特許拒絶査定不服審判
2024-009207
トイレットロール
- 審判番号
- 2024-009207
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-084365外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2024年06月04日
- 審決日
- 2025年05月15日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】王子ホールディングス株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人特許事務所サイクス
- 分類
- P18 .121-Z (A47K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023- 84365「トイレットロール」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 7月13日出願公開、特開2023- 99681〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成28年8月9日に出願された特願2016-156380の一部を分割して、令和2年7月9日に新たな特許出願とした特願2020-118216の一部を分割して、令和2年8月4日に新たな特許出願とした特願2020-132409の一部を分割して、令和4年4月11日に新たな特許出願とした特願2022-64968の一部を分割して、令和5年5月23日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和 5年11月 2日付け:拒絶理由通知書
令和 6年 1月11日 :意見書、手続補正書の受付
同年 2月27日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
同年 3月 5日 :原査定の謄本の送達
同年 6月 4日 :審判請求書の受付
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、令和6年1月11日受付の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである(なお、記号A等は、分説するため合議体が付した。記号A等が付された事項を以下「構成A」等という。)。
「【請求項1】
A 1プライのトイレットペーパーを巻き取ってロール状としたトイレットロールであって、
B 前記トイレットロールの巻長が95m以上150m以下であり、
C 前記トイレットロールの巻径が110mm以上120mm以下であり、
D 前記トイレットペーパーの1プライ当たりの坪量が14.0g/m2以上16g/m2以下であり、
E 前記トイレットペーパーは、エンボス加工により形成されたエンボスパターンを有し、
F 前記エンボスパターンでは、1個のエンボス直径が0.5mm以上2.0mm以下である
G トイレットロール。」
第3 原査定の拒絶の理由の概要
(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
・請求項 1、3
・引用文献 1-2
・請求項 2、4
・引用文献 1-3
<引用文献等一覧>
1.特開平7-268800号公報
2.特開2014-233363号公報
3.特開2009-34278号公報
第4 各引用文献に記載された事項、引用発明等
1 引用発明
(1)引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用され、本願の出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開平7-268800号公報(平成7年10月17日公開)(以下「引用文献1」という。)には、「エンボス付与ウェブおよびその製造用ロール」(発明の名称)に関し、次の事項が記載されている。なお、下線は合議体が付した。以下同じ。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、1プライまたは2プライのトイレットぺーパー、ボックス収容または携帯用ティッシュペーパーなどに供するエンボス付与ウェブおよびその製造用ロールに関する。」
「【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述したような、エンボス付与ウェブは、エンボスが形成されていないウェブと比較すると、滑らかさ、しなやかさ、ふんわり感、柔らかさなどの性質に優れるため、トイレットペーパー等として適するものである。」
「【0013】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。図1は本発明に係るエンボス付与ウェブの一部拡大平面図であり、図2はその2-2線断面図である。図1および図2に各部分についての寸法を示すが、本実施例に係るエンボス付与ウェブWにおいては、実質的に平坦な頂面Tを有し、その形状としては実施例においては、菱形とされている。その寸法例は、最大径aが0.8mm、最小径bが0.4mmとされ、エンボス付与形態としては、長ピッチAが3.0mm、短ピッチBが1.4mmとされている。さらに、エンボス深さは0.54mmとされている。そして、頂面T,T間の凹部の形状は、図2から判るように断面が曲線部を持たない形状とされ、全体としていわゆる台形型のエンボスとされている。なお、本実施例に係るエンボス付与ウェブにおいて、頂面T,T…はウェブ10mm四方にあたり約47個分形成されている。」
「【0021】<紙粉量>ウェブにエンボスを形成する際には、その圧力によってエンボス形成位置におけるウェブが若干破損し、その部分が紙粉となって欠落する。したがって、紙粉の発生量が多い程ウェブの欠落量が多いことを示しており、紙粉が発生しないほうが好ましい。本実験においては、トイレットロールにおいて、一般的に1回当たりに使用する長さ(1カット19.5cm×4カット分)だけミシン目を入れ、合計77回カットしたときに発生する紙粉量を測定した。
【0022】以上の測定実験の他、「柔らかさ」、「滑らかさ」、「しっかり感」、「ふんわり感」、「乾燥強度」、「紙粉量」について官能試験も行った。この官能試験では、男女各5人の合計10人のモニターにより5段階評価し、その平均評価を指標としたものである。結果を表1に示す。」
「【0034】
【表2】
[図:0001425459000001.jpg]
【0035】
【表3】
[図:0001425459000002.jpg]
」
表2の試験No.1の欄には、「ウェブプライ数が1、坪量16g/m2、エンボス最大径0.80mm、エンボス最小径0.40mm、エンボス深さ0.54mmのウェブ」が記載されている。
「【0037】なお、本実施例においては、エンボスの形状を菱形としたが、エンボスの形状は特に限定されるものではなく、菱形以外であっても円形、楕円形、多角形などとすることができる。また星型とすることも考えられるが、頂面に細長い形状の部分があるとその部分が破損しやすいため実用的ではない。」
「
[図:0001425459000003.jpg]
」
「
[図:0001425459000004.jpg]
」
(2)引用発明
上記(1)に摘記した引用文献1に記載された事項より、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている(なお、根拠となる段落等を併記した。)。
「トイレットロールにおいて(【0021】)、
ウェブプライ数が1、坪量16g/m2、エンボス最大径0.80mm、エンボス最小径0.40mm、エンボス深さ0.54mmであって(表2)、
エンボス付与ウェブWは、実質的に平坦な頂面Tを有し、その形状としては、菱形とされ、エンボス付与形態としては、長ピッチAが3.0mm、短ピッチBが1.4mmとされ、さらに、エンボス深さは0.54mmとされ、全体としていわゆる台形型のエンボスとされており、頂面T,T…はウェブ10mm四方にあたり約47個分形成されている(【0013】)
トイレットぺーパーに供するエンボス付与ウェブ(【0001】)。」
2 引用文献2記載の技術事項
(1) 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用され、本願の出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2014-233363号公報(平成26年12月15日公開)には、衛生薄葉紙ロール (発明の名称)に関し、次の事項が記載されている。
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ロール製品を構成する紙の坪量を下げると、強度が低下すると共に使用感や嵩高さが低下する。一方、これらの不具合を補うために紙の嵩を高くするため、カレンダー処理を弱めると、柔らかさや滑らかさが劣ったり、ロール径が大きくなってトイレットペーパーホルダーに収まり難くなる問題がある。また、エンボス処理を強めると、紙厚が高くなりすぎたり、紙の表裏の使用感の差が大きくなるなどの問題がある。また、坪量を下げずに、カレンダー処理を強くして紙厚を薄くすると、ロール径を小さくすることはできるが、柔らかさがなく、品質が劣る問題がある。
従って本発明は、坪量を下げずに風合いや使用感に優れると共に1ロール当りの巻長を長くし、持ち運びや保管時の省スペース性に優れた衛生薄葉紙ロールの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、衛生薄葉紙ロールは、1枚の衛生薄葉紙をロール状に巻き取った衛生薄葉紙ロールであって、前記衛生薄葉紙の1枚当りの坪量が16.5~21.5g/m2、かつ紙厚が0.6~1.1mm/10枚以下であり、当該衛生薄葉紙ロールの巻長が120~185m、巻直径が100~132mmである。」
「【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、坪量を下げずに風合いや使用感に優れると共に1ロール当りの巻長を長くし、持ち運びや保管時の省スペース性に優れた衛生薄葉紙ロールを得ることができる。」
「【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の好ましい実施形態につき説明するが、これらは例示の目的で掲げたものでこれらにより本発明を限定するものではない。
図1に示すように、本発明の実施形態に係る衛生薄葉紙ロール10は、1枚の衛生薄葉紙10xをロール状に巻き取ってなり、衛生薄葉紙の1枚当りの坪量が16.5~21.5g/m2、かつ紙厚が0.6~1.1mm/10枚以下であり、ロールの巻長(巻き取り長さ)が120~185m、巻直径DRが100~132mmである。巻長は、好ましくは145~185mmである。巻直径DRは、好ましくは100~125mmである。
1枚当りの衛生薄葉紙の坪量及び紙厚を上記範囲に調整する方法としては、詳しくは後述するが、衛生薄葉紙の原紙ウェブのカレンダー条件(カレンダー処理後の紙厚及び比容積、カレンダー処理前後の紙厚差)及びエンボス条件(エンボス処理後の紙厚及び比容積、エンボス処理前後の紙厚差)を規定する。
【0012】
衛生薄葉紙の1枚当りの坪量が16.5g/m2未満であるか、又は紙厚が0.6mm/10枚未満であると、強度が低下すると共に使用感(嵩高さ)も低下する。衛生薄葉紙の1枚当りの坪量が21.5g/m2を超えるか、又は紙厚が1.1mm/10枚を超えると、積層体が厚くなり、これを120m以上巻いたロールの巻直径が132mmを超え、トイレットペーパーホルダーに収まり難くなったり、紙の表裏の使用感の差が大きくなる。
ロールの巻長が120m未満であると、1ロール当りの巻長が短くなり、保管時の省スペースが図れない。ロールの巻長が185mを超えるものは、巻直径DR(ロールの外径)が132mmを超えてしまい、トイレットペーパーホルダー等に収まり難くなる。
衛生薄葉紙の1枚当りの坪量が好ましくは17.5~20.5g/m2であり、紙厚が好ましくは0.60~0.80mm/10枚である。
・・・
【0014】
衛生薄葉紙にはエンボスが付与され、ロール外側となる表面のTS750tは、ロール内側となる裏面のTS750bより低くなる。これは、表面のエンボスが凹になっており、裏面のエンボスが凸になっているため、裏面の方が粗く感じてTS750の値が高くなるためである。
そして、上記比Rは衛生薄葉紙の表裏面の触感の差を表し、比Rが2.30を超えると、表裏面の触感の差(滑らかさの表裏差)が大きくなり過ぎる。一方、比Rが1.06未満であると、エンボス深さが浅くなってエンボスが弱くなり、エンボスの見た目が悪くなる。」
「【実施例】
【0035】
パルプ組成(質量%)をNBKP10%、LBKP90%とし、この原料に対して、牛乳パック由来の古紙原料を35%配合し、図5、図6に示す装置により、表1に示す衛生薄葉紙及びそのロールを製造した。
【0036】
以下の評価を行った。
乾燥時の縦方向引張り強さDMDTと乾燥時の横方向引張り強さDCDT:JIS P8113に基づいて、1枚の衛生薄葉紙につき、破断までの最大荷重をN/25mmの単位で測定した。
坪量:JIS P8124に基づいて測定し、衛生薄葉紙1枚当たりに換算した。
紙厚:シックネスゲージ(尾崎製作所製のダイヤルシックネスゲージ「PEACOCK」)を用いて測定した。測定条件は、測定荷重3.7kPa、測定子直径30mmで、測定子と測定台の間に試料を置き、測定子を1秒間に1mm以下の速度で下ろしたときのゲージを読み取った。なお、カレンダー処理前のウェブについては、衛生薄葉紙を10枚重ねて測定を行い、カレンダー処理後およびロールについては、衛生薄葉紙を10枚重ねて行った。又、測定を10回繰り返して測定結果を平均した。そして、得られた1回当りの平均値を枚数で割って衛生薄葉紙1枚当りの紙厚とした。
比容積:衛生薄葉紙1枚当たりの厚さを1枚当たりの坪量で割り、単位gあたりの容積cm3で表した。
吸水度:旧JIS-S3104法に従い、温度23±1℃、湿度50±2%の状態で、0.01ml精製水を滴下し、水滴が1枚の衛生薄葉紙に吸収される時間(秒)を測定した。
ほぐれ易さ:JIS P4501に従い、衛生薄葉紙1枚のほぐれやすさを測定した。
ロールの巻直径DR:ムラテックKDS株式会社製ダイヤメータールールを用いて測定した。測定は、10個のロールを測定し、測定結果を平均した。
【0037】
DTS7、TS750の測定は、上記ティシューソフトネス測定装置TSAを用いて行った。測定条件も上記のとおりである。
官能評価は、モニター20人によって行った。評価基準は5点満点で行った。評価基準が3点以上であれば良好である。なお、「エンボスの見た目」は、モニターの目視により、エンボスの形状が視認できるか否かの評価である。
なお、坪量、引張強さ、厚さ、比容積、及びティシューソフトネス測定装置TSAによる測定は、JIS-P8111に規定する温湿度条件下(23±1℃、50±2%RH)で平衡状態に保持後に行った。
【0038】
得られた結果を表1、表2に示す。
【0039】
【表1】
[図:0001425459000005.jpg]
【0040】
【表2】
[図:0001425459000006.jpg]
」
表1の実施例1の欄には、「坪量17.0g/m2、巻長148m、巻直径117mmの衛生薄葉紙ロール」が、表2の比較例2の欄には、「坪量13.0g/m2、巻長150m、巻直径107mmの衛生薄葉紙ロール」が、それぞれ記載されている。
「【0041】
表1、表2から明らかなように、衛生薄葉紙の1枚当りの坪量が16.5~21.5g/m2、かつ紙厚が0.60~1.1mm/10枚以下である各実施例の場合、衛生薄葉紙ロールの巻長が120~185m、巻直径が100~132mmの範囲となり、坪量を下げずに風合いや使用感に優れると共に1ロール当りの巻長を長くすることができた。
【0042】
一方、紙厚が0.6mm/10枚未満である比較例1の場合、柔らかさに劣った。これは、カレンダーの線圧が8.5kg/cmを超えると共に、カレンダー処理前後の紙厚差ΔCが0.40mm/10枚を超え、比容積が3.0cm3/g未満となったためと考えられる。又、比較例1の場合、エンボス処理前後の紙厚差ΔEが0.18mm/10枚以上であったため、エンボス処理が弱くなった。
衛生薄葉紙の1枚当りの坪量が16.5g/m2未満である比較例2~4の場合、破れにくさが劣った。
衛生薄葉紙の1枚当りの坪量が21.5g/m2を超えた比較例5,6の場合、ロールの巻直径が132mmを超え、ペーパホルダに装着し難くなった。なお、比較例5は、エンボス処理前後の紙厚差ΔEが0.15mm/10枚を超え、エンボス処理が弱いため、柔らかさが劣った。又、比較例6は、カレンダー処理前後の紙厚差ΔCが0.40mm/10枚を超え、カレンダー処理が強すぎたために柔らかさが劣った。
【0043】
なお、R(TS750b/TS750t)が1.06未満となった比較例1、2、4,5の場合、エンボスの見た目が劣ったり(比較例2)、比容積が小さくなったり(比較例1、4)、柔らかさが劣った(比較例5)。一方、Rが2.30を超えた比較例6の場合、滑らかさの表裏差が大きくなった。
TS750tが12dBV2rms未満である比較例4の場合、滑らかではあったが、エンボス処理が十分ではなく、比容積が3.0cm3/g未満に小さくなった。TS750tが30dBV2rmsを超えた比較例3,5,6の場合、滑らかさが劣った。
TS7が14dBV2rms未満である比較例3の場合、柔らかさだけが際立ち、滑らかさが劣って良好な触感を得られなかった。
TS7が26dBV2rmsを超えた比較例1、5、6の場合、柔らかさが劣った。
Dが3.5mm/Nを超えた比較例3の場合、しなやかさが際立ちすぎる一方、DMDTが低くて破れやすく、又、滑らかさが劣り、全体の品質のバランスを欠いた。
Dが2.4mm/N未満である比較例5の場合、しなやかさが劣った。」
(2)引用文献2記載の技術事項
上記(1)に摘記した引用文献2に記載された事項より、引用文献2には次の事項(以下「引用文献2記載の技術事項」という。)が記載されている(なお、根拠となる段落等を併記した。)。
「エンボスが付与された(【0014】)衛生薄葉紙の1枚当りの坪量が16.5~21.5g/m2、巻長は、好ましくは145~185mmであり、巻直径DRは、好ましくは100~125mmである衛生薄葉紙ロール10(【0011】)において、坪量17.0g/m2、巻長148m、巻直径117mmの衛生薄葉紙ロール、また比較例として、坪量13.0g/m2、巻長150m、巻直径107mmの衛生薄葉紙ロール(表2)。」
第5 対比
本願発明と引用発明を対比する。
1 構成A及びGについて
引用発明の「ウェブプライ数が1」の「エンボス付与ウェブW」、「トイレットロール」は、それぞれ本願発明の「1プライのトイレットペーパー」、「トイレットロール」に相当する。
また、引用発明の「エンボス付与ウェブ」は「トイレットぺーパーに供する」ものであって「トイレットロール」として用いるものであるものの、ロール状に巻いているのかは明記されていないため、本願発明の構成Aと引用発明は「1プライのトイレットペーパー」の「トイレットロールであ」る点で共通する。
2 構成Dについて
引用発明の「ウェブプライ数が1」の「坪量」、「坪量16g/m2」「であ」ることは、それぞれ本願発明の「前記トイレットペーパーの1プライ当たりの坪量」、「14.0g/m2以上16g/m2以下であ」ることに相当する。
よって、引用発明は、本願発明の構成Dに相当する構成を有する。
3 構成Eについて
引用発明の「エンボス付与ウェブWにおいては、」「全体としていわゆる台形型のエンボスとされており、頂面T,T…はウェブ10mm四方にあたり約47個分形成されている」ことから、本願発明の「エンボス加工により形成されたエンボスパターンを有」することに相当する構成を有するといえる。
よって、引用発明は、本願発明の構成Eに相当する構成を有する。
4 構成Fについて
引用発明では、「エンボス最大径0.80mm」で「エンボス深さ0.54mm」あることから、本願発明の「1個のエンボス直径が0.5mm以上2.0mm以下である」ことに相当する構成を有するといえる。
よって、引用発明は、本願発明の構成Fに相当する構成を有する。
上記1~4からみて、本願発明と引用発明とは、
<一致点>
「A’1プライのトイレットペーパーのトイレットロールであって、
D 前記トイレットペーパーの1プライ当たりの坪量が14.0g/m2以上16g/m2以下であり、
E 前記トイレットペーパーは、エンボス加工により形成されたエンボスパターンを有し、
F 前記エンボスパターンでは、1個のエンボス直径が0.5mm以上2.0mm以下である
G トイレットロール。」
である点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点1(構成A)>
本願発明の「トイレットロール」は「1プライのトイレットペーパーを巻き取ってロール状とした」ものであるのに対して、
引用発明では、「ウェブプライ数が1」の「エンボス付与ウェブW」を巻き取ったものであるのかが明らかではない点。
<相違点2(構成B)>
「前記トイレットロールの巻長」に関して、
本願発明では、「95m以上150m以下であ」るのに対して、
引用発明では、「トイレットロール」の「トイレットぺーパーに供するエンボス付与ウェブ」であるものの、その巻長が明示されていない点。
<相違点3(構成C>
「前記トイレットロールの巻径」に関して、
本願発明では、「110mm以上120mm以下であ」るのに対して、
引用発明では、「トイレットロール」の「トイレットぺーパーに供するエンボス付与ウェブ」であるものの、その巻径が明示されていない点。
第6 判断
1 相違点1について
引用発明の「エンボス付与ウェブW」は「トイレットぺーパーに供する」ものであるから、「トイレットロール」にも用いることは明らかであり、「トイレットロール」はトイレットペーパーをロール状に巻き取ったものであることは技術常識であるから、上記相違点1は実質的な相違点ではない。
2 相違点2及び3について
上記相違点2及び3は密接に関連するため併せて検討する。
上記引用文献2記載の技術事項として、「エンボスが付与された衛生薄葉紙の1枚当りの坪量が16.5~21.5g/m2、巻長は、好ましくは145~185mmであり、巻直径DRは、好ましくは100~125mmである衛生薄葉紙ロール10」であって、具体的には、「坪量17.0g/m2、巻長148m、巻直径117mmの」「エンボスが付与された」「衛生薄葉紙の衛生薄葉紙ロール」が開示されている。
そして、トイレットロールの技術分野において、ロール径をほとんど変えずに1巻の長さを増加させたいという課題があることは技術常識(必要であれば、特開平10-272710号公報(特に、段落【0006】参照)、特開2009-112512号公報(特に、段落【0003】、【0004】参照)を参照。)であることに鑑みれば、引用発明及び引用文献2記載の技術は課題が共通しており、また、両者はエンボスが付されたトイレットロールという技術分野が同一であって、引用発明の坪量と引用文献2記載の技術事項での坪量の範囲の下限は、それぞれ「16g/m2」と「16.5g/m2」という近接した値である。
そうすると、「巻径」及び「巻長」について明示がない引用発明の「トイレットぺーパーに供するエンボス付与ウェブ」で「トイレットロール」を構成するにあたり、トイレットロールの技術分野において技術常識である課題を勘案して、引用文献2記載の技術事項の「巻長は、」「145~185mm」、「巻直径DRは、」「100~125mm」、具体的には、「巻長148m、巻直径117mm」という値を採用し、相違点2及び3に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。
また、本願発明の奏する効果は、引用発明及び上記引用文献2記載の技術事項が奏する効果から、当業者が予測することができた程度のものである。
2 請求人の主張について
(1)請求人は、審判請求書の「3.本発明1が引用発明に基づいて容易に発明できないことについて」において、以下のとおり主張する(下線は合議体が付した。)。
「令和2年11月4日発送の拒絶査定においては、引用文献1には、1プライのウェブを巻き取ってロール状としたエンボス付与ウェブであって、1プライ当たりの坪量が16g/m2であり、エンボス直径が0.80mm、エンボス深さが0.54mmのエンボス加工が施されたウェブが記載されており、該ウェブがトイレットペーパーとして好適に使用できることも記載されていることが指摘されている。ここで、引用文献1には、巻長が95m以上150m以下、巻径が110mm以上120mm以下となるトイレットロールを製造することが具体的には記載されていないが、引用文献2には、巻長が120~185m、巻直径が100~132mmである衛生薄葉紙ロールが記載されているから、引用発明1における1プライのウェブを巻き取ってロール状としたトイレットロールにおいて、巻長が95m以上150m以下、巻径が110mm以上120mm以下とすることは、当業者にとって容易であると認定されている。
しかしながら、引用発明1の試験No.1における1プライのエンボス付与ウェブの坪量は16g/m2である一方で、引用発明2は、衛生薄葉紙の1枚当りの坪量が16.5~21.5g/m2の衛生薄葉紙ロールに関する発明であり、引用発明1におけるエンボス付与ウェブの坪量と、引用発明2における衛生薄葉紙ロールの坪量の範囲は異なっている(長巻きのトイレットロールを開示した引用文献2の方が1プライあたりの坪量の範囲が大きくなっている)。通常、坪量が低く、かつエンボス加工が施されたウェブの方が長巻きのロールを形成する際の工程における巻きテンションに耐えられず、長巻きには不適であると考えられるため、引用文献1と引用文献2に接した当業者であっても、引用発明1における1プライのエンボス付与ウェブを、引用文献2に記載された巻長や巻径となるように長巻きとすることを動機づけられることはない。具体的には、引用文献1の試験No.1に開示されているような1プライ当たりの坪量が16g/m2であり、エンボス直径が0.80mm、エンボス深さが0.54mmのエンボス加工が施された1プライのウェブでは、その引張強度が低下するため、そのような1プライのトイレットペーパーに張力を加えた状態で巻長が95m以上150m以下、巻径が110mm以上120mm以下となるような、所謂長巻のトイレットロールを作製しようとした場合、トイレットペーパーの破損が生じるなどの不具合が生じることが予想される。このため、低坪量の1プライのトイレットペーパーにエンボス加工を施した上で、巻長が95m以上150m以下、巻径が110mm以上120mm以下となるトイレットロールを製造することを当業者は動機づけられることはない。
また、仮に引用発明1に引用文献2に記載された内容を組み合わせて、引用発明1の試験例No1の1プライのエンボス付与ウェブを巻長が120~185m、巻直径Dが100~132mmとなるように巻き取った場合、トイレットペーパーの風合いや使用感を損なう可能性が非常に高く、滑らかさ、しなやかさ、ふんわり感、柔らかさなどの性質に優れるエンボス付与ウェブを得るという引用発明1の課題を解決することができない。このため、引用発明1における課題を理解できる当業者であれば、引用発明1に引用文献2に記載された事項を組み合わせることを動機づけられることはない。」
(2)請求人の主張について検討する。
請求人は、上記(1)のとおり、特に、「引用文献1の試験No.1に開示されているような1プライ当たりの坪量が16g/m「^2であり、・・・その引張強度が低下するため、・・・トイレットペーパーの破損が生じるなどの不具合が生じることが予想される。このため、低坪量の1プライのトイレットペーパーにエンボス加工を施した上で、巻長が95m以上150m以下、巻径が110mm以上120mm以下となるトイレットロールを製造することを当業者は動機づけられることはない。」と主張している。
しかしながら、引用文献2記載の技術事項における「坪量13.0g/m2、巻長150m、巻直径107mmの衛生薄葉紙ロール」に関して、【0040】の【表2】の評価では、「破れにくさ」は評価が「1」となっており、【0042】には「衛生薄葉紙の1枚当りの坪量が16.5g/m2未満である比較例2~4の場合、破れにくさが劣った。」と記載されているに留まり、その適用を阻害するほどの事情があるとはいえず、引用発明の「坪量16.0g/m2」の「トイレットロール」に引用文献2記載の技術事項を採用することを動機づけられることがないとはいえない。
次に、請求人は、上記(1)のとおり、特に、「仮に引用発明1に引用文献2に記載された内容を組み合わせて、引用発明1の試験例No1の1プライのエンボス付与ウェブを巻長が120~185m、巻直径Dが100~132mmとなるように巻き取った場合、トイレットペーパーの風合いや使用感を損なう可能性が非常に高く、滑らかさ、しなやかさ、ふんわり感、柔らかさなどの性質に優れるエンボス付与ウェブを得るという引用発明1の課題を解決することができない。」と主張している。
しかしながら、引用文献2記載の技術事項における「坪量13.0g/m2、巻長150m、巻直径107mmの衛生薄葉紙ロール」に関して、【0040】の【表2】の評価では、「滑らかさ」は「3」、しなやかさは「5」、「柔らかさ」は「5」となっており、「坪量17.0g/m2、巻長148m、巻直径117mmの衛生薄葉紙ロール」が、表2の比較例2の欄には、「坪量13.0g/m2、巻長150m、巻直径107mmの衛生薄葉紙」に関しての、【0039】の【表1】の評価で、「滑らかさ」は「5」、しなやかさは「5」、「柔らかさ」は「5」であることを勘案すると、両者の間の値である引用発明の「坪量16.0g/m2」の「トイレットロール」に引用文献2記載の技術事項を採用することを動機づけられることがないとはいえない。
また、「ふんわり感」については、エンボスによるものであるから(引用文献1の【0027】参照)、引用文献2記載の技術事項を採用する際の動機付けの検討には関係しない。
よって、上記請求人の主張は採用できない。
3 まとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び上記引用文献2記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
第7 むすび
本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-009207