特許異議申立
2025-700471
防眩性ハードコートフィルム、防眩性ハードコートフィルムの製造方法、光学部材および画像表示装置
- 審判番号
- 2025-700471
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-018382
- 登録番号
- 7573969
- 請求日
- 2025年04月25日
- 審決日
- 2026年03月24日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日東電工株式会社
- 【権利者代理人】辻丸 光一郎
- 【権利者代理人】松縄 正登
- 【権利者代理人】伊佐治 創
- 【権利者代理人】安 修央
- 【異議申立人】藤江 桂子
- 審判長/審判官
- 審判長 古屋野 浩志
- 審判官 河原 正
- 審判官 関根 洋之
- 分類
- P1651.121-YAA(G02B) / P1651.536-YAA(G02B) / P1651.537-YAA(G02B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条、特許法第113条、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7573969号発明「防眩性ハードコートフィルム、防眩性ハードコートフィルムの製造方法、光学部材および画像表示装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7573969号の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~11について訂正することを認める。
特許第7573969号の請求項1ないし11に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続等の経緯
特許第7573969号の請求項1~11に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願(特願2020-18382号)は、令和2年2月5日の出願であって、令和6年10月18日にその特許権の設定登録がされ、同月28日に特許掲載公報が発行された。
本件特許について、特許掲載公報の発行の日から6月以内である令和7年4月25日に特許異議申立人 藤江 桂子(以下「特許異議申立人」という。)から全請求項(請求項1~11)に対して特許異議の申立てがされた。その後の手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和7年 6月30日付け:取消理由通知書
同年 8月29日 :意見書(特許権者)の提出
同日 :訂正請求書の提出
同年10月14日 :手続補正書(方式:特許権者)の提出
同年11月17日 :意見書(特許異議申立人)の提出
同年12月23日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和8年 3月 6日 :意見書(特許権者)の提出
同日 :訂正請求書の提出(この訂正請求書に
よる訂正の請求を、以下「本件訂正請求」
という。)
なお、令和7年8月29日付け訂正請求書による訂正の請求は、特許法120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
また、既に特許異議申立人に意見書の提出の機会が与えられており、さらに、下記第2のとおり、本件訂正請求によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、下記第5及び第6のとおり、提出された全ての証拠や意見等を踏まえて更に審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となると合議体は判断し、特許法120条の5第5項ただし書に規定された特別の事情があるときといえるから、特許異議申立人に再度の意見書の提出の機会を与えないこととした。
第2 本件訂正請求について
1 訂正請求の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、許第7573969号の明細書、特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~11について訂正することを求める、というものである。
2 訂正の内容
本件訂正請求において特許権者が求める訂正の内容は、以下のとおりである。なお、下線は当合議体が付したものであり、訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を、
「光透過性基材(A)上に防眩性ハードコート層(B)が積層された防眩性ハードコートフィルムであって、
前記光透過性基材(A)と前記防眩性ハードコート層(B)との間に、前記光透過性基材(A)由来の樹脂と、前記防眩性ハードコート層(B)由来の樹脂とを含む中間層を有し、
前記防眩性ハードコート層(B)は、樹脂層により形成され、前記樹脂層内部に、第1粒子および第2粒子を含み、
前記第1粒子および前記第2粒子の質量の合計が、前記樹脂層を形成する樹脂の全質量に対し2~25質量%であり、
前記第1粒子および前記第2粒子の材質が、それぞれ有機粒子であり、
前記防眩性ハードコートフィルムにおける前記防眩性ハードコート層(B)側の最表面に凹凸が形成され、
前記第1粒子の重量平均粒子径が下記数式(1-1)を満たし、かつ、前記第2粒子の重量平均粒子径が下記数式(2-1)を満たしているか、
または、
前記第1粒子の重量平均粒子径が下記数式(1-2)を満たし、かつ、前記第2粒子の重量平均粒子径が下記数式(2-2)を満たしており、
前記最表面の凹凸形状が下記数式(3)および(4)を満たすことを特徴とする防眩性ハードコートフィルム。
3.5≦d1≦8.5[μm] (1-1)
1.0≦d2≦1.5[μm] (2-1)
5.0≦d1≦8.5[μm] (1-2)
1.0≦d2≦3.0[μm] (2-2)
Ry:1.0≦Ry≦7.0[μm] (3)
θa:1.0≦θa≦7.5[°] (4)
前記数式(1-1)及び前記数式(1-2)において、d1は、前記第1粒子の重量平均粒子径[μm]であり、
前記数式(2-1)及び前記数式(2-2)において、d2は、前記第2粒子の重量平均粒子径[μm]であり、
前記数式(3)において、Ryは、前記凹凸の凸部の最大高さ[μm]であり、
前記数式(4)において、θaは、前記凹凸の平均傾斜角[°]である。」
に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項5を、
「前記光透過性基材(A)上に、前記防眩性ハードコート層(B)を形成する防眩性ハードコート層(B)形成工程を含み、
前記防眩性ハードコート層(B)形成工程において、前記防眩性ハードコート層(B)が、
前記数式(1-1)、前記数式(2-1)、前記数式(3)および前記数式(4)を満たすか、
または、
前記数式(1-2)、前記数式(2-2)、前記数式(3)および前記数式(4)を満たすように、
前記防眩性ハードコート層(B)を形成し、
前記防眩性ハードコート層(B)形成工程が、前記光透過性基材(A)上に塗工液を塗工する塗工工程と、塗工した前記塗工液を乾燥させて塗膜を形成する塗膜形成工程とを含み、
前記塗工液が、前記樹脂と、前記第1粒子と、前記第2粒子と、溶媒とを含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の防眩性ハードコートフィルムの製造方法。」
に訂正する。
(3)訂正事項3
明細書の【0009】を、
「前記目的を達成するために、本発明の防眩性ハードコートフィルムは、
光透過性基材(A)上に防眩性ハードコート層(B)が積層された防眩性ハードコートフィルムであって、
前記光透過性基材(A)と前記防眩性ハードコート層(B)との間に、前記光透過性基材(A)由来の樹脂と、前記防眩性ハードコート層(B)由来の樹脂とを含む中間層を有し、
前記防眩性ハードコート層(B)は、樹脂層により形成され、前記樹脂層内部に、第1粒子および第2粒子を含み、
前記第1粒子および前記第2粒子の質量の合計が、前記樹脂層を形成する樹脂の全質量に対し2~25質量%であり、
前記第1粒子および前記第2粒子の材質が、それぞれ有機粒子であり、
前記防眩性ハードコートフィルムにおける前記防眩性ハードコート層(B)側の最表面に凹凸が形成され、
前記第1粒子の重量平均粒子径が下記数式(1-1)を満たし、かつ、前記第2粒子の重量平均粒子径が下記数式(2-1)を満たしているか、
または、
前記第1粒子の重量平均粒子径が下記数式(1-2)を満たし、かつ、前記第2粒子の重量平均粒子径が下記数式(2-2)を満たしており、
前記最表面の凹凸形状が下記数式(3)および(4)を満たすことを特徴とする。
3.5≦d1≦8.5[μm] (1-1)
1.0≦d2≦1.5[μm] (2-1)
5.0≦d1≦8.5[μm] (1-2)
1.0≦d2≦3.0[μm] (2-2)
Ry:1.0≦Ry≦7.0[μm] (3)
θa:1.0≦θa≦7.5[°] (4)
前記数式(1-1)及び前記数式(1-2)において、d1は、前記第1粒子の重量平均粒子径[μm]であり、
前記数式(2-1)及び前記数式(2-2)において、d2は、前記第2粒子の重量平均粒子径[μm]であり、
前記数式(3)において、Ryは、前記凹凸の凸部の最大高さ[μm]であり、
前記数式(4)において、θaは、前記凹凸の平均傾斜角[°]である。」
に訂正する。
(4)訂正事項4
明細書の【0010】を、
「本発明の防眩性ハードコートフィルムの製造方法は、
前記光透過性基材(A)上に、前記防眩性ハードコート層(B)を形成する防眩性ハードコート層(B)形成工程を含み、
前記防眩性ハードコート層(B)形成工程において、前記防眩性ハードコート層(B)が、
前記数式(1-1)、前記数式(2-1)、前記数式(3)および前記数式(4)を満たすか、
または、
前記数式(1-2)、前記数式(2-2)、前記数式(3)および前記数式(4)を満たすように、
前記防眩性ハードコート層(B)を形成し、
前記防眩性ハードコート層(B)形成工程が、前記光透過性基材(A)上に塗工液を塗工する塗工工程と、塗工した前記塗工液を乾燥させて塗膜を形成する塗膜形成工程とを含み、
前記塗工液が、前記樹脂と、前記第1粒子と、前記第2粒子と、溶媒とを含むことを特徴とする本発明の防眩性ハードコートフィルムの製造方法である。」
に訂正する。
(5)訂正事項5
明細書の【0020】を、
「本発明の防眩性ハードコートフィルムは、例えば、前記光透過性基材(A)上に前記防眩性ハードコート層(B)および前記他の層が前記順序で積層され、前記他の層の最表面に凹凸が形成され、前記凹凸が、前記数式(1-1)、前記数式(2-1)、前記数式(3)および前記数式(4)を満たすか、または、前記数式(1-2)、前記数式(2-2)、前記数式(3)および前記数式(4)を満たしてもよい。」
に訂正する。
(6)訂正事項6
明細書の【0025】を、
「[1.防眩性ハードコートフィルム]
本発明の防眩性ハードコートフィルムは、前述のとおり、
光透過性基材(A)上に防眩性ハードコート層(B)が積層された防眩性ハードコートフィルムであって、
前記光透過性基材(A)と前記防眩性ハードコート層(B)との間に、前記光透過性基材(A)由来の樹脂と、前記防眩性ハードコート層(B)由来の樹脂とを含む中間層を有し、
前記防眩性ハードコート層(B)は、樹脂層により形成され、前記樹脂層内部に、第1粒子および第2粒子を含み、
前記第1粒子および前記第2粒子の質量の合計が、前記樹脂層を形成する樹脂の全質量に対し2~25質量%であり、
前記第1粒子および前記第2粒子の材質が、それぞれ有機粒子であり、
前記防眩性ハードコートフィルムにおける前記防眩性ハードコート層(B)側の最表面に凹凸が形成され、
前記第1粒子の重量平均粒子径が下記数式(1-1)を満たし、かつ、前記第2粒子の重量平均粒子径が下記数式(2-1)を満たしているか、
または、
前記第1粒子の重量平均粒子径が下記数式(1-2)を満たし、かつ、前記第2粒子の重量平均粒子径が下記数式(2-2)を満たしており、
前記最表面の凹凸形状が下記数式(3)および(4)を満たすことを特徴とする。
3.5≦d1≦8.5[μm] (1-1)
1.0≦d2≦1.5[μm] (2-1)
5.0≦d1≦8.5[μm] (1-2)
1.0≦d2≦3.0[μm] (2-2)
Ry:1.0≦Ry≦7.0[μm] (3)
θa:1.0≦θa≦7.5[°] (4)
前記数式(1-1)及び前記数式(1-2)において、d1は、前記第1粒子の重量平均粒子径[μm]であり、
前記数式(2-1)及び前記数式(2-2)において、d2は、前記第2粒子の重量平均粒子径[μm]であり、
前記数式(3)において、Ryは、前記凹凸の凸部の最大高さ[μm]であり、
前記数式(4)において、θaは、前記凹凸の平均傾斜角[°]である。」
に訂正する。
(7)訂正事項7
明細書の【0026】を、
「図1の断面図に、本発明の防眩性ハードコートフィルムの構成の一例を示す。図示のとおり、この防眩性ハードコートフィルム10は、光透過性基材(A)11の一方の面上に、防眩性ハードコート層(B)12が積層されている。防眩性ハードコート層(B)12は、樹脂層12a中に第1粒子12b1および第2粒子12b2が含まれている。防眩性ハードコートフィルム10における防眩性ハードコート層(B)12側の最表面(防眩性ハードコート層(B)12の、光透過性基材(A)11と反対側の表面)には、凹凸が形成されている。前記凹凸の凸部の最大高さRyは、1.0μm以上7.0μm以下である。前記凹凸の平均傾斜角θaは、1.0°以上7.5°以下である。第1粒子12b1の重量平均粒子径d1は、3.5μm以上8.5μm以下であり、かつ、第2粒子12b2の重量平均粒子径d2は、1.0μm以上1.5μm以下である。または、第1粒子12b1の重量平均粒子径d1は、5.0μm以上8.5μm以下であり、かつ、第2粒子12b2の重量平均粒子径d2は、1.0μm以上3.0μm以下である。」
に訂正する。
(8)訂正事項8
明細書の【0045】を、
「本発明において、前記第1粒子の重量平均粒子径d1は、前述のとおり、3.5μm以上8.5μm以下、または、5.0μm以上8.5μm以下である。前記第1粒子の重量平均粒子径d1は、例えば、3.5μm以上、4.0μm以上、4.5μm以上、または5.0μm以上であってもよく、例えば、8.0μm以下、7.5μm以下、7.0μm以下、または6.5μm以下であってもよい。」
に訂正する。
(9)訂正事項9
明細書の【0046】を、
「本発明において、前記第2粒子の重量平均粒子径d2は、前述のとおり、1.0μm以上3.0μm以下、または、1.0μm以上1.5μm以下である。前記第2粒子の重量平均粒子径d2は、例えば、1.2μm以上、1.4μm以上、1.6μm以上、または1.8μm以上であってもよく、例えば、2.8μm以下、2.5μm以下、2.2μm以下、または2.0μm以下であってもよい。」
に訂正する。
(10)訂正事項10
明細書の【0053】を、
「前記第1粒子および前記第2粒子の材質は、それぞれ有機粒子である。前記第1粒子および前記第2粒子の材質は、それぞれ、例えば、無機粒子および有機粒子を併用してもよい。前記無機粒子は、特に制限されず、例えば、酸化ケイ素粒子、酸化チタン粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化亜鉛粒子、酸化錫粒子、炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム粒子、タルク粒子、カオリン粒子、硫酸カルシウム粒子等があげられる。また、前記有機粒子は、特に制限されず、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末(PMMA粒子)、シリコーン樹脂粉末、ポリスチレン樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、アクリルスチレン樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン樹脂粉末、ポリオレフィン樹脂粉末、ポリエステル樹脂粉末、ポリアミド樹脂粉末、ポリイミド樹脂粉末、ポリフッ化エチレン樹脂粉末等があげられる。これらの無機粒子および有機粒子は、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。前記第1粒子は、一種類の粒子を単独で使用してもよいし、二種類以上の粒子を併用してもよい。前記第2粒子は、一種類の粒子を単独で使用してもよいし、二種類以上の粒子を併用してもよい。」
に訂正する。
(11)訂正事項11
明細書の【0067】を、
「また、本発明の防眩性ハードコートフィルムは、例えば、前記光透過性基材(A)と前記防眩性ハードコート層(B)との間に、前記光透過性基材(A)由来の樹脂と、前記防眩性ハードコート層(B)由来の樹脂とを含む中間層を有する。この中間層の厚みの制御により、前記防眩性ハードコート層(B)の表面形状を制御することができる。例えば、前記中間層の厚みを大きくすると、前記Ryおよびθaが大きくなりやすく、前記中間層の厚みを小さくすると、前記Ryおよびθaが小さくなりやすい。」
に訂正する。
(12)訂正事項12
明細書の【0075】を、
「まず、前記光透過性基材(A)上に、前記防眩性ハードコート層(B)を、前記数式(1-1)、前記数式(2-1)、前記数式(3)および前記数式(4)を満たすか、または、前記数式(1-2)、前記数式(2-2)、前記数式(3)および前記数式(4)を満たすように形成する(防眩性ハードコート層(B)形成工程)。これにより、前記光透過性基材(A)と前記防眩性ハードコート層(B)との積層体を製造する。前記防眩性ハードコート層(B)形成工程は、前述のとおり、前記光透過性基材(A)上に塗工液(防眩性ハードコート層(B)形成材料)を塗工する塗工工程と、塗工した前記塗工液を乾燥させて塗膜を形成する塗膜形成工程とを含む。また、例えば、前述のとおり、前記防眩性ハードコート層(B)形成工程が、さらに、前記塗膜を硬化させる硬化工程を含んでいてもよい。前記硬化は、例えば、前記乾燥の後に行なうことができるが、これに限定されない。前記硬化は、例えば、加熱、光照射等により行うことができる。前記光は、特に限定されないが、例えば、紫外線等であってもよい。前記光照射の光源も特に限定されないが、例えば、高圧水銀ランプ等であってもよい。」
に訂正する。
(13)訂正事項13
明細書の【0133】を、
「【表1】
[図:0001437373000001.jpg]
」
に訂正する。
(14)訂正事項14
明細書の【0134】を、
「【表2】
[図:0001437373000002.jpg]
」
に訂正する。
3 訂正の適否
(1)訂正事項1について
訂正事項1に係る訂正は、請求項1において、第1粒子の重量平均粒子径及び第2粒子の重量平均粒子径の範囲を限定する訂正である。そして、この点は、請求項1の記載を引用して記載された請求項2~11についてみても、同じである。
そうすると、訂正事項1に係る訂正は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項1に係る訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかである。
そうすると、訂正事項1に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。
さらに、訂正事項1に係る訂正は、本件特許の明細書の【0045】、【0046】及び【0133】の記載から導き出すことができる事項であり、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
そうすると、訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。
(2)訂正事項2について
訂正事項2に係る訂正は、訂正事項1に係る訂正により「第1粒子の重量平均粒子径及び第2粒子の重量平均粒子径の範囲」が限定された請求項1に整合させるために、請求項5においても、第1粒子の重量平均粒子径及び第2粒子の重量平均粒子径の範囲を限定する訂正である。そして、この点は、請求項5の記載を引用して記載された請求項6~7についてみても、同じである。
そうすると、訂正事項2に係る訂正は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項2に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当せず、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。
(3)訂正事項3について
訂正事項3に係る訂正は、明細書の【0009】の記載を請求項1の記載と整合させる訂正である。
そうすると、訂正事項3に係る訂正は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項3に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当せず、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。
(4)訂正事項4について
訂正事項4に係る訂正は、明細書の【0010】の記載を請求項5の記載と整合させる訂正である。
そうすると、訂正事項4に係る訂正は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項4に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当せず、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。
(5)訂正事項5について
訂正事項5に係る訂正は、明細書の【0020】の記載を請求項1の記載と整合させる訂正である。
そうすると、訂正事項5に係る訂正は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項5に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当せず、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。
(6)訂正事項6について
訂正事項6に係る訂正は、明細書の【0025】の記載を請求項1の記載と整合させる訂正である。
そうすると、訂正事項6に係る訂正は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項6に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当せず、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。
(7)訂正事項7について
訂正事項7に係る訂正は、明細書の【0026】の記載を請求項1の記載と整合させる訂正である。
そうすると、訂正事項7に係る訂正は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項7に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当せず、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。
(8)訂正事項8について
訂正事項8に係る訂正は、明細書の【0045】の記載を請求項1の記載と整合させる訂正である。
そうすると、訂正事項8に係る訂正は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項8に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当せず、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。
(9)訂正事項9について
訂正事項9に係る訂正は、明細書の【0046】の記載を請求項1の記載と整合させる訂正である。
そうすると、訂正事項9に係る訂正は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項9に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当せず、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。
(10)訂正事項10について
訂正事項10に係る訂正は、明細書の【0053】の記載を請求項1の記載と整合させる訂正である。
そうすると、訂正事項10に係る訂正は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項10に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当せず、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。
(11)訂正事項11について
訂正事項11に係る訂正は、明細書の【0067】の記載を請求項1の記載と整合させる訂正である。
そうすると、訂正事項11に係る訂正は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項11に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当せず、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。
(12)訂正事項12について
訂正事項12に係る訂正は、明細書の【0075】の記載を請求項5の記載と整合させる訂正である。
そうすると、訂正事項12に係る訂正は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項12に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当せず、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。
(13)訂正事項13について
訂正事項13に係る訂正は、明細書の【0133】の記載を請求項1の記載と整合させる訂正である。
そうすると、訂正事項13に係る訂正は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項13に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当せず、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。
(14)訂正事項14について
訂正事項14に係る訂正は、明細書の【0134】の記載を請求項1の記載と整合させる訂正である。
そうすると、訂正事項14に係る訂正は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項14に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当せず、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。
(15)一群の請求項について
訂正前の請求項1~11について、請求項2~11は、直接又は間接的に請求項1を引用するものであり、上記の訂正事項1に係る訂正によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~11は、一群の請求項である。
また、上訂正事項3~14に係る訂正は、願書に添付した明細書の訂正であるところ、同訂正は一群の請求項1~11に関係する訂正である。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による請求項1~11についての訂正(訂正事項1~14に係る訂正)は、特許法120条の5第2項ただし書、同法同条9項において準用する同法126条4項、5項及び6項の規定に適合する。
よって、本件特許の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~11について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
前記「第2」のとおり、本件訂正請求による訂正は認められることとなったから、本件特許の請求項1~11に係る発明(以下、項番に従って「本件特許発明1」などということがある。また、これらを総称して「本件特許発明」ということがある。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。
「【請求項1】
光透過性基材(A)上に防眩性ハードコート層(B)が積層された防眩性ハードコートフィルムであって、
前記光透過性基材(A)と前記防眩性ハードコート層(B)との間に、前記光透過性基材(A)由来の樹脂と、前記防眩性ハードコート層(B)由来の樹脂とを含む中間層を有し、
前記防眩性ハードコート層(B)は、樹脂層により形成され、前記樹脂層内部に、第1粒子および第2粒子を含み、
前記第1粒子および前記第2粒子の質量の合計が、前記樹脂層を形成する樹脂の全質量に対し2~25質量%であり、
前記第1粒子および前記第2粒子の材質が、それぞれ有機粒子であり、
前記防眩性ハードコートフィルムにおける前記防眩性ハードコート層(B)側の最表面に凹凸が形成され、
前記第1粒子の重量平均粒子径が下記数式(1-1)を満たし、かつ、前記第2粒子の重量平均粒子径が下記数式(2-1)を満たしているか、
または、
前記第1粒子の重量平均粒子径が下記数式(1-2)を満たし、かつ、前記第2粒子の重量平均粒子径が下記数式(2-2)を満たしており、
前記最表面の凹凸形状が下記数式(3)および(4)を満たすことを特徴とする防眩性ハードコートフィルム。
3.5≦d1≦8.5[μm] (1-1)
1.0≦d2≦1.5[μm] (2-1)
5.0≦d1≦8.5[μm] (1-2)
1.0≦d2≦3.0[μm] (2-2)
Ry:1.0≦Ry≦7.0[μm] (3)
θa:1.0≦θa≦7.5[°] (4)
前記数式(1-1)及び前記数式(1-2)において、d1は、前記第1粒子の重量平均粒子径[μm]であり、
前記数式(2-1)及び前記数式(2-2)において、d2は、前記第2粒子の重量平均粒子径[μm]であり、
前記数式(3)において、Ryは、前記凹凸の凸部の最大高さ[μm]であり、
前記数式(4)において、θaは、前記凹凸の平均傾斜角[°]である。
【請求項2】
前記第2粒子の質量の合計が、前記樹脂層を形成する樹脂の全質量に対し1質量%以上である請求項1記載の防眩性ハードコートフィルム。
【請求項3】
前記防眩性ハードコートフィルムにおいて、前記凹凸に起因する外部ヘイズ値が5%以上である請求項1または2記載の防眩性ハードコートフィルム。
【請求項4】
前記第1粒子の質量の合計が、前記第2粒子の質量の合計に対し2/3以上である請求項1から3のいずれか一項に記載の防眩性ハードコートフィルム。
【請求項5】
前記光透過性基材(A)上に、前記防眩性ハードコート層(B)を形成する防眩性ハードコート層(B)形成工程を含み、
前記防眩性ハードコート層(B)形成工程において、前記防眩性ハードコート層(B)が、
前記数式(1-1)、前記数式(2-1)、前記数式(3)および前記数式(4)を満たすか、
または、
前記数式(1-2)、前記数式(2-2)、前記数式(3)および前記数式(4)を満たすように、
前記防眩性ハードコート層(B)を形成し、
前記防眩性ハードコート層(B)形成工程が、前記光透過性基材(A)上に塗工液を塗工する塗工工程と、塗工した前記塗工液を乾燥させて塗膜を形成する塗膜形成工程とを含み、
前記塗工液が、前記樹脂と、前記第1粒子と、前記第2粒子と、溶媒とを含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の防眩性ハードコートフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記塗工工程において、前記塗工液を、1000mm以上の幅で500m以上連続塗工する請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
前記防眩性ハードコート層(B)形成工程が、さらに、前記塗膜を硬化させる硬化工程を含む請求項5または6記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1から4のいずれか一項に記載の防眩性ハードコートフィルムを含む光学部材。
【請求項9】
偏光板である請求項8記載の光学部材。
【請求項10】
請求項1から4のいずれか一項に記載の防眩性ハードコートフィルム、または請求項8もしくは9記載の光学部材を含む画像表示装置。
【請求項11】
パブリックインフォメーションディスプレイである請求項10記載の画像表示装置。」
第4 取消しの理由の概要
1 令和7年6月30日付け取消理由通知書により特許権者に通知した取消しの理由は、概略、次のとおりのものである。
理由1(サポート要件違反):本件特許の請求項1~11に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものでないから、請求項1~11に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
2 令和7年12月23日付け取消理由通知書(決定の予告)により特許権者に通知した取消しの理由は、概略、次のとおりのものである。
理由1(サポート要件違反):本件特許の請求項1~11に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものでないから、請求項1~11に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
第5 取消理由通知書で通知した取消しの理由についての合議体の判断
本件特許の特許請求の範囲の請求項1における、「第1粒子の重量平均粒子径」「d1」及び「第2粒子の重量平均粒子径」「d2」の値の範囲が、上記「第2」のように訂正され、「第1粒子の重量平均粒子径」「d1」と「第2粒子の重量平均粒子径」「d2」の差が「2.0μm」以上となったことにより、請求項1及び請求項1を引用する請求項2~11の記載はサポート要件を満たすことになった。
したがって、請求項1~11に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものではないから、特許法113条4号に該当せず、取り消すべきものでない。
第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 実施可能要件違反について
特許異議申立人は、特許異議申立書12~13頁において、「本件特許の実施例及び比較例(【0101】~【0135】)においては、実際に中間層が形成されたことが全く確認されておらず、その結果、実施例及び比較例におけるRy及びθaに対する中間層の寄与の有無や程度が不明である」と主張している。
しかしながら、本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0067】、【0068】、【0081】及び【0082】の、中間層の形成に関する記載事項並びに各実施例(防眩性ハードコートフィルム)で使われている「防眩性ハードコート層形成材料(塗工液)」及び「透光性基材(A)」の材料からみて、各実施例(防眩性ハードコートフィルム)においては、中間層が形成されていると認められる。また、中間層が形成されている認められる各実施例(防眩性ハードコートフィルム)は、「1.0≦Ry≦7.0[μm]」及び「1.0≦θa≦7.5[°]」を満たすものとなっている(同【0133】【表1】参照。)。
そうすると、上記主張は採用できず、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を満たしている。
したがって、請求項1~11に係る特許は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものではないから、特許法113条4号に該当せず、取り消すべきものでない。
2 明確性要件違反について
(1)d1とd2の関係
本件特許の特許請求の範囲の請求項1における、「第1粒子の重量平均粒子径」「d1」及び「第2粒子の重量平均粒子径」「d2」の値の範囲が、上記「第2」のように訂正され、「第1粒子の重量平均粒子径」「d1」と「第2粒子の重量平均粒子径」「d2」の差が「2.0μm」以上となったことにより、請求項1において、「第1粒子の重量平均粒子径」「d1」と「第2粒子の重量平均粒子径」「d2」の関係が明らかになり、「第1粒子」と「第2粒子」は区別できることになった。
請求項1を引用する請求項2~11においても同様である。
(2)最大高さ
本件特許明細書の【0035】の「本発明の防眩性ハードコートフィルムは、・・・略・・・前記凹凸の最大高さRyが、1.0μm以上7.0μm以下である」、「本発明において、前記最大高さRyは、JIS B 0601(1994年版)に基づく数値とする」という記載からみて、本件特許の特許請求の範囲の請求項1の「凹凸の凸部の最大高さ[μm]」は、上記JIS規格に定義されるとおりの、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけを抜き取り、この抜取り部分の山頂線(平均線からの最高の山頂の高さRy)と谷底線(平均線からの最深の谷底の深さRv(正))との間隔(Ry=Rp+Rv)(μm)であって、「凹凸の最大高さ[μm]」であることは明らかである。
請求項1を引用する請求項2~11においても同様である。
(3)小括
以上のとおり、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~11に係る発明は明確であるから、特許請求の範囲(請求項1~11)の記載は明確性要件を満たしている。
したがって、請求項1~11に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものではないから、特許法113条4号に該当せず、取り消すべきものでない。
3 サポート要件違反について
(1)中間層
特許異議申立人は、特許異議申立書16頁において、「本件発明の中間層については、実施可能要件違反として述べた事情があることから、本件発明の中間層との関係でいえば、本件発明の範囲には、発明の課題を解決できないものが含まれるというよりほかない。」と主張している。
しかしながら、上記1のとおり、本件特許発明の中間層に係る記載を含む、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を満たしているから、上記主張は採用できない。
(2)第1粒子の重量平均粒子径d1
特許異議申立人は、特許異議申立書16~17頁において、「本件発明の第1粒子の質量の合計は、樹脂層を形成する樹脂の全質量に対し最大で25質量%近くであって構わないものであり、上記下線を付した記載に照らしてみると、このような場合においてまで、防眩性を確保できる(発明の課題を解決できる)に足りる大きさのRyが得られるとは理解できない」と主張している。
しかしながら、本件特許の特許請求の範囲の請求項1に係る発明において、「第1粒子の質量の合計量」は、「Ry」が「1.0≦Ry≦7.0[μm]」を満たすように決められるところ、特許異議申立人が想定する、「第1粒子の質量の合計量」が多すぎて「Ry」が「1.0≦Ry≦7.0[μm]」を満たさなくなるような場合(態様)は、請求項1に係る発明に含まれないというべきである。
そうすると、特許異議申立人がいうような理解ができないからといって、請求項1に係る発明が発明の詳細な説明に記載したものでないとはいえない。
したがって、上記主張は採用できない。
(3)小括
以上のとおり、本件特許の特許請求の範囲の請求項1及び請求項1を引用する請求項2~11に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものであるから、特許請求の範囲(請求項1~11)の記載はサポート要件を満たしている。
したがって、請求項1~11に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものではないから、特許法113条4号に該当せず、取り消すべきものでない。
4 進歩性欠如について
(1)甲第1号証に記載された発明
甲第1号証(特開2009-175725号公報、以下「甲1」という。)には、実施例1の記載を引用して記載された実施例6に係る防眩フィルムの発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
ここで、甲1発明の「算術平均傾斜(Δa)」は「2.4」(【0247】【表3】)であるところ、甲1の【0174】の「<算術平均傾斜(△a)> JIS 0601に準拠して、レーザー顕微鏡(VK-9710、キーエンス社製)を用い測定した」という記載並びに本件特許明細書の【0037】の「前記平均傾斜角θaは、下記数式(5)で定義される値である。前記平均傾斜角θaは、例えば、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。 平均傾斜角θa=tan-1Δa (5)」という記載及び【0038】の「前記数式(5)において、Δaは、下記数式(6)に示すように、JIS B 0601(1994年度版)に規定される粗さ曲線の基準長さLにおいて、隣り合う山の頂点と谷の最下点との差(高さh)の合計(h1+h2+h3・・・+hn)を前記基準長さLで割った値である。前記粗さ曲線は、断面曲線から、所定の波長より長い表面うねり成分を位相差補償形高域フィルタで除去した曲線である。また、前記断面曲線とは、対象面に直角な平面で対象面を切断したときに、その切り口に現れる輪郭である。 Δa=(h1+h2+h3・・・+hn)/L (6)」という記載からみて、甲1発明の「算術平均傾斜(Δa)」は、「傾斜」であって、「角度」ではないから、その単位はない(無次元量である)。そして、甲1発明の平均傾斜角は、tan-1(2.4)=67.3°であると認められる。
(2)相違点
本件特許発明1と甲1発明を対比すると、両者は少なくとも下記相違点1で相違する。
(相違点1)
本件特許発明1は、「凹凸の平均傾斜角」「θa」が「1.0≦θa≦7.5[°]」を満たすのに対し、甲1発明は、平均傾斜角が67.3°である点。
(3)判断
上記相違点1について検討する。
甲1及び特許異議申立人が提出した甲第2号証~甲第10号証に記載された技術事項からみて、平均傾斜角が67.3°である甲1発明において、その平均傾斜角を1.0°以上7.5°以下の値とする動機付けはないというべきである。
そうすると、甲1発明において、相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
したがって、本件特許発明1は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、請求項1を引用して記載される本件特許発明2~11も、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)小括
以上のとおりであるから、請求項1~11に係る特許は、特許法113条2号に該当せず、取り消すべきものでない。
第7 むすび
請求項1~11に係る特許は、いずれも、取消理由通知書によって通知した取消しの理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。また、他に請求項1~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2025-700471