2024-700141
封止用液状エポキシ樹脂組成物及び電子部品装置
- 審判番号
- 2024-700141
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-514646外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7343977
- 請求日
- 2024年02月16日
- 審決日
- 2024年06月05日
- 公報発行日
- 2024年07月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社レゾナック
- 【権利者代理人】弁理士法人太陽国際特許事務所
- 【異議申立人】松本 文彦
- 分類
- P1651.121-Y (C08L) / P1651.536-Y (C08L) / P1651.537-Y (C08L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 14項目
第1 手続の経緯
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特許第7343977号(以下「本件特許」という。)に係る特願2018-514646号は、平成29年4月25日(優先権主張 平成28年4月28日)を国際出願日とする出願であって、令和5年9月5日にその特許権の設定登録(請求項の数7)がされ、同年同月13日に特許掲載公報が発行されたものであり、その後、令和6年2月16日に、本件の請求項1~7に係る特許に対して、特許異議申立人 松本 文彦(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~7に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明7」といい、これらをまとめて「本件発明」という。また、本件特許の願書に添付された明細書を「本件明細書」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】エポキシ樹脂と、硬化剤と、コアシェル構造を有する粒子と、を含み、前記コアシェル構造を有する粒子は、架橋ポリシロキサンを含むコア部と、エポキシ基を有する構成単位の含有率が10質量%以上である重合体を含むシェル部と、を有し、前記硬化剤が、液状芳香族アミン化合物を含む、封止用液状エポキシ樹脂組成物。続きを表示(全16行)【請求項2】前記重合体が、ビニル重合により得られる重合体である、請求項1に記載の封止用液状エポキシ樹脂組成物。【請求項3】前記重合体が、メチルメタクリレートとグリシジルメタクリレートとの共重合体である請求項1又は請求項2に記載の封止用液状エポキシ樹脂組成物。【請求項4】前記架橋ポリシロキサンの含有率が、前記コアシェル構造を有する粒子のコア部及びシェル部の総質量に対して50質量%~70質量%である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の封止用液状エポキシ樹脂組成物。【請求項5】シランカップリング剤をさらに含有する請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の封止用液状エポキシ樹脂組成物。【請求項6】前記重合体における前記エポキシ基を有する構成単位の含有率が10質量%~50質量%である、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の封止用液状エポキシ樹脂組成物。【請求項7】請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の封止用液状エポキシ樹脂組成物で封止された素子を備えた電子部品装置。」
第3 申立理由の概要
特許異議申立書に記載された申立理由は、以下のとおりである。
1 申立理由1(甲第1号証を主引例とする進歩性)
本件発明1~7は、本件特許の優先日前日本国内又は外国において頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲第2号証の1~甲第3号証の5)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 申立理由2(サポート要件)
請求項1~7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
3 申立理由3(実施可能要件)
請求項1~7に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
4 申立理由4(明確性要件)
請求項1~5、7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
5 証拠方法
甲第1号証 特開2013-64152号公報
甲第2号証の1 特開2014-221922号公報
甲第2号証の2 特開2012-162585号公報
甲第2号証の3 特開2009-91510号公報
甲第3号証の1 特開2014-111730号公報
甲第3号証の2 国際公開第2012/093631号
甲第3号証の3 特開2010-174066号公報
甲第3号証の4 山口克己、「3.コアシェル型ゴム粒子(CSR)分散技術」、接着の技術、日本接着学会、2009年、第29巻、第2号、14-20頁
甲第3号証の5 国際公開第2006/019041号
甲第4号証 特許第7343977号公報(本件特許公報)
(以下「甲第1号証」、「甲第2号証の1」等を、それぞれ「甲1」、「甲2の1」等という。)
第4 当審の判断
以下に述べるとおり、当審は、申立人が申し立てる申立理由はいずれもその理由がないものと判断する。
1 申立理由1(甲1を主引例とする進歩性)について
(1)本件発明1について
ア 甲1に記載された発明(当審注:下線は当審による。以下同じ)
甲1には、半導体装置のアンダーフィル材として用いられる電子部品用液状樹脂組成物について、狭ギャップでの流動性が良好であり、電子部品構成部材との接着性、低応力性に優れた電子部品用液状樹脂組成物を提供することを目的とすることが記載されており(【0002】、【0005】、【0006】)、硬化剤として、「液状芳香族アミンを含む硬化剤」を用いると、各種電子部品構成部材との耐湿接着力が向上して耐湿信頼性に優れ、低応力剤として、「シリコーン重合体粒子」を使用することで信頼性も高く低応力効果に優れるものとなったことが記載されている(【0007】)。
また、甲1の【0029】及び【0030】には、「(C)成分のシリコーン重合体粒子」は主に可撓性を向上させるために使用され、ポリオルガノシロキサンを架橋したシリコーンゴム粒子や、これらのシリコーンゴム粒子の表面をシリコーンレジンで被覆したもの等が挙げられることや、さらに、固形シリコーン重合体のコアとアクリル樹脂又はアクリル樹脂共重合体などの有機重合体のシェルからなるコア-シェル重合体粒子などを用いることができることが記載されている。
そして、実施例2及び4には、「コア層がジメチル型固形シリコーンでシェル層がアクリル樹脂で構成」された「シリコーン微粒子2」を含む電子部品用液状樹脂組成物を作製し、初期及び加湿時の接着性等を評価したことが記載されている(【0082】~【0086】)。
そこで、甲1の特許請求の範囲(請求項1)、【0029】及び【0030】並びに実施例2及び4の記載に着目すると、以下の発明が記載されていると認められる。
「電子部品の封止に用いられる電子部品用液状樹脂組成物であって、(A)液状エポキシ樹脂、(B)液状芳香族アミンを含む硬化剤、(C)シリコーン重合体粒子、を含み、前記シリコーン重合体粒子は、固形シリコーン重合体のコアと、アクリル樹脂又はアクリル樹脂共重合体などの有機重合体のシェルとからなるコア-シェル重合体粒子である、電子部品の封止に用いられる電子部品用液状樹脂組成物。」(以下「甲1発明」という。)
イ 対比
(ア)本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「(A)液状エポキシ樹脂」、「(B)液状芳香族アミンを含む硬化剤」は、それぞれ、本件発明1の「エポキシ樹脂」、「液状芳香族アミン化合物を含む」「硬化剤」に相当する。
そして、甲1発明の「電子部品の封止に用いられる電子部品用液状樹脂組成物」は、「(A)液状エポキシ樹脂」を含むから、本件発明1の「封止用液状エポキシ樹脂組成物」に相当する。
また、甲1発明の「固形シリコーン重合体のコアと、アクリル樹脂又はアクリル樹脂共重合体などの有機重合体のシェルとからなるコア-シェル重合体粒子」である「(C)シリコーン重合体粒子」は、本件発明1の「架橋ポリシロキサンを含むコア部と、エポキシ基を有する構成単位の含有率が10質量%以上である重合体を含むシェル部と、を」有する「コアシェル構造を有する粒子」と、「コアシェル構造を有する粒子」である点で共通する。
(イ)そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「エポキシ樹脂と、硬化剤と、コアシェル構造を有する粒子と、を含み、前記硬化剤が、液状芳香族アミン化合物を含む、封止用液状エポキシ樹脂組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点>
コアシェル構造を有する粒子が、本件発明1においては、「架橋ポリシロキサンを含むコア部と、エポキシ基を有する構成単位の含有率が10質量%以上である重合体を含むシェル部と、を」有するものであるのに対し、甲1発明においては、「固形シリコーン重合体のコアと、アクリル樹脂又はアクリル樹脂共重合体などの有機重合体のシェルとからなる」ものである点
ウ 相違点についての判断
(ア)甲1には、上記アのとおり記載されており、「(C)シリコーン重合体粒子」について、【0029】及び【0030】の記載の他、実施例1~7(【0082】~【0086】)には、「コア層がジメチル型固形シリコーンでシェル層がアクリル樹脂で構成」された「シリコーン微粒子2」の他に、「ジメチル型固形シリコーンゴム粒子の表面がエポキシ基で修飾された、平均粒径2μmの球状のシリコーン微粒子1(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製商品名トレフィルE-601)」も例示されている。
しかし、上記シリコーン微粒子1は、ジメチル型固形シリコーンゴム粒子の表面が「エポキシ基」で修飾されているものの、「コアシェル構造を有する粒子」には該当しないものであり、上記を含む甲1の記載全体をみても、シリコーン重合体粒子を「エポキシ基」で修飾したことによる作用・機能については記載されていないから、上記シリコーン微粒子2のような、「コア-シェル重合体粒子」のアクリル樹脂で構成されるシェル部に、さらにエポキシ基を導入する動機付けがあるとはいえない。
そうすると、甲1発明において、「エポキシ基を有する構成単位の含有率が10質量%以上である重合体を含むシェル部」を有するコアシェル構造を有する粒子とする動機付けは見いだせない。
(イ)次に、申立人が周知技術を主張するために提示した各証拠について検討する。
a 甲2の1には、「(A)液状エポキシ樹脂、(B)液状芳香族アミンを含む硬化剤、(C)ゴム粒子、および(D)無機充填剤を含有してなる封止用エポキシ樹脂組成物」(請求項1)について、「耐湿接着性、低応力性に優れたエポキシ樹脂組成物」(【0004】)を提供することを目的とし、「液状芳香族アミンを含む硬化剤を用いると各種基材との耐湿接着力が向上して耐湿信頼性に優れ、低応力剤としては液状可とう化剤よりもゴム粒子(固形)を用いた場合に耐熱性の低下が少なく低応力効果に優れ」、上記の目的を達成しうること、また、「ゴム粒子としてアクリルゴムからなるゴム粒子、好ましくはコアシェル型アクリルゴムからなるゴム粒子を用いることにより、さらに高い耐湿性改善効果が得られること」(【0005】)が記載されている。さらに、「(C)成分のゴム粒子としては、特に制限はないが、耐湿接着力及び耐湿信頼性向上の観点からはアクリル系重合体、すなわちアクリルゴムからなるゴム粒子が好ましく、コアシェル型アクリル系重合体、すなわちコアシェル型アクリルゴム粒子がより好ましい」こと、「シェル部を形成するポリマに一部カルボキシル基、水酸基、エポキシ基等の官能基が含まれるとエポキシ樹脂組成物との相溶性・分散性が一層向上するためより好ましい」(【0012】)ことも記載されている。
しかし、上記【0012】では、「カルボキシル基、水酸基、エポキシ基等の官能基」と「エポキシ樹脂組成物」との一般的な相溶性・分散性が述べられるにとどまり、上記官能基が、エポキシ樹脂組成物の耐湿接着性、低応力性にどのような影響を与えるかまでは記載されていないし、上記官能基のうち、エポキシ基を積極的に採用する旨の記載はない。
また、甲2の1の実施例においては、「(B)液状芳香族アミンを含む硬化剤」又は「(C)ゴム粒子」の有無による耐湿接着力等を評価しているものの、実施例において使用される「スタフィロイドAC-3355(ゴム粒子1、武田薬品工業株式会社製商品名)」、「スタフィロイドAC-3832(ゴム粒子2、同社製商品名)」及び「平均粒径5μmのシリコーンゴム粒子(ゴム粒子3)」が、上記官能基を有するものであるとは記載されておらず、エポキシ基等の上記官能基を含むことによる作用が具体的に開示されているとはいえない。
したがって、甲2の1の記載をみても、甲1発明において、「エポキシ基を有する構成単位の含有率が10質量%以上である重合体を含むシェル部」を有するコアシェル構造を有する粒子とする動機付けは見いだせない。
b 甲2の2には、「(A)エポキシ樹脂、(B)アミン系硬化剤、(C)フィラー、(D)コアシェルゴム、および、(E)反応性希釈剤」よりなる「半導体樹脂封止材」(請求項1)について、「アンダーフィルとして使用した際に、注入性に優れ、フィレットクラックの発生および進展、ならびに、ボイドの発生が抑制された半導体樹脂封止材を提供することを目的とする」(【0008】)ことが記載され、「(D)成分、すなわち、コアシェルゴムの含有による低弾性率化によって、アンダーフィルとして使用した際に、フィレット部に生じる応力が低減され、フィレットクラックの発生を抑制することができる」(【0031】)こと、「シェル層の構成材料としては、半導体樹脂封止材の他の成分に対する親和性、特に、(A)成分としてのエポキシ樹脂に対する親和性、に優れた材料が用いられ」、「具体的には、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる」(【0032】)ことが記載されている。
しかし、甲2の2に記載の「エポキシ樹脂に対する親和性」が、コアシェルゴムをアンダーフィルとして使用した際の応力低減やフィレットクラックの発生の抑制にどのような影響を与えるかまでは記載されていない。むしろ、甲2の2の【0032】には、「これらの中でも、アクリル樹脂が、半導体樹脂封止材の他の成分に対する親和性、特に、(A)成分としてのエポキシ樹脂に対する親和性の観点から好ましい」とも記載されており、実施例で使用される「コアシェルゴムD1」及び「コアシェルゴムD2」も、「シェル:アクリル樹脂」であるもの(【0055】)が開示されるのみであって、「エポキシ樹脂」を積極的に採用する旨の記載はない。また、シェル部が「アクリル樹脂」からなる「コアシェルゴム」に、さらにエポキシ基を導入することについては記載も示唆もされていない。
そうすると、甲1発明における「アクリル樹脂又はアクリル樹脂共重合体などの有機重合体のシェル」に代えて、「エポキシ樹脂」を採用する、又は、シェル部が「アクリル樹脂」からなる「コアシェルゴム」に、さらにエポキシ基を導入する動機付けがあるともいえない。
したがって、甲2の2の記載をみても、甲1発明おいて、「エポキシ基を有する構成単位の含有率が10質量%以上である重合体を含むシェル部」を有するコアシェル構造を有する粒子とする動機付けは見いだせない。
c 甲2の3には、「(A)液状エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)無機充填剤及び(D)可撓化剤」を含む「液状エポキシ樹脂組成物」に配合される(D)可撓化剤として「粒状のシリコーン粉末」(請求項4)が記載されており、「半導体素子と基板の隙間」を「樹脂封止」するために用いられ(請求項6)、「可撓化剤の量を調整することで、樹脂硬化物の破壊靱性を向上」できること、「弾性率の調整及び流動性の向上上最も低弾性なシリコーン系の可撓化剤が好ましい」こと等が開示されているが(【0021】)、可撓化剤としての一般的な作用を述べているに過ぎず、シリコーン系の可撓化剤の表面状態等については記載も示唆もされていない。
そして、甲2の3の実施例で用いられている可撓化剤は、「ジメチル型固形シリコーンゴム粒子の表面がエポキシ基で修飾された、平均粒径2μmの球状のシリコーン微粒子1(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製商品名トレフィルE-601)」(【0029】)であるが、これは、甲1の実施例に記載の「シリコーン微粒子1」と同一のもので、「コアシェル構造を有する粒子」には該当せず、また、甲2の3には、当該「エポキシ基」の修飾による作用・機能について記載されていない。
そうすると、甲2の3の記載を見ても、甲1発明において、「コア-シェル重合体粒子」のアクリル樹脂で構成されるシェル部に、さらにエポキシ基を導入し、「エポキシ基を有する構成単位の含有率が10質量%以上である重合体を含むシェル部」を有するコアシェル構造を有する粒子とする動機付けは見いだせない。
d 甲3の1には、「樹脂」及び「架橋ポリマー層と被覆ポリマー層を有するポリマー微粒子」を含む「ポリマー微粒子分散樹脂組成物」(請求項1)について、ポリマー微粒子が「靱性、耐衝撃性の付与」(【0034】)のために用いられること、架橋ポリマー層を構成する架橋硬質層及びゴム層のうち、ゴム層を構成するポリマーとして、「ジエン系ゴム重合体、アクリル系ゴム重合体、オルガノシロキサン系ゴム重合体」等(【0049】)が挙げられ、被覆ポリマー層として、「例えば、樹脂がエポキシ樹脂である場合には、ポリマー微粒子が凝集せずに良好な分散状態を維持する観点からは、被覆ポリマー層重合体は、主鎖形成ビニルモノマーとしてスチレン(St)、アクリロニトリル(AN)、及びメチルメタクリレート(MMA)を主成分とし、重合性又は硬化反応性基含有ビニルモノマーとしてグリシジルメタクリレート(GMA)を主成分とする被覆ポリマー層成分から得られる共重合体であることが好ましい」(【0068】)ことが記載されている。
しかし、甲3の1には、上記組成物の用途の一つとして「封止材料」(【0099】)が挙げられているものの、実施例においては、上記製造例1~8のポリマー微粒子を含むポリマー微粒子分散樹脂組成物を用いて硬化板を作成し、その破壊靱性及び曲げ弾性率保持率を評価しているのみであり、封止材料(封止用液状エポキシ樹脂組成物)として用いた際の電子部品構成部材との接着性、低応力性におけるポリマー微粒子の作用についてまで当業者が理解し得るとはいえない。
加えて、甲3の1の製造例1~8はいずれも、重合性又は硬化反応性基含有ビニルモノマーとしてグリシジルメタクリレート(GMA)を主成分とする被覆ポリマー層成分から得られる共重合体を用いるポリマー微粒子を含む水性ラテックスではあるものの、架橋ポリマー層のゴム層が、ジエン系ゴム重合体又はアクリル系重合体からなるものであって、「オルガノシロキサン系ゴム重合体」を用いたものは具体的に記載されていない。
そして、甲3の2(請求項1、[0031]~[0037]、[0053]、[0062]、[0070]、実施例)及び甲3の3(請求項1、【0044】、【0046】、【0047】、【0050】、【0055】、実施例)にも、甲3の1と同様に、グリシジルメタクリレート(GMA)を主成分とする被覆ポリマー層重合体を有するポリマー微粒子が記載されているが、各実施例において、硬化板としての破壊靱性及び曲げ弾性率保持率を評価しているのみであり、「オルガノシロキサン系ゴム重合体」を用いたものは具体的に記載されていない。
そうすると、甲3の1~甲3の3の記載を見ても、甲1発明において、「エポキシ基を有する構成単位の含有率が10質量%以上である重合体を含むシェル部」を有するコアシェル構造を有する粒子とする動機付けは見いだせない。
e 甲3の4には、「エポキシ樹脂材料の持つ特性を損なわない靭性・接着性の改質技術」の一つとして、「耐衝撃性改質剤としてのCSR(コアシェル型ゴム粒子)」が紹介されており、「ポリブタジエン、ポリアクリル酸ブチル、ポリシロキサン等の架橋ゴム粒子からなるコア層」を製造し、「続いてそこにシェル層となるモノマーを添加し、コア層の表面にグラフト共重合させることで同心球状のコアシェル構造を持つ微細な架橋ゴム粒子であるCSRが得られる」ところ、「その際、シェル層の組成を改質対象のポリマー材料に対して親和性や反応性を持つ様に調整する事で配合した際の相溶性、分散性に優れた製品となる」(14頁右欄3~18行、15頁右欄下から6行~16頁左欄4行)ことが記載されている。
また、「熱硬化性樹脂の靱性改良への適用可能性」として、「CSRなどのゴム分散相を熱硬化性樹脂中に良好に微分散させたモルフォロジーを取らせる事が出来れば、優れた靭性や接着強度の改質効果を示す」(16頁左欄下から12~5行)こと、「熱可塑性プラスチックよりもはるかに固く脆いエポキシ樹脂であっても、CSRの添加によってクラック周辺の領域に効率的に塑性変形を起こし、エネルギーを吸収(散逸)しながら破壊が進むため、大幅に靭性を向上させることが出来る」(17頁左欄下から2行~右欄3行)ことが記載されている。
そして、甲3の4には、エポキシ樹脂用靱性向上剤マスターバッチに配合されるCSRとして、改質剤のゴム組成がSBR(スチレンブタジエンゴム)又はPBd(ポリブタジエン)である「カネエースMX製品(MX-125、MX-257)」について、粘度、破壊靱性、曲げ弾性率及びTg等の物性(19頁の表3.2)及びMX-125の製品を配合したエポキシ樹脂接着剤の評価例(同頁の表3.3)が示されているものの、上記CSRにおいて、親和性や反応性を持たせるためのさらなる調整をすることなどについて、具体的に示唆されるところがなく、表面修飾やエポキシ基を導入することを動機付けられるとはいえない。
そうすると、甲3の4の記載を見ても、甲1発明において、「エポキシ基を有する構成単位の含有率が10質量%以上である重合体を含むシェル部」を有するコアシェル構造を有する粒子とする動機付けは見いだせない。
f 甲3の5には、「エポキシ樹脂(A)と、少なくとも1種のゴム状弾性体層を有するコアシェルポリマー(B)を含んでなる半導体封止剤用エポキシ樹脂組成物(C)」(請求項1)について、「耐熱性と低応力化性、耐湿信頼性を高いレベルで両立し、優れたハンドリング性及び物性の再現性を有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物およびエポキシ樹脂成形材料を提供すること」([0010])を目的とし、「特定の方法を用いて得られた、コアシェルポリマーが予め一次粒子の状態で安定に分散し、夾雑物が有意に低減されたエポキシ樹脂」([0024])とすることで、上記目的を解決できることが記載されている。
そして、甲3の5には、「ゴム粒子コア(B-1)」として「ポリシロキサンゴム」を使用できること([0035])、「シェル層(B-2)を構成するポリマーは、(メタ)アクリル酸エステル等の成分を共重合して得られる(共)重合体」が好ましく、「シェル層(B-2)は、使用時の必要性に応じて、エポキシ樹脂(A)もしくは使用時に配合される硬化剤との反応性を有することが好ましく、これによりエポキシ樹脂(A)が硬化剤と反応して硬化する条件下において、これらと化学反応し結合を生成できる機能を有することにより、硬化条件下にコアシェルポリマー同士が再凝集し分散状態が悪化することを効果的に抑制することができる」([0038])こと、「反応性を有する官能基として、エポキシ基をコアシェルポリマー(B)全体の重量に対しエポキシ価で4500以下となるように含有すると、効果的に硬化条件下におけるコアシェルポリマー(B)の再凝集を抑制し、硬化の前後を通じて良好な分散状態を確保することができるので特に好ましい」([0039])ことも記載されている。
また、甲3の5には、エポキシ樹脂成形材料には、上記エポキシ樹脂組成物(C)に対して、「通常半導体封止材用途に使用される、少なくとも1種以上の硬化剤(K)」([0057])を配合することができ、当該硬化剤(K)として、「フェノールノボラック等のフェノール樹脂、脂肪族アミン、芳香族アミン、あるいは酸無水物やブロック化カルボン酸等のカルボン酸誘導体などを用いることができる。この中では特に、得られる硬化物の耐熱性が高くなるという点より、フェノール樹脂を使用することがより好ましい」([0058])と記載されているが、「芳香族アミン」については特に説明がなく、液状芳香族アミンについては記載も示唆もされていない。
甲3の5の実施例1~4([0087]~[0100])においては、製造例1で得られたコアシェルポリマー(B)の水性ラテックス(スチレン-ブタジエンゴム粒子からなるゴムラテックスに、アゾビスイソブチルニトリル(AIBN)を加えた後、スチレン、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル及びメタクリル酸グリシジルの混合物を添加してグラフト重合して得られたもの)を配合し、所定のアルカリ金属イオン含有量及び残存乳化剤量であるエポキシ樹脂組成物に加え、硬化剤としてオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のフェノール樹脂を用いて、半導体封止用エポキシ樹脂成形材料を作成し、物性評価を行い、非コアシェル構造のシリコーンゴム粒子を用いた場合(比較例1、2)、製造例1の水性ラテックスを乾燥したコアシェルポリマー(B)粒子パウダーを配合した場合(比較例3)、上記エポキシ樹脂組成物を用いなかった場合(比較例4)と比べて、「コアシェルポリマーの良好な分散が得られると同時に、耐湿信頼性低下の原因となる乳化剤及び金属イオンの残存量を低減することができ、優れた耐熱性及び耐剥離性、内部応力低減効果を発現できる」([0100])ものであったことが記載されている。ここで、比較例1及び2で用いられている「市販の非コアシェル構造のシリコーンゴム粒子(東レ製トレフィルE601)」は、甲1における「ジメチル型固形シリコーンゴム粒子の表面がエポキシ基で修飾された、平均粒径2μmの球状のシリコーン微粒子1」と同じものである。
そうすると、特定の製造例1によるコアシェルポリマー(B)の水性ラテックスを含むエポキシ樹脂組成物及びフェノール樹脂を用いた場合の分散効果や乳化剤及び金属イオンの残存量の低減による効果等が示されているとはいえるものの、硬化剤として液状芳香族アミン化合物を含む半導体封止用エポキシ樹脂成形材料の場合に、コアシェルポリマー(B)のメタクリル酸グリシジル由来のエポキシ基の導入による低応力化性、耐湿信頼性等の作用が、どの程度のものであるのかを当業者が理解できるとはいえない。
加えて、甲3の5の実施例には、ゴム粒子コアにポリシロキサンゴムを使用するものは具体的に記載されていない。
そうすると、甲3の5の記載を見ても、甲1発明において、「エポキシ基を有する構成単位の含有率が10質量%以上である重合体を含むシェル部」を有するコアシェル構造を有する粒子とする動機付けは見いだせない。
g 以上のとおり、甲2の1~甲3の5のいずれの記載によっても、また、これらの記載を併せ考慮したとしても、甲1発明において、シェル部が「アクリル樹脂」からなる「コアシェルゴム」に、さらにエポキシ基を導入し、「エポキシ基を有する構成単位の含有率が10質量%以上である重合体を含むシェル部」を有するコアシェル構造を有する粒子とする動機付けを見いだすことができず、上記相違点に係る事項を当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
(ウ)本件発明1の効果について
本件明細書には、本件発明1の封止用液状エポキシ樹脂組成物は、「エポキシ基を有する構成単位の含有率が10質量%以上である重合体を含むシェル部」を有する粒子を含むことで、硬化後の破壊靱性及び接着性、並びにポットライフに優れること、特に、シェル部がエポキシ基以外の反応性官能基としてヒドロキシ基、カルボキシ基等を有する場合に比べ、エポキシ樹脂との反応が過度に生じず、ポットライフも良好に維持されると考えられることが記載されている(【0014】)。
そして、本件明細書の実施例には、「エポキシ基を有する構成単位の含有率が10質量%以上である重合体を含むシェル部」を有する粒子を用いた実施例1~4において、110℃における粘度が低くポットライフ性が良好であり、接着性及び破壊靱性に優れているのに対し、シェル部にエポキシ基を有しない粒子を用いた比較例1では、シリコン基板に対する接着性及び破壊靱性の評価が実施例よりも低かったこと、そして、シェル部にエポキシ基に代えて「ヒドロキシル基又はカルボキシ基」を有する粒子を用いた比較例2又は3では、接着性及び破壊靱性の向上は見られたが、50℃で8時間保存後の110℃での粘度が高く、ポットライフ性が悪化したことが確認されている(【0063】~【0084】)。
一方、甲1には、上記(ア)に示したように、アンダーフィル材として用いられる電子部品用液状樹脂組成物について、液状芳香族アミンを含む硬化剤を用いると各種電子部品構成部材との耐湿接着力が向上して耐湿信頼性に優れること、低応力剤としてシリコーン重合体粒子を使用すると信頼性も高く低応力効果に優れることが記載されている。
しかし、甲1及び甲2の1~甲3の5の記載をみても、「架橋ポリシロキサンを含むコア部」と、「エポキシ基を有する構成単位の含有率が10質量%以上である重合体を含むシェル部」とを有するコアシェル構造を有する粒子を用いたことにより、硬化後の破壊靱性及び接着性、並びにポットライフに優れる、特に、シェル部がエポキシ基以外の反応性官能基としてヒドロキシ基、カルボキシ基等を有する場合に比べ、ポットライフが良好に維持されるという効果については、当業者が予測することができるものではない。
エ 申立人の主張について
(ア)申立人は、申立書において以下のとおり主張する(申立書57頁3行~58頁最終行)。
甲1発明の封止用液状エポキシ樹脂組成物において、低応力性や高靭性に優れるものとすることが課題として記載されているだけではなく、低応力性や高靭性に優れるものとすることが当業者にとって自明な周知の課題であった(甲2の1~甲2の3参照)ことを参酌すれば、当該課題を解決すべく、シェル部を形成する重合体においてエポキシ樹脂との親和性を向上させることで相溶性・分散性を向上させて応力が緩和することで、靭性等に優れるものとすることを意図して(甲1、甲2の1、甲2の2及び甲3の1~甲3の5参照)、シェル部を形成する重合体におけるエポキシ基を有する構成単位を含み、その構成単位の含有率を適宜調整することは当業者にとって容易に想到できたものである(特に、申立書58頁18~26行)。
(イ)そこで検討する。
上記ウ(ア)及びウ(イ)で説示したように、甲1及び甲2の1~3の記載によれば、半導体装置のアンダーフィル材として用いられる電子部品用液状樹脂組成物について、低応力性や高靭性に優れるものが求められるという周知の課題があるとはいえるものの、甲1発明は、当該課題を解決するために、可撓性を向上させるための「コアシェル構造を有する粒子」を配合するものであり、それに加えて、甲1に、「エポキシ基」の修飾による作用・機能について記載されているとはいえない。
また、甲2の1において、「カルボキシル基、水酸基、エポキシ基等の官能基」と「エポキシ樹脂組成物」との一般的な相溶性・分散性が述べられるにとどまり、上記官能基が、エポキシ樹脂組成物の耐湿接着性、低応力性にどのような影響を与えるかまでは記載されていないし、甲2の1及び甲2の2の記載をみても、コアシェルゴム粒子の表面に、エポキシ基又はエポキシ樹脂を積極的に導入する旨の記載もない。
さらに、甲3の1~3には、エポキシ樹脂に配合される「架橋ポリマー層と被覆ポリマー層を有するポリマー微粒子」における被覆ポリマー層として、「主鎖形成ビニルモノマーとしてスチレン(St)、アクリロニトリル(AN)、及びメチルメタクリレート(MMA)を主成分とし、重合性又は硬化反応性基含有ビニルモノマーとしてグリシジルメタクリレート(GMA)を主成分とする被覆ポリマー層成分から得られる共重合体」が記載されているものの、封止材料(封止用液状エポキシ樹脂組成物)として用いた際の電子部品構成部材との接着性、低応力性の作用についてまで当業者が理解し得るとはいえず、また、甲3の4にも、CSR(コアシェル型ゴム粒子)の表面修飾やエポキシ基を導入することについて記載されておらず、甲3の5の記載からも、硬化剤が液状芳香族アミン化合物であるときに、エポキシ基の導入による接着性及び低応力化による効果が、どの程度のものであるのか理解できるとはいえない。
加えて、甲2の1~甲3の5には、「架橋ポリシロキサンを含むコア部」に「エポキシ基」を導入したコアシェル構造を有する粒子が記載されていない。
そうすると、甲1及び甲2の1~甲3の5の記載を考慮したとしても、甲1発明において、シェル部を形成する重合体におけるエポキシ基を有する構成単位の含有率を適宜調整することは、当業者にとって容易に想到できたものであるとはいえない。
よって、申立人の主張は採用できない。
オ 小括
したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明及び周知技術(甲2の1~甲3の5)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2~7について
本件発明2~7は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであって、上記(1)イに挙げたものと同一の相違点を少なくとも有するから、上記(1)ウにおいて説示したように、いずれも甲1に記載された発明及び周知技術(甲2の1~甲3の5)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)申立理由1についてのまとめ
よって、本件発明1~7は、甲1に記載された発明及び周知技術(甲2の1~甲3の5)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、申立理由1は理由がない。
2 申立理由2(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。
(2)サポート要件の判断
ア 本件発明が解決しようとする課題
本件明細書の【0005】によると、本件発明の解決しようとする課題(以下「発明の課題」という。)は「ポットライフ並びに硬化後の破壊靱性及び接着性に優れる封止用液状エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いてなる電子部品装置を提供すること」である。
イ 本件発明1について
本件明細書には、封止用液状エポキシ樹脂組成物に、可とう剤として「コアシェル型シリコーン化合物」を用いることにより、当該組成物の硬化物の弾性率を低減し、電子部品のパッケージ内部で発生する応力を低減する効果があるものの、近年のパッケージは薄膜化が進み、従来のコアシェル型シリコーン化合物では破壊靱性及び半導体基板等の被着体との接着性に対する要求を十分に満足できなくなっていたところ(【0002】、【0003】及び【0005】)、「エポキシ基を有する構成単位の含有率が10質量%以上である重合体を含むシェル部を有する粒子」を含むことで、硬化後の破壊靱性及び接着性、並びにポットライフに優れるものとなったことが記載されており(【0014】)、それらの作用について、「硬化後の破壊靱性及び接着性に優れる理由は明らかではないが、シェル部に含まれる重合体が一定量以上のエポキシ基を有することで、エポキシ樹脂とシェル部との界面における親和性が高まるためと推測される」、また、「シェル部がエポキシ基以外の反応性官能基としてヒドロキシ基、カルボキシ基等を有する場合に比べ、エポキシ樹脂との反応が過度に生じず、ポットライフも良好に維持されると考えられる」といった説明がされている(【0014】)。
また、本件明細書には、「硬化剤」について、封止用液状エポキシ樹脂組成物に一般に使用されている硬化剤を特に制限なく用いることができるが、当該組成物の基板への接着性及び耐熱性の観点から、1分子中に第1級アミン又は第2級アミン由来の官能基を2個以上含む化合物であることが好ましく、その中でも、常温で液状であり、かつ芳香環を有するアミン化合物、すなわち、「液状芳香族アミン化合物」を含むことがさらに好ましいことが記載されている(【0021】)。
そして、実施例及び比較例(【0067】~【0084】、表1、表2)をみると、本件発明1の範囲内である「エポキシ基を有する構成単位の含有率が10質量%以上である重合体を含むシェル部」を有する粒子及び「液状芳香族アミン化合物」を含む、実施例1~4の封止用液状エポキシ樹脂組成物を用いた場合には、110℃における粘度が低くポットライフ性が良好であり、接着性及び破壊靱性に優れていたのに対し、「シェル部にエポキシ基が含まれない」コアシェル構造を有する粒子を含む、比較例1の封止用液状エポキシ樹脂組成物を用いた場合には、シリコン基板に対する接着性及び破壊靱性の評価は実施例よりも低かったこと、また、シェル部にエポキシ基が含まれず、「ヒドロキシル基又はカルボキシ基」を有するコアシェル構造を有する粒子を含む、比較例2及び3の封止用液状エポキシ樹脂組成物を用いた場合には、接着性及び破壊靱性の向上は見られたが、50℃で8時間保存後の110℃での粘度が高く、ポットライフ性が悪化していたことが記載されている。
そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明の記載から、本件発明1の「封止用液状エポキシ樹脂組成物」を用いることにより、硬化後の破壊靱性及び接着性、並びにポットライフに優れることとなり、当該発明の課題が解決できることを、当業者は認識できるといえる。
したがって、本件発明1は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載により、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
ウ 本件発明2~7について
本件発明2~7は、本件発明1をさらに特定したものであるから、上記イに説示した本件発明1と同様に、本件明細書の発明の詳細な説明の記載により、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
(3)申立人の主張について
ア 申立人は、以下の点を主張する。
(ア)本件発明1(及び本件発明1の発明特定事項を包含する本件発明2~7)における「コアシェル構造を有する粒子」との発明特定事項について、液状エポキシ樹脂組成物において、添加するコアシェル構造を有する粒子の粒子径、含有率が変われば分散性、粘度、硬化後の特性などが変わることが技術常識である(要すれば、甲1、甲2の1、甲2の2及び甲3の1など)ところ、平均1次粒子径が約100μm、含有率1.3%という特定の粒子径及び含有率でコアシェル構造を有する粒子を用いた封止用液状エポキシ樹脂組成物のみが記載されているに過ぎない本件明細書の実施例の記載に基づいて、本件発明1のように、何らその粒子径、含有率を特定しない範囲まで発明を拡張ないし一般化できるとはいえない(申立書63頁2行~64頁下から6行)。
(イ)本件発明1(及び本件発明2~7)における「エポキシ基を有する構成単位の含有率が10質量%以上である重合体を含むシェル部」との発明特定事項について、コアシェル構造を有する粒子のシェル部のエポキシ基の含有率、エポキシ基の種類が変われば分散性などが変わることが技術常識である(例えば、甲3の1など)ところ、エポキシ基として、グリシジル基を10重量%以上30重量%以下で用いた封止用液状エポキシ樹脂組成物が記載されているに過ぎない本件明細書の実施例の記載に基づいて、本件発明1のように、コアシェル構造を有する粒子のシェル部のエポキシ基の含有率の上限値、エポキシ基の種類を特定しない範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を一般化できるとはいえない(申立書64頁下から5行~65頁最終行)。
(ウ)本件発明1(及び本件発明2~7)における「エポキシ樹脂」との発明特定事項について、エポキシ樹脂の種類や含有量が変われば硬化後の特性などが変わることが技術常識である(例えば、甲1など)ところ、エポキシ樹脂として、ビスフェノールFをエポキシ化して得られるエポキシ当量160の2官能液状エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名「YDF-8170C」)と、アミノフェノールをエポキシ化して得られるエポキシ当量95の3官能液状エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名「JER630」)を50質量部ずつ組み合わせて用いた封止用液状エポキシ樹脂組成物のみが記載されているに過ぎない本件明細書の実施例の記載に基づいて、本件発明1のように、エポキシ樹脂の種類や含有量を特定しない範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を一般化できるとはいえない(申立書66頁1行~67頁6行)。
(エ)本件発明1(及び本件発明2~7)における「硬化剤」を含有し、「前記硬化剤が、液状芳香族アミン化合物を含む」との発明特定事項について、液状芳香族アミン化合物の種類や含有量が変われば接着性や硬化後の特性などが変わることが技術常識である(例えば、甲2の2、甲2の3など)ところ、液状芳香族アミン化合物として、活性水素当量45のジエチルトルエンジアミン(ADEKA株式会社製、商品名「エピキュアW」)、活性水素当量63の4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチルジフェニルメタン(日本化薬株式会社製、商品名「カヤハードA-A」)を約25質量部と約18質量部で組み合わせて用いた封止用液状エポキシ樹脂組成物のみが記載されているに過ぎない本件明細書の実施例の記載に基づいて、本件発明1のように、液状芳香族アミン化合物の種類や含有量を特定しない範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を一般化できるとはいえない(申立書67頁7行~68頁13行)。
イ 検討
(ア)「コアシェル構造を有する粒子」の粒子径及び含有率について
上記(2)イで説示したように、本件明細書の【0014】等の記載から、本件発明1における「コアシェル構造を有する粒子」として、「エポキシ基を有する構成単位の含有率が10質量%以上である重合体を含むシェル部」を有する粒子を含むことで、硬化後の破壊靱性及び接着性、並びにポットライフに優れることを、当業者は認識できるといえる。
また、本件明細書には、「コアシェル構造を有する粒子の粒子径は特に制限されない。封止用液状エポキシ組成物を均一に変性するためには、コアシェル構造を有する粒子は小さいほど好ましい。例えば、平均1次粒子径が0.05μm~1.0μmの範囲であることが好ましく、0.05μm~0.5μmの範囲であることが更に好ましい」(【0042】)、「封止用液状エポキシ樹脂組成物中のコアシェル構造を有する粒子の含有率は、特に制限されない。封止用液状エポキシ樹脂組成物中の粒子が流動する温度及び110℃での粘度(ポットライフ)の観点からは、封止用液状エポキシ樹脂組成物の総質量中に0.1質量%~10質量%であることが好ましく、0.5質量%~7.5質量%であることがより好ましく、1質量%~5質量%であることがさらに好ましい」(【0043】)との記載もある。
そうすると、本件明細書には、コアシェル構造を有する粒子の粒子径や含有率は特に制限されないことが記載され、それらの好ましい範囲は示されているものの、当該発明の課題を解決するために、粒子径や含有率を特定することは要しないといえる。
そして、申立人は、コアシェル構造を有する粒子の「粒子径、含有率」が変われば、分散性、粘度、硬化後の特性などが変わり、上記発明の課題を解決できない可能性のあることを述べるにとどまり、具体的な根拠を提示して、当該発明の課題が解決できないことを立証しているわけではない。
よって、上記ア(ア)の主張は採用できない。
(イ)「エポキシ基を有する構成単位」におけるエポキシ基の含有率の上限値、エポキシ基の種類について
本件明細書の【0014】には、「コアシェル構造を有する粒子」として、「エポキシ基を有する構成単位の含有率が10質量%以上である重合体を含むシェル部」を有する粒子を含むことで、硬化後の破壊靱性及び接着性、並びにポットライフに優れることや、硬化後の破壊靱性及び接着性に優れる理由が、「一定量以上のエポキシ基」を有することにより、エポキシ樹脂とシェル部との界面における親和性が高まるためと推測されること、また、シェル部がエポキシ基以外の反応性官能基としてヒドロキシ基、カルボキシ基等を有する場合に比べ、エポキシ樹脂との反応が過度に生じず、ポットライフも良好に維持されると考えられることも示されているから、当業者は、「エポキシ基を有する構成単位の含有率が10質量%以上」という「一定量以上のエポキシ基」を有することによって、硬化後の破壊靱性及び接着性、並びにポットライフに優れるものとなることを理解できる。
また、本件明細書の【0034】には、「シェル部は、エポキシ基を有する構成単位の含有率が10質量%以上である重合体(以下、特定重合体ともいう)を含む。特定重合体におけるエポキシ基を有する構成単位の含有率は、20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましい。弾性率の低減効果及び流動性の観点からは、特定重合体におけるエポキシ基を有する構成単位の含有率は、50質量以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、35質量%以下であることがさらに好ましい」と記載されており、「弾性率の低減効果及び流動性の観点」による好ましい上限値が示されているものの、当該発明の課題を解決するために、上限値の設定が必須であるとはいえない。
さらに、本件明細書には、「エポキシ基を有する構成単位」の種類について、「エポキシ樹脂との反応性の観点からは、特定重合体は、ビニル重合により得られる重合体であることが好ましく、エポキシ基を有するモノマーと、エポキシ基を有するモノマーと共重合しうるモノマーとの共重合体であることがより好ましい」(【0036】)、「エポキシ基を有するモノマーとしては、例えば、グリシジルメタクリレート、グリシジルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル及びアルコールグリシジルエーテル等のグリシジル基を有するモノマーが挙げられる。メタクリル酸エステルでありポリマー主鎖中に導入しやすい点からは、グリシジルメタクリレートが好ましい」(【0037】)と記載されており、「グリシジル基を有するモノマー」を用いることが好ましいことが記載されているものの、上記のとおり、「一定量以上のエポキシ基」を有することにより、エポキシ樹脂との親和性や反応性の点から、硬化後の破壊靱性及び接着性、並びにポットライフに優れるものとなることを理解できるから、当該発明の課題を解決するために、さらに、「エポキシ基の種類」を特定すべきであるともいえない。
以上のとおり、本件明細書の記載によれば、当該発明の課題を解決するために、エポキシ基の含有率の上限値、エポキシ基の種類を特定することは要しないといえる。
そして、申立人は、シェル部のエポキシ基の含有率、エポキシ基の種類が変われば、分散性などが変わり、上記発明の課題を解決できない可能性のあることを述べるにとどまり、具体的な根拠を提示して、当該発明の課題が解決できないことを立証しているわけではない。
よって、上記ア(イ)の主張は採用できない。
(ウ)「エポキシ樹脂」の種類及び含有量について
本件明細書には、「エポキシ樹脂」の種類について、「封止用液状エポキシ樹脂組成物に一般に使用されているエポキシ樹脂を特に制限なく用いることができる」(【0015】)、「エポキシ樹脂は、常温で液状であるエポキシ樹脂(以下、液状エポキシ樹脂ともいう)」が好ましく、「封止用液状エポキシ樹脂組成物に一般に使用されている液状エポキシ樹脂を用いることができる」(【0016】)と記載され、種々の液状エポキシ樹脂が例示されており、「流動性の観点からは、液状ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が好ましく、液状ビスフェノール型エポキシ樹脂がより好ましい。耐熱性、接着性及び流動性の観点からは、液状グリシジルアミン型エポキシ樹脂が好ましい」(【0017】)とも記載されている。
また、本件明細書には、エポキシ樹脂の含有量について、「エポキシ樹脂が封止用液状エポキシ樹脂組成物に含まれる場合、その割合は、その性能を発揮するためにエポキシ樹脂全量に対して15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることがさらに好ましい」(【0018】)と記載されている。
そして、実施例においては、【0068】に記載のエポキシ樹脂1及び2を各50質量部含有し、その他、硬化剤及びコアシェル粒子等を含む「封止用液状エポキシ樹脂組成物」を用いて、110℃における粘度が低くポットライフ性が良好であり、接着性及び破壊靱性に優れるという効果を奏したことが具体的に示されている。
そうすると、本件明細書には、好ましいエポキシ樹脂が例示されているものの、当業者は一般的に使用されているエポキシ樹脂を特に制限なく用いることができることが理解でき、また、エポキシ樹脂を封止用液状エポキシ樹脂組成物としての性能を発揮できる程度に適切な量で含有すればよいことも理解できるから、当該発明の課題を解決するために、エポキシ樹脂の種類及び含有量を特定することは要しないといえる。
そして、申立人は、エポキシ樹脂の種類や含有量が変われば、硬化後の特性などが変わり、上記発明の課題を解決できない可能性のあることを述べるにとどまり、具体的な根拠を提示して、当該発明の課題が解決できないことを立証しているわけではない。
よって、上記ア(ウ)の主張は採用できない。
(エ)「液状芳香族アミン化合物」の種類及び含有量について
本件明細書には、「硬化剤」及び「液状芳香族アミン化合物」について、「封止用液状エポキシ樹脂組成物に一般に使用されている硬化剤を特に制限なく用いることができる。」、「基板への接着性及び耐熱性の観点からは、硬化剤は、1分子中に第1級アミン又は第2級アミン由来の官能基を2個以上含む化合物であることが好ましい。特には制限されないが、常温で液状であることがより好ましい。その中でも、常温で液状であり、かつ芳香環を有するアミン化合物(以下、液状芳香族アミン化合物ともいう)を含むことがさらに好ましい。」(【0021】)と記載され、【0022】~【0024】には、複数の液状芳香族アミン化合物が例示されている。
また、本件明細書には、硬化剤の含有量に関して、「封止用液状エポキシ樹脂組成物におけるエポキシ樹脂と硬化剤との当量比、すなわちエポキシ樹脂中のエポキシ基数に対する硬化剤中の水酸基数の比(硬化剤中の水酸基数/エポキシ樹脂中のエポキシ基数)は、特に制限はないが、それぞれの未反応分を少なく抑えるために0.5~2の範囲に設定されることが好ましく、0.6~1.3の範囲に設定されることがより好ましい。成形性及び高信頼性に優れる封止用エポキシ樹脂組成物を得るためには、上記の比は0.8~1.2の範囲に設定されることがさらに好ましい」(【0025】)と記載されている。
そして、実施例においては、【0069】に記載の「液状芳香族アミン化合物」である硬化剤1及び2を、エポキシ樹脂100質量部に対し、それぞれ、24.9質量部及び17.9質量部で含む「封止用液状エポキシ樹脂組成物」を用いて、110℃における粘度が低くポットライフ性が良好であり、接着性及び破壊靱性に優れるという効果を奏したことが具体的に示されている。
そうすると、本件明細書には、硬化剤として「液状芳香族アミン化合物」が好ましいことが記載されており、さらに、好ましい「液状芳香族アミン化合物」の例示はあるものの、当業者は一般的に使用されている「液状芳香族アミン化合物」からなる「硬化剤」を特に制限なく用いることができることが理解でき、また、エポキシ樹脂との当量比を考慮して、硬化剤を適切な量で含有すればよいことも理解できるから、当該発明の課題を解決するために、「液状芳香族アミン化合物」の種類及び含有量を特定することは要しないといえる。
そして、申立人は、「液状芳香族アミン化合物」の種類や含有量が変われば、接着性や硬化後の特性などが変わり、上記発明の課題を解決できない可能性のあることを述べるにとどまり、具体的な根拠を提示して、当該発明の課題が解決できないことを立証しているわけではない。
よって、上記ア(エ)の主張は採用できない。
(4)申立理由2についてのまとめ
よって、本件発明1~7は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、申立理由2は理由がない。
3 申立理由3(実施可能要件)について
(1)実施可能要件の判断基準
上記第2のとおり、本件発明1~7は物の発明であるところ、発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するというためには、物の発明にあっては、当業者が発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産でき、かつ、使用できる程度の記載があることを要する。
そこで、検討する。
(2)実施可能要件の判断
本件明細書には、本件発明1~6の封止用液状エポキシ樹脂組成物を構成する各成分について具体的に記載されており(【0013】~【0043】、【0046】、【0047】)、また、当該組成物の製造方法についても具体的に記載されており(【0059】)、実施例には、「表1に示す組成で配合し、三本ロール及び真空擂潰機にて混練分散した後、実施例1~4及び比較例1~3の封止用液状エポキシ樹脂組成物を作製した」(【0067】~【0079】表1)こと、当該組成物を硬化させるなどして、破壊靱性試験、接着性試験及びポットライフ試験といった諸特性及び信頼性の試験を行ったことが記載されている(【0063】~【0066】、【0080】表2)。
また、本件発明1~6の封止用液状エポキシ樹脂組成物を用いることによって、例えば、信頼性に優れる電子部品装置(本件発明7)を得ることができることも記載されている(【0084】)。
したがって、本件発明1~7について、本件明細書の発明の詳細な説明には、当業者が、本件明細書の記載及び本件出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産でき、かつ、使用できる程度の記載があるといえる。
よって、発明の詳細な説明の記載は、本件発明1~7について実施可能要件を満たしている。
(3)申立人の主張について
ア 申立人は、以下の点を主張する。
本件発明1(及び本件発明2~7)における「コアシェル構造を有する粒子」との発明特定事項について、添加するコアシェル構造を有する粒子の粒子径、配合量が変われば分散性、粘度、硬化後の特性などが変わることが技術常識である(要すれば、甲1、甲2の1、甲2の2及び甲3の1など)から、架橋ポリシロキサンを含むコア部と、エポキシ基を有する構成単位の含有率が10質量%以上である重合体を含むシェル部を有すること以外、何らその粒子径や配合量を特定されていない粒子から、実施例で用いられている平均1次粒子径が約100μmの粒子を含有率1.3%で用いた場合と同様の性能を発揮することができる粒子を選択することは当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤が必要であるため、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない(申立書68頁14行~70頁下から4行)。
イ 検討
上記2(3)イ(ア)で説示したように、本件明細書の【0042】及び【0043】には、コアシェル構造を有する粒子の粒子径や含有率は特に制限されないことと、それらの好ましい範囲が示されており、実施例には、「エポキシ基を有する構成単位の含有率が10質量%以上である重合体を含むシェル部」を有し、平均1次粒子径が約100μmであるコアシェル粒子2~5を、含有率1.3%で用いた封止用液状エポキシ樹脂組成物が記載されているから、当業者は、本件明細書の記載に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明1に係る「コアシェル構造を有する粒子」を含む封止用液状エポキシ樹脂組成物を製造及び使用することができると認められ、当該製造及び使用することについて、申立人が主張するような、実施例と「同様の性能を発揮することができる粒子を選択する」ことを要するとまではいえない。
よって、上記アの主張は採用できない。
(4)申立理由3についてのまとめ
よって、発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1~7を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるといえるから、申立理由3は理由がない。
4 申立理由4(明確性要件)について
(1)明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、本件明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そこで、検討する。
(2)明確性要件の判断
本件特許の請求項1~5及び7の記載は、上記第2のとおりであり、それ自体に不明確な記載はなく、本件明細書の記載とも整合する。
したがって、本件発明1~5及び7に関して、特許請求の範囲の記載だけではなく、本件明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
(3)申立人の主張について
ア 申立人は、本件発明1(及び本件発明2~5、7)における「エポキシ基を有する構成単位の含有率が10質量%以上である重合体を含むシェル部と、を有し」との発明特定事項については、エポキシ基を有する構成単位の含有率の下限だけを示すような数値範囲限定がある結果、発明の範囲が不明確となる場合に相当すると主張する(申立書70頁下から3行~71頁7行)。
イ しかし、上記特定事項において、「エポキシ基を有する構成単位の含有率」が、「10質量%以上」であるという数値範囲を当業者は明確に把握でき、含有率の下限だけを示す数値範囲限定であることにより、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
(4)申立理由4についてのまとめ
よって、本件発明1~5及び7は明確であり、申立理由4は理由がない。
第5 まとめ
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700141