特許異議申立
2024-700106
位相差フィルムおよび位相差層付偏光板
- 審判番号
- 2024-700106
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-504922
- 登録番号
- 7322135
- 請求日
- 2024年02月07日
- 審決日
- 2025年03月10日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日東電工株式会社
- 【権利者代理人】籾井 孝文
- 【異議申立人】小林 瞳
- 審判長/審判官
- 審判長 神谷 健一
- 審判官 河原 正
- 審判官 宮澤 浩
- 分類
- P1651.113-YAA(G02B) / P1651.121-YAA(G02B) / P1651.536-YAA(G02B) / P1651.537-YAA(G02B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第5項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7322135号発明「位相差フィルムおよび位相差層付偏光板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7322135号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について、訂正することを認める。
特許第7322135号の請求項1~5、7~9に係る特許を維持する。
特許第7322135号の請求項6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7322135号の請求項1~9に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)2月28日(先の出願に基づく優先権主張 平成31年3月12日)を国際出願日とする出願であって、令和5年7月28日にその特許権の設定登録がなされ、同年8月7日に特許掲載公報が発行された。その特許についての特許異議申立人(以下「申立人」という。)による本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 6年 2月 7日 特許異議の申立て
令和 6年 4月23日付け取消理由通知書
令和 6年 7月 4日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和 6年10月 9日 申立人による意見書の提出
令和 6年11月 1日付け取消理由通知書<決定の予告>
令和 7年 1月10日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
(この訂正請求書による訂正の請求を以下
「本件訂正請求」という。)
なお、令和6年7月4日に提出された訂正請求書は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
また、本件訂正請求については、既に申立人に意見書の提出の機会が与えられている場合であって、訂正請求によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、事件において提出された全ての証拠や意見を踏まえて更に審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となると合議体は判断したため、特許法第120条の5第5項ただし書に規定する「特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情」がある場合に該当するから、改めて申立人に意見書を提出する機会を与えないこととした。すなわち、本件訂正請求による訂正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、取消理由が通知されていない令和6年7月4日に提出された訂正請求書による訂正後の特許請求の範囲の請求項6の記載と同じであり、その余の請求項の記載に相違はなく、本件訂正請求による訂正に係る請求の内容は、実質的に、申立人に意見書を提出する機会を与えた令和6年7月4日に提出された訂正請求書による訂正に係る請求の内容に包含されているといえることから、合議体は、申立人に改めて意見書を提出する機会を与えないこととした。
第2 本件訂正請求
1 請求の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、特許第7322135号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~9について訂正することを求める、というものである。
2 訂正の内容
本件訂正請求により特許権者が求める訂正の内容は、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の
「 前記ポリカーボネート系樹脂が、下記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、下記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、炭酸ジエステルに由来するカーボネート基と、からなり、下記一般式(II)において、R1が下記(IIb)で表される構造であり、n=0である、
位相差フィルム。」
との記載を、
「 前記ポリカーボネート系樹脂が、下記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、下記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、炭酸ジエステルに由来するカーボネート基と、からなり、下記一般式(II)において、R1が下記(IIb)で表される構造であり、n=0であり、
透湿度が100g/m2・24h以下である、
位相差フィルム。」
に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項2~5、7~9も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項7の
「 温度65℃かつ湿度90%の条件下において500時間保存した後の位相差変化が1.0%以下である、請求項1から6のいずれかに記載の位相差フィルム。」
との記載を、
「 温度65℃かつ湿度90%の条件下において500時間保存した後の位相差変化が1.0%以下である、請求項1から5のいずれかに記載の位相差フィルム。」
に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項8、9も同様に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項8の
「 請求項1から7のいずれかに記載の位相差フィルムで構成される位相差層と偏光子とを有する、位相差層付偏光板。」
との記載を、
「 請求項1から5および7のいずれかに記載の位相差フィルムで構成される位相差層と偏光子とを有する、位相差層付偏光板。」
に訂正する。
請求項8の記載を引用する請求項9も同様に訂正する。
(5)一群の請求項であること
本件訂正請求による訂正前の請求項1~9について、請求項2~9は請求項1の記載を引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、本件訂正請求による訂正は、一群の請求項1~9に対して請求されたものである。
3 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲の請求項1に記載の「位相差フィルム」について、「透湿度が100g/m2・24h以下である」とする要件を付加するものである。訂正事項1による訂正により、「位相差フィルム」の範囲を限定するといえるから、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
請求項1の記載を引用する請求項2~5、7~9についても同様である。
イ 新規事項の有無
本件特許の明細書の段落【0013】には、「上記位相差フィルムの透湿度は、好ましくは100g/m2・24h以下であり、より好ましくは90g/m2・24h以下である。下限は、例えば、1g/m2・24hであり得る。」と記載されている。
そうすると、訂正事項1による訂正は、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
請求項1の記載を引用する請求項2~5、7~9についても同様である。
ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の有無
前記アに記載したとおり、訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲を減縮するものである。
したがって、訂正事項1による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
請求項1の記載を引用する請求項2~5、7~9についても同様である。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2による訂正は、特許請求の範囲の請求項6を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
イ 新規事項の有無
前記アに記載したとおり、訂正事項2による訂正は、特許請求の範囲の請求項6を削除するものであるから、訂正事項2による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。
したがって、訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の有無
前記アに記載したとおり、訂正事項2による訂正は、特許請求の範囲を減縮するものである。
したがって、訂正事項2による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(3)訂正事項3及び訂正事項4について
ア 訂正の目的
訂正事項3及び訂正事項4による訂正は、請求項6の記載を引用していた請求項7及び請求項8について、請求項6が削除されたことにより、整合しなくなった従属関係を、整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。
請求項7の記載を引用する請求項8、9及び請求項8の記載を引用する請求項9についても同様である。
イ 新規事項の有無
前記アに記載したとおり、訂正事項3及び訂正事項4による訂正は、請求項6が削除されたことにより、整合しなくなった従属関係を、整合させるものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであるとは明らかである。
したがって、訂正事項3及び訂正事項4による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
請求項7の記載を引用する請求項8、9及び請求項8の記載を引用する請求項9についても同様である。
ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の有無
前記アに記載したとおり、訂正事項3及び訂正事項4による訂正は、請求項6が削除されたことにより、整合しなくなった従属関係を、整合させるものであるから、特許請求の範囲を拡張又は変更するものでないことは明らかである。
したがって、訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
請求項7の記載を引用する請求項8、9及び請求項8の記載を引用する請求項9についても同様である。
(4)まとめ
以上のとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、結論に記載のとおり、特許第7322135号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
本件特許の請求項1~5、7~9に係る発明(以下、請求項に付された番号に従い「本件特許発明1」等という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~5、7~9に記載された事項によって特定されるとおりの以下のものである。
「【請求項1】
ポリカーボネート系樹脂を含み、
Re(450)/Re(550)が0.98~1.03であり、
Re(550)が250nm~400nmであり、
前記ポリカーボネート系樹脂が、下記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、下記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、炭酸ジエステルに由来するカーボネート基と、からなり、下記一般式(II)において、R1が下記(IIb)で表される構造であり、n=0であり、
透湿度が100g/m2・24h以下である、
位相差フィルム。
【化1】
[図:0001423462000001.jpg]
HOCH2-R1-CH2OH (II)
【化2】
[図:0001423462000002.jpg]
【請求項2】
厚みが35μm以上である、請求項1に記載の位相差フィルム。
【請求項3】
下記異形加工性試験においてカットされた部分にクラックが生じない、請求項1または2に記載の位相差フィルム。
異形加工性試験:
前記位相差フィルムにCO2レーザーを3kWのエネルギーで照射し、該フィルムの流れ方向および流れ方向と垂直の方向にカットする。
【請求項4】
下記耐皮脂性試験において白化およびクラックが生じない、請求項1から3のいずれかに記載の位相差フィルム。
耐皮脂性試験:
前記位相差フィルムの片方の面に粘着剤を貼り付け、該粘着剤面をアルカリガラスの片面に貼り付けた後、オレイン酸溶液に、65℃、90%RHの条件下72時間浸漬させる。
【請求項5】
MIT回数が500回以上である、請求項1から4のいずれかに記載の位相差フィルム。」
「【請求項7】
温度65℃かつ湿度90%の条件下において500時間保存した後の位相差変化が1.0%以下である、請求項1から5のいずれかに記載の位相差フィルム。
【請求項8】
請求項1から5および7のいずれかに記載の位相差フィルムで構成される位相差層と偏光子とを有する、位相差層付偏光板。
【請求項9】
画像表示装置の視認側に用いられる、請求項8に記載の位相差層付偏光板。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 当審が通知した取消理由
本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)前の請求項1~5、7~9に係る特許に対して、当審が令和6年4月23日付け、及び、令和6年11月1日付けで通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
本件特許の請求項1~5、7~9に係る発明は、甲第9号証に記載された発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、請求項1~5、7~9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
なお、本件訂正前の請求項6に係る特許に対して、取消理由を通知していない。
(引用文献等一覧)
甲第9号証 :国際公開第2008/020636号(甲9)
甲第10号証:特開2017-22016号公報 (甲10)
甲第11号証:特開2016-105166号公報 (甲11)
甲第13号証:特開2014-182274号公報 (甲13)
甲第15号証:特開2017-40727号公報 (甲15)
甲第19号証:特開2015-212816号公報 (甲19)
文献1 :国際公開第2018/180729号
(当合議体注:甲9は主引用例である。甲10、甲11、甲13、甲15、甲19及び文献1は周知の技術事項を示す文献である。)
2 当審の判断
本件特許発明1は、本件訂正前の請求項6に係る発明において特定されていた要件を必須の要件とするものである。また、本件特許発明2~5、7~9は、本件特許発明1に、さらに限定を加えたものにあたる。そうすると、本件特許発明1~5、7~9が、当審で通知した取消理由を解消していることは明らかである。
したがって、本件特許発明2~5、7~9は、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、請求項1~5、7~9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものとはいえない。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人が特許異議申立書において、本件訂正前の請求項1~9に係る特許に対して主張する特許異議申立ての理由の概要は、以下のとおりである。
甲第1号証を主引用例とする新規性、進歩性
・本件訂正前の請求項1、8~9に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一である。
・本件訂正前の請求項1、8~9に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証~甲第8号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(証拠方法)
甲第1号証(特開2017-75254号公報)(甲1)
甲第2号証(国際公開第2006/107006号)
甲第3号証(特開2008-181090号公報)
甲第4号証(特開2017-97110号公報)
甲第5号証(特開2018-54640号公報)
甲第6号証(特開2018-120031号公報)
甲第7号証(国際公開第2016/132606号)
甲第8号証(特開2009-128836号公報)
甲第9号証を主引用例とする進歩性
・本件訂正前の請求項1~9に係る発明にかかる発明は、甲第9号証及び甲第10号証~甲第22号証の記載に基づいて当業者が容易に想到することができた発明である。
(証拠方法)
甲第9号証 :国際公開第2008/020636号(甲9)
甲第10号証:特開2017-22016号公報(甲10)
甲第11号証:特開2016-105166号公報(甲11)
甲第12号証:特開2018-155998号公報
甲第13号証:特開2014-182274号公報(甲13)
甲第14号証:特開2004-359900号公報
甲第15号証:特開2017-40727号公報(甲15)
甲第16号証:特開2018-128568号公報
甲第17号証:特開2008-225286号公報
甲第18号証:特開2017-111432号公報
甲第19号証:特開2015-212816号公報(甲19)
甲第20号証:特開2015-212818号公報
甲第21号証:国際公開第2017/098970号
甲第22号証:国際公開第2017/195506号
サポート要件
・本件訂正前の請求項1~9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
実施可能要件
・本件特許明細書は、当業者が本件訂正前の請求項3~9に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。
1 甲9を主引用例とする進歩性について
(1)申立人の主張
申立人は、特許異議申立書の第68~69頁において、甲第13号証及び甲第18号証の記載に言及し、「甲9-1発明及び甲9-2発明にかかる位相差フィルムに対して、透湿度を測定し、その値を本件特許発明6のF1要件の程度までに小さく設定することは当業者にとって何ら困難性はない。」と主張している。なお、ここで「F1」は、「透湿度が100g/m2・24h以下である」という要件である。
(2)当審の判断
ア 甲第9号証の記載事項
本件特許に係る出願における基礎出願前に、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献であって、申立人が主引用発明(甲9-1発明及び甲9-1発明)が記載されている文献として引用した甲第9号証には、以下の記載事項がある。なお、引用発明の認定や判断に用いた箇所に下線を追加した。また、摘記箇所について示す行番号は、甲第9号証の欄外に記載された行番号に基づく。
(ア)明細書第1頁第4~8行
「技術分野
本発明は、特定のジヒドロキシ化合物から誘導されるポリカーボネート樹脂及び光学フィルムに関し、特に、本発明の好ましい態様は、透明性、耐熱性、機械強度、水蒸気透過性および低光弾性に優れたポリカーボネート樹脂及び光学フィルムに関する。」
(イ)明細書第2頁第18行~第3頁第6行
「発明の開示
本発明は、上記従来の問題の少なくとも1つを解決したポリカーボネート樹脂及びこれを用いた光学フィルムを提供することを課題とする。更に、本発明は、好ましい態様として、光弾性係数が低く、水蒸気透過性、透明性、耐熱性、機械強度および成形加工性に優れたポリカーボネート樹脂及びこれを用いた光学フィルムを提供することを課題とする。
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記式(1)で表される繰り返し単位と、下記一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂及びこれを用いた光学フィルムが上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
[図:0001423462000003.jpg]
[図:0001423462000004.jpg]
(式中、Yは炭素数4~20シクロアルキレン基または下記一般式(3)で表される構造である。)
[図:0001423462000005.jpg]
(一般式(3)において、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ、水素原子または炭素数1~5の1価のアルキル基である。)」
(ウ)明細書第3頁第7~16行
「 本発明の好ましい態様によれば、光弾性係数が低く、水蒸気透過性及び吸水率を制御したポリカーボネート樹脂および光学フィルムの製造が可能である。本発明の位相差フィルムを偏光板と組み合わせることにより、視野角拡大フィルム、円偏光板や楕円偏光板を形成することができる。視野角拡大フィルムは液晶表示装置に使用でき、円偏光板は反射防止フィルムとして、有機または無機エレクトロルミネセンス素子やタッチパネル、プラズマディスプレイ、CRT、液晶表示装置等に好適に用いることができる。また偏光板は、通常ポリビニルアルコール(以下、PVA)フィルムなどの偏光層とTACフィルムの保護層とから成る積層構造であるが、本発明の位相差フィルムを使用すれば、TACの保護層を介せず、直接偏光層であるPVAとの貼りあわせが可能となる。」
(エ)明細書第4頁第19~27行
「 本発明において、式(1)で表される構成単位(A)および一般式(2)で表される構成単位(B)のモル比(A/B)は、99/1から1/99であり、より好ましくは90/10から20/80であり、最も好ましくは80/20から30/70である。モル比(A/B)が、90/10より高いと吸水率が高くなるため、湿度によるフィルムの寸法変化が大きく均一な位相差を保つのが難しくなる。モル比(A/B)が、20/80より低いと、水蒸気透過性の低下及びガラス転移温度が低く耐熱性が低下する。
上記の範囲内でモル比(A/B)を変えることで、水蒸気透過性及び吸水率を所望の性能に制御することができる。」
(オ)明細書第6頁第35行~第7頁第1行
「 本発明の光学フィルムの水蒸気透過率は、偏光板保護フィルムとして使用した場合、気泡の発生及びカールの発生を防止するため好ましくは100g/m2/day/25μm以上であり、より好ましくは150g/m2/day/25μm以上である。」
(カ)明細書第11頁第34行~第12頁第17行
「〈実施例1〉
イソソルビド(ISB)(式(4)で表されるジヒドロキシ化合物)5.846kg(40モル)とトリシクロデカンジメタノール(TCDDM)(一般式(5)で表されるジヒドロキシ化合物)0.079kg(0.4モル)、ジフェニルカーボネート(DPC)(炭酸ジエステル)8.869kg(41.40モル)、および炭酸水素ナトリウム0.00123g(1.46×10-5モル)を攪拌機および留出装置付きの50リットル反応器に入れ、窒素雰囲気760Torrの下1時間かけて215℃に加熱し撹拌した。その後、30分かけて減圧度を150Torrに調整し、215℃、150Torrの条件下で40分間保持しエステル交換反応を行った。さらに37.5℃/hrの速度で240℃まで昇温し、240℃、150Torrで10分間保持した。その後、10分かけて120Torrに調整し、240℃、120Torrで70分間保持した。その後、10分かけて100Torrに調整し、240℃、100Torrで10分間保持した。更に40分かけて1Torr以下とし、240℃、1Torr以下の条件下で30分間撹拌下重合反応を行った。反応終了後、反応器内に窒素を吹き込み加圧にし、生成したポリカーボネート樹脂をペレタイズしながら抜き出した。得られたポリカーボネート樹脂の分子量(Mw)=71,400、Tg=165℃であった。
得られたポリカーボネート樹脂を用い、厚さ約100μmのフィルムを作製した。厚さ約100μmフィルムを175℃で一軸延伸を行い、厚さ65μmの延伸フィルムを得た。物性測定結果を表-1に示す。」
(キ)明細書第12頁第19~24行
「〈実施例2〉
実施例1において、ISB 2.923kg(20モル)とトリシクロデカンジメタノール(TCDDM)3.926kg(20モル),DPC8.869kg(41.4モル)を使用し、延伸温度を115℃に変更する以外は、実施例1と同様に行い厚さ68μmの延伸フィルムを得た。物性測定結果を表-1に示す。」
(ク)明細書第13頁表-1
「
[図:0001423462000006.jpg]
」
イ 甲第9号証に記載された発明
(ア)甲9-1発明
前記ア(カ)及び(ク)に基づけば、甲第9号証には、実施例1に記載された延伸フィルムの発明として、次の発明(以下「甲9-1発明」という。)が記載されていると認められる。
「イソソルビド(ISB)40モルとトリシクロデカンジメタノール(TCDDM)0.4モル、ジフェニルカーボネート(DPC)(炭酸ジエステル)41.40モル、および炭酸水素ナトリウム1.46×10-5モルを重合反応を行って得たポリカーボネート樹脂を用い、厚さ約100μmのフィルムを作製し、175℃で一軸延伸を行って得た、水蒸気透過率が1270g/m2/day/25μmであり、厚さ65μmの延伸フィルム。」
(イ)甲9-2発明
前記ア(カ)~(ク)に基づけば、甲第9号証には、実施例2に記載された延伸フィルムの発明として、次の発明(以下「甲9-2発明」という。)が記載されていると認められる。
「イソソルビド(ISB)20モルとトリシクロデカンジメタノール(TCDDM)20モル、ジフェニルカーボネート(DPC)(炭酸ジエステル)41.4モル、および炭酸水素ナトリウム1.46×10-5モルを重合反応を行って得たポリカーボネート樹脂を用い、厚さ約100μmのフィルムを作製し、115℃で一軸延伸を行って得た、水蒸気透過率が500g/m2/day/25μmであり、厚さ68μmの延伸フィルム。」
ウ 対比
本件特許発明1と甲9-1発明を対比する。
(ア)ポリカーボネート樹脂
甲9-1発明の「ポリカーボネート樹脂」は、本件特許発明1の「ポリカーボネート系樹脂」に相当する。
ここで、甲9-1発明における「ポリカーボネート樹脂」は、「イソソルビド(ISB)」、「トリシクロデカンジメタノール(TCDDM)」、「ジフェニルカーボネート(DPC)(炭酸ジエステル)」「および炭酸水素ナトリウム」を重合反応を行って得たものであるから、その組成からみて、「イソソルビド(ISB)」に由来する構造単位と、「トリシクロデカンジメタノール(TCDDM)」に由来する構造単位と、「ジフェニルカーボネート(DPC)(炭酸ジエステル)」に由来するカーボネート基と、からなるものといえる。
そして、
上記「イソソルビド(ISB)」は、本件特許発明1の「下記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物」「【化1】
[図:0001423462000007.jpg]
」
に相当し、
上記「トリシクロデカンジメタノール(TCDDM)」は、本件特許発明1の「下記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物」「下記一般式(II)においてR1が下記(IIb)で表される構造であり、n=0である」
「HOCH2-R1-CH2OH (II)
【化2】
[図:0001423462000008.jpg]
」
に相当し、
上記「ジフェニルカーボネート(DPC)(炭酸ジエステル)」は、本件特許発明1の「炭酸ジエステル」に相当する。
してみれば、甲9-1発明における「ポリカーボネート樹脂」は、本件特許発明1の「下記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、下記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、炭酸ジエステルに由来するカーボネート基と、からなり、下記一般式(II)において、R1が下記(IIb)で表される構造であり、n=0」であるとの要件を満たす。(当合議体注:式(4)、一般式(II)、(IIb)は上述の通りである。以下、同様に化学式を省略することがある。)
(イ)Re(450)/Re(550)
引用発明1の「延伸フィルム」の「位相差の波長分散特性」「Re(450)/Re(550)」(表-1)は、「1.022」であるから、本件特許発明1の「Re(450)/Re(550)が0.98~1.03であり」との要件を満たす。
(ウ)一致点及び相違点
以上より、本件特許発明1と甲9-1発明とは、
「ポリカーボネート系樹脂を含み、
Re(450)/Re(550)が0.98~1.03であり、
前記ポリカーボネート系樹脂が、下記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、下記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、炭酸ジエステルに由来するカーボネート基と、からなり、下記一般式(II)において、R1が下記(IIb)で表される構造であり、n=0である、
位相差フィルム。」
である点で一致し、以下の点で相違、又は一応相違する。
[相違点1-1]
Re(550)の値が、本件特許発明1の「位相差フィルム」では「Re(550)が250nm~400nm」であるのに対し、甲9-1発明の「延伸フィルム」では明らかでない点。
[相違点1-2]
透湿度が、本件特許発明1は「100g/m2・24h以下」であるのに対し、甲9-1発明は、「水蒸気透過率が1270g/m2/day/25μm」である点。
エ 判断
事案に鑑みて、[相違点1-2]について検討する。
甲9-1発明の「延伸フィルム」は、厚さが「65μm」であることを勘案したとしても、甲9-1発明の「延伸フィルム」の水蒸気透過率が、「100g/m2・24h以下」となるとはいえない。したがって、上記[相違点1-2]は、実質的な相違点であるといえる。
また、甲第9号証の前記記載事項ア(イ)に基づけば、甲9-1発明は、「水蒸気透過性」に優れたポリカーボネート樹脂及びこれを用いた光学フィルムを提供することを課題としている。
そうすると、当業者が、甲9-1発明の水蒸気透過率について、「100g/m2・24h以下」とする動機付けがあったということができない。
したがって、甲9-1発明について、その水蒸気透過率を「100g/m2・24h以下」の範囲とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえないから、本件特許発明1は、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
なお、甲9-2発明を主引用発明とした場合も、同様のことがいえる。
(3)まとめ
以上より、本件特許発明1は、甲第9号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえないから、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものとはいえない。
また、本件特許発明2~5、7~9は、本件特許発明1に、更に限定を加えたものにあたる。そうすると、本件特許発明1と同じ理由により、本件特許の請求項2~5、7~9に係る特許も、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものとはいえない。
2 甲1を主引用例とする新規性、進歩性について
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1は、本件訂正前の請求項1に係る発明に、当該請求項1の従属項である請求項6において特定されていた「透湿度が100g/m2・24h以下である」とする要件を付加したものにあたる。本件特許発明1は、その発明特定事項からみて、本件訂正前の請求項6に係る発明と同一の発明である。そして、申立人は、本件訂正前の請求項6に係る発明に対し、甲第1号証を主引用例とする新規性、進歩性に係る理由を申立てていない。
そうすると、本件訂正により、甲第1号証を主引用例とする新規性及び進歩性に係る申立ての対象が存在しないこととなったから、申立人による当該主張を採用することができない。
(2)本件特許発明8~9について
本件特許発明8~9は、本件特許発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものである。
そうすると、本件特許発明8~9も、本件特許発明6と同様に、甲第1号証を主引用例とする新規性及び進歩性に係る申立ての対象でないことは明らかであるから、申立人による当該主張を採用することができない。
3 サポート要件について
(1)申立人の主張
申立人は、特許異議申立書の第72~73頁において、「本件特許発明1においては、ポリカーボネート樹脂に含まれる各構成単位及びカーボネート基の含有割合については何ら特定されていない」、「本件特許発明2~9についても、ポリカーボネート樹脂に含まれる各構成単位の含有割合は特定されていない」とし、「文言上、式(4)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位の含有量が極めて少ない態様や、一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の含有量が極めて少ない態様が包含されている」として記載している。そして、「本件特許発明の出願時の技術常識に照らしても、本件特許明細書の実施例に記載された1種類の組成が本件特許発明1の課題を解決できることをもって、本件特許発明1に包含される他の組成が本件特許発明の課題を解決できるとまでは言えない。」と主張している。
(2)合議体の判断
ア 本件特許発明1が解決しようとする課題
本件特許の明細書における段落【0004】の記載に基づけば、本件特許発明1が解決しようとする課題は、「白化およびクラックが抑制され、かつ、優れた耐折性を有する位相差フィルムおよびそのような位相差フィルムを備える位相差層付偏光板を提供すること」にあるといえる。
イ 本件特許の明細書の記載
本件特許の明細書に開示された実施例を参照すれば、樹脂フィルムとして「シクロオレフィン系樹脂フィルム」を用いた比較例1では、耐皮脂性試験及びMIT試験の評価が「×」であり、樹脂フィルムとして「液晶塗工トリアセチルセルロースフィルム」を用いた比較例2では、MIT試験の評価が「×」であるのに対し、樹脂フィルムとして、式(4)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、炭酸ジエステルに由来するカーボネート基と、からなるポリカーボネート樹脂フィルムを用いた実施例1~6では、耐皮脂性試験及びMIT試験の評価がいずれも「○」とされている。
ウ 当業者の理解
本件特許の明細書に開示された実施例に基づけば、当業者は、本件特許発明1において特定される要件を満たした位相差フィルムが、上記課題を解決できるものと理解できる。そして、実施例に用いられたポリカーボネート樹脂フィルムの各構成単位の含有割合は、特定のものであるものの、その含有割合を変化させた場合において、耐皮脂性試験及びMIT試験の評価が変化するとしても、比較例が示す評価より劣るものとなるということはできない。
(3)まとめ
以上より、本件特許発明1は、当業者が課題を解決できると理解できるように記載されたものといえるから、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明である。本件特許発明2~5、7~9についても同様である。
したがって、本件特許の請求項1~5、7~9に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえない。
4 実施可能要件について
(1)申立人の主張
申立人は、特許異議申立書の第75~77頁において、「たとえ当業者といえども、実施例に記載されたポリカーボネート樹脂以外のポリカーボネート樹脂を用いて本件特許発明6のF1要件や本件特許発明7のG1要件を満たす位相差フィルムを得ようとする場合には、ポリカーボネート樹脂の組成、分子量及び製造条件などの広範なパラメータから試行錯誤的に適切なパラメータを選択せざるを得ない。そして、このようなパラメータを見出すためには、当業者に期待し得る程度を越える試行錯誤や複雑高度な実験を行う必要がある。」とし、「本件特許明細書は、本件特許発明6及び本件特許発明7を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでなく、特許法第36条第4項第1項の規定を満たさない。」(合議体注:特許異議申立書に記載された「本件特許発明6」は、本件訂正後の請求項1に係る発明に相当する。)と主張している。
また、申立人は、令和6年10月9日付けの意見書の第10頁下から第3行~第11頁第18行において、「本件特許明細書には、…実施例の組成以外の組成を有するポリカーボネート樹脂は、実施例の製造条件以外の製造条件で製造されたポリカーボネート樹脂を用いた場合に訂正特許発明6において特定された透湿度の範囲を満たす位相差フィルムが得られるかについては一切記載されていないばかりか、位相差フィルムの透湿度を調整する技術的手段に関する具体的な記載も一切ない。・・・たとえ当業者といえども、本件特許明細書の記載及び技術常識に基づいて訂正特許発明6に係る位相差フィルムを得ようとする場合には当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤や複雑高度な実験を行う必要がある。」(合議体注:同意見書に記載された「訂正特許発明6」は、本件訂正後の請求項1に係る発明に相当する。)と主張している。
さらに、申立人は、特許異議申立書の第73~75頁において、本件特許発明3~5の属する技術分野は、物の有する機能、特性等からその物の構造等を予測するのが困難な技術分野であると言え、特許発明3~5に係る位相差フィルムを得ようとする場合には当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤や複雑高度な実験を行う必要がある旨を主張している。
(2)合議体の判断
本件特許の明細書の段落【0074】~【0080】には、実施例として、「異形加工試験においてカットされた部分にクラックが生じ」ず(異形加工性試験の結果が○)、「耐皮脂性試験において白化およびクラックが生じ」ず(耐皮脂性試験の結果が○)、「MIT回数が500回以上であ」り(MIT試験結果が○)、透湿度が76~97g/m2・24hを示し、位相差変化が0.8~1.0である、位相差フィルムの作製方法が開示されている。当業者であれば、当該記載を参照して、本件特許発明1、3~5、7~9を実施できるものといえる。したがって、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が、本件特許発明1、3~5、7~9を実施することができる程度に、明確かつ十分に記載されたものといえる。
さらに言うと、申立人は、透湿度が100g/m2・24h以下となる位相差フィルムを作製するにあたり、試行錯誤的に適切なパラメータを選択せざるを得ないと主張し、当業者に期待し得る程度を越える試行錯誤や複雑高度な実験を行う必要があると主張している。しかし、実施例1~6には、予熱温度、延伸温度、延伸倍率を変化させることにより、透湿度が変化することが示されている。これらの記載を参酌すれば、当業者は、これらのパラメータを調整することにより、位相差フィルムの透湿度を100g/m2・24h以下となるように調整することができると理解する。
(3)まとめ
以上より、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が、本件特許発明1,3~5、7~9を実施することができる程度に、明確かつ十分に記載されたものである。
したがって、本件特許の請求項1、3~5、7~9に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、取消理由に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許発明1~5、7~9に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件特許発明1~5、7~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項6に係る特許は、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てのうち、請求項6に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700106