特許異議申立
2024-700990
包装袋
- 審判番号
- 2024-700990
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-110971
- 登録番号
- 7469651
- 請求日
- 2024年10月09日
- 審決日
- 2025年11月11日
- 公報発行日
- 2026年04月24日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】キョーラク株式会社
- 【権利者代理人】SK弁理士法人
- 【権利者代理人】奥野 彰彦
- 【権利者代理人】伊藤 寛之
- 【異議申立人】西森 由子
- 審判長/審判官
- 審判長 田口 傑
- 審判官 稲葉 大紀
- 審判官 長清 吉範
- 分類
- P1651.121-ZDA(B65D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7469651号発明「包装袋」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7469651号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。
特許第7469651号の請求項1~6に係る特許を取り消す。
特許第7469651号の請求項7~9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7469651号の請求項1~7に係る特許についての出願は、令和2年6月26日に出願され、令和6年2月26日付けで特許査定され、令和6年4月9日にその特許権の設定登録がされ、令和6年4月17日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和6年10月 9日 : 特許異議申立人西森由子(以下「申立人」
という。)による請求項1~7に係る特許
に対する特許異議の申立て
令和7年 1月16日付け: 取消理由通知書
令和7年 3月18日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提
出
令和7年 4月 8日付け: 訂正請求書に対する手続補正指令書
令和7年 4月22日 : 訂正請求書についての手続補正書(方式)
の提出
令和7年 4月30日 : 訂正請求書についての手続補正書(方式)
の提出
令和7年 5月 8日付け: 訂正請求があった旨の通知
令和7年 6月 3日 : 申立人による意見書の提出
令和7年 7月 3日付け: 取消理由通知書(決定の予告)
当合議体は、特許権者に対し、令和7年7月3日付けで取消理由(決定の予告)を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者は応答しなかった。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和7年3月18日に提出され、令和7年4月30日に提出された手続補正書(方式)により補正された訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)は、「特許第7469651号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~9について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、次の訂正事項からなるものである。なお、下線は、当審が訂正箇所に付したものである。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記後退部の上下方向の長さHは、0.5cm~2cmである、包装袋。」と記載されているのを、「前記後退部の上下方向の長さHは、0.5cm~2cmであり、
前記底面部を構成するフィルムの23.5℃及び100℃での、前記包装袋の前後方向の引張弾性率をそれぞれM1,M2とすると、M1は、600~1400MPaであり、M2は、200~600MPaであり、M1/M2の値は、1.2~4.0である、包装袋。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~9も同様に訂正する)。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記勾配部の外側には、前記下端溶着部内の残留空気が集まるエアポケットが設けられている、包装袋。」と記載されているのを、「前記勾配部の外側には、前記下端溶着部内の残留空気が集まるエアポケットが設けられており、
M1は、800~1200MPaであり、M2は、300~500MPaであり、M1/M2の値は、1.5~3.0である、包装袋。」に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3及び請求項7も同様に訂正する)。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「前記基準線に対する前記後退部の角度θ2の値は、前記中央部の上端に対する前記勾配部の角度θ1の値よりも小さい、包装袋。」と記載されているのを、「前記基準線に対する前記後退部の角度θ2の値は、前記中央部の上端に対する前記勾配部の角度θ1の値よりも小さく、
前記フィルムは、基材層とシーラント層を有する積層フィルムであり、
前記基材層は、前記基材層を構成するフィルムの製造時において前記基材層を構成するフィルムが流れる方向の直線カット性を有し、
前記シーラント層は、前記シーラント層を構成するフィルムの製造時において前記シーラント層を構成するフィルムが流れる方向の直線カット性を有し、
前記基材層は、延伸ナイロンで構成され、
前記シーラント層は、LLDPEで構成され、
前記基材層とシーラント層は、ドライラミネートによって積層される、包装袋。」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項7も同様に訂正する)。
(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「前記長さL1と、前記長さLは、L/L1≦0.4をさらに満たす、包装袋。」と記載されているのを、「前記長さL1と、前記長さLは、L/L1≦0.4をさらに満たし、
前記長さL1は、15~25cmであり、
前記勾配部の左右方向の長さL2は、3.0~6.0cmであり、
前記包装袋の内側における左右方向の長さL4は、10~23cmであり、
前記底面部の中央線Eから前記中央部の上端までの長さW2は、2.0~5.0cmであり、
前記中央部の左右方向の長さL3は、前記長さW2に対して、2.0≦L3/W2≦3.0であり、
前記長さW2は、前記長さL2に対して、0.5≦W2/L2≦1.7であり、
1.0≧L/L5≧0.5であり、
前記包装袋の側部下端では、前記前面部と前記背面部とを前後方向に固定する固定部が設けられ、
前記中央線Eから前記固定部の上端までの高さH4は、前記底面部の中央線Eから前記包装袋の下端までの長さH3に対して、0.5≧H4/H3≧0.2であり、
前記角度θ1の値は、30~60度であり、
前記基準線に対する前記後退部の角度θ2の値は、5~30度であり、
前記勾配部の外側には、前記下端溶着部内の残留空気が集まるエアポケットが設けられており、
前記エアポケットは、三角形状である、包装袋。」に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項7も同様に訂正する)。
(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「前記包装袋の側部下端では、前記前面部と前記背面部とを前後方向に固定する固定部が設けられ、
前記後退部は、前記固定部より下側に形成されている、包装袋。」と記載されているのを、「前記長さL1と、前記長さLは、L/L1≦0.4をさらに満たし、
前記長さL1は、18~25cmであり、
前記勾配部の左右方向の長さL2は、3.0~6.0cmであり、
前記包装袋の内側における左右方向の長さL4は、10~23cmであり、
前記底面部の中央線Eから前記中央部の上端までの長さW2は、2.0~5.0cmであり、
前記中央部の左右方向の長さL3は、前記長さW2に対して、2.0≦L3/W2≦3.0であり、
前記長さW2は、前記長さL2に対して、0.8≦W2/L2≦1.2であり、
1.0≧L/L5≧0.5であり、
前記包装袋の側部下端では、前記前面部と前記背面部とを前後方向に固定する固定部が設けられ、
前記後退部は、前記固定部より下側に形成されており、
前記中央線Eから前記固定部の上端までの高さH4は、前記中央線から前記包装袋の下端までの長さH3に対して、0.5≧H4/H3≧0.2であり、
前記角度θ1の値は、40~50度であり、
前記基準線に対する前記後退部の角度θ2の値は、5~30度であり、
前記勾配部の外側には、前記下端溶着部内の残留空気が集まるエアポケットが設けられており、
前記エアポケットは、三角形状である、包装袋。」に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項6も同様に訂正する)。
(6) 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に「前記後退部は、前記固定部と干渉しないように当該固定部よりも下側に形成されている、包装袋。」と記載されているのを、「前記後退部は、前記固定部と干渉しないように当該固定部よりも下側に形成されており、
0.9≦W2/L2≦1.1である、包装袋。」に訂正する。
(7) 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1~請求項6の何れかに記載の包装袋であって、
前記包装袋内部で発生した蒸気が排出される蒸気抜きシール部をさらに備える、包装袋。」と記載されているのを、「請求項1~請求項4の何れかに記載の包装袋であって、
前記包装袋内部で発生した蒸気が排出される蒸気抜きシール部をさらに備え、
前記包装袋は、切り取り部と本体部との境界としての開封部を備え、
前記前記背面部と前記前面部を前記開封部に沿って切断することにより、前記切り取り部と前記本体部が分離され、
前記包装袋は、前記フィルムの内面同士が重ねあわされて形成された合掌部を前記切り取り部に備え、
前記包装袋は、前記底面部と、前記前面部と、前記背面部が溶着部において互いに溶着されて前記袋状となり、
前記蒸気抜きシール部では、他の前記溶着部よりも溶着強度が低い溶着部であり、
前記蒸気抜きシール部は、前記合掌部に設けられる、包装袋。」に訂正する。
(8) 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1~請求項6の何れかに記載の包装袋であって、
前記包装袋内部で発生した蒸気が排出される蒸気抜きシール部をさらに備える、包装袋。」とあるうち、請求項5を引用するものについて、請求項1を引用する従属形式に改め、「請求項1に記載の包装袋であって、
前記包装袋の側部下端では、前記前面部と前記背面部とを前後方向に固定する固定部が設けられ、
前記後退部は、前記固定部より下側に形成されており、
前記包装袋内部で発生した蒸気が排出される蒸気抜きシール部をさらに備え、
前記包装袋は、切り取り部と本体部との境界としての開封部を備え、
前記前記背面部と前記前面部を前記開封部に沿って切断することにより、前記切り取り部と前記本体部が分離され、
前記包装袋は、前記フィルムの内面同士が重ねあわされて形成された合掌部を前記切り取り部に備え、
前記包装袋は、前記底面部と、前記前面部と、前記背面部が溶着部において互いに溶着されて前記袋状となり、
前記蒸気抜きシール部では、他の前記溶着部よりも溶着強度が低い溶着部であり、
前記蒸気抜きシール部は、前記合掌部に設けられ、
前記切り取り部の上下方向の長さH1は、6~10cmであり、
前記本体部の上下方向の長さH2は、6~10cmであり、
前記長さH2は、前記底面部の中央線Eから前記包装袋の下端までの長さH3よりも2cm以上長く、
前記長さH3は、3.0~6.0cmである、包装袋。」と記載し、新たに請求項8とする。
(9) 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1~請求項6の何れかに記載の包装袋であって、
前記包装袋内部で発生した蒸気が排出される蒸気抜きシール部をさらに備える、包装袋。」とあるうち、請求項6を引用するものについて、請求項1を引用する従属形式に改め、「請求項1に記載の包装袋であって、
前記包装袋内部で発生した蒸気が排出される蒸気抜きシール部をさらに備え、
前記包装袋の側部下端では、前記前面部と前記背面部とを前後方向に固定する固定部が設けられ、
前記後退部は、前記固定部より下側に形成されており、
前記後退部は、前記固定部と干渉しないように当該固定部よりも下側に形成されており、
前記底面部は、W字形に折り曲げられたフィルムで構成される、包装袋。」と記載し、新たに請求項9とする。
2 一群の請求項
本件訂正請求は、訂正前の請求項2~7が訂正の対象である請求項1を直接的又は間接的に引用する関係にあるから、一群の請求項〔1~7〕に対して請求されたものである。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1
訂正事項1は、訂正前の請求項1に、明細書の【0054】~【0057】に基づき「前記底面部を構成するフィルムの23.5℃及び100℃での、前記包装袋の前後方向の引張弾性率をそれぞれM1,M2とすると、M1は、600~1400MPaであり、M2は、200~600MPaであり、M1/M2の値は、1.2~4.0」という発明特定事項を直列的に付加する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2) 訂正事項2
訂正事項2は、訂正前の請求項2に、明細書の【0054】~【0057】に基づき「M1は、800~1200MPaであり、M2は、300~500MPaであり、M1/M2の値は、1.5~3.0」という発明特定事項を直列的に付加する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3) 訂正事項3
訂正事項3は、訂正前の請求項3に、明細書の【0029】~【0034】に基づき「前記フィルムは、基材層とシーラント層を有する積層フィルムであり、
前記基材層は、前記基材層を構成するフィルムの製造時において前記基材層を構成するフィルムが流れる方向の直線カット性を有し、
前記シーラント層は、前記シーラント層を構成するフィルムの製造時において前記シーラント層を構成するフィルムが流れる方向の直線カット性を有し、
前記基材層は、延伸ナイロンで構成され、
前記シーラント層は、LLDPEで構成され、
前記基材層とシーラント層は、ドライラミネートによって積層される」という発明特定事項を直列的に付加する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4) 訂正事項4
訂正事項4は、訂正前の請求項4に、明細書の【0038】~【0053】に基づき「前記長さL1は、15~25cmであり、
前記勾配部の左右方向の長さL2は、3.0~6.0cmであり、
前記包装袋の内側における左右方向の長さL4は、10~23cmであり、
前記底面部の中央線Eから前記中央部の上端までの長さW2は、2.0~5.0cmであり、
前記中央部の左右方向の長さL3は、前記長さW2に対して、2.0≦L3/W2≦3.0であり、
前記長さW2は、前記長さL2に対して、0.5≦W2/L2≦1.7であり、
1.0≧L/L5≧0.5であり、
前記包装袋の側部下端では、前記前面部と前記背面部とを前後方向に固定する固定部が設けられ、
前記中央線Eから前記固定部の上端までの高さH4は、前記底面部の中央線Eから前記包装袋の下端までの長さH3に対して、0.5≧H4/H3≧0.2であり、
前記角度θ1の値は、30~60度であり、
前記基準線に対する前記後退部の角度θ2の値は、5~30度であり、
前記勾配部の外側には、前記下端溶着部内の残留空気が集まるエアポケットが設けられており、
前記エアポケットは、三角形状である」という発明特定事項を直列的に付加する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(5) 訂正事項5
訂正事項5は、訂正前の請求項5に、明細書の【0038】~【0053】に基づき「前記長さL1と、前記長さLは、L/L1≦0.4をさらに満たし、
前記長さL1は、18~25cmであり、
前記勾配部の左右方向の長さL2は、3.0~6.0cmであり、
前記包装袋の内側における左右方向の長さL4は、10~23cmであり、
前記底面部の中央線Eから前記中央部の上端までの長さW2は、2.0~5.0cmであり、
前記中央部の左右方向の長さL3は、前記長さW2に対して、2.0≦L3/W2≦3.0であり、
前記長さW2は、前記長さL2に対して、0.8≦W2/L2≦1.2であり
、
1.0≧L/L5≧0.5」及び「前記中央線Eから前記固定部の上端までの高さH4は、前記中央線から前記包装袋の下端までの長さH3に対して、0.5≧H4/H3≧0.2であり、
前記角度θ1の値は、40~50度であり、
前記基準線に対する前記後退部の角度θ2の値は、5~30度であり、
前記勾配部の外側には、前記下端溶着部内の残留空気が集まるエアポケットが設けられており、
前記エアポケットは、三角形状」という発明特定事項を直列的に付加する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(6) 訂正事項6
訂正事項6は、訂正前の請求項6に、明細書の【0047】に基づき「0.9≦W2/L2≦1.1」という発明特定事項を直列的に付加する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(7) 訂正事項7
訂正事項7は、訂正前の請求項7に、明細書の【0016】~【0018】に基づき「前記包装袋は、切り取り部と本体部との境界としての開封部を備え、
前記前記背面部と前記前面部を前記開封部に沿って切断することにより、前記切り取り部と前記本体部が分離され、
前記包装袋は、前記フィルムの内面同士が重ねあわされて形成された合掌部を前記切り取り部に備え、
前記包装袋は、前記底面部と、前記前面部と、前記背面部が溶着部において互いに溶着されて前記袋状となり、
前記蒸気抜きシール部では、他の前記溶着部よりも溶着強度が低い溶着部であり、
前記蒸気抜きシール部は、前記合掌部に設けられる」という発明特定事項を直列的に付加するとともに、請求項1~6を引用していた請求項7を請求項1~4を引用する形にすることで引用する請求項数を限定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(8) 訂正事項8
訂正事項8は、訂正前の請求項5を引用する請求項7を、請求項1を引用する従属形式に改めた上で、明細書の【0016】~【0020】に基づき「前記包装袋内部で発生した蒸気が排出される蒸気抜きシール部をさらに備え、
前記包装袋は、切り取り部と本体部との境界としての開封部を備え、
前記前記背面部と前記前面部を前記開封部に沿って切断することにより、前記切り取り部と前記本体部が分離され、
前記包装袋は、前記フィルムの内面同士が重ねあわされて形成された合掌部を前記切り取り部に備え、
前記包装袋は、前記底面部と、前記前面部と、前記背面部が溶着部において互いに溶着されて前記袋状となり、
前記蒸気抜きシール部では、他の前記溶着部よりも溶着強度が低い溶着部であり、
前記蒸気抜きシール部は、前記合掌部に設けられ、
前記切り取り部の上下方向の長さH1は、6~10cmであり、
前記本体部の上下方向の長さH2は、6~10cmであり、
前記長さH2は、前記底面部の中央線Eから前記包装袋の下端までの長さH3よりも2cm以上長く、
前記長さH3は、3.0~6.0cm」という発明特定事項を直列的に付加して新たに請求項8とする訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(9) 訂正事項9
訂正事項9は、訂正前の請求項6を引用する請求項7を、請求項1を引用する従属形式に改めた上で、明細書の【0065】に基づき「前記底面部は、W字形に折り曲げられたフィルムで構成される」という発明特定事項を直列的に付加して新たに請求項9とする訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
上記第2のとおり本件訂正は認められたから、本件訂正請求により訂正された請求項1~9に係る発明(以下「本件発明○」等という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
可撓性を有するフィルムが袋状に形成された自立式の包装袋であって、
前記包装袋は、底面部と、前面部と、背面部を備え、
前記前面部と前記背面部は、互いに対向し、かつ前記底面部から立ち上げるように設けられ、
前記底面部と、前記前面部と、前記背面部が互いに溶着されて前記袋状となり、
前記包装袋は、前記包装袋の左右方向における中央部の下端である中央部下端では、前記左右方向における側部の下端である側部下端よりも前後方向に大きく開くように構成され、
前記包装袋は、前記側部下端に後退部を備え、
前記後退部は、平面視において、前記中央部下端の縁部に沿った基準線に対して上側に後退した部位であり、
前記包装袋の下端での左右方向の長さをL1とし、前記後退部の左右方向の長さをLとすると、L/L1≧0.05であり、
前記包装袋の下端には、前記底面部と前記前面部、および前記底面部と前記背面部を溶着する下端溶着部が設けられており、
前記下端溶着部は、前記左右方向の中央に直線状に形成される中央部と、前記中央部の両端から上方へ勾配をつけて形成される勾配部とを備え、
前記中央部の上端に対する前記勾配部の角度θ1の値は30度以上であり、
前記長さLは、前記勾配部と前記中央部との境界から前記包装袋の端部までの長さL5に対して、L/L5≧0.5であり、
前記後退部の上下方向の長さHは、0.5cm~2cmであり、
前記底面部を構成するフィルムの23.5℃及び100℃での、前記包装袋の前後方向の引張弾性率をそれぞれM1,M2とすると、M1は、600~1400MPaであり、M2は、200~600MPaであり、M1/M2の値は、1.2~4.0である、包装袋。
【請求項2】
請求項1に記載の包装袋であって、
前記勾配部の外側には、前記下端溶着部内の残留空気が集まるエアポケットが設けられており、
M1は、800~1200MPaであり、M2は、300~500MPaであり、M1/M2の値は、1.5~3.0である、包装袋。
【請求項3】
請求項2に記載の包装袋であって、
前記基準線に対する前記後退部の角度θ2の値は、前記中央部の上端に対する前記勾配部の角度θ1の値よりも小さく、
前記フィルムは、基材層とシーラント層を有する積層フィルムであり、
前記基材層は、前記基材層を構成するフィルムの製造時において前記基材層を構成するフィルムが流れる方向の直線カット性を有し、
前記シーラント層は、前記シーラント層を構成するフィルムの製造時において前記シーラント層を構成するフィルムが流れる方向の直線カット性を有し、
前記基材層は、延伸ナイロンで構成され、
前記シーラント層は、LLDPEで構成され、
前記基材層とシーラント層は、ドライラミネートによって積層される、包装袋。
【請求項4】
請求項1に記載の包装袋であって、
前記長さL1と、前記長さLは、L/L1≦0.4をさらに満たし、
前記長さL1は、15~25cmであり、
前記勾配部の左右方向の長さL2は、3.0~6.0cmであり、
前記包装袋の内側における左右方向の長さL4は、10~23cmであり、
前記底面部の中央線Eから前記中央部の上端までの長さW2は、2.0~5.0cmであり、
前記中央部の左右方向の長さL3は、前記長さW2に対して、2.0≦L3/W2≦3.0であり、
前記長さW2は、前記長さL2に対して、0.5≦W2/L2≦1.7であり、
1.0≧L/L5≧0.5であり、
前記包装袋の側部下端では、前記前面部と前記背面部とを前後方向に固定する固定部が設けられ、
前記中央線Eから前記固定部の上端までの高さH4は、前記底面部の中央線Eから前記包装袋の下端までの長さH3に対して、0.5≧H4/H3≧0.2であり、
前記角度θ1の値は、30~60度であり、
前記基準線に対する前記後退部の角度θ2の値は、5~30度であり、
前記勾配部の外側には、前記下端溶着部内の残留空気が集まるエアポケットが設けられており、
前記エアポケットは、三角形状である、包装袋。
【請求項5】
請求項1に記載の包装袋であって、
前記長さL1と、前記長さLは、L/L1≦0.4をさらに満たし、
前記長さL1は、18~25cmであり、
前記勾配部の左右方向の長さL2は、3.0~6.0cmであり、
前記包装袋の内側における左右方向の長さL4は、10~23cmであり、
前記底面部の中央線Eから前記中央部の上端までの長さW2は、2.0~5.0cmであり、
前記中央部の左右方向の長さL3は、前記長さW2に対して、2.0≦L3/W2≦3.0であり、
前記長さW2は、前記長さL2に対して、0.8≦W2/L2≦1.2であり、
1.0≧L/L5≧0.5であり、
前記包装袋の側部下端では、前記前面部と前記背面部とを前後方向に固定する固定部が設けられ、
前記後退部は、前記固定部より下側に形成されており、
前記中央線Eから前記固定部の上端までの高さH4は、前記中央線から前記包装袋の下端までの長さH3に対して、0.5≧H4/H3≧0.2であり、
前記角度θ1の値は、40~50度であり、
前記基準線に対する前記後退部の角度θ2の値は、5~30度であり、
前記勾配部の外側には、前記下端溶着部内の残留空気が集まるエアポケットが設けられており、
前記エアポケットは、三角形状である、包装袋。
【請求項6】
請求項5に記載の包装袋であって、
前記後退部は、前記固定部と干渉しないように当該固定部よりも下側に形成されており、
0.9≦W2/L2≦1.1である、包装袋。
【請求項7】
請求項1~請求項4の何れかに記載の包装袋であって、
前記包装袋内部で発生した蒸気が排出される蒸気抜きシール部をさらに備え、
前記包装袋は、切り取り部と本体部との境界としての開封部を備え、
前記前記背面部と前記前面部を前記開封部に沿って切断することにより、前記切り取り部と前記本体部が分離され、
前記包装袋は、前記フィルムの内面同士が重ねあわされて形成された合掌部を前記切り取り部に備え、
前記包装袋は、前記底面部と、前記前面部と、前記背面部が溶着部において互いに溶着されて前記袋状となり、
前記蒸気抜きシール部では、他の前記溶着部よりも溶着強度が低い溶着部であり、
前記蒸気抜きシール部は、前記合掌部に設けられる、包装袋。
【請求項8】
請求項1に記載の包装袋であって、
前記包装袋の側部下端では、前記前面部と前記背面部とを前後方向に固定する固定部が設けられ、
前記後退部は、前記固定部より下側に形成されており、
前記包装袋内部で発生した蒸気が排出される蒸気抜きシール部をさらに備え、
前記包装袋は、切り取り部と本体部との境界としての開封部を備え、
前記前記背面部と前記前面部を前記開封部に沿って切断することにより、前記切り取り部と前記本体部が分離され、
前記包装袋は、前記フィルムの内面同士が重ねあわされて形成された合掌部を前記切り取り部に備え、
前記包装袋は、前記底面部と、前記前面部と、前記背面部が溶着部において互いに溶着されて前記袋状となり、
前記蒸気抜きシール部では、他の前記溶着部よりも溶着強度が低い溶着部であり、
前記蒸気抜きシール部は、前記合掌部に設けられ、
前記切り取り部の上下方向の長さH1は、6~10cmであり、
前記本体部の上下方向の長さH2は、6~10cmであり、
前記長さH2は、前記底面部の中央線Eから前記包装袋の下端までの長さH3よりも2cm以上長く、
前記長さH3は、3.0~6.0cmである、包装袋。
【請求項9】
請求項1に記載の包装袋であって、
前記包装袋内部で発生した蒸気が排出される蒸気抜きシール部をさらに備え、
前記包装袋の側部下端では、前記前面部と前記背面部とを前後方向に固定する固定部が設けられ、
前記後退部は、前記固定部より下側に形成されており、
前記後退部は、前記固定部と干渉しないように当該固定部よりも下側に形成されており、
前記底面部は、W字形に折り曲げられたフィルムで構成される、包装袋。」
第4 取消理由(決定の予告)の概要
令和7年7月3日付けで当審が通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。
(進歩性)本件訂正後の請求項1~2、4~6に係る特許は、甲第1号証に記載された発明に、甲第3及び4号証に記載された技術を適用することにより、本件訂正後の請求項3に係る特許は、甲第1号証に記載された発明に、甲第3及び4号証に記載された技術並びに甲第7号証に例示された周知技術を適用することにより、それぞれ本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<引用文献等一覧>
(申立人が提示した甲第1号証~甲第7号証)
甲第1号証:特表2000-513684号公報
甲第2号証:特開2013-67393号公報
甲第3号証:特開2006-298438号公報
甲第4号証:特開2004-136515号公報
甲第5号証:「試験場所の標準状態」、JIS Z8703、1983年3
月1日、p1283
甲第6号証:宮口義紀編「包装用フィルム概論」、改訂5版、株式会社東洋
紡パッケージング・プラン・サービス、2022年2月28日
(初版発行1997年3月30日、改訂版発行2003年9月
1日)、p104~105
甲第7号証:特開平8-80977号公報
以下、甲第○号証につき「甲○」という。
第5 当審の判断
当審は、本件訂正後の請求項1~6に係る発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の取消理由を有すると判断する。
取消理由 (進歩性)本件特許の請求項1~6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲1に記載された発明及び甲2~6に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
1 甲号証等の記載及び引用発明
(1) 甲1
ア 甲1記載事項
甲1には以下の記載がある(下線は当審で付した。「・・・」は省略を表す。以下、他の甲号証も同様。)。
「発明の分野
本発明は可撓性区画をもつ安定な可撓性パウチおよび当該パウチの作成方法に関する。本パウチは当該区画の底部を取り囲むリムを有し、当該リムの部分は安定化する同一平面上の足を形成するために除去される。」(第7ページ第4~7行)
「発明の要約
従って、支持材表面上で安定に静止し得る可撓性パウチを提供することが、本発明の一主目的である。」(第7ページ第21~23行(空白行含まず。以下、同様。))
「パウチ10は、飲料のような液体、流体、糊状媒体、微細な粒状物質もしくはいずれかの他の適する物体で充填され得る。」(第9ページ第19~21行)
「図1に見られるように、本可撓性パウチ10は概して砂時計すなわち数字の8の形状を有する。当該可撓性パウチは第一シート12および第二シート14から作成される。図1において、第一シート12は第二シート14の前にある。第一シート12の形状は、その最上縁でを除いて第二シート14に合う。とりわけ、第二シート14は、第二シート14の上部縁が第一シート12の上部縁の上を広がるように第一シート12よりわずかにより長い。2個のシート12および14はそれらの周縁部の周囲で一緒にシールされて区画16を形成する。」(第9ページ下から6行~第10ページ第1行)
「継目18が第一および第二シート12および14の側に沿って伸長する。・・・本継目18は2個のシート12および14を一緒に熱シールすること、熱溶着することもしくは超音波でシールすることにより形成され得る。」(第10ページ第5~9行)
「リム34が区画16の底部32を取り囲んでいる。本リムは第一リム区分38および第二リム区分36を含んで成る。本第一リム区分36は、事実上、第一シート12と区画の底部32の素材との間の外側に広がる継目である。第二リム区分38は第二シート14と区画16の底部32の素材との間の外側に広がる継目である。これらのリム区分36、38は一緒に完全なリム34を形成する。リム区分36、38の端部は一緒に係合かつ接着される。熱シール、熱溶着もしくは超音波接着によるようなパウチを二次成形する場合には継目18およびリム34の継目が形成される。継目はリム34の高さに完全に沿って伸長する。言い換えれば、区画16の底部32は、本下部継目の終点に隣接しそして従ってリム34に隣接する角を有する。リム34は区画の底部32の周囲を完全に広がってそれにより本底部32を取り囲む。」(第11ページ第6~16行)
「とりわけ、図2は、平坦なパウチ10をある継目の特徴が強調された姿図で示す。図2において、第二リム区分38は第一リム区分36の背部にある。これら2個のリム区分は容器が平坦である場合に相互と境を接している。図2で見られ得るように、本第一リム区分36に沿った継目は側継目18のそれぞれ中に進む(run)。加えて、交差継目40が区画16の下部の左側部分で形成される一方、別の交差継目42が区画16の右側の下部の側で形成される。区画の底部32はこれらの交差継目40、42に沿ってシート12および14と係合され、かつ、側継目18上を広がるリム34との係合から離れている。
これらの継目40、42は容器の外面を見る場合に容易に見えない。継目が熱シールされる、熱溶着される、超音波でシールされる、もしくは別の方法で形成される場所を示す、細線もしくは模様を付けられた区分は、単にパウチの外面で見えることができるか、または、目に見える指標がパウチ10の外面に提供されなくてもよい。これらの継目の形成はヒートシンク44を提供する。」(第11ページ下から3行~第12ページ第10行)
「図2に見られるように、第一リム区分36の外側縁は46および48で示されるように面取りされる。第一リム区分36と同様、第二リム区分38もまた合う面取りされた端部46、48を有する。図2において、パウチ10が静止する支持材表面50が示される。当該支持材表面は卓もしくはいずれかの他の適する表面であり得る。パウチ10は図10に示されるようにまっすぐな姿勢(position)で支持材50上に置かれる。言い換えれば、パウチ10の長手軸が垂直に位置を定められることができ、かつ、概して支持材表面12の上面に垂直であることができる。
図2の左側の側で見られるように、第一リム区分36の面取りされた外端部46、48は、距離52により支持材50から間隔をあけられることができる。本距離は例えば1インチの1/8(0.13インチ)であり得る。右側の面取りされた外側縁48もまた同様に支持材50から間隔をあけられる。本支持材50は、しかしながら、面取りされた端部48をよりはっきりと示すため、右側の側で示されていない。距離54すなわち面取りされた端部46の長さは例えば3/4インチ(0.75インチ)であり得る。右側の面取りされた外端部48もまた左側の外端部46に類似の寸法を有することができることが企図される。言い換えれば、パウチ10の底部は対称であることができる。
もちろん、本底部はそのように所望の場合は非対称であり得る。例えば、面の長さ54もしくは面の深さ52は、そのように所望の場合はパウチの側々で異なり得る。また、いずれかの適する長さ54もしくは深さ52も使用され得る。これらの特定の寸法はパウチ10の底部の設計に依存することができる。例えば、より大きな区画16をもつより幅広いパウチは、より小さいもしくはより幅の狭い大きさに定められたパウチと異なる大きさに定められた、端部46、48の面の切断部分(cut)を有するとみられる。
これらの外側の面取りされた端部46、48の提供により、第一リム区分36は、事実上、第一の面取りされた端部部分56、中央部分58および第二の面取りされた端部部分60に分割される。中央部分58は第一と第二の面取りされた端部部分56、60の間にある。」(第12ページ第15行~第13ページ第15行)
「面取りされた端部部分56、60の提供により、角度62が、図2に示されるように、面取りされた端部部分と支持材52との間で形成されることができる。第一および第二の面取りされた端部部分56、60が対称である場合には、本角度62はパウチ10の左および右側双方で同一であることができる。3/4インチ×1/8インチのくさび形の切断部分がパウチの底部に作成される場合、当該角度62は以下の式、すなわち
θ=arctan 0.13/0.75=9.83°
から見出され得る。9.83°の角度の一例が与えられた一方、本角度は4と25°との間であり得ることが注意されるべきである。」(第14ページ第2~10行)
「図2において、パウチ10は平坦な姿勢で示される。底部64は図2に概略で示される折り目線64に沿って半分に折り畳まれる。区画16の底部32を作成するシートもしくは膜は、リムの第一および第二区分36、38の中央部分58の一部に固着される。その場合は、区画16の底部32の膜は、第一および第二シート12、14双方の上で傾斜した交差継目40、42に沿ってシールされる。」(第14ページ下から5行~第15ページ第1行)
「【図1】
[図:0001434128000001.jpg]
」
「【図2】
[図:0001434128000002.jpg]
」
イ 甲1の図面から認定できる事項
上記ア【図1】において、第一シート12は前面にあり、容器の左右両端に継目18が看取される。
上記ア【図1】の容器底部において、第一リム区分36と、第二リム区分38との間に底部32が看取される。また、第一リム区分36と第二リム区分38とは、左右方向中央で最も間隔が開いており、左右方向の両端では重なっている事項が看取される。
上記ア【図2】の下部において、傾斜している交差継目40、42の上縁の下端同士は【図2】における水平方向の直線(第一リム区分36の上縁)で結ばれていることが看取される。
上記ア【図2】の左右下部において、傾斜している交差継目40又は42、両側端の継目18、底部両端の端部部分56又は60による三辺に囲まれた、ヒートシンク44の領域は、略三角形状であることが看取される。
上記ア【図2】の下部において、支持材表面50に対する面取りされた端部部分56の角度62は、支持材表面50に対する交差継目40の傾斜角度よりも小さい事項が看取される。
ウ 引用発明
甲1の「本リムは第一リム区分38および第二リム区分36を含んで成る。」(第11ページ第6~7行)における「第一リム区分38および第二リム区分36」は、甲1の他の記載及び図面からみて「第一リム区分36および第二リム区分38」の誤記と認められるから、上記ア、イから、甲1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「第一シート12および第二シート14から作成される可撓性パウチであり、支持材表面上で安定に静止し得る可撓性パウチであって、
第一シート12は第二シート14の前にあり、2個のシート12および14はそれらの周縁部の周囲で一緒にシールされて区画16を形成し、リム34が区画16の底部32を取り囲んでおり、
リム34は第一リム区分36および第二リム区分38を含んで成り、第一リム区分36は、第一シート12と区画の底部32の素材との間の外側に広がる継目であり、第二リム区分38は第二シート14と区画16の底部32の素材との間の外側に広がる継目であり、
継目18が第一および第二シート12および14の側に沿って伸長しており、継目18は2個のシート12および14を一緒に熱溶着することにより形成され、
リム区分36、38の端部は一緒に係合かつ接着され、リム区分36、38は左右方向中央部で最も間隔が開いており、左右方向の両端では重なっており、
前記可撓性パウチの第一リブ区分36の外側縁は面取りされた端部46、48を有し、第二リブ区分38も同様に面取りされた端部46、48を有し、
面取りされた端部46、48は、距離52により支持材50から間隔をあけられ、
前記可撓性パウチの下端には、交差継目40が区画16の下部の左側部分で形成され、交差継目42が区画16の右側の下部の側で形成され、交差継目40、42は傾斜しており、その下端同士は水平方向の直線状に繋がっており、継目は熱溶着で形成されるものであり、
距離54すなわち面取りされた端部46の長さは3/4インチ(0.75インチ)であり、面取りされた端部部分と支持材との間で形成される角度62は4と25°との間であり、
面取りされた端部46、48により形成され、リム区分36の一部である第一の面取りされた端部部分56又は第二の面取りされた端部部分60、両側縁部18、交差継目40又は42により、継目に囲まれた略三角形状のヒートシンク44を有し、
前記角度62は、交差継目40の角度よりも小さい、可撓性パウチ。」
(2) 甲2
ア 甲2記載事項
甲2には以下の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
この発明は、電子レンジ等による食品などの加熱に用いられる蒸気抜きスタンディングパウチ及びこの蒸気抜きスタンディングパウチが用いられる食品包装体に関する。」
「【0006】
また、こうしたパウチにあって、電子レンジによる加熱処理を行う前に、パウチに新たに或いは追加して内容物を収容したり、取り出したりすることを自由に行うことができれば、その利便性を高めることができる。例えば、食品を加熱調理するためのレトルトパウチを例に挙げると、その調味料等の素材を予め収容しこれを密封状態としておき、その後の電子レンジによる加熱調理の前に別の素材を追加したり取り出したりすることができれば、その利便性を一層高めることができる。その他、通蒸用の開口から食品が漏れ出さないようするために、電子レンジ内で自立状態とすることのできる、いわゆるスタンディングパウチであることが望ましい。」
「【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を具体化した一実施形態にかかる蒸気抜きスタンディングパウチの正面図。
【図2】(a)は図1のDA-DA線に沿う断面構造を示す断面図、(b)は(a)の領域Xの拡大断面構造を示す断面図。
・・・」
「【0022】
容器10には、ファスナー20の一端部下方から同ファスナー20を横断してシール可能部位30及びファスナー20の間の領域にかけて容器10の切り取りをガイドする第1切り取りガイド40と、この第1切り取りガイド40のファスナー20の下方に位置し、第1切り取りガイド40に沿った容器10の切り取りに伴ってファスナー20により封じられた容器10の内部の蒸気を抜く通蒸部50とが設けられている。」
「【0024】
図2(a)に示されるように、容器10は、一対の本体シート13,14と、これら本体シート13,14の間に挿入される底部シート15とによって構成されている。すなわち、パウチは、容器10の底部シート15が拡がることにより自立状態となるスタンディングパウチである。」
「【0027】
底部11には、シール加工が行われていない部分18が形成されている。このシール加工が行われていない部分18は、シール加工時の熱収縮によって、本体シート13,14に凹凸が形成されることを防止するとともに、パウチの見栄えや落下時の強度を向上させる機能を有している。また、底部11が形成された領域の左右周縁には、本体シート13,14がシール加工された本体シール部19が設けられている。この本体シール部19は、底部シート15をパンチ加工して、穴あるいは切り欠きを設けておき、シール加工時に本体シート13,14のシールされる層であるシーラント層同士が直接シール加工されるように形成されている。こうした本体シール部19が形成されることにより、底部11の左右両端部が開くことを防止することができ、また容器10が自立状態にあるときの安定性やそのパウチの見栄えの向上が図れている。」
「【図1】
[図:0001434128000003.jpg]
」
イ 甲2記載技術
上記アの段落【0027】や【図1】の「本体シール部19」を踏まえると、甲2には以下の技術(以下「甲2技術」という。)が記載されている。
「底部が形成された領域の左右周縁に、底部シートをパンチ加工して、穴あるいは切り欠きを設けておき、シール加工時に本体シートのシールされる層であるシーラント層同士が直接シール加工されるように形成する本体シール部を設けることで、底部の左右両端部が開くことを防止することができ、また容器が自立状態にあるときの安定性やそのパウチの見栄えの向上が図れるようにする技術。」
(3) 甲3
ア 甲3記載事項
甲3には以下の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、自立袋に関し、更に詳しくは、底部をガセット形式で形成して自立性を付与したスタンディングパウチ形式の自立袋において、自立安定性を一層向上させると共に、充填シール機で内容物を充填シールする際に、底部ガセット部下端の切断面に前後のフィルムの密着がなく、容易に底部が前後に開いて内容物の充填シールを行えるようにした自立袋に関する。」
「【0014】
また、自立袋の自立性に関しても、袋の底部を前記ガセット部を有する形式で形成すると共に、そのガセット部の下側端部を、その中央部が水平な直線でカットされ、その両側が内側から外側に向かって斜め上向きにカットされた構成としているので、この自立袋に内容物を充填シールして、自立袋を表面がフラットな台などの上に立てて置いた時、袋の底部外周に形成されているヒートシール部による脚部の先端が、特に浮き上がりやすい袋の前後の中央部においても安定して台面に接するようになり、より広い領域で台面に接地し、自立袋の自立安定性が一層向上される。」
「【0024】
図1は、本発明の自立袋の第1の実施例の構成を示す正面図である。
図1に示した自立袋100は、袋の底部が前後の壁面フィルム1、1′の下部の間に、底面フィルムを内側に折り込んで底面フィルム折り返し部2まで挿入してなるガセット部4を有する形式で形成され、内側に折り込まれた底面フィルムの両側下端近傍には、この場合、半円形の底面フィルム切り欠き部3a、3bが設けられ、ガセット部4が、内側が両側から中央部にかけて湾曲線状に凹状となる船底形の底部シール部5でヒートシールして形成され、胴部が前後の壁面フィルム1、1′の左右両側の端縁部を側部シール部6a、6bでヒートシールして形成されると共に、底部のガセット部4の下側端部は、その中央部が水平な直線部13でカットされ、その両側が内側から外側に向かって斜め上向きにカットされた斜めカット部14a、14bを有する形状とし、前記ガセット部4の下側端部の中央部の水平な直線部13は、袋のフィルムの流れ方向と逆向きに刃先を立てた厚みの薄い刃物またはロールカッターでカットするようにしたものである。
また、自立袋100の上部は、所定幅の上部シール部7でヒートシールするが、この部分を内容物の充填口に使用するため、内容物の充填前は未シールの開口部とし、内容物の充填後にヒートシールして密封するものである。そして、上部シール部7の下側には袋の開封手段として、ハーフカット線11とその端部にノッチ12を設けて構成したものである。
【0025】
前記水平な直線部13の長さwは、前述したように、自立袋100の全幅の長さに対して30%以上の長さであればよく、30~80%の範囲の長さであることが好ましい。
また、水平な直線部13の両側の斜めカット部14a、14bのそれぞれの外側端部における最大高さhは、自立袋100の寸法、特にガセット部4の幅と高さ(底面フィルムの折り込み長さ)などにより適宜に設定できるが、容量が300~1200ml程度の一般的な寸法の自立袋の場合、最大高さhは2~6mm程度の範囲が好ましい。但し、この最大高さhは、斜めカット部14a、14bの角部に丸みを付けた場合は、丸み部を除いた部分の最大高さとする。
前記のような構成および製造方法を採ることにより、自立安定性に一層優れ、且つ、内容物の充填の際に底開き性がよく、内容物の充填シール機適性に優れた自立袋を提供することができる。」
「【0031】
(3)自立袋の各部の寸法
自立袋の外形寸法は、幅が110mmで、長さが190mmとし、底部ガセット部4の長さ、即ち、袋の底辺から底面フィルム折り返し部2までの長さは35mmとした。
底部ガセット部4の下側端部の中央部の水平な直線部13の長さwは70mmとし、その両側各20mmの長さの部分に、内側から外側に向かって斜め上向きにカットされ、外側端部における最大高さhが、それぞれ3mmとなるように斜めカット部14a、14bを設けた。」
「【図1】
[図:0001434128000004.jpg]
」
イ 甲3記載技術
上記アの段落【0014】、【0024】~【0025】、【図1】を踏まえると、甲3には以下の技術(以下「甲3技術1」という。)が記載されている。
「自立袋の自立安定性を一層向上させるために、ガセット部の下側端部を、その中央部が水平な直線でカットされ、その両側が内側から外側に向かって斜め上向きにカットされた構成とする技術。」
上記アの段落【0025】、【図1】を踏まえると、甲3にはさらに以下の技術(以下「甲3技術2」という。)が記載されている。
「甲3技術1において、水平な直線部13の長さwは、自立袋100の全幅の長さに対して30%以上の長さ、好ましくは30~80%の範囲の長さとする技術。」
また、上記アの【図1】からは、破線による半円3a、3bが、最大高さhの上側の引き出し線よりも上方にあることが看取されるから、段落【0024】を踏まえると、以下の技術(以下「甲3技術3」という。)も記載されている。
「甲3技術1において、左右両側の端縁部に半円形の底面フィルム切り欠き部3a、3bを設けるにあたり、底面フィルム切り欠き部3a、3bを斜めカット部14a、14bよりも上方に配置する技術。」
(4) 甲4
ア 甲4記載事項
甲4には以下の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品等の包装容器として使用されるガスバリア性及び形状保持性に優れるスタンディングパウチ用フィルム及びスタンディングパウチに関するものである。」
「【0023】
本発明におけるガスバリア層は、エポキシ樹脂およびエポキシ樹脂硬化剤からなるエポキシ樹脂組成物を塗膜形成成分とする塗布液を調製し、該塗布液を基材となる可撓性ポリマーフィルム等の表面に塗布後、必要により乾燥あるいは熱処理することにより形成される。・・・」
「【0030】
可撓性ポリマーフィルムと前記ガスバリア層の間には良好な接着強度が発現するので、接着剤やアンカーコート層を介さなくてもよいが、接着剤等を併用してもよい。可撓性ポリマーフィルムとガスバリア層の間に良好な接着強度が発現するのは、ガスバリア層を形成するエポキシ樹脂硬化物中に存在する多くの官能基が可撓性ポリマーフィルムの表面と強く相互作用するためである。また、本発明のガスバリア層を形成するエポキシ樹脂硬化物は、剛性、靭性、耐湿熱性に優れることから、形状保持性、耐衝撃性、耐レトルト処理性などに優れたスタンディングパウチ用積層フィルムが得られる。」
「【0032】
本発明のスタンディングパウチ用積層フィルムの最内層はヒートシール性を有する樹脂層(シーラント層)であり、ヒートシール性を有するポリオレフィンが好ましいが、ヒートシール性が有ればポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等を用いても良い。」
「【0034】
基材層やシーラント層となる可撓性ポリマーフィルム層をはじめとする可撓性ポリマーフィルム層をガスバリア層の表面に積層する場合においては、ドライラミネート、押出しラミネート等公知のラミネート法を用いることが可能である。すなわち、ドライラミネート法の場合には、基材となる可撓性ポリマーフィルムにガスバリア層となるエポキシ樹脂組成物を塗膜形成成分とする塗布液を塗布後、溶剤を乾燥させ直ちにその表面に新たな可撓性ポリマーフィルムを貼り合わせることにより積層フィルムを得ることができる。・・・」
「【0036】
本発明のスタンディングパウチ用積層フィルムには形状保持のため剛性が求められる。スタンディングパウチとした際の剛性はフィルムの引張り弾性率を測定することにより知ることが出来る。フィルムの引張り弾性率は、例えば、JISK7127、あるいはASTMD882等に従って測定することにより求められる。本発明のスタンディングパウチ用積層フィルムに必要な引張り弾性率は500MPa以上である。好ましくは750MPa以上、更に好ましくは1000MPa以上である。多層フィルムの弾性率は各層の弾性率と各層の全体に占める体積分率の積の総和よりおおよそ推算できる。本発明のスタンディングパウチ用積層フィルムの構成は必要な剛性、すなわち弾性率と必要なガスバリア性から決定される。」
「【0046】
実施例1
メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂(三菱ガス化学(株)製; TETRAD-X)を50重量部およびエポキシ樹脂硬化剤Aを181重量部含むメタノール/酢酸エチル=1/1溶液(固形分濃度;30重量%)を作製し、そこにアクリル系湿潤剤(ビック・ケミー社製;BYK381)を0.02重量部加え、よく攪拌し、塗布液Aを調製した。この塗布液Aを、厚み12μmの延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株) ルミラー)にバーコーターNo.3を使用して塗布し(塗布量:3 g/m2(固形分))、85℃で10秒乾燥させた後、厚み40μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルムをニップロールにより貼り合わせ、40℃で1日間エージングすることにより積層フィルム(1)を得た。ガスバリア層中の骨格構造(1)の含有率は64.0重量%であった。得られた積層フィルム(1)についてそのガスバリア性と引張り弾性率を評価した。
次いで、積層フィルム(1)より、2枚の側面用フィルム(150×90mm)底面用フィルム(55×90mm)を切り出し、底面用フィルムを2つ折りにし、両端を1部切り欠き、2枚の側面用フィルムの間に挟んで両者をヒートシールし接合することによって、上部が開口したスタンディングパウチ(縦150mm×横90mm×底面幅55mm)を得た。次に、このスタンディングパウチ30枚を自動充填機にセットし、袋内に元圧が0.1MPaの空気を注入して、底面用フィルムの開き具合から、袋の開口性、すなわち自立性を有する充填可能な袋が安定して得られるかどうかを調べた。結果を表1に示す」
「【0051】
実施例6
厚み12μmの延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの代わりに厚み25μmの延伸ナイロン6を使用し、ガスバリア層の厚みを5μmとした以外は実施例1と同様にして積層フィルム(6)を作製し、ガスバリア層中の骨格構造(1)の含有率は64.0重量%であった。得られた積層フィルム(6)についてそのガスバリア性と引張り弾性率を評価した。次いで実施例1と同様にスタンディングパウチを作製し、開口性を評価した。結果を表1に示す。」
「【0056】
【表1】
[図:0001434128000005.jpg]
」
イ 甲4記載技術
上記アの特に、【0051】の実施例6に着目すると、甲4には以下の技術(以下「甲4技術」という。)が記載されている。
「食品等の包装容器として使用されるスタンディングパウチ用フィルムであって、厚み25μmの延伸ナイロン6、厚み5μmのガスバリア層、厚み40μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルムをドライラミネート法により積層したフィルムであって、引張り弾性率が0.9GPaである積層フィルム。」
(5) 甲5
甲5には以下の事項が記載されている。
「2. 標準状態
2. 1 標準状態の温度 標準状態の温度は,試験の目的に応じて20℃,23℃又は25℃のいずれかとする。
・・・
参考 1. ISO 554-1976によれば,試験のための標準状態を3種類定めている。そのうち推奨される標準状態は温度23℃,相対湿度50%,気圧86kPa以上106kPa以下としている。」
(6) 甲6
甲6には以下の事項が記載されている。
「
[図:0001434128000006.jpg]
・・・
[図:0001434128000007.jpg]
[図:0001434128000008.jpg]
[図:0001434128000009.jpg]
」(第104ページ)
(7) 甲7
甲7には以下の事項が記載されている。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、直線的引き裂き性のよいレトルト適性のある積層包材に関するもので、その積層包材の使用により、手で容易に開封できるレトルト用パウチ又はスタンディングパウチを提供しようとするものである。」
「【0005】本発明は、上記問題点を解決するために、直線的引き裂き性に優れた二軸延伸特殊ナイロンフィルムを使用して、レトルト用積層材を作製し、この積層材を用いてレトルト用パウチやスタンディングパウチを製袋することにより、コスト面及び強度面を変えずに内容物をこぼすことなく、手で容易に開封できるようにすることを目的とする。」
「【0007】
【作用】本発明によれば、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、アルミニウム箔、二軸延伸ナイロンフィルム、未延伸ポリプロピレンフィルムからなるレトルト用積層材において、該二軸延伸ナイロンフィルムを直線的引き裂き性に優れた二軸延伸特殊ナイロンフィルムにすることにより、該積層包材が手で直線的に引き裂くことができるようなレトルト用積層材を作製することができる。また、前記引き裂き性に優れた積層材を使用して、レトルト用平パウチやスタンディングパウチを作製することにより、内容物をこぼすことなく、手で容易に開封できるレトルト用平パウチやスタンディングパウチを得ることができる。」
「【0012】前記ユニアスロンは出光石油化学(株)製の二軸延伸特殊ナイロンフィルムであり、ナイロン樹脂の持つ特性である優れた強度を保持し、更に、フィルムの流れ方向(machine direction:MD)に優れた直線カット性を有するフィルムである。このユニアスロンを使用することにより、積層材の直線的引き裂き性がよくなるため、従来のON仕様のレトルトパウチのような股裂き現象は生じず、従来のレトルト包材の欠点が解消され、開封時に内容物をこぼすことなく、手で容易に開封できるレトルト包材を得ることができる。」
(8) 技術常識
ア 上記(5)の甲5における試験での標準状態の記載を踏まえると、以下の事項は当業者にとって技術常識(以下「技術常識1」という。)である。
「試験における標準温度は、目的に応じて20℃、23℃又は25℃が用いられ、推奨される標準状態は、温度23℃、相対湿度50%、気圧86kPa以上106kPa以下であること。」
イ 上記(6)の甲6におけるフィルムの引張弾性率と温度との関係についての記載を踏まえると、以下の事項は当業者にとって技術常識(以下「技術常識2」という。)である。
「ONY等のフィルムはどの素材も温度が上がるにつれて引張弾性率が低下すること。」
(9) 周知技術
ア 上記(7)の甲7に記載された事項を踏まえると、以下の事項は当業者にとって周知技術(以下「周知技術1」という。)である。
「スタンディングパウチ等の包装袋において、流れる方向の直線カット性を有するフィルムを包装袋を構成する積層体に用いること。」
イ 上記(2)イの甲2技術や上記(3)イの甲3技術3を踏まえると、以下の事項は当業者にとって周知技術(以下「周知技術2」という。)である。
「自立式の包装袋において、前記包装袋の側部下端では、前記前面部と前記背面部とを前後方向に固定する固定部を設けること。」
2 本件発明1について
(1) 対比
本件発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「第一シート12」及び「第二シート14」はどちらも本件発明1の「フィルム」に相当し、引用発明の「可撓性パウチ」は本件発明1の「包装袋」に相当する。ここで、引用発明における「第一シート12および第二シート14から作成される可撓性パウチ」という事項から、引用発明において「可撓性パウチ」の構成要素である「第一シート12および第二シート14」が「可撓性」であることは当業者にとって明らかである。また、引用発明における「支持材表面上で安定に静止し得る可撓性パウチ」は本件発明1における「自立式の包装袋」に相当する。そうすると、引用発明における「第一シート12および第二シート14から作成される可撓性パウチであり、支持材表面上で安定に静止し得る可撓性パウチ」は、本件発明1における「可撓性を有するフィルムが袋状に形成された自立式の包装袋」に相当する。
引用発明の「底部32の素材」、「第一シート12」及び「第二シート14」はそれぞれ、本件発明1における「底面部」、「前面部」及び「背面部」に相当する。
引用発明において「第一シート12は第二シート14の前にあり、2個のシート12および14はそれらの周縁部の周囲で一緒にシールされて区画16を形成」する事項は、「第一シート12」と「第二シート14」が重なり、かつ、周縁部がシールされる事項を意味し、引用発明において「リム34が区画16の底部32を取り囲んで、リム34は第一リム区分36および第二リム区分38を含んで成り、第一リム区分36は、第一シート12と区画の底部32の素材との間の外側に広がる継目であり、第二リム区分38は第二シート14と区画16の底部32の素材との間の外側に広がる継目であ」るという事項は、第一シート12と第二シート14のそれぞれがシート底部において底部32の素材と継目で接続していることを意味する。そうすると、「支持材表面上で安定に静止し得る可撓性パウチ」である引用発明において「第一シート12は第二シート14の前にあり、2個のシート12および14はそれらの周縁部の周囲で一緒にシールされて区画16を形成し、リム34が区画16の底部32を取り囲んでおり、リム34は第一リム区分38および第二リム区分36を含んで成り、第一リム区分36は、第一シート12と区画の底部32の素材との間の外側に広がる継目であり、第二リム区分38は第二シート14と区画16の底部32の素材との間の外側に広がる継目であ」るという事項は、本件発明1における「前記包装袋は、底面部と、前面部と、背面部を備え、前記前面部と前記背面部は、互いに対向し、かつ前記底面部から立ち上げるように設けられ」ている事項に相当する。
引用発明において「第一リム区分36は、第一シート12と区画の底部32の素材との間の外側に広がる継目であり、第二リム区分38は第二シート14と区画16の底部32の素材との間の外側に広がる継目であ」る事項を踏まえると、引用発明における「継目18が第一および第二シート12および14の側に沿って伸長しており、継目18は2個のシート12および14を一緒に熱溶着することにより形成され、リム区分36、38の端部は一緒に係合かつ接着され」ている事項は、本件発明1における「前記底面部と、前記前面部と、前記背面部が互いに溶着されて前記袋状とな」る事項と対比して、底面部と前面部及び底面部と背面部の接着が溶着でされているかどうかはさておき、「前記底面部と、前記前面部と、前記背面部が互いに接着されて前記袋状とな」っており、「少なくとも前記前面部と、前記背面部との接着は溶着であ」る点に限り一致する。
「支持材表面上で安定に静止し得る可撓性パウチ」である引用発明において「リム区分36、38は左右方向中央部で最も間隔が開いており、左右方向の両端では重なって」いる事項は、本件発明1において「前記包装袋は、前記包装袋の左右方向における中央部の下端である中央部下端では、前記左右方向における側部の下端である側部下端よりも前後方向に大きく開くように構成され」ている事項に相当する。
引用発明における「面取りされた端部46、48」は本件発明1における「後退部」に相当するから、引用発明において「前記可撓性パウチの第一リブ区分36の外側縁は面取りされた端部46、48を有し、第二リブ区分38も同様に面取りされた端部46、48を有」する事項は、本件発明1において「前記包装袋は、前記側部下端に後退部を備え」ている事項に相当する。
引用発明における「面取りされた端部46、48は、距離52により支持材50から間隔をあけられ」ている事項からみて「支持材50」は「端部46、48」の測定起点となっているから、この点で引用発明における「支持材50」は本件発明1における「基準線」に相当する。そうすると、引用発明において「面取りされた端部46、48は、距離52により支持材50から間隔をあけられ」ている事項は、本件発明1において「前記後退部は、平面視において、前記中央部下端の縁部に沿った基準線に対して上側に後退した部位であ」る事項に相当する。
引用発明における「前記可撓性パウチの下端には、交差継目40が区画16の下部の左側部分で形成され、交差継目42が区画16の右側の下部の側で形成され、交差継目40、42は傾斜しており、その下端同士は水平方向の直線状に繋がっており、継目は熱溶着で形成されるものであ」る事項は、本件発明1における「前記包装袋の下端には、前記底面部と前記前面部、および前記底面部と前記背面部を溶着する下端溶着部が設けられて」いる事項に相当する。ここで、引用発明における「その下端」は本件発明1における「前記下端溶着部」が設けられている位置であるから、引用発明1における「その下端同士」が「繋がって」いる「水平方向の直線状」の部分は本件発明1における「前記左右方向の中央に直線状に形成される中央部」に相当し、引用発明における「交差継目40、42」は本件発明1における「前記中央部の両端から上方へ勾配をつけて形成される勾配部」に相当する。そうすると、引用発明において「前記可撓性パウチの下端には、交差継目40が区画16の下部の左側部分で形成され、交差継目42が区画16の右側の下部の側で形成され、交差継目40、42は傾斜しており、その下端同士は水平方向の直線状に繋がって」いる事項は、本件発明1において「前記下端溶着部は、前記左右方向の中央に直線状に形成される中央部と、前記中央部の両端から上方へ勾配をつけて形成される勾配部とを備え」る事項に相当する。
そうすると、本件発明1と引用発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。
<一致点>
「可撓性を有するフィルムが袋状に形成された自立式の包装袋であって、
前記包装袋は、底面部と、前面部と、背面部を備え、
前記前面部と前記背面部は、互いに対向し、かつ前記底面部から立ち上げるように設けられ、
前記底面部と、前記前面部と、前記背面部が互いに接着されて前記袋状となっており、少なくとも前記前面部と、前記背面部との接着は溶着であり、
前記包装袋は、前記包装袋の左右方向における中央部の下端である中央部下端では、前記左右方向における側部の下端である側部下端よりも前後方向に大きく開くように構成され、
前記包装袋は、前記側部下端に後退部を備え、
前記後退部は、平面視において、前記中央部下端の縁部に沿った基準線に対して上側に後退した部位であり、
前記包装袋の下端には、前記底面部と前記前面部、および前記底面部と前記背面部を溶着する下端溶着部が設けられており、
前記下端溶着部は、前記左右方向の中央に直線状に形成される中央部と、前記中央部の両端から上方へ勾配をつけて形成される勾配部とを備える、包装袋。」
<相違点1>
本件発明1は「前記底面部と、前記前面部と、前記背面部が互いに溶着されて前記袋状とな」っているのに対し、引用発明は「第一シート12と区画の底部32の素材との間の外側に広がる継目」である「第一リム区分36」と「第二シート14と区画16の底部32の素材との間の外側に広がる継目」である「第二リム区分38」は、その端部において一緒に係合かつ接着されているものの、「溶着」であるかどうかは明らかでない点。
<相違点2>
本件発明1は「前記包装袋の下端での左右方向の長さをL1とし、前記後退部の左右方向の長さをLとすると、L/L1≧0.05であ」るのに対し、引用発明はそのような関係であるか明らかでない点。
<相違点3>
本件発明1は「前記中央部の上端に対する前記勾配部の角度θ1の値は30度以上であ」るのに対し、引用発明は「交差継目40、42」の傾斜角度がどの程度か不明である点。
<相違点4>
本件発明1は「前記長さLは、前記勾配部と前記中央部との境界から前記包装袋の端部までの長さL5に対して、L/L5≧0.5であ」るのに対し、引用発明はL/L5の値が不明である点。
<相違点5>
本件発明1は「前記後退部の上下方向の長さHは、0.5cm~2cmであ」るのに対し、引用発明は「距離54すなわち面取りされた端部46の長さは3/4インチ(0.75インチ)であり、面取りされた端部部分と支持材との間で形成される角度62は4と25°との間である」ものの、「端部46」の上下方向の長さが不明である点。
<相違点6>
本件発明1は「前記底面部を構成するフィルムの23.5℃及び100℃での、前記包装袋の前後方向の引張弾性率をそれぞれM1,M2とすると、M1は、600~1400MPaであり、M2は、200~600MPaであり、M1/M2の値は、1.2~4.0である」のに対し、引用発明は底面部を構成するフィルムの引張弾性率が不明である点。
(2) 判断
以下、上記相違点1~6について検討する。
ア 相違点1について
引用発明の「第一および第二シート12および14の側に沿って伸長」する「継目18」は、「熱溶着」されている。また、引用発明の「前記可撓性パウチの下端」に設けられている「交差継目40、42」についても、その「継目」形成手段は「熱溶着」である。そして、2枚のシートを接合して「可撓性パウチ」の袋を形成するための「継目」を形成するにあたり、側部の継目形成手段と底部の継目形成手段とを同様の手段とすることは、例示するまでも当業者が一般的に行っている事項にすぎないから、引用発明において、具体的に「溶着」と明示されていない底部の継目であるリム区分36、38を形成するための具体的な接着手段も、「溶着」である蓋然性が高い。
してみると、上記相違点1は実質的な相違点ではない。
また、可撓性パウチ製造におけるフィルム接合時の継目形成において、他の継目と同様の接着手段を用いることは、当業者が一般的に行っている事項であるし、引用発明の継目18、40、42を形成する手段として「溶着」が例示されているように可撓性パウチ形成にあたり、フィルム接着手段として「溶着」は慣用されているから、仮に上記相違点1が実質的な相違点であったとしても、引用発明のリム区分36、38の形成手段を溶着とすることは、当業者が容易になし得たものである。
イ 相違点2について
引用発明における「距離54の長さ」は「面取りされた端部46、48」の左右方向の長さであって、本件発明1における「前記後退部の左右方向の長さ」であるLに相当する。また、引用発明における容器下部の左右端の長さは、本件発明1における「包装袋の下端での左右方向の長さ」に相当するから、引用発明における「容器下部の左右端の長さ」を本件発明1と同様にL1と定義する(下記参考図1参照)。
ここで、製品設計において各部の数値を好適化して決定することは、当業者が適宜なし得た事項であり、本件発明1においてL/L1≧0.05であることに臨界的意義も特異な効果もみられないところ、下側両端を斜め上向きにカットして自立安定性を高めた甲3技術1を前提とする甲3技術2においては、本件発明1のLに相当する「水平な直線部13の長さw」を本件発明1のL1に相当する「自立袋100の全幅の長さ」に対して「30%以上」と設定している。そうすると、自立安定性を高めるために甲3技術1と同様に、下側両端を斜め上向きにカットした引用発明においても、L1に対するLの値を具体的に設定する際に、甲3技術2であるL/L1≧0.3程度の数値範囲、すなわち、上記相違点2に係るL/L1≧0.05という条件を満たす数値範囲とすることは当業者が容易になし得たことといえる。
してみれば、引用発明において相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。
参考図1(甲1【図2】の下部に当審で追記したもの)
[図:0001434128000010.jpg]
ウ 相違点3について
引用発明における「交差継目40、42」は本件発明1における「勾配部」に相当するから、引用発明における「交差継目40、42」の傾斜角(上記参考図1におけるθ1)は、本件発明1における「前記中央部の上端に対する前記勾配部の角度θ1」に相当する。
ここで、製品設計において各部の数値を好適化して決定することは、当業者が適宜なし得た事項にすぎず、本件発明1においてθ1が30度以上であることに臨界的意義も特異な効果もみられないから、引用発明において上記相違点3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
エ 相違点4について
引用発明における「距離54の長さ」は本件発明1における「前記長さL」に相当する。引用発明における「交差継目40」の傾斜の上縁と、リム区分36の上縁と、の交点から、容器左端までの距離は本件発明1における「前記勾配部と前記中央部との境界から前記包装袋の端部までの長さL5」に相当するから、引用発明において「交差継目40」の傾斜の上縁と、「リム区分36」の上縁と、の交点から、容器左端までの距離を本件発明1と同様にL5と定義(上記参考図1参照。)する。
ここで、製品設計において各部の数値を好適化して決定することは、当業者が適宜なし得た事項にすぎず、本件発明1においてL/L5≧0.5であることに臨界的意義も特異な効果もみられないから、引用発明において上記相違点4に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
オ 相違点5について
引用発明における「距離54すなわち面取りされた端部46の長さは3/4インチ(0.75インチ)であり、面取りされた端部部分と支持材との間で形成される角度62は4と25°との間である」という事項から、引用発明において袋の端部における「面取りされた端部46」の高さ範囲を計算し、1インチ=2.54cmで単位換算すると、
最小値:3/4×tan 4°×2.54=0.133・・・
最大値:3/4×tan 25°×2.54=0.888・・・
となるから、本件発明1の0.5cm~2cmと範囲の一部において重複する。
一般的に、一定の課題を解決するための数値範囲の最適化又は好適化は、当業者にとって通常の創作能力の発揮にすぎないし、甲1にも「いずれかの適する長さ54もしくは深さ52も使用され得る。これらの特定の寸法はパウチ10の底部の設計に依存することができる。」(第13ページ第6~7行)という事項も開示されているから、引用発明で具体的に例示された数値範囲も参照しつつ、0.5cm~2cmを含む数値範囲で最適化又は好適化を行うことは当業者が容易になし得た事項である。
また、本件発明1において、前記後退部の上下方向の長さHを、0.5cm~2cmとすることに、臨界的意義も特異な効果もみられないから、上記相違点5に係る本件発明1の数値範囲内とする効果も引用発明から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別顕著なものとはいえない。
してみると、引用発明1において相違点5に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
カ 相違点6について
引用発明は「底部32」の素材が不明であるが、その実現にあたっては、熱溶着又は超音波シール可能な何らかのフィルムを用いることとなる。公知材料の中からの最適材料の選択は、当業者にとって通常の創作能力の発揮にすぎず、本件発明1において、M1を600~1400MPaとすることに臨界的意義も特異な効果もみられないから、引用発明における「底部32」を構成する素材として、甲4に記載された甲4技術である「食品等の包装容器として使用されるスタンディングパウチ用フィルムであって、厚み25μmの延伸ナイロン6、厚み5μmのガスバリア層、厚み40μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルムをドライラミネート法により積層したフィルムであって、引張り弾性率が0.9GPaである積層フィルム」を採用することは、当業者が容易になし得たものである。
そして、甲4技術である積層フィルムにおける「引張り弾性率が0.9GPa」は、上記1(8)アの技術常識1を踏まえると、引張り弾性率は23℃前後の常温での値であると考えられるから、甲4技術の積層フィルムを23.5℃の引張り弾性率をM1とすると、M1は0.9GPa、すなわち900MPa前後の値であって、「600~1400MPa」という条件を満たす蓋然性が高い。
また、上記1(8)イの技術常識2を踏まえると、甲4技術の積層フィルムも高温では引張弾性率は低下するから、100℃での引張弾性率M2はM1よりも低い値となる。ここで、甲4技術の積層フィルムは、基材層が厚み25μmの延伸ナイロンであり、直鎖状低密度ポリエチレンをドライラミネートしている点で、本件特許明細書の【0034】に唯一具体的に例示された「基材層:延伸ナイロン(25μm)/印刷層/接着層(ドライラミネート)/シーラント層:LLDPE(60μm)」と類似の層構造をしているから、M2やM1/M2についても本件発明1と同程度、すなわち「M2は、200~600MPaであり、M1/M2の値は、1.2~4.0」の範囲内となる蓋然性が高いし、本件発明1の「包装袋1を加熱した際にフィルムが軟化して包装袋の中央部下端が前後方向に開きやすい効果」(本件明細書の【0054】)は上記1(8)イの技術常識2である「高温で引張弾性率は低下する」という効果にすぎず、M2を200~600MPa、及びM1/M2を1.2~4.0とする数値範囲そのものに臨界的意義も特異な効果もみられない。
してみると、引用発明において甲4技術を適用することで、上記相違点6に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
(3) 本件発明1の効果について
本件発明1における相違点1~6の構成それぞれによる効果は、上記(2)のとおりであり、これらの構成をすべて備えることで新たに生じる効果もみられない。
そうすると、本件発明1の効果は、引用発明、甲3技術1、2及び甲4技術のそれぞれが奏する効果の総和を超えるものではないから当業者が予測可能な範囲内の効果であり、格別顕著なものとはいえない。
(4) 小括
したがって、本件発明1は、引用発明、甲3技術1、2及び甲4技術から当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 本件発明2
引用発明における「ヒートシンク44」は、端部部分56又は60、両側縁部18、交差継目40又は42からなる継目で囲われている。そして、引用発明における継目はシール部であるから、その構造からみて、引用発明の「ヒートシンク44」は、これら継目が溶着されて引用発明である可撓性パウチが製造される際にエアポケットとして機能し得る。
また、上記2(2)カを踏まえれば、「M1は、800~1200MPaであり、M2は、300~500MPaであり、M1/M2の値は、1.5~3.0」とすることは、引用発明に甲4技術を適用することで、当業者が容易に想到し得たものである。
したがって、本件発明2は、引用発明、甲3技術1、2及び甲4技術から当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 本件発明3
引用発明における「角度62」は本件発明3における「前記基準線に対する前記後退部の角度θ2」に相当する。ここで、製品設計において各部の数値を好適化して決定することは。当業者が適宜なし得た事項にすぎないから、引用発明において、本件発明3における「前記基準線に対する前記後退部の角度θ2の値は、前記中央部の上端に対する前記勾配部の角度θ1の値よりも小さい」という構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
そして、甲4技術は「延伸ナイロンで構成された基材層とLLDPEで構成されたシーラント層を有し、基材層とシーラント層はドライラミネートによって積層されたフィルム」であるし、上記1(9)アにおける周知技術1のとおり、スタンディングパウチ等の包装袋において、流れる方向の直線カット性を有するフィルムを包装袋を構成する積層体に用いることは、当業者にとって従来から周知の技術的事項である。そうすると、フィルムを構成する基材層とシーラント層について、流れる方向の直線カット性を有するものとすることは当業者が容易になし得た事項である。
したがって、本件発明3は、引用発明、甲3技術1、2、甲4技術及び周知技術1から当業者が容易に発明をすることができたものである。
5 本件発明4
本件発明4において「L/L1≦0.4」とすることに臨界的意義も特異な効果もみられない。また、上記1(3)イの甲3技術2からみて「L/L1≦0.4」は当業者が従来から用いていた数値範囲である。そうすると、引用発明において、本件発明4における「前記長さL1と、前記長さLは、L/L1≦0.4」という構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。
また、一般的なスタンディングパウチの幅として、15~25cmという値は例示するまでもなく当業者が従来から用いている数値範囲のものであり、15~25cmの範囲内とすることによる臨界的意義も特異な効果もみられないから、スタンディングパウチの幅であるL1を15~25cmとすることは、当業者が適宜なし得た設計事項である。
そして、上記1(9)イの周知技術2のとおり、自立式の包装袋において、前記包装袋の側部下端では、前記前面部と前記背面部とを前後方向に固定する固定部を設ける事項は、本願出願時に当業者にとって周知の技術的事項である。
ここで、その際の各部の寸法を本件発明4のように規定することに臨界的意義も特異な効果もみられない、また、包装袋の幅を基準に考えると、それらの寸法は、上記1(1)ア【図2】や上記1(2)ア【図1】のように、引用発明や甲2技術において採用されている従来の数値範囲と同程度の値であるから、本件発明4の数値限定は、当業者が適宜なすべき設計的事項にすぎない。
したがって、本件発明4は、引用発明、甲3技術1、2、甲4技術及び周知技術2から当業者が容易に発明をすることができたものである。
6 本件発明5、6
上記1(9)イの周知技術2のとおり、自立式の包装袋において、前記包装袋の側部下端では、前記前面部と前記背面部とを前後方向に固定する固定部を設ける事項は、本願出願時に当業者にとって周知の技術的事項である。
また、一般的なスタンディングパウチの幅として、18~25cmという値は例示するまでもなく当業者が従来から用いている数値範囲のものであり、18~25cmの範囲内とすることによる臨界的意義も特異な効果もみられないから、スタンディングパウチの幅であるL1を18~25cmとすることは、当業者が適宜なし得た設計事項である。
そして、その際の各部の寸法を本件発明5、6のように規定することに臨界的意義も特異な効果もみられない、また、包装袋の幅を基準に考えると、それらの寸法は、上記1(1)ア【図2】や上記1(2)ア【図1】のように、引用発明や甲2技術において採用されている従来の数値範囲と同程度の値であるから、本件発明5、6の数値限定は、当業者が適宜なすべき設計的事項にすぎない。
したがって、本件発明5、6は、引用発明、甲3技術1、2、甲4技術及び周知技術2から当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 取消理由(決定の予告)で採用しなかった申立理由
1 本件発明7、8について
本件発明7、8と引用発明とを対比すると、本件発明7、8は「前記包装袋内部で発生した蒸気が排出される蒸気抜きシール部をさらに備え、前記包装袋は、切り取り部と本体部との境界としての開封部を備え、前記前記背面部と前記前面部を前記開封部に沿って切断することにより、前記切り取り部と前記本体部が分離され、前記包装袋は、前記フィルムの内面同士が重ねあわされて形成された合掌部を前記切り取り部に備え、前記包装袋は、前記底面部と、前記前面部と、前記背面部が溶着部において互いに溶着されて前記袋状となり、前記蒸気抜きシール部では、他の前記溶着部よりも溶着強度が低い溶着部であり、前記蒸気抜きシール部は、前記合掌部に設けられ」るものであるのに対し、引用発明は蒸気抜きシール部及び合掌部のいずれもが設けられていない点(以下「相違点7」という。)で少なくとも相違する。
そして、甲1~甲7には、相違点7に係る事項が記載も示唆もされていないから、本件発明7~8は甲1~甲7から当業者が容易に想到し得たものではない。
なお、申立人は、特許異議申立書において、訂正前の請求項7に係る発明については、甲2に、容器10の内部の蒸気を抜く通蒸部50が設けられているから、甲1発明において蒸気が排出される蒸気抜きシール部を設けることは容易であると主張する。
しかしながら、本件訂正によって、本件発明7、8は上記相違点7に係る蒸気抜きシール部を備えたものとなり、甲2に記載された通蒸部とは構成が異なるものとなったから、引用発明に甲2に記載された通蒸部を設けても、上記相違点7に係る本件発明7、8の構成とはならない。
また、本件発明7、8については、申立人は意見書において何ら主張をしていない。
したがって、本件発明7、8は、甲1~甲7から当業者が容易に発明できたものではない。
2 本件発明9について
本件発明9と引用発明とを対比すると、本件発明9は「前記底面部は、W字形に折り曲げられたフィルムで構成される」ものであるのに対し、引用発明は底面部が、W字型に折り曲げられたものではない点(以下「相違点8」という。)で少なくとも相違する。
そして、甲1~甲7には、相違点8に係る事項が記載も示唆もされていないから、本件発明9は甲1~甲7から当業者が容易に想到し得たものではない。
なお、本件発明9については、申立人は意見書において何ら主張をしていない。
したがって、本件発明9は、甲1~甲7から当業者が容易に発明できたものではない。
第7 むすび
以上により、本件特許の請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件特許の請求項7~9に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に本件特許の請求項7~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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