特許異議申立
2023-700365
固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法
- 審判番号
- 2023-700365
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-119940
- 登録番号
- 7150271
- 請求日
- 2023年04月11日
- 審決日
- 2024年03月29日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社片山化学工業研究所
- 【権利者代理人】弁理士法人WisePlus
- 【権利者】ナルコジャパン合同会社
- 【権利者代理人】弁理士法人WisePlus
- 【異議申立人】金田 綾香
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 猛
- 審判官 佐藤 陽一
- 審判官 土屋 知久
- 分類
- P1651.113-YAA(C22B) / P1651.121-YAA(C22B) / P1651.537-YAA(C22B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第126条第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7150271号発明「固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7150271号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、〔3~5〕、〔6~8〕について訂正することを認める。
特許第7150271号の請求項3~8に係る特許を維持する。
特許第7150271号の請求項1、2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7150271号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、平成30年 6月25日(優先権主張 平成30年 2月 6日)の出願(特願2018-119940号。以下、「本願」という。)であって、令和 4年 9月30日にその特許権の設定登録がなされ、同年10月11日にその特許掲載公報が発行されたものである。
その後、令和 5年 4月11日付けで、特許異議申立人 金田 綾香(以下、「申立人」という。)により、本件特許の請求項1~5(全請求項)に係る特許に対して特許異議の申立てがされた。
本件特許異議の申立てにおける手続の経緯は、以下のとおりである。
令和 5年 4月11日 :特許異議の申立て
9月12日付け:取消理由通知
11月 9日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提
出
6年 1月 9日付け:手続補正指令(方式)
2月 8日 :特許権者による手続補正書(方式)の提出
なお、下記第2で述べるとおり、令和 6年 2月 8日提出の手続補正書(方式)により補正された、令和 5年11月 9日提出の訂正請求書による訂正は、実質的に一部の請求項の削除のみであり、特許法第120条の5第5項ただし書に規定される、「特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情があるとき」といえるから、申立人に意見書を提出する機会を与えないこととした。
第2 訂正請求について
1 訂正請求の趣旨
令和 6年 2月 8日提出の手続補正書(方式)(手続補正指令(方式)により補正を命じられた事項について補正するものである。)により補正された、令和 5年11月 9日になされた訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)の趣旨は、特許第7150271号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを求める、というものである。
2 訂正の内容
本件訂正請求に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「高分子吸水剤の吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)が、1.2以上2.2以下である請求項1又は2に記載の固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、「固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法であって、前記固体燃料及び/又は鉄鋼原料に対し、高分子吸水剤を接触させる工程を含み、前記高分子吸水剤の保水量が320g/g以下であり、前記固体燃料及び/又は鉄鋼原料は、石炭、コークス、鉄鉱石、石灰石、焼結鉱、製鉄所ダスト、木質チップ、木質ペレット、RDF及びRPFからなる群より選択される少なくとも1種を含み、前記高分子吸水剤の吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)が、1.2以上2.2以下であることを特徴とする固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法。」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1、2又は3に記載の固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法。」と記載されているのを、引用関係を整理し、「請求項3に記載の固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法。」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1、2、3又は4に記載の固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法。」と記載されているのを、引用関係を整理し、「請求項3又は4に記載の固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法。」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項3に「高分子吸水剤の吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)が、1.2以上2.2以下である請求項1又は2に記載の固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法。」とあるうち、請求項2を引用するものについて、独立形式に改め、「固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法であって、前記固体燃料及び/又は鉄鋼原料に対し、高分子吸水剤を接触させる工程を含み、前記高分子吸水剤の保水量が320g/g以下であり、前記固体燃料及び/又は鉄鋼原料は、石炭、コークス、鉄鉱石、石灰石、焼結鉱、製鉄所ダスト、木質チップ、木質ペレット、RDF及びRPFからなる群より選択される少なくとも1種を含み、前記高分子吸水剤を接触させる前における前記固体燃料及び/又は鉄鋼原料の水分含有量が、前記固体燃料及び/又は鉄鋼原料100質量部に対し、5質量部以上30質量部以下であり、前記高分子吸水剤の吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)が、1.2以上2.2以下であることを特徴とする固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法。」と記載し、新たに請求項6とする。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1、2又は3に記載の固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法。」とあるうち、請求項1及び2との引用関係を解消し、引用する請求項3のうち請求項2を引用するものについて、新たな請求項6との記載に改め、「請求項6に記載の固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法。」と記載し、新たに請求項7とする。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1、2、3又は4に記載の固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法。」とあるうち、引用する請求項1及び2との引用関係を解消し、引用する請求項3のうち請求項2を引用するものについて新たな請求項6との記載に改め、また、引用する請求項4のうち請求項2を引用する請求項3を引用するものについて新たな請求項7との記載に改め、「請求項6又は7に記載の固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法。」と記載し、新たに請求項8とする。
3 訂正の適否についての当審の判断
(1)訂正事項1に係る訂正について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項1に係る訂正は、特許請求の範囲の請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無について
訂正事項1に係る訂正は、請求項1を削除する訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
上記アのとおり、訂正事項1に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(2)訂正事項2に係る訂正について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項2に係る訂正は、特許請求の範囲の請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無について
訂正事項2に係る訂正は、請求項2を削除する訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
上記アのとおり、訂正事項2に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(3)訂正事項3に係る訂正について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項3に係る訂正は、本件訂正前の請求項3が請求項1又は2の記載を引用するものであるところ、訂正事項1、2で請求項1、2が削除されて請求項1、2の記載を引用できなくなったことに伴い、請求項2を引用しないものとした上で、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるための訂正であるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無について
上記アのとおり、訂正事項3に係る訂正は、本件訂正前の請求項3が請求項1又は2の記載を引用するものであるところ、実質的に請求項1を引用するものとするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
上記アのとおり、訂正事項3に係る訂正は、本件訂正前の請求項3が請求項1又は2の記載を引用するものであるところ、実質的に請求項1を引用するものとするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(4)訂正事項4、5に係る訂正について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項4、5に係る訂正は、本件訂正前の請求項4、5が請求項1、2の記載を引用するものであるところ、訂正事項1、2で請求項1、2が削除されて請求項1、2の記載を引用できなくなったことに伴い、削除された請求項1、2の記載を引用しているという不明瞭な状態を解消する訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無について
訂正事項4、5に係る訂正は、請求項4、5を請求項1、2の記載を引用しないものに改める訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
訂正事項4、5に係る訂正は、請求項4、5を請求項1、2の記載を引用しないものに改める訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(5)訂正事項6に係る訂正について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項6に係る訂正は、本件訂正前の請求項3が請求項1又は2の記載を引用するものであるところ、訂正事項1、2で請求項1、2が削除されて請求項1、2の記載を引用できなくなったことに伴い、請求項1を引用しないものとした上で、請求項2を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改め、新たな請求項6とする訂正であるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無について
上記アのとおり、訂正事項6に係る訂正は、本件訂正前の請求項3が請求項1又は2の記載を引用するものであるところ、実質的に新たな請求項6として請求項2を引用するものとするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
上記アのとおり、訂正事項6に係る訂正は、本件訂正前の請求項3が請求項1又は2の記載を引用するものであるところ、実質的に新たな請求項6として請求項2を引用するものとするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(6)訂正事項7に係る訂正について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項7に係る訂正は、本件訂正前の請求項4が請求項1、2又は3の記載を引用するものであるところ、訂正事項1、2で請求項1、2が削除されて請求項1、2の記載を引用できなくなったことに伴い、削除された請求項1、2の記載を引用しているという不明瞭な状態を解消する訂正であり、また、請求項3の記載を引用するものについては、訂正事項6で請求項2を引用する請求項3が新たな独立形式の請求項6へ改められたことに伴い、請求項6の記載を引用する新たな請求項7とする訂正であるから、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無について
訂正事項7に係る訂正は、実質的に、本件訂正前の請求項4が請求項1、2の記載を引用しないものに改める訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
訂正事項7に係る訂正は、実質的に、本件訂正前の請求項4が請求項1、2の記載を引用しないものに改める訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(7)訂正事項8に係る訂正について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項8に係る訂正は、本件訂正前の請求項5が請求項1、2、3又は4の記載を引用するものであるところ、訂正事項1、2で請求項1、2が削除されて請求項1、2の記載を引用できなくなったことに伴い、削除された請求項1、2の記載を引用しているという不明瞭な状態を解消する訂正であり、また、請求項3の記載を引用するものについては、訂正事項6で請求項2を引用する請求項3が新たな独立形式の請求項6へ改められ、訂正事項7で請求項3を引用する請求項4が新たな請求項7へ改められたことに伴い、請求項6、7の記載を引用する新たな請求項8とする訂正であるから、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無について
訂正事項8に係る訂正は、実質的に、本件訂正前の請求項5が請求項1、2の記載を引用しないものに改める訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
訂正事項8に係る訂正は、実質的に、本件訂正前の請求項5が請求項1、2の記載を引用しないものに改める訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(8)独立特許要件について
本件特許異議の申立ては、本件訂正前の請求項1~5について特許異議の申立てがされているので、本件訂正前の請求項1~5に対応する、訂正事項1~8に係る訂正後の請求項1~8に係る発明については、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
4 一群の請求項、別の訂正単位とする求めについて
本件訂正前の請求項2~5は、それぞれ請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであり、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1~5は一群の請求項である。
そして、本件訂正請求は、一群の請求項ごとにされたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
また、訂正後の請求項3~5、6~8のそれぞれについては、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することが求められている。
5 訂正請求についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、別の訂正単位とする求めを踏まえ、特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、〔3~5〕、〔6~8〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
本件訂正は、上記第2で検討したとおり適法なものであるから、本件特許の請求項1~8に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明8」といい、総称して「本件発明」ともいう。)は、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。なお、下線は訂正箇所を示す。
「【請求項1】
削除
【請求項2】
削除
【請求項3】
固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法であって、
前記固体燃料及び/又は鉄鋼原料に対し、高分子吸水剤を接触させる工程を含み、
前記高分子吸水剤の保水量が320g/g以下であり、
前記固体燃料及び/又は鉄鋼原料は、石炭、コークス、鉄鉱石、石灰石、焼結鉱、製鉄所ダスト、木質チップ、木質ペレット、RDF及びRPFからなる群より選択される少なくとも1種を含み、
前記高分子吸水剤の吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)が、1.2以上2.2以下であることを特徴とする固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法。
【請求項4】
高分子吸水剤が、固体燃料及び/又は鉄鋼原料100質量部に対し、0.01質量部以上2.00質量部以下で添加される請求項3に記載の固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法。
【請求項5】
高分子吸水剤は、ポリアクリル酸ナトリウム塩である請求項3又は4に記載の固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法。
【請求項6】
固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法であって、
前記固体燃料及び/又は鉄鋼原料に対し、高分子吸水剤を接触させる工程を含み、
前記高分子吸水剤の保水量が320g/g以下であり、
前記固体燃料及び/又は鉄鋼原料は、石炭、コークス、鉄鉱石、石灰石、焼結鉱、製鉄所ダスト、木質チップ、木質ペレット、RDF及びRPFからなる群より選択される少なくとも1種を含み、
前記高分子吸水剤を接触させる前における前記固体燃料及び/又は鉄鋼原料の水分含有量が、前記固体燃料及び/又は鉄鋼原料100質量部に対し、5質量部以上30質量部以下であり、
前記高分子吸水剤の吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)が、1.2以上2.2以下であることを特徴とする固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法。
【請求項7】
高分子吸水剤が、固体燃料及び/又は鉄鋼原料100質量部に対し、0.01質量部以上2.00質量部以下で添加される請求項6に記載の固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法。
【請求項8】
高分子吸水剤は、ポリアクリル酸ナトリウム塩である請求項6又は7に記載の固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法。」
第4 特許異議の申立ての理由及び取消理由の概要
1 特許異議の申立ての理由の概要
申立人は、証拠方法として、後記する甲第1号証~甲第27号証を提出し、以下の申立理由1~4により、本件訂正前の請求項1~5に係る特許は取り消されるべきものである旨主張している。
(1)申立理由1-1(新規性)、申立理由2-1(進歩性)(取消理由として不採用)
ア 本件訂正前の請求項1、2、4、5に係る発明は、甲第1号証(補助的に甲第7~9号証)に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
イ 本件訂正前の請求項3に係る発明は、甲第1号証(補助的に甲第7~9号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件訂正前の請求項1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由1-2(新規性)、申立理由2-2(進歩性)(取消理由として一部採用)
ア 本件訂正前の請求項1、2、4に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
イ 本件訂正前の請求項3に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
ウ 本件訂正前の請求項5に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1、5、6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件訂正前の請求項1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)申立理由1-3(新規性)、申立理由2-3(進歩性)(取消理由として一部採用)
ア 本件訂正前の請求項1、2、4、5に係る発明は、甲第3号証(補助的に甲第4、24、27号証)に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
イ 本件訂正前の請求項3に係る発明は、甲第3号証(補助的に甲第4、24、27号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件訂正前の請求項1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(4)申立理由1-4(新規性)、申立理由2-4(進歩性)(取消理由として一部採用)
ア 本件訂正前の請求項1、5に係る発明は、甲第5号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
イ 本件訂正前の請求項2、4に係る発明は、甲第5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
ウ 本件訂正前の請求項2、4に係る発明は、甲第5号証に記載された発明及び甲第22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
エ 本件訂正前の請求項3に係る発明は、甲第5号証に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件訂正前の請求項1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(5)申立理由1-5(新規性)、申立理由2-5(進歩性)(取消理由として不採用)
ア 本件訂正前の請求項1、2、4、5に係る発明は、甲第6号証(補助的に甲第9号証)に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
イ 本件訂正前の請求項3に係る発明は、甲第6号証(補助的に甲第9号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件訂正前の請求項1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(6)申立理由1-6(新規性)、申立理由2-6(進歩性)(取消理由として不採用)
ア 本件訂正前の請求項1~3、5に係る発明は、甲第10号証(補助的に甲第21、23、25号証)に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
イ 本件訂正前の請求項4に係る発明は、甲第10号証(補助的に甲第21、23、25号証)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
ウ 本件訂正前の請求項4に係る発明は、甲第10号証(補助的に甲第21、23、25号証)に記載された発明及び甲第22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
エ 本件訂正前の請求項5に係る発明は、甲第10号証(補助的に甲第21、23、25号証)に記載された発明及び甲第1、5、6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件訂正前の請求項1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(7)申立理由1-7(新規性)、申立理由2-7(進歩性)(取消理由として一部採用)
ア 本件訂正前の請求項1、5に係る発明は、甲第11号証(補助的に甲第12、13、24号証)に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
イ 本件訂正前の請求項2、4に係る発明は、甲第11号証(補助的に甲第12、13、24号証)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
ウ 本件訂正前の請求項2、4に係る発明は、甲第11号証(補助的に甲第12、13、24号証)に記載された発明及び甲第22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
エ 本件訂正前の請求項3に係る発明は、甲第11号証(補助的に甲第12、13、24号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
オ 本件訂正前の請求項5に係る発明は、甲第11号証(補助的に甲第12、13、24号証)に記載された発明及び甲第1、5、6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件訂正前の請求項1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(8)申立理由1-8(新規性)、申立理由2-8(進歩性)(取消理由として一部採用)
ア 本件訂正前の請求項1、2、4に係る発明は、甲第14号証(補助的に甲第4号証)に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
イ 本件訂正前の請求項3に係る発明は、甲第14号証(補助的に甲第4号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
ウ 本件訂正前の請求項5に係る発明は、甲第14号証(補助的に甲第4号証)に記載された発明及び甲第1、5、6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件訂正前の請求項1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(9)申立理由1-9(新規性)、申立理由2-9(進歩性)(取消理由として一部採用)
ア 本件訂正前の請求項1、2、4、5に係る発明は、甲第26号証(補助的に甲第4、24、27号証)に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
イ 本件訂正前の請求項3に係る発明は、甲第26号証(補助的に甲第4、24、27号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件訂正前の請求項1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(10)申立理由3(サポート要件)(取消理由として不採用)
ア 本願の願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)の記載によれば、本件発明の課題を解決するためには、本件訂正前の請求項1に記載の高分子吸水剤の保水量の要件(320g/g以下)を充足することに加えて、改質の対象である固体燃料及び/又は鉄鋼原料の水分含有量を、実施例で効果を奏することが示された、当該固体燃料及び/又は鉄鋼原料100質量部に対して20質量部以上の範囲に特定する必要があると解釈されるから、当該特定のない本件訂正前の請求項1~5は、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の水分含有量に関する本件の課題を解決するための要件を充足しておらず、本件発明の課題を解決できない発明が含まれる。
したがって、本件訂正前の請求項1~5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
イ 本件明細書の記載によれば、高分子吸水剤の添加量が0.01重量部を大きく下回る場合、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の十分な脱水ができず、本件の課題を解決しないことは明らかであるから、高分子吸水剤の添加量を規定しない本件訂正前の請求項1~3、5には、本件課題を解決しない範囲が含まれる。
したがって、本件訂正前の請求項1~3、5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(11)申立理由4(明確性要件)(取消理由として不採用)
本件訂正前の請求項1は、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の水分含有量を規定していないところ、本件明細書の段落【0012】には、「本願明細書において記載される用語「水分含有量の高い固体燃料及び/又は鉄鋼原料」には、加水量が多く固体燃料及び/又は鉄鋼原料がスラリー化しているものは含まれない。・・・一般的に、固体燃料及び/又は鉄鋼原料100質量部に対し、水分含有量が30質量部より大きい固体燃料及び/又は鉄鋼原料は、スラリー化し、」と記載されていることから、水分含有量を規定しない本件訂正前の請求項1の固体燃料及び/又は鉄鋼原料の範囲は明確でない。
したがって、本件訂正前の請求項1、3~5に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(12)証拠方法
・甲第1号証:特開昭61-222600号公報
・甲第2号証:特開昭61-60784号公報
・甲第3号証:特開平3-188192号公報
・甲第4号証:特開2010-35973号公報
・甲第5号証:特開昭59-25871号公報
・甲第6号証:特表平4-500701号公報
・甲第7号証:増田房義著、「高分子新素材 One Point-4 高吸水性ポリマー」,共立出版株式会社,1988年4月5日,p.56~57
・甲第8号証:特開昭60-185550号公報
・甲第9号証:特公昭59-45695号公報
・甲第10号証:特開2009-149813号公報
・甲第11号証:特開昭63-241000号公報
・甲第12号証:特開昭63-97612号公報
・甲第13号証:特開平2-191679号公報
・甲第14号証:特開平4-66125号公報
・甲第15号証:国際公開2005/073469号
・甲第16号証:特開2004-257151号公報
・甲第17号証:特開2004-261662号公報
・甲第18号証:特開2005-445号公報
・甲第19号証:特開2003-199650号公報
・甲第20号証:特開2004-305141号公報
・甲第21号証:特開平10-295499号公報
・甲第22号証:柴田力著,「粉粒体精密供給技術」,株式会社アイピーシー,昭和61年5月30日,p.384,388
・甲第23号証:本願の審査段階において、特許権者が令和4年7月25日に提出した意見書
・甲第24号証:特開2014-226783号公報
・甲第25号証:Product Line 商品リスト 医薬・農薬用商品版,三洋化成工業株式会社,2016年6月8日,p.15~16
・甲第26号証:特開平3-43493号公報
・甲第27号証:特開2002-274975号公報
2 令和 5年 9月12日付けで通知した取消理由の概要
(1)取消理由1(新規性、進歩性)
本件訂正前の請求項1、2、4に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるか、本件訂正前の請求項1、2、4に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件訂正前の請求項1、2、4係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)取消理由2(新規性、進歩性)
本件訂正前の請求項1、2、4、5に係る発明は、甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるか、本件訂正前の請求項1、2、4、5に係る発明は、甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件訂正前の請求項1、2、4、5係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)取消理由3(新規性、進歩性)
本件訂正前の請求項1、5に係る発明は、甲第5号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるか、本件訂正前の請求項1、5に係る発明は、甲第5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件訂正前の請求項1、5係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(4)取消理由4(新規性、進歩性)
本件訂正前の請求項1、5に係る発明は、甲第11号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるか、本件訂正前の請求項1、5に係る発明は、甲第11号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件訂正前の請求項1、5係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(5)取消理由5(新規性、進歩性)
本件訂正前の請求項1、2、4に係る発明は、甲第14号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるか、本件訂正前の請求項1、2、4に係る発明は、甲第14号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件訂正前の請求項1、2、4係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(6)取消理由6(新規性、進歩性)
本件訂正前の請求項1、2、4、5に係る発明は、甲第26号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるか、本件訂正前の請求項1、2、4、5に係る発明は、甲第26号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件訂正前の請求項1、2、4、5係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
第5 当審の判断
以下に述べるように、特許異議申立書に記載した申立理由及び当審から通知した取消理由によっては、本件特許の請求項3~8に係る特許を取り消すことはできない。
1 申立理由1-1(新規性)、申立理由2-1(進歩性)
(1)甲第1号証に記載された発明
甲第1号証の記載(請求項1、5、7、第6ページ右上欄第5~9行、同左下欄第13行~第7ページ左上欄第7行)によれば、特に実施例3に着目すると、甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲1発明>
所定温度で非脆性である湿潤粒子集合体と集合体から自由水を吸収する水分吸収性ポリマー粒子を混合し、得られた混合物を前記温度で粉砕する方法であって、
前記湿潤粒子集合体が、全体に対して20重量%に相当する表面水分層を有する湿潤鉄鉱石であり、
前記自由水を吸収する水分吸収性ポリマー粒子は、60重量%のアクリルアミド、40重量%のアクリル酸ナトリウム及び0.025%のメチレンビスアクリルアミドのゲルコポリマー化により形成されたポリマー粒子であって、75~500ミクロンの乾燥粒子サイズと400のゲル容量を有するものであり、また、前記湿潤鉄鉱石重量に対して0.3%混合される、前記方法。
(2)本件発明3について
ア 本件発明3と甲1発明との対比・判断
(ア)対比
a 甲1発明における、「鉄鉱石」は、本件発明3における「鉄鉱石」(固体燃料及び/又は鉄鋼原料)に相当する。
b 甲1発明における、「自由水を吸収する水分吸収性ポリマー粒子」は、本件発明3における「高分子吸水剤」に相当する。
c 甲1発明において、「湿潤粒子集合体」である「湿潤鉄鉱石」と「集合体から自由水を吸収する水分吸収性ポリマー粒子を混合」することは、本件発明3における、「固体燃料及び/又は鉄鋼原料に対し、高分子吸水剤を接触させる工程」に相当する。
d 甲1発明によって、「湿潤鉄鉱石」は、「固体塊に凍結」することなく、「凍結しても形状を変えることができ」る(第7ページ左上欄第5~7行)から、鉄鉱石における何らかの性質が変化しているといえる。
e そうすると、本件発明3と甲1発明とは、以下の一致点1において一致するとともに、以下の相違点1-1、相違点1-2において相違する。
<一致点1>
「固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法であって、
前記固体燃料及び/又は鉄鋼原料に対し、高分子吸水剤を接触させる工程を含み、
前記固体燃料及び/又は鉄鋼原料は、石炭、コークス、鉄鉱石、石灰石、焼結鉱、製鉄所ダスト、木質チップ、木質ペレット、RDF及びRPFからなる群より選択される少なくとも1種を含む、
固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法。」である点。
<相違点1-1>
本件発明3は、「高分子吸水剤の保水量が320g/g以下」であるのに対し、甲1発明は、「水分吸収性ポリマー粒子」が「400のゲル容量を有する」点。
<相違点1-2>
本件発明3は、「高分子吸水剤の吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)が、1.2以上2.2以下」であるのに対し、甲1発明は、「水分吸収性ポリマー粒子」の「吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)」が不明である点。
(イ)判断
a 相違点1-1について
(a)甲第1号証には、甲1発明における「ゲル容量」について、「ポリマーのゲル容量(ポリマーg当りの吸収塩イオン水のg数)」との記載がある(第4ページ右下欄第12~13行)。(当審注:技術常識を踏まえると、上記「塩イオン水」は、「脱イオン水」の誤記又は誤訳と認められる。)また、申立人が上記「ゲル容量」の解釈のために参照した甲第9号証には、「ゲル容量」について、「交叉結合した高分子電解質の吸収力(高分子電解質1gにつきゲル化した溶液のg数)は合成尿(0.27N塩化ナトリウム溶液)を使用し次の方法で決定する。交叉結合をした高分子電解質の試料0.5gを計量して250mlのビーカーに入れ、0.27N塩化ナトリウム溶液(150ml)をビーカーに注入しそして時々撹拌しながら室温において2時間浸けておく。次いで膨潤した高分子電解質を炉過して集めそしてゲル容量をポリマー塩1gに対するゲル化溶液のg数として報告する。」と記載されている(第11欄第7~17行)。
ここで、本件発明3の「吸収倍率」は、JISK 7223「高吸水性樹脂の吸水性試験方法」に準拠し、高分子吸収剤をナイロンメッシュ製ティーパックに0.2g充填し、イオン交換水1000mL中に浸漬させ、浸漬開始から3時間後、ティーパックの底が傾斜するようにつるして10分間水切りを行い、その後重量を測定し、吸収倍率を計算により求めたものである(本件明細書の段落【0030】)。以下、同様である。
そうすると、甲1発明における「ゲル容量」は、本件発明3の「吸収倍率」と同等のものであると解される。
一方、本件発明3の「保水量」は、本件明細書の段落【0031】の、「上記吸収倍率試験後のティーパックを遠心分離機(Thermo社製 HN-SII)にかけ250Gで3分間脱水し、脱水後のティーパックの重量を測定し、保水量を求めた。」との記載によれば、吸収倍率試験後(高吸水性樹脂の吸水性試験後)のティーバッグを脱水した後の重量から求められる水分量である(以下、同様である。)から、「保水量」と「吸収倍率」との間に、「保水量」≦「吸収倍率」の関係があることは自明である(なお、甲第15~21号証にも同様の記載がある。)。
そうすると、甲1発明において、「水分吸収性ポリマー粒子」の「保水量」≦400g/gであると認められるものの、「保水量」≦320g/gであるとまではいえない。
ここで、申立人は、本件発明1は、「保水量」の範囲に関して、「固体燃料及び/又は鉄鋼原料の搬送性が向上する」との本件発明の効果を奏さない範囲を含むため、前記「保水量」の範囲を320g/g以下に制御することには臨界的意義がないことを前提に、ゲルにおいて、「保水量」、「吸水倍率」、「吸収倍率」および「ゲル容量」等の吸水量と、ゲル強度(吸水性樹脂の硬さ)との間には負の相関関係が存在し(甲第7号証の第56ページ、8号証の第2ページ左下欄)、過度に「保水量」、「吸水倍率」、「吸収倍率」および「ゲル容量」等の吸水量が大きい場合に、吸水性樹脂が柔らかくなって取り扱いに問題が生じ(甲第15号証の段落[0038]、甲第17号証の段落【0033】、甲第18号証の段落【0021】、甲第19号証の段落【0021】、甲第20号証の段落【0021】)、特に、甲第18号証の比較例1(保水量:720g/g)、甲第19号証の比較例1(保水量:720g/g)のように、「保水量」の大きい吸水性樹脂は、ゲル強度が低く、ヌメリ感(吸水後のゲルの付着性)が大きくなるため、吸水量が大きい場合に、吸水性樹脂が軟化し粘着性を有するため、当該吸水性樹脂を接触させた固体燃料及び/又は鉄鋼原料の流動性が低下するのは、当業者にとって技術常識であるところ、甲1発明は、本件発明と同じ課題を解決しているから、前記水分吸水性ポリマー粒子の「ゲル容量」、「吸収倍率」および「吸水倍率」の範囲を低い範囲に制御し、それに伴い、前記水分吸水性ポリマー粒子の「保水量」を、320g/g以下の低い値に制御する蓋然性が高い旨主張する。
しかしながら、甲第18号証の比較例1、甲第19号証の比較例1において生じたヌメリ感は、水可溶性成分含量が10重量%を超えたために生じたものである(甲第18号証の段落【0022】、甲第19号証の段落【0022】)から、吸水性樹脂の吸水量が大きい場合に、吸水性樹脂が軟化し粘着性を有するため、当該吸水性樹脂を接触させた固体燃料及び/又は鉄鋼原料の流動性が低下することが、当業者にとって技術常識であるとはいえず、申立人の上記主張は前提を欠くものであるから採用できない。仮に、申立人が主張する技術常識を前提としても、甲第1号証に記載の、所定温度で非脆性である湿潤粒子集合体と混合することで、得られた混合物を前記温度で粉砕可能とするために用いられる水分吸収性ポリマー粒子が、上記の問題を認識した上で選択されたポリマーであるかは不明であるから、上記水分吸水性ポリマー粒子の「保水量」が、320g/g以下の低い値に制御されているとは必ずしもいえない。
よって、相違点1-1は実質的な相違点である。
(b)甲第1号証には、「ゲル容量」について、「少なくとも25、一般的には少なくとも100、好ましくは少なくとも200となるようなものとする。この値は500にまですることができ、700にまですることができることも多いが、約1000以上の値は望ましくない。約300~700の値が最適である場合が多い。」との記載がある(第4ページ右下欄第13~第5ページ左上欄第1行)。
一方、甲1発明における「ゲル容量」は「400」であり、すでに上記最適な範囲である「約300~700」に含まれる値となっているから、上記の「ゲル容量」の数値範囲に係る記載が甲第1号証にあるとしても、上記の「400」という値をあえて「約300~700」に含まれる別の値に変更することが動機付けられるとはいえない。また、甲第1号証において、「ゲル容量」について、特に「320以下」が最適であると記載されているわけではないから、やはり「320以下」とすること(ひいては「保水量」を「320g/g以下」とすること)が動機付けられるとはいえない。この点、甲第16号証の段落【0033】、甲第21号証の段落【0005】に、吸水性樹脂の保水量/吸水量の比を0.55~1.00とすると離水が少ないこと、甲第22号証の第384、388ページに、炭酸カルシウム及び澱粉において、水分量が多くなるにつれて流動性指数が小さくなる(流動性が悪くなる)ことが記載されていても同様である。
よって、相違点1-2について検討するまでもなく、本件発明3は、甲第1号証(補助的に甲第7~9号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明4、5について
ア 本件発明4、5と甲1発明との対比・判断
本件発明4、5と甲1発明とを対比すると、少なくとも、上記相違点1-1において相違する。
よって、本件発明4、5は、甲第1号証(補助的に甲第7~9号証)に記載された発明であるとはいえない。
(4)本件発明6について
ア 本件発明6と甲1発明との対比・判断
本件発明6と甲1発明とを対比すると、少なくとも、上記相違点1-1において相違する。そして、上記相違点1-1についての判断は、上記(2)ア(イ)で検討したとおりである。
よって、本件発明6は、甲第1号証(補助的に甲第7~9号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(5)本件発明7、8について
ア 本件発明7、8と甲1発明との対比・判断
本件発明7、8と甲1発明とを対比すると、少なくとも、上記相違点1-1において相違する。
よって、本件発明7、8は、甲第1号証(補助的に甲第7~9号証)に記載された発明であるとはいえない。
(6)小括
以上のとおり、申立理由1-1(新規性)、申立理由2-1(進歩性)によっては、本件特許の請求項3~8に係る特許を取り消すことはできない。
2 申立理由1-2(新規性)、申立理由2-2(進歩性)、取消理由1(新規性、進歩性)
(1)甲第2号証に記載された発明
甲第2号証の記載(請求項1、第3ページ左上欄第4~15行、同左下欄第11~19行、同右下欄第20行~第4ページ左上欄第13行、第8図)によれば、特に実施例に着目すると、甲第2号証には、以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲2発明>
野外貯蔵ヤードに野積み堆積する、粒径20mm以下、含水量13重量%の石炭約1000tの積付けまたは払出し時に、吸水性樹脂からなり、吸水量が成形物1g当り50~200ccの吸水体成形物100kgを上記石炭中および/または石炭表面に散在させ、前記石炭の付着水分または降雨水を上記吸水体成形物に吸水せしめた後、該石炭から該吸水体成形物を分離する野積み堆積物の含水量低減方法。
(2)本件発明3について
ア 本件発明3と甲2発明との対比・判断
(ア)対比
a 甲2発明における、「石炭」は、本件発明3における「石炭」(固体燃料及び/又は鉄鋼原料)に相当する。
b 甲2発明における、「吸水性樹脂からな」る「吸水体成形物」は、「デンプン系、セルロース系、合成ポリマー系」を原料とするものであるから(第2ページ右下欄第1~11行)、本件発明3における「高分子吸水剤」に相当する。
c 甲2発明において、「吸水体成形物を」「石炭中および/または石炭表面に散在させ」ることは、本件発明3における、「固体燃料及び/又は鉄鋼原料に対し、高分子吸水剤を接触させる工程」に相当する。
d 甲2発明によって、石炭の含水量が低減することにより、石炭における何らかの性質が変化していることは自明である。
e そうすると、本件発明3と甲2発明とは、以下の一致点2において一致するとともに、以下の相違点2-1、相違点2-2において相違する。
<一致点2>
「固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法であって、
前記固体燃料及び/又は鉄鋼原料に対し、高分子吸水剤を接触させる工程を含み、
前記固体燃料及び/又は鉄鋼原料は、石炭、コークス、鉄鉱石、石灰石、焼結鉱、製鉄所ダスト、木質チップ、木質ペレット、RDF及びRPFからなる群より選択される少なくとも1種を含む、
固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法。」である点。
<相違点2-1>
本件発明3は、「高分子吸水剤の保水量が320g/g以下」であるのに対し、甲2発明は、「吸水性樹脂からな」る「吸水体成形物」の「吸水量が成形物1g当り50~200cc」である点。
<相違点2-2>
本件発明3は、「高分子吸水剤の吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)が、1.2以上2.2以下」であるのに対し、甲2発明は、「吸水性樹脂」の「吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)」が不明である点。
(イ)判断
a 相違点2-1について
甲2発明における「吸水量」は、吸水性樹脂からなる吸水体成形物1gが吸収する水の量であるから、本件発明3の「吸収倍率」と同等のものである。
そして、本件発明3の「保水量」は、吸収倍率試験後(高吸水性樹脂の吸水性試験後)のティーバッグを脱水した後の重量から求められる水分量であるから、「保水量」と「吸収倍率」との間に、「保水量」≦「吸収倍率」の関係があることは自明である。
そうすると、甲2発明において、「吸水性樹脂からな」る「吸水体成形物」の「保水量」は、水の比重を1とすると、200g/g以下であると認められ、この値は、本件発明3の「320g/g以下」を満たすものである。
よって、上記相違点2-1は実質的な相違点ではない。
b 相違点2-2について
甲2発明において、「吸水性樹脂からな」る「吸水体成形物」の「保水量」は、200g/g以下であるとしても、その具体的な値は不明であるから、「吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)」も不明である。
よって、上記相違点2-2は実質的な相違点である。
一方、甲第15号証には、水膨潤性止水材において、吸水性樹脂粒子(A)の保水量/吸水量の比を0.55~1.00とすると、止水材を積み重ねた時に離水せず、また崩れたりせず安定性が良好となることが記載されている(段落[0038])。甲第16号証には、土のう代替品において、吸水性樹脂(A)の保水量/吸水量の比を0.55~1.00とすると、吸水膨潤して土のう代替品としての役目をなし、積み重ねた場合にも離水が少ないことが記載されている(段落【0033】)。甲第17号証には、生ゴミ処理用水分調整剤において、吸水性樹脂(A)の保水量/吸水量の比を0.55~1.00とすると、生ゴミ中で機械的な圧力がかかった場合に吸収した水をはき出すことがないことが記載されている(段落【0034】)。甲第18号証には、吸水性樹脂入りバンドにおいて、吸水性樹脂の保水量/吸水量の比を0.55~1.00とすると、手で押さえたときにて離水しないことが記載されている(段落【0021】)。甲第19号証には、吸水性樹脂入りマットにおいて、吸水性樹脂の保水量/吸水量の比を0.55~1.00とすると、通常のペットや飼育動物等がくわえて振り回したり又それらの体重に対して離水しないことが記載されている(段落【0021】)。甲第20号証には、排泄物用処理材において、吸水性樹脂粒子(AA)の保水量/吸水量の比を0.55~1.00とすると、排泄物を一旦吸収した排泄物処理剤をペットや飼育動物等が軽く踏んだり抑えたりした場合に容易に排泄物が外部に滲み出たりしてペット等の毛が汚れたりしないことが記載されている(段落【0021】)。甲第21号証には、吸水性樹脂入りマットにおいて、吸水性樹脂の保水量/吸水量の比を0.55~1.00とすると、通常のペットや飼育動物等がくわえて振り回しても又それらの体重に対しても容易に離水することなく耐えることが記載されている(段落【0005】)。
しかしながら、上記甲第15~21号証に記載の技術事項は、甲2発明の野積み堆積物の含水量低減方法とは関連性の低い技術分野に係るものであるから、当該技術事項が、甲2発明の技術分野における技術常識であるとはいえないし、上記甲第15~21号証に記載の技術事項を考慮しても、甲2発明において、「吸水性樹脂からな」る「吸水体成形物」の「吸水量が成形物1g当り50~200cc」であること維持したままで、吸水性樹脂の「吸水量と保水量との比(吸水量/保水量)」を「1.2以上2.2以下」(保水量/吸水量の比を0.45~0.83)とすることが動機付けられるとはいえない。
そして、本件明細書の記載によれば、本件発明3の発明特定事項を備えることにより、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の流動性を向上でき、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の搬送時の取扱性を向上できるという効果を奏するものであるところ、そのような効果は、甲第2号証、及び甲第15~21号証の記載から当業者が予測し得ない格別顕著なものといえる。この点、甲第22号証の第384、388ページに、炭酸カルシウム及び澱粉において、水分量が多くなるにつれて流動性指数が小さくなる(流動性が悪くなる)ことが記載されていても同様である。
よって、本件発明3は、甲第2号証に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明4、5について
本件発明4は、本件発明3の記載を引用するものであり、本件発明3の発明特定事項をすべて備えるものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明3が甲第2号証に記載された発明であるとはいえない以上、本件発明4についても同様に、甲第2号証に記載された発明であるとはいえない。また、本件発明3が、甲第2号証に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明4についても同様に、甲第2号証に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
本件発明5は、本件発明3の記載を引用するものであり、本件発明3の発明特定事項をすべて備えるものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明3が、甲第2号証に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、甲第1号証の第5ページ左上欄第17行~右上欄第2行、甲第5号証の実施例1~3、甲第6号証の請求項10に記載された(以下の判断においても同様。)、ポリアクリル酸ナトリウム塩が一般的な高分子吸水剤であるとの事項を考慮しても、本件発明5についても同様に、甲第2号証に記載された発明並びに甲第1、5、6号証及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)本件発明6について
ア 本件発明6と甲2発明との対比・判断
本件発明6と甲2発明とを対比すると、少なくとも、上記相違点2-1、相違点2-2において相違する。そして、上記相違点2-1、相違点2-2についての判断は、上記(2)ア(イ)で検討したとおりである。
よって、本件発明6は、甲第2号証に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(5)本件発明7、8について
本件発明7は、本件発明6の記載を引用するものであり、本件発明6の発明特定事項をすべて備えるものであるが、上記(4)で述べたとおり、本件発明6が甲第2号証に記載された発明であるとはいえない以上、本件発明7についても同様に、甲第2号証に記載された発明であるとはいえない。また、本件発明6が、甲第2号証に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明7についても同様に、甲第2号証に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
本件発明8は、本件発明6の記載を引用するものであり、本件発明6の発明特定事項をすべて備えるものであるが、上記(4)で述べたとおり、本件発明6が、甲第2号証に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、甲第1、5、6号証に記載された、ポリアクリル酸ナトリウム塩が一般的な高分子吸水剤であるとの事項を考慮しても、本件発明8についても同様に、甲第2号証に記載された発明並びに甲第1、5、6号証及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(6)小括
以上のとおり、申立理由1-2(新規性)、申立理由2-2(進歩性)、取消理由1(新規性、進歩性)によっては、本件特許の請求項3~8に係る特許を取り消すことはできない。
3 申立理由1-3(新規性)、申立理由2-3(進歩性)、取消理由2(新規性、進歩性)
(1)甲第3号証に記載された発明
甲第3号証の記載(請求項1、第2ページ左上欄第16行~左下欄第4行、同左下欄第13~18行、第3ページ左上欄第3~5行、同右下欄第6行~第4ページ右上欄第9行、第2表、第3表)によれば、特に実施例1~4に着目すると、甲第3号証には、以下の4つの発明(以下、「甲3発明A」~「甲3発明D」という。)が記載されていると認められる。
<甲3発明A>
原料石炭を乾留してコークスを製造するにあたり、原料石炭として、含水量を7.0重量%に調整した調湿炭500gに対し、含水ゲルを生成する有機高分子化合物としてKIゲル201Kを0.10重量%添加した調湿炭を使用するコークス製造方法。
<甲3発明B>
原料石炭を乾留してコークスを製造するにあたり、原料石炭として、含水量を6.2重量%に調整した調湿炭500gに対し、含水ゲルを生成する有機高分子化合物としてKIゲル201Kを0.07重量%添加した調湿炭を使用するコークス製造方法。
<甲3発明C>
原料石炭を乾留してコークスを製造するにあたり、原料石炭として、含水量を5.3重量%に調整した調湿炭500gに対し、含水ゲルを生成する有機高分子化合物としてKIゲル201Kを0.05重量%添加した調湿炭を使用するコークス製造方法。
<甲3発明D>
原料石炭を乾留してコークスを製造するにあたり、原料石炭として、含水量を6.2重量%に調整した調湿炭500gに対し、含水ゲルを生成する有機高分子化合物としてアクリホープGH-2を0.08重量%添加した調湿炭を使用するコークス製造方法。
(2)本件発明3について
ア 本件発明3と甲3発明Aとの対比・判断
(ア)対比
a 甲3発明Aにおける、「原料石炭」は、本件発明3における「石炭」(固体燃料及び/又は鉄鋼原料)に相当する。
b 甲3発明Aにおける、「含水ゲルを生成する有機高分子化合物」は、「樹脂の高分子網目内に水が吸着され含水ゲルが生成する」ものであるから(第2ページ右上欄第10~11行)、本件発明3における「高分子吸水剤」に相当する。
c 甲3発明Aにおいて、「調湿炭500gに対し、」「含水ゲルを生成する有機高分子化合物」を「添加」することは、本件発明3における、「固体燃料及び/又は鉄鋼原料に対し、高分子吸水剤を接触させる工程」に相当する。
d 甲3発明Aによって、調湿炭における何らかの性質が変化していることは自明である。
e そうすると、本件発明3と甲3発明Aとは、以下の一致点3において一致するとともに、以下の相違点3-1、相違点3-2において相違する。
<一致点3>
「固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法であって、
前記固体燃料及び/又は鉄鋼原料に対し、高分子吸水剤を接触させる工程を含み、
前記固体燃料及び/又は鉄鋼原料は、石炭、コークス、鉄鉱石、石灰石、焼結鉱、製鉄所ダスト、木質チップ、木質ペレット、RDF及びRPFからなる群より選択される少なくとも1種を含む、
固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法。」である点。
<相違点3-1>
本件発明3は、「高分子吸水剤の保水量が320g/g以下」であるのに対し、甲3発明Aは、「KIゲル201K」の「保水量」が不明である点。
<相違点3-2>
本件発明3は、「高分子吸水剤の吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)が、1.2以上2.2以下」であるのに対し、甲3発明Aは、「KIゲル201K」の「吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)」が不明である点。
(イ)判断
a 相違点3-1について
甲第4号証の段落【0043】には、KIゲル-201K(クラレトレーディング株式会社製)の脱イオン水の吸水倍率が吸水性樹脂に対して200倍であることが記載されているから、甲3発明Aにおいて、「KIゲル201K」(クラレ社製)の吸水倍率も吸水性樹脂に対して200倍であると認められる。
ここで、この「吸水倍率」は、「吸水性樹脂」が吸収する脱イオン水の量を「吸水性樹脂」の量との比で表したものであるから、本件発明3の「吸収倍率」と同等のものである。
そして、本件発明3の「保水量」は、吸収倍率試験後(高吸水性樹脂の吸水性試験後)のティーバッグを脱水した後の重量から求められる水分量であるから、「保水量」と「吸収倍率」との間に、「保水量」≦「吸収倍率」の関係があることは自明である。
そうすると、甲3発明Aにおいて、「含水ゲルを生成する有機高分子化合物」である「KIゲル201K」の「保水量」は、200g/g以下であると認められ、この値は、本件発明3の「320g/g以下」を満たすものである。
よって、上記相違点3-1は実質的な相違点ではない。
b 相違点3-2について
甲3発明Aにおいて、「KIゲル201K」の「保水量」は、200g/g以下であるとしても、その具体的な値は不明であるから、「吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)」も不明である。
よって、上記相違点3-2は実質的な相違点である。
一方、甲第15~21号証には、上記2(2)ア(イ)bに摘記した事項が記載されている。しかしながら、甲第15~21号証には、「KIゲル201K」の「保水量」の値は記載されていないから、「KIゲル201K」の「吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)」が「1.2以上2.2以下」であるかは不明である。
また、上記甲第15~21号証に記載の技術事項は、甲3発明Aの調湿炭を使用するコークス製造方法とは関連性の低い技術分野に係るものであるから、当該技術事項が、甲3発明Aの技術分野における技術常識であるとはいえないし、上記甲第15~21号証に記載の技術事項を考慮しても、甲3発明Aにおいて、「KIゲル201K」を、「保水量が320g/g以下」かつ「吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)が、1.2以上2.2以下」(保水量/吸収倍率の比が0.45~0.83)の高分子吸水剤に変更することが動機付けられるとはいえない。
そして、本件明細書の記載によれば、本件発明3の発明特定事項を備えることにより、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の流動性を向上でき、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の搬送時の取扱性を向上できるという効果を奏するものであるところ、そのような効果は、甲第3号証(補助的に甲第4号証)及び甲第15~21号証の記載から当業者が予測し得ない格別顕著なものといえる。この点、甲第22号証の第384、388ページに、炭酸カルシウム及び澱粉において、水分量が多くなるにつれて流動性指数が小さくなる(流動性が悪くなる)ことが記載されていても同様である。
よって、本件発明3は、甲第3号証(補助的に甲第4号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 本件発明3と甲3発明Bとの対比・判断
本件発明3と甲3発明Bとを対比すると、上記一致点3において一致するとともに、上記相違点3-1、相違点3-2において相違する。
そして、相違点3-1、相違点3-2についての判断は、上記ア(イ)の判断と同様である。
ウ 本件発明3と甲3発明Cとの対比・判断
本件発明3と甲3発明Cとを対比すると、上記一致点3において一致するとともに、上記相違点3-1、相違点3-2において相違する。
そして、相違点3-1、相違点3-2についての判断は、上記ア(イ)の判断と同様である。
エ 本件発明3と甲3発明Dとの対比・判断
(ア)対比
本件発明3と甲3発明Dとを対比すると、上記一致点3において一致するとともに、以下の相違点3-3、相違点3-4において相違する。
<相違点3-3>
本件発明3は、「高分子吸水剤の保水量が320g/g以下」であるのに対し、甲3発明Dは、「アクリホープGH-2」の「保水量」が不明である点。
<相違点3-4>
本件発明3は、「高分子吸水剤の吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)が、1.2以上2.2以下」であるのに対し、甲3発明Dは、「アクリホープGH-2」の「吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)」が不明である点。
(イ)判断
a 相違点3-3について
甲第27号証の段落【0031】には、アクリホープGH2(日本触媒化学工業(株)製)の水道水の吸水能力が150~250g/gであることが記載されているから、甲3発明Dにおいて、「アクリホープGH-2」(日本触媒化学工業社製)の吸水能力も150~250g/gであると認められる。
ここで、この「吸水能力」は吸水性樹脂が吸収する水道水の量であるから、本件発明3の「吸収倍率」と同等のものである。
そして、本件発明3の「保水量」は、吸収倍率試験後(高吸水性樹脂の吸水性試験後)のティーバッグを脱水した後の重量から求められる水分量であるから、「保水量」と「吸収倍率」との間に、「保水量」≦「吸収倍率」の関係があることは自明である。
そうすると、甲3発明Dにおいて、「含水ゲルを生成する有機高分子化合物」である「アクリホープGH-2」の「保水量」は、250g/g以下であると認められ、この値は、本件発明3の「320g/g以下」を満たすものである。
よって、上記相違点3-3は実質的な相違点ではない。
b 相違点3-4について
甲3発明Dにおいて、「アクリホープGH-2」の「保水量」250g/g以下であるとしても、その具体的な値は不明であるから、「吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)」も不明である。
よって、上記相違点3-4は実質的な相違点である。
一方、甲第15~21号証には、上記2(2)ア(イ)bに摘記した事項が記載されている。しかしながら、甲第15~21号証には、「アクリホープGH-2」の「保水量」の値は記載されていないから、「アクリホープGH-2」の「吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)」が「1.2以上2.2以下」であるかは不明である。
また、上記甲第15~21号証に記載の技術事項は、甲3発明Dの調湿炭を使用するコークス製造方法とは関連性の低い技術分野に係るものであるから、当該技術事項が、甲3発明Dの技術分野における技術常識であるとはいえないし、上記甲第15~21号証に記載の技術事項を考慮しても、甲3発明Dにおいて、「アクリホープGH-2」を、「保水量が320g/g以下」かつ「吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)が、1.2以上2.2以下」(保水量/吸収倍率の比が0.45~0.83)の高分子吸水剤に変更することが動機付けられるとはいえない。
そして、本件明細書の記載によれば、本件発明3の発明特定事項を備えることにより、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の流動性を向上でき、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の搬送時の取扱性を向上できるという効果を奏するものであるところ、そのような効果は、甲第3号証(補助的に甲第27号証)及び甲第15~21号証の記載から当業者が予測し得ない格別顕著なものといえる。この点、甲第22号証の第384、388ページに、炭酸カルシウム及び澱粉において、水分量が多くなるにつれて流動性指数が小さくなる(流動性が悪くなる)ことが記載されていても同様である。
よって、本件発明3は、甲第3号証(補助的に甲第27号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明4、5について
本件発明4、5は、本件発明3の記載を引用するものであり、本件発明3の発明特定事項をすべて備えるものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明3が甲第3号証(補助的に甲第4、27号証)に記載された発明であるとはいえない以上、甲第24号証の段落【0050】に記載された、アクリホープが、アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物であるとの事項を考慮しても、本件発明4、5についても同様に、甲第3号証(補助的に甲第4、24、27号証)に記載された発明であるとはいえない。また、本件発明3が、甲第3号証(補助的に甲第4、27号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明4、5についても同様に、甲第3号証(補助的に甲第4、24、27号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)本件発明6について
ア 本件発明6と甲3発明A~甲3発明Cとの対比・判断
本件発明6と甲3発明A~甲3発明Cとを対比すると、少なくとも、上記相違点3-1、相違点3-2において相違する。そして、上記相違点3-1、相違点3-2についての判断は、上記(2)ア(イ)で検討したとおりである。
よって、本件発明6は、甲第3号証(補助的に甲第4、27号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 本件発明6と甲3発明Dとの対比・判断
本件発明6と甲3発明Dとを対比すると、少なくとも、上記相違点3-3、相違点3-4において相違する。そして、上記相違点3-3、相違点3-4についての判断は、上記(2)エ(イ)で検討したとおりである。
よって、本件発明6は、甲第3号証(補助的に甲第4、27号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(5)本件発明7、8について
本件発明7、8は、本件発明6の記載を引用するものであり、本件発明6の発明特定事項をすべて備えるものであるが、上記(4)で述べたとおり、本件発明6が甲第3号証(補助的に甲第4、27号証)に記載された発明であるとはいえない以上、甲第24号証の段落【0050】に記載された、アクリホープが、アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物であるとの事項を考慮しても、本件発明7、8についても同様に、甲第3号証(補助的に甲第4、24、27号証)に記載された発明であるとはいえない。また、本件発明6が、甲第3号証(補助的に甲第4、27号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明7、8についても同様に、甲第3号証(補助的に甲第4、24、27号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(6)小括
以上のとおり、申立理由1-3(新規性)、申立理由2-3(進歩性)、取消理由2(新規性、進歩性)によっては、本件特許の請求項3~8に係る特許を取り消すことはできない。
4 申立理由1-4(新規性)、申立理由2-4(進歩性)、取消理由3(新規性、進歩性)
(1)甲第5号証に記載された発明
甲第5号証の記載(請求項1、第2ページ右上欄第13~20行、同右下欄第15~18行、第3ページ右下欄~第4ページ右上欄、表1~3)によれば、特に実施例2、3に着目すると、甲第5号証には、以下の2つの発明(以下、「甲5発明A」、「甲5発明B」という。)が記載されていると認められる。
<甲5発明A>
微粉状の砂鉄鉱の小山を野積し、これに粉塵防止剤であるポリアクリル酸ナトリウム架橋体(A)(水での膨潤倍率300倍)を如露で約4l均一に散布する粉塵防止方法。
<甲5発明B>
ブレアソール炭の小山を野積し、これに粉塵防止剤であるデンプン-アクリル酸ナトリウムグラフト重合体(B)(水での膨潤倍率200倍)を如露で約4l均一に散布する粉塵防止方法。
(2)本件発明3について
ア 本件発明3と甲5発明Aとの対比・判断
(ア)対比
a 甲5発明Aにおける、「微粉状の砂鉄鉱」は、本件発明3における「鉄鉱石」(固体燃料及び/又は鉄鋼原料)に相当する。
b 甲5発明Aにおける、「ポリアクリル酸ナトリウム架橋体」は、「吸水性樹脂」であるから(第2ページ右上欄第13~20行)、本件発明3における「高分子吸水剤」に相当する。
c 甲5発明Aにおいて、「微粉状の砂鉄鉱」に「ポリアクリル酸ナトリウム架橋体(A)」を「均一に散布」することは、本件発明3における、「固体燃料及び/又は鉄鋼原料に対し、高分子吸水剤を接触させる工程」に相当する。
d 甲5発明Aによって、微粉状の砂鉄鉱における何らかの性質が変化していることは自明である。
e そうすると、本件発明3と甲5発明Aとは、以下の一致点5において一致するとともに、以下の相違点5-1、相違点5-2において相違する。
<一致点5>
「固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法であって、
前記固体燃料及び/又は鉄鋼原料に対し、高分子吸水剤を接触させる工程を含み、
前記固体燃料及び/又は鉄鋼原料は、石炭、コークス、鉄鉱石、石灰石、焼結鉱、製鉄所ダスト、木質チップ、木質ペレット、RDF及びRPFからなる群より選択される少なくとも1種を含む、
固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法。」である点。
<相違点5-1>
本件発明3は、「高分子吸水剤の保水量が320g/g以下」であるのに対し、甲5発明Aは、「ポリアクリル酸ナトリウム架橋体」の「水での膨潤倍率」が「300倍」である点。
<相違点5-2>
本件発明3は、「高分子吸水剤の吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)が、1.2以上2.2以下」であるのに対し、甲5発明Aは、「ポリアクリル酸ナトリウム架橋体」の「吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)」が不明である点。
(イ)判断
a 相違点5-1について
甲5発明Aにおける「水での膨潤倍率」は、「ポリアクリル酸ナトリウム架橋体」が吸収する水の量を「ポリアクリル酸ナトリウム架橋体」の量との比で表したものであるから、本件発明3の「吸収倍率」と同等のものである。
そして、本件発明3の「保水量」は、吸収倍率試験後(高吸水性樹脂の吸水性試験後)のティーバッグを脱水した後の重量から求められる水分量であるから、「保水量」と「吸収倍率」との間に、「保水量」≦「吸収倍率」の関係があることは自明である。
そうすると、甲5発明Aにおいて、「ポリアクリル酸ナトリウム架橋体」の「保水量」は、300g/g以下であると認められ、この値は、本件発明3の「320g/g以下」を満たすものである。
よって、上記相違点5-1は実質的な相違点ではない。
b 相違点5-2について
甲5発明Aにおいて、「ポリアクリル酸ナトリウム架橋体」の「保水量」は、300g/g以下であるとしても、その具体的な値は不明であるから、「吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)」も不明である。
よって、上記相違点5-2は実質的な相違点である。
一方、甲第15~21号証には、上記2(2)ア(イ)bに摘記した事項が記載されている。しかしながら、甲第15~21号証には、甲5発明Aにおける、「ポリアクリル酸ナトリウム架橋体」の「保水量」の値は記載されていないから、当該「ポリアクリル酸ナトリウム架橋体」の「吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)」が「1.2以上2.2以下」であるかは不明である。
また、上記甲第15~21号証に記載の技術事項は、甲5発明Aの粉塵防止方法とは関連性の低い技術分野に係るものであるから、当該技術事項が、甲5発明Aの技術分野における技術常識であるとはいえないし、上記甲第15~21号証に記載の技術事項を考慮しても、甲5発明Aにおいて、「ポリアクリル酸ナトリウム架橋体」を、「保水量が320g/g以下」かつ「吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)が、1.2以上2.2以下」(保水量/吸収倍率の比が0.45~0.83)の高分子吸水剤に変更することが動機付けられるとはいえない。
そして、本件明細書の記載によれば、本件発明3の発明特定事項を備えることにより、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の流動性を向上でき、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の搬送時の取扱性を向上できるという効果を奏するものであるところ、そのような効果は、甲第5号証及び甲第15~21号証の記載から当業者が予測し得ない格別顕著なものといえる。この点、甲第22号証の第384、388ページに、炭酸カルシウム及び澱粉において、水分量が多くなるにつれて流動性指数が小さくなる(流動性が悪くなる)ことが記載されていても同様である。
よって、本件発明3は、甲第5号証に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 本件発明3と甲5発明Bとの対比・判断
(ア)対比
a 甲5発明Bにおける、「ブレアソール炭」は、本件発明3における「石炭」(固体燃料及び/又は鉄鋼原料)に相当する。
b 甲5発明Bにおける、「デンプン-アクリル酸ナトリウムグラフト重合体」は、「吸水性樹脂」であるから(第2ページ右上欄第13~20行)、本件発明3における「高分子吸水剤」に相当する。
c 甲5発明Bにおいて、「ブレアソール炭」に「デンプン-アクリル酸ナトリウムグラフト重合体」を「均一に散布」することは、本件発明3における、「固体燃料及び/又は鉄鋼原料に対し、高分子吸水剤を接触させる工程」に相当する。
d 甲5発明Bによって、ブレアソール炭における何らかの性質が変化していることは自明である。
e そうすると、本件発明3と甲5発明Bとは、上記一致点5において一致するとともに、以下の相違点5-3、相違点5-4において相違する。
<相違点5-3>
本件発明1は、「高分子吸水剤の保水量が320g/g以下」であるのに対し、甲5発明Bは、「デンプン-アクリル酸ナトリウムグラフト重合体」の「水での膨潤倍率」が「200倍」である点。
<相違点5-4>
本件発明3は、「高分子吸水剤の吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)が、1.2以上2.2以下」であるのに対し、甲5発明Bは、「デンプン-アクリル酸ナトリウムグラフト重合体」の「吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)」が不明である点。
(イ)判断
a 相違点5-3について
甲5発明Bにおける「水での膨潤倍率」は、「デンプン-アクリル酸ナトリウムグラフト重合体」が吸収する水の量を「デンプン-アクリル酸ナトリウムグラフト重合体」の量との比で表したものであるから、本件発明3の「吸収倍率」と同等のものである。
そして、本件発明3の「保水量」は、吸収倍率試験後(高吸水性樹脂の吸水性試験後)のティーバッグを脱水した後の重量から求められる水分量であるから、「保水量」と「吸収倍率」との間に、「保水量」≦「吸収倍率」の関係があることは自明である。
そうすると、甲5発明Bにおいて、「デンプン-アクリル酸ナトリウムグラフト重合体」の「保水量」は、200g/g以下であると認められ、この値は、本件発明3の「320g/g以下」を満たすものである。
よって、上記相違点5-3は実質的な相違点ではない。
b 相違点5-4について
甲5発明Bにおいて、「デンプン-アクリル酸ナトリウムグラフト重合体」の「保水量」は、200g/g以下であるとしても、その具体的な値は不明であるから、「吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)」も不明である。
よって、上記相違点5-4は実質的な相違点である。
一方、甲第15~21号証には、上記2(2)ア(イ)bに摘記した事項が記載されている。しかしながら、甲第15~21号証には、甲5発明Bにおける、「デンプン-アクリル酸ナトリウムグラフト重合体」の「保水量」の値は記載されていないから、当該「デンプン-アクリル酸ナトリウムグラフト重合体」の「吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)」が「1.2以上2.2以下」であるかは不明である。
また、上記甲第15~21号証に記載の技術事項は、甲5発明Bの粉塵防止方法とは関連性の低い技術分野に係るものであるから、当該技術事項が、甲5発明Bの技術分野における技術常識であるとはいえないし、上記甲第15~21号証に記載の技術事項を考慮しても、甲5発明Bにおいて、「デンプン-アクリル酸ナトリウムグラフト重合体」を、「保水量が320g/g以下」かつ「吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)が、1.2以上2.2以下」(保水量/吸収倍率の比が0.45~0.83)の高分子吸水剤に変更することが動機付けられるとはいえない。
そして、本件明細書の記載によれば、本件発明3の発明特定事項を備えることにより、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の流動性を向上でき、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の搬送時の取扱性を向上できるという効果を奏するものであるところ、そのような効果は、甲第5号証及び甲第15~21号証の記載から当業者が予測し得ない格別顕著なものといえる。この点、甲第22号証の第384、388ページに、炭酸カルシウム及び澱粉において、水分量が多くなるにつれて流動性指数が小さくなる(流動性が悪くなる)ことが記載されていても同様である。
よって、本件発明3は、甲第5号証に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明4、5について
本件発明4は、本件発明3の記載を引用するものであり、本件発明3の発明特定事項をすべて備えるものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明3が、甲第5号証に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明4についても同様に、甲第5号証に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
本件発明5は、本件発明3の記載を引用するものであり、本件発明3の発明特定事項をすべて備えるものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明3が甲第5号証に記載された発明であるとはいえない以上、本件発明5についても同様に、甲第5号証に記載された発明であるとはいえない。また、本件発明3が、甲第5号証に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明5についても同様に、甲第5号証に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)本件発明6について
ア 本件発明6と甲5発明Aとの対比・判断
本件発明6と甲5発明Aとを対比すると、少なくとも、上記相違点5-1、相違点5-2において相違する。そして、上記相違点5-1、相違点5-2についての判断は、上記(2)ア(イ)で検討したとおりである。
よって、本件発明6は、甲第5号証に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 本件発明6と甲5発明Bとの対比・判断
本件発明6と甲5発明Bとを対比すると、少なくとも、上記相違点5-3、相違点5-4において相違する。そして、上記相違点5-3、相違点5-4についての判断は、上記(2)イ(イ)で検討したとおりである。
よって、本件発明6は、甲第5号証に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(5)本件発明7、8について
本件発明7は、本件発明6の記載を引用するものであり、本件発明6の発明特定事項をすべて備えるものであるが、上記(4)で述べたとおり、本件発明6が、甲第5号証に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明7についても同様に、甲第5号証に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
本件発明8は、本件発明6の記載を引用するものであり、本件発明6の発明特定事項をすべて備えるものであるが、上記(4)で述べたとおり、本件発明6が甲第5号証に記載された発明であるとはいえない以上、本件発明8についても同様に、甲第5号証に記載された発明であるとはいえない。また、本件発明6が、甲第5号証に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明8についても同様に、甲第5号証に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(6)小括
以上のとおり、申立理由1-4(新規性)、申立理由2-4(進歩性)、取消理由3(新規性、進歩性)によっては、本件特許の請求項3~8に係る特許を取り消すことはできない。
5 申立理由1-5(新規性)、申立理由2-5(進歩性)
(1)甲第6号証に記載された発明
甲第6号証の記載(請求項1、10、11、第3ページ右下欄第4~21行、第4ページ左下欄第16行~右下欄24行)によれば、特に実施例に着目すると、甲第6号証には、以下の発明(以下、「甲6発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲6発明>
炭素質物質および冶金材料から成り、湿潤未焼成凝集粒子を含有する多孔質バードンを一表面から焼成し、空気を焼成表面からバードン中に通して、実質的に全バードンを焼成して焼結塊とし、そして焼結塊を焼結小塊に破砕することから成る焼結方法において、吸水性の粒状ポリマーをバードン中に含有させる方法であって、
前記湿潤未焼成凝集粒子は、鉄鉱石、BOSダスト、再循環微粉、煙塵、石灰石、ドロマイトおよび粉コークスを含み、
前記吸水性の粒状ポリマーが、種として100~700μmの範囲の粒径を有する粉末であって、約200ppmの量のメチレンビスアクリルアミドで架橋されたほぼ同量のアクリル酸ナトリウムとアクリルアミドとのコポリマーであり、
前記吸水性の粒状ポリマーがバードン中においてポリマー1グラム当り100グラム以上、代表的には500グラムまでの脱イオン水のゲル容量を有する、方法。
(2)本件発明3について
ア 本件発明3と甲6発明との対比・判断
(ア)対比
a 甲6発明における、「鉄鉱石」、「石灰石」、「粉コークス」は、それぞれ、本件発明3における「鉄鉱石」、「石灰石」、「コークス」(固体燃料及び/又は鉄鋼原料)に相当する。
b 甲6発明における、「吸水性の粒状ポリマー」は、本件発明3における「高分子吸水剤」に相当する。
c 甲6発明において、「鉄鉱石」、「石灰石」、「粉コークス」を含む「湿潤未焼成凝集粒子を含有する多孔質バードン」中に「吸水性の粒状ポリマー」を含有させることは、本件発明3における、「固体燃料及び/又は鉄鋼原料に対し、高分子吸水剤を接触させる工程」に相当する。
d 甲6発明によって、鉄鉱石における何らかの性質が変化していることは自明である。
e そうすると、本件発明3と甲6発明とは、以下の一致点6において一致するとともに、以下の相違点6-1、相違点6-2において相違する。
<一致点6>
「固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法であって、
前記固体燃料及び/又は鉄鋼原料に対し、高分子吸水剤を接触させる工程を含み、
前記固体燃料及び/又は鉄鋼原料は、石炭、コークス、鉄鉱石、石灰石、焼結鉱、製鉄所ダスト、木質チップ、木質ペレット、RDF及びRPFからなる群より選択される少なくとも1種を含む、
固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法。」である点。
<相違点6-1>
本件発明3は、「高分子吸水剤の保水量が320g/g以下」であるのに対し、甲6発明は、「吸水性の粒状ポリマー」が「ポリマー1グラム当り100グラム以上、代表的には500グラムまでの脱イオン水のゲル容量を有する」点。
<相違点6-2>
本件発明3は、「高分子吸水剤の吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)が、1.2以上2.2以下」であるのに対し、甲6発明は、「吸水性の粒状ポリマー」の「吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)」が不明である点。
(イ)判断
a 相違点6-1について
(a)上記1(2)ア(イ)aの「相違点1-1について」で検討したとおり、甲第9号証の記載を踏まえると、甲6発明における「ゲル容量」は、本件発明3の「吸収倍率」と同等のものであると解される。
一方、本件発明3の「保水量」は、吸収倍率試験後(高吸水性樹脂の吸水性試験後)のティーバッグを脱水した後の重量から求められる水分量であるから、「保水量」と「吸収倍率」との間に、「保水量」≦「吸収倍率」の関係があることは自明である。
そうすると、甲6発明において、「吸水性の粒状ポリマー」の「保水量」は、100g/g以上、代表的には500g/gまでであると認められるものの、「保水量」≦320g/gであるとまではいえない。
よって、相違点6-1は実質的な相違点である。
(b)甲第6号証には、「ゲル容量」について、「少なくとも25、一般に少なくとも100、そして好ましくは少なくとも200、代表的には500まで、またさらには700以上であるのが好ましい。」との記載がある(第3ページ右下欄第15~18行)。
そうすると、甲6発明における「ゲル容量」(100~500g/g)を、上記好ましい範囲である「少なくとも200」g/gとすることが動機付けられたとしても、320g/g以下とすることが動機付けられるとはいえない。この点、甲第15~21号証に、吸水性樹脂の保水量/吸水量の比を0.55~1.00とすると離水が少ないこと、甲第22号証の第384、388ページに、炭酸カルシウム及び澱粉において、水分量が多くなるにつれて流動性指数が小さくなる(流動性が悪くなる)ことが記載されていても同様である。
よって、相違点6-2について検討するまでもなく、本件発明3は、甲第6号証(補助的に甲第9号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明4、5について
ア 本件発明4、5と甲6発明との対比・判断
本件発明4、5と甲6発明とを対比すると、少なくとも、上記相違点6-1、相違点6-2において相違する。
よって、本件発明4、5は、甲第6号証(補助的に甲第9号証)に記載された発明であるとはいえない。
(4)本件発明6について
ア 本件発明6と甲6発明との対比・判断
本件発明6と甲6発明とを対比すると、少なくとも、上記相違点6-1、相違点6-2において相違する。そして、上記相違点6-1についての判断は、上記(2)ア(イ)で検討したとおりである。
よって、本件発明6は、甲第6号証(補助的に甲第9号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(5)本件発明7、8について
ア 本件発明7、8と甲6発明との対比・判断
本件発明7、8と甲6発明とを対比すると、少なくとも、上記相違点6-1、相違点6-2において相違する。
よって、本件発明7、8は、甲第6号証(補助的に甲第9号証)に記載された発明であるとはいえない。
(6)小括
以上のとおり、申立理由1-5(新規性)、申立理由2-5(進歩性)によっては、本件特許の請求項3~8に係る特許を取り消すことはできない。
6 申立理由1-6(新規性)、申立理由2-6(進歩性)
(1)甲第10号証に記載された発明
甲第10号証の記載(請求項10、11、段落【0049】)によれば、特に実施例1に着目すると、甲第10号証には、以下の発明(以下、「甲10発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲10発明>
有機性廃棄物である乳牛糞から好気性微生物による発酵処理により固形燃料を得るための固形燃料の製造方法において、
前記有機性廃棄物である乳牛糞、多糖類分解酵素、及び吸水性樹脂であるアクリル樹脂(ダイヤニトリックス社製、サンフレッシュST-500D)が混合される原料調製工程、
次に、好気性微生物による好気性発酵が行なわれる発酵処理工程からなる固形燃料の製造方法。
(2)本件発明3について
ア 本件発明3と甲10発明との対比・判断
(ア)対比
a 本件発明3において、固体燃料及び/又は鉄鋼原料として列記される「RDF」は、技術常識に照らして、「可燃性廃棄物を主原料として、圧縮成形、押出成形などによって固形化した燃料」であると認められる(TR Z0011:2002)。
一方、甲10発明における、「乳牛糞」は、有機性廃棄物(可燃再廃棄物)ではあるものの、「そのままでは固形燃料として再利用することは困難で、水分含有量の低減等の処理により発熱量を上昇させることが必要となる」(甲第10号証の段落【0003】)ものであるから、「乳牛糞」自体は「RDF」であるとはいえない。
これに対して、有機性廃棄物である乳牛糞を原料として、甲10発明に係る固形燃料の製造方法によって製造される「固形燃料」は、本件発明3における「RDF」に相当するものといえる。
b そうすると、本件発明3と甲10発明とは、以下の一致点10において一致するとともに、以下の相違点10-1~相違点10-3において相違する。
<一致点10>
「固体燃料及び/又は鉄鋼原料に係る方法であって、
前記固体燃料及び/又は鉄鋼原料は、石炭、コークス、鉄鉱石、石灰石、焼結鉱、製鉄所ダスト、木質チップ、木質ペレット、RDF及びRPFからなる群より選択される少なくとも1種を含む、
固体燃料及び/又は鉄鋼原料に係る方法。」である点。
<相違点10-1>
本件発明3は、「固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法」であるのに対し、甲10発明は、「固形燃料の製造方法」である点。
<相違点10-2>
本件発明3は、「固体燃料及び/又は鉄鋼原料に対し、高分子吸水剤を接触させる工程」を含むのに対し、甲10発明は、製造された「固形燃料」に対し、「高分子吸水剤を接触させる」ものではない点。
<相違点10-3>
本件発明3は、「固体燃料及び/又は鉄鋼原料に対し」「接触させる」「高分子吸水剤の保水量が320g/g以下」であり、「高分子吸水剤の吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)が、1.2以上2.2以下」であるのに対し、甲10発明は、製造された「固体燃料」に対し「接触させる」「高分子吸水剤」を用いるものではない点。
(イ)判断
a 事案に鑑み、相違点10-2及び相違点10-3についてまとめて検討する。
(a)甲10発明は、製造された固体燃料に対し、高分子吸水剤を接触させるものではないから、相違点10-2及び相違点10-3はいずれも実質的な相違点である。
この点、甲第21号証の段落【0020】に、「サンフレッシュST-500D」の「吸水量」が「350g/g」、「保水量」が「235g/g」であることが記載され、この記載に関し、特許権者が、甲第23号証の第4ページにおいて、「サンフレッシュST-500D」の「吸水量」が「400g/g」であると主張し、甲第25号証の第15~16ページに、「サンフレッシュST-500D*」の「吸水量」が「400g/g」であることが記載されているとしても同様である。
よって、本件発明3は、甲第10号証(補助的に甲第21、23、25号証)に記載された発明であるとはいえない。
(b)一方、甲第10号証の段落【0032】には、「上記のように発酵処理を行なうことにより得られた固形燃料を適宜さらに乾燥処理を施してもよい」ことが記載され、また、段落【0046】には、「吸水性樹脂を発酵処理工程後に配合してもよい。それにより、乾燥工程を行なう場合は、その作業性が向上する」ことが記載されている。
しかしながら、甲10発明で製造した固体燃料における水分量が不明であるから、そもそも、甲10発明における「発酵処理工程」に続けてさらに乾燥処理を行う必要があるのかどうかは、不明である。
仮に、甲10発明における「発酵処理工程」に続けて、さらに吸水性樹脂を配合した上で乾燥処理を行うことが動機付けられることがあったとしても、甲第10号証には、吸水性樹脂について、単に各種のものが例示されるにとどまり(段落【0022】)、「発酵処理工程」に続けてさらに行われる乾燥処理において、具体的にどのような特性等を備えた吸水性樹脂を用いればよいかについては記載されておらず、ましてや、「保水量が320g/g以下」であり、「吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)が、1.2以上2.2以下」である吸水性樹脂を用いることは記載されてない。
また、「有機性廃棄物である乳牛糞」と混合され、水分含有量の調整に用いられた、「サンフレッシュST-500D」が、仮に、請求人が主張するように、「吸水量」が「350g/g」、「保水量」が「235g/g」であったとしても、甲10発明における「発酵処理工程」に続けてさらに行われる乾燥処理に適した吸水性樹脂であるかどうかは不明であるから、当該乾燥処理に当たり、当然に「サンフレッシュST-500D」が選択されるとはいえない。
以上のとおりであるから、甲10発明において、製造された「固形燃料」に対し、「高分子吸水剤を接触させる」こと、また、製造された「固体燃料」に対し、「接触させる」「高分子吸水剤」として、「保水量が320g/g以下」であり、「吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)が、1.2以上2.2以下」である高分子吸水剤を用いることは、当業者が容易に想到することであるとはいえない。
そして、本件明細書の記載によれば、本件発明3の発明特定事項を備えることにより、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の流動性を向上でき、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の搬送時の取扱性を向上できるという効果を奏するものであるところ、そのような効果は、甲第10号証(補助的に甲第21、23、25号証)の記載から当業者が予測し得ない格別顕著なものといえる。
よって、相違点10-1について検討するまでもなく、本件発明3は、甲第10号証(補助的に甲第21、23、25号証)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明4、5について
本件発明4は、本件発明3の記載を引用するものであり、本件発明3の発明特定事項をすべて備えるものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明3が、甲第10号証(補助的に甲第21、23、25号証)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明4についても同様に、甲第10号証(補助的に甲第21、23、25号証)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。この点、甲第22号証の第384、388ページに、炭酸カルシウム及び澱粉において、水分量が多くなるにつれて流動性指数が小さくなる(流動性が悪くなる)ことが記載されていても同様である。
本件発明5は、本件発明3の記載を引用するものであり、本件発明3の発明特定事項をすべて備えるものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明3が甲第10号証(補助的に甲第21、23、25号証)に記載された発明であるとはいえない以上、本件発明5についても同様に、甲第10号証(補助的に甲第21、23、25号証)に記載された発明であるとはいえない。また、本件発明3が、甲第10号証(補助的に甲第21、23、25号証)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、甲第1、5、6号証に記載された、ポリアクリル酸ナトリウム塩が一般的な高分子吸水剤であるとの事項を考慮しても、本件発明5についても同様に、甲第10号証(補助的に甲第21、23、25号証)に記載された発明及び甲第1、5、6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)本件発明6について
ア 本件発明6と甲10発明との対比・判断
本件発明6と甲10発明とを対比すると、少なくとも、上記相違点10-1~相違点10-3において相違する。そして、上記相違点10-1~相違点10-3についての判断は、上記(2)ア(イ)で検討したとおりである。
よって、本件発明6は、甲第10号証(補助的に甲第21、23、25号証)に記載された発明であるとはいえない。また、本件発明6は、甲第10号証(補助的に甲第21、23、25号証)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(5)本件発明7、8について
本件発明7は、本件発明6の記載を引用するものであり、本件発明6の発明特定事項をすべて備えるものであるが、上記(4)で述べたとおり、本件発明6が、甲第10号証(補助的に甲第21、23、25号証)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明7についても同様に、甲第10号証(補助的に甲第21、23、25号証)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。この点、甲第22号証の第384、388ページに、炭酸カルシウム及び澱粉において、水分量が多くなるにつれて流動性指数が小さくなる(流動性が悪くなる)ことが記載されていても同様である。
本件発明8は、本件発明6の記載を引用するものであり、本件発明6の発明特定事項をすべて備えるものであるが、上記(4)で述べたとおり、本件発明6が甲第10号証(補助的に甲第21、23、25号証)に記載された発明であるとはいえない以上、本件発明8についても同様に、甲第10号証(補助的に甲第21、23、25号証)に記載された発明であるとはいえない。また、本件発明6が、甲第10号証(補助的に甲第21、23、25号証)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、甲第1、5、6号証に記載された、ポリアクリル酸ナトリウム塩が一般的な高分子吸水剤であるとの事項を考慮しても、本件発明8についても同様に、甲第10号証(補助的に甲第21、23、25号証)に記載された発明及び甲第1、5、6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(6)小括
以上のとおり、申立理由1-6(新規性)、申立理由2-6(進歩性)によっては、本件特許の請求項3~8に係る特許を取り消すことはできない。
7 申立理由1-7(新規性)、申立理由2-7(進歩性)、取消理由4(新規性、進歩性)
(1)甲第11号証に記載された発明
甲第11号証の記載(請求項1、2、第2ページ左下欄第11行~右下欄第3行、第3ページ左下欄第9行~右下欄第5行、第4ページ左上欄、表-1)によれば、特に実施例4、5に着目すると、甲第11号証には、以下の2つの発明(以下、「甲11発明A」、「甲11発明B」という。)が記載されていると認められる。
<甲11発明A>
含水率36%に調整した微粉炭100重量部と高吸水性樹脂(日本触媒化学製アクアリックCA)とを約30分間撹拌混合する、微粉炭の脱水方法。
<甲11発明B>
含水率36%に調整した微粉炭100重量部と高吸水性樹脂(日本合成みずもち1番)とを約30分間撹拌混合する、微粉炭の脱水方法。
(2)本件発明3について
ア 本件発明3と甲11発明Aとの対比・判断
(ア)対比
a 甲11発明Aにおける、「微粉炭」は、本件発明3における「石炭」(固体燃料及び/又は鉄鋼原料)に相当する。
b 甲11発明Aにおける、「高吸水性樹脂(日本触媒化学製アクアリックCA)」は、樹脂製であるから、本件発明3における「高分子吸水剤」に相当する。
c 甲11発明Aにおいて、「微粉炭」と「高吸水性樹脂」とを「撹拌混合する」ことは、本件発明3における、「固体燃料及び/又は鉄鋼原料に対し、高分子吸水剤を接触させる工程」に相当する。
d 甲11発明Aによって、微粉炭における何らかの性質が変化していることは自明である。
e そうすると、本件発明3と甲11発明Aとは、以下の一致点11において一致するとともに、以下の相違点11-1、相違点11-2において相違する。
<一致点11>
「固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法であって、
前記固体燃料及び/又は鉄鋼原料に対し、高分子吸水剤を接触させる工程を含み、
前記固体燃料及び/又は鉄鋼原料は、石炭、コークス、鉄鉱石、石灰石、焼結鉱、製鉄所ダスト、木質チップ、木質ペレット、RDF及びRPFからなる群より選択される少なくとも1種を含む、
固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法。」である点。
<相違点11-1>
本件発明3は、「高分子吸水剤の保水量が320g/g以下」であるのに対し、甲11発明Aは、「高吸水性樹脂(日本触媒化学製アクアリックCA)」の「保水量」が不明である点。
<相違点11-2>
本件発明3は、「高分子吸水剤の吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)が、1.2以上2.2以下」であるのに対し、甲11発明Aは、「高吸水性樹脂(日本触媒化学製アクアリックCA)」の「吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)」が不明である点。
(イ)判断
a 相違点11-1について
甲第13号証の第7ページ右上欄第6~7行の3)には、日本触媒化学工業(株)製アクアリックCAの吸水倍率が250倍であることが記載されているから、甲11発明Aにおいて、「高吸水性樹脂(日本触媒化学製アクアリックCA)」の吸水倍率も250倍であると認められる。
ここで、この「吸水倍率」は、「高吸水性樹脂」が吸収する水の量を「高吸水性樹脂」の量との比で表したものであるから、本件発明3の「吸収倍率」と同等のものである。
そして、本件発明3の「保水量」は、吸収倍率試験後(高吸水性樹脂の吸水性試験後)のティーバッグを脱水した後の重量から求められる水分量であるから、「保水量」と「吸収倍率」との間に、「保水量」≦「吸収倍率」の関係があることは自明である。
そうすると、甲11発明Aにおいて、「高吸水性樹脂(日本触媒化学製アクアリックCA)」の「保水量」は、250g/g以下であると認められ、この値は、本件発明1の「320g/g以下」を満たすものである。
よって、上記相違点11-1は実質的な相違点ではない。
b 相違点11-2について
甲11発明Aにおいて、「高吸水性樹脂(日本触媒化学製アクアリックCA)」の「保水量」は、250g/g以下であるとしても、その具体的な値は不明であるから、「吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)」も不明である。
よって、上記相違点11-2は実質的な相違点である。
一方、甲第15~21号証には、上記2(2)ア(イ)bに摘記した事項が記載されている。しかしながら、甲第15~21号証には、甲11発明Aにおける、「高吸水性樹脂(日本触媒化学製アクアリックCA)」の「保水量」の値は記載されていないから、当該「高吸水性樹脂(日本触媒化学製アクアリックCA)」の「吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)」が「1.2以上2.2以下」であるかは不明である。
また、上記甲第15~21号証に記載の技術事項は、甲11発明Aの微粉炭の脱水方法とは関連性の低い技術分野に係るものであるから、当該技術事項が、甲11発明Aの技術分野における技術常識であるとはいえないし、上記甲第15~21号証に記載の技術事項を考慮しても、甲11発明Aにおいて、「高吸水性樹脂(日本触媒化学製アクアリックCA)」を、「保水量が320g/g以下」かつ「吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)が、1.2以上2.2以下」(保水量/吸収倍率の比が0.45~0.83)の高分子吸水剤に変更することが動機付けられるとはいえない。
そして、本件明細書の記載によれば、本件発明3の発明特定事項を備えることにより、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の流動性を向上でき、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の搬送時の取扱性を向上できるという効果を奏するものであるところ、そのような効果は、甲第11号証(補助的に甲第13号証)及び甲第15~21号証の記載から当業者が予測し得ない格別顕著なものといえる。この点、甲第22号証の第384、388ページに、炭酸カルシウム及び澱粉において、水分量が多くなるにつれて流動性指数が小さくなる(流動性が悪くなる)ことが記載されていても同様である。
よって、本件発明3は、甲第11号証(補助的に甲第13号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 本件発明3と甲11発明Bとの対比・判断
(ア)対比
a 甲11発明Bにおける、「微粉炭」は、本件発明3における「石炭」(固体燃料及び/又は鉄鋼原料)に相当する。
b 甲11発明Bにおける、「高吸水性樹脂(日本合成みずもち1番)」は、樹脂製であるから、本件発明3における「高分子吸水剤」に相当する。
c 甲11発明Bにおいて、「微粉炭」と「高吸水性樹脂」とを「撹拌混合する」ことは、本件発明3における、「固体燃料及び/又は鉄鋼原料に対し、高分子吸水剤を接触させる工程」に相当する。
d 甲11発明Bによって、微粉炭における何らかの性質が変化していることは自明である。
e そうすると、本件発明3と甲11発明Bとは、上記一致点11において一致するとともに、以下の相違点11-3、相違点11-4において相違する。
<相違点11-3>
本件発明3は、「高分子吸水剤の保水量が320g/g以下」であるのに対し、甲11発明Bは、「高吸水性樹脂(日本合成みずもち1番)」の「保水量」が不明である点。
<相違点11-4>
本件発明3は、「高分子吸水剤の吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)が、1.2以上2.2以下」であるのに対し、甲11発明Bは、「高吸水性樹脂(日本合成みずもち1番)」の「吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)」が不明である点。
(イ)判断
a 相違点11-3について
甲第12号証の第3ページ左下欄第8~12行には、日本合成化学工業(株)製みずもち一番の純水の吸収能が200g/gであることが記載されているから、甲11発明Bにおいて、「高吸水性樹脂(日本合成みずもち1番)」の純水の吸収能も200g/gであると認められる。
ここで、この「吸水倍率」は、「高吸水性樹脂」が吸収する水の量を「高吸水性樹脂」の量との比で表したものであるから、本件発明3の「吸収倍率」と同等のものである。
そして、本件発明3の「保水量」は、吸収倍率試験後(高吸水性樹脂の吸水性試験後)のティーバッグを脱水した後の重量から求められる水分量であるから、「保水量」と「吸収倍率」との間に、「保水量」≦「吸収倍率」の関係があることは自明である。
そうすると、甲11発明Bにおいて、「高吸水性樹脂(日本合成みずもち1番)」の「保水量」は、200g/g以下であると認められ、この値は、本件発明3の「320g/g以下」を満たすものである。
よって、上記相違点11-3は実質的な相違点ではない。
b 相違点11-4について
甲11発明Bにおいて、「高吸水性樹脂(日本合成みずもち1番)」の「保水量」は、200g/g以下であるとしても、その具体的な値は不明であるから、「吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)」も不明である。
よって、上記相違点11-4は実質的な相違点である。
一方、甲第15~21号証には、上記2(2)ア(イ)bに摘記した事項が記載されている。しかしながら、甲第15~21号証には、甲11発明Bにおける、「高吸水性樹脂(日本合成みずもち1番)」の「保水量」の値は記載されていないから、当該「高吸水性樹脂(日本合成みずもち1番)」の「吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)」が「1.2以上2.2以下」であるかは不明である。
また、上記甲第15~21号証に記載の技術事項は、甲11発明Bの微粉炭の脱水方法とは関連性の低い技術分野に係るものであるから、当該技術事項が、甲11発明Bの技術分野における技術常識であるとはいえないし、上記甲第15~21号証に記載の技術事項を考慮しても、甲11発明Bにおいて、「高吸水性樹脂(日本合成みずもち1番)」を、「保水量が320g/g以下」かつ「吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)が、1.2以上2.2以下」(保水量/吸収倍率の比が0.45~0.83)の高分子吸水剤に変更することが動機付けられるとはいえない。
そして、本件明細書の記載によれば、本件発明3の発明特定事項を備えることにより、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の流動性を向上でき、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の搬送時の取扱性を向上できるという効果を奏するものであるところ、そのような効果は、甲第11号証(補助的に甲第12号証)及び甲第15~21号証の記載から当業者が予測し得ない格別顕著なものといえる。この点、甲第22号証の第384、388ページに、炭酸カルシウム及び澱粉において、水分量が多くなるにつれて流動性指数が小さくなる(流動性が悪くなる)ことが記載されていても同様である。
よって、本件発明3は、甲第11号証(補助的に甲第12号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明4、5について
本件発明4は、本件発明3の記載を引用するものであり、本件発明3の発明特定事項をすべて備えるものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明3が、甲第11号証(補助的に甲第12、13号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明4についても同様に、甲第11号証(補助的に甲第12、13号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
本件発明5は、本件発明3の記載を引用するものであり、本件発明3の発明特定事項をすべて備えるものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明3が甲第11号証(補助的に甲第12、13号証)に記載された発明であるとはいえない以上、甲第24号証の段落【0050】に記載された、アクアリックCAが、アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物であるとの事項を考慮しても、本件発明5についても同様に、甲第11号証(補助的に甲第12、13、24号証)に記載された発明であるとはいえない。また、本件発明3が、甲第11号証(補助的に甲第12、13号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、甲第1、5、6号証に記載された、ポリアクリル酸ナトリウム塩が一般的な高分子吸水剤であるとの事項を考慮しても、本件発明5についても同様に、甲第11号証(補助的に甲第12、13、24号証)に記載された発明並びに甲第1、5、6号証及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)本件発明6について
ア 本件発明6と甲11発明Aとの対比・判断
本件発明6と甲11発明Aとを対比すると、少なくとも、上記相違点11-1、相違点11-2において相違する。そして、上記相違点11-1、相違点11-2についての判断は、上記(2)ア(イ)で検討したとおりである。
よって、本件発明6は、甲第11号証(補助的に甲第13号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 本件発明6と甲11発明Bとの対比・判断
本件発明6と甲11発明Bとを対比すると、少なくとも、上記相違点11-3、相違点11-4において相違する。そして、上記相違点11-3、相違点11-4についての判断は、上記(2)イ(イ)で検討したとおりである。
よって、本件発明6は、甲第11号証(補助的に甲第12号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(5)本件発明7、8について
本件発明7は、本件発明6の記載を引用するものであり、本件発明6の発明特定事項をすべて備えるものであるが、上記(4)で述べたとおり、本件発明6が、甲第11号証(補助的に甲第12、13号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明7についても同様に、甲第11号証(補助的に甲第12、13号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
本件発明8は、本件発明6の記載を引用するものであり、本件発明6の発明特定事項をすべて備えるものであるが、上記(4)で述べたとおり、本件発明6が甲第11号証(補助的に甲第12、13号証)に記載された発明であるとはいえない以上、甲第24号証の段落【0050】に記載された、アクアリックCAが、アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物であるとの事項を考慮しても、本件発明8についても同様に、甲第11号証(補助的に甲第12、13、24号証)に記載された発明であるとはいえない。また、本件発明6が、甲第11号証(補助的に甲第12、13号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、甲第1、5、6号証に記載された、ポリアクリル酸ナトリウム塩が一般的な高分子吸水剤であるとの事項を考慮しても、本件発明8についても同様に、甲第11号証(補助的に甲第12、13、24号証)に記載された発明並びに甲第1、5、6号証及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(6)小括
以上のとおり、申立理由1-7(新規性)、申立理由2-7(進歩性)、取消理由4(新規性、進歩性)によっては、本件特許の請求項3~8に係る特許を取り消すことはできない。
8 申立理由1-8(新規性)、申立理由2-8(進歩性)、取消理由5(新規性、進歩性)
(1)甲第14号証に記載された発明
甲第14号証の記載(請求項1、4、第2ページ左下欄第16行~右下欄第16行、第3ページ左下欄第8~12行、同右下欄第8~14行、第4ページ右上欄第11行~右下欄、第5ページ左上欄第11~13行、同右下欄、第1表、第4表)によれば、特に実施例1に着目すると、甲第14号証には、以下の発明(以下、「甲14発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲14発明>
KIゲル201K粉体100gに、1000gの水を加えて含水ゲルを形成させ、磁性粉KBC100を100g添加して混練し、107℃で乾燥して吸水剤を作成し、この吸水剤5gを、水分を10%含有する粉炭500gと、ホバート形ミキサーで3分間撹拌し、1時間静置後、磁石を用いて水分を吸着した吸水剤を回収する、粉炭の水分低減方法。
(2)本件発明3について
ア 本件発明3と甲14発明との対比・判断
(ア)対比
a 甲14発明における、「粉炭」は、本件発明3における「石炭」(固体燃料及び/又は鉄鋼原料)に相当する。
b 甲14発明における、「吸水剤」は、高吸水性樹脂であるKIゲル201K粉体を含むから(第4ページ右上欄第1~3行)、本件発明3における「高分子吸水剤」に相当する。
c 甲14発明において、「吸水剤」を「粉炭」と「撹拌」することは、本件発明3における、「固体燃料及び/又は鉄鋼原料に対し、高分子吸水剤を接触させる工程」に相当する。
d 甲14発明によって、粉炭における何らかの性質が変化していることは自明である。
e そうすると、本件発明3と甲14発明とは、以下の一致点14において一致するとともに、以下の相違点14-1、相違点14-2において相違する。
<一致点14>
「固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法であって、
前記固体燃料及び/又は鉄鋼原料に対し、高分子吸水剤を接触させる工程を含み、
前記固体燃料及び/又は鉄鋼原料は、石炭、コークス、鉄鉱石、石灰石、焼結鉱、製鉄所ダスト、木質チップ、木質ペレット、RDF及びRPFからなる群より選択される少なくとも1種を含む、
固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法。」である点。
<相違点14-1>
本件発明3は、「高分子吸水剤の保水量が320g/g以下」であるのに対し、甲14発明は、「KIゲル201K粉体」を含む「吸水剤」の「保水量」が不明である点。
<相違点14-2>
本件発明3は、「高分子吸水剤の吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)が、1.2以上2.2以下」であるのに対し、甲14発明は、「KIゲル201K粉体」の「吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)」が不明である点。
(イ)判断
a 相違点14-1について
甲第4号証の段落【0043】には、KIゲル-201K(クラレトレーディング株式会社製)の脱イオン水の吸水倍率が吸水性樹脂に対して200倍であることが記載されているから、甲14発明において、「KIゲル201K粉体」(クラレ)の吸水倍率も吸水性樹脂に対して200倍であると認められる。
ここで、この「吸水倍率」は、「吸水性樹脂」が吸収する脱イオン水の量を「吸水性樹脂」の量との比で表したものであるから、本件発明3の「吸収倍率」と同等のものである。
そして、本件発明3の「保水量」は、吸収倍率試験後(高吸水性樹脂の吸水性試験後)のティーバッグを脱水した後の重量から求められる水分量であるから、「保水量」と「吸収倍率」との間に、「保水量」≦「吸収倍率」の関係があることは自明である。
そうすると、甲14発明において、「KIゲル201K粉体」の「保水量」は、200g/g以下であると認められ、この値は、本件発明3の「320g/g以下」を満たすものである。
よって、上記相違点14-1は実質的な相違点ではない。
b 相違点14-2について
甲14発明において、「KIゲル201K粉体」の「保水量」は、200g/g以下であるとしても、その具体的な値は不明であるから、「吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)」も不明である。
よって、上記相違点14-2は実質的な相違点である。
一方、甲第15~21号証には、上記2(2)ア(イ)bに摘記した事項が記載されている。しかしながら、甲第15~21号証には、「KIゲル201K粉体」の「保水量」の値は記載されていないから、「KIゲル201K粉体」の「吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)」が「1.2以上2.2以下」であるかは不明である。
また、上記甲第15~21号証に記載の技術事項は、甲14発明の粉炭の水分低減方法とは関連性の低い技術分野に係るものであるから、当該技術事項が、甲14発明の技術分野における技術常識であるとはいえないし、上記甲第15~21号証に記載の技術事項を考慮しても、甲14発明において、「KIゲル201K粉体」を、「保水量が320g/g以下」かつ「吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)が、1.2以上2.2以下」(保水量/吸収倍率の比が0.45~0.83)の高分子吸水剤に変更することが動機付けられるとはいえない。
そして、本件明細書の記載によれば、本件発明3の発明特定事項を備えることにより、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の流動性を向上でき、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の搬送時の取扱性を向上できるという効果を奏するものであるところ、そのような効果は、甲第14号証(補助的に甲第4号証)及び甲第15~21号証の記載から当業者が予測し得ない格別顕著なものといえる。この点、甲第22号証の第384、388ページに、炭酸カルシウム及び澱粉において、水分量が多くなるにつれて流動性指数が小さくなる(流動性が悪くなる)ことが記載されていても同様である。
よって、本件発明3は、甲第14号証(補助的に甲第4号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明4、5について
本件発明4は、本件発明3の記載を引用するものであり、本件発明3の発明特定事項をすべて備えるものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明3が甲第14号証(補助的に甲第4号証)に記載された発明であるとはいえない以上、本件発明4についても同様に、甲第14号証(補助的に甲第4号証)に記載された発明であるとはいえない。また、本件発明3が、甲第14号証(補助的に甲第4号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明4についても同様に、甲第14号証(補助的に甲第4号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
本件発明5は、本件発明3の記載を引用するものであり、本件発明3の発明特定事項をすべて備えるものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明3が、甲第14号証(補助的に甲第4号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、甲第1、5、6号証に記載された、ポリアクリル酸ナトリウム塩が一般的な高分子吸水剤であるとの事項を考慮しても、本件発明5についても同様に、甲第14号証(補助的に甲第4号証)に記載された発明並びに甲第1、5、6号証及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)本件発明6について
ア 本件発明6と甲14発明との対比・判断
本件発明6と甲14発明とを対比すると、少なくとも、上記相違点14-1、相違点14-2において相違する。そして、上記相違点14-1、相違点14-2についての判断は、上記(2)ア(イ)で検討したとおりである。
よって、本件発明6は、甲第14号証(補助的に甲第4号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(5)本件発明7、8について
本件発明7は、本件発明6の記載を引用するものであり、本件発明6の発明特定事項をすべて備えるものであるが、上記(4)で述べたとおり、本件発明6が甲第14号証(補助的に甲第4号証)に記載された発明であるとはいえない以上、本件発明7についても同様に、甲第14号証(補助的に甲第4号証)に記載された発明であるとはいえない。また、本件発明6が、甲第14号証(補助的に甲第4号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明7についても同様に、甲第14号証(補助的に甲第4号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
本件発明8は、本件発明6の記載を引用するものであり、本件発明6の発明特定事項をすべて備えるものであるが、上記(4)で述べたとおり、本件発明6が、甲第14号証(補助的に甲第4号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、甲第1、5、6号証に記載された、ポリアクリル酸ナトリウム塩が一般的な高分子吸水剤であるとの事項を考慮しても、本件発明8についても同様に、甲第14号証(補助的に甲第4号証)に記載された発明並びに甲第1、5、6号証及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(6)小括
以上のとおり、申立理由1-8(新規性)、申立理由2-8(進歩性)、取消理由5(新規性、進歩性)によっては、本件特許の請求項3~8に係る特許を取り消すことはできない。
9 申立理由1-9(新規性)、申立理由2-9(進歩性)、取消理由6(新規性、進歩性)
(1)甲第26号証に記載された発明
甲第26号証の記載(請求項1、第1ページ右下欄第13~20行、第2ページ右上欄第19行~右下欄第3行、第3ページ右下欄第8~14行、第4ページ左上欄第17行~同右下欄、第6ページ左下欄~右下欄、第7ページ左上欄~右上欄、第一表、第六表)によれば、特に実施例1、6に着目すると、甲第26号証には、以下の7つの発明(以下、「甲26発明A」~「甲26発明G」という。)が記載されていると認められる。
なお、「アクリポープ」は、「アクリホープ」の誤記と認める。
<甲26発明A>
原料石炭を乾留してコークスを製造するにあたり、原料石炭として、水分量10重量%の粉炭500gに対し、高吸水性樹脂としてのアクリホープGH-2を0.18重量%と界面活性剤としてのラウリル硫酸塩を0.02重量%とを含有する嵩密度向上剤を混合した石炭を用いるコークスの製造方法。
<甲26発明B>
原料石炭を乾留してコークスを製造するにあたり、原料石炭として、水分量10重量%の粉炭500gに対し、高吸水性樹脂としてのアクリホープGH-2を0.15重量%と界面活性剤としてのラウリル硫酸塩を0.05重量%とを含有する嵩密度向上剤を混合した石炭を用いるコークスの製造方法。
<甲26発明C>
原料石炭を乾留してコークスを製造するにあたり、原料石炭として、水分量10重量%の粉炭500gに対し、高吸水性樹脂としてのアクリホープGH-2を0.10重量%と界面活性剤としてのラウリル硫酸塩を0.10重量%とを含有する嵩密度向上剤を混合した石炭を用いるコークスの製造方法。
<甲26発明D>
原料石炭を乾留してコークスを製造するにあたり、原料石炭として、水分量10重量%の粉炭500gに対し、高吸水性樹脂としてのアクリホープGH-2を0.05重量%と界面活性剤としてのラウリル硫酸塩を0.05重量%とを含有する嵩密度向上剤を混合した石炭を用いるコークスの製造方法。
<甲26発明E>
原料石炭を乾留してコークスを製造するにあたり、原料石炭として、水分量10重量%の粉炭500gに対し、高吸水性樹脂としてのKIゲル201Kを0.067重量%と界面活性剤としてのラウリル硫酸塩を0.067重量%と鉱油を0.067重量%とを含有する嵩密度向上剤を混合した石炭を用いるコークスの製造方法。
<甲26発明F>
原料石炭を乾留してコークスを製造するにあたり、原料石炭として、水分量10重量%の粉炭500gに対し、高吸水性樹脂としてのKIゲル201Kを0.05重量%と界面活性剤としてのラウリル硫酸塩を0.05重量%と鉱油を0.10重量%とを含有する嵩密度向上剤を混合した石炭を用いるコークスの製造方法。
<甲26発明G>
原料石炭を乾留してコークスを製造するにあたり、原料石炭として、水分量10重量%の粉炭500gに対し、高吸水性樹脂としてのKIゲル201Kを0.03重量%と界面活性剤としてのラウリル硫酸塩を0.03重量%と鉱油を0.13重量%とを含有する嵩密度向上剤を混合した石炭を用いるコークスの製造方法。
(2)本件発明3について
ア 本件発明3と甲26発明Aとの対比・判断
(ア)対比
a 甲26発明Aにおける、「原料石炭」は、本件発明3における「石炭」(固体燃料及び/又は鉄鋼原料)に相当する。
b 甲26発明Aにおける、「高吸水性樹脂」は、本件発明3における「高分子吸水剤」に相当する。
c 甲26発明Aにおいて、「原料石炭」と「高吸水性樹脂」とを「混合」することは、本件発明3における、「固体燃料及び/又は鉄鋼原料に対し、高分子吸水剤を接触させる工程」に相当する。
d 甲26発明Aによって、石炭における何らかの性質が変化していることは自明である。
e そうすると、本件発明3と甲26発明Aとは、以下の一致点26において一致するとともに、以下の相違点26-1、相違点26-2において相違する。
<一致点26>
「固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法であって、
前記固体燃料及び/又は鉄鋼原料に対し、高分子吸水剤を接触させる工程を含み、
前記固体燃料及び/又は鉄鋼原料は、石炭、コークス、鉄鉱石、石灰石、焼結鉱、製鉄所ダスト、木質チップ、木質ペレット、RDF及びRPFからなる群より選択される少なくとも1種を含む、
固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法。」である点。
<相違点26-1>
本件発明3は、「高分子吸水剤の保水量が320g/g以下」であるのに対し、甲26発明Aは、「アクリホープGH-2」の「保水量」が不明である点。
<相違点26-2>
本件発明3は、「高分子吸水剤の吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)が、1.2以上2.2以下」であるのに対し、甲26発明Aは、「アクリホープGH-2」の「吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)」が不明である点。
(イ)判断
a 相違点26-1について
甲第27号証の段落【0031】には、アクリホープGH2(日本触媒化学工業(株)製)の水道水の吸水能力が150~250g/gであることが記載されているから、甲26発明Aにおいて、「アクリホープGH-2」(日本触媒化学社製)の吸水能力も150~250g/gであると認められる。
ここで、この「吸水能力」は吸水性樹脂が吸収する水道水の量であるから、本件発明3の「吸収倍率」と同等のものである。
そして、本件発明3の「保水量」は、吸収倍率試験後(高吸水性樹脂の吸水性試験後)のティーバッグを脱水した後の重量から求められる水分量であるから、「保水量」と「吸収倍率」との間に、「保水量」≦「吸収倍率」の関係があることは自明である。
そうすると、甲26発明Aにおいて、「含水ゲルを生成する有機高分子化合物」である「アクリホープGH-2」の「保水量」は、250g/g以下であると認められ、この値は、本件発明3の「320g/g以下」を満たすものである。
よって、上記相違点26-1は実質的な相違点ではない。
b 相違点26-2について
甲26発明Aにおいて、「アクリホープGH-2」の「保水量」は、250g/g以下であるとしても、その具体的な値は不明であるから、「吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)」も不明である。
よって、上記相違点26-2は実質的な相違点である。
一方、甲第15~21号証には、上記2(2)ア(イ)bに摘記した事項が記載されている。しかしながら、甲第15~21号証には、「アクリホープGH-2」の「保水量」の値は記載されていないから、「アクリホープGH-2」の「吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)」が「1.2以上2.2以下」であるかは不明である。
また、上記甲第15~21号証に記載の技術事項は、甲26発明Aの嵩密度向上剤を混合した石炭を用いるコークスの製造方法とは関連性の低い技術分野に係るものであるから、当該技術事項が、甲26発明Aの技術分野における技術常識であるとはいえないし、上記甲第15~21号証に記載の技術事項を考慮しても、甲26発明Aにおいて、「アクリホープGH-2」を、「保水量が320g/g以下」かつ「吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)が、1.2以上2.2以下」(保水量/吸収倍率の比が0.45~0.83)の高分子吸水剤に変更することが動機付けられるとはいえない。
そして、本件明細書の記載によれば、本件発明3の発明特定事項を備えることにより、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の流動性を向上でき、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の搬送時の取扱性を向上できるという効果を奏するものであるところ、そのような効果は、甲第26号証(補助的に甲第27号証)及び甲第15~21号証の記載から当業者が予測し得ない格別顕著なものといえる。この点、甲第22号証の第384、388ページに、炭酸カルシウム及び澱粉において、水分量が多くなるにつれて流動性指数が小さくなる(流動性が悪くなる)ことが記載されていても同様である。
よって、本件発明3は、甲第26号証(補助的に甲第27号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 本件発明3と甲26発明Bとの対比・判断
本件発明3と甲26発明Bとを対比すると、上記一致点26において一致するとともに、上記相違点26-1、相違点26-2において相違する。
そして、相違点26-1、相違点26-2についての判断は、上記ア(イ)の判断と同様である。
ウ 本件発明3と甲26発明Cとの対比・判断
本件発明3と甲26発明Cとを対比すると、上記一致点26において一致するとともに、上記相違点26-1、相違点26-2において相違する。
そして、相違点26-1、相違点26-2についての判断は、上記ア(イ)の判断と同様である。
エ 本件発明3と甲26発明Dとの対比・判断
本件発明3と甲26発明Dとを対比すると、上記一致点26において一致するとともに、上記相違点26-1、相違点26-2において相違する。
そして、相違点26-1、相違点26-2についての判断は、上記ア(イ)の判断と同様である。
オ 本件発明3と甲26発明Eとの対比・判断
(ア)対比
a 甲26発明Eにおける、「原料石炭」は、本件発明3における「石炭」に相当する。
b 甲26発明Eにおける、「高吸水性樹脂」は、本件発明3における「高分子吸水剤」に相当する。
c 甲26発明Eにおいて、「原料石炭」と「高吸水性樹脂」とを「混合」することは、本件発明3における、「固体燃料及び/又は鉄鋼原料に対し、高分子吸水剤を接触させる工程」に相当する。
d 甲26発明Eによって、石炭における何らかの性質が変化していることは自明である。
e そうすると、本件発明3と甲26発明Eとは、上記一致点26において一致するとともに、以下の相違点26-3、相違点26-4において相違する。
<相違点26-3>
本件発明3は、「高分子吸水剤の保水量が320g/g以下」であるのに対し、甲26発明Eは、「KIゲル201K」の「保水量」が不明である点。
<相違点26-4>
本件発明3は、「高分子吸水剤の吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)が、1.2以上2.2以下」であるのに対し、甲3発明Dは、「KIゲル201K」の「吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)」が不明である点。
(イ)判断
a 相違点26-3について
甲第4号証の段落【0043】には、KIゲル-201K(クラレトレーディング株式会社製)の脱イオン水の吸水倍率が吸水性樹脂に対して200倍であることが記載されているから、甲26発明Eにおいて、「KIゲル201K」(クラレ社製)の吸水倍率も吸水性樹脂に対して200倍であると認められる。
ここで、この「吸水倍率」は、「吸水性樹脂」が吸収する脱イオン水の量を「吸水性樹脂」の量との比で表したものであるから、本件発明3の「吸収倍率」と同等のものである。
そして、本件発明3の「保水量」は、吸収倍率試験後(高吸水性樹脂の吸水性試験後)のティーバッグを脱水した後の重量から求められる水分量であるから、「保水量」と「吸収倍率」との間に、「保水量」≦「吸収倍率」の関係があることは自明である。
そうすると、甲26発明Eにおいて、「含水ゲルを生成する有機高分子化合物」である「KIゲル201K」の「保水量」は、200g/g以下であると認められ、この値は、本件発明3の「320g/g以下」を満たすものである。
よって、上記相違点26-3は実質的な相違点ではない。
b 相違点26-4について
甲26発明Eにおいて、「KIゲル201K」の「保水量」は、200g/g以下であるとしても、その具体的な値は不明であるから、「吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)」も不明である。
よって、上記相違点26-4は実質的な相違点である。
一方、甲第15~21号証には、上記2(2)ア(イ)bに摘記した事項が記載されている。しかしながら、甲第15~21号証には、「KIゲル201K」の「保水量」の値は記載されていないから、「KIゲル201K」の「吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)」が「1.2以上2.2以下」であるかは不明である。
また、上記甲第15~21号証に記載の技術事項は、甲26発明Eの嵩密度向上剤を混合した石炭を用いるコークスの製造方法とは関連性の低い技術分野に係るものであるから、当該技術事項が、甲26発明Eの技術分野における技術常識であるとはいえないし、上記甲第15~21号証に記載の技術事項を考慮しても、甲26発明Eにおいて、「KIゲル201K」を、「保水量が320g/g以下」かつ「吸収倍率と保水量との比(吸収倍率/保水量)が、1.2以上2.2以下」(保水量/吸収倍率の比が0.45~0.83)の高分子吸水剤に変更することが動機付けられるとはいえない。
そして、本件明細書の記載によれば、本件発明3の発明特定事項を備えることにより、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の流動性を向上でき、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の搬送時の取扱性を向上できるという効果を奏するものであるところ、そのような効果は、甲第26号証(補助的に甲第4号証)及び甲第15~21号証の記載から当業者が予測し得ない格別顕著なものといえる。この点、甲第22号証の第384、388ページに、炭酸カルシウム及び澱粉において、水分量が多くなるにつれて流動性指数が小さくなる(流動性が悪くなる)ことが記載されていても同様である。
よって、本件発明3は、甲第26号証(補助的に甲第4号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
カ 本件発明3と甲26発明Fとの対比・判断
本件発明3と甲26発明Fとを対比すると、上記一致点26において一致するとともに、上記相違点26-3、相違点26-4において相違する。
そして、相違点26-3、相違点26-4についての判断は、上記オ(イ)の判断と同様である。
キ 本件発明3と甲26発明Gとの対比・判断
本件発明3と甲26発明Gとを対比すると、上記一致点26において一致するとともに、上記相違点26-3、相違点26-4において相違する。
そして、相違点26-3、相違点26-4についての判断は、上記オ(イ)の判断と同様である。
(3)本件発明4、5について
本件発明4、5は、本件発明3の記載を引用するものであり、本件発明3の発明特定事項をすべて備えるものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明3が甲第26号証(補助的に甲第4、27号証)に記載された発明であるとはいえない以上、甲第24号証の段落【0050】に記載された、アクリホープが、アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物であるとの事項を考慮しても、本件発明4、5についても同様に、甲第26号証(補助的に甲第4、24、27号証)に記載された発明であるとはいえない。また、本件発明3が、甲第26号証(補助的に甲第4、27号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明4、5についても同様に、甲第26号証(補助的に甲第4、24、27号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)本件発明6について
ア 本件発明6と甲26発明A~甲26発明Dとの対比・判断
本件発明6と甲26発明A~甲26発明Dとを対比すると、少なくとも、上記相違点26-1、相違点26-2において相違する。そして、上記相違点26-1、相違点26-2についての判断は、上記(2)ア(イ)で検討したとおりである。
よって、本件発明6は、甲第26号証(補助的に甲第4、27号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 本件発明6と甲26発明E~甲26発明Gとの対比・判断
本件発明6と甲26発明E~甲26発明Gとを対比すると、少なくとも、上記相違点26-3、相違点26-4において相違する。そして、上記相違点26-3、相違点26-4についての判断は、上記(2)オ(イ)で検討したとおりである。
よって、本件発明6は、甲第26号証(補助的に甲第4、27号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(5)本件発明7、8について
本件発明7、8は、本件発明6の記載を引用するものであり、本件発明6の発明特定事項をすべて備えるものであるが、上記(4)で述べたとおり、本件発明6が甲第26号証(補助的に甲第4、27号証)に記載された発明であるとはいえない以上、甲第24号証の段落【0050】に記載された、アクリホープが、アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物であるとの事項を考慮しても、本件発明7、8についても同様に、甲第26号証(補助的に甲第4、24、27号証)に記載された発明であるとはいえない。また、本件発明6が、甲第26号証(補助的に甲第4、27号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明7、8についても同様に、甲第26号証(補助的に甲第4、24、27号証)に記載された発明及び甲第15~22号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(6)小括
以上のとおり、申立理由1-9(新規性)、申立理由2-9(進歩性)、取消理由6(新規性、進歩性)によっては、本件特許の請求項3~8に係る特許を取り消すことはできない。
10 申立理由3(サポート要件)
(1)ア 申立人は、特許異議申立書の3-4(3)ウ.(1)において、概ね以下のとおり主張する。
「本件明細書の記載によれば、本件発明の課題を解決するためには、本件訂正前の請求項1に記載の高分子吸水剤の保水量の要件(320g/g以下)を充足することに加えて、改質の対象である固体燃料及び/又は鉄鋼原料の水分含有量を、実施例で効果を奏することが示された、当該固体燃料及び/又は鉄鋼原料100質量部に対して20質量部以上の範囲に特定する必要があると解釈されるから、当該特定のない本件訂正前の請求項1~5は、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の水分含有量に関する本件の課題を解決するための要件を充足しておらず、本件発明の課題を解決できない発明が含まれる。」
イ 以下、検討する。
(ア)本件発明が解決しようとする課題は、「固体燃料及び/又は鉄鋼原料の流動性を向上させるための固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法を提供すること」であると認められる(段落【0007】)。
(イ)上記課題に関し、本件明細書には以下の記載がある。
a 「上記のような石炭、コークス、石灰石、鉄鉱石、焼結鉱、製鉄所ダスト、木質チップ、木質ペレット、RDF及びRPF等(以下、固体燃料及び/又は鉄鋼原料という。)の置き場(ヤード)は、屋外に設置されているケースも多く、貯蔵後の固体燃料及び/又は鉄鋼原料の水分含有量が降雨や粉塵防止用の散水等により高くなり、その結果、固体燃料及び/又は鉄鋼原料における表面の吸着性が増大し、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の搬送経路におけるベルトコンベアのベルトや異物除去のための櫛(格子、網目は問わない)、あるいは搬送対象物を貯蔵若しくは仮置きするためのホッパー等において詰まり等の不具合が発生していた。」(段落【0002】)
b 「本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、固体燃料及び/又は鉄鋼原料に対し、単に保水量の高い高分子吸水剤を接触させるのではなく、特定の高分子吸水剤を接触させることにより、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の流動性が向上し取り扱いを容易にできるという顕著な効果があることを見出し、本発明を完成させるに至った。」(段落【0008】)
c 「本発明により固体燃料及び/又は鉄鋼原料の流動性が向上するメカニズムの詳細は明らかではないが、次のように推測される。固体燃料及び/又は鉄鋼原料が水と接触し、その表面が濡れて湿った状態となると、固体燃料及び/又は鉄鋼原料において水架橋等による凝集、また、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の粒子間の間隙水が生じることで毛管力に基づく吸引力が高まり、団粒が生じ、流動性が悪化しているものと推測される。このような状態の固体燃料及び/又は鉄鋼原料に、所定の高分子吸水剤、すなわち、保水量が320g/g以下である高分子吸水剤を接触させると、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の表面に付着している水分、及び/又は、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の粒子間に存在する間隙水、が高分子吸水剤により吸水され、上記表面に付着している水分及び前記間隙水に起因する粒子間での相互作用が低下する。さらに、吸水後の上記高分子吸水剤が有する表面の滑性により、上記高分子吸水剤が滑剤として機能することで、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の流動性が向上するものと考えられる。」(段落【0010】)
d 「本発明の改質方法が用いられる固体燃料及び/又は鉄鋼原料は、高分子吸水剤を接触させる前の水分含有量が、固体燃料及び/又は鉄鋼原料100質量部に対し、5質量部以上30質量部以下であることが好ましく、10質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。一般的に、固体燃料及び/又は鉄鋼原料100質量部に対し、水分含有量が30質量部より大きい固体燃料及び/又は鉄鋼原料は、スラリー化し、用いられる頻度が極端に減少すること、及び、スラリー化した固体燃料及び/又は鉄鋼原料は流動性を有するため、凝集に起因する取扱性の問題点が生じにくいためである。
また、固体燃料及び/又は鉄鋼原料100質量部に対し、水分含有量が5質量部より少ない場合は、水架橋等による凝集や、粒子間の間隙水による毛管力に起因する団粒といった現象が生じておらず、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の流動性の悪化に起因する取扱性の問題点が生じないためである。」(段落【0012】)
(ウ)本件明細書の上記(イ)の記載を考慮し、本件発明が「固体燃料及び/又は鉄鋼原料に対し、高分子吸水剤を接触させる」ことを特定していることの技術的意義を踏まえると、本件発明は、明示的には特定されていないものの、実質的には、高分子吸水剤を接触させる前の固体燃料及び/又は鉄鋼原料が、その表面の吸着性が増大する程度の量の水分を含有していることが前提となっているものと解される。
(エ)そして、本件発明においては、固体燃料及び/又は鉄鋼原料に対し所定の高分子吸水剤を接触させることにより、上記水分が吸水され、粒子間での相互作用が低下するとともに、吸水後の高分子吸水剤が滑剤として機能することで、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の流動性が向上するものと理解できる。
(オ)また、段落【0026】~【0036】の石炭の改質試験において、表2には、保水量が320g/g以下である高分子吸水剤が添加された試験用試料(実施例1及び2)は、対石炭加水率10%、15%及び20%のいずれにおいても、何も添加されていないBlank試験用試料における測定結果と比較して、落下時間が短く、流動性が向上したことが記載され、表3にも、保水量が320g/g以下である高分子吸水剤が添加された試験用試料(実施例3~5)は、対石炭加水率10%、15%及び20%のいずれにおいても、何も添加されていないBlank試験用試料における測定結果と比較して、落下時間が短く、流動性が向上したことが記載されている。
(カ)そうすると、本件発明3~8は、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の水分含有量について、当該固体燃料及び/又は鉄鋼原料100質量部に対し20質量部以上に特定していないとしても、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
ウ よって、本件発明3~8について、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものである。
(2)ア 申立人は、特許異議申立書の3-4(3)ウ.(2)において、概ね以下のとおり主張する。
「本件明細書の記載によれば、高分子吸水剤の添加量が0.01重量部を大きく下回る場合、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の十分な脱水ができず、本件の課題を解決しないことは明らかであるから、高分子吸水剤の添加量を規定しない本件訂正前の請求項1~3、5には、本件課題を解決しない範囲が含まれる。」
イ 以下、検討する。
(ア)本件発明が解決しようとする課題は、「固体燃料及び/又は鉄鋼原料の流動性を向上させるための固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法を提供すること」であると認められる(段落【0007】)。
(イ)上記課題に関し、段落【0022】には、「また、添加される高分子吸水剤の量は、特に限定されないが、例えば、固体燃料及び/又は鉄鋼原料100質量部に対し、0.01質量部以上2.00質量部以下であることが好ましい。高分子吸水剤の量が、固体燃料及び/又は鉄鋼原料100質量部に対し、0.01質量部より少ない場合は、固体燃料及び/又は鉄鋼原料に吸着・付着している水分が適度に吸水されず、濡れに起因する凝集及び/又は団粒化を防止することができない場合がある。また、高分子吸水剤の量が、固体燃料及び/又は鉄鋼原料100質量部に対し、2.00質量部より多い場合は、過剰に高分子吸水剤が存在することとなり、費用対効果の面から好ましくない。
・・・
なお、高分子吸水剤の使用量は、用いられる固体燃料及び/又は鉄鋼原料の採掘地(又は生産地)及び貯蔵環境等から、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の水分含有量を推測し、決定することとしてもよい。例えば、降水や散水後からの日数や、貯蔵環境の湿度に応じて固体燃料及び/又は鉄鋼原料の水分含有量を推測し、高分子吸水剤の使用量を決定することとしてもよい。
また、高分子吸水剤の使用量は、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の水分含有量を測定し、測定値に基づき決定することとしてもよい。」と記載されている(下線は当審が付与し、「・・・」は記載の省略を表す。)。
すなわち、高分子吸水剤の使用量(添加量)には適正な範囲があり、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の水分含有量に対し、高分子吸水剤の使用量(添加量)が少ない場合は、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の流動性を向上させることができない場合があると解される。
(ウ)一方、高分子吸水剤の添加量が0.01重量部を大きく下回る場合であっても、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の水分含有量も少なければ、固体燃料及び/又は鉄鋼原料に吸着・付着している水分が適度に吸水され、濡れに起因する凝集及び/又は団粒化を防止し、流動性を向上させることができるといえる。また、上記(イ)に摘記したとおり、高分子吸水剤の使用量は、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の水分含有量を推測又は測定し、それらに基づき決定することとしてもよいものであるから、必要な使用量を大きく下回る量を添加することは、そもそも想定されないといえる。
そうすると、本件発明3、5、6、8は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
ウ よって、本件発明3、5、6、8について、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものである。
(3)小括
以上のとおり、申立理由3(サポート要件)によっては、本件特許の請求項3~8に係る特許を取り消すことはできない。
11 申立理由4(明確性要件)
(1)ア 申立人は、特許異議申立書の3-4(3)エ.において、概ね以下のとおり主張する。
「本件訂正前の請求項1は、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の水分含有量を規定していないところ、本件明細書の段落【0012】には、「本願明細書において記載される用語「水分含有量の高い固体燃料及び/又は鉄鋼原料」には、加水量が多く固体燃料及び/又は鉄鋼原料がスラリー化しているものは含まれない。・・・一般的に、固体燃料及び/又は鉄鋼原料100質量部に対し、水分含有量が30質量部より大きい固体燃料及び/又は鉄鋼原料は、スラリー化し、」と記載されていることから、水分含有量を規定しない本件訂正前の請求項1の固体燃料及び/又は鉄鋼原料の範囲は明確でない。」
イ 以下、検討する。
申立人の主張は、要するに、本件発明3~5は、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の水分含有量を規定していないが、本件明細書の段落【0012】の記載を考慮すると、上記水分含有量が30質量部以下に規定されていると解することもできるため、本件発明3~5の固体燃料及び/又は鉄鋼原料の範囲は明確でない、というものと解される。
しかしながら、上記(1)イ(ウ)で述べたとおり、本件発明は、明示的には特定されていないものの、実質的には、高分子吸水剤を接触させる前の固体燃料及び/又は鉄鋼原料が、その表面の吸着性が増大する程度の量の水分を含有していることが前提となっているものと解される。すなわち、本件発明3~5における固体燃料及び/又は鉄鋼原料の水分含有量は、実質的には、固体燃料及び/又は鉄鋼原料の表面の吸着性が増大する程度の量であると解されるから、本件発明3~5の固体燃料及び/又は鉄鋼原料の範囲は明確である。
ウ よって、本件発明3~5について、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確である。
(2)小括
以上のとおり、申立理由4(明確性要件)によっては、本件特許の請求項3~5に係る特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した申立理由及び当審から通知した取消理由によっては、本件特許の請求項3~8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項3~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項1、2が本件訂正により削除されたことにより、申立人による請求項1、2に係る特許異議の申立てについては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700365