特許異議申立
2023-701379
高純度マンガンの製造方法および高純度マンガン
- 審判番号
- 2023-701379
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-219587
- 登録番号
- 7298893
- 請求日
- 2023年12月27日
- 審決日
- 2024年03月29日
- 公報発行日
- 2024年05月31日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社 大阪アサヒメタル工場
- 【権利者代理人】北野 修平
- 【権利者代理人】田中 勝也
- 【権利者代理人】南部 史
- 【権利者代理人】青木 覚史
- 【異議申立人】安藤 宏
- 審判長/審判官
- 審判長 粟野 正明
- 審判官 井上 猛
- 審判官 山口 大志
- 分類
- P1652.537-Y (C22B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第113条、特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7298893号発明「高純度マンガンの製造方法および高純度マンガン」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7298893号の請求項6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7298893号(請求項の数8。以下、「本件特許」という。)は、令和1年12月4日を出願日とする出願(特願2019-219587号)に係るものであって、令和5年6月19日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、令和5年6月27日である。)。
その後、令和5年12月27日に、本件特許の請求項6に係る特許に対して、特許異議申立人である安藤宏(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~8に係る発明は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち、請求項6に係る発明は、以下のとおりのものである(以下、「本件発明6」という。また、本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。
【請求項6】
酸素の含有量が3質量ppm以下であり、
ホウ素の含有量が3質量ppm以下である、高純度マンガン。
第3 特許異議の申立ての理由の概要
本件特許の請求項6に係る特許は、下記1のとおり、特許法113条4号に該当する。証拠方法は、甲第1号証~甲第3号証(以下、単に「甲1」等という。下記2を参照。)である。
1 申立理由1(サポート要件)
本件発明6については、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号に適合するものではないから、本件特許の請求項6に係る特許は、同法113条4号に該当する。
2 証拠方法
・甲1 特開2002-285373号公報
・甲2 国際公開第2015/060018号
・甲3 本件特許に係る出願の審査において令和5年5月18日に提出された意見書
第4 当審の判断
以下に述べるように、特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項6に係る特許を取り消すことはできない。
1 申立理由1(サポート要件)
(1)本件発明6について
ア 本件明細書の記載(【0002】~【0004】)によれば、本件発明6が解決しようとする課題は、「酸素濃度およびホウ素濃度を十分に低減させた高純度マンガンを提供すること」であると認められる。
イ 本件明細書の記載及び図面(【0009】~【0010】、【0015】、【0017】~【0030】、【0037】~【0051】、図1、図2)によれば、上記アの課題は、高純度マンガンにおいて、「酸素の含有量が3質量ppm以下であり、ホウ素の含有量が3質量ppm以下である」との要件を備えることによって、解決できることが理解できる。
ウ 以上のとおり、本件明細書の記載を総合すれば、上記イの要件を備えた本件発明6は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであって、当業者が出願時の技術常識に照らして発明の詳細な説明の記載により上記アの課題を解決できると認識できる範囲のものということができる。
したがって、本件発明6については、特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するものである。
(2)申立人の主張について
ア 申立人は、本件発明6は、「酸素の含有量が3質量ppm以下であり、ホウ素の含有量が3質量ppm以下である、高純度マンガン。」であるところ、
(ア)本件明細書の発明の詳細な説明の表1には、実施例1~9の高純度マンガンの不純物濃度として、酸素について、「1」、「0.6」、「0.8」、「2.5」、「2.1」、「3」、「<1」、「<1」、「<1」(質量ppm)、ホウ素について、「2.9」、「2」、「2.6」、「2.4」、「3」、「2.2」、「1.6」、「1.2」、「0.8」(質量ppm)との値が記載されているから、当業者は、本件明細書の発明の詳細な説明には、酸素あるいはホウ素が0質量ppmである高純度マンガンの発明が記載されているとは解せず、1質量ppmよりは小さいとしても何らかの濃度の酸素及び一定量のホウ素を含んだ高純度マンガンの発明が記載されていると解するといえる、
(イ)本件発明6の高純度マンガンは、高純度マンガンを得る方法において、あえて、特定量の酸素の存在下かつ特定の操作条件下で熱処理を実施することで、原料マンガンの表面にマンガンの酸化膜を形成し、原料マンガン中のホウ素を酸化膜に捕捉させ、マンガン蒸気に混入するホウ素を低減することによって得られるものであるから、本件発明6の高純度マンガンの酸素含有量は、従来のものより小さくなる要因はなく、ゼロになることはなく、従来法における高純度マンガンでも、酸素は3質量ppmよりは小さいとしても含まれていたといえるから、本件発明6の高純度マンガンでも、3質量ppmよりは小さいとしても含まれている、
として、酸素及びホウ素の含有量の上限のみ規定し、下限を規定しない本件発明6は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明ではないと主張する。
イ 申立人の上記アの主張は、本件発明6が、酸素及びホウ素の含有量について、ゼロの場合を包含しているとの認識を前提とするものと解される。
しかしながら、一般に、高純度金属には各種の不純物元素が含まれているところ、これらの不純物元素の含有量をゼロとすることは非常に困難であるため、不可避的に一定程度の量が存在していることは、技術常識であり、当業者にとって自明の事項である。そして、このことは、本件発明6に係る高純度マンガンにおける酸素及びホウ素についても、同様と解される。
そうすると、本件発明6が「酸素の含有量が3質量ppm以下であり、ホウ素の含有量が3質量ppm以下である」と特定していることから、形式的には、酸素及びホウ素の含有量がゼロの場合も排除していないと解する余地があるとしても、技術常識に照らして、当業者が、本件発明6における酸素及びホウ素の含有量がゼロであると解することはなく、不可避的に一定程度の量が存在していると解するものといえる。
以上のとおりであるから、申立人の主張は、前提において失当であり、採用できない。
(3)まとめ
したがって、申立理由1(サポート要件)によっては、本件特許の請求項6に係る特許を取り消すことはできない。
第5 むすび
以上のとおり、特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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