特許異議申立
2024-700150
生産計画作成方法および生産計画作成装置ならびに生産方法
- 審判番号
- 2024-700150
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-210984
- 登録番号
- 7329725
- 請求日
- 2024年02月20日
- 審決日
- 2024年09月25日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】パナソニックIPマネジメント株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人栄光事務所
- 【権利者代理人】鎌田 健司
- 【権利者代理人】前田 健児
- 【異議申立人】中川 賢治
- 審判長/審判官
- 審判長 刈間 宏信
- 審判官 鈴木 貴雄
- 審判官 菊地 牧子
- 分類
- P1652.113-YAA(G05B) / P1652.121-YAA(G05B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7329725号発明「生産計画作成方法および生産計画作成装置ならびに生産方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7329725号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕、〔9~15〕、16について訂正することを認める。
特許第7329725号の請求項1、9、16に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
1 特許掲載公報の発行までの経緯
特許第7329725号(以下「本件特許」という。)の請求項1~16に係る特許についての出願は、平成30年11月9日の出願であって、その後、令和5年8月10日にその特許権の設定登録がされ、同月21日に特許掲載公報が発行された。
2 特許異議の申立て以降の経緯
本件特許についての特許異議の申立て以降の主な経緯は、次のとおりである。
(1)令和6年2月20日
特許異議申立人 中川 賢治(以下「申立人」という。)による、本件特許の請求項1、9、16に係る特許に対する特許異議の申立て(特許異議の申立てのために提出された特許異議申立書を、以下「申立書」という。)
(2)令和6年3月18日
申立書を補正の対象とする手続補正書(方式)の提出
(3)令和6年4月17日付け(発送日:同月22日)
取消しの理由の通知(発送された取消理由通知書を、以下「取消理由通知」という。)
(4)令和6年6月21日
特許権者 パナソニックIPマネジメント株式会社(以下「特許権者」という。)による、意見書の提出、及び、訂正の請求(訂正の請求のために提出された訂正請求書を、以下「訂正請求書」といい、当該訂正を、以下「本件訂正」という。)
(5)令和6年7月25日(受理日:同月26日)
申立人による、意見書(以下「申立人意見書」という。)の提出
第2 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容について
特許権者は、本件訂正の請求により、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~16について訂正することを求めるところ、本件訂正の内容は、以下のとおりである(訂正箇所に下線を付して示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「前記生産ラインのそれぞれについて、割り当てられた複数の前記品種の生産順序を作成する」
と記載されているのを、
「前記生産ラインのそれぞれについて、割り当てられた複数の前記品種のグループを作成し、グループに関する情報に基づいて複数の前記品種の生産順序を作成する」
に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~8も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項9に、
「前記生産ラインのそれぞれについて、割り当てられた複数の前記品種の生産順序を作成する生産順序作成部と、を備える、生産計画作成装置。」
と記載されているのを、
「前記生産ラインのそれぞれについて、割り当てられた複数の前記品種に基づいて複数の前記品種をグルーピングするグループ作成部と、
前記生産ラインのそれぞれについて、割り当てられた複数の前記品種のグループに関する情報に基づいて複数の前記品種の生産順序を作成する生産順序作成部と、を備える、生産計画作成装置。」
に訂正する(請求項9の記載を直接的又は間接的に引用する請求項10~15も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項10に、
「前記生産ラインのそれぞれについて、割り当てられた複数の前記品種の製品共通度に基づいて複数の前記品種をグルーピングするグループ作成部」
と記載されているのを、
「前記生産ラインのそれぞれについて、割り当てられた複数の前記品種の製品共通度に基づいて複数の前記品種をグルーピングする前記グループ作成部」
に訂正する(請求項10の記載を直接的又は間接的に引用する請求項11~15も同様に訂正する。)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項16に、
「前記生産ラインのそれぞれについて、割り当てられた複数の前記品種の生産順序を作成し」
と記載されているのを、
「前記生産ラインのそれぞれについて、割り当てられた複数の前記品種のグループを作成し、グループに関する情報に基づいて複数の前記品種の生産順序を作成し」
に訂正する。
2 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~8については、請求項2~8がそれぞれ本件訂正前の請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
また、本件訂正前の請求項9~15については、請求項10~15がそれぞれ本件訂正前の請求項9の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあって、訂正事項2によって記載が訂正される請求項9に連動して訂正されるものである。
したがって、請求項1~8、9~15に係る訂正は、それぞれ、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である請求項〔1~8〕、〔9~15〕について請求されたものである。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、独立特許要件の充足・非充足について
<一群の請求項〔1~8〕について>
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、請求項1において「前記生産ラインのそれぞれについて、割り当てられた複数の前記品種の生産順序を作成する」と記載されているのを、
「前記生産ラインのそれぞれについて、割り当てられた複数の前記品種のグループを作成し、グループに関する情報に基づいて複数の前記品種の生産順序を作成する」に訂正するものであって、
複数の品種の生産順序を作成するにあたって、まず「品種のグループを作成」し、その「グループに関する情報に基づいて」複数の品種の生産順序を作成することを具体的に限定するように訂正するものであるから、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の有無について
訂正事項1の「前記生産ラインのそれぞれについて、割り当てられた複数の前記品種のグループを作成し、グループに関する情報に基づいて複数の前記品種の生産順序を作成する」との点に関して、本件特許の明細書の段落【0042】~【0046】、【0051】~【0053】、【0059】~【0061】には、図8、図9(a)、図10について、それぞれ次の記載がある(下線は当審にて付した。)。
(ア)段落【0042】~【0046】、図8
「【0042】
グループ作成部22aは、生産計画情報23aに含まれる品種の割り当てに基づいて、生産ライン(部品実装ラインL1~L3)毎に、割り当てられた複数の品種(ロット)間の製品共通度を算出し、算出した製品共通度に基づいて複数の品種を台車5にテープフィーダ9、リール17を共通配置するグループとしてグルーピングする。グループ作成部22aは、グループに関する情報を生産計画情報23aに記憶させる。
【0043】
ここで図8を参照して、グループ作成部22aによる図6に示す生産計画情報23aのロットA~H(品種X1~X8)をグルーピングする例について説明する。ここでは、生産ライン割り当て部21bによって、部品実装ラインL1にロットA,B(品種X1,X2)、部品実装ラインL2にロットC,D,E(品種X3,X4,X5)、部品実装ラインL3にロットF,G,H(品種X6,X7,X8)が割り当てられているとする。グループ作成部22aは、部品実装ラインL1~L3毎に、品種間の部品共通度37を算出する。
【0044】
図8(a)において、部品実装ラインL1に割り当てられたロットA,Bの品種X1,X2間の部品共通度37は「22%」と低く、グループ作成部22aは品種X1,X2をグループ化しないと判断する。図8(b)において、部品実装ラインL2に割り当てられたロットC,D,Eのうち品種X3,X4間の部品共通度37は「92%」、品種X3,X5間の部品共通度37は「80%」、品種X4,X5間の部品共通度37は「88%」といずれも高く、グループ作成部22aは品種X3,X4,X5をグループ化すると判断する。
【0045】
図8(c)において、部品実装ラインL3に割り当てられたロットF,G,Hのうち品種X6,X7間の部品共通度37は「85%」と高いが、品種X6,X8間の部品共通度37は「40%」、品種X7,X8間の部品共通度37は「36%」と低く、グループ作成部22aは品種X6,X7のみグループ化すると判断する。・・・
【0046】
図5において、生産順序作成部21cは、生産計画情報23aに含まれる割り当てられた生産ライン、グループに関する情報に基づいて、部品実装ラインL1~L3毎にロットとグループの生産順序、グループに属するロットの生産順序を作成して生産計画情報23aに記憶させる。すなわち、生産順序作成部21cは、生産ラインのそれぞれについて、割り当てられた複数のロット(品種)の生産順序を作成する。」
「【図8】
[図:0001417649000001.jpg]
」
(イ)段落【0051】~【0053】、図9(a)
「【0051】
図9(a)は、更新された生産計画(生産計画情報23a)を時系列で示している。部品実装ラインL1では、ロットAとロットBがこの生産順序で生産され、ロットAとロットBの生産開始前の切り替え作業では台車5の交換が行われる。部品実装ラインL2では、グルーピングされたロットC,D,Eがこの生産順序で生産され、ロットCの生産開始前にはロットC,D,E用に共通配置された台車5を装着する切り替え作業が行われる。
【0052】
また、ロットDとロットEの生産開始前には、部品実装装置M3~M6に装着されている台車5に装着されている一部のテープフィーダ9、リール17、部品実装装置M3~M6に備えられる吸着ノズル12b、スクリーン印刷装置M2に備えられるスクリーンマスク、半田ペースト等の着脱可能な要素の少なくともひとつを交換する切り替え作業のみが行われる。なお、ロットDとロットEの生産開始前の切り替え作業が省略可能な場合もある。
【0053】
部品実装ラインL3では、グルーピングされたロットF,Gがこの生産順序で生産した後、ロットHが生産される。ロットFの生産開始前にはロットF,G用に共通配置された台車5を装着する切り替え作業が行われ、ロットGの生産開始前には部品実装装置M3~M6に装着されている台車5に装着されている一部のテープフィーダ9、リール17を交換する切り替え作業のみが行われる。また、ロットHの生産開始前の切り替え作業では台車5の交換が行われる。」
「【図9】(a)
[図:0001417649000002.jpg]
」
(ウ)段落【0059】~【0061】、図10
「【0059】
次に図10のフローに沿って、管理コンピュータ3(生産計画作成装置)によって、生産設備を備えた複数の生産ライン(部品実装ラインL1~L3)により複数の品種の製品(実装基板)を生産する生産計画を作成する生産計画作成方法について説明する。・・・
【0060】
次いで生産ライン割り当て部21bは、算出された概算サイクルタイム36と生産計画情報23aに基づいて、各生産ラインに生産する品種(ロット)を割り当てる(ST2:品種割り当て工程)。次いでグループ作成部22aは、生産ラインのそれぞれについて、割り当てられた複数の品種の製品共通度に基づいて複数の品種をグルーピングする(ST3:グループ作成工程)。次いで設備構成決定部22bは、グルーピングされた生産設備の構成(共通配置)を含む品種(ロット)を生産するための生産設備の構成を決定する(ST4:設備構成決 定工程)。決定された生産設備の構成は、生産データ情報24aとして記憶される。
【0061】
図10において、次いで生産順序作成部21cは、生産ラインのそれぞれについて、割り当てられた複数の品種(ロット)の生産順序を作成する(ST5:生産順序作成部)。・・・」
「【図10】
[図:0001417649000003.jpg]
」
上記(ア)~(ウ)から、訂正事項1は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものであるから、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1は、上記アのとおり、本件訂正前の請求項1において特定されていた事項を具体的に限定するように訂正するものであるから、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
エ 独立特許要件について
本件特許異議の申立ては、請求項1、9、16を対象としているので、訂正事項1に関して、請求項1については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
一方、請求項2~8は、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるところ、請求項2~8は特許異議の申立てがされておらず、かつ、訂正事項1は上記アのとおり「特許請求の範囲の減縮」を訂正の目的とするものであるため、独立特許要件を満たす必要がある。そして、以下の(ア)~(ウ)のとおり、請求項2~8については、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。
(ア)特許法第29条第1項第3号について
下記の第6の1、第7の2(1)に示すとおり、請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当するとはいえないことから、請求項1の記載を引用する請求項2~8に係る発明についても同様に、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当するとはいえない。
(イ)特許法第29条第2項について
下記の第7の1(1)、2(3)に示すとおり、請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえないことから、請求項1の記載を引用する請求項2~8に係る発明についても同様に、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。
(ウ)その他について
また、他に請求項2~8について、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。
<一群の請求項〔9~15〕について>
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、請求項9における「前記生産ラインのそれぞれについて、割り当てられた複数の前記品種の生産順序を作成する生産順序作成部と、を備える、生産計画作成装置。」と記載されているのを、
「前記生産ラインのそれぞれについて、割り当てられた複数の前記品種に基づいて複数の前記品種をグルーピングするグループ作成部と、前記生産ラインのそれぞれについて、割り当てられた複数の前記品種のグループに関する情報に基づいて複数の前記品種の生産順序を作成する生産順序作成部と、を備える、生産計画作成装置。」に訂正するものであって、
生産計画作成装置が「グループ作成部」をさらに備えることを限定するとともに、「生産順序作成部」が「グループ作成部」によってグルーピングされた「グループに関する情報に基づいて」複数の品種の生産順序を作成することを具体的に限定するように訂正するものであるから、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の有無について
本件特許の明細書の段落【0042】~【0046】、【0051】~【0053】、【0059】~【0061】には、図8、図9(a)、図10について、それぞれ上記(1)イ(ア)~(ウ)に示した事項が記載されており(特に「グループ作成部22a」及び「生産順序作成部21c」に関する記載を参照。)、訂正事項2は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであるから、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項2は、上記アのとおり、本件訂正前の請求項9において特定されていた事項を具体的に限定するように訂正するものであるから、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
エ 独立特許要件について
本件特許異議の申立ては、請求項1、9、16を対象としているので、訂正事項2に関して、請求項9については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
一方、請求項10~15は、請求項9の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあって、訂正事項2によって記載が訂正される請求項9に連動して訂正されるところ、請求項10~15は特許異議の申立てがされておらず、かつ、訂正事項2は上記アのとおり「特許請求の範囲の減縮」を訂正の目的とするものであるため、独立特許要件を満たす必要がある。そして、以下の(ア)~(ウ)のとおり、請求項10~15については、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。
(ア)特許法第29条第1項第3号について
下記の第6の2、第7の2(2)に示すとおり、請求項9に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当するとはいえないことから、請求項9の記載を引用する請求項10~15に係る発明についても同様に、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当するとはいえない。
(イ)特許法第29条第2項について
下記の第7の1(2)、2(3)に示すとおり、請求項9に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえないことから、請求項9の記載を引用する請求項10~15に係る発明についても同様に、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。
(ウ)その他について
また、他に請求項10~15について、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、請求項10における「前記生産ラインのそれぞれについて、割り当てられた複数の前記品種の製品共通度に基づいて複数の前記品種をグルーピングするグループ作成部」と記載されているのを、
「前記生産ラインのそれぞれについて、割り当てられた複数の前記品種の製品共通度に基づいて複数の前記品種をグルーピングする前記グループ作成部」に訂正するものであって、
訂正事項2によって請求項9に「グループ作成部」を備えることが特定されたことに伴い、請求項9における「グループ作成部」と、請求項9を引用する請求項10における「グループ作成部」との関係を明確にするために、「前記」を付すものであるから、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ 新規事項の有無について
本件特許の明細書の段落【0042】~【0046】、【0051】~【0053】、【0059】~【0061】には、図8、図9(a)、図10について、それぞれ上記(1)イ(ア)~(ウ)に示した事項が記載されており(特に「グループ作成部22a」に関する記載を参照。)、訂正事項3は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであるから、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項3は、上記アのとおり、本件訂正前の請求項10において特定されていた「グループ作成部」について、訂正事項2により請求項9において新たに追加された「グループ作成部」との関係を明確にするものであるから、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
エ 独立特許要件について
訂正事項3は、特許異議の申立てがされていない請求項10~15を訂正の対象とするものの、上記アのとおり「明瞭でない記載の釈明」を訂正の目的とするものであるから、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
<請求項16について>
(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、請求項16における「前記生産ラインのそれぞれについて、割り当てられた複数の前記品種の生産順序を作成し」と記載されているのを、
「前記生産ラインのそれぞれについて、割り当てられた複数の前記品種のグループを作成し、グループに関する情報に基づいて複数の前記品種の生産順序を作成し」に訂正するものであるから、訂正事項1と同様に(上記(1)ア)、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の有無について
本件特許の明細書の段落【0042】~【0046】、【0051】~【0053】、【0059】~【0061】には、図8、図9(a)、図10について、それぞれ上記(1)イ(ア)~(ウ)に示した事項が記載されており、訂正事項4は、訂正事項1と同様に本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであるから、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項4は、上記アのとおり、本件訂正前の請求項16において特定されていた事項を具体的に限定するように訂正するものであるから、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
エ 独立特許要件について
本件特許異議の申立ては、請求項1、9、16を対象としているので、請求項16を訂正の対象とする訂正事項4については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
4 小括
上記3(1)~(4)のとおり、訂正事項1~4に係る本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定、並びに、同法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
よって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項〔1~8〕、〔9~15〕、16について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正は認められることから、本件特許の請求項1~16に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明16」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~16に記載された、以下の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
生産設備を備えた複数の生産ラインにより複数の品種の製品を生産する生産計画を作成する生産計画作成方法であって、
生産量、生産納期を含む生産する品種の情報と複数の前記生産ラインが備えた生産設備の情報とから、複数の前記品種のそれぞれを生産するのに要する概算サイクルタイムを前記生産ライン毎に算出し、
算出した複数の前記概算サイクルタイムと前記生産する品種の情報とに基づいて、複数の前記生産ラインのそれぞれに前記生産ラインで生産される前記品種を割り当てて、
前記生産ラインのそれぞれについて、割り当てられた複数の前記品種のグループを作成し、グループに関する情報に基づいて複数の前記品種の生産順序を作成する、生産計画作成方法。
【請求項2】
前記生産ラインのそれぞれについて、割り当てられた複数の前記品種の製品共通度に基づいて複数の前記品種をグルーピングし、
そのグルーピングにおける前記生産設備の構成を決定する、請求項1に記載の生産計画作成方法。
【請求項3】
決定した前記生産設備の構成において、前記グルーピングした複数の前記品種をそれぞれ生産するのに要するサイクルタイムを算出し、
算出したサイクルタイムに基づいて、前記生産計画を更新する、請求項2に記載の生産計画作成方法。
【請求項4】
前記生産ラインにおいて、前記生産設備の構成を次の品種用に変更する切り替え時間を算出し、
算出した前記切り替え時間に基づいて、前記生産計画を更新する、請求項2または3に記載の生産計画作成方法。
【請求項5】
更新された前記生産計画に対する評価指標値を算出し、
前記評価指標値が所定値を上回るように、前記品種の割り当てを他の生産ラインに変更し、
前記評価指標値は、時間毎の作業者の必要数である、請求項3または4に記載の生産計画作成方法。
【請求項6】
前記評価指標値が所定値を上回るように、前記品種の生産開始時間を変更する、請求項5に記載の生産計画作成方法。
【請求項7】
更新された前記生産計画において、納期遅延となる品種がある場合は、
納期遅延となる前記品種の割り当てを他の生産ラインに変更する、請求項3または4に記載の生産計画作成方法。
【請求項8】
前記生産設備は基板に半田を堆積させる印刷装置または半田が堆積された前記基板に部品を実装ヘッドで実装する部品実装装置である、請求項1から7のいずれかに記載の生産計画作成方法。
【請求項9】
生産設備を備えた複数の生産ラインにより複数の品種の製品を生産する生産計画を作成する生産計画作成装置であって、
生産量、生産納期を含む生産する品種の情報と複数の前記生産ラインが備えた生産設備の情報とから、複数の前記品種のそれぞれを生産するのに要する概算サイクルタイムを前記生産ライン毎に算出する概算サイクルタイム算出部と、
算出した複数の前記概算サイクルタイムと前記生産する品種の情報とに基づいて、複数の前記生産ラインのそれぞれに前記生産ラインで生産される前記品種を割り当てる生産ライン割り当て部と、
前記生産ラインのそれぞれについて、割り当てられた複数の前記品種に基づいて複数の前記品種をグルーピングするグループ作成部と、
前記生産ラインのそれぞれについて、割り当てられた複数の前記品種のグループに関する情報に基づいて複数の前記品種の生産順序を作成する生産順序作成部と、を備える、生産計画作成装置。
【請求項10】
さらに、前記生産ラインのそれぞれについて、割り当てられた複数の前記品種の製品共通度に基づいて複数の前記品種をグルーピングする前記グループ作成部と、
そのグルーピングにおける前記生産設備の構成を決定する設備構成決定部と、を備える、請求項9に記載の生産計画作成装置。
【請求項11】
さらに、決定した前記生産設備の構成において、前記グルーピングした複数の前記品種をそれぞれ生産するのに要するサイクルタイムを算出するサイクルタイム算出部と、
算出したサイクルタイムに基づいて、前記生産計画を更新する生産計画更新部と、を備える、請求項10に記載の生産計画作成装置。
【請求項12】
さらに、前記生産ラインにおいて、前記生産設備の構成を次の品種用に変更する切り替え時間を算出する切り替え時間算出部と、
算出した前記切り替え時間に基づいて、前記生産計画を更新する生産計画更新部と、を備える、請求項10に記載の生産計画作成装置。
【請求項13】
さらに、更新された前記生産計画に対する評価指標値を算出する評価指標値算出部と、
前記評価指標値が所定値を上回るように、前記品種の割り当てを他の生産ラインに変更する割り当て変更部と、を備え、
前記評価指標値は、時間毎の作業者の必要数である、請求項10から12のいずれかに記載の生産計画作成装置。
【請求項14】
さらに、前記生産計画における納期遅延となる品種の有無を判定する遅延判定部と、
前記品種の割り当てを他の生産ラインに変更する割り当て変更部と、を備え、
更新された前記生産計画において、納期遅延となる品種がある場合は、
前記割り当て変更部は、納期遅延となる前記品種の割り当てを他の生産ラインに変更する、請求項10から12のいずれかに記載の生産計画作成装置。
【請求項15】
前記生産設備は基板に半田を堆積させる印刷装置または半田が堆積された前記基板に部品を実装ヘッドで実装する部品実装装置である、請求項9から14のいずれかに記載の生産計画作成装置。
【請求項16】
生産設備を備えた複数の生産ラインにより複数の品種の製品を生産する生産方法であって、
生産量、生産納期を含む生産する品種の情報と複数の前記生産ラインが備えた生産設備の情報とから、複数の前記品種のそれぞれを生産するのに要する概算サイクルタイムを前記生産ライン毎に算出し、
算出した複数の前記概算サイクルタイムと前記生産する品種の情報とに基づいて、複数の前記生産ラインのそれぞれに前記生産ラインで生産される前記品種を割り当てて、
前記生産ラインのそれぞれについて、割り当てられた複数の前記品種のグループを作成し、グループに関する情報に基づいて複数の前記品種の生産順序を作成し、
作成した前記生産順序に基づいて、複数の前記品種の製品を生産する、生産方法。」
第4 申立人が主張する申立ての理由の概要
1 申立書における申立ての理由について
申立人による申立ての理由は、以下のとおり整理することができる。
<新規性(特許法第29条第1項第3号、同法第113条第2号)について>
(1)申立ての理由1:請求項1、9、16
甲第1号証に記載された発明を主引用発明とした、新規性欠如(申立書第2、4、5、6、9~20、38ページ)
(2)申立ての理由2:請求項1、9、16
甲第2号証に記載された発明を主引用発明とした、新規性欠如(申立書第3、5、6、20~29、38ページ)
(3)申立ての理由3:請求項1、9、16
甲第3号証に記載された発明を主引用発明とした、新規性欠如(申立書第4、5、6、30~38ページ)
<進歩性(特許法第29条第2項、同法第113条第2号)について>
(4)申立ての理由4:請求項1、9、16
甲第1号証に記載された発明を主引用発明とした、進歩性欠如(申立書第2、4、5、6、9~20、38ページ)
(5)申立ての理由5:請求項1、9、16
甲第2号証に記載された発明を主引用発明とした、進歩性欠如(申立書第3、5、6、20~29、38ページ)
(6)申立ての理由6:請求項1、9、16
甲第3号証に記載された発明を主引用発明とした、進歩性欠如(申立書第4、5、6、30~38ページ)
2 申立人意見書にて主張する申立ての理由
<申立ての理由7:請求項1、9、16>
甲第1号証に記載された発明(主引用発明)、及び、甲第2号証、甲第3号証に記載された事項に基づく、進歩性欠如(申立人意見書第2~5ページ)
3 申立人による証拠方法
甲第1号証:国際公開第2015/019500号
甲第2号証:特開2007-34429号公報
甲第3号証:特開2011-13880号公報
(以下、「甲第1号証」等を「甲1」等という。)
第5 当審より通知した取消理由の概要
取消理由通知における、本件訂正前の請求項1、9、16に係る特許に対する取消理由の要旨は、上記第4の1(1)に対応する、次のとおりである。
<取消理由:新規性>
本件特許の本件訂正前の請求項1、9、16に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当するから、本件訂正前の請求項1、9、16に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
第6 本件発明1、9、16に対する取消理由の有無について
本件発明1、9、16について、取消理由通知にて示した取消理由(甲1記載の事項から認定した主引用発明に基づく新規性欠如、上記第4の申立ての理由1及び第5)を解消しているかについて、以下判断する。
1 本件発明1について
(1)本件発明1の認定
本件発明1は、上記第3の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。
(2)甲1に記載された発明
ア 甲1には、以下の事項が記載されている(下線は当審にて付した、以下同様。)。
「課題を解決するための手段
[0006] 本明細書で開示される管理方法は、複数の生産ラインを有する電子部品装着システムに適用される。本明細書で開示される管理方法は、複数のジョブグループのなかで、予定終了時刻が最も遅くなるジョブグループを、複数の生産ラインのなかの1つに優先的に割り付けること、を備える。予定終了時刻の遅い、即ち、装着作業に要する時間が長いジョブグループを生産ラインに優先的に割り付けると、割り付け作業が進むにつれて、装着作業に要する時間が短いジョブグループが残存する。装着作業に要する時間が短いジョブグループは、生産ラインの生産終了時刻を細かく調整することができる。このため、本明細書で開示される管理方法は、複数の生産ライン間の生産終了時刻を均一化することができる。
[0007] 本明細書で開示される管理装置は、複数の生産ラインを有する電子部品装着システムに適用される。本明細書で開示される管理装置は、複数のジョブグループのなかで、予定終了時刻が最も遅くなるジョブグループを、複数の生産ラインのなかの1つに優先的に割り付ける割付装置、を備える。割付装置が、予定終了時刻の遅い、即ち、装着作業に要する時間が長いジョブグループを生産ラインに優先的に割り付けると、割り付け作業が進むにつれて、装着作業に要する時間が短いジョブグループが残存する。割付装置は、装着作業に要する時間の短いジョブグループを用いて、生産ラインの生産終了時刻を細かく調整することができる。このため、本明細書で開示される管理装置は、複数の生産ライン間の生産終了時刻を均一化することができる。」
「発明を実施するための形態
[0009] 本明細書で開示される電子部品装着システムは、複数の生産ラインを有する。ここで、生産ラインの各々は、プリント基板を搬送し、そのプリント基板に複数の電子部品を装着するように構成されている。典型的には、生産ラインの各々は、はんだ印刷機、複数の電子部品装着機、基板外観検査機及びリフロー炉等を含む装着関連機を備えていてもよい。生産ラインを構成する装着関連機の種類、台数及び配置順序は、複数の生産ライン間で同一であってもよく、異なっていてもよい。生産ラインを構成する装着関連機の種類、台数及び配置順序は、その生産ラインがプリント基板に複数の電子部品を装着する作業の処理能力において重要である。このため、生産ラインを構成する装着関連機の種類、台数及び配置順序が複数の生産ライン間で異なる場合、ジョブグループの装着作業に要する時間は、生産ライン毎の処理能力に依存して異なる。ここで、ジョブとは、生産品目及び生産枚数についての生産条件を含む指令であり、必要に応じて他の生産条件(例えば、生産納期)を含んでいてもよい。また、ジョブグループとは、このようなジョブを少なくとも1つ以上含んだジョブの集合をいう。例えば、ジョブ「A」に指定されている生産品目に対応するプリント基板とジョブ「B」に指定されている生産品目に対応するプリント基板の各々に装着する電子部品の種類が概ね共通する場合、ジョブ「A」とジョブ「B」の装着作業をまとめて実行すれば、必要な電子部品を電子部品装着機にセットする作業(段取り作業ともいう)を省略することができる。このようなジョブ「A」とジョブ「B」が、ジョブグループを構成してもよい。」
「実施例
[0019] 図1に示されるように、電子部品装着システム1は、複数の生産ライン2及び複数の生産ライン2と通信可能なホストコンピュータ3を備える。電子部品装着システム1は、生産納期を順守しながら、複数の生産ライン2を利用してジョブグループを実行する。
[0020] 生産ライン2の各々は、プリント基板の搬送経路に沿って配置されている複数の装着関連機を備える。複数の装着関連機は、はんだ印刷機、複数の電子部品装着機、基板外観検査機及びリフロー炉を含む。生産ライン2は、搬送経路に沿ってプリント基板を搬送し、これらの装着関連機を利用して複数の電子部品をプリント基板に装着する。
[0021] ホストコンピュータ3は、複数の生産ライン2を総括制御する。ホストコンピュータ3の1つの機能は、ジョブグループをどの生産ライン2で行うかの割り付け作業を行うことである。この割付作業は、ホストコンピュータ3が有する割付装置が実行する。図2に示されるように、ホストコンピュータ3が有する割付装置100は、入力装置12、表示装置14及び管理装置20を備える。
[0022] 入力装置12は、ユーザインターフェースであり、例えば、マウス及びキーボードを有する。表示装置14は、ディスプレイを有しており、後述する生産順序計画データが表す生産順序計画をディスプレイに表示する。作業者は、必要に応じて、表示装置14のディスプレイに表示された生産順序計画を、入力装置12を介して修正することができる。
[0023] 管理装置20は、処理装置21及び記憶装置22を有する。処理装置21は、中央演算装置を有しており、記憶装置22に記憶されている複数のデータを所定のプログラムに沿って演算処理する。処理装置21は、特許請求の範囲に記載の特定処理部及び割付処理部を含む。
[0024] 管理装置20の記憶装置22は、ジョブグループデータ23、生産プログラムデータ24、パートデータ25、生産ライン能力データ26、予定終了時刻データ27及び生産順序計画データ28を記憶可能に構成されている。
[0025] ジョブグループデータ23は、生産納期、生産品目及び生産数量に係る情報を含むデータである。生産予定の複数のジョブグループの情報を、作業者が入力装置12を介して管理装置20に入力すると、ジョブグループデータ23が記憶装置22に記憶される。
[0026] 生産プログラムデータ24は、プリント基板に装着すべき複数の電子部品の種類とその個数及び各々の電子部品を装着すべきプリント基板上の位置に係る情報を含むデータであり、それらの情報が生産品目毎に特定されている。
[0027] パートデータ25は、電子部品装着機が電子部品を装着するときの動作条件に係る情報を含むデータであり、その情報が電子部品の種類毎に特定されている。
[0028] 生産ライン能力データ26は、生産ラインに配置されている装着関連機の種類、台数及び配置順序等に係る情報を含むデータであり、その情報が生産ライン毎に特定されている。
[0029] 予定終了時刻データ27は、ジョブグループを生産ラインに割り付けたと仮定したときに、そのジョブグループの装着作業が終了する予定の時刻に係る情報を含むデータであり、後述するように、生産順序計画データ28を作成するときに一時的に計算されるデータである。
[0030] 生産順序計画データ28は、ジョブグループをどの生産ラインでどのような順序で実行するかの情報を含むデータである。生産順序計画データ28は、管理装置20によって作成されるデータである。管理装置20は、後述する第1の割付方法又は第2の割付方法を実施することによって、生産順序計画データ28を作成(又は更新)する。
[0031] 以下では、管理装置20が、同一の生産納期の複数のジョブグープを生産ラインに割り付けるときに実行する割付方法について説明する。本実施例の管理装置20は、作業者の指示に基づいて、下記する第1の割付方法及び第2の割付方法のいずれかを、選択的に実行することができる。なお、他の実施形態として、管理装置20は、第1の割付方法と第2の割付方法の一方のみを実行可能であってもよい。」
「[0032](第1の割付方法)
先ず、第1の割付方法について説明する。図3に示されるように、ステップS11において、管理装置20の処理装置21は、ジョブグループデータ23、生産プログラムデータ24、パートデータ25及び生産ライン能力データ26に基づいて、予定終了時刻データ27を作成する。図4に、予定終了時刻データ27を表すテーブルを例示する。第1の割付方法で作成される予定終了時刻データ27は、ジョブグループを生産ラインに割り付けたと仮定したときに、そのジョブグループの装着作業が終了する予定の時刻を、ジョブグループと生産ラインの全ての組合せについて記述するデータである。例えば、ジョブグループ1を生産ライン1に割り付けた仮定した場合、予定終了時刻は次のように計算される。まず、処理装置21は、ジョブグループデータ23、生産プログラムデータ24、パートデータ25及び生産ライン能力データ26に基づいて、ジョブグループ1で指定されている装着作業を生産ライン1で実行したときに要する作業時間(サイクルタイムともいう)を計算する。次に、処理装置21は、生産ライン1が生産を開始することが可能な予定開始時刻に計算された作業時間を加算し、予定終了時刻T(1,1)を計算する。処理装置21は、このような計算をジョブグループと生産ラインの全ての組合せについて実行することで、予定終了時刻データ27を作成する。
[0033] 次に、ステップS12において、処理装置21は、ジョブグループの各々について、生産ライン毎に特定された予定終了時刻を早い順にソートする。ソート順の結果に基づいて、処理装置21は、ジョブグループの各々について、最も早い予定終了時刻とその生産ラインを特定する。これにより、処理装置21は、ジョブグループ毎に最優先の生産ラインを特定することができる。
[0034] 次に、ステップS13において、処理装置21は、ジョブグループ毎に特定された最も早い予定終了時刻を遅い順にソートする。ソート順の結果に基づいて、処理装置21は、ジョブグループ毎に特定された最も早い予定終了時刻のなかで最も遅い予定終了時刻に係るジョブグループとその生産ラインを特定する。
[0035] 次に、ステップS14において、処理装置21は、ステップS13で特定されたジョブグループとその生産ラインを割り付け、生産順序計画データ28に記述する。これにより、処理装置21は、作業時間が長いジョブグループを最優先の生産ラインに優先的に割り付けることができる。
[0036] 次に、ステップS15において、処理装置21は、ステップS14で割り付けられた生産ラインにおけるジョブグループ毎の予定終了時刻を再計算し、予定終了時刻を更新する。例えば、図5に示されるように、ステップS14でジョブグループ2が生産ラインbに割り付けられたとする。この場合、処理装置21は、ジョブグループ2についてのデータを予定終了時刻データ27のテーブルから削除し、生産ラインbにおけるジョブグループ2以外のジョブグループの予定終了時刻を再計算し、計算された予定終了時刻を更新する。このように、割り付けられた生産ラインについての予定終了時刻のみを再計算することで、割付作業の処理速度が向上する。
[0037] 次に、ステップS16において、処理装置21は、全てのジョブグループの割り付けが完了したか否かを判定する。全てのジョブグループの割り付けが完了していれば、割り付け作業が終了する。全てのジョブグループの割り付けが完了していなければ、ステップS12に戻る。
[0038] 上記したように、第1の割付方法は、ステップS12を行うことで、ジョブグループ毎に装着作業を最も早く完了できる最優先の生産ラインを特定することができる。このような最優先の生産ラインを割付対象の条件とすることで、第1の割付方法は、1つの生産ラインのみにジョブグループが割り付けられることを防止し、複数のジョブグループを複数の生産ライン間でバランスよく割り付けることができる。さらに、第1の割付方法は、ステップ13を行うことで、特定されたジョブグループと最優先の生産ラインの組合せのなかで予定終了時刻の最も遅いものを特定することができる。第1の割付方法は、ステップ14において、このようにして特定されたジョブグループと最優先の生産ラインの組合せを優先的に割り付けることができる。図6に、複数のジョブグループが生産ラインに割り付けられた様子を示す。ハッチングが施された矢印は、割付方法を実行するのに先立って割り付けが完了していたジョブグループを示す。ハッチングが施されていない矢印が、上記の割付方法で割り付けられたジョブグループを示す。図6に示されるように、上記の割付方法によれば、予定終了時刻の遅い、即ち、作業時間が長いジョブグループが最優先の生産ラインに優先的に割り付けられるので、割り付け作業が進むにつれて、作業時間が短いジョブグループが残存する。作業時間が短いジョブグループは、生産ラインの生産終了時刻を細かく調整することができる。このため、上記の割付方法は、複数の生産ライン間の生産終了時刻を均一化することができる。」
「[図3]
[図:0001417649000004.jpg]
[図4]
[図:0001417649000005.jpg]
[図5]
[図:0001417649000006.jpg]
[図6]
[図:0001417649000007.jpg]
」
イ 甲1発明1
上記アに示した甲1に記載された事項を、本件特許の請求項1の記載に合わせて整理すると、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明1」という。)が記載されている、といえる。
(括弧内には、甲1に記載された事項に対応する本件発明1の発明特定事項、又は、甲1の参照箇所を示す。以下同様。)
「装着関連機(生産設備)を備えた複数の生産ライン2(生産ライン、段落[0009]、[0020])により複数の生産品目(品種)のプリント基板(製品、段落[0009])を生産する生産順序計画データ28(生産計画、段落[0030])を作成する管理装置20による管理方法(生産計画作成方法、段落[0006]、[0021])であって、
生産枚数(生産量)、生産納期(生産納期)を含む生産する生産品目(品種)の生産条件を含む指令であるジョブを少なくとも1つ以上含んだ集合であるジョブグループを複数、ジョブグループデータ23として作成し(段落[0009]、[0025])、
ジョブグループデータ23及び生産プログラムデータ24(品種の情報、段落[0009]、[0025]~[0026])と複数の前記生産ライン2(前記生産ライン)が備えた装着関連機(生産設備)の生産ライン能力データ26(生産設備の情報、段落[0028])とから、複数の前記生産品目(前記品種)に関するジョブの集合であるそれぞれのジョブグループで指定される作業を実行(生産)するのに要するサイクルタイム(概算サイクルタイム、段落[0032])を前記生産ライン2(前記生産ライン)毎に算出し(段落[0032]、図4)、
算出した複数の前記サイクルタイム(概算サイクルタイム)と前記生産する生産品目(品種)の生産条件であるジョブグループデータ23及び生産プログラムデータ24(情報)とに基づいて、複数の前記生産ライン2(生産ライン)のそれぞれに前記生産ライン2(生産ライン)で生産される前記生産品目(品種)をジョブグループ単位で割り付けて(割り当てて、段落[0032]~[0038]及び図3のステップS14)、
前記生産ライン2(生産ライン)のそれぞれについて、ジョブグループ単位で割り付けられた(割り当てられた)複数の前記生産品目(品種)の生産順序を作成する(段落[0030]、[0032]~[0038]及び図3、図6)、管理装置20による管理方法(生産計画作成方法)。」
(3)対比
本件発明1と甲1発明1とを対比すると、以下の相違点1で相違し、その余の点で一致する。
<相違点1>
生産ラインに対する品種の割り当て、品種のグループの作成及び品種の生産順序の作成について、
本件発明1においては、
まず、「複数の品種のそれぞれを生産するのに要する概算サイクルタイム」を生産ライン毎に算出し、
次に、「算出した複数の概算サイクルタイムと生産する品種の情報」とに基づいて、複数の生産ラインのそれぞれに「生産ラインで生産される品種を割り当て」て、
そして、「生産ラインのそれぞれ」について、「割り当てられた複数の品種のグループを作成」し、
そのうえで「グループに関する情報に基づいて複数の品種の生産順序を作成」するのに対し、
甲1発明1においては、
まず、「生産品目の生産条件を含む指令であるジョブを少なくとも1つ以上含んだ集合であるジョブグループを複数、ジョブグループデータ23として作成」し、
次に、「それぞれのジョブグループで指定される作業を実行するのに要するサイクルタイム」を生産ライン2毎に算出し、
そのうえで、「算出した複数のサイクルタイムと生産する生産品目の生産条件であるジョブグループデータ23及び生産プログラムデータ24」とに基づいて、複数の生産ライン2のそれぞれに、「生産ライン2で生産される生産品目をジョブグループ単位で割り付け」て、「生産順序を作成」する点。(すなわち、本件発明1は、生産ラインに対して品種を割り当てた後に、品種のグループを作成して、グループに関する情報に基づいて品種の生産順序を作成するのに対して、甲1発明1は、品種のグループに相当するジョブグループを作成した後に、生産ラインに対してジョブグループを割り当てることで生産順序を作成している点。)
(4)小括
したがって、本件発明1と甲1発明1とは、上記相違点1で相違するため、本件発明1は、甲1発明1であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえず、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
2 本件発明9について
(1)本件発明9の認定
本件発明9は、上記第3の請求項9に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。
(2)甲1発明9
上記1(2)アに示した甲1に記載された事項を、本件特許の請求項9の記載に合わせて整理すると、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明9」という。)が記載されている、といえる。
「装着関連機(生産設備)を備えた複数の生産ライン2(生産ライン、段落[0009]、[0020])により複数の生産品目(品種)のプリント基板(製品、段落[0009])を生産する生産順序計画データ28(生産計画、段落[0030])を作成する管理装置20(生産計画作成装置、段落[0007]、[0021])であって、
生産枚数(生産量)、生産納期(生産納期)を含む生産する生産品目(品種)の生産条件を含む指令であるジョブを少なくとも1つ以上含んだ集合であるジョブグループを複数、ジョブグループデータ23として作成する機能(段落[0009]、[0025])、
ジョブグループデータ23及び生産プログラムデータ24(情報、段落[0009])と複数の前記生産ライン2(前記生産ライン)が備えた装着関連機(生産設備)の生産ライン能力データ26(情報、段落[0028])とから、複数の前記生産品目(品種)に関するジョブの集合であるそれぞれのジョブグループで指定される作業を実行(生産)するのに要するサイクルタイム(概算サイクルタイム、段落[0032])を前記生産ライン2(前記生産ライン)毎に算出する処理装置21の作業時間を計算する機能(概算サイクルタイム算出部、段落[0032]、図4)と、
算出した複数の前記サイクルタイム(概算サイクルタイム)と前記生産する生産品目(品種)の生産条件であるジョブグループデータ23及び生産プログラムデータ24(情報)とに基づいて、複数の前記生産ライン2(生産ライン)のそれぞれに前記生産ライン2(生産ライン)で生産される前記生産品目(品種)をジョブグループ単位で割り付ける(割り当てる)処理装置21の割り付け機能(生産ライン割り当て部、段落[0032]~[0038]及び図3のステップS14)と、
前記生産ライン2(生産ライン)のそれぞれについて、ジョブグループ単位で割り付けられた(割り当てられた)複数の前記生産品目(品種)の生産順序を作成する処理装置21の生産順序計画データ28に記述する機能(生産順序作成部、段落[0030]、[0032]~[0038]及び図3、図6)と、を備える、管理装置20(生産計画作成装置)。」
(3)対比
本件発明9と甲1発明9とを対比すると、以下の相違点2で相違し、その余の点で一致する。
<相違点2>
本件発明9においては、
「概算サイクルタイム算出部」は、「複数の品種のそれぞれを生産するのに要する概算サイクルタイム」を生産ライン毎に算出するものであり、
「生産ライン割り当て部」は、「算出した複数の概算サイクルタイムと生産する品種の情報」とに基づいて、複数の生産ラインのそれぞれに「生産ラインで生産される品種を割り当て」るものであり、
「グループ作成部」は、「生産ラインのそれぞれ」について、「割り当てられた複数の品種に基づいて複数の品種をグルーピング」するものであり、
「生産順序作成部」は、「グループに関する情報に基づいて複数の品種の生産順序を作成」するのに対し、
甲1発明9においては、
「処理装置21の作業時間を計算する機能」は、「複数の前記生産品目に関するジョブの集合であるそれぞれのジョブグループで指定される作業を実行するのに要するサイクルタイム」を生産ライン2毎に算出するものであり、
「処理装置21の割り付け機能」は、「算出した複数のサイクルタイムと生産する生産品目(品種)の生産条件であるジョブグループデータ23及び生産プログラムデータ24」とに基づいて、複数の生産ライン2のそれぞれに「生産ライン2で生産される前記生産品目(品種)をジョブグループ単位で割り付け」るものであり、
「ジョブグループデータ23として作成する機能」は、(各生産ライン2に割り当てる前に)「生産品目の生産条件を含む指令であるジョブを少なくとも1つ以上含んだ集合であるジョブグループを複数作成」するものであり、
「処理装置21の生産順序計画データ28に記述する機能」は、「ジョブグループ単位で割り付けられた複数の生産品目の生産順序を作成」するものである点。
(4)小括
したがって、本件発明9と甲1発明9とは、上記相違点2で相違するため、本件発明9は、甲1発明9であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえず、本件特許の請求項9に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
3 本件発明16について
(1)本件発明16の認定
本件発明16は、上記第3の請求項16に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。
(2)甲1発明16
甲1には、管理装置20による管理方法に係る甲1発明1(上記1(2)イ参照)により作成された生産順序計画データ28(生産計画、段落[0030])に基づいて、電子部品装着システム1(段落[0019]~[0020])における、装着関連機を備えた複数の生産ライン2において、プリント基板に複数の電子部品を装着することで複数の生産品目のプリント基板を生産する工程についても示唆されていることは、明らかである(甲1発明1に、複数の生産品目のプリント基板を生産する工程を加えた、生産方法に係る発明を、以下「甲1発明16」という。)。
(3)対比
本件発明16と甲1発明16とを対比すると、上記1(3)に示した相違点1と同様の点(以下「相違点3」という。)で相違する。
(4)小括
したがって、本件発明16と甲1発明16とは、上記相違点3で相違するため、本件発明16は、甲1発明16であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえず、本件特許の請求項16に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
4 小括
以上のとおり、本件特許の請求項1、9、16に係る特許は、取消理由通知にて示した取消理由によって取り消すことはできない。
第7 取消理由通知で採用しなかった申立ての理由について
申立人による申立ての理由1~7(上記第4の1~2)のうち、上記第6にて検討した以外の、その他の申立ての理由2~7について、以下検討する。
検討にあたっては、事案に鑑み、甲1に記載された甲1発明1、甲1発明9又は甲1発明16をそれぞれ主引用発明とした、本件発明1、本件発明9又は本件発明16の進歩性(申立ての理由4及び7)を先に検討する。
1 甲1に記載された発明を主引用発明とした、進歩性欠如(申立ての理由4、申立書第2、4、5、6、9~20、38ページ)、並びに、甲1に記載された発明、及び、甲2、甲3に記載された事項に基づく、進歩性欠如(申立ての理由7、申立人意見書第2~5ページ)
(1)本件発明1についての判断
本件発明1と甲1発明1とを対比した際の、上記第6の1(3)に示した相違点1について検討する。
ア 相違点1を要すると、複数の生産ラインにより複数の品種の製品を生産する生産計画を作成するにあたり、
本件発明1は、複数の品種のそれぞれについて、概算サイクルタイムを算出し、生産ラインに割り当てたうえで、生産ラインのそれぞれについて、複数の品種をグルーピングし、グループに関する情報に基づいて複数の品種の生産順序を作成するのに対し、
甲1発明1は、複数の生産品目に係るジョブの集合であるジョブグループを先に作成したうえで、ジョブグループのそれぞれについて、サイクルタイムを算出し、ジョブグループデータ23に基づいて生産ラインに割り付けて、生産順序を作成するものである点で相違する、ということができる。
イ 甲1発明1を本件発明1のように改変することの容易想到性について検討する。
甲1には、段落[0009](上記第6の1(2)ア)に、
「生産ラインを構成する装着関連機の種類、台数及び配置順序が複数の生産ライン間で異なる場合、ジョブグループの装着作業に要する時間は、生産ライン毎の処理能力に依存して異なる。」
「ジョブグループとは、このようなジョブを少なくとも1つ以上含んだジョブの集合をいう。例えば、ジョブ「A」に指定されている生産品目に対応するプリント基板とジョブ「B」に指定されている生産品目に対応するプリント基板の各々に装着する電子部品の種類が概ね共通する場合、ジョブ「A」とジョブ「B」の装着作業をまとめて実行すれば、必要な電子部品を電子部品装着機にセットする作業(段取り作業ともいう)を省略することができる。」
と記載され、また、段落[0006]に、
「本明細書で開示される管理方法は、複数のジョブグループのなかで、予定終了時刻が最も遅くなるジョブグループを、複数の生産ラインのなかの1つに優先的に割り付けること、を備える。」と記載される。
すなわち、甲1発明1は、段取り作業を省略するように、作業が共通するジョブを予めジョブグループとして複数作成したうえで、その複数のジョブグループを、複数の生産ラインのなかの1つに割り付けることで生産順序を作成することを特徴とするものである、といえる。
してみると、甲1発明1において、予めジョブグループを複数作成することに代えて、本件発明1のように、複数の生産品目のそれぞれのジョブについて、サイクルタイムを算出し、品種の生産時間に偏りが生じないように(本件明細書等の段落【0041】)生産ラインに割り当てた後に、ジョブの集合であるジョブグループを作成し、グループに関する情報に基づいて品種の生産順序を作成するように、あえて変更することには阻害要因がある、といえる。
したがって、甲1発明1に基づいて本件発明1を想到することは、当業者にとって容易であるということはできない。
ウ また、甲2、甲3には、申立人が申立書及び申立人意見書にて主張する記載箇所(甲2:段落【0019】~【0022】、【0029】~【0032】、【0045】~【0047】、甲3:【請求項1】、【0002】、【0030】、【0049】~【0059】)を参照しても、本件発明1のような「先に、複数の品種のそれぞれについて、概算サイクルタイムを算出し、生産ラインに割り当てて、その後に、生産ラインのそれぞれについて、複数の品種をグルーピングし、グループに関する情報に基づいて複数の品種の生産順序を作成する」点については、記載も示唆もされていない。
そのため、甲1発明1に甲2又は甲3に記載された技術的事項を仮に適用したとしても、本件発明1を想到することは、当業者にとって容易であるということはできない。
(2)本件発明9、16についての判断
本件発明9と甲1発明9とを対比した際の、上記第6の2(3)に示した相違点2、及び、本件発明16と甲1発明16とを対比した際の、上記第6の3(3)に示した相違点3について検討する。
上記(1)と同様の理由により、甲1発明9又は甲1発明16に基づいて本件発明9又は本件発明16を想到することは、当業者にとって容易であるということはできず、また、甲1発明9又は甲1発明16に、甲2又は甲3に記載された技術的事項を仮に適用したとしても、本件発明9又は本件発明16を想到することは、当業者にとって容易であるということはできない。
2 甲2又は甲3に記載された発明を主引用発明とした、新規性欠如(申立ての理由2及び3)及び進歩性欠如(申立ての理由5及び6)
(1)本件発明1と、甲2又は甲3に記載された発明とを対比すると、少なくとも上記1(1)ウに示した本件発明1の事項を備えていない点で相違するから、本件発明1は、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえない。
(2)また、本件発明9、16についても、上記(1)と同様に、甲2又は甲3に記載された発明とは、少なくとも上記1(1)ウに示した事項と同様の事項を備えていない点で相違するから、本件発明9、16は、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえない。
(3)さらに、上記(1)~(2)における相違点は、甲1~甲3のいずれにも記載された事項であるとはいえないことから、本件発明1、9、16は、甲2に記載された発明又は甲3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである、ともいうことができない。
3 小括
以上のとおり、本件発明1、9、16は、甲1に記載された発明を主引用発明として、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず(申立ての理由4)、また、甲1に記載された発明及び甲2、甲3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない(申立ての理由7)から、本件特許の請求項1、9、16に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
また、本件発明1、9、16は、甲2に記載された発明又は甲3に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえず、本件特許の請求項1、9、16に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるとはいえない(申立ての理由2及び3)。
さらに、本件発明1、9、16は、甲2に記載された発明又は甲3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから、本件特許の請求項1、9、16に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるともいえない(申立ての理由5及び6)。
第8 むすび
以上のとおり、本件特許の請求項1、9、16に係る特許は、取消理由通知に示した取消理由(上記第6を参照。)、又は、申立書及び申立人意見書に記載された申立ての理由(上記第7を参照。)によっては、取り消すことはできない。
また、本件特許の請求項1、9、16に係る特許を取り消すべき他の理由も発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700150