1における「ブロックポリイソシアネート」を、「一般式(I)で表される構成単位を含み、かつ構成単位(I-1)を含む」ものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項を追加するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (4)訂正事項4について 訂正事項4は、本件明細書【0033】の記載に基づいて、請求項2における「ポリオールA」を、「1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、グリセロール、及びそれらとε-カプロラクトンとから誘導されるポリカプロラクトンポリオール、並びに、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオールからなる群より選ばれる1種以上のポリオール」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項を追加するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (5)訂正事項5~7、10、11について 訂正事項5~7、10、11は、請求項7、8、9、12、13の記載を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項を追加するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (6)訂正事項8について 訂正事項8は、請求項10において引用する請求項を、「請求項7~9いずれか1項」から「請求項1~6いずれか1項」へと訂正するものであって、訂正事項5~7により削除される請求項7~9を引用することに代えて、訂正前の請求項7における「請求項1~6いずれか1項」を引用する請求項として記載するものである。 したがって、訂正事項8は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項を追加するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (7)訂正事項9について 訂正事項9は、請求項11において引用する請求項を、「請求項7~10いずれか1項」から「請求項1~6及び10いずれか1項」へと訂正するものであって、訂正事項5~7により削除される請求項7~9を引用することに代えて、訂正前の請求項7における「請求項1~6いずれか1項」を引用する請求項として記載するものである。 したがって、訂正事項9は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項を追加するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (8)訂正事項12について 訂正事項12は、請求項14において引用する請求項を、「請求項1~13いずれか1項」から「請求項1~6、10、及び11いずれか1項」へと訂正して、訂正事項5~7、10、11において削除される請求項7~9、12、13を引用することに代えて、訂正前の請求項7における「請求項1~6いずれか1項」を引用する請求項として記載するものである。 したがって、訂正事項12は、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項を追加するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (9)訂正事項13について 訂正事項13は、請求項15において引用する請求項を、「請求項1~14いずれか1項」から「請求項1~6、10、11、及び14いずれか1項」へと訂正して、訂正事項5~7、10、11において削除される請求項7~9、12、13を、引用する請求項から削除するものであるから、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項を追加するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 3 訂正の適否についての判断のまとめ 以上のとおり、本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件訂正は適法なものであり、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-17〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり、本件訂正が認められるので、本件特許の請求項1~6、10、11、14~17に係る発明(以下、請求項の番号の従い「本件発明1」などといい、これらをまとめて「本件発明」ともいう。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~6、10、11、14~17に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その請求項1~17の記載は以下のとおりである。 「 【請求項1】 活性水素化合物とポリイソシアネートから誘導される活性水素化合物変性ポリイソシアネートと、マロン酸エステルを含むブロック剤と、から誘導されるブロックポリイソシアネートを含むブロックポリイソシアネート組成物であって、 前記活性水素化合物は、数平均分子量が60以上5000以下であり、且つ、平均官能基数が1.6以上2.4以下であるポリオールAであり、 前記ポリイソシアネートが、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群から選択される1種類以上のジイソシアネートを複数反応させて得られる反応物であり、 前記ブロックポリイソシアネートは、一般式(I)で表される構成単位を含み、 前記一般式(I)で表される構成単位として、前記一般式(I)中、R11、R12及びR13の合計炭素数が4以上20以下であり、R16が水素原子を表す構成単位(I-1)を含む、ブロックポリイソシアネート組成物。 【化1】 [図:0001424583000002.jpg] 前記一般式(I)中、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基であり、R11、R12及びR13の合計炭素数が、3以上20以下であり、R14、R15及びR16は、それぞれ独立に、水素原子、又はヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基であり、波線は結合手を表す。 【請求項2】 前記活性水素化合物が、ポリオールAであり、 前記ポリオールAが、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、グリセロール、及びそれらとε-カプロラクトンとから誘導されるポリカプロラクトンポリオール、並びに、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオールからなる群より選ばれる1種以上のポリオールである、請求項1に記載のブロックポリイソシアネート組成物。 【請求項3】 前記ポリオールAは、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、グリセロール、及びそれらとε-カプロラクトンとから誘導されるポリカプロラクトンポリオールからなる群より選ばれる1種以上のポリオールである、請求項2に記載のブロックポリイソシアネート組成物。 【請求項4】 前記ポリイソシアネートに由来する構成単位100質量部に対する、前記活性水素化合物に由来する構成単位の含有量が0.05質量部以上10質量部以下である、請求項1~3いずれか1項に記載のブロックポリイソシアネート組成物。 【請求項5】 前記ポリイソシアネートは、平均イソシアネート基数が3.5以上であり、イソシアヌレート基を有し、且つ、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群より選ばれる1種以上のジイソシアネートから誘導されたポリイソシアネートである、請求項1~4いずれか1項に記載のブロックポリイソシアネート組成物。 【請求項6】 前記ポリイソシアネートは、ジイソシアネートと、平均官能基数が2.9以上8.0以下であるポリオールBとから誘導されたものである、請求項1~4いずれか1項に記載のブロックポリイソシアネート組成物。 【請求項7】 (削除) 【請求項8】 (削除) 【請求項9】 (削除) 【請求項10】 前記一般式(I)で表される構成単位として、前記一般式(I)中、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、無置換のアルキル基であり、R14、R15及びR16は、それぞれ独立に、水素原子、又は無置換のアルキル基である構成単位を含む、請求項1~6いずれか1項に記載のブロックポリイソシアネート組成物。 【請求項11】 前記活性水素化合物が、ポリオールAであり、前記ポリオールAに含まれるヒドロキシ基と、前記一般式(I)で表される構成単位との、モル比が0.5/99.5~15/85である、請求項1~6及び10いずれか1項に記載のブロックポリイソシアネート組成物。 【請求項12】 (削除) 【請求項13】 (削除) 【請求項14】 前記ブロック剤は、2級アルキル基を有するマロン酸エステルを含む、請求項1~6、10、及び11いずれか1項に記載のブロックポリイソシアネート組成物。 【請求項15】 請求項1~6、10、11、及び14いずれか1項に記載のブロックポリイソシアネート組成物と、多価ヒドロキシ化合物と、を含む、樹脂組成物。 【請求項16】 請求項15に記載の樹脂組成物を硬化させてなる、樹脂膜。 【請求項17】 異なる組成の、請求項16に記載の樹脂膜を2層以上含む積層体であって、 前記積層体の1層当たりの厚さが1μm以上50μm以下である、積層体。」 第4 特許異議申立書に記載された申立理由及び取消理由通知書に記載した取消理由 1 特許異議申立書に記載された申立理由の概要 特許異議の申立人は、証拠方法として甲第1~6号証(以下「甲1」などという。)を提出し、特許異議申立書において、本件訂正前の請求項1~17について、概要、以下の申立理由を主張する。 (1)申立理由1(甲1、甲2又は甲3を主引例とする新規性:特許法第113条第2号) 請求項1~5、7、8、10~17に係る発明は、甲1、甲2又は甲3に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、それらの請求項に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (2)申立理由2(甲1、甲2又は甲3を主引例とする進歩性:特許法第113条第2号) 請求項1~17に係る発明は、甲1~甲3に記載された発明、及び甲5、甲6に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、それらの請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (3)申立理由3(甲4に基づく拡大先願:特許法第113条第2号) 請求項1~7、10~16に係る発明は、本件特許の出願の日前の日本語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた、甲4の日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書又は特許請求の範囲に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の発明者が上記甲4の日本語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また、本件特許の出願の時において、その出願人が上記甲4の日本語特許出願の出願人と同一でもないので、それらの請求項に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである(同法第184条の13参照)。 (4)申立理由4(明確性:特許法第113条第4号) 請求項1~17に係る特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (5)証拠方法 ・甲1:国際公開第2019/065890号 ・甲2:国際公開第2012/137881号 ・甲3:特開2004-25046号公報 ・甲4:PCT/JP2020/026295(国際公開第2021/084805号)(特願2021-554069号) ・甲5:特開2006-199795号公報 ・甲6:特開2000-169793号公報 2 特許権者が提出した証拠方法 ・乙1:“メチルポリグリコール081 (MPG-081)の安全データシート” [on line][作成:1993年4月1日、改訂:2023年1月10日]、 インターネット<URL:https://www.nipponnyukazai.co.jp/media/file/products/products_sds_0243.pdf> 3 取消理由通知書に記載した取消理由の概要 取消理由通知書において、本件訂正前の請求項1~17について、概要、以下の取消理由を通知した。 (1)取消理由1(甲1及び甲2を主引例とする新規性:特許法第113条第2号) 以下の請求項に係る発明は、本件特許の優先日前に、日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲1又は甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、それらの請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 甲1:請求項1、2、5~8、10、12~16 甲2:請求項1、2、5、12~16 (2)取消理由2(甲1、甲2又は甲3を主引例とする進歩性:特許法第113条第2号) 以下の請求項に係る発明は、本件特許の優先日前に、日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、以下の甲1、甲2又は甲3に記載された発明に基づいて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、それらの請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 甲1:請求項1、2、4~17 甲2及び甲1:請求項1、2、4~17 甲3及び甲1:請求項1~8、10~17 (3)取消理由3(拡大先願:特許法第113条第2号) 請求項1~3、5、7、10~16に係る発明は、本件特許の優先日前の他の特許出願であって、その優先日後に、当該他の特許出願を優先権主張の基礎とする日本語特許出願の国際公開がされた甲4の特許出願の願書に最初に添付された明細書又は特許請求の範囲に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の発明者が上記甲4の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また、本件特許の出願の時において、その出願人は上記甲4の特許出願の出願人と同一でもないので、それらの請求項に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである(同法第184条の13参照)。 (4)取消理由4(明確性:特許法第113条第4号) 請求項1~17の請求項に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 第5 当審の判断 1 請求項7~9、12、13に係る特許についての特許異議の申立ての却下 本件訂正により、請求項7~9、12、13は削除されたため、請求項7~9、12、13に係る特許についての特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しないものとなった。 請求項7~9、12、13に係る特許についての特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8において準用する同法第135条の規定により、却下する。 2 取消理由1、2(甲1を主引例とする新規性及び進歩性)及び申立理由1、2(甲1を主引例とする新規性及び進歩性)について 取消理由1、2及び申立理由1、2は、いずれも甲1を主引例とするものであるから、まとめて判断する。 (1)甲1発明 甲1には、低温で硬化することができ、塗膜外観、付着性及び耐水性に優れる複層塗膜積層体及び塗膜の形成方法を提供することを課題(【0012】)とする発明が開示され、請求項1には、以下のとおりの記載がある(下線は当審による。以下同様。)。 「ポリイソシアネートと1種類以上のブロック剤とから得られるブロックポリイソシアネートを含み、 前記ブロック剤が、下記一般式(I)で示される化合物を含み、 前記ブロックポリイソシアネート中の前記ポリイソシアネートに前記一般式(I)で示される化合物が結合した結合構造のモル総量に対する下記一般式(II)で示されるメタンテトラカルボニル構造の含有量が0.5モル%以上10モル%以下である、ブロックポリイソシアネート組成物。 [化1] [図:0001424583000003.jpg] (一般式(I)中、R11は、ヒドロキシ基;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基;ヒドロキシ基及びアルキル基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアミノ基;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアリール基;又は、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルコキシ基である。但し、前記アミノ基は、2つの前記置換基が互いに連結して環を形成してもよい。 R12、R13及びR14はそれぞれ独立に、水素原子;ヒドロキシ基;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基;ヒドロキシ基及びアルキル基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアミノ基;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアリール基;又は、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルコキシ基である。前記アミノ基は、2つの前記置換基が互いに連結して環を形成してもよい。但し、R12、R13及びR14のうち2つ以上が水素原子であることはない。) [化2] [図:0001424583000004.jpg] (一般式(II)中、R21は、ヒドロキシ基;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基;ヒドロキシ基及びアルキル基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアミノ基;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアリール基;又は、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルコキシ基である。但し、前記アミノ基は、2つの前記置換基が互いに連結して環を形成してもよい。 R22、R23及びR24はそれぞれ独立に、水素原子;ヒドロキシ基;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基;ヒドロキシ基及びアルキル基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアミノ基;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアリール基;又は、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルコキシ基である。前記アミノ基は、2つの前記置換基が互いに連結して環を形成してもよい。但し、R22、R23及びR24のうち2つ以上が水素原子であることはない。)」 また、請求項1に対応する実施例として、実施例4-4及び実施例4-9が記載されている([0395]合成例4-1(P4-1)、[0397]合成例4-3(P4-3)、[0398]実施例4-1、[0399]~[0404][表4]の実施例4-4、実施例4-9)。 甲1の実施例4-4及び実施例4-9に着目すると、甲1には、次の発明(以下、それぞれ「甲1-1発明」、「甲1-2発明」といい、併せて「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 なお、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の量に関し、合成例4-3では「1000g」と記載されていることから、合成例4-1も同様に「1000部」ではなく「1000g」と解した。 <甲1-1発明> 「ポリイソシアネートP4-1(ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI):1000g及びトリメチロールプロパン:33gを反応させて得られたもので、平均イソシアネート基数5.1のイソシアヌレート型ポリイソシアネート):100g、及び、親水性化合物であるポリエチレンオキサイドMPG-081(日本乳化剤株式会社製の商品名、数平均分子量:690):33gを仕込み、120℃に加熱撹拌しながら4時間保持し、次いで、反応液を室温まで冷却し、ブロック剤であるマロン酸ジ-tert-ペンチルB4-4:104g、及び、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DPDM):158gを仕込み、さらに、ナトリウムメチラート(28質量%)含有メタノール溶液:0.9部を室温で添加し、40℃で4時間ブロック反応させて得られた、ブロックポリイソシアネート組成物BL4-4aであって、 前記ブロックポリイソシアネート組成物BL4-4aについて、不揮発分は60質量%、有効NCO含有率は4.5質量%、イソシアヌレート3量体の含有量は13質量%、アロファネート基のモル比(a/(a+b+c+d+e+f))は0.29、以下の一般式(II)(当審注:置換基の説明は省略)で示されるメタンテトラカルボニル構造の含有量は3.1モル%、ノニオン性親水性基の含有量は13.8質量%である、 ブロックポリイソシアネート組成物BL4-4a。 [図:0001424583000005.jpg] 」 <甲1-2発明> 「ポリイソシアネートP4-3(ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI):1000g及び2-エチルヘキサン-1,3-ジオール:2gを反応させて得られたもので、平均イソシアネート基数は3.4のイソシアヌレート型ポリイソシアネート):100g、及び、親水性化合物であるポリエチレンオキサイドMPG-081(日本乳化剤株式会社製の商品名、数平均分子量:690):36gを仕込み、120℃に加熱撹拌しながら4時間保持し、次いで、反応液を室温まで冷却し、ブロック剤であるマロン酸ジイソプロピルB4-1:88g、及び、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DPDM):149gを仕込み、さらに、ナトリウムメチラート(28質量%)含有メタノール溶液:0.9部を室温で添加し、40℃で4時間ブロック反応させて得られた、ブロックポリイソシアネート組成物BL4-9aであって、 前記ブロックポリイソシアネート組成物BL4-9aについて、不揮発分は60質量%、有効NCO含有率は5.3質量%、イソシアヌレート3量体の含有量は46質量%、アロファネート基のモル比(a/(a+b+c+d+e+f))は0.10、下記の一般式(II)(当審注:置換基の説明は省略)で示されるメタンテトラカルボニル構造の含有量は3.5モル%、ノニオン性親水性基の含有量は16.0質量%である、 ブロックポリイソシアネート組成物BL4-9a。 [図:0001424583000006.jpg] 」 (2)本件発明1について ア 本件発明1と甲1-1発明、甲1-2発明との対比 甲1-1発明における「親水性化合物であるポリエチレンオキサイドMPG-081(日本乳化剤株式会社製の商品名、数平均分子量:690)」は、乙1によれば、「ポリエチレングリコールモノメチルエーテル」であり、水酸基を1つ有するものと認められるから、本件発明1の「数平均分子量が60以上5000以下であ」る「活性水素化合物」に相当する。 また、甲1-1発明における「ポリイソシアネートP4-3(ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI):1000部及び2-エチルヘキサン-1,3-ジオール:2gを反応させて得られたもので、平均イソシアネート基数は3.4のイソシアヌレート型ポリイソシアネート)」は、本件発明1の「脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群から選択される1種類以上のジイソシアネートを複数反応させて得られる反応物」である「ポリイソシアネート」に相当する。 さらに、甲1-1発明は、ポリイソシアネートP4-1と、活性水素化合物であるポリエチレンオキサイドMPG-081(数平均分子量:690)とを反応させて、さらに、ブロック剤であるマロン酸ジ-tert-ペンチルを反応させたブロックポリイソシアネート組成物BL4-4aであるから、甲1-1発明の「ブロックポリイソシアネート組成物BL4-4a」は、本件発明1の「活性水素化合物とポリイソシアネートから誘導される活性水素化合物変性ポリイソシアネートと、マロン酸エステルを含むブロック剤と、から誘導されるブロックポリイソシアネートを含むブロックポリイソシアネート組成物」に相当する。 また、甲1-2発明は、甲1-1発明において、ブロック剤をマロン酸ジ-tert-ペンチルからマロン酸ジイソプロピルへと変更したことを含むものである。 そうすると、本件発明1と甲1-1発明、甲1-2発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「活性水素化合物とポリイソシアネートから誘導される活性水素化合物変性ポリイソシアネートと、マロン酸エステルを含むブロック剤と、から誘導されるブロックポリイソシアネートを含むブロックポリイソシアネート組成物であって、 前記活性水素化合物は、数平均分子量が60以上5000以下であり、 前記ポリイソシアネートが、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群から選択される1種類以上のジイソシアネートを複数反応させて得られる反応物である、ブロックポリイソシアネート組成物。」 <相違点1-1> ブロックポリイソシアネートが、本件発明1においては、「一般式(I)で表される構成単位を含み、」 「【化1】 [図:0001424583000007.jpg] 前記一般式(I)中、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基であり、R11、R12及びR13の合計炭素数が、3以上20以下であり、R14、R15及びR16は、それぞれ独立に、水素原子、又はヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基であり、波線は結合手を表す。」 「前記一般式(I)で表される構成単位として、前記一般式(I)中、R11、R12及びR13の合計炭素数が4以上20以下であり、R16が水素原子を表す構成単位(I-1)を含む」ものであるのに対し、甲1-1発明においては、ブロック剤として「マロン酸ジ-tert-ペンチル」、甲1-2発明においては、ブロック剤として「マロン酸ジイソプロピル」を用いたものである点 <相違点1-2> 活性水素化合物が、本件発明1においては、「平均官能基数が1.6以上2.4以下」である「ポリオールA」であるのに対して、甲1発明においては、水酸基を1つ有する「ポリエチレンオキサイドMPG-081(ポリエチレングリコールモノメチルエーテル)である点 イ 相違点1-1について (ア)新規性について 相違点1-1は、実質的な相違点であるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明ではない。 (イ)進歩性について 甲1にはブロック剤について以下のような記載がある。 「[0095] (ブロック剤) ブロックポリイソシアネートの製造に用いられるブロック剤は、下記一般式(I)で示される化合物(化合物(I))を含む。ブロック剤は、化合物を1種類単独で含んでもよく、2種類以上組み合わせて含んでもよい。 [0096] [化6] [図:0001424583000008.jpg] [0097] 〇化合物(I) 1.R11 一般式(I)中、R11は、ヒドロキシ基;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基;ヒドロキシ基及びアルキル基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアミノ基;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアリール基;又は、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルコキシ基である。但し、前記アミノ基は、2つの前記置換基が互いに連結して環を形成してもよい。 ・・・ [0103] (4)R11:アルコキシ基 R1が置換基を有しないアルコキシ基である場合、該アルコキシ基としては、炭素数は1以上30以下であることが好ましく、1以上8以下であることがより好ましく、1以上6以下であることがさらに好ましく、1以上4以下であることが特に好ましい。前記アルコキシ基として具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、イソブトキシ基、n-ペントキシ基、イソペントキシ基、ネオペントキシ基、tert-ペントキシ基、1-メチルブトキシ基、n-ヘキトキシ基、2-メチルペントキシ基、3-メチルペントキシ基、2,2-ジメチルブトキシ基、2,3-ジメチルブトキシ基、n-ヘプトキシ基、2-メチルヘキトキシ基、3-メチルヘキトキシ基、2,2-ジメチルペントキシ基、2,3-ジメチルペントキシ基、2,4-ジメチルペントキシ基、3,3-ジメチルペントキシ基、3-エチルペントキシ基、2,2,3-トリメチルブトキシ基、n-オクトキシ基、イソオクトキシ基、2-エチルヘキトキシ基、ノニノキシ基、デシロキシ基等が挙げられる。 ・・・ [0105] 2.R12、R13及びR14 一般式(I)中、R12、R13及びR14はそれぞれ独立に、水素原子;ヒドロキシ基;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基;ヒドロキシ基及びアルキル基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアミノ基;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアリール基;又は、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルコキシ基である。前記アミノ基は、2つの前記置換基が互いに連結して環を形成してもよい。但し、R12、R13及びR14のうち2つ以上が水素原子であることはない。 上記アルキル基、上記アミノ基、上記アリール基及び上記アルコキシ基としては、上記「R11」において例示されたものと同様のものが挙げられる。 中でも、R12、R13及びR14はそれぞれ独立に、水素原子;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基;又は、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアリール基であり、且つ、R12、R13及びR14のうち2つ以上が水素原子であることはないことが好ましい。 [0106] 化合物(I)において、工業的入手の容易さ、及び、低温での硬化性が優れることから、R11がアルコキシ基であり、R12が水素原子又はアルキル基であり、且つ、R13及びR14がアルキル基であることが好ましい。 [0107] また、化合物(I)がtert-ブチルエステル構造又はtert-ペンチルエステル構造を有することにより、塗膜としたときの低温硬化性及び耐水性に優れ、また、sec-ブチルエステル構造又はiso-プロピルエステル構造を有することにより、塗料組成物としたときの貯蔵安定性(水分散安定性及び粘度安定性)、並びに、塗膜としたときの低温硬化性及び硬度保持性に優れる傾向にある。 [0108] 化合物(I)として好ましいものとして具体的には、例えば、アセト酢酸イソプロピル、マロン酸ジ-sec-ブチル、マロン酸ジ-tert-ブチル、マロン酸ジ-tert-ペンチル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸tert-ブチルエチル、マロン酸イソプロピルエチル等が挙げられる。 中でも、得られる塗膜の更なる低温硬化性の点から、マロン酸ジ-sec-ブチル、マロン酸ジ-tert-ブチル、マロン酸ジ-tert-ペンチル、マロン酸ジイソプロピル又はマロン酸tert-ブチルエチルが好ましく、水分散安定性の観点から、マロン酸ジ-sec-ブチル又はマロン酸ジイソプロピルがより好ましい。 また、本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物が易接着処理積層体を形成するための接着剤組成物として用いられる場合には、被着体との密着性及び耐湿熱試験後の密着性が良好となることから、マロン酸ジ-tert-ブチル又はマロン酸ジ-tert-ペンチルが特に好ましい。」 甲1のブロック剤である一般式(I)において、例示された中から、R11として「tert-ペントキシ基」([0103])、R12として「水素原子」、R13及びR14として「アルキル基」([0105])を選択すると、本件発明1の一般式(I)において、R11、R12及びR13の合計炭素数が4、R16が水素、R14及びR15がアルキル基となり、相違点1-1に係る本件発明の構造を構成するブロック剤となる。 しかしながら、甲1に記載された置換基の例示の中から、あえて、R11として「tert-ペントキシ基」([0103])、R12として「水素原子」、R13及びR14として「アルキル基」([0105])の組合せを選択して、本件発明1の一般式(I)において、R11、R12及びR13の合計炭素数が4以上、R16が水素、R14及びR15がアルキル基となるもの(例えば、マロン酸tert-ペンチルsec-ブチル)とする具体的な示唆はなく、動機付けもない。 甲2、3、5、6の記載をみても、同様である。 ウ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び他の甲号証の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明2~6、10、11、14~17について 本件発明2~6、10、11、14~17は、本件発明1を更に特定したものであるから、本件発明2~6、10、11、14~17と甲1-1発明、甲1-2発明とは、少なくとも相違点1-1において相違する。 したがって、本件発明2~6、10、11、14~17は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び他の甲号証の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)小括 以上によれば、本件発明1~6、10、11、14~17に係る特許は、甲1を主引例とする取消理由1、2及び申立理由1、2によっては、取り消すことはできない。 3 取消理由1、2(甲2を主引例とする新規性及び進歩性)及び申立理由1、2(甲2を主引例とする新規性及び進歩性)について 取消理由1、2及び申立理由1、2は、いずれも甲2を主引例とするものであるから、まとめて判断する。 (1)甲2発明 甲2には、次のとおりの記載がある。 「[請求項1]下記一般式(I): [図:0001424583000009.jpg] (式中、R1、R2、R4及びR5は、独立して、炭素数1~12の炭化水素基を表し、R3は、炭素数1~12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。) で示されるブロックイソシアネート基、下記一般式(II): [図:0001424583000010.jpg] (式中、R2、R3、R4及びR5は、上述のとおりである。) で示されるブロックイソシアネート基、及び下記一般式(III): [図:0001424583000011.jpg] (式中、R2、R3、R4及びR5は上述のとおりであり、R6は、炭素数1~12の炭化水素基を表す。) で示されるブロックイソシアネート基から成る群から選択される少なくとも1種のブロックイソシアネート基と、親水基とを有することを特徴とするブロックポリイソシアネート化合物。 [請求項2] 一般式(I)において、R1がイソプロピル基である、請求項1に記載のブロックポリイソシアネート化合物。 [請求項3] 一般式(III)において、R6がイソプロピル基である、請求項1又は2に記載のブロックポリイソシアネート化合物。 [請求項4] 下記一般式(IV): [図:0001424583000012.jpg] (式中、R1は上述のとおりであり、互いに同一でも、又は異なっていてもよい。) で示されるブロックイソシアネート基を有する、親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物前駆体(b41)と、下記一般式(VI): [図:0001424583000013.jpg] (式中、R2、R3、R4及びR5は上述のとおりである。) で示される2級アルコール(b5)とを反応させることにより製造された、請求項1又は2に記載のブロックポリイソシアネート化合物。」 「[0006] しかしながら、特許文献1に記載のブロックポリイソシアネート化合物においても、水存在下での貯蔵性が不十分な場合があった。また、特許文献1に記載のブロックポリイソシアネート化合物を含有する水性塗料組成物は、貯蔵後に塗装される場合に、形成される塗膜の付着性が低下する場合があった。 [0007] 従って、本発明は、貯蔵安定性に優れるブロックポリイソシアネート化合物を提供することを課題とする。また、本発明は、平滑性及び鮮映性に優れた塗膜を形成することができ、さらに貯蔵後に塗装される場合においても、優れた付着性を有する塗膜を形成することができる水性塗料組成物及び上記水性塗料組成物が塗装された物品を提供することを課題とする。 [0008] 本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を行った。その結果、特定の構造のブロックイソシアネート基と、親水基とを有するブロックポリイソシアネート化合物により、上記の目的を達成できることを見出した。」 「[0052][活性メチレン化合物(b3)] ポリイソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基をブロック化する活性メチレン化合物(b3)としては、例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn-プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn-ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジsec-ブチル、マロン酸ジtert-ブチル、マロン酸ジn-ペンチル、マロン酸ジn-ヘキシル、マロン酸ジ(2-エチルヘキシル)、マロン酸メチルイソプロピル、マロン酸エチルイソプロピル、マロン酸メチルn-ブチル、マロン酸エチルn-ブチル、マロン酸メチルイソブチル、マロン酸エチルイソブチル、マロン酸メチルsec-ブチル、マロン酸エチルsec-ブチル、マロン酸ジフェニル及びマロン酸ジベンジル等のマロン酸ジエステル、アセト酢酸メチル、・・・等のアセト酢酸エステル、イソブチリル酢酸メチル、・・・等のイソブチリル酢酸エステル等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。 [0053] 活性メチレン化合物(b3)は、得られるブロックポリイソシアネート化合物を含有する水性塗料組成物によって形成される塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジイソプロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、イソブチリル酢酸メチル及びイソブチリル酢酸エチルからなる群から選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましく、マロン酸ジイソプロピル、イソブチリル酢酸メチル及びイソブチリル酢酸エチルからなる群から選択される少なくとも1種の化合物であることがより好ましい。 [0054] 活性メチレン化合物(b3)は、得られるブロックポリイソシアネート化合物の反応性及び貯蔵安定性並びに上記ブロックポリイソシアネート化合物を含有する水性塗料組成物によって形成される塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、マロン酸ジイソプロピルであることがさらに好ましい。」 「[0060][親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物前駆体(b4)] 親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物前駆体(b4)は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(b1)、親水基を有する活性水素含有化合物(b2)及び活性メチレン化合物(b3)を反応させることにより得られる。親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物前駆体(b4)は、通常、ポリイソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基の一部が親水基を有する活性水素含有化合物(b2)と反応し、残余のイソシアネート基の一部又は全部が、活性メチレン化合物(b3)によってブロックされているブロックポリイソシアネート化合物である。 [0061] なお、本明細書では、親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物前駆体(b4)は、本発明のブロックポリイソシアネート化合物を製造する前の段階にある物質としての「前駆体」を意味し、親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物前駆体(b4)も、イソシアネート基がブロックされた、ブロックポリイソシアネート化合物である。 [0062] 親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物前駆体(b4)は、下記一般式(IV): (式中、R1は、独立して、炭素数1~12の炭化水素基を表し、互いに同一でも異なっていてもよい。) で示されるブロックイソシアネート基を有する、親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物前駆体(b41)、及び下記一般式(V): [図:0001424583000014.jpg] (式中、R6及びR7は、独立して、炭素数約1~約12の炭化水素基を表す。) で示されるブロックイソシアネート基を有する、親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物前駆体(b42)から成る群から選択される一方又は両方であることが好ましい。 [0063] [親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物前駆体(b41)] 親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物前駆体(b41)は、上記ブロックポリイソシアネート化合物の原料の一つである活性メチレン化合物(b3)として、比較的簡易に製造又は入手できる活性メチレン化合物を使用できる観点から、R1が、炭素数約1~約3のアルキル基であることが好ましい。」 「[0072][2級アルコール(b5)] 本発明のブロックポリイソシアネート化合物は、例えば、親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物前駆体(b4)と、2級アルコールとを反応させることにより製造されることができ、上記2級アルコールとしては、特に制限されないが、下記一般式(VI): [図:0001424583000015.jpg] (式中、R2、R4及びR5は、独立して、炭素数約1~約12の炭化水素基を表し、R3は、炭素数約1~約12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。) で示される2級アルコール(b5)が好ましい。 [0073] 2級アルコール(b5)において、親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物前駆体(b4)との反応性を高める観点から、R2がメチル基であることが好ましい。また、R3、R4及びR5は、それぞれ炭素数が多いと、得られるブロックポリイソシアネート化合物の極性が低下し、他の塗料成分との相溶性が低下する場合があるため、R3は炭素数約1~約3のアルキレン基であることが好ましく、そしてR4及びR5はメチル基であることが好ましい。 [0074] 2級アルコール(b5)としては、例えば、4-メチル-2-ペンタノール、5-メチル-2-ヘキサノール、6-メチル-2-ヘプタノール、7-メチル-2-オクタノール等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。2級アルコール(b5)は、親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物前駆体(b4)及び2級アルコール(b5)の反応後に、未反応の2級アルコール(b5)の一部又は全部を蒸留除去する際に、その除去が比較的簡易であることから、比較的低い沸点を有する4-メチル-2-ペンタノールであることが好ましい。」 そして、甲2には、請求項1において、一般式(I)~(III)(当審注:構造省略)で示されるブロックイソシアネート基からなる群から選択されるブロックイソシアネート基と、親水基とを有する、ブロックポリイソシアネート化合物が開示され、その具体例として、ブロック剤として、「マロン酸イソプロピル」と「4-メチル-2-ペンタノール」とを反応させた、実施例3及び実施例4のブロックイソシアネート化合物が記載されている([0247][0248][0250][0251])。 甲2の実施例3及び4の記載に着目すると、次の発明(以下、それぞれ「甲2-1発明」、「甲2-2発明」といい、併せて「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 <甲2-1発明> 「スミジュールN-3300(商品名、住化バイエルウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネート由来のイソシアヌレート構造含有ポリイソシアネート、固形分約100%、イソシアネート基含有率21.8%)1610部、ユニオックスM-550(日油社製、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、平均分子量約550)275部、PEG♯600(日油社製、ポリエチレングリコール、平均分子量約600)25部及び2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール0.9部を仕込み、よく混合して、窒素気流下、130℃で3時間加熱し、次いで、酢酸エチル550部及びマロン酸ジイソプロピル1140部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液14部を加え、65℃で8時間攪拌し、4-メチル-2-ペンタノール3080部を加え、系の温度を90~95℃に保ちながら減圧条件下で3時間かけて溶剤を留去して得られた、4940部(固形分濃度は約60%)のブロックポリイソシアネート化合物(BN-3)溶液。」 <甲2-2発明> 「スミジュールN-3300(商品名、住化バイエルウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネート由来のイソシアヌレート構造含有ポリイソシアネート、固形分約100%、イソシアネート基含有率21.8%)1610部、平均分子量約800のポリエチレングリコール(プロピレングリコール)(ただし、エチレングリコール構造/プロピレングリコール構造=10/1(モル比))300部及び2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール0.9部を仕込み、よく混合して、窒素気流下、130℃で3時間加熱し、次いで、酢酸エチル550部及びマロン酸ジイソプロピル1110部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液14部を加え、65℃で8時間攪拌し、4-メチル-2-ペンタノール3010部を加え、系の温度を90~95℃に保ちながら減圧条件下で3時間かけて溶剤を留去して得られた、4940部(固形分濃度は約60%)のブロックポリイソシアネート化合物(BN-4)溶液。」 (2)本件発明1について ア 本件発明1と甲2発明との対比 甲2発明の「スミジュールN-3300商品名、住化バイエルウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネート由来のイソシアヌレート構造含有ポリイソシアネート、固形分約100%、イソシアネート基含有率21.8%)」は、本件発明1の「脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群から選択される1種類以上のジイソシアネートを複数反応させて得られる反応物」である「ポリイソシアネート」に相当する。 甲2発明の「PEG♯600(日油社製、ポリエチレングリコール、平均分子量約600)」、「平均分子量約800のポリエチレングリコール(プロピレングリコール)(ただし、エチレングリコール構造/プロピレングリコール構造=10/1(モル比))」は、いずれも、本件発明1の「数平均分子量が60以上5000以下であり、且つ、平均官能基数が1.6以上2.4以下である」「活性水素化合物」である「ポリオールA」に相当する。 また、甲2発明は、「スミジュールN-3300」と、「PEG♯600(日油社製、ポリエチレングリコール、平均分子量約600)」又は「平均分子量約800のポリエチレングリコール(プロピレングリコール)(ただし、エチレングリコール構造/プロピレングリコール構造=10/1(モル比))」とを反応させてから、ブロック剤としてマロン酸ジイソプロピルと4-メチル-2-ペンタノールとを反応させているから、甲2発明の「ブロックポリイソシアネート化合物(BN-3又は4)溶液」は、本件発明1の「活性水素化合物とポリイソシアネートから誘導される活性水素化合物変性ポリイソシアネートと、マロン酸エステルを含むブロック剤と、から誘導されるブロックポリイソシアネートを含むブロックポリイソシアネート組成物」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「活性水素化合物とポリイソシアネートから誘導される活性水素化合物変性ポリイソシアネートと、マロン酸エステルを含むブロック剤と、から誘導されるブロックポリイソシアネートを含むブロックポリイソシアネート組成物であって、 前記活性水素化合物は、数平均分子量が60以上5000以下であり、且つ、平均官能基数が1.6以上2.4以下であるポリオールAであり、 前記ポリイソシアネートが、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群から選択される1種類以上のジイソシアネートを複数反応させて得られる反応物である、ブロックポリイソシアネート組成物。」 <相違点2> ブロックポリイソシアネートが、本件発明1においては、「一般式(I)で表される構成単位を含み、」 「【化1】 [図:0001424583000016.jpg] 前記一般式(I)中、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基であり、R11、R12及びR13の合計炭素数が、3以上20以下であり、R14、R15及びR16は、それぞれ独立に、水素原子、又はヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基であり、波線は結合手を表す。」 「前記一般式(I)で表される構成単位として、前記一般式(I)中、R11、R12及びR13の合計炭素数が4以上20以下であり、R16が水素原子を表す構成単位(I-1)を含む」ものであるのに対し、甲2発明においては、ブロック剤として「マロン酸ジイソプロピル」及び「4-メチル-2-ペンタノール」を反応させたものである点 イ 相違点2について (ア)新規性について 甲2発明においては、ブロック剤として「マロン酸ジイソプロピル」と「4-メチル-2-ペンタノール」とを反応させたものであるから、得られたブロックポリイソシアネート化合物が、甲2の請求項1の一般式(I)で表されるブロックイソシアネート基となっているとすると、甲2の一般式(I)におけるR1が「イソプロピル基」、R2、R4、R5がメチル基、R3がメチレン基となる。この構造を、本件発明1の一般式(I)に当てはめると、R11、R12及びR13がそれぞれメチル基、メチル基、水素基で、それらの合計の炭素数が「2」となり、本件発明1における「R11、R12及びR13の合計炭素数が4以上20以下」という条件を満たさない。 そうすると、相違点2は実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲2に記載された発明ではない。 (イ)進歩性について 甲2には、マロン酸ジイソプロピルと、同様に用いることができるブロック剤が[0052][0053]において多数例示されているものの、マロン酸ジイソプロピルが「さらに好ましい」ものとして記載されており、甲2の記載に接した当業者が、本件発明1の一般式(I)において、R11、R12及びR13の合計炭素数が4以上20以下となるような、マロン酸エステルを積極的に選択する動機付けとなる記載はない。 そうすると、甲2発明のマロン酸ジイソプロピルに代えて、他のマロン酸ジエステルを用いることにより、相違点2に係る本件発明1の構造とすることは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。 甲1、3、5、6の記載をみても、同様である。 ウ したがって、本件発明1は、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明及び他の甲号証の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明2~6、10、11、14~17について 本件発明2~6、10、11、14~17は、本件発明1を更に特定したものであるから、本件発明2~6、10、11、14~17と甲2発明とは、少なくとも相違点2において相違する。 したがって、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~6、10、11、14~17は、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明及び他の甲号証の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)小括 以上によれば、本件発明1~6、10、11、14~17に係る特許は、甲2を主引例とする取消理由1、2及び申立理由1、2によっては、取り消すことはできない。 4 取消理由2(甲3を主引例とする進歩性)及び申立理由1、2(甲3を主引例とする新規性及び進歩性)について 取消理由2及び申立理由1、2は、いずれも甲3を主引例とするものであるから、まとめて判断する。 (1)甲3発明 甲3の請求項4、請求項5、【0022】【0023】【0041】【0042】の記載に着目すると、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。 <甲3発明> 「ヒドロキシル化合物で変性されたイソシアヌレート型ポリイソシアネートを、マロン酸ジアルキルエステルである活性メチレン化合物でブロックした、活性メチレン系ブロックポリイソシアネート化合物を含む、ブロックポリイソシアネート化合物溶液。」 (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲3発明とを対比すると、甲3発明の「ヒドロキシル化合物」は、本件発明1の「活性水素化合物」に相当する。 そうすると、両発明の一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点> 「活性水素化合物とポリイソシアネートから誘導される活性水素化合物変性ポリイソシアネートと、マロン酸エステルを含むブロック剤と、から誘導されるブロックポリイソシアネートを含むブロックポリイソシアネート組成物。」 <相違点3-1> ブロックポリイソシアネートが、本件発明1においては、「一般式(I)で表される構成単位を含み、」 「【化1】 [図:0001424583000017.jpg] 前記一般式(I)中、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基であり、R11、R12及びR13の合計炭素数が、3以上20以下であり、R14、R15及びR16は、それぞれ独立に、水素原子、又はヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基であり、波線は結合手を表す。」 「前記一般式(I)で表される構成単位として、前記一般式(I)中、R11、R12及びR13の合計炭素数が4以上20以下であり、R16が水素原子を表す構成単位(I-1)を含む」ものであるのに対し、甲3発明においては、ブロック剤として「マロン酸ジアルキルエステル」を用いたものである点 <相違点3-2> 活性水素化合物が、本件発明1においては、「数平均分子量が60以上5000以下であり、且つ、平均官能基数が1.6以上2.4以下であるポリオールA」であるのに対し、甲3発明においては、「ヒドロキシル化合物」である点 <相違点3-3> ポリイソシアネートが、本件発明1においては、「脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群から選択される1種類以上のジイソシアネートを複数反応させて得られる反応物」であるのに対し、甲3発明においては、「イソシアヌレート型ポリイソシアネート」である点 イ 相違点3-1について (ア)新規性について 相違点3-1は、実質的な相違点であるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3に記載された発明ではない。 (イ)進歩性について 甲3には、ブロック剤であるマロン酸エステルについて以下の記載がある。 「【0024】 上記活性メチレン系ブロック剤としては、例えばマロン酸ジアルキルエステル、アセト酢酸エステルなどを挙げることができ、マロン酸ジアルキルエステルとしては、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn-ブチル、メチルマロン酸ジエチル、マロン酸ベンジルメチル、マロン酸ジフェニルなどが、アセト酢酸エステルとしては、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n-プロピル、アセト酢酸ベンジル、アセト酢酸フェニルなどがあげられる。」 しかしながら、甲3には、マロン酸ジアルキルエステルの「アルキル」部分の構造を異なるものとして、本件発明1の一般式(I)において、R11、R12及びR13の合計炭素数が4以上、R16が水素、R14及びR15がアルキル基となるブロック剤を用いる具体的な示唆はなく、動機付けもない。 甲1、2、5、6の記載をみても、同様である。 ウ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3に記載された発明ではなく、また、甲3に記載された発明及び他の甲号証の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明2~6、10、11、14~17について 本件発明2~6、10、11、14~17は、本件発明1を更に特定したものであるから、本件発明2~6、10、11、14~17と甲3発明とは、少なくとも相違点3-1において相違する。 したがって、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~6、10、11、14~17は、甲3に記載された発明ではなく、また、甲3に記載された発明及び他の甲号証の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)小括 以上によれば、本件発明1~6、10、11、14~17に係る特許は、甲3を主引例とする取消理由2及び申立理由1、2によっては、取り消すことはできない。 5 取消理由3(拡大先願)及び申立理由3(拡大先願)について 取消理由3(拡大先願)及び申立理由3(拡大先願)は、いずれも甲4に基づくものであるから、まとめて判断する。 (なお、これらの理由の対象請求項は、請求項1~6、10、11、14~16である。 また、甲4は、本件特許優先日前に出願された特願2019-200156号(PCT/JP2020/026295)を意図しているものとして審理を行った。) (1)甲4の出願の願書に最初に添付された明細書又は特許請求の範囲(以下「甲4先願明細書」という。)に記載された発明 甲4先願明細書には、「ポリイソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基の一部にスペーサー(b3)及び/又は親水基含有化合物(b4)を反応させた後、残りのイソシアネート基をブロック剤(b2)でブロックする方法」が記載され(【0119】])、スペーサー(b3)として、エチレングリコール、ブチレングリコールやヘキサメチレングリコールなどの2価のアルコール、グリセリンなどの3価アルコール、ポリエーテルポリオール(例えばPEG#200、PTMG2000)などの高分子量のものが挙げられ(【0100】【0101】)、スペーサー(b3)の分子量は500~6,000の範囲内であることが好ましいこと(【0104】)、スペーサー(b3)の官能基数は2個であることがさらに好ましいこと(【0105】)が記載されている。 また、親水基含有化合物(b4)は、1個のイソシアネート反応基を有する、ノニオン性の親水基含有化合物、アニオン性の親水基含有化合物などであることが記載されている(【0108】)。 さらに、ブロック剤(b2)は、活性メチレン系のブロック剤であることが好ましく、その例として、「マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn-プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn-ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジsec-ブチル、マロン酸ジtert-ブチル、マロン酸ジn-ペンチル、マロン酸ジn-ヘキシル、マロン酸ジ(2-エチルヘキシル)、マロン酸メチルイソプロピル、マロン酸エチルイソプロピル、マロン酸メチルn-ブチル、マロン酸エチルn-ブチル、マロン酸メチルイソブチル、マロン酸エチルイソブチル、マロン酸メチルsecブチル、マロン酸エチルsec-ブチル、マロン酸ジフェニル及びマロン酸ジベンジル等のマロン酸ジエステル」が挙げられている(【0093】)。 そして、甲4先願明細書には、上記の記載事項に対応する実施例として、 「【0222】 ブロック化ポリイソシアネート化合物(B)の製造 製造例9 温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、「スミジュールN-3300」(商品名、住化バイエルウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネート由来のイソシアヌレート構造含有ポリイソシアネート、固形分100%、イソシアネート基含有率21.8%)1610部、「PTMG2000」(商品名、三菱ケミカル社製、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、平均分子量2,000、固形分100%)500部及び2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール0.9部を仕込み、よく混合して、窒素気流下で、130℃で3時間加熱した。次いで、酢酸エチル600部及びマロン酸ジイソプロピル1150部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液14部を加え、65℃で8時間攪拌し、最終固形分が70%となるよう酢酸エチルで希釈して、重量平均分子量21,000のブロック化ポリイソシアネート化合物(B-1)を得た。」 と記載され、製造例9で得られるブロック化ポリイソシアネート化合物(B-1)は、ポリイソシアネート化合物(b1)である「スミジュールN-3300」に、スペーサー(b3)である「PTMG2000」を反応させた後、ブロック剤(b2)であるマロン酸ジイソプロピルを反応させたものである。 そうすると、甲4先願明細書のこれらの記載に着目すると、次の発明(以下、それぞれ「甲4-1発明」、「甲4-2発明」といい、併せて「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。 <甲4-1発明> 「ポリイソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基の一部に、スペーサー(b3)及び/又は親水基含有化合物(b4)を反応させた後、残りのイソシアネート基をブロック剤(b2)でブロックしたブロックイソシアネート化合物を含む組成物であって、 スペーサー(b3)は、エチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコールなどの2価のアルコール、又は、分子量は500~6,000の範囲内のポリエーテルポリオール(例えばPEG#200、PTMG2000)などの高分子量のものであり、 親水基含有化合物(b4)は、1個のイソシアネート反応基を有する、ノニオン性の親水基含有化合物又はアニオン性の親水基含有化合物であり、 ブロック剤は、マロン酸ジメチル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジtert-ブチルなどの活性メチレン系のブロック剤である、前記組成物。」 <甲4-2発明> 「スミジュールN-3300(商品名、住化バイエルウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネート由来のイソシアヌレート構造含有ポリイソシアネート、固形分100%、イソシアネート基含有率21.8%)1610部、PTMG2000(商品名、三菱ケミカル社製、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、平均分子量2,000、固形分100%)500部及び2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール0.9部を仕込み、よく混合して、窒素気流下で、130℃で3時間加熱し、次いで、酢酸エチル600部及びマロン酸ジイソプロピル1150部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液14部を加え、65℃で8時間攪拌し、最終固形分が70%となるよう酢酸エチルで希釈して得られた、重量平均分子量21,000のブロック化ポリイソシアネート化合物(B-1)を含む、組成物。」 (2)本件発明1について 本件発明1と甲4-1発明、甲4-2発明とを対比する。 甲4-1発明の「スペーサー(b3)は、エチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコールなどの2価のアルコール、又は、分子量は500~6,000の範囲内のポリエーテルポリオール(例えばPEG#200、PTMG2000)などの高分子量のもの」、甲4-2発明の「PTMG2000(商品名、三菱ケミカル社製、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、平均分子量2,000、固形分100%)」は、本件発明1の「数平均分子量が60以上5000以下であり、且つ、平均官能基数が1.6以上2.4以下」の「活性水素化合物」である「ポリオールA」に相当する。 甲4-1発明の「ポリイソシアネート化合物(b1)」は、本件発明1の「ポリイソシアネート」に相当し、甲4-2発明の「スミジュールN-3300(商品名、住化バイエルウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネート由来のイソシアヌレート構造含有ポリイソシアネート、固形分100%、イソシアネート基含有率21.8%)」は、本件発明1の「脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群から選択される1種類以上のジイソシアネートを複数反応させて得られる反応物」である「ポリイソシアネート」に相当する。 甲4-1発明の「マロン酸ジメチル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジtert-ブチルなどの活性メチレン系のブロック剤」、甲4-2発明の「マロン酸ジイソプロピル」は、本件発明1の「マロン酸エステルを含むブロック剤」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲4-1発明、甲4-2発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「活性水素化合物とポリイソシアネートから誘導される活性水素化合物変性ポリイソシアネートと、マロン酸エステルを含むブロック剤と、から誘導されるブロックポリイソシアネートを含むブロックポリイソシアネート組成物であって、 前記活性水素は、数平均分子量が60以上5000以下であり、且つ、平均官能基数が1.6以上2.4以下であるポリオールAである、 ブロックポリイソシアネート組成物。」 また、甲4-2発明の「スミジュールN-3300」は、ヘキサメチレンジイソシアネート由来のイソシアヌレート構造含有ポリイソシアネートであるから、本件発明1と甲4-2発明とは、上記の一致点に加えて、 「前記ブロックポリイソシアネートが、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群から選択される1種類以上のジイソシアネートを複数反応させて得られる反応物」である点においても一致する。 <相違点4-1> ブロックポリイソシアネートが、本件発明1においては、「一般式(I)で表される構成単位を含み、」 「【化1】 [図:0001424583000018.jpg] 前記一般式(I)中、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基であり、R11、R12及びR13の合計炭素数が、3以上20以下であり、R14、R15及びR16は、それぞれ独立に、水素原子、又はヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基であり、波線は結合手を表す。」 「前記一般式(I)で表される構成単位として、前記一般式(I)中、R11、R12及びR13の合計炭素数が4以上20以下であり、R16が水素原子を表す構成単位(I-1)を含む」ものであるのに対し、甲4-1発明においては、ブロック剤として「マロン酸ジメチル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジtert-ブチルなどの活性メチレン系のブロック剤」、甲4-2発明においては、ブロック剤として「マロン酸ジイソプロピル」を用いたものである点 <相違点4-2> ポリイソシアネートが、本件発明1においては、「脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群から選択される1種類以上のジイソシアネートを複数反応させて得られる反応物」であるのに対し、甲4-1発明においては、具体的な構造は特定されていない点 イ 判断 甲4先願明細書には、ブロック剤について、「マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn-プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn-ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジsec-ブチル、マロン酸ジtert-ブチル、マロン酸ジn-ペンチル、マロン酸ジn-ヘキシル、マロン酸ジ(2-エチルヘキシル)、マロン酸メチルイソプロピル、マロン酸エチルイソプロピル、マロン酸メチルn-ブチル、マロン酸エチルn-ブチル、マロン酸メチルイソブチル、マロン酸エチルイソブチル、マロン酸メチルsecブチル、マロン酸エチルsec-ブチル、マロン酸ジフェニル及びマロン酸ジベンジル等のマロン酸ジエステル」が例示されているものの(【0093】)、相違点4-1に係る本件発明1の構造となるようなブロック剤は例示も示唆もされておらず、また、当該ブロック剤を用いることは、当業界における周知技術であるともいえない。 したがって、相違点4-1は、実質的な相違点であり、周知技術の付加であるともいえないので、本件発明1と甲4発明とは、同一ではない。 (3)本件発明2~6、10、11、14~16について 本件発明2~6、10、11、14~16は、本件発明1を更に特定するものであるから、甲4発明とは、少なくとも相違点4-1において相違する。 したがって、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~6、10、11、14~16と甲4発明とは、同一ではない。 (4)小括 以上によれば、本件発明1~6、10、11、14~16に係る特許は、甲4に基づく取消理由3及び申立理由3によっては、取り消すことはできない。 6 取消理由4(明確性)及び申立理由4(明確性)について (1)取消理由4について ア 取消理由4は、概要、以下の点により、本件訂正前の請求項1~17に係る発明が明確ではないというものである。 (i) 請求項1の「数平均分子量が60以上5000以下であり、且つ、平均官能基数が1.6以上2.4以下である」「活性水素化合物」、又は、請求項6の「平均官能基数が2.9以上8.0以下であるポリオールB」と、請求項12の「親水性化合物」とについて、両者の区別が明確ではない。 (ii) 請求項1の「ポリイソシアネート」は、本件明細書【0018】に記載の「1つ以上のイソシアネート基(-NCO)を有する単量体が複数結合した反応物を意味する。」と記載されている。 しかしながら、例えば、2分子のプロピレンモノイソシアネートを二重結合部分で反応するとヘキサメチレンジイソシアネートが生成し得るところ、これは「1つ以上のイソシアネート基(-NCO)を有する単量体が複数結合した反応物」に相当するから、請求項1の「ポリイソシアネート」には、ヘキサンメチレンジイソシアネートも含まれ得る。 そうすると、請求項1の「ポリイソシアネート」に、ヘキサメチレンジイソシアネートなどのジイソシアネートが含まれるのか、否かが、明確ではない。 イ 判断 本件訂正により請求項12が削除されたので、上記(i)に示した用語の区別が明確ではないという理由は解消した。 また、本件訂正により、請求項1の「ポリイソシアネート」について、「前記ポリイソシアネートが、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群から選択される1種類以上のジイソシアネートを複数反応させて得られる反応物であり、」と限定されたので、請求項1の「ポリイソシアネート」に、ヘキサメチレンジイソシアネートなどのジイソシアネートが含まれないことが明らかとなった。 (2)申立理由4について ア 特許異議申立書において申立理由4で主張された、取消理由4以外の理由は、概要、次のものである。 (iii) 請求項1では、活性水素化合物について、「平均官能基価が1.6以上2.4以下である」とされているが、請求項1を引用する請求項2、3においては、ヒドロキシ基を3つ有する化合物である、「グリセロール」や「グリセロールとε-カプロラクトンとから誘導されるポリカプロラクトンポリオール」が挙げられており、請求項1の「平均官能基価」の技術的意味が明確ではない イ 判断 本件明細書(【0032】)には、ポリオールAの平均官能基数は、「(ポリオールAの平均官能基数)={(ポリオールAのMn)×(水酸基含有率)×0.01}/17 」の式を用いて算出することができると記載され、請求項2及び3には、ポリオールAとして、1,4-ブタンジオールなどのヒドロキシ基を2つ有する化合物や、グリセロールなどのヒドロキシ基を3つ有する化合物などからなる群より選ばれる1種以上のポリオールであることが記載されている。 請求項2、3には、「からなる群から選ばれる1種以上のポリオール」と記載されていることから、グリセロールなどのヒドロキシ基を3つ有する化合物を用いる場合には、1,4ーブタンジオールなどのヒドロキシ基2つ有する化合物を併せて用いることにより、上記式により計算される「ポリオールAの平均官能基数」を「1.6以上2.4以下」とすることができることを、当業者であれば理解でき、請求項1の「平均官能基価」の技術的意味は明確である。 (3)取消理由4及び申立理由4における指摘点以外に、請求項1~6、10、11、14~17の記載に不明確な点は見いだせない。 したがって、本件発明1~6、10、11、14~17は、明確である。 (4)小括 以上によれば、本件発明1~6、10、11、14~17に係る特許は、取消理由4及び申立理由4によっては、取り消すことはできない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、請求項1~6、10、11、14~17に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由及び取消理由通知書に記載した取消理由によっては、取り消すことはできない。 また、請求項7~9、12、13は、本件訂正により削除されたので、請求項7~9、12、13に係る特許についての特許異議の申立ては、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700547

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