特許異議申立
2022-700084
合わせガラス用中間膜、合わせガラス用中間膜の製造方法及び合わせガラス
- 審判番号
- 2022-700084
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-111301
- 登録番号
- 6912520
- 請求日
- 2022年02月01日
- 審決日
- 2023年01月10日
- 公報発行日
- 2023年04月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】積水化学工業株式会社
- 【権利者代理人】田口 昌浩
- 【異議申立人】弁理士法人 朝日奈特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 宮澤 尚之
- 審判官 正 知晃
- 審判官 後藤 政博
- 分類
- P1651.121-YAA(C03C) / P1651.536-YAA(C03C) / P1651.537-YAA(C03C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6912520号発明「合わせガラス用中間膜、合わせガラス用中間膜の製造方法及び合わせガラス」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6912520号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、5~11〕、〔3、4〕について訂正することを認める。
特許第6912520号の請求項1~11に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件特許第6912520号(以下、「本件特許」という。)に係る出願は、2015年(平成27年)2月25日(優先権主張 平成26年2月25日(JP)日本国)を国際出願日とする特願2015-512942号の一部を令和1年6月14日に特願2019-111301号として新たな特許出願としたものであって、令和3年7月12日にその請求項1~11に係る発明について特許権の設定登録がされ、同年8月4日に特許掲載公報が発行された。
その後、その請求項1~11に係る特許に対して、令和4年2月1日に特許業務法人朝日奈特許事務所(令和4年9月12日受付の名称変更届により、弁理士法人朝日奈特許事務所に変更。以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。
本件特許異議申立事件における以降の手続の経緯は、次のとおりである。
令和4年 7月 5日付け:取消理由通知
同年 9月 7日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年10月20日 :申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和4年9月7日提出の訂正請求書における訂正請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、次の訂正事項1、2からなる(下線部は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「合わせガラス用中間膜。」
とあるのを、
「合わせガラス用中間膜(但し、前記プラスチックシートであるプラスチック層が、色剤を含有する中間層と、実質的に色剤を含有しない厚さ3.0~30μmの両最外層とを含む、少なくとも3層からなる共押出積層二軸延伸ポリエステルフィルムであるものを除き、さらに、前記第1の樹脂層及び第2の樹脂層の少なくとも1層が、35℃を超えるガラス転移温度を有する可塑化ポリビニルブチラール接着層であるものを除き、さらに、前記プラスチックシートであるプラスチック層が、0.075mm(3ミル)を超える厚さを有するポリエチレンテレフタレートシートであるものを除く。)。」に訂正する。(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、5~11も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に、
「合わせガラス用中間膜の製造方法。」
とあるのを、
「合わせガラス用中間膜の製造方法(但し、前記プラスチックシートであるプラスチック層が、色剤を含有する中間層と、実質的に色剤を含有しない厚さ3.0~30μmの両最外層とを含む、少なくとも3層からなる共押出積層二軸延伸ポリエステルフィルムであるものを除き、さらに、前記第1の樹脂層及び第2の樹脂層の少なくとも1層が、35℃を超えるガラス転移温度を有する可塑化ポリビニルブチラール接着層であるものを除き、さらに、前記プラスチックシートであるプラスチック層が、0.075mm(3ミル)を超える厚さを有するポリエチレンテレフタレートシートであるものを除く。)。」に訂正する。(請求項3の記載を引用する請求項4も同様に訂正する。)
(3)一群の請求項について
請求項1の記載を請求項2、5~11が引用する関係にあるから、請求項1、2、5~11は一群の請求項であるところ、本件訂正事項1に係る特許請求の範囲の訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、この一群の請求項1、2、5~11を訂正の単位として請求されたものである。
また、請求項3の記載を請求項4が引用する関係にあるから、請求項3、4は一群の請求項であるところ、本件訂正事項2に係る特許請求の範囲の訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、この一群の請求項3、4を訂正の単位として請求されたものである。
2 訂正要件(訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張
・変更の存否について)の判断
(1)訂正事項1について
訂正事項1による訂正は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1の「合わせガラス用中間膜」を構成する「プラスチックシートであるプラスチック層」が「色剤を含有する中間層と、実質的に色剤を含有しない厚さ3.0~30μmの両最外層とを含む、少なくとも3層からなる共押出積層二軸延伸ポリエステルフィルムであるもの」を除き、「第1の樹脂層及び第2の樹脂層の少なくとも1層」が「35℃を超えるガラス転移温度を有する可塑化ポリビニルブチラール接着層であるもの」を除き、さらに、「プラスチックシートであるプラスチック層」が「0.075mm(3ミル)を超える厚さを有するポリエチレンテレフタレートシートであるもの」を除く、いわゆる除くクレームである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2による訂正は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項3の「合わせガラス用中間膜の製造方法」において用いられる「プラスチックシートであるプラスチック層」が「色剤を含有する中間層と、実質的に色剤を含有しない厚さ3.0~30μmの両最外層とを含む、少なくとも3層からなる共押出積層二軸延伸ポリエステルフィルムであるもの」を除き、「第1の樹脂層及び第2の樹脂層の少なくとも1層」が「35℃を超えるガラス転移温度を有する可塑化ポリビニルブチラール接着層であるもの」を除き、さらに、「プラスチックシートであるプラスチック層」が「0.075mm(3ミル)を超える厚さを有するポリエチレンテレフタレートシートであるもの」を除く、いわゆる除くクレームである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
なお、特許異議申立ては、全請求項についてされているので、訂正事項1、2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1、2、5~11〕、〔3、4〕について訂正することを認める。
第3 本件発明について
本件訂正請求が認められることは前記第2に記載のとおりであるので、本件訂正請求により訂正された請求項1~11に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」などといい、これらをまとめて「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
プラスチックシートであるプラスチック層と、前記プラスチック層の第1の表面に積層された第1の樹脂層とを備え、
前記プラスチック層の前記第1の表面とは反対の第2の表面に積層された第2の樹脂層を備えるか、又は備えておらず、
前記プラスチックシートである前記プラスチック層の前記第1の表面と前記第1の表面とは反対の前記第2の表面との各ぬれ張力が40mN/m以上になるように、前記第1の表面と前記第2の表面とが、表面処理剤で被覆されているか、又は表面処理により改質されており、
前記第1の樹脂層が、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含み、
中間膜が前記第2の樹脂層を備える場合に、前記第2の樹脂層が、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む、合わせガラス用中間膜(但し、前記プラスチックシートであるプラスチック層が、色剤を含有する中間層と、実質的に色剤を含有しない厚さ3.0~30μmの両最外層とを含む、少なくとも3層からなる共押出積層二軸延伸ポリエステルフィルムであるものを除き、さらに、前記第1の樹脂層及び第2の樹脂層の少なくとも1層が、35℃を超えるガラス転移温度を有する可塑化ポリビニルブチラール接着層であるものを除き、さらに、前記プラスチックシートであるプラスチック層が、0.075mm(3ミル)を超える厚さを有するポリエチレンテレフタレートシートであるものを除く。)。
【請求項2】
前記プラスチックシートである前記プラスチック層の前記第1の表面と前記第1の表面とは反対の前記第2の表面との各ぬれ張力が43mN/m以上になるように、前記第1の表面と前記第2の表面とが、表面処理剤で被覆されているか、又は表面処理により改質されている、請求項1に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項3】
合わせガラス用中間膜の製造方法であって、
第1の表面と前記第1の表面とは反対の第2の表面との各ぬれ張力が40mN/m未満である処理前プラスチックシートを用いて、得られるプラスチックシートであるプラスチック層の前記第1の表面と前記第2の表面との各ぬれ張力が40mN/m以上になるように、前記第1の表面と前記第2の表面とを、表面処理剤で被覆するか、又は表面処理により改質することで、プラスチックシートであるプラスチック層を得る工程と、
前記プラスチックシートである前記プラスチック層と、前記プラスチック層の前記第1の表面に積層された第1の樹脂層とを備え、前記プラスチック層の前記第1の表面とは反対の前記第2の表面に積層された第2の樹脂層を備えるか、又は備えておらず、前記第1の樹脂層が、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含み、中間膜が前記第2の樹脂層を備える場合に、前記第2の樹脂層が、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む合わせガラス用中間膜を得る工程とを備える、合わせガラス用中間膜の製造方法(但し、前記プラスチックシートであるプラスチック層が、色剤を含有する中間層と、実質的に色剤を含有しない厚さ3.0~30μmの両最外層とを含む、少なくとも3層からなる共押出積層二軸延伸ポリエステルフィルムであるものを除き、さらに、前記第1の樹脂層及び第2の樹脂層の少なくとも1層が、35℃を超えるガラス転移温度を有する可塑化ポリビニルブチラール接着層であるものを除き、さらに、前記プラスチックシートであるプラスチック層が、0.075mm(3ミル)を超える厚さを有するポリエチレンテレフタレートシートであるものを除く。)。
【請求項4】
得られるプラスチックシートであるプラスチック層の前記第1の表面と前記第2の表面との各ぬれ張力が43mN/m以上になるように、前記第1の表面と前記第2の表面とを、表面処理剤で被覆するか、又は表面処理により改質する、請求項3に記載の合わせガラス用中間膜の製造方法。
【請求項5】
前記第1の樹脂層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は29モル%以上であり、
中間膜が前記第2の樹脂層を備える場合に、前記第2の樹脂層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は29モル%以上である、請求項1又は2に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項6】
前記第2の樹脂層を備える、請求項1、2及び5のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項7】
前記第1の樹脂層が紫外線遮蔽剤を含む、請求項1、2、5及び6のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項8】
前記第2の樹脂層を備え、
前記第2の樹脂層が紫外線遮蔽剤を含む、請求項1、2及び5~7のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項9】
前記第1の樹脂層が酸化防止剤を含む、請求項1、2及び5~8のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項10】
前記第2の樹脂層を備え、
前記第2の樹脂層が酸化防止剤を含む、請求項1、2及び5~9のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項11】
第1の合わせガラス部材と、
第2の合わせガラス部材と、
請求項1、2及び5~10のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜とを備え、
前記合わせガラス用中間膜が、前記第1の合わせガラス部材と前記第2の合わせガラス部材との間に配置されている、合わせガラス。」
第4 取消理由の概要
令和4年7月5日付けで当審が通知した取消理由は、要するに、設定登録時の特許請求の範囲の請求項1~11に係る特許につき、申立人が提出した甲第1号証~甲第3号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲3」という。)に基づいて、次の点を指摘したものである。
取消理由1
請求項1~11に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲1、甲2に記載された事項ないし周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、請求項1~11に係る発明は、甲3に記載された発明及び甲1~甲3に記載された事項ないし周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、請求項1~11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
甲1:特開2012-224489号公報
甲2:特開2013-6723号公報
甲3:特表2003-516921号公報
第5 取消理由についての当審の判断
上記第3に記載した本件訂正後の特許請求の範囲の記載に照らし、改めて、上記第4に記載した取消理由の適否について検討する。
1 甲1~甲3の記載事項
(1)甲1の記載事項
(当審注:「…」は当審による省略を意味する。以下同様。)。
ア 「【請求項1】
色剤を含有する中間層と、実質的に色剤を含有しない厚さ3.0~30μmの両最外層とを含む、少なくとも3層からなる共押出積層二軸延伸ポリエステルフィルムであり、フィルムヘーズが5.0%以下であり、フィルム流れ方向(MD)およびフィルム幅方向(TD)の180℃で5分間の加熱収縮率の差の絶対値が1.0%以下であることを特徴とする合わせガラス用着色積層二軸延伸ポリエステルフィルム。」
イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記実状に鑑みなされたものであって、その解決課題は、加熱時にフィルム表面への色剤の析出が抑制された透明感と遮光性を有し、曲面ガラスに積層しても光学歪みが発生しない二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を有する二軸延伸ポリエステルフィルムによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、色剤を含有する中間層と、実質的に色剤を含有しない厚さ3.0~30μmの両最外層とを含む、少なくとも3層からなる共押出積層二軸延伸ポリエステルフィルムであり、フィルムヘーズが5.0%以下であり、フィルム流れ方向(MD)およびフィルム幅方向(TD)の180℃で5分間の加熱収縮率の差の絶対値が1.0%以下であることを特徴とする合わせガラス用着色積層二軸延伸ポリエステルフィルムに存する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、建物や自動車の窓などの遮光とガラス飛散防止や防犯に役立つ、フィルム加熱時の色剤析出防止に優れたフィルム生産およびフィルム加工ラインの取り扱いに悪影響を与えない生産性に優れた合わせガラス用着色積層二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することができ、本発明の工業的価値は高い。
…
【0025】
本発明のフィルムは透明樹脂を介して、ガラスに接着されることが一般的である。透明樹脂は、例えばポリビニルブチラール(PVB)またはエチレン―酢酸ビニル共重合体(EVA)が用いられるが、これら透明樹脂との接着性を向上させるため、本発明のフィルム表面にコロナ処理を行うことが好ましい。コロナ処理されたフィルム表面のぬれ指数は52dyne/cm以上が好ましい。」
ウ 「【0036】
(6)合わせガラスの光学歪み
曲面を持った2枚のガラス板の間にポリビニルブチラールフィルムおよびポリエステルフィルムを挟み込み、ガラス温度80~100℃、減圧度650mmHg以上で予備圧着し、次いで、温度120~150℃、圧力10~15kg/cm2のオートクレーブ中で20~40分間の本接着を行うことにより、合わせガラスとした。」
(2)甲2の記載事項
ア 「【請求項1】
ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第1の層と、
前記第1の層の一方の面に積層されており、かつポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第2の層とを備え、
前記第1の層が赤外線吸収剤を含有するか、又は前記第2の層が赤外線吸収剤を含有し、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が50重量部以上であり、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも低く、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差が、9.2モル%以下であり、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差が、8.5モル%を超え、9.2モル%以下である場合には、前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%以下である、合わせガラス用中間膜。
…
【請求項17】
前記第1の層の他方の面に積層されており、かつポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第3の層をさらに備え、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が、前記第3の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも低く、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と前記第3の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差が、9.2モル%以下であり、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と前記第3の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差が、8.5モル%を超え、9.2モル%以下である場合には、前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%以下である、請求項1~16のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。」
イ 「【0058】
表面層である上記第2,第3の層に含まれている上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率の好ましい下限は26モル%、より好ましい下限は27モル%、更に好ましい下限は28モル%、特に好ましい下限は29モル%、好ましい上限は35モル%、より好ましい上限は33モル%、更に好ましい上限は32モル%、特に好ましい上限は31.5モル%である。上記水酸基の含有率が上記好ましい下限を満たすと、中間膜の接着力をより一層高くすることができる。上記水酸基の含有率が上記好ましい上限を満たすと、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱性をより一層高めることができる。」
ウ 「【0147】
(紫外線遮蔽剤)
本発明に係る合わせガラス用中間膜では、上記第1の層が紫外線遮蔽剤を含有するか、又は上記第2の層が紫外線遮蔽剤を含有することが好ましく、上記第2の層が紫外線遮蔽剤を含有することがより好ましい。上記第1の層と上記第2の層との双方が、紫外線遮蔽剤を含有していてもよい。上記第3の層は、紫外線遮蔽剤を含有することが好ましい。」
エ 「【0165】
(酸化防止剤)
本発明に係る合わせガラス用中間膜は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記第1の層は酸化防止剤を含有することが好ましく、上記第2,第3の層は酸化防止剤を含有することが好ましい。」
(3)甲3の記載事項
ア 「【請求項1】 本質的に可塑化ポリビニルブチラール接着層の層間のポリエチレンテレフタレートシートからなる合わせガラスを接着するための複合ラミネート中間膜であって、前記ポリビニルブチラール接着層の少なくとも1層が35℃を超えるガラス転移温度を有することを特徴とする前記中間膜。
…
【請求項9】 順に、(a)第1のガラスシート、(b)第1の可塑化ポリビニルブチラール接着層、(c)0.075mm(3ミル)を超える厚さを有するポリエチレンテレフタレートシート、(d)第2の可塑化ポリビニルブチラール接着層、及び(e)第2のガラスシートを含み、約350ニュートン/cmを超える最大曲げ弾性率を示すことを特徴とする改善された剛性を有する合わせガラス。」
イ 「【0006】
本発明の目的は、例えば建築用及び自動車用窓ガラスのような安全ガラス分野で使用するためのより高い耐侵入性を有する合わせガラスを提供することである。この目的は、より高い合わせガラス剛性を与える硬質なプラスチックシート及び/または補強PVB接着層を含む複合中間膜を使用することにより達成される。
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、より高い合わせガラス剛性を有する耐侵入性合わせガラスを製造する際に使用するための複合ラミネート中間膜を提供する。前記合わせガラスは、高剛性の可塑化PVB層を少なくとも1層有する中間膜を含む。本発明の1つの態様において、可塑化PVBの高剛性を可塑化PVBのガラス転移温度(Tg)が高い、例えば市販品の典型的な値よりも約2~3℃高いことにより示される可塑剤の減量により付与することが有利である。例えば、自動車分野では、可塑化PVBシートが通常約30~33℃のTgを有する場合には、本発明の高剛性PVBは少なくとも35℃のTgを有する。可塑化PVBの剛性が、PVBを含む合わせガラスの曲げ弾性率に寄与する。本発明の合わせガラスの高い曲げ弾性率は、合わせガラスに打ち込んだラムヘッドに対する耐性により示される。本発明の合わせガラスは、好ましくは少なくとも350ニュートン/センチメーター(N/cm)の最大曲げ弾性率を有する。
…
【0009】
本発明の別の態様は、少なくとも350N/cmの高剛性を示す本発明の複合中間膜を含む耐侵入性合わせガラスを提供する。」
ウ 「【0019】
前記シートのPVB樹脂は、通常樹脂100部あたり約20~80部、より一般的には25~45部の可塑剤で可塑化されている。通常使用されている可塑剤は多塩基酸または多価アルコールのエステルである。好適な可塑剤はトリエチレングリコールジ(2-エチルブチレート)、トリエチレングリコールジ(2-エチルヘキサノエート)、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、ジヘキシルアジペート、ジオクチルアジペート、ヘプチルアジペートとノニルアジペートの混合物、ジブチルセバケート、高分子可塑剤(例えば、油変性セバシン酸アルキド)、米国特許第3,841,890号明細書に記載されているホスフェートとアジペートの混合物、及び米国特許第4,144,217号明細書に記載されているアジペート及びアルキルベンジルフタレートである。米国特許第5,013,779号明細書に記載されているC4-9アルキルアルコール及びシクロC4-10アルコールから製造される混合アジペートも好ましい。C6-8アジペート(例えば、ヘキシルアジペート)が好ましい可塑剤である。より好ましい可塑剤はエチレングリコールジ(2-エチルヘキサノエート)である。可塑剤の使用量はPVBの剛性を向上させ、コントロールするための慣用量である。剛性に対する有用な代理特性はTgであり、これは可塑剤の量に直接関連する。本発明の合わせガラスに使用される可塑化PVBシートは少なくとも35℃以上(例えば、少なくとも37℃)、好ましくは少なくとも39℃以上(例えば、少なくとも41℃)、最も好ましくは少なくとも43℃以上(例えば、少なくとも45℃)のTgを有する。
…
【0021】
米国特許第5,618,863号明細書に記載されているように、PVB中にUV吸収剤を配合することも有用であり、または望ましい。可塑剤、任意成分としてのUV吸収剤及び接着コントロール剤に加えて、PVBシートは他の性能強化添加剤、例えばシートの全部または一部を着色するための顔料または染料、酸化防止剤等を含み得る。PVBシートは可塑剤及び他の添加剤(例えば、UV吸収剤、接着コントロール剤等)をPVB樹脂と混合し、得られた混合物をダイ開口部を介して加圧下で強制的に押し出してシートを形成することにより作成される。押出したシートの厚さは、合わせガラスに所望の性能を付与するために0.13~2mm、通常約0.4~約1.6mmの範囲であり得る
【0022】
本発明の複合中間膜に使用されるPETシートは、好ましくは強度を改善するために二軸延伸されており、高温に曝したきに低い収縮特性(例えば、150℃で30分後、両方向で2%未満の収縮率)を与えるために予め熱安定化されている。ポリエチレンテレフタレートの(21~25℃での)引張り弾性率は、安全ガラスに使用されているタイプの可塑化ポリビニルブチラールの場合約107Paであるのに対して約1010Paである。PVBのPETへの結合を促進するために、援用により本明細書に含まれるとする欧州特許第157030号明細書及び米国特許第4,732,814号明細書に記載されているようなコーティング及び/または表面処理をPETフィルムに対して施してもよい。後者の特許明細書には接着性を改善するための二軸延伸ポリエステルに対するプラズマ処理が記載されている。PETフィルムの表面を処理するための好ましい方法には、援用により本明細書に含まれるとするKittlerの米国特許第4,865,71号明細書に記載されている真空スパッタリングによる炭素薄層の堆積が含まれる。
…
【0024】
本発明のシートを用いる合わせガラスは、…公知方法により作成される。複合中間膜を2枚のガラスシートの間に配置し、真空下約85~120℃の温度に、温度に応じて約10~30分間加熱して、合わせガラスの層間から空気を除去する。脱気後、合わせガラスをオートクレーブにおいて高温(約90~160℃)及び高圧(約1000~2000kPa)で合わせガラスの層をしっかり結合するのに十分な時間加熱することが好ましい。米国特許第5,536,347号明細書に記載されているオートクレーブ以外の方法も、例えばTgが少しだけ高い可塑化PVBのために有用であり得る。
【0025】
図2を参照すると、合わせガラスはフロートガラスまたは強化ガラスから構成され得、通常1~20mm厚さ、好ましくは1~10mm厚さを有するガラスシート201,205を含む。前記ガラスシート間に該ガラスシートに結合して、可塑化PVB接着剤202,204の層間にPETシート203を含む複合中間膜が存在する。PETシートは二軸延伸されており、0.025~0.25mm(1~10ミル)、好ましくは少なくとも0.125mmの厚さを有し得る。PVBに対する所望の接着のために、例えば粗面とするかまたは表面の材料を化学的に改質することによりPETの表面を改質することが好ましい。前記改質は火炎処理、化学的酸化、コロナ放電、炭素スパッタリング、真空または空気中でのプラズマ処理、または当業者に公知の他の処理により実施され得る。好ましい表面処理は空気中でのプラズマ処理である。…」
エ 「【0031】
以下に実施例を示すが、これらの実施例は本発明を限定乃至減縮するものではない。ここで使用した材料は次の通りである。
3GEH:トリエチレングリコールジ(2-エチルヘキサノエート)可塑剤、
ガラス:厚さ2.2mmのアニールしたフロートガラス;、
PET1:厚さ0.1mm(4ミル)の2軸延伸し且つ炭素スパッタリングしたPETシート、
PET2:厚さ0.177mm(7ミル)の2軸延伸し且つ炭素スパッタリングしたPETシート、
PVB1:厚さ0.38mm(15ミル)の38重量部の3GEHを含有し、約32℃のTgを有する可塑化PVB、
PVB2:厚さ0.76mm(30ミル)の38重量部の3GEHを含有し、約32℃のTgを有する可塑化PVB、
PVB3:厚さ1.14mm(45ミル)の38重量部の3GEHを含有し、約32℃のTgを有する可塑化PVB、
PVB4:厚さ1.52mm(60ミル)の38重量部の3GEHを含有し、約32℃のTgを有する可塑化PVB、
PVB5:厚さ0.76mm(30ミル)の22重量部の3GEHを含有し、約45℃のTgを有する可塑化PVB、
PVB6:厚さ0.38mm(15ミル)の30重量部の3GEHを含有し、約38℃のTgを有する可塑化PVB、
PVB7:厚さ0.76mm(30ミル)の30重量部の3GEHを含有し、約38℃のTgを有する可塑化PVB、
アイオノマー:厚さ1.52mm(60ミル)のE.I.duPont de Nemours & CompanyからSurlyn SPKの商標で入手されるアイオノマーシート。
【0032】
実施例1~15
表1に示す材料から約45×60cm(18×24インチ)の合わせガラスを作成した。
【0033】
【表1】
[図:0001396264000001.jpg]
【0034】
…振子衝撃試験後、合わせガラスをラムヘッド貫通試験にかけて曲げ弾性率を測定した。実施例1~15の合わせガラスの「荷重対耐性」曲線を図6~8に示す(番号は実施例番号である)。合わせガラスの最大曲げ弾性率を表2に示す。
【0035】
【表2】
[図:0001396264000002.jpg]
」
2 甲1、甲3に記載された発明
(1)甲1に記載された発明
甲1は、色剤を含有する中間層と、実質的に色剤を含有しない厚さ3.0~30μmの両最外層とを含む、少なくとも3層からなる共押出積層二軸延伸ポリエステルフィルムである合わせガラス用着色積層二軸延伸ポリエステルフィルム(上記1(1)の【請求項1】)に関して記載され、このフィルムはポリビニルブチラールを含む透明樹脂を介して、ガラスに接着すること及び、前記透明樹脂との接着性を向上させるため、前記ポリエステルフィルム表面にコロナ処理を行うことで、フィルム表面のぬれ指数が52dyne/cm以上となるようにしたことが記載されている(同【0025】)。
また、甲1には、2枚のガラス板の間にポリビニルブチラールフィルムおよびポリエステルフィルムを挟み込み、予備圧着し、次いで、本接着を行うことにより、合わせガラスとしたことが記載されており(同【0036】)、透明樹脂を介してガラスに接着されていることからして、ポリエステルフィルムの両側にポリビニルブチラールフィルムが存在しているといえる。
これらの記載を、本件発明1、3に係る請求項1、3の記載にならって整理すると、甲1には、次の発明(以下、下記(a)の発明を「甲1発明1」、同(b)の発明を「甲1発明2」といい、まとめて「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
(a)「色剤を含有する中間層と、実質的に色剤を含有しない厚さ3.0~30μmの両最外層とを含む、少なくとも3層からなる共押出積層二軸延伸ポリエステルフィルムと、前記ポリエステルフィルムの両側の表面に積層されたポリビニルブチラールを含む透明樹脂とを備え、
前記ポリエステルフィルムの前記表面のぬれ張力が52dyne/cm以上になるように、前記表面がコロナ処理された、
合わせガラス用着色積層二軸延伸ポリエステルフィルム。」(甲1発明1)
(b)「甲1発明1の合わせガラス用着色積層二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法。」(甲1発明2)
(2)甲3に記載された発明
甲3には、「本質的に可塑化ポリビニルブチラール接着層の層間のポリエチレンテレフタレートシートからなる合わせガラスを接着するための複合ラミネート中間膜であって、前記ポリビニルブチラール接着層の少なくとも1層が35℃を超えるガラス転移温度を有することを特徴とする前記中間膜」(上記1(3)の【請求項1】)の具体例として、実施例6の「PVB7/PET2/PVB7」の積層構造の中間膜、実施例7の「PVB6/PET2/PVB6」の積層構造の中間膜、実施例8の「PVB7/PET1/PVB7」の積層構造の中間膜、実施例10の「PVB6/PET1/PVB6」の積層構造の中間膜、実施例11の「PVB5/PET2/PVB5」の積層構造の中間膜であって、前記「PVB5」が「厚さ0.76mm(30ミル)の22重量部の3GEHを含有し、約45℃のTgを有する可塑化PVB」であり、前記「PVB6」が「厚さ0.38mm(15ミル)の30重量部の3GEHを含有し、約38℃のTgを有する可塑化PVB」であり、前記「PVB7」が「厚さ0.76mm(30ミル)の30重量部の3GEHを含有し、約38℃のTgを有する可塑化PVB」であり、また、前記「PET1」が「厚さ0.1mm(4ミル)の2軸延伸し且つ炭素スパッタリングしたPETシート」、前記「PET2」が「厚さ0.177mm(7ミル)の2軸延伸し且つ炭素スパッタリングしたPETシート」である中間膜が記載される(同【0031】、同【表1】のNo.6、7、8、10、11)。
また、甲3には、「順に、(a)第1のガラスシート、(b)第1の可塑化ポリビニルブチラール接着層、(c)0.075mm(3ミル)を超える厚さを有するポリエチレンテレフタレートシート、(d)第2の可塑化ポリビニルブチラール接着層、及び(e)第2のガラスシートを含み、約350ニュートン/cmを超える最大曲げ弾性率を示すことを特徴とする改善された剛性を有する合わせガラス」(同【請求項9】)に使用される「複合中間膜」(同【0009】)の具体例として、実施例4の「PVB1/PET2/PVB1」の積層構造の中間膜、実施例9の「PVB2/PET1/PVB2」の積層構造の中間膜、実施例13の「PVB2/PET2/PVB2」の積層構造の中間膜であって、前記「PVB1」が「厚さ0.38mm(15ミル)の38重量部の3GEHを含有し、約32℃のTgを有する可塑化PVB」、前記「PVB2」が「厚さ0.76mm(30ミル)の38重量部の3GEHを含有し、約32℃のTgを有する可塑化PVB」であり、また、前記「PET1」が「厚さ0.1mm(4ミル)の2軸延伸し且つ炭素スパッタリングしたPETシート」、前記「PET2」が「厚さ0.177mm(7ミル)の2軸延伸し且つ炭素スパッタリングしたPETシート」である中間膜が記載される(同【0031】、同【表1】のNo.4、9、13)。
加えて、同【0025】によれば、前記「PET1」及び「PET2」の表面に対してなされた炭素スパッタリング処理は、PVBに対する所望の接着のための改質処理であることが記載されている。
そして、これらの記載を、実施例4、6、7、8、9、10、11、13の中間膜にそれぞれ注目し、本件発明1、3に係る請求項1、3の記載にならって整理すると、甲3には、次の発明(以下(a)~(h)の発明をそれぞれ「甲3発明1-1」~「甲3発明1-8」といい、(i)~(p)の発明をそれぞれ「甲3発明2-1」~「甲3発明2-8」といい、まとめて「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
(a)「順に、厚さ0.38mmの第1の可塑化ポリビニルブチラール接着層、厚さ0.177mmのポリエチレンテレフタレートシート、厚さ0.38mmの第2の可塑化ポリビニルブチラール接着層とを備え、
前記ポリビニルブチラール接着層に対する所望の接着のために、前記シートの表面が炭素スパッタリング処理されており、
前記ポリビニルブチラール接着層が、ポリビニルブチラール樹脂100重量部あたり38重量部の3GEHを含有し、約32℃のガラス転移温度を有する可塑化PVBで構成される、
合わせガラス用複合中間膜。」(実施例4の中間膜に対応。甲3発明1-1)
(b)「順に、厚さ0.76mmの第1の可塑化ポリビニルブチラール接着層、厚さ0.177mmのポリエチレンテレフタレートシート、厚さ0.76mmの第2の可塑化ポリビニルブチラール接着層とを備え、
前記ポリビニルブチラール接着層に対する所望の接着のために、前記シートの表面が炭素スパッタリング処理されており、
前記ポリビニルブチラール接着層が、ポリビニルブチラール樹脂100重量部あたり30重量部の3GEHを含有し、約38℃のガラス転移温度を有する可塑化PVBで構成される、
合わせガラス用複合中間膜。」(実施例6の中間膜に対応。甲3発明1-2)
(c)「順に、厚さ0.38mmの第1の可塑化ポリビニルブチラール接着層、厚さ0.177mmのポリエチレンテレフタレートシート、厚さ0.38mmの第2の可塑化ポリビニルブチラール接着層とを備え、
前記ポリビニルブチラール接着層に対する所望の接着のために、前記シートの表面が炭素スパッタリング処理されており、
前記ポリビニルブチラール接着層が、ポリビニルブチラール樹脂100重量部あたり30重量部の3GEHを含有し、約38℃のガラス転移温度を有する可塑化PVBで構成される、
合わせガラス用複合中間膜。」(実施例7の中間膜に対応。甲3発明1-3)
(d)「順に、厚さ0.76mmの第1の可塑化ポリビニルブチラール接着層、厚さ0.1mmのポリエチレンテレフタレートシート、厚さ0.76mmの第2の可塑化ポリビニルブチラール接着層とを備え、
前記ポリビニルブチラール接着層に対する所望の接着のために、前記シートの表面が炭素スパッタリング処理されており、
前記ポリビニルブチラール接着層が、ポリビニルブチラール樹脂100重量部あたり30重量部の3GEHを含有し、約38℃のガラス転移温度を有する可塑化PVBで構成される、
合わせガラス用複合中間膜。」(実施例8の中間膜に対応。甲3発明1-4)
(e)「順に、厚さ0.76mmの第1の可塑化ポリビニルブチラール接着層、厚さ0.1mmのポリエチレンテレフタレートシート、厚さ0.76mmの第2の可塑化ポリビニルブチラール接着層とを備え
前記ポリビニルブチラール接着層に対する所望の接着のために、前記シートの表面が炭素スパッタリング処理されており、
前記ポリビニルブチラール接着層が、ポリビニルブチラール樹脂100重量部あたり38重量部の3GEHを含有し、約32℃のガラス転移温度を有する可塑化PVBで構成される、
合わせガラス用複合中間膜。」(実施例9の中間膜に対応。甲3発明1-5)
(f)「順に、厚さ0.38mmの第1の可塑化ポリビニルブチラール接着層、厚さ0.1mmのポリエチレンテレフタレートシート、厚さ0.38mmの第2の可塑化ポリビニルブチラール接着層とを備え
前記ポリビニルブチラール接着層に対する所望の接着のために、前記シートの表面が炭素スパッタリング処理されており、
前記ポリビニルブチラール接着層が、ポリビニルブチラール樹脂100重量部あたり30重量部の3GEHを含有し、約38℃のガラス転移温度を有する可塑化PVBで構成される、
合わせガラス用複合中間膜。」(実施例10の中間膜に対応。甲3発明1-6)
(g)「順に、厚さ0.76mmの第1の可塑化ポリビニルブチラール接着層、厚さ0.177mmのポリエチレンテレフタレートシート、厚さ0.76mmの第2の可塑化ポリビニルブチラール接着層とを備え、
前記ポリビニルブチラール接着層に対する所望の接着のために、前記シートの
表面が炭素スパッタリング処理されており、
前記ポリビニルブチラール接着層が、ポリビニルブチラール樹脂100重量部あたり22重量部の3GEHを含有し、約45℃のガラス転移温度を有する可塑化PVBで構成される、
合わせガラス用複合中間膜。」(実施例11の中間膜に対応。甲3発明1-7)
(h)「順に、厚さ0.76mmの第1の可塑化ポリビニルブチラール接着層、厚さ0.177mmのポリエチレンテレフタレートシート、厚さ0.76mmの第2の可塑化ポリビニルブチラール接着層とを備え、
前記ポリビニルブチラール接着層に対する所望の接着のために、前記シートの表面が炭素スパッタリング処理されており、
前記ポリビニルブチラール接着層が、ポリビニルブチラール樹脂100重量部あたり38重量部の3GEHを含有し、約32℃のガラス転移温度を有する可塑化PVBで構成される、
合わせガラス用複合中間膜。」(実施例13の中間膜に対応。甲3発明1-8)
(i)「合わせガラス用複合中間膜の製造方法であって、
ポリビニルブチラール接着層に対する所望の接着のために、ポリエチレンテレフタレートシートの両面を炭素スパッタリング処理する工程を備える、甲3発明1-1の合わせガラス用複合中間膜の製造方法。」(実施例4の中間膜に対応。甲3発明2-1)
(j)「合わせガラス用複合中間膜の製造方法であって、
ポリビニルブチラール接着層に対する所望の接着のために、ポリエチレンテレフタレートシートの両面を炭素スパッタリング処理する工程を備える、甲3発明1-2の合わせガラス用複合中間膜の製造方法。」(実施例6の中間膜に対応。甲3発明2-2)
(k)「合わせガラス用複合中間膜の製造方法であって、
ポリビニルブチラール接着層に対する所望の接着のために、ポリエチレンテレフタレートシートの両面を炭素スパッタリング処理する工程を備える、甲3発明1-3の合わせガラス用複合中間膜の製造方法。」(実施例7の中間膜に対応。甲3発明2-3)
(l)「合わせガラス用複合中間膜の製造方法であって、
ポリビニルブチラール接着層に対する所望の接着のために、ポリエチレンテレフタレートシートの両面を炭素スパッタリング処理する工程を備える、甲3発明1-4の合わせガラス用複合中間膜の製造方法。」(実施例8の中間膜に対応。甲3発明2-4)
(m)「合わせガラス用複合中間膜の製造方法であって、
ポリビニルブチラール接着層に対する所望の接着のために、ポリエチレンテレフタレートシートの両面を炭素スパッタリング処理する工程を備える、甲3発明1-5の合わせガラス用複合中間膜の製造方法。」(実施例9の中間膜に対応。甲3発明2-5)
(n)「合わせガラス用複合中間膜の製造方法であって、
ポリビニルブチラール接着層に対する所望の接着のために、ポリエチレンテレフタレートシートの両面を炭素スパッタリング処理する工程を備える、甲3発明1-6の合わせガラス用複合中間膜の製造方法。」(実施例10の中間膜に対応。甲3発明2-6)
(o)「合わせガラス用複合中間膜の製造方法であって、
ポリビニルブチラール接着層に対する所望の接着のために、ポリエチレンテレフタレートシートの両面を炭素スパッタリング処理する工程を備える、甲3発明1-7の合わせガラス用複合中間膜の製造方法。」(実施例11の中間膜に対応。甲3発明2-7)
(p)「合わせガラス用複合中間膜の製造方法であって、
ポリビニルブチラール接着層に対する所望の接着のために、ポリエチレンテレフタレートシートの両面を炭素スパッタリング処理する工程を備える、甲3発明1-8の合わせガラス用複合中間膜の製造方法。」(実施例13の中間膜に対応。甲3発明2-8)
3 対比・判断
(1)甲1を主引用例とした場合
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明1とを対比する。
甲1発明1における「ポリエステルフィルム」は、本件発明1における「プラスチックシートであるプラスチック層」に相当する。
甲1発明1における「前記ポリエステルフィルムの両側の表面に積層された」「透明樹脂」は、本件発明1における「前記プラスチック層の第1の表面に積層された第1の樹脂層」及び「前記プラスチック層の前記第1の表面とは反対の第2の表面に積層された第2の樹脂層」に相当する。
甲1発明1における「透明樹脂」が「ポリビニルブチラールを含む」ことは、本件発明1における「前記第1の樹脂層が、ポリビニルアセタール樹脂」「を含み、中間膜が前記第2の樹脂層を備える場合に、前記第2の樹脂層が、ポリビニルアセタール樹脂」「を含む」ことに相当する。
甲1発明1における「前記ポリエステルフィルムの前記表面のぬれ張力が52dyne/cm以上になるように、前記表面がコロナ処理されており」は、本件発明1における「前記プラスチックシートである前記プラスチック層の前記第1の表面と前記第1の表面とは反対の前記第2の表面との各ぬれ張力が40mN/m以上になるように、前記第1の表面と前記第2の表面とが、表面処理剤で被覆されているか、又は表面処理により改質されており」に相当する。
甲1発明1における「ポリエステルフィルムの両側の表面に積層されたポリビニルブチラールを含む透明樹脂」「を備え」る「合わせガラス用着色積層二軸延伸ポリエステルフィルム」は、本件発明1における「合わせガラス用中間膜」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明1とは、
「プラスチックシートであるプラスチック層と、前記プラスチック層の第1の表面に積層された第1の樹脂層とを備え、
前記プラスチック層の前記第1の表面とは反対の第2の表面に積層された第2の樹脂層を備えるか、又は備えておらず、
前記プラスチックシートである前記プラスチック層の前記第1の表面と前記第1の表面とは反対の前記第2の表面との各ぬれ張力が40mN/m以上になるように、前記第1の表面と前記第2の表面とが、表面処理剤で被覆されているか、又は表面処理により改質されており、
前記第1の樹脂層が、ポリビニルアセタール樹脂」「を含み、中間膜が前記第2の樹脂層を備える場合に、前記第2の樹脂層が、ポリビニルアセタール樹脂」「を含む、合わせガラス用中間膜。」の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1は、「前記第1の樹脂層が、」「可塑剤とを含み」「中間膜が前記第2の樹脂層を備える場合に、前記第2の樹脂層が、」「可塑剤とを含む」のに対し、
甲1発明1は、透明樹脂が可塑剤を含むことが特定されていない点。
<相違点2>
本件発明1は、「(但し、前記プラスチックシートであるプラスチック層が、色剤を含有する中間層と、実質的に色剤を含有しない厚さ3.0~30μmの両最外層とを含む、少なくとも3層からなる共押出積層二軸延伸ポリエステルフィルムであるものを除き、さらに、前記第1の樹脂層及び第2の樹脂層の少なくとも1層が、35℃を超えるガラス転移温度を有する可塑化ポリビニルブチラール接着層であるものを除き、さらに、前記プラスチックシートであるプラスチック層が、0.075mm(3ミル)を超える厚さを有するポリエチレンテレフタレートシートであるものを除く。)」とするものであるのに対し、
本件発明1における「プラスチックシートであるプラスチック層」に相当する甲1発明1のポリエステルフィルムは、「色剤を含有する中間層と、実質的に色剤を含有しない厚さ3.0~30μmの両最外層とを含む、少なくとも3層からなる共押出積層二軸延伸ポリエステルフィルム」である点。
(イ)判断
事案に鑑み、ここでは上記相違点2について検討する。
上記1(1)の「甲1の記載事項」で摘記したとおり、甲1には、「本発明は、上記実状に鑑みなされたものであって、その解決課題は、加熱時にフィルム表面への色剤の析出が抑制された透明感と遮光性を有し、曲面ガラスに積層しても光学歪みが発生しない二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することにある」(段落【0006】)こと、また、「本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を有する二軸延伸ポリエステルフィルムによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った」(段落【0007】)ことが示されており、課題を解決するための構成として、「色剤を含有する中間層と、実質的に色剤を含有しない厚さ3.0~30μmの両最外層とを含む、少なくとも3層からなる共押出積層二軸延伸ポリエステルフィルム」を用いることが示されている。
そうすると、甲1発明1において、「色剤を含有する中間層と、実質的に色剤を含有しない厚さ3.0~30μmの両最外層とを含む、少なくとも3層からなる共押出積層二軸延伸ポリエステルフィルム」以外のプラスチックシートをプラスチック層として用いることは想定されておらず、それ以外のプラスチックシートをプラスチック層として用いることは、阻害事由があるから、相違点2に係る本件発明1の構成をなすことは、当業者といえども容易に想到し得ないというべきである。
(ウ)まとめ
以上のとおりであるから、上記相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明1に対して進歩性が欠如するということはできない。
イ 本件発明2、5~11について
本件発明2、5~11は、本件発明1の発明特定事項をすべて具備するものであるから、上記アで示した本件発明1についての検討と同様、甲1発明1に対して進歩性が欠如するということはできない。
ウ 本件発明3、4について
本件発明3、4と甲1発明2とを対比する。
本件発明3は、本件発明1の合わせガラス用中間膜の製造方法として、合わせガラス用中間膜を得る工程を備え、かつ、表面処理前のプラスチックシートにおいて、第1の表面と第1の表面とは反対の第2の表面との各ぬれ張力が40mN/m未満であり、表面処理後のプラスチックシートにおいて上記各ぬれ張力が40mN/m以上であることを特定したものである。
他方、甲1発明2は、甲1発明1の合わせガラス用着色積層二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法であるから、上記アの本件発明1と甲1発明1との対比・判断を踏まえると、本件発明3と甲1発明2とは、少なくとも上記相違点1及び2で相違するところ、甲1発明2においても、相違点2に係る本件発明3の構成をなすことは、当業者といえども容易に想到し得ないというべきである。
また、本件発明4は、本件発明3の発明特定事項をすべて具備するものであるから、同様である。
そうすると、その他の点を検討するまでもなく、本件発明3、4は、甲3発明2-1に対して進歩性が欠如するということはできない。
エ 小括
したがって、本件発明1~11は、甲1に記載された発明(甲1発明1又は甲1発明2)に対して進歩性が欠如するということはできない。
(2)甲3を主引用例とした場合
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲3発明1-1とを対比する。
甲3発明1-1における「ポリエチレンテレフタレートシート」は、本件発明1における「プラスチックシートであるプラスチック層」に相当する。
甲3発明1-1における「第1の可塑化ポリビニルブチラール接着層」及び「第2の可塑化ポリビニルブチラール接着層」は、本件発明1における「前記プラスチック層の第1の表面に積層された第1の樹脂層」及び「前記プラスチック層の前記第1の表面とは反対の第2の表面に積層された第2の樹脂層」に相当する。
甲3発明1-1における「前記シートの表面が炭素スパッタリング処理されており、」は、本件発明1における「前記第1の表面と前記第2の表面とが、表面処理剤で被覆されているか、又は表面処理により改質されており、」に相当する。
甲3発明1-1における「ポリビニルブチラール接着層」が、「ポリビニルブチラール樹脂100重量部あたり」所定量の「3GEHを含有」することは、本件発明1において、「前記第1の樹脂層が、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含み、中間膜が前記第2の樹脂層を備える場合に、前記第2の樹脂層が、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む」ことに相当する。
甲3発明1-1における「合わせガラス用複合中間膜」は、本件発明1における「合わせガラス用中間膜」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲3発明1-1とは、「プラスチックシートであるプラスチック層と、前記プラスチック層の第1の表面に積層された第1の樹脂層とを備え、
前記プラスチック層の前記第1の表面とは反対の第2の表面に積層された第2の樹脂層を備えるか、又は備えておらず、
前記プラスチックシートである前記プラスチック層の前記第1の表面と前記第1の表面とは反対の前記第2の表面と」「が、表面処理剤で被覆されているか、又は表面処理により改質されており、
前記第1の樹脂層が、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含み、
中間膜が前記第2の樹脂層を備える場合に、前記第2の樹脂層が、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む、合わせガラス用中間膜。」の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点3>
本件発明1は、「前記プラスチックシートである前記プラスチック層の前記第1の表面と前記第1の表面とは反対の前記第2の表面との各ぬれ張力が40mN/m以上になるように、前記第1の表面と前記第2の表面とが、表面処理剤で被覆されているか、又は表面処理により改質されて」いることが特定されているのに対して、
甲3発明1-1は、ポリビニルブチラールに対する所望の接着のために、ポリエチレンテレフタレートシートの表面が炭素スパッタリング処理されているものの、当該シート表面の各ぬれ張力が40mN/m以上になるようにすることは特定されていない点。
<相違点4>
本件発明1は、「(但し、前記プラスチックシートであるプラスチック層が、色剤を含有する中間層と、実質的に色剤を含有しない厚さ3.0~30μmの両最外層とを含む、少なくとも3層からなる共押出積層二軸延伸ポリエステルフィルムであるものを除き、さらに、前記第1の樹脂層及び第2の樹脂層の少なくとも1層が、35℃を超えるガラス転移温度を有する可塑化ポリビニルブチラール接着層であるものを除き、さらに、前記プラスチックシートであるプラスチック層が、0.075mm(3ミル)を超える厚さを有するポリエチレンテレフタレートシートであるものを除く。)」とするものであるのに対し、
甲3発明1-1は、「プラスチックシートであるプラスチック層が、色剤を含有する中間層と、実質的に色剤を含有しない厚さ3.0~30μmの両最外層とを含む、少なくとも3層からなる共押出積層二軸延伸ポリエステルフィルムであるもの」ではなく、甲3発明1-1は、「ポリビニルブチラール接着層が、ポリビニルブチラール樹脂100重量部あたり38重量部の3GEHを含有し、約32℃のガラス転移温度を有する可塑化PVBで構成される」から、「第1の樹脂層及び第2の樹脂層の少なくとも1層が、35℃を超えるガラス転移温度を有する可塑化ポリビニルブチラール接着層であるもの」ではないものの、本件発明1における「プラスチックシートであるプラスチック層」に相当する甲3発明1-1のポリエチレンテレフタレートシートは、「厚さ0.177mmのポリエチレンテレフタレートシート」である点。
(イ)判断
事案に鑑み、ここでは上記相違点4について検討する。
上記1(3)の「甲3の記載事項」で摘記したとおり、甲3の段落【0006】には、「本発明の目的は、…より高い合わせガラス剛性を与える硬質なプラスチックシート及び/または補強PVB接着層を含む複合中間膜を使用することにより達成される」ことが示されており、甲3に記載された発明としては、この「硬質なプラスチックシート及び/または補強PVB接着層」として、具体的には、請求項1の「ポリビニルブチラール接着層の少なくとも1層が35℃を超えるガラス転移温度を有すること」(請求項1など)、または「0.075mm(3ミル)を超える厚さを有するポリエチレンテレフタレートシート」(請求項9など)のいずれかの構成を含むことが必須の要件であるといえる。
そうすると、甲3発明1-1では、「ポリビニルブチラール接着層が、ポリビニルブチラール樹脂100重量部あたり38重量部の3GEHを含有し、約32℃のガラス転移温度を有する可塑化PVBで構成される」から、甲3における発明の目的を達成するために必要とされる、甲3発明1-1の「厚さ0.177mmのポリエチレンテレフタレートシート」との構成を、0.075mm(3ミル)以下のポリエチレンテレフタレートシートとすることは、甲3における発明の目的を達成し得ない構成とするものであるから、阻害事由があるといえ、当業者といえども容易に想到し得ないというべきである。
(ウ)まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲3発明1-1に対して進歩性が欠如するということはできない。
イ 本件発明2、5~11について
本件発明2、5~11は、本件発明1の発明特定事項をすべて具備するものであるから、上記アで示した本件発明1についての検討と同様、甲3発明1-1に対して進歩性が欠如するということはできない。
ウ 本件発明3、4について
本件発明3、4と甲3発明2-1とを対比する。
本件発明3は、本件発明1の合わせガラス用中間膜の製造方法として、合わせガラス用中間膜を得る工程を備え、かつ、表面処理前のプラスチックシートにおいて、第1の表面と第1の表面とは反対の第2の表面との各ぬれ張力が40mN/m未満であり、表面処理後のプラスチックシートにおいて上記各ぬれ張力が40mN/m以上であることを特定したものである。
そして、甲3発明2-1は、甲3発明1-1の合わせガラス用着色積層二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法であるから、上記アの本件発明1と甲3発明1-1との対比・判断を踏まえると、本件発明3と甲3発明2-1とは、少なくとも上記相違点3、4で相違するところ、甲3発明2-1においても、相違点4に係る本件発明3の構成をなすことは、当業者といえども容易に想到し得ないというべきである。
また、本件発明4は、本件発明3の発明特定事項をすべて具備するものであるから、同様である。
そうすると、その他の点を検討するまでもなく、本件発明3、4は、甲3発明2-1に対して進歩性が欠如するということはできない。
エ 甲3発明1-2~甲3発明1~8及び甲3発明2-2~甲3発明2-8との対比・検討
上記ア(イ)で示したとおり、甲3発明1-2~甲3発明1~8及び甲3発明2-2~甲3発明2-8においても、ガラス用中間膜は、「ポリビニルブチラール接着層の少なくとも1層が35℃を超えるガラス転移温度を有すること」(請求項1など)、または「0.075mm(3ミル)を超える厚さを有するポリエチレンテレフタレートシート」(請求項9など)のいずれかの構成を含むことが必須の要件であるから、「(但し、…前記第1の樹脂層及び第2の樹脂層の少なくとも1層が、35℃を超えるガラス転移温度を有する可塑化ポリビニルブチラール接着層であるものを除き、さらに、前記プラスチックシートであるプラスチック層が、0.075mm(3ミル)を超える厚さを有するポリエチレンテレフタレートシートであるものを除く。)」という発明特定事項を含む本件発明の構成とすることは、当業者といえども容易に想到し得ないというべきである。
オ 小括
したがって、本件発明1~11は、甲3に記載された発明(甲3発明1-1~甲3発明1~8及び甲3発明2-1~甲3発明2-8)に対して進歩性が欠如するということはできない。
(3)申立人の主張について
本件訂正について、申立人は、令和4年10月4日提出の意見書において、実質単に甲1又は甲3に記載されている構成を外しているに過ぎず、訂正後の本件発明と、甲1発明又は甲3発明とは、技術思想が顕著に異なるとはいえないから、甲1発明又は甲3発明を主たる証拠として進歩性がない旨主張する。
しかしながら、上記(1)、(2)で示したとおり、甲1発明又は甲3発明を主たる証拠とした場合、本件発明の「(但し、前記プラスチックシートであるプラスチック層が、色剤を含有する中間層と、実質的に色剤を含有しない厚さ3.0~30μmの両最外層とを含む、少なくとも3層からなる共押出積層二軸延伸ポリエステルフィルムであるものを除き、さらに、前記第1の樹脂層及び第2の樹脂層の少なくとも1層が、35℃を超えるガラス転移温度を有する可塑化ポリビニルブチラール接着層であるものを除き、さらに、前記プラスチックシートであるプラスチック層が、0.075mm(3ミル)を超える厚さを有するポリエチレンテレフタレートシートであるものを除く。)」との構成は、当業者が容易に想到し得ない構成である。
また、甲2の記載事項は、上記構成について関するものではないから、甲2の記載事項を参酌したとしても、上記(1)、(2)での判断は変わらない。
4 取消理由についての当審の判断のまとめ
以上のとおりであるから、取消理由1に理由はない。
第6 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について
1 標記特許異議申立理由の概要
取消理由において採用しなかった特許異議申立理由は、概略、次のとおりである。
(1)申立ての理由2(サポート要件違反)
申立人は、特許異議申立書(61頁22行目~64頁22行目)において、設定登録時の特許請求の範囲における「プラスチックシートであるプラスチック層」との発明特定事項について、本件明細書には、発明が解決しようとする課題として、段落【0007】に「合わせガラスの層間剥離を生じ難くし、更に合わせガラスの耐貫通性を高めることができるプラスチックシート…を提供することである」と開示されているが、本件明細書において、上記課題を解決できたことが具体的に示された例は、プラスチック層として、熱可塑性樹脂であるポリエチレンテレフタレートを用いた場合のみであり(段落【0139】~【0151】)、ポリエチレンテレフタレート以外の熱可塑性樹脂層からなるプラスチック層を用いた場合であっても同様に、上記課題を解決し得ることは、開示も示唆もないから、設定登録時の請求項1~11に係る発明は、サポート要件に違反する旨主張する。
(2)申立ての理由3(実施可能要件違反)
また、申立人は、特許異議申立書(64頁23行目~65頁20行目)において、ポリエチレンテレフタレートは、元々、耐熱性や熱収縮挙動などの面で優れた性質を有しているため、合わせガラス用中間膜を構成する層としても好適であることは周知であるが、本件明細書の段落【0037】で列挙された熱可塑性樹脂の中には、たとえば、融点の低いポリエチレンやガラス転移温度の低いポリプロピレンのように耐熱性が低いという点や熱収縮性が悪いという点においてポリエチレンテレフタレートよりも劣る原料もあり、本件明細書で具体的に示されるポリエチレンテレフタレート以外の熱可塑性樹脂(たとえば、ポリエチレンテレフタレートよりも性質の劣るポリエチレンやポリプロピレン等)を用いる場合に、本件明細書に示される発明の課題を解決できる中間膜を作製するためには、当業者に過度の試行錯誤を要求することから、設定登録時の請求項1~11に係る発明は、発明の詳細な説明に基づいて実施可能でない旨主張する。
2 標記特許異議申立理由についての当審の判断
特許異議申立人が指摘するサポート要件違反及び実施可能要件違反について検討するに、本件明細書の段落【0007】に記載されているように、本件発明の課題は、「合わせガラスの層間剥離を生じ難くし、更に合わせガラスの耐貫通性を高めることができるプラスチックシート及びプラスチックシートの製造方法を提供すること」であり、これは、プラスチックシートとして同じ樹脂を用いた場合において、「合わせガラスの層間剥離を生じ難く」すること、「合わせガラスの耐貫通性を高める」ことを意図したものと解釈できる。
そうすると、本件発明の課題は、「プラスチックシートであるプラスチック層」として、ポリエチレンテレフタレート以外の熱可塑性樹脂を用いた場合であっても、ポリエチレンテレフタレートを用いた場合と同等の特性を有することではないから、「プラスチックシートであるプラスチック層」として、ポリエチレンテレフタレートよりも性質の劣るポリエチレンやポリプロピレン等が含まれることのみを理由に、サポート要件違反及び実施可能要件違反であるということはできない。
また、技術常識を参酌しても、本件明細書の記載から、ポリエチレンやポリプロピレン等を用いた場合に、層間剥離性や耐貫通性が改善しないとの事情は認められず、また、特許異議申立書では、単に本件明細書にポリエチレンやポリプロピレン等を用いた例が示されていないということを主張するにとどまり、実際にポリエチレンやポリプロピレン等を用いた場合では、層間剥離性や耐貫通性が改善しなかったといった具体的な証拠や理由は示されていない。
そうすると、上記1で示した申立ての理由2、3に関する申立人の主張は、正当な理由があるとはいえず、採用できない。
第7 むすび
以上の検討のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1~11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700084