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特許異議申立

2025-700009

工場設備監視システム、工場設備監視方法及びプログラム

審判番号
2025-700009
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-094402
登録番号
7505919
請求日
2024年12月23日
審決日
2026年03月26日
公報発行日
2026年06月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】日鉄テックスエンジ株式会社
  • 【権利者代理人】國分 孝悦
  • 【異議申立人】宮崎 和幸
審判長/審判官
  • 審判長 鈴木 貴雄
  • 審判官 田々井 正吾
  • 審判官 刈間 宏信
分類
P1651.121-YAA(G05B) / P1651.113-YAA(G05B) / P1651.537-YAA(G05B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第120条の5第4項、特許法第36条、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7505919号発明「工場設備監視システム、工場設備監視方法及びプログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7505919号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕、〔11~13〕について訂正することを認める。 特許第7505919号の請求項1、6、10~11及び13に係る特許を維持する。 特許第7505919号の請求項2~5、7~9及び12に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 1 特許掲載公報の発行までの経緯 特許第7505919号(以下「本件特許」という。)の請求項1~13に係る特許についての出願は、令和2年5月29日に出願がされ、令和6年6月17日にその特許権の設定登録がされ、同月25日に特許掲載公報が発行された。 2 特許異議の申立て以降の経緯 本件特許についての特許異議の申立て以降の主な経緯は、次のとおりである。 (1)令和6年12月23日 特許異議申立人 宮崎 和幸(以下「申立人」という。)による、本件特許の請求項1~13に係る特許に対する特許異議の申立て (2)令和7年4月24日付け 取消理由通知書による取消理由の通知 (3)令和7年6月19日 特許権者 日鉄テックスエンジ株式会社(以下「特許権者」という。)による訂正請求書及び意見書の提出 (4)令和7年8月14日 特許権者による上記(3)の訂正請求書を補正する旨の手続補正書(方式)の提出 (5)令和7年9月11日 申立人による意見書の提出 (6)令和7年12月3日付け 取消理由通知書(決定の予告)による取消理由の通知(通知した取消理由を以下「本件取消理由」という。) (7)令和8年1月23日 特許権者による訂正請求書及び意見書の提出(以下、当該訂正請求書に係る訂正の請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求に係る訂正を「本件訂正」という。) (8)令和8年2月20日 申立人による意見書の提出 なお、本件訂正請求がされたから、上記(4)の手続補正書(方式)により補正がされた上記(3)の訂正請求書に係る訂正の請求(以下「先の訂正請求」という。)は、特許法120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 第2 本件訂正の適否 1 本件訂正請求の趣旨について 本件訂正請求の趣旨は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~13について訂正することを求める、というものである。 2 請求項1~10に係る訂正について (1)請求項1~10に係る訂正の内容 請求項1~10に係る訂正の内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正箇所を示すために、訂正前後の双方の特許請求の範囲に対して当審で付したものである。) ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「前記算出部で算出された前記温度差を時系列で表示する表示部と、 を有することを特徴とする工場設備監視システム。」 と記載されているのを、 「前記算出部で算出された前記温度差を時系列で表示する表示部と、 を有し、 前記算出部は、前記複数の温度センサに対して前記2つの温度センサに係る複数のグループを設定しており、前記複数のグループにおける前記2つの温度センサから複数の前記温度差を算出し、 前記表示部は、前記算出部で算出された前記複数の温度差を時系列で表示し、 前記2つの温度センサに係る前記複数のグループには、同一の前記駆動装置の異なる箇所に設置された前記2つの温度センサに係るグループと、異なる2つの前記駆動装置であって動力を出力する第1の駆動装置及び前記動力を入力する第2の駆動装置のそれぞれに設置された前記2つの温度センサに係るグループと、が含まれている ことを特徴とする工場設備監視システム。」 に訂正する。 (請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6及び10についても同様に訂正する。) イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 ウ 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 エ 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 オ 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 カ 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6に、 「請求項1乃至5のいずれか1項に記載の工場設備監視システム。」 と記載されているのを、 「請求項1に記載の工場設備監視システム。」 に訂正する。 (請求項6の記載を引用する請求項10についても同様に訂正する。) キ 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項7を削除する。 ク 訂正事項8 特許請求の範囲の請求項8を削除する。 ケ 訂正事項9 特許請求の範囲の請求項9を削除する。 コ 訂正事項10 特許請求の範囲の請求項10に、 「請求項1乃至9のいずれか1項に記載の工場設備監視システム。」 と記載されているのを、 「請求項1または6に記載の工場設備監視システム。」 に訂正する。 (2)一群の請求項について ア 本件訂正前の請求項1~6及び10について、請求項2~6及び10は請求項1を直接的又は間接的に引用し、請求項1が訂正されるから、訂正前の請求項1~6及び10に対応する訂正後の請求項1~6及び10は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項を構成する。 イ 本件訂正前の請求項7~10について、請求項8~10は請求項7を直接的又は間接的に引用し、請求項7が訂正されるから、訂正前の請求項7~10に対応する訂正後の請求項7~10は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項を構成する。 ウ 上記ア~イの一群の請求項は、請求項10を共通とするものであって、組み合わされて1つの一群の請求項となる(特許法施行規則45条の4)から、訂正前の請求項1~10に対応する訂正後の請求項1~10は、一群の請求項である。 (3)独立特許要件について 本件特許異議の申立ては、全ての請求項1~13を対象としているので、訂正事項1~10に関して、特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条7項の独立特許要件は課されない。 (4)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について ア 訂正事項1について (ア)訂正の目的について 訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に記載された「算出部」及び「表示部」について、「前記算出部は、前記複数の温度センサに対して前記2つの温度センサに係る複数のグループを設定しており、前記複数のグループにおける前記2つの温度センサから複数の前記温度差を算出し、前記表示部は、前記算出部で算出された前記複数の温度差を時系列で表示し、前記2つの温度センサに係る前記複数のグループには、同一の前記駆動装置の異なる箇所に設置された前記2つの温度センサに係るグループと、異なる2つの前記駆動装置であって動力を出力する第1の駆動装置及び前記動力を入力する第2の駆動装置のそれぞれに設置された前記2つの温度センサに係るグループと、が含まれている」という事項を新たに付加して限定するものであるから、その訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」に該当する。 (イ)新規事項の有無について a 訂正事項1のうち「前記算出部は、前記複数の温度センサに対して前記2つの温度センサに係る複数のグループを設定しており、前記複数のグループにおける前記2つの温度センサから複数の前記温度差を算出し、前記表示部は、前記算出部で算出された前記複数の温度差を時系列で表示」するという事項は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)の請求項4に記載されている。 b また、訂正事項1のうち「前記2つの温度センサに係る前記複数のグループには、同一の前記駆動装置の異なる箇所に設置された前記2つの温度センサに係るグループと、異なる2つの前記駆動装置であって動力を出力する第1の駆動装置及び前記動力を入力する第2の駆動装置のそれぞれに設置された前記2つの温度センサに係るグループと、が含まれている」という事項について、本件明細書等の【0023】には、「・・・算出部151は、温度差を算出する2つの無線温度センサに係る複数のグループとして、同一の駆動装置の異なる箇所に設置された2つの無線温度センサ(無線温度センサ121及び122、無線温度センサ123及び124)に係る第1のグループと、異なる2つの駆動装置のそれぞれに設置された2つの無線温度センサ(無線温度センサ124及び125)に係る第2のグループを含めて設定している。」と記載されるから、温度センサに係る複数のグループには、同一の駆動装置に係る第1のグループと、異なる2つの駆動装置に係る第2のグループが存在し、第2のグループは、無線温度センサ124及び125であることが理解できる。 c そして、第2のグループである、無線温度センサ124及び125について、本件明細書等の【0022】には、「・・・無線温度センサ124は、減速機112における入力側の軸受1122の温度を測定するべく、入力側の軸受1122に設置された無線温度センサである。また、無線温度センサ125は、電動機113における出力側の軸受1131の温度を測定するべく、出力側の軸受1131に設置された無線温度センサである。」と記載され、さらに、電動機113と減速機112の関係について、本件明細書等の【0012】には、「・・・電動機113は、電気エネルギーから機械的な動力を得る回転機の駆動装置であり、発生させた動力を減速機112に出力する。・・・減速機112は、電動機113から入力された動力の回転速度を歯車などで減じて搬送機111に出力する駆動装置である。・・・」と記載されているから、異なる2つの駆動装置(電動機113及び減速機112)であって動力を出力する第1の駆動装置(電動機113)及び前記動力を入力する第2の駆動装置(減速機112)のそれぞれに設置された前記2つの温度センサ(電動機113に設置された無線温度センサ125及び減速機112に設置された無線温度センサ124)に係るグループは、本件明細書等の【0012】、【0022】~【0023】から理解できる事項といえる。 d したがって、訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合する。 (ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 訂正事項1は、上記(ア)のとおり、本件訂正前の請求項1に記載された「算出部」及び「表示部」を限定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。 したがって、訂正事項1は、実質的に特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当せず、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合する。 (エ)申立人の主張について a 申立人は、令和8年2月20日に提出した意見書において、訂正事項1のうち「異なる2つの前記駆動装置であって動力を出力する第1の駆動装置及び前記動力を入力する第2の駆動装置のそれぞれに設置された前記2つの温度センサに係るグループと、が含まれている」という事項について、本件明細書等の【0012】及び【0022】には、「減速機112」及び「電動機113」が開示されるのみであるのに対して、上記の事項の「第1の駆動装置」は「電動機113」以外の実施形態を広く含み、「第2の駆動装置」は「減速機112」以外の実施形態を広く含むから、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正である旨を主張している。 b しかし、訂正事項1のうち「異なる2つの前記駆動装置」は、本件明細書等の請求項3に記載されており、当該「前記駆動装置」が「減速機112」及び「電動機113」のみに限定されているわけではないことは明らかである。 したがって、訂正事項1に係る訂正により、実質上特許請求の範囲が拡張され、又は変更されたわけではないから、申立人の上記の主張は採用できない。 イ 訂正事項2~5及び7~9について (ア)訂正の目的について 訂正事項2~5及び7~9は、訂正前の請求項2~5及び7~9をそれぞれ削除するものであるから、その訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」に該当する。 (イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 訂正事項2~5及び7~9は、請求項2~5及び7~9を削除するものであるため、本件明細書等に記載した事項の範囲内において訂正するものであることや、発明のカテゴリーや対象、目的を変更する訂正でないことは明らかであるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に適合する。 ウ 訂正事項6及び10について (ア)訂正の目的について 訂正事項6及び10は、訂正前の請求項6及び10が引用する請求項の選択範囲を削除して減少させるものであるから、その訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」に該当する。 (イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 訂正事項6及び10は、訂正前の請求項6及び10が引用する請求項の選択範囲を削除して減少させるものであるため、本件明細書等に記載した事項の範囲内において訂正するものであることや、発明のカテゴリーや対象、目的を変更する訂正でないことは明らかであるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に適合する。 3 請求項11~13に係る訂正について (1)請求項11~13に係る訂正の内容 請求項11~13に係る訂正の内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正箇所を示すために、訂正前後の双方の特許請求の範囲に対して当審で付したものである。) ア 訂正事項11 特許請求の範囲の請求項11に、 「前記算出ステップで算出された前記温度差を時系列で表示する表示ステップと、 を有することを特徴とする工場設備監視方法。」 と記載されているのを、 「前記算出ステップで算出された前記温度差を時系列で表示する表示ステップと、 を有し、 前記算出ステップは、前記複数の温度センサに対して前記2つの温度センサに係る複数のグループを設定しており、前記複数のグループにおける前記2つの温度センサから複数の前記温度差を算出し、 前記表示ステップは、前記算出ステップで算出された前記複数の温度差を時系列で表示し、 前記2つの温度センサに係る前記複数のグループには、同一の前記駆動装置の異なる箇所に設置された前記2つの温度センサに係るグループと、異なる2つの前記駆動装置であって動力を出力する第1の駆動装置及び前記動力を入力する第2の駆動装置のそれぞれに設置された前記2つの温度センサに係るグループと、が含まれている ことを特徴とする工場設備監視方法。」 に訂正する。 (請求項11記載を引用する請求項13についても同様に訂正する。) イ 訂正事項12 特許請求の範囲の請求項12を削除する。 ウ 訂正事項13 特許請求の範囲の請求項13に、 「請求項11または12に記載の工場設備監視方法における各ステップを実行させるためのプログラム。」 と記載されているのを、 「請求項11に記載の工場設備監視方法における各ステップを実行させるためのプログラム。」 に訂正する。 (2)一群の請求項について ア 本件訂正前の請求項11及び13について、請求項13は請求項11を引用し、請求項11が訂正されるから、訂正前の請求項11及び13に対応する訂正後の請求項11及び13は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項を構成する。 イ 本件訂正前の請求項12~13について、請求項13は請求項12を引用し、請求項12が訂正されるから、訂正前の請求項12~13に対応する訂正後の請求項12~13は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項を構成する。 ウ 上記ア~イの一群の請求項は、請求項13を共通とするものであって、組み合わされて1つの一群の請求項となる(特許法施行規則45条の4)から、訂正前の請求項11~13に対応する訂正後の請求項11~13は、一群の請求項である。 (3)独立特許要件について 本件特許異議の申立ては、全ての請求項1~13を対象としているので、訂正事項11~13に関して、特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条7項の独立特許要件は課されない。 (4)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について ア 訂正事項11について (ア)訂正の目的について 訂正事項11は、本件訂正前の請求項11に記載された「算出ステップ」及び「表示ステップ」について、「前記算出ステップは、前記複数の温度センサに対して前記2つの温度センサに係る複数のグループを設定しており、前記複数のグループにおける前記2つの温度センサから複数の前記温度差を算出し、前記表示ステップは、前記算出ステップで算出された前記複数の温度差を時系列で表示し、前記2つの温度センサに係る前記複数のグループには、同一の前記駆動装置の異なる箇所に設置された前記2つの温度センサに係るグループと、異なる2つの前記駆動装置であって動力を出力する第1の駆動装置及び前記動力を入力する第2の駆動装置のそれぞれに設置された前記2つの温度センサに係るグループと、が含まれている」という事項を新たに付加して限定するものであるから、その訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」に該当する。 (イ)新規事項の有無について 訂正事項11のうち「前記算出ステップは、前記複数の温度センサに対して前記2つの温度センサに係る複数のグループを設定しており、前記複数のグループにおける前記2つの温度センサから複数の前記温度差を算出し、前記表示ステップは、前記算出ステップで算出された前記複数の温度差を時系列で表示し」という事項は、本件明細書等の請求項4の「算出部」及び「表示部」が行う機能として、実質的に記載されているといえる。 また、訂正事項11のうち「前記2つの温度センサに係る前記複数のグループには、同一の前記駆動装置の異なる箇所に設置された前記2つの温度センサに係るグループと、異なる2つの前記駆動装置であって動力を出力する第1の駆動装置及び前記動力を入力する第2の駆動装置のそれぞれに設置された前記2つの温度センサに係るグループと、が含まれている」という事項は、訂正事項1と同じ内容であるから、訂正事項1について検討したとおり、本件明細書等の【0012】、【0022】~【0023】から理解できる事項といえる。 したがって、訂正事項11は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合する。 (ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 訂正事項11は、上記(ア)のとおり、本件訂正前の請求項11に記載された「算出ステップ」及び「表示ステップ」を限定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。 したがって、訂正事項11は、実質的に特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当せず、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合する。 イ 訂正事項12について (ア)訂正の目的について 訂正事項12は、訂正前の請求項12を削除するものであるから、その訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」に該当する。 (イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 訂正事項12は、請求項12を削除するものであるため、本件明細書等に記載した事項の範囲内において訂正するものであることや、発明のカテゴリーや対象、目的を変更する訂正でないことは明らかであるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に適合する。 ウ 訂正事項13について (ア)訂正の目的について 訂正事項13は、訂正前の請求項13が引用する請求項の選択範囲を削除して減少させるものであるから、その訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」に該当する。 (イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 訂正事項13は、訂正前の請求項13が引用する請求項の選択範囲を削除して減少させるものであるため、本件明細書等に記載した事項の範囲内において訂正するものであることや、発明のカテゴリーや対象、目的を変更する訂正でないことは明らかであるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に適合する。 4 明細書に係る訂正について (1)明細書に係る訂正の内容 明細書に係る訂正の内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正箇所を示すために、訂正前後の双方の特許請求の範囲に対して当審で付したものである。) 訂正事項14 訂正前の【0006】に 「本発明の工場設備監視システムは、複数の駆動装置を含み構成された工場設備の状態変化を監視する工場設備監視システムであって、前記工場設備の複数の箇所に設置され、当該設置された前記工場設備の複数の箇所の温度を測定する複数の温度センサと、前記複数の温度センサのうちの2つの温度センサで測定された温度の温度差を算出する算出部と、前記算出部で算出された前記温度差を時系列で表示する表示部と、を有する。 本発明の工場設備監視システムにおける他の態様は、同種の複数の駆動装置を含み構成された工場設備の状態変化を監視する工場設備監視システムであって、前記複数の駆動装置のそれぞれに設置され 、当該設置された前記複数の駆動装置のそれぞれの温度を測定する複数の駆動装置温度センサと、前記工場設備の周囲における環境温度を測定する環境温度センサと、前記複数の駆動装置温度センサで測定された複数の温度におけるそれぞれの温度と前記環境温度センサで測定された温度との差である複数の温度差を算出する算出部と、前記算出部で算出された前記複数の温度差を時系列で表示する表示部と、を有する。 また、本発明は、上述した工場設備監視システムによる工場設備監視方法、及び、当該工場設備監視方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを含む。」 と記載されているのを 「本発明の工場設備監視システムは、複数の駆動装置を含み構成された工場設備の状態変化を監視する工場設備監視システムであって、前記工場設備の複数の箇所に設置され、当該設置された前記工場設備の複数の箇所の温度を測定する複数の温度センサと、前記複数の温度センサのうちの2つの温度センサで測定された温度の温度差を算出する算出部と、前記算出部で算出された前記温度差を時系列で表示する表示部と、を有し、前記算出部は、前記複数の温度センサに対して前記2つの温度センサに係る複数のグループを設定しており、前記複数のグループにおける前記2つの温度センサから複数の前記温度差を算出し、前記表示部は、前記算出部で算出された前記複数の温度差を時系列で表示し、前記2つの温度センサに係る前記複数のグループには、同一の前記駆動装置の異なる箇所に設置された前記2つの温度センサに係るグループと、異なる2つの前記駆動装置であって動力を出力する第1の駆動装置及び前記動力を入力する第2の駆動装置のそれぞれに設置された前記2つの温度センサに係るグループと、が含まれている。 また、本発明は、上述した工場設備監視システムによる工場設備監視方法、及び、当該工場設備監視方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを含む。」 に訂正する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について ア 訂正の目的について 訂正事項14は、明細書の【0006】の記載を請求項1の記載と整合させるものであるから、その訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」に該当する。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 訂正事項14は、明細書の【0006】の記載を訂正事項1に係る請求項1の記載と同様に訂正するものであるから、訂正事項1と同様に、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に適合する。 (3)明細書に係る訂正と関係する請求項について 【0006】に係る訂正事項14は、一群の請求項1~10及び一群の請求項11~13に関係するものである。 5 本件訂正の小括 上記2~4のとおり、本件訂正は、訂正の要件をすべて満たすものであるから、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項〔1~10〕、〔11~13〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり本件訂正は認容されたから、本件特許の請求項1、6、10~11、13に係る発明(以下、各請求項に係る発明を「本件発明1」などという。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~13に記載された、以下の事項により特定されるとおりのものである。なお、請求項2~5、7~9、12は削除された。 「【請求項1】 複数の駆動装置を含み構成された工場設備の状態変化を監視する工場設備監視システムであって、 前記工場設備の複数の箇所に設置され、当該設置された前記工場設備の複数の箇所の温度を測定する複数の温度センサと、 前記複数の温度センサのうちの2つの温度センサで測定された温度の温度差を算出する算出部と、 前記算出部で算出された前記温度差を時系列で表示する表示部と、 を有し、 前記算出部は、前記複数の温度センサに対して前記2つの温度センサに係る複数のグループを設定しており、前記複数のグループにおける前記2つの温度センサから複数の前記温度差を算出し、 前記表示部は、前記算出部で算出された前記複数の温度差を時系列で表示し、 前記2つの温度センサに係る前記複数のグループには、同一の前記駆動装置の異なる箇所に設置された前記2つの温度センサに係るグループと、異なる2つの前記駆動装置であって動力を出力する第1の駆動装置及び前記動力を入力する第2の駆動装置のそれぞれに設置された前記2つの温度センサに係るグループと、が含まれている ことを特徴とする工場設備監視システム。 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 (削除) 【請求項5】 (削除) 【請求項6】 前記複数の温度センサは、無線センサである ことを特徴とする請求項1に記載の工場設備監視システム。 【請求項7】 (削除) 【請求項8】 (削除) 【請求項9】 (削除) 【請求項10】 前記表示部は、前記温度差が所定の範囲を外れた場合、警告表示を更に行う ことを特徴とする請求項1または6に記載の工場設備監視システム。 【請求項11】 複数の駆動装置を含み構成された工場設備の状態変化を監視する工場設備監視システムによる工場設備監視方法であって、 前記工場設備監視システムは、前記工場設備の複数の箇所に設置され、当該設置された前記工場設備の複数の箇所の温度を測定する複数の温度センサを備えており、 前記複数の温度センサのうちの2つの温度センサで測定された温度の温度差を算出する算出ステップと、 前記算出ステップで算出された前記温度差を時系列で表示する表示ステップと、 を有し、 前記算出ステップは、前記複数の温度センサに対して前記2つの温度センサに係る複数のグループを設定しており、前記複数のグループにおける前記2つの温度センサから複数の前記温度差を算出し、 前記表示ステップは、前記算出ステップで算出された前記複数の温度差を時系列で表示し、 前記2つの温度センサに係る前記複数のグループには、同一の前記駆動装置の異なる箇所に設置された前記2つの温度センサに係るグループと、異なる2つの前記駆動装置であって動力を出力する第1の駆動装置及び前記動力を入力する第2の駆動装置のそれぞれに設置された前記2つの温度センサに係るグループと、が含まれている ことを特徴とする工場設備監視方法。 【請求項12】 (削除) 【請求項13】 コンピュータに、請求項11に記載の工場設備監視方法における各ステップを実行させるためのプログラム。」 第4 本件取消理由の概要 先の訂正請求によって訂正される請求項1、6、10~11、13に係る特許に対して、当審が令和7年12月3日付けで特許権者に通知した本件取消理由の概要は、次のとおりである。 1 甲第8号証を主引用例とする進歩性の取消理由 本件発明1、11及び13は、甲第8号証に記載された発明及び甲第1号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明6及び10は、甲第8号証に記載された発明、甲第1号証及び甲第5号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、6、10~11及び13に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 2 本件取消理由で引用する証拠 甲第1号証:特開2015-231295号公報 甲第5号証:特開平11-161345号公報 甲第8号証:特開2005-238399号公報 第5 本件取消理由の当審の判断 1 申立人が提出した証拠 申立人が特許異議申立書に添付して提出した証拠(書証)は、以下のとおりである。 甲第1号証:上記第4の2のとおり。 甲第2号証:米国特許第5794446号明細書 甲第3号証:特開2009-137083号公報 甲第4号証:米国特許出願公開第2015/0168268号明細書 甲第5号証:上記第4の2のとおり。 甲第6号証:特開2020-18208号公報 甲第7号証:米国特許第5131230号明細書 甲第8号証:上記第4の2のとおり。 (以下、各甲号証を「甲1」などという。) 2 甲8の記載から理解できる事項及び発明 (1)甲8の記載から理解できる事項 甲8に記載された事項から、当業者であれば、以下の事項を理解できる。なお、括弧内に甲8の参照箇所を付記する。 ア 甲8には、2つの主軸を有する工作機械の温度差異常を判定する手段が開示されており(【0005】)、工作機械本体1は、主軸3を有する加工部6と主軸4を有する加工部7を構成し(図1)、左右の加工部6及び7は、互いに左右対象であるが、その他については、同じ仕様のものであり(【0011】)、互いに同じ素材ワークWを同じ形状に加工する(【0014】)。 イ 加工部6及び7は、上記アのとおり、互いに左右対象であるほかは同じ仕様のものであるから、同種の加工部といえる。 ウ 異なる2つの加工部6及び7の主軸3及び4の近傍に、主軸3の温度を計測する温度検出手段34及び主軸4の温度を計測する温度検出手段35を設けており(図1)、温度差異常判定手段28は、各温度検出手段34及び35の検出信号を監視し、主軸3の温度検出手段34の検出温度と、主軸4の温度検出手段35の検出温度との差が所定値以上となったときに異常と判定し、警告信号を出力する(【0017】~【0018】)。 エ 上記ウから、温度差異常判定手段28が、温度検出手段34の検出温度と、温度検出手段35の検出温度との差を算出することは明らかである。 オ 異常判定手段27は、温度差異常判定手段28を有している。(【0015】) (2)甲8発明 上記(1)ア~オの技術的事項を、本件発明1の記載に沿って整理すると、甲8には、次の発明(以下「甲8発明」という。)が記載されているといえる。なお、括弧内に、甲8発明の用語に対応する本件発明1の用語を付記する。 「2つの加工部6及び7(複数の駆動装置)を含み構成された工作機械(工場設備)の温度差異常(状態変化)を監視する工作機械の異常判定手段27(工場設備監視システム)であって、 前記工作機械の主軸3及び4の近傍(複数の箇所)に設置され、当該設置された前記工作機械の主軸3及び4の温度(複数の箇所の温度)を測定する温度検出手段34及び35(複数の温度センサ)と、 前記温度検出手段34の検出温度と、前記温度検出手段35の検出温度との差(複数の温度センサのうちの2つの温度センサで測定された温度の温度差)を算出する温度差異常判定手段28(算出部)と、 を有し、 前記温度差異常判定手段28は、異なる2つの前記加工部6及び7の前記主軸3及び4のそれぞれの近傍に設置された2つの前記温度検出手段34及び35で検出された温度の温度差を算出する、 異常判定手段27。」 3 甲8を主引用例とする進歩性について (1)本件発明1の進歩性について ア 本件発明1の認定 本件発明1は、上記第3の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。 イ 本件発明1と甲8発明の対比 本件発明1と甲8発明を対比すると、甲8発明の「2つの加工部6及び7」が本件発明1の「複数の駆動装置」に相当することは明らかであり、以下同様に、「工作機械」が「工場設備」に、「温度差異常」が「状態変化」に、「工作機械の異常判定手段27」が「工場設備監視システム」に、「前記工作機械の主軸3及び4の近傍」が「前記工場設備の複数の箇所」に、「主軸3及び4の温度」が「複数の箇所の温度」に、「温度検出手段34及び35」が「複数の温度センサ」に、「前記温度検出手段34の検出温度と、前記温度検出手段35の検出温度との差」が「複数の温度センサのうちの2つの温度センサで測定された温度の温度差」に、「温度差異常判定手段28」が「算出部」に、それぞれ相当する。 ウ 本件発明1と甲8発明の一致点及び相違点 したがって、本件発明1と甲8発明は、以下の点で一致し、以下の相違点1及び2で相違する。 [一致点] 「複数の駆動装置を含み構成された工場設備の状態変化を監視する工場設備監視システムであって、 前記工場設備の複数の箇所に設置され、当該設置された前記工場設備の複数の箇所の温度を測定する複数の温度センサと、 前記複数の温度センサのうちの2つの温度センサで測定された温度の温度差を算出する算出部と、 を有する工場設備監視システム。」 [相違点1] 本件発明1は、「前記算出部は、前記複数の温度センサに対して前記2つの温度センサに係る複数のグループを設定しており、前記複数のグループにおける前記2つの温度センサから複数の前記温度差を算出」し、「前記2つの温度センサに係る前記複数のグループには、同一の前記駆動装置の異なる箇所に設置された前記2つの温度センサに係るグループと、異なる2つの前記駆動装置であって動力を出力する第1の駆動装置及び前記動力を入力する第2の駆動装置のそれぞれに設置された前記2つの温度センサに係るグループと、が含まれている」のに対して、甲8発明は、算出部(温度差異常判定手段28)は、異なる2つの駆動装置(異なる2つの前記加工部6及び7)のそれぞれに設置された2つの温度センサ(温度検出手段34及び35)の温度差を算出する点。 [相違点2] 本件発明1は、「前記算出部で算出された前記温度差を時系列で表示する表示部」を有し、「前記表示部は、前記算出部で算出された前記複数の温度差を時系列で表示」するのに対して、甲8発明は、表示部を備えていない点。 エ 相違点の判断 相違点1について検討すると、「算出部」において、「異なる2つの前記駆動装置であって動力を出力する第1の駆動装置及び前記動力を入力する第2の駆動装置のそれぞれに設置された前記2つの温度センサに係るグループ」が含まれるように2つの温度センサに係る複数のグループを設定することは、申立人が提出した甲1~甲7には記載されていないから、相違点1は、甲8発明及び甲1~甲7の記載に基づいて当業者が容易に想到できたものとはいえない。 なお、申立人は、令和8年2月20日に提出した意見書において、甲8を主引用例とする進歩性について、意見を述べていない。 オ 本件発明1の進歩性の小括 したがって、本件発明1は、相違点2について検討するまでもなく、甲8発明及び甲1~甲7の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2)本件発明6及び10の進歩性について 本件発明6及び10は、上記第3の請求項6及び10に記載された事項により特定されるとおりのものであって、本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て含むから、甲8発明と対比すると、少なくとも相違点1で相違する。 そして、相違点1は、上記(1)エのとおり、甲8発明及び甲1~甲7の記載に基づいて当業者が容易に想到できたものとはいえないから、本件発明6及び10は、甲8発明及び甲1~甲7の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)本件発明11の進歩性について 本件発明11は、上記第3の請求項11に記載された事項により特定されるとおりのものであって、相違点1に係る本件発明1の「異なる2つの前記駆動装置であって動力を出力する第1の駆動装置及び前記動力を入力する第2の駆動装置のそれぞれに設置された前記2つの温度センサに係るグループ」と同じ事項が特定されている。 また、甲8には、甲8発明の「異常判定手段27」により、工場設備の状態変化を監視する方法の発明(以下「甲8の方法発明」という。)についても実質的に記載されているといえる。 そして、本件発明11と甲8の方法発明を対比すると、少なくとも相違点1と同様の点で相違することは明らかであり、相違点1と同様の相違点は、上記(1)エと同様に、甲8の方法発明及び甲1~甲7の記載に基づいて当業者が容易に想到できたものとはいえないから、本件発明11は、甲8の方法発明及び甲1~甲7の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)本件発明13の進歩性について 本件発明13は、上記第3の請求項13に記載された事項により特定されるとおりのものであって、本件発明11を引用し、本件発明11の発明特定事項を全て含むから、甲8の方法発明と対比すると、少なくとも相違点1と同様の点で相違する。 そして、相違点1と同様の相違点は、上記(3)のとおり、甲8の方法発明及び甲1~甲7の記載に基づいて当業者が容易に想到できたものとはいえないから、本件発明13は、甲8の方法発明及び甲1~甲7の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 第6 本件取消理由で採用しなかった特許異議申立理由について 1 特許異議申立理由の概要 申立人による特許異議申立理由は、以下のとおり整理することができる。 (1)甲1による新規性の理由(特許法29条1項3号) 本件訂正前の請求項1~4、10~11、13に係る発明は、甲1に記載された発明である。 (2)甲2による新規性の理由(特許法29条1項3号) 本件訂正前の請求項1、4、10~11、13に係る発明は、甲2に記載された発明である。 (3)甲1による進歩性の理由(特許法29条2項) 本件訂正前の請求項1~13に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲3~6、8に記載された事項から容易に発明をすることができたものである。 (4)甲2による進歩性の理由(特許法29条2項) 本件訂正前の請求項1~2、4、6、10~11、13に係る発明は、甲2に記載された発明及び甲1、4、5、7に記載された事項から容易に発明をすることができたものである。 (5)サポート要件の理由(特許法36条6項1号) 本件訂正前の請求項1~13は、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである。 (6)明確性の理由(特許法36条6項2号) 本件訂正前の請求項1~13は、明確でない。 2 甲1又は甲2を主引用例とする新規性及び進歩性の理由の判断 上記第5の3(1)エ及び同(3)で説示するとおり、相違点1に係る本件発明1の構成及び相違点1と同様の相違点に係る本件発明11の構成は、申立人が提出した甲1~甲8のいずれにも記載されていないから、甲1又は甲2を主引用例とする新規性及び進歩性の理由(上記1(1)~(4))により、本件発明1、6、10~11及び13に係る特許を取り消すことはできない。 3 サポート要件の理由の判断 (1)サポート要件の理由の要旨 ア 本件訂正前の特許発明の課題は、「複数の駆動装置を含み構成された工場設備の状態変化を監視する」(【0001】)ことであるが、実質的には、【0020】~【0023】に記載されるように、駆動装置である搬送機111、減速機112、動力伝達機構等の内部機構の状態変化(例えば、故障や劣化などの異常)の有無を把握して報知することであり、本件発明の詳細な説明に開示された、いずれの例においても駆動装置は軸受を有するが、本件訂正前の請求項1、7、11及び12の記載のみでは軸受を有さない駆動装置も含まれる。 本件訂正前の請求項1、7、11及び12は、軸受を有さない駆動装置を含む上に、複数の温度センサが工場設備のどこに設けられてもよいことになり、「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものである。 したがって、本件訂正前の特許発明1~13は、サポート要件を満たさない。 イ 本件訂正前の請求項3の「異なる2つの前記駆動装置のそれぞれに設置された前記2つの温度センサ」という記載は、「異なる2つの前記駆動装置のそれぞれに2つずつ設置された前記2つの温度センサ」と解する余地があるが、「異なる2つの前記駆動装置のそれぞれに2つずつ設置された前記2つの温度センサ」は、発明の詳細な説明に開示されていないから、本件訂正前の特許発明3~6及び10は、サポート要件を満たさない。 (2)サポート要件の理由の判断 ア 本件発明1及び11は、駆動装置の内部機能の状態の変化が、温度の変化として現れること(本件明細書等の【0020】~【0021】)や、複数の駆動装置における動力伝達機構の状態の変化が、温度の変化として現れること(同【0022】)に着目して、温度の変化により状態変化を把握する(同【0025】)ことで、「複数の駆動装置を含み構成された工場設備の状態変化を監視する」(同【0001】)という課題を解決するものであると解される。したがって、本件発明の詳細な説明に接した当業者であれば、駆動装置の内部状態の変化が温度差として現れるような位置や、複数の駆動装置における動力伝達機構の状態の変化が、温度差として現れるような位置に、温度センサを設けることは当然である。そして、本件発明1及び11は、2つの温度センサの温度差を算出することや、温度差を時系列で表示することが特定されているから、軸受の有無にかかわらずに、課題を解決できることは明らかである。 したがって、上記(1)アのサポート要件の理由によって、本件発明1、6、10~11及び13に係る特許を取り消すことはできない。 イ 本件訂正前の請求項3は削除されたが、「それぞれに設置された前記2つの温度センサ」という事項は、本件発明1及び11の発明特定事項にも含まれているので、本件発明1及び11のサポート要件として判断する。 以下の4(2)アに説示するとおり、本件発明1及び11の「それぞれに設置された前記2つの温度センサ」という事項について、「それぞれに2つずつ設置された前記2つの温度センサ」と解する余地はないから、上記(1)イのサポート要件の理由によって、本件発明1、6、10~11及び13に係る特許を取り消すことはできない。 4 明確性の理由の判断 (1)明確性の理由の概要 ア 本件訂正前の請求項1、7、11及び12は、「駆動装置」の定義が明確でないから、駆動装置が回転軸や軸受を有さない装置を含むのか否かが明確でない。 したがって、本件訂正前の特許発明1~13は、明確性の要件を満たさない。 イ 本件訂正前の請求項3の「異なる2つの前記駆動装置のそれぞれに設置された前記2つの温度センサ」という記載は、「異なる2つの前記駆動装置のそれぞれに2つずつ設置された前記2つの温度センサ」と解する余地があり、明確でないから、本件訂正前の特許発明3~6及び10は、明確性の要件を満たさない。 (2)明確性の理由の判断 ア 上記3(2)アで説示するとおり、本件発明1及び11は、駆動装置の内部機能の状態の変化が、温度の変化として現れることや、複数の駆動装置における動力伝達機構の状態の変化が、温度の変化として現れることに着目したものであるから、当業者であれば、本件発明1及び11の駆動装置について、内部機能の状態変化が、温度の変化として現れるものを意味することや、動力伝達機構の状態の変化が、温度の変化として現れるものを意味することを明確に理解するといえる。 したがって、本件発明1及び11の駆動装置は明確であり、上記(1)アの明確性の理由によって、本件発明1、6、10~11及び13に係る特許を取り消すことはできない。 イ 本件訂正前の請求項3は削除されたが、「それぞれに設置された前記2つの温度センサ」という事項は、本件発明1及び11の発明特定事項にも含まれているので、本件発明1及び11の明確性として判断する。 特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 そして、本件明細書等、及び技術常識を考慮した当業者であれば、本件発明1及び11における「それぞれに設置された前記2つの温度センサ」という事項は、第1の駆動装置と第2の駆動装置の温度差を測定するためにそれぞれに1つずつ設置された合わせて2つの温度センサを意味すると理解し、第1の駆動装置と第2の駆動装置のそれぞれに2つずつ設置された2つの温度センサと理解する余地はない。 したがって、本件発明3の「それぞれに設置された前記2つの温度センサ」という事項は明確であり、上記(1)イの明確性の理由によって、本件発明3~6及び10に係る特許を取り消すことはできない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、本件取消理由及び特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1、6、10~11及び13に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1、6、10~11及び13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 一方、本件特許の請求項2~5、7~9及び12は、本件訂正により削除された。これにより、申立人による請求項2~5、7~9及び12に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700009

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