特許異議申立
2023-701385
含フッ素共重合体、光学用樹脂組成物、及び光学用樹脂成形体
- 審判番号
- 2023-701385
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-141642
- 登録番号
- 7299788
- 請求日
- 2023年12月27日
- 審決日
- 2024年10月03日
- 公報発行日
- 2025年01月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日東電工株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人青藍国際特許事務所
- 【権利者代理人】鎌田 耕一
- 【権利者代理人】間中 恵子
- 【異議申立人】筒井 雅人
- 審判長/審判官
- 審判長 細井 龍史
- 審判官 藤井 勲
- 審判官 岡谷 祐哉
- 分類
- P1652.113-YAA(C08F) / P1652.121-YAA(C08F) / P1652.537-YAA(C08F) / P1652.536-YAA(C08F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7299788号発明「含フッ素共重合体、光学用樹脂組成物、及び光学用樹脂成形体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7299788号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。
特許第7299788号の請求項1、2、6~8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7299788号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願は、令和1年7月31日を出願日とする出願(特願2019-141642号)であって、令和5年6月20日に特許権の設定登録(請求項の数10)がされ、同年同月28日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許に対し、令和5年12月27日に、特許異議申立人である筒井 雅人(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1、2、6~8)がされた。
その後の本件特許異議申立事件の主な手続の経緯は、次のとおりである。
令和6年 3月14日付け 取消理由通知
同年 5月17日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年 同月23日付け 訂正請求があった旨の通知(申立人宛て)
なお、申立人に対し、令和6年5月23日付け通知書により、同年同月17日に訂正請求書及び意見書の提出があった旨を通知し、意見を述べる機会を与えたが、申立人から意見書は提出されなかった。
第2 訂正の適否
1 請求の趣旨
特許第7299788号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~10について訂正することを求める、というものである。
2 訂正の内容
令和6年5月17日付け訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである(当審注:下線は、当審で付した。以下同様。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「下記式(1)で表される構成単位(A)と、
下記式(2)で表される構成単位(B)、下記式(3)で表される構成単位(C)、及び下記式(4)で表される構成単位(D)からなる群より選択される少なくとも1つと、を含有する、含フッ素共重合体であって、
前記含フッ素共重合体が、前記構成単位(B)を含むとき、前記構成単位(B)の含有量が、前記含フッ素共重合体における全構成単位の合計に対し、5~10モル%であり、
前記含フッ素共重合体が、前記構成単位(C)を含むとき、前記構成単位(C)の含有量が、前記含フッ素共重合体における全構成単位の合計に対し、5~10モル%であり、
前記含フッ素共重合体が、前記構成単位(D)を含むとき、前記構成単位(D)の含有量が、前記含フッ素共重合体における全構成単位の合計に対し、30~67モル%であり、」
と記載されているのを、
「下記式(1)で表される構成単位(A)と、
下記式(4)で表される構成単位(D)と、を含有する、含フッ素共重合体であって、
前記構成単位(D)の含有量が、前記含フッ素共重合体における全構成単位の合計に対し、30~67モル%であり、」
に訂正する。
また、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2~10も同様に訂正する。
(2)一群の請求項について
訂正前の請求項1~10について、請求項2~10は、それぞれ請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
よって、訂正前の請求項1~10に対応する訂正後の請求項1~10は、特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、訂正前の請求項1において、「下記式(1)で表される構成単位(A)と、下記式(2)で表される構成単位(B)、下記式(3)で表される構成単位(C)、及び下記式(4)で表される構成単位(D)からなる群より選択される少なくとも1つと、を含有する含フッ素共重合体」であって、「含フッ素共重合体」における全構成単位の合計に対する上記構成単位(B)~(D)の各々の含有量を特定していたものから、訂正後の請求項1において、「下記式(1)で表される構成単位(A)と、下記式(4)で表される構成単位(D)と、を含有する含フッ素共重合体」であって、「含フッ素共重合体」における全構成単位の合計に対する上記構成単位(D)の含有量を特定することに訂正するものである。
この訂正は、「含フッ素共重合体」の構成単位として、選択的に記載されていた構成単位(B)~(D)のうち構成単位(B)及び(C)を削除して、構成単位(D)に限定し、これに伴って、「含フッ素共重合体」における全構成単位の合計に対する上記構成単位(B)及び(C)の各々の含有量に係る特定を削除したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1は、請求項に記載された発明特定事項において択一的記載の要素を削除するものであるから、本件特許の願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)又は特許請求の範囲(以下、「本件明細書等」という。)のすべてを総合することにより導き出される技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
また、上記訂正事項1に係る訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないことは明らかである。
4 独立特許要件
上記「第1 手続の経緯」で述べたとおり、本件特許異議の申立ては、本件請求項1~10に係る特許のうち請求項1、2、6~8に係る特許に対して申立てられたものであるから、請求項3~5、9、10に係る特許に対しては申立てられていない。
そして、訂正事項1による訂正前の請求項1に対する訂正は、上記3で述べたとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用する請求項3~5、9、10も同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正がなされたといえる。
そこで、訂正後の請求項3~5、9、10に係る発明の独立特許要件について検討すると、後記「第5 当審の判断」で述べるように、本件訂正後の請求項1に係る発明には、特許を受けることができないとすべき理由があるとはいえないから、本件訂正後の請求項1を直接又は間接的に引用し、かつ、本件訂正後の請求項1に係る発明の特定事項を全て含む本件訂正後の請求項3~5、9、10に係る発明についても、同様に特許を受けることができないとすべき理由があるとはいえず、また他に特許を受けることができない理由を発見しないため、本件訂正後の請求項3~5、9、10に係る発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるといえる。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第7項の規定を満たす訂正であるといえる。
5 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5~7項の規定に適合するものであるから、結論のとおり、本件訂正を認める。
第3 訂正後の特許請求の範囲の記載
本件訂正請求により訂正された請求項1~10に係る発明(以下、順に「本件発明1」等といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
下記式(1)で表される構成単位(A)と、
下記式(4)で表される構成単位(D)と、を含有する、含フッ素共重合体であって、
前記構成単位(D)の含有量が、前記含フッ素共重合体における全構成単位の合計に対し、30~67モル%であり、
前記含フッ素共重合体を、1cm×6cmおよび厚み100μmのサイズに成形して得られた成形体について、つかみ間隔5cmかつ引張速度10cm/分で引張伸度を測定した場合の引張伸度が、118%以上かつ145%以下である、
含フッ素共重合体。
【化1】
[図:0001418233000001.jpg]
(式(1)中、Rff1~Rff4は各々独立に、フッ素原子、炭素数1~7のパーフルオロアルキル基、又は炭素数1~7のパーフルオロアルキルエーテル基を表す。Rff1及びRff2は連結して環を形成してもよい。)
【化4】
[図:0001418233000002.jpg]
(式(4)中、Zは、酸素原子、単結合、又は-OC(R19R20)O-を表し、R9~R20は各々独立に、フッ素原子、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基、又は炭素数1~5のパーフルオロアルコキシ基を表す。フッ素原子の一部は、フッ素原子以外のハロゲン原子で置換されていてもよい。パーフルオロアルキル基におけるフッ素原子の一部は、フッ素原子以外のハロゲン原子で置換されていてもよい。パーフルオロアルコキシ基におけるフッ素原子の一部は、フッ素原子以外のハロゲン原子で置換されていてもよい。s及びtはそれぞれ独立に0~5で、かつs+tが1~6の整数(ただし、Zが-OC(R19R20)O-の場合、s+tは0であってもよい)を表す。)
【請求項2】
前記構成単位(A)が、下記式(5)で表される構成単位を含む、
請求項1に記載の含フッ素共重合体。
【化5】
[図:0001418233000003.jpg]
【請求項3】
前記構成単位(D)が、下記式(6)で表される構成単位を含む、
請求項1又は2に記載の含フッ素共重合体。
【化6】
[図:0001418233000004.jpg]
(式(6)中、R141、R142、R151、及びR152は各々独立に、フッ素原子、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基、又は炭素数1~5のパーフルオロアルコキシ基を表す。フッ素原子の一部は、フッ素原子以外のハロゲン原子で置換されていてもよい。パーフルオロアルキル基におけるフッ素原子の一部は、フッ素原子以外のハロゲン原子で置換されていてもよい。パーフルオロアルコキシ基におけるフッ素原子の一部は、フッ素原子以外のハロゲン原子で置換されていてもよい。)
【請求項4】
前記構成単位(D)が、下記式(7)で表される構成単位を含む、
請求項3に記載の含フッ素共重合体。
【化7】
[図:0001418233000005.jpg]
【請求項5】
前記構成単位(D)が、下記式(8)で表される構成単位を含む、
請求項3又は4に記載の含フッ素共重合体。
【化8】
[図:0001418233000006.jpg]
(式(8)中、R21は、炭素数1~4のパーフルオロアルキル基を表す。)
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の含フッ素共重合体を含む、
光学用樹脂組成物。
【請求項7】
屈折率調整剤をさらに含む、
請求項6に記載の光学用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の光学用樹脂組成物を含む、
光学用樹脂成形体。
【請求項9】
光伝送体である、
請求項8に記載の光学用樹脂成形体。
【請求項10】
前記光伝送体が、プラスチック光ファイバーである、
請求項9に記載の光学用樹脂成形体。」
第4 特許異議申立書の申立理由と当審が通知した取消理由
1 特許異議申立書(以下、「申立書」という。)の申立理由
(1)申立理由1(甲第1号証に基づく新規性欠如)
本件の請求項1、2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるので、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件の請求項1、2に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(甲第1号証に基づく進歩性欠如)
本件の請求項1、2、6~8に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件の請求項1、2、6~8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)申立理由3(実施可能要件違反)又は申立理由4(サポート要件違反)
本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
本件の特許請求の範囲の請求項1、2、6~8の記載は、同項に記載された特許を受けようとする発明が、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、本件の請求項1、2,6~8に係る発明の特許は、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
具体的理由の概要は以下のとおり。
ア 本件発明1は、構成単位(B)~同(D)のいずれかを共重合成分として有する含フッ素共重合体であるところ、本件明細書の実施例では、構成単位(D)を共重合成分とするものしか記載されておらず、構成単位(B)、同(C)を有する共重合体については記載されていない。そして、構成単位(B)、同(C)を有する共重合体において、「5~10モル%」とする含有割合を必須要件とするも、実施例がないことから、上記含有割合の共重合体が有利な効果を奏することの根拠がない。
イ 「1cm×6cmおよび厚み100μmのサイズに成形して得られた成形体について、つかみ間隔5cmかつ引張速度10cm/分で引張伸度を測定した場合の引張伸度が、118%以上かつ145%以下である」こと(以下、「本件物性」という。)について、本件明細書では実施例に記載されたのみであり、その技術的意義について記載されていないし、実施例では、構成単位(B)、同(C)を有する共重合体についての実験データが示されていない。ここで、樹脂の物理的性質は、共重合単位やその配合割合によって大きく変化するところ、実施例1~3の重合体において、上述した引張伸度が118%以上かつ145%以下であることが示されていたとしても、全く異なる共重合単位を異なる含有割合で含有する共重合体についても同様の引張伸度となるかどうか、実際に実験を行わない限り、当業者であっても推測することはできない。
2 証拠方法
申立人が、申立書に添付した証拠は、以下のとおりである。
・甲第1号証:特公昭43-29154号公報
・甲第2号証:特表平9-512854号公報
・甲第3号証:Journal of Fluorine Chemistry, 214(2018)63-67
・甲第4号証:特開2019-49658号公報
(以下、甲第1号証~甲第4号証をそれぞれ「甲1」~「甲4」という。)
3 当審が通知した令和6年3月4日付け取消理由通知
当審で通知した取消理由通知の概要は以下のとおりである。
(1)取消理由1(甲1に基づく新規性欠如)
本件特許の請求項1、2、6、8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、これらの請求項に係る発明の特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2)取消理由2(甲1に基づく進歩性欠如)
本件特許の請求項1、2、6~8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(3)取消理由3(明確性要件違反)
本件特許の特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
具体的理由の概要は以下のとおり。
本件発明1は、本件物性を特定しているところ、該本件物性の引張強度を測定する測定サンプルをどのように成形したのか不明であり、一般に成形された測定サンプルは、その成形条件や成形方法について影響を受けるものであるから、同じ組成の含フッ素共重合体であっても、測定値が一義的に定まらないものである。
(4)取消理由4(サポート要件違反)
本件特許の特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
具体的理由の概要は以下のとおり。
本件発明1の「含フッ素共重合体」には、「構成単位(A)」と「構成単位(D)」を含有するもの以外に、「構成単位(A)」と、「構成単位(B)」又は「構成単位(C)」を特定の含有割合で含有するものも含まれているところ、これらの実施例が示されておらず、これらの場合であっても、「構成単位(A)」と「構成単位(D)」を含有する含フッ素共重合体と同様に、本件物性を満たすことが開示されていない。
(5)取消理由5(実施可能要件違反)
本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
具体的理由の概要は以下のとおり。
上記(4)に示したように、本件発明1の「含フッ素共重合体」において、「構成単位(A)」と、「構成単位(B)」又は「構成単位(C)」を特定の含有割合で含有する「含フッ素共重合体」の実施例が開示されていないため、同様の理由により、本件明細書の発明の詳細な説明には、本件発明1の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。
5 当審の判断
以下に述べるように、当審が通知した取消理由通知の取消理由、及び、特許異議申立書の申立理由によっては、本件発明1、2、6~8に係る特許を取り消すことはできない。
1 取消理由1(甲1に基づく新規性欠如)及び取消理由(甲1に基づく進歩性欠如)並びに申立理由1(甲1に基づく新規性欠如)及び申立理由2(甲1に基づく進歩性欠如)
取消理由1及び取消理由2並びに申立理由1及び申立理由2は、いずれも甲1に基づくものであるから、併せて検討する。
(1)甲1に記載された事項及び甲1に記載された発明
ア 甲1に記載された事項
甲1には、以下の事項が記載されている。
「1 パフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)を、場合によつては他の適当なコモノマーと共に、重合させることを特徴とするパフルオロ-(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)のホモポリマーまたはコポリマーの製造法。」(特許請求の範囲)
「 この発明の新規な化合物はパフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)であり、構造式
[図:0001418233000007.jpg]
を有する。」(第1頁左欄第28行~32行)
「 普通の重合によつて得られるパフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソランのホモポリマーは繰返し単位
[図:0001418233000008.jpg]
によつて特徴付けられ通常は固体であり高い固有粘度から測られるように高分子量でありフイルム形成能を有し可塑化するとかなりの強じん性を示す。このホモポリマーは繊維にも形成できる。」(第2頁右欄第35行~最終行)
「 この発明の新規な化合物は、エチレン的不飽和性、好ましくは末端不飽和性を含みフリーラジカル開始剤で重合されうる1個以上の多くのモノマーと共重合もできる。単独重合して結晶性ホモポリマーとなるエチレンおよびテトラフルオロエチレンのようなモノマーとこの新規の化合物の共重合によつてこのような重合体の結晶性を減少できる。この新規の化合物は結晶性ホモポリマーの熱可塑性と硬さを向上させる。」(第3頁左欄第15行~第23行)
「 共重合しうるモノマーの例はクロロトリフルオロエチレンを含む2-10個の炭素原子を有する過ハロゲン化a-オレフインおよびテトラフルオロエチレンおよびヘキサフロオロ プロピレンのような過フツ素化オレフインである。さらにパフルオロ(メチル ビニル エーテル)およびパフルオロ(プロピル ビニル エーテル)のようなパフルオロ(ビニル エーテル)、オメガ ヒドロ パフルオロ(ビニル エーテル)、およびパフルオロエチレン ビス(パフルオロビニル エーテル)およびパフルオロテトラメチレン ビス(パフルオロビニル エーテル)のようなパフルオロジビニル エーテルが用いられる。」(第3頁左欄第36行~同右欄第1行)
「 本発明の新規の化合物パフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)はテトラフルオロエチレンと共重合しうるモノマーとして特に有用である。」(第4頁左欄第1行~第4行)
「実施例 3
A 脱気され-80℃に冷却されたカリウム管に-80℃で測られたテトラフルオロエチレン3ml、26℃で測られたパフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)7mlおよび窒素中シス-、トランス-2フツ化窒素混合物2.9%のガス20mlを充填した。管を封じ切った後室温に戻し24時間静置した。コポリマー12gが得られ、これは275℃および42kg/cm2で加圧し無色澄明の堅いフイルムとすることができた。元素分析の結果このコポリマーは89.6モル%(95.5重量%)のパフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)モノマー単位と10.4モル%(4.5重量%)のテトラフルオロエチレンモノマー単位を含んでいた。
・・・
実施例 5
カリウス管に10mlのトリクロロ-トリフルオロエタン、CCl2FCClF2(“フレオン(Freon)113”)、-80℃で得られた6mlのヘキサフルオロプロピレン、2mlのパフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)および20mlの2.9%シス-、トランス-N2F2、窒素混合物を充填した。この管を封じ切り室温に16時間静置し続いて75℃で3時間加熱した。2.3gのポリマーが得られた。これを250℃、42kg/cm2で圧縮し硬い、透明な無色のフイルムに成型した。元素分析によりこのコポリマーは94.5モル%(96.5重量%)のパフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)と5.5モル%(3.5重量%)のヘキサフルオロプロピレンを含んでいた。
・・・
実施例 7
脱気した30mlカリウス管に10mlのトリクロロ-トリフルオロエタン、CCl2FCF2Cl 2mlのパフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)、5mlのパフルオロ-プロピルパフルオロビニルエーテルと0.02gの(C2F5COO)2を充填した。封じ切った管を26℃に静置し100℃で1時間加熱した。3.5gのコポリマーが得られた。これは200℃、600psiで無色透明な硬いフイルムに圧縮成型された。元素分析によつてこのコポリマーが93.5重量%のパフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)および6.5重量%のパフルオロプロピル パフルオロビニルエーテルを含んでいた。」(第5頁左欄第4行~第7頁右欄最終行)
イ 甲1に記載された発明
(ア)甲1の実施例5に着目すると、甲1には次の発明が記載されていると認める。
「カリウス管に10mlのトリクロロ-トリフルオロエタン、CCl2FCClF2(“フレオン(Freon)113”)、-80℃で得られた6mlのヘキサフルオロプロピレン、2mlのパフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)および20mlの2.9%シス-、トランス-N2F2、窒素混合物を充填したのち、この管を封じ切り室温に16時間静置し続いて75℃で3時間加熱して得られた、2.3gの、94.5モル%(96.5重量%)のパフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)と5.5モル%(3.5重量%)のヘキサフルオロプロピレンからなるコポリマー。」(以下、「甲1発明1」という。)
(イ)甲1の実施例7に着目すると、甲1には次の発明が記載されていると認める。
「脱気した30mlカリウス管に10mlのトリクロロ-トリフルオロエタン、CCl2FCF2Cl 2mlのパフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)、5mlのパフルオロ-プロピルパフルオロビニルエーテルと0.02gの(C2F5COO)2を充填したのち、封じ切った管を26℃に静置し100℃で1時間加熱して得られた、3.5gの、93.5重量%のパフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)および6.5重量%のパフルオロプロピル パフルオロビニルエーテルからなるコポリマー。」(以下、「甲1発明2」という。)
(2)対比・判断
ア 甲1発明1を引用発明とする場合
(ア)本件発明1について
本件発明1の式(1)、式(4)~式(8)の構造式は、以下省略する。
a 対比
甲1発明1である「コポリマー」は、「ヘキサフルオロプロピレン」、「パフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)」を原料モノマーとするものであって、「ヘキサフルオロプロピレン」、「パフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)」は、重合により「パーフルオロコポリマー」の繰り返し単位となるものだから、構成単位としてみた場合、「パフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)」に由来する構成単位は、本件発明1の「式(1)で表される構成単位(A)」に相当する。
そして、甲1発明1の「コポリマー」は、「パーフルオロコポリマー」であるから、本件発明1の「含フッ素共重合体」に相当する。
以上から、本件発明1と甲1発明1とは、
「式(1)で表される構成単位(A)を含有する、含フッ素共重合体。」
で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
含フッ素共重合体の構成単位に関し、本件発明1では、「式(4)で表される構成単位(D)」を含有し、該「構成単位(D)の含有量が、前記含フッ素共重合体における全構成単位の合計に対し、30~67モル%であ」るのに対し、甲1発明1では、ヘキサフルオロプロピレンに由来する構成単位を含有し、該ヘキサフルオロプロピレンの含有量が、前記含フッ素共重合体における全構成単位の合計に対し、5.5モル%である点
<相違点2>
含フッ素共重合体において、本件発明1では、「1cm×6cmおよび厚み100μmのサイズに成形して得られた成形体について、つかみ間隔5cmかつ引張速度10cm/分で引張伸度を測定した場合の引張伸度が、118%以上かつ145%以下である」こと(以下、「本件物性」という。)を満足するのに対し、甲1発明1では、「本件物性」を満足するのか否か不明である点
b 判断
上記相違点1について検討する。
甲1発明1のコポリマーは、本件発明1の「式(4)で表される構成単位(D)」を含有しないから、相違点1は、実質的な相違点である。
よって、本件発明1は、甲1発明1でない。
ついで、進歩性について検討する。
甲1発明1のヘキサフルオロプロピレンに由来する構成単位を、本件発明1の「式(4)で表される構成単位(D)」に代えることが、当業者にとって容易であるか否かについて検討する。
甲1には、コモノマーとして、テトラフルオロエチレン及びヘキサフロオロプロピレンのような過フッ素化オレフィン、パフルオロ(メチルビニルエーテル)及びパフルオロ(プロピルビニルエーテル)のようなパフルオロ(ビニルエーテル)、オメガヒドロパフルオロ(ビニルエーテル)、及びパフルオロエチレンビス(パフルオロビニルエーテル)及びパフルオロテトラメチレンビス(パフルオロビニルエーテル)のようなパフルオロジビニルエーテルが挙げられている(第3頁左欄第36行~同右欄第1行)が、これらのコモノマーが共重合後に、本件発明1の「式(4)で表される構成単位(D)」となるコモノマーには該当しない。
また、申立書に記載された甲2~4には、本件発明1の「式(4)で表される構成単位(D)」となるコモノマーが記載されていないし、「含フッ素共重合体」の構成単位として、「式(1)で表される構成単位(A)」とともに「式(4)で表される構成単位(D)」を含むことが、本件出願時の技術常識であるともいえない。
そうすると、甲1発明のヘキサフルオロプロピレンに由来する構成単位に代えて、「式(4)で表される構成単位(D)」を採用する動機付けがないものである。
してみると、相違点1に係る発明特定事項は、甲1発明1及び甲1の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。
c 小括
したがって、本件発明1は、相違点2を検討するまでもなく、甲1発明1でないし、甲1発明1並びに甲1及び甲2~4の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(イ)本件発明2、6~8について
本件発明2、6~8は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、上記(ア)で述べたのと同じ理由により、本件発明2、6~8は、甲1発明1でないし、甲1発明1並びに甲1及び甲2~4の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(ウ)小括
以上から、本件特許の請求項1、2、6~8に係る発明は、甲1に記載された発明でないし、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
イ 甲1発明2を引用発明とする場合
(ア)本件発明1について
a 対比
甲1発明2である「コポリマー」は、「パフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)」、「パフルオロ-プロピルパフルオロビニルエーテル」を原料モノマーとするものであって、「パフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)」、「パフルオロ-プロピルパフルオロビニルエーテル」は、重合により「パーフルオロコポリマー」の繰り返し単位となるものだから、構成単位としてみた場合、「パフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)」に由来する構成単位は、本件発明1の「式(1)で表される構成単位(A)」に相当する。
そして、甲1発明2の「コポリマー」は、「パーフルオロコポリマー」であるから、本件発明1の「含フッ素共重合体」に相当する。
なお、甲1発明2の「コポリマー」は、「パフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)」、「パフルオロ-プロピルパフルオロビニルエーテル」を順に「93.5重量%」、「6.5重量%」含むものであるところ、「パフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)」、「パフルオロ-プロピルパフルオロビニルエーテル」の分子量が順に244、266であるから、モルに換算すると、順に0.383mol、2.44×10-1molとなり、モル比で見ると、順に94.0モル%(≒0.383×100/(0.383+2.44×10-1))、6モル%(≒2.44×10-1×100/(0.383+2.44×10-1))となり、「パフルオロ-プロピルパフルオロビニルエーテル」を6.0モル%含むものである。
以上から、本件発明1と甲1発明2とは、
「式(1)で表される構成単位(A)を含有する、含フッ素共重合体。」
で一致し、以下の点で相違する。
<相違点3>
含フッ素共重合体の構成単位に関し、本件発明1では、「式(4)で表される構成単位(D)」を含有し、該「構成単位(D)の含有量が、前記含フッ素共重合体における全構成単位の合計に対し、30~67モル%であ」るのに対し、甲1発明2では、パフルオロ-プロピルパフルオロビニルエーテルを含有し、該、パフルオロ-プロピルパフルオロビニルエーテルの含有量が、前記含フッ素共重合体における全構成単位の合計に対し、6.0モル%である点
<相違点4>
含フッ素共重合体において、本件発明1では、「本件物性」を満足するのに対し、甲1発明2では、「本件物性」を満足するのか否か不明である点
b 判断
上記相違点3について検討する。
甲1発明2のコポリマーは、本件発明1の「式(4)で表される構成単位(D)」を含有しないから、相違点3は、実質的な相違点である。
よって、本件発明1は、甲1発明2でない。
ついで、進歩性について検討する。
甲1発明2のパフルオロ-プロピルパフルオロビニルエーテルに由来する構成単位を、上記「式(4)で表される構成単位(D)」に代えることが、当業者にとって容易であるか否かについて検討するも、上記ア(ア)bと同様の理由により、相違点3に係る発明特定事項は、甲1発明2及び甲1の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。
c 小括
したがって、本件発明1は、相違点4を検討するまでもなく、甲1発明2でないし、甲1発明2並びに甲1及び甲2~4の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(イ)本件発明2、6~8について
本件発明2、6~8は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、上記(ア)で述べたのと同じ理由により、本件発明2、6~8は、甲1発明2でないし、甲1発明2並びに甲1及び甲2~4の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(ウ)小括
以上から、本件特許の請求項1、2、6~8に係る発明は、甲1に記載された発明でないし、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(3)まとめ
取消理由1及び取消理由2並びに申立理由1及び申立理由2によっては、本件特許の請求項1、2、6~8に係る特許を取り消すことができない。
2 取消理由3(明確性要件違反)
本件発明1で、「本件物性」について、段落【0082】に、「<含フッ素共重合体の引張伸度>」と題して、上記「本件物性」と同様のことが記載され、実施例の表1において、実施例1~3及び比較例1の引張伸度が開示されている。
これらの記載や開示によると、成形体の引張伸度の測定方法は理解できるものの、成形された測定サンプルをどのように作成したのか詳細には記載されていない。
しかしながら、一般的な成形条件や成形方法については、段落【0075]に、「例えば、実施形態2の光学用樹脂組成物を、当該光学用樹脂組成物のガラス転移温度から50℃以上の温度で加熱溶融して所定の形状に成形する工程を含む製造方法によって製造することができる。」ことが記載されており、一般的な熱プレスの温度の目安として、ガラス転移温度から50℃以上の温度と理解することができる。
そして、測定サンプルの成形条件や成形方法によって、その測定値が影響を受けやすい結晶性樹脂とは異なり、本件発明1の「含フッ素共重合体」のような非晶性ポリマーであれば、成形条件や成形方法によって測定サンプルが影響を受けることは小さいといえ、測定値は一義的に定まると解される。 したがって、本件発明1において、上記「本件物性」は実際に測定して確認できるものといえる。
よって、本件発明1は、明確である。
また、本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2、6~8についても同様である。
以上から、取消理由3によっては、本件特許の請求項1、2、6~8に係る特許を取り消すことができない。
3 取消理由4(サポート要件違反)及び申立理由4(サポート要件違反)
取消理由4と申立理由4とは、同旨であるので、併せて検討する。
本件発明の課題は、段落【0008】によると、パーフルオロ(1,3-ジオキソラン)構造を有する単量体を重合することによって得られる含フッ素重合体について、耐熱性を大きく低下させることなく熱分解しやすい点が改善された、熱分解しにくく、かつ高い耐熱性を有する含フッ素重合体を提供すること、そのような含フッ素重合体が用いられた、熱分解しにくく、かつ高い耐熱性を有する光学用樹脂組成物及び光学用樹脂成形体を提供することである。
本件訂正により、本件発明1では、「構成単位(A)」と、「構成単位(D)」とを含有する、「含フッ素共重合体」となり、「構成単位(A)」と、「構成単位(B)」又は「構成単位(C)」を特定の含有割合で含む、「含フッ素共重合体」が、含有されないものとなったため、異議の申立をする対象が削除された。
そして、本件明細書では、「構成単位(A)」のみからなる含フッ素重合体と比較して、「構成単位(D)」等の構造を含むことにより、熱分解しにくくなること(【0015】)、耐熱性の観点から、含フッ素共重合体が「構成単位(D)」を含むことが好ましいこと(【0044】)、「構成単位(D)」を含む場合、その含有量が30モル%以上であることで、「含フッ素共重合体」がより熱分解しにくくなり、その含有量が67モル%以下であることで、より高い耐熱性を維持できること(【0058】)、実施例1~3において、「構成単位(A)」と、「構成単位(D)」とを含有する、「含フッ素共重合体」が、熱分解しにくく、かつ高い耐熱性を有し、「本件物性」を満足することを示している。
してみると、本件発明1は、本件発明の解決しようとする課題を解決し得るものであるから、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものといえる。
また、本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2、6~8についても同様である。
以上から、取消理由4によっては、本件特許の請求項1、2、6~8に係る特許を取り消すことができない。
4 取消理由5(実施可能要件違反)及び申立理由3(実施可能要件違反)
取消理由5と申立理由3とは、同旨であるので、併せて検討する。
上記3と同様に、本件訂正により、本件発明1では、「構成単位(A)」と、「構成単位(D)」とを含有する、「含フッ素共重合体」となり、「構成単位(A)」と、「構成単位(B)」又は「構成単位(C)」を特定の含有割合で含む、「含フッ素共重合体」が、含有されないものとなったため、異議の申立をする対象が削除された。
そして、本件明細書では、「構成単位(A)」のみからなる含フッ素重合体と比較して、「構成単位(D)」等の構造を含むことにより、熱分解しにくくなること(【0015】)、耐熱性の観点から、含フッ素共重合体が「構成単位(D)」を含むことが好ましいこと(【0044】)、「構成単位(A)」を重合により形成する含フッ素単量体と、「構成単位(D)」等を重合により形成する含フッ素単量体を重合開始剤を用いて重合させることで製造できること(【0062】)、実施例1~3において、「構成単位(A)」と、「構成単位(D)」とを含有する、「含フッ素共重合体」の製造方法により、「本件物性」を満足するものが製造できることが示されている。
してみると、本件発明1は、本件明細書の発明の詳細な説明に、当業者が本件特許の発明の詳細な説明及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用をすることができる程度に記載されているといえる。
また、本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2、6~8についても同様である。
以上から、取消理由5及び申立理由3によっては、本件特許の請求項1、2、6~8に係る特許を取り消すことができない。
第6 むすび
以上のとおり、本件特許に対する訂正は適法であるから、これを認める。
そして、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては、本件特許の請求項1、2、6~8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1、2、6~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-701385