特許訂正審判
2024-390131
グルカゴン受容体シグナル伝達の干渉による重度のインスリン抵抗性の処置方法
- 審判番号
- 2024-390131
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2019-511610
- 登録番号
- 7173962
- 請求日
- 2024年11月05日
- 審決日
- 2024年12月24日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】山本 秀策
- 【請求人代理人】森下 夏樹
- 審判長/審判官
- 審判長 冨永 みどり
- 審判官 関 景輔
- 審判官 松波 由美子
- 分類
- P141 .851-Y (A61K) / P141 .852-Y (A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7173962号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第7173962号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~12〕、〔13~23〕、〔24~36〕について訂正することを認める。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7173962号(以下「本件特許」という。)についての出願(特願2019-511610号)は、2017年(平成29年)8月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理:2016年8月30日 米国(US)、2016年10月21日 米国(US))を国際出願日とする出願であって、令和4年11月8日に特許権の設定登録(請求項の数39)がなされ、その後、令和6年11月5日に本件訂正審判の請求がなされたものである。
第2 請求の趣旨及び訂正の内容
1 請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第7173962号の特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~36について訂正することを認める、との審決を求める、というものである。
2 訂正の内容
本件訂正審判の請求に係る訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に記載された「前記GCGRアンタゴニストまたはその抗原結合性断片が、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)を含む重鎖可変領域(HCVR)と、3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含む軽鎖可変領域(LCVR)とを含み、」との記載を、「前記GCGRアンタゴニストが、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)を含む重鎖可変領域(HCVR)と、3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含む軽鎖可変領域(LCVR)とを含む単離された抗体またはその抗原結合性断片であり」に訂正する。
なお、訂正前の請求項1~12において、請求項2~12は、請求項1の記載を直接的に又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項7の末尾に句点「。」を付す訂正をする。
なお、訂正前の請求項7において、請求項10、11は、請求項7の記載を引用しているものであって、訂正事項2によって記載が訂正される請求項7に連動して訂正されるものである。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項13に記載された「前記GCGRアンタゴニストまたはその抗原結合性断片が、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)を含む重鎖可変領域(HCVR)と、3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含む軽鎖可変領域(LCVR)とを含み、」との記載を、「前記GCGRアンタゴニストが、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)を含む重鎖可変領域(HCVR)と、3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含む軽鎖可変領域(LCVR)とを含む単離された抗体またはその抗原結合性断片であり」に訂正する。
なお、訂正前の請求項13において、請求項14~23は、請求項13の記載を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項3によって記載が訂正される請求項13に連動して訂正されるものである。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項24に記載された「前記GCGRアンタゴニストまたはその抗原結合性断片が、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)を含む重鎖可変領域(HCVR)と、3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含む軽鎖可変領域(LCVR)とを含み、」との記載を、「前記GCGRアンタゴニストが、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)を含む重鎖可変領域(HCVR)と、3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含む軽鎖可変領域(LCVR)とを含む単離された抗体またはその抗原結合性断片であり」に訂正する。
なお、訂正前の請求項24において、請求項25~36は、請求項24の記載を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項4によって記載が訂正される請求項24に連動して訂正されるものである。
第3 当審の判断
1 一群の請求項について
訂正前の請求項2~12は、訂正前の請求項1を直接的又は間接的に引用する関係にあり、訂正事項1により記載が訂正される訂正前の請求項1に連動して訂正されるから、訂正前の請求項1~12は、特許法126条3項に規定する一群の請求項である。
訂正前の請求項14~23は、訂正前の請求項13を直接的又は間接的に引用する関係にあり、訂正事項3により記載が訂正される訂正前の請求項13に連動して訂正されるから、訂正前の請求項13~23は、特許法126条3項に規定する一群の請求項である。
訂正前の請求項25~36は、訂正前の請求項24を引用する関係にあり、訂正事項4により記載が訂正される訂正前の請求項24に連動して訂正されるから、訂正前の請求項24~36は、特許法126条3項に規定する一群の請求項である。
よって、本件訂正は特許法126条3項の規定に基づき一群の請求項ごとに請求されたものである。
2 訂正事項1、3、4について
(1)訂正の目的について
ア 訂正事項1、3、4はそれぞれ、訂正前の請求項1、13、24における、「GCGRアンタゴニストまたはその抗原結合性断片」に関して「前記GCGRアンタゴニストまたはその抗原結合性断片が、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)を含む重鎖可変領域(HCVR)と、3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含む軽鎖可変領域(LCVR)とを含み、」との記載を、「前記GCGRアンタゴニストが、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)を含む重鎖可変領域(HCVR)と、3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含む軽鎖可変領域(LCVR)とを含む単離された抗体またはその抗原結合性断片であり」との記載に訂正するものである。
すなわち、訂正事項1、3、4は、「GCGRアンタゴニストまたはその抗原結合性断片」が「単離された抗体またはその抗原結合性断片」であることを特定しようとするものである。
イ 訂正前の請求項1、13、24の記載をみると、「GCGRアンタゴニストまたはその抗原結合性断片」が、「3つの重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)を含む重鎖可変領域(HCVR)と、3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含む軽鎖可変領域(LCVR)とを含」むことが特定されている。
ここで、一般に、相補性決定領域(CDR)とは、抗体において抗原に特異的に結合する領域を意味することは技術常識であるから、訂正前の請求項1、13、24の「GCGRアンタゴニスト」は、その特許請求の範囲の請求項1、13、24の記載自体からみて、抗体とその抗原結合性断片を含むものである。
また、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項8及び訂正前の請求項13を引用する訂正前の請求項20、21には、「GCGRアンタゴニスト」が「単離されたヒトモノクローナル抗体」であること、訂正前の請求項24を引用する訂正前の請求項26、27には、「GCGRに特異的に結合する単離されたヒトモノクローナル抗体」であることが特定されている。
さらに、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項9には、「前記単離された抗体またはその抗原結合性断片」との記載があるから、訂正前の請求項1における「抗体」は、「単離された」状態のものを明らかに含むものといえる。
ウ 本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)には、「GCGRアンタゴニスト」に関して、次の事項が記載されている。なお、下線は審判合議体で付したものである。
「【0081】
「阻害剤」または「アンタゴニスト」という用語には、化学的もしくは生理学的な反応もしくは応答を遅滞させるか、または防止する物質が含まれる。一般的な阻害剤またはアンタゴニストとしては、アンチセンス分子、抗体、小分子阻害剤、ペプチド阻害剤、DARPin、Spiegelmer、アプタマー、操作されたFnIII型ドメイン、およびそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
GCG阻害剤またはGCGRシグナル伝達経路アンタゴニストの例としては、GCGRシグナル伝達経路の結合を遮断する、またはその活性を阻害する、GCGまたはGCGRに対する抗体(ヒト抗体またはヒト化抗体)、またはその抗原結合性部分が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載される方法において使用され得る例示的なGCGRアンタゴニストとしては、(a)配列番号2、18、34、50、66、70、86、90、106、110、126、130、および146からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するHCVR、ならびに/または(b)配列番号10、26、42、58、68、78、88、98、108、118、128、138、および148からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するLCVRを含む、単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片が挙げられる。」
すなわち、本件明細書の【0081】には、「アンタゴニスト」として、多様な選択肢が記載されており、その一例として「抗体」が記載されており、【0082】によれば、「GCGRアンタゴニスト」の例として、「GCGRに対する抗体」が挙げられている。
エ 上記イ及びウで述べたように、本件特許の特許請求の範囲及び明細書の記載によれば、訂正事項1、3、4に係る訂正は、様々な選択肢を包含する「GCGRアンタゴニストまたはその抗原結合性断片」の中から、特定の相補性決定領域(CDR)を含む「単離された抗体またはその抗原結合性断片」に減縮するものである。
よって、訂正事項1、3、4に係る訂正は、特許法126条1項ただし書1号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2) 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記(1)で述べたとおり、訂正前の本件特許の特許請求の範囲の請求項1、13、24の「GCGRアンタゴニストまたはその抗原結合性断片」を「単離された抗体またはその抗原結合性断片」に減縮する訂正事項1、3、4に係る訂正は、特許請求の範囲又は明細書の記載に基づくものであるから、新たな技術的事項を導入するものではなく、設定登録時の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
したがって、訂正事項1、3、4に係る訂正は、特許法126条5項の規定に適合する。
(3) 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
上記(1)で述べたとおり、訂正事項1、3、4に係る訂正は、訂正前の本件特許の特許請求の範囲の請求項1、13、24の「GCGRアンタゴニストまたはその抗原結合性断片」を「単離された抗体またはその抗原結合性断片」に減縮するものであるから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。
したがって、訂正事項1、3、4に係る訂正は、特許法126条6項の規定に適合する。
(4) 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
訂正後の請求項1~12、13~23、24~36に係る発明には、特許要件の適否について見直すべき新たな事情は存在せず、訂正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由は見いだせない。
したがって、訂正事項1、3、4に係る訂正は、特許法126条7項に規定の独立特許要件を満たすものである。
2 訂正事項2について
(1)訂正の目的について
特許法126条1項ただし書2号にいう「誤記の訂正」とは、本来その意であることが、特許請求の範囲、明細書又は図面などから明らかな内容の字句、語句に正すことをいい、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるものをいうと解される。
これを本件訂正についてみると、訂正事項2に係る訂正は、特許請求の範囲の請求項7の末尾に句点「。」を付すというものであるところ、本来その意であることが、特許請求の範囲の記載から明らかな内容の字句、語句に正すものであって、訂正前後で同一の意味を表示していることが客観的に把握されることは明らかであるから、誤記の訂正であるといえる。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法126条1項ただし書2号に掲げる、誤記の訂正を目的とするものである。
(2) 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記(1)で述べたとおり、訂正事項2は、訂正前の本件特許の特許請求の範囲の請求項7において誤りであることが明らかな記載を正しい記載にするものであり、新たな技術的事項を導入するものではないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法126条5項の規定に適合する。
(3) 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
上記(1)で述べたとおり、訂正事項2は、訂正前の本件特許の特許請求の範囲の請求項7において、それ自体で誤りであることが明らかであり、かつ、特許請求の範囲の記載から、正しい記載が自明な事項として定まり、その誤りを正しい記載にする訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法126条6項の規定に適合する。
(4) 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
訂正後の請求項7、10、11に係る発明には、特許要件の適否について見直すべき新たな事情は存在せず、訂正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由は見いだせない。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法126条7項に規定の独立特許要件を満たすものである。
第4 むすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法126条1項ただし書1号及び2号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条5項、6項及び7項の規定に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
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