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特許異議申立

2023-701375

耐圧ボトル

審判番号
2023-701375
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-138837
登録番号
7300922
請求日
2023年12月26日
審決日
2024年03月26日
公報発行日
2024年04月26日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社吉野工業所
  • 【権利者代理人】棚井 澄雄
  • 【権利者代理人】鈴木 三義
  • 【権利者代理人】仁内 宏紀
  • 【異議申立人】西森 由子
審判長/審判官
  • 審判長 藤原 直欣
  • 審判官 西堀 宏之
  • 審判官 藤井 眞吾
分類
P1651.121-Y (B65D) / P1651.537-Y (B65D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第36条第6項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7300922号発明「耐圧ボトル」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7300922号の請求項1~5に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7300922号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、令和1年7月29日を出願日とする出願であって、令和5年6月22日にその特許権の設定登録がされ、令和5年6月30日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1~5に係る特許に対し、令和5年12月26日に特許異議申立人西森由子(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~5の特許に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 口部、肩部、胴部、および底部が、ボトル軸方向に沿って上方から下方に向けてこの順に連設されるとともに、合成樹脂材料で一体に形成され、 前記底部は、ボトル軸上に位置する中央壁部と、前記中央壁部の外周縁と前記胴部とを連結する連結周壁部と、を備え、 前記連結周壁部に、周方向に間隔をあけて3つ以上の縦溝部が形成され、 前記連結周壁部において周方向に隣り合う前記縦溝部同士の間に位置する各部分に、前記中央壁部よりも下側に向けて突出した脚部が形成され、 前記脚部の下端部に、周方向に延びる接地部が形成された耐圧ボトルであって、 前記縦溝部を画成する内面のうち、径方向の外側を向く溝底面は、下方に向かうに従い、径方向の内側に向けて延びるとともに、前記胴部から下方に向けて延びる上部と、前記上部から下方に向けて延び、前記中央壁部の外周縁に連結された下部と、を備え、 前記上部は、上端部を除く全域にわたって、下方に向かうに従い、径方向の内側に向けて直線状に延び、 前記下部は、径方向の外側に向けて突の曲面状に形成され、 ボトル軸に沿う縦断面視において、この耐圧ボトルの外面に沿う前記下部の長さは、この耐圧ボトルの外面に沿う前記上部の長さ以上となっており、 前記中央壁部は、上下方向から見て円形状を呈し、かつ平坦、若しくは下方に向けて突の曲面状に形成され、 前記脚部は、前記接地部から径方向の内側に向かうに従い、上方に向けて延び、前記中央壁部の外周縁に連結された内壁部を備え、 前記内壁部と前記中央壁部との接続部分は、前記下部と前記中央壁部との接続部分より径方向の外側に位置している、耐圧ボトル。 【請求項2】 前記縦断面視において、この耐圧ボトルの外面に沿う前記上部の長さは、この耐圧ボトルの外面に沿って、前記上部の上端縁から前記下部を介して、ボトル軸が位置する前記中央壁部の中心に至るまでの長さの30%以上40%以下となっている、請求項1に記載の耐圧ボトル。 【請求項3】 前記中央壁部は、平坦な円板状に形成されている、請求項1または2に記載の耐圧ボトル。 【請求項4】 前記縦断面視において、この耐圧ボトルの外面に沿う前記上部の長さは、前記下部と前記中央壁部との接続部分と、ボトル軸と、の径方向の距離より長くなっている、請求項1から3のいずれか1項に記載の耐圧ボトル。 【請求項5】 前記上部のうち、上端部より下方に位置する部分のボトル軸方向に対する傾斜角度は、10°以上30°以下となっている、請求項1から4のいずれか1項に記載の耐圧ボトル。」 第3 申立理由の概要 申立人は、本件特許の請求項1~5に係る特許に対して、本件特許異議申立書に以下の甲第1号証及び甲第2号証を添付して、大要、次の申立理由を主張している。 1 申立理由1(甲第1号証及び甲第2号証に基づく進歩性) 本件発明1~5は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 2 申立理由2(明確性) 本件発明1~5は明確でなく、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合しないため、請求項1~5に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消すべきものである。 [証拠方法] 甲第1号証:特開平9-315419号公報 甲第2号証:特開平11-106616号公報 (以下、甲第1号証を「甲1」という。他の甲各号証についても、同様である。) 第4 当審の判断 1 申立理由1(進歩性)について (1)甲1に記載された事項・発明 ア 甲1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付与し、「・・・」は文章の省略を表す。)。 (ア)「【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明はベースカップを使用しない延伸ブロー形成により成形した自立容器に関する。さらに詳しくはガス含有小容量自立容器や果汁、乳酸等の入ったガス含有自立容器に関する。 【0002】 【従来の技術】従来ベースカップを使用しない延伸成形された自立型容器として、特公昭48-5708号公報、特公昭61-9170号公報、特開平1-267146号公報、特公昭59-40693号公報等に記載された容器が知られている。これ等の容器はいずれも容器の底部に脚部を形成して自立出来るようにしたものである。これ等従来の容器の問題点はこれ等の容器の底部を分割する谷底面と、谷底面を挾む両側壁部即ち脚部側壁との境界線で区画した放射状に周縁に向って広がる谷部、を有する底部は半球殻の一部をなす谷底面により耐内圧性を向上させる効果を期待したものである。ところがこのような自立容器には経時変化が生ずることがわかった。自立容器にガス含有内容物を収納すると時間の経過とともに底面が変形し、下方に突出して来る傾向が大きく、底部中央部分が膨出して接地し、自立安定性がなくなる場合もある。特に、内容量が1000ml以下の小容量自立容器においてこの傾向が顕著に現れる。小容量容器には脚部の賦形性悪く、耐熱安定性と、耐ESC性が悪くクレージングが発生する問題もある。」 (イ)「【0003】 【発明が解決しようとする課題】本発明はガスを含有する内容物を収納しても経時的に変形しない底面を有する自立容器を提供するものである。特に容量200~1000mlの小容量容器は重量のバランスが悪ので脚部の賦形性を良好にして自立安定性を向上する必要がある。」 (ウ)「【0005】 【発明の実施の形態】内容量が1000ml以下の小容量容器では、特公昭48-5708号公報等に開示された従来の底部形状では熱水殺菌時に底中央部が膨出する等の変形が発生し充分な耐圧性が得られない。また、果汁や乳酸菌を含むガス含有飲料を冷間充填した容器を熱水殺菌すると、容器内の内圧が高くなると共に容器を構成する材料の剛性が失われて容器の耐熱圧性が低下するが、小容量容器ではこの傾向が著しい。ここで言う耐熱圧性とは、ガス含有飲料を充填した容器を熱水等で殺菌する場合、これに耐える性能を意味する。従来用いられている耐熱圧性容器としては、特公平7-37260号公報に記載されているように容器の半球形状の底部にベースカップを装着するものである。しかしながら、使用済みの容器を資源として再利用するためには容器と材質の異なるベースカップを使用することができないが、自立のため脚部を形成して同一材質の容器とすると谷底面を半球殻の一部としても耐熱圧性は良好とならない。 【0006】本発明者は種々研究した結果、容器底面の谷部に直線部分を有さない半球形状や特公昭59-40693号公報に開示された部分的に直線部分を有する従来の底部形状では小容量容器としたとき耐変形強度が弱く充分な耐圧性が得られないことが判明した。さらに研究した結果、小容量容器は谷部が半球殻の一部をなす形状では耐熱圧性は良くならないことがわかった。谷部が弧状部分と直線状部分の組み合わせからなる場合でも、弧状部分の交差する位置が径方向及び高さ方向で特定範囲の位置にないと、耐熱圧性が悪く、経時変化が大きい。また、弧状部分の半径が容器胴部の直径の50~300%でないと耐熱圧性が悪く、経時変化が発生する。弧状部分の半径は50%~300%、特に50~200%の範囲にあるのが好ましい。弧状部分の半径が50%未満であれば耐熱圧性が悪く、経時変化も大きい。 【0007】本発明は容器の底面を形成する谷底面が、水平面と15~25度の角度をなす平らな面を有するa傾斜面と、水平面と45~70度の角度をなす平らな面を有するb傾斜面とで形成されているところに大きな特徴があるが、それだけでは経時変化を防止することはできない。この二傾斜面を特定の位置で交差して谷底面を形成するところにも重要な特徴がある。前記二傾斜面は容器の中心軸から径方向に容器胴部の半径の50%~75%高さ方向に容器胴部の直径の8%~20%の位置で交差しなければならない。この二傾斜面の傾斜角度は夫々前述の15度~25度、45~70度であり、交差位置が前記の位置にあると、ガス含有内容物を収納して放置したときの経時変化は、a傾斜面が容器の外方に膨出し、b傾斜面が容器の内方に膨出するように作用し、変形を防止するが、この両傾斜面の交差点が変形の反点となる。そして、二傾斜面の傾斜角度が重要であり、a傾斜面の傾斜角度が15度未満では底部の変形が大きくなり、25度を越えても賦形性が悪くなる。またb傾斜面の傾斜角度が45度未満では賦形性が悪くなり、70度を越えると底部の変形が大きくなる。さらに傾斜した二傾斜面の交差する位置も重要であって、交差点は中心軸線から径方向に容器胴部の半径の50%~75%、接地面から高さ方向に容器胴部の直径の8%~20%の位置で交差しなければならない。交差位置が径方向に容器胴部の半径の50%より小さければ賦形性が悪くなり、75%より大きければ底部の変形が大きくなり、かつ接地面から高さ方向に容器胴部の直径の8%より小さいと底部の変形が大きくなり、20%を越えると賦形性が悪くなるからである。 【0008】底中央部から底部と胴部の結合部に向って上昇傾斜した水平面と15度~25度の角度をなす平らな面を有するa傾斜面は中心軸線上に半径の原点をもつ弧面に比べて応力集中点が底中央部側から谷部側に移行するので底部の変形が防止される。このa傾斜面に代えて、容器の胴部の直径の50%~300%の半径の弧面を設けることもできる。b傾斜面は前述の通り直線状の斜面である。この弧面とb傾斜面との交差位置は同様に容器の径方向に中心軸線から容器胴部の半径の50%~75%の位置で、かつ接地面から高さ方向に容器胴部直径の8%~20%の位置で交差しなければならない。 【0009】b傾斜面と胴下端部の結合部には、小半径の曲面の連結部を設けるが、b傾斜面が平らな面であるので、この連結部を設けることにより結合部に急激な変曲点が発生せず、応力の集中が防止され、経時変形を防ぐことができる。この連結部は半径は胴部の直径に対して5~30%の小径の曲面である。連結部の半径が5%未満では応力集中が生じて変形が起り、30%を越えても同様な現象が生じる。脚部頂面の周辺を結ぶ円弧が有効な自立安定効果を奏するが、この円弧の半径が胴部の直径の0.65~0.85倍の範囲にあると自立性が良好となる。この円弧の径が0.65倍未満では自立安定性に欠け、0.85を越えると賦形性が悪くなる。 【0010】a傾斜面またはa弧面とb傾斜面との交差点を容器胴部の直径の5%~30%の小さい半径を有する弧面で連結すると応力の集中が防止され、経時変形が防げる。また、底面は奇数等分に分割すると耐圧性、自立性が良く、特に5等分割することが好ましい。底中央部を熱結晶化すると未延伸ないし低延仲のこの部分の剛性や耐熱性が向上する。本発明の特別の構成の容器は、内容が200ml~1000mlの小容量容器において特に優れた効果を奏する。このような小容量容器では経時変形が大きく、底中央部が突出して接地する問題が多かったが、本発明により解決することができた。本発明で使用する合成樹脂としては、ポリエステル樹脂が挙げられ、特にポリエチレンテレフタレート(PET)、これを主体とする共重合体やブレンド物が好ましい。二軸延仲成形(当審注:「二軸延伸成形」の誤記)は通常のブロー成形が用いられる。」 (エ)「【0011】 【実施例】図面に基づいて本発明を説明する。 【0012】図1は本発明の二軸延伸成形した内容量500mlの自立容器である。1は容器、2は胴部であり、3は底部である。底部は谷部面、脚部4及び底中央部から形成されており、連結部7で胴下端部と結合している。5は脚部の頂面の外周部であり、接地部である。6は脚部側壁、12は容器の高さ方向の中心軸線である。 【0013】図2は中心軸線12に沿った底部の断面を示す。8は底中央部であり、延伸されていないので厚肉となっているが、熱結晶化されている。9は底中央部から径方向外方に上昇傾斜した水平面と20度の角度を有する平らな面を有する傾斜面であって、本発明で言うa斜面である。10は水平面と60度の傾斜角度をなす平らな面を有する傾斜面であって、本発明で言うb傾斜面である。a傾斜面9とb傾斜面10は、中心軸線12から径方向に胴部の半径35mmの70%である25mm、接地面から高さ方向に胴部の直径の約15%の10mmの位置の交差点13で結合し、谷底面を形成している。この交差点は半径12mmの小さな曲面で形成されている。b傾斜面10は胴下端部の連続部11で胴下端部と結合しているが、この連結部11は小さい半径をもつ曲面になっている。 【0014】図3は別の実施例であって、図2のa傾斜面の代わりに42mmの半径を有する弧面11とした以外は図2と同様にした実施例である。 【0015】図4は図2の容器の底面14を示し、a傾斜面とb傾斜面10とは交差点13で結合している。」 (オ)「【0019】実施例3 PETを用いて射出成形した径22mm、長さ105mmのPET製プリフォームを用いて二軸延伸ブロー成形し、図1、図3、図4に示す内容量500mlの容器を製造した。底中央部周縁から上方に広がる弧面と、胴下端部より絞り込まれるb傾斜面の角度は60度で弧面との交点の位置が、径方向48mm、高さ方向10mmの位置にあり、弧面の半径は46mmであった。谷底の巾は4mmである。」 (カ)「【図1】 [図:0001409186000001.jpg] 【図3】 [図:0001409186000002.jpg] 【図4】 [図:0001409186000003.jpg] 」 イ 甲1から以下の事項が認定できる。 (ア)図1から、耐圧ボトルの上方に「口部」を有し、当該口部から下方に連設される「肩部」を有し、当該肩部から下方に胴部2が連接されていることが看取できる。 (イ)図3、図4から、「底中央部8」から下側に向けて突出し、「底部3」の周壁部において周方向に隣り合う5つの「脚部4」が形成され、当該「脚部4」のそれぞれの間に周方向に間隔をあけて「5つの縦溝」を有していることが看取できる。 (ウ)図1、図3から、「底中央部8」の外周縁と「胴部2」とは、「底部3」の周壁により連結されることが看取できる。 (エ)図3から、「脚部4」が、「接地部5」から径方向の内側に向かうに従い、上方に向けて延び、「底中央部8」の外周縁に連結される「内壁部」を備えることが看取できる。 ウ 甲1に記載された発明 以上より、甲1には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「口部、肩部、胴部2、および底部3が、ボトル軸方向に沿って上方から下方に向けてこの順に連設されるとともに、合成樹脂が使用され二軸延伸成形され、 底部3は、ボトル軸上に位置する底中央部8と、当該底中央部8の外周縁と胴部2とを連結する底部3の周壁部と、を備え、 当該底部3の周壁部において周方向に隣り合い、底中央部8よりも下側に向けて突出した5つの脚部4が形成され、 周方向に間隔をあけて当該脚部4の間にそれぞれ形成される5つの縦溝部を有し、 脚部4の下端部に、周方向に延びる接地部5が形成された容器であって、 縦溝部を画成する内面のうち、径方向の外側を向く谷底面は、下方に向かうに従い、径方向の内側に向けて延びるとともに、胴部2から下方に向けて延びる小半径の曲面の連結部7及びb傾斜面10と、当該b傾斜面10から下方に向けて延び、底中央部8の外周縁に連結された弧面11[F15]と、を備え、 当該b傾斜面10は、水平面と15~25度の角度で、下方に向かうに従い径方向の内側に向けて直線状に延び、 当該弧面11は、水平面と45~70度の角度で、径方向の外側に向けて突の曲面状に形成され、 かつ、b傾斜面10と弧面11とが、容器の中心軸から径方向に容器胴部の半径の50%~75%、高さ方向に容器胴部の直径の8%~20%の位置で交差しており、 当該脚部4は、接地部5から径方向の内側に向かうに従い、上方に向けて延び、底中央部8の外周縁に連結された内壁部を備えた容器。」 (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 (ア)甲1発明の「口部」、「肩部」、「胴部2」、「底部3」、「底中央部8」、「脚部4」、「接地部5」は、本件発明1の「口部」、「肩部」、「胴部」、「底部」、「中央壁部」、「脚部」、「接地部」に相当する。 (イ)甲1発明の「底中央部8」の外周縁と「胴部2」とを連設する「底部3の周壁部」は、本件発明1の「連設周壁部」に相当する。 (ウ)甲1発明の「脚部4」の間にそれぞれ形成される「5つの縦溝部」は、本件発明1の「周方向に間隔をあけて」形成される「3つ以上の縦溝部」に相当する。 (エ)甲1発明の「谷底面」、「弧面11」は、本件発明1の「溝底面」、「下部」に相当する。 (オ)甲1発明の上部は、「小半径の曲面の連結部7」と、当該「小半径の曲面の連結部7」を除く全域にわたって、下方に向かうに従い径方向の内側に向けて直線状に延びる「b傾斜面10」とから構成されることから、甲1発明の「小半径の曲面の連結部7」、「小半径の曲面の連結部7及びb傾斜面10」は、本件発明1の「上端部」、「上部」に相当する。 (カ)甲1発明の「容器」は、ガス含有内容物を収容するものであるから、本件発明1の「耐圧ボトル」に相当する。 以上のことから、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次の通りである。 【一致点】 「口部、肩部、胴部、および底部が、ボトル軸方向に沿って上方から下方に向けてこの順に連設されるとともに、合成樹脂材料で一体に形成され、 前記底部は、ボトル軸上に位置する中央壁部と、前記中央壁部の外周縁と前記胴部とを連結する連結周壁部と、を備え、 前記連結周壁部に、周方向に間隔をあけて3つ以上の縦溝部が形成され、 前記連結周壁部において周方向に隣り合う前記縦溝部同士の間に位置する各部分に、前記中央壁部よりも下側に向けて突出した脚部が形成され、 前記脚部の下端部に、周方向に延びる接地部が形成された耐圧ボトルであって、 前記縦溝部を画成する内面のうち、径方向の外側を向く溝底面は、下方に向かうに従い、径方向の内側に向けて延びるとともに、前記胴部から下方に向けて延びる上部と、前記上部から下方に向けて延び、前記中央壁部の外周縁に連結された下部と、を備え、 前記上部は、上端部を除く全域にわたって、下方に向かうに従い、径方向の内側に向けて直線状に延び、 前記下部は、径方向の外側に向けて突の曲面状に形成され、 前記脚部は、前記接地部から径方向の内側に向かうに従い、上方に向けて延び、前記中央壁部の外周縁に連結された内壁部を備えた、耐圧ボトル。」 【相違点1】 本件発明1は、「内壁部と中央壁部との接続部分は、下部と中央壁部との接続部分より径方向の外側に位置している」のに対して、甲1発明は、「内壁部と底中央部8との接続部分」及び「弧面11と底中央部8との接続部分」の位置関係が不明である点。 【相違点2】 本件発明1は、「ボトル軸に沿う縦断面視において、この耐圧ボトルの外面に沿う前記下部の長さは、この耐圧ボトルの外面に沿う前記上部の長さ以上となって」いるのに対して、甲1発明は、「弧面11」と「小半径の曲面の連結部7及びb傾斜面10」の大小関係が不明である点。 【相違点3】 本件発明1は、「中央壁部」が「平坦、若しくは下方に向けて突の曲面状に形成され」ているのに対して、甲1発明は「底中央部8」の形状が不明である点。 イ 判断 ・相違点1について 甲1発明は、内壁部及び弧面11を有するものであるが、当該内壁部と底中央部8との接続部分、及び、当該弧面11と底中央部8の接続部分に係る配置関係についての説明はない。 甲2においても、図2等に、複数の脚部6と当該脚部6間に位置する複数の縦溝部を有し、当該脚部6の内壁部と底部5の中央部分とが接続し、縦溝部の下部と底部5の中央部分とが接続する構造については記載されていると認められるが、両接続部分の位置関係についての説明はない。 特に、甲1及び甲2に記載された図面は、設計図などの緻密性を備えるものではなく、図面の記載のみから両接続部分の位置関係を読み取ることはできない。 なお、仮に甲2の図2の記載のみから脚部6や縦溝部、底部5の形状や位置関係を読み取れたとしても、それらを甲1発明に適用する動機付けがない。 そして、本件発明1は、内壁部と中央壁部との接続部分を、下部と中央壁部との接続部分より径方向の外側に位置させることで、段落【0046】~【0047】に記載されるように「内圧の上昇時に、内壁部19および下部32と、中央壁部15と、の各接続部分E、Fに、周方向に延びる段部が発現しにくくなり、ひび割れが生ずるのを抑制することができる」、「接地部22に対する内壁部19の立ち上がり角度を急峻にすることが可能になり、内圧の上昇時に、内壁部19が接地部22回りに下方に向けて倒れ込みにくくなり、接地安定性を具備させることができる」といった効果を奏するものである。 よって、相違点1に係る本件発明1の構成は、甲1発明及び甲2記載の事項に基いて当業者が容易に想到し得たものではない。 そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲1発明及び甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明2~5について 本件発明2~5は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(2)で検討したものと同じ理由により、本件発明2~5は、甲1発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 申立理由2(明確性)について (1)申立人の主張について 申立人は特許異議申立書において、以下のとおり主張している。 「・・・「中央壁部15」が「下方に向けて突の曲面状に形成され」ている場合、「径方向の外側に向けて突の曲面状に形成され」ている「下部(32)」との接続部分は、「下部(32)が中央壁部(15)の外周縁に段差なく滑らかに連なっている」どの部分になるのか不明である。特に、下部(32)と中央壁部(15)が同じ曲率半径である場合、その接続部分の位置は不明である。また、下部(32)と中央壁部(15)とが異なる曲率半径である場合であっても、下部(32)と中央壁部(15)が「滑らかに連なる」場合、当該箇所における曲率半径は、下部(32)と中央壁部(15)に設計された曲率半径とは異なる値に変化することになると考えられるが、そのどの部分を接続部分としているのか、本件特許の請求項1記載から理解することはできない。・・・「下部と中央壁部との接続部分」が明確に理解できる場合、・・・「中央壁部」は、上下方向から見てその境目が、下部にあたる箇所と内壁部にあたる箇所とで径方向に異なる位置に存するはずである。・・・「1J:前記中央壁部は、上下方向から見て円形状を呈し」とする特徴は矛盾する。」(異議申立書第8~9ページ) (2)判断 ア 本件発明1は、「内壁部」と「中央壁部」との間に「接続部分」を有すること、及び、「下部」と「中央壁部」との間に「接続部分」を有することで明確である。 イ なお、念のため、「接続部分」について、本件明細書を参照すると以下のとおりである。 (ア)本件特許明細書の段落【0031】~【0032】には、内壁部と中央壁部との接続部分に関して、「内壁部19において中央壁部15に連結された径方向の内端部は、中央壁部15と段差なく滑らかに連なっている。・・・内壁部19のうち、内連設部19aより径方向の内側に位置する部分(以下、内部分という)19bは、前記縦断面視において、上方に向けて突となる曲線状をなすように湾曲している。・・・内部分19bの曲率半径は、内連設部19aの曲率半径より大きくなっている。」と記載されている。 当該記載と技術常識に鑑みれば、当該内壁部と中央壁部との接続部分は、内壁部の内部分19bの曲率半径から、平坦または突の曲面状に形成される中央壁部の曲率半径に連続的に移行するように滑らかに接続する部分であると通常理解することができる。 また、本件特許明細書の段落【0038】には、下部と中央壁部との接続部分に関して、「下部32は、径方向の外側に向けて突の曲面状に形成されている。下部32は、上部31の下端縁、および中央壁部15の外周縁に段差なく滑らかに連なっている。下部32は、前記縦断面視で互いに曲率半径が異なる複数の円弧部分が連ねられて構成されている。図示の例では、前記縦断面視で、下部32のうち、下端部32aの曲率半径は、下端部32aより上方に位置する部分(以下、主部分という)32bの曲率半径より小さくなっている。前記縦断面視で、耐圧ボトル1の外面に沿う下部32の下端部32aの長さ(符号D~F間)は、耐圧ボトル1の外面に沿う下部32の主部分32bの長さ(符号C~D間)より短くなっている。前記縦断面視で、下部32の下端部32aの曲率半径は、例えば約16mmとされ、下部32の主部分32bの曲率半径は、例えば約21mmとなっている。」と記載されている。 上記と同様に当該記載と技術常識に鑑みれば、当該下部と中央壁部との接続部分は、下部の下端部32aの曲率半径から、平坦または突の曲面状に形成される中央壁部の曲率半径に連続的に移行するように滑らかに接続する部分であると通常理解することができる。 そうすると、本件明細書の説明を参照しても、本件発明1を不明確とする理由はない。 (イ)内壁部と中央壁部との接続部分は、下部と中央壁部との接続部分より径方向の外側に位置することから、中央壁部を上下方向から見た場合、その外周縁は径方向に変動する波のような形状となるが、全体としてみれば円形状を呈するものと理解される。 そうすると、内壁部と中央壁部との接続部分が、下部と中央壁部との接続部分より径方向の外側に位置することと、中央壁部が上下方向から見て円形状を呈することとは矛盾する関係にない。 ウ 以上のとおりであるから、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものである。 第5 むすび 以上のとおり、申立人が提出した特許異議の申立の理由及び証拠によっては、請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701375

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