特許異議申立
2024-700078
容器
- 審判番号
- 2024-700078
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-064267
- 登録番号
- 7410566
- 請求日
- 2024年01月31日
- 審決日
- 2024年11月26日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ジュテック株式会社
- 【権利者代理人】西 博幸
- 【権利者代理人】渡辺 隆一
- 【異議申立人】神田 紀子
- 審判長/審判官
- 審判長 金丸 治之
- 審判官 木原 裕二
- 審判官 藤井 眞吾
- 分類
- P1651.121-Y (B65D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7410566号発明「容器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7410566号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7410566号の請求項1、2に係る特許についての出願は、令和5年12月26日にその特許権の設定登録がされ、令和6年1月10日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和6年1月31日に特許異議申立人神田紀子(以下「申立人」という。)により、その請求項1、2に係る特許に対して本件特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
請求項1、2に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、それぞれ、本件の特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
合成樹脂製又はガラス製若しくは金属板製の本体部材と、前記本体部材に装着される紙製のキャップとを備えており、
前記キャップは、筒部とその一端部に設けた蓋板とを有して、前記筒部の外周面は突起も凹所も存在しない滑らかな面に形成されて、前記筒部の内周面には、前記本体部材に形成された受け部に嵌合する内向きの環状突起が、当該筒部の折り返しによって形成されている容器であって、
前記本体部材は、肩部から吐出口が立ち上がっているボトルであり、
前記吐出口は、その下部に位置した大径部とその上方に位置した小径部との外径違い構造になっていて、前記小径部に、プッシュ式のポンプユニットとスポイドと蓋とノズルと振り出し口と定量振り出し部とのうちのいずれかが設けられて、前記大径部は、軸心方向に凹んだ浅溝状の前記受け部になっている一方、
前記キャップにおける筒部の下端に前記環状突起が形成されている、
容器。
【請求項2】
前記キャップの環状突起は内部に環状空間を有する中空構造になっている、
請求項1に記載した容器。」
第3 申立理由の概要
申立人が提出した特許異議申立書(以下「申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
また、申立人は、下記2に示した甲第1号証~甲第6号証(それぞれ甲1等という。)を証拠として申立書に添付している。
1 申立理由
請求項1、2に係る特許は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1に記載された発明及び甲2~甲5(予備的に甲6)に示す周知技術に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2 証拠
甲1:特開2001-322691号公報
甲2:実公昭57-59474号公報
甲3:特開平7-184619号公報
甲4:特開2004-123105号公報
甲5:特開2004-189253号公報
甲6:特開平10-337509号公報
第4 当審の判断
1 甲号証の記載について
(1)甲1について
甲1の図1をみるに、容器本体Aは胴部3上端から肩部2を介して口部1に続くボトルであることが看取される。
また、甲1の図1をみるに、口部1及び肩部2は、大径部と小径部との外径違い構造になっていることが看取される。
上記を踏まえ、甲1の図1において容器本体Aがある側を「下」で、オーバーキャップEがある側を「上」と定義すると、甲1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「合成樹脂製の容器本体Aと、前記容器本体Aに装着されるオーバーキャップEとを備えており(【0009】、【0020】、図1)、
オーバーキャップEは、側周壁51とその一端部に設けた頂壁50とを有して、側周壁51の内周面には、容器本体Aに形成された係止環7に係合する膨出環52が形成されている吐出容器であって(【0020】)、
容器本体Aは、胴部3上端から肩部2を介して口部1に続くボトルであり(【0009】、図1)、
口部1及び肩部2は、その下部に位置した大径部とその上方に位置した小径部との外径違い構造になっていて(【0009】、図1)、小径部に、押下げることで内容液を吐出するポンプBを含むユニットが設けられて(【0014】、図1)、
大径部は、軸心方向に凹んだ係止環7になっており(【0009】、図1)、
オーバーキャップEにおける側周壁51の下端に膨出環52が形成されている(【0020】、図1)、
容器。」
(2)甲2、甲3に基づく周知技術について
ア 甲2の記載
甲2には、以下の記載がある(下線は当審で付した。以下同様。)。
「本案は気密を要しない固型物(例えば菓子又は非食品等)を入れる容器で、容器本体を金属製とし、その容器本体口縁に紙製蓋板を圧入嵌合するようにし、この蓋板の上面に半円形状の切込線により囲まれた開口用タブを上方に突出形成したものであつて製作が容易で材料費も低廉であるので、経済性に優れ、又バージン性を具有する容器を期待するものである。
図面につき本案の実施例を説明すれば、第1図乃至第6図に示す実施例では容器本体1は金属製で、その外壁2の口縁内側に段部3を形成すると共に、上端にカール縁4を形成する。
蓋板5は紙製で、外径aは容器本体1のカール縁4の内径bより大で、容器本体1の段部3に係止する大きさである。」(1欄23行~末行)
イ 甲3の記載
「【0011】この実施例1の容器入り冷凍食品6は、容器1が熱伝導性の良いアルミニウム合金箔製容器であるので冷凍する際に容器1の上面側からと容器1の底壁側および側壁側からも良く冷凍されるし、また解凍調理時に加熱する際も同様に良く加熱される。そして容器1の底壁2から側壁3の内側につゆ冷凍物4を設け、更にこのつゆ冷凍物4の内側にうどん5を入れたために冷凍する際につゆ冷凍物4とうどん5とがほぼ別々であるとともに表面積が大きいので冷凍し易いし、かつ解凍調理し易い。更につゆ冷凍物4として濃縮した「つゆ」であるので「つゆ」の容積が小さいために小さな容積の容器1に収容して冷凍と解凍調理が行い易いし、かつ解凍調理時に容器1の中にお湯又は水を加えることにより解凍調理時間が更に短縮されるとともに「つゆ」の濃さが適切な濃さになる。なお、この実施例1では容器1としてアルミニウム合金箔製容器のものについて説明したが、容器は純アルミニウム箔製容器、容器は合成樹脂製容器、紙製容器などでも良い。そして生のうどん5に代えて、冷凍したうどんをもうけてもよい。
【0012】この実施例1の容器入り冷凍食品6をそのまま主に業務用として用いてもよいが、容器入り冷凍食品6の容器1に紙製蓋を設けたものや容器1を袋詰めしたものがよい。」
ウ 甲2、甲3に基づく周知技術
上記ア、イの記載から、次の周知技術が記載されていると認められる。
「金属板製、合成樹脂製又は紙製の本体部材と、これに装着される紙製の蓋とを備えた容器。」
(3)甲4、甲5に基づく周知技術について
ア 甲4の記載
甲4には、以下の記載がある。
「【請求項1】
胴部壁と底壁を有し、前記胴部壁の上部開口端部外側に補強部を有する容器本体と、該容器本体に嵌合する環状壁と天壁を有する蓋体の組合せからなる紙製容器であって、前記蓋体の環状壁は内側上向きにカールする下部カール部を有してなり、該下部カール部は、下端にその終端が容器本体の胴部壁に接触する半径Rの下側円弧部と、該円弧部から前記容器本体の胴部壁に接触しながら上向きに延びる胴部壁接触直線部と、該胴部壁接触直線部の上端から延び容器本体の前記補強部の下端と接触するような半径rの上側円弧部からなり、前記下部カール部は、前記蓋体を容器本体に嵌合後に後加工で形成してなることを特徴とする紙製容器。」
「【0026】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、蓋体を容器本体に堅く嵌合でき、且つ容器本体の胴部壁と蓋体の係合部との隙間がなく、たとえ万一蓋体の巻締バンド内径が容器口径より大き過ぎても、あるいは冷凍内容物の長期保存に使用しても、容易に改竄できない改竄防止に優れた紙製容器を得ることができる。・・・」
イ 甲5の記載
甲5には、以下の記載がある。
「【請求項1】
胴部壁と底壁を有し、前記胴部壁の上部開口端部外側に補強部を有する容器本体と、該容器本体に嵌合する環状壁部材と天壁部材を有する蓋体の組合せからなる紙製容器であって、前記蓋体は帯状ブランクの両端を接着して形成された環状壁部材と該環状壁部材に嵌合する天壁部材の2部材からなり、該環状壁部材は、天壁部材と接する内側下向きにカールする上部カール部、該上部カール部から垂下するスカート壁部、該スカート壁部下端から内側に屈曲して折り返した折返し部を有し、該折返し部は前記スカート壁内周面と圧着加工により圧着している圧着加工壁部、該圧着加工壁部の上端から内側向きに所定角度で傾斜している傾斜壁部となっていることを特徴とする紙製容器。」
「【0012】
・・・それにより、蓋体を上方に引き上げようとしても、カール状係止部13の頂部が容器本体の補強部5下端に当り上方への移動を阻止され、開蓋することができない。改ざんするために例え強い力で引き上げても、カール状係止部13の頂部に強い力が作用すると、傾斜壁部12の傾斜角度が上記のように形成されていることによって、傾斜壁部12は内側に倒れようとする力を受けるので、傾斜壁部12が外側に倒れることがない。従って、カール状係止部と容器本体の補強部との係止が外れて、蓋体が容器本体からすっぽ抜けてしまうという現象は生じない。」
ウ 甲4、甲5に基づく周知技術
上記ア、イの記載から、次の周知技術が記載されていると認められる。
「胴部壁と底壁を有し、前記胴部壁の上部開口端部外側に補強部を有する容器本体と、該容器本体に嵌合する環状壁と天壁を有する蓋体の組合せからなる紙製容器であって、前記蓋体の環状壁は内側上向きにカールするカール部を有してなり、補強部の下端にカール部を接触させて、前記蓋体を容器本体に堅く嵌合する容器。」
2 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と引用発明を対比する。
引用発明の「吐出容器」は、本件発明1の「容器」に相当する。
引用発明の「胴部3上端から肩部2を介して口部1に続くボトルであ」る「合成樹脂製の容器本体A」は、本件発明1の「肩部から吐出口が立ち上がっているボトルであ」る「合成樹脂製又はガラス製若しくは金属板製の本体部材」に相当する。
引用発明の「側周壁51とその一端部に設けた頂壁50とを有」する「前記容器本体Aに装着されるオーバーキャップE」は、本件発明1の「筒部とその一端部に設けた蓋板とを有」する「前記本体部材に装着される紙製のキャップ」と、「筒部とその一端部に設けた蓋板とを有」する「前記本体部材に装着されるキャップ」という限りにおいて一致する。
引用発明の「側周壁51の内周面には、容器本体Aに形成された係止環7に係合する膨出環52が形成されている」ことは、本件発明1の「前記筒部の内周面には、前記本体部材に形成された受け部に嵌合する内向きの環状突起が、当該筒部の折り返しによって形成されている」ことと、「前記筒部の内周面には、前記本体部材に形成された受け部に嵌合する内向きの環状突起が、形成されている」という限りにおいて一致する。
引用発明の「口部1及び肩部2は、その下部に位置した大径部とその上方に位置した小径部との外径違い構造になっていて、小径部に、押下げることで内容液を吐出するポンプBを含むユニットが設けられて」いることは、本件発明1の「前記吐出口は、その下部に位置した大径部とその上方に位置した小径部との外径違い構造になっていて、前記小径部に、プッシュ式のポンプユニットとスポイドと蓋とノズルと振り出し口と定量振り出し部とのうちのいずれかが設けられて」いることに相当する。
引用発明の「大径部は、軸心方向に凹んだ係止環7になって」いることは、本件発明1の「前記大径部は、軸心方向に凹んだ浅溝状の前記受け部になって」いることに相当する。
引用発明の「オーバーキャップEにおける側周壁51の下端に膨出環52が形成されている」ことは、本件発明1の「前記キャップにおける筒部の下端に前記環状突起が形成されている」ことに相当する。
したがって、両者は以下の点で一致し、また相違する。
<一致点>
合成樹脂製又はガラス製若しくは金属板製の本体部材と、前記本体部材に装着されるキャップとを備えており、
前記キャップは、筒部とその一端部に設けた蓋板とを有して、前記筒部の内周面には、前記本体部材に形成された受け部に嵌合する内向きの環状突起が、形成されている容器であって、
前記本体部材は、肩部から吐出口が立ち上がっているボトルであり、
前記吐出口は、その下部に位置した大径部とその上方に位置した小径部との外径違い構造になっていて、前記小径部に、プッシュ式のポンプユニットとスポイドと蓋とノズルと振り出し口と定量振り出し部とのうちのいずれかが設けられて、前記大径部は、軸心方向に凹んだ浅溝状の前記受け部になっている一方、
前記キャップにおける筒部の下端に前記環状突起が形成されている、
容器。
<相違点1>
本件発明1のキャップは紙製であり、キャップの筒部の内周面の環状突起が筒部の折り返しによって形成されているのに対し、引用発明のオーバーキャップEは素材が不明であり、オーバーキャップEの側周壁51の内周面の膨出環52がどのように形成されているか不明である点。
<相違点2>
本件発明1のキャップの筒部の外周面は突起も凹所も存在しない滑らかな面に形成されているのに対し、引用発明のオーバーキャップEの側周壁51の外周面はどのように形成されているか不明である点。
(2)判断
金属板製、合成樹脂製又は紙製の本体部材と、これに装着される紙製の蓋とを備えた容器(上記第4の1(2)ウ)、及び胴部壁と底壁を有し、前記胴部壁の上部開口端部外側に補強部を有する容器本体と、該容器本体に嵌合する環状壁と天壁を有する蓋体の組合せからなる紙製容器であって、前記蓋体の環状壁は内側上向きにカールするカール部を有してなり、補強部の下端にカール部を接触させて、前記蓋体を容器本体に堅く嵌合する容器(上記第4の1(3)ウ)は周知技術であるが、少なくとも「キャップを本体部材の素材と異なる紙製としつつ、キャップの筒部の内周面の環状突起を筒部の折り返しによって形成する」証拠は示されていない。
また、キャップの嵌合構造を構築するにあたり、本体部分及びキャップの嵌合部分を形成する方法は、それぞれの素材の事情に影響されるということは技術常識といえる。すなわち、紙素材からなる容器の嵌合構造を、合成樹脂製又はガラス製若しくは金属板製の本体部材と、これに装着されるキャップに対して直ちに適用できるものではないことは明らかである。
そうすると、引用発明において、上記周知技術を参考にしても、本体部材の素材と異なるオーバーキャップEを紙製としつつ、オーバーキャップEの側周壁51の内周面の膨出環52を筒部の折り返しによって形成することは当業者といえども容易に想到するものではない。
なお、以下の理由からも、引用発明に周知技術(甲2~甲5)を適用しようとする動機付けが存在していないといえる。
まず、引用発明は育毛剤、医薬品、化粧料等の容器である(甲1の【0009】)のに対し、甲2~甲4は食品等の容器であり(甲2の2欄23行~24行、甲3の【0002】、甲4の【0002】、甲5の【0002】)、引用発明と周知技術の属する技術分野が異なるものである。
また、キャップに関して、引用発明のオーバーキャップEは容器本体Aに対して繰り返し取付けと取外しを行うことを想定されているが、甲2~甲5の蓋は繰り返し取付けと取外しを行うものではないため、引用発明のオーバーキャップEと周知技術の蓋は、機能や構成が全く異なるものである。
さらに、受け部と環状突起との嵌合に関して、引用発明は膨出環52に軸心方向に凹んだ係止環7を嵌合させるが、甲4、5は補強部の下端にカール部を接触させることで嵌合させており、引用発明と周知技術の嵌合方法も異なっている。
そうすると、引用発明において、相違点1に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明及び周知技術(甲2~甲5)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
3 本件発明2について
本件発明2は、直接的に本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。
したがって、上記に示したことと同様に、本件発明2は、引用発明及び周知技術(甲2~甲5)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 予備的主張について
予備的主張で、甲4、甲5以外にも、紙製の卒業証書入れ筒等を例示しているが、上記2(2)で述べたとおり、紙素材からなる容器の嵌合構造を、合成樹脂製又はガラス製若しくは金属板製の本体部材と、これに装着されるキャップに対して直ちに適用できるものではない。
また、甲6に二重キャップとする技術があるとしても、上記2(1)で指摘した相違点1、2を充足するものではない。
したがって、本主張は採用できない。
第5 むすび
したがって、申立書に記載された特許異議申立理由及び証拠によっては、請求項1、2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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