特許異議申立
2023-701260
ビール様発泡性飲料
- 審判番号
- 2023-701260
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-005958
- 登録番号
- 7284357
- 請求日
- 2023年11月30日
- 審決日
- 2024年06月13日
- 公報発行日
- 2024年09月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】アサヒビール株式会社
- 【権利者代理人】西澤 和純
- 【権利者代理人】大槻 真紀子
- 【権利者代理人】伊藤 英輔
- 【異議申立人】山内 慶子
- 審判長/審判官
- 審判長 淺野 美奈
- 審判官 加藤 友也
- 審判官 植前 充司
- 分類
- P1651.113-YAA(C12C) / P1651.121-YAA(C12C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7284357号発明「ビール様発泡性飲料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7284357号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし8〕、〔9ないし14〕及び〔15ないし17〕について訂正することを認める。
特許第7284357号の請求項1ないし17に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7284357号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし17に係る特許についての出願は、令和5年1月18日の出願であって、同年5月22日にその特許権の設定登録(請求項の数17)がされ、同年同月30日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年11月30日に特許異議申立人 山内 慶子(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし17)がされ、令和6年1月5日に特許異議申立人から手続補正書が提出され、同年同月26日付けで取消理由が通知され、同年4月1日に特許権者 アサヒビール株式会社(以下、「特許権者」という。)から訂正請求がされるとともに意見書が提出され、同年同月11日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)が通知され、同年5月15日に特許異議申立人から意見書が提出されたものである。
第2 本件訂正について
1 訂正の内容
令和6年4月1日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。下線は訂正箇所を示すものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の記載に、「麦芽使用比率が50質量%以上である」との構成を追加し、
「 リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸、及びピログルタミン酸からなる酸成分の総濃度が1500ppm未満であり、3-フェニルプロピオン酸エチルの濃度が0.15ppb以上であり、麦芽使用比率が50質量%以上であることを特徴とする、ビール様発泡性飲料。」と訂正する。
併せて、請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2ないし8も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項9の記載に、「麦芽使用比率が50質量%以上であるビール様発泡性飲料を製造する」との構成を追加し、
「 飲料中のリン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸、及びピログルタミン酸からなる酸成分の総濃度が1500ppm未満であるように調整する工程と、
飲料の3-フェニルプロピオン酸エチル濃度が0.15ppb以上になるように調整する工程と、
を有し、麦芽使用比率が50質量%以上であるビール様発泡性飲料を製造する、ビール様発泡性飲料の製造方法。」と訂正する。
併せて、請求項9の記載を引用する請求項10ないし14も同様に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項15に、「麦芽使用比率が50質量%以上である」との構成を追加し、
「 飲料中のリン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸、及びピログルタミン酸からなる酸成分の総濃度が1500ppm未満であり、麦芽使用比率が50質量%以上であるビール様発泡性飲料の香味を改善する方法であって、
飲料の3-フェニルプロピオン酸エチル濃度が0.15ppb以上になるように調整する工程、
を有する、ビール様発泡性飲料の香味改善方法。」と訂正する。
併せて、請求項15の記載を引用する請求項16及び17も同様に訂正する。
2 訂正の目的、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)請求項1についての訂正について
訂正事項1による請求項1についての訂正は、「麦芽使用比率」に関する特定を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)請求項2ないし8についての訂正について
訂正事項1による請求項2ないし8についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1による請求項2ないし8についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)請求項9についての訂正について
訂正事項2による請求項9についての訂正は、「麦芽使用比率」に関する特定を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項2による請求項9についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)請求項10ないし14についての訂正について
訂正事項2による請求項10ないし14についての訂正は、請求項9についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項2による請求項10ないし14についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)請求項15についての訂正について
訂正事項3による請求項15についての訂正は、「麦芽使用比率」に関する特定を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項3による請求項15についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6)請求項16及び17についての訂正について
訂正事項3による請求項16及び17についての訂正は、請求項15についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項3による請求項16及び17についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 むすび
以上のとおり、訂正事項1ないし3による請求項1ないし17についての訂正は、いずれも、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。
そして、訂正事項1ないし3による請求項1ないし17についての訂正は、いずれも、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
なお、訂正前の請求項1ないし8は一群の請求項に該当するものであり、訂正事項1による請求項1ないし8についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
訂正前の請求項9ないし14は一群の請求項に該当するものであり、訂正事項2による請求項9ないし14についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
訂正前の請求項15ないし17は一群の請求項に該当するものであり、訂正事項3による請求項15ないし17についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
そして、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし17に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし8〕、〔9ないし14〕及び〔15ないし17〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし17に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸、及びピログルタミン酸からなる酸成分の総濃度が1500ppm未満であり、3-フェニルプロピオン酸エチルの濃度が0.15ppb以上であり、麦芽使用比率が50質量%以上であることを特徴とする、ビール様発泡性飲料。
【請求項2】
前記酸成分の総濃度に対する3-フェニルプロピオン酸エチルの濃度の比率([3-フェニルプロピオン酸エチルの濃度(ppb)]/[酸成分の総濃度(ppm)])が0.00015以上である、請求項1に記載のビール様発泡性飲料。
【請求項3】
前記酸成分の総濃度に対する3-フェニルプロピオン酸エチルの濃度の比率([3-フェニルプロピオン酸エチルの濃度(ppb)]/[酸成分の総濃度(ppm)])が0.005以下である、請求項1に記載のビール様発泡性飲料。
【請求項4】
3-フェニルプロピオン酸エチルの濃度が5.0ppb以下である、請求項1に記載のビール様発泡性飲料。
【請求項5】
3-フェニルプロピオン酸エチルの濃度が2.5ppb以下である、請求項1に記載のビール様発泡性飲料。
【請求項6】
アルコール濃度が、1.0~6.0v/v%である、請求項1に記載のビール様発泡性飲料。
【請求項7】
アルコール濃度が、1.0v/v%未満である、請求項1に記載のビール様発泡性飲料。
【請求項8】
発酵ビール様発泡性飲料である、請求項1~7のいずれか一項に記載のビール様発泡性飲料。
【請求項9】
飲料中のリン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸、及びピログルタミン酸からなる酸成分の総濃度が1500ppm未満であるように調整する工程と、
飲料の3-フェニルプロピオン酸エチル濃度が0.15ppb以上になるように調整する工程と、
を有し、麦芽使用比率が50質量%以上であるビール様発泡性飲料を製造する、ビール様発泡性飲料の製造方法。
【請求項10】
原料として、3-フェニルプロピオン酸エチルを用いる、請求項9に記載のビール様発泡性飲料の製造方法。
【請求項11】
飲料中の前記酸成分の総濃度及び飲料中の3-フェニルプロピオン酸エチル濃度を、前記酸成分の総濃度に対する3-フェニルプロピオン酸エチル濃度の比率([3-フェニルプロピオン酸エチルの濃度(ppb)]/[酸成分の総濃度(ppm)])が0.00015以上になるように調整する、請求項9に記載のビール様発泡性飲料の製造方法。
【請求項12】
飲料中の前記酸成分の総濃度及び飲料中の3-フェニルプロピオン酸エチル濃度を、前記酸成分の総濃度に対する3-フェニルプロピオン酸エチル濃度の比率([3-フェニルプロピオン酸エチルの濃度(ppb)]/[酸成分の総濃度(ppm)])が0.005以下になるように調整する、請求項9に記載のビール様発泡性飲料の製造方法。
【請求項13】
3-フェニルプロピオン酸エチルの濃度が5.0ppb以下になるように調整する、請求項9に記載のビール様発泡性飲料の製造方法。
【請求項14】
3-フェニルプロピオン酸エチルの濃度が2.5ppb以下になるように調整する、請求項9に記載のビール様発泡性飲料の製造方法。
【請求項15】
飲料中のリン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸、及びピログルタミン酸からなる酸成分の総濃度が1500ppm未満であり、麦芽使用比率が50質量%以上であるビール様発泡性飲料の香味を改善する方法であって、
飲料の3-フェニルプロピオン酸エチル濃度が0.15ppb以上になるように調整する工程、
を有する、ビール様発泡性飲料の香味改善方法。
【請求項16】
飲料中の前記酸成分の総濃度及び飲料中の3-フェニルプロピオン酸エチル濃度を、前記酸成分の総濃度に対する3-フェニルプロピオン酸エチル濃度の比率([3-フェニルプロピオン酸エチル濃度(ppb)]/[酸成分の総濃度(ppm)])が0.00015以上になるように調整する、請求項15に記載のビール様発泡性飲料の香味改善方法。
【請求項17】
3-フェニルプロピオン酸エチル濃度が5.0ppb以下になるように調整する、請求項15に記載のビール様発泡性飲料の香味改善方法。」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要等
令和5年11月30日に特許異議申立人から提出された特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要及び証拠方法は次のとおりである。なお、判断の便宜上、主引用文献となる証拠毎に申立理由を整理した。
1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし5、8、9及び11ないし17は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許発明1ないし17は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし17に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
なお、特許異議申立書第9ページにおいては、請求項1ないし5及び8ないし17については特許法第29条第2項の対象となっていないが、同5及び20ないし38ページにおいては同条文の対象となっており、また、同9ページにおいては、請求項10についても同法同条第1項第3号の対象となっているが、同5及び20ないし38ページにおいては同条文の対象となっていないので、上記のとおりとした。
2 申立理由2(甲第2号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし5、8、9及び11ないし17は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許発明1ないし17は、甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし17に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
なお、特許異議申立書第10ページにおいては、請求項1ないし5及び8ないし17については特許法第29条第2項の対象となっていないが、同9及び46ないし59ページにおいては同条文の対象となっており、また、同10ページにおいては、請求項10についても同法同条第1項第3号の対象となっているが、同9及び46ないし59ページにおいては同条文の対象となっていないので、上記のとおりとした。
3 証拠方法
甲第1号証:特開2015-123027号公報
甲第2号証:特開2015-123053号公報
甲第3号証の1:特開2020-89396号公報
甲第3号証の2:特開2018-110589号公報
甲第3号証の3:特開2018-99139号公報
甲第3号証の4:特開2017-118824号公報
甲第3号証の5:特開2016-82899号公報
甲第3号証の6:特開2015-154748号公報
甲第3号証の7:特開2015-154747号公報
甲第3号証の8:特開2015-154746号公報
甲第3号証の9:特開2015-154745号公報
甲第3号証の10:特開2015-154744号公報
甲第3号証の11:特開2015-154743号公報
甲第3号証の12:特開2015-154742号公報
甲第3号証の13:特開2015-154741号公報
甲第3号証の14:特開2015-154740号公報
甲第3号証の15:特開2015-154739号公報
甲第4号証:Journal of the American Society of Brewing Chemists 72(2)154-161, 2014「A New Method for Analyzing the Characteristic Flavor of Beer Using Selectable One-Dimensional or Two-Dimensional Gas Chromatography-Olfactometry/Mass Spectrometry」、2014年
甲第5号証:Journal of Bioscience and Bioengineering Vol.126 No.3,330-338,2018「Simulation of Pilsner-type beer aroma using 76 odor-active compounds」
甲第6号証:特開2015-154745号公報
甲第7号証:醸造物の成分、財団法人日本醸造協会、第185ページ、平成11年12月10日
甲第8号証:「エタノール水溶液の容量%と比重及び重量%等との関係」(アルコール協会)(http://www.alcohol.jp/expert/expert_table/09%20youryou%20jyuuryou.pdf)、令和5年11月7日検索日
甲第9号証:Journal of the American Society of Brewing Chemists 55(2): 44-46「Determination of Inorganic and Organic Anions in Beer and Wort by Capillary Electrophoresis」、1997年
甲第10号証:「Beer Composition:An overview」,BEER IN HEALTH AND DISEASE PREVENTION EDITED BY VICTOR R.PREEDY,Elsevier,pp213-225(2009年)
なお、令和6年1月5日に特許異議申立人から提出された手続補正書により甲第4号証及び甲第5証の補正された抄訳が提出された。また、甲第10号証は、令和6年5月15日に特許異議申立人から提出された意見書に添付されたものである。
証拠の表記は、特許異議申立書及び上記意見書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。
第5 取消理由の概要
令和6年1月26日付けで通知した取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要は次のとおりである。
1 取消理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし9及び11ないし17に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1ないし17に係る発明は、甲1に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし17に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由1は申立理由1を包含する。
2 取消理由2(甲2に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし9及び11ないし17に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1ないし17に係る発明は、甲2に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし17に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由2は申立理由2を包含する。
第6 当審の判断
1 主な証拠に記載された事項等
(1)甲1に記載された事項等
ア 甲1に記載された事項
甲1には、「発酵麦芽飲料」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。他の証拠についても同様。
・「【請求項1】
発酵原料の麦芽比率が50質量%未満であり、リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、ギ酸、酢酸、及びピログルタミン酸の総含有量が800~1200mg/Lであり、リナロール含有量が0.5~3ppbであることを特徴とする、発酵麦芽飲料。」
・「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、発酵原料に対する麦芽の使用比率が低く、麦芽オフフレーバーが少ないにもかかわらず、充分な酸味を有し、かつ軽快感も良好な発酵麦芽飲料を提供することを目的とする。」
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、麦芽オフフレーバーを抑えるべく発酵原料に対する麦芽の使用比率を50質量%未満に抑えた発酵麦芽飲料において、飲料における特定の有機酸の総含有量とリナロール含有量を所定の範囲内に調整することにより、充分な酸味と軽快感の両方を改善し得ることを見出し、本発明を完成させた。」
・「【0010】
本発明及び本願明細書において、発酵麦芽飲料とは、発酵原料として麦芽を使用し、かつ発酵工程を経て製造される飲料を意味する。本発明に係る発酵麦芽飲料は、アルコール含有量に関わらず、ビールと同等の又はそれと似た風味・味覚及びテクスチャーを有し、高い止渇感・ドリンカビリティーを有する発泡性飲料である。すなわち、本発明に係る発酵麦芽飲料は、アルコール飲料であってもよく、アルコール含量が1容量%未満であるいわゆるノンアルコール飲料又はローアルコール飲料であってもよい。発酵麦芽飲料としては、具体的には、ビール、麦芽を原料とする発泡酒、ローアルコール発泡性飲料、ノンアルコールビール等のビールテイスト飲料が挙げられる。その他、麦芽を原料とし、発酵工程を経て製造された飲料を、アルコール含有蒸留液と混和して得られたリキュール類であってもよい。アルコール含有蒸留液とは、蒸留操作により得られたアルコールを含有する溶液であり、スピリッツ等の一般に蒸留酒に分類されるものを用いることができる。」
・「【0033】
[参考例1]
発酵原料として麦芽粉砕物とコーンスターチを用いて、ビールテイストの発酵麦芽飲料における麦芽オフフレーバーの強さに対する麦芽比率の影響を調べた。具体的には、麦芽比率が20、40、又は60質量%となるように麦芽粉砕物とコーンスターチを混合した混合物を、発酵原料として用いた。
まず、200Lスケールの仕込設備を用いて、発酵麦芽飲料の製造を行った。仕込槽に、40kgの発酵原料及び160Lの原料水を投入し、当該仕込槽内の混合物を常法に従って加温して糖化液を製造した。得られた糖化液を濾過し、得られた濾液にホップを添加した後、煮沸して麦汁(穀物煮汁)を得た。次いで、80~99℃程度の麦汁を沈降槽に移して沈殿物を分離、除去した後、約7℃に冷却した。当該冷麦汁にビール酵母を接種し、約10℃で7日間発酵させた後、7日間貯酒タンク中で熟成させた。熟成後の発酵液をフィルター濾過(平均孔径:0.65μm)し、目的の発酵麦芽飲料を得た。
【0034】
得られた発酵麦芽飲料の麦芽オフフレーバーについて、6名の訓練されたビール専門パネリストによる官能検査を行った。この結果、麦芽比率60質量%の発酵麦芽飲料では麦芽オフフレーバーが感じられたが、麦芽比率40質量%の発酵麦芽飲料では麦芽オフフレーバーはあまり感じられず、麦芽比率20質量%の発酵麦芽飲料では麦芽オフフレーバーは感じられなかった。すなわち、発酵原料に対する麦芽比率の低下により、麦芽オフフレーバーが低減されることが確認された。
【0035】
[実施例1]
有機酸及びリナロールを適宜添加することにより濃度を調整した麦芽比率50質量%未満のビールテイストの発酵麦芽飲料について、酸味、軽快感等の官能評価を行った。
具体的には、麦芽比率が49質量%となるように麦芽粉砕物とコーンスターチを混合した混合物を発酵原料として用い、ビール酵母接種前の冷麦汁に、有機酸(リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、ギ酸、酢酸、及びピログルタミン酸の総量)とリナロールの飲料中の最終濃度が表1に示す濃度になるように、有機酸(前記9種の総量)とリナロール(香料)を添加した以外は参考例1と同様にして発酵麦芽飲料を製造した。
【0036】
なお、発酵麦芽飲料中の有機酸含有量(濃度)は、リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、ギ酸、酢酸、及びピログルタミン酸の各有機酸の含有量をそれぞれHPLC有機酸分析システム(装置名:Prominence、株式会社島津製作所社製)を用いて測定し、その合計を算出することにより求めた。
【0037】
また、発酵麦芽飲料中のリナロール含有量(濃度)は、GC-MS(ガスクロマトグラフ質量分析)により定量した。具体的には、香気成分を供試サンプルからC18固相カラムで抽出し、得られた抽出物をGC/MSに供した。定量は内部標準法を用いた。内部標準物質にはBorneolを用い、試料中50ppbになるように添加した。GC/MSにおけるホップ香気成分の分析条件は、以下の通りであった。
【0038】
[GC/MS分析条件]
キャピラリーカラム:商品名「DB-WAX」(長さ60m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)、
オーブン温度:40℃(10分)→3℃/分→240℃(20分)、
キャリアガス:He、10psi低圧送気、
トランスファーライン温度:240℃、
MSイオンソース温度:230℃、
MSQポール温度:150℃、
フロント注入口温度:200℃、
定量に用いたイオン:m/z=110(borneol)、m/z=93(linalool)。
【0039】
得られた発酵麦芽飲料の麦芽オフフレーバー、酸味、軽快感について、6名の訓練されたビール専門パネリストによる官能検査を行った。この結果、いずれの発酵麦芽飲料においても、麦芽オフフレーバーはあまり感じられなかった。また、各発酵麦芽飲料についての酸味、軽快感、及び総合評価について、6名のパネリストの評価の平均を表1示す。
【0040】
【表1】
[図:0001414201000001.jpg]
【0041】
表1に示すように、発酵麦芽飲料の酸味は、有機酸含有量が600mg/Lでは乏しいが、800mg/L及び1200mg/Lでは良好であり、1000mg/Lでは非常に良好であった。有機酸含有量が1400mg/Lになると酸味が強くなりすぎ、かえって評価は低くなった。また、発酵麦芽飲料の軽快感は、リナロール含有量が6ppbの発酵麦芽飲料ではリナロール特有の香味が強く、軽快感が悪くなったが、3ppbでは良好であり、0.5~1.0ppbでは非常に良好であった。」
イ 甲1に記載された発明
甲1に記載された事項を、特に【請求項1】、【0006】、【0007】、【0033】、【0035】及び【0040】に関して整理すると、甲1には次の発明(以下、順に「甲1飲料発明」、「甲1製法発明」及び「甲1方法発明」という。)が記載されていると認める。
<甲1飲料発明>
「発酵原料の麦芽比率が50質量%未満であり、リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、ギ酸、酢酸、及びピログルタミン酸の総含有量が800~1200mg/Lであり、リナロール含有量が0.5~3ppbである、発酵麦芽飲料。」
<甲1製法発明>
「発酵原料の麦芽比率が50質量%未満であり、リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、ギ酸、酢酸、及びピログルタミン酸の総含有量が800~1200mg/Lであり、リナロール含有量が0.5~3ppbであるように調整する工程を有する、発酵麦芽飲料の製造方法。」
<甲1方法発明>
「発酵原料の麦芽比率が50質量%未満であり、リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、ギ酸、酢酸、及びピログルタミン酸の総含有量が800~1200mg/Lであり、リナロール含有量が0.5~3ppbであるように調整する工程を有する、発酵麦芽飲料が充分な酸味と良好な軽快感を有するようにする方法。」
(2)甲2に記載された事項等
ア 甲2に記載された事項
甲2には、「発酵麦芽飲料」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【請求項1】
発酵原料の麦芽比率が25質量%未満であり、リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、ギ酸、酢酸、及びピログルタミン酸の総含有量が800~1200mg/Lであり、リナロール含有量が4~8ppbであることを特徴とする、発酵麦芽飲料。」
・「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、発酵原料に対する麦芽の使用比率が低く、麦芽オフフレーバーが少ないにもかかわらず、充分な酸味を有し、かつ華やかな香りを有する発酵麦芽飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、麦芽オフフレーバーを抑えるべく発酵原料に対する麦芽の使用比率を25質量%未満に抑えた発酵麦芽飲料において、飲料における特定の有機酸の総含有量とリナロール含有量を所定の範囲内に調整することにより、充分な酸味と華やかな香りの両方を付与し得ることを見出し、本発明を完成させた。」
・「【0010】
本発明及び本願明細書において、発酵麦芽飲料とは、発酵原料として麦芽を使用し、かつ発酵工程を経て製造される飲料を意味する。本発明に係る発酵麦芽飲料は、アルコール含有量に関わらず、ビールと同等の又はそれと似た風味・味覚及びテクスチャーを有し、高い止渇感・ドリンカビリティーを有する発泡性飲料である。すなわち、本発明に係る発酵麦芽飲料は、アルコール飲料であってもよく、アルコール含量が1容量%未満であるいわゆるノンアルコール飲料又はローアルコール飲料であってもよい。発酵麦芽飲料としては、具体的には、ビール、麦芽を原料とする発泡酒、ローアルコール発泡性飲料、ノンアルコールビール等のビールテイスト飲料が挙げられる。その他、麦芽を原料とし、発酵工程を経て製造された飲料を、アルコール含有蒸留液と混和して得られたリキュール類であってもよい。アルコール含有蒸留液とは、蒸留操作により得られたアルコールを含有する溶液であり、スピリッツ等の一般に蒸留酒に分類されるものを用いることができる。」
・「【0033】
[参考例1]
発酵原料として麦芽粉砕物とコーンスターチを用いて、ビールテイストの発酵麦芽飲料における麦芽オフフレーバーの強さに対する麦芽比率の影響を調べた。具体的には、麦芽比率が20、40、又は60質量%となるように麦芽粉砕物とコーンスターチを混合した混合物を、発酵原料として用いた。
まず、200Lスケールの仕込設備を用いて、発酵麦芽飲料の製造を行った。仕込槽に、40kgの発酵原料及び160Lの原料水を投入し、当該仕込槽内の混合物を常法に従って加温して糖化液を製造した。得られた糖化液を濾過し、得られた濾液にホップを添加した後、煮沸して麦汁(穀物煮汁)を得た。次いで、80~99℃程度の麦汁を沈降槽に移して沈殿物を分離、除去した後、約7℃に冷却した。当該冷麦汁にビール酵母を接種し、約10℃で7日間発酵させた後、7日間貯酒タンク中で熟成させた。熟成後の発酵液をフィルター濾過(平均孔径:0.65μm)し、目的の発酵麦芽飲料を得た。
【0034】
得られた発酵麦芽飲料の麦芽オフフレーバーについて、6名の訓練されたビール専門パネリストによる官能検査を行った。この結果、麦芽比率60質量%の発酵麦芽飲料では麦芽オフフレーバーが感じられたが、麦芽比率40質量%の発酵麦芽飲料では麦芽オフフレーバーはあまり感じられず、麦芽比率20質量%の発酵麦芽飲料では麦芽オフフレーバーは感じられなかった。すなわち、発酵原料に対する麦芽比率の低下により、麦芽オフフレーバーが低減されることが確認された。
【0035】
[実施例1]
有機酸及びリナロールを適宜添加することにより濃度を調整した麦芽比率25質量%未満のビールテイストの発酵麦芽飲料について、酸味、華やかさ等の官能評価を行った。
具体的には、麦芽比率が24質量%となるように麦芽粉砕物とコーンスターチを混合した混合物を発酵原料として用い、ビール酵母接種前の冷麦汁に、有機酸(リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、ギ酸、酢酸、及びピログルタミン酸の総量)とリナロールの飲料中の最終濃度が表1に示す濃度になるように、有機酸(前記9種の総量)とリナロール(香料)を添加した以外は参考例1と同様にして発酵麦芽飲料を製造した。
【0036】
なお、発酵麦芽飲料中の有機酸含有量(濃度)は、リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、ギ酸、酢酸、及びピログルタミン酸の各有機酸の含有量をそれぞれHPLC有機酸分析システム(装置名:Prominence、株式会社島津製作所社製)を用いて測定し、その合計を算出することにより求めた。
【0037】
また、発酵麦芽飲料中のリナロール含有量(濃度)は、GC-MS(ガスクロマトグラフ質量分析)により定量した。具体的には、香気成分を供試サンプルからC18固相カラムで抽出し、得られた抽出物をGC/MSに供した。定量は内部標準法を用いた。内部標準物質にはBorneolを用い、試料中50ppbになるように添加した。GC/MSにおけるホップ香気成分の分析条件は、以下の通りであった。
【0038】
[GC/MS分析条件]
キャピラリーカラム:商品名「DB-WAX」(長さ60m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)、
オーブン温度:40℃(10分)→3℃/分→240℃(20分)、
キャリアガス:He、10psi低圧送気、
トランスファーライン温度:240℃、
MSイオンソース温度:230℃、
MSQポール温度:150℃、
フロント注入口温度:200℃、
定量に用いたイオン:m/z=110(borneol)、m/z=93(linalool)。
【0039】
得られた発酵麦芽飲料の麦芽オフフレーバー、酸味、華やかさについて、6名の訓練されたビール専門パネリストによる官能検査を行った。この結果、いずれの発酵麦芽飲料においても、麦芽オフフレーバーはあまり感じられなかった。また、各発酵麦芽飲料についての酸味、華やかさ、及び総合評価について、6名のパネリストの評価の平均を表1示す。
【0040】
【表1】
[図:0001414201000002.jpg]
【0041】
表1に示すように、発酵麦芽飲料の酸味は、有機酸含有量が600mg/Lでは乏しいが、800mg/L及び1200mg/Lでは良好であり、1000mg/Lでは非常に良好であった。有機酸含有量が1400mg/Lになると酸味が強くなりすぎ、かえって評価は低くなった。また、発酵麦芽飲料の華やかな香りは、リナロール含有量が1ppbの発酵麦芽飲料ではほとんどしなかったが、4ppbでは良好であり、6~8ppbでは非常に良好であった。ただし、リナロール含有量が15pbの発酵麦芽飲料は、リナロール特有の香りが強すぎ、4ppbの発酵麦芽飲料よりも華やかさは弱く、普通であった。」
イ 甲2に記載された発明
甲2に記載された事項を、特に【請求項1】、【0006】、【0007】、【0033】、【0035】及び【0040】に関して整理すると、甲2には次の発明(以下、順に「甲2飲料発明」、「甲2製法発明」及び「甲2方法発明」という。)が記載されていると認める。
<甲2飲料発明>
「発酵原料の麦芽比率が25質量%未満であり、リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、ギ酸、酢酸、及びピログルタミン酸の総含有量が800~1200mg/Lであり、リナロール含有量が4~8ppbである、発酵麦芽飲料。」
<甲2製法発明>
「発酵原料の麦芽比率が25質量%未満であり、リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、ギ酸、酢酸、及びピログルタミン酸の総含有量が800~1200mg/Lであり、リナロール含有量が4~8ppbであるように調整する工程を有する、発酵麦芽飲料の製造方法。」
<甲2方法発明>
「発酵原料の麦芽比率が25質量%未満であり、リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、ギ酸、酢酸、及びピログルタミン酸の総含有量が800~1200mg/Lであり、リナロール含有量が4~8ppbであるように調整する工程を有する、発酵麦芽飲料が充分な酸味と華やかな香りを有するようにする方法。」
2 取消理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1飲料発明を対比する。
甲1飲料発明における「発酵麦芽飲料」は本件特許発明1における「ビール様発泡性飲料」に相当する。
甲1飲料発明は、「リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、ギ酸、酢酸、及びピログルタミン酸の総含有量が800~1200mg/L」であるから、「ギ酸」が除かれた「リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸、及びピログルタミン酸の総含有量」は当然「800~1200mg/L」以下であり、本件特許発明1における「リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸、及びピログルタミン酸からなる酸成分の総濃度が1500ppm未満」という発明特定事項の条件を満足する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸、及びピログルタミン酸からなる酸成分の総濃度が1500ppm未満である、ビール様発泡性飲料。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点1-1a>
本件特許発明1においては、「3-フェニルプロピオン酸エチルの濃度が0.15ppb以上である」と特定されているのに対し、甲1飲料発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点1-1b>
本件特許発明1においては、「麦芽使用比率が50質量%以上である」と特定されているのに対し、甲1飲料発明においては、「発酵原料の麦芽比率が50質量%未満であり」と特定されている。
イ 判断
事案に鑑み、相違点1-1bについて検討する。
相違点1-1bは、実質的な相違点である。
そして、甲1飲料発明は、「発酵原料の麦芽比率が50質量%未満」であることを前提とする発明であるから、甲1及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、甲1飲料発明において、相違点1-1bに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けはなく、むしろ阻害要因があるといえる。
したがって、甲1飲料発明において、甲1及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点1-1bに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1飲料発明であるとはいえないし、甲1飲料発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(2)本件特許発明2ないし8について
本件特許発明2ないし8は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に判断される。すなわち、本件特許発明2ないし8は甲1飲料発明であるとはいえないし、甲1飲料発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明9について
ア 対比
本件特許発明9と甲1製法発明を対比する。
両者の間には、本件特許発明1と甲1飲料発明との間と同様の相当関係が成り立つ。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸、及びピログルタミン酸からなる酸成分の総濃度が1500ppm未満であるように調整する工程を有する、ビール様発泡性飲料の製造方法。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点1-2a>
本件特許発明9においては、「飲料の3-フェニルプロピオン酸エチル濃度が0.15ppb以上になるように調整する工程と、を有する」と特定されているのに対し、甲1製法発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点1―2b>
本件特許発明9においては、「麦芽使用比率が50質量%以上であるビール様発泡性飲料を製造する」と特定されているのに対し、甲1製法発明においては、「発酵原料の麦芽比率が50質量%未満であり」と特定されている点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点1-2bについて検討する。
相違点1-2bは相違点1-1bと実質的に同じであるから、その判断も同じである。すなわち、相違点1-2bは実質的な相違点であり、甲1製法発明において、甲1及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点1-2bに係る本件特許発明9の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明9は甲1製法発明であるとはいえないし、甲1製法発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)本件特許発明10ないし14について
本件特許発明10ないし14は、請求項9を引用して特定するものであり、本件特許発明9の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明9と同様に判断される。すなわち、本件特許発明11ないし14は甲1製法発明であるとはいえないし、本件特許発明10ないし14は甲1製法発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)本件特許発明15について
ア 対比
本件特許発明15と甲1方法発明を対比する。
両者の間には、本件特許発明1と甲1飲料発明との間と同様の相当関係が成り立つ。
甲1方法発明における「発酵麦芽飲料が充分な酸味と良好な軽快感を有するようにする方法」と本件特許発明15における「ビール様発泡性飲料の香味改善方法」は、「ビール様発泡性飲料の調整方法」という限りにおいて一致する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸、及びピログルタミン酸からなる酸成分の総濃度が1500ppm未満であるように調整する工程を有する、ビール様発泡性飲料の調整方法。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点1-3a>
本件特許発明15においては、「麦芽使用比率が50質量%以上である」と特定されているのに対し、甲1方法発明においては、「発酵原料の麦芽比率が50質量%未満であり」と特定されている点。
<相違点1-3b>
本件特許発明15においては、「飲料の3-フェニルプロピオン酸エチル濃度が0.15ppb以上になるように調整する工程と、を有する」と特定されているのに対し、甲1方法発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点1-3c>
「ビール様発泡性飲料の調整方法」に関して、本件特許発明15においては、「ビール様発泡性飲料の香味改善方法」と特定されているのに対し、甲1方法発明においては、「発酵麦芽飲料が充分な酸味と良好な軽快感を有するようにする方法」と特定されている点。
イ 判断
相違点1-3aについて検討する。
相違点1-3aは相違点1-1bと実質的に同じであるから、その判断も同じである。すなわち、相違点1-3aは実質的な相違点であり、甲1方法発明において、甲1及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点1-3aに係る本件特許発明15の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明15は甲1方法発明であるとはいえないし、甲1方法発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(6)本件特許発明16及び17について
本件特許発明16及び17は、請求項15を引用して特定するものであり、本件特許発明15の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明15と同様に判断される。すなわち、本件特許発明16及び17は甲1方法発明であるとはいえないし、甲1方法発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(7)取消理由1についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし9及び11ないし17は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、本件特許発明1ないし17は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし17に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであるとはいえないので、同法第113条第2号に該当せず、取消理由1によっては取り消すことはできない。
3 取消理由2(甲2に基づく新規性・進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲2飲料発明を対比する。
甲2飲料発明における「発酵麦芽飲料」は本件特許発明1における「ビール様発泡性飲料」に相当する。
甲2飲料発明は、「リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、ギ酸、酢酸、及びピログルタミン酸の総含有量が800~1200mg/L」であるから、「ギ酸」が除かれた「リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸、及びピログルタミン酸の総含有量」は当然「800~1200mg/L」以下であり、本件特許発明1における「リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸、及びピログルタミン酸からなる酸成分の総濃度が1500ppm未満」という発明特定事項の条件を満足する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸、及びピログルタミン酸からなる酸成分の総濃度が1500ppm未満である、ビール様発泡性飲料。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点2-1a>
本件特許発明1においては、「3-フェニルプロピオン酸エチルの濃度が0.15ppb以上である」と特定されているのに対し、甲2飲料発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点2-1b>
本件特許発明1においては、「麦芽使用比率が50質量%以上である」と特定されているのに対し、甲2飲料発明においては、「発酵原料の麦芽比率が25質量%未満であり」と特定されている点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点2-1bについて検討する。
相違点2-1bは、実質的な相違点である。
そして、甲2飲料発明は、「発酵原料の麦芽比率が25質量%未満」であることを前提とする発明であるから、甲2及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、甲2飲料発明において、相違点2-1bに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けはなく、むしろ阻害要因があるといえる。
したがって、甲2飲料発明において、甲2及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点2-1bに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲2飲料発明であるとはいえないし、甲2飲料発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(2)本件特許発明2ないし8について
本件特許発明2ないし8は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に判断される。すなわち、本件特許発明2ないし8は甲2飲料発明であるとはいえないし、甲2飲料発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明9について
ア 対比
本件特許発明9と甲2製法発明を対比する。
両者の間には、本件特許発明1と甲2飲料発明との間と同様の相当関係が成り立つ。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸、及びピログルタミン酸からなる酸成分の総濃度が1500ppm未満であるように調整する工程を有する、ビール様発泡性飲料の製造方法。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点2-2a>
本件特許発明9においては、「飲料の3-フェニルプロピオン酸エチル濃度が0.15ppb以上になるように調整する工程と、を有する」と特定されているのに対し、甲2製法発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点2-2b>
本件特許発明9においては、「麦芽使用比率が50質量%以上であるビール様発泡性飲料を製造する」と特定されているのに対し、甲2製法発明においては、「発酵原料の麦芽比率が25質量%未満であり」と特定されている点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点2-2bについて検討する。
相違点2-2bは相違点2-1bと実質的に同じであるから、その判断も同じである。すなわち、相違点2-2bは実質的な相違点であり、甲2製法発明において、甲2及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点2-2bに係る本件特許発明9の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明9は甲2製法発明であるとはいえないし、甲2製法発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)本件特許発明10ないし14について
本件特許発明10ないし14は、請求項9を引用して特定するものであり、本件特許発明9の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明9と同様に判断される。すなわち、本件特許発明11ないし14は甲2製法発明であるとはいえないし、本件特許発明10ないし14は甲2製法発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)本件特許発明15について
ア 対比
本件特許発明15と甲2方法発明を対比する。
両者の間には、本件特許発明1と甲2飲料発明との間と同様の相当関係が成り立つ。
甲2方法発明における「発酵麦芽飲料が酸味と華やかな香りを有するようにする方法」は本件特許発明15における「ビール様発泡性飲料の香味改善方法」に相当する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸、及びピログルタミン酸からなる酸成分の総濃度が1500ppm未満であるように調整する工程を有する、ビール様発泡性飲料の香味改善方法。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点2-3a>
本件特許発明15においては、「麦芽使用比率が50質量%以上である」と特定されているのに対し、甲2方法発明においては、「発酵原料の麦芽比率が25質量%未満であり」と特定されている点。
<相違点2-3b>
本件特許発明15においては、「飲料の3-フェニルプロピオン酸エチル濃度が0.15ppb以上になるように調整する工程と、を有する」と特定されているのに対し、甲2方法発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点2-3aについて検討する。
相違点2-3aは相違点2-1bと実質的に同じであるから、その判断も同じである。すなわち、相違点2-3aは実質的な相違点であり、甲2方法発明において、甲2及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点2-3aに係る本件特許発明15の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明15は甲2方法発明であるとはいえないし、甲2方法発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(6)本件特許発明16及び17について
本件特許発明16及び17は、請求項15を引用して特定するものであり、本件特許発明15の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明15と同様に判断される。すなわち、本件特許発明16及び17は甲2方法発明であるとはいえないし、甲2方法発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(7)取消理由2についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし9及び11ないし17は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、本件特許発明1ないし17は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし17に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであるとはいえないので、同法第113条第2号に該当せず、取消理由2によっては取り消すことはできない。
第7 特許異議申立人の主張について
1 特許異議申立人の主張の概要
特許異議申立人は、令和6年5月15日に提出された意見書において、新たな理由として、おおむね次の理由を主張する。
(1)申立理由3(甲3の4に基づく新規性・進歩性)
甲3の4の【0036】ないし【0038】に記載された発明は、麦芽使用比率が50~66質量%、すなわち50質量%以上であり、甲1及び2並びに10から、リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸、及びピログルタミン酸からなる酸成分の総濃度が1200mg/L以下、すなわち1500ppm未満であり、甲4及び5から、3-フェニルプロピオン酸エチル濃度が0.29~3.68質量ppb、すなわち0.15ppb以上であるといえる。
したがって、本件特許発明1ないし17は甲3の4に記載された発明であるか、甲3の4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(上記意見書第2ないし14ページ)。
(2)申立理由4(甲3の5に基づく新規性・進歩性)
甲3の5の【0042】ないし【0045】に記載された発明は、麦芽使用比率が100質量%、すなわち50質量%以上であり、甲1及び2並びに10から、リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸、及びピログルタミン酸からなる酸成分の総濃度が1200mg/L以下、すなわち1500ppm未満であり、甲4及び5から、3-フェニルプロピオン酸エチル濃度が0.29~3.68質量ppb、すなわち0.15ppb以上であるといえる。
したがって、本件特許発明1ないし17は甲3の5に記載された発明であるか、甲3の5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(上記意見書第14ないし26ページ)。
2 検討
そこで、検討する。
(1)まず、申立理由3及び4は、いずれも、本件訂正前の本件特許発明1ないし17に対して申し立てることのできた理由であり、訂正の請求に付随して生じた事項ではなく、実質的に新たな内容を含むものである。
したがって、令和6年4月11日付けで通知した訂正請求があった旨の通知書において「意見は、特許権者による訂正の請求に付随して生じた事項を除き、特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由に対して意見の内容が実質的に新たな内容を含むものであると認められるときは、実質的に新たな内容を含む部分は、新たな取消理由として採用されませんので、御注意ください。」と記載したとおり、申立理由3及び4は新たな取消理由として採用できるものではない。
(2)また、甲3の4又は甲3の5に記載された発明は、麦芽使用比率が甲1に記載された発明及び甲2に記載された発明のいずれとも異なるし、甲10に記載されたビールの麦芽使用比率及びその製造方法は不明であることから、甲1及び2並びに10に記載された事項を考慮しても、甲3の4又は甲3の5に記載された発明におけるリン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸、及びピログルタミン酸からなる酸成分の総濃度が本件特許発明1ないし17で特定される範囲内であるとは直ちにはいえず、本件特許発明1ないし17は甲3の4又は甲3の5に記載された発明であるとはいえないし、甲3の4又は甲3の5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
3 特許異議申立人の主張についてのむすび
したがって、特許異議申立人の主張する申立理由3及び4は採用できないし、申立理由3及び4によっては、本件特許の請求項1ないし17に係る特許を取り消すことはできない。
第8 結語
上記第6のとおり、本件特許の請求項1ないし17に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし17に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701260