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特許異議申立

2024-700132

離型フィルム

審判番号
2024-700132
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-126241
登録番号
7327602
請求日
2024年02月14日
審決日
2024年06月28日
公報発行日
2024年08月30日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】東洋紡株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
  • 【異議申立人】小宮 邦彦
審判長/審判官
  • 審判長 森藤 淳志
  • 審判官 金丸 治之
  • 審判官 木原 裕二
分類
P1651.121-Y (B32B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7327602号発明「離型フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7327602号の請求項1~3に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7327602号の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成29年11月10日に出願した特願2017-217051号の一部を令和4年8月8日に新たな特許出願としたものであって、令和5年8月7日にその特許権の設定登録がされ、同年8月16日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和6年2月14日に特許異議申立人小宮邦彦(以下「申立人」という。)により、その請求項1~3に係る特許に対して本件特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 請求項1~3に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、それぞれ、本件の特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 基材フィルムが無機粒子を実質的に含有しておらず、前記基材フィルムの一方の表面上に離型塗布層を有し、基材フィルムのもう一方の表面上に粒子を含有する易滑塗布層を有し、易滑塗布層の領域表面平均粗さ(Sa)が1nm以上25nm以下、最大突起高さ(P)が60nm以上500nm以下、かつ粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が10μm以下であり、前記易滑塗布層は、粒子径が150nm以上600nm以下の粒子を含む、樹脂シート成型用離型フィルム。 【請求項2】 離型塗布層の領域表面平均粗さ(Sa)が5nm以下、最大突起高さ(P)が200nm以下である請求項1に記載の樹脂シート成型用離型フィルム。 【請求項3】 離型塗布層の表面自由エネルギーが15mJ/m2以上45mJ/m2以下である請求項1に記載の樹脂シート成型用離型フィルム。」 第3 申立理由の概要 申立人が提出した特許異議申立書(以下「申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 また、申立人は、下記2に示した甲第1号証~甲第7号証(それぞれ甲1等という。)を証拠として申立書に添付している。 1 申立理由 請求項1~3に係る特許は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1~甲3に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 3 証拠方法 甲1:特開2016-221737号公報 甲2:特開2016-060158号公報 甲3:特開2014-189717号公報 甲4:特開2002-273715号公報 甲5:[Technical Data]Surface Roughness,JIS B 0601(1994) Excerpts from JIS B 0031(1994) 甲6:Ki-Ho Park 他5名,原子顕微鏡を用いたセラミックブラケットスロットの表面粗さに関する研究(申立人による翻訳),Korean J Orthod,Vol.40,No.5,2010,pp.294~303 甲7:Mitutoyo QUICK GUIDE TO SURFACE ROUGHNESS MEASUREMENT Reference guide for laboratory and workshop,Mitutoyo America Corporation,2016年12月 第4 甲号証の記載について 1 甲1について 甲1の【請求項1】より、甲1には、「離型フィルム」が記載されており、当該「離型フィルム」は、ポリエステルフィルムが粒子を実質的に含有しておらず、前記基材フィルムの一方の表面上に離型層を有し、ポリエステルフィルムの他方に粒子を含有する易滑層を有し、易滑層の算術表面粗さ(Ra2)が10nm未満であることが記載されている。 また甲1の【0031】より、ポリエステルフィルムが基材ポリエステルフィルムであることが明らかであり、【0030】より、実質的に含有しないとする粒子が無機粒子であることが明らかである。 さらに、【0032】より、易滑層の算術表面粗さ(Ra2)が1nm以上3nm以下とすることについて記載されており、【0033】より、易滑層は、粒子径が15nm以上80nm以下の粒子を含むことについて記載されている。 よって、甲1の【請求項1】、【0029】~【0033】には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。 「基材ポリエステルフィルムが無機粒子を実質的に含有しておらず、前記基材ポリエステルフィルムの一方の表面上に離型層を有し、 基材ポリエステルフィルムの他方にに粒子を含有する易滑層を有し、 易滑層の算術表面粗さ(Ra2)が1nm以上3nm以下とし、 前記易滑層は、粒子径が15nm以上80nm以下の粒子を含む、 離型フィルム。」 2 甲2について (1)甲2の記載 甲2には、以下の記載がある(下線は当審で付した。以下同様。)。 「【請求項1】 2層以上からなる二軸配向ポリエステルフィルムを基材とし、前記基材は、粒子を実質的に含有していない表面層Aと粒子を含有する表面層Bを有し、表面層Aの表面上に離型塗布層が積層され、かつ表面層Bの表面上に平滑化塗布層が積層されてなり、平滑化塗布層の領域表面平均粗さ(Sa)が5nm以上25nm以下かつ最大突起高さ(P)が800nm以下であることを特徴するセラミックシート製造用離型フィルム。」 「【0014】 本発明の超薄層セラミックシート製造用離型フィルムを構成する基材フィルムは、実質的に粒子を含有しない表面層Aと、粒子を含有する表面層Bを有した少なくとも2層からなる二軸配向ポリエステルフィルムであり、前記表面層A上に離型層が積層され、かつ前記表面層B上に平滑化塗布層を設けられたものである。」 「【0048】 本発明における平滑化塗布層の領域表面平均粗さ(Sa)は5nm以上25nm以下かつ最大突起高さ(P)は800nm以下であることが好ましい。より好ましくは、領域表面平均粗さ(Sa)は7nm以上23nm以下かつ最大突起高さ(P)が750nm以下であり、Saが10nm以上20nm以下かつPが700nm以下がさらに好ましい。領域表面粗さ(Sa)が5nm以上であれば、滑り性が良く巻き取り時にシワなどが発生せず平面性が保たれるので好ましい。一方、領域表面平均粗さ(Sa)が25nm以下であり、且つ、最大突起高さ(P)が800nm以下の場合には、セラミックシート塗布後の巻取りにおいて、巻き取られたセラミックシートに、平滑化塗布層の突起の凹凸が転写されることがなく、ピンホールなどの欠点を生じるおそれが小さいので好ましい。最大突起高さ(P)は小さいことが好ましいが、10nm以上であっても構わず、20nm以上であっても構わない。」 (2)甲2記載事項について 上記(1)により、甲2には以下の事項(以下「甲2記載事項」という。)が記載されている。 「離型塗布層及び平滑化塗布層を有するセラミックシート製造用離型フィルムにおいて、平滑化塗布層の領域表面平均粗さ(Sa)が5nm以上25nm以下かつ最大突起高さ(P)は800nm以下であるセラミックシート製造用離型フィルム。」 3 甲3について (1)甲3の記載 甲3には、以下の記載がある。 「【請求項1】 水溶性高分子を含む塗布層を少なくとも片面に有する二軸配向ポリエステルフィルムであって、塗布層表面の幅方向の突起間隔Sm-Xと長手方向の突起間隔Sm-Yがいずれも3~10μmである二軸配向ポリエステルフィルム。」 「【0001】 本発明は、走行性や平滑性、耐削れ性に優れた二軸配向ポリエステルフィルムに関するものであり、磁気記録媒体用、電気絶縁用、コンデンサー用、回路材料、太陽電池用材料などに好適に用いることができる二軸配向ポリエステルフィルムに関するものである。」 「【0038】 前記樹脂は溶剤中にエマルジョンの状態で分散しており、好ましい分散径としては20~80nmであり、さらに好ましくは30~50nmであるとエマルジョン径に由来した突起がA成分による長く連なった突起に埋もれ一体化するため耐削れ性が良好となり好ましい。」 「【0068】 本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、塗布層表面の幅方向の突起間隔Sm-Xと長手方向の突起間隔Sm-Yはいずれも3~10μmである。好ましくはいずれも3.5~9μm、さらに好ましくは4.5~8μmである。突起間隔が10μmより大きいと走行性不良により耐削れ性が低下する場合がある。また、突起間隔が3μmよりも小さいと突起個数が多くなりすぎ、やはり耐削れ性が低下する傾向がある。」 (2)甲3記載事項について 上記(1)により、甲3には以下の事項(以下「甲3記載事項」という。)が記載されている。 「水溶性高分子を含む塗布層を有する磁気記録媒体用、電気絶縁用、コンデンサー用、回路材料、太陽電池用材料などに好適に用いることができる二軸配向ポリエステルフィルムおいて、塗布層表面の幅方向の突起間隔Sm-Xと長手方向の突起間隔Sm-Yがいずれも3~10μmである二軸配向ポリエステルフィルム。」 第5 当審の判断 (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と引用発明を対比する。 引用発明の「基材ポリエステルフィルム」、「離型層」及び「易滑層」は、本件発明1の「基材フィルム」、「離型塗布層」及び「易滑塗布層」に相当する。そして、引用発明の「基材ポリエステルフィルムの一方の表面上に離型層を有し、基材ポリエステルフィルムの他方に粒子を含有する易滑層を有」することは、本件発明1の「基材フィルムの一方の表面上に離型塗布層を有し、基材フィルムのもう一方の表面上に粒子を含有する易滑塗布層を有」することに相当する。 また、引用発明の「離型フィルム」は、本件発明1の「樹脂シート成型用離型フィルム」と、「離型フィルム」である限りにおいて一致する。 したがって、両者は以下の点で一致し、また相違する。 <一致点> 基材フィルムが無機粒子を実質的に含有しておらず、前記基材フィルムの一方の表面上に離型塗布層を有し、 基材フィルムのもう一方の表面上に粒子を含有する易滑塗布層を有する、 離型フィルム。 <相違点1> 易滑塗布層について、本件発明1では、「領域表面平均粗さ(Sa)が1nm以上25nm以下」、「最大突起高さ(P)が60nm以上500nm以下」、「粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が10μm以下」であり、「粒子径が150nm以上600nm以下の粒子を含む」ものであるのに対して、引用発明では、「算術表面粗さ(Ra2)が1nm以上3nm以下」であり、「粒子径が15nm以上80nm以下の粒子を含む」ものである一方で、易滑塗布層の最大突起高さ(P)及び粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)については明らかでない点。 <相違点2について> 離型フィルムについて、本件発明1が「樹脂シート成型用離型フィルム」であるのに対し、引用発明では、「離型フィルム」であり、当該離型フィルムによる成形物が特定されていない点。 イ 判断 <相違点1>及び<相違点2>について 本件特許明細書の【0005】の「樹脂シートを離型フィルム上に成型しロール状に巻き取った場合でも、樹脂シートのピンホールやキズなどの発生を抑制し、高い平滑性を有する樹脂シートを成型することができる離型フィルムを提供する」の記載から明らかなとおり、本件発明1が「樹脂シート」を離型フィルム上に成型しロール状に巻き取ったときの課題に着目しているものであり、「易滑塗布層」の表面性状と、「離型フィルム」がどのような成形物を成型するためのものであるのかとは密接に関連しているといえる。したがって、<相違点1>と<相違点2>とを併せて検討する。 (ア)まず、本件発明1が「樹脂シート成型用離型フィルム」としている点について検討する。 引用発明の「離型フィルム」は、甲1の【0004】の「本発明の目的は、軟らかい酸変性ポリオレフィンかななる離型層であっても、巻き取り保管時に裏面からの凹凸転写によって離型層の粗さが増大することを抑制できる」という記載のとおり、「離型フィルム」の巻き取り保管時の課題に着目したもので、【0006】の「本発明により、種々の製品の製造工程に用いられる離型フィルムにおいて、」という記載からして、成形物は特定されないものである。 一方、本件発明1の「樹脂シート成型用離型フィルム」は、本件特許明細書の【0005】の上記記載のとおり、樹脂シートを離型フィルム上に成型した状態で巻き取った場合の課題に着目したものである。そして、本件発明1は、当該の樹脂シートを離型フィルム上に成型した状態で巻き取った場合に、樹脂シートのピンホールやキズなどの発生を抑制するために、易滑塗布層の領域表面平均粗さ(Sa)、最大突起高さ(P)及び粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)の程度を規定するものある。言い換えると、易滑塗布層の領域表面平均粗さ(Sa)、最大突起高さ(P)及び粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)の程度の規定は、本件発明1が「樹脂シート成型用離型フィルム」であり、樹脂シートを離型フィルム上に成型した状態で巻き取ることを前提に検討されたものであるといえる。 以上の事項を鑑み検討するに、成形物とともに巻き取る保管時ではなく、離型シート自体を巻き取り保管する時の課題に着目した引用発明の「離型フィルム」においては、巻き取り保管時にいかなる製品を成型したかについては全く考慮する必要がないものであるから、甲1の【0006】に「種々の製品の製造工程に用いられる離型フィルム」という記載があるとおり、「離型フィルム」が、いかなる製品の成形用であるのかについては特定されないものである。そして、「種々の製品の製造工程に用いられる離型フィルム」という記載から、「樹脂シート成形用」と特定することは、当業者といえども容易に想到するものではない。 (イ)続いて、本件発明1が「領域表面平均粗さ(Sa)が1nm以上25nm以下」、「最大突起高さ(P)が60nm以上500nm以下」、「粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が10μm以下」であり、「粒子径が150nm以上600nm以下の粒子を含む」ものであることについて検討する。 上記(ア)で説示したとおり、本件発明1と引用発明とは、着目する巻き取りの状態から相違するものであるから、「離型フィルム」自体の巻き取り保管時の課題に着目し、「算術表面粗さ(Ra2)が1nm以上3nm以下」であり、「粒子径が15nm以上80nm以下の粒子を含む」こととした引用発明において、樹脂シートを離型フィルム上に成型した状態で巻き取った場合の課題を解決するための本件発明1の表面形状とすることは、当業者が想到し得るものではない。すなわち、「領域表面平均粗さ(Sa)が1nm以上25nm以下」、「最大突起高さ(P)が60nm以上500nm以下」、「粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が10μm以下」とすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。 加えて、含まれる粒子の大きさが、表面の性状に影響を与えることは、当業者にとって技術常識であるところ、本件発明1に対し差異のある粒子径を規定した引用発明において、着目する巻き取りの状態から相違する本件発明1の粒子径とすることは、当業者が容易に想到し得るものではない。 また、セラミックシート製造用離型フィルムについて規定する上記甲2記載事項の存在があったとしても、相違点1の本件発明1の構成とすることは容易ではない。甲2記載事項は、「粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)」及び「粒子径」について不明である。また、甲2記載事項は、「セラミックシート塗布後の巻取りにおいて、巻き取られたセラミックシートに、平滑化塗布層の突起の凹凸が転写されることがなく、ピンホールなどの欠点を生じるおそれが小さいので好ましい」(甲2【0048】)「セラミックシート製造用離型フィルム」について規定するものであるから引用発明とは属する技術分野に違いがあり、引用発明に適用しようとする動機付けは存在しない。 さらに、二軸配向ポリエステルフィルムについて規定する上記甲3記載事項の存在があったとしても、相違点1の本件発明1の構成とすることは容易ではない。甲3記載事項は、表面の性状に影響を与えることが明らかな粒子の大きさについて、本件発明1との間に差異を有している。また、甲3記載事項は「磁気記録媒体用、電気絶縁用、コンデンサー用、回路材料、太陽電池用材料などに好適に用いることができる二軸配向ポリエステルフィルム」であり、引用発明とは属する技術分野に違いがあり、引用発明に適用しようとする動機付けは存在しない。 ウ まとめ 以上から、本件発明1は引用発明並びに甲2記載事項及び甲3記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2及び3について 本件発明2及び3は、直接的に本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。 したがって、上記に示したことと同様に、本件発明2及び3は、引用発明並びに甲2記載事項及び甲3記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第6 むすび したがって、申立書に記載された特許異議申立理由及び証拠によっては、請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700132

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