特許拒絶査定不服審判
2024-004837
洗面器
- 審判番号
- 2024-004837
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-208492外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2024年03月20日
- 審決日
- 2025年06月25日
- 公報発行日
- 2025年09月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社LIXIL
- 【請求人代理人】弁理士法人グランダム特許事務所
- 分類
- P18 .121-WZ (A47K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-208492「洗面器」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 5月27日出願公開、特開2021- 78719〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和元年11月19日の出願であって、令和5年5月15日付けで拒絶の理由が通知され、同年7月10日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月16日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年10月16日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年12月13日付け(送達日:同月25日)で、同年10月16日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、それに対して、令和6年3月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出され、これに対し、当審において、令和7年2月18日付けで拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年4月14日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、令和7年4月14日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載の事項により特定されるとおりのものであると認められ、当審で分説し、AからGの符号を付与すると、次のとおりのものである。
「【請求項1】
A 排水孔が形成され、前記排水孔の下方に前記排水孔に対して同軸上に下部排水孔が開口するオーバーフロー部を有する陶器製洗面器本体と、
B 前記排水孔に取り付けられ、下方に向けて内側に傾斜した流入部を有する排水金具と、
C 前記排水金具よりも上方に位置する蓋部、及び径方向外向きに突出する突出部が設けられたシール部材を有する蓋部材と、
を備えており、
D 前記蓋部材が前記排水孔を閉鎖した状態において、前記蓋部材の上端は、前記排水孔の上端部よりも上方に位置しており、前記突出部の先端は、前記排水金具の内周面に密着し、
E 前記オーバーフロー部は、前記陶器製洗面器本体と一体的に形成され、
F 前記流入部よりも下方の前記排水金具において、下部排水孔と前記排水金具との隙間は、前記排水孔と前記排水金具との隙間よりも狭い
G 洗面器。」
第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由は、請求項1に係る発明に対する以下の拒絶理由を含むものである。
請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された事項、引用文献3に記載された事項、及び、引用文献4に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2000-345598号公報
引用文献2:特開2015-113556号公報
引用文献3:特開2018-91066号公報
引用文献4:特開2018-91086号公報
第4 各引用文献の記載及び引用発明等
1 引用文献1及び引用発明
(1) 引用文献1に記載された事項
当審拒絶理由に引用され、本願出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2000-345598号公報(平成12年12月12日公開。以下「引用文献1」という。)には、排水装置(発明の名称)に関し、次の事項が記載されている(下線は当審合議体が付した。以下同様。)。
「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、洗面器や浴槽等の排水口部に配設され、当該排水口部の開閉を一動作で行うことのできる排水装置に関する。」
「【0009】
【発明の実施の形態】図1及び図2に本発明に係る排水装置Aの一実施形態を示す。なお、図1は開栓状態、図2は閉栓状態をそれぞれ表している。図面に例示する排水装置Aは、前記従来の排水装置B(図3,図4参照)と共通の構成を有しており、ほぼ円筒形の筒体部1と、該筒体部1の上端開口部1aへ装着される栓体部2と、該栓体部2の下面へ一体的に取着された軸部3と、前記筒体部1の底部に設けられる機構部4とを備えている。筒体部1は、上端に開口部1aを有し、底部に機構部4が設けられると共に通水路1bが設けられ、側周壁に洗面器のオーバーフロー孔より流出した排水を流入させるための開口kが形成されている。この筒体部1を排水口部11へ挿入して、上端に形成したフランジ部f1をパッキンP1を挟んで排水口部11の周縁に当接させ、洗面器の下方へ突出した部分にパッキンP2を外嵌したのち排水管Dを螺合して締めつけことにより、筒体部1のフランジ部f1と排水管Dのフランジ部f2とで洗面器底部10を挟持して、筒体部1を排水口部11に固定する。
【0010】栓体部2の下側には、筒体部1の上端開口部1aを水密的に閉塞するためのパッキンQが備えられる。また、筒体部1の底部に設けられる機構部4は、その起動ロッド4aが押圧されることにより交互に昇降するよう構成され、栓体部2を押し込むことにより、軸部3を介して機構部4の起動ロッド4aを押圧して交互に昇降させ、その結果、栓体部2を上昇位置と下降位置とに切り換えることができるようになされているのは、前記従来例と同様である。
【0011】本実施形態の排水装置Aは、軸部3に、下端側が開口する挿入凹部3aを形成し当該挿入凹部3a内へ前記機構部4の起動ロッド4aを嵌挿する構成を採用した点、及び、軸部3の下側部分に装着するヘヤーキャッチャーHの直径を筒体部1の内周面と接することのない寸法に設定した点、並びに、前記従来例では設けていたガイド部材を省略した点に特色を有している。軸部3のガイド部材を省略し、ヘヤーキャッチャーHの直径を小さくしたことにより、仮に筒体部1に変形が生じたとしても、筒体部1の内周面と接触する部材は無いから、軸部3の昇降動作が妨げられるおそれがない。しかも、軸部3と起動ロッド4aとを嵌合構造で接続したから、ガイド手段を省略しても、起動ロッド4aの昇降動作を軸部3へ確実に伝達することができる。」
【図1】
「
[図:0001426475000001.jpg]
」
【図2】
「
[図:0001426475000002.jpg]
」
(2) 引用文献1に記載された事項より認定できる事項
ア 認定事項ア
図1及び図2を参照すると、上側の洗面器底部10に排水口部11が設けられ、該排水口部11に排水装置Aが設けられた洗面器が看取できる。
してみると、引用文献1には、上側の洗面器底部10に排水口部11が設けられ、該排水口部11に排水装置Aが設けられた洗面器が記載されている(以下「認定事項ア」という。)と認定できる。
イ 認定事項イ
【0009】における、「筒体部1は、上端に開口部1aを有し、底部に機構部4が設けられると共に通水路1bが設けられ、側周壁に洗面器のオーバーフロー孔より流出した排水を流入させるための開口kが形成されている。」との記載を踏まえて、図1及び図2を参照すると、洗面器には、オーバーフロー孔が設けられ、該オーバーフロー孔より流出した排水が上側の洗面器底部10と下側の洗面器底部10の間を通過すること(以下「認定事項イ」という。)が認定できる。
ウ 認定事項ウ
図1及び図2を参照すると、栓体部2の下側の軸部3は筒体部1に挿入され、栓体部2の下側の軸部3を保持する突出部分にパッキンQが設けられたことが見て取れ、また、このパッキンQは、上記突出部分から径方向の外側に向けて延びる部分を有し、閉栓状態において、パッキンQの先端が筒体部1の内面に密着していること(以下「認定事項ウ」という。)が認定できる。
エ 認定事項エ及び認定事項オ
図1及び図2を参照すると、洗面器底部10は上側の洗面器底部10と下側の洗面器底部10とからなる二重の構造を有し、筒体部1が、上側の洗面器底部10に設けられた排水口部11と下側の洗面器底部10に排水口部11と同軸に設けられた孔の両方を貫通する構成とされている点(以下「認定事項エ」という。)が見て取れる。
そして、図1及び図2を精査すると、筒体部1と上側の洗面器底部10に設けられた排水口部11との間隙よりも、筒体部1と下側の洗面器底部10に設けられた孔との間隙のほうが小さくされた点(以下「認定事項オ」という。)が見て取れる。
オ 認定事項カ及び認定事項キ
図1及び図2を参照すると、筒体部1よりも栓体部2が上方に位置する点(以下「認定事項カ」という。)が見て取れる。
また、図2を参照すると、閉栓状態において、栓体部2の上端は排水口部11の上端部よりも上方に位置すること(以下「認定事項キ」という。)が見て取れる。
カ 認定事項ク
図1及び図2を参照すると、上側の洗面器底部10の排水口部11が、その上面からパッキンP1の上端にかけて下方に向けて内側に傾斜している点(以下「認定事項ク」という。)が見て取れる。
(3) 引用発明
上記(1)及び(2)より、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、a等の符号は、本願発明1の特定事項に概ね対応させて当審合議体が付与した。
「a 上側の洗面器底部10に排水口部11が設けられ、該排水口部11に排水装置Aが設けられた洗面器であって(認定事項ア)、
該洗面器には、オーバーフロー孔が設けられ、該オーバーフロー孔より流出した排水が上側の洗面器底部10と下側の洗面器底部10の間を通過し(認定事項イ)、
b 排水装置Aは、ほぼ円筒形の筒体部1と、該筒体部1の上端開口部1aへ装着される栓体部2と、該栓体部2の下面へ一体的に取着された軸部3と、前記筒体部1の底部に設けられる機構部4とを備え(【0009】)、
該筒体部1は、上端に上端開口部1aを有し、底部に機構部4が設けられると共に通水路1bが設けられ、側周壁に洗面器のオーバーフロー孔より流出した排水を流入させるための開口kが形成され(【0009】)、
c 栓体部2は、筒体部1よりも上方に位置し(認定事項カ)、該栓体部2の下側の軸部3を保持する突出部分には、該筒体部1の上端開口部1aを水密的に閉塞するためパッキンQが設けられ、このパッキンQは、上記突出部分から径方向に延びる部分を有し(【0010】、認定事項ウ)、該軸部3は前記筒体部1に挿入され(認定事項ウ)、
d 閉栓状態において、栓体部2の上端は排水口部11の上端部よりも上方に位置し(認定事項キ)、パッキンQの先端が筒体部1の内面に密着し (認定事項ウ)、
f1 洗面器底部10は上側の洗面器底部10と下側の洗面器底部10とからなる二重の構造を有し、筒体部1が、上側の洗面器底部10に設けられた排水口部11と下側の洗面器底部10に排水口部11と同軸に設けられた孔の両方を貫通する構成とされており(認定事項エ)、
f2 筒体部1と上側の洗面器底部10に設けられた排水口部11との間隙よりも、筒体部1と下側の洗面器底部10に設けられた孔との間隙のほうが小さくされ(認定事項オ)、
f3 この筒体部1を排水口部11へ挿入して、上端に形成したフランジ部f1をパッキンP1を挟んで排水口部11の周縁に当接させ、洗面器の下方へ突出した部分にパッキンP2を外嵌したのち排水管Dを螺合して締めつけことにより、筒体部1のフランジ部f1と排水管Dのフランジ部f2とで洗面器底部10を挟持して、筒体部1を排水口部11に固定し(【0009】)、
h 上側の洗面器底部10の排水口部11は、その上面からパッキンP1の上端にかけて下方に向けて内側に傾斜している(認定事項ク)、
g 排水装置Aが設けられた洗面器(認定事項ア)。」
2 引用文献2及び引用文献2記載事項
(1) 引用文献2に記載された事項
当審拒絶理由に引用され、本願出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2015-113556号公報(平成27年6月22日公開。以下「引用文献2」という。)には、排水栓の水抜き構造(発明の名称)に関し、次の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽や流し台、洗面台や各種槽体の排水口に取り付けられ、その下端は排水部材に接続される排水栓の水抜き構造に関するものである。」
「【実施例3】
【0026】
本実施例は、図7乃至図9に示される洗面台の洗面ボウルに用いられる排水栓の水抜き構造である。
本実施例の排水栓の水抜き構造は、槽体1と、弁体6と、排水栓3と、アダプター53と、排水部材4としてのオーバーフロー配管47・止水用三角パッキン43・固定部材45・配管部材46・排水トラップ(図示せず)と、から構成されている。
本実施例の排水栓の構造は、槽体1と、排水栓と、止水用三角パッキン43と、固定部材45と、排水部材4と、排水トラップ(図示せず)と、から構成されている。
槽体1は、洗面所の陶器製の洗面ボウルであり、底部には排水用の排水口2が槽体1の底面から一段深く落ちくぼんだ形で開口されている。この排水口の周縁21には後述する排水栓3の係止部31が係止される。また、当該実施例の洗面ボウルは、ボウルに貯水した水が溢れないようにオーバーフロー用の開口を槽体1側面に開口し、オーバーフローした排水を後述する排水栓3または配管部材46へと排水するためのオーバーフロー配管47を洗面ボウルに一体的に構成している。・・・。排水部材4のオーバーフロー配管47は、前述のように洗面ボウルのオーバーフロー用開口から排水栓3までに連通する配管であって、本実施例では洗面ボウルに二層構造のように一体的に構成されている。・・・。」
(2) 引用文献2記載事項
上記(1)より、引用文献2には、以下の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「洗面台の洗面ボウルにおいて、洗面ボウルを陶器製とし、オーバーフローした排水を排水栓3または配管部材46へと排水するためのオーバーフロー配管47を洗面ボウルに二層構造のように一体的に構成している点。」
3 引用文献3及び引用文献3記載事項
(1) 引用文献3に記載された事項
当審拒絶理由に引用され、本願出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2018-91066号公報(平成30年6月14日公開。以下「引用文献3」という。)には、排水装置(発明の名称)に関し、次の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽や流し台、洗面ボウル等の各種槽体に取り付けられ、排水口を形成する排水栓を備える排水装置に関するものである。」
「【0015】
図1に示すように、槽体1は断面視箱状であって、底部に開口部11が形成されている。槽体1について詳述すると、図2及び図3に示すように、底面14より下方に向けて排水凹部12が凹設され、排水凹部12より更に一段下がった位置には内鍔部13が内側へ向けて形成されており、当該内鍔部13の内側に開口部11が形成されている。尚、排水凹部12の内径は後述する弁体5の弁蓋51の外径よりも大径である。
【0016】
排水栓2は内部に排水流路を形成する中空且つ円筒状の排水配管であって、円筒状の筒状部21と、筒状部21上端外周から外側に向けて形成されたフランジ部22から構成されている。ここで、排水栓2は上記開口部11に取り付けられ、槽体1内の排水を排出する排水口25を形成する。 ・・・。」
【図1】
「
[図:0001426475000003.jpg]
」
【図2】
「
[図:0001426475000004.jpg]
」
【図3】
「
[図:0001426475000005.jpg]
」
【図6】
「
[図:0001426475000006.jpg]
」
(2) 引用文献3に記載された事項より認定できる事項
図1~図3を参照すると、排水凹部12が上端部は下方に向けて内側に傾斜している点(以下「認定事項サ」という。)、筒状部21のフランジ部22が下方に向けて内側に傾斜している点(以下「認定事項シ」という。)が記載されていると認定できる。
また、図2及び図5を参照すると、弁体5は、その下部に、径方向外向きに突出する部材が設けられた点が見て取れ、図2に示された弁体5が排水口25を閉じた態様を参照すると、上記径方向外向きに突出する部材の先端が排水口25の筒状部21のフランジ部22の傾斜面に当接していることが見て取れることから、排水口25の筒状部21を弁体5によって閉じるにあたって、弁体5の下部に、径方向外向きに突出する部材を設け、該径方向外向きに突出する部材の先端を前記筒状部21のフランジ部22の傾斜面に当接させる点(以下「認定事項ス」という。)が記載されていると認定できる。
(3) 引用文献3記載事項1
上記(1)及び(2)より、引用文献3には、以下の事項(以下「引用文献3記載事項1」という。)が記載されていると認められる。
「底部に開口部11が形成された断面視箱状の槽体1と(【0015】)、内部に排水流路を形成する中空且つ円筒状の排水配管である排水栓2(【0016】)を備える排水装置であって(【0001】)、
槽体1の底面14より下方に向けて排水凹部12が凹設され、排水凹部12より更に一段下がった位置には内鍔部13が内側へ向けて形成されており、当該内鍔部13の内側に開口部11が形成されており(【0015】)、
排水栓2は、円筒状の筒状部21と、筒状部21上端外周から外側に向けて形成されたフランジ部22から構成され、槽体1内の排水を排出する排水口25を形成し(【0016】)、
排水凹部12の上端部は下方に向けて内側に傾斜しており(認定事項サ)、筒状部21のフランジ部22は下方に向けて内側に傾斜している(認定事項シ)、
排水装置(【0001】)。」
(4) 引用文献3記載事項2
また、上記(1)及び(2)より、引用文献3には、以下の事項(以下「引用文献3記載事項2」という。)も記載されていると認められる。
「排水口25の筒状部21を弁体5によって閉じるにあたって、弁体5の下部に、径方向外向きに突出する部材を設け、該径方向外向きに突出する部材の先端を前記筒状部21のフランジ部22の傾斜面に当接させる(認定事項ス)点。」
4 引用文献4及び引用文献4記載事項
(1) 引用文献4に記載された事項
当審拒絶理由に引用され、本願出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2018-91086号公報(平成30年6月14日公開。以下「引用文献4」という。)には、排水栓(発明の名称)に関し、次の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、洗面器の排水栓に関する。」
「【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態に係る排水栓について説明する。図1は、本実施形態に係る排水栓1を設けた洗面器の斜視図である。図2は、本実施形態に係る排水栓1の斜視図である。図1に示すように、本実施形態に係る排水栓1は、洗面器100の洗面ボウル101の排水口104(図8参照)を塞ぐように設けられ、後述する排水栓装置により上下移動可能であり、排水口104を開閉可能に構成されている。図3は排水栓1の分解斜視図である。図6は排水栓1の断面図である。図2及び図3に示すように、排水栓1は、栓本体3と、カバー部材2と、シール部材4とを備える。
【0022】
栓本体3は、排水口104の内径よりもやや小さい直径を有する略円柱形状の部材であり、樹脂製の一体成形品である。図6に示すように、上部の中央部に収容凹部(凹部)33が形成され、下側の中央部に下側凹部34が形成されている。図3に示すように、収容凹部33は平面視略円形に形成されている。収容凹部33は、後述するカバー部材2の脚部が挿入可能な大きさで形成されている。」
「【0027】
栓本体3の下部の外周面(外縁部)にはシール収容溝32が全周に設けられている。
シール部材4は、図6に示すように、Oリングであり、周方向外側に突出する弁部41を備える。シール部材4は、シール収容溝32に嵌められ、弁部41がシール収容溝32から径方向外側に突出しており、排水栓1が排水口104に取り付けられたとき、排水路(排水口金105)の内周面に密着して止水可能に構成されている。
【0028】
カバー部材2は、陶器製の円盤状部材である。図6に示すように、カバー部材2は、円板形状の下面23から下側に突出する脚部22が形成されている。脚部22は平面視円形である。カバー部材2の表面は、洗面ボウルの意匠に応じて適宜、着色、模様等が付されている。」
【図1】
「
[図:0001426475000007.jpg]
」
【図6】
「
[図:0001426475000008.jpg]
」
【図8】
「
[図:0001426475000009.jpg]
」
(2) 引用文献4に記載された事項より認定できる事項
【0027】を参照すると、図8に示された、排水路を形成する105の符号が付与された部材が「排水口金105」であること(以下「認定事項タ」という。)が示されている。
また、図8の記載及び【0027】を参照すると、排水口104は排水路(排水口金105)につながるものである点(以下「認定事項チ」という。)が認定でき、図6及び図8の記載、及び、【0027】における「シール部材4は」「内周面に密着して止水可能に構成されている。」を参酌すると、弁部41の先端を排水路の内周面に密着させて止水可能に構成している(以下「認定事項ツ」という。)と認められる。
(3) 引用文献4記載事項1
上記(1)及び(2)より、引用文献4には、以下の「引用文献4記載事項1」が記載されている。
「排水路を形成する部材を排水口金105とした点(認定事項タ)。」
(4) 引用文献4記載事項2
また、上記(1)及び(2)より、引用文献4には、以下の「引用文献4記載事項2」が記載されている。
「排水栓1を、排水路につながる排水口104を塞ぐように設けるにあたって(【0021】、認定事項チ)、排水栓1は、栓本体3と、栓本体3の下部の外周面に周方向外側に突出する弁部41を備えたシール部材4を備え(【0027】)、弁部41の先端を、排水路の内周面に密着させて止水可能に構成した(【0027】、認定事項ツ)点。」
5 本願出願前周知の事項
引用文献3記載事項2における「排水口25」を「閉じる」「弁体5」と、引用文献4記載事項2における「排水路につながる排水口104を塞ぐように設ける」「排水栓1」は、「排水孔を閉鎖」する「蓋部」といえる。
また、引用文献3記載事項2における「径方向外向きに突出する部材」が封止の役割を有することは、当業者にとって明らかであるから、引用文献3記載事項2における「径方向外向きに突出する部材」と、引用文献4記載事項2における「周方向外側に突出する弁部41を備えたシール部材4」は、「径方向外向きに突出する突出部が設けられたシール部材」といえる。
そして、引用文献3記載事項2における「径方向外向きに突出する部材の先端を」「筒状部21のフランジ部22の傾斜面に当接させる」ことと、引用文献4記載事項2における「周方向外側に突出する」「弁部41の先端を、排水路の内周面に密着させ」ることは、「径方向外向きに突出する」「突出部の先端を、排水路の内周面に密着」することといえる。
してみると、以下の点は、本願出願前周知の事項であるといえる。
「蓋部により排水孔を閉鎖するにあたって、蓋部は径方向外向きに突出する突出部が設けられたシール部材を備え、突出部の先端を、排水路の内周面に密着する点。」
第5 対比
(1) 対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 本願発明1の構成Aに関して
引用発明の構成aにおける「上側の洗面器底部10に」「設けられた」「排水口部11」は、本願発明1の構成Aにおける「排水孔」に相当し、引用発明の構成f1における「下側の洗面器底部10に設けられた孔」は、本願発明1の構成Aにおける「前記排水孔の下方に前記排水孔に対して同軸上に下部排水孔」に相当し、引用発明の構成aにおける「オーバーフロー孔」や「上側の洗面器底部10と下側の洗面器底部10」は、その機能からみて、本願発明1の構成Aにおける「オーバーフロー部」に相当する。
そして、本願発明1の構成Aにおける「陶器製洗面器本体」と、引用発明の構成aにおける「洗面器」とは、「洗面器本体」である点で一致する。
よって、本願発明1の構成Aと引用発明とは、「排水孔が形成され、前記排水孔の下方に前記排水孔に対して同軸上に下部排水孔が開口するオーバーフロー部を有する」「洗面器本体」である点で一致する。
イ 本願発明1の構成Bに関して
引用発明の構成bにおける「上端開口部1a」は、本願発明1の構成Bにおける「流入部」に相当する。
また、本願発明1の構成Bにおける「前記排水孔に取り付けられ」た「下方に向けて内側に傾斜した流入部を有する排水金具」と、引用発明の構成bにおける「該排水口部11に」「設けられ」た「排水装置A」が「備え」る「上端に上端開口部1aを有」する「ほぼ円筒形の筒体部1」とは、「前記排水孔に取り付けられ」た「流入部を有する」筒状の部材である点で一致する。
よって、本願発明1の構成Bと引用発明とは、「前記排水孔に取り付けられ」た「流入部を有する」筒状の部材を「備え」る点で一致する。
ウ 本願発明1の構成Cに関して
本願発明1の構成Cにおける「前記排水金具よりも上方に位置する蓋部」「を有する蓋部材」と、引用発明の構成cにおける「筒体部1よりも上方に位置」する「栓体部2」とは、筒状の部材「よりも上方に位置する蓋部を有する蓋部材」である点で一致する。
また、本願発明1の構成Cにおける「径方向外向きに突出する突出部が設けられたシール部材」と、引用発明の構成cにおける「径方向に延びる部分を有」する「筒体部1の上端開口部1aを水密的に閉塞するためパッキンQ」とは、「径方向外向きに突出する突出部が設けられたシール部材」である点で一致する。
よって、本願発明1の構成Cと引用発明とは、筒状の部材「よりも上方に位置する蓋部、及び径方向外向きに突出する突出部が設けられたシール部材を有する蓋部材」を「備え」る点で一致する。
エ 本願発明1の構成Dに関して
引用発明の構成dにおける「閉栓状態において、栓体部2の上端は排水口部11の上端部よりも上方に位置」することは、本願発明1の構成Dにおける「記蓋部材が前記排水孔を閉鎖した状態において、前記蓋部材の上端は、前記排水孔の上端部よりも上方に位置して」いることに相当する。
また、本願発明1の構成Dにおける「前記蓋部材が前記排水孔を閉鎖した状態において、」「前記突出部の先端は、前記排水金具の内周面に密着」することと、引用発明の構成dにおける「閉栓状態において、」「パッキンQの先端が筒体部1の内面に密着」することとは、「前記蓋部材が前記排水孔を閉鎖した状態において、」突出部「の先端は、」筒状の部材の内面「に密着」する点で一致する。
よって、本願発明1の構成Dと引用発明とは、「前記蓋部材が前記排水孔を閉鎖した状態において、」突出部「の先端は、」筒状の部材の内面「に密着」する点で一致する。
オ 本願発明1の構成Eに関して
上記アの検討も踏まえると、本願発明1の構成Eにおける「前記オーバーフロー部は、前記陶器製洗面器本体と一体的に形成され」ることと、引用発明の構成aにおける「洗面器」が「オーバーフロー孔」や「上側の洗面器底部10と下側の洗面器底部10」を備えることとは、「前記オーバーフロー部は、」「洗面器本体」に「形成され」た点で一致する。
よって、本願発明1の構成Eと引用発明とは、「前記オーバーフロー部は、」「洗面器本体」に「形成され」た点で一致する。
カ 本願発明1の構成Fに関して
本願発明1の構成Fにおける「前記流入部よりも下方の前記排水金具において、下部排水孔と前記排水金具との隙間は、前記排水孔と前記排水金具との隙間よりも狭い」ことと、引用発明の構成f2における「筒体部1と上側の洗面器底部10に設けられた排水口部11との間隙よりも、筒体部1と下側の洗面器底部10に設けられた孔との間隙のほうが小さくされ」ることとは、「前記流入部よりも下方の」筒状の部材「において、下部排水孔と前記」筒状の部材「との隙間は、前記排水孔と前記」筒状の部材「との隙間よりも狭い」点で一致する。
よって、本願発明1の構成Fと引用発明とは、「前記流入部よりも下方の」筒状の部材「において、下部排水孔と前記」筒状の部材「との隙間は、前記排水孔と前記」筒状の部材「との隙間よりも狭い」点で一致する。
キ 本願発明1の構成Gに関して
引用発明の構成gにおける「排水装置Aが設けられた洗面器」は、本願発明1の構成Gにおける「洗面器」に相当する。
(2) 一致点及び相違点
上記(1)アからキより、本願発明1と引用発明は、以下の点で一致する。
<一致点>
A’排水孔が形成され、前記排水孔の下方に前記排水孔に対して同軸上に下部排水孔が開口するオーバーフロー部を有する洗面器本体と、
B’前記排水孔に取り付けられ、流入部を有する筒状の部材と、
C’前記筒状の部材よりも上方に位置する蓋部、及び径方向外向きに突出する突出部が設けられたシール部材を有する蓋部材と、
を備えており、
D’前記蓋部材が前記排水孔を閉鎖した状態において、前記蓋部材の上端は、前記排水孔の上端部よりも上方に位置しており、前記突出部の先端は、前記筒状の部材の内面に密着し、
E’前記オーバーフロー部は、前記洗面器本体に形成され、
F’前記流入部よりも下方の前記筒状の部材において、下部排水孔と前記筒状の部材との隙間は、前記排水孔と前記筒状の部材との隙間よりも狭い
G 洗面器。
そして、両者は、以下の点で相違する。
<相違点1> (構成Aに関して)
洗面器本体に関して、本願発明1は、洗面器本体が陶器製であるのに対して、引用発明は、その点が不明である点。
<相違点2> (構成B、C、D、Fに関して)
排水孔に取り付けられる筒状の部材に関して、本願発明1は、当該筒状の部材が排水金具であるのに対して、引用発明は、当該筒状の部材である筒体部1がどのような材料のものであるのか不明である点。
<相違点3> (構成Bに関して)
排水孔に取り付けられる筒状の部材の流入部に関して、本願発明1は、当該部材が下方に向けて内側に傾斜した流入部を有するのに対して、引用発明は、上端開口部1aが下方に向けて内側に傾斜した構成を有するものではない点。
<相違点4> (構成C、Dに関して)
シール部材に関して、本願発明1は、シール部材の突出部の先端を筒状の部材の内周面に密着させるのに対して、引用発明は、パッキンQの突出する部分の先端を排水口部11の内面に密着しているとはいえるものの、内周面に密着しているといえるか不明である点。
<相違点5> (構成Eに関して)
オーバーフロー部の形成に関して、本願発明1は、オーバーフロー部は、洗面器本体と一体的に形成されたものであるのに対して、引用発明は、その点が不明である点。
第6 検討
(1) 相違点について
上記各相違点について検討する。
ア 相違点1及び相違点5について
相違点1と相違点5は、洗面器本体の材質及び構造に関するものであるのでまとめて検討する。
引用文献2には、上記第4の2(2)に記載した引用文献2記載事項が記載されている。
引用文献2記載事項において、「陶器製」の「洗面ボウル」において「オーバーフロー配管47を洗面ボウルに二層構造のように一体的に構成」したことは、「オーバーフロー配管47」が「洗面ボウル」に一体的に形成されていることに他ならないから、引用文献2記載事項における「洗面ボウルを陶器製と」することは、相違点1に係る本願発明1の構成における「洗面器本体が陶器製である」ことに相当し、引用文献2記載事項における「オーバーフロー配管47を洗面ボウルに二層構造のように一体的に構成」したことは、相違点5に係る本願発明1の構成における「オーバーフロー部は、洗面器本体と一体的に形成されたものである」ことに相当する。
そして、引用発明と引用文献2記載事項は、洗面器の排水構造という共通の技術分野に属し、排水構造の改良という共通の課題を備えるものであることから、引用発明に、引用文献2記載事項を適用し、相違点1及び相違点5に係る本願発明1の構成を成すことは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ 相違点2について
引用文献4には、上記第4の4(3)に記載した引用文献4記載事項1が記載されている。
引用文献4記載事項1における「排水路を形成する部材を排水口金105と」することは、相違点2に係る本願発明1の構成における、「排水孔に取り付けられ」る筒状の部材が「排水金具」であることに相当する。
そして、引用発明と引用文献4記載事項1は、洗面器の排水構造という共通の技術分野に属し、排水構造の改良という共通の課題を備えるものであることから、引用発明に、引用文献4記載事項1を適用し、相違点2に係る本願発明1の構成を成すことは、当業者が容易に想到し得たことである。
ウ 相違点3、4について
相違点3、4は関連するため、併せて検討する。
相違点3に関して、引用文献3には、上記第4の3(3)に記載した引用文献3記載事項1が記載されており、引用文献3記載事項1における「筒状部21のフランジ部22は下方に向けて内側に傾斜して」いることは、相違点3に係る本願発明1の構成における、「排水孔に取り付けられる」筒状の部材が「下方に向けて内側に傾斜した流入部を有する」ことに相当する。
そして、引用発明と引用文献3記載事項1は、洗面器の排水構造という共通の技術分野に属し、排水構造の改良という共通の課題を備えるものであることから、引用発明に、引用文献3記載事項1を適用し、相違点3に係る本願発明1の構成を成すことは、当業者が容易に想到し得たことである。
上記のように相違点3に係る構成を、引用発明が備えるようになれば、引用発明のパッキンQの突出する部分の先端は、内側に傾斜した流入部に密着するように構成されることが自然であり、その場合には、相違点4に係る「内周面に密着する」という構成も、同時に備えることになる。
したがって、引用発明に、引用文献3記載事項1を適用し、相違点3、4に係る本願発明1の構成を成すことは、当業者が容易に想到し得たことである。
仮に、引用発明のパッキンQの突出する部分の先端が、内側に傾斜した流入部に密着するように構成されることが必然的ではないとしても、一般的に、水密性を高めるためにシールを行うにあたり、シール部材を止水すべき箇所と密着させることは通常行われていることであり、その場合に密着させる箇所を部材の配置等に鑑みて、適宜変更することは通常の技術事項にすぎないこと、及び上記第4の5に示したように、「蓋部により排水孔を閉鎖するにあたって、蓋部は径方向外向きに突出する突出部が設けられたシール部材を備え、突出部の先端を、排水路の内周面に密着する点」は本願出願前周知の事項であるから、引用発明において、相違点4に係る「内周面に密着する」という構成とすることは格別なことではない。
エ 作用効果について
本願発明1によってもたらされる作用効果は、引用発明、引用文献2記載事項、引用文献3記載事項1、引用文献4記載事項1及び本願出願前周知の事項に基づいて、当業者が容易に想到し得る程度のものである。
(2) 令和7年4月14日提出の意見書における請求人の主張に対する反論
ア 請求人の主張について
請求人は、上記意見書において、以下のように主張している。
「1.意見の主旨
補正後の請求項1に係る発明(以下、本願発明と言う。)は、「蓋部材が排水孔を閉鎖した状態において、シール部材に設けられた径方向外向きに突出する突出部の先端が排水金具の内周面に密着する」という技術的特徴を有しています。」
「 これらの技術的特徴は、引用文献2-4に開示・示唆されていると見受けられますが、引用文献2-4に開示・示唆された技術を引用文献1に適用することには、阻害要因が存在します。従いまして、引用文献1-4に基づいて本願発明・・・を着想し得る筈はないと考えます。」
「引用文献1・・・における発明が解決しようとする課題は、筒体部(排水金具に相当)が変形したときに栓体部(蓋部材に相当)を支える軸部に装着したガイド部材やヘヤーキャッチャーが円滑に摺動できなくなって栓体部の昇降動作に支障をきたし、閉栓状態が不良となることです。このため、引用文献1のものは、ガイド部材を廃し、ヘヤーキャッチャーHの外周縁を筒体部1の内周面に接触させないように筒体部1の内周面に対して径方向内向きに離間させています。更に引用文献1のものは、パッキンQ(シール部材に相当)の先端を、筒体部1の内周面に対して径方向内向きに離間させ、且つ筒体部1における軸線方向に直交する上向きの面に載置することによって筒体部1を閉塞する構成です。」
「引用文献1のものを、引用文献3や引用文献4の記載から「蓋部材が排水孔を閉鎖した状態において、シール部材に設けられた径方向外向きに突出する突出部の先端が排水金具の内周面に密着する」ようにすると、筒体部1が変形したときにパッキンQの先端が筒体部1の内周面に引っ掛かってしまい、引用文献1における発明が解決しようとする課題が解決できなくなってしまいます。従いまして、引用文献1に本願発明との相違点である「蓋部材が排水孔を閉鎖した状態において、シール部材に設けられた径方向外向きに突出する突出部の先端が排水金具の内周面に密着する」という構成を採用することには、阻害要因が存在します。従いまして、このような引用文献1に基づいて当業者が本願発明の構成に想到することは極めて困難です。」
イ 請求人の主張に対する反論
引用文献1には以下の記載がある。
「【0005】
【発明が解決しようとする課題】前記従来の排水装置Bにあっては、栓体部2を昇降させる際に軸部5の軸芯が揺れないようにするため、栓体部2を支える軸部5に装着したガイド部材G及びヘヤーキャッチャーJが筒体部1の内周面と摺接する構成を採用している。ところで当該排水装置Bの設置にあたり、洗面器底部10へ筒体部1を装着するときに、螺合する排水管Dを強く締めつけ過ぎると、筒体部1が変形するおそれがある。これは、筒体部1の側周壁に排水流入用の開口kを切欠形成しているため、この部分において軸方向の圧縮強度が弱くなっているからである。
【0006】
筒体部1が変形すると、軸部5に装着したガイド部材GやヘヤーキャッチャーJが円滑に摺動するのが困難となり、栓体部2の昇降動作に支障をきたす。また栓体部2が筒体部1の上端開口部1aを適正に閉塞することができなくなって、閉栓状態が不良となる。」
上記の記載に基づくと、引用文献1に記載された事項の解決しようとする課題は、筒体部1が変形に伴い、栓体部2の昇降動作に支障が生じた場合において、上端開口部1aが適正に閉塞できないことであると認められる。
してみると、引用文献1に記載された事項は、栓体部2が筒体部1の上端開口部1aを適正に閉塞することができなくなることを解決しようとするものであるが、これは、栓本体2及びパッキンQより下方の構造に起因するものであり、上端開口部1aと、栓本体2及びパッキンQの形状及び構造は、引用文献1に記載された事項の解決しようとする課題とは直接関係しておらず、また、パッキンQは、ガイド部材Gやヘヤ-キャッチャーJと比較して、変形しやすいことを考慮すれば、筒体部1が変形したとしても、パッキンQの通常の使用に基づく態様が栓体部2等の昇降動作に支障を来すとは考えにくく、パッキンQ等の構成を変更しうる余地はあるというべきである。
したがって、引用発明における上端開口部1a及びパッキンQの構成を、「蓋部は径方向外向きに突出する突出部が設けられたシール部材を備え、突出部の先端を、排水路の内周面に密着する」構成とすることに阻害要因があるとは認められず、請求人の主張は採用できない。
(3) 小括
以上のことから、本願発明1は、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された事項、引用文献3に記載された事項、引用文献4に記載された事項及び本願出願前周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明1は、当業者が、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された事項、引用文献3に記載された事項、引用文献4に記載された事項、及び、本願出願前周知の事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-004837