特許異議申立
2023-700661
加工結果評価装置、加工結果評価方法、加工条件決定装置、および加工条件決定方法
- 審判番号
- 2023-700661
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-560076
- 登録番号
- 7199616
- 請求日
- 2023年06月22日
- 審決日
- 2024年05月14日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】三菱電機株式会社
- 【権利者代理人】高村 順
- 【異議申立人】藤江 桂子
- 審判長/審判官
- 審判長 刈間 宏信
- 審判官 渋谷 善弘
- 審判官 大山 健
- 分類
- P1651.113-YAA(G05B) / P1651.121-YAA(G05B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7199616号発明「加工結果評価装置、加工結果評価方法、加工条件決定装置、および加工条件決定方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7199616号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕、〔7~8〕について訂正することを認める。
特許第7199616号の請求項1~2、4~7、9~12に係る特許を維持する。
特許第7199616号の請求項3及び8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
1 特許掲載公報の発行までの経緯
特許第7199616号(以下「本件特許」という。)の請求項1~12に係る特許についての出願は、2022年(令和4年)5月18日の国際出願であって、令和4年12月22日にその特許権の設定登録がされ、令和5年1月5日に特許掲載公報が発行された。
2 特許異議の申立て以降の経緯
本件特許についての特許異議の申立て以降の主な経緯は、次のとおりである。
(1)令和5年6月22日
特許異議申立人 藤江 桂子(以下「申立人」という。)による、本件特許の請求項1~12に係る特許に対する特許異議の申立て(申立てのために提出された特許異議申立書を、以下単に「申立書」という。)
(2)令和5年11月14日付け(発送日:11月16日)
特許権者 三菱電機株式会社(以下「特許権者」という。)に対し、取消しの理由(以下「取消理由」という。)の通知
(3)令和6年1月5日
特許権者による訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)及び意見書の提出
(4)令和6年1月23日付け(発送日:1月26日)
申立人に対し、訂正請求があった旨の通知書の通知
(5)令和6年2月15日
申立人による、意見書(以下「申立人意見書」という。)の提出
第2 本件訂正の適否
本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の適否について検討する。
1 本件訂正請求の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、本件特許の明細書、特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを求めるものである。
2 一群の請求項について
(1)請求項1~6
訂正前の請求項1~6について、請求項2~6は、直接的又は間接的に請求項1を引用しているものであって、本件訂正によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~6に対応する訂正後の請求項1~6は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(2)請求項7~8
訂正前の請求項7~8について、請求項8は、直接的に請求項7を引用しているものであって、本件訂正によって記載が訂正される請求項7に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項7~8に対応する訂正後の請求項7~8は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
3 独立特許要件
本件特許異議申立てにおいては、本件訂正前の全ての請求項1~12について特許異議申立てがされているので、本件訂正に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
4 一群の請求項1~6に係る訂正
(1)訂正の内容
ア 訂正事項1(下線は訂正箇所に付した。以下5において同じ。)
特許請求の範囲の請求項1における「前記サーボ制御模擬部は、前記位置情報を用いて前記駆動軸模擬部へのフィードバック制御を模擬し、前記加工結果評価部は、前記駆動軸模擬部へのフィードバック制御が模擬された場合の前記加工結果を評価する、」との記載を、「前記サーボ制御模擬部は、前記位置情報を用いて前記駆動軸模擬部へのフィードバック制御を模擬し、前記位置情報を前記数値制御模擬部に出力し、前記数値制御模擬部は、前記位置情報を用いて前記サーボ制御模擬部へのフィードバック制御を模擬し、前記加工結果評価部は、前記サーボ制御模擬部へのフィードバック制御および前記駆動軸模擬部へのフィードバック制御が模擬された場合の前記加工結果を評価する、」に訂正する。
イ 訂正事項2
明細書の段落[0007]に記載された「上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示の加工結果評価装置は、サーボ制御装置によって駆動される工作機械による加工の加工結果を評価する加工結果評価装置であって、サーボ制御装置を制御する数値制御装置の動作を模擬して工作機械が有する駆動軸への位置指令を算出し、算出した位置指令を出力する数値制御模擬部と、位置指令に基づいてサーボ制御装置の動作を模擬して駆動軸へのトルク指令を算出し、算出したトルク指令を出力するサーボ制御模擬部と、トルク指令に基づいて駆動軸の動作を模擬する駆動軸模擬部と、駆動軸の動作に対応する情報に基づいて加工結果を評価する加工結果評価部と、を備え、駆動軸模擬部は、駆動軸の動作を模擬することで得られた駆動軸の位置を示す位置情報をサーボ制御模擬部に出力し、サーボ制御模擬部は、位置情報を用いて駆動軸模擬部へのフィードバック制御を模擬し、加工結果評価部は、駆動軸模擬部へのフィードバック制御が模擬された場合の加工結果を評価する。」を「上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示の加工結果評価装置は、サーボ制御装置によって駆動される工作機械による加工の加工結果を評価する加工結果評価装置であって、サーボ制御装置を制御する数値制御装置の動作を模擬して工作機械が有する駆動軸への位置指令を算出し、算出した位置指令を出力する数値制御模擬部と、位置指令に基づいてサーボ制御装置の動作を模擬して駆動軸へのトルク指令を算出し、算出したトルク指令を出力するサーボ制御模擬部と、トルク指令に基づいて駆動軸の動作を模擬する駆動軸模擬部と、駆動軸の動作に対応する情報に基づいて加工結果を評価する加工結果評価部と、を備え、駆動軸模擬部は、駆動軸の動作を模擬することで得られた駆動軸の位置を示す位置情報をサーボ制御模擬部に出力し、サーボ制御模擬部は、位置情報を用いて駆動軸模擬部へのフィードバック制御を模擬し、位置情報を数値制御模擬部に出力し、数値制御模擬部は、位置情報を用いてサーボ制御模擬部へのフィードバック制御を模擬し、加工結果評価部は、サーボ制御模擬部へのフィードバック制御および駆動軸模擬部へのフィードバック制御が模擬された場合の加工結果を評価する。」に訂正する。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4における「ことを特徴とする請求項3に記載の加工結果評価装置。」との記載を、「ことを特徴とする請求項1に記載の加工結果評価装置。」に訂正する。
オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5における「ことを特徴とする請求項3に記載の加工結果評価装置。」との記載を、「ことを特徴とする請求項1に記載の加工結果評価装置。」に訂正する。
カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6における「ことを特徴とする請求項1から5の何れか1つに記載の加工結果評価装置。」との記載を、「ことを特徴とする請求項1,2,4,5の何れか1つに記載の加工結果評価装置。」に訂正する。
(2)一群の請求項について
訂正事項1~6は、上記2(1)のとおり一群の請求項である請求項1~6を訂正するものである。
(3)訂正要件の検討
ア 訂正事項1について
(ア)訂正の目的
訂正事項1は、本件訂正前(以下「訂正前」という。)の請求項1におけるサーボ制御模擬部、数値制御模擬部、および加工結果評価部の記載について「前記サーボ制御模擬部は、前記位置情報を用いて前記駆動軸模擬部へのフィードバック制御を模擬し、前記位置情報を前記数値制御模擬部に出力し、前記数値制御模擬部は、前記位置情報を用いて前記サーボ制御模擬部へのフィードバック制御を模擬し、前記加工結果評価部は、前記サーボ制御模擬部へのフィードバック制御および前記駆動軸模擬部へのフィードバック制御が模擬された場合の前記加工結果を評価する、」と訂正するものであって、サーボ制御模擬部、数値制御模擬部、および加工結果評価部を特定するために必要な事項を限定することで特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(ア)の理由から明らかなように、訂正事項1は、訂正前の請求項1を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、特許掲載公報の特許請求の範囲の請求項3に「前記サーボ制御模擬部は、前記位置情報を前記数値制御模擬部に出力し、前記数値制御模擬部は、前記位置情報を用いて前記サーボ制御模擬部へのフィードバック制御を模擬し、前記加工結果評価部は、前記サーボ制御模擬部へのフィードバック制御および前記駆動軸模擬部へのフィードバック制御が模擬された場合の前記加工結果を評価する、」と記載されている。
したがって、訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
イ 訂正事項2について
(ア)訂正の目的
訂正事項2は、訂正事項1に伴い願書に添付した明細書の段落【0007】の記載を訂正後の請求項1の記載と整合させるように見直すものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(ア)の通り、訂正事項2は、明瞭でない記載の釈明をするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(ウ)本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記(ア)の通り、訂正事項2は訂正後の請求項1の記載と整合させるように見直すものであるから、上記ア(ウ)と同様の理由により、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
(エ)明細書の訂正と関係する請求項についての説明
訂正事項2は、一群の請求項1~6に関係する訂正である。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項に適合するものである。
ウ 訂正事項3について
(ア)訂正の目的
訂正事項3は、訂正前の請求項3を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3は、訂正前の請求項3を削除するのみであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(ウ)本件明細書等の範囲内の訂正であること
訂正事項3は、訂正前の請求項3を削除するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
エ 訂正事項4について
(ア)訂正の目的
訂正事項4は、訂正前の請求項4が請求項3を引用していたところ、訂正事項1によって訂正前の請求項3に記載された事項が請求項1に付加され、また、訂正事項3によって請求項3が削除されたことに伴い、引用する請求項を整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項4は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(ウ)本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
オ 訂正事項5について
(ア)訂正の目的について
訂正事項5は、訂正前の請求項5が請求項3を引用していたところ、訂正事項1によって訂正前の請求項3に記載された事項が請求項1に付加され、また、訂正事項3によって請求項3が削除されたことに伴い、引用する請求項を整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項5は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(ウ)本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項5は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
カ 訂正事項6について
(ア)訂正の目的
訂正事項6は、訂正前の請求項6が請求項3を引用していたところ、訂正事項3によって請求項3が削除されたことに伴い、引用する請求項を整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項6は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(ウ)本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項6は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
5 一群の請求項7~8に係る訂正
(1)訂正の内容
ア 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7における「前記サーボ制御模擬ステップでは、前記サーボ制御模擬部が、前記位置情報を用いて前記駆動軸模擬部へのフィードバック制御を模擬し、前記加工結果評価ステップでは、前記加工結果評価部が、前記駆動軸模擬部へのフィードバック制御が模擬された場合の前記加工結果を評価する、」との記載を、「前記サーボ制御模擬ステップでは、前記サーボ制御模擬部が、前記位置情報を用いて前記駆動軸模擬部へのフィードバック制御を模擬し、前記位置情報を前記数値制御模擬部に出力し、前記数値制御模擬ステップでは、前記数値制御模擬部が、前記位置情報を用いて前記サーボ制御模擬部へのフィードバック制御を模擬し、前記加工結果評価ステップでは、前記加工結果評価部が、前記サーボ制御模擬部へのフィードバック制御および前記駆動軸模擬部へのフィードバック制御が模擬された場合の前記加工結果を評価する、」に訂正する。
イ 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8を削除する。
(2)一群の請求項について
訂正事項7~8は、上記2(2)のとおり一群の請求項である請求項7~8を訂正するものである。
(3)訂正要件の検討
ア 訂正事項7について
(ア)訂正の目的
訂正事項7は、訂正前の請求項7におけるサーボ制御模擬ステップ、数値制御模擬ステップ、および加工結果評価ステップの記載について「前記サーボ制御模擬ステップでは、前記サーボ制御模擬部が、前記位置情報を用いて前記駆動軸模擬部へのフィードバック制御を模擬し、前記位置情報を前記数値制御模擬部に出力し、前記数値制御模擬ステップでは、前記数値制御模擬部が、前記位置情報を用いて前記サーボ制御模擬部へのフィードバック制御を模擬し、前記加工結果評価ステップでは、前記加工結果評価部が、前記サーボ制御模擬部へのフィードバック制御および前記駆動軸模擬部へのフィードバック制御が模擬された場合の前記加工結果を評価する、」と訂正するものであって、サーボ制御模擬ステップ、数値制御模擬ステップ、および加工結果評価ステップを特定するために必要な事項を限定することで特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(ア)のとおり、訂正事項7は、訂正前の請求項7を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(ウ)本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項7は、特許掲載公報の特許請求の範囲の請求項8に「前記サーボ制御模擬ステップでは、前記サーボ制御模擬部が、前記位置情報を前記数値制御模擬部に出力し、前記数値制御模擬ステップでは、前記数値制御模擬部が、前記位置情報を用いて前記サーボ制御模擬部へのフィードバック制御を模擬し、前記加工結果評価ステップでは、前記加工結果評価部が、前記サーボ制御模擬部へのフィードバック制御および前記駆動軸模擬部へのフィードバック制御が模擬された場合の前記加工結果を評価する、」と記載されている。
したがって、訂正事項7は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
イ 訂正事項8について
(ア)訂正の目的
訂正事項8は、訂正前の請求項8を削除するものである。
したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項8は、訂正前の請求項8を削除するのみであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(ウ)本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項8は、訂正前の請求項8を削除するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
6 小括
以上のとおり、訂正事項1~8に係る本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第4項、第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項〔1~6〕、〔7~8〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
本件特許の請求項1~12に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明12」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~12に記載された、以下の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
サーボ制御装置によって駆動される工作機械による加工の加工結果を評価する加工結果評価装置であって、
前記サーボ制御装置を制御する数値制御装置の動作を模擬して前記工作機械が有する駆動軸への位置指令を算出し、算出した前記位置指令を出力する数値制御模擬部と、
前記位置指令に基づいて前記サーボ制御装置の動作を模擬して前記駆動軸へのトルク指令を算出し、算出した前記トルク指令を出力するサーボ制御模擬部と、
前記トルク指令に基づいて前記駆動軸の動作を模擬する駆動軸模擬部と、
前記駆動軸の動作に対応する情報に基づいて前記加工結果を評価する加工結果評価部と、
を備え、
前記駆動軸模擬部は、前記駆動軸の動作を模擬することで得られた前記駆動軸の位置を示す位置情報を前記サーボ制御模擬部に出力し、
前記サーボ制御模擬部は、前記位置情報を用いて前記駆動軸模擬部へのフィードバック制御を模擬し、前記位置情報を前記数値制御模擬部に出力し、
前記数値制御模擬部は、前記位置情報を用いて前記サーボ制御模擬部へのフィードバック制御を模擬し、
前記加工結果評価部は、前記サーボ制御模擬部へのフィードバック制御および前記駆動軸模擬部へのフィードバック制御が模擬された場合の前記加工結果を評価する、
ことを特徴とする加工結果評価装置。
【請求項2】
前記駆動軸の動作に対応する情報は、前記位置情報であり、
前記加工結果評価部は、前記位置情報に基づいて前記加工結果を評価する、
ことを特徴とする請求項1に記載の加工結果評価装置。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
前記駆動軸の動作に対応する情報は、前記サーボ制御模擬部が前記数値制御模擬部に出力する前記位置情報であり、
前記加工結果評価部は、前記サーボ制御模擬部が前記数値制御模擬部に出力する前記位置情報に基づいて前記加工結果を評価する、
ことを特徴とする請求項1に記載の加工結果評価装置。
【請求項5】
前記駆動軸の動作に対応する情報は、前記数値制御模擬部が出力する前記位置指令であり、
前記加工結果評価部は、前記数値制御模擬部が出力する前記位置指令に基づいて前記加工結果を評価する、
ことを特徴とする請求項1に記載の加工結果評価装置。
【請求項6】
前記加工結果評価部は、前記工作機械による加工の、加工時間、加工精度、加工面品位、および消費電力のうちの少なくとも1つの評価を行う、
ことを特徴とする請求項1,2,4,5の何れか1つに記載の加工結果評価装置。
【請求項7】
サーボ制御装置によって駆動される工作機械による加工の加工結果を評価する加工結果評価方法であって、
加工結果評価装置の数値制御模擬部が、前記サーボ制御装置を制御する数値制御装置の動作を模擬して前記工作機械が有する駆動軸への位置指令を算出し、算出した前記位置指令を出力する数値制御模擬ステップと、
前記加工結果評価装置のサーボ制御模擬部が、前記位置指令に基づいて前記サーボ制御装置の動作を模擬して前記駆動軸へのトルク指令を算出し、算出した前記トルク指令を出力するサーボ制御模擬ステップと、
前記加工結果評価装置の駆動軸模擬部が、前記トルク指令に基づいて前記駆動軸の動作を模擬する駆動軸模擬ステップと、
前記加工結果評価装置の加工結果評価部が、前記駆動軸の動作に対応する情報に基づいて前記加工結果を評価する加工結果評価ステップと、
を含み、
前記駆動軸模擬ステップでは、前記駆動軸模擬部が、前記駆動軸の動作を模擬することで得られた前記駆動軸の位置を示す位置情報を前記サーボ制御模擬部に出力し、
前記サーボ制御模擬ステップでは、前記サーボ制御模擬部が、前記位置情報を用いて前記駆動軸模擬部へのフィードバック制御を模擬し、前記位置情報を前記数値制御模擬部に出力し、
前記数値制御模擬ステップでは、前記数値制御模擬部が、前記位置情報を用いて前記サーボ制御模擬部へのフィードバック制御を模擬し、
前記加工結果評価ステップでは、前記加工結果評価部が、前記サーボ制御模擬部へのフィードバック制御および前記駆動軸模擬部へのフィードバック制御が模擬された場合の前記加工結果を評価する、
ことを特徴とする加工結果評価方法。
【請求項8】(削除)
【請求項9】
サーボ制御装置によって駆動される工作機械が加工を実行する際の加工条件を決定する加工条件決定装置であって、
前記サーボ制御装置を制御する数値制御装置の動作を模擬して前記工作機械が有する駆動軸への位置指令を算出し、算出した前記位置指令を出力する数値制御模擬部と、
前記位置指令に基づいて前記サーボ制御装置の動作を模擬して前記駆動軸へのトルク指令を算出し、算出した前記トルク指令を出力するサーボ制御模擬部と、
前記トルク指令に基づいて前記駆動軸の動作を模擬して前記駆動軸の動作を示す動作情報を出力する駆動軸模擬部と、
前記駆動軸の動作に対応する情報に基づいて前記工作機械による加工の加工結果を評価する加工結果評価部と、
前記加工結果から前記加工条件を推論するための推論モデルを生成する機械学習装置と、
前記推論モデルを用いて、オペレータに入力された加工結果に対応する加工条件を決定する加工条件決定部と、
を備え、
前記駆動軸模擬部は、前記駆動軸の動作を模擬することで得られた前記駆動軸の位置を示す位置情報を前記サーボ制御模擬部に出力し、
前記サーボ制御模擬部は、前記位置情報を用いて前記駆動軸模擬部へのフィードバック制御を模擬し、
前記加工結果評価部は、前記駆動軸模擬部へのフィードバック制御が模擬された場合の前記加工結果を評価する、
ことを特徴とする加工条件決定装置。
【請求項10】
前記サーボ制御模擬部は、前記位置情報を前記数値制御模擬部に出力し、
前記数値制御模擬部は、前記位置情報を用いて前記サーボ制御模擬部へのフィードバック制御を模擬し、
前記加工結果評価部は、前記サーボ制御模擬部へのフィードバック制御および前記駆動軸模擬部へのフィードバック制御が模擬された場合の前記加工結果を評価する、
ことを特徴とする請求項9に記載の加工条件決定装置。
【請求項11】
サーボ制御装置によって駆動される工作機械が加工を実行する際の加工条件を決定する加工条件決定方法であって、
加工条件決定装置の数値制御模擬部が、前記サーボ制御装置を制御する数値制御装置の動作を模擬して前記工作機械が有する駆動軸への位置指令を算出し、算出した前記位置指令を出力する数値制御模擬ステップと、
前記加工条件決定装置のサーボ制御模擬部が、前記位置指令に基づいて前記サーボ制御装置の動作を模擬して前記駆動軸へのトルク指令を算出し、算出した前記トルク指令を出力するサーボ制御模擬ステップと、
前記加工条件決定装置の駆動軸模擬部が、前記トルク指令に基づいて前記駆動軸の動作を模擬して前記駆動軸の動作を示す動作情報を出力する駆動軸模擬ステップと、
前記加工条件決定装置の加工結果評価部が、前記駆動軸の動作に対応する情報に基づいて前記工作機械による加工の加工結果を評価する加工結果評価ステップと、
機械学習装置が、前記加工結果から前記加工条件を推論するための推論モデルを生成する機械学習ステップと、
加工条件決定部が、前記推論モデルを用いて、オペレータに入力された加工結果に対応する加工条件を決定する加工条件決定ステップと、
を含み、
前記駆動軸模擬ステップでは、前記駆動軸模擬部が、前記駆動軸の動作を模擬することで得られた前記駆動軸の位置を示す位置情報を前記サーボ制御模擬部に出力し、
前記サーボ制御模擬ステップでは、前記サーボ制御模擬部が、前記位置情報を用いた前記駆動軸模擬部へのフィードバック制御を模擬し、
前記加工結果評価ステップでは、前記加工結果評価部が、前記駆動軸模擬部へのフィードバック制御が模擬された場合の前記加工結果を評価する、
ことを特徴とする加工条件決定方法。
【請求項12】
前記サーボ制御模擬部は、前記位置情報を前記数値制御模擬部に出力し、
前記数値制御模擬部は、前記位置情報を用いて前記サーボ制御模擬部へのフィードバック制御を模擬し、
前記加工結果評価部は、前記サーボ制御模擬部へのフィードバック制御および前記駆動軸模擬部へのフィードバック制御が模擬された場合の前記加工結果を評価する、
ことを特徴とする請求項11に記載の加工条件決定方法。」
第4 取消理由の概要
令和5年11月14日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、以下のとおりである。
1(新規性)訂正前の請求項1、2及び7に係る発明は、本件特許出願前に日本国内において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、訂正前の請求項1、2及び7に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
2(進歩性)訂正前の請求項6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
引用文献等一覧
甲第1号証:特許第6961128号公報
甲第2号証:特開2021-105825号公報
甲第4号証:特開2018-67210号公報
甲第5号証:特開2014-219911号公報
(各甲号証及び各甲号証に記載された発明を、以下「甲1」及び「甲1発明」などという。)
第5 取消理由についての当審の判断
本件発明1、2、6及び7について、取消理由について改めて検討した判断を以下に示す。
1 取消理由1(新規性)について
(1)本件発明1について
ア 甲1に記載されている事項
引用文献等一覧に示す甲1には次の記載がある。(なお、下線は当審で付与したもの。)
(ア)「【請求項1】
機械装置が複数のアクチュエータを駆動して実行する作業を構成する要素の入力と出力との関係が計算式で記述されたモデルテンプレートを複数記憶するモデルテンプレートデータベース部と、
前記機械装置の構成および前記作業を特徴づける構成情報に基づいて1つ又は複数の前記モデルテンプレートを前記モデルテンプレートデータベース部から選択するモデル構成選択部と、
前記モデル構成選択部が選択した前記モデルテンプレートに対し、前記モデルテンプレートの変数であるモデルパラメータを設定するモデルパラメータ設定部と、
前記モデルパラメータ設定部が前記モデルパラメータを設定した後の前記モデルテンプレートと、前記作業を実行する際に前記作業で使用する工具が通過すべき経路である指令経路とに基づいて前記作業のシミュレーションを実行し、前記作業の予測結果である予測作業結果を算出するシミュレーション実行部と、
を備えることを特徴とするシミュレーション装置。」
(イ)「【請求項7】
前記シミュレーション実行部は、
前記指令経路に基づいて、時系列の、前記機械装置の各駆動軸に対する予測軸指令および主軸に対する予測プロセス指令を演算する指令値演算模擬部と、
前記予測軸指令および予測軸フィードバック信号に基づいて、対応付けられた前記駆動軸への予測アクチュエータ駆動指令を演算する複数のサーボ制御模擬部と、
前記予測プロセス指令および予測プロセスフィードバック信号に基づいて、前記主軸への予測プロセス変更量を演算するプロセス制御模擬部と、
前記予測アクチュエータ駆動指令および予測軸外乱に基づいて、対応付けられた前記駆動軸の予測軸位置を演算するとともに、演算した予測軸位置を前記予測軸フィードバック信号として前記サーボ制御模擬部に出力する複数の駆動機構モデル部と、
複数の前記駆動機構モデル部のそれぞれが演算した前記予測軸位置と、予測プロセス外乱とに基づいて、作業点変位と、各駆動軸の前記予測軸外乱とを演算する機械構造モデル部と、
前記作業点変位に基づいて、予測作業結果および前記予測プロセス外乱を演算するプロセスモデル部と、
を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか一つに記載のシミュレーション装置。」
(ウ)「【0016】
以下に、本開示の実施の形態にかかるシミュレーション装置、工作機械システム、シミュレーション方法および加工方法を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に示す各実施の形態ではシミュレーション装置が数値制御工作機械のシミュレーションを行う場合について具体的に説明するが、本開示を各実施の形態に示す構成に限定するものではない。各実施の形態で説明するシミュレーション装置は、複数のアクチュエータを駆動し作業を実行する産業用機械、ロボット、搬送機などの機械装置にも適用可能である。」
(エ)「【0033】
指令値演算部9は、数値制御装置に実装される。指令値演算部9は、入力された指令経路を元に補間と加減速の処理を行い、時系列の、各軸すなわちX軸、Y軸およびZ軸に対する位置指令と、主軸に対する回転指令とを生成する。・・・」
(オ)「【0040】
シミュレーション装置1aは、指令経路、構成情報およびモデル同定用データを入力してシミュレーションを実行し、数値制御工作機械99が加工を行うことで得られる加工形状を予測する。シミュレーション装置1aは、加工形状の予測結果を出力する。以下では、加工形状の予測結果を予測作業結果と称する場合がある。加工形状は、3次元の形状データや基準となる基準直線上の形状を表現する2次元データとして生成される。シミュレーション装置1aは、数値制御装置内に実装してもよいし、数値制御工作機械99の近傍に設置したエンジコンピュータに実装してもよいし、数値制御工作機械99から遠隔地にあるコンピュータ、サーバやクラウドに実装してもよい。」
(カ)「【0045】
図7は、実施の形態1にかかるシミュレーション装置1aのシミュレーション実行部13aの詳細を示すブロック図である。シミュレーション実行部13aは、指令値演算模擬部14と、サーボ制御模擬部51a,51b,51cと、プロセス制御模擬部15と、駆動機構モデル部16a,16b,16cと、機械構造モデル部17と、プロセスモデル部18とを備える。なお、以下の説明では、サーボ制御模擬部51a,51b,51cのそれぞれを区別せずにこれらの共通の事項を説明する場合、これらをサーボ制御模擬部51と記載することがある。同様に、駆動機構モデル部16a,16b,16cのそれぞれを区別せずにこれらの共通の事項を説明する場合、これらを駆動機構モデル部16と記載することがある。
【0046】
図8は、実施の形態1にかかるシミュレーション実行部13aのサーボ制御模擬部51aの構成例を示す図である。なお、サーボ制御模擬部51bおよび51cの構成も同様である。
【0047】
サーボ制御模擬部51aは、図3に示したサーボ制御部6aの電流制御器64の後段にトルク推定器70が追加された構成である。サーボ制御模擬部51aには、回転角検出器2からの検出位置Xdの代わりに、予測軸フィードバックとして位置の推定値Xd1が駆動機構モデル部16aから入力される。サーボ制御模擬部51aの加減算器61aおよび速度演算器65は、Xd1を用いた演算を行う。すなわち、サーボ制御模擬部51aにおいて、加減算器61aは、位置指令Xcと位置の推定値Xd1との差分である位置偏差(Xc-Xd1)を演算する。位置制御器62は、位置偏差に応じた位置制御を行い、速度指令の推定値Vc1を生成する。速度演算器65は、位置の推定値Xd1から検出速度の推定値Vd1を生成する。加減算器61bは、速度指令の推定値Vc1と検出速度の推定値Vd1との差分である速度偏差推定値Vde1=Vc1-Vd1を演算する。速度制御器63は、速度偏差推定値Vde1に応じて速度制御を行い、電流指令の推定値Ic1を生成する。加減算器61cは、電流指令の推定値Ic1と、電流制御器64が出力するモータ電流の推定値Ix1との差分である電流偏差推定値(Ic1-Ix1)を演算する。電流制御器64は、電流偏差推定値(Ic1-Ix1)に応じて電流制御を行い、モータ電流の推定値Ix1を出力する。トルク推定器70は、電流制御器64が出力するモータ電流の推定値Ix1から、モータ71のトルクの推定値Tx1を算出して駆動機構モデル部16aに出力する。」
(キ)「【0061】
サーボ制御模擬部51a,51b,51cに設定されるモデルは、予測軸指令と予測軸フィードバックから予測アクチュエータ指令までを計算するモデルである。プロセス制御模擬部15に設定されるモデルは、予測プロセス指令と予測プロセスフィードバックから予測プロセス変更量までのモデルである。数値制御工作機械99は、1つの主軸と3つのサーボ制御装置とを有するので、モデル構成選択部11は、1つのプロセス制御模擬部15のモデルテンプレートと、3つのサーボ制御模擬部51a,51b,51cのモデルテンプレートとをそれぞれ選択する。モデル構成選択部11は、例えば、サーボ制御模擬部51に設定するモデルテンプレートの中から、サーボ制御装置と型番およびソフトウエアバージョンが同じモデルテンプレートを選択し、プロセス制御模擬部15に設定するモデルテンプレートの中から、プロセス制御装置と型番およびソフトウエアバージョンが同じモデルテンプレートを選択する。」
(ク)「【0070】
次に、シミュレーション実行部13aが、指令経路と、選択されたモデルテンプレートと、設定されたモデルパラメータとを用いてシミュレーションを実行して加工形状を予測し、予測した加工形状を予測作業結果として出力する(ステップS7)。
【0071】
次に、シミュレーション実行部13aから出力された予測作業結果であるシミュレーション結果が設計精度を満たすかを確認する(ステップS8)。シミュレーション結果が設計精度を満たすかどうかの確認はユーザが行ってもよいし、工作機械システム101aが行ってもよい。例えば、指令経路で表される加工形状と予測作業結果との誤差と閾値とを比較することで設計精度を満たすかどうかを判定する。
【0072】
シミュレーション結果が設計精度を満たさない場合(ステップS8:No)、ステップS1に戻る。この場合、指令経路生成部3が指令経路の生成に用いるデータを修正した上で再度ステップS1を実行し、シミュレーション実行部13aは、修正された指令経路を取得する。その後、ステップS2~S7を実行する。
【0073】
シミュレーション結果が設計精度を満たす場合(ステップS8:Yes)、指令経路を指令値演算部9に転送し、実際の加工を数値制御工作機械99において実行する(ステップS9)。すなわち、プロセス制御部5および各サーボ制御部6が機械装置部96の主軸83および各駆動軸を制御して工作物78を加工する。このとき、機械装置情報収集部4は、加工中のデータをプロセス制御部5および各サーボ制御部6から収集し、収集したデータをモデル同定用データとしてシミュレーション装置1aに送信する。」
(ケ)「【図2】
[図:0001413312000001.jpg]
【図4】
[図:0001413312000002.jpg]
【図6】
[図:0001413312000003.jpg]
【図7】
[図:0001413312000004.jpg]
【図9】
[図:0001413312000005.jpg]
」
イ 甲1発明
上記アの記載及び図示内容を総合し、本件発明1の記載に合わせて整理すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているということができる。
「サーボ制御装置によって駆動される数値制御工作機械による加工の予測した加工形状が設計精度を満たすかを判断するシミュレーション装置1aであって、
前記サーボ制御装置を制御する指令値演算部の動作を模擬して前記数値制御工作機械が有する駆動軸への予測軸指令を算出し、算出した前記予測軸指令を出力する指令値演算模擬部14と、
前記予測軸指令に基づいて前記サーボ制御装置の動作を模擬して前記駆動軸へのトルクの推定値Tx1を算出し、算出した前記トルクの推定値を出力するサーボ制御模擬部51a、51b、51cと、
前記トルクの推定値Tx1に基づいて前記駆動軸の動作を模擬する駆動機構モデル部16a、16b、16cと、
前記駆動軸の動作により予測した加工形状が設計精度を満たすかを判断するシミュレーション実行部13aと、
を備え、
前記駆動機構モデル部は、前記駆動軸の動作を模擬することで得られた前記駆動軸の位置の推定値を前記サーボ制御模擬部に出力し、
前記サーボ制御模擬部は、前記位置の推定値を用いて前記駆動機構モデル部へのフィードバック制御を模擬し、
前記シミュレーション実行部は、前記駆動機構モデル部へのフィードバック制御が模擬された場合の前記予測した加工形状が設計精度を満たすかを判断する、
シミュレーション装置。」
ウ 対比
(ア)本件発明1と甲1発明とを対比すると、後者の「数値制御工作機械」は、その機能・作用を踏まえると、前者の「工作機械」に相当し、以下同様に、「指令値演算部」は「数値制御装置」に、「予測軸指令」は「位置指令」に、「指令値演算模擬部14」は「数値制御模擬部」に、「トルクの推定値Tx1」は「トルク指令」に、「駆動機構モデル部16a、16b、16c」は「駆動軸模擬部」に、駆動軸の「位置の推定値」は「位置を示す位置情報」に、「シミュレーション実行部13a」は「加工結果評価部」に、「予測した加工形状」は「加工結果」に、それぞれ相当する。
(イ)また、甲1発明の「予測した加工形状が設計精度を満たすかを判断する」は、上記(ア)を踏まえると、本件発明1の「加工結果を評価する」に相当する。
(ウ)甲1発明の「シミュレーション装置」は、その全体の機能・作用を踏まえると、本件発明1の「加工結果評価装置」に相当するといえる。
すると、両者は、下記の一致点、相違点を有する。
<一致点>
「サーボ制御装置によって駆動される工作機械による加工の加工結果を評価する加工結果評価装置であって、
前記サーボ制御装置を制御する数値制御装置の動作を模擬して前記工作機械が有する駆動軸への位置指令を算出し、算出した前記位置指令を出力する数値制御模擬部と、
前記位置指令に基づいて前記サーボ制御装置の動作を模擬して前記駆動軸へのトルク指令を算出し、算出した前記トルク指令を出力するサーボ制御模擬部と、
前記トルク指令に基づいて前記駆動軸の動作を模擬する駆動軸模擬部と、
前記駆動軸の動作に対応する情報に基づいて前記加工結果を評価する加工結果評価部と、
を備え、
前記駆動軸模擬部は、前記駆動軸の動作を模擬することで得られた前記駆動軸の位置を示す位置情報を前記サーボ制御模擬部に出力し、
前記サーボ制御模擬部は、前記位置情報を用いて前記駆動軸模擬部へのフィードバック制御を模擬し、
前記加工結果評価部は、前記駆動軸模擬部へのフィードバック制御が模擬された場合の前記加工結果を評価する、
加工結果評価装置。」
<相違点1>
本件発明1は、サーボ制御模擬部が、「前記位置情報を前記数値制御模擬部に出力」するものであり、また、数値制御模擬部が、「前記位置情報を用いて前記サーボ制御模擬部へのフィードバック制御を模擬」するのに対し、甲1発明のサーボ制御模擬部と指令値演算模擬部は、そのような機能を有していない点。
<相違点2>
加工結果評価部に関し、本件発明1は、「前記サーボ制御模擬部へのフィードバック制御および前記駆動軸模擬部へのフィードバック制御」が模擬された場合の加工結果を評価するのに対して、甲1発明は、駆動軸模擬部へのフィードバック制御に相当する「駆動機構モデル部へのフィードバック制御」のみが模擬された場合の加工結果を評価する点。
エ 判断
上記ウのとおり、本件発明1と甲1発明とは、相違点1及び相違点2を有するから、本件発明1は、甲1発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当するものとはいえない。
(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1に「駆動軸の動作に対応する情報は、位置情報であり、加工結果評価部は、前記位置情報に基づいて加工結果を評価する」点を付加するものである。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、少なくとも相違点1及び相違点2を有するから、本件発明2は、甲1発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当するものとはいえない。
(3)請求項7について
本件発明7は、本件発明1の物の発明を、方法の発明として記載したものであるから、発明のカテゴリーの相違に基づく表現上の差異を除けば、本件発明1と実質的な差違はない。
そうすると、本件発明7と甲1発明とは、相違点1及び相違点2を有するから、本件発明7は、甲1発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当するものとはいえない。
(4)取消理由1について小括
したがって、本件発明1、2及び7は、甲1発明と同一とはいえないから、取消理由1で取り消すことはできない。
2 取消理由2(進歩性)について
(1)本件発明6について
ア 本件発明6
本件発明6は、本件発明1の加工結果評価部に関し、「加工結果評価部は、工作機械による加工の、加工時間、加工精度、加工面品位、および消費電力のうちの少なくとも1つの評価」する点を限定するものである。
イ 一致点、相違点
本件発明6と甲1発明とは、上記1ウで示す一致点、相違点1及び相違点2を有し、加えて、下記相違点3で相違する。
<相違点3>
加工結果評価部に関し、本件発明6は「工作機械による加工の、加工時間、加工精度、加工面品位、および消費電力のうちの少なくとも1つの評価」を行うのに対し、甲1発明は、予測した加工形状が設計精度を満たすかを判断する点で一応相違する。
ウ 判断
相違点1について検討する。
甲2、甲4及び甲5には、いずれにも「サーボ制御模擬部は、前記位置情報を前記数値制御模擬部に出力し、前記数値制御模擬部は、前記位置情報を用いて前記サーボ制御模擬部へのフィードバック制御を模擬」する点については、記載も示唆もない。
そして、相違点1に係る本件発明6の発明特定事項により、従来の「数値制御装置より後段の装置であるサーボ制御装置または工作機械から数値制御装置への応答を考慮せずに加工をシミュレーションしている」ため、「サーボ制御装置または工作機械から数値制御装置への応答の返り値に基づいた機能に対応する処理をシミュレーションできず、加工結果を正確に評価することができなという問題」(段落【0005】~【0006】)を解決し、「加工結果を正確に評価することができるという効果を奏する」(段落【0008】)ものといえる。そして、当該効果は、少なくとも甲1、甲2、甲4及び甲5に記載されたものから当業者にとって容易に予測し得たものとはいうことはできない。
したがって、上記相違点1に係る本件発明6の発明特定事項は、甲1、甲2、甲4及び甲5に基づき、当業者が容易になし得たものとはいえない。
エ 申立人意見書における申立人の主張について
申立人は、申立人意見書において、上記相違点1は、異議申立て理由の証拠の一つである甲第3号証:特開2019-152936号公報(以下「甲3」という。)に記載されたものを組み合わせることにより、当業者が容易に想到し得るものであるから、本件発明1、2、4~6は、甲1及び甲3等に基づいて容易である旨、主張している。
したがって、取消理由2(進歩性)の対象である本件発明6の相違点1について甲3に記載された技術的事項を踏まえ、以下検討する。
(ア)甲3に記載された事項
甲3には、次の記載がある。
「【0013】
図1は、本実施形態に係る工作機械の加工シミュレーション装置を備える加工システムを示す図である。図1に示す加工システムは、加工シミュレーション装置30(詳細は後述する)を備える数値制御装置1と、サーボ制御部2と、モータ3と、工作機械5とを備える。
【0014】
工作機械5は、例えばボールエンドミルなどの工具を用いてワーク(加工対象物)の表面の切削加工を行う機械である。工作機械5は、工具の位置を検出する位置センサ6を備え、位置センサ6によって検出された工具の位置は位置フィードバック(位置FB)として利用される。位置センサ6としては、工具先端部の位置を測定するために設けられたスケールなどを用いることができる。
また、工作機械5は、ワークの位置を検出する位置センサ7を備えてもよく、位置センサ7によって検出されたワークの位置は位置フィードバック(位置FB)として利用されてもよい。位置センサ7としては、ワークを搭載するテーブルに設けられたスケールなどを用いることができる。
【0015】
モータ3は、工作機械5に設けられる。モータ3は、工作機械5における可動部、例えば工具の送り軸又はワークの送り軸を駆動するモータを含む。モータ3には、モータ3の回転位置(回転角度)を検出するエンコーダ4が設けられる。エンコーダ4によって検出された回転位置は位置フィードバック(位置FB)として利用される。ここで、モータ3の回転位置と工作機械5の可動部の位置とは対応関係にあるため、エンコーダ4によって検出された回転位置、すなわち位置フィードバックは、工具の位置又はワークの位置を示す。
【0016】
サーボ制御部2は、数値制御装置1からの位置指令と、モータ3に設けられたエンコーダ4によって検出された位置フィードバックとに基づいて、モータ3の駆動電流を生成する。
なお、サーボ制御部2は、モータ3に設けられたエンコーダ4によって検出された位置フィードバックに代えて、工具先端部に設けられた位置センサ6によって検出された位置フィードバックを用いてもよいし、ワークを搭載するテーブルに設けられたスケール7によって検出された位置フィードバックを用いてもよい。
【0017】
数値制御装置1は、加工プログラムに基づいて位置指令を生成する。数値制御装置1は、保存部10と、スムージング制御部12と、加減速制御部14とを備える。
【0018】
保存部10は、CAM(Computer Aided Manufacturing)で作成された加工プログラムを保存する。また、保存部10は、ボールエンドミルなどの工具種別、工具径及び工具長などの工具形状等の工具情報を保存する。保存部10は、例えばEEPROM等の書き換え可能なメモリである。
【0019】
スムージング制御部12は、保存部10に保存された加工プログラムが示す移動指令に基づく移動経路のスムージング制御を行う。具体的には、スムージング制御部12は、移動指令を滑らかな経路に補正した後、補正後の移動経路上の点を補間周期で補間する(経路補正)。
【0020】
加減速制御部14は、スムージング制御部12で補間された移動指令、加減速時定数に基づく加減速度、最大速度に基づいて移動速度パターンを生成し、移動速度パターンに基づいて位置指令を作成する。
【0021】
また、数値制御装置1は、機械シミュレーション部20と、加工シミュレーション部22と、表示部24とを備える。機械シミュレーション部20、加工シミュレーション部22、表示部24、および上述した保存部10は、本実施形態の加工シミュレーション装置30を構成する。
なお、本実施形態では、加工シミュレーション装置30が数値制御装置1に組み込まれた形態を例示するが、加工シミュレーション装置30の組み込み形態はこれに限定されない。例えば、加工シミュレーション装置30は、外部のPC等に組み込まれてもよい。
また、加工シミュレーション装置30の各構成要素(機械シミュレーション部20、加工シミュレーション部22、表示部24、および保存部10)は、複数の装置に分けて組み込まれてもよい。例えば、機械シミュレーション部20、表示部24、および保存部10が数値制御装置に組み込まれ、加工シミュレーション部22が外部PC(例えば、CAD-CAM)に組み込まれてもよい。
【0022】
機械シミュレーション部20は、位置指令に対する応答特性を伝達特性として求める。具体的には、機械シミュレーション部20は、数値制御装置1よりも後段における伝達特性、すなわちサーボ制御部2から工作機械5までの伝達特性を、工作機械の伝達特性(例えば、伝達関数)として求める。機械シミュレーション部20は、求めた工作機械の伝達特性を保存部10に保存する。前記機械シミュレーション部20は、工作機械の伝達特性を求める動作を、加工シミュレーション部22によって加工シミュレーションを行う前に、例えば1回だけ行う。
そして、加工シミュレーション部22によって加工シミュレーションを行う際、機械シミュレーション部20は、位置指令と保存部10に保存された工作機械の伝達特性とに基づいて、加工プログラムに基づいて動作するときの工作機械の動きのシミュレーションを行うことにより、工具の位置、すなわち工具の経路(軌跡)を推定する。
【0023】
工作機械の伝達特性を求める際、機械シミュレーション部20は、サーボ制御部2のサーボパラメータ、モータ3の位置フィードバック、工具の位置フィードバック、及び、ワークの位置フィードバックのうちの少なくとも1つと位置指令とに基づいて、工作機械の伝達特性を決定する。
サーボパラメータとしては、サーボ制御部2のポジションゲイン又は速度ゲイン等が挙げられる。
モータ3の位置フィードバックとしては、モータ3に設けられたエンコーダ4によって検出されたモータ3の回転位置(位置フィードバック)が挙げられる。
工具の位置フィードバックとしては、工具先端部に設けられた位置センサ6によって検出された工具の位置(位置フィードバック)が挙げられる。
ワークの位置フィードバックとしては、ワークが搭載されるテーブルに設けられた位置センサ7によって検出されたワークの位置(位置フィードバック)が挙げられる。
【0024】
サーボ制御部2のサーボパラメータに基づく場合、機械シミュレーション部20は、工作機械を実際に動作させることなく、工作機械の伝達特性を決定することができる。これにより、機械シミュレーション部20は、工作機械を実際に動作させることなく、位置指令と伝達特性とに基づいて工具の位置情報を推定することができる。
また、モータ3の位置フィードバック、工具の位置フィードバック、又は、ワークの位置フィードバックに基づく場合、機械シミュレーション部20は、工作機械を1回だけ動作させるだけで、工作機械の伝達特性を決定することができる。これにより、機械シミュレーション部20は、2回目以降、工作機械を実際に動作させることなく、位置指令と伝達特性とに基づいて工具の位置を推定することができる。」
「【図1】
[図:0001413312000006.jpg]
」
すると、甲3には、次の技術的事項(以下「甲3技術的事項」という。)が開示されている。
「加工シミュレーション装置において、
加工シミュレーションを行う前に、機械シミュレーション部20は、サーボ制御部2のサーボパラメータ、モータ3の位置フィードバック、工具の位置フィードバック、及び、ワークの位置フィードバックのうちの少なくとも1つと位置指令とに基づいて、工作機械の伝達特性を決定し、
加工シミュレーションを行う際に、数値制御装置1は、加工プログラムに基づいて、スムージング制御部12により滑らかな経路に補正した後、補正後の移動経路上の点を補完周期で補完された移動指令、加減速時定数に基づく加減速度、最大速度に基づいて移動速度パターンを生成し、移動速度パターンに基づいて位置指令を作成し、
位置指令とサーボ制御部2から工作機械5の伝達特性とに基づいて、加工プログラムに基づいて動作するときの工作機械の動きのシミュレーションを行うことにより、工具の位置、すなわち工具の経路(軌跡)を推定すること」
(イ)判断
甲3技術的事項は、工作機械の加工シミュレーションを行うものである点で甲1発明と共通し、数値制御装置1の保存部10、スムージング制御部12、加減速制御部14は、実際に工作機械で加工する場合は、実機サーボ制御部への位置指令を作成し、また、加工シミュレーションを行う場合は、機械シミュレーション部20へ位置指令を作成しているといえ、後者の場合、本件発明6の「数値制御模擬部」に相当するといえる。しかしながら、加工シミュレーションを行う場合において、少なくとも機械シミュレーション部20から数値制御装置1へ位置データが出力されている点については記載がなく、また示唆があるともいえない。
申立人は、甲3の図1の機械シミュレーション部20へ入力されている「サーボパラメータ、位置FB」が相違点1に関連する構成である旨主張している。しかしながら、申立人の主張する「入力」は、加工シミュレーション前に、機械シミュレーション部20の伝達関数を決定するために、サーボ制御部2、モータ3、工作機械5の実機から得られたデータ(【0023】~【0024】)であり、駆動軸の動作を模擬することで得られた位置情報ではないから、申立人の主張は当を得ないものと言わざるを得ない。
そして、相違点1に係る本件発明6の発明特定事項により、上記ウに示す効果を認めることができ、当該効果は、少なくとも甲1及び甲3に記載されたものから当業者にとって容易に予測し得たものとはいうことはできない。
したがって、甲1発明に甲3技術的事項を組み合わせたとしても、本件発明6の上記相違点1に係る発明特定事項には至るとはいえない。
(2)取消理由2について小括
よって、本件発明6は、甲1~甲5に基づき、当業者であっても容易になし得たものとはいえないから、取消理由2で取り消すことはできない。
第6 取消理由通知において採用しなかった申立理由について
1 申立書に記載の申立ての理由の概要
(1)申立ての理由(進歩性)
ア 訂正前の本件特許の請求項1、2、7に係る発明は、甲1及び甲2に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
イ 訂正前の本件特許の請求項3~5、8に係る発明は、甲1、甲2及び甲3に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
ウ 訂正前の本件特許の請求項6に係る発明は、甲1、甲2、甲4及び甲5に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
エ 訂正前の本件特許の請求項9及び11に係る発明は、甲1、甲2及び甲6に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
オ 訂正前の本件特許の請求項10及び12に係る発明は、甲1、甲2、甲3及び甲6に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるであり、特許法第29条第2項に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
上記の申立ての理由のうち、ウに係る理由は、取消理由2(上記第5の2)と同趣旨の理由なので、以下では、ア、イ、エ及びオに係る理由を、請求項に係る発明ごとに検討する。
(2)証拠方法
甲第1号証:第4記載のとおり。
甲第2号証:同上
甲第3号証:第5の2(1)エ記載のとおり。
甲第4号証:第4記載のとおり。
甲第5号証:同上
甲第6号証:特開2020-177579号公報
2 当審の判断
(1)本件発明1について
本件発明1は、上記第5の1(1)ウに示すとおり、甲1発明とは、上記相違点1及び相違点2を有する。
そして、少なくとも上記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項は、第5の2(1)ウ及びエに示すとおり、甲1~甲5に基づき、当業者であれば容易になし得たものとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲1~甲5に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項に違反してされたものとはいえず、取り消すことはできない。
(2)本件発明2、4及び5について
本件発明2、4及び5は、本件発明1を引用するから、甲1発明とは、少なくとも相違点1及び相違点2を有する。
そして、少なくとも相違点1に係る本件発明2の発明特定事項は、上記(1)のとおり、甲1~甲5に基づき、当業者であれば容易になし得たものとはいえない。
したがって、本件発明2、4及び5は、甲1~甲5に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、本件発明2、4及び5に係る特許は、特許法第29条第2項に違反してされたものとはいえず、取り消すことはできない。
(3)本件発明7について
本件発明7の加工結果評価方法は、本件発明1の加工結果評価装置を単に方法として特定したものであるから、発明のカテゴリーの相違に基づく表現上の差異を除けば、本件発明1と実質的な差違はなく、甲1発明とは、少なくとも相違点1及び相違点2と同様の相違点を有する。
そして、少なくとも相違点1と同様の相違点に係る本件発明7の発明特定事項は、上記(1)のとおり、甲1~甲5に基づき、当業者であれば容易になし得たものとはいえない。
したがって、本件発明7は、甲1~甲5に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、本件発明7に係る特許は、特許法第29条第2項に違反してされたものとはいえず、取り消すことはできない。
(4)本件発明9について
ア 一致点、相違点
甲1発明は、シミュレーション装置に係る発明であるが、そのシミュレーションの加工結果を評価することで、加工条件を決定することができるから、加工条件決定装置に係る発明(以下「甲1の加工条件決定装置発明」という。)ともいうことができる。
本件発明9と甲1の加工条件決定装置発明とは、上記第5の1(1)ウを踏まえて対比すると、以下の一致点、相違点を有する。
<一致点>
サーボ制御装置によって駆動される工作機械が加工を実行する際の加工条件を決定する加工条件決定装置であって、
前記サーボ制御装置を制御する数値制御装置の動作を模擬して前記工作機械が有する駆動軸への位置指令を算出し、算出した前記位置指令を出力する数値制御模擬部と、
前記位置指令に基づいて前記サーボ制御装置の動作を模擬して前記駆動軸へのトルク指令を算出し、算出した前記トルク指令を出力するサーボ制御模擬部と、
前記トルク指令に基づいて前記駆動軸の動作を模擬して前記駆動軸の動作を示す動作情報を出力する駆動軸模擬部と、
前記駆動軸の動作に対応する情報に基づいて前記工作機械による加工の加工結果を評価する加工結果評価部と、
を備え、
前記駆動軸模擬部は、前記駆動軸の動作を模擬することで得られた前記駆動軸の位置を示す位置情報を前記サーボ制御模擬部に出力し、
前記サーボ制御模擬部は、前記位置情報を用いて前記駆動軸模擬部へのフィードバック制御を模擬し、
前記加工結果評価部は、前記駆動軸模擬部へのフィードバック制御が模擬された場合の前記加工結果を評価する、
ことを特徴とする加工条件決定装置。」
<相違点4>
本件発明9は、「前記加工結果から前記加工条件を推論するための推論モデルを生成する機械学習装置と、前記推論モデルを用いて、オペレータに入力された加工結果に対応する加工条件を決定する加工条件決定部と」を有しているのに対し、甲1の加工条件決定装置発明はそのような構成を有していない点。
イ 甲6に記載されている事項
(ア)「【請求項1】
現実世界に配置され、且つ、工作物を加工する機械本体及び指令値に基づいて前記機械本体を制御する制御装置を備える工作機械と、
前記工作物及び前記機械本体における実加工現象を仮想世界における仮想加工現象として生成するコンピュータ装置と、
を備え、
前記コンピュータ装置は、
前記工作機械の前記制御装置に通信可能に接続され、
前記指令値を前記制御装置と同期して取得し、
取得した前記指令値に基づいて将来における前記仮想加工現象である将来仮想加工現象を生成し、且つ、
前記将来仮想加工現象に基づいて前記指令値を修正するための最適指令値を前記制御装置に出力するサイバーフィジカルシステム型加工システム。」
・・・
【請求項7】
前記コンピュータ装置は、
前記加工現象演算部によって演算された前記将来仮想加工現象が予め設定された所定加工現象であるか否かを判定する判定部を有し、
前記最適指令値決定部は、
前記判定部によって前記将来仮想加工現象が前記所定加工現象と異なる場合に、前記最適指令値を決定すると共に前記制御装置に出力する請求項3-6のうちの何れか一項に記載のサイバーフィジカルシステム型加工システム。
・・・
【請求項9】
前記コンピュータ装置は、
前記加工現象演算部によって演算された前記将来仮想加工現象に基づいて、前記工作物に対する加工品質を推測する機械学習部を有しており、
前記最適指令値決定部は、
前記機械学習部によって推測された前記加工品質に基づいて前記最適指令値を決定すると共に前記制御装置に出力する請求項3-8のうちの何れか一項に記載のサイバーフィジカルシステム型加工システム。」
(イ)「【0029】
判定部25は、加工現象演算部23によって演算された将来仮想加工現象が予め設定された所定加工現象であるか否かを判定する。判定部25は、将来仮想加工現象として、例えば、研削加工によって研削された仮想工作物(工作物W)の寸法や、研削加工によって研削された仮想工作物(工作物W)の研削焼けの有無或いは面粗さ等を、これらについて予め設定された基準である所定加工現象と比較する。」
(ウ)「【0049】
(5.第一変形例)
上記実施形態のコンピュータ装置20においては、加工現象演算部23及び判定部25が協働して将来仮想加工現象を予測し、最適指令値決定部26が最適指令値PKを決定するようにした。これに加えて、コンピュータ装置20が、図2にて破線により示すように、機械学習部28を有し、工作物Wに対する加工品質に関連する最適指令値PKを決定する場合には、機械学習部28が最適指令値PKを決定するように構成することも可能である。以下、第一変形例を説明する。
【0050】
機械学習部28は、加工現象演算部23によって演算された将来仮想加工現象に基づいて、工作物Wに対する加工品質を推測する。機械学習部28は、周知の機械学習技術(具体的には、機械学習プログラム)に基づき、将来仮想加工現象及び仮想工作物の加工品質を訓練データセットとして学習する。これにより、例えば、データベース27に体系化して蓄積される将来仮想加工現象及び加工品質に関する情報量を増やすことができる。その結果、研削盤11によって研削加工される工作物Wの加工品質を向上させることができる。」
(エ)「【図2】
[図:0001413312000007.jpg]
」
ウ 甲6に記載された技術的事項
上記イを踏まえると、以下の技術的事項が理解できる。
(ア)「現実世界に配置され、且つ、工作物を加工する機械本体及び指令値に基づいて前記機械本体を制御する制御装置を備える工作機械と、
前記工作物及び前記機械本体における実加工現象を仮想世界における仮想加工現象として生成するコンピュータ装置と、
を備えたサイバーフィジカルシステム型加工システムにおいて、
前記コンピュータ装置は、加工現象演算部によって演算された将来仮想加工現象に基づいて、前記工作物に対する加工品質を推測する機械学習部を有しており、
最適指令値決定部は、
前記機械学習部によって推測された前記加工品質に基づいて最適指令値を決定すると共に前記制御装置に出力すること」(以下「甲6技術的事項1」という。)
(イ)「機械学習部28は、加工現象演算部23によって演算された将来仮想加工現象に基づいて、工作物Wに対する加工品質を推測するものであり、機械学習部28は、周知の機械学習技術(具体的には、機械学習プログラム)に基づき、将来仮想加工現象及び仮想工作物の加工品質を訓練データセットとして学習すること」(以下「甲6技術的事項2」という。)
ウ 相違点4についての当審の判断
甲6技術的事項1のサイバーフィジカルシステム型加工システムは、指令値に基づき工作機械の加工をコンピュータ上でシミュレーションをするものの、甲6技術的事項2のとおり、機械学習部28は、加工現象演算部23によって演算された将来仮想加工現象を入力として、仮想工作物の加工品質を推測して出力するものであって、最適指令値を推論して出力するものではない。
そうすると、甲6には、本件発明9の機械学習装置のような「前記加工結果から前記加工条件を推論するための推論モデルを生成する機械学習装置と、前記推論モデルを用いて、オペレータに入力された加工結果に対応する加工条件を決定する加工条件決定部と」が記載されているとはいえず、また示唆があるともいえない。
したがって、相違点4に係る本件発明9の発明特定事項は、甲1~甲6に基づき、当業者であれば容易になし得たものとはいえない。
よって、本件発明9は、甲1~甲6に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、本件発明9に係る特許は、特許法第29条第2項に違反してされたものとはいえず、取り消すことはできない。
(5)本件発明10について
本件発明10は、本件発明9を引用するからから、甲1の加工条件決定装置発明とは、少なくとも、上記相違点4で相違する。
そして、甲1~甲6には、相違点4に係る機械学習装置に関して記載も示唆もない。
すると、少なくとも上記相違点4に係る本件発明10の発明特定事項は、上記上記(4)ウで示した判断も考慮すれば、甲1~甲6に基づき、当業者であれば容易になし得たものとはいえない。
したがって、本件発明10は、甲1~甲6に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、本件発明10に係る特許は、特許法第29条第2項に違反してされたものとはいえず、取り消すことはできない。
(6)本件発明11について
本件発明11の加工条件決定方法は、本件発明9の加工条件決定装置を方法として特定したものであるから、発明のカテゴリーの相違に基づく表現上の差異を除けば、本件発明9と実質的な差違はなく、甲1の加工条件決定装置発明とは、少なくとも、上記相違点4と同様の点で相違する。
そして、相違点4と同様の点に係る本件発明11の発明特定事項は、上記(4)ウで示した判断のとおり、甲1~甲6に基づき、当業者であれば容易になし得たものとはいえない。
したがって、本件発明11は、甲1~甲6に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、本件発明11に係る特許は、特許法第29条第2項に違反してされたものとはいえず、取り消すことはできない。
(7)本件発明12について
本件発明12は、本件発明11を引用するから、甲1の加工条件決定装置発明とは、少なくとも、上記相違点4と同様の点で相違する。
そして、少なくとも上記相違点4と同様の点に係る本件発明12の発明特定事項は、上記(4)ウで示した判断も考慮すれば、甲1~甲6に基づき、当業者であれば容易になし得たものとはいえない。
したがって、本件発明12は、甲1~甲6に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、本件発明12に係る特許は、特許法第29条第2項に違反してされたものとはいえず、取り消すことはできない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知及び申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~2、4~7、9~12に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に、本件請求項1~2、4~7、9~12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件請求項3及び8に係る特許は、訂正により削除された。これにより、特許異議の申立てについて、請求項3及び8に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-700661