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特許異議申立

2023-701243

耐油紙及び包装袋

審判番号
2023-701243
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-088490
登録番号
7283970
請求日
2023年11月27日
審決日
2024年02月28日
公報発行日
2024年03月29日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】大王製紙株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人永井国際特許事務所
  • 【異議申立人】鈴木 幸子
審判長/審判官
  • 審判長 藤原 直欣
  • 審判官 ▲高▼橋 杏子
  • 審判官 稲葉 大紀
分類
P1651.121-Y (D21H) / P1651.536-Y (D21H) / P1651.537-Y (D21H)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条の2、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7283970号発明「耐油紙及び包装袋」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7283970号の請求項1~5に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7283970号の請求項1~5に係る特許についての出願は、令和1年5月8日に出願され、令和5年5月22日にその特許権の設定登録がされ、令和5年5月30日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和5年11月27日に特許異議申立人鈴木幸子(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。 第2 本件発明 特許第7283970号の請求項1~5の特許に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本件発明1」といい、その他の請求項に係る発明も同様に称する。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 基紙の一方又は双方の面に第一塗工層及び第二塗工層が設けられた耐油紙であり、 前記第一塗工層は、カオリン及びスチレン-ブタジエン共重合体ラテックスを主成分とし、 前記第二塗工層は、ヒートシール性を有する樹脂を主成分とし、かつ130℃における剥離強度が2.00N/25mm以上である、 ことを特徴とする耐油紙。 【請求項2】 前記ヒートシール性を有する樹脂がオレフィン系樹脂であり、 前記第二塗工層の塗工量が2.0~5.0g/m2である、 請求項1に記載の耐油紙。 【請求項3】 前記カオリン及び前記スチレン-ブタジエン共重合体ラテックスの含有比率が、質量基準で70:30~80:20である、 請求項1又は請求項2に記載の耐油紙。 【請求項4】 前記スチレン-ブタジエン共重合体ラテックスは、ゲル含有率が92~98質量%で、かつブタジエン含有率が45~60質量%である、 請求項1~3のいずれか1項に記載の耐油紙。 【請求項5】 請求項1~4のいずれか1項に記載の耐油紙から形成され、 少なくともシートシール部において前記剥離強度の条件を満たす、 ことを特徴とする包装袋。」 第3 申立理由の概要 申立人は、証拠として、以下の甲第1号証~甲第14号証(以下「甲1」等という。)を提出し、以下の理由を申立てている。 (1)申立理由1(甲1号証に基づく進歩性) 本件特許の請求項1~5に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。 (2)申立理由2(甲2号証に基づく進歩性) 本件特許の請求項1~5に係る発明は、甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。 (3)申立理由3(甲3号証に基づく進歩性) 本件特許の請求項1~5に係る発明は、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。 (4)申立理由4(甲4号証に基づく進歩性) 本件特許の請求項1~5に係る発明は、甲4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。 (5)申立理由5(拡大先願) 本件特許の請求項1、2、5に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特願2019-521839号(甲14)の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。 (6)申立理由6(明確性) 本件特許は、請求項1の「前記第二塗工層は、ヒートシール性を有する樹脂を主成分とし、かつ130℃における剥離強度が2.00N/25mm以上である」との記載について、剥離強度が2.00N/25mm以上が、何に貼付したときの剥離強度であるのか不明である。 よって、本件特許は、請求項1~5の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 (7)申立理由7(実施可能要件) 本件特許は、請求項1の「前記第二塗工層は、ヒートシール性を有する樹脂を主成分とし、かつ130℃における剥離強度が2.00N/25mm以上である」との発明特定事項に関し、剥離強度の測定方法には不明な点があるから、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。 よって、本件特許の請求項1~5に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 [証拠方法] ・甲1:特開平9-158089号公報 ・甲2:特開2000-355681号公報 ・甲3:特開2019-2098号公報 ・甲4:特開2001-254293号公報 ・甲5:カタログ「ケミパール○R(当審注:アルファベットのRを○で囲んだもの。) ポリオレフィン水性ディスパージョン」、[online]、三井化学株式会社のウェブサイト、[出力日:令和5年10月2日]、インターネット<URL: https://jp.mitsuichemicals.com/jp/service/product/chemipearl/index.htm#product-detail__tab-item-93b05a7f93-tab> ・甲6:「包装用フイルムの性能用語」、[online]、令和1年5月1日保存、サンコー商事株式会社のウェブサイト、インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20190501074612/https://www.sanko-shoji.jp/lecture/cn4/pg128326.html> ・甲7:特開平8-169076号公報 ・甲8:特開平9-94932号公報 ・甲9:「包材構成100問100答 改訂2版」、株式会社東洋紡パッケージング・プラン・サービス、2008年2月15日発行、p.37,38,221 ・甲10:松本宏一、「誰でもわかるラミネーティング」、株式会社加工技術研究会、1998年10月6日、p.114,115 ・甲11:特開昭60-215039号公報 ・甲12:特開2001-162737号公報 ・甲13:特開2003-276116号公報 ・甲14:特許第6580291号公報(特願2019-521839号) 第4 当審の判断 1 甲1~甲14に記載された事項・発明 (1)甲1 ア 甲1には、次の事項が記載されている。下線は、理解の便宜のため、当審が付した。以下同様である。 「【請求項1】 基紙の少なくとも片面に目止め用の下塗り層、耐水耐油層からなる上塗り層を設けた紙器原紙において、下塗り層が顔料/バインダー樹脂層からなり塗工量が片面当り4~15g/m2、上塗り層の耐水耐油層の樹脂塗工量が片面当り2g/m2以上であり、かつ下記A~Dの要件を満足することを特徴とする紙器原紙。 A.基紙のコッブの吸水度が50g/m2以下、平滑度が10秒以上である。 B.下塗り層の使用顔料がアスペクト比5~30、平均粒子径が 0.5~30μmである。 C.下塗り層の配合比率が顔料 100重量部に対してバインダー樹脂が10~ 100重量部である。 D.上塗り層に使用する耐水耐油樹脂がゲル分率70%以上を有し、塗工層の臨界表面張力が25dyn/cm以上である水分散系樹脂を使用する。」 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明品は再生が容易で耐水性、成型適性、ヒートシール性、グラビア印刷適性等の加工適性が良好なカップ原紙、および耐水耐油性を合わせ持つ紙皿原紙等の紙器原紙に関するものである。」 「【0035】9.ヒートシール性 テスター産業社製シーラを用いて実施例の片面塗工紙の塗工面と非塗工面を重ねプレス圧を1kg/cm2、温度 150℃、3秒間加熱処理を行った。そのときの接着程度を観察した。 [図:0001407884000001.jpg] 」 「【0038】実施例1 NBKP50重量部、LBKP50重量部を混合しC.S.F. 400mlに叩解した。このパルプスラリー中にパルプ分に対して 4.5重量%のロジンサイズ剤を添加し、更にスラリーpHが 4.5になるように硫酸バンドを添加し坪量 260g/mの基紙を作成した。この基紙のコッブ吸水度は30g/m2、平滑度は20秒であった。別に、下塗り用の塗工液としてアスペクト比15、平均粒子径3μmのカオリン100重量部とSBR30重量部を混合し分散処理した塗工液を作成した。この塗工液を基紙の片面にマイヤーバーを用い固形分換算10g/m2塗工した。次に上塗り用の樹脂としてゲル分率90%のスチレンアクリル共重合体樹脂を下塗り層表面にマイヤーバーを用い固形分換算で5g/m2塗工した。この時の臨界表面張力は30dyn/cmであった。」 イ 甲1に記載された発明 上記アを総合すると、甲1には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「基紙の少なくとも片面に目止め用の下塗り層、耐水耐油層からなる上塗り層を設けた紙器原紙において、 下塗り用の塗工液はアスペクト比15、平均粒子径3μmのカオリン100重量部とSBR30重量部を混合し分散処理した塗工液であり、この塗工液を基紙の片面にマイヤーバーを用い固形分換算10g/m2塗工し、 上塗り用の樹脂としてゲル分率90%のスチレンアクリル共重合体樹脂を下塗り層表面にマイヤーバーを用い固形分換算で5g/m2塗工した、紙器原紙。」 (2)甲2 ア 甲2には、次の事項が記載されている。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ヒートシール型接着剤を表面基材の片面に設けたヒートシール型接着ラベルに関するものである。更に詳しくは、清涼飲料水、酒類、医薬品、食品等の円筒容器およびプラスチック素材による変形容器へのラベリングに適したヒートシール型接着ラベルに関するものである。」 「【0036】実施例1 米坪84.9g/m2の片面アート紙(商品名:金藤片面、王子製紙株式会社製)にスーパーカレンダー処理を行い、原紙面の平滑度を250秒とした。ついで、該アート紙の原紙面に、ヒートシール型接着剤(商品名:トヨメルトBL-8001、東洋ペトロライト製)を、パンフィード式ロールコーターを用いて、乾燥重量で20g/m2となるように塗布しヒートシール型接着ラベルを得た。」 「【0038】実施例3 顔料としてカオリン(商品名:HTクレー、エンゲルハード製)100部、アクリル系分散液(ポイズ520、花王製)2.5部、水100部を混合し、コーレス分散機にて分散した。該分散液に、酸化澱粉(商品名:王子エースA、王子コーンスターチ製)を固形分換算で絶乾顔料の乾燥重量あたり5%、およびスチレン-ブタジエンラテックス(商品名:JSR-0692、日本合成ゴム製)を固形分換算で絶乾顔料の乾燥重量あたり10%を混合し、平滑化層用塗液とした。ついで、米坪84.9g/m2の片面アート紙(商品名:金藤片面,王子製紙株式会社製)の原紙面に上記平滑化層用塗液を5g/m2となるようにブレードコーターを用い塗布乾燥した後、スーパーカレンダー処理を行い平滑化層を形成した。平滑化層の平滑度を750秒であった。ついで、実施例1と同様にして、該アート紙の平滑化層上に、ヒートシール型接着剤層を設け、ヒートシール型接着ラベルを製造した。」 「【0044】〔ラベル接着性〕貼付したラベルを手で剥がし、その接着強度からラベルのヒートシール型接着ラベルが十分に貼付されていたかどうかを以下の基準で評価した。 ◎:接着強度が非常に強く、接着剤は完全に貼付している。 ○:接着強度は非常に強く、手で剥がす以外剥がれることはないが、無理に剥がしたとき接着剤が容器に残る。 △:接着強度がやや弱く、手で剥がしたとき接着剤が容器に残る。 ×:接着強度が弱く、ラベルを手で簡単に剥がすことができる。」 イ 甲2に記載された発明 上記アを総合すると、甲2には以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 「米坪84.9g/m2の片面アート紙(商品名:金藤片面,王子製紙株式会社製)の原紙面に、顔料としてカオリン(商品名:HTクレー、エンゲルハード製)100部、アクリル系分散液(ポイズ520、花王製)2.5部、水100部を混合し、コーレス分散機にて分散し、該分散液に、酸化澱粉(商品名:王子エースA、王子コーンスターチ製)を固形分換算で絶乾顔料の乾燥重量あたり5%、およびスチレン-ブタジエンラテックス(商品名:JSR-0692、日本合成ゴム製)を固形分換算で絶乾顔料の乾燥重量あたり10%を混合した平滑化層用塗液を5g/m2となるようにブレードコーターを用い塗布乾燥した後、スーパーカレンダー処理を行い平滑化層を形成し、該アート紙の平滑化層上に、ヒートシール型接着剤(商品名:トヨメルトBL-8001、東洋ペトロライト製)を、パンフィード式ロールコーターを用いて、乾燥重量で20g/m2となるように塗布した、ヒートシール型接着ラベル。」 (3)甲3 ア 甲3には、次の事項が記載されている。 「【請求項1】 基紙及びこの基紙の少なくとも一方の面に耐油層を備える耐油紙であって、 上記耐油層が単層構造を有し、 上記耐油層の形成に用いる耐油層形成用組成物が、 ゲル含有率が92質量%以上98質量%以下であり、ブタジエンの含有率が45質量%以上60質量%以下であるスチレン-ブタジエン共重合体ラテックスと、 アスペクト比が55以上120以下のカオリンと、 消泡剤と、 分岐ポリエステルアミドを主成分とする粘度調整剤と を含有し、 上記耐油層形成用組成物における上記スチレン-ブタジエン共重合体ラテックスの含有率が78.0質量%以上92.0質量%以下であり、上記カオリンに対する上記スチレン-ブタジエン共重合体ラテックスの含有比率が、質量比(倍率)で4.5以上10.5以下であることを特徴とする耐油紙。」 「【0002】 惣菜類やファーストフード等の食品の包装材においては、包装された内容物からの油分が外側に染み出すことにより外面が油分によって汚れることを防止するために、耐油紙が広く用いられている。近年、耐油紙に対するリサイクル性が要求されていることから、基紙に耐油剤を塗工又は内添した耐油紙が主流となっている。上記耐油剤として代表的なものは有機系フッ素樹脂であるが、有機系フッ素樹脂は摂取した場合に体内で分解されずに蓄積される可能性があり、また、高温条件下で有害ガスを発生する可能性もあるため、有機系フッ素樹脂を使用しない代替技術が検討されている。 【0003】 このような耐油紙としては、耐油性を向上させ、さらにヒートシール性を付与するために、アクリル系樹脂エマルジョンを含有する耐油層を備える耐油紙が開示されている(例えば特開2015-155582号公報参照)。また、同様の効果を得るために、アクリル系、スチレン-アクリル系、又はスチレン-ブタジエン系合成樹脂エマルジョンにオレフィンとマレイン酸との共重合体、顔料等を添加した耐油層を備える耐油紙(例えば、特開2004-019036号公報参照)や、耐油層上にヒートシール層が設けられた複数層を備える耐油紙が開示されている(例えば、特開2001-254293号公報参照)。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0004】 【特許文献1】特開2015-155582号公報 【特許文献2】特開2004-019036号公報 【特許文献3】特開2001-254293号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかしながら、上記特許文献1に開示されている技術においては、上記耐油層がアクリル系樹脂を含むものについては、アクリル系樹脂に独特の臭気があるため、食品包装材としては適さない傾向がある。また、上記特許文献2に開示されている技術においては、耐油層が合成樹脂及び顔料を含有することにより、ヒートシール性及び耐油性を向上させることができても透湿性が劣るおそれがある。さらに、上記特許文献3に開示されている技術においては、耐油層が複数の塗膜から形成されているので、製造工程が煩雑になるおそれがある。従って、効率よく製造でき、食品等の包装材として好適な性能を備える耐油紙が望まれている。 【0006】 本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、耐油層が単層でありながら耐油性、ヒートシール性、透湿性並びに水分及び油分に対する耐浸透性、臭気抑制性及びブロッキング抑制性に優れ、食品等の包装材に好適で効率よく製造可能な耐油紙を提供することを目的とする。」 「【0008】 当該耐油紙は、当該耐油紙の耐油層の形成に用いる耐油層形成用組成物が上記組成を有することで、耐油層が単層でありながら耐油性、ヒートシール性、透湿性並びに水分及び油分に対する耐浸透性、臭気抑制性及びブロッキング抑制性に優れ、食品等の包装材に好適で効率よく製造することができる。」 「【0054】 (耐油紙の製造) 次に、基紙の片面に、5.0g/m2の耐油層を形成し、坪量が45.0g/m2の耐油紙を得た。耐油層形成用組成物の組成については表1に示す通りとした。また、耐油層形成用組成物に使用した各薬剤については、以下の製品を使用した。 (1)カオリン カオリン[A]:バリサーフHX[(株)イメリルミネラルジャパン製] カオリン[B]:コンツァー1500[(株)イメリルミネラルジャパン製] カオリン[C]:カオファイン[白石カルシウム(株)製] (2)スチレン-ブタジエン共重合体ラテックス SBラテックス[A]:T2749N[JSR(株)製](粒子径85nm) SBラテックス[B]:F1558.02[旭化成(株)製](粒子径90nm) (3)消泡剤 消泡剤[A]:SNデフォーマ777[サンノプコ(株)製] (イソパラフィン系成分35.0質量%、ポリエーテル系成分35.0質量%) 消泡剤[B]:SNデフォーマ381[サンノプコ(株)製] (イソパラフィン系成分0質量%、ポリエーテル系成分95.0質量%) 消泡剤[C]:SNデフォーマ218[サンノプコ(株)製] (イソパラフィン系成分90.0質量%、ポリエーテル系成分5.0質量%) (4)粘度調整剤 ハイブレーンPX100[楠木化成(株)製]」 「【0063】 (ヒートシール性) 熱傾斜試験機((株)東洋精機製作所製)を用いて、シーラー圧2kg/cm、シーラー時間1秒間、シール温度(1)150℃、(2)160℃、(3)170℃の条件下で加工後、ヒートシール部分を両手で剥離した。評価基準は以下の通りとした。 ○:シール部分が材破し、ヒートシール性を有し、包装材として適している。 △:シール部分が毛羽立ち、ヒートシール性が若干弱いが、包装材として使用する際には問題のない範囲である。 ×:シール部分が接着しておらず、ヒートシール性がなく包装材として使用することが困難である。」 イ 甲3に記載された発明 上記アを総合すると、甲3には以下の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。 「基紙及びこの基紙の少なくとも一方の面に耐油層を備える耐油紙であって、 耐油層が単層構造を有し、 耐油層の形成に用いる耐油層形成用組成物が、 ゲル含有率が92質量%以上98質量%以下であり、ブタジエンの含有率が45質量%以上60質量%以下であるスチレン-ブタジエン共重合体ラテックスと、 アスペクト比が55以上120以下のカオリンと、 消泡剤と、 分岐ポリエステルアミドを主成分とする粘度調整剤とを含有する、耐油紙。」 (4)甲4 ア 甲4には、次の事項が記載されている。 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、適度な耐油耐水性を有することは無論、ヒートシール性、通気性及びリサイクル性の何れにおいても優れた、特にファーストフードや揚げ物、焼き物などの惣菜等の調理済食品の包装に用いるのに適したヒートシール性耐油耐水性紙、その製造方法及び加熱用包装袋に関する。」 「【0007】 【発明の実施の形態】本発明において使用するポリマーエマルジョンとしては、特に限定はないが、酢酸ビニルエマルジョン,酢酸ビニルとアクリル酸,マレイン酸,フマル酸等の不飽和酸又はこれらのエステルとの共重合体エマルジョン、エチレン-酢酸ビニル共重合体エマルジョン、スチレン-アクリル酸エステル共重合体エマルジョン、アクリル酸エステル共重合体エマルジョン、アイオノマーエマルジョン等が適当である。 【0008】かかるポリマーエマルジョンとしては、ケミパールSシリーズ(三井石油化学工業株式会社製アイオノマーエマルジョン;ナトリウムで架橋),AD-37P295及びAD-37P345(東洋モートン株式会社製エチレン-酢酸ビニル共重合体エマルジョン),ビニブラン2750(日信化学工業株式会社製アクリルエマルジョン)等として市販されているものを使用することができる。ヒートシール部のポリマーエマルジョンの付着量(固形分)は、0.5~5.0g/m2が適当であり、特に2.5~3.5g/m2が好ましい。付着量が、0.5g/m2未満の場合は、ヒートシール性が不充分となり、5.0g/m2を超えた場合は、通気性が低くなりコスト高ともなる。 【0009】本発明においては、耐油耐水紙としては、製紙用繊維から得られ、耐油耐水剤の内添、含浸、塗布等により耐油耐水性を付与された紙であれば特に制約はないが、リサイクル性という意味では、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ等の木材パルプ、マニラ麻パルプ、サイザル麻パルプ、亜麻パルプ等の非木材パルプ、およびそれらのパルプに化学変性を施したパルプ等の製紙用天然繊維を、必要に応じて叩解して、使用した紙が好ましい。耐油耐水紙の坪数、厚さ及び透気度は、ヒートシール性耐油耐水紙として必要な坪数、厚さ及び透気度とポリマーエマルジョンの種類及び固形分付着量との関係で適宜選択されるが、坪量19.5~195g/m2、厚さ22~295μm、透気度200秒以下のものが適当である。 【0010】耐油耐水紙の表面(片面又は両面)のヒートシール部は、ポリマーエマルジョンを塗工することにより形成される。塗工条件には特に制約はなく、ポリマーエマルジョンを塗工する際に通常採用されている条件が採用できる。」 「【0021】実施例1 耐油耐水紙としては、下記の組成を有し、第1表に記載した物性の紙を使用した。 (1)パルプ:N-BKP:26%L-BKP:74% (2)叩解度:37°SR (3)内添成分(数量はパルプ1000kg当りの固形分重量) 定着剤:硫酸バンド5kg 紙力剤:カチオンデンプン9kg 湿潤紙力剤:ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂3.25kg (4)サイズプレスコート成分(数量はサイズプレスコート液1m3当りの固形分重量) 耐油耐水剤:フッ素樹脂9kg 紙力剤:カチオンデンプン30kg 消泡剤:シリコーン系消泡剤0.20kg (5)サイズプレスコート成分の固形分付着量1.2g/m2」 「【0023】この耐油耐水紙の片面に、アイオノマーエマルジョン(三井石油化学工業株式会社製ナトリウムで架橋したアイオノマーエマルジョン、商品名ケミパールS-100)を下記の条件で塗工した。なお、カール防止のため、裏面にローターダンプニングにて水を付与した。 塗工機:エアナイフコーター 乾燥温度:最高120℃ ラインスピード:100m/min アイオノマーエマルジョンの固形分付着量:3.2g/m2」 イ 甲4に記載された発明 上記アを総合すると、甲4には、次の技術的事項が記載されていると認められる(以下「甲4発明」という。)。 「耐油耐水紙の片面に、アイオノマーエマルジョン(三井石油化学工業株式会社製ナトリウムで架橋したアイオノマーエマルジョン、商品名ケミパールS-100)を塗工した、ヒートシール性耐油耐水性紙。」 (5)甲5 甲5には、次の事項が記載されている。 「 [図:0001407884000002.jpg] 」 (6)甲6 甲6には、次の事項が記載されている。 「 [図:0001407884000003.jpg] 」 (7)甲7 甲7には、次の事項が記載されている。 「【0002】 【従来の技術】・・・。しかし、昨今では延伸フィルムと他基材とを貼合した際の複合品の接着強度を高めることや、複合品あるいは単体品を製袋して袋として使用する場合、製袋の高速化に伴い、さらに低温ヒートシール性、シール部の接着強度等の改良が強く望まれている。また、不織布または織布においては、上記の諸物性の改良と共に不織布・織布の縦横繊維の交点の接着強度を向上させることも要望されている。」 (8)甲8 甲8には、次の事項が記載されている。 「【0008】昨今では、製袋して袋として使用する場合、製袋の高速化に伴い、さらに低温ヒートシール性、シール部の接着強度等の改良が強く望まれている。」 (9)甲9 甲9には、次の事項が記載されている。 「 [図:0001407884000004.jpg] 」(p.37) (10)甲10 甲10には、次の事項が記載されている。 「 [図:0001407884000005.jpg] 」(p.114右欄) 「 [図:0001407884000006.jpg] 」(p.115右欄) (11)甲11 甲11には、次の事項が記載されている。 「(産業上の利用分野) オーバーラッピング包装用として、被覆フイルムを使用するには、まず、被覆面の低温ヒートシール性が必要であるが、汎用のセロハン、二軸延伸ポリプロピレン、二軸延伸ポリエステル、二軸延伸ポリアミド、等のフィルムはそれ自体低温ヒートシール性がないため、オーバーラッピング包装等に用いる時には、これらのフィルムの両面にヒートシール層を設けて、低温ヒートシール性を付与して利用されている。」(第1ページ右欄10~19行) (12)甲12 甲12には、次の事項が記載されている。 「【0004】一方、引張強度、剛性率、表面硬度、衝撃強度等の機械的特性や光沢、透明性等の光学的特性に優れ、無毒性、無臭性なので食品衛生性にも優れるポリプロピレン樹脂の軟質化が、プロピレンとエチレンとをランダムに共重合することにより融点を低下させ、十分な機械的特性および光学的特性を維持しつつ、柔軟性を持たせるということで行われている。しかしながら、ポリプロピレン樹脂単独で軟質塩化ビニル樹脂に匹敵する柔軟性を持たせることは難しい。また、かかるポリプロピレンフィルムをヒートシールするときには、非常に高温にしなければならず、ヒートシール適正温度範囲が狭いため、自動包装機、自動製袋機等によりヒートシールする場合には厳密な温度管理が必要になる。 【0005】そこで、ポリプロピレンフィルムを基材とし、その片面ないしは両面に、より低い温度でヒートシール可能な樹脂をコーティングやラミネート、あるいは共押出することにより積層させて低温ヒートシール性を改良することが行なわれている。・・・」 (13)甲13 甲13には、次の事項が記載されている。 「【0002】 【従来の技術】食品、飲料、雑貨用などの液状物、粉粒物、固形物の包装材として、紙、合成樹脂フィルム又はシート、アルミ箔等の袋状成形物が用いられている。特に、合成樹脂製の包装袋は、低コスト性、耐水性などにおいて優れており、多くの用途で使用されている。このような合成樹脂製の包装材に要求される特性のうち、重要な特性の1つとして、熱接合性が挙げられる。 【0003】特に、熱接合性においては、(1)低温接合(低温シール)が可能であること、(2)十分なシール強度が得られること、(3)シール温度幅が広いことなどが要求される。熱接合可能な合成樹脂フィルムとして、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルムなどの種々の樹脂フィルムが汎用されている。しかし、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルムは低温シール性が十分でなく、包装材の生産性を低下させる。また、ポリプロピレン(PP)フィルムは、熱接合性が劣るので、通常、熱接合性を補うため、ポリプロピレン(PP)フィルムに、前記LDPEや、エチレン-α-オレフィン共重合体などをコーティング又はラミネートしたフィルムとして利用されている。」 (14)甲14 甲14には、以下の発明(以下「先願発明」という。)が記載されていると認められる(甲14の【0031】~【0033】参照)。 「基紙の両面に、カオリン(商品名:コンツアー1500、イメリス社製)30部及び重質炭酸カルシウム(商品名:カービラックス、イメリス社製)70部に分散剤(商品名:アロンT-50、東亜合成社製)0.2部を加え、加水してコーレス分散機を用いて水分散し、顔料スラリーを作製し、この顔料スラリーに、バインダーとしてリン酸エステル化澱粉(商品名:MS4600、日本食品加工社製)2部及びスチレンブタジエンラテックス(商品名:PA0372、日本エイアンドエル株式会社)8部、更に水を加えて分散させ、固形分濃度50%の顔料塗工層用塗工液を、片面当たりの乾燥塗工量が10g/m2になるようにブレードコーターを用いて塗工、乾燥し、その後、キャレンダー処理を行い、坪量が80g/m2の紙基材を作製し、 紙基材の片面に、水系アイオノマーエマルジョン(商品名:ケミパールS-300、三井化学社製、組成:エチレン・メタクリル酸共重合物の金属塩、自己乳化型エマルジョン、マイクロトラック法平均粒子径0.5μm)を乾燥塗工量が5g/m2になるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、乾燥してヒートシール層を設けた、包装用紙」 2 申立理由1(甲1に基づく進歩性)について (1)本件発明1について ア 対比 甲1発明における「基紙」は、本件発明1における「基紙」に相当する。 甲1発明における、「基紙の少なくとも片面に」「設けた」「アスペクト比15、平均粒子径3μmのカオリン100重量部とSBR30重量部を混合し分散処理した塗工液であり、この塗工液を基紙の片面にマイヤーバーを用い固形分換算10g/m2塗工し」た「下塗り層」は、本件発明1における「基紙の一方又は双方の面に」「設けられた」「カオリン及びスチレン-ブタジエン共重合体ラテックスを主成分」とした「第一塗工層」に相当する。 甲1発明における、「ゲル分率90%のスチレンアクリル共重合体樹脂を下塗り層表面にマイヤーバーを用い固形分換算で5g/m2塗工した」「上塗り層」と、本件発明1における「ヒートシール性を有する樹脂を主成分とし、かつ130℃における剥離強度が2.00N/25mm以上である」「第二塗工層」は、「ヒートシール性を有する樹脂を主成分とした第二塗工層」である限りにおいて一致する。 甲1発明における、「耐水耐油層からなる上塗り層を設けた紙器原紙」は、本件発明1における「耐油紙」に相当する。 したがって、本件発明1と甲1発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 [一致点1] 「基紙の一方又は双方の面に第一塗工層及び第二塗工層が設けられた耐油紙であり、 前記第一塗工層は、カオリン及びスチレン-ブタジエン共重合体ラテックスを主成分とし、 前記第二塗工層は、ヒートシール性を有する樹脂を主成分とした、耐油紙。」 [相違点1] 「ヒートシール性を有する樹脂を主成分とした第二塗工層」について、本件発明1では、「130℃における剥離強度が2.00N/25mm以上である」のに対し、甲1発明では、剥離強度について特定されていない点。 イ 判断 上記相違点1について検討する。 甲1発明の上塗り層(第二塗工層)が、「130℃における剥離強度が2.00N/25mm以上である」ことは、甲1には記載も示唆もされていない。 また、甲1の【0035】を参酌すると甲1発明の上塗り層はヒートシール層であることが分かり、甲6~甲8から、ヒートシール層に低温ヒートシール性の改良が望まれていることが周知であるとはいえるが、低温ヒートシール性の改良のために、ヒートシール層において「130℃における剥離強度が2.00N/25mm以上」とすることは、甲6~甲8には記載も示唆もされていない。 さらに、当該構成は、申立人が提出した他の証拠にも記載も示唆もされておらず、本件特許に係る出願前の周知技術でもない。 したがって、本件発明1は、甲1発明に基いて、当業者が容易に想到し得るものではない。 (2)本件発明2~5について 本件発明2~5は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(1)で検討したものと同じ理由により、本件発明2~5は、甲1発明に基いて、当業者が容易に想到し得るものではない。 (3)小括 したがって、本件発明1~5は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 申立理由2(甲2に基づく進歩性)について (1)本件発明1について ア 対比 甲2発明における「片面アート紙」は、本件発明1における「基紙」に相当する。 甲2発明における、「原紙面に、顔料としてカオリン(商品名:HTクレー、エンゲルハード製)100部、アクリル系分散液(ポイズ520、花王製)2.5部、水100部を混合し、コーレス分散機にて分散し、該分散液に、酸化澱粉(商品名:王子エースA、王子コーンスターチ製)を固形分換算で絶乾顔料の乾燥重量あたり5%、およびスチレン-ブタジエンラテックス(商品名:JSR-0692、日本合成ゴム製)を固形分換算で絶乾顔料の乾燥重量あたり10%を混合した平滑化層用塗液を5g/m2となるようにブレードコーターを用い塗布乾燥した後、スーパーカレンダー処理を行」って形成した「平滑化層」は、本件発明1における「基紙の一方又は双方の面に」「設けられた」「カオリン及びスチレン-ブタジエン共重合体ラテックスを主成分」とした「第一塗工層」に相当する。 甲2発明における、「平滑化層上に、ヒートシール型接着剤(商品名:トヨメルトBL-8001、東洋ペトロライト製)を、パンフィード式ロールコーターを用いて、乾燥重量で20g/m2となるように塗布し」てなる層と、本件発明1における「ヒートシール性を有する樹脂を主成分とし、かつ130℃における剥離強度が2.00N/25mm以上である」「第二塗工層」は、「第二塗工層」である限りにおいて一致する。 甲2発明の「ヒートシール型接着ラベル」と、本件発明1における「耐油紙」とは、「紙」の限りにおいて一致する。 したがって、本件発明1と甲2発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 [一致点2] 「基紙の一方又は双方の面に第一塗工層及び第二塗工層が設けられた耐油紙であり、 前記第一塗工層は、カオリン及びスチレン-ブタジエン共重合体ラテックスを主成分とした、 紙。」 [相違点2] 「第二塗工層」について、本件発明1では、「ヒートシール性を有する樹脂を主成分とし」ているのに対し、甲2発明では、「ヒートシール性を有する」ものである点。 [相違点3] 「第二塗工層」について、本件発明1では、「130℃における剥離強度が2.00N/25mm以上である」のに対し、甲2発明では、剥離強度について特定されていない点。 [相違点4] 「紙」が、本件発明1では、「耐油紙」であるのに対し、甲2発明では、耐油紙であるかは特定されていない点。 イ 判断 事案に鑑み、上記相違点3について検討する。 甲2発明のヒートシール型接着剤を塗布してなる層(第二塗工層)が、「130℃における剥離強度が2.00N/25mm以上である」ことは、甲2には記載も示唆もされていない。 また、甲6~甲8から、ヒートシール層に低温ヒートシール性の改良が望まれていることが周知であるといえるが、低温ヒートシール性の改良のために、ヒートシール層において「130℃における剥離強度が2.00N/25mm以上である」構成とすることは、甲6~甲8には記載も示唆もされていない。 さらに、当該構成は、申立人が提出した他の証拠にも記載も示唆もされておらず、本件特許に係る出願前の周知技術でもない。 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明に基いて、当業者が容易に想到し得るものではない。 (2)本件発明2~5について 本件発明2~5は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(1)で検討したものと同じ理由により、本件発明2~5は、甲2発明に基いて、当業者が容易に想到し得るものではない。 (3)小括 したがって、本件発明1~5は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 4 申立理由3(甲3に基づく進歩性)について (1)本件発明1について ア 対比 甲3発明における「基紙」は、本件発明1における「基紙」に相当する。 甲3発明における、「基紙の少なくとも一方の面に」「備える」「耐油層形成用組成物が、ゲル含有率が92質量%以上98質量%以下であり、ブタジエンの含有率が45質量%以上60質量%以下であるスチレン-ブタジエン共重合体ラテックスと、アスペクト比が55以上120以下のカオリンと、消泡剤と、分岐ポリエステルアミドを主成分とする粘度調整剤とを含有する」「耐油層形成用組成物」を用いて形成した「耐油層」は、本件発明1における「基紙の一方又は双方の面に」「設けられた」「カオリン及びスチレン-ブタジエン共重合体ラテックスを主成分とし」た「第一塗工層」に相当する。 甲3発明における「耐油紙」は、本件発明1における「耐油紙」に相当する。 したがって、本件発明1と甲1発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 [一致点3] 「基紙の一方又は双方の面に第一塗工層が設けられた耐油紙であり、 前記第一塗工層は、カオリン及びスチレン-ブタジエン共重合体ラテックスを主成分とした、 耐油紙」 [相違点5] 本件発明1では、「基紙の一方又は双方の面に」「設けられた」「ヒートシール性を有する樹脂を主成分とし、かつ130℃における剥離強度が2.00N/25mm以上である」「第二塗工層」を有するのに対し、甲3発明では、「第二塗工層」を有しない点。 イ 判断 上記相違点5について検討する。 甲3発明において、「ヒートシール性を有する樹脂を主成分とし、かつ130℃における剥離強度が2.00N/25mm以上である」「第二塗工層」を更に設けることは、甲3には記載も示唆もされていない。 また、甲11~甲13には、上記1(11)~(13)に示したように、ヒートシール層をさらに設けることが記載されているものの、甲3の「耐油層上にヒートシール層が設けられた複数層を備える耐油紙が開示されている・・・技術においては、耐油層が複数の塗膜から形成されているので、製造工程が煩雑になるおそれがある。」(【0003】~【0005】)との記載、「当該耐油紙は、当該耐油紙の耐油層の形成に用いる耐油層形成用組成物が上記組成を有することで、耐油層が単層でありながら耐油性、ヒートシール性、透湿性並びに水分及び油分に対する耐浸透性、臭気抑制性及びブロッキング抑制性に優れ、食品等の包装材に好適で効率よく製造することができる。」(【0008】)との記載を踏まえると、甲3発明において、ヒートシール層を更に設けることには、阻害要因があるといえる。 したがって、本件発明1は、甲3発明に基いて、当業者が容易に想到し得るものではない。 (2)本件発明2~5について 本件発明2~5は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(1)で検討したものと同じ理由により、本件発明2~5は、甲3発明に基いて、当業者が容易に想到し得るものではない。 (3)小括 したがって、本件発明1~5は、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 5 申立理由4(甲4に基づく進歩性)について (1)本件発明1について ア 対比 甲4発明における「耐油耐水紙」は、本件発明1における「基紙」に相当する。 甲4発明における、「アイオノマーエマルジョン(三井石油化学工業株式会社製ナトリウムで架橋したアイオノマーエマルジョン、商品名ケミパールS-100)を塗工し」てなる層は、上記1(5)で示した甲5を踏まえるとヒートシール層であるといえるから、本件発明1における「基紙の一方又は双方の面に」「設けられた」「ヒートシール性を有する樹脂を主成分とし、かつ130℃における剥離強度が2.00N/25mm以上である」「第二塗工層」と、「基紙の一方又は双方の面に設けられたヒートシール性を有する樹脂を主成分とした第二塗工層」の限りにおいて一致する。 甲4発明における「ヒートシール性耐油耐水性紙」は、本件発明1における「耐油紙」に相当する。 したがって、本件発明1と甲4発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 [一致点4] 「基紙の一方又は双方の面に第二塗工層が設けられた耐油紙であり、 前記第二塗工層は、ヒートシール性を有する樹脂を主成分とした、 耐油紙」 [相違点6] 本件発明1は、「基紙の一方又は双方の面に」「カオリン及びスチレン-ブタジエン共重合体ラテックスを主成分」とした「第一塗工層」が設けられているのに対し、甲4発明は、かかる層を有しない点。 [相違点7] 「第二塗工層」が、本件発明1では、「130℃における剥離強度が2.00N/25mm以上である」のに対し、甲4発明では、剥離強度について特定されていない点。 イ 判断 (ア)相違点6について 上記相違点6について検討する。 甲4には、「耐油耐水紙としては、製紙用繊維から得られ、耐油耐水剤の内添、含浸、塗布等により耐油耐水性を付与された紙であれば特に制約はない」(【0009】)と記載されているが、具体的な耐油耐水剤として「カオリン及びスチレン-ブタジエン共重合体ラテックスを主成分」とたものとすることは、記載も示唆もされていない。 (イ)相違点7について 上記相違点7について検討する。 甲4には、甲4発明のアイオノマーエマルジョン(商品名ケミパールS-100)を塗工してなる層(第二塗工層)が、「130℃における剥離強度が2.00N/25mm以上である」ことは記載されていない。 また、甲5には、商品名ケミパールS-100のヒートシール強度を、「紙:上質紙 105 g/m2 塗工量: 3.5-4.0 g/m2(dry) 乾燥: 120°C×30秒 貼り合せ:塗工面/塗工面 ヒートシール条件:2kg/cm2×1秒 剥離モード:T字剥離 剥離速度:50mm/min」の条件で測定したものが記載されているが、「カオリン及びスチレン-ブタジエン共重合体ラテックスを主成分」とした「第一塗工層」が設けられ紙に塗工した状態で測定しているものではない。よって、甲5は、「基紙の一方又は双方の面に第一塗工層及び第二塗工層が設けられた耐油紙であり、前記第一塗工層は、カオリン及びスチレン-ブタジエン共重合体ラテックスを主成分とし」ているものにおいて、「第二塗工層」が「130℃における剥離強度が2.00N/25mm以上」であることを示しているとはいえない。 また、当該構成は、申立人が提出した他の証拠にも記載も示唆もされておらず、本件特許に係る出願前の周知技術でもない。 (ウ)小括 したがって、本件発明1は、甲4発明に基いて、当業者が容易に想到し得るものではない。 (2)本件発明2~5について 本件発明2~5は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(1)で検討したものと同じ理由により、本件発明2~5は、甲4発明に基いて、当業者が容易に想到し得るものではない。 (3)小括 したがって、本件発明1~5は、甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 6 申立理由5(拡大先願)について (1)本件発明1について ア 対比 先願発明における「基紙」は、本件発明1における「基紙」に相当する。 先願発明における、「カオリン(商品名:コンツアー1500、イメリス社製)30部及び重質炭酸カルシウム(商品名:カービラックス、イメリス社製)70部に分散剤(商品名:アロンT-50、東亜合成社製)0.2部を加え、加水してコーレス分散機を用いて水分散し、顔料スラリーを作製し、この顔料スラリーに、バインダーとしてリン酸エステル化澱粉(商品名:MS4600、日本食品加工社製)2部及びスチレンブタジエンラテックス(商品名:PA0372、日本エイアンドエル株式会社)8部、更に水を加えて分散させ、固形分濃度50%の顔料塗工層用塗工液を、片面当たりの乾燥塗工量が10g/m2になるようにブレードコーターを用いて塗工、乾燥し」てなる層は、本件発明1における「基紙の一方又は双方の面に」「設けられた」「カオリン及びスチレン-ブタジエン共重合体ラテックスを主成分」とした「第一塗工層」に相当する。 先願発明における、「紙基材の片面に、水系アイオノマーエマルジョン(商品名:ケミパールS-300、三井化学社製、組成:エチレン・メタクリル酸共重合物の金属塩、自己乳化型エマルジョン、マイクロトラック法平均粒子径0.5μm)を乾燥塗工量が5g/m2になるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、乾燥して」「設けた」「ヒートシール層」と、本件発明1における「基紙の一方又は双方の面に」「設けられた」「ヒートシール性を有する樹脂を主成分とし、かつ130℃における剥離強度が2.00N/25mm以上である」「第二塗工層」とは、「基紙の一方又は双方の面に設けられたヒートシール性を有する樹脂」を含有した「第二塗工層」の限りにおいて一致する。 先願発明の「包装用紙」と、本件発明1における「耐油紙」とは、「紙」の限りにおいて一致する。 したがって、本件発明1と先願発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 [一致点5] 「基紙の一方又は双方の面に第一塗工層及び第二塗工層が設けられた耐油紙であり、 前記第一塗工層は、カオリン及びスチレン-ブタジエン共重合体ラテックスを含有し、 前記第二塗工層は、ヒートシール性を有する樹脂を含有した、紙。」 [相違点8] 「基紙の一方又は双方の面に設けられたヒートシール性を有する樹脂」を含有した「第二塗工層」について、本件発明1では、「ヒートシール性を有する樹脂を主成分とし」ているのに対し、先願発明では、「ヒートシール性を有する樹脂を主成分とし」ているかが特定されていない点。 [相違点9] 「基紙の一方又は双方の面に設けられたヒートシール性を有する樹脂」を含有した「第二塗工層」が、本件発明1では、「130℃における剥離強度が2.00N/25mm以上である」のに対し、先願発明では、剥離強度について特定されていない点。 [相違点10] 「紙」について、本件発明1では、「耐油紙」であるのに対し、先願発明では、「包装用紙」である点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点9について検討する。 甲14には、先願発明の水系アイオノマーエマルジョン(商品名ケミパール2-300)を塗工してなる層(第二塗工層)のヒートシール強度が、「130℃における剥離強度が2.00N/25mm以上である」ことは記載されていない。 また、甲5には、商品名ケミパールS-100のヒートシール強度を、「紙:上質紙 105 g/m2 塗工量: 3.5-4.0 g/m2(dry) 乾燥: 120°C×30秒 貼り合せ:塗工面/塗工面 ヒートシール条件:2kg/cm2×1秒 剥離モード:T字剥離 剥離速度:50mm/min」の条件で測定したものが記載されているが、「カオリン及びスチレン-ブタジエン共重合体ラテックスを主成分」とした「第一塗工層」が設けられた紙に塗工した状態で測定しているものではない。よって、甲5は、「基紙の一方又は双方の面に第一塗工層及び第二塗工層が設けられた耐油紙であり、前記第一塗工層は、カオリン及びスチレン-ブタジエン共重合体ラテックスを主成分とし」ているものにおいて、「第二塗工層」が「130℃における剥離強度が2.00N/25mm以上」であることを示しているとはいえない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、先願発明と同一とはいえない。 (2)本件発明2~5について 本件発明2~5は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(1)で検討したものと同じ理由により、本件発明2~5は、先願発明と同一とはいえない。 (3)小括 したがって、本件発明1~5は、先願発明と同一ではない。 7 申立理由6(明確性)について 申立人は、本件発明の「剥離強度」が何に貼付したときの剥離強度であるのか不明であるから、本件発明の記載が不明確である旨主張している。 しかしながら、「剥離強度」は、本件発明の耐油紙を「肥料袋、米麦などの穀類袋、無機及び有機の化学薬品袋、セメント袋、各種土壌袋、塩袋、道路塗装用塗料袋、惣菜、ファーストフード等の包装袋」(【0059】)の各種の袋とすることを想定して接着したものを本件特許明細書の【0076】に記載された方法で測定したものであることは明らかである。 したがって、上記申立人の主張は採用できず、本件発明1~5は、明確である。 8 申立理由7(実施可能要件)について 申立人は、剥離強度の測定方法には不明な点があるから、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない旨の主張をしている。 しかしながら、「剥離強度」の測定方法について、本件特許明細書の【0076】には、「熱傾斜試験機((株)東洋精機製作所製)を用いて、シーラー圧2kg/cm、シーラー時間2秒間、シール温度100~150℃の条件下で接着面積10mm×25mm貼付後、25mmを横幅として引っ張り試験機(株式会社東洋精機製作所製:ストログラフE-S)で0.5m/minでT型剥離して強度を測定した。試験環境は、JISP8111:1998「紙、板紙及びパルプ-調湿及び試験のための標準状態」に基づき、標準状態(23±1℃、50±2%r.h.)にて行った。」と測定条件が記載されており、さらに、本件発明の耐油紙を「肥料袋、米麦などの穀類袋、無機及び有機の化学薬品袋、セメント袋、各種土壌袋、塩袋、道路塗装用塗料袋、惣菜、ファーストフード等の包装袋」(【0059】)の各種の袋とすることを想定して接着したものを本件特許明細書の【0076】に記載された方法で測定したものであることは明らかである。 よって、上記申立人の主張は採用できず、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、本件発明について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されている。 第5 むすび 以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701243

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