特許異議申立
2024-700433
包装材、包装容器、蓋体及びラベル
- 審判番号
- 2024-700433
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-054779
- 登録番号
- 7382703
- 請求日
- 2024年05月08日
- 審決日
- 2024年09月27日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人大谷特許事務所
- 【異議申立人】田中 理紗
- 【異議申立人】西森 由子
- 審判長/審判官
- 審判長 神山 茂樹
- 審判官 田口 傑
- 審判官 西堀 宏之
- 分類
- P1651.111-Y (B65D) / P1651.112-Y (B65D) / P1651.113-Y (B65D) / P1651.121-Y (B65D) / P1651.537-Y (B65D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項、特許法第29条第1項第1号、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7382703号発明「包装材、包装容器、蓋体及びラベル」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7382703号の請求項1~12に係る特許を維持する。
理由
理 由
1 手続の経緯
特許第7382703号(以下「本件特許」という。)の請求項1~12に係る特許についての出願は、平成30年3月22日を出願日とするものであって、令和5年11月9日にその特許権の設定登録(特許掲載公報令和5年11月17日発行)がされ、その後、その特許について、令和6年5月8日に特許異議申立人田中理紗(以下「申立人1」という。)により、令和6年5月17日に特許異議申立人西森由子(以下「申立人2」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。
2 本件特許発明
本件特許の請求項1~12に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明12」といい、総称して「本件発明」ともいう。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
プラスチックフィルム、地色層及びシーラント層が、この順に外層側から積層されている構成を備えた包装材であって、前記地色層は酸化チタン及びバインダー樹脂を含み、前記包装材を外層側から測定したCIE L*a*b*表色系のL*値が90以上であり、前記地色層と前記地色層に接する層との層間接着力が0.5N/15mm以上である、包装材。
【請求項2】
前記地色層と前記地色層に接する層との層間接着力が1.0N/15mm以上である、請求項1に記載の包装材。
【請求項3】
前記地色層と前記地色層に接する層との層間接着力が1.4~4.0N/15mmである、請求項1又は2に記載の包装材。
【請求項4】
前記地色層が発色剤を含む、請求項1~3の何れか1項に記載の包装材。
【請求項5】
前記地色層が、発色剤を含む第1の地色層と、前記第1の地色層よりも内層側に配置される第2の地色層とを有し、
前記第2の地色層中の前記発色剤の含有量が、前記第2の地色層の全固形分の0.1質量%以下である、請求項1~4の何れか1項に記載の包装材。
【請求項6】
前記発色剤が、ビスマス、アンチモン、銅及びモリブテンからなる金属、並びに、これら金属を含む化合物からなる群より選択される1種以上である、請求項4又は5に記載の包装材。
【請求項7】
前記プラスチックフィルムが、ポリエステル系樹脂またはポリアミド系樹脂である、請求項1~6の何れか1項に記載の包装材。
【請求項8】
少なくとも一部に、請求項1~7の何れか1項に記載された包装材を有する包装容器。
【請求項9】
前記包装容器がパウチである、請求項8に記載の包装容器。
【請求項10】
収容部を有する容器本体と、前記収容部を封止するように前記容器本体に接合された蓋体とを備えた蓋付容器であり、前記蓋体の少なくとも一部が前記包装材で形成されている、請求項8に記載の包装容器。
【請求項11】
少なくとも一部が請求項1~7の何れか1項に記載の包装材で形成されている蓋体。
【請求項12】
少なくとも一部が請求項1~7の何れか1項に記載の包装材で形成されているラベル。」
3 申立理由の概要
(1)証拠方法
申立人1は甲第1号証~甲第8号証(以下「甲1-1」~「甲1-8」)を、申立人2は甲第1号証~甲第4号証(以下「甲2-1」~「甲2-4」)を、それぞれ提出している。
甲1-1:特開2017-196896号公報
甲1-2:特開2014-69455号公報
甲1-3:特開2017-185657号公報
甲1-4:特開2017-196841号公報
甲1-5:特開2009-56606号公報
甲1-6:特開2013-215996号公報
甲1-7:太田三郎、外1名、「新包装構成100問100答」、初版、株式会社東洋紡パッケージング・プラン・サービス、2015年1月15日、p.40,41,68-73
甲1-8:特開2015-189008号公報
甲2-1の1~3:味の素株式会社製「ディムベスト・バッグ」の包装用パウチの写真、撮影者:西森由子
甲2-2:味の素株式会社医薬カンパニー、「イソロイシン配合 濃厚流動食「ディムベストR○(当審注:○の中にRの文字。以下同じ。)バッグ」新発売」、[online]、2010年1月26日、EAファーマ株式会社、インターネット<URL:https://www.eapharma.co.jp/news/2010/0126.html>
甲2-3:「食品包装基礎講座 グラビアインキの基礎知識」、[online]、株式会社サンコー商事、[2024年5月14日検索]、インターネット<URL:https://www.sanko-shoji.jp/lecture/cn5/pg128350.html>
甲2-4:(甲1-3と同じ)
(2)申立人1の申立理由
ア 甲1-1を主引用例とする進歩性
本件発明1~12は、甲1-1に記載された発明及び甲1-1~甲1-7に記載された技術的事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(特許異議申立書「3.4.3」、「3.4.4」)
イ 甲1-6を主引用例とする進歩性
本件発明1~12は、甲1-6に記載された発明及び甲1-1~甲1-7に記載された技術的事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(特許異議申立書「3.4.5」)
ウ サポート要件
本件発明1~12は、次の点で本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものでないから、特許法第36第6項第1号の規定に違反してされたものである。
(ア)本件明細書の評価方法は、地色層と前記地色層に接する層との層間接着力のみを測定しているとは認められず、本件明細書の、特に実施例の記載を検討しても、当業者は「前記地色層と前記地色層に接する層との層間接着力が0.5N/15mm以上である」ことにより、本件発明の課題を解決できると認識できない。(特許異議申立書「3.4.6(2)ウ」)
(イ)本件明細書の実施例1が比較例2よりも滲みが抑制されている原因は、「前記地色層と前記地色層に接する層との層間接着力が0.5N/15mm以上である」ことではなく、第1の地色層に含まれる発色剤の量が少ないことに起因している可能性が高く、本件明細書の、特に実施例1及び比較例2の記載を検討しても、当業者は「前記地色層と前記地色層に接する層との層間接着力が0.5N/15mm以上である」ことにより、本件発明の課題を解決できると認識できない。(特許異議申立書「3.4.6(2)エ」)
(ウ)層間接着力の測定では、甲第1-8号証の【0050】の記載から分かるとおり、少なくとも±0.1N/15mm程度の測定誤差が発生することは技術常識であり、層間接着力の差が0.1N/15mmである実施例1と比較例2の結果から、優位な差が発生し、本件発明の課題を解決できると認識できない。(特許異議申立書「3.4.6(2)オ」)
(エ)本件明細書の実施例1~4の地色層は全て発色剤を含有しており、当業者は、本件発明の課題を解決するためには、地色層に発色剤を添加する必要があると認識するはずであり、発色剤を含有しない本件発明1は、発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えている。(特許異議申立書「3.4.6(2)カ」)
エ 明確性要件
本件発明1~12は、次の点で明確ではないから、特許法第36第6項第2号の規定に違反してされたものである。
(ア)本件明細書の層間接着力の測定方法では、各層内及び各層間の最も脆弱な箇所の層間接着力を測定することとなるため、地色層と前記地色層に接する層との層間接着力のみを測定しているとは認められず、本件発明1の「前記地色層と前記地色層に接する層との間の層間接着力」をどのように測定すれば良いのか不明確であるため、本件発明1及び本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2~12は、明確ではない。(特許異議申立書「3.4.7(1)ア」)
(イ)包装材中に、地色層と地色層に接する層との層間接着力よりも弱い箇所が他に存在し、本件明細書の比較例の水準で測定された場合、その測定結果からは、地色層と地色層に接する層との層間接着力が、その弱い箇所の層間接着力以上であることが推定されるだけで、地色層と地色層に接する層との層間接着力の具体的な数値が不明である。
本件発明1の「前記地色層と前記地色層に接する層との層間接着力が0.5N/15mm以上である」は、ある具体的な物が本件発明1の範囲に入るか否かを当業者が理解できるとはいえないため、本件発明1及び本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2~12は、明確ではない。(特許異議申立書「3.4.7(1)イ」)
(3)申立人2の申立理由
ア 甲2-1を主引用例とする新規性、進歩性
本件発明1~3、7~9は、甲2-1の包装用パウチにより、本件特許の出願前に公然知られ、公然実施された発明であるから、特許法第29条第1項第1号及び第2号に該当し、特許を受けることができないものであるため、請求項1~3、7~9に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
そうでないとしても、甲2-1の包装用パウチの発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(特許異議申立書「3.(4)ハ(ア)、(イ)」)
イ 甲2-4を主引用例とする新規性、進歩性
本件発明1~12は、甲2-4に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるため、請求項1~12に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
そうでないとしても、甲2-4に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(特許異議申立書「3.(4)ハ(ウ)~(ク)」)
4 当審の判断
(1)明確性要件について
事案に鑑み、明確性要件より検討する。
ア 本件発明1には、「プラスチックフィルム、地色層及びシーラント層が、この順に外層側から積層されている構成を備えた包装材」と特定されるから、地色層の上下には、プラスチックフィルムとシーラント層が存在し、それらは、地色層と、直接、あるいは接着層等を介在させて接着され、包装材として形成されていることは明らかである。
そうすると、本件発明1の「前記地色層と前記地色層に接する層との間の層間接着力」は、地色層と、プラスチック層、シーラント層が直接接する場合には、それらの層との間の接着力を意味するものであり、間に接着層等が介在する場合には、地色層と当該介在する接着層等との間の接着力を意味するものであり、明確である。
そして、「前記地色層と前記地色層に接する層との層間接着力が0.5N/15mm以上である」は、地色層にとって、プラスチック層側及びシーラント層側のどちらの側の層との間の接着力も、「0.5N/15mm以上」であることを意味するものであり、明確である。
イ 申立人1は、本件明細書の層間接着力の測定方法では、各層内及び各層間の最も脆弱な箇所の層間接着力を測定することとなるため、地色層と前記地色層に接する層との層間接着力のみを測定しているとはいえず、本件発明1の「前記地色層と前記地色層に接する層との間の層間接着力が0.5N/15mm以上である」は不明確であると主張するものと解される。(上記3(2)エ(ア))
この点、本件明細書の測定方法(【0096】)により測定された層間接着力について、「包装材を構成する各層の層間接着力のうち、最も弱い層間接着力が測定されることになるが、最も弱い層間接着力が0.5N/15mm以上であれば、地色層と地色層に接する層との層間接着力も0.5N/15mm以上であるとみなすことができる。また、上記測定方法の場合、任意の層が凝集破壊する場合がある。しかし、例えば、引張応力0.5N/15mmで包装材の接着剤層が凝集破壊した場合には、地色層と地色層に接する層との層間接着力は0.5N/15mm以上であるとみなすことができる。また、引張応力0.5N/15mmで地色層が凝集破壊した場合でも、地色層と地色層に接する層との層間接着力は0.5N/15mm以上であるとみなすことができる。」(【0014】)と説明されている。
この説明から、本件明細書記載の測定方法により、包装材を構成する各層の層間接着力のうち、最も弱い層間接着力が0.5N/15mm以上であることを測定することにより、地色層と地色層に接する層との層間接着力が、少なくとも0.5N/15mm以上であると確認できることが理解される。
すなわち、本件明細書の測定方法により、他の最も弱い層間接着力を測定しているとしても、「前記地色層と前記地色層に接する層との層間接着力」が「0.5N/15mm以上」であることは確認できるから、本件発明1の「前記地色層と前記地色層に接する層との層間接着力が0.5N/15mm以上である」ことに何ら矛盾はなく、不明確であるとはいえない。
よって、申立人1の上記主張は採用できない。
ウ また、申立人1は、包装材中に、地色層と地色層に接する層との層間接着力よりも弱い箇所が他に存在すると、地色層と地色層に接する層との層間接着力が、その弱い箇所の層間接着力以上であることが推定されるだけで、地色層と地色層に接する層との層間接着力の具体的な数値が不明であるため、本件発明1の「前記地色層と前記地色層に接する層との層間接着力が0.5N/15mm以上である」は、ある具体的な物が本件発明1の範囲に入るか否かを当業者が理解できるとはいえないと主張する。(上記3(2)エ(イ))
しかし、上述のとおり、「前記地色層と前記地色層に接する層との層間接着力が0.5N/15mm以上である」との事項を含む本件発明1は明確であり、本件発明1の範囲に入るか否かを当業者は理解できるから、申立人1の上記主張も採用できない。
エ 以上より、明確性要件に係る申立理由には理由がない。
(2)サポート要件について
続いて、サポート要件を検討する。
ア 本件発明の解決しようとする課題は、「フィルム製包装材において、マーキングされた文字等の滲みを抑制するとともに、文字等のコントラストが良好である包装材、並びに、前記包装材を用いた包装容器、蓋体及びラベルを提供すること」(本件明細書【0006】)である。
イ 本件明細書の発明の詳細な説明には、「L*値が90未満の場合、レーザーマーキングされた文字等と背景とのコントラストが不十分となる。また、地色層と地色層に接する層との層間接着力が0.5N/15mm未満の場合、文字等の滲みの抑制が不十分となる。なお、地色層と地色層に接する層との層間接着力が弱い場合に滲みが生じる原因は、レーザーマーキング時に、地色層と地色層に接する層との間に隙間が生じたり、地色層内に空隙が生じたりすることによって、これらの隙間や空隙に、熱で黒化した樹脂や熱で自己発色した発色剤が進入するためと考えられる。」「一方、本発明の包装材は、L*値が90以上であり、かつ、包装材の層間接着力が0.5N/15mm以上であるため、レーザーマーキングされた文字等のコントラストを良好にできるとともに、レーザーマーキング時の滲みを抑制することができる。」「また、レーザーマーキング時の文字等の滲みは、包装材のL*値が高いほど目立ちやすくなるが、本発明の包装材は、滲みの発生自体を抑制している。すなわち、本発明の包装材は、L*値を高くすることによる利点(良好なコントラスト)を有し、さらには、L*値を高くすることによる弊害(滲みが目立つ)を、滲みの発生自体を抑制することによって減少し得るものである。」(【0015】)と記載され、「L*値が90以上であり、かつ、包装材の層間接着力が0.5N/15mm以上である」ことにより、上記課題を解決できる旨記載されている。
このことは、実施例1~4及び比較例1,2の結果により確認されている。
そして、この「L*値が90以上であり、かつ、包装材の層間接着力が0.5N/15mm以上である」ことは本件発明1に特定されているから、本件発明は、上記課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものではない。
ウ 申立人1は、本件発明はサポート要件を満たさない旨主張するが、以下のとおりいずれの主張も採用できない。
(ア)申立人1は、本件明細書の評価方法は、地色層と前記地色層に接する層との層間接着力のみを測定しているとは認められないため、本件明細書の、特に実施例の記載を検討しても、当業者は「前記地色層と前記地色層に接する層との層間接着力が0.5N/15mm以上である」ことにより、本件発明の課題を解決できると認識できない旨主張する。(上記3(2)ウ(ア))
しかし、上記(1)イで述べたように、本件明細書記載の測定方法により、包装材を構成する各層の層間接着力のうち、最も弱い層間接着力が0.5N/15mm以上であることを測定することにより、地色層と地色層に接する層との層間接着力が、少なくとも0.5N/15mm以上であると確認できることが理解される。そして、本件明細書の実施例及び比較例の記載から、その層間接着力が大きくなるに従って、0.4N/15mmの比較例2の滲みの評価が「C」であったものが、0.5N/15mmの実施例1の滲みの評価が「B」、1.6N/15mmの実施例2及び1.8N/15mmの実施例3の滲みの評価が「A」、3.5N/15mmの実施例4の滲みの評価が「AA」となることからすれば、地色層と地色層に接する層との層間接着力が大きい方が滲みの評価が向上するものと理解でき、概ね「0.5N/15mm以上」であれば、滲みの観点で問題が無いと判断できるといえる。
よって、当業者は、「前記地色層と前記地色層に接する層との層間接着力が0.5N/15mm以上である」ことにより、本件発明の課題の「マーキングされた文字等の滲みを抑制する」ことを解決できると理解できるから、申立人1の上記主張は採用できない。
(イ)申立人1は、実施例1及び比較例2の結果の対比から、滲みが抑制される原因は、「前記地色層と前記地色層に接する層との層間接着力が0.5N/15mm以上である」ことではなく、第1の地色層に含まれる発色剤の量が少ないことに起因する旨主張する。(上記3(2)ウ(イ))
しかし、本件明細書の発明の詳細な説明には、「地色層と地色層に接する層との層間接着力が0.5N/15mm未満の場合、文字等の滲みの抑制が不十分となる。なお、地色層と地色層に接する層との層間接着力が弱い場合に滲みが生じる原因は、レーザーマーキング時に、地色層と地色層に接する層との間に隙間が生じたり、地色層内に空隙が生じたりすることによって、これらの隙間や空隙に、熱で黒化した樹脂や熱で自己発色した発色剤が進入するためと考えられる。」(【0015】)と記載され、この機序からすれば、地色層と地色層に接する層との層間接着力が大きい方が滲みの評価が向上するものと理解でき、この理解は、本件明細書の実施例1~4及び比較例1,2の結果とも整合する。
よって、本件明細書の発明の詳細な説明における、地色層と地色層に接する層との層間接着力と滲みの発生に係る機序の説明と、実施例及び比較例の結果からすれば、当業者は、滲みが抑制される原因は、「前記地色層と前記地色層に接する層との層間接着力が0.5N/15mm以上である」ことと理解できるから、申立人1の上記主張は採用できない。
(ウ)申立人1は、層間接着力の測定では、少なくとも±0.1N/15mm程度の測定誤差が発生することは技術常識であることからすると、層間接着力の差が0.1N/15mmである実施例1と比較例2の結果からは、本件発明の課題を解決できると認識できない旨主張する。(上記3(2)ウ(ウ))
しかし、測定結果に誤差が含まれるとしても、本件明細書の実施例1~4及び比較例1,2の結果全体を参照すれば、層間接着力が大きくなるに従って滲みの評価が向上し、概ね「0.5N/15mm以上」であれば、滲みの観点で問題が無いと判断できるから、申立人1の上記主張は採用できない。
(エ)申立人1は、本件明細書の実施例1~4の地色層は全て発色剤を含有しているのに対し、発色剤を含有しないものを含み得る本件発明1は、発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えている旨主張する。(上記3(2)ウ(エ))
しかし、上記(イ)でも述べたように、地色層と地色層に接する層との層間接着力と滲みの発生に係る機序の説明と、実施例及び比較例の結果からすれば、当業者は、滲みが抑制される原因は、「前記地色層と前記地色層に接する層との層間接着力が0.5N/15mm以上である」ことと理解でき、発色剤を含有しないものであっても、本件発明の課題の「マーキングされた文字等の滲みを抑制する」ことを解決できると理解できるから、申立人1の上記主張は採用できない。
エ 以上より、サポート要件に係る申立理由には理由がない。
(3)甲1-1を主引用例とする進歩性について
ア 甲1-1に記載された発明
甲1-1には、特に請求項1の記載に着目すると、次の「甲1-1発明」が記載されているといえる。
「少なくとも、基材層、印刷層、及びシーラント層からなるレーザ印字用多層積層フィルムであって、
該基材層は、延伸ポリプロピレンフィルムからなる層であり、
該印刷層は、レーザ光により印字可能なインキ組成物からなる層であり、
該インキ組成物は、白色インキと発色インキを含み、
該白色インキは、少なくともチタン酸化物と結晶性成分を有するバインダ樹脂とを含み、
該発色インキは、レーザ光の照射により発色する発色材料とバインダ樹脂とを含む、レーザ印字用多層積層フィルム。」
イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1-1発明を対比する。
甲1-1発明の「延伸ポリプロピレンフィルムからなる」「基材層」、「シーラント層」は、それぞれ、本件発明1の「プラスチックフィルム」、「シーラント層」に相当する。
また、甲1-1発明の「少なくともチタン酸化物と結晶性成分を有するバインダ樹脂とを含」む「印刷層」は、本件発明1の「酸化チタン及びバインダー樹脂を含」む「地色層」に相当する。
甲1-1発明の「少なくとも、基材層、印刷層、及びシーラント層からなるレーザ印字用多層積層フィルム」は、印刷層は基材層に保護されるように配置されることから、本件発明1の「プラスチックフィルム、地色層及びシーラント層が、この順に外層側から積層されている構成を備えた包装材」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1-1発明は、
「プラスチックフィルム、地色層及びシーラント層が、この順に外層側から積層されている構成を備えた包装材であって、前記地色層は酸化チタン及びバインダー樹脂を含む、包装材。」で一致し、次の相違点1-1及び相違点1-2で相違する。
《相違点1-1》
本件発明1が、「包装材を外層側から測定したCIE L*a*b*表色系のL*値が90以上であ」るのに対し、甲1-1発明は、そうであるか不明な点。
《相違点1-2》
本件発明1が、「前記地色層と前記地色層に接する層との層間接着力が0.5N/15mm以上である」のに対し、甲1-1発明は、そうであるか不明な点。
(イ)判断
a まず、相違点1-1について検討する。
本件発明1の「包装材を外層側から測定したCIE L*a*b*表色系のL*値が90以上」とする技術的意義は、「レーザーマーキングされた文字等のコントラストを良好にできる」(本件明細書の【0015】)ことであり、コントラストの評価は、実施例では「レーザーマーキングされた印字のコントラストを目視で評価した。コントラストが良好なものを3点、どちらとも言えないものを2点、コントラストが十分ではないものを1点として、20人の被験者が評価した。」(【0098】)ことにより行われるものである。「コントラスト」とは、画像の明るい部分と暗い部分の差を意味するものと解される。
一方、甲1-1には、「レーザ印字用印刷インキとして、結晶性成分を含む白色インキと、発色インキを含むインキ組成物が優れた性質を示し、これを基材層上に印刷することにより、層間のラミネート強度を弱める必要なしに、またレーザ光の出力を高める必要なしに、視認性の高い鮮明な印字画像が形成できることを初めて見出した。」(【0007】)と記載され、視認性の評価は、「レーザ印字線を形成して印字体を得た。得られた印字線について、着色線幅及び着色濃度を観察した。」(【0062】)ことにより行われるが、印字線自体の着色線幅と着色濃度の評価であり、画像の明るい部分と暗い部分の差である、本件発明1の「レーザーマーキングされた文字等のコントラスト」については記載も示唆もされていない。つまりコントラストに着目していたとはいえないから、コントラストを向上させるために、「包装材を外層側から測定したCIE L*a*b*表色系のL*値が90以上」とする動機付けはない。
b この点、甲1-1には、「印字画像の視認性をさらに高めるために、シーラント層3と印刷層2との間に、白インキを印刷してなる下地層を設けてもよい。」(【0015】)と記載され、白インキの下地層により外層側からの「L*値」は向上するものといえるが、このために求められるL*値については記載も示唆もされていないし、「印字画像の視認性」を高めることは必ずしもコントラストを向上させるものでもない。したがって、甲1-1のレーザ印字用多層積層フィルムが白インキを印刷してなる下地層を備えたとしても、「包装材を外層側から測定したCIE L*a*b*表色系のL*値が90以上」であるとは必ずしもいえない。甲1-2(【0026】)、甲1-3(【0016】)、甲1-4(【0026】)についても同様である。
また、甲1-5には、「本発明に用いられる白色層の白色度は、前記色彩色差計にて測定でき、白色標準板の上に、透明基材上に白色層を設けた測定試料を置き、白色層側からL値を測定する。白色層の白色度(L値)は、60~100であることが好ましい。白色度(L値)が60未満である場合、黄味や赤味、青味といった色味や灰色等のくすんだ色味ということを意味し、高いコントラストや美粧性、意匠性を保つことが出来ない。より好ましくは80~100であり、更に美粧性や意匠性を求める場合は90~100にする必要がある。」(【0031】)と記載されるが、「基材表面にコーティングされた皮膜にレーザ光を照射してコーティング皮膜のみを除去」して、「基材の色と皮膜の色と」の間でコントラストをつけること(【0002】、【0003】)を前提とするものであって、本件発明1のように、レーザーマーキングによる文字等の黒色系の色味(本件明細書の【0005】)と、包装材の外層側との間でコントラストをつけるものとは異なるものである。
すなわち、提出された甲1-1~甲1-5のいずれにも、「包装材を外層側から測定したCIE L*a*b*表色系のL*値が90以上」とすることについては、記載も示唆もされていない。
c そうすると、本件発明1の相違点1-1に係る構成は、甲1-1発明及び甲1-1~甲1-5に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。
d よって、上記相違点1-2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1-1発明及び甲1-1~甲1-5に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ)申立人1の主張
申立人1は、甲1-1の実施例5に基づき「甲1発明2」が認定でき、この発明と本件発明1を対比すると、「包装材を外層側から測定したCIE L*a*b*表色系のL*値が90以上」とする点が、「甲1発明2」に直接的に記載されていない点で相違するが、本件明細書の実施例1と甲1-1の実施例5は、構成が一致しているため、甲1-1の実施例5に基づく「甲1発明2」は、「包装材を外層側から測定したCIE L*a*b*表色系のL*値が90以上」となる蓋然性が高く実質的な相違点とはならず、本件発明1は「甲1発明2」に基いて当業者が容易に発明をすることができた旨主張する。(特許異議申立書「3.4.4.1(2)、(3)」)
しかし、例えば、本件実施例1の地色層のバインダ樹脂と甲1-1の実施例5のバインダ樹脂について、いずれもウレタン系樹脂であることで共通しても、具体的な樹脂まで同じか不明であるし、含有量も同じではない。他の構成についても同様である。そうすると、申立人1がいうように、本件明細書の実施例1と甲1-1の実施例5が「構成が一致している」ものとは評価できないから、「構成が一致している」ことを前提とする申立人1の上記主張は採用できない。
ウ 本件発明2~12について
同様に、本件発明1の発明特定事項を全て備える本件発明2~12も、甲1-1発明及び甲1-1~甲1-7に記載される技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)甲1-6を主引用例とする進歩性について
ア 甲1-6に記載された発明
甲1-6には、特に請求項1の記載に着目すると、次の「甲1-6発明」が記載されているといえる。
「レーザー光の照射によって記録が可能な積層体であって、
延伸ポリプロピレンフィルムと、
前記延伸ポリプロピレンフィルム上に設けられたレーザー発色層と、
前記レーザー発色層の前記延伸ポリプロピレンフィルムとは反対側の面上に設けられた接着調整層と、
前記接着調整層の前記レーザー発色層とは反対側の面上に設けられた溶融押出ポリプロピレン樹脂層と、を備え、
前記レーザー発色層は、酸化チタンと、ウレタン樹脂と、シリカと、レーザー発色剤と、を少なくとも含み、
前記接着調整層は、酸化チタンと、塩素化ポリプロピレン系樹脂と、を少なくとも含む、積層体。」
イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1-6発明を対比すると、上記(3)イ(ア)における対比と同様に、次の相違点2-1及び相違点2-2で相違する。
《相違点2-1》
本件発明1が、「包装材を外層側から測定したCIE L*a*b*表色系のL*値が90以上であ」るのに対し、甲1-6発明は、そうであるか不明な点。
《相違点2-2》
本件発明1が、「前記地色層と前記地色層に接する層との層間接着力が0.5N/15mm以上である」のに対し、甲1-6発明は、そうであるか不明な点。
(イ)判断
まず、相違点2-1について検討する。
本件発明1の「包装材を外層側から測定したCIE L*a*b*表色系のL*値が90以上」とする技術的意義と、その評価方法は、上記(3)イ(イ)aで述べたとおりである。
一方、甲1-6には、「レーザー発色層と溶融押出ポリプロピレン樹脂層とを直接積層せず、酸化チタンおよび塩素化ポリプロピレン系樹脂を少なくとも含む接着調整層を間に介在させることにより、上述の不具合、すなわち、記録された絵柄の滲みの発生を効果的に抑制し得ることを見いだした。」(【0006】)と記載され、滲みの評価は、「絵柄を目視で確認して、滲みの有無を調査」(【0054】)することにより行われるが、本件発明1の「レーザーマーキングされた文字等のコントラスト」については記載も示唆もされていない。つまり、コントラストに着目していたとはいえないから、コントラストを向上させるために、「包装材を外層側から測定したCIE L*a*b*表色系のL*値が90以上」とする動機付けはない。
この「包装材を外層側から測定したCIE L*a*b*表色系のL*値が90以上」とすることについて、提出された甲1-1~甲1-5のいずれにも、記載も示唆もされていないことは、上記(3)イ(イ)bで述べたとおりである。
よって、上記相違点2-2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1-6発明及び甲1-1~甲1-5に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明2~12について
同様に、本件発明1の発明特定事項を全て備える本件発明2~12も、甲1-6発明及び甲1-1~甲1-7に記載される技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)甲2-1を主引用例とする新規性、進歩性について
ア 甲2-1に係る発明
(ア)甲2-1の2には、「AJINOMOTO」、「ディムベスト」、「濃厚流動食」と表記されており、食品を包装する「包装袋」が看取できる。このような「包装袋」は、包装材を用いて大量生産されることが一般的である。
甲2-1の3には、「袋:PP(ポリプロピレン)、PET、PA(ナイロン)」と表記されており、「包装袋」が、「PP(ポリプロピレン)、PET、PA(ナイロン)」の「包装材」で形成されていることが理解できる。
甲2-1の1及び甲2-1の2から、「包装材」には、透明な部分と、白濁色等に着色された部分があることが看取できる。
(イ)甲2-1の1には、賞味期限の欄に、「2010.6.16 182」と印字されていることが看取できる。
甲2-2には、味の素株式会社医薬カンパニーが、2010年1月26日付けで、濃厚流動食「ディムベストR○バッグ」を新発売したとする発表を行ったことが記載されており、甲2-1の「AJINOMOTO」、「ディムベスト」、「濃厚流動食」は、2010年6月16日の賞味期限であり、その「包装材」は、それ以前に製造されたものであることが推認できる。
(ウ)上記事項より、本件特許の出願前に実施された「甲2-1発明」は、次のとおりである。
「PP(ポリプロピレン)、PET、PA(ナイロン)で形成された包装袋であって、透明な部分と、白濁色等に着色された部分がある、包装材。」
イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲2-1発明を対比すると、本件発明1と甲2-1発明は、「包装材」であることで一致し、次の相違点3-1~相違点3-3で相違する。
《相違点3-1》
本件発明1が、「プラスチックフィルム、地色層及びシーラント層が、この順に外層側から積層されている構成を備えた包装材であって、前記地色層は酸化チタン及びバインダー樹脂を含」むものであるのに対し、甲2-1発明は、「PP(ポリプロピレン)、PET、PA(ナイロン)で形成された包装袋であって、透明な部分と、白濁色等に着色された部分がある」ものの、積層構成が不明であるし、酸化チタン及びバインダー樹脂を含む層を備えるかも不明である点。
《相違点3-2》
本件発明1が、「包装材を外層側から測定したCIE L*a*b*表色系のL*値が90以上であ」るのに対し、甲2-1発明は、そうであるか不明な点。
《相違点3-3》
本件発明1が、「前記地色層と前記地色層に接する層との層間接着力が0.5N/15mm以上である」のに対し、甲2-1発明は、そうであるか不明な点。
(イ)判断
a まず、相違点3-1について検討する。
甲2-1の包装材は、「PP(ポリプロピレン)、PET、PA(ナイロン)」を含むものであるが、甲2-1の包装材が、「プラスチックフィルム、地色層及びシーラント層が、この順に外層側から積層されている構成を備えた包装材」であるとする証拠は示されていない。
また、甲2-1の包装材には、白濁色等に着色された部分があるから、何らかの着色層を備えるものであることは明らかであるが、それが、酸化チタン及びバインダー樹脂を含むものであるかも、証拠は示されていない。申立人2は、「このような包装用パウチにおいて、白色の地色層はグラビア印刷によって形成されており、白色のグラビア印刷に顔料として酸化チタンが用いられていることは、グラビアインキの基礎知識である(甲第3号証参照)。」(特許異議申立書15頁)と主張するが、甲2-1の包装材の白濁色等に着色された部分がグラビア印刷によるものであるとする証拠はなく、また、顔料として酸化チタン以外のものも存在し用いられていることからみて、申立人2が挙げる基礎知識は、甲2-1の包装材の白濁色等に着色された部分が、酸化チタン及びバインダー樹脂を含むものであるとする根拠として採用できない。
よって、相違点3-1は実質的な相違点である。
b また、甲2-1発明の包装材は、「濃厚流動食」を包装する包装材として機能するように構成されたものであり、本件発明1の「プラスチックフィルム、地色層及びシーラント層が、この順に外層側から積層されている構成を備えた包装材であって、前記地色層は酸化チタン及びバインダー樹脂を含」むものとする動機付けがないから、本件発明1の相違点3-1に係る構成は、当業者が容易に想到し得たものではない。
c よって、上記相違点3-2及び相違点3-3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2-1発明ではなく、甲2-1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 本件発明2、3、7~9について
同様に、本件発明1の発明特定事項を全て備える本件発明2、3、7~9も、甲2-1発明ではなく、甲2-1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(6)甲2-4を主引用例とする新規性、進歩性について
ア 甲2-4に記載された発明
甲2-4には、特に請求項1の記載に着目すると、次の「甲2-4発明」が記載されているといえる。
「少なくとも、基材層、印刷層、及びシーラント層からなるレーザ印字用多層積層フィルムであって、
該印刷層は、レーザ光により印字可能なインキ組成物からなる層であり、
該インキ組成物は、少なくともチタン酸化物とバインダ樹脂とを含む白色インキからなり、
該バインダ樹脂は、結晶性成分を含む、上記レーザ印字用多層積層フィルム。」
イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲2-4発明を対比すると、上記(3)イ(ア)における対比と同様に、次の相違点4-1及び相違点4-2で相違する。
《相違点4-1》
本件発明1が、「包装材を外層側から測定したCIE L*a*b*表色系のL*値が90以上であ」るのに対し、甲2-4発明は、そうであるか不明な点。
《相違点4-2》
本件発明1が、「前記地色層と前記地色層に接する層との層間接着力が0.5N/15mm以上である」のに対し、甲2-4発明は、そうであるか不明な点。
(イ)判断
a まず、相違点4-1について検討する。
甲4-1には、「包装材を外層側から測定したCIE L*a*b*表色系のL*値」について、記載も示唆もされていない。
この点、申立人2は、「また、甲4発明では、本件特許発明1の発明特定事項Cが明示的に特定されていないため、甲第4号証に記載された実施例1及び比較例1に準拠して、次のような検証実験を行った。すなわち、甲第4号証の段落【0025】には、印刷層に使用する白色インキは、「汎用の印刷下地層として用いられているインキである」と記載されていることから、酸化チタンとバインダー樹脂(ウレタン樹脂)との配合比を40:10に調製した汎用のインキを使用して、実施例1及び比較例1と同様に、厚さ15μmの延伸ナイロンフィルムのコロナ処理面上に、当該インキを塗工厚み3μm(乾燥時)となるように塗布して印刷層を設け、当該印刷層上に2液硬化型ウレタン接着剤を介してシーラント層を設けてサンプルを作製した。このサンプルについて、本件特許明細書の段落【0097】の記載に従って、当該サンプルのシーラント層側に白色紙を配置して、外層側から光を5度で入射し、当該入射光の正反射光のLab表色系のL*値を測定したところ、その結果は「92.0」であった。」(特許異議申立書18頁)と主張する。
そこで、甲2-4の実施例1の記載を参照すると、
「[実施例1]
厚さ15μmの延伸ナイロンフィルムのコロナ処理面上に、グラビア印刷機を用いて、インキ組成物(白色インキA)を塗布厚み3μm(乾燥時)となるように塗布し、印刷層を設けた。
次いで、該印刷層上に、2液硬化型ウレタン接着剤(塗布量3g/m2(乾燥時))を介して、厚さ60μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルムをドライラミネートして、シーラント層を設け、本発明のレーザ印字用多層積層フィルムを得た。 この積層フィルムの層構成は、基材層(延伸ナイロンフィルム)/印刷層/接着剤/シーラント層(直鎖状低密度ポリエチレンフィルム)である。」(【0059】)と記載され、
「白色インキA」については、「● 白色インキA(実施例):酸化チタン40質量%、結晶性ウレタンアクリレート10質量%、混合溶剤50質量%。DSC吸熱曲線において、55~80℃の間に2点の吸熱ピーク(実測値:60.4℃及び74.7℃)を示し、それぞれの結晶融解熱量は、2.85mJ/mg及び0.77mJ/mgであった。」(【0056】)と記載されている。
しかし、この実施例1の検証実験を行うにあたり、「厚さ15μmの延伸ナイロンフィルム」、「2液硬化型ウレタン接着剤(塗布量3g/m2(乾燥時))」及び「厚さ60μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム」については、甲2-4に具体的な樹脂が明記されていないから、適宜、「延伸ナイロンフィルム」、「2液硬化型ウレタン接着剤」及び「直鎖状低密度ポリエチレンフィルム」を選択する必要があり、甲2-4とは異なる条件で実験を行う可能性があるため、甲2-4記載の実施例1を再現実験したとは必ずしもいえない。また、比較例1は、インキ組成物として白色インキBを使用した以外は実施例1と同様にしたものであるから(【0074】)、同様に甲2-4記載の比較例1を再現実験したとは必ずしもいえない。
そのため、申立人2は、甲2-4の実施例1及び比較例1の包装材を測定して測定結果が「92.0」であったとするが、申立人2の検証実験は、甲2-4記載の実施例1及び比較例1を再現したとは必ずしもいえないから、その測定結果を、甲2-4の実施例1及び比較例1の包装材の「L*値」として採用することはできない。
そうすると、相違点4-1は実質的な相違点である。
b また、本件発明1の「包装材を外層側から測定したCIE L*a*b*表色系のL*値が90以上」とする技術的意義と、その評価方法は、上記(3)イ(イ)で述べたとおりである。
一方、甲2-4には、「レーザ印字用印刷インキとして、結晶性成分を含む白色インキが優れた性質を示し、これを基材層上に印刷することにより、層間のラミネート強度を弱める必要なしに、またレーザ光の出力を高める必要なしに、視認性の高い鮮明な印字画像が形成できることを初めて見出した。」(【0008】)と記載され、視認性の評価は、「着色線幅及び着色濃度を観察」(【0078】)することにより行われるが、画像の明るい部分と暗い部分の差である、本件発明1の「レーザーマーキングされた文字等のコントラスト」については記載も示唆もされておらず、コントラストに着目していたとはいえないから、コントラストを向上させるために、「包装材を外層側から測定したCIE L*a*b*表色系のL*値が90以上」とする動機付けはない。
よって、本件発明1の相違点4-1に係る構成は、甲2-4発明に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。
c 以上より、上記相違点4-2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2-4発明ではなく、甲2-4発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明2~12について
同様に、本件発明1の発明特定事項を全て備える本件発明2~12も、甲2-4発明ではなく、甲2-4発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~12に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700433