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特許異議申立

2023-701349

セルロースナノファイバー乾燥固形物の製造方法

審判番号
2023-701349
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-509168
登録番号
7303794
請求日
2023年12月21日
審決日
2024年12月10日
公報発行日
2025年05月30日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】日本製紙株式会社
  • 【権利者代理人】山本 修
  • 【権利者代理人】中村 充利
  • 【権利者代理人】新井 規之
  • 【権利者代理人】小笠原 有紀
  • 【異議申立人】池田 貴博
  • 【異議申立人代理人】岩壁 冬樹
審判長/審判官
  • 審判長 金丸 治之
  • 審判官 稲葉 大紀
  • 審判官 武市 匡紘
分類
P1651.113-YAA(D21H) / P1651.121-YAA(D21H) / P1651.161-YAA(D21H) / P1651.537-YAA(D21H) / P1651.536-YAA(D21H)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条の2、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7303794号発明「セルロースナノファイバー乾燥固形物の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7303794号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕、〔7、8〕、〔9、10〕について訂正することを認める。 特許第7303794号の請求項1~3、5、6、8~10に係る特許を維持する。 特許第7303794号の請求項4、7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7303794号(以下「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願は、2019年(平成31年)3月27日(優先権主張 平成30年3月29日)を国際出願日とする出願であって、令和5年6月27日にその特許権の設定登録がされ、令和5年7月5日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1~10に係る特許に対し、令和5年12月21日に特許異議申立人池田貴博(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。それ以降の経緯は以下のとおりである。 令和6年 5月28日付け 取消理由通知書 令和6年 7月 2日 訂正請求書及び意見書(特許権者) 令和6年 9月24日 意見書(申立人) 令和6年10月 8日付け 取消理由通知書(決定の予告) 令和6年11月20日 訂正請求書及び意見書(特許権者) なお、申立人は、令和6年9月24日提出の意見書において、申立書で主張されているサポート要件に加え、請求項7に係る発明についてのみ新規性、進歩性及び拡大先願に係る取消理由を主張していたものであるところ、令和6年11月20日提出の訂正請求書(以下、「本件訂正請求書」といい、当該訂正請求による訂正自体を「本件訂正」という。)による訂正事項は、令和6年7月2日提出の訂正請求書による訂正事項に対して、特許請求の範囲の請求項7を削除し、当該請求項7を引用する請求項8を独立形式に改めたものであるから、本件訂正請求については、特許法第120条の5第5項に規定する特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないとされる特別な事情にあたると認められるため、申立人に、意見書を再度提出する機会は与えなかった。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 本件訂正請求書は、「特許第7303794号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~10について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、次の訂正事項からなるものである。なお、下線は、当審が訂正箇所に付したものである。 (1)訂正事項1 本件訂正前の請求項1に 「セルロースナノファイバーと溶媒との混合物を、真空乾燥装置を用いて乾燥することを含み、 前記真空乾燥装置を用いて乾燥することが40~100℃の温度で行われ、 前記溶媒は水である、セルロースナノファイバー乾燥固形物の製造方法。」とあるのを、 「セルロースナノファイバーと溶媒との混合物を、真空乾燥装置を用いて乾燥することを含み、 前記真空乾燥装置を用いて乾燥することが40~100℃の温度で行われ、 前記溶媒は水であり、 前記セルロースナノファイバーと溶媒との混合物のpHを8~11に調整することをさらに含む、セルロースナノファイバー乾燥固形物の製造方法。」に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項2、3、5、6も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 本件訂正前の請求項4を削除する。 (3)訂正事項3 本件訂正前の請求項5に 「請求項1~4のいずれか1項に記載のセルロースナノファイバー乾燥固形物の製造方法。」とあるのを、 「請求項1~3のいずれか1項に記載のセルロースナノファイバー乾燥固形物の製造方法。」に訂正する。 (4)訂正事項4 本件訂正前の請求項6に 「請求項1~5のいずれか1項に記載のセルロースナノファイバー乾燥固形物の製造方法。」とあるのを、 「請求項1~3のいずれか1項に記載のセルロースナノファイバー乾燥固形物の製造方法。」に訂正する。 (5)訂正事項5 本件訂正前の請求項7を削除する。 (6)訂正事項6 本件訂正前の請求項8に 「前記水溶性高分子がカルボキシメチルセルロース及びその塩である、請求項7に記載のセルロースナノファイバー乾燥固形物の製造方法。」とあるのを、 「セルロースナノファイバーと溶媒との混合物を、真空乾燥装置を用いて乾燥することを含み、 前記真空乾燥装置を用いて乾燥することが40~100℃の温度で行われ、 前記溶媒は水であり、 前記セルロースナノファイバーと溶媒との混合物が、さらに、セルロースナノファイバーの乾燥質量に対して、水溶性高分子を5~300質量%含有し、 前記水溶性高分子がカルボキシメチルセルロース及びその塩である、セルロースナノファイバー乾燥固形物の製造方法。」に訂正する。 (6)訂正事項7 本件訂正前の請求項9に 「セルロースナノファイバーと溶媒との混合物を、ドラム型の真空乾燥装置を用いて乾燥することを含む、セルロースナノファイバー乾燥固形物の製造方法。」とあるのを、 「セルロースナノファイバーと溶媒との混合物を、ドラム型の真空乾燥装置を用いて乾燥することを含み、 前記セルロースナノファイバーと溶媒との混合物のpHを8~11に調整することをさらに含む、セルロースナノファイバー乾燥固形物の製造方法。」に訂正する。 (請求項9の記載を引用する請求項10も同様に訂正する。) (7)一群の請求項、別の訂正単位とする求めについて 訂正前の請求項1~10は、請求項2~8が訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用し、請求項10が訂正の請求の対象である請求項9の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~8〕、〔9~10〕について請求されたものである。 また、訂正後の請求項7、8について、特許権者は、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位とすることを求めている。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1、7 訂正事項1、7は、本件訂正前の請求項1、9に記載の「セルロースナノファイバーと溶媒との混合物」の「pHを8~11に調整すること」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件明細書の【0019】の記載に基づく訂正であるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 (2)訂正事項2、5 訂正事項2、5は、本件訂正前の請求項4、7を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 (3)訂正事項3、4 訂正事項3、4は、本件訂正前の請求項4が削除されたことに伴い、引用する請求項の数を減少させるものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 (4)訂正事項6 訂正事項6は、本件訂正前の請求項1~6のいずれかを引用する請求項7をさらに引用する請求項8のうち、請求項1及び7を引用するものについて独立形式に改めるものであるから、他の請求項を引用しないものとすることを目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕、〔7、8〕、〔9、10〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 上記のとおり、本件訂正は認められるから、本件訂正後の請求項1~3、5、6、8~10に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~3、5、6、8~10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 セルロースナノファイバーと溶媒との混合物を、真空乾燥装置を用いて乾燥することを含み、 前記真空乾燥装置を用いて乾燥することが40~100℃の温度で行われ、 前記溶媒は水であり、 前記セルロースナノファイバーと溶媒との混合物のpHを8~11に調整することをさらに含む、セルロースナノファイバー乾燥固形物の製造方法。 【請求項2】 前記真空乾燥装置を用いて乾燥することが、40~90℃の温度で行われる、請求項1記載のセルロースナノファイバー乾燥固形物の製造方法。 【請求項3】 前記真空乾燥装置がドラム型の真空乾燥装置である、請求項1または2に記載のセルロースナノファイバー乾燥固形物の製造方法。 【請求項5】 前記セルロースナノファイバーが、セルロースナノファイバーの絶乾質量に対して、カルボキシル基量が0.6~3.0mmol/gであるカルボキシル化セルロースナノファイバーである、請求項1~3のいずれか1項に記載のセルロースナノファイバー乾燥固形物の製造方法。 【請求項6】 前記セルロースナノファイバーが、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が0.01~0.50であるカルボキシメチル化セルロースナノファイバーである、請求項1~3のいずれか1項に記載のセルロースナノファイバー乾燥固形物の製造方法。 【請求項8】 セルロースナノファイバーと溶媒との混合物を、真空乾燥装置を用いて乾燥することを含み、 前記真空乾燥装置を用いて乾燥することが40~100℃の温度で行われ、 前記溶媒は水であり、 前記セルロースナノファイバーと溶媒との混合物が、さらに、セルロースナノファイバーの乾燥質量に対して、水溶性高分子を5~300質量%含有し、 前記水溶性高分子がカルボキシメチルセルロース及びその塩である、セルロースナノファイバー乾燥固形物の製造方法。 【請求項9】 セルロースナノファイバーと溶媒との混合物を、ドラム型の真空乾燥装置を用いて乾燥することを含み、 前記セルロースナノファイバーと溶媒との混合物のpHを8~11に調整することをさらに含む、セルロースナノファイバー乾燥固形物の製造方法。 【請求項10】 前記ドラム型の真空乾燥装置を用いて乾燥することが、40~100℃の温度で行われる、請求項9に記載のセルロースナノファイバー乾燥固形物の製造方法。」 第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 当審において特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。 (1)取消理由(進歩性) 本件特許の請求項7に係る発明は甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するので、取り消すべきものである。 (2)引用文献一覧(以下、申立人が提出した甲第○号証を「甲○」という。) 甲3:特開2019-43978号公報 2 当審の判断 甲3を主引例とする取消理由(進歩性)については、当該通知の対象となった本件発明7は本件訂正により削除された。そのため、当該取消理由はその対象となるものが存在しないものとなったため、当該取消理由は解消した。 第5 取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由について 1 申立理由の概要 (1)申立理由1(新規性) 本件特許の請求項1、2に係る発明は甲1に記載された発明であり、本件特許の請求項1、7に係る発明は甲3に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、本件特許は特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当するので、取り消すべきものである。 (2)申立理由2(進歩性) 本件特許の請求項1~10に係る発明は甲1に記載された発明及び甲2、8に記載された事項に基づいて、本件特許の請求項1、3~8、10に係る発明は甲3に記載された発明及び甲1、2、7、8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するので、取り消すべきものである。 (3)申立理由3(拡大先願) 本件特許の請求項1~3、7、9、10に係る発明は、その出願日前の特許出願であって、本件特許の出願後に出願公開がされた先願(甲3)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の発明者が先願発明の発明者と同一ではなく、また本件特許の出願時において、本件特許の出願人が先願の出願人と同一でもなく、また、本件特許の請求項1、3、7、10に係る発明は、その出願日前の特許出願であって、本件特許の出願後に出願公開がされた先願(甲4)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の発明者が先願発明の発明者と同一ではなく、また本件特許の出願時において、本件特許の出願人が先願の出願人と同一でもないので、本件特許は特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するので、取り消すべきものである。 (4)申立理由4(サポート要件) 本件特許は、請求項1~10の記載が発明の詳細な説明に記載したものではなく、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当するので、取り消すべきものである。 本件明細書には、本件特許に係る発明が解決しようとする課題として、「再分散性が良好なCNFの乾燥固形物を提供すること」(【0006】)が記載されている。 ここで、本件明細書の実施例1~8(【0067】~【0077】、【0081】【表1】)を参照すると、特定のカルボキシメチル化CNFを特定量添加し、所定条件で攪拌して得たCNFの水分散液に、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを9に調整し、水分散液の固形分を調整した後、エタノールを添加し又は添加せず、特定条件で真空ドラム乾燥した場合(実施例1~7)、又は、上記カルボキシメチル化CNFに代えて特定のTEMPO酸化CNFを用いた場合(実施例8)の粘度復元率として、47%(実施例1)~96%(実施例8)に亘る値が示されている。 これに対し、請求項1に係る発明において、セルロースナノファイバーは何ら限定されておらず、混合物がセルロースナノファイバー及び水以外に含み得る成分の特定も何らされていない。 そうすると、請求項1に係る発明及びそれを引用する請求項2~10に係る発明は、その全範囲に亘って本件課題を解決できると当業者が認識できるものではない。 (5)申立理由5(実施可能要件) 本件特許は、発明の詳細な説明の記載が次の点で、当業者が請求項1~10に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでなく特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当するので、取り消すべきものである。 本件明細書には、本件特許に係る発明が解決しようとする課題として、「再分散性が良好なCNFの乾燥固形物を提供すること」(【0006】)が記載されている。 ここで、本件明細書の実施例1~8(【0067】~【0077】、【0081】【表1】)を参照すると、特定のカルボキシメチル化CNFを特定量添加し、所定条件で攪拌して得たCNFの水分散液に、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを9に調整し、水分散液の固形分を調整した後、エタノールを添加し又は添加せず、特定条件で真空ドラム乾燥した場合(実施例1~7)、又は、上記カルボキシメチル化CNFに代えて特定のTEMPO酸化CNFを用いた場合(実施例8)の粘度復元率として、47%(実施例1)~96%(実施例8)に亘る値が示されている。 これに対し、請求項1に係る発明において、セルロースナノファイバーは何ら限定されておらず、混合物がセルロースナノファイバー及び水以外に含み得る成分の特定も何らされていない。 そうすると、請求項1に係る発明及びそれを引用する請求項2~10に係る発明は、その全範囲に亘って本件課題を解決できることが自明であるとはいえず、その実施には、当業者の過度の試行錯誤を要する。 (6)申立人が提出した証拠 甲1:国際公開第2015/136913号 甲2:特開2017-171943号公報 甲3:特開2019-43978号公報(特願2017-164500号) 甲4:国際公開第2019/208313号 甲5:国際出願番号PCT/JP2019/016217における特願2018-193575号に係る優先権書類 甲6:国際出願番号PCT/JP2019/013108における特願2018-063565号に係る優先権書類 甲7:特開2016-56304号公報 甲8:特開2016-208946号公報 甲9:Philippe Tingaut外2名、“Synthesis and Characterization of Bionanocomposites with Tunable Properties from Poly(lactic acid) and Acetylated Microfibrillated Cellulose”、Biomacromolecules、2010、Vol.11、p.454-464 2 当審の判断 (1)特許要件(新規性、進歩性、拡大先願等)の判断基準日について 本件発明1~3、5、6、8、10の発明特定事項である乾燥温度に係る「40~100℃」のうち、「90~100℃」の部分については、本件特許の優先権主張の基礎出願である特願2018-63565号には記載されていない。 したがって、本件発明1~3、5、6、8、10のうち、「90℃~100℃」の部分については、優先権の効果は認められず、新規性、進歩性、拡大先願等の判断基準日(以下、単に「判断基準日」という。)は、本件特許の出願日である2019年3月27日である。 他方、本件発明1~3、5、6、8、10のうち、「40℃~90℃」の部分については、優先権の効果は認められるから、判断基準日は、優先日である2018年3月29日として以下判断する。 (2)甲1を主引例とする申立理由1(新規性)、申立理由2(進歩性)について a 甲1の記載、発明 甲1には以下の記載がある。なお、下線は当審が付した。また「・・・」は省略を示す。他の甲号証についても同様。 「[0001] 本発明は、分子構造により表面が修飾された基材(表面修飾基材)の製造方法、複数の基材が互いに接合した状態にある接合体の製造方法、およびこれらの製造方法に使用できる新規なヒドロシラン化合物に関する。」 「[0053] (基材) 基材は、ヒドロキシ基、カルボニル基などの上述した極性基が表面に存在する限り、特に限定されない。例えばヒドロキシ基とカルボニル基とでは、ヒドロキシ基の方がヒドロシラン化合物のSi-H基と反応が進行しやすい。このため、ヒドロキシ基が表面に存在する基材の方が、より低温かつ短時間で工程(I)による基材の表面の修飾を実施できる。 ・・・ [0061] 基材のサイズも限定されず、例えば基材が繊維である場合、径が1~1000μm程度のマイクロファイバーあるいは径が1μm未満のナノファイバーでありうる。このような繊維の一例は、セルロースナノファイバー(ミクロフィブリル化セルロース)である。」 「[0320] [実施例10:ミクロフィブリル化したセルロースの表面の修飾(疎水化)] 実施例10では、ミクロフィブリル化したセルロースの表面を疎水化した。これにより、例えば、セルロースナノフィブリルの有機溶媒への分散度、溶解度を向上させることができ、セルロースナノフィブリル(CNF)複合材料の創製がより容易となる。CNF複合材料は、強度が高く、かつ軽量化が容易であることなどから、次世代材料としての使用が強く期待できる。具体的な用途は、例えば、自動車のボディ、パーソナルコンピューターなどの電気製品の筐体である。 [0321] セルロースナノフィブリルに対して、以下の3通りの方法で前処理を実施した。 [0322] ・方法1:ミクロフィブリル化セルロース(またはセルロースナノフィブリルもしくはセルロースナノファイバー)として市販されているセリッシュ(ダイセルファインケム製)100gをガラスフィルターに詰めた後、ここにアセトン50mLを5回、塩化メチレン50mLを3回、次いでシクロヘキサン50mLを2回、順次常圧下で通過させることにより、シクロヘキサンに溶媒置換されたミクロフィブリル化セルロースを得た。 ・・・ [0324] ・方法3:セリッシュ100gを減圧下50℃で8時間乾燥させ、水分を除去した。次に、得られた凝集セルロースをミルで砕いて微細化させた。」 以上の記載事項を総合すると、甲1には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。 [甲1発明] 「水分を含む状態であるセルロールナノファイバー「セリッシュ」を、減圧下で乾燥することを含む、セルロースナノファイバーの製造方法であって、 上記減圧下の乾燥が50℃で行われ、 上記乾燥により水分を除去する、方法。」 b 本件発明1について (b-1)対比 本件発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明の「水分を含む状態であるセルロールナノファイバー「セリッシュ」」は本件発明1の「溶媒は水である」「セルロースナノファイバーと溶媒との混合物」に相当する。 甲1発明の「減圧下で乾燥することを含み」「上記減圧下の乾燥が50℃で行われ、上記乾燥により水分を除去する」「セルロースナノファイバーの製造方法」と、本件発明1の「真空乾燥装置を用いて乾燥することを含み、前記真空乾燥装置を用いて乾燥することが40~100℃の温度で行われ」る「セルロースナノファイバー乾燥固形物の製造方法」は、「乾燥することを含み、乾燥することが50℃の温度で行われるセルロースナノファイバー乾燥固形物の製造方法」である限りにおいて一致する。 そうすると、本件発明1と甲1発明は、以下の点で一致し、相違する。 [一致点1] 「セルロースナノファイバーと溶媒との混合物を、乾燥することを含み、 乾燥することが50℃の温度で行われ、 前記溶媒は水である、セルロースナノファイバー乾燥固形物の製造方法。」 [相違点1-1] 乾燥することについて、本件発明1は、「真空乾燥装置を用いて」行うのに対し、甲1発明は乾燥手段が特定されていない点。 [相違点1-2] 乾燥することについて、本件発明1は「40~100℃の温度で行われ」るのに対し、甲1発明は「50℃で行われ」る点。 [相違点1-3] 本件発明1は「前記セルロースナノファイバーと溶媒との混合物のpHを8~11に調整することをさらに含む」のに対し、甲1発明はかかる工程を含むことが特定されていない点。 (b-2) 判断 事案に鑑み相違点1-3について検討する。 まず、相違点1-3は実質的なものであるから、本件発明1は甲1発明ではない。 そして、甲1発明に関し、甲1の[0320]には、「ミクロフィブリル化したセルロースの表面を疎水化した。これにより、例えば、セルロースナノフィブリルの有機溶媒への分散度、溶解度を向上させることができ、セルロースナノフィブリル(CNF)複合材料の創製がより容易となる。」と記載されているものであるが、セルロースナノファイバーと溶媒との混合物に対して、pHを調整することについては、記載も示唆もない。 一方、本件明細書には「セルロースナノファイバーと溶媒との混合物・・・のpHを8~11に調整した後に真空乾燥させると、再分散性がさらに良好なセルロースナノファイバーの乾燥固形物を得ることができる」(【0019】)と記載されており、本件明細書の【0081】【表1】には、「CNFの水分散液・・・に、水酸化ナトリウム水溶液0.5%を加え、pHを9に調整した。」(【0067】)ものである実施例1~7において、粘度復元率が良好であったことが示されている。これに対し、甲1には、水分を含む状態であるセルロースナノファイバー「セリッシュ」を減圧下で乾燥したものの、水への再分散性について記載も示唆もなく、申立人が提出した他の証拠にも再分散性向上については記載も示唆もない。 そうすると、甲1発明において、再分散性を向上するためにセルロースナノファイバーと溶媒とのpHを調整する動機付けはないから、甲1発明において、相違点1-3に係る本件発明1の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことではない。 (b-3)申立人の主張について 申立人は「甲2の【0014】に、「・・・セルロースナノファイバー分散体には、・・・アルカリ、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリを少量加えてもよい。」と記載されるように、セルロースナノファイバーと溶媒との混合物に対し、必要に応じてアルカリを添加することは当業者の通常の実験操作の範囲内であり、その際のpHを8~11とすることにも困難性はない。」(申立書48ページ13~19行)旨主張する。 しかしながら、甲2の【0014】には、「リン酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸などの酸・・・を少量加えてもよい。」とも記載されており、特にアルカリを加えることを意図したものではないことは明らかである。また、このような酸やアルカリの添加によりpHの調整をしようとしたものでもない。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 (b-4)小括 以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲1発明ではなく、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 c 本件発明2、3、5、6について 本件発明2、3、5、6は、本件発明1の発明特定事項を含み、さらに限定するものであるから、上記bと同様の理由により、本件発明2は甲1発明ではなく、本件発明2、3、5、6は甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 d 本件発明8について (a)対比 本件発明8と甲1発明を対比すると、少なくとも以下の相違点1-4において相違する。 [相違点1-4] 本件発明8は「セルロースナノファイバーの乾燥質量に対して、水溶性高分子を5~300質量%含有し、前記水溶性高分子がカルボキシメチルセルロース及びその塩である」のに対し、甲1発明はかかる構成を有していない点。 (b)判断 相違点1-4について検討する。 本件明細書には「カルボキシメチルセルロース及びその塩のような水溶性高分子は、セルロースナノファイバー同士の間に入りこみ、CNF間の距離を広げることで、再分散性を向上させると考えられる。」(【0052】)と記載されており、本件明細書の【0081】【表1】には、「(すなわち、カルボキシメチル化CNFの固形分を100質量部としたときにカルボキシメチルセルロースの固形分が40質量部となるように)添加し」(【0067】)たものである実施例1~7において、粘度復元率が良好であったことが示されている。 他方、甲1には、水分を含む状態であるセルロースナノファイバー「セリッシュ」を減圧下で乾燥したものの、水への再分散性について記載も示唆もなく、申立人が提出した他の証拠にも再分散性向上については記載も示唆もない。 そうすると、甲1発明において、再分散性を向上するためにカルボキシメチルセルロース及びその塩である水溶性高分子を含有する動機付けはないから、甲1発明において、相違点1-4に係る本件発明8の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことではない。 (c)申立人の主張について 申立人は「甲2の・・・【0009】に「(B)分散剤としては、・・・(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(共)重合体を含む分散剤が好ましい。」・・・と記載されるように、・・・セルロースナノファイバーを分散させるために、・・・水溶性高分子を・・・含有させることは当業者の通常の実験操作に過ぎない。」(申立書51ページ13~24行)旨主張する。 しかしながら、甲2には、(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(共)重合体を分散剤として添加する目的として「マトリックス成分となる樹脂成分との親和性が良好」(【0009】)となる旨の記載があるものの、セルロースナノファイバーの再分散性向上に関する記載も示唆もない。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 (d)小括 以上のとおりであるから、本件発明8は甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 e 本件発明9について 本件発明9と甲1発明を対比すると、少なくとも上記相違点1-3において相違する。 そしてその判断も上記b(b-2)で説示したとおりである。 よって、本件発明9は甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 f 本件発明10について 本件発明10は、本件発明9の発明特定事項を含み、さらに限定するものであるから、上記eと同様の理由により、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 g まとめ 以上のとおりであるから、本件発明1、2は甲1発明ではなく、本件発明1~3、5、6、8~10は甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3)甲3を主引例とする申立理由1(新規性)、申立理由2(進歩性)、申立理由3(拡大先願)について a 甲3の記載、発明 甲3には以下の記載がある。 「【請求項1】 熱可塑性樹脂と、セルロースとを含む樹脂組成物の製造方法であって、 水を主成分とする分散媒と、前記分散媒中に分散させたセルロースとを含む混合物を調製する第一の工程、 前記混合物を加熱しながら撹拌し、分散媒を除去してセルロース凝集体を得る第二の工程、及び 第二の工程で得られたセルロース凝集体と熱可塑性樹脂とを混練する第三の工程、 をこの順に含み、 第二の工程で得られるセルロース凝集体に含有される分散媒の割合が0.1~10質量%である、樹脂組成物の製造方法。 【請求項2】 セルロースが、セルロースファイバー、セルロースウィスカー又はこれらの混合物である、請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法。」 「【0001】 本発明は、セルロースが充填された樹脂組成物の製造方法に関する。」 「【0021】 本開示で、セルロースの「長さ」(L)及び「径」(D)は、例えばセルロースウィスカーにおいては長径及び短径に、またセルロースファイバーにおいては繊維長及び繊維径に、それぞれ相当する。セルロースウィスカー及びセルロースファイバーとしては、それぞれ、セルロース単体での径がナノメートルサイズ(すなわち1μm未満)であるものが、第二の工程においてセルロース凝集体を効果的に形成させる観点からより好ましい。本発明で好適に使用可能なセルロースウィスカー及びセルロースファイバーの各々は、その径が500nm以下のものである。・・・」 「【0043】 第一の工程において用いる分散媒は、水を主成分とする分散媒である。ここでいう、水を主成分とするとは、分散媒中に占める水の割合が50質量%以上である状態である。水以外の分散媒としては、例えば、水と相溶の有機溶剤、水と非相溶の有機溶剤、界面活性剤等が例示可能である。」 「【0062】 本工程は、本発明の製造方法で得られる組成物の摺動性の発現に極めて重要な工程である。特に、本工程では、第一の工程で調製した混合物を加熱しながら撹拌し、得られるセルロース凝集体中に含まれる分散媒の量を、セルロース凝集体を100質量%としたとき、0.1~10質量%の範囲内にコントロールする必要がある。」 「【0069】 本発明における第二の工程では、加熱することが重要であるが、具体的な加熱温度は、減圧度により異なる、具体的には30℃以上、150℃未満が好ましい。下限温度は、好ましくは30℃であり、さらに好ましくは40℃であり、最も好ましくは50℃である。また上限温度は、より好ましくは130℃であり、さらにより好ましくは120℃であり、特に好ましくは110℃、最も好ましくは100℃である。上述の温度範囲とすることにより、セルロース凝集体中の分散媒量を所望の範囲にコントロールしやすくなる。 【0070】 また、加熱時に減圧環境とすることもプロセスとして有用である。減圧環境とすることにより、より低温での加熱が可能となりプロセスウィンドウが大きくなるという利点を得ることができる。」 「【0111】 [実施例1] ≪工程1≫セルロースファイバー含有混合物の調製 ・・・得られたセルロースファイバーの特性を上述の方法で評価した。結果を下記に示す。 L/D=300 平均繊維径=90nm 結晶化度=80% 重合度=600 得られたセルロースファイバー分散液を遠心濾過して、固形分(セルロース)率が5重量%の混合物を得た。 【0112】 ≪工程2≫セルロース含有混合物を加熱しながら撹拌し、分散媒を除去しセルロース凝集体を得る工程 工程1のセルロース含有混合物を、密閉式プラネタリーミキサー(株式会社小平製作所製、商品名「ACM-5LVT」、撹拌羽根はフック型)中、70rpmで80分間、25℃、大気圧で撹拌処理した後、-0.1MPaの減圧条件で、60℃の温浴をセットし、307rpmで5時間、減圧乾燥処理を行い、セルロース凝集体を得た。この時のセルロース凝集体の含有水分量とセルロース凝集体の粒子径を上述の方法に従い、測定した。」 「【0114】 [実施例2] 工程1を以下の通り変更した以外は、すべて実施例1と同様に実施した。 ≪工程1≫セルロースウィスカー含有混合物の調製 市販DPパルプ(平均重合度1600)を裁断し、10%塩酸水溶液中で、105℃で30分間加水分解した。得られた酸不溶解残さを濾過、洗浄、pH調整し、固形分濃度14重量%、pH6.5のセルロースウィスカー含有混合物を調製した。得られたセルロースウィスカーの特性を上述の方法で評価した。結果を下記に示す。 L/D=1.6 平均径=200nm 結晶化度=78% 重合度=200 【0115】 [実施例3] 工程1を以下の通り変更した以外は、すべて実施例1と同様に実施した。 ≪工程1≫セルロース含有混合物の調製 実施例1の工程1で得られたセルロースファイバー含有混合物と、実施例2の工程1で得られたセルロースウィスカー含有混合物とを、混合物中のセルロースファイバーとセルロースウィスカーの比率が2:8となるよう攪拌機で混合して、セルロースファイバーとセルロースウィスカーとを含有するセルロース含有混合物を調製した。」 「【0118】 [実施例6] 工程2における条件の内、減圧乾燥処理の温度条件を75℃とした以外は、すべて実施例3と同様に実施した。」 「【0122】 [比較例2] 工程2における条件の内、減圧乾燥処理の温度条件を95℃とした以外は、すべて実施例3と同様に実施した。」 「【0124】 【表1】 [図:0001422405000001.jpg] 」 以上の記載を総合し、特に実施例1、比較例2に着目すると、甲3には以下の発明(以下それぞれを「甲3先願発明」、「甲3発明」という。)が記載されている。 [甲3先願発明] 「水を主成分とする分散媒と、前記分散媒中に分散させたセルロースとを含む混合物を調製する第一の工程と、 前記混合物を減圧乾燥処理することで、分散媒を除去してセルロース凝集体を得る第二の工程からなり、 第二の工程で得られるセルロース凝集体に含有される分散媒の割合が2.7質量%であり、 セルロースが、平均繊維径90nmのセルロースファイバーであり、 上記減圧乾燥処理が、60℃の温浴により行うこと、を含む、 セルロース凝集体を得る方法。」 [甲3発明] 「水を主成分とする分散媒と、前記分散媒中に分散させたセルロースとを含む混合物を調製する第一の工程と、 前記混合物を減圧乾燥処理することで、分散媒を除去してセルロース凝集体を得る第二の工程からなり、 第二の工程で得られるセルロース凝集体に含有される分散媒の割合が0.08質量%であり、 セルロースが、平均繊維径90nmのセルロースファイバーと平均繊維径200nmのセルロースウィスカーの混合物であり、 上記減圧乾燥処理が、95℃の温浴により行うこと、を含む、 セルロース凝集体を得る方法。」 b 乾燥温度が「40℃~90℃」である本件発明について(拡大先願) (a)本件発明1、2について (a-1)対比 本件発明1、2と甲3先願発明を対比する。 甲3先願発明の「水を主成分とする分散媒と、前記分散媒中に分散させたセルロースとを含む混合物」であって「セルロースが、平均繊維径90nmのセルロースファイバーであ」るものは、本件発明1、2の「セルロースナノファイバーと溶媒との混合物」であって「前記溶媒は水である」ものに相当する。 甲3先願発明の「前記混合物を減圧乾燥処理することで、分散媒を除去してセルロース凝集体を得る第二の工程」であって「上記減圧乾燥処理が、60℃の温浴により行う」ことと、本件発明1、2の「真空乾燥装置を用いて乾燥することを含み、前記真空乾燥装置を用いて乾燥することが40~90℃の温度で行われ」ることとは、「減圧乾燥することを含み、減圧乾燥することが60℃の温度で行われ」るものである限りにおいて一致する。 甲3先願発明の「セルロース凝集体を得る方法」は、本件発明1、2の「セルロースナノファイバー乾燥固形物の製造方法」に相当する。 そうすると、本件発明1、2と甲3先願発明は、以下の点で一致し、相違する。 [一致点3-1] 「セルロースナノファイバーと溶媒との混合物を、減圧乾燥することを含み、 減圧乾燥することが60℃の温度で行われ、 前記溶媒は水である、セルロースナノファイバー乾燥固形物の製造方法。」 [相違点3-1] 減圧乾燥することが60℃の温度で行われる点について、本件発明1、2では、「真空乾燥装置」を用いて行われるのに対し、甲3先願発明では、「上記減圧乾燥処理」としての「温浴」により行われる点。 [相違点3-2] 減圧乾燥する温度に関して、本件発明1、2では、「40~90℃」で行われるのに対し、甲3先願発明では、「60℃」で行われる点。 [相違点3-3] 本件発明1、2は「前記セルロースナノファイバーと溶媒との混合物のpHを8~11に調整することをさらに含む」のに対し、甲3先願発明はかかる工程を含むことが特定されていない点。 (a-2)判断 事案に鑑み相違点3-3について検討する。 相違点3-3は、課題解決のための具体化手段における微差(周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではないもの)ではないから実質的なものである。 そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1、2と甲3先願発明は同一ではない。 (b)本件発明3について 本件発明3は、本件発明1、2の発明特定事項のうち相違点3-3に係る構成を少なくとも含み、さらに限定するものであるから、上記(a)(a-2)と同様の理由により、甲3先願発明と同一ではない。 (c)本件発明9について 本件発明9と甲3先願発明を対比すると、少なくとも上記相違点3-3において相違する。 そして、その判断も上記(a)(a-2)で説示したとおりである。 よって、本件発明9は甲3先願発明と同一ではない。 (d)本件発明10について 本件発明10は、本件発明9の発明特定事項を含み、さらに限定するものであるから、上記(c)と同様の理由により、甲3先願発明と同一ではない。 ウ まとめ 以上のとおりであるから、乾燥温度が「40~90℃」である本件発明1~3、9、10は、甲3先願発明と同一ではない。 c 乾燥温度が「90℃~100℃」である本件発明について(新規性、進歩性) (a)本件発明1について (a-1)対比 本件発明1と甲3発明を対比する。 本件発明1において、混合物は、セルロースナノファイバーと溶媒のみからなるとは特定されていないから、甲3発明の「水を主成分とする分散媒と、前記分散媒中に分散させたセルロースとを含む混合物」であって「セルロースが、平均繊維径90nmのセルロースファイバーと平均繊維径200nmのセルロースウィスカーの混合物であ」るものは、本件発明1の「セルロースナノファイバーと溶媒との混合物」であって「前記溶媒は水である」ものに相当する。 甲3発明の「前記混合物を減圧乾燥処理することで、分散媒を除去してセルロース凝集体を得る第二の工程」であって「上記減圧乾燥処理が、95℃の温浴により行う」ことと、本件発明1の「真空乾燥装置を用いて乾燥することを含み、前記真空乾燥装置を用いて乾燥することが40~100℃の温度で行われ」ることとは、「減圧乾燥することを含み、減圧乾燥することが95℃の温度で行われ」るものである限りにおいて一致する。 甲3発明の「セルロース凝集体を得る方法」は、本件発明1の「セルロースナノファイバー乾燥固形物の製造方法」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲3発明は、以下の点で一致し、相違する。 [一致点3-2] 「セルロースナノファイバーと溶媒との混合物を、減圧乾燥することを含み、 減圧乾燥することが95℃の温度で行われ、 前記溶媒は水である、セルロースナノファイバー乾燥固形物の製造方法。」 [相違点3-4] 減圧乾燥することが95℃の温度で行われる点について、本件発明1では、「真空乾燥装置」を用いて行われるのに対し、甲3発明では、「上記減圧乾燥処理」としての「温浴」により行われる点。 [相違点3-5] 減圧乾燥する温度に関して、本件発明1では、「90~100℃」で行われるのに対し、甲3発明では、「95℃」で行われる点。 [相違点3-6] 本件発明1は「前記セルロースナノファイバーと溶媒との混合物のpHを8~11に調整することをさらに含む」のに対し、甲3発明はかかる工程を含むことが特定されていない点。 (a-2)判断 事案に鑑み相違点3-6について検討する。 まず、相違点3-6は実質的なものであるから、本件発明1は甲3発明ではない。 そして、甲3発明に関し、甲3の【0014】には、「すなわち、セルロースの成形体内部での粒子径をコントロールして、成形体の摺動性を向上させる技術は現段階では存在していない。 本発明は、上記の課題を解決し、実用に耐えうる充分な摺動性を有する樹脂組成物の製造方法を提供することを目的とする。」と記載されているものであるが、粒子径のコントロールや成形体の摺動性の向上のためにpHを調整することについては、記載も示唆もない。 一方、本件明細書には「セルロースナノファイバーと溶媒との混合物・・・のpHを8~11に調整した後に真空乾燥させると、再分散性がさらに良好なセルロースナノファイバーの乾燥固形物を得ることができる」(【0019】)と記載されており、本件明細書の【0081】【表1】には、「CNFの水分散液・・・に、水酸化ナトリウム水溶液0.5%を加え、pHを9に調整した。」(【0067】)ものである実施例1~7において、粘度復元率が良好であったことが示されている。これに対して、甲3には、分散媒(水)中に分散させたセルロースを含む混合物を減圧乾燥処理して得たセルロース凝集体の水への再分散性について記載も示唆もなく、申立人が提出した他の証拠にも当該事項については記載も示唆もない。 そうすると、甲3発明において、再分散性を向上するためにセルロースナノファイバーと分散媒とのpHを調整する動機付けはないから、甲3発明において、相違点3-6に係る本件発明1の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことではない。 (a-3)申立人の主張について 申立人は「甲2の【0014】に、「・・・セルロースナノファイバー分散体には、・・・アルカリ、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリを少量加えてもよい。」と記載されるように、セルロースナノファイバーと溶媒との混合物に対し、必要に応じてアルカリを添加することは当業者の通常の実験操作の範囲内であり、その際のpHを8~11とすることにも困難性はない。」(申立書60ページ11~17行)旨主張する。 しかしながら、甲2の【0014】には、「リン酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸などの酸・・・を少量加えてもよい。」とも記載されており、特にアルカリを加えることを意図したものではないことは明らかである。また、このような酸やアルカリの添加によりpHの調整をしようとしたものでもない。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 (a-4)小括 以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲3発明ではなく、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (b)本件発明3、5、6について 本件発明3、5、6は、本件発明1の発明特定事項を含み、さらに限定するものであるから、上記(a)と同様の理由により、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (c)本件発明8について (c-1)対比 本件発明8と甲3発明を対比すると、少なくとも以下の相違点3-7において相違する。 [相違点3-7] 本件発明8は「セルロースナノファイバーの乾燥質量に対して、水溶性高分子を5~300質量%含有し、前記水溶性高分子がカルボキシメチルセルロース及びその塩である」のに対し、甲3発明はかかる構成を有していない点。 (c-2)判断 本件明細書には「カルボキシメチルセルロース及びその塩のような水溶性高分子は、セルロースナノファイバー同士の間に入りこみ、CNF間の距離を広げることで、再分散性を向上させると考えられる。」(【0052】)と記載されており、本件明細書の【0081】【表1】には、「(すなわち、カルボキシメチル化CNFの固形分を100質量部としたときにカルボキシメチルセルロースの固形分が40質量部となるように)添加し」(【0067】)たものである実施例1~7において、粘度復元率が良好であったことが示されている。 他方、分散媒(水)中に分散させたセルロースを含む混合物を減圧乾燥処理して得たセルロース凝集体の水への再分散性について記載も示唆もなく、申立人が提出した他の証拠にも再分散性向上については記載も示唆もない。 そうすると、甲3発明において、再分散性を向上するためにカルボキシメチルセルロース及びその塩である水溶性高分子を含有する動機付けはないから、甲3発明において、相違点3-7に係る本件発明8の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことではない。 (c-3)申立人の主張について 申立人は「甲2の【0009】に、「(B)分散剤としては、・・・例えば、「P-OH基、-COOH基、-SO3H基、・・・」・・・などが挙げられる」と記載されるように、セルロースナノファイバーと良く親和する化学構造の分散剤を用いる・・・ことは当業者の実験操作の範囲内である。そして、カルボキシメチルセルロース又はその塩は、セルロース骨格を有しているから、セルロースナノファイバーと良く親和できることを当業者が容易に予測し得る。従って、甲3,甲2を参照した当業者が、水溶性高分子としてカルボキシメチルセルロース又はその塩を採用してみることに、特段の困難性はない。」(申立書63ページ8~20行))旨主張する。 しかしながら、甲2には、分散剤を添加する目的として「マトリックス成分となる樹脂成分との親和性が良好」(【0009】)となる旨の記載があるものの、セルロースナノファイバーの再分散性向上に関する記載も示唆もない。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 (d)本件発明10について 本件発明10と甲3発明を対比すると、少なくとも上記相違点3-6において相違する。 そしてその判断も上記(a)(a-2)で説示したとおりである。 よって、本件発明10は甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ まとめ 以上のとおりであるから、乾燥温度が「90~100℃」である本件発明1、7は甲3発明ではなく、同本件発明1、3、5、6、8、10は甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (4)甲4を主引例とする申立理由3(拡大先願)について a 甲4の記載、発明 甲4には以下の記載がある。 「[0001] 本発明は、セルロースナノファイバー含水分散液及びその乾燥体、並びにセルロースナノファイバー樹脂組成物及び樹脂成形体に関する。」 「[0007] しかし樹脂中にCNFを配合するためには、CNFを乾燥し粉末化する必要があるが、CNFは水と分離する過程で微分散状態から、強固な凝集体となり、再分散しにくいといった課題がある。この凝集力はセルロースが持つ水酸基による水素結合により発現されており、非常に強固であると言われている。」 「[0014] 本発明の一態様は、上記の課題を解決し、乾燥後にも容易に水又は有機溶媒にセルロースナノファイバーを再分散可能でかつ樹脂中へのセルロースナノファイバーの優れた分散性を与える分散液及びセルロースナノファイバー含水分散液、並びに、樹脂に分散させたときに、樹脂組成物に充分な機械的特性及び熱特性を与えつつ、実用途において、優れた耐摩耗性と、優れた成形性及び/又は優れた塗装性とを与えるセルロースナノファイバー乾燥体の提供を目的とする。・・・」 「[0301]≪製造-1 セルロースナノファイバー含水分散液≫ ・・・得られた(B)表面処理剤水溶液を、セルロースナノファイバースラリー(固形分10~20質量%)に投入し、新東科学株式会社製ハイパワー汎用攪拌機BLh3000を用いて30分攪拌し、均一なセルロースナノファイバー含水分散液を得た。 ・・・ [0303]≪製造-2 セルロースナノファイバー乾燥体≫ 先の製造で得られたセルロースナノファイバー含水分散液を、株式会社小平製作所製ACM-5LVTを用いて攪拌しながら40℃で1時間減圧乾燥し、均一なクラム状の塊を得た。これをヤマト科学株式会社製Inert Oven DN43HIを用いて、120℃・窒素雰囲気で24時間乾燥させ、セルロースナノファイバー乾燥体を得た。」 以上の記載を総合し、特に[0303]の製造工程に着目すると、甲4には以下の発明(以下「甲4先願発明」という。)が記載されている。 [甲4先願発明] 「セルロースナノファイバー含水分散液を、攪拌しながら40℃で1時間減圧乾燥し、均一なクラム状の塊を得、これを120℃・窒素雰囲気で24時間乾燥させる、セルロースナノファイバー乾燥体の製造方法。」 b 本件発明1について (a)対比 本件発明1と甲4先願発明を対比すると、両者は以下の点で一致し、相違する。 [一致点4] 「セルロースナノファイバーと溶媒との混合物を、真空乾燥装置を用いて乾燥することを含み、 前記溶媒は水である、セルロースナノファイバー乾燥固形物の製造方法。」 [相違点4-1] 減圧乾燥することが、本件発明1では「90~100℃」で行われるのに対し、甲4先願発明では「40℃」で行なわれる点。 [相違点4-2] 本件発明1は「前記セルロースナノファイバーと溶媒との混合物のpHを8~11に調整することをさらに含む」のに対し、甲4先願発明はかかる工程を含むことが特定されていない点。 (b)判断 事案に鑑み相違点4-1について検討する。 相違点4-1は、課題解決のための具体化手段における微差(周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではないもの)ではないから実質的なものである。 (c)申立人の主張について 申立人は「甲4(5)発明の構成B4(5)「減圧乾燥処理を、40℃で行うこと」は、本件特許発明1の・・・温度90℃超え100℃以下の部分である構成Bβと数値範囲上異なるが、温度を40℃から90℃超え100℃以下とすることは単なる設計上の置換であって新たな効果を奏さない。」(申立書71ページ1~5行)旨主張する。 しかしながら、甲4には減圧乾燥温度を40℃から変更する旨の記載も示唆もなく、他方、本件明細書に「乾燥温度が低いと生産効率が低下するため、乾燥温度は40℃以上であることが好ましく、45℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることが更に好ましい。」(【0022】)とあるように、本件発明1は減圧乾燥温度を所定範囲とすることでセルロースナノファイバーの乾燥固形物の生産効率を向上するものである。そうすると、減圧乾燥温度は課題解決のための具体化手段における微差(周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではないもの)とはいえない。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 (d)小括 以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1と甲4先願発明は同一ではない。 c 本件発明3について 本件発明3は、本件発明1の発明特定事項を含み、さらに限定するものであるから、上記bと同様の理由により、甲4先願発明と同一ではない。 d 本件発明10について 本件発明10と甲4先願発明を対比すると、少なくとも上記相違点4-1において相違する。 そしてその判断も上記b(b)で説示したとおりである。 よって、本件発明10は甲4先願発明と同一ではない。 e まとめ 以上のとおりであるから、乾燥温度が「90~100℃」である本件発明1、3、10は、甲4先願発明と同一ではない。 (5)申立理由4(サポート要件)について 本件発明の課題は、「再分散性が良好なCNFの乾燥固形物を提供すること」(【0006】)であり、該課題を解決するための手段として「[1]セルロースナノファイバーと溶媒との混合物を、真空乾燥装置を用いて乾燥することを含む、セルロースナノファイバー乾燥固形物の製造方法。」(【0007】)と記載されており、発明を実施するための形態が【0010】~【0059】に、実施例が【0060】~【0088】にそれぞれ記載されている。 そして、本件明細書において、粘度復元率が良好であることが確認されている実施例1~7は、「CNFとして、上記のカルボキシメチル化CNF・・・を用いた。CNFの0.7質量%水性懸濁液に、カルボキシメチルセルロース・・・を、CNFに対して40質量%・・・添加し、・・・CNFの水分散液を調製した。この分散液のpHは7程度であった。この水分散液に、水酸化ナトリウム水溶液0.5%を加え、pHを9に調整した。」(【0067】)という条件下においての結果であり、同実施例8は、実施例1における「カルボキシメチル化CNF」に代えて「TEMPO酸化CNF」を用いた以外は実施例1と同様にして行ったものである。 そうすると、実施例1~8は、(1)CNFとしてカルボキシメチル化CNF又はTEMPO酸化CNFを用い、(2)CNFの水性懸濁液にカルボキシメチルセルロースを添加し、(3)CNFの水分散液のpHを9に調整した、という(1)~(3)の前提条件を全て満たすものである。 そして、本件明細書の「カルボキシメチルセルロース及びその塩のような水溶性高分子は、セルロースナノファイバー同士の間に入りこみ、CNF間の距離を広げることで、再分散性を向上させると考えられる。」(【0052】)との記載、及び、「混合物のpHを8~11に調整した後に真空乾燥させると、再分散性がさらに良好なセルロースナノファイバーの乾燥固形物を得ることができるので好ましい。」(【0019】)との記載を踏まえると、実施例1~8は、上記の前提条件(1)~(3)のうち、少なくとも(2)又は(3)を満たすことにより、同条件を具備しない場合に比較して、再分散性が良好となる条件を備えていることが理解できる。 そして、本件発明1、9においては上記条件(3)が、本件発明8においては上記条件(2)がそれぞれ特定されている。 そうすると、本件発明が上記課題を解決することを当業者であれば認識できる。 (6)申立理由5(実施可能要件)について 本件明細書には、本件発明の課題として「再分散性が良好なCNFの乾燥固形物を提供すること」(【0006】)が記載されており、該課題を解決するための手段が【0007】に記載されており、発明を実施するための形態が【0010】~【0059】に記載されており、実施例が【0060】~【0077】に記載されている。そして、【0081】【表1】には、実施例1~8において再分散性が良好であることが示されており、これらの記載を参酌することで、当業者は本件発明を実施することができる。 したがって、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1~10に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 第6 むすび 以上のとおり、請求項1~3、5、6、8~10に係る特許は、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に請求項1~3、5、6、8~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、請求項4、7に係る特許についての特許異議の申立ては、本件訂正により申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701349

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