特許拒絶査定不服審判
2024-000948
浴室設備
- 審判番号
- 2024-000948
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-135891
- 請求日
- 2024年01月19日
- 審決日
- 2025年09月16日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社LIXIL
- 【請求人代理人】森下 賢樹
- 審判長/審判官
- 審判長 佐々木 正章
- 審判官 土田 嘉一
- 審判官 立花 啓
- 分類
- P18 .121-WZ (A47K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-135891「浴室設備」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 2月15日出願公開、特開2021- 16747〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和 元年 7月24日の出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
令和 5年 3月28日付け:拒絶理由通知書
同年 5月30日 :意見書及び手続補正書の提出
同年 6月 7日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
同年10月11日 :意見書及び手続補正書の提出
同年11月 1日付け:拒絶査定
令和 6年 1月19日 :審判請求書及び手続補正書の提出
令和 7年 2月13日付け:拒絶理由通知書
同年 4月14日 :意見書及び手続補正書の提出
同年 5月15日付け:拒絶理由通知書
同年 7月11日 :意見書及び手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1、2に係る発明は、令和 7年 7月11日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1、2の記載事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「ポンプにより圧送される液体が給液路を通して供給される噴射部材を備える吐出装置と、
前記吐出装置が取り付けられる浴槽と、を備える浴室設備であって、
前記噴射部材には、浴槽内に貯留される浴槽水中において噴流を噴射可能な噴射流路と、前記給液路から供給される液体を前記噴射流路に供給する単数の中継流路とが形成され、
前記吐出装置は、前記浴槽水中において、前記噴流の噴射方向が前記噴射流路の幅方向かつ平面内で揺動する揺動噴射を前記噴射部材に実行させることが可能であり、
前記噴射流路は、液体を外部に吐出する出口孔を備え、
前記出口孔の前記幅方向での内幅寸法は、前記噴射流路において前記出口孔に対して上流側に連続する流路の前記幅方向での内幅寸法よりも小さくなるように形成され、
前記噴射部材は、前記ポンプにより圧送された液体が前記給液路及び前記単数の中継流路を通して前記噴射流路に供給されたとき、前記噴射流路内での液体の流れ方が周期的に切り替わることで、静止した状態のまま、前記揺動噴射を単独で実行可能な流体素子である浴室設備。」
第3 当審が通知した拒絶の理由の概要
当審が通知した令和 7年 2月13日付け拒絶理由通知書に係る拒絶の理由は、次の理由を含むものである。
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献:特開2007-209486号公報
第4 当審の判断
1 引用文献の記載
引用文献には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。)。
「【0012】
本発明に係る発生浴槽の実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る発生浴槽1の全体概要を示す図である。
【0013】
浴槽本体2には、その底面に、浴槽本体2内の浴水を吸い込むための吸込口3が設けられる。この吸込口3は、浴水吸込流路4を介して循環ポンプ5に接続された後、循環ポンプ5下流側では浴水強送流路6が接続される。なお、吸込口3は浴槽本体2の側面に設けても良く、設置場所の状況に応じて最適な位置を選べばよい。
【0014】
浴水強送流路6は、電動弁21を経由した後、第1分岐浴水強送流路7と第2分岐浴水強送流路8とに分岐して、両者は、浴槽本体2側面に取設された噴流ノズル40に接続される。この吸込口3から噴流ノズル40に至る流路は浴水循環流路を形成する。」
「【0017】
噴流ノズル40は、浴槽本体2に向かって水流の噴出方向が連続して変化するスイング吐水ノズルであり、図3(a)に示すように、第1分岐浴水強送流路7が接続される第1入口41と、第2分岐浴水強送流路8が接続される第2入口42とが混合室43に設けられ、第1分岐浴水強送流路7及び第2分岐浴水強送流路8は、第1入口41及び第2入口42に通じてこの混合室43と一体化されて構成される。
【0018】
混合室43の壁面には、吐水口44が設けられている。吐水口44は第2分岐浴水強送流路8に対しては、その流路の直線延長線上に位置し、第1分岐浴水強送流路7に対しては、その流路が混合室43の壁面に沿って湾曲した後、浴槽本体2に開放される位置に設けられる。」
「【0024】
そして、循環ポンプ5を運転して水を電動弁21を介して噴流ノズル40に供給するのであるが、モータ9を駆動して回動弁体24を回転することで、第1流出口29と第2流出口32への水の流れる流量比が変化しながら第1入口41、第2入口42から混合室43内に供給されて混合室43内で合流し、合流した水流が混合室43から外部に噴射される。
【0025】
この場合、混合室43で合流した水は第1入口41と第2入口42とから供給される流量比が変化することでその混合室43からの噴出方向を略扇状の角度の範囲内で変化させることになる。すなわち、図2に示すように、第1流出口29にのみ水が流れる時は混合室43から水流の噴射方向は図2の矢印イ方向となり、回動弁体24が回転して図2(c)のように第1流出口29、第2流出口32との流量比が同じとなると図2の矢印ロ方向となり、更に、回動弁体24が回転して図2(d)のように第2流出口32のみに水が流れる時は混合室43から水流の噴射方向は図2の矢印ハ方向となる。
【0026】
更に回動弁体24が回動すると矢印ハ方向から矢印ロ方向を経て再び矢印イ方向となる。このように混合室43から矢印イ方向から矢印ハ方向の範囲内で水流の噴射方向を変えながら噴射するようになっている。
【0027】
図5には、上記図2に示す実施形態におけるポンプ5を出力一定で連続運転している際に同時に回動弁体24を一方向に連続して回転している時の第1流出口29と第2流出口32の流量比の変化と、噴射方向との関係を示すタイムチャートを示しており、図5において水量Sはポンプ5からの供給水量を示している。また、図5の1サイクルTはモータ9の回転速度の設定により任意に設定が可能である。」
図1「
[図:0001429440000001.jpg]
」
図3「
[図:0001429440000002.jpg]
」
図5「
[図:0001429440000003.jpg]
」
上記記載事項によれば、引用文献には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「循環ポンプ5下流側では浴水強送流路6が接続され、浴水強送流路6は第1分岐浴水強送流路7と第2分岐浴水強送流路8とに分岐して、両者は、浴槽本体2側面に取設された噴流ノズル40に接続され、循環ポンプ5を運転して水を噴流ノズル40に供給し、
噴流ノズル40は、第1分岐浴水強送流路7が接続される第1入口41と、第2分岐浴水強送流路8が接続される第2入口42とが混合室43に設けられ、第1分岐浴水強送流路7及び第2分岐浴水強送流路8は、第1入口41及び第2入口42に通じてこの混合室43と一体化されて構成され、
水流が混合室43から外部に噴射され、混合室43からの噴出方向を略扇状の角度の範囲内で変化させ、
混合室43の壁面には、吐水口44が設けられ、
第1分岐浴水強送流路7に対しては、その流路が混合室43の壁面に沿って湾曲する発生浴槽1。」
2 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「循環ポンプ5」、「浴水強送流路6」及び「浴槽本体2」は、その作用、構造から本願発明の「ポンプ」、「給液路」及び「浴槽」にそれぞれ相当する。また、引用発明の「噴流ノズル40」は、本願発明の「噴射部材」及び「吐出装置」に相当する。さらに、引用発明の「発生浴槽1」は、図1より噴射ノズル40と浴槽本体2とを備えるものであるから、本願発明の「浴室設備」に相当する。
(2)引用発明の「循環ポンプ5下流側では浴水強送流路6が接続され、浴水強送流路6は第1分岐浴水強送流路7と第2分岐浴水強送流路8とに分岐して、両者は、浴槽本体2側面に取設された噴流ノズル40に接続され、循環ポンプ5を運転して水を噴流ノズル40に供給」することは、本願発明の「噴射部材」が「ポンプにより圧送される液体が給液路を通して供給される」ことに相当する。
(3)引用発明の「噴流ノズル40」が「浴槽本体2側面に取設され」ることは、本願発明の「前記吐出装置が」「浴槽」に「取り付けられる」ことに相当する。
(4)引用発明の「水流が」「外部に噴射され」る「混合室43」は、図1より外部が浴槽水中であることが明らかであるから、本願発明の「浴槽内に貯留される浴槽水中において噴流を噴射可能な噴射流路」に相当する。また、引用発明の「第1分岐浴水強送流路7と第2分岐浴水強送流路8」は、浴水強送流路6から分岐され、混合室43に接続されるから、本願発明の「中継流路」に相当する。したがって、引用発明の「噴流ノズル40は、第1分岐浴水強送流路7が接続される第1入口41と、第2分岐浴水強送流路8が接続される第2入口42とが混合室43に設けられ、第1分岐浴水強送流路7及び第2分岐浴水強送流路8は、第1入口41及び第2入口42に通じてこの混合室43と一体化されて構成され水流が混合室43から外部に噴射され」ることと、本願発明の「前記噴射部材には、浴槽内に貯留される浴槽水中において噴流を噴射可能な噴射流路と、前記給液路から供給される液体を前記噴射流路に供給する単数の中継流路とが形成され」ることとは、前記噴射部材には、浴槽内に貯留される浴槽水中において噴流を噴射可能な噴射流路と、前記給液路から供給される液体を前記噴射流路に供給する中継流路とが形成されることの限りで一致する。
(5)引用発明の「混合室43からの噴出方向を略扇状の角度の範囲内で変化させ」ることは、本願発明の「前記吐出装置は、前記浴槽水中において、前記噴流の噴射方向が前記噴射流路の幅方向かつ平面内で揺動する揺動噴射を前記噴射部材に実行させることが可能であ」ることに相当する。
(6)引用発明の「吐水口44」は、本願発明の「液体を外部に吐出する出口孔」に相当する。
(7)引用発明の「混合室43」は、「第1分岐浴水強送流路7に対しては、その流路が混合室43の壁面に沿って湾曲する」よう構成されており、図3を参照すると、吐出口44の幅方向での内幅寸法は、混合室43において吐出口44に対して上流側に連続する流路の幅方向での内幅寸法よりも小さくなるように形成されている。
(8)引用文献の段落0026、0027、図3、5より、引用発明における混合室43内での液体の流れ方は、矢印イ方向から矢印ハ方向の範囲内で周期的に切り替わる。また、引用発明の「噴流ノズル40」は、可動する部材を有しないから、静止した状態のまま、略扇状の角度の範囲内で変化する噴射を実行可能である。したがって、引用発明の「噴流ノズル40」と本願発明の「前記ポンプにより圧送された液体が前記給液路及び前記単数の中継流路を通して前記噴射流路に供給されたとき、前記噴射流路内での液体の流れ方が周期的に切り替わることで、静止した状態のまま、前記揺動噴射を単独で実行可能な流体素子である」「前記噴射部材」とは、前記ポンプにより圧送された液体が前記給液路及び前記中継流路を通して前記噴射流路に供給されたとき、前記噴射流路内での液体の流れ方が周期的に切り替わることで、静止した状態のまま、前記揺動噴射を実行可能な流体素子である前記噴射部材の限りで一致する。
したがって、両者は、
「ポンプにより圧送される液体が給液路を通して供給される噴射部材を備える吐出装置と、
前記吐出装置が取り付けられる浴槽と、を備える浴室設備であって、
前記噴射部材には、浴槽内に貯留される浴槽水中において噴流を噴射可能な噴射流路と、前記給液路から供給される液体を前記噴射流路に供給する中継流路とが形成され、
前記吐出装置は、前記浴槽水中において、前記噴流の噴射方向が前記噴射流路の幅方向かつ平面内で揺動する揺動噴射を前記噴射部材に実行させることが可能であり、
前記噴射流路は、液体を外部に吐出する出口孔を備え、
前記出口孔の前記幅方向での内幅寸法は、前記噴射流路において前記出口孔に対して上流側に連続する流路の前記幅方向での内幅寸法よりも小さくなるように形成され、
前記噴射部材は、前記ポンプにより圧送された液体が前記給液路及び前記中継流路を通して前記噴射流路に供給されたとき、前記噴射流路内での液体の流れ方が周期的に切り替わることで、静止した状態のまま、前記揺動噴射を実行可能な流体素子である浴室設備。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点1]
本願発明は、中継流路が「単数」であるのに対し、引用発明は、第1分岐浴水強送流路7と第2分岐浴水強送流路8とを有する点。
[相違点2]
本願発明は、噴射部材が揺動噴射を「単独で」実行可能であるのに対し、引用発明は、噴射ノズル40がそのように特定されていない点。
3 判断
上記相違点1及び2について検討する。
平面内で揺動する揺動噴射を、液体が単数の中継流路を通して噴射流路に供給されたとき、噴射流路内での液体の流れ方が周期的に切り替わることで、静止した状態のまま、揺動噴射を単独で実行可能な流体素子により行うことは、周知技術であり(例えば、原査定で引用された特開2018-167164号公報の段落0102~0107、図22Aを参照。)、引用発明において、混合室43からの噴出方向を略扇状の角度の範囲内で変化させる構成として、上記周知技術を採用し、上記相違点1及び2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、本願発明の効果についてみても、引用発明及び周知技術から格別なものということはできない。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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