特許異議申立
2021-701145
データ処理装置、データ処理方法およびデータ処理プログラム
- 審判番号
- 2021-701145
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-507544
- 登録番号
- 6937961
- 請求日
- 2021年12月06日
- 審決日
- 2023年07月13日
- 公報発行日
- 2023年10月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】三菱電機株式会社
- 【権利者代理人】高村 順
- 【異議申立人】榊原 令子
- 審判長/審判官
- 審判長 刈間 宏信
- 審判官 大山 健
- 審判官 田々井 正吾
- 分類
- P1652.121-YAA(G05B) / P1652.113-YAA(G05B) / P1652.856-YAA(G05B) / P1652.851-YAA(G05B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条の2
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6937961号発明「データ処理装置、データ処理方法およびデータ処理プログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6937961号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕、6、7について訂正することを認める。
特許第6937961号の請求項1~4、6~7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6937961号の請求項1~7に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)8月26日を国際出願日とする出願であって、令和3年9月2日にその特許権の設定登録がされ、同年9月22日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1~4、6~7に係る特許に対して、特許異議の申立て(以下「本件特許異議申立て」という。)があり、次のとおりに手続が行われた。
令和3年12月 6日 :特許異議申立人榊原 令子(以下「申立人」という。)による請求項1~4、6~7に係る特許に対する本件特許異議の申立て
令和4年 6月16日付け:取消理由を通知
令和4年 7月28日 :面接審理
令和4年 8月19日 :特許権者三菱電機株式会社(以下「特許権者」という。)による訂正(以下「第1回訂正」という。)の請求と意見書の提出
令和4年 8月24日付け:申立人へ第1回訂正が請求された旨の通知
令和4年 9月27日 :申立人による意見書(以下「申立人意見書」という。)の提出
令和4年11月24日付け:取消理由(決定の予告)を通知
令和5年 1月26日 :特許権者による訂正(以下「本件訂正」という。)の請求と意見書の提出
令和5年 2月14日付け:訂正拒絶理由を通知
令和5年 3月20日 :特許権者による本件訂正の訂正請求書に記載した請求の理由、及び同請求書に添付した訂正特許請求の範囲を補正する手続補正書の提出と意見書の提出
令和5年 3月23日付け:申立人へ本件訂正が請求された旨の通知
なお、上記令和5年3月23日付けの通知に対して、指定した期間内に申立人から意見書の提出はなかった。
また、第1回訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否
1 一群の請求項〔1~5〕に係る訂正
(1)訂正事項
令和5年3月20日の手続補正により補正された本件訂正のうち、一群の請求項〔1~5〕に係る訂正事項は、次のア~イのとおりである。
ア 訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の記載を、「生産設備が稼働中に発生する振動の観測データを収集する観測データ収集部と、前記観測データを、当該観測データの波形に基づいて設定され、かつ前記生産設備が実行する一連の動作のそれぞれに対応する区間ごとに、時間軸上で区分し、前記生産設備の稼働状況を判定する単位である管理項目ごとの複数の分析対象データを生成するデータ区分部と、前記分析対象データのそれぞれを分析して前記管理項目の特徴を示す特徴データを抽出する特徴データ抽出部と、前記生産設備の稼働状況を判定するための学習モデルを前記特徴データに基づいて前記管理項目ごとに生成する学習モデル生成部と、前記学習モデル生成部で生成された前記管理項目ごとの学習モデルと、前記観測データ収集部により新たに収集された観測データとに基づいて、前記生産設備の前記管理項目ごとの稼働状況を判定する観測データ判定部と、前記観測データ判定部による前記管理項目ごとの稼働状況の判定結果を出力するデータ出力部と、を備えることを特徴とするデータ処理装置。」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。)
イ 訂正事項2
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項5の記載を、「生産設備が稼働中に発生する振動の観測データを収集する観測データ収集部と、前記観測データを前記生産設備が実行する一連の動作のそれぞれに基づいて時間軸上で区分し、前記生産設備の稼働状況を判定する単位である管理項目ごとの複数の分析対象データを生成するデータ区分部と、前記分析対象データのそれぞれを分析して前記管理項目の特徴を示す特徴データを抽出する特徴データ抽出部と、前記生産設備の稼働状況を判定するための学習モデルを前記特徴データに基づいて前記管理項目ごとに生成する学習モデル生成部と、前記学習モデル生成部で生成された前記管理項目ごとの学習モデルと、前記観測データ収集部により新たに収集された観測データとに基づいて、前記生産設備の前記管理項目ごとの稼働状況を判定する観測データ判定部と、前記観測データ判定部による前記管理項目ごとの稼働状況の判定結果を出力するデータ出力部と、を備え、前記観測データ判定部は、前記観測データ収集部が収集した観測データを複製して前記管理項目ごとの学習モデルと同じ数の観測データを生成し、生成した観測データのそれぞれと前記管理項目ごとの学習モデルのそれぞれとに基づいて前記生産設備の前記管理項目ごとの稼働状況を判定する、ことを特徴とするデータ処理装置。」に訂正する。
(2)一群の請求項
本件訂正前の請求項1~5について、請求項2~5は請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであるから、本件訂正前の請求項1~5に対応する本件訂正後の請求項1~5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
なお、本件訂正により請求項1との引用関係が解消される請求項5について、別の訂正単位とする求めはされていない。
(3)訂正要件
ア 訂正事項1
(ア)訂正の目的
訂正事項1に係る訂正は、本件訂正前の請求項1に「前記観測データを前記生産設備が実行する一連の動作のそれぞれに基づいて時間軸上で区分し、前記生産設備の稼働状況を判定する単位である管理項目ごとの複数の分析対象データを生成するデータ区分部」と記載されているのを、「前記観測データを、当該観測データの波形に基づいて設定され、かつ前記生産設備が実行する一連の動作のそれぞれに対応する区間ごとに、時間軸上で区分し、前記生産設備の稼働状況を判定する単位である管理項目ごとの複数の分析対象データを生成するデータ区分部」に訂正するものであって、「観測データ」を「時間上で区分」する態様について限定し、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項1に係る訂正は、上記(ア)のとおり特許請求の範囲を減縮するものであって、カテゴリーや対象、目的の変更を伴うものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(ウ)新規事項
訂正事項1に関し、請求項1に記載したデータ区分部について、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)の段落【0017】には「観測データを区分する区間の設定は、例えば、ユーザが行う。ユーザが区間を設定する場合、データ区分部12は、観測データ記憶部11から読み出した観測データを、横軸に時間、縦軸に振幅を設定し、図3に示すような形式で表示操作部13に表示する。図3は、表示操作部13が表示する画面の一例を示す図である。図3は、ユーザによる区間の設定のための操作が行われた後の画面表示例であり、具体的には、観測データ記憶部11から読み出された観測データの波形に対し、ユーザが、「スタート」、「A動作」、「B動作」、「C動作」、「D動作」および「完了動作」の各区間を設定した場合の画面表示例である。」との記載がされている。また、段落【0036】には「データ区分部12が、ユーザからの指示に従い、観測データを、データ取得元の生産設備2が実行する一連の動作それぞれに対応する区間ごとの観測データである分析対象データに分ける。」との記載がされ、段落【0037】には「生産設備2の稼働中に得られた観測データの波形と、生産設備2での動作手順とをデータ処理装置1が表示操作部13に表示し、ユーザは、観測データの波形と操作手順とを比較し、観測データの波形の形状的特徴に基づいて、生産設備2が実行する一連の動作それぞれに対応する区間を設定する。」との記載がされている。
これらの記載から、データ区分部12について、ユーザが観測データの波形の形状的特徴に基づいて、生産設備2が実行する一連の動作のそれぞれ(管理項目)に対応する区間を設定し、観測データをこの区間ごとに区分し、複数の分析対象データとして生成して、図3に示す横軸に時間、縦軸に振幅を設定した形式で表示操作部13に表示することが把握されるから、訂正事項1で訂正される「前記観測データを、当該観測データの波形に基づいて設定され、かつ前記生産設備が実行する一連の動作のそれぞれに対応する区間ごとに、時間軸上で区分し、前記生産設備の稼働状況を判定する単位である管理項目ごとの複数の分析対象データを生成するデータ区分部」は、本件明細書等に記載した事項であるといえる。
したがって、上記訂正事項1に係る訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
(エ)独立特許要件
本件訂正前の請求項1~4について特許異議申立てがされているから、訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
イ 訂正事項2
(ア)訂正の目的
訂正事項2に係る訂正は、本件訂正前に請求項1の記載を引用する請求項5を、請求項1の記載を引用しない請求項にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に掲げる他の請求項を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
(イ)特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項2に係る訂正は、上記(ア)のとおり、本件訂正前の請求項1を引用する請求項5について、請求項1との引用関係を解消するものであるから、カテゴリーや対象、目的の変更を伴うものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(ウ)新規事項
訂正事項2に係る訂正は、上記(ア)のとおり、本件訂正前の請求項1を引用する請求項5について、請求項1との引用関係を解消するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることが明らかであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
(エ)独立特許要件
訂正事項2に係る訂正は、上記(ア)のとおり、本件訂正前の請求項1を引用する請求項5について、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に掲げる請求項1との引用関係を解消することを目的とするから、訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
2 請求項6に係る訂正
令和5年3月20日の手続補正により補正された本件訂正のうち、請求項6に係る訂正事項は、次のとおりである。
(1)訂正事項3
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項6の記載を、「データ処理装置が生産設備から出力されるデータを処理するデータ処理方法であって、前記生産設備が稼働中に発生する振動の観測データを収集する観測データ収集ステップと、前記観測データを、当該観測データの波形に基づいて設定され、かつ前記生産設備が実行する一連の動作のそれぞれに対応する区間ごとに、時間軸上で区分し、前記生産設備の稼働状況を判定する単位である管理項目ごとの複数の分析対象データを生成するデータ区分ステップと、前記分析対象データのそれぞれを分析して前記管理項目の特徴を示す特徴データを抽出する特徴データ抽出ステップと、前記生産設備の稼働状況を判定するための学習モデルを前記特徴データに基づいて前記管理項目ごとに生成する学習モデル生成ステップと、前記学習モデル生成ステップで生成した前記管理項目ごとの学習モデルと、前記観測データ収集ステップで新たに収集した観測データとに基づいて、前記生産設備の前記管理項目ごとの稼働状況を判定する観測データ判定ステップと、前記観測データ判定ステップにおける前記管理項目ごとの稼働状況の判定結果を出力する出力ステップと、を含むことを特徴とするデータ処理方法。」に訂正する。
(2)訂正事項3の訂正要件
訂正事項3に係る訂正は、本件訂正前の請求項6に「前記観測データを前記生産設備が実行する一連の動作のそれぞれに基づいて時間軸上で区分し、前記生産設備の稼働状況を判定する単位である管理項目ごとの複数の分析対象データを生成するデータ区分ステップ」と記載されているのを、「前記観測データを、当該観測データの波形に基づいて設定され、かつ前記生産設備が実行する一連の動作のそれぞれに対応する区間ごとに、時間軸上で区分し、前記生産設備の稼働状況を判定する単位である管理項目ごとの複数の分析対象データを生成するデータ区分ステップ」に訂正するものであって、「観測データ」を「時間上で区分」する態様について限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、また、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
そして、この訂正事項3に係る「データ区分ステップ」と、上記訂正事項1に係る「データ区分部」とは、「前記観測データを、当該観測データの波形に基づいて設定され、かつ前記生産設備が実行する一連の動作のそれぞれに対応する区間ごとに、時間軸上で区分」することの内容が同じであるから、訂正事項1と同様に、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
また、本件訂正前の請求項6について特許異議申立てがされているから、訂正事項3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3 請求項7に係る訂正
令和5年3月20日の手続補正により補正された本件訂正のうち、請求項7に係る訂正事項は、次のとおりである。
(1)訂正事項4
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項7の記載を、「生産設備が稼働中に発生する振動の観測データを収集する観測データ収集ステップと、前記観測データを、当該観測データの波形に基づいて設定され、かつ前記生産設備が実行する一連の動作のそれぞれに対応する区間ごとに、時間軸上で区分し、前記生産設備の稼働状況を判定する単位である管理項目ごとの複数の分析対象データを生成するデータ区分ステップと、前記分析対象データのそれぞれを分析して前記管理項目の特徴を示す特徴データを抽出する特徴データ抽出ステップと、前記生産設備の稼働状況を判定するための学習モデルを前記特徴データに基づいて前記管理項目ごとに生成する学習モデル生成ステップと、前記学習モデル生成ステップで生成した前記管理項目ごとの学習モデルと、前記観測データ収集ステップで新たに収集した観測データとに基づいて、前記生産設備の前記管理項目ごとの稼働状況を判定する観測データ判定ステップと、前記観測データ判定ステップにおける前記管理項目ごとの稼働状況の判定結果を出力する出力ステップと、をコンピュータに実行させることを特徴とするデータ処理プログラム。」に訂正する。
(2)訂正事項4の訂正要件
訂正事項4に係る訂正は、本件訂正前の請求項7に「前記観測データを前記生産設備が実行する一連の動作のそれぞれに基づいて時間軸上で区分し、前記生産設備の稼働状況を判定する単位である管理項目ごとの複数の分析対象データを生成するデータ区分ステップ」と記載されているのを、「前記観測データを、当該観測データの波形に基づいて設定され、かつ前記生産設備が実行する一連の動作のそれぞれに対応する区間ごとに、時間軸上で区分し、前記生産設備の稼働状況を判定する単位である管理項目ごとの複数の分析対象データを生成するデータ区分ステップ」に訂正するものであって、「観測データ」を「時間上で区分」する態様について限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、また、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
そして、この訂正事項4に係る「データ区分ステップ」と、上記訂正事項1に係る「データ区分部」とは、「前記観測データを、当該観測データの波形に基づいて設定され、かつ前記生産設備が実行する一連の動作のそれぞれに対応する区間ごとに、時間軸上で区分」することの内容が同じであるから、訂正事項1と同様に、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
また、本件訂正前の請求項7について特許異議申立てがされているから、訂正事項4に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
4 小括
したがって、上記の訂正事項1~4に係る訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書各号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕、6、7について訂正することを認める。(なお、訂正後に請求項1との引用関係が解消される請求項5について、別の訂正単位とする求めはされていない。)
第3 本件特許発明
第2のとおり、本件訂正の請求は認められたから、特許異議が申し立てられた本件訂正後の請求項1~4、6~7に係る発明は、令和5年3月20日提出の手続補正書により補正された訂正特許請求の範囲の請求項1~4,6~7に記載した以下の事項により特定されるとおりのものである。(以下、本件請求項1に係る発明を「本件特許発明1」、同様に本件請求項2~4、6~7に係る発明を「本件特許発明2」~「本件特許発明4」、「本件特許発明6」~「本件特許発明7」という。また、本件特許発明1~4、6~7をまとめて「本件特許発明」ということがある。)
1 本件特許発明1~4
「【請求項1】
生産設備が稼働中に発生する振動の観測データを収集する観測データ収集部と、
前記観測データを、当該観測データの波形に基づいて設定され、かつ前記生産設備が実行する一連の動作のそれぞれに対応する区間ごとに、時間軸上で区分し、前記生産設備の稼働状況を判定する単位である管理項目ごとの複数の分析対象データを生成するデータ区分部と、
前記分析対象データのそれぞれを分析して前記管理項目の特徴を示す特徴データを抽出する特徴データ抽出部と、
前記生産設備の稼働状況を判定するための学習モデルを前記特徴データに基づいて前記管理項目ごとに生成する学習モデル生成部と、
前記学習モデル生成部で生成された前記管理項目ごとの学習モデルと、前記観測データ収集部により新たに収集された観測データとに基づいて、前記生産設備の前記管理項目ごとの稼働状況を判定する観測データ判定部と、
前記観測データ判定部による前記管理項目ごとの稼働状況の判定結果を出力するデータ出力部と、
を備えることを特徴とするデータ処理装置。
【請求項2】
前記観測データ判定部は、前記管理項目を前記生産設備が実行したか否かを示す情報と、前記生産設備が実行した管理項目の発生時刻の情報とを含む判定結果を生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記管理項目のそれぞれは、前記生産設備が実行する一連の動作の中の1つの動作を示す、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記特徴データ抽出部は、前記生産設備で動作異常が発生した時の特徴データを抽出し、
前記学習モデル生成部は、前記特徴データ抽出部で抽出された、前記生産設備で動作異常が発生した時の特徴データに基づいて、前記生産設備の動作異常を検出するための学習モデルを生成する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載のデータ処理装置。」
2 本件特許発明6
「【請求項6】
データ処理装置が生産設備から出力されるデータを処理するデータ処理方法であって、
前記生産設備が稼働中に発生する振動の観測データを収集する観測データ収集ステップと、
前記観測データを、当該観測データの波形に基づいて設定され、かつ前記生産設備が実行する一連の動作のそれぞれに対応する区間ごとに、時間軸上で区分し、前記生産設備の稼働状況を判定する単位である管理項目ごとの複数の分析対象データを生成するデータ区分ステップと、
前記分析対象データのそれぞれを分析して前記管理項目の特徴を示す特徴データを抽出する特徴データ抽出ステップと、
前記生産設備の稼働状況を判定するための学習モデルを前記特徴データに基づいて前記管理項目ごとに生成する学習モデル生成ステップと、
前記学習モデル生成ステップで生成した前記管理項目ごとの学習モデルと、前記観測データ収集ステップで新たに収集した観測データとに基づいて、前記生産設備の前記管理項目ごとの稼働状況を判定する観測データ判定ステップと、
前記観測データ判定ステップにおける前記管理項目ごとの稼働状況の判定結果を出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とするデータ処理方法。」
3 本件特許発明7
「【請求項7】
生産設備が稼働中に発生する振動の観測データを収集する観測データ収集ステップと、
前記観測データを、当該観測データの波形に基づいて設定され、かつ前記生産設備が実行する一連の動作のそれぞれに対応する区間ごとに、時間軸上で区分し、前記生産設備の稼働状況を判定する単位である管理項目ごとの複数の分析対象データを生成するデータ区分ステップと、
前記分析対象データのそれぞれを分析して前記管理項目の特徴を示す特徴データを抽出する特徴データ抽出ステップと、
前記生産設備の稼働状況を判定するための学習モデルを前記特徴データに基づいて前記管理項目ごとに生成する学習モデル生成ステップと、
前記学習モデル生成ステップで生成した前記管理項目ごとの学習モデルと、前記観測データ収集ステップで新たに収集した観測データとに基づいて、前記生産設備の前記管理項目ごとの稼働状況を判定する観測データ判定ステップと、
前記観測データ判定ステップにおける前記管理項目ごとの稼働状況の判定結果を出力する出力ステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とするデータ処理プログラム。」
第4 当審の取消理由(決定の予告)の通知に記載した取消理由について
1 通知した取消理由の概要
(1)令和4年6月16日付け取消理由通知で通知し、第1回訂正で解消していない取消理由(進歩性)
第1回訂正に係る特許発明2は、甲1発明、甲8記載の技術的事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、第1回訂正に係る特許発明2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(2)令和4年11月24日付け取消理由通知(決定の予告)で新たに通知した取消理由(進歩性)
第1回訂正に係る特許発明1、6~7は、甲1発明、及び、周知技術(例えば、参考資料2、職権により提示する文献1~2)に基づいて、第1回訂正に係る特許発明3~4は、甲1発明、甲8記載の技術的事項、及び、周知技術(例えば、参考資料2、職権により提示する文献1~2)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、第1回訂正に係る特許発明1、3~4、6~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
2 証拠
甲第1号証:特許第6156566号公報(以下、「甲1」といい、他の甲第○号証も同様に「甲○」という。)
甲8 :特開2019-160250号公報
参考資料2:国際公開第2019/013224号(以下「参2」という。)
職権により提示する文献1:特開2010-79820号公報(以下「文献1」という。)
職権により提示する文献2:特開2003-199451号公報(以下「文献2」という。)
3 甲1の記載及び甲1発明
ア 甲1の記載事項
(ア)甲1には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付した。以下同様。)
a 「【0017】
センサ211は、加工機200の動作に応じて変化する物理量を検知し、検知情報(センサデータ)を出力する検知部である。センサ211の種類、および、検知する物理量はどのようなものであってもよい。例えば、センサ211を、マイク、加速度センサ、または、AE(アコースティックエミッション)センサとし、それぞれ、音響データ、加速度データ、または、AE波を示すデータを検知情報としてもよい。また、センサ211の個数は任意である。同一の物理量を検知する複数のセンサ211を備えてもよいし、相互に異なる物理量を検知する複数のセンサ211を備えてもよい。」
b 「【0026】
図4は、診断装置100の機能構成の一例を示すブロック図である。図4に示すように、診断装置100は、上述の通信制御部101および判定部102に加え、受付部103と、特徴抽出部104と、生成部105と、記憶部111と、を備えている。」
c 「【0031】
通信制御部101は、受信部101aと、送信部101bと、を備えている。受信部101aは、加工機200などの外部装置から送信された各種情報を受信する。例えば受信部101aは、加工機200の現在の動作に対応するコンテキスト情報と、センサ211により送信された検知情報と、を受信する。送信部101bは、外部装置に対して各種情報を送信する。
【0032】
特徴抽出部104は、モデルの生成、および、判定部102による判定で用いる特徴情報(特徴量)を、検知情報から抽出する。特徴情報は、検知情報の特徴を示す情報であればどのような情報であってもよい。例えば検知情報がマイクにより集音された音響データである場合、特徴抽出部104は、エネルギー、周波数スペクトル、および、MFCC(メル周波数ケプストラム係数:Mel-Frequency Cepstrum Coefficients)などの特徴量を抽出してもよい。
【0033】
生成部105は、正常動作時の検知情報から抽出された特徴情報を用いた学習により、正常動作を判定するためのモデルを作成する。モデルを外部装置で生成する場合は、生成部105は備えなくてもよい。生成部105は、モデルが定められていないコンテキスト情報と、当該コンテキスト情報に対応する検知情報が入力された場合に、この検知情報から抽出された特徴情報を用いて、当該コンテキスト情報に対応するモデルを生成してもよい。」
d 「【0035】
判定部102は、受信部101aにより受信された検知情報と、受信されたコンテキスト情報に対応するモデルと、を用いて、加工機200の動作の状態を判定する。加工機200の動作の状態とは、例えば加工機200の動作が正常であるか否かなどを表す。例えば、判定部102は、特徴抽出部104に対して検知情報からの特徴情報の抽出を依頼する。判定部102は、検知情報から抽出された特徴情報が正常であることの尤もらしさを示す尤度を、対応するモデルを用いて算出する。判定部102は、尤度と、予め定められた閾値とを比較し、例えば尤度が閾値以上である場合に、加工機200の動作は正常であると判定する。また、判定部102は、尤度が閾値未満である場合に、加工機200の動作は異常であると判定する。工具213の状態に応じて特徴量が変化していくことから、加工機200の動作の状態の判定は、工具213の摩耗レベルのような指標を判定することも含む。」
e 「【0042】
特徴抽出部104は、受信された検知情報から特徴情報を抽出する(ステップS103)。判定部102は、抽出された特徴情報と、受信されたコンテキスト情報に対応するモデルとを用いて、加工機200が正常に動作しているか否かを判定する(ステップS104)。判定部102は、判定結果を出力する(ステップS105)。判定結果の出力方法はどのような方法であってもよい。判定部102は、例えば診断装置100がディスプレイなどの表示装置を備える場合、この表示装置に判定結果を表示してもよい。判定部102が、サーバ装置およびパーソナルコンピュータなどの外部装置に判定結果を出力してもよい。」
f 「【0044】
受信部101aは、加工機200から送信されたコンテキスト情報を受信する(ステップS201)。受信部101aは、加工機200から送信された検知情報(センサデータ)を受信する(ステップS202)。
【0045】
このように受信されたコンテキスト情報および検知情報が、モデルの生成に利用される。モデルはコンテキスト情報ごとに生成されるため、検知情報は、対応するコンテキスト情報に関連付けられる必要がある。このため、例えば受信部101aは、受信した検知情報を、同じタイミングで受信したコンテキスト情報と対応づけて記憶部111等に記憶させる。各情報を記憶部111等に一旦記憶し、正常時の情報であることを確認し、正常時の情報のみを用いてモデルを生成してもよい。すなわち、正常であるとラベルづけされた検知情報を用いてモデルを生成してもよい。
【0046】
正常であるか否かの確認(ラベルづけ)は、情報を記憶部111等に記憶した後の任意のタイミングで実行してもよいし、加工機200を動作させながらリアルタイムに実行してもよい。ラベルづけを実行せず、情報が正常であると仮定してモデルを生成してもよい。正常であると仮定した情報が実際は異常であった情報であった場合は、生成されたモデルにより正しく判定処理が実行されなくなる。異常と判定される頻度などによりこのような状況であるかを判断でき、誤って生成されたモデルを削除するなどの対応を取ることができる。また異常であった情報から生成されたモデルを、異常であることを判定するモデルとして利用してもよい。」
g 「【0049】
図8は、例えば、ある部品を加工する工程の一部についてのモデル生成処理、および、診断処理を示す。モデル生成処理では、コンテキスト情報701とともに受信された複数の検知情報(図8では検知情報711a~711c)が利用される。なお検知情報の個数は3に限られるものではなく、任意の個数とすることができる。
【0050】
コンテキスト情報701は、加工工程が、4つのモータ(モータA、モータB、モータC、モータD)を駆動する動作を含むことを示している。特徴抽出部104は、受信された検知情報から特徴情報を抽出する。生成部105は、各モータに対応するコンテキスト情報ごとに、対応する検知情報から抽出された特徴情報を用いてモデルを生成する。生成されたモデルは、記憶部111などに記憶される。図8では、モータBが駆動される場合のコンテキスト情報に対して生成されたモデル(「モータB」)が記憶部111に記憶された例が示されている。記憶されたモデルは、その後の診断処理で参照される。
【0051】
診断処理では、モデル生成処理と同様に、コンテキスト情報701とともに、検知情報721が受信される。コンテキスト情報が「モータBが駆動されていること」を示す場合、判定部102は、例えばこのコンテキスト情報が受信された期間に受信された検知情報と、記憶部111に記憶されているモデル「モータB」とを用いて、加工機200の動作が正常であるか否かを判定する。」
h 【図4】
[図:0001402726000001.jpg]
i 【図8】
[図:0001402726000002.jpg]
(イ)甲1の上記記載から、以下の事項が理解できる。
a 【0026】、【0031】の記載、及び、図4から、診断装置100は、受信部101aと、記憶部111と、特徴抽出部104と、生成部105と、判定部102とを備えること。
b 【0017】、【0044】、【0049】の記載から、受信部101aは、加工機200の動作に応じて変化する音響データを検知情報711a~711cとして受信すること。
c 【0045】、【0049】~【0051】の記載、及び、図8から、記憶部111に、検知情報711a~711cを、同じタイミングで受信したコンテキスト情報701が示すモータの種類ごとに、モータAが駆動されている期間、モータBが駆動されている期間、モータCが駆動されている期間、モータDが駆動されている期間に対応づけて記憶させること。
d 【0032】、【0045】~【0046】、【0049】~【0050】の記載、及び、図8から、特徴抽出部104は、コンテキスト情報701ごとに対応づけて記憶させた検知情報711a~711cのうち加工機200の異常時の情報から特徴情報を抽出すること。
e 【0033】、【0045】~【0046】、【0050】の記載、及び、図8から、生成部105は、加工機200の異常を判定するための学習モデルを、特徴情報を用いて、コンテキスト情報701ごとに生成すること。
f 【0035】、【0046】、【0050】~【0051】の記載、及び、図8から、判定部102は、生成部105で生成されたコンテキスト情報701ごとの学習モデルと、受信部101aより受信された検知情報721とを用いて、コンテキスト情報701ごとに加工機200の異常を判定すること。
g 【0042】の記載から、判定部102は、コンテキスト情報701ごとに異常の判定結果を出力すること。
イ 甲1発明
上記ア(ア)~(イ)を総合すると、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「加工機200の動作に応じて変化する音響データを検知情報711a~711cとして受信する受信部101aと、
検知情報711a~711cを、同じタイミングで受信した、コンテキスト情報701が示すモータの種類ごとに、モータAが駆動されている期間、モータBが駆動されている期間、モータCが駆動されている期間、モータDが駆動されている期間に対応づけて記憶させる記憶部111と、
コンテキスト情報701が示すモータの種類ごとに対応づけて記憶させた検知情報711a~711cのうち加工機200の異常時の情報から特徴情報を抽出する特徴抽出部104と、
加工機200の異常を判定するための学習モデルを、特徴情報を用いて、コンテキスト情報701が示すモータの種類ごとに生成する生成部105と、
生成部105で生成されたコンテキスト情報701が示すモータの種類ごとの学習モデルと、受信部101aより受信された検知情報721とを用いて、コンテキスト情報701が示すモータの種類ごとに加工機200の異常を判定するとともに、
コンテキスト情報701が示すモータの種類ごとに異常の判定結果を出力する判定部102と、
を備える診断装置100。」
4 本件特許発明1~4、6~7の進歩性について
当審の取消理由(決定の予告)の通知に記載した進歩性に係る取消理由(上記1(1)及び(2))により、本件特許発明1~4、6~7に係る特許が取り消されるべきものであるかを検討する。
(1)本件特許発明1の進歩性について
ア 本件特許発明1と甲1発明の対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「加工機200」は、本件特許発明1の「生産設備」に相当する。
また、甲1発明の「検知情報711a~711c」は、音響データであるところ、本件特許明細書の段落【0011】に「・・・ここでの振動とは、音および機械振動である。・・・」と記載されていることから、本件特許発明1の「振動の観測データ」に相当し、同様に「受信する」は「収集する」に相当する。
さらに、甲1発明の「検知情報711a~711c」は、「加工機200」の動作に応じて変化することから、「加工機200」の動作時に発生するものであることは明らかである。
したがって、甲1発明の「加工機200の動作に応じて変化する音響データを検知情報711a~711cとして受信する受信部101a」は、本件特許発明1の「生産設備が稼働中に発生する振動の観測データを収集する観測データ収集部」に相当する。
(イ)a 甲1発明の「検知情報711a~711cを、同じタイミングで受信した、コンテキスト情報701が示すモータの種類ごとに、モータAが駆動されている期間、モータBが駆動されている期間、モータCが駆動されている期間、モータDが駆動されている期間に対応づけて記憶させる」ことについて、「モータAが駆動されている期間・・・モータDが駆動されている期間」は、生産設備に相当する「加工機200」によって実行されるから、甲1発明のこれらの期間は、本件特許発明1の「生産設備が実行する一連の動作のそれぞれに対応する区間ごとに、時間軸上で区分」されたものということができ、甲1発明の「検知情報711a~711c」は、コンテキスト情報701に基づいて、時間軸上で区分されているということができる。
b また、甲1発明は、「コンテキスト情報701が示すモータの種類ごとに」、「モータAが駆動されている期間」等の各期間における加工機200の異常を判定するところ、甲1発明の「加工機200の異常」は、本件特許発明1の「生産設備の稼働状況」に相当するから、甲1発明の「コンテキスト情報701が示すモータの種類」は、本件特許発明1の「生産設備の稼働状況を判定する単位である管理項目」に相当する。
c そして、甲1発明において、「検知情報711a~711cを、同じタイミングで受信した、コンテキスト情報701が示すモータの種類ごとに、モータAが駆動されている期間、・・・モータDが駆動されている期間に対応づけて記憶させる」ことは、観測データに相当する検知情報711a~711c(上記a)を、生産設備の稼働状況を判定する単位である管理項目に相当するコンテキスト情報701が示すモータの種類(上記b)に基づいて、生産設備が実行する一連の動作のそれぞれに対応する区間ごとに、時間軸上の区分(上記a)と対応付けて記憶させているといえるから、本件特許発明1の「前記観測データを、」「前記生産設備が実行する一連の動作のそれぞれに対応する区間ごとに、時間軸上で区分し、前記生産設備の稼働状況を判定する単位である管理項目ごとの複数の分析対象データを生成する」ことに相当する。
d 上記a~cをまとめると、甲1発明の「検知情報711a~711cを、同じタイミングで受信した、コンテキスト情報701が示すモータの種類ごとに、モータAが駆動されている期間、モータBが駆動されている期間、モータCが駆動されている期間、モータDが駆動されている期間に対応づけて記憶させる記憶部111」と、本件特許発明1の「前記観測データを、当該観測データの波形に基づいて設定され、かつ前記生産設備が実行する一連の動作のそれぞれに対応する区間ごとに、時間軸上で区分し、前記生産設備の稼働状況を判定する単位である管理項目ごとの複数の分析対象データを生成するデータ区分部」は、「前記観測データを、前記生産設備が実行する一連の動作のそれぞれに対応する区間ごとに、時間軸上で区分し、前記生産設備の稼働状況を判定する単位である管理項目ごとの複数の分析対象データを生成するデータ区分部」という点に限り、一致する。
(ウ)上記(イ)cから、甲1発明の「コンテキスト情報701が示すモータの種類ごとに対応づけて記憶させた検知情報711a~711c」は、本件特許発明1の「前記分析対象データ」に相当するということができる。
また、甲1発明における「特徴情報」は、コンテキスト情報701が示すモータの種類ごとに対応づけて記憶させた検知情報711a~711cのうち加工機200の異常時の情報から抽出したものであり、コンテキスト情報701における特徴を示していることは明らかであるから、本件特許発明1の「管理項目の特徴を示す特徴データ」に相当する。
そうすると、甲1発明の「コンテキスト情報701が示すモータの種類ごとに対応づけて記憶させた検知情報711a~711cのうち加工機200の異常時の情報から特徴情報を抽出する」ことは、本件特許発明1の「前記分析対象データのそれぞれを分析して前記管理項目の特徴を示す特徴データを抽出する」ことに相当する。
したがって、甲1発明の「特徴抽出部104」は、本件特許発明1の「特徴データ抽出部」に相当する。
(エ)甲1発明の「加工機200の異常を判定するための学習モデル」は、本件特許発明1の「前記生産設備の稼働状況を判定するための学習モデル」に相当することは明らかであるから、甲1発明の「加工機200の異常を判定するための学習モデルを、特徴情報を用いて、コンテキスト情報701が示すモータの種類ごとに生成する生成部105」は、本件特許発明1の「前記生産設備の稼働状況を判定するための学習モデルを前記特徴データに基づいて前記管理項目ごとに生成する学習モデル生成部」に相当する。
(オ)甲1発明の「受信部101aより受信された検知情報721」は、本件特許発明1の「前記観測データ収集部により新たに収集された観測データ」に相当する。
したがって、甲1発明の「判定部102」が、「生成部105で生成されたコンテキスト情報701が示すモータの種類ごとの学習モデルと、受信部101aより受信された検知情報721とを用いて、コンテキスト情報701が示すモータの種類ごとに加工機200の異常を判定する」ことは、本件特許発明1の「観測データ判定部」が、「前記学習モデル生成部で生成された前記管理項目ごとの学習モデルと、前記観測データ収集部により新たに収集された観測データとに基づいて、前記生産設備の前記管理項目ごとの稼働状況を判定する」ことに相当する。
(カ)甲1発明の「異常の判定結果」は、本件特許発明1の「稼働状況の判定結果」に相当する。
したがって、甲1発明の「判定部102」が、「コンテキスト情報701が示すモータの種類ごとに異常の判定結果を出力する」ことは、本件特許発明1の「データ出力部」が、「前記管理項目ごとの稼働状況の判定結果を出力する」ことに相当する。
(キ)甲1発明における「判定部102」は、「生成部105で生成されたコンテキスト情報701が示すモータの種類ごとの学習モデルと、受信部101aより受信された検知情報721とを用いて、コンテキスト情報701が示すモータの種類ごとに加工機200の異常を判定するとともに、コンテキスト情報701が示すモータの種類ごとに異常の判定結果を出力する」が、上記(オ)、(カ)を踏まえると、甲1発明の「判定部102」は、本件特許発明1の「観測データ判定部」及び「データ出力部」に相当する。
(ク)甲1発明における「診断装置100」は、本件特許発明1の「データ処理装置」に想到する。
イ 一致点及び相違点
したがって、本件特許発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(ア)一致点
「生産設備が稼働中に発生する振動の観測データを収集する観測データ収集部と、
前記観測データを、前記生産設備が実行する一連の動作のそれぞれに対応する区間ごとに、時間軸上で区分し、前記生産設備の稼働状況を判定する単位である管理項目ごとの複数の分析対象データを生成するデータ区分部と、
前記分析対象データのそれぞれを分析して前記管理項目の特徴を示す特徴データを抽出する特徴データ抽出部と、
前記生産設備の稼働状況を判定するための学習モデルを前記特徴データに基づいて前記管理項目ごとに生成する学習モデル生成部と、
前記学習モデル生成部で生成された前記管理項目ごとの学習モデルと、前記観測データ収集部により新たに収集された観測データとに基づいて、前記生産設備の前記管理項目ごとの稼働状況を判定する観測データ判定部と、
前記観測データ判定部による前記管理項目ごとの稼働状況の判定結果を出力するデータ出力部と、
を備えるデータ処理装置。」
(イ)相違点
データ区分部に関して、観測データを区分する区間が、本件特許発明1では「観測データの波形」に基づいて設定されるのに対して、甲1発明では検知情報711a~711cの波形に基づいて設定されるかどうか不明な点。
(2)相違点の判断
本件特許発明1は、生産設備2で生じる音および機械振動の「観測データの波形」の形状に基づいて、観測データを一連の動作(A動作、B動作、C動作等)のそれぞれに対応する区間に区分するものである。
これに対して、甲1発明は、音響データを受信するのと同じタイミングで受信するコンテキスト情報が示すモータの種類に基づいて、音響データを、各モータが駆動されている期間に対応付けて記憶するものである。
したがって、本件特許発明1と甲1発明が取得したデータは、いずれも時間軸上で区間ごとに区分されるものであるが、前者の区間は、機械振動の波形の形状に依拠したものであるのに対して、後者の区間は、駆動しているモータの種類を示すコンテキスト情報を受信することに依拠したものである。
そのため、本件特許発明1は、観測データを収集するだけで、観測データの区分を行うことができるのに対して、甲1発明は、音響データを受信するだけでは、音響データの区分を行うことができず、音響データと同じタイミングでコンテキスト情報を受信する必要があることから、本件特許発明1と、甲1発明では、観測データの区分についての技術的意義が根本的に異なる。
そして、このような観測データの区分に関し、周知技術を例示する文献として引用した参2、文献1、及び文献2についてみても、「観測データの波形」に基づいて区間を設定し、観測データを区間ごとに区分することは記載されておらず、示唆もされていない。
さらに、甲8を含む他の甲号証や参考文献にも、取得した観測データを区分する区間を「観測データの波形」に基づいて設定することについて、記載も示唆もされていない。
よって、本件特許発明1が、甲1発明、及び、周知技術(参2、文献1~文献2)、並びに他の各甲号証や申立人が引用した参考文献の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件特許発明2~4の進歩性について
請求項2~4は、いずれも請求項1を引用する引用形式請求項であって、本件特許発明2~4は、それぞれ、本件特許発明1に対してさらに発明特定事項を追加したものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1発明、及び、周知技術(参2、文献1~2)、並びに他の各甲号証や申立人が引用した参考文献の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)本件特許発明6の進歩性について
本件特許発明6は、実質的に、データ処理装置である本件特許発明1をデータ処理方法の発明として表現したものであるところ、本件特許発明6は、本件特許発明1と同様に、「前記観測データを、当該観測データの波形に基づいて設定され、かつ前記生産設備が実行する一連の動作のそれぞれに対応する区間ごとに、時間軸上で区分」することが特定されている。
したがって、本件特許発明6と甲1発明とは、上記(1)イ(イ)の相違点と同様の点で相違し、当該相違点についての判断は、上記(2)の説示と同様であるから、本件特許発明6は、甲1発明及び周知技術、並びに他の各甲号証や申立人が引用した参考文献の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(5)本件特許発明7の進歩性について
本件特許発明7は、実質的に、データ処理装置である本件特許発明1をデータ処理プログラムとして表現したものであるところ、本件特許発明7は、本件特許発明1と同様に、「前記観測データを、当該観測データの波形に基づいて設定され、かつ前記生産設備が実行する一連の動作のそれぞれに対応する区間ごとに、時間軸上で区分」することが特定されている。
したがって、本件特許発明7と甲1発明とは、上記(1)イ(イ)の相違点と同様の点で相違し、当該相違点についての判断は、上記(2)の説示と同様であるから、本件特許発明7は、甲1発明及び周知技術、並びに他の各甲号証や申立人が引用した参考文献の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
5 小括
以上のとおりであるから、令和4年11月24日付け取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由(上記1(1)及び(2))により、本件請求項1~4、6~7に係る特許を取り消すことはできない。
第5 取消理由として採用しなかった特許異議申立理由
1 採用しなかった特許異議申立理由の概要
(1)(進歩性)本件請求項1、3、6~7に係る発明は、甲8発明、及び周知技術(甲9~11)に記載された発明に基いて、本件請求項2に係る発明は、甲8発明、及び周知技術(甲5~7、甲9~11)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1~3、6~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)(拡大先願)本件請求項1~3、6~7に係る発明は、甲12の出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲、又は図面に記載された発明と同一であるから、本件請求項1~3、6~7に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。
2 申立人が提出した証拠
申立人が提出した証拠のうち、取消理由で引用していないものは、以下のとおりである。
甲2:特開2019-185434号公報
甲3:特開2019-67102号公報
甲4:特開2018-176296号公報
甲5:特開2020-77216号公報
甲6:特開2020-64487号公報
甲7:特開2003-58230号公報
甲9:特開2019-159728号公報
甲10:特開2019-67136号公報
甲11:特開2019-49940号公報
甲12:特願2019-204669号(特開2021-77205号)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面
参考資料1:特開2020-107001号公報
3 特許異議申立理由[上記1(1)の理由(進歩性)]の検討
(1)本件特許発明1
本件特許発明1と甲8に記載された発明を対比すると、少なくとも上記第4の4(1)イ(イ)の相違点と同様の点で相違し、当該相違点についての判断は、上記第4の4(2)の説示と同様であるから、本件特許発明1は、甲8に記載された発明及び周知技術(甲5~7、甲9~11)、並びに他の各甲号証や申立人が引用した参考文献の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)本件特許発明2~3、6~7
本件特許発明2~3は、いずれも本件特許発明1を引用するものであるから、本件特許発明1と同様に、「前記観測データを、当該観測データの波形に基づいて設定され、かつ前記生産設備が実行する一連の動作のそれぞれに対応する区間ごとに、時間軸上で区分」することが特定されている。
また、本件特許発明6~7は、本件特許発明1と同様に、「前記観測データを、当該観測データの波形に基づいて設定され、かつ前記生産設備が実行する一連の動作のそれぞれに対応する区間ごとに、時間軸上で区分」することが特定されている。
したがって、本件特許発明2~3、6~7と甲8に記載された発明とは、上記第4の4(1)イ(イ)の相違点と同様の点で相違するから、本件特許発明2~3、6~7は、本件発明1と同様に、甲8に記載された発明及び周知技術(甲5~7、甲9~11)、並びに他の各甲号証や申立人が引用した参考文献の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)したがって、本件特許発明1~3、6~7は、上記理由1(1)には該当しない。
4 特許異議申立理由[上記1(2)の理由(拡大先願)]の検討
(1)本件特許発明1
本件特許発明1と甲12の出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲、又は図面に記載された発明を対比すると、少なくとも上記第4の4(1)イ(イ)の相違点と同様の点で相違するから、本件特許発明1は、甲12の出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲、又は図面に記載された発明と同一とはいえない。
(2)本件特許発明2~3、6~7
本件特許発明2~3は、いずれも本件特許発明1を引用するものであるから、本件特許発明1と同様に、「前記観測データを、当該観測データの波形に基づいて設定され、かつ前記生産設備が実行する一連の動作のそれぞれに対応する区間ごとに、時間軸上で区分」することが特定されている。
また、本件特許発明6~7は、本件特許発明1と同様に、「前記観測データを、当該観測データの波形に基づいて設定され、かつ前記生産設備が実行する一連の動作のそれぞれに対応する区間ごとに、時間軸上で区分」することが特定されている。
したがって、本件特許発明2~3、6~7と甲12の出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲、又は図面に記載された発明と同一とはいえない。
(3)したがって、本件特許発明1~3、6~7は、上記理由1(2)には該当しない。
5 小括
よって、本件請求項1~3、6~7に係る特許は、取消理由として採用しなかった特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~4、6~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に、本件請求項1~4、6~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-701145