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特許異議申立

2022-700752

セラミックグリーンシート製造用離型フィルム

審判番号
2022-700752
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-021577
登録番号
7017183
請求日
2022年08月02日
審決日
2022年10月11日
公報発行日
2022年11月25日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】東洋紡株式会社
  • 【権利者代理人】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
  • 【異議申立人】渋谷 都
  • 【異議申立人】吉澤 悦子
  • 【異議申立人】小宮 邦彦
審判長/審判官
  • 審判長 久保 克彦
  • 審判官 稲葉 大紀
  • 審判官 石田 智樹
分類
P1651.113-Y (B32B) / P1651.121-Y (B32B) / P1651.537-Y (B32B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7017183号発明「セラミックグリーンシート製造用離型フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7017183号の請求項1~7に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7017183号の請求項1~7に係る特許についての出願は、2017年(平成29年)5月8日(優先権主張 平成28年5月16日 日本国)を国際出願日とする出願である特願2017-528866号の一部を、平成29年10月18日に新たな特許出願(特願2017-201565)とし、その一部を令和2年2月20日に新たな特許出願(特願2020-27456号)(以下「原出願」という)とし、さらにその一部を令和3年2月15日に新たな特許出願(特願2021-21577号)としたものであって、令和4年1月31日にその特許権の設定登録がされ、令和4年2月8日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和4年8月2日に特許異議申立人渋谷都(以下「申立人1」という。)が、同日に特許異議申立人吉澤悦子(以下「申立人2」という。)が、同年8月8日に特許異議申立人小宮邦彦(以下「申立人3」という。)が、それぞれ特許異議の申立てを行った。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~7に係る発明(以下「本件発明1」等という。まとめて「本件特許」ともいうことがある。)は、それぞれ、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 ポリエステルフィルム基材と、前記基材の一方の表面上に易滑塗布層とを有し、 前記基材のもう一方の表面上に離型塗布層を有し、 前記ポリエステルフィルムが、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートから選ばれる少なくとも1種を含むポリエステルフィルムであり、 前記易滑塗布層の粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が10μm以下であり、 前記離型塗布層表面の領域表面平均粗さ(Sa)が5nm以下かつ最大突起高さ(P)が30nm以下である、離型フィルム。 【請求項2】 易滑塗布層の領域表面平均粗さ(Sa)が1nm以上25nm以下、最大突起高さ(P)が60nm以上500nm以下である請求項1に記載の離型フィルム。 【請求項3】 易滑塗布層の厚みが0.001μm以上2μm以下である請求項1または2に記載の離型フィルム。 【請求項4】 セラミックグリーンシート製造用の請求項1~3のいずれかに記載の離型フィルム。 【請求項5】 請求項1~4のいずれかに記載の離型フィルムを用いるセラミックグリーンシートの製造方法。 【請求項6】 製造するセラミックグリーンシートの厚みが、0.2μm以上2μm以下である請求項5に記載のセラミックグリーンシートの製造方法。 【請求項7】 請求項5または6に記載のセラミックグリーンシートの製造方法を採用するセラミックコンデンサの製造方法。」 第3 申立理由の概要 1 申立人1は、次の甲第1号証~甲第4号証(以下「甲1-1」~「甲1-3」という。)を提出して、以下の申立理由1-1及び申立理由1-2を申し立てている。 甲1-1:特開2016-60158号公報 甲1-2:国際公開第2013/080925号 甲1-3:株式会社不二製作所、「Z BOOK 便利帳」、[Online]、[検索日:2022年7月25日]、インターネット <https://www.fujimfg.co.jp/service/benricho/roughness/> (1)理由1-1(進歩性) 本件発明1~7は、甲1-1に記載された発明及び甲1-2~甲1-3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 (2)理由1-2(サポート要件) 本件発明1~7に係る特許は、下記の点で、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 記 ア 本件発明1において、ポリエステルフィルム基材が粒子を含有するか否かの特定はないから、粒子を含有し得るといえる。一方、発明の詳細な説明において、粒子を含有する積層フィルムZを基材に用いた比較例4~6では、RSmの値を十分に下げることができずピンホールが発生しており、このような粒子を含む基材を用いた場合において、どうすればRSmを10μm以下にできるかについて発明の詳細な説明に記載はないから、本件発明の課題が解決できると認識できるとはいえない。そうすると、基材が粒子を含む本件発明1~7は、発明の課題が解決できると認識できる範囲にあるとはいえない。 イ 本件発明1における「易滑塗布層の・・・(RSm)が10μm以下」のうち、発明の詳細な説明の実施例1~8で示される2.2μm~2.7μmの範囲を外れた範囲について、本件発明の課題が解決できるか否かは本件明細書の記載からは明らかではないから、本件発明の課題が解決できると認識できるとはいえない。そうすると、RSmが2.7μmを超え10μm以下の範囲を含む本件発明1~7は、発明の課題が解決できると認識できる範囲にあるとはいえない。 2 申立人2は、次の甲第1号証~甲第6号証(以下「甲2-1」~「甲2-6」という。)を提出して、以下の理由2-1~理由2-2を申し立てている。 甲2-1:特開2012-6213号公報 甲2-2:特開2008-98344号公報 甲2-3:東洋紡績株式会社、「製品・技術紹介 高透明ポリエステルフィルム コスモシャイン○R」(当審注:○Rは丸囲み文字を表す。以下同様。)、成形加工 第19巻第10号2007年、p.654 甲2-4:OLYMPUS、「EVIDENT 工業用顕微鏡 表面粗さ測定-パラメーターについて」、[Online]、[検索日:2022年7月22日]、インターネット <https://www.olympus-ims.com/ja/metrology/surface-roughness-measurement-portal/parameters/> 甲2-5:特開2011-9319号公報 甲2-6:特開2020-111052号公報 (1)理由2-1(新規性、進歩性) 本件発明1~7は、甲2-1に記載された発明であるか又は甲2-1に記載された発明及び甲2-2~甲2-5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~7に係る特許は、特許法第29条第1項第3号又は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 (2)理由2-2(分割要件違反を前提とする新規性及び進歩性) 本件出願は、下記の点から、分割要件を充足していないから、本件特許に係る出願の出願日は、上記第1に記載した特願2017-528866号の出願日である平成29年5月8日ではなく、現実の出願日である令和3年2月15日である。よって、本件発明1~7は、原出願の公開公報である甲2-6に記載された発明であるか又は甲2-6に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号又は第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 記 原出願の出願当初明細書等には、ポリエステルフィルム基材が実質的に粒子を含有することは記載されていない。しかしながら、原出願の一部を新たな特許出願とした本件特許に係る出願は、「ポリエステルフィルム基材」に関し、「粒子を実質的に含有していない」という要件が削除されており、本件発明1のポリエステルフィルム基材は、粒子を実質的に含有するものも含むこととなる。したがって、本件分割出願は、原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内でされたものではない。 3 申立人3は、次の甲第1号証~甲第3号証(以下「甲3-1」~「甲3-3」という。)を提出して、以下の理由3-1及び理由3-2を申し立てている。 甲3-1:特開2016-60158号公報 甲3-2:特開2014-237238号公報 甲3-3:特開2014-189717号公報 (1)理由3-1(甲3-1及び甲3-2に基づく進歩性) 本件発明1~7は、甲3-1に記載された発明及び甲3-2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 (2)理由3-2(甲3-1及び甲3-3に基づく進歩性) 本件発明1~7は、甲3-1に記載された発明及び甲3-3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 第4 文献の記載及び引用発明 1 甲1-1 (1)甲1-1の記載(下線は強調のために当審が付した。) 「【請求項1】 2層以上からなる二軸配向ポリエステルフィルムを基材とし、前記基材は、粒子を実質的に含有していない表面層Aと粒子を含有する表面層Bを有し、表面層Aの表面上に離型塗布層が積層され、かつ表面層Bの表面上に平滑化塗布層が積層されてなり、平滑化塗布層の領域表面平均粗さ(Sa)が5nm以上25nm以下かつ最大突起高さ(P)が800nm以下であることを特徴するセラミックシート製造用離型フィルム。 ・・・ 【請求項3】 前記離型フィルムの離型塗布層の領域表面平均粗さ(Sa)が5nm以下かつ最大突起高さ30nm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のセラミックシート製造用離型フィルム。」 「【0001】 本発明は、超薄層のセラミックシート製造用離型フィルムに関するものであり、詳しくは超薄層のセラミックシート製造時にピンホール及び厚みムラによる工程不良の発生を抑制したものを製造し得る、超薄層のセラミックシート製造用離型フィルムに関するものである。」 「【0009】 本発明は、上記実情に鑑み鋭意検討した結果、得られたものであり、超薄層のセラミックシート製造時に、厚み不良やピンホール等の欠点を実質上生じることがなく、ハンドリング性に優れた超薄層のセラミックシート製造用離型フィルムを提供しようとするものである。」 「【0016】 (ポリエステルフィルム) 本発明の基材として用いる二軸配向ポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、特に限定されず、離型フィルム基材として通常一般に使用されているポリエステルをフィルム成形したものを使用することが出来るが、好ましくは、芳香族二塩基酸成分とジオール成分からなる結晶性の線状飽和ポリエステルであるのが良く、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート又はこれらの樹脂の構成成分を主成分とする共重合体がさらに好適であり、とりわけポリエチレンテレフタレートから形成されたポリエステルフィルムが特に好適である。」 「【0031】 (離型塗布層) 本発明における離型塗布層を構成する樹脂には特に限定はなく、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アルキド樹脂、各種ワックス、脂肪族オレフィンなどを用いることができ、各樹脂を単独もしくは、2種類以上併用することもできる。 ・・・ 【0042】 離型塗布層を形成させたフィルム表面は、その上で塗布・成型するセラミックシートに欠陥を発生させないために、平坦であることが望ましく、領域表面平均粗さ(Sa)が5nm以下かつ最大突起高さ(P)が30nm以下であることが好ましい。さらには領域表面平均粗さ5nm以下かつ最大突起高さ20nm以下がより好ましい。領域表面粗さが5nm以下、且つ、最大突起高さが30nm以下であれば、セラミックシート形成時に、ピンホールなどの欠点を発生がなく、歩留まりが良好で好ましい。」 「【0047】 (平滑化塗布層) 本発明の離型フィルムにおいて、表面層Bの上に、平滑化塗布層が設けられている。 領域表面平均粗さを制御した表面層B上に、さらに平滑化塗布層を設けることで、より高度に領域表面平均粗さと最大突起高さを制御することができる。そのため、0.2~1.0μmの超薄層セラミックシートを離型塗布層に成型後、ロール状に巻き取った後でも、平滑化塗布層の凹凸転写がなく超薄層セラミックシートのピンホールなどの欠点を抑制することができる。 【0048】 本発明における平滑化塗布層の領域表面平均粗さ(Sa)は5nm以上25nm以下かつ最大突起高さ(P)は800nm以下であることが好ましい。より好ましくは、領域表面平均粗さ(Sa)は7nm以上23nm以下かつ最大突起高さ(P)が750nm以下であり、Saが10nm以上20nm以下かつPが700nm以下がさらに好ましい。領域表面粗さ(Sa)が5nm以上であれば、滑り性が良く巻き取り時にシワなどが発生せず平面性が保たれるので好ましい。一方、領域表面平均粗さ(Sa)が25nm以下であり、且つ、最大突起高さ(P)が800nm以下の場合には、セラミックシート塗布後の巻取りにおいて、巻き取られたセラミックシートに、平滑化塗布層の突起の凹凸が転写されることがなく、ピンホールなどの欠点を生じるおそれが小さいので好ましい。・・・ 【0050】 平滑化塗布層の構成する樹脂の一部には、高度に平滑な表面でも滑り性を保持するために、易滑性樹脂を用いることが好ましい。易滑性樹脂とは、ポリエステルフィルム上に塗布後、乾燥及び/又は硬化して積層した樹脂層の表面自由エネルギーγsが25mN/m以下であるものをいい、例としては、シリコーン系樹脂やフッ素系の樹脂、長鎖アルキル変性された樹脂などが挙げられる。」 (2)甲1-1に記載された発明 上記(1)の記載事項を総合し、特に請求項1に着目すると、甲1-1には次の発明が記載されている(以下「甲1-1発明」という。)。 「2層以上からなる二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを基材とし、前記基材は、粒子を実質的に含有していない表面層Aと粒子を含有する表面層Bを有し、 表面層Aの表面上に離型塗布層が積層され、かつ表面層Bの表面上に平滑化塗布層が積層されてなり、 前記離型塗布層の領域表面平均粗さ(Sa)が5nm以下かつ最大突起高さ(P)が30nm以下である、 セラミックシート製造用離型フィルム。」 2 甲1-2について (1)甲1-2の記載 「[0001] 本発明は、プラスチックフィルム、特に位相差フィルムなどの光学フィルムの表面を保護するための表面保護フィルムの製造方法および製造装置ならびに表面保護フィルムに関する。」 「[0005] しかしながら、表面保護フィルムは粘着性のフィルムであるため、ロール状に巻取った際に粘着力のある面(以下、粘着面と称す)ともう一方の面(以下、背面と称す)が粘着し、ブロッキングが発生しやすいという特徴を有しており、かかる特許文献1の技術を用いるだけでは、仮にフィッシュアイをすべて押し潰すことができたとしても、表面保護フィルムの両表面が平滑なものとなり、かかるブロッキングの問題が顕著となり、フィルムが巻き戻せなくなるなど、実用に耐えがたいものとなる問題があった。」 「[0008] ・・・凹凸表面形状の被着体への転写は凹凸の大きさや密度が影響するため、算術平均粗さRaのみを考慮していては凹凸表面形状の被着体への転写を防止することは困難であることを本発明者らは見いだした。」 「[0011] 本発明の目的は、上記問題を解決し、ロール状に巻き取った際にブロッキングを生じること無く、かつ、被着体に貼り合わせた後にロール状に巻取り、長期保管した際にも、背面の凹凸形状が被着体に転写することのない表面保護フィルムを製造することができる製造方法および製造装置、ならびに表面保護フィルムを提供することにある。」 「[0060] ニップローラー3の表面の十点平均粗さRzは2~8μmであり、かつ凹凸の平均間隔Smが90μm以下であり、好ましくはSmが70μm以下である。ニップローラー3の表面粗さは溶融樹脂2に転写され、表面保護フィルム6の背面の凹凸形状を形成するため、ニップローラー3の十点平均粗さRzが8μmを超えると、表面保護フィルム背面6の十点平均粗さRzが10μmを超えてしまい位相差フィルムなどの軟質な被着体に表面保護フィルム6を貼り合わせた後、ロール状に巻取り長期間保管した際に、背面の凹凸表面形状が被着体表面に転写してしまう。また、ニップローラー3の十点平均粗さRzが2μmを下回ると、表面保護フィルム6の背面の十点平均粗さRzが3μmを下回り、粘着面との離型性が低下し、表面保護フィルム3を巻取った際にブロッキングが発生する可能性が高くなる。また、摩擦係数が上昇し滑りにくくなるために、シワなどの巻姿欠点が発生し易くなる。加えて、表面保護フィルム6の背面の凹凸形状によるクッション性が著しく低下するために、フィッシュアイが被着体に転写し易くなる。さらに、十点平均粗さRzが上記範囲にあったとしても、ニップローラー3の表面の凹凸の平均間隔Smが90μm以上である場合、上述のような凹凸表面形状の被着体への転写や、巻取り時のブロッキングやシワといった欠陥が生じやすくなる。ニップローラー3の表面の凹凸の平均間隔Smが90μmよりも大きくなると、表面保護フィルム6の背面の凹凸の平均間隔Smも90μm以上となり表面の凹凸形状における凸の数が少なくなり、被着体と表面保護フィルム6の背面の真実接触面積が減少する。これにより局所圧力が上昇するため、凹凸形状の被着体への転写が発生し易くなると考えられる。・・・ [0061] ニップローラー3および表面保護フィルム6の背面の表面形状のパラメータとして十点平均粗さRzを用いることで凹凸形状の転写の原因となる凹凸の絶対的な高さおよび深さを、凹凸の平均間隔Smを用いることで凹凸の密度を制御することが可能となる。なお、ニップローラー3および表面保護フィルム6の背面の算術平均粗さRaと十点平均粗さRzの値にはほとんど関係性は無く、発明者らの知見によれば、Rzの値はRaの値の3~20倍と広い範囲の値をとる。」 「[請求項16] 単層または複数の層からなる表面保護フィルムであって、一方の面の算術平均粗さRaが0.4μm以下であって、もう一方の面の十点平均粗さRzが3~10μmかつ凹凸の平均間隔Smが90μm以下であって、少なくとも十点平均粗さRzが3~10μmかつ凹凸の平均間隔Smが90μm以下である面を形成する層が低密度ポリエチレン(LDPE)または直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)またはエチレン-メチルメタクリレート共重合体(EMMA)からなることを特徴とする表面保護フィルム。」 (2)甲1-2に記載された事項 上記(1)の記載事項を総合すると、甲1-2には以下の事項が記載されている(以下「甲1-2記載事項」という。)。 「ポリエチレンからなる表面保護フィルムにおいて、フィルム背面の十点平均粗さRzを3μm~10μmとすることで、ロール状に巻き取った際にフィルム背面とフィルム粘着面の離型性が低下することを防止するとともにフィルムを被着体に貼り合せた後ロール状に巻き取り長期間保管した際にフィルム背面の凹凸形状が被着体表面に転写されることを防止し、フィルム背面の凹凸の平均間隔Smを90μm以下とすることで、背面の凸部の局所圧力を低下して凹凸形状が被着体表面に転写されることを防止すること。」 3 甲1-3について (1)甲1-3の記載 「 [図:0001390618000001.jpg] 」 (2)甲1-3に記載された事項 上記(1)の記載事項から、甲1-3には以下の事項が記載されている(以下「甲1-3記載事項」という。)。 「1994年表面粗さのJIS規格の見直しにより、最大高さRyは最大高さRzに、十点平均粗さRzは十点平均粗さRzjis94に、凹凸の平均間隔Smは粗さ曲線要素の平均長さRSmに変更されたこと。」 4 甲2-1について (1)甲2-1の記載 「【請求項1】 基材フィルムの少なくとも片面に、中間層および離型樹脂層を設けた離型フィルムであって、該離型樹脂層が、ヘキセニル基を有するオルガノポリシロキサンとSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンの付加反応により架橋したものであり、該離型樹脂を成形したシートのゴム硬度が60~75であることを特徴とする積層セラミックコンデンサグリーンシート成型用離型フィルム。」 「【0001】 積層セラミックコンデンサのグリーンシート成型用途に用いられ、グリーンシートの剥離性およびセラミックスラリーのハジキ、積層不良等の問題を解決するために用いられる積層セラミックコンデンサグリーンシート成型用離型フィルムに関するものである。特に1μm以下の厚みの積層セラミックコンデンサグリーンシートの成型に適した離型層を有する離型フィルムに関するものである。」 「【0017】 本発明の基材フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルム等が挙げられるが、特にMLCCグリーンシートのような平面性が要求されるシート成型に使用される基材フィルムとしては、機械的強度、耐熱性、熱寸法安定性および耐薬品性に優れ、且つ経済的である二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが好適に用いられる。基材フィルムの厚みとしては、18~125μmが好ましく、さらに好ましくはコストの面から25~50μmである。」 「【0020】 基材層の基材フィルムとしてのポリエチレンテレフタレートフィルムとしては、東レ(株)製「ルミラー」(登録商標)R80や、東洋紡(株)製“コスモシャイン”A4100などの市販のフィルムを用いることができる。」 「【0035】 離型用シリコーン樹脂を塗布する方法としては、グラビアコーティング、メイヤーバーコーティング、エアーナイフコーティング、ドクターナイフコーティング等に挙げられるコーティング方式を利用することが出来るが、塗工後の表面粗さSRaが10nm以下、表面突起高さ200nm以下とする為には、グラビアロールを使用し加工する場合、レベリングの点でグラビアメッシュを400μm以下、乾燥オーブン温度は160℃以下とすることが好ましい。」 (2)甲2-1に記載された発明 上記(1)の記載事項を総合し、特に請求項1に着目すると、甲2-1には次の発明が記載されている(以下「甲2-1発明」という。)。 「ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡(株)製“コスモシャイン”A4100)の少なくとも片面に、中間層および離型樹脂層を設け、 前記離型樹脂層の表面粗さSRaが10nm以下、表面突起高さが200nm以下である、 積層セラミックコンデンサグリーンシートの成型に適した離型層を有する離型フィルム。」 5 甲2-2について (1)甲2-2の記載 「【請求項1】 ジアミンと芳香族テトラカルボン酸とを反応させて得られるポリアミド酸を支持体に流延・乾燥して、ポリイミド前駆体フィルムの一方の面(A面)のイミド化率をIMaとし、他一方の面(B面)のイミド化率をIMbとするとき、IMa、IMbの両者の差が5以下であるポリイミド前駆体フィルムを得、該ポリイミド前駆体フィルムを熱によりイミド化させて得られるポリイミドフィルムであって、波長500nmでの光線透過率が50%以上である無色透明ポリイミド長尺フィルムに光電変換薄膜を積層したことを特徴とするフィルム状太陽電池。」 「【0001】 本発明は、可撓性基板である耐熱性ポリイミドフィルムであって、しかも表裏差の少ない透明ポリイミドフィルムを利用したフィルム状太陽電池に関する。」 「【0031】 ポリアミド酸溶液を塗布する支持体は、ポリアミド酸溶液をフィルム状に成形するに足る程度の剛性を有していればよく、表面が金属(より好ましくは錆びなくて耐腐食に優れるステンレス)、プラスチックなどであるドラム又はベルト状回転体などが挙げられる。 また、適度な剛性を有する高分子フィルムを利用する方法も好ましい態様である。 金属支持体の表面にはCr、Ni、Snなどの金属メッキを施してもよい。 支持体表面はフィルムの必要表面凹凸構造に応じて、任意の表面凹凸構造を付与することができ、この支持体上の表面凹凸構造は支持体全面に付与してもよく、部分的に付与してもよく、またドラム又はベルト状回転体支持体に直接付与してもよく、フィルムや金属に付与したものを貼り合わせて使用してもよい。凹凸構造の深さは0.5μm~80μmが好ましいが、より好ましくは0.5μm~50μm、さらに好ましくは0.5μm~40μmである。 支持体へのポリアミド酸溶液の塗布は、スリット付き口金からの流延、押出機による押出し、スキージコーティング、リバースコーティング、ダイコーティング、アプリケータコーティング、ワイヤーバーコーティング等を含むが、これらに限られず、従来公知の溶液の塗布手段を適宜用いることができる。 また、支持体上にポリアミド酸溶液を塗布した後に過熱により溶剤を一部放出させ、事故指示性のある程度になった段階で、凹凸のあるロール押し付けにより表面凹凸構造を付与することもできる。 これらの処方によって、Rtが0.3μm~50μm、RSmが0.5μmから40μm程度の凹凸構造を有しているポリイミドフィルムが比較的容易に得られる。 【0032】 上記のポリイミドフィルムには、滑剤をポリイミド中に添加含有せしめるなどしてフィルム表面に微細な凹凸を付与しフィルムの滑り性を改善することもできる。」 「【0034】 両面乾燥工程の具体的方法としては、例えば支持体上の第一乾燥工程を終了した前駆体フィルムを支持体から剥離して、支持体に密接していたフィルム面側をフリーとした状態で前駆体フィルムを乾燥せしめる方法が挙げられる。」 「【0048】 得られた各ポリアミド酸溶液を、支持体としての厚さ188μm、幅800mmのポリエステルフィルム(コスモシャインA4100(東洋紡績株式会社製))の滑剤を含まない面に幅740mmとなるようにコーティングし、各フィルム作製条件を適応させて各ポリイミドフィルムを得た。得られた各フィルムの性能などを表1に示す。」 「【表1】 [図:0001390618000002.jpg] 」 表面粗さパラメータにおいて、「Rt」が最大断面高さであり、「RSm」が平均長さであることは技術常識から明らかである。 (2)甲2-2に記載された事項 上記(1)の記載事項を総合すると、甲2-2には次の事項が記載されている。 「フィルム状太陽電池に用いる無色透明ポリイミドフィルムにおいて、フィルムの表面凹凸構造は、支持体表面の凹凸構造に応じて付与するほか、凹凸のあるロール押し付けにより付与することにより、最大断面高さ(Rt)が0.3μm~50μm、平均長さ(RSm)が0.5μmから40μm程度の凹凸構造を有しているポリイミドフィルムが比較的容易に得られること。」(以下「甲2-2記載事項1」という。) 「フィルム状太陽電池に用いる無色透明ポリイミドフィルムにおいて、支持体として用いたコスモシャイン4100(東洋紡績株式会社製)の滑剤を含まない面にポリアミド酸溶液をコーティングしてポリイミドフィルムを得たこと。」(以下「甲2-2記載事項2」という。) 6 甲2-3について (1)甲2-3の記載 「 [図:0001390618000003.jpg] 」 「 [図:0001390618000004.jpg] 」 「 [図:0001390618000005.jpg] 」 (2)甲2-3に記載された事項 上記(1)の記載事項を総合すると、甲2-3には次の事項が記載されている(以下「甲2-3記載事項」という。) 「コスモシャイン○Rは、内部に粒子を含まない純ポリエステルフィルムの片面又は両面に、粒子を含む滑り性のインラインコートによるコート層を付与したポリエステルフィルムであること。」 7 甲2-4について (1)甲2-4の記載 「 [図:0001390618000006.jpg] 」 (当審注:「J成IS’82でRmax」は「JIS’82ではRmax」の誤記である。) (2)甲2-4に記載された事項 上記(1)の記載事項を総合すると、甲2-4には次の事項が記載されている(以下「甲2-4記載事項」という。) 「表面粗さパラメータにおいて、最大断面高さ(Rt)は、基準長さではなく評価長さにおいて、輪郭曲線の山高さZpの最大値と谷深さZvの最大値の和であること。」 8 甲2-5について (1)甲2-5の記載 「【0001】 本発明は、薄膜セラミックコンデンサグリーンシートを製造する際に使用するセラミックコンデンサグリーンシート製造用高平滑性離型フィルム及びその製造方法に関するものであって、・・・」 「【0087】 本発明について、以下に実施例を挙げて更に具体的に説明する。 (実施例1) 基材として、厚さ50μmの表面粗さ(Ra)の実測値が4.0nmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製A4100)を使用し、これをプラズマ化学気相成長装置の送り出しロールに装着後、下記に示す蒸着条件で、上記基材フィルムの片側コロナ処理面に、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を蒸着材料としたプラズマ化学気相成長法を用いて厚さ10nm、表面粗さ4.2nm、表層から3.0nmまでのC/Si比が2.7の酸化珪素膜の平滑層を形成して本発明にかかる高平滑性離型フィルムを得た。」 (2)甲2-5に記載された事項 上記(1)の記載事項を総合すると、甲2-5には次の事項が記載されている(以下「甲2-5記載事項」という。)。 「セラミックコンデンサグリーンシート製造用高平滑性離型フィルムの基材フィルムとして用いた東洋紡製A4100の表面粗さ(Ra)の実測値が4.0nmであったこと。」 9 甲2-6について (1)甲2-6の記載 「【請求項1】 粒子を実質的に含有していないポリエステルフィルムを基材と、前記基材の一方の表面上に易滑塗布層とを有し、 前記ポリエステルフィルムが、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートから選ばれる少なくとも1種を含むポリエステルフィルムであり、 前記易滑塗布層の粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が10μm以下である、 コーティングポリエステルフィルム。 【請求項2】 易滑塗布層の領域表面平均粗さ(Sa)が1nm以上25nm以下、最大突起高さ(P)が60nm以上500nm以下である請求項1に記載のコーティングポリエステルフィルム。 【請求項3】 易滑塗布層の厚みが0.001μm以上2μm以下である請求項1または2に記載のコーティングポリエステルフィルム。 【請求項4】 セラミックグリーンシート製造用の請求項1~3のいずれかに記載のコーティングポリエステルフィルム。 【請求項5】 請求項1~4のいずれかに記載のコーティングポリエステルフィルムを用いるセラミックグリーンシートの製造方法。 【請求項6】 製造するセラミックグリーンシートの厚みが、0.2μm以上2μm以下である請求項5に記載のセラミックグリーンシートの製造方法。 【請求項7】 請求項5または6に記載のセラミックグリーンシートの製造方法を採用するセラミックコンデンサの製造方法。」 (2)甲2-6に記載された事項 上記(1)の記載事項を総合し、特に、請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3を引用する請求項4に着目すると、甲2-6には次の事項が記載されている(以下「甲2-6記載事項」という。)。 「粒子を実質的に含有していないポリエステルフィルム基材と、前記基材の一方の表面上に易滑塗布層とを有し、 前記ポリエステルフィルムが、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートから選ばれる少なくとも1種を含むポリエステルフィルムであり、 前記易滑塗布層の粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が10μm以下であり、 易滑塗布層の領域表面平均粗さ(Sa)が1nm以上25nm以下、最大突起高さ(P)が60nm以上500nm以下であり、 易滑塗布層の厚みが0.001μm以上2μm以下である、 セラミックグリーンシート製造用のコーティングポリエステルフィルム。」 10 甲3-1について 甲3-1は甲1-1と同一の刊行物であるから、甲3-1には上記1(2)で示した甲1-1発明(理解の便のため、甲1-1~甲1-3に基づく理由の検討においては、甲1-1発明といい、甲3-1~甲3-2に基づく理由の検討においては甲3-1発明という。)が記載されている。 「2層以上からなる二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを基材とし、前記基材は、粒子を実質的に含有していない表面層Aと粒子を含有する表面層Bを有し、 表面層Aの表面上に離型塗布層が積層され、かつ表面層Bの表面上に平滑化塗布層が積層されてなり、 前記離型塗布層の領域表面平均粗さ(Sa)が5nm以下かつ最大突起高さ(P)が30nm以下である、 セラミックシート製造用離型フィルム。」 11 甲3-2について(転写箔用離型フィルム) (1)甲3-2の記載 「【請求項1】 基材フィルムの少なくとも片面に離型層を有する積層フィルムであって、離型層表面の粗さ曲線要素の平均長さRSmが10μm以上80μm以下である離型フィルム。」 「【0001】 本発明は、剥離安定性と耐熱性に優れる離型フィルムに関するものであり、更に詳しくは、成型加工後も良好で安定した剥離性を示す離型フィルムに関する。 【背景技術】 【0002】 ・・・一例として、成形同時転写箔用離型フィルムが挙げられる。当該離型フィルムを用いた転写箔の構成は一般的に、基材フィルムであるポリエステルフィルムの片面に離型層を設け、該離型層上に順次、図柄印刷層および接着層などの転写層を積層した構成からなる。目的に応じて、転写層にハードコート層や金属蒸着層等が積層される。さらには、これら離型層や転写層に帯電防止剤や抗菌剤等の機能性剤を加え、転写箔としての機能が付与される。 【0003】 上述の離型フィルムを用いた転写箔の転写方法は、転写箔を射出成形用の金型内にセットし、樹脂成形品を成形するのと同時にその表面に転写箔シートを一体化して接着し樹脂成形品に図柄を転写し装飾を施す成形同時転写法が広く一般的に知られている。」 「【0051】 本発明においては、離型層表面の粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が10μm以上80μm以下であることが必要である。ここでいうRSmは、JISB0601(2001年)に従って求められるものであり、基準長さにおける粗さ曲線要素間の長さの平均をあらわす。すなわち、図1における基準長さ(Lr)において、粗さ曲線のピーク数がm、各ピーク間の距離がW1、W2、W3・・・Wmとするとき、下記式(1)に示すようにW1~Wmの長さの総和を粗さ曲線のピーク数mで除算することにより、RSmを求めることができる。RSmを上述の10μm以上80μm以下とすると、離型性、離型安定性を飛躍的に良好とすることができる。この効果について、本発明者らは、下記のように推定している。RSmは、離型層表面の凸凹の間隔をあらわすものであり、値が大きいほど凸凹間の距離が大きくなるため、表面の平均傾斜が緩やかとなる。一方、値が小さくなると、表面の凸凹のピッチが小さくなり、表面の平均傾斜が急となり、また、単位面積当たりの溝の数が増加する。RSmが80μmより大きいと、離型層表面の傾斜が過度に緩やかになり、離型層に積層した層と離型層表面の密着が不十分となる。一方、RSmを10μm未満とすると、表面の平均傾斜が急となり、また、単位面積当たりの溝の数が増加するため、安定した離型性を得ることが困難となる。RSmを10μm以上80μm以下とすることにより、離型層の表面に適度な間隔で凸凹が配列され、離型性、離型安定性の観点から最適な高さ勾配を形成するものと考えている。RSmは、好ましくは20μm以上75μm以下であり、30μm以上70μm以内であると最も好ましい。 【0052】 【数1】 [図:0001390618000007.jpg] 」 「【0077】 4.成形性、離型性、耐熱性 離型層に、順にトップコート層、インキ層、接着層をコーティングし、転写箔を作成した。トップコート層として、紫外線硬化型アクリル系樹脂(BASFジャパン(株)製“LAROMER”(登録商標) LR8983)(厚み60μm)、インキ層として、ポリウレタン系樹脂グラビアインキ(大日精化工業(株)製“ハイラミック”、主要溶剤:トルエン/メチルエチルケトン/イソプロピルアルコール、インキ:723B黄/701R白)(厚み70μm)を形成し、さらに、接着層として、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)共重合樹脂フィルム(オカモト(株)製ABSフィルム“ハイフレックス”、厚み100μm)を塗布した。インキ層を硬化させるために40℃で72時間エージングを行った。次に、直径50mm、絞り比(深さ/底面直径)が0.2の円筒型の金型にセットして120℃で減圧成形を行い、ABS樹脂(東レ(株)製、ABS樹脂“トヨラック”(登録商標) 930)を用い、射出成形して、円筒型成形物を作成した。」 「【0088】 (実施例1) 基材フィルムは3層積層フィルム(B層/A層/B層)とした。 ポリエステルチップα、ポリエステルチップβと粒子マスターMを真空乾燥機にてそれぞれ180℃4時間乾燥し水分を十分に除去した。その後、A層がポリエステルチップα:ポリエステルチップβ=60:40の質量比になるように、B層がポリエステルチップα:ポリエステルチップβ:粒子マスターM=88:10:2の質量比で原料をブレンドした。それぞれ別の単軸押出機に供給し、275℃で溶融し、別々の経路でフィルター、ギヤポンプを通し、異物の除去、押出量の均整化を行った。その後、Tダイの上部に設置したフィードブロック内にてB層/A層/B層の厚み比が1/8/1になるように積層し、Tダイより25℃に温度制御した冷却ドラム上にシート状に吐出した。その際、直径0.1mmのワイヤー状電極を使用して静電印加し、冷却ドラムに密着させ未延伸フィルムを得た。次いで、長手方向への延伸前に加熱ロールにてフィルム温度を上昇させ、予熱温度を90℃、延伸温度を95℃で長手方向に3.3倍延伸し、すぐに40℃に温度制御した金属ロールで冷却した。その後、コロナ放電処理を施し、表に示した組成の離型層形成用溶液(水分散体)をメタリングバーを用いてウェット厚みが13.5μmとなるように塗布した。次いでテンター式横延伸機にて予熱前半温度(横延伸予熱温度1)100℃、予熱後半温度(横延伸予熱温度2)130℃、延伸温度150℃で幅方向に3.5倍延伸し、そのままテンター内にて幅方向に4%のリラックスを掛けながら温度230℃で8間の熱処理を行い、フィルム厚み50μmの離型フィルムを得た。 【0089】 この離型フィルムは、離型層表面のRSmが67μmであり、高い剥離安定性と耐熱性を示すとともに、成形性に優れることから、特に成形同時転写用途に好適な特性を有していた。」 (2)甲3-2に記載された事項 上記(1)の記載を総合すると、甲3-2には次の事項が記載されている(以下「甲3-2記載事項」という。)。 「成形同時転写箔用離型フィルムに用いる二軸延伸ポリエステルフィルムにおいて、フィルムの片面に設けた離型層表面の粗さ曲線要素の平均長さRSmを10~80μmとすること。」 12 甲3-3について (1)甲3-3の記載 「【請求項1】 水溶性高分子を含む塗布層を少なくとも片面に有する二軸配向ポリエステルフィルムであって、塗布層表面の幅方向の突起間隔Sm-Xと長手方向の突起間隔Sm-Yがいずれも3~10μmである二軸配向ポリエステルフィルム。」 「【技術分野】 【0001】 本発明は、走行性や平滑性、耐削れ性に優れた二軸配向ポリエステルフィルムに関するものであり、磁気記録媒体用、電気絶縁用、コンデンサー用、回路材料、太陽電池用材料などに好適に用いることができる二軸配向ポリエステルフィルムに関するものである。 【背景技術】 【0002】 二軸延伸ポリエステルフィルムはその優れた熱特性、寸法安定性、機械特性および表面形態の制御のし易さから各種用途に使用されており、特に磁気記録媒体などの支持体としての有用性がよく知られ、磁気記録媒体には常に高密度記録化が要求されている。更なる高密度記録を達成するためには、磁性層の薄膜化や微粒子磁性体を使用するとともに、微粒子磁性体を高度に分散させて、磁性層表面の平滑性を高めることが有効である。 【0003】 しかしながら、磁性層表面の平滑性を高めるために基材フィルムを超高精細な表面として平滑性を向上させると、走行性や巻き取り、さらには表面の耐久性が不十分となるという問題がある。したがって、走行性や巻き取り性と表面平滑性の両立および表面の耐久性向上に対する要求はますます強まっている。 【0004】 この観点から、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどを用いたポリエステルフィルムにおいても、走行性と平滑性を両立するために、超微細粒子を分散した樹脂エマルジョンをコーティングし易滑平滑層を付与した磁気記録媒体用支持体が開発されている(例えば特許文献1、2)。しかし、磁性層の塗布工程において、支持体フィルム表面にコーティングにより付与した易滑平滑層にナイフコーターが接触した際、微細粒子が脱落し支持体フィルムの表面の耐削れ性や平滑性が著しく悪化したり、脱落した微細粒子による削れ粉が工程ロールを汚染するなどの問題がある。」 「【0007】 本発明の目的は、上記の問題を解決し、走行性や平滑性、耐削れ性に優れた二軸配向ポリエステルフィルムを得ることにあり、磁気記録媒体とした際に平滑な磁性層を有することができるため電磁変換特性に優れた高密度磁気記録媒体とすることができる二軸配向ポリエステルフィルムを提供することにある。」 「【0067】 本発明の実施の形態にかかる二軸配向ポリエステルフィルムの塗布層の表面には、粒状、直線状、紐状、曲線状、あるいは分岐箇所を有しながら網目状に連なる不定形かつ不均一な突起が多数形成されていることが好ましい。このような不定形な突起の総個数としては300個/30μm2以上、好ましくは500個/30μm2以上、さらに好ましくは1,000個/30μm2以上形成されていると走行性、走行耐久性が良好となり好ましい。 【0068】 本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、塗布層表面の幅方向の突起間隔Sm-Xと長手方向の突起間隔Sm-Yはいずれも3~10μmである。好ましくはいずれも3.5~9μm、さらに好ましくは4.5~8μmである。突起間隔が10μmより大きいと走行性不良により耐削れ性が低下する場合がある。また、突起間隔が3μmよりも小さいと突起個数が多くなりすぎ、やはり耐削れ性が低下する傾向がある。」 (2)甲3-3に記載された事項 上記(1)の記載を総合すると、甲3-3には次の事項が記載されている(以下「甲3-3記載事項」という。)。 「磁気記録媒体に用いる二軸配向ポリエステルフィルムにおいて、フィルムの片面に設けた塗布層表面の幅方向の突起間隔Sm-Xと長手方向の突起間隔Sm-Yをいずれも3~10μmとすること。」 第5 当審の判断 1 申立人1の申立理由について (1)理由1-1(進歩性)について ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲1-1発明とを対比する。 甲1-1発明の「2層以上からなる二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム」の基材は、本件発明1の「前記ポリエステルフィルムが、ポリエチレンテレフタレート」「を含むポリエステルフィルムであ」る「ポリエステルフィルム基材」に相当し、以下同様に、「基材」の「表面層Bの表面上に」「積層されてな」る「平滑化塗布層」は「前記基材の一方の表面上」の「易滑塗布層」に相当し、「基材」の「表面層Aの表面上に」「積層され」た「離型塗布層」は、「前記基材のもう一方の表面上」の「離型塗布層」に相当し、「前記離型塗布層の領域表面平均粗さ(Sa)が5nm以下かつ最大突起高さ(P)が30nm以下である」ことは「前記離型塗布層表面の領域表面平均粗さ(Sa)が5nm以下かつ最大突起高さ(P)が30nm以下である」ことに相当し、「セラミックシート製造用離型フィルム」は「離型フィルム」に相当する。 以上から、本件発明1と甲1-1発明とは、以下の点で一致し、その余の点で相違する。 <一致点1> 「ポリエステルフィルム基材と、前記基材の一方の表面上に易滑塗布層とを有し、 前記基材のもう一方の表面上に離型塗布層を有し、 前記ポリエステルフィルムが、ポリエチレンテレフタレートを含むポリエステルフィルムであり、 前記離型塗布層表面の領域表面平均粗さ(Sa)が5nm以下かつ最大突起高さ(P)が30nm以下である、離型フィルム。」 <相違点1> 易滑塗布層について、本件発明1では、「前記易滑塗布層の粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が10μm以下である」のに対し、甲1-1発明では、かかる構成が特定されていない点。 (イ)判断 相違点1について検討する。 本件発明1が、「前記易滑塗布層の粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が10μm以下であ」ることについて、本件特許の発明の詳細な説明には、「粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を10μm以下に制御することで、・・・、突起一つ当たりにかかる圧力が分散され小さくなるため、ピンホールの発生を効果的に抑制できて好ましい。」(【0039】)との格別な作用効果を奏する旨、記載されている。 これに対し、甲1-1には、「平滑化塗布層」に関し、「領域表面粗さ(Sa)が5nm以上であれば、滑り性が良く巻き取り時にシワなどが発生せず平面性が保たれるので好ましい。一方、領域表面平均粗さ(Sa)が25nm以下であり、且つ、最大突起高さ(P)が800nm以下の場合には、セラミックシート塗布後の巻取りにおいて、巻き取られたセラミックシートに、平滑化塗布層の突起の凹凸が転写されることがなく、ピンホールなどの欠点を生じるおそれが小さいので好ましい。」(【0048】)と、表面平均粗さや突起高さに関する記載はあるものの、突起一つ当たりにかかる圧力に着目した記載はないし、粗さ曲線要素の平均長さに着目した記載もない。そうすると、甲1-1発明を、上記相違点1に係る本件発明1の構成を備えたものとすることの動機付けが存在するとはいえない。 ここで、甲1-2には、甲1-2記載事項として、「ポリエチレンからなる表面保護フィルムにおいて、フィルム背面の十点平均粗さRzを3μm~10μmとすることで、ロール状に巻き取った際にフィルム背面とフィルム粘着面の離型性が低下することを防止するとともにフィルムを被着体に貼り合せた後ロール状に巻き取り長期間保管した際にフィルム背面の凹凸形状が被着体表面に転写されることを防止し、フィルム背面の凹凸の平均間隔Smを90μm以下とすることで、背面の凸部の局所圧力を低下して凹凸形状が被着体表面に転写されることを防止すること。」が記載されている。 しかしながら、甲1-1発明は「セラミックシート製造用離型フィルム」に関するものであり、甲1-2記載事項は「表面保護フィルム」に関するものであるから、両者は技術分野が共通するとはいえない。 また、甲1-1発明の「平滑化塗布層」は、ポリエステルフィルム基材上に易滑性樹脂を塗布後、乾燥及び/又は硬化して形成されるものであり(【0050】)、「平滑化塗布層」の表面粗さは、ポリエステルフィルムの表面層Bの領域表面粗さに影響されるものである(【0047】)。一方、甲1-2記載事項の「表面保護フィルム」の背面の凹凸形状は、表面保護フィルムを挟圧形成するニップローラー表面の凹凸形状が転写されて形成されるものである。 そうすると、甲1-1発明における「平滑化塗布層」と甲1-2記載事項の「背面」とは、その形成手法が異なるとともに、表面に形成される凹凸形状の形成手法も異なるものであるから、甲1-2記載事項を甲1-1発明に適用することには阻害事由が存在する。 そして、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、上記した甲1-2のほか、甲1-3にも記載されていないし、同構成とする動機付けもない。さらに、その他の甲号証においても記載されていないし、同構成とすることの動機付けもない。 したがって、本件発明1は甲1-1発明及び甲1-2~甲1-3に記載された事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 本件発明2~7について 本件発明2~7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加えて限定するものであるから、上記ア(イ)で検討したのと同じ理由により、本件発明2~7は、甲1-1発明及び甲1-2~甲1-3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2)理由1-2(サポート要件)について ア 判断 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件発明の解決しようとする課題について、「セラミックグリーンシートを薄膜化させた場合でも、良好な巻取り性と、ピンホールや部分的な厚みばらつき等の防止を両立させることができる優れたセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを提供する」(段落【0005】)と記載されており、この課題の解決のための手段として、本件特許の発明の詳細な説明には、「易滑塗布層の外表面の・・・粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を10μm以下に制御することで、・・・突起一つ当たりにかかる圧力が分散され小さくなるため、ピンホールの発生を効果的に抑制できて好ましい。」(【0038】~【0039】)と記載されているとともに、「離型塗布層・・・は、・・・領域表面粗さ(Sa)が5nm以下、且つ、最大突起高さ(P)が30nm以下であれば、セラミックグリーンシート形成時に、ピンホールなどの欠点の発生がなく、歩留まりが良好で好ましい。」(【0053】)と記載されており、当該記載からすると、「前記易滑塗布層の粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が10μm以下であり、前記離型塗布層表面の領域表面平均粗さ(Sa)が5nm以下かつ最大突起高さ(P)が30nm以下」とすることで、本件特許の発明が上記課題を解決できると、当業者は認識できる。 また、本件特許の発明の詳細な説明の【表1】には、実施例1~8と比較例1~6のうち、「易滑塗布層の粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が10μm以下」、「離型塗布層表面の領域表面平均粗さ(Sa)が5nm以下」及び(離型塗布層表面の)「最大突起高さ(P)が30nm以下」の3つの条件を満たす実施例1~8において、ピンホール及び厚みばらつきがないことが示されているから、「前記易滑塗布層の粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が10μm以下であり、前記離型塗布層表面の領域表面平均粗さ(Sa)が5nm以下かつ最大突起高さ(P)が30nm以下」とすることで上記課題が解決できることが裏付けられているといえる。 ここで、本件発明1及び本件発明1を引用する本件発明2~7は、上記「3つの条件」を満たすものであるから、上記本件発明が解決しようとする課題を解決するものである。 したがって、本件発明は、発明の詳細な説明に記載したものである。 イ 申立人1の主張について (ア)ポリエステルフィルムが粒子を含むか否かについて 申立人1は、本件発明1~7において、ポリエステルフィルム基材が粒子を含有するか否かの特定はないから、粒子を含有し得るといえるところ、粒子を含有したポリエステルフィルム基材を用いた場合に、どうすればRSmを10μm以下にできるかについて発明の詳細な説明に記載はないから、本件発明の課題が解決できると認識できるとはいえないと主張している。 しかしながら、上記アで述べたように、発明の詳細な説明の記載からみて、本件発明1は、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 したがって、申立人1の上記主張は採用できない。 (イ)平均長さ(RSm)が2.7~10μmの範囲について 申立人1は、本件発明1における「易滑塗布層の・・・(RSm)が10μm以下」のうち、発明の詳細な説明の実施例1~8で示される2.2μm~2.7μmの範囲を外れた範囲について、本件発明の課題が解決できるか否かは本件明細書の記載からは明らかではないから、本件発明の課題が解決できると認識できるとはいえないと主張している。 しかしながら、上記アで述べたように、発明の詳細な説明の記載からみて、本件発明1は、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 したがって、申立人1の上記主張は採用できない。 2 申立人2の申立理由について (1)理由2-1(新規性、進歩性)について ア 本件発明1について (ア)対比 甲2-1発明の「ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡(株)製“コスモシャイン”A4100)」は、本件発明1の「前記ポリエステルフィルムが、ポリエチレンテレフタレート」「を含むポリエステルフィルムであ」る「ポリエステルフィルム基材」に相当する。 甲2-1発明の「ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡(株)製“コスモシャイン”A4100)の少なくとも片面に」「設け」た「離型樹脂層」は本件発明1の「前記基材のもう一方の表面上」の「離型塗布層」に相当する。 甲2-1発明の「積層セラミックコンデンサグリーンシートの成型に適した離型層を有する離型フィルム」は、本件発明1の「離型フィルム」に相当する。 以上から、本件発明1と甲2-1発明とは、以下の点で一致し、その余の点で相違する。 <一致点2> 「ポリエステルフィルム基材を有し、 前記基材の一方の表面上に離型塗布層を有し、 前記ポリエステルフィルムが、ポリエチレンテレフタレートを含むポリエステルフィルムである、離型フィルム。」 <相違点2-1> 本件発明1は、「前記基材の一方の表面上に易滑塗布層」を有し、「前記易滑塗布層の粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が10μm以下であ」るのに対し、甲2-1発明は、そもそも易滑塗布層を有することが特定されてない点。 <相違点2-2> 離型塗布層表面に関し、本件発明1は、「領域表面平均粗さ(Sa)が5nm以下かつ最大突起高さ(P)が30nm以下である」のに対し、甲2-1発明は、「表面粗さSRaが10nm以下、表面突起高さが200nm以下である」点。 (イ)判断 まず、相違点2-1について検討する。 甲2-1発明のポリエチレンテレフタレートは「東洋紡(株)製“コスモシャイン”A4100」であり、甲2-3記載事項を踏まえると、甲2-1発明のポリエチレンテレフタレートフィルムは、「一方の表面上に易滑塗布層」を有するといえるから、「易滑塗布層」の有無については実質的な相違点ではない。 次に、易滑塗布層の粗さ曲面要素の平均長さ(RSm)について、甲2-1発明への甲2-2記載事項1の適用について検討するに、甲2-2記載事項1のポリイミドフィルムの表面凹凸構造の表面粗さパラメータは、その数値範囲において相違点2-1に係る本件発明1の数値範囲と一部重複する範囲があるとしても、甲2-2記載事項1のフィルム状太陽電池に用いるポリイミドフォルムは、その用途において甲2-1発明と異なるものであるし、甲2-2の【0034】段落の記載からみて甲2-2記載事項1に係るポリイミドフィルムは支持体から剥離されたものであり、その層構造においても甲2-1発明と異なるものであるから、甲2-2記載事項1における表面粗さパラメータを甲2-1発明に適用する動機付けはない。 さらに、甲2-2記載事項2から、甲2-2記載事項1の支持体としてコスモシャイン4100(東洋紡績株式会社製)を用いることができるとはいえるものの、甲2-2記載事項1の支持体がコスモシャイン4100であるとまではいえないから、コスモシャイン4100の表面粗さパラメータが「最大断面高さ(Rt)が0.3μm~50μm、平均長さ(RSm)が0.5μmから40μm程度」であるとまではいえない。 さらに、甲2-5記載事項から、コスモシャイン4100の表面粗さ(Ra)が4.0nmであるとはいえるものの、ここでいう表面粗さが、甲2-3記載事項でいうコスモシャイン○Rのコート層を付与しているほうの面のものなのか、コート層を付与していないほうの面のものなのかは不明であるから、甲2-1発明におけるコスモシャイン4100の離型樹脂層とは反対側の面の表面粗さ(Ra)が4.0nmであるとまではいえない。 そして、相違点2-1に係る本件発明1の構成とすることは、上記した甲2-2、甲2-3及び甲2-5のほか、甲2-4にも記載されていないし、同構成とする動機付けもない。さらに、その他の甲号証においても記載はないし、同構成とすることの動機付けもない。 したがって、相違点2-2について検討するまでもなく、本件発明1は甲2-1発明及び甲2-2~甲2-5に記載された事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 本件発明2~7について 本件発明2~7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加えて限定するものであるから、上記ア(イ)で検討したのと同じ理由により、本件発明2~7は、甲2-1発明及び甲2-2~甲2-5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2)理由2-2(分割要件違反を前提とする新規性及び進歩性)について 申立人2は、本件発明に係る出願が、分割要件違反であることを前提として、甲2-6発明に基づく新規性及び進歩性についての理由を申し立てている。 そこで、まず、分割要件について検討する。 ア 原出願当初明細書等の記載 原出願当初明細書等(甲2-6)には、「セラミックグリーンシート製造用離型フィルム」について、次の記載がある。 「【請求項1】 粒子を実質的に含有していないポリエステルフィルムを基材と、前記基材の一方の表面上に易滑塗布層とを有し、 前記ポリエステルフィルムが、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートから選ばれる少なくとも1種を含むポリエステルフィルムであり、 前記易滑塗布層の粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が10μm以下である、 コーティングポリエステルフィルム。」 「【0054】 本発明において、離型塗布層を形成させたフィルム表面を所定の粗さ範囲に調節するためには、PETフィルムには実質的に粒子を含有しないことが好ましい。なお、本発明でいう「実質的に粒子を含有しない」とは、基材フィルム及び離型塗布層の両者について、例えば、無機粒子の場合、蛍光X線分析で粒子に由来する元素を定量分析した際に、50ppm以下であることで定義され、好ましくは10ppm以下、最も好ましくは検出限界以下である。これは積極的に粒子を基材フィルム中に添加させなくても、外来異物由来のコンタミ成分や、原料樹脂あるいはフィルムの製造工程におけるラインや装置に付着した汚れが剥離して、フィルム中に混入する場合があるためである。」 イ 分割要件の充足について 上記アの【0054】の記載から、原出願当初明細書等には、ポリエステルフィルム基材が粒子を含有しないことが好ましいとしながらも、積極的に粒子を添加させなくてもコンタミ成分等がフィルム中に混入することが記載されている。そうすると、粒子が混入しているポリエステルフィルム基材を用いることは、原出願当初明細書等において、少なくとも記載されているに等しい事項であったといえる。 さらに、本件発明における課題解決手段は、上記1(2)アで述べたように、「前記易滑塗布層の粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が10μm以下であり、前記離型塗布層表面の領域表面平均粗さ(Sa)が5nm以下かつ最大突起高さ(P)が30nm以下である」ことであるから、ポリエステルフィルム基材中の粒子の有無は、本件発明の課題解決とは特に関係のないことである。 そうすると、本件発明1が、原出願の請求項1から「粒子を実質的に含有していない」という要件を削除したものだとしても、当該削除が、新たな技術事項を導入するものであるとはいえない。 また、本件発明1を引用する本件発明2~7についても同様である。 以上のとおりであるから、本件発明1~7は、原出願当初明細書等との関係において、新たな技術事項を導入するものではないから、原出願当初明細書等に記載された事項の範囲内のものであり、本件特許に係る出願は、当該原出願の一部を適法に新たな特許出願したものといえ、分割要件に違反するとする事情は認められない。 よって本件特許に係る出願日は、現実の出願日である令和3年2月15日ではなく、上記第1に記載した特願2017-528866号の出願日である平成29年5月8日であるから、申立て理由2-2を採用することはできない。 3 申立人3の申立理由について (1)理由3-1(進歩性)について ア 本件発明1について (ア)対比 甲3-1は甲1-1と同一の文献であるから、上記1(1)ア(ア)で示したのと同様に、本件発明1と甲3-1発明とは、上記<一致点1>で一致し、上記<相違点1>で相違する。 (イ)判断 a 甲3-2を適用することについて まず、上記1(1)ア(イ)で述べたように、甲3-1発明を、上記相違点1に係る本件発明1の構成を備えたものとすることの動機付けが存在するとはいえない。 ここで、甲3-2には、甲3-2記載事項として、「成形同時転写箔用離型フィルムに用いる二軸延伸ポリエステルフィルムにおいて、フィルムの片面に設けた離型層表面の粗さ曲線要素の平均長さRSmを10~80μmとすること。」が記載されている。 しかしながら、甲3-1発明は「セラミックシート製造用離型フィルム」に関するものであり、甲3-2記載事項は「成形同時転写箔用離型フィルム」に関するものであるから、両者は技術分野が共通するとはいえない。 さらに、甲3-2記載事項は「離型層表面の粗さ曲線要素の平均長さRSmを10~80μmとすること。」であるから、甲3-1発明に適用し得たとしても、甲3-1発明の離型塗布層に適用することになり、相違点1に係る本件発明1の構成には至らない。 以上のとおりであるから、本件発明1は甲3-1発明及び甲3-2に記載された事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 b 甲3-3を適用することについて 甲3-3には、甲3-3記載事項として、「磁気記録媒体に用いる二軸配向ポリエステルフィルムにおいて、フィルムの片面に設けた塗布層表面の幅方向の突起間隔Sm-Xと長手方向の突起間隔Sm-Yをいずれも3~10μmとすること。」が記載されている。 しかしながら、甲3-1発明は「セラミックシート製造用離型フィルム」に関するものであり、甲3-3記載事項は「磁気記録媒体用フィルム」に関するものであるから、両者は技術分野が共通するとはいえない。 さらに、甲3-3記載事項は、塗布層表面の突起間隔を3~10μmとすることにより、塗布層(超微細粒子を分散した樹脂エマルジョンをコーティングした易滑平滑層)の表面に磁性層を塗布する工程においてナイフコーターが塗布層に接触した際に微粒子が脱落することを防止して耐削れ性を向上するものであるから、セラミックシート製造用離型フィルムに係る甲3-1発明に適用する動機付けはない。 さらに、その他の甲号証においても記載されていないし、同構成とすることの動機付けもない。 以上のとおりであるから、本件発明1は甲3-1発明及び甲3-3に記載された事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 本件発明2~7について 本件発明2~7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加えて限定するものであるから、上記ア(イ)で検討したのと同じ理由により、本件発明2~7は、甲3-1発明及び甲3-2に記載された事項または、甲3-1発明及び甲3-3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 第5 むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700752

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