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特許異議申立

2023-700719

硬化性樹脂組成物

審判番号
2023-700719
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-213253
登録番号
7203577
請求日
2023年07月12日
審決日
2025年01月29日
公報発行日
2025年05月30日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社ADEKA
  • 【権利者代理人】弁理士法人翔和国際特許事務所
  • 【異議申立人】赤松 智信
審判長/審判官
  • 審判長 藤原 浩子
  • 審判官 藤井 勲
  • 審判官 近野 光知
分類
P1651.113-YAA(C08G) / P1651.121-YAA(C08G) / P1651.536-YAA(C08G) / P1651.537-YAA(C08G)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項、特許法第36条第4項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7203577号発明「硬化性樹脂組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7203577号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕、9について訂正することを認める。 特許第7203577号の請求項1~9に係る特許を維持する。

理由

理 由 理 由 第1 手続の経緯 特許第7203577号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、平成30年11月13日を出願日とする出願(特願2018-213253号)であって、令和5年1月4日に特許権の設定登録(請求項の数9)がされ、同年同月13日に特許掲載公報が発行されたものである。 その後、その特許に対し、令和5年7月12日に、特許異議申立人である赤松 智信(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1~9)がされた。 その後の本件特許異議申立事件の主な手続の経緯は、次のとおりである。 令和5年10月31日付け 取消理由通知 同年12月25日提出 訂正請求書及び意見書(特許権者) 令和6年 1月10日提出 手続補正書(特許権者) 同年 1月17日付け 通知書(申立人宛て) 同年 2月21日提出 意見書(申立人) 同年 5月 9日付け 取消理由通知書(決定の予告) 同年 6月18日 応対記録(初回応対日) 同年 同月21日提出 訂正請求書及び意見書(特許権者) 同年 同月27日付け 通知書(申立人宛て) 同年10月 7日 応対記録(初回応対日) 同年 同月18日付け 取消理由通知書(決定の予告) 同年11月14日提出 訂正請求書及び意見書(特許権者) なお、令和5年12月25日及び令和6年6月21日提出の訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 また、申立人に対して、令和6年6月27日付け通知書により、訂正請求があった旨の通知をしたが、申立人からの応答はなかった。 そして、令和6年11月14日にされた訂正請求は、先の訂正請求(同年6月21日)における特許請求の範囲から、選択肢を削除するものであって、既に特許異議申立人に意見書の提出の機会が与えられており、特許法第120条の5第5項ただし書に規定された特別の事情があるときに相当すると当審は判断し、申立人に意見書の提出の機会を与えないこととした。 第2 訂正の適否 1 請求の趣旨 令和6年11月14日提出の訂正請求書の請求の趣旨は、特許第7203577号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~9について訂正することを求める、というものである。 2 訂正の内容 訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである(下線は、訂正箇所を表し、当審が付した。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「(A)エポキシ樹脂、(B)ウレタン構造を有する化合物、及び(C)潜在性硬化剤を含有し、 (A)エポキシ樹脂がジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含み、 (B)成分であるウレタン構造を有する化合物が、(B1)ウレタン変性エポキシ樹脂及び/又は(B2)ブロックウレタンであり、 前記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の含有量が、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部中1~20質量部である、硬化性樹脂組成物。」とあるのを、 「(A)エポキシ樹脂、(B)ウレタン構造を有する化合物、及び(C)潜在性硬化剤を含有し、 (A)エポキシ樹脂がジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含み、 (B)成分であるウレタン構造を有する化合物が、(B1)ウレタン変性エポキシ樹脂及び/又は(B2)ブロックウレタンであり、 (B1)ウレタン変性エポキシ樹脂は、 エポキシ樹脂と、イソシアネート基を有するポリウレタンとの反応生成物であり、且つ、 使用するイソシアネート基とエポキシ基の比であるオキサゾリドン環変性率(イソシアネート基mol/エポキシ基mol)が0.15以上であるオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂を除き、 前記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の含有量が、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部中1~20質量部である、硬化性樹脂組成物。」に訂正する。 請求項1を引用する請求項8も同様に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に、 「前記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂が、下記式(I)で表されるものである、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。 【化1】 [図:0001422380000001.jpg] 式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。」とあるのを、 「(A)エポキシ樹脂、(B)ウレタン構造を有する化合物、及び(C)潜在性硬化剤を含有し、 (A)エポキシ樹脂がジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含み、 (B)成分であるウレタン構造を有する化合物が、(B1)ウレタン変性エポキシ樹脂及び/又は(B2)ブロックウレタンであり、 前記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の含有量が、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部中1~20質量部であり、 前記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂が、下記式(I)で表されるものである、硬化性樹脂組成物。 【化1】 [図:0001422380000002.jpg] 式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。」に訂正する。 請求項2を引用する請求項8も同様に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に、 「(B1)成分であるウレタン変性エポキシ樹脂が、(a)エポキシ樹脂と、(b)イソシアネート含有量が0.1~10質量%であるポリウレタンとを反応させて得られるものであり、 (b)成分であるポリウレタンが、(b-1)ポリヒドロキシ化合物と(b-2)ポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるものであり、 (b-1)ポリヒドロキシ化合物に対し(b-2)ポリイソシアネート化合物が過剰となる量使用する、請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。」とあるのを、 「(A)エポキシ樹脂、(B)ウレタン構造を有する化合物、及び(C)潜在性硬化剤を含有し、 (A)エポキシ樹脂がジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含み、 (B)成分であるウレタン構造を有する化合物が、(B1)ウレタン変性エポキシ樹脂及び/又は(B2)ブロックウレタンであり、 前記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の含有量が、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部中1~20質量部であり、 (B1)成分であるウレタン変性エポキシ樹脂が、(a)エポキシ樹脂と、(b)イソシアネート含有量が0.1~10質量%であるポリウレタンとを反応させて得られるものであり、 (b)成分であるポリウレタンが、(b-1)ポリヒドロキシ化合物と(b-2)ポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるものであり、 (b-1)ポリヒドロキシ化合物に対し(b-2)ポリイソシアネート化合物が過剰となる量使用する、硬化性樹脂組成物。」に訂正する。 請求項3を引用する請求項4、5及び8も同様に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項6に、 「(B2)成分であるブロックウレタンが、(B2A)イソシアネート含有量が0.1~10質量%であるポリウレタンを、(B2B)ブロック化剤でブロックして得られるものであり、 (B2A)成分であるポリウレタンが、(c-1)ポリヒドロキシ化合物と(c-2)ポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるものであり、 (c-1)成分であるポリヒドロキシ化合物に対し(c-2)であるポリイソシアネート化合物が過剰となる量使用する、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。」とあるのを、 「(A)エポキシ樹脂、(B)ウレタン構造を有する化合物、及び(C)潜在性硬化剤を含有し、 (A)エポキシ樹脂がジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含み、 (B)成分であるウレタン構造を有する化合物が、(B2)ブロックウレタンであり、 前記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の含有量が、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部中1~20質量部であり、 (B2)成分であるブロックウレタンが、(B2A)イソシアネート含有量が0.1~10質量%であるポリウレタンを、(B2B)ブロック化剤でブロックして得られるものであり、 (B2A)成分であるポリウレタンが、(c-1)ポリヒドロキシ化合物と(c-2)ポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるものであり、 (c-1)成分であるポリヒドロキシ化合物に対し(c-2)であるポリイソシアネート化合物が過剰となる量使用する、硬化性樹脂組成物。」に訂正する。 請求項6を引用する請求項7及び8も同様に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項9に、 「構造用接着剤として使用される、請求項1~8のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。」とあるのを、 「(A)エポキシ樹脂、(B)ウレタン構造を有する化合物、及び(C)潜在性硬化剤を含有し、 (A)エポキシ樹脂がジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含み、 (B)成分であるウレタン構造を有する化合物が、(B1)ウレタン変性エポキシ樹脂及び/又は(B2)ブロックウレタンであり、 前記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の含有量が、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部中1~20質量部であり、 構造用接着剤として使用される、硬化性樹脂組成物。」に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項8において、「請求項1~7項のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。」とあるのを、 「請求項1~7のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。」に訂正する。 なお、訂正前の請求項1~9について、請求項2~9は、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項1~9に対してされたものである。 また、訂正後の請求項9については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項(請求項1~8)とは別の訂正単位とする求めがされている。 3 本件訂正の適否 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的 訂正事項1は、本件訂正前の請求項1において、「(B1)ウレタン変性エポキシ樹脂」を、「エポキシ樹脂と、イソシアネート基を有するポリウレタンとの反応生成物であり、且つ、使用するイソシアネート基とエポキシ基の比であるオキサゾリドン環変性率(イソシアネート基mol/エポキシ基mol)が0.15以上であるオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂を除」くものに限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更 訂正事項1は「(B1)ウレタン変性エポキシ樹脂」が「エポキシ樹脂と、イソシアネート基を有するポリウレタンとの反応生成物を含有する」ことは、本件明細書の段落【0018】、実施例の製造例1に記載されたものである。 そして、「且つ、使用するイソシアネート基・・・であるものを除き」という訂正は、令和6年5月9日付け取消理由通知書(決定の予告)の新規性、進歩性を回避することを目的として、甲1の段落【0044】、【0045】に記載されていた、特定値以上のオキサゾリドン環変性率を有する場合を除くものである。 してみると、訂正事項1は、本件明細書の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、新規事項を追加するものではない。 また、実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらない。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的 訂正事項2は、本件訂正前の請求項2が同請求項1を引用していたところ、請求項1を引用する請求項2について書き下して独立形式に改めたものであるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。 イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更 訂正事項2は、上記アのとおり、書き下して独立形式に改めたものであるから、新規事項の追加、実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらない。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的 訂正事項3は、本件訂正前の請求項3が同請求項1又は2を引用していたところ、このうち請求項1を引用する請求項3について書き下して独立形式に改めたものであるから、「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。 イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更 訂正事項3は、上記アのとおり、請求項1を引用する請求項3について書き下して独立形式に改めたものであるから、新規事項の追加、実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらない。 (4)訂正事項4について ア 訂正の目的 訂正事項4は、本件訂正前の請求項6が同請求項1を引用していたところ、請求項1を引用する請求項6について書き下して独立形式に改めたうえで、「(B)成分であるウレタン構造を有する化合物」が、「(B2)ブロックウレタン」であることに限定したものであるから、「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。 イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更 訂正事項4は、上記アのとおり、書き下して独立形式に改めた上で、「(B)成分であるウレタン構造を有する化合物」について、訂正前の「(B1)ウレタン変性エポキシ樹脂及び/又は(B2)ブロックウレタン」が「(B1)ウレタン変性エポキシ樹脂」、「(B2)ブロックウレタン」、又は「(B1)ウレタン変性エポキシ樹脂及び(B2)ブロックウレタン」という3つの場合を含むものであったのを、訂正後の「(B2)ブロックウレタン」である場合のみとしたものであるから、新規事項の追加、実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらない。 (5)訂正事項5について ア 訂正の目的 訂正事項5は、本件訂正前の請求項9が同請求項1~8のいずれか一項を引用していたところ、このうち請求項1を引用する請求項9について書き下して独立形式に改めたものであるから、「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。 イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更 訂正事項5は、上記アのとおり、書き下して独立形式に改めたものであるから、新規事項の追加、実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらない。 (6)訂正事項6について ア 訂正の目的 訂正事項6は、本件訂正前の請求項8において、「・・・請求項1~7項の・・・」を「・・・請求項1~7の・・・」に訂正するものであるから、「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものである。 イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更 訂正事項6は、上記アのとおり、誤記を訂正するものであるから、新規事項の追加、実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらない。 4 独立特許要件について 訂正前の請求項1~9の全てについて特許異議の申立てがなされているので、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する第126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。 5 訂正請求についてのまとめ 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1、2及び4号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するものである。 よって、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕、9について訂正することを認める。 第3 訂正後の特許請求の範囲の記載 本件訂正後の請求項1~9に係る発明(以下、順に「本件発明1」等といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 (A)エポキシ樹脂、(B)ウレタン構造を有する化合物、及び(C)潜在性硬化剤を含有し、 (A)エポキシ樹脂がジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含み、 (B)成分であるウレタン構造を有する化合物が、(B1)ウレタン変性エポキシ樹脂及び/又は(B2)ブロックウレタンであり、 (B1)ウレタン変性エポキシ樹脂は、 エポキシ樹脂と、イソシアネート基を有するポリウレタンとの反応生成物であり、且つ、 使用するイソシアネート基とエポキシ基の比であるオキサゾリドン環変性率(イソシアネート基mol/エポキシ基mol)が0.15以上であるオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂を除き、 前記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の含有量が、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部中1~20質量部である、硬化性樹脂組成物。 【請求項2】 (A)エポキシ樹脂、(B)ウレタン構造を有する化合物、及び(C)潜在性硬化剤を含有し、 (A)エポキシ樹脂がジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含み、 (B)成分であるウレタン構造を有する化合物が、(B1)ウレタン変性エポキシ樹脂及び/又は(B2)ブロックウレタンであり、 前記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の含有量が、(A)成分及び (B)成分の合計100質量部中1~20質量部であり、 前記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂が、下記式(I)で表されるものである、硬化性樹脂組成物。 【化1】 [図:0001422380000003.jpg] 式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。 【請求項3】 (A)エポキシ樹脂、(B)ウレタン構造を有する化合物、及び(C)潜在性硬化剤を含有し、 (A)エポキシ樹脂がジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含み、 (B)成分であるウレタン構造を有する化合物が、(B1)ウレタン変性エポキシ樹脂及び/又は(B2)ブロックウレタンであり、 前記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の含有量が、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部中1~20質量部であり、 (B1)成分であるウレタン変性エポキシ樹脂が、(a)エポキシ樹脂と、(b)イソシアネート含有量が0.1~10質量%であるポリウレタンとを反応させて得られるものであり、 (b)成分であるポリウレタンが、(b-1)ポリヒドロキシ化合物と(b-2)ポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるものであり、 (b-1)ポリヒドロキシ化合物に対し(b-2)ポリイソシアネート化合物が過剰となる量使用する、硬化性樹脂組成物。 【請求項4】 (a)成分であるエポキシ樹脂が、ビスフェノール型エポキシ樹脂である、請求項3に記載の硬化性樹脂組成物。 【請求項5】 (b-1)成分であるポリヒドロキシ化合物が、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール及びポリエステルポリオールからなる群から選ばれる少なくとも一種であり、 (b-2)成分であるポリイソシアネート化合物が、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及び1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌル体からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項3又は4に記載の硬化性樹脂組成物。 【請求項6】 (A)エポキシ樹脂、(B)ウレタン構造を有する化合物、及び(C)潜在性硬化剤を含有し、 (A)エポキシ樹脂がジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含み、 (B)成分であるウレタン構造を有する化合物が、(B2)ブロックウレタンであり、 前記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の含有量が、(A)成分及び (B)成分の合計100質量部中1~20質量部であり、 (B2)成分であるブロックウレタンが、(B2A)イソシアネート含有量が0.1~10質量%であるポリウレタンを、(B2B)ブロック化剤でブロックして得られるものであり、 (B2A)成分であるポリウレタンが、(c-1)ポリヒドロキシ化合物と(c-2)ポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるものであり、 (c-1)成分であるポリヒドロキシ化合物に対し(c-2)であるポリイソシアネート化合物が過剰となる量使用する、硬化性樹脂組成物。 【請求項7】 (c-1)成分であるポリヒドロキシ化合物がポリエーテルポリオールであり、 (c-2)成分であるポリイソシアネート化合物が、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項6に記載の硬化性樹脂組成物。 【請求項8】 (C)成分である潜在性硬化剤が、ジシアンジアミド、変性ポリアミン、ヒドラジド類、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、三フッ化ホウ素アミン錯塩、ウレア類及びメラミンからなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項1~7のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。 【請求項9】 (A)エポキシ樹脂、(B)ウレタン構造を有する化合物、及び(C)潜在性硬化剤を含有し、 (A)エポキシ樹脂がジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含み、 (B)成分であるウレタン構造を有する化合物が、(B1)ウレタン変性エポキシ樹脂及び/又は(B2)ブロックウレタンであり、 前記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の含有量が、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部中1~20質量部であり、 構造用接着剤として使用される、硬化性樹脂組成物。」 第4 特許異議申立書の申立理由と当審において通知した取消理由 1 特許異議申立書の申立理由 (1)申立理由1(甲第1号証に基づく新規性欠如) 本件の請求項1、9に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるので、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件の請求項1、9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (2)申立理由2(甲第1号証を主引例とする進歩性欠如) 本件の請求項1~9に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び技術常識(甲第2~4号証)に基づいて、本件特許の出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件の請求項1~9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (3)申立理由3(サポート要件違反) 本件特許の特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 (4)申立理由4(実施可能要件違反) 本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 具体的理由の概要は以下のとおり。 本件特許の実施例は、特定のジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、特定のウレタン変性エポキシ樹脂、特定のブロックウレタン、ジシアンジアミドを用いた実施例しかなく、請求項1~9で規定される範囲まで拡張乃至一般化できないし、そのような技術常識はない。 そして、請求項1~9に係る発明の全範囲において当業者が実施できるように記載されているとはいえない。 2 証拠方法 申立人が、特許異議申立書に添付した証拠は、以下のとおりである。 ・甲第1号証:特開2017-206641号公報 ・甲第2号証:特開2011-84597号公報 ・甲第3号証:特開2013-28659号公報 ・甲第4号証:特開2008-239890号公報 ・甲第5号証:特開平9-59344号公報 さらに、申立人が、令和6年2月21日に提出した証拠は、以下のとおりである。 ・甲第6号証:特開2016-69563号公報 ・甲第7号証:国際公開第2015/53289号 (以下、甲第1号証~甲第5号証をそれぞれ「甲1」~「甲7」という。) 3 当審において通知した令和6年10月18日付け取消理由通知(決定の予告) 当審において通知した取消理由通知(決定の予告)の概要は以下のとおりである。 ・取消理由1(新規性、進歩性欠如) (1)甲1に基づく新規性欠如 本件特許の請求項6~8に係る発明は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、これらの請求項に係る発明の特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (2)甲1に基づく進歩性欠如 本件特許の請求項6~8に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、これらの請求項に係る発明の特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 第5 当審の判断 以下に述べるように、当審において通知した令和6年10月18日付け取消理由通知(決定の予告)の取消理由、及び、特許異議申立書の申立理由によっては、本件発明1~9に係る特許を取り消すことはできない。 1 取消理由1(甲1に基づく新規性欠如、進歩性欠如)及び申立理由1(甲1に基づく新規性欠如)及び申立理由2(甲1に基づく進歩性欠如) 取消理由1並びに申立理由1及び申立理由2は、いずれも甲1に基づくものであるから、併せて検討する。 (1)甲1に記載された事項及び甲1に記載された発明 ア 甲1に記載された事項 甲1には、以下の記載がある。 「【請求項1】 エポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)とを含有するエポキシ樹脂組成物であって、エポキシ樹脂(A)が下記式(1)で表されるエポキシ樹脂(c)とイソシアネート化合物(d)より得られるオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂(a)を含有し、硬化剤(B)が下記式(2)で表されるビスフェノール化合物(b1)と下記式(3)で表されるノボラックフェノール化合物(b2)とを含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。 【化1】 [図:0001422380000004.jpg] (式中、X1は炭素数1~20の炭化水素基を置換基として少なくとも1個有する環員数5~8のシクロアルキリデン基を表す。R1はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20のハロゲン化炭化水素基、又はヘテロ原子を有しても良い炭素数1~20の炭化水素基を表す。Gはグリシジル基を表す。nは繰り返し数を表し、平均値は0~5である。) 【化2】 [図:0001422380000005.jpg] (式中、X2は炭素数1~20の炭化水素基を置換基として少なくとも1個有する環員数5~8のシクロアルキリデン基を表す。R2はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20のハロゲン化炭化水素基、又はヘテロ原子を有しても良い炭素数1~20の炭化水素基を表す。) 【化3】 [図:0001422380000006.jpg] (式中、A1はそれぞれ独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、又はビフェニル環から選ばれる芳香族環基を表し、これらの芳香族環基は、ヘテロ原子を有しても良い炭素数1~49の炭化水素基を置換基として有しても良く、炭素数6~48のアリール基、炭素数6~48のアリールオキシ基、炭素数7~49のアラルキル基、及び炭素数7~49のアラルキルオキシ基から選ばれる置換基を平均で0.1~2.5個有する。Tは2価の脂肪族環状炭化水素基又は下記式(3a)もしくは下記式(3b)で表される2価の架橋基のいずれかを表す。kは1又は2を表す。mは繰り返し数を表し、平均値は1.5以上である。) 【化4】 [図:0001422380000007.jpg] (式中、R3及びR4はそれぞれ独立に、水素原子又はヘテロ原子を有しても良い炭素数1~20の炭化水素基を表す。R5及びR6はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~6の炭化水素基を表す。A2はベンゼン環、ナフタレン環又はビフェニル環から選ばれる芳香族環基を表し、これらの芳香族環基は、ヘテロ原子を有しても良い炭素数1~20の炭化水素基を置換基として有しても良い。) ・・・ 【請求項6】 請求項1~5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなるエポキシ樹脂硬化物。」 「【0036】 エポキシ樹脂(c)としては、入手の容易性と硬化物物性の良好性から、4,4’-(3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン)ジフェノールとエピハロヒドリンから得られる下記式(5)で表されるエポキシ樹脂(c1)が好ましい。なお、式(5)中、nは式(1)のnと同義である。 【化7】 [図:0001422380000008.jpg] 【0037】 上記オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂(a)を製造するには、エポキシ樹脂(c)とイソシアネート化合物(d)との反応によって、所望のオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂を得ることができる。このイソシアネート化合物(d)は、1分子内に平均で1.8個以上のイソシアネート基(-N=C=O)を有するイソシアネート化合物、すなわち実質的に2官能以上の多官能イソシアネート化合物であればよく、公知慣用のイソシアネート化合物が使用できる。単官能イソシアネート化合物は、少量含まれていてもよいが、これは末端基となるので、重合度を低下させる目的には有効であるが、重合度が上がらない。」 「【0079】 本発明のエポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂(A)には、物性を損なわない範囲で、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂(a)以外のエポキシ樹脂を併用しても良い。併用できるオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂(a)以外のエポキシ樹脂としては、特に制限はなく、エポキシ基を2個以上含有する多官能エポキシ樹脂が好ましい。具体的には、ポリグリシジルエーテル化合物、・・・、その他変性エポキシ樹脂等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらのエポキシ樹脂は単独で使用してもよいし、同一系のエポキシ樹脂を2種類以上併用して使用しても良く、また、異なる系のエポキシ樹脂を組み合わせて使用してもよい。これらのオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂(a)以外のエポキシ樹脂の使用量は、エポキシ樹脂(A)中で、0~95質量%であり、0~80質量%が好ましく、0~50質量%がより好ましく、0~30質量%が更に好ましい。 【0080】 ポリグリシジルエーテル化合物としては、具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂、・・・、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アルキレングリコール型エポキシ樹脂、脂肪族環状エポキシ樹脂等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。」 「【0085】 本発明のエポキシ樹脂組成物中の硬化剤(B)には、物性を損なわない範囲で、ビスフェノール化合物(b1)及びノボラックフェノール化合物(b2)以外の硬化剤を併用しても良い。併用できる(b1)及び(b2)以外の硬化剤としては、特に制限はなく、エポキシ樹脂を硬化させるものであれば特に限定されず、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、ヒドラジド系硬化剤、活性エステル系硬化剤、リン含有硬化剤等のエポキシ樹脂用硬化剤を使用することができる。これらの硬化剤は単独で使用してもよいし、同一系の硬化剤を2種類以上併用してもよく、また、異なる系の硬化剤を組み合わせて使用してもよい。これらの(b1)及び(b2)以外の硬化剤の使用量は、硬化剤(B)中で、0~95質量%であり、0~80質量%が好ましく、0~50質量%がより好ましく、0~30質量%が更に好ましい。 ・・・ 【0089】 アミン系硬化剤としては、上記各種エポキシ樹脂変性剤として使用可能なアミン化合物が挙げられる。その他には、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールや、ダイマージアミンや、ジシアンジアミド及びその誘導体や、ダイマー酸等の酸類とポリアミン類との縮合物であるポリアミドアミン等のアミン系化合物等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。 【0090】 ヒドラジド系硬化剤としては、具体的には、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。」 「【実施例】 【0144】 実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらに限定されるものではない。特に断りがない限り、部は質量部を表し、%は質量%を表す。 分析方法、測定方法を以下に示す。 【0145】 (1)エポキシ当量:JIS K7236規格に準じた。 (2)軟化点:JIS K7234規格、環球法に準拠して測定した。具体的には、自動軟化点装置(株式会社メイテック製、ASP-MG4)を用いた。 (3)ガラス転移温度:IPC-TM-650 2.4.25.c規格に準じて示差走査熱量測定装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製、EXSTAR6000 DSC6200)にて20℃/分の昇温条件で測定を行った時のDSC・Tgm(ガラス状態とゴム状態の接線に対して変異曲線の中間温度)で表した。 (4)銅箔剥離強さ及び層間接着力:JIS C6481規格に準じて測定し、層間接着力は7層目と8層目の間で引き剥がし測定した。 (5)比誘電率及び誘電正接:IPC-TM-650 2.5.5.9規格に準じてマテリアルアナライザー(AGILENT Technologies社製)を用い、容量法により周波数1GHzにおける誘電率及び誘電正接を求めた。 (6)難燃性:UL94に準じ、垂直法により評価した。評価はV-0、V-1、V-2で記した。 【0146】 合成例1 撹拌装置、温度計、窒素ガス導入装置、冷却管及び滴下装置を備えたガラス製セパラブルフラスコに、TX-1468(上記式(5)で表されるエポキシ樹脂、新日鉄住金化学株式会社製、エポキシ当量219)を100部、テトラメチルアンモニウムヨージドを0.11部仕込み、窒素ガスを投入しながら昇温し、120℃にて30分間温度を維持して系内の水分を除去した。次に、130℃~140℃の反応温度を維持しながら、ジフェニルメタンジイソシアネート(NCO濃度34%)11.5部を60℃に加温しながら、3時間かけて滴下した。滴下終了後、同温度を維持ながらさらに60分間撹拌を続けて、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂(樹脂1)を得た。得られた樹脂1のオキサゾリドン環変性率(Rox)は0.2であり、エポキシ当量は300であり、軟化点は85℃であった。 ・・・ 【0151】 合成例6 合成例1と同様の装置に、フェノールノボラック(水酸基当量105、軟化点130℃)を105部、p-トルエンスルホン酸を0.1部仕込み、150℃まで昇温した。同温度を維持しながら、スチレン94部を3時間かけて滴下し、さらに同温度で1時間撹拌を継続した。その後、MIBKを500部添加し、内容物を溶解させ、80℃にて5回水洗を行った。続いて、MIBKを減圧留去した後、スチレン変性ノボラックフェノール化合物(APN-A)を得た。得られたAPN-Aのフェノール性水酸基当量は199であり、軟化点は110℃であった。上記式(3)において、1つのA1に対する1-フェニルエチル基の平均置換数は0.9である。(当審注:式(3)は省略する。) ・・・ 【0156】 実施例及び比較例で使用した略号の説明は以下のとおりである。 【0157】 (エポキシ樹脂) (1)オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂(a) 樹脂1~4:合成例1~4で得られたエポキシ樹脂 (2)それ以外のエポキシ樹脂 樹脂H1:合成例5で得られたエポキシ樹脂 TX-1468:前掲 YDPN-638:フェノールノボラック型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、エポトートYDPN-638、エポキシ当量176) KDCP-130:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(國都化学株式会社製、KDCP-130、エポキシ当量254) 【0158】 (硬化剤) (1)ビスフェノール化合物(b1) BisP-TMC:4,4’-(3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール(本州化学工業株式会社製、BisP-TMC、フェノール性水酸基当量155) BisP-MC:4,4’-(4-メチルシクロヘキシリデン)ジフェノール(試薬、フェノール性水酸基当量) (2)ノボラックフェノール化合物(b2) APN-A~E:合成例6~10で得られたノボラックフェノール化合物(3)その他の硬化剤 PN:フェノールノボラック樹脂(昭和電工株式会社製、ショウノールBRG-557、フェノール性水酸基当量105、軟化点80℃) Bis-Z:4,4’-シクロヘキシリデンビスフェノール(本州化学工業株式会社製、Bis-Z、フェノール性水酸基当量134) DCPD:ジシクロペンタジエン・フェノール化合物(群栄化学株式会社製、GDP9140、フェノール性水酸基当量196、軟化点130℃) 【0159】 (硬化促進剤) 2E4MZ:2-エチル-4-メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、キュアゾール2E4MZ) 【0160】 (難燃剤) SPE-100:ホスファゼン系難燃剤(大塚化学株式会社製、SPE-100、リン含有率13%) ・・・ 【0170】 実施例13~16及び比較例11 表4の配合量(部)で配合し、実施例1と同様の装置を使用して、同様の操作を行い、積層板及び試験片を得た。難燃剤は、エポキシ樹脂組成物のリン含有率が2.5%になる量を配合した。実施例1と同様の試験を行い、その結果を表4に示す。また、難燃性測定用試験片は積層板の両面をエッチングして作成し、その試験片を使用して難燃性試験を行い、その結果を表4に示す。 【0171】 【表4】 [図:0001422380000009.jpg] 【産業上の利用可能性】 【0172】 本発明のエポキシ樹脂組成物及びその硬化物は、耐熱性、接着性、誘電特性に優れ、エポキシ樹脂硬化物、プリプレグ、積層板等の用途のエポキシ樹脂組成物として利用することができる。また、更に難燃剤を配合したエポキシ樹脂組成物及びその硬化物は、難燃性、耐熱性、接着性、誘電特性に優れ、昨今の高機能化要求に対応した電子回路基板材料等の高機能材料用途のエポキシ樹脂組成物として利用することができる。」 イ 甲1に記載された発明 甲1の実施例において、合成例1によるオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂(樹脂1)、段落【0151】、【0157】~【0160】に記載の成分を踏まえて実施例14に着目すると、次の発明が記載されている。 「オキサゾリドン環変性率(Rox)が0.2であるオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂(樹脂1)80質量部、KDCP-130(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)20質量部、BisP-TMC(4,4’-(3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール)20.6質量部、APN-A(合成例6で得られたノボラックフェノール化合物)26.5質量部、PN(フェノールノボラック樹脂)8.3質量部、SPE-100(ホスファゼン系難燃剤)35.0質量部、2E4MZ(2-エチル-4-メチルイミダゾール)0.2質量部を含むエポキシ樹脂組成物。」(以下、「甲1発明」という。) (2)甲3に記載された事項 甲3には、以下の記載がある。 「【請求項1】 (A)下記一般式(I)で示される化合物及び下記一般式(II)で示される化合物を含むエポキシ樹脂と、(B)下記化学式(III)で示される酸無水物を含む硬化剤と、(C)無機充填剤とを含有し、前記(C)無機充填剤の含有率が総質量の50質量%以上78質量%以下の範囲であるアンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材。 【化1】 [図:0001422380000010.jpg] 」 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 ・・・ 本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、低温短時間での硬化が可能であり、硬化前の樹脂組成物が低粘度で、狭いギャップでも充填可能あり、樹脂組成物の硬化物が高Tgで耐温度サイクル性に優れ、また、チップを保護するために不可欠なフィレット形成性に優れたアンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材、及びこれにより封止された電子部品装置を提供することを目的とする。」 (3)甲4に記載された事項 甲4には、以下の記載がある。 「【請求項1】 (A1)ポリエポキシ化合物、(A2)リン酸、および(A4)ポリウレタンを反応させてなる(A)ウレタン変性キレートエポキシ樹脂95~10質量%と(B)ブロックウレタン5~90質量%からなる主剤成分、{(A)+(B)}100質量部に対し、(C)潜在性硬化剤1~40質量部を含有してなることを特徴とする硬化性樹脂組成物。 【請求項2】 前記(A)ウレタン変性キレートエポキシ樹脂が、(A3)リン酸変性エポキシ樹脂と(A4)ポリウレタンとの反応、または、(A1)ポリエポキシ化合物、および(a-1)ポリヒドロキシ化合物と過剰の(a-2)ポリイソシアネート化合物を反応させて得られるイソシアネート含有量が0.1~10質量%の(A4)ポリウレタンを反応させて得られるウレタン変性エポキシ樹脂にリン酸を反応させて得られる、請求項1に記載された硬化性樹脂組成物。 【請求項3】 前記(A)ウレタン変性キレートエポキシ樹脂を構成する(A1)ポリエポキシ化合物が、ビスフェノール型エポキシ樹脂である、請求項1または2に記載された硬化性樹脂組成物。 【請求項4】 前記(A)ウレタン変性キレートエポキシ樹脂を構成する(A4)ポリウレタンが、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールおよびポリエステルポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種の(a-1)ポリヒドロキシ化合物と、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、および1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌル体からなる群から選ばれる少なくとも1種の(a-2)ポリイソシアネート化合物を用いて得られるポリウレタンである、請求項1~3の何れかに記載された硬化性組成物。 【請求項5】 前記(B)ブロックウレタンが、(b-1)ポリヒドロキシ化合物および過剰の(b-2)ポリイソシアネート化合物を反応させて得られる(B1)ポリウレタンを(B2)ブロック化剤でブロックして得られるブロックウレタンであって、前記(B1)ポリウレタンがイソシアネートを0.1~10質量%含有するポリウレタンである、請求項1~4の何れかに記載された硬化性樹脂組成物。 【請求項6】 前記(B)ブロックウレタンが、ポリエーテルポリオールから選ばれる少なくとも一種の(b-1)ポリヒドロキシ化合物を用いると共に、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも一種の(b-2)ポリイソシアネート化合物を反応させて得られるブロックウレタンである、請求項5に記載された硬化性樹脂組成物。 【請求項7】 前記(C)潜在性硬化剤が、ジシアンジアミド、変性ポリアミン、ヒドラジド類、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、三フッ化ホウ素アミン錯塩、ウレア類およびメラミンからなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物である、請求項1~6の何れかに記載された硬化性樹脂組成物。 ・・・ 【請求項9】 請求項1~8の何れかに記載された硬化性樹脂組成物を含有してなることを特徴とする自動車構造用接着剤。」 (4)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 a 甲1発明の「KDCP-130(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)」は、本件発明1の「ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂」に相当する。そして、甲1発明の「KDCP-130(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)」はエポキシ樹脂に含まれるものであるから、本件発明1の「(A)エポキシ樹脂がジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含」むことに相当する。 b 甲1発明の「オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂(樹脂1)」は、環状ウレタン構造を有するエポキシ樹脂であるから、本件発明1の「(B)ウレタン構造を有する化合物」であって、「(B1)ウレタン変性エポキシ樹脂」であることに相当する。 c 本件明細書の段落【0042】には、「(C)潜在硬化剤」として「変性ポリアミン」が例示され、同【0044】には、該「変性ポリアミン」として「2-エチル-4-メチルイミダゾール」が例示されていることから、甲1発明の「2E4MZ(2-エチル-4-メチルイミダゾール)」は、本件発明1の「(C)潜在硬化剤」に相当する。 d 甲1発明は、「(A)エポキシ樹脂」として「KDCP-130(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)」を20質量部、「(B)ウレタン構造を有する化合物」として「オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂(樹脂1)」を80質量部含むものであり、「(A)エポキシ樹脂」と「(B)ウレタン構造を有する化合物」の総計100質量部に対して、「KDCP-130(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)」を20質量部含むものであるから、本件発明1の「前記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の含有量が、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部中に1~20質量部である」ことに相当する。 e 甲1発明の末尾は「エポキシ樹脂組成物」であるところ、甲1の請求項6には、エポキシ樹脂組成物を硬化してなるエポキシ樹脂硬化物であることが特定されており、硬化性を有することが理解できるから、甲1発明の「エポキシ樹脂組成物」は、本件発明1の「硬化性樹脂組成物」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲1発明とは、 「(A)エポキシ樹脂、(B)ウレタン構造を有する化合物、及び(C)潜在性硬化剤を含有し、 (A)エポキシ樹脂がジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含み、 (B)成分であるウレタン構造を有する化合物が、(B1)ウレタン変性エポキシ樹脂及び/又は(B2)ブロックウレタンであり、 前記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の含有量が、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部中1~20質量部である、硬化性樹脂組成物。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 本件発明1では、「(B1)ウレタン変性エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂と、イソシアネート基を有するポリウレタンとの反応生成物であり、且つ、使用するイソシアネート基とエポキシ基の比であるオキサゾリドン環変性率(イソシアネート基mol/エポキシ基mol)が0.15以上であるオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂を除」くのに対し、甲1発明では、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂(樹脂1)が何を原料とした反応生成物であるのか特定がなく、且つ、オキサゾリドン環変性率が0.2である点 イ 判断 上記相違点1のうち、「オキサゾリドン環変性率」に係る発明特定事項について検討する。 甲1発明は、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂(樹脂1)のオキサゾリドン環変性率が0.2であることから、甲1発明のオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂(樹脂1)は、本件発明1の「(B1)ウレタン変性エポキシ樹脂」から除かれたオキサゾリドン環変性率を有するものであり、相違点1は実質的な相違点である。 してみると、本件発明1と甲1発明との間には、実質的な相違点が存在し、本件発明1は甲1発明であるとはいえない。 次に、相違点1の容易想到性について検討する。 甲1には、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂のオキサゾリドン環変性率が、高粘度の抑制や、溶剤溶解性の確保や、強靭性、接着性、電気特性の向上といった観点から、0.15~0.6が好ましく、0.2~0.5がより好ましく、0.25~0.45がさらに好ましいこと(【0044】)が記載され、甲1発明におけるオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂のオキサゾリドン環変性率は、上述のとおり0.2である。 これらの記載によると、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂のオキサゾリドン環変性率は、粘度、溶剤溶解性、靭性、接着性、電気特性の観点から、0.15以上であることが好適であると理解する。 他方、甲1には、オキサゾリドン環変性率を、例えば0.15未満のように小さくする方向にすることについて何ら記載も示唆もされていないため、甲1発明において、上記相違点1に係る発明特定事項とすることが動機付けられるとはいえない。 また、甲2~甲4の記載をみても、硬化性樹脂組成物中のウレタン変性エポキシ樹脂のオキサゾリドン環変性率が低いと、低温から高温までの広い温度範囲において優れた柔軟性を有し、特にアルミニウム基材との密着性に優れるといった技術常識があるわけでもない。 そして、本件発明1は、エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂又はブロックウレタン、及び潜在性硬化剤を含有する硬化性樹脂組成物であって、エポキシ樹脂としてジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含有することで、優れた効果を奏するものである(【0008】、【0010】)。 したがって、相違点1は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易になし得たことでない。 よって、本件発明1は、甲1発明であるといえないし、甲1発明、すなわち甲1に記載された発明及び甲2~甲4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)本件発明2について ア 対比 本件発明2と甲1発明とを対比すると、上記(4)アと同様の相当関係を有するから、本件発明2と甲1発明とは、 「(A)エポキシ樹脂、(B)ウレタン構造を有する化合物、及び(C)潜在性硬化剤を含有し、 (A)エポキシ樹脂がジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含み、 (B)成分であるウレタン構造を有する化合物が、(B1)ウレタン変性エポキシ樹脂及び/又は(B2)ブロックウレタンであり、 前記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の含有量が、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部中1~20質量部である、硬化性樹脂組成物。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点2> 本件発明2では、「ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂が、下記式(I)で表されるもの(当審注:式(I)の化学式については省略する。)」であるのに対し、甲1発明では、KDCP-130(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)であり、「式(I)で表されるもの」であるか不明である点 イ 判断 上記相違点2について検討する。 甲1には、本件発明2の「式(I)で表されるもの」について記載も示唆もされておらず、甲1発明において、上記相違点2に係る発明特定事項とすることが動機付けられるとはいえない。 また、甲1発明に甲3に記載された事項を組み合わせることが可能か否かについて検討する。 甲3の請求項1には、一般式(II)(当審注:一般式(II)の化学式は省略する。)で表される化合物として、本件発明2の「式(I)で表されるもの」と同じ化学式が記載されているが、上記一般式(II)で表される化合物は一般式(I)で表される化合物(当審注:一般式(I)で表される化学式は省略する。)と併用するものであって、甲1発明は、上記一般式(I)で表される化合物を含有するものでない。 さらに、甲3は、低温短時間での硬化や低粘度で狭いギャップへの充填を可能にし、フィレット形成性に優れることを課題とするものであるところ、甲1発明の課題(高温から低温までの柔軟性、アルミニウム基材との密着性)と異なるから、甲1発明の「KDCP-130」が上記一般式(II)で表される化合物と、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂という共通した骨格を有しているということをもって、甲1発明の「KDCP-130」に代えて、上記一般式(II)のジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を採用できるとはいえないし、これを代えるに足る理由もない。 そして、本件発明2は、エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂又はブロックウレタン、及び潜在性硬化剤を含有する硬化性樹脂組成物であって、エポキシ樹脂としてジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含有することで、優れた効果を奏するものである。 したがって、相違点2に係る構成は、甲1発明、すなわち甲1に記載された発明及び甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得たことでない。 よって、本件発明2は、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (6)本件発明3について ア 対比 本件発明3と甲1発明とを対比すると、上記(4)アと同様の相当関係を有するから、本件発明3と甲1発明とは、 「(A)エポキシ樹脂、(B)ウレタン構造を有する化合物、及び(C)潜在性硬化剤を含有し、 (A)エポキシ樹脂がジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含み、 (B)成分であるウレタン構造を有する化合物が、(B1)ウレタン変性エポキシ樹脂及び/又は(B2)ブロックウレタンであり、 前記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の含有量が、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部中1~20質量部である、硬化性樹脂組成物。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点3> 本件発明3では、「(B1)成分であるウレタン変性エポキシ樹脂が、(a)エポキシ樹脂と、(b)イソシアネート含有量が0.1~10質量%であるポリウレタンとを反応させて得られるものであり、(b)成分であるポリウレタンが、(b-1)ポリヒドロキシ化合物と(b-2)ポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるものであり、(b-1)ポリヒドロキシ化合物に対し(b-2)ポリイソシアネート化合物が過剰となる量使用する」のに対し、甲1発明では、そのような特定がない点 イ 判断 上記相違点3について検討する。 甲1発明の「オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂(本件発明1の「(B1)ウレタン変性エポキシ樹脂」に相当)を製造するにあたって、甲1には、エポキシ樹脂と反応させるポリウレタンのイソシアネート含有量について記載されていないし、該ポリウレタンを反応させる際に、ポリヒドロキシ化合物に対してポリイソシアネート化合物が過剰となる量で使用することについても記載されていない。 そうすると、甲1発明において、相違点3に係る発明特定事項とする動機付けがないといえる。 また、甲1発明に甲4に記載された事項を組み合わせることが可能か否かについて検討する。 甲4の請求項2には、硬化性樹脂組成物中のウレタン変性キレートエポキシ樹脂が、ポリエポキシ化合物、及びポリヒドロキシ化合物と過剰のポリイソシアネート化合物を反応させて得られるイソシアネート含有量が0.1~10質量%のポリウレタンを反応させて得られるウレタン変性エポキシ樹脂にリン酸を反応させて得られること、請求項9には、自動車用構造用接着剤であることが記載されている。 ここで、甲1発明は、構造用接着剤を意図していないし、甲4のウレタン変性エポキシ樹脂はリン酸変性されたものであることに加えて、該ウレタン変性エポキシ樹脂を含む硬化性樹脂組成物は、甲1発明の必須成分であるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含むものでもない。 そうすると、甲4に記載された硬化性樹脂組成物は、甲1発明のそれとは適用する技術分野も組成も異なるものであるし、ウレタン変性エポキシ樹脂がリン酸変性されているか否かでも異なっている。 しかも、ポリウレタンのイソシアネート含有量やポリイソシアネート化合物の含有量(過剰)に関する構成を、甲4のリン酸変性されたウレタン変性エポキシ樹脂から部分的に取り出して、甲1発明に適用しなくてはならないが、甲4にはそのような適用が可能であることについて記載されておらず、甲1発明に甲4に記載された事項を部分的に適用する動機付けがないものである。 そして、本件発明3は、エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂又はブロックウレタン、及び潜在性硬化剤を含有する硬化性樹脂組成物であって、エポキシ樹脂としてジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含有することで、優れた効果を奏するものである。 したがって、相違点3に係る構成は、甲1発明、すなわち甲1に記載された発明及び甲4に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得たことでない。 よって、本件発明3は、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (7)本件発明4、5について 本件発明4及び5は、本件発明3を直接又は間接的に引用するものであり、上記(6)イと同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (8)本件発明6について ア 対比 本件発明6と甲1発明とを対比すると、上記(4)アと同様の相当関係を有するから、本件発明6と甲1発明とは、 「(A)エポキシ樹脂、(B)ウレタン構造を有する化合物、及び(C)潜在性硬化剤を含有し、 (A)エポキシ樹脂がジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含み、 前記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の含有量が、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部中1~20質量部である、硬化性樹脂組成物。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点4> 本件発明6では、「(B)成分であるウレタン構造を有する化合物が、(B2)ブロックウレタンであり、」「(B2)成分であるブロックウレタンが、(B2A)イソシアネート含有量が0.1~10質量%であるポリウレタンを、(B2B)ブロック化剤でブロックして得られるものであり、(B2A)成分であるポリウレタンが、(c-1)ポリヒドロキシ化合物と(c-2)ポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるものであり、(c-1)成分であるポリヒドロキシ化合物に対し(c-2)であるポリイソシアネート化合物が過剰となる量使用する」のに対し、甲1発明では、そのような特定がない点 イ 判断 上記相違点4について検討する。 甲1発明の「オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂(本件発明1の「(B1)ウレタン変性エポキシ樹脂」に相当)は、ブロックウレタンではないし、甲1には、ブロックウレタンについて何ら記載されていない。 そうすると、本件発明6と甲1発明との間には、実質的な相違点が存在し、本件発明6は甲1発明であるとはいえない。 次に、相違点4の容易想到性について検討する。 甲1には、ブロックウレタンについて何ら記載されていないことから、甲1発明において、相違点4に係る発明特定事項とする動機付けがないといえる。 また、甲1発明に甲4に記載された事項を組み合わせることが可能か否かについて検討する。 甲4の請求項5には、硬化性樹脂組成物中のブロックウレタンがポリヒドロキシ化合物及び過剰のポリイソシアネート化合物を反応させて得られるポリウレタンをブロック化剤でブロックして得られるブロックウレタンであって、前記ポリウレタンがイソシアネートを0.1~10質量%含有するポリウレタンであること、請求項9には、自動車用構造用接着剤であることが記載されている。 ここで、甲1発明は、甲1の記載全体からみてみ、電子部品用の接着剤を意図していることは明らかであって、構造用接着剤を意図していないし、上述のとおり、甲1には、ブロックウレタンについて何ら記載されていないから、甲4に記載されたブロックウレタンが公知であったとしても、甲1発明に甲4に記載された事項を適用する動機付けがないものである。 そして、本件発明6は、エポキシ樹脂、ブロックウレタン、及び潜在性硬化剤を含有する硬化性樹脂組成物であって、エポキシ樹脂としてジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含有することで、優れた効果を奏するものである。 したがって、相違点4は、甲1に記載された発明及び甲4に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得たことでない。 よって、本件発明6は、甲1発明であるといえないし、甲1発明、すなわち甲1に記載された発明及び甲4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (9)本件発明7について 本件発明7は、本件発明6を引用するものであるから、上記(8)イと同様の理由により、甲1発明であるといえないし、甲1発明、すなわち甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (10)本件発明8について 本件発明8は、本件発明1~7のいずれか1項を引用するものである。 まず、本件発明8が、本件発明1、6又は7のいずれかを直接又は間接的に引用するときには、上記(4)イ、(8)イ、(9)イと同様の理由により、甲1発明であるといえない。 そして、本件発明8が、本件発明1~7のいずれかを直接又は間接的に引用するときには、上記(4)~(6)イ、(7)、(8)イ、(9)イと同様の理由により、甲1発明、すなわち甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (11)本件発明9について ア 対比 本件発明9と甲1発明とを対比すると、上記(4)アと同様の相当関係を有するから、本件発明9と甲1発明とは、 「(A)エポキシ樹脂、(B)ウレタン構造を有する化合物、及び(C)潜在性硬化剤を含有し、 (A)エポキシ樹脂がジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含み、 (B)成分であるウレタン構造を有する化合物が、(B1)ウレタン変性エポキシ樹脂及び/又は(B2)ブロックウレタンであり、 前記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の含有量が、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部中1~20質量部である、硬化性樹脂組成物。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点5> 硬化性樹脂組成物に関し、本件発明9が「構造用接着剤として使用される」のに対し、甲1発明がそのような特定がない点 イ 判断 上記相違点5について検討する。 甲1には、「構造用接着剤として使用」することは記載も示唆もされていないから、相違点5は実質的な相違点である。 してみると、本件発明9は甲1発明であるとはいえない。 次に、相違点5の容易想到性について検討する。 甲1の段落【0124】に、エポキシ樹脂組成物が使用される用途として、接着剤等と記載されているが、甲1の記載全体からみてみ、電子部品用の接着剤を意図していることは明らかである。 ここで、本件明細書の段落【0002】には、構造用接着剤は、自動車、船舶、航空、宇宙、土木、建築分野等の広範な分野において金属部材等の接合剤として汎用されていること、同【0003】には、構造用接着剤として使用するためには、各種基材との密着性に優れていることが要求されるとともに、密着性を維持するために柔軟性も要求されることが記載されており、電子部品用の接着剤とは異なるものであるといえる。 そうすると、甲1に、接着剤としての用途が記載されているとしても、柔軟性を備えつつ、金属部材等の接合剤として様々な要求が多い構造用接着剤にまで当業者が想到し得ないものである。 そして、本件発明9は、エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂又はブロックウレタン、及び潜在性硬化剤を含有する硬化性樹脂組成物であって、エポキシ樹脂としてジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含有することで、構造用接着剤として優れた効果を奏するものである。 したがって、相違点5に係る構成は、甲1発明、すなわち甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易になし得たことでない。 よって、本件発明9は、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (12)小括 本件発明1、6~9は、甲1発明、すなわち甲1に記載された発明ではないし、本件発明1~9は、甲1に記載された発明及び甲2~4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 令和6年10月18日付け取消理由通知(決定の予告)に採用しなかった申立理由について (1)申立理由3(サポート要件違反) ア 特許法第36条第6項第1号の判断手法について 特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。 同号は、いわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 イ 本件発明が解決しようとする課題について 本件明細書の段落【0007】に基づいて、「低温から高温までの広い温度範囲において優れた柔軟性を有するものであって、特にアルミニウム基材との密着性に優れ、構造用接着剤として好適な硬化性樹脂組成物を提供する」ことであると認める(以下、「本件発明の課題」という。)。 ウ 本件発明1について 本件発明1が、(A)エポキシ樹脂、(B)ウレタン構造を有する化合物、及び(C)潜在性硬化剤を含有する硬化性樹脂組成物において、エポキシ樹脂としてジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含有し、(A)エポキシ樹脂と(B)ウレタン構造を有する化合物との総和に対するジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の含有量が適量であることで、本件発明の課題を解決するか否か、以下確認する。 本件明細書は、エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂又はブロックウレタン、並びに潜在性硬化剤を含有する硬化性樹脂組成物であって、エポキシ樹脂としてジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含有することで、アルミニウム基材との密着性に優れること(【0008】)、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂としてジシクロペンタジエンから誘導されるトリシクロデカン骨格を有するエポキシ樹脂を制限なく用いることができ、その中でも式(I)で表されるエポキシ樹脂を含有することで硬化性樹脂組成物のアルミニウム基材への密着性が優れたものであること(【0012】~【0014】)、ウレタン変性エポキシ樹脂又はブロックウレタンを使用することで優れた強度の硬化物が得られること(【0017】)、硬化性樹脂組成物におけるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の含有量がエポキシ樹脂及びウレタン変性エポキシ樹脂又はブロックウレタンの合計100質量部中1~20質量部であることでアルミニウム基材との密着性改善効果、十分な強度が得られること(【0041】)、潜在性硬化剤として、特にジシアンジアミドを用いると硬化性樹脂組成物の硬化速度が速くなること(【0042】)が記載されている。 そして、実施例2~5では、(A)エポキシ樹脂(アデカレジンEP-4088S)、(B)ウレタン構造を有する化合物である(B1)ウレタン変性エポキシ樹脂(UEP1)、(C)潜在性硬化剤(ジシアンジアミド)を含有し、硬化性樹脂組成物におけるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の含有量が適量であるエポキシ樹脂組成物が優れたAl/Al剥離強度を示すこと(当審注:実施例1はジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の含有量が少ないため検討外とした。)、実施例6~8では、(A)エポキシ樹脂(アデカレジンEP-4088S)、(B)ウレタン構造を有する化合物である(B2)ブロックウレタン(BU1)、(C)潜在性硬化剤(ジシアンジアミド)を含有し、硬化性樹脂組成物におけるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の含有量が適量であるエポキシ樹脂組成物が優れたAl/Al剥離強度を示すことを把握できる。 以上を踏まえると、本件発明1は、(A)エポキシ樹脂、(B)ウレタン構造を有する化合物、及び(C)潜在性硬化剤を含有する硬化性樹脂組成物において、エポキシ樹脂としてジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含有し、(A)エポキシ樹脂と(B)ウレタン構造を有する化合物との総和に対するジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の含有量が適量であることで、実施例2~8に示すように、本件発明の課題を解決することが理解できる。 してみると、本件発明1は、本件明細書の発明の詳細な説明により、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 よって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載されたものである。 エ 本件発明2~9について 本件発明2、3、6、9は、本件発明1と共通している発明特定事項、つまり(A)エポキシ樹脂、(B)ウレタン構造を有する化合物、及び(C)潜在性硬化剤を含有する硬化性樹脂組成物において、エポキシ樹脂としてジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含有し、(A)エポキシ樹脂と(B)ウレタン構造を有する化合物との総和に対するジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の含有量が適量であることを有するものであるから、上記ウに示したとおり、本件発明1と同様に、本件発明の課題を解決することが理解できる。 また、本件発明1、2、3、6を直接又は間接的に引用する本件発明4、5、7、8についても同様である。 よって、本件発明2~9は、発明の詳細な説明に記載されたものである。 オ 特許異議申立書における申立人の主張について 申立人は、特許異議申立書第31頁~第32頁において、本件特許の実施例は、請求項1で記載される(A)エポキシ樹脂(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)として、アデカレジンEP-4088S((株)ADEKA製)、(B1)ウレタン変性エポキシ樹脂として、特定の原料からなるウレタン変性エポキシ樹脂(UEP1)又は(B2)ブロックウレタンとして、特定の原料からなるブロックウレタン(BU1)、(C)潜在性硬化剤として、ジシアンジアミドを用いた実施例しかないにもかかわらず、請求項1で規定される(A)エポキシ樹脂(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、(B1)ウレタン変性エポキシ樹脂又は(B2)ブロックウレタン、(C)潜在性硬化剤まで拡張乃至一般化できないし、拡張乃至一般化できるというためには明瞭な課題解決メカニズム等について記載されているか、該明瞭な課題解決メカニズム等が技術常識であることが必要である旨主張している。 まず、サポート要件の判断は、上記アに示した基準に則って行われるものであるところ、上記ウ、エに示したように、本件発明1~9は、エポキシ樹脂、ウレタン構造を有する化合物、及び潜在性硬化剤を含有する硬化性樹脂組成物であって、エポキシ樹脂としてジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含有し、エポキシ樹脂とウレタン構造を有する化合物との総和に対するジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の含有量が適量であることで、本件発明の課題を解決するものである。 ついで、各成分を個別に見ていくと、本件明細書には、(A)エポキシ樹脂として、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂であること、該ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂がジシクロペンタジエンから誘導されるトリシクロデカン骨格を有するエポキシ樹脂を含み、その例示化合物(市販品)が記載されている(【0012】)。 同様に、(B1)ウレタン変性エポキシ樹脂として、(a)エポキシ樹脂と、(b)イソシアネート(NCO)含有量が0.1~10質量%であるポリウレタンとを反応させて得られるウレタン変性エポキシ樹脂であって、(b)ポリウレタンが(b-1)ポリヒドロキシ化合物と、(b-2)ポリイソシアネート化合物とを、(b-2)ポリイソシアネート化合物が過剰になる量で反応させて得られたものであり、(a)エポキシ樹脂、(b-1)ポリヒドロキシ化合物、(b-2)ポリイソシアネート化合物が各々例示され、ポリウレタンの製造方法が記載されている(【0018】~【0029】)。 同様に、(B2)ブロックウレタンとして、(B2A)イソシアネート含有量が0.1~10質量%であるポリウレタンを、(B2B)ブロック化剤でブロックして得られるものであって、(B2A)成分であるポリウレタンが、(c-1)ポリヒドロキシ化合物と(c-2)ポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるものであり、(c-1)ポリヒドロキシ化合物、(c-2)ポリイソシアネート化合物が各々例示され、ブロックウレタンの製造方法が記載されている(【0030】~【0039】)。 同様に、(C)潜在性硬化剤として、ジシアンジアミド、変性ポリアミン、ヒドラジド追、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、三フッ化ホウ素アミン錯塩及びメラミンからなる群から選ばれる少なくとも一種を用いること、その他、グアナミン類、イミダゾール類等も用いること、ジシアンジアミドが硬化性樹脂組成物の硬化速度が速くなるため好ましいこと、変性ポリアミン等の具体例が、それぞれ記載されている(【0042】~【0048】)。 そして、実施例では、上述の各成分のうち、代表的な1種を用いて試験を行い、アルミニウム基材との密着性に優れるという効果を示している。 これらの記載によると、実施例では各成分のうち、代表的な1種しか実際に試験していないところ、各成分には実施例で用いた代表的な1種と同列に、具体的な例示化合物が上述のように本件明細書には記載されており、それらは置換可能なものである。そして、上記ウ、エに示したように、エポキシ樹脂、ウレタン構造を有する化合物、及び潜在性硬化剤を含有する硬化性樹脂組成物であって、エポキシ樹脂としてジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含有し、エポキシ樹脂とウレタン構造を有する化合物との総和に対するジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の含有量が適量であることで、本件発明の課題を解決するものであるから、例えば(A)エポキシ樹脂であれば、エポキシ樹脂として本件明細書に記載された、いずれのものを用いた場合であっても、実施例と同様に本件発明の課題を解決し得ると解され、拡張乃至一般化することは問題ない。 さらに、申立人は、拡張乃至一般化するにあたり、明瞭な課題解決メカニズムが明らかでなければならないとも主張するが、拡張乃至一般化については上述のとおりであるし、明瞭な課題解決メカニズムが明らかにならなければ、本件明細書から、本件発明の課題が解決することが理解できないものであるとはいえず、必ずしも明瞭な課題解決メカニズムが必要なものではないから、サポート要件を満たさないという主張には理由がない。 よって、申立人の主張は採用できない。 (2)申立理由4(実施可能要件違反)について ア 特許法第36条第4項第1号の判断手法について 特許法第36条第4項は、「前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定され、その第1号において、「経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に、明確かつ十分に記載したものであること。」と規定している。 特許法第36条第4項第1号は、発明の詳細な説明のいわゆる実施可能要件を規定したものであって、本件発明1~9は物(組成物)の発明であるところ、物の発明では、その物を作り、かつ、その物を使用する具体的な記載が発明の詳細な説明にあるか、そのような記載がない場合には、明細書及び図面の記載及び出願時の技術常識に基づき、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その物を作り、その物を使用することができる程度にその発明が記載されていなければならないと解される。 イ 本件発明1について 本件発明1は、(A)エポキシ樹脂、(B)ウレタン構造を有する化合物、及び(C)潜在性硬化剤を含有する硬化性樹脂組成物において、エポキシ樹脂としてジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含有し、(A)エポキシ樹脂と(B)ウレタン構造を有する化合物との総和に対するジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の含有量が適量であるものである。 そして、本件明細書には、(A)エポキシ樹脂については段落【0012】~【0016】に、(B)ウレタン変性エポキシ樹脂については段落【0017】~【0041】に、及び(C)潜在性硬化剤については段落【0042】~【0049】に、それぞれ使用する化合物及びその入手方法や製造方法、これら各成分の使用量について記載されており、実施例でも実際に硬化性樹脂組成物を製造し、アルミニウム基材との密着性を確認している。 してみると、本件明細書の実施例が(A)エポキシ樹脂、(B)ウレタン変性エポキシ樹脂、及び(C)潜在性硬化剤として、代表的な1種の化合物を特定量で用いた場合しか示していなかったとしても、本件明細書に、各成分として具体的に例示された化合物及びそれらの使用量が記載されていることから、代表的な1種の化合物と置換可能な例示された化合物を選択して、実施例と同様の手順を踏まえることで当業者が実施することができるものであり、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤や、複雑高度な実験等を要して、本件発明1の硬化性樹脂組成物を製造できないものであるとはいえない。 ウ 本件発明2~9について 本件発明2、3、6、9は、本件発明1と共通している発明特定事項、つまり(A)エポキシ樹脂、(B)ウレタン構造を有する化合物、及び(C)潜在性硬化剤を含有する硬化性樹脂組成物において、エポキシ樹脂としてジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含有し、(A)エポキシ樹脂と(B)ウレタン構造を有する化合物との総和に対するジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の含有量が適量であることを有するものである。 してみると、本件発明2、3、6、9は、本件発明1と同様に製造可能であるといえる。 また、本件発明1、2、3、6を直接又は間接的に引用する本件発明4、5、7、8についても同様である。 よって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件に適合するものといえる。 エ 特許異議申立書における申立人の主張について 申立人は、特許異議申立書第32頁の末3行において、上記(1)オに示したのと同様の理由をもとに、本件明細書には、請求項1に係る発明の全範囲において当業者が実施できるように記載されているとはいえない旨主張している。 そこで検討する。 上記(1)オに示したように、本件明細書には、各成分として様々なものが記載されており、実施例では、その一例として、代表的な1種ずつを含有する硬化性樹脂組成物を用いて密着試験を行っていることから、上記代表的な1種に代えて、本件明細書中で置換可能に例示された化合物を用いて硬化性樹脂組成物とし、同様に密着試験を行うことは当業者に過度な試行錯誤を要さないものといえる。 また、必ずしも明瞭な課題解決メカニズムがなくとも、上記イに示したように実施可能なものといえるから、申立人の主張は採用できない。 第6 むすび 以上のとおり、本件特許の請求項1~9に係る特許は、当審において通知した令和6年10月18日付け取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700719

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