特許拒絶査定不服審判
2024-018881
保湿ペーパータオル製品
- 審判番号
- 2024-018881
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-083077
- 請求日
- 2024年11月26日
- 審決日
- 2026年04月20日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】王子ホールディングス株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人谷・阿部特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 居島 一仁
- 審判官 小島 寛史
- 審判官 岡崎 彦哉
- 分類
- P18 .121-Z (A47K) / P18 .575-Z (A47K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-83077「保湿ペーパータオル製品」拒絶査定不服審判事件〔令和4年11月30日出願公開、特開2022-176573〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和3年5月17日の出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和6年 4月30日付け:拒絶理由通知書
同年 6月24日 :意見書の提出
同年 9月 5日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月17日 :原査定の謄本の送達)
同年11月26日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和7年 3月11日付け:前置報告書
同年 5月19日 :上申書の提出
第2 令和6年11月26日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年11月26日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和6年11月26日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正をするものであり、本件補正により、次の(1)に示す本件補正前の特許請求の範囲の請求項2の記載は、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正された。なお、本件補正前の特許請求の範囲の請求項2は、同請求項1の記載を引用するものであるから、本件補正前の請求項1の記載も併せて示している。また、下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前
「【請求項1】
複数のペーパータオルがポップアップ方式に折り畳まれ積層された積層体と、取出口を有し当該取出口を通して前記ペーパータオルをポップアップして取り出し可能に前記積層体を収納する包装体と、を備える保湿ペーパータオル製品であって、
前記ペーパータオルは、保湿剤を含有するとともに全面エンボスを有しない2枚のシートが接合エンボスにより部分的に接合された2プライの保湿ペーパータオルであり、
前記保湿ペーパータオルにおける前記シートの1枚当たりの坪量は、15.0g/m2以上30.0g/m2以下であり、
2プライの乾燥引張強度(縦方向)は、6.0N/25mm以上25.0N/25mm以下であり、
2プライの乾燥引張強度(横方向)は、2.5N/25mm以上20.0N/25mm以下であり、
2プライの湿潤引張強度(縦方向)は、2.0N/25mm以上10.0N/25mm以下であり、
2プライの湿潤引張強度(横方向)は、0.7N/25mm以上5.0N/25mm以下であることを特徴とする保湿ペーパータオル製品。
【請求項2】
前記保湿ペーパータオルはパルプを含み、前記保湿ペーパータオルにおける前記保湿剤の含有量は、対パルプ質量比で、2%以上13%以下であることを特徴とする請求項1に記載の保湿ペーパータオル製品。」
(2) 本件補正後
「【請求項1】
複数のペーパータオルがポップアップ方式に折り畳まれ積層された積層体と、取出口を有し当該取出口を通して前記ペーパータオルをポップアップして取り出し可能に前記積層体を収納する包装体と、を備える保湿ペーパータオル製品であって、
前記ペーパータオルは、保湿剤を含有するとともに全面エンボスを有しない2枚のシートが接合エンボスにより部分的に接合された2プライの保湿ペーパータオルであり、
前記保湿ペーパータオルにおける前記シートの1枚当たりの坪量は、15.0g/m2以上30.0g/m2以下であり、
2プライの乾燥引張強度(縦方向)は、6.0N/25mm以上25.0N/25mm以下であり、
2プライの乾燥引張強度(横方向)は、2.5N/25mm以上20.0N/25mm以下であり、
2プライの湿潤引張強度(縦方向)は、2.0N/25mm以上10.0N/25mm以下であり、
2プライの湿潤引張強度(横方向)は、0.7N/25mm以上5.0N/25mm以下であり、
前記保湿ペーパータオルはパルプを含み、前記保湿ペーパータオルにおける前記保湿剤の含有量は、対パルプ質量比で、5%以上10%以下であることを特徴とする保湿ペーパータオル製品。」
2 補正の目的
本件補正のうち補正前の請求項2(補正後の請求項1)についてする補正は、本件補正前の請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記保湿ペーパータオルにおける前記保湿剤」の「対パルプ質量比」での「含有量」である「2%以上13%以下」について、「5%以上10%以下」に限定するものである。
そして、本件補正前の請求項2に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正により補正前の請求項2(補正後の請求項1)についてする補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
3 独立特許要件の判断
本件補正は、前記2のとおり、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するから、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。
(1) 本件補正発明
ア 本件補正発明の認定と分説
本件補正発明は、前記1(2)に示した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
ここで、検討の便宜上、本件補正発明の構成を次のとおり構成Xと構成Aから構成Dまでに分説する。
<本件補正発明の分説>
X 複数のペーパータオルがポップアップ方式に折り畳まれ積層された積層体と、取出口を有し当該取出口を通して前記ペーパータオルをポップアップして取り出し可能に前記積層体を収納する包装体と、を備える保湿ペーパータオル製品であって、
A 前記ペーパータオルは、保湿剤を含有するとともに全面エンボスを有しない2枚のシートが接合エンボスにより部分的に接合された2プライの保湿ペーパータオルであり、
B 前記保湿ペーパータオルにおける前記シートの1枚当たりの坪量は、15.0g/m2以上30.0g/m2以下であり、
C1 2プライの乾燥引張強度(縦方向)は、6.0N/25mm以上25.0N/25mm以下であり、
C2 2プライの乾燥引張強度(横方向)は、2.5N/25mm以上20.0N/25mm以下であり、
C3 2プライの湿潤引張強度(縦方向)は、2.0N/25mm以上10.0N/25mm以下であり、
C4 2プライの湿潤引張強度(横方向)は、0.7N/25mm以上5.0N/25mm以下であり、
D 前記保湿ペーパータオルはパルプを含み、前記保湿ペーパータオルにおける前記保湿剤の含有量は、対パルプ質量比で、5%以上10%以下である
X ことを特徴とする保湿ペーパータオル製品。
イ 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。なお、下線は、当合議体において付したものである。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、ペーパータオルをポップアップ式に順次取出し可能な、ペーパータオルの積層体が包装体に収納されたペーパータオル製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポップアップ方式に折り畳まれた2プライのペーパータオルの積層体が包装体に収納されているとともに、包装体にはペーパータオルを順次取出し可能とするスリット等の取出口が形成されており、包装体の取出口を通して2プライのペーパータオルをポップアップして順次に取り出すことができる、ペーパータオル製品が知られている(特許文献1)。
【0003】
この種のペーパータオル製品は、水まわりでハンドタオル等として使用されることがある。そのような用途上、ペーパータオルには、乾燥状態だけでなく湿潤状態においても丈夫さが求められる。そのため、ペーパータオルは、概して、ティシュペーパーと比較して乾燥引張強度および湿潤引張強度が高くなるように構成される。また、ペーパータオルの製法上、ペーパータオルの縦方向(MD方向)の乾燥引張強度および湿潤引張強度は、それぞれ、その横方向(CD方向)の乾燥引張強度および湿潤引張強度よりも高くなる。
【0004】
ペーパータオルをポップアップ方式に折り畳む折り機としては、折り板式インターフォルダおよびロータリーシリンダー式インターフォルダなどが用いられる。折り板式インターフォルダは、ペーパータオルを、ペーパータオルの縦方向(MD方向)に沿って折り畳む構成を有する。また、ロータリーシリンダー式インターフォルダは、ペーパータオルを縦方向と交差する横方向(CD方向)に沿って折り畳む構成を有する。すなわち、ペーパータオルの折り畳みに折り板式インターフォルダを用いたときには、包装体の取出口を通してペーパータオルを取り出すときに、ペーパータオルが相対的に乾燥引張強度の弱い横方向(CD方向)に引き出される構成の積層体が得られる。また、ペーパータオルの折り畳みにロータリーシリンダー式インターフォルダを用いたときには、ペーパータオルが相対的に乾燥引張強度の強い縦方向(MD方向)に引き出される構成の積層体が得られる。
…(中略)…
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ペーパータオル製品では、その用途上、ペーパータオルの使用時にペーパータオルが肌に触れるため、ペーパータオルを柔らかくすることが望ましい。具体的には、ティシュペーパーやトイレットペーパーと同様に、保湿剤を含有させて、ペーパータオルに柔らかさを与えることが望ましい。
【0007】
また、ペーパータオル製品では、ペーパータオルを水まわりでハンドタオル等として使用するときに、手や指等に付着した水滴が包装体の取出口を通して包装体の内部に浸入しないように、包装体の取出口をできるだけ幅狭とすることが望ましい。
【0008】
しかしながら、ペーパータオルの製造において、ペーパータオルの柔らかさを増大させるために保湿剤の含有量を増やしていくと、ペーパータオルの乾燥引張強度や湿潤引張強度が共に低下する傾向にある。そのため、所望の柔らかさを得ようとした場合に、十分な乾燥引張強度および湿潤引張強度が得られず、包装体の取出口を通してペーパータオルを取り出すときにペーパータオルに作用する引張力によりペーパータオルが不用意に破れるといった問題が生じる。
【0009】
かかる破れの問題は、特にはペーパータオル製品の使い始めにおいて、すなわち、ペーパータオル製品の包装体に収容されている積層体の体積が大きいとき(ペーパータオルの量が多いとき)に顕著となる。
【0010】
かかる破れの問題は、ペーパータオル製品を製造する際に、ペーパータオルの取り出し時にペーパータオルが相対的に乾燥引張強度の強い縦方向(MD方向)に引き出されるようにペーパータオルの積層体を構成することで、ある程度対処し得る。しかしながら、その場合、ペーパータオルの折り畳みにロータリーシリンダー式インターフォルダを用いる必要があるなど、ペーパータオルを折り畳む折り機の選択が制限されるという問題がある。
【0011】
また、かかる破れの問題は、ペーパータオル製品の使用時に手や指等に付着した水滴が包装体の取出口を通して包装体の内部に浸入するのを防止する効果をより高めるために、包装体の取出口をより幅狭にしようとすると、より顕著になる。これは、包装体の取出口を通してペーパータオルを取り出すときのペーパータオルの取り出し抵抗がより大きくなり、それに伴って、ペーパータオルを取り出すときペーパータオルに作用する引張力が増大するためであると考えられる。
【0012】
したがって、本発明は、保湿剤の含有により柔らかさを有ししつつも、強度が保証された保湿ペーパータオル製品の提供を目的とする。より具体的には、本発明は、保湿剤の含有により柔らかさを有ししつつも、ペーパータオルを折り畳む折り機の選択が制限されることのない強度を有する、柔らかさと強度とを兼ね備えた保湿ペーパータオル製品の提供を目的とする。さらには、本発明は、水まわりでハンドタオル等として使用するときであっても、手や指等に付着した水滴が包装体の取出口を通して包装体の内部に浸入するのを、取り出した後のペーパータオルに皺が生じて使いにくくなるなどの不都合なしに、効果的に防止することのできる、柔らかさと強度とを兼ね備えた保湿ペーパータオル製品の提供を目的とする。
…(中略)…
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、保湿剤の含有により柔らかさを有しつつも、ペーパータオルをポップアップ式に折り畳む折り機の選択が制限されることのない強度を有する、柔らかさと強度とを兼ね備えた保湿ペーパータオル製品を提供することができる。さらに、本発明によれば、水まわりでハンドタオル等として使用するときであっても、手や指等に付着した水滴が包装体の取出口を通して包装体の内部に浸入するのを、取り出した後のペーパータオルに皺が生じて使いにくくなるなどの不都合なしに、効果的に防止することのできる、柔らかさと強度とを兼ね備えた保湿ペーパータオル製品を提供することができる。」
「【0034】
[保湿剤]
本実施形態に係るペーパータオル40には、保湿剤が付与されている。保湿剤が付与されたペーパータオルは、「保湿ペーパータオル」とも称される。本発明の実施形態に適用可能な保湿剤は、吸湿性によって紙中に水分を取り込み、水分率を上昇させる作用を有するポリオールを主成分とする。そのため、本実施形態に係るペーパータオル40は、ポリオールを含む。ポリオールは、2個以上のヒドロキシ基-OHを持った脂肪族化合物であり、吸湿性による水分率向上の効果を奏する。保湿剤には、吸湿性を有する糖類も含まれる。…(中略)…特に好適なポリオールは、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコールおよびそれらを混合したものであり、その中でも特にグリセリン、ジグリセリンおよびこれらの混合物がよい。
【0035】
本実施形態に係るペーパータオル40は、保湿剤を含んでいることにより、水分率が高くなり、それによって、柔らかさに優れるという効果を奏し得る。」
「【0038】
[引張強度]
本実施形態に係るペーパータオル40は、以下に示す引張強度の要件を満たす。
…(中略)…
【0040】
引張強度DTM、DTC、WTM、WTCを上述の範囲内としたとき、縦方向の乾燥引張強度DTMおよび横方向の乾燥引張強度DTCは共に高いため、2プライのペーパータオル40の折り畳みに折り板式インターフォルダおよびロータリーシリンダー式インターフォルダのいずれを用いても、包装体20の取出口22aから取り出される際にペーパータオル40が不用意に破れることがない。したがって、ペーパータオル40を折り畳む際の折り畳み方向を選ばないため、折り機の選択が制限されることがない。また、包装体20の取出口22aの幅Woを幅狭としても、取出口22aから取り出される際にペーパータオル40が破れることが防止される。そのため、包装体20の取出口22aを幅狭とすることによって、包装体20の取出口22aから包装体20の内部への水の浸入を、不都合なく効果的に防止することができる。
【0041】
また、引張強度DTM、DTC、WTM、WTCを上述の範囲内としたとき、縦方向の湿潤引張強度WTMおよび横方向の湿潤引張強WTCは共に高いため、手に付着した水分を拭き取るような用途で用いられる際に、ペーパータオルが不用意に破れることがない。」
「【0055】
第2の実施形態の保湿ペーパータオル製品において、保湿ペーパータオルはパルプを含み、保湿ペーパータオルにおける保湿剤の含有量は、対パルプ質量比で2質量%以上13質量%以下であり、好ましくは3質量%以上11質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上10質量%以下である。
【0056】
保湿ペーパータオルにおける保湿剤の含有量が、対パルプ質量比で2質量%未満であると、保湿剤の効果が小さく所望の柔らかさを得ることができない。また、保湿ペーパータオルにおける保湿剤の含有量が、対パルプ質量比で13質量%を超えると、保湿剤の効果が大きく、柔らかさは得られるものの、十分な強度(湿潤引張強度・乾燥引張強度)が得られない。
【0057】
保湿ペーパータオルにおける保湿剤の含有量を、対パルプ質量比で2質量%以上13質量%以下とすることで、柔らかさと強度とのバランスに優れた保湿ペーパータオル製品が得られる。」
(2) 引用文献の記載事項及び引用発明等の認定
ア 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
(ア) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である特開2012-214967号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。なお、当合議体により、後記(イ)の引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。
a 【0001】~【0006】
「【技術分野】
【0001】
本発明は、基材シートに薬液が塗布された衛生薄葉紙に係り、特に薬液を使用者の肌に効率的に転写できる衛生薄葉紙に関する。
【背景技術】
【0002】
看護師や介護士などの医療関係者や美容師などは、手作業が多く、洗剤を用いて頻繁に手を洗うことが多いことから、手の肌荒れに悩む人が多い。このため、手の肌荒れを防止するローション剤、すなわち薬液を塗布したペーパータオル等の衛生薄葉紙が使用されている。
【0003】
例えば、使用者が濡れた手で衛生薄葉紙を触ると、使用者の手肌に薬液が転写することで、使用者の手肌を保護する衛生薄葉紙が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】 特表2009-518559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1においては、薬液を使用者の肌に効率的に転写させるための衛生薄葉紙の定量的な設計条件は具体的に記載されていない。例えば、衛生薄葉紙の基材シートとなる原紙仕様と薬液の成分等の関係について、定量的な設計条件は記載されていない。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであって、衛生薄葉紙に塗布した薬液を、効率よく手や肌へ転写するものであり、手肌に目的とする十分な薬液量を転写し、しかも手や肌へのべたつき感の少ない衛生薄葉紙を提供するものである。そして、衛生薄葉紙において、薬液を使用者の肌へ効率的に転写させるための定量的な設計条件を明らかにすることを課題とする。」
b 【0011】~【0027】
「【0011】
以下、本発明に係る衛生薄葉紙の実施の形態を詳細に説明する。以下、本発明に係る実施の形態では、衛生薄葉紙をペーパータオルとして説明する。
【0012】
本発明に係るペーパータオルは、パルプにより構成された基材シートに薬液を含有したものである。なお、本発明に係る基材シートは、一層構造であることに限らず、複数のパルプ層が積層された積層構造をなすシートであってもよい。
…(中略)…
【0017】
また、原料パルプから基材シートを製造する際には、かかる原料パルプに乾燥紙力剤及び湿潤紙力剤を添加するのが好ましい。湿潤紙力剤は、基材シートの湿潤引張強度を向上させる作用を有し、乾燥紙力剤は、湿潤紙力剤の基材への定着性を向上させる作用を有する。
【0018】
乾燥紙力剤としては、例えば、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等を用いることができる。また、湿潤紙力剤としては、例えば、ポリアミド・エピクロロヒドリン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂等を用いることができる。
【0019】
基材シートの乾燥引張強度は、JIS P 8113(1998)の引張試験方法に準じて測定され、その中でJIS P 8111(1998)に規定された標準条件下で、縦方向及び横方向に幅25mmに裁断し測定した。測定結果は、cN/25mmを単位とする。縦方向1500~4300cN/25mm、横方向400~2500cN/25mmのものを用いるのが好ましい。また、基材シートの湿潤引張強度は、JIS P 8135(1998)7.2.1に記載される部分浸漬法の垂直方向引張法の引張試験方法に準じて測定され、縦方向500~2000cN/25mm、横方向150~2000cN/25mmのものを用いるのが好ましい。これらの引張強度は、低過ぎると手を拭いた時にシートが破れてしまい、ペーパータオルとしての使用に耐えられない。一方で、これらの引張強度は、高過ぎるとペーパータオルの柔軟性が低下することとなり、ペーパータオルに手を押し付ける際に、十分な量の薬液を転写させることが困難となる。
【0020】
また、基材シートの1プライ(1P)あたりの米坪は、15~50g/m2、好ましくは18~35g/m2とすることが好ましい。米坪が15g/m2未満では、柔らかさの向上の観点からは好ましいものの、使用に耐えうる十分な強度を適正に確保することが困難となる。逆に、米坪が50g/m2を超えるとペーパータオル全体が硬くなるとともに、ゴワ付き感が生じてしまい肌触りが悪くなる。なお、米坪は、JIS P 8124(1998)の米坪測定方法による。
…(中略)…
【0023】
使用者が濡れた手で使用した場合に、水の添加によって水性ゲルを形成することで、使用者の手肌へ転写が可能な薬液が用いられる。
薬液には、ペーパータオルに添加される公知の薬剤をいずれも使用できる。
薬液の成分としては、セタノールに代表される常温(25℃)で固形の高級アルコール等の固形油性成分、流動パラフィンに代表される常温(25℃)で液体の液状油性成分等が適宜配合されるが、このほかに保湿成分としてグリセリン等の多価アルコール、糖類、アロエエキス等の天然保湿成分、乳化剤、界面活性剤、水分等の原料で構成される。
より具体的には、薬液の成分としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両性イオン界面活性剤のうちのいずれかを柔軟剤として含有させてもよく、また、保湿剤として、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール、ソルビトール、グルコース、キシリトール、マルトース、マルチトール、マンニトール、トレハロース等の糖類、グルコール系薬剤およびその誘導体、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコール、流動パラフィン、コラーゲン、アロエエキス、加水分解コラーゲン、加水分解ケラチン、加水分解シルク、ヒアルロン酸若しくはその塩、セラミド等の1種以上を任意の組合せで用いることができる。これらの使用によって、薄葉紙の柔軟性及び吸水性が高まる。さらには、ビタミンC、ビタミンEの抗酸化剤やポリシロキサン等のシリコーン類を含有させてもよい。いうまでもなく薬液成分には手肌にやさしい薬剤を使用する必要がある。
【0024】
なお、薬液における薬液中の固形油性成分比率は、7.5~27.5%、より好ましくは8.8~20.0%とするのが良い。固形油性成分は、薬液中に乳化させて分散させている。従って、薬液をシートに塗布した段階で、グリセリン及び液状油性成分はシートのパルプ繊維に吸収され、固形油性成分はシートの繊維に絡みついた状態になっていると考えられる。また、手を拭いた際に固形成分が手に転写されることで薬液の効果を発揮する。これは、例えば、手にクリームを塗るように、固形油性成分が塗布されたことにより手のさらさら感が向上するものと考えられる。このため、薬液における固形油性成分は、少なすぎると十分なさらさら感が発現せず、逆に多すぎると手が過剰に被覆されるため、べたつきの原因となる。
【0025】
また、基材シートへの薬液の塗布量は、シート1枚の塗布量(シート1枚が1プライからなる場合の1プライの塗布量又はシート1枚が2プライからなる場合の2プライの合計塗布料)を2.5~5.5g/m2、より好ましくは3.5~5.3g/m2とすることが好ましい。薬液の塗布量が2.5g/m2より少ないと薬液の効果が発揮されず、また、5.5g/m2を超えるとペーパータオルにべたつき感が生じる。2プライの場合、2プライの両シートが含有する薬液量はほぼ同等とする。
【0026】
また、薬液における薬液中の液状油性成分比率は、22.5%以下、より好ましくは17%以下とするのが良い。後述する品質評価試験及び官能評価試験から液状油性成分が手に塗布されることにより手のさらさら感を向上させる効果はあるが、多量に含まれると手のさらさら感を阻害するため、べたつく結果となった。これは、液状油性成分は、一般的に固形油性成分よりも分子量が低いことがべたつきの原因になると考えられる。
【0027】
また、薬液における薬液中のグリセリン比率は、50%以下、より好ましくは30%以下とするのが良い。薬液におけるグリセリンが50%を越えると、べたつき感が発露してしまう傾向にあるためである。これは、グリセリンが一般的に液状油性成分よりも分子量が低いためであると考えられる。」
c 【0028】~【0042】
「【0028】
次に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、勿論本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、例中の%は質量%を示す。
【0029】
[実施例]
実施例1~8として、米坪、薬液塗布量、ソフトネス、及び吸水度が、表1に示す値を有するペーパータオルを作成した。
なお、このペーパータオルの作成に用いた基材シートの品質及び抄造条件と、薬液の物性は表1に示す通りである。また、乾燥紙力剤(ポリアクリルアミド樹脂、商品名:DS4638、星光PMC社製、固形分15~25%)および湿潤紙力剤(ポリアミド・エピクロロヒドリン樹脂、商品名:WS4024、星光PMC社製、固形分20~30%)を柔軟剤(固形分70~90%)とともに表1に示す使用量を添加した。
また、米坪、薬液塗布量、ソフトネス、吸水度の測定方法は以下の通りである。
【0030】
(米坪)
米坪は、JIS P 8124(1998)に準じて測定した。
(薬液塗布量)
薬液塗布量は、操業中にプライ後の薬液を塗布しない場合の基材シート米坪と、対応する塗布した直後の各々の基材シート米坪との差異により算出した。
(塗布量g/m2)=(塗布直後の米坪g/m2)-(塗布しない場合の米坪g/m2)
…(中略)…
【0031】
[比較例]
比較例1~9として、米坪、薬液塗布量、ソフトネス、及び吸水度が、表2に示す値を有するペーパータオル及び比較例10、11として、米坪、薬液塗布量、ソフトネス、及び吸水度が、表2に示す値を有するローション剤を塗布したティシューを作成した。
なお、このペーパータオル及びローション剤を塗布したティシューの作成に用いた基材シートの品質及び抄造条件と、薬液の物性は表2に示す通りである。
また、米坪、薬液塗布量、ソフトネス、吸水度の測定方法は実施例と同様である。
【0032】
【表1】
[図:0001436807000001.jpg]
【0033】
【表2】
[図:0001436807000002.jpg]
…(中略)…
【0038】
<総合評価>
上記の品質評価試験及び官能評価試験により、実施例1~8におけるペーパータオルは、比較例1~9と比較して、転写量が好適であって、手触りも良好であることが明らかとなった。つまり、実施例1~8におけるペーパータオルは、手への薬液の転写効率が良好でありながら、薬液のべたつきの抑えられたものであることが明らかとなった。
【0039】
以上のように、本実施の形態によれば、基材シートの1プライあたりの米坪が、15~50g/m2であって、薬液における固形油性成分が、7.5~27.5%の設計条件であるペーパータオルは、転写量が好適であって、手触りも良好であることが明らかとなった。つまり、上記ペーパータオルは、手への薬液の転写効率が良好でありながら、薬液のべたつきの抑えられたものであることが明らかとなった。
このため、衛生薄葉紙において、薬液を使用者の肌へ効率的に転写させるための定量的な設計条件を明らかにすることが可能となった。
【0040】
また、上記設計条件でペーパータオルを設計すれば、使用者が濡れた手でペーパータオルを使用した場合に、効率的に薬液を使用者の手肌へ転写させることができるので、使用者の手の肌荒れを防止することができる。
【0041】
また、基材シートに薬液を塗布することで、ペーパータオルに柔らか感を出すことができ、使用者が荒れた手で手を拭いても使用者が痛みを感じるのを防ぐことができる。
【0042】
また、基材シートへの薬液の塗布量を2.5~5.5g/m2とすることで、より効率的に薬液を使用者の肌へ転写させることが可能となる。」
(イ) 引用文献1の記載から読み取れる事項の認定
引用文献1には、「ペーパータオル」について記載されているところ(【0012】等)、ペーパータオルが包装体に収納されて製品とされるものであることは技術常識であるから、引用文献1には、次の技術事項(以下「認定事項1」という。)が開示されていると認められる。
<認定事項1>
「ペーパータオルと、前記ペーパータオルを収納する包装体と、を備えるペーパータオル製品。」
(ウ) 引用発明の認定
前記イにおいて認定した事項及び前記アに摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、【表1】の実施例7に係る次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。
<引用発明>
「ペーパータオルと、前記ペーパータオルを収納する包装体と、を備えるペーパータオル製品であって、(認定事項1)
ペーパータオルは、パルプにより構成された基材シートに薬液を含有したものであり、(【0012】)
基材シートの乾燥引張強度は、縦方向1500~4300cN/25mm、横方向400~2500cN/25mmのものを用いるのが好ましく、基材シートの湿潤引張強度は、縦方向500~2000cN/25mm、横方向150~2000cN/25mmのものを用いるのが好ましく、(【0019】)
基材シートの1プライ(1P)あたりの米坪は、15~50g/m2、好ましくは18~35g/m2とすることが好ましく、(【0020】)
薬液の成分としては、セタノールに代表される常温(25℃)で固形の高級アルコール等の固形油性成分、流動パラフィンに代表される常温(25℃)で液体の液状油性成分等が適宜配合されるが、このほかに保湿成分としてグリセリン等の多価アルコール、糖類、アロエエキス等の天然保湿成分、乳化剤、界面活性剤、水分等の原料で構成され、(【0023】)
より具体的には、薬液の成分としては、保湿剤として、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコール、流動パラフィン等の1種以上を任意の組合せで用いることができ、(【0023】)
薬液における薬液中のグリセリン比率は、50%以下、より好ましくは30%以下とするのが良く、(【0027】)
実施例7のペーパータオルについて、基材シートの1プライ(1P)あたりの米坪が15.5g/m2であり、基材シートのプライ数が2であり、薬液中のグリセリン比率が25.0%であり、液状油性成分(25℃)比率が15.0%であり、固形油性成分(25℃)比率が7.5%であり、ペーパータオル/製品の1プライ(1P)あたりの米坪が17.5g/m2であり、ペーパータオル/製品の乾燥引張強度は、縦方向1717cN/25mm、横方向492cN/25mmであり、同湿潤引張強度は、縦方向562cN/25mm、横方向164cN/25mmであり、ペーパータオル/製品への薬液塗布量が4.0g/m2である、(【0029】、【0032】【表1】)
ペーパータオル製品。(認定事項1)」
イ 引用文献2の記載事項及び引用文献2技術事項の認定
(ア) 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である国際公開第2020/110835号(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。
a [0001]~[0005]
「技術分野
[0001] 本発明は、シート包装体に関する。
背景技術
[0002] ティシューペーパー等の衛生薄葉紙は、カートン(厚紙の箱)に収容されたものが普及している。ところが、カートンタイプの衛生薄葉紙は、持ち運びや保管の際に嵩張ることや、使用後の廃棄、環境負荷、コスト等の問題があることから、近年、衛生薄葉紙等のシートが可撓性のフィルム包装袋に収容されたシート包装体の需要が高まっている。例えば、特許文献1には、衛生用紙が収容された可撓性フィルムの包装袋に、衛生用紙を取り出すためのスリット(ミシン目)が形成されたフィルム包装体が開示されている(図8参照)。
先行技術文献
特許文献
[0003]
特許文献1 特開2016-188092号公報
発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0004] しかしながら、従来のシート包装体は、ミシン目等のスリットで形成された取出口が狭く、包装袋内から薄葉紙(シート)を取り出す際に、取出口が開きにくい。また、シートを取り出す際に、シートが取出口に引っかかったり、シートが破れたりすることがある(図8参照)。また、フィルム包装袋にスリットで形成された取出口では、使用中にシートの保持力が低下して、シートが包装袋内に落ち込むことがある。さらに、フィルム包装袋はカートンに比べて軽量なため、使用中に残りのシートが少なくなると、シートを取り出す際にフィルム包装袋ごと持ちあがることがある。このように、従来のシート包装体は、シートの取出しに問題がある。
[0005] 本発明の課題は、シートの取出しに優れるシート包装体を提供することである。」
b [0010]~[0023]、[図1]、[図4]
「[0010] 図1は、本発明の実施形態のうちの第1実施形態に係るシート包装体を示す図である。図2は、第1実施形態に係るシート包装体を高さ方向の上方から見た図である。図3は、図2に示すシート包装体において、取出口の一部を拡大した図である。図4は、第1実施形態に係るシート包装体の使用状態を示す図である。なお、図1~図4に示すシート包装体100においては、長手方向(左右方向)をX方向とし、奥行方向(前後方向)をY方向とし、高さ方向(上下方向)をZ方向とする。以下、本実施形態に係るシート包装体100について説明する。」
「[図1]
[図:0001436807000003.jpg]
[図4]
[図:0001436807000004.jpg]
」
「[0011] 第1実施形態に係るシート包装体100は、図1に示すように、シートST、包装袋10、および取出口20を有する。シート包装体100は、本発明に係るシート包装体の一例である。また、シートST、包装袋10、および取出口20は、本発明に係るシート包装体をそれぞれ構成するシート、包装袋、および取出口の各一例である。
[0012] シートSTは、複数枚のシートSTが積層された積層体SLとして包装袋10に収容されている。シートSTの積層体SLは、シートSTの積層方向(SD方向)が高さ方向(Z方向)となるように、包装袋10に収容されている。シート積層体SLは、包装袋10に形成された取出口20(OP)を通してシートSTが1組ずつ引き出せるようになっている(図4参照)。
[0013] シートSTの積層体SLは、複数枚のシートSTが単に積層されたものに限られず、各シートSTが折り畳まれた状態で積層されていてもよく、または、各シートSTが折り込まれた状態で互い違いに積層されたもの(いわゆるポップアップ式のシート積層体SL)であってもよい。なお、シートSTの積層体SLは、シートSTを1組ずつ引き出す観点から、ポップアップ式に引き出せる積層体SLであることが好ましい。
[0014] また、シートSTの積層体SLの寸法は、シート包装体100の長手方向(X方向)の長さが80~250mm程度、上面視でシート包装体100の長手方向(X方向)に直交する奥行方向(Y方向)の長さが50~130mm程度、高さ方向(Z方向)が10~90mm程度とすることができる。このような薄葉紙の積層体は、例えば、ロータリー式又はマルチスタンド式インタフォルダによって製造することができる。
[0015] シートSTの用途は、特に限定されず、例えば、ティシューペーパー、トイレットペーパー、キッチンペーパー、ペーパータオル等の衛生薄葉紙に適用可能である。これらの衛生薄葉紙には、保湿成分を含んだ衛生薄葉紙(例えば、ローションティシュー等)も含まれる。また、シートSTを構成する衛生薄葉紙の用途は、特に限定されず、産業用、家庭用、携帯用のいずれも適用できる。なお、本実施形態のシート包装体100は、これらの中でも、家庭用のティシューペーパーに好適に用いられる。
[0016] シートSTのプライ数は、特に限定されないが、1プライ以上にすることができ、好ましくは2プライ(2枚重ね)である。また、シートSTの形状は、特に限定されないが、例えば、2プライのシートが折り畳まれた状態で輪郭形状が長方形のものであることが好ましい。
…(中略)…
[0022] また、シートSTを構成する紙シートには、エンボス加工が施されていても良い。このようなエンボス加工は、公知のコンタクトエンボス付与方法、エッジエンボス付与方法等により、図示しないエンボスを紙シート両端に押し当て、複数枚の紙シートを積層するもの、公知のピンエンボス付与方法により、図示しないピンを紙シートに刺して、紙シートの一方の面上にピンエンボスを形成するもの、公知のエンボス付与方法により、水溶性の接着剤(デンプン等)を加熱融解して、積層された紙シート(図示せず)を接着することでエンボスを形成するもの等がある。
[0023] シート包装体100を構成する包装袋10は、可撓性フィルムで形成されている。また、包装袋10は、キャラメル包装によって製造されている。具体的には、筒状の可撓性フィルムの両端部が、折り畳まれて接着(封止)されたシール部30、40で形成されている。なお、シート包装体100の包装形態は、このようなキャラメル包装に限定されず、筒状の可撓性フィルムの両端部またはいずれか一方の端部がヒートシールでガセット状に封止されたもの(いわゆるピロー包装で封止されたもの)でもよい。」
(イ) 引用文献2技術事項の認定
前記(ア)に摘記した引用文献2の記載事項から、引用文献2には、次の技術事項(以下「引用文献2技術事項」という。)が記載されていると認められる。
<引用文献2技術事項>
「シートST、包装袋10、および取出口20を有するシート包装体100であって、([0011])
シートSTは、複数枚のシートSTが積層された積層体SLとして包装袋10に収容されており、シート積層体SLは、包装袋10に形成された取出口20(OP)を通してシートSTが1組ずつ引き出せるようになっており、([0012])
シートSTの積層体SLは、各シートSTが折り込まれた状態で互い違いに積層されたもの(いわゆるポップアップ式のシート積層体SL)であってもよく、シートSTを1組ずつ引き出す観点から、ポップアップ式に引き出せる積層体SLであることが好ましく、([0013])
シートSTの用途は、特に限定されず、例えば、ティシューペーパー、トイレットペーパー、キッチンペーパー、ペーパータオル等の衛生薄葉紙に適用可能であり、これらの衛生薄葉紙には、保湿成分を含んだ衛生薄葉紙(例えば、ローションティシュー等)も含まれ、([0015])
シートSTのプライ数は、好ましくは2プライ(2枚重ね)であり、([0016])
シートSTを構成する紙シートには、エンボス加工が施されていても良く、このようなエンボス加工は、エッジエンボス付与方法等により、エンボスを紙シート両端に押し当て、複数枚の紙シートを積層するもの等がある、([0022])
シート包装体100。([0011])」
(3) 本件補正発明と引用発明の対比
ア 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア) 構成Xの観点(保湿ペーパータオル製品)
a 構成Xは、「複数のペーパータオルがポップアップ方式に折り畳まれ積層された積層体と、取出口を有し当該取出口を通して前記ペーパータオルをポップアップして取り出し可能に前記積層体を収納する包装体と、を備える保湿ペーパータオル製品」の発明であることを特定するものである。
b 引用発明は、「ペーパータオルと、前記ペーパータオルを収納する包装体と、を備えるペーパータオル製品」の発明であるところ、「ペーパータオルは、パルプにより構成された基材シートに薬液を含有したものであり」、「薬液の成分としては」、「保湿成分」としての「グリセリン」を含むから、引用発明は「保湿ペーパータオル製品」の発明ということができる。
そうすると、本件補正発明と引用発明は、「ペーパータオルと、前記ペーパータオルを収納する包装体と、を備える保湿ペーパータオル製品」の発明である点において共通する。
c したがって、本件補正発明と引用発明の構成Xの観点における一致点及び相違点は、次の(a)及び(b)に示すとおりである。
(a) 構成Xの観点における一致点
「ペーパータオルと、前記ペーパータオルを収納する包装体と、を備える保湿ペーパータオル製品」の発明である点。
(b) 構成Xの観点における相違点
本件補正発明においては、「複数のペーパータオルがポップアップ方式に折り畳まれ積層された積層体と、取出口を有し当該取出口を通して前記ペーパータオルをポップアップして取り出し可能に前記積層体を収納する包装体」を備えるものであるのに対して、
引用発明においては、ペーパータオル製品としての具体的な構成が明らかでない点。
(イ) 構成Aの観点(保湿ペーパータオル)
a 構成Aは、「前記ペーパータオルは、保湿剤を含有するとともに全面エンボスを有しない2枚のシートが接合エンボスにより部分的に接合された2プライの保湿ペーパータオルであ」ることである。
b 引用発明の「保湿成分」としての「グリセリン」は、本件補正発明の「保湿剤」に相当するから、前記(ア)bの検討を踏まえると、引用発明は、本件補正発明の「前記ペーパータオルは、保湿剤を含有する」「保湿ペーパータオルであ」ることに相当する構成を有する。
c そして、引用発明において、「ペーパータオル」は「基材シートのプライ数が2であ」ることは、本件補正発明の「2枚のシートが接合された2プライの保湿ペーパータオルである」ことに相当する。
d 以上の検討結果を踏まえると、本件補正発明と引用発明の構成Aの観点における一致点及び相違点は、次の(a)及び(b)に示すとおりである。
(a) 構成Aの観点における一致点
「前記ペーパータオルは、保湿剤を含有するとともに2枚のシートが接合された2プライの保湿ペーパータオルであ」る点。
(b) 構成Aの観点における相違点
「2プライの保湿ペーパータオル」について、
本件補正発明においては、「全面エンボスを有しない2枚のシートが接合エンボスにより部分的に接合された」ものであるのに対して、
引用発明においては、基材シートのプライ数が2であるペーパータオルにおける各基材シートの接合形態が明らかでない点。
(ウ) 構成Bの観点(坪量)
a 構成Bは、「前記保湿ペーパータオルにおける前記シートの1枚当たりの坪量は、15.0g/m2以上30.0g/m2以下であ」ることである。
b 引用発明の「ペーパータオル/製品の1プライ(1P)あたりの米坪が17.5g/m2であ」ることは、本件補正発明の「前記保湿ペーパータオルにおける前記シートの1枚当たりの坪量は、15.0g/m2以上30.0g/m2以下である」ことに相当する。
c したがって、本件補正発明と引用発明は、構成Bの観点について、次の点において一致する。
「前記保湿ペーパータオルにおける前記シートの1枚当たりの坪量は、15.0g/m2以上30.0g/m2以下である」点。
(エ) 構成C1~C4の観点(乾燥引張強度及び湿潤引張強度)
a 構成C1は、「2プライの乾燥引張強度(縦方向)は、6.0N/25mm以上25.0N/25mm以下であ」ることであり、
構成C2は、「2プライの乾燥引張強度(横方向)は、2.5N/25mm以上20.0N/25mm以下であ」ることであり、
構成C3は、「2プライの湿潤引張強度(縦方向)は、2.0N/25mm以上10.0N/25mm以下であ」ることであり、
構成C4は、「2プライの湿潤引張強度(横方向)は、0.7N/25mm以上5.0N/25mm以下であ」ることである。
b 引用発明は、本件補正発明の構成C1~C4に相当する構成を備えているか明らかでないから、本件補正発明と引用発明は、構成C1~C4の観点について、次の点において相違する。
<構成C1~C4の観点における相違点>
本件補正発明においては、
「2プライの乾燥引張強度(縦方向)は、6.0N/25mm以上25.0N/25mm以下であり、
2プライの乾燥引張強度(横方向)は、2.5N/25mm以上20.0N/25mm以下であり、
2プライの湿潤引張強度(縦方向)は、2.0N/25mm以上10.0N/25mm以下であり、
2プライの湿潤引張強度(横方向)は、0.7N/25mm以上5.0N/25mm以下であ」るのに対して、
引用発明においては、「ペーパータオル/製品の乾燥引張強度は、縦方向1717cN/25mm、横方向492cN/25mmであり、同湿潤引張強度は、縦方向562cN/25mm、横方向164cN/25mmであ」るが、これらの引張強度の値が、「ペーパータオル/製品」のどのような状態(保湿剤の含有有無など)で測定された値であるのか明らかでないため、本件補正発明における「2プライの乾燥引張強度(縦方向)」等に対応する値であるのか明らかでない点。
(オ) 構成Dの観点(保湿剤の含有量)
a 構成Dは、「前記保湿ペーパータオルはパルプを含み、前記保湿ペーパータオルにおける前記保湿剤の含有量は、対パルプ質量比で、5%以上10%以下である」ことである。
b 引用発明の「ペーパータオル」は、「パルプにより構成された基材シートに薬液を含有したものであ」るから、「ペーパータオル」が「パルプ」を含むものといえるところ、このことは、本件補正発明の「前記保湿ペーパータオルはパルプを含」むことに相当する。
c そうすると、本件補正発明と引用発明の構成Dの観点における一致点及び相違点は、次の(a)及び(b)に示すとおりである。
(a) 構成Dの観点における一致点
「前記保湿ペーパータオルはパルプを含む」点。
(b) 構成Dの観点における相違点
本件補正発明においては、「前記保湿ペーパータオルにおける前記保湿剤の含有量は、対パルプ質量比で、5%以上10%以下である」のに対して、
引用発明においては、ペーパータオルに含有される薬液の成分のうち、本件補正発明の「保湿剤」に相当する成分の範囲が明らかでないため、対パルプ質量比での保湿剤の含有量も明らかでない点。
イ 一致点及び相違点
前記アの対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次の(ア)及び(イ)に示すとおりである。
(ア) 一致点
「ペーパータオルと、前記ペーパータオルを収納する包装体と、を備える保湿ペーパータオル製品であって、
前記ペーパータオルは、保湿剤を含有するとともに2枚のシートが接合された2プライの保湿ペーパータオルであり、
前記保湿ペーパータオルにおける前記シートの1枚当たりの坪量は、15.0g/m2以上30.0g/m2以下であり、
前記保湿ペーパータオルはパルプを含む保湿ペーパータオル製品」である点。
(イ) 相違点
a 相違点1
本件補正発明においては、
「複数のペーパータオルがポップアップ方式に折り畳まれ積層された積層体と、取出口を有し当該取出口を通して前記ペーパータオルをポップアップして取り出し可能に前記積層体を収納する包装体」を備えるものであり、
「2プライの保湿ペーパータオル」について、「全面エンボスを有しない2枚のシートが接合エンボスにより部分的に接合された」ものであるのに対して、
引用発明においては、ペーパータオル製品としての具体的な構成が明らかでなく、基材シートのプライ数が2であるペーパータオルにおける各基材シートの接合形態も明らかでない点。
b 相違点2
本件補正発明においては、
「2プライの乾燥引張強度(縦方向)は、6.0N/25mm以上25.0N/25mm以下であり、
2プライの乾燥引張強度(横方向)は、2.5N/25mm以上20.0N/25mm以下であり、
2プライの湿潤引張強度(縦方向)は、2.0N/25mm以上10.0N/25mm以下であり、
2プライの湿潤引張強度(横方向)は、0.7N/25mm以上5.0N/25mm以下であ」るのに対して、
引用発明においては、「ペーパータオル/製品の乾燥引張強度は、縦方向1717cN/25mm、横方向492cN/25mmであり、同湿潤引張強度は、縦方向562cN/25mm、横方向164cN/25mmであ」るが、これらの引張強度の値が、「ペーパータオル/製品」のどのような状態(保湿剤の含有有無など)で測定された値であるのか明らかでないため、本件補正発明における「2プライの乾燥引張強度(縦方向)」等に対応する値であるのか明らかでない点。
c 相違点3
本件補正発明においては、「前記保湿ペーパータオルにおける前記保湿剤の含有量は、対パルプ質量比で、5%以上10%以下である」のに対して、
引用発明においては、ペーパータオルに含有される薬液の成分のうち、本件補正発明の「保湿剤」に相当する成分の範囲が明らかでないため、対パルプ質量比での保湿剤の含有量も明らかでない点。
(4) 判断
ア 相違点1について
(ア) 本件補正発明と引用文献2技術事項の対比
a 引用文献2技術事項において、「シートSTの用途」として「ペーパータオル」も例示されているから、引用文献2技術事項の「各シートSTが折り込まれた状態で互い違いに積層されたもの(いわゆるポップアップ式のシート積層体SL)であ」る「シートSTの積層体SL」は、本件補正発明の「複数のペーパータオルがポップアップ方式に折り畳まれ積層された積層体」に相当する。
b また、引用文献2技術事項においては、「シートSTは、複数枚のシートSTが積層された積層体SLとして包装袋10に収容されており、シート積層体SLは、包装袋10に形成された取出口20(OP)を通してシートSTが1組ずつ引き出せるようになって」いるところ、引用文献2技術事項の「包装袋10」、「取出口20(OP)」は、それぞれ本件補正発明の「包装体」、「取出口」に相当するから、前記aの検討を踏まえると、引用文献2技術事項は、本件補正発明の「取出口を有し当該取出口を通して前記ペーパータオルをポップアップして取り出し可能に前記積層体を収納する包装体」に相当する構成を有する。
c 引用文献2技術事項においては、「シートSTのプライ数は、好ましくは2プライ(2枚重ね)であり」、「シートSTを構成する紙シートには、エンボス加工が施されていても良く、このようなエンボス加工は、エッジエンボス付与方法等により、エンボスを紙シート両端に押し当て、複数枚の紙シートを積層するもの等がある」ところ、「エッジエンボス付与方法等により、エンボスを紙シート両端に押し当て」ることは、全面エンボスを有しない部分的な接合といえるから、引用文献2技術事項は、本件補正発明の「前記ペーパータオルは、」「全面エンボスを有しない2枚のシートが接合エンボスにより部分的に接合された2プライ」であることに相当する構成を有する。
d 前記a~cの検討から、引用文献2技術事項は、前記相違点1に係る本件補正発明の構成を全て有するといえる。
(イ) 引用発明と引用文献2技術事項の組合せ
引用発明と引用文献2技術事項は、ペーパータオルと、前記ペーパータオルを収納する包装体と、を備えるペーパータオル製品に関する点において共通するから、引用発明において、「ペーパータオル製品」の製品としての構成を具体化するにあたり、引用文献2技術事項の構成を採用して、相違点1に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ 相違点2について
(ア) 引用発明における「ペーパータオル/製品」の各「引張強度」について
引用発明における「ペーパータオル/製品」の各「引張強度」が「ペーパータオル/製品」のどのような状態(保湿剤の含有有無など)で測定された値であるのかについて検討する。
a 引用発明について、「実施例7のペーパータオルについて、基材シートの1プライ(1P)あたりの米坪が15.5g/m2であり」、「ペーパータオル/製品の1プライ(1P)あたりの米坪が17.5g/m2であり」と認定したように、引用文献1の【表1】においては、「基材シート」、「ペーパータオル/製品」それぞれについて、「米坪 1P」(1プライ(1P)あたりの米坪)の数値が掲載されているところ、実施例7のペーパータオルにおける、これらの米坪の値の差である2.0g/m2は、「ペーパータオル/製品への薬液塗布量」である4.0g/m2の2分の1の値である。
そして、「基材シートのプライ数が2」であることを考慮すると、「ペーパータオル/製品の1プライ(1P)あたりの米坪」である「17.5g/m2」は、「基材シートの1プライ(1P)あたりの米坪」である「15.5g/m2」に、「ペーパータオル/製品への」1プライ(1P)あたりの「薬液塗布量」である2.0g/m2(4.0g/m2/2)を加えた値であるといえる。
そうすると、引用文献1の【表1】における「ペーパータオル/製品」の欄の各数値は、基材シートに薬液(保湿剤を含む)を塗布した状態で測定された数値といえるから、同【表1】の「基材シート」の欄ではなく「ペーパータオル/製品」の欄に記載された「乾燥引張強度」及び「湿潤引張強度」についても、基材シートに薬液(保湿剤を含む)を塗布した状態で測定された数値と理解するのが自然である。
そして、このことは、ペーパータオルが基材シートに薬液を塗布した状態において製品とされていることが技術常識であることとも整合する。
b また、引用発明の「実施例7のペーパータオル」については、「基材シートのプライ数が2であ」り、2プライの状態で製品とされるものといえるから、「ペーパータオル/製品」の「乾燥引張強度」及び「湿潤引張強度」は、2プライの状態における引張強度であるといえる。
c したがって、引用発明における「ペーパータオル/製品」の「乾燥引張強度」及び「湿潤引張強度」は、基材シートに薬液を塗布した状態(薬液に含まれる保湿剤を含有した状態)のペーパータオルにおける2プライの引張強度であると解するのが相当である。
(イ) 前記(ア)の理解に基づく相違点2についての判断
引用発明は、「ペーパータオル/製品の乾燥引張強度は、縦方向1717cN/25mm、横方向492cN/25mmであり、同湿潤引張強度は、縦方向562cN/25mm、横方向164cN/25mmであ」るところ、前記(ア)の理解に基づけば、引用発明の「ペーパータオル/製品の乾燥引張強度」の「縦方向」、「横方向」は、それぞれ本件補正発明の「2プライの乾燥引張強度(縦方向)」、「2プライの乾燥引張強度(横方向)」に相当し、(ペーパータオル/製品の)「湿潤引張強度」の「縦方向」、「横方向」は、それぞれ本件補正発明の「2プライの湿潤引張強度(縦方向)」、「2プライの湿潤引張強度(横方向)」に相当する。
そうしてみると、引用発明は、本件補正発明の構成C1~C4に規定された数値範囲を全て満たすことになるから、相違点2は実質的な相違点ではない。
(ウ) 引用発明の各「引張強度」が1プライの基材シートの引張強度であると仮定した場合の判断
続いて、引用発明の各「引張強度」が1プライの基材シートの引張強度であると仮定して、以下に検討する。
引用発明の各「引張強度」が1プライの基材シートの引張強度であると仮定すると、2プライの各「引張強度」は、それぞれ1プライの場合の概ね2倍程度になるものと推認される。
この場合、引用発明の「実施例7のペーパータオル」において、「ペーパータオル/製品」の「乾燥引張強度」及び「湿潤引張強度」は、それぞれ【表1】に示された数値の2倍程度になるものといえる(2倍であるとすると、乾燥引張強度は、縦方向34.34N/25mm、横方向9.84N/25mmであり、同湿潤引張強度は、縦方向11.24N/25mm、横方向3.28N/25mmとなる。)。
そうしてみると、引用発明は、本件補正発明の構成C1~C4に規定された数値範囲のうち、構成C2に規定された「乾燥引張強度(横方向)」及び構成C4に規定された「湿潤引張強度(横方向)」の数値範囲を満たすことになるが、構成C1に規定された「乾燥引張強度(縦方向)」の上限である「25.0N/25mm」を超え、構成C3に規定された「湿潤引張強度(縦方向)」の上限である「10.0N/25mm」を超えることになる。
しかしながら、本願明細書(【0040】、【0041】等)において、これらの引張強度の上限値の技術的な意味については説明されておらず、同【0079】に示された【表2】においても、これらの上限値を超える引張強度を有するものは比較例として示されていないから、これらの上限値の技術的意味は不明といわざるを得ない。
そうすると、引用発明において、乾燥紙力剤や湿潤紙力剤の使用量を節約する等の観点から、乾燥引張強度や湿潤引張強度を下げることにより、本件補正発明の構成C1~C4に規定された数値範囲を全て満たすようにすることは、当業者が適宜なし得た程度のことにすぎない。そして、このことによる作用効果についても、当業者が予測できないようなものがあるとは認められない。
(エ) 小括
以上のとおり、相違点2は実質的な相違点ではなく、仮に実質的な相違点であるとしても、当業者が容易に想到し得たものである。
ウ 相違点3について
(ア) 本件補正発明の「保湿剤」について
a 本件補正発明においては、「前記ペーパータオルは、保湿剤を含有する・・・保湿ペーパータオルであり」、「前記保湿ペーパータオルはパルプを含み、前記保湿ペーパータオルにおける前記保湿剤の含有量は、対パルプ質量比で、5%以上10%以下である」と特定されているが、これ以上に「保湿剤」を特定する記載は存在しない。
b(a) そこで、本願明細書の記載を参酌すると、本願明細書には、次の記載がある。
「【0034】
[保湿剤]
本実施形態に係るペーパータオル40には、保湿剤が付与されている。保湿剤が付与されたペーパータオルは、「保湿ペーパータオル」とも称される。本発明の実施形態に適用可能な保湿剤は、吸湿性によって紙中に水分を取り込み、水分率を上昇させる作用を有するポリオールを主成分とする。そのため、本実施形態に係るペーパータオル40は、ポリオールを含む。ポリオールは、2個以上のヒドロキシ基-OHを持った脂肪族化合物であり、吸湿性による水分率向上の効果を奏する。保湿剤には、吸湿性を有する糖類も含まれる。・・・」
「【0058】
[保湿剤の含有量]
ここで、上述のように、本発明の実施形態において、保湿剤はポリオールを含む。保湿ペーパータオル40における保湿剤の含有量は、例えば、ガスクロマトグラフィー水素炎イオン化検出器による定量により測定される値から求めることができる。調湿したペーパータオル40を基準の検体として、その質量を測定する。次いで、ソックスレー抽出器によるアセトン抽出を行ない、検体から抽出した溶媒を乾燥させ、これをガスクロマトグラフィー水素炎イオン化検出器にかける。検体に用いたペーパータオル中に含まれるポリオール合計質量の比率を、保湿剤の含有量(対パルプ質量比、単位:質量%)とすることができる。」
(b) しかし、これらの記載は、一実施形態について説明するものであって、本件補正発明における「保湿剤」が「ポリオール」に限られることを定義するものとまではいえない。
c そうすると、本件補正発明の「保湿剤」は、保湿作用を有する薬剤であって、当業者によって保湿剤として認識されるものであれば足りるというべきであって、「ポリオール」には限られないと解される。
(イ) 前記(ア)の解釈に基づく相違点3の判断
a 引用発明は、「より具体的には、薬液の成分としては、保湿剤として、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコール、流動パラフィン等の1種以上を任意の組合せで用いることができ」るから、「グリセリン」のほかに「セタノール」、「流動パラフィン」も「保湿剤」ということができる。
b そして、引用発明の「実施例7のペーパータオル」において、「薬液中のグリセリン比率が25.0%であり、液状油性成分(25℃)比率が15.0%であり、固形油性成分(25℃)比率が7.5%であ」るところ、「常温(25℃)で固形の高級アルコール等の固形油性成分」は「セタノールに代表される」ものであり、「常温(25℃)で液体の液状油性成分」は「流動パラフィンに代表される」から、前記aの検討を踏まえると、引用発明の「実施例7のペーパータオル」において、「グリセリン」、「液状油性成分(25℃)」、「固形油性成分(25℃)」は、いずれも保湿剤ということができる。
c そうすると、引用発明において、ペーパータオルにおける保湿剤の含有量は、1.9g/m2(薬液塗布量4.0g/m2×(25.0+15.0+7.5)/100)となる。
また、引用発明においては、「実施例7のペーパータオルについて、基材シートの1プライ(1P)あたりの米坪が15.5g/m2であり、基材シートのプライ数が2であ」るから、ペーパータオルのパルプ質量は、概略31.0g/m2(15.5g/m2×2プライ)となる。
したがって、ペーパータオルにおける保湿剤の含有量は、対パルプ質量比で、約6.1%(1.9g/m2/31.0g/m2)となるところ、このことは、本件補正発明の「前記保湿ペーパータオルにおける前記保湿剤の含有量は、対パルプ質量比で、5%以上10%以下である」ことに相当する。
d 以上検討したところによれば、相違点3は、実質的な相違点とはいえない。
(ウ) 本件補正発明の「前記保湿剤の含有量」を「前記保湿剤としてのポリオールの含有量」と解釈した場合の判断
本件補正発明の「前記保湿剤の含有量」を「前記保湿剤としてのポリオールの含有量」と解釈できると仮定して、以下に検討する。
a この場合、引用発明の「実施例7のペーパータオル」において、「保湿剤」は薬液中に含まれる「グリセリン」のみとなるから、前記(イ)cと同様に計算すると、ペーパータオルにおける保湿剤の含有量は、対パルプ質量比で、約3.2%((薬液塗布量4.0g/m2×25.0/100)/31.0g/m2)となり、本件補正発明の構成Dの「5%以上10%以下」の範囲に含まれない。
b しかしながら、引用発明は、「薬液における薬液中のグリセリン比率は、50%以下、より好ましくは30%以下とするのが良」いものであって、薬液中のグリセリン比率は50%まで高めることが許容されているから、この示唆に基づき、引用発明の「実施例7のペーパータオル」において、薬液中のグリセリン比率を例えば50%とし、ペーパータオルにおける保湿剤の含有量を、対パルプ質量比で、本件補正発明の構成Dの「5%以上10%以下」の範囲に含まれるようにする(この場合、約6.4%(薬液塗布量4.0g/m2×50/100)/31.0g/m2)となる。)ことは、当業者が容易に想到し得たことである。
c なお、薬液中のグリセリン比率を高めることにより、ペーパータオルの引張強度が影響を受けることも想定されるが、以下に説明するとおり、その影響は限定的であって、前記イにおける相違点2についての判断を左右する程のものではないといえる。
例えば、引用文献1の【表2】に示された比較例2は、薬液中のグリセリン比率が80.0%であり、同【表1】に示された各実施例と比べて比率が高いものとなっているところ、薬液中のグリセリン比率が25.0%である以外は構成が比較的類似している実施例1と比較しても、乾燥引張強度及び湿潤引張強度は極端には変化していない。
(エ) 小括
以上のとおり、相違点3は実質的な相違点ではなく、仮に実質的な相違点であるとしても、当業者が容易に想到し得たものである。
エ 総合評価
前記ア~ウにおいて検討したとおり、引用発明において、前記相違点1~3に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、引用発明及び引用文献2技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
そして、相違点1~3を総合的に勘案しても、本件補正発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
オ 請求人の主張について
(ア) 審判請求書における請求人の主張について
a 請求人の主張内容
請求人は、審判請求書において、概略、次のとおりの主張をしている。
(a) 引用文献1の【表1】には、引張強度についてのデータが、基材シートの欄ではなく、ペーパータオル製品の欄に記載されている。これに対して、引用文献1の明細書には、ペーパータオル製品の引張強度の好ましい数値範囲についての記載がなく、【0019】に基材シートの引張強度の好ましい数値範囲についての記載があるため、引用文献1の【表1】に記載される引張強度が、薬液を含有しない基材シートのデータであるのか、それとも薬液を含有したペーパータオル製品のデータであるのか曖昧である。このため、引用文献1の明細書の記載ぶりから、【表1】に記載される引張強度は、薬液を含有しない基材シートのデータであると思料する。
(b) 引用文献1の実施例7は、保湿剤の含有量が3.2~3.3%であり、構成Dの「前記保湿ペーパータオルはパルプを含み、前記保湿ペーパータオルにおける前記保湿剤の含有量は、対パルプ質量比で、5%以上10%以下である」を欠くものであり、この要件を満たす構成は、引用文献1及び2のいずれにも開示されていない。
また、引用文献1の【0025】や【0027】を参照すると、基材シートへの薬液の塗布量や薬液中のグリセリン比率について、多すぎると、ペーパータオルにべたつき感が生じてしまうことが開示されている。本件補正発明の保湿剤の含有量の範囲は「5%以上10%以下」であるところ、引用文献1は、ペーパータオルのべたつきという点から、この「5%以上10%以下」の範囲を否定することとなる。
b 請求人の主張についての検討
(a) 前記イ(ア)において説示したとおり、引用発明における「ペーパータオル/製品」の「乾燥引張強度」及び「湿潤引張強度」は、基材シートに薬液を塗布した状態(薬液に含まれる保湿剤を含有した状態)のペーパータオルにおける2プライの引張強度であると解するのが相当である。
請求人は、引用文献1の【0019】の記載を根拠に、引用文献1の【表1】に記載される引張強度は、薬液を含有しない基材シートのデータである旨主張するが、【0019】には基材シートへの薬液の含有の有無については明記されておらず、また、仮に【0019】の記載が薬液を含有しない基材シートに関するものであったとしても、薬液の含有の有無が引張強度に大きな影響を及ぼさないという理解を前提とした記載であるか、【表1】に記載された「ペーパータオル/製品」の各「引張強度」とは別のことを説明したものと解されるから、前記a(a)に示した請求人の主張は採用できない。
(b) また、前記ウにおいて説示したとおり、相違点3は実質的な相違点ではなく、仮に実質的な相違点であるとしても、当業者が容易に想到し得たものであるから、前記a(b)に示した請求人の主張も採用することができない。
(イ) 上申書における請求の主張について
a 請求人の主張内容
請求人は、令和7年5月19に提出した上申書において、概略、次のとおりの主張をしている。
(a) 本願明細書の【0034】には、「[保湿剤] 本実施形態に係るペーパータオル40には、保湿剤が付与されている。保湿剤が付与されたペーパータオルは、「保湿ペーパータオル」とも称される。本発明の実施形態に適用可能な保湿剤は、吸湿性によって紙中に水分を取り込み、水分率を上昇させる作用を有するポリオールを主成分とする。そのため、本実施形態に係るペーパータオル40は、ポリオールを含む。ポリオールは、2個以上のヒドロキシ基-OHを持った脂肪族化合物であり、吸湿性による水分率向上の効果を奏する。保湿剤には、吸湿性を有する糖類も含まれる。」なる記載があり、本件補正発明に係る「保湿剤」が明確に定義されている。すなわち、引用文献1に示されるようなセタノールに代表される固形油性成分及び流動パラフィンに代表される液状油性成分は、本件補正発明に係る「保湿剤」ではない。
(b) なお、進歩性の主張にあたり、本審判請求人は、必要があれば、明確化及び引用文献とのさらなる差別化のために、本件補正発明の構成Dにおける「前記保湿ペーパータオルにおける前記保湿剤の含有量は、対パルプ質量比で、5%以上10%以下である」を、「前記保湿ペーパータオルにおける前記保湿剤としてのポリオールの含有量は、対パルプ質量比で、5%以上10%以下である」等へ補正をする準備がある。
b 請求人の主張についての検討
(a) 前記ウ(ア)において説示したとおり、本件補正発明の「保湿剤」は、保湿作用を有する薬剤であって、当業者によって保湿剤として認識されるものであれば足りるというべきであって、「ポリオール」には限られないと解される。
前記a(a)に示した請求人の主張における解釈は、前記ウ(ア)に示した解釈に反するものであって、採用することができない。
(b) また、前記a(b)に示したとおり、請求人は、本件補正発明の構成Dにおける「前記保湿ペーパータオルにおける前記保湿剤の含有量は、対パルプ質量比で、5%以上10%以下である」を、「前記保湿ペーパータオルにおける前記保湿剤としてのポリオールの含有量は、対パルプ質量比で、5%以上10%以下である」へ補正する準備があることを述べているが、仮にこのような補正がされたとしても、前記ウ(ウ)において説示したとおり、本件補正発明の進歩性は肯定されない。
(c) したがって、請求人の主張は、いずれも採用することができない。
(5) 独立特許要件の判断のまとめ
以上検討のとおり、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正により補正前の請求項2(補正後の請求項1)についてする補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合しない。
4 本件補正の却下の決定の理由のむすび
前記3(5)のとおり、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明について
本件補正は、前記第2のとおり却下したので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項2(前記第2の1(1)参照)に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の本願発明に対する拒絶の理由(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
理由1(進歩性の欠如) 本願発明は、その出願前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.特開2012-214967号公報(主たる引用文献)
引用文献2.国際公開第2020/110835号
3 各引用文献に記載された事項及び引用発明の認定等
引用文献1~2に記載された事項並びに引用発明及び引用文献2技術事項は、前記第2の3(2)ア(ア)及びイ(ア)並びにア(ウ)及びイ(イ)において示したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の2において検討したとおり、本件補正発明から「前記保湿ペーパータオルにおける前記保湿剤」の「対パルプ質量比」での「含有量」である「5%以上10%以下」について、より広い数値範囲の「2%以上13%以下」としたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、その発明特定事項の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3(4)において説示したとおり、引用発明及び引用文献2技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により引用発明及び引用文献2技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-018881