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特許異議申立

2023-701027

調理済み冷凍食品

審判番号
2023-701027
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-149638
登録番号
7258455
請求日
2023年09月26日
審決日
2024年10月17日
公報発行日
2025年02月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社日清製粉ウェルナ
  • 【権利者代理人】弁理士法人翔和国際特許事務所
  • 【異議申立人】神田 紀子
審判長/審判官
  • 審判長 植前 充司
  • 審判官 天野 宏樹
  • 審判官 淺野 美奈
分類
P1651.113-YAA(A23L) / P1651.121-YAA(A23L) / P1651.536-YAA(A23L) / P1651.537-YAA(A23L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第9項、特許法第2条第3項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7258455号発明「調理済み冷凍食品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7258455号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。 特許第7258455号の請求項1~3に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7258455号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成29年8月2日の出願であって、令和5年4月7日にその特許権の設定登録(請求項の数3)がされ、同年同月17日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許について令和5年9月26日に特許異議申立人神田紀子(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立て(対象:全請求項)がされたものである。 その後の手続の経緯は以下のとおりである。 令和6年 1月25日付け:取消理由通知 同年 3月26日 :訂正請求書及び意見書(特許権者) 同年 4月 4日 :令和6年3月26日に提出した訂正請求書 に対する手続補正書(特許権者) 同年 4月18日付け:訂正請求があった旨の通知 (特許法第120条の5第5項) 同年 5月 9日 :意見書(申立人) 同年 6月21日付け:取消理由通知(決定の予告) 同年 8月23日 :訂正請求書及び意見書(特許権者) なお、令和6年4月4日に提出された手続補正書により補正された同年3月26日に提出された訂正請求書による訂正は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 また、既に申立人に意見書の提出の機会が与えられており、下記第2のとおり、令和6年8月23日にされた訂正請求によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、下記第6及び7のとおり、提出された全ての証拠や意見等を踏まえて更に審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となると合議体は判断したから、特許法第120条の5第5項ただし書に規定された特別の事情があるときに該当し、申立人に再度の意見書の提出の機会は与えない。 以下、令和6年8月23日に提出された訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。 第2 訂正請求について 1.訂正の内容 本件訂正請求の趣旨は、「特許第7258455号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~3について訂正することを求める。」というものであり、本件訂正の内容は以下のとおりである。 ・訂正事項 特許請求の範囲の請求項1に「前記非配置部が、該上面の周縁及びその近傍に存在する」とあるのを、「該上面の周縁部の全域が前記非配置部であり、該非配置部の、該上面の周縁から該上面の内方に向かう方向の長さが10~50mmである」に訂正する。 請求項1の記載を引用する請求項2及び3も同様に訂正する。 なお、訂正事項に係る訂正前の請求項1~3について、請求項2及び3は請求項1を直接又は間接的に引用する関係にあり、訂正後の請求項1~3は訂正事項によって直接又は連動して訂正される。 よって、本件訂正は一群の請求項1~3について請求されたものである。 2.訂正の適否 (1)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 訂正事項に係る請求項1の訂正は、本件訂正前の請求項1に記載されていた「冷凍流動性食品部及び冷凍具材の双方の非配置部」の存在位置について特定する、冷凍固形食品部の「上面の周縁及びその近傍に存在する」という発明特定事項を、願書に添付した明細書の[0027]の記載及び図1に基づいて、「該上面の周縁部の全域が前記非配置部であり、該非配置部の、該上面の周縁から該上面の内方に向かう方向の長さが10~50mmである」と訂正するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。また、訂正事項に係る請求項1の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことも明らかである。請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2及び3の訂正も同様に判断される。 よって、訂正事項に係る請求項1~3の訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (2)独立特許要件について 本件においては、訂正前のすべての請求項1~3に対して特許異議の申立てがなされているので、訂正前の請求項1~3に係る訂正事項については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 3.訂正請求についてのまとめ 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 よって、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1~3に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明3」という。まとめて、「本件発明」ということもある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。なお、以下において、隅付き括弧は「[ ]」と表記した。 「[請求項1] 固形食品を冷凍固化してなる冷凍固形食品部と、流動性食品を冷凍固化してなる冷凍流動性食品部と、具材を冷凍固化してなる冷凍具材とを有し、該冷凍固形食品部の上面に該冷凍流動性食品部と該冷凍具材とが配されている調理済み冷凍食品であって、 前記冷凍具材は、最大差し渡し長さ20~60mmの大型冷凍具材を含み、 前記冷凍固形食品部の上面に、前記冷凍流動性食品部及び前記冷凍具材の双方の非配置部が存在し、 前記冷凍流動性食品部は、前記冷凍固形食品部の上面の厚み方向への投影視において前記冷凍具材の全面積の10~50%が露出するように、且つ該上面に配されている全ての該冷凍具材に接触するように、該冷凍具材及びその周辺の該冷凍固形食品部の上に重ねて配されており、 前記冷凍流動性食品部及び前記冷凍具材が、前記冷凍固形食品部の上面の中央部及びその周辺部に偏在し、該上面の周縁部の全域が前記非配置部であり、該非配置部の、該上面の周縁から該上面の内方に向かう方向の長さが10~50mmである調理済み冷凍食品。 [請求項2] 前記固形食品が、米飯、麺及びベーカリー食品からなる群から選択される1種以上を含む請求項1に記載の調理済み冷凍食品。 [請求項3] 前記流動性食品の品温50~80℃における粘度が0.2~500Pa・sである請求項1又は2に記載の調理済み冷凍食品。」 第4 特許異議申立理由の概要 申立人は、令和5年9月26日に特許異議申立書(以下、「申立書」という。)及び証拠方法として下記2.に示す甲第1号証~甲第3号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲3」のようにいう。)を提出するとともに、甲1に開示されている製品の製造元による商品説明として参考資料1を提出し、概略、以下の(1)~(5)の特許異議申立理由を主張している。 また、申立人は令和6年5月9日に意見書及び証拠方法として下記2.に示す参考資料2及び参考資料3を提出した。 なお、申立理由の番号は当審が仮に付与した。 1.特許異議申立理由 (1)申立理由1(甲1に基づく新規性欠如) 本件発明1~3は、本件特許の出願前に日本国内または外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (2)申立理由2(甲1に基づく進歩性欠如) 本件発明1~3は、本件特許の出願前に日本国内または外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1に記載された発明並びに甲2及び甲3に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (3)申立理由3(実施可能要件違反) 本件特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に適合するものではなく、本件発明1~3についての特許は同法同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 ア 実施例に記載されているように、麺上面にミートボールのような具材を配置し、その上からパスタソースをかけた後、凍結させることによって調理済み冷凍食品を製造する場合、ミートソースには流動性があるので、ミートソースを配置した瞬間から凍結するまでの間にミートボールの被覆率は変化してしまい、具材の被覆率を所定範囲に調整することは技術的に困難である。 イ 本件発明では、具材が大型具材とそれ以外の具材を含み得るが、形状及び種類が異なる具材について、どのようにすれば冷凍具材の非被覆率を10~50%に調整し、かつ、冷凍麺の上面に配置されている全ての冷凍具材に接触するよう、冷凍具材の上に冷凍流動性食品部を配置できるのかについて、発明の詳細な説明には具体的方法が記載されておらず、図1も模式図にすぎないため、明細書及び図面から理解することができない。 ウ 本件特許の明細書の[0030]の記載によれば、本件発明の非被覆率は、冷凍具材の全面積に占める非被覆部分の割合を示しているものにすぎない。実施例1~5では非被覆率が10~50%に調整されているが、6個のミートボールの全てが同じ被覆状態にある場合に限定されず、ミートソースによる被覆状態に偏りがある場合もあり得るから、実施例1~5における6個のミートボールの被覆状態を理解することができず、明細書及び図面の記載に基づいて実施例1~5を再現することができない。 エ 平坦な麺の中央部にのみ流動性のあるパスタソースと具材を配置し、麺の周縁及びその近傍には配置しないことは、工場における大量生産では技術的に困難である。本件特許の明細書の[0034]及び図2には、本件発明の要件を満たす冷凍パスタを大量生産するための手段として、麺上面に凹部を設けることが例示されているが、それ以外の手段は明細書に記載されていない。本件発明では冷凍固形食品が「上面に凹部を形成された冷凍固形食品」に限定されていないため、どのようにすれば本件発明の要件を満たす冷凍パスタを製造できるのか不明である。 (4)申立理由4(サポート要件違反) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、本件発明1~3についての特許は同法同条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 ア 本件発明においては冷凍具材の最小差し渡し長さは限定されていない。しかし、球状の大型具材と薄くスライスされた大型具材が混在すると、たとえ具材の種類が同じであっても電子レンジ等によって加熱解凍した際に解凍ムラが生じるはずであるし、種類の異なる具材間であれば解凍ムラはより生じやすくなるはずである。ところが、様々な種類の大型具材の解凍ムラが本件発明によって解消されることを裏付ける記載は本件特許の明細書及び図面には存在しないから、本件発明は、大型具材の形状及び種類によっては課題を解決することができない場合を包含しており、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えている。 イ 本件発明は調理済み冷凍食品の発明であり、実施例で示されている冷凍パスタ以外の調理済み食品も含まれるが、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明の要件を満たす冷凍パスタ以外の調理済み冷凍食品を製造することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。 ウ 実施例1~5のように、具材がミートボール6個のみで有る場合、3個がミートソースで完全に覆われ、残り3個が平面視した面積の1%だけミートソースに覆われている場合であっても本件発明の要件が満たされることになるが、ミートソースによって平面視した面積の1%だけ覆われたミートボールでは、脱落防止効果を期待することはできない。また、ミートソースで完全に覆われたミートボールと、ミートソースでほとんど覆われていないミートボールが混在していれば、電子レンジによる加熱解凍の際の解凍ムラ防止効果を期待することはできない。よって、本件発明の要件が満たされていても本発明の課題を解決できない場合がある。 (5)申立理由5(明確性要件違反) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、本件発明1~3についての特許は同法同条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 本件発明における「近傍」がどこまでを意味するのか不明である。本件特許の明細書の[0027]には「上面2aの周縁(輪郭線)から該上面2aの内方に10~50mmの範囲、特に15~40mmの範囲に存在することが好ましい」と記載されているが、実施例の[0037]の記載及び図1における輪郭線とパスタソースとの距離に基づいて比例計算すると、実施例1~5の冷凍麺上辺の輪郭線からパスタソースとの距離は約8mmと算出される。よって、[0027]と図1との間で説明が整合しておらず、「近傍」がどのような範囲を意味しているのか不明である。 2.証拠方法 甲1:苗穂工房,「中身付き*Web冷食図鑑|[日本製粉] オーマイ 海の幸とナスのトマトソーススパゲッティ」,作成日2017年5月14日以前,[Internet]URL:https://naeboworks.com/frozen/NPN-183230.htm 甲2:デイブレイク株式会社,「春夏秋凍[お弁当にもおすすめ!]パスタの冷凍保存方法とレシピを紹介!|[急速冷凍]による高品質な業務用食材通販マーケット」,公開日2017年6月7日,[Internet]URL:https://shunkashutou.com/market/column/pasuta/ 甲3:特開2003-274909号公報 参考資料1:株式会社ニップン,「オーマイプレミアム 海の幸のペスカトーレ|商品情報|株式会社ニップン」,作成日2023年3月1日,[Internet]URL:https://www.nippn.co.jp/products/frozen/ohmy_premium/detail/1194556_2256.html 参考資料2:特開2011-62116号公報 参考資料3:特開2004-49224号公報 なお、証拠の表記は当審による。 第5 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要 先の訂正請求により訂正された本件の請求項1~3に係る発明についての特許に対して、令和6年6月21日付け取消理由通知(決定の予告)で特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。 1.取消理由1(新規性) 本件特許の請求項1~3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 2.取消理由2(進歩性) 本件特許の請求項1~3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明並びに甲2及び甲3に記載された事項に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法同条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 第6 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由についての判断 当審は、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由1及び取消理由2によって本件発明1~3についての特許を取り消すことはできないと判断する。理由は以下のとおり。 ・取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)について 1.引用文献及びその記載事項 (1)甲1に記載された事項 甲1には以下の事項が記載されている。 (1-1)「[日本製粉]オーマイ海の幸とナスのトマトソーススパゲッティ JAN 内容量 個数 カロリー 備考 4902170183230 250g 1 339kcal(1食) 仕込量:トマト10%、揚げナス7%、いか4% 中身 [図:0001419323000001.jpg] 」(第1/6頁) (2)甲2に記載された事項 甲2には以下の事項が記載されている。 (2-1)「パスタを冷凍するメリット [図:0001419323000002.jpg] ・・・ 余ってしまっても安心 茹でてしまった麺や作ってしまったパスタが余ってしまった時は、冷凍することで長期保存が可能になります。」(第5頁) (3)甲3に記載された事項 甲3には以下の事項が記載されている。 (3-1)「[特許請求の範囲] [請求項1] 冷凍または冷蔵された複数の食材からなり、マイクロ波照射によって加熱調理する冷凍/冷蔵食品において、 前記複数の食材のうち予め定められる食材には、マイクロ波の吸収効率を高める第1のマイクロ波吸収促進剤と第2のマイクロ波吸収促進剤とが含まれることを特徴とする冷凍/冷蔵食品。 [請求項2] 前記第1のマイクロ波吸収促進剤はデンプンであり、 前記第2のマイクロ波吸収促進剤はプルランであることを特徴とする請求項1記載の冷凍/冷蔵食品。 [請求項3] 前記予め定められる食材のデンプンの含有量は、5.6~12.0重量%であり、プルランの含有量は、0.5~5.0重量%であることを特徴とする請求項2記載の冷凍/冷蔵食品。 [請求項4] 前記デンプンを5.6~12.0重量%およびプルランを0.5~5.0重量%含有する食材の平行板粘度計による測定粘度が、 40,000~56,000mPa・sであることを特徴とする請求項3記載の冷凍/冷蔵食品。」 (3-2)「[0016]本発明に従えば、デンプンを5.6~12.0重量%およびプルランを0.5~5.0重量%含有する食材の平行板粘度計による測定粘度は、40,000~56,000mPa・sである。たとえば冷凍食品の1種である中華丼などの食材として用いられているあんに前述の範囲に選択されるデンプンとプルランとが含まれ、加熱調理後のあんの粘性が前記粘度で40,000~56,000mPa・sであると、良好な昇温特性を有するとともにあんとしての良好な食感が保たれる。」 2.甲1に記載された発明 甲1の第2頁(摘記1-1)には、日本製粉株式会社の商品名「オーマイ 海の幸とナスのトマトソーススパゲッティ」という冷凍食品が、内容量250g、仕込量:トマト10%、揚げナス7%、いか4%であることが記載されている。また、同頁の「中身」という表題の下に2枚の写真が掲載されており、左の写真ではスパゲッティがトレイに収容され、そのトレイが皿の上に載っており、右の写真では皿の上に直接スパゲッティが載っていることが見て取れる。ここで、左の写真が解凍前の冷凍食品を撮影した写真であり、右の写真が解凍後のスパゲッティをトレイから皿に移して撮影した写真であり、解凍後のものは喫食可能な状態にあると解されるから、冷凍食品は調理済みの商品であると解される。 さらに、上記商品名及び仕込量についての記載を参酌すると、左の写真においては、冷凍されたスパゲッティの上面に冷凍具材が配置され、それらの上に重ねて冷凍されたトマトソースが配置され、冷凍されたトマトソースは全ての冷凍具材に接触するように、冷凍具材及びその周辺の冷凍されたスパゲッティの上に重ねて配置されているが、赤味を帯びた冷凍されたトマトソースに覆われていない黒い部分が存在し、当該黒い部分は色及び解凍前後の形状からみて揚げナスであると解される。 加えて、左の写真においては、冷凍されたスパゲッティの上面に、冷凍されたトマトソース及び冷凍具材の双方の非配置部が存在することが見て取れる。 そうすると、甲1には以下の発明が記載されている。 「スパゲッティを冷凍固化してなる冷凍スパゲッティと、トマトソースを冷凍固化してなる冷凍トマトソースと、具材を冷凍固化してなる冷凍具材とを有し、該冷凍スパゲッティの上面に該冷凍トマトソースと該冷凍具材とが配されている調理済み冷凍食品であって、 前記冷凍具材は揚げナスを含み、 前記冷凍スパゲッティの上面に、前記冷凍トマトソース及び前記冷凍具材の双方の非配置部が存在し、 前記冷凍トマトソースは、前記冷凍スパゲッティの上面に配されている全ての冷凍具材に接触するように、該冷凍具材及びその周辺の該冷凍スパゲッティの上に重ねて配置されている、 調理済み冷凍食品。」(以下、「甲1発明」という。) 3.本件発明1について (1)本件発明1と甲1発明との対比 本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「スパゲッティを冷凍固化してなる冷凍スパゲッティ」、「トマトソースを冷凍固化してなる冷凍トマトソース」、「具材を冷凍固化してなる冷凍具材」、「該冷凍スパゲッティの上面に該冷凍トマトソースと該冷凍具材とが配されている」、「調理済み冷凍食品」、「前記冷凍スパゲッティの上面に、前記冷凍トマトソース及び前記冷凍具材の双方の非配置部が存在」及び「前記冷凍トマトソースは、前記冷凍スパゲッティの上面に配されている全ての冷凍具材に接触するように、該冷凍具材及びその周辺の該冷凍スパゲッティの上に重ねて配置」は、それぞれ本件発明1における「固形食品を冷凍固化してなる冷凍固形食品部」、「流動性食品を冷凍固化してなる冷凍流動性食品部」、「具材を冷凍固化してなる冷凍具材」、「該冷凍固形食品部の上面に該冷凍流動性食品部と該冷凍具材とが配されている」、「調理済み冷凍食品」、「前記冷凍固形食品部の上面に、前記冷凍流動性食品部及び前記冷凍具材の双方の非配置部が存在」及び「前記冷凍流動性食品部は、前記冷凍固形食品部の・・・該上面に配されている全ての該冷凍具材に接触するように、該冷凍具材及びその周辺の該冷凍固形食品部の上に重ねて配されており」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲1発明とは、 「固形食品を冷凍固化してなる冷凍固形食品部と、流動性食品を冷凍固化してなる冷凍流動性食品部と、具材を冷凍固化してなる冷凍具材とを有し、該冷凍固形食品部の上面に該冷凍流動性食品部と該冷凍具材とが配されている調理済み冷凍食品であって、 前記冷凍固形食品部の上面に、前記冷凍流動性食品部及び前記冷凍具材の双方の非配置部が存在し、 前記冷凍流動性食品部は、前記冷凍固形食品部の上面に配されている全ての該冷凍具材に接触するように、該冷凍具材及びその周辺の該冷凍固形食品部の上に重ねて配されている、 調理済み冷凍食品。」 の点で一致し、 相違点1:本件発明1は「前記冷凍具材は、最大差し渡し長さ20~60mmの大型冷凍具材を含み」と特定するのに対し、甲1発明は少なくとも「揚げナス」を含むものである点 相違点2:本件発明1は「前記冷凍流動性食品部は、前記冷凍固形食品部の上面の厚み方向への投影視において前記冷凍具材の全面積の10~50%が露出するように」配されていると特定するのに対し、甲1発明はそのように特定されていない点 相違点3:本件発明1は「前記冷凍流動性食品部及び前記冷凍具材が、前記冷凍固形食品部の上面の中央部及びその周辺部に偏在し、該上面の周縁部の全域が前記非配置部であり、該非配置部の、該上面の周縁から該上面の内方に向かう方向の長さが10~50mmである」と特定するのに対し、甲1発明はそのように特定されていない点 で相違する。そこで、上記相違点について検討する。 (2)相違点3について 事案に鑑み、相違点3について検討する。 甲1の第1/6頁(摘記1-1)の左の写真において、冷凍スパゲッティの上面の周縁部は、全域が冷凍トマトソース及び前記冷凍具材の双方の非配置部であるが、非配置部の最も狭いところは大凡スパゲッティ1本分の幅しかなく、一般的なスパゲッティ1本分の幅を参酌すると、上面の周縁から該上面の内方に向かう方向の長さで表して10mm未満の箇所があることは明らかである。そうすると、相違点3は実質的な相違点である。 また、甲1及び他の証拠の記載を参照しても、上記非配置部の、上記上面の周縁から該上面の内方に向かう方向の長さを10~50mmに調整する動機付けとなる記載はないから、甲1発明において相違点3に係る構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 (3)申立人の主張について 申立人は、令和6年5月9日に提出した意見書において、先の訂正請求を前提として、「訂正発明1は甲1発明に対して新規性及び進歩性を有しないことは明らかであり、甲1に訂正発明1の技術思想が開示されていないことは、訂正発明1が甲1発明に対して新規性及び進歩性を有している根拠にはなり得ない」こと、及び特許権者が令和6年3月26日に意見書とともに提出した乙第1号証(実験成績証明書)について、「乙第1号証の追加比較例1及び2は、甲1発明の再現例としては不適当」であることを主張している。 しかし、上記(1)及び(2)に記載したとおり、本件訂正後の本件発明1と甲1発明とは、相違点3において実質的に相違し、また、相違点3に係る構成を採用することを動機付ける記載は甲1及び他の証拠のいずれにも見いだせず、申立人の上記主張も、甲1発明において当業者が相違点3に係る構成を採用することができたことを立証するものではないから、上記判断は覆らない。よって、申立人の主張を採用することはできない。 (3)相違点3についてのまとめ 以上まとめると、相違点3は実質的な相違点であって、甲1発明及びいずれの証拠の記載に基づいても当業者が容易に想到することができたものではない。 (4)本件発明1についてのまとめ 以上のことから、相違点1及び相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は甲1発明ではなく、また、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 4.本件発明2及び3について 本件発明2及び3は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。 そうすると、本件発明1と同様の理由により、本件発明2及び3は、いずれも甲1発明ではなく、また、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 5.取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由(取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性))についてのまとめ 以上まとめると、本件発明1~3は、いずれも甲1に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号には該当せず、また、本件発明1~3は、いずれも甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 よって、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)により本件発明1~3についての特許を取り消すことはできない。 第7 取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由についての判断 当審は、特許異議申立理由はいずれも理由がないものと判断する。理由は以下のとおり。 1.取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由の概要 上記第4の1.(1)及び(2)に記載した申立理由1(甲1に基づく新規性欠如)及び申立理由2(甲1に基づく進歩性欠如)は取消理由通知(決定の予告)で採用したが(上記第5の取消理由1及び取消理由2)、その他の申立理由は採用しなかった。以下、検討する。 2.申立理由3(実施可能要件違反)について (1)実施可能要件の判断手法 物の発明における実施とは、物の生産、使用等の行為をいうから(特許法第2条第3項第1号)、物の発明について、実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、その物を生産し、かつ、その物を使用できる程度の記載があれば、実施可能要件を満たすということができる。 (2)本件明細書の記載事項 本件明細書の[0010]には、「本発明の調理済み冷凍食品は、冷凍固形食品部、冷凍流動性食品部及び冷凍具材を有し、該冷凍固形食品部の上面に該冷凍流動性食品部と該冷凍具材とが配されている」ものであることが記載され、[0011]~[0014]には、冷凍固形食品部を構成する食品の具体例が記載され、[0015]~[0016]には、冷凍流動性食品部を構成する食品の具体例及び温度50~80℃における好ましい粘度範囲が記載され、[0017]には、冷凍具材の具体例及び形状、大きさについて記載されている。また、[0018]~[0034]には、図1及び図2を例として引用した上で、冷凍固形食品部、冷凍流動性食品部、冷凍具材及び非配置部の大きさ、配置位置、非被覆率等について、課題解決の観点も踏まえた好ましい実施形態が具体的な数値の例示を伴って記載されるとともに、その製造法についても具体的に記載されている。さらに、[0035]~[0042]には、具材を直径30mmの球状のミートボールとし、市販のミートソースを流動性食品として用い、図1に示す調理済み冷凍食品と同様の調理済み冷凍スパゲッティとし、冷凍具材における冷凍流動性食品部の非被覆率を5~60%の範囲で変化させた実施例1~5及び比較例1及び2を製造したこと、及びそれらを所定の手順で袋ごと2回落下させた後、袋に入ったままの状態で電子レンジにより解凍し、外観(流動性食品及び具材の配置、食品全体の見栄え)及び食感(解凍性)を専門パネルが評価したことが記載されている。 (3)実施可能要件についての判断 上記本件明細書の記載及び図面を参照することにより、当業者は本件発明1における固形食品、流動性食品及び具材として、どのような物を原材料ないし素材として用いることができるか理解することができ、また、製造方法についての一般記載及び実施例として開示された冷凍スパゲッティの製造方法の記載を参酌することにより、冷凍スパゲッティ以外であっても、例示された固形食品、流動性食品及び具材一般を用いて、具材の種類、大きさ、配置、流動性食品の粘度、被覆方法等を食材に応じて調整することにより、「最大差し渡し長さ20~60mmの大型冷凍具材を含み、前記冷凍固形食品部の上面に、前記冷凍流動性食品部及び前記冷凍具材の双方の非配置部が存在し、前記冷凍流動性食品部は、前記冷凍固形食品部の上面の厚み方向への投影視において前記冷凍具材の全面積の10~50%が露出するように、且つ該上面に配されている全ての該冷凍具材に接触するように、該冷凍具材及びその周辺の該冷凍固形食品部の上に重ねて配されており、前記冷凍流動性食品部及び前記冷凍具材が、前記冷凍固形食品部の上面の中央部及びその周辺部に偏在し、該上面の周縁部の全域が前記非配置部であり、該非配置部の、該上面の周縁から該上面の内方に向かう方向の長さが10~50mmである」という要件を満たす調理済み冷凍食品を製造することができ、かつ、製造された調理済み冷凍食品は、電子レンジ等により解凍することにより喫食可能な物として使用することができると理解することができる。 そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明には、本件発明1の発明特定事項に対応した説明の記載や実施例の記載があるから、当業者が本件発明1を生産し、かつ、本件発明1を使用することができる程度の記載があるといえる。 請求項1を直接又は間接的に引用して特定され、本件発明1の発明特定事項を全て備える本件発明2及び3についても同様である。 (4)申立人の主張について 申立人は、上記第4 1.(3)ア~エのように主張しているが、いずれの主張も採用することはできない。 ア及びイについて、冷凍具材の非被覆率及び冷凍固形食品部上の非配置部の形状については、上記(3)に記載したとおり、本件明細書の記載に接した当業者は、冷凍固形食品部の上面における具材の形状及び配置、冷凍固形食品部における流動性食品の浸透の程度、冷凍食品の製造時における流動性食品の粘度、冷凍速度等を調整することにより、本件発明1に特定される要件を満たす冷凍食品を製造することができるものと理解することができる。また、本件明細書の記載に接した当業者は、食材として特別な性質を備えたものを準備する必要はないことを理解することができ、食材の調理方法、粘度等の性質の調整方法も本件特許に係る出願の出願当時における技術常識を参酌することにより容易に理解することができるから、本件明細書に食材に合わせた詳細な製造手順が記載されていないことや、図1が模式図であることを勘案しても、本件発明に相当する冷凍食品を製造することが技術的に困難であるとはいえない。申立人の主張は、本件発明に相当する冷凍スパゲッティを製造することが不可能であることを具体的な技術的根拠に基づいて明らかにするものではないから、採用することはできない。 ウについて、本件明細書の[0036]には、実施例1~5の製造工程について「麺塊の上面の中央部に、直径30mmの球状のミートボール・・・を6個盛り付け、さらにその上から所定量の市販のミートソース・・・をかけ」たと記載されているから、当該記載に接した当業者は、ミートボール及びミートソースは中央部に配置されており、恣意的に配置を偏らせてはいないものと常識的に理解することができる。また、[0038]~[0042]に記載された外観及び食感についての評価結果もそのような食材の配置を前提としたものと理解することができる。よって、実施例1~5を再現することができないとはいえず、申立人の主張を採用することはできない。 エについて、上記(3)に記載したとおり、本件明細書の記載に接した当業者は本件発明の冷凍食品の製造方法を理解することができ、工場において大量生産することは必須ではないことも理解することができる。また、工場において生産することを含めても、申立人の主張は、「上面に凹部を形成された冷凍固形食品」を使用しなければ本件発明に相当する冷凍食品を製造することが不可能であることを具体的な技術的根拠に基づいて明らかにするものではないから、採用することはできない。 (5)申立理由3(実施可能要件違反)についてのまとめ 以上のことから、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1~3を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるといえるから、特許法第36条第4項第1号に適合するものであり、それらの発明についての特許は、同法同条第4項第1号に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。 よって、申立理由3(実施可能要件違反)により本件発明1~3についての特許を取り消すことはできない。 3.申立理由4(サポート要件違反)について (1)サポート要件の判断手法 特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2)本件発明の課題について 本件明細書の[0006]等の記載から見て、本件発明1~3の課題は「冷凍状態で長期保存が可能で、解凍するだけで喫食可能状態となる調理済み冷凍食品であって、大きめの具材及び流動性食品が固形食品の上に見栄えよく配され、冷凍保存中に該具材等の破損や脱落が生じ難く、且つ解凍後は解凍ムラが無く食感及び外観が良好な調理済み冷凍食品を提供すること」ことにあるものと認められる。 (3)本件明細書の記載について 本件明細書には、上記2.(2)に記載した事項が記載されている。 (4)サポート要件についての判断 本件明細書の[0035]~[0042]には、具材を直径30mmの球状のミートボールとし、市販のミートソースを流動性食品として用い、図1に示す調理済み冷凍食品と同様の調理済み冷凍スパゲッティとし、冷凍具材における冷凍流動性食品部の非被覆率を5~60%の範囲で変化させた実施例1~5及び比較例1及び2を製造したこと、及びそれらを所定の手順で袋ごと2回落下させた後、袋に入ったままの状態で電子レンジにより解凍し、外観(流動性食品及び具材の配置、食品全体の見栄え)及び食感(解凍性)を専門パネルが評価したことが記載されており、評価結果(表1)に基づいて「実施例と比較例との対比から、冷凍保存中に具材等の破損や脱落が生じ難く、且つ解凍後は解凍ムラが無く食感及び外観が良好調理済み冷凍食品を得るためには、冷凍具材における冷凍流動性食品部の非被覆率を10~50%の範囲に設定することが有効であることがわかる。」と記載されている。また、[0018]~[0034]には、図1及び図2を例として引用した上で、冷凍固形食品部、冷凍流動性食品部、冷凍具材及び非配置部の大きさ、配置位置、非被覆率等について、課題解決の観点も踏まえた好ましい実施形態が具体的な数値の例示を伴って記載されており、当業者は上記実施例の評価結果と合わせることにより、一般記載に好ましいものとして記載されている実施形態を包含する、 「固形食品を冷凍固化してなる冷凍固形食品部と、流動性食品を冷凍固化してなる冷凍流動性食品部と、具材を冷凍固化してなる冷凍具材とを有し、該冷凍固形食品部の上面に該冷凍流動性食品部と該冷凍具材とが配されている調理済み冷凍食品であって、 前記冷凍具材は、最大差し渡し長さ20~60mmの大型冷凍具材を含み、 前記冷凍固形食品部の上面に、前記冷凍流動性食品部及び前記冷凍具材の双方の非配置部が存在し、 前記冷凍流動性食品部は、前記冷凍固形食品部の上面の厚み方向への投影視において前記冷凍具材の全面積の10~50%が露出するように、且つ該上面に配されている全ての該冷凍具材に接触するように、該冷凍具材及びその周辺の該冷凍固形食品部の上に重ねて配されており、 前記冷凍流動性食品部及び前記冷凍具材が、前記冷凍固形食品部の上面の中央部及びその周辺部に偏在し、該上面の周縁部の全域が前記非配置部であり、該非配置部の、該上面の周縁から該上面の内方に向かう方向の長さが10~50mmである調理済み冷凍食品。」 であることにより、本件発明の課題を解決することができると認識することができる。 そして、本件発明1は、当業者が発明の課題を解決できると認識することができる上記冷凍食品に相当する発明であるから、本件発明1について、当業者は上記発明の課題を解決することができると認識することができるといえる。 請求項1を直接又は間接的に引用して特定され、本件発明1の発明特定事項を全て備える本件発明2及び3についても同様である。 (5)申立人の主張について 申立人は、上記第4 1.(4)ア~ウのように主張しているが、いずれの主張も採用することはできない。 アについて、本件明細書には「解凍ムラ」について、「ソース載せスパゲティやカレーライスに代表される、固形主食材の上にソース・あん・たれなどの流動性副食材が配された一体化タイプ・・・は、主食材と副食材とが重なり合って一体となっているために、電子レンジで解凍処理しても解凍ムラが発生し難く、解凍後の食感にも総じて優れている。」([0002])、「流動性副食材の冷凍固化物の表面から大型具材の冷凍固化物の一部が比較的大きく突出しているため、・・・電子レンジなどで加熱解凍したときに大型具材に解凍ムラが発生しやすく、食感の低下が顕著に現れやすい。」([0005])、「前記冷凍固形食品部の上面における該大型冷凍具材及び前記冷凍流動性食品部の配置を工夫することで、・・・解凍後の該調理済み食品においては、見栄えがよく外観が良好で且つ解凍ムラが無く食感も良好な調理済み冷凍食品が得られるようにした。」([0025])、「冷凍流動性食品部3が冷凍固形食品部2の上面2aの全域を覆っていると、調理済み冷凍食品1の電子レンジによる解凍がうまくいかずに解凍ムラが生じ、食感の低下が顕著に発生するおそれがある。前述の外観及び食感に関する不都合は、冷凍固形食品部2の上面2aに、冷凍流動性食品部3及び冷凍具材4のいずれも配されていない非配置部5を設けることで解消し得る。」([0026])、「冷凍流動性食品部3の非被覆率が10%未満であると、冷凍具材4の表面の大部分が冷凍流動性食品部3で被覆されているため、調理済み冷凍食品1の電子レンジによる解凍時に解凍ムラが多発するおそれがある。また、冷凍流動性食品部3の非被覆率が50%を超えると、冷凍流動性食品部3の、冷凍具材4を冷凍固形食品部2に固定するための接着剤としての機能が著しく低下するため、調理済み冷凍食品1の冷凍保存中に冷凍具材4の脱落や破損が生じやすくなり、冷凍流動性食品部3の配置にも悪影響を及ぼし、見栄えの悪化、解凍ムラの発生、食感の低下などの不都合が多発するおそれがある。」(「0031」)と記載され、また、[0040]には、食感(解凍性)の評価基準について、 「5点:調理済み食品(ソース付きスパゲッティ)全体がバランスよく解凍されており、非常に良好。 4点:具材(ミートボール)に部分的に解凍ムラがあるが、良好。 3点:固形食品(スパゲティ)及び具材に部分的に解凍ムラがあるが、概ね良好。 2点:固形食品及び具材に解凍ムラがやや多く存在し、不良。 1点:調理済み食品全体に解凍ムラが多く、非常に不良。」 と記載されているから、本件発明の課題における「解凍ムラ」は、大型具材と小型具材との間だけで評価されるものではなく、固形食品も含めた冷凍食品全体のバランスの観点から評価されるものと理解することができる。また、本件明細書の上記記載に接した当業者は、主食材と副食材とが重なり合って一体となっていること、大型具材の最大差し渡し長さを20~60mmとすること、大型冷凍具材及び前記冷凍流動性食品部の配置を工夫すること、冷凍固形食品部2の上面2aに、冷凍流動性食品部3及び冷凍具材4のいずれも配されていない非配置部5を設けること、冷凍流動性食品部3の非被覆率を10~50%とすること等により、冷凍食品全体のバランスの観点から評価したときに解凍ムラが無いと評価される冷凍食品を提供することができ、上記課題を解決し得るものと認識することができる。申立人の主張は、本件明細書の記載から把握される解凍ムラの評価基準とは異なる基準に基づく主張であるから、本件発明が上記課題を解決できない理由にはならないものであり、採用することはできない。 イについて、上記2.(3)及び(4)に記載したとおり、本件明細書の記載及び図面に接した当業者は、実施例として示されている冷凍パスタに限らず、一般記載に例示された固形食品、流動性食品及び具材一般を用いて、具材の種類、大きさ、配置、流動性食品の粘度、被覆方法等を食材に応じて調整することにより、本件発明の要件を満たす調理済み冷凍食品を製造することができるものと認識することができるから、本件発明は発明の詳細な説明にその実施が可能な程度に明確かつ十分に記載されたものといえる。 ウについて、本件発明1には、「冷凍流動性食品部は・・・上面に配されている全ての該冷凍具材に接触するように、該冷凍具材及びその周辺の該冷凍固形食品部の上に重ねて配されて」いることが特定されているから、実施例の評価結果等を参酌すると、一定の脱落防止効果を期待することができ、課題解決に寄与するものと当業者は認識することができる。また、上記「アについて」に記載したとおり、本件発明の課題の一つとされる「解凍ムラがない」ことは、冷凍食品全体のバランスの観点から評価されることであるから、ミートボール同士の比較にとどまる申立人の主張は、本件発明が上記課題を解決できない理由にはならないものである。 (6)申立理由4(サポート要件違反)についてのまとめ 以上のことから、本件発明1~3は、いずれも発明の詳細な説明に記載したものであるといえるから、特許法第36条第6項第1号に適合するものであり、それらの発明についての特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。 よって、申立理由3(サポート要件違反)により本件発明1~3についての特許を取り消すことはできない。 4.申立理由5(明確性要件違反)について (1)明確性要件の判断手法 特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 (2)明確性要件についての判断 本件特許の請求項1~3の記載は上記第3のとおりであり、請求項1~3の記載それ自体は明確であり、また、本件明細書の記載及び図面を考慮しても不整合はない。 よって、本件発明1~3については、特許請求の範囲の記載だけでなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、本件特許に係る出願の出願当時における当業者の技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 (3)申立人の主張について 申立人は、上記第4 1.(5)のように主張しているが、本件訂正前の請求項1に含まれていた「近傍」という用語は、本件訂正により削除された。また、本件発明1における「該上面の周縁部の全域が前記非配置部であり、該非配置部の、該上面の周縁から該上面の内方に向かう方向の長さが10~50mmである」という発明特定事項は、非配置部の形状を明確に特定するものといえ、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。請求項1を直接又は間接的に引用して特定され、本件発明1の発明特定事項を全て備える本件発明2及び3についても同様である。 (4)申立理由5(明確性要件違反)についてのまとめ 以上のことから、本件発明1~3は、いずれも特許請求の範囲の記載が第三者に不測の不利益をもたらすほど不明確であるとはいえないから、特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号に適合するものであり、それらの発明についての特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。 よって、申立理由5(明確性要件違反)により本件発明1~3についての特許を取り消すことはできない。 第8 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由のいずれによっても、本件発明1~3についての特許を取り消すことはできない。また、他に、これらの特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701027

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