特許異議申立
2024-700063
離型フィルム
- 審判番号
- 2024-700063
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-023294外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7320954
- 請求日
- 2024年01月25日
- 審決日
- 2024年05月10日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】東レフィルム加工株式会社
- 【権利者代理人】福岡 満
- 【異議申立人】小林 瞳
- 分類
- P1651.121-Y (B32B)
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7320954号発明「離型フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7320954号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7320954号の請求項1に係る特許についての出願は、平成31年2月13日にした出願であって、令和5年7月27日に特許権の設定登録がされ、同年8月4日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1に係る特許に対し、令和6年1月25日に、特許異議申立人小林瞳(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
基材フィルムの少なくとも一方の面に離型層を有する樹脂フィルムのキャスト製膜用離型フィルムであって、
前記離型層が該離型層を構成する樹脂全体に対してメラミン樹脂を80質量%以上含有し、前記離型層の表面粗さSRaが5.0nm未満であり、該離型層の表面自由エネルギーが35mJ/m2超、50mJ/m2未満であることを特徴とする、樹脂フィルムのキャスト製膜用離型フィルム。」
第3 申立理由の概要
申立人は、甲第1号証~甲第7号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲7」という。)を提出して、以下の申立理由により請求項1に係る特許を取り消すべきである旨主張する。
1 証拠方法
甲1:特開2015-164762号公報
甲2:特開2018-161829号公報
甲3:特開2010-6079号公報
甲4:特開平11-300896号公報
甲5:特開2016-203570号公報
甲6:特開2007-190717号公報
甲7:特開2006-7568号公報
2 申立理由(進歩性)
本件発明1は、甲1に記載された発明、甲2に記載された事項及び甲3~7に示される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項1に係る特許は、同法第29条第2項に違反するから、取り消されるべきものである。
第4 当審の判断
1 甲号証の記載事項等
(1)甲1について
ア 記載事項
甲1には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。以下同様。)
「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、グリーンシートの表面にピンホールや部分的な厚みのばらつき等が発生するのを抑制または防止するとともに、剥離フィルムからグリーンシートを剥離する際にグリーンシートが破損することを抑制または防止することができるグリーンシート製造用剥離フィルムを提供することにある。また、かかるグリーンシート製造用剥離フィルムを容易かつ確実に製造することができるグリーンシート製造用剥離フィルムの製造方法を提供すること、信頼性の高いグリーンシートを容易かつ確実に製造することが可能なグリーンシートの製造方法を提供すること、信頼性の高いグリーンシートを提供することにある。」
「【0027】
図1に示すように、グリーンシート製造用剥離フィルム(以下、単に「剥離フィルム」ということもある。)1は、第1の面111と第2の面112とを有する基材11と、基材11の第1の面111上に設けられた平滑化層12と、平滑化層12の第3の面(基材11と反対の面)121上に設けられた剥離剤層13とを有している。・・・」
「【0164】
[1]グリーンシート製造用剥離フィルムの作製
(実施例1)
まず、基材としての二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム[厚み:31μm、第1の面の算術平均粗さRa2:23nm、第1の面の最大突起高さRp2:415nm、第2の面の算術平均粗さRa3:23nm、第2の面の最大突起高さRp3:415nm]を用意した。
【0165】
次に、メラミン樹脂[三井サイテック社製商品名「サイメル303」、ヘキサメトキシメチルメラミン、質量平均分子量390、固形分100質量%]:100質量部と、酸性触媒としてのp-トルエンスルホン酸:5質量部と、イソプロピルアルコールとイソブチルアルコールとの混合溶媒(質量比率4/1)と、を混合して固形分15質量%の平滑化層形成用組成物を得た。
【0166】
次いで、得られた平滑化層形成用組成物をバーコーターで基材11の第1の面111上に塗布して、塗布層を得た。次に、この塗布層を120℃で1分間加熱することにより塗布層を硬化させることで、平滑化層(厚み:0.55μm)を形成した。
【0167】
次に、メラミン樹脂[三井サイテック社製商品名「サイメル303」、ヘキサメトキシメチルメラミン、質量平均分子量390、固形分100質量%] :95質量部と、シリコーン化合物としてのシラノール末端ポリジメチルシロキサン[信越化学工業(株)製、KF-9701、固形分100質量%] :5質量部と、酸性触媒としてのp-トルエンスルホン酸:5質量部と、イソプロピルアルコールとイソブチルアルコールとの混合溶媒(質量比率4/1)と、を混合して固形分15質量%の剥離剤層形成用組成物を得た。
【0168】
次いで、得られた剥離剤層形成用組成物をバーコーターで平滑化層の第3の面(基材とは反対の面)上に塗布して、塗布層を得た。次に、この塗布層を120℃で1分間加熱することにより塗布層を硬化させることで、剥離剤層(厚み:0.50μm)を形成した。」
「【0192】
【表1】
[図:0001411356000001.jpg]
」
「【図1】
[図:0001411356000002.jpg]
」
イ 認定事項
(ア)【0167】及び【0168】の記載によれば、剥離剤層は剥離剤層を構成する樹脂全体に対してメラミン樹脂を95質量%含むことが認められる。
(イ)表1の実施例1の記載によれば、剥離剤層の外表面の算術平均粗さRaが4nmであることが認められる。
ウ 甲1発明
上記ア及びイを総合すると、甲1には、実施例1として次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである基材11と、基材11の第1の面111の上に設けられた平滑化層12と、平滑化層12の第3の面121上に設けられた剥離剤層13を有するグリーンシート製造用剥離フィルム1であって、
剥離剤層13が剥離剤層13を構成する樹脂全体に対してメラミン樹脂を95質量%含み、剥離剤層13の外表面の算術平均粗さRaが4nmである、グリーンシート製造用剥離フィルム1。」
(2)甲2について
甲2には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
基材フィルム上に離型層を備え、該離型層上に感光性導電層を積層するために用いられる感光性導電層転写用離型フィルムであって、前記離型層の表面自由エネルギーが25~43mJ/m2の範囲であることを特徴とする、感光性導電層転写用離型フィルム。」
「【0010】
離型フィルムは、基材フィルム上に、表面自由エネルギーが25~43mJ/m2の範囲である離型層を有する。離型層の表面自由エネルギーが25~43mJ/m2の範囲であることによって、離型層上に感光性導電層を積層する際の感光性導電ペーストの塗布性が良好となり、かつ、積層された感光性導電層を被着体に転写するときの転写性が良好となる。
【0011】
離型層の表面自由エネルギーが25mJ/m2未満となると、離型層上に感光性導電ペーストを塗布した際にハジキやムラが発生し、感光性導電層にピンホールが生じることがある。一方、離型層の表面自由エネルギーが43mJ/m2を超えると、離型層上に積層された感光性導電層の剥離力が重くなり、感光性導電層の転写の際に残渣が発生するなどの不都合が生じることがある。」
「【0127】
(9)感光性導電層の転写性の評価
上記(7)の方法で作製した感光性導電層積層フィルムをL/S=3/3mm、ライン長さ10mmでラインが10本になるように上記(8)の方法でパターン化した。
【0128】
次に、感光性導電層積層フィルムのパターン化された感光性導電層の面と、被着体(厚み100μmの東レ(株)のポリエステルフィルム“ルミラー(登録商標)”U48)をラミネート装置MRK-600型((株)エム・シーケー)を用いてロール温度80℃設定、搬送速度1m/minで貼り合わせた。
【0129】
23℃×65%の環境下で24時間静置後、引張り試験機((株)島津製作所製の小型卓上試験機「EZ-20NSX」)にて、300mm/minの速度で、離型フィルム側を180°に引き剥して、パターン化された感光性導電層を被着体に転写した。
【0130】
被着体に転写された感光性導電層のパターン(10本のライン)について、それぞれパターンの両端部に絶縁抵抗計DG6(三和電気計器(株))の端子を当てて、10本のラインの導電性(抵抗値)をそれぞれ測定した。抵抗値が100Ω/□未満の場合を転写性が良好であるとした。ラインの転写性が不良であるとラインが途中で破断したり、細くなって抵抗値が100Ω/□以上となる恐れがある。
【0131】
上記方法で測定された10本のラインの抵抗値の測定結果に基づいて以下の基準で転写性を評価した。
○:10本全てラインが100Ω/□未満である。
△:10本中6~9本のラインが100Ω/□未満である。
×:10本中、100Ω/□未満のラインが5本以下である。」
「【0133】
<ポリエステルフィルム1>
東レ(株)のポリエステルフィルム(FB40)を用いた。このポリエステルフィルムは、総厚みが16μm、表面粗さSRa(1)およびSRa(2)はそれぞれ2.9nm、0、8nm、ヘイズ値が0.6%であった。
・・・
【0136】
[実施例1]
ポリエステルフィルム1の一方の面(表面粗さSRa(1)の面)に、下記の離型層塗工液p1を塗布し、160℃で加熱乾燥し、離型層を形成して離型フィルムを作製した。離型層の厚みは700nmであった。
【0137】
<離型層塗工液p1>
・離型剤;長鎖アルキル基含有アルキド樹脂(日立化成(株)の「テスファイン」303)を固形分換算で10質量部
・酸触媒;p-トルエンスルホン酸(日立化成(株)の「ドライヤー」900)を固形分換算で0.12質量部
・溶媒;トルエンを45質量部
【0138】
[実施例2]
離型層の厚みを350nmに変更する以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。
【0139】
[実施例3]
下記の離型層塗工液p2に変更する以外は、実施例2と同様にして離型フィルムを作製した。
【0140】
<離型層塗工液p2>
・離型剤1;メチル化メラミン(三羽研究所(株)の「ATOM BOND」RP-50)を固形分換算で10質量部
・離型剤2;長鎖アルキル基含有アルキド樹脂(日立化成(株)の「テスファイン」303)を固形分換算で1.0質量部
・酸触媒1;イソシアネート化合物(和信化学工業(株)の「プラスコートST」DEPクリヤー)を固形分換算で2.0質量部
・酸触媒2;p-トルエンスルホン酸(日立化成(株)の「ドライヤー」900)を固形分換算で0.013質量部
・溶媒;トルエンを78質量部、シクロヘキサノンを63質量部、メタノールを16質量部」
「【0144】
[比較例1]
下記の離型層塗工液p4に変更する以外は、実施例2と同様にして離型フィルムを作製した。
【0145】
<離型層塗工液p4>
・離型剤1;メチル化メラミン(三羽研究所(株)の「ATOM BOND」RP-50)を固形分換算で10質量部
・酸触媒1;イソシアネート化合物(和信化学工業(株)の「プラスコートST」DEPクリヤー)を固形分換算で2.0質量部
・溶媒;トルエンを78質量部、シクロヘキサノンを63質量部、メタノールを16質量部」
「【0149】
[評価]
上記で作製した実施例および比較例の離型フィルムについて、上述の測定方法および評価方法に従って評価した。その結果を表1に示す。
【0150】
【表1】
[図:0001411356000003.jpg]
」
2 申立理由についての判断
(1)対比
ア 本件発明と甲1発明とを対比すると、その構造や機能からみて、後者の「基材11」は、前者の「基材フィルム」に相当し、以下同様に、「第1の面111」は「一方の面」に、「剥離剤層13」は「離型層」に、それぞれ相当する。
イ 上記アを踏まえると、後者の「剥離剤層13が剥離剤層13を構成する樹脂全体に対してメラミン樹脂を95質量%含」むことは、前者の「前記離型層が該離型層を構成する樹脂全体に対してメラミン樹脂を80質量%以上含有」することに相当する。
ウ 後者の「グリーンシート製造用剥離フィルム1」は、前者の「樹脂フィルムのキャスト製膜用離型フィルム」と、「離型フィルム」という点で共通するから、上記アを踏まえると、後者の「基材11の第1の面111の上に設けられた平滑化層12と、平滑化層12の第3の面121上に設けられた剥離剤層13を有するグリーンシート製造用剥離フィルム1」は、前者の「基材フィルムの少なくとも一方の面に離型層を有する樹脂フィルムのキャスト製膜用離型フィルム」と、「基材フィルムの少なくとも一方の面に離型層を有する離型フィルム」という点で共通する。
そうすると、本件発明と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「基材フィルムの少なくとも一方の面に離型層を有する離型フィルムであって、
前記離型層が該離型層を構成する樹脂全体に対してメラミン樹脂を80質量%以上含有する、離型フィルム。」
<相違点1>
離型フィルムについて、本件発明では、「樹脂フィルムのキャスト製膜用」であるのに対し、甲1発明では、グリーンシート製造用である点。
<相違点2>
離型層について、本件発明では、「表面粗さSRaが5.0nm未満」であるのに対し、甲1発明では、「外表面の算術平均粗さRaが4nm」である点。
<相違点3>
本件発明では、「該離型層の表面自由エネルギーが35mJ/m2超、50mJ/m2未満である」であるのに対し、甲1発明では、そのような特定はない点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑み、まず相違点3について検討する。
甲2には、実施例3として、離型層の表面自由エネルギーが41mJ/m2である感光性導電層転写用離型フィルム(【0136】、【0139】、【0140】、【0150】参照。)が開示され、比較例1として、離型層の表面自由エネルギーが43mJ/m2である感光性導電層転写用離型フィルム(【0136】~【0138】、【0144】、【0145】、【0150】参照。)が開示されている。ここで、離型層の材料が実質的に同じであれば、離型層の表面自由エネルギーも同程度になると認められるところ、甲1発明の剥離剤層13の材料(甲1の【0167】参照。)と実施例3や比較例1の離型層の材料(甲2の【0140】、【0145】参照。)とは、実質的に同じであるとはいえないから、甲1発明の剥離剤層13の表面自由エネルギーが甲2記載の実施例3や比較例3の離型層の表面自由エネルギーと同程度であるとは認められない。また、甲1発明の剥離剤層13の材料(甲1の【0167】参照。)と本件の明細書に記載の実施例1~4の離型層の材料(【0116】、【0118】参照。)とも、実質的に同じであるとはいえない。
したがって、相違点3は実質的な相違点である。
そして、甲1発明と甲2に記載された感光性導電層転写用離型フィルムとは、離型フィルムという同一の技術分野に属するものであると認められるが、甲1発明は、グリーンシートの製造に用いられるものであるのに対し、甲2に記載された感光性導電層転写用離型フィルムは、感光性導電層を転写するために用いられるものであるところ、両者において、離型フィルムの離型層の表面自由エネルギーとして、同程度の数値範囲のものが求められていることを認めるに足る証拠はない。
仮に、両者において、求められる離型フィルムの離型層の表面自由エネルギーの数値範囲が同程度であるとしても、相違点3に係る本件発明の構成における数値範囲内のものは、甲2では、実施例3と比較例1だけであるところ、実施例3と比較例1は、感光性導電層の転写性が良くないもの(表1参照)であり、転写性が良くないことは離型層の剥離性が良くないこと(甲2の【0127】~【0131】参照)であるから、剥離フィルムの剥離性を良好とすることを課題(甲1の【0008】参照)とする甲1発明において、実施例3と比較例1の離型層の表面自由エネルギーの数値を適用することには、動機付けがあるとはいえず、むしろ阻害要因があるとさえいえる。
よって、甲1、2に接した当業者であっても、甲1発明において、相違点3に係る本件発明の構成とすることは、容易に想到し得たことであるとは認められない。
また、甲3~7にも、相違点3に係る本件発明の構成について、記載も示唆も見いだせない。
(3)小括
したがって、本件発明は、相違点1、2を検討するまでもなく、甲1発明、甲2に記載された事項及び甲3~7に示される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、申立理由は成り立たない。
第5 むすび
以上によれば、特許異議の申立理由及び証拠によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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