特許異議申立
2024-700020
離型フィルム
- 審判番号
- 2024-700020
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-536298
- 登録番号
- 7306395
- 請求日
- 2024年01月11日
- 審決日
- 2024年06月10日
- 公報発行日
- 2024年07月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】東洋紡株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
- 【異議申立人】小宮 邦彦
- 審判長/審判官
- 審判長 筑波 茂樹
- 審判官 金丸 治之
- 審判官 藤井 眞吾
- 分類
- P1651.121-Y (B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7306395号発明「離型フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7306395号の請求項1~11に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7306395号の請求項1~11に係る特許についての出願は、2019年(令和1年)12月17日(優先権主張 平成30年12月20日)を国際出願日とする出願であって、令和5年7月3日にその特許権の設定登録がされ、同年7月11日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和6年1月11日に特許異議申立人小宮邦彦(以下「申立人」という。)により、その請求項1~11に係る特許に対して本件特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
請求項1~11に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、それぞれ、本件の特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
ポリエステルフィルムと離型層とを含む離型フィルムであって、
ポリエステルフィルムの少なくとも片面に直接又は他の層を介して離型層を有し、前記離型層は、長鎖アルキル基を有するアクリル樹脂、及びオキサゾリン系架橋剤またはカルボジイミド系架橋剤から選ばれる少なくとも1種の架橋剤を含有する組成物が硬化されてなり、
長鎖アルキル基を有するアクリル樹脂の酸価が40mgKOH/g以上400mgKOH/g以下である、
離型フィルム。
【請求項2】
アクリル樹脂は、長鎖アルキル基含有アクリレートモノマーを含み、
アクリル樹脂における、長鎖アルキル基含有アクリレートモノマーの共重合比率が、5mol%以上60mol%以下である請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項3】
架橋剤がオキサゾリン系架橋剤であり、オキサゾリン系架橋剤がオキサゾリン基を3.0~9.0mmol/g含む請求項1または2に記載の離型フィルム。
【請求項4】
前記アクリル樹脂は、ステアリル(メタ)アクリレートを含む、請求項1~3のいずれかに記載の離型フィルム。
【請求項5】
離型層の厚みが0.001μm以上2μm以下である請求項1~4のいずれかに記載の離型フィルム。
【請求項6】
離型フィルムがセラミックグリーンシート製造用の離型フィルムである請求項1~5に記載の離型フィルム。
【請求項7】
ポリエステルフィルムと離型層とを含む離型フィルムの製造方法であって、離型フィルムは、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に直接又は他の層を介して離型層を有し、
離型層は、長鎖アルキル基を有するアクリル樹脂、及びオキサゾリン系架橋剤またはカルボジイミド系架橋剤から選ばれる少なくとも1種の架橋剤を含有する組成物が硬化されてなる離型フィルムであり、離型塗工液を未延伸フィルムまたは一軸延伸フィルムに塗工後、延伸されていない少なくとも一軸方向に延伸し、熱処理し、
前記長鎖アルキル基を有するアクリル樹脂の酸価が40mgKOH/g以上400mgKOH/g以下である、
離型フィルムの製造方法。
【請求項8】
離型フィルムの製造方法がセラミックグリーンシート製造用離型フィルムの製造方法である請求項7に記載の離型フィルムの製造方法。
【請求項9】
請求項6に記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム、または、請求項8に記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルムの製造方法を用いてセラミックグリーンシートを成型するセラミックグリーンシートの製造方法。
【請求項10】
製造するセラミックグリーンシートの厚みが、0.2μm以上2.0μm以下である請求項9に記載のセラミックグリーンシートの製造方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載のセラミックグリーンシートの製造方法を採用するセラミックコンデンサの製造方法。」
第3 申立理由の概要
申立人が提出した特許異議申立書(以下「申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
また、申立人は、下記2に示した甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証(それぞれ甲1、甲2及び甲3という。)を証拠として申立書に添付している。
1 申立理由
請求項1、2及び4~11に係る特許は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1及び甲2に記載された発明に基いて、請求項3に係る特許は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1、甲2及び甲3に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2 証拠方法
甲1:特開2018-144500号公報
甲2:特開2010-214947号公報
甲3:特許第4798156号公報
第4 甲号証の記載について
1 甲1について
甲1の【請求項1】及び【請求項2】より、甲1には、「セラミックグリーンシート製造用離型フィルム」が記載されており、当該「セラミックグリーンシート製造用離型フィルム」は、ポリエステルフィルムと離型層とを含むセラミックグリーンシート製造用離型フィルムであって、ポリエステルフィルムの表面層A上に離型層を有し、前記離型層は、長鎖アルキル基を有する樹脂を含むことが記載されている。
また甲1の【0121】の【表1】の実施例1~7、9~10、13~22には、離型層に含まれる、長鎖アルキル基を有する樹脂を、「長鎖アルキル基を有するアクリル樹脂」とすることが記載されている。
さらに、【0039】には、「メラミン系、イソシアネート系、カルボジイミド系、オキサゾリン系、エポキシ系のうち1種類または2種類以上を併用して用いた架橋剤」が記載されており、【0044】~【0045】の記載及び技術常識より、アクリル樹脂及び架橋剤を含有する組成物が硬化されることは明らかである。
よって、甲1の【請求項1】、【請求項2】、【0039】、【0044】~【0045】、【0104】~【0118】、【0121】の【表1】には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「ポリエステルフィルムと離型層とを含むセラミックグリーンシート製造用離型フィルムであって、
ポリエステルフィルムの表面層A上に離型層を有し、前記離型層は、長鎖アルキル基を有するアクリル樹脂、及びメラミン系、イソシアネート系、カルボジイミド系、オキサゾリン系、エポキシ系のうち1種類または2種類以上を併用して用いた架橋剤を含有する組成物が硬化されてなる、
セラミックグリーンシート製造用離型フィルム。」
2 甲2について
甲2には、以下の記載がある。
「【請求項1】
基材の少なくとも一方の面に粘着付与樹脂を含有する熱膨張性粘着層が形成された構成を有し、積層セラミックシート切断時に仮固定用として用いられる熱剥離型粘着シートであって、前記熱膨張性粘着層のゲル分率が50重量%以上であるとともに、熱膨張性粘着層を形成する粘着剤のベースポリマーの酸価が350mg-KOH/g以下であり、且つ熱膨張性粘着層中の粘着付与樹脂の酸価が80mg-KOH/g以下であることを特徴とする積層セラミックシート切断用熱剥離型粘着シート。」
「【0028】
(酸価)
本発明では、前述のように、熱膨張性粘着層を形成する粘着剤のベースポリマーの酸価が350mg-KOH/g以下であり、且つ熱膨張性粘着層中の粘着付与樹脂の酸価が80mg-KOH/g以下である。粘着剤のベースポリマーの酸価が350mg-KOH/g以下であると、被着体に対して高い粘着性を示すとともに、加熱させて剥離させる際には、熱剥離型粘着シート上に被着体が残存せず、加熱だけによる剥離(自然剥離)を有効に行うことができる。また、粘着付与樹脂の酸価が80mg-KOH/g以下であると、被着体に対して高い粘着性を示すとともに、加熱させて剥離させる際には、熱剥離型粘着シート上に被着体が残存せず、加熱だけによる剥離(自然剥離)を有効に行うことができる。」
「【0105】
さらに、前記カット後、恒温器(熱風乾燥器)(エスペック(株)製、「SPH-201」)を用いて、120℃で10分間加熱処理を施した。加熱処理後、熱剥離型粘着シートを空中で上下が反対になるように裏返しにし(チップが下になる様に)、熱剥離型粘着シートからチップを自然落下により剥離させ、加熱剥離性としてチップの残量割合(%)を求める。なお、すべてのチップが剥離して熱剥離型粘着シートに残存していない場合は0%となる。従って、チップの残量割合が小さいほど、加熱剥離性が良好であることを意味している。加熱剥離性の評価結果は、表1の「加熱剥離性(%)」の欄に示した。」
第5 当審の判断
1 本件発明1について
(1) 対比
本件発明1と引用発明を対比する。
引用発明の「セラミックグリーンシート製造用離型フィルム」は、本件発明1の「離型フィルム」に相当する。
また、引用発明の「ポリエステルフィルムの表面層A上に離型層を有」することは、本件発明1の「ポリエステルフィルムの少なくとも片面に直接又は他の層を介して離型層を有」することに相当する。
そして、引用発明の「メラミン系、イソシアネート系、カルボジイミド系、オキサゾリン系、エポキシ系のうち1種類または2種類以上を併用して用いた架橋剤」は、本件発明1の「オキサゾリン系架橋剤またはカルボジイミド系架橋剤から選ばれる少なくとも1種の架橋剤」と、「架橋剤」である限りにおいて一致する。
したがって、両者は以下の点で一致し、また相違する。
<一致点>
ポリエステルフィルムと離型層とを含む離型フィルムであって、
ポリエステルフィルムの少なくとも片面に直接又は他の層を介して離型層を有し、前記離型層は、長鎖アルキル基を有するアクリル樹脂、及び架橋剤を含有する組成物が硬化されてなる、
離型フィルム。
<相違点1>
架橋剤について、本件特許1では「オキサゾリン系架橋剤またはカルボジイミド系架橋剤から選ばれる少なくとも1種の架橋剤」であるのに対し、引用発明では「メラミン系、イソシアネート系、カルボジイミド系、オキサゾリン系、エポキシ系のうち1種類または2種類以上を併用して用いた架橋剤」である点。
<相違点2>
本件発明1では、「長鎖アルキル基を有するアクリル樹脂の酸価が40mgKOH/g以上400mgKOH/g以下である」のに対して、引用発明では、「長鎖アルキル基を有するアクリル樹脂の酸価」について明らかでない点。
(2) 判断
<相違点1>及び<相違点2>について
本件特許明細書の【0037】~【0038】の記載より、「長鎖アルキル基を有するアクリル樹脂の酸価」は、「オキサゾリン系架橋剤」もしくは「カルボジイミド系架橋剤」との架橋密度に着目してその数値範囲を定めるものであるところ、架橋剤とアクリル樹脂の酸価とは相互に関連しているものであり、<相違点1>及び<相違点2>をまとめて検討する。
甲1の【0040】の「本発明に使用する架橋剤としては、反応性の観点からメラミン系化合物が好ましい。」という記載、及び【0121】の【表1】の実施例1~8、11~22では架橋剤としてヘキサメトキシメチロールメラミンが使用されていること、また、長鎖アルキル基を有するアクリル樹脂について、その「酸化」に着目して、その数値範囲を決定することは、記載も示唆もないことに鑑みると、引用発明の架橋剤について「メラミン系、イソシアネート系、カルボジイミド系、オキサゾリン系、エポキシ系のうち1種類または2種類以上を併用して用いた架橋剤」より、「オキサゾリン系架橋剤またはカルボジイミド系架橋剤から選ばれる少なくとも1種の架橋剤」を選択し、「長鎖アルキル基を有するアクリル樹脂の酸価」の数値範囲を決定することは、当業者といえども容易に想到することはない。
そして、甲2は、積層セラミックシート切断時に仮固定用として用いられる熱剥離型粘着シート(【請求項1】)であって、引用発明(セラミックグリーンシート製造用離型フィルム)とは、技術分野が相違する。また、甲2の【0028】には、粘着剤のベースポリマーの酸価について記載があるものの、これは高い粘着性を示すとともに、加熱だけによる剥離(自然剥離)を有効に行うための粘着付与樹脂の酸価の数値範囲を規定するものであって、引用発明のセラミックグリーンシート製造用離型フィルムにそのような作用・機能が求められることは、いずれの証拠にも記載も示唆もない。さらに、甲2には「オキサゾリン系架橋剤またはカルボジイミド系架橋剤から選ばれる少なくとも1種の架橋剤」については記載も示唆もない。
してみれば、引用発明と甲2に記載の事項とは、属する技術分野が相違し、また、作用・機能も異なるから、引用発明に甲2に記載の事項を適用する動機付けは見いだせない。また、甲2に記載の事項は、引用発明において、「オキサゾリン系架橋剤またはカルボジイミド系架橋剤から選ばれる少なくとも1種の架橋剤」を選択し、「長鎖アルキル基を有するアクリル樹脂の酸価」を「40mgKOH/g以上400mgKOH/g以下」とすることを教示ないし示唆するものでもない。
以上より、引用発明及び甲2に記載の事項に基いて、上記<相違点1>及び<相違点2>に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
(3) まとめ
以上から、本件発明1は引用発明及び甲2に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 本件発明2~11について
本件発明2~6は、直接あるいは間接的に本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。また、本件発明7は、本件発明1の発明特定事項を全て有する離型フィルムの製造方法の発明であり、本件発明8~11は、直接あるいは間接的に本件発明7を引用し、本件発明7の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。
したがって、上記に示したことと同様に、本件発明2、4~11は、引用発明及び甲2に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本件発明3は引用発明並びに、甲2及び甲3に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
したがって、申立書に記載された特許異議申立理由及び証拠によっては、請求項1~11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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