特許異議申立
2023-701039
研磨用組成物、研磨用組成物の製造方法、研磨方法、および半導体基板の製造方法
- 審判番号
- 2023-701039
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-005306
- 登録番号
- 7250530
- 請求日
- 2023年09月28日
- 審決日
- 2024年05月29日
- 公報発行日
- 2024年09月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社フジミインコーポレーテッド
- 【権利者代理人】IBC一番町弁理士法人
- 【異議申立人】田村 奈緒美
- 審判長/審判官
- 審判長 瀧内 健夫
- 審判官 棚田 一也
- 審判官 中野 浩昌
- 分類
- P1651.121-YAA(H01L) / P1651.113-YAA(H01L) / P1651.537-YAA(H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第5項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の8第1項、特許法第135条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7250530号発明「研磨用組成物、研磨用組成物の製造方法、研磨方法、および半導体基板の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7250530号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕について訂正することを認める。
特許第7250530号の請求項1ないし3、5ないし11に係る特許を維持する。
特許7250530号の請求項4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7250530号の請求項1~11に係る特許についての出願は、平成31年1月16日(優先権主張 平成30年3月15日、平成30年8月7日)に出願され、令和5年3月24日にその特許権の設定登録がされ、同年4月3日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 5年 9月28日 :特許異議申立人田村奈緒美(以下「申立人」という。)による特許異議の申立て
令和 5年12月20日付け :取消理由通知書
令和 6年 2月21日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出(以下、この訂正請求書による訂正請求を「本件訂正請求」という。また、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)
令和6年3月8日付けで、本件訂正請求について、申立人に、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人からは何らの応答もない。
第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
本件訂正の内容は、以下のとおりである。(下線は訂正箇所を示すために当審で付した。)
(1)訂正事項1
訂正事項1は、以下の訂正事項1-1及び1-2からなる。
ア 訂正事項1-1
特許請求の範囲の請求項1に「不純物がドープされた多結晶シリコンおよび不純物がドープされた非晶質シリコンの少なくとも一方を含む研磨対象物」と記載されているのを、「不純物がドープされた多結晶シリコンを含む研磨対象物」に訂正する。(請求項1の記載を直接的及び間接的に引用する請求項2~11も同様に訂正する。)
イ 訂正事項1-2
特許請求の範囲の請求項1に「pHが8以上である、研磨用組成物。」と記載されているのを、「pHが8以上であり、前記砥粒の平均二次粒子径は200nm超500nm以下であり、ただし、R1R2R3R4N+X-、R1R2R3R4P+X-、R1R2R3S+X-、イミダゾリウム塩、およびピリジニウム塩、ここで、R1、R2、R3、およびR4のそれぞれは独立してC1~C6アルキル、C7~C12アリールアルキル、またはC6~C10アリールであり、X-はアニオンである、をいずれも含まず、かつヒドロキシアルキルセルロース、カラギーナン、およびキサンタンガムをいずれも含まない、研磨用組成物。」に訂正する。(請求項1の記載を直接的及び間接的に引用する請求項2~11も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4を削除する。(請求項4の記載を直接的及び間接的に引用する請求項5~11も同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1~4のいずれか1項に記載の研磨用組成物。」と記載されているのを、「請求項1~3のいずれか1項に記載の研磨用組成物。」に訂正する。(請求項5の記載を直接的及び間接的に引用する請求項6~11も同様に訂正する。)
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1~5のいずれか1項に記載の研磨用組成物。」と記載されているのを、「請求項1~3、5のいずれか1項に記載の研磨用組成物。」に訂正する。(請求項6の記載を直接的及び間接的に引用する請求項7~11も同様に訂正する。)
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1~6のいずれか1項に記載の研磨用組成物。」と記載されているのを、「請求項1~3、5~6のいずれか1項に記載の研磨用組成物。」に訂正する。(請求項7の記載を直接的及び間接的に引用する請求項8~11も同様に訂正する。)
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項9に「請求項1~8のいずれか1項に記載の研磨用組成物。」と記載されているのを、「請求項1~3、5~8のいずれか1項に記載の研磨用組成物。」に訂正する。
(7)訂正事項7
訂正事項7は、以下の訂正事項7-1及び7-2からなる。
ア 訂正事項7-1
特許請求の範囲の請求項10に「請求項1~8のいずれか1項に記載の研磨用組成物を用いて、」と記載されているのを、「請求項1~3、5~8のいずれか1項に記載の研磨用組成物を用いて、」に訂正する。(請求項10の記載を直接的に引用する請求項11も同様に訂正する。)
イ 訂正事項7-2
特許請求の範囲の請求項10に「不純物がドープされた多結晶シリコンおよび不純物がドープされた非晶質シリコンの少なくとも一方を含む研磨対象物」と記載されているのを、「不純物がドープされた多結晶シリコンを含む研磨対象物」に訂正する。(請求項10の記載を直接的に引用する請求項11も同様に訂正する。)
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項11に「不純物がドープされた多結晶シリコンおよび不純物がドープされた非晶質シリコンの少なくとも一方を含む半導体基板」と記載されているのを、「不純物がドープされた多結晶シリコンを含む半導体基板」に訂正する。
2 訂正の適否
訂正事項1~8の、訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について、以下検討する。
(1)訂正事項1について
ア 訂正事項1-1について
(ア)訂正の目的の適否について
訂正事項1-1は、本件訂正前の請求項1に択一的に記載された「不純物がドープされた多結晶シリコン」及び「不純物がドープされた非晶質シリコン」から、「不純物がドープされた非晶質シリコン」を削除して、択一的記載の要素を削除するものである。
よって、訂正事項1-1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1-1は、上記(ア)のとおり、択一的記載の要素を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、また、特許請求の範囲を拡張・変更するものでもない。
イ 訂正事項1-2について
(ア)訂正の目的の適否について
訂正事項1-2は、本件訂正前の請求項1に「砥粒」の平均二次粒子径に関して何ら記載されていなかったところ、「砥粒」について「平均二次粒子径は200nm超500nm以下」であることを限定して、発明を特定する事項を直列的に付加するとともに、さらに、本件訂正前の請求項1に、「研磨用組成物」に含まれる構成要素に関して、「砥粒」、「分散媒」及び「アルカリ化合物」以外に何ら記載されておらず、「研磨用組成物」は「砥粒」、「分散媒」及び「アルカリ化合物」以外の構成要素を任意に含み得たところ、「研磨用組成物」から「R1R2R3R4N+X-、R1R2R3R4P+X-、R1R2R3S+X-、イミダゾリウム塩、およびピリジニウム塩、ここで、R1、R2、R3、およびR4のそれぞれは独立してC1~C6アルキル、C7~C12アリールアルキル、またはC6~C10アリールであり、X-はアニオンである」及び「ヒドロキシアルキルセルロース、カラギーナン、およびキサンタンガム」を除いて、任意に含み得た構成要素の一部を除くものである。
よって、訂正事項1-2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無について
本件明細書等の特許請求の範囲の請求項4には「前記砥粒の平均二次粒子径は50nm以上500nm以下である」と記載され、本件明細書等の段落0027には「砥粒の平均二次粒子径は、50nm以上500nm以下であることが好ましく」と記載されているから、「砥粒」について、上記の数値範囲に含まれる「平均二次粒子径は200nm超500nm以下」とすることは、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。
また、上記(ア)のとおり、「研磨用組成物」から「R1R2R3R4N+X-、R1R2R3R4P+X-、R1R2R3S+X-、イミダゾリウム塩、およびピリジニウム塩、ここで、R1、R2、R3、およびR4のそれぞれは独立してC1~C6アルキル、C7~C12アリールアルキル、またはC6~C10アリールであり、X-はアニオンである」及び「ヒドロキシアルキルセルロース、カラギーナン、およびキサンタンガム」を除くことは、任意に含み得た構成要素の一部を除くものであるから、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。
以上のとおりであるから、訂正事項1-2は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記(ア)によれば、訂正事項1-2は、発明を特定する事項を直列的に付加するとともに、任意に含み得た構成要素の一部を除くものであるから、特許請求の範囲を拡張・変更するものではない。
ウ 小括
上記ア及びイによれば、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、請求項4を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正事項2により請求項4を削除したことに伴い、訂正前の請求項5の引用請求項から請求項4を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正事項2により請求項4を削除したことに伴い、訂正前の請求項6の引用請求項から請求項4を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)訂正事項5について
訂正事項5は、訂正事項2により請求項4を削除したことに伴い、訂正前の請求項7の引用請求項から請求項4を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6)訂正事項6について
訂正事項6は、訂正事項2により請求項4を削除したことに伴い、訂正前の請求項9の引用請求項から請求項4を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(7)訂正事項7について
ア 訂正事項7-1について
訂正事項7-1は、訂正事項2により請求項4を削除したことに伴い、訂正前の請求項10の引用請求項から請求項4を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
イ 訂正事項7-2について
(ア)訂正の目的の適否について
訂正事項7-2は、本件訂正前の請求項10に択一的に記載された「不純物がドープされた多結晶シリコン」及び「不純物がドープされた非晶質シリコン」から、「不純物がドープされた非晶質シリコン」を削除して、択一的記載の要素を削除するものであるから、訂正事項7-2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項7-2は、上記(ア)のとおり、択一的記載の要素を削除するものであるから、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、また、特許請求の範囲を拡張・変更するものでもない。
ウ 小括
上記ア及びイによれば、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(8)訂正事項8について
訂正事項8は、本件訂正前の請求項11に択一的に記載された「不純物がドープされた多結晶シリコン」及び「不純物がドープされた非晶質シリコン」から、「不純物がドープされた非晶質シリコン」を削除して、択一的記載の要素を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(9)一群の請求項についての説明
訂正前の請求項1~11について、請求項2~11は、請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~11に対応する訂正後の請求項〔1~11〕は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
3 訂正の適否についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正の請求は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正請求は認められるから、本件特許の請求項1~11に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明11」という。)は、それぞれ、訂正特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】不純物がドープされた多結晶シリコンを含む研磨対象物を研磨するために用いられる研磨用組成物であって、
砥粒と、
分散媒と、
アルカリ金属の水酸化物、無機酸のアルカリ金属塩、無機酸のアンモニウム塩、有機酸のアルカリ金属塩、有機酸のアンモニウム塩、およびアンモニアからなる群より選択される少なくとも1種のアルカリ化合物と、
を含み、pHが8以上であり、
前記砥粒の平均二次粒子径は200nm超500nm以下であり、
ただし、R1R2R3R4N+X-、R1R2R3R4P+X-、R1R2R3S+X-、イミダゾリウム塩、およびピリジニウム塩、ここで、R1、R2、R3、およびR4のそれぞれは独立してC1~C6アルキル、C7~C12アリールアルキル、またはC6~C10アリールであり、X-はアニオンである、をいずれも含まず、かつ
ヒドロキシアルキルセルロース、カラギーナン、およびキサンタンガムをいずれも含まない、研磨用組成物。
【請求項2】
前記砥粒はコロイダルシリカである、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項3】
前記砥粒の平均一次粒子径は20nm以上300nm以下である、請求項1または2に記載の研磨用組成物。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
前記砥粒の含有量は、研磨用組成物の総質量に対して0.1質量%以上20質量%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の研磨用組成物。
【請求項6】
前記アルカリ化合物は、水酸化カリウム、無機酸のカリウム塩、無機酸のアンモニウム塩、有機酸のカリウム塩、有機酸のアンモニウム塩、およびアンモニアから選択される少なくとも1種である、請求項1~3、5のいずれか1項に記載の研磨用組成物。
【請求項7】
研磨促進剤をさらに含む、請求項1~3、5~6のいずれか1項に記載の研磨用組成物。
【請求項8】
前記研磨促進剤は、アミノ基を有する化合物である、請求項7に記載の研磨用組成物。
【請求項9】
前記砥粒、前記分散媒、および前記アルカリ化合物を混合する工程を含む、請求項1~3、5~8のいずれか1項に記載の研磨用組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項1~3、5~8のいずれか1項に記載の研磨用組成物を用いて、不純物がドープされた多結晶シリコンを含む研磨対象物を研磨する工程を含む、研磨方法。
【請求項11】
不純物がドープされた多結晶シリコンを含む半導体基板を、請求項10に記載の研磨方法により研磨する工程を有する、半導体基板の製造方法。」
第4 取消理由
当審において令和5年12月20日付けで通知した取消理由(以下「取消理由」という。)の概要は、以下のとおりである。なお、令和5年9月28日付けでされた特許異議の申立ての理由は、取消理由ですべて採用された。
1 取消理由1(新規性)本件訂正前の請求項1~11に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された甲第1号証に記載された発明であり、また、本件訂正前の請求項1~7、9~11に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件訂正前の請求項1~11に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
2 取消理由2(進歩性)本件訂正前の請求項1~11に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、また、本件訂正前の請求項1~7、9~11に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項1~11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
3 取消理由3(サポート要件)本件明細書等の発明の詳細な説明に実施例として記載された、不純物がドープされた多結晶シリコンを含む研磨対象物を研磨するために用いられる研磨用組成物を、本件訂正前の請求項1に記載された「不純物がドープされた非晶質シリコン」「を含む研磨対象物を研磨するために用いられる研磨用組成物」にまで拡張ないし一般化することはできない点で、本件訂正前の請求項1に係る発明と、同項の記載を引用する本件訂正前の請求項2~11に係る発明は、本件明細書等の発明の詳細な説明に記載したものではないから、本件訂正前の請求項1~11に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
4 申立人が提出した証拠は下記のとおり
甲第1号証:特表2011-523207号公報(以下、「甲1」という。)
甲第2号証:特表2013-541194号公報(以下、「甲2」という。)
甲第3号証:特開平01-295416号公報(以下、「甲3」という。)
甲第4号証:特開2009-87967号公報(以下、「甲4」という。)
甲第5号証:特開2013-232628号公報(以下、「甲5」という。)
甲第6号証:特開2014-69260号公報(以下、「甲6」という。)
甲第7号証:特開2009-231486号公報(以下、「甲7」という。)
第5 取消理由についての当審の判断
1 取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)について
(1) 甲1、2、4及び5の記載について
ア 甲1の記載、甲1発明
(ア)甲1には、次の記載がある。(なお、下線は当審が付与した。以下、同じ。)
「【請求項17】
基板の化学機械研磨方法であって、
(i)基板を、研磨パッドおよび、
(a)湿式法シリカ、
(b)R1R2R3R4N+X-、R1R2R3R4P+X-、R1R2R3S+X-、イミダゾリウム塩、およびピリジニウム塩からなる群から選ばれた、0.01質量%~0.5質量%の安定剤化合物、ここで、R1、R2、R3、およびR4のそれぞれは独立してC1~C6アルキル、C7~C12アリールアルキル、またはC6~C10アリールである、
(c)0.002質量%~0.2質量%のカリウム塩、
(d)0.002質量%~0.2質量%の第2級アミン化合物、
(e)水、を含む化学機械研磨組成物であって、9~12のpHを有している研磨組成物に接触させること、
(ii)この研磨要素を該基板に対して動かすこと、ならびに
(iii)該基板の少なくとも一部を研摩して該基板を研磨すること、を含んでなる方法。
【請求項18】
前記湿式法シリカが、縮合重合シリカまたは塩基安定化コロイド状シリカである、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記研磨組成物が、0.05質量%~2質量%のシリカを含む、請求項17記載の方法。
・・・(中略)・・・
【請求項22】
前記第2級アミン化合物がピペラジンである、請求項17記載の方法。
・・・(中略)・・・
【請求項24】
前記カリウム塩が、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、または炭酸水素カリウムと炭酸カリウムの混合物である、請求項17記載の方法。
・・・(中略)・・・
【請求項27】
前記基板が、シリコンを含み、そして該シリコンの一部を研摩して該基板を研磨する、請求項17記載の方法。
【請求項28】
前記シリコンがp+ドープしたシリコンである、請求項27記載の方法。」
「【発明が解決しようとする課題】
・・・(中略)・・・
【0004】
・・・(中略)・・・しかしながら、慣用のシリコン研磨組成物は、高濃度ではコロイド不安定性を示し、希釈時に研磨粒子の再分散において困難を引き起こす。従って、当技術分野においては、シリコンウエハ用の改善された研磨組成物への重大な必要性が依然として存在している。」
「【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、化学機械研摩組成物および、基板の化学機械研摩方法を提供する。
【0009】
第1の態様では、この研摩組成物は、(a)湿式法シリカ、(b)R1R2R3R4N+X-、R1R2R3R4P+X-、R1R2R3S+X-、イミダゾリウム塩、およびピリジニウム塩からなる群から選ばれた、0.01質量%~0.5質量%の安定剤化合物(R1、R2、R3、およびR4のそれぞれは独立してC1~C6アルキル、C7~C12アリールアルキル、またはC6~C10アリールである)、(c)0.002質量%~0.2質量%のカリウム塩、(d)0.002質量%~0.2質量%の第2級アミン化合物、および(e)水、を含む化学機械研磨組成物(ここでこの研磨組成物は9~12のpHを有している)、を含んでいる、から本質的になっている、または、からなっている。
・・・(中略)・・・
【0011】
湿式法シリカの好適な例としては、縮合重合したシリカおよび塩基安定化コロイド状シリカが挙げられる。縮合重合シリカ粒子は、典型的にはSi(OH)4を縮合することによって調製され、実質的に球状の粒子を形成する。前駆体Si(OH)4は、例えば、高純度アルコキシシランの加水分解によって、またはケイ酸塩水溶液の酸性化によって得ることができる。このような縮合重合シリカ粒子は、米国特許第5,230,833号明細書に従って調製することができ、または種々の商業的に入手可能な製品、例えば、Fuso PL-1、PL-1H、PL-1SL、PL-2、PL-2L、PL-3、PL-3H、PL-3L、PL-5、PL-6L、PL-7、PL-7H、PL-1OH、およびPL-20製品、ならびにDuPont、Bayer、Applied Research、Silbond、Clariantなどから入手可能な他の同様の製品のいずれかとして得ることができる。
・・・(中略)・・・
【0013】
湿式法シリカ研摩粒子は、典型的には4nm~200nmの平均粒度(例えば、平均粒子直径)を有している。好ましくは、この湿式法シリカ研摩粒子は、20nm~100nm(例えば、40nm~75nm)の平均粒度を有している。この点について、粒度は、これらの粒子を囲い込む最小の球体の直径を表している。
【0014】
この研磨組成物は、典型的には0.05質量%以上(例えば,0.1質量%以上、または0.5質量%以上)の湿式法シリカを含んでいる。好ましくは、この研磨組成物は、典型的には2質量%以下(例えば,1.5質量%以下、または1質量%以下)の湿式法シリカを含んでいる。より好ましくは、この研磨組成物は、0.1質量%~2質量%(例えば,0.5質量%~1.5質量%)の湿式法シリカ(これ以降、「シリカ」と記す)を含んでいる。
・・・(中略)・・・
【0016】
この研磨組成物は、安定剤化合物、すなわち、1種もしくは2種以上の安定剤化合物を含んでいる。この安定剤化合物は、研磨組成物中での、シリカ粒子のコロイド状安定性を向上させると信じられる。この安定剤化合物は、R1R2R3R4N+X- 、R1R2R3R4P+X-、R1R2R3S+X-、イミダゾリウム塩、およびピリジニウム塩からなる群から選ばれ、ここでR1、R2、R3、およびR4のそれぞれは独立してC1~C6アルキル、C7~C12アリールアルキル、またはC6~C10アリールである。C1~C6アルキル、C7~C12アリールアルキル、またはC6~C10アリールは、更に1つもしくは2つ以上のヒドロキシル基で置換されていてもよい。・・・(中略)・・・。アニオンX-は、いずれかの好適なアニオンであることができる。・・・(中略)・・・
【0018】
この研磨組成物は、カリウム塩、すなわち、1種もしくは2種以上のカリウム塩を含んでいる。このカリウム塩は、いずれかの好適なカリウム塩であることができる。好ましくは、カリウム塩は、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、または炭酸水素カリウムおよび炭酸カリウムの混合物である。
・・・(中略)・・・
【0020】
この研磨組成物は、第2級アミン化合物、すなわち1種もしくは2種以上の第2級アミン化合物を含んでいる。好ましくは、この第2級アミン化合物はピペラジンである。ピペラジンは、塩(例えば、酸付加塩)の形態で存在することができ、そしてそのモノ-もしくはジ-酸付加塩として存在することができることが理解されるであろう。ピペラジンは、固体六水和物化合物としても存在する。
・・・(中略)・・・
【0022】
この研磨組成物は、9~12のpH(例えば、9~11、または9~10、または10~11、または10~11、または11~12)を有している。この研磨組成物は、所望により、pH調節剤、例えば水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、硝酸、硫酸、またはリン酸を含んでいる。この研磨組成物は、所望により、pH緩衝系、例えば炭酸ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウムを含む緩衝系を含んでいる。多くのこのようなpH緩衝系が、当技術分野ではよく知られている。この研磨組成物がpH調節剤および/または緩衝系を含む場合には、この研磨組成物は、pHをここで説明する範囲に維持するのに十分な量のpH調節剤および/または緩衝系を含むであろう。
・・・(中略)・・・
【0029】
この研磨組成物は、いずれかの好適な技術によって調製することができ、それらの多くは当業者に知られている。・・・(中略)・・・
【0031】
例えば、安定剤化合物、第2級アミン化合物、カリウム塩、および所望によるキレート化剤は、安定剤化合物、第2級アミン化合物、カリウム塩、および所望によるキレート化剤を、いずれかの順序で、または更には同時に、水に添加することによって、水中に溶解することができる。次いで、シリカを加えて、そして研磨組成物中にシリカを分散させることができるいずれかの方法によって分散させることができる。この研磨組成物は、1種もしくは2種以上の成分、例えば第2級アミン化合物を、使用の少し前に(例えば、使用の1分間以内に、または使用の1時間以内に、または使用の7日間以内に)加えることで、使用の前に調製することができる。pHは、いずれかの好適な時点で調整することができ、そして好ましくはシリカを研磨組成物に加える前に調整される。また、この研磨組成物は、研磨操作の間に、基板の表面でこれらの成分を混合することによって調製することもできる。
・・(中略)・・・
【0034】
本発明の研磨組成物は、いずれかの基板を研磨するのに用いることができるが、この研磨組成物は、ケイ素を含む基板、例えば電子工業で用いられるシリコンウエハの研磨において特に有用である。この点について、このシリコンは、ドープされていないシリコンであることができ、またはそれはホウ素もしくはアルミニウムでドープされたp型シリコンであることができる。更に、このシリコンは多結晶シリコンであることができる。本発明の研磨組成物およびそれを用いた方法は、ダイアモンド鋸切断および粗研摩によってシリコン単結晶から生成されたシリコンウエハの最終研摩用に、ならびにシリコンウエハのエッジ研磨用に、そして研摩によるシリコンウエハの再生における使用のために好適である。」
「【0041】
例1
この例は、本発明の研磨組成物によって達成される、シリコンについて観察される除去速度への、安定剤化合物、第2アミン化合物、およびカリウム塩の濃度の影響を示している。
・・(中略)・・・
【0044】
【表1】
[図:0001414189000001.jpg]
【0045】
表1中に示した結果から明らかなように、炭酸水素カリウムを全く含まない研磨組成物1L~1Oは、全てが炭酸水素カリウムを含んでいる研磨組成物1A~1Kおよび1Pよりも、少なくとも約6%~31%低いシリコン除去速度を示した。0.1875質量%のピペラジン、0.3125質量%の水酸化テトラメチルアンモニウムおよび0.125質量%の炭酸水素カリウムを含んだ研磨組成物1Jは、0.0625質量%のピペラジン、0.3125質量%の水酸化テトラメチルアンモニウムおよび0.125質量%の炭酸水素カリウムを含む研磨組成物1Dよりも、約8%低いシリコン除去速度を示した。それぞれ0.1875質量%および0.4375質量%の水酸化テトラメチルアンモニウムを含み、そしてピペラジンまたは炭酸水素カリウムを含まない研磨組成物1Lおよび1Oは、それぞれ0.1875質量%および0.4375質量%の水酸化テトラメチルアンモニウムを含み、そしてピペラジンおよび炭酸水素カリウムをそれぞれ0.25質量%含んだ研磨組成物1Eおよび1Hによって示されたシリコン除去速度よりも、それぞれ約13%および33%低いシリコン除去速度を示した。
・・・(中略)・・・
【0057】
4インチ((102cm)シリコンウエハを構成する同様の基板を、2種の異なる研磨組成物(研磨組成物3Aおよび3B)で研磨した。全ての研磨組成物は、水中に、625ppmのピペラジン、469ppmの炭酸水素化カリウム、および156ppmのエチレンジアミン四酢酸を含んでおり、pH11であった。研磨組成物4Aは、更に0.937質量%の塩基安定化コロイド状シリカ(Nalco TX-13112)を含んでいた。研磨組成物4Bは、更に0.937質量%の縮合重合シリカ(Fuso PL-2)を含んでおり、そして12のpHを有していた。」
(イ)上記(ア)によれば、甲1には、以下の技術事項が記載されている。
a 段落0009には「この研摩組成物は、(a)湿式法シリカ」「を含んでいる」と記載され、段落0013には「湿式法シリカ研摩粒子」と記載されている。よって、段落0009に記載された「湿式法シリカ」は湿式法シリカ研摩粒子であるといえる。
b 上記(ア)の段落0009、段落0011、段落0014、段落0018、段落0020、段落0022及び段落0034、並びに、上記aによれば、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲1発明>
「(a)湿式法シリカ研摩粒子、(b)R1R2R3R4N+X-、R1R2R3R4P+X-、R1R2R3S+X-、イミダゾリウム塩、およびピリジニウム塩からなる群から選ばれた、0.01質量%~0.5質量%の安定剤化合物(R1、R2、R3、およびR4のそれぞれは独立してC1~C6アルキル、C7~C12アリールアルキル、またはC6~C10アリールであり、X-はアニオンである)、(c)0.002質量%~0.2質量%のカリウム塩、(d)0.002質量%~0.2質量%の第2級アミン化合物、および(e)水、を含むとともに、
pH調節剤として水酸化カリウムを含み、
pH緩衝系として炭酸ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウムを含み、
9~12のpHを有し、
ケイ素を含む基板、電子工業で用いられるシリコンウエハの研磨において有用である、化学機械研磨組成物であって、
湿式法シリカ研摩粒子は、縮合重合シリカ粒子であるFuso PL-2であり、
化学機械研磨組成物が含む湿式法シリカ研磨粒子の量は、0.1質量%~2質量%であり、
カリウム塩は、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、または炭酸水素カリウムおよび炭酸カリウムの混合物であり、
第2級アミン化合物はピペラジンであり、
シリコンは、ホウ素もしくはアルミニウムでドープされたp型シリコンであり、多結晶シリコンである、
化学機械研摩組成物。」
イ 甲2の記載、甲2発明
(ア)甲2には、次の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、高い除去速度、低い粒子欠陥性及び低い曇り性を示す、改良されたケミカルメカニカル研磨組成物が当該技術分野において必要とされている。」
「【0010】
ある実施形態において、ケミカルメカニカル研磨組成物は(a)シリカ、(b)1種以上の有機カルボン酸又はその塩、(c)ヒドロキシアルキルセルロース、カラギーナン及びキサンタンガムからなる群より選ばれる1種以上のポリサッカリド、(d)1種以上の塩基、(e)場合により、1種以上の界面活性剤及び/又はポリマー、(f)場合により、1種以上の還元剤、(g)場合により、1種以上の殺生物剤及び(h)水を含み、から本質的になり、又は、からなり、ここで、有機カルボン酸はジカルボン酸、アミノ酸、ヒドロキシ酸、アミノ-カルボキシ置換ピラジン化合物及びアミノ-カルボキシ置換トリアゾール化合物からなる群より選ばれ、そして研磨組成物はアルカリpHである。
【0011】
本発明の研磨組成物は、望ましくは、本発明の方法により基材を研磨したときに、高い除去速度を示す。例えば、本発明の実施形態によりシリコンウエハを研磨するときに、研磨組成物は、望ましくは、500Å/分以上、好ましくは700Å/分以上、そしてより好ましくは1000Å/分以上の除去速度を示す。
・・・(中略)・・・
【0020】
研磨組成物は任意の適切な量のシリカを含むことができる。濃縮された研磨組成物は20wt%以下のシリカ、例えば、15wt%以下、10wt%以下、8wt%以下、9wt%以下、8wt%以下、7wt%以下、6wt%以下、5wt%以下、4wt%以下、3wt%以下又は2wt%以下のシリカを含むことができる。希釈の後に、研磨組成物は、0.001wt%以上のシリカ、例えば、0.01wt%以上、0.1wt%以上、0.5wt%以上又は1wt%以上のシリカを含むことができる。このように、研磨組成物はシリカに関して記載した任意の2つの終端により規定される量でシリカを含むことができる。例えば、研磨組成物は0.001wt%~20wt%のシリカ、又は、0.001wt%~15wt%、0.001wt%~10wt%、0.001wt%~8wt%、0.001wt%~6wt%、0.001wt%~5wt%のシリカ、0.001wt%~2wt%、又は、0.05wt%~2wt%のシリカを含むことができる。好ましい実施形態において、研磨組成物は、使用時点で、0.2wt%~0.6wt%のシリカを含む。
・・・(中略)・・・
【0022】
本発明の研磨組成物はポリサッカリドとの組み合わせで速度向上剤を含む。驚くべきことに、ポリサッカリド、及び、場合により、ポリマー又は界面活性剤との組み合わせでの速度向上剤は高速除去性、低い粒子欠陥及び低い曇り性を示すケミカルメカニカル研磨組成物を提供することができる。
【0023】
速度向上剤は、望ましくは、1種以上の有機カルボン酸である。ある実施形態において、研磨組成物は(i)ジカルボン酸、(ii)アミノ酸、(iii)ヒドロキシ酸、(iv)カルボキシ置換ピラジン化合物及び(v)カルボキシ置換トリアゾール化合物からなる群より選ばれる1種以上の有機カルボン酸、その塩及び/又はその水和物を含む。いかなる特定の理論にも固執するつもりはないが、カルボン酸は、超配位化合物(例えば、五配位又は六配位ケイ素化合物)を形成することにより研磨粒子(例えば、シリカ)又は基材(例えば、シリコン)を活性化するものと考えられる。
・・・(中略)・・・
【0028】
適切なジカルボン酸の非限定的な例としては、マロン酸、メチルマロン酸、ジメチルマロン酸、ブチルマロン酸、マレイン酸、メソシュウ酸ナトリウム一水和物(sodium mesooxalate monohydrate)、酒石酸、リンゴ酸、シュウ酸及びそれらの混合物が挙げられる。
・・・(中略)・・・
【0049】
研磨組成物は少なくとも1種の塩基を含む。塩基は任意の適切な塩基であってよい。ある実施形態では、研磨組成物は、無機塩基、例えば、アルカリ金属塩(例えば、カリウム塩)である少なくとも1種の塩基を含む。通常、1種以上の塩基はアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩及びホウ酸塩からなる群より選ばれる。当該技術分野で知られているように、適切なアルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム及びフランシウムが挙げられる。
・・・(中略)・・・
【0052】
研磨組成物は研磨組成物のpHがアルカリ性になるように、任意の適切な量の塩基を含むことができる。特に、研磨組成物のpHは7よりも大きい。好ましい実施形態では、研磨用組成物のpHは、8~12(例えば、8~10、8~11、9~10、9~11又は9~12)であり、より好ましくはpHは9~11(例えば、9~10又は9.5)である。
・・・(中略)・・・
【0077】
研磨組成物は水を含む。水を用いて、研磨又は平坦化される適切な基材の表面に研磨組成物の他の成分を適用するのを容易にする。好ましくは、水は脱イオン水である。研磨組成物は任意の適切な技術により調製することができ、その多くは当業者に知られている。研磨組成物はバッチ又は連続プロセスで調製することができる。一般的には、研磨組成物は任意の順序でその成分を混合することにより調製できる。本明細書で使用する際に、用語「成分」は個々の要素(例えば、シリカ、有機カルボン酸、ポリサッカリド、任意成分の界面活性剤及び/又はポリマー、水など)ならびに2つ以上の要素(例えば、シリカ、有機カルボン酸、ポリサッカリド、任意成分の界面活性剤及び/又はポリマー、水など)の任意の組み合わせを包含する。
・・・(中略)・・・
【0082】
本発明の研磨組成物を使用していかなる基材も研磨することができるが、研磨組成物は、シリコンを含む基材、例えば、エレクトロニクス産業で使用されるシリコンウエハの研磨に特に有用である。この点で、シリコンは非ドープシリコンであっても、又は、ホウ素又はアルミニウムをドープしたp型シリコンであってもよい。さらに、シリコンは多結晶シリコンとすることができる。本発明の研磨組成物及びその使用方法はダイヤモンドソーイング及び粗研削することによりシリコン単結晶から製造されたままのシリコンウエハを最終研磨するのに適しており、また、シリコンウエハのエッジ研磨のために、研磨によるシリコンウエハの再利用に使用するために適している。
・・・(中略)・・・
【0089】
特記のない限り、例1~18での研磨条件は以下のとおりであった:37.9kPaの下方への力で、74rpmのテーブルの速度で、そして150~200mL/分の研磨組成物の流速で、20.3cmのp型にドープされたシリコンウエハとPlanar472ポリッシャーを用いた。研磨組成物のpHは水酸化カリウムで調整した。すべての研磨組成物は濃厚物として調製した。研磨のために、29部の水に対して1部の濃厚物の質量比を用いて濃厚物を希釈した。
【0090】
例全体をとおして以下の略語を使用する。除去速度(RR)、分子量(Mw)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、メチルヒドロキシエチルセルロース(MeHEC)、マロン酸(MA)、酒石酸(TA)、没食子酸(GA)、キサンタンガム(XG)、カラギーナン(C)、乳酸(LA)、ピペコリン酸(PA)、グリシン(Gly)、アスパラギン酸(Asp)、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール-5-カルボン酸(ATCA)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、アミノエチルピペラジン(AEP)、ジメチロールプロピオン酸(DMPA)、ピペラジン(P)、BORCHI(商標)ゲル(BG)及びCOGNIS DSX(商標)3000(DSX 3000)。
・・・(中略)・・・
【0092】
研磨組成物1A~1Fと特定される6つの異なる研磨組成物により、Fujimi Corporationから市販されているSURFIN(商標) 000パッドを用いて同一条件下でシリコン基材を研磨した。研磨組成物1A~1Fの各々は、(a)使用時点で0.2wt%のFuso PL2シリカ粒子、(b)表1に示す濃度の有機カルボン酸、TA又はMA、(c)表1に示す濃度のポリサッカリド、HEC(Mw=80,000g/モル)又はXG、(d)表1に示すとおりのpHを有する各研磨組成物を提供するのに十分な水酸化カリウム、及び、(e)水を含んだ。さらに、研磨組成物1Fは界面活性剤、すなわち、SURFYNOL(商標)104を含んだ。」
(イ)上記(ア)の段落0010、段落0020、段落0023、段落0049、段落0052、段落0082及び段落0092によれば、甲2には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲2発明>
「(a)シリカ、(b)1種以上の有機カルボン酸又はその塩、(c)ヒドロキシアルキルセルロース、カラギーナン及びキサンタンガムからなる群より選ばれる1種以上のポリサッカリド、(d)1種以上の塩基、及び(e)水を含み、有機カルボン酸はジカルボン酸、アミノ酸、ヒドロキシ酸、アミノ-カルボキシ置換ピラジン化合物及びアミノ-カルボキシ置換トリアゾール化合物からなる群より選ばれ、pHが8~12であり、ホウ素又はアルミニウムをドープしたp型の多結晶シリコンを含む基材の研磨に特に有用である、ケミカルメカニカル研磨組成物であって、
シリカは研磨粒子であり、
シリカとしてFuso PL2シリカ粒子を用い、
ケミカルメカニカル研磨組成物が含むシリカの量は0.2wt%~0.6wt%であり、
塩基は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、及びアルカリ金属重炭酸塩からなる群より選ばれ、アルカリ金属はカリウムである、
ケミカルメカニカル研磨組成物。」
ウ 甲4の記載
本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された甲4には、以下の記載がある。
「【0023】
(a)特定シリカ粒子としては、市販品も用いることができ、例えば、扶桑化学社製コロイダルシリカで、商品名:PL-2(一次粒子径:25nm,二次粒子径:50nm)、PL-2H(一次粒子径:25nm,二次粒子径:60nm)、PL-3L(一次粒子径:35nm,二次粒子径:50nm)、PL-3(一次粒子径:35nm,二次粒子径:70nm)、PL-3H(一次粒子径:35nm,二次粒子径:80nm)などが、本発明に規定される(a)特定シリカ粒子の粒径を有し、これらを本発明に適用できる。・・・(略)・・・」
エ 甲5の記載
本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された甲5には、以下の記載がある。
「【0085】
(参考例1)
コロイダルシリカの水分散液に、コロイダルシリカに対して5質量部となるようにポリビニルピロリドンを添加し、30分以上攪拌して参考例1の砥粒組成物を調製した。また、コロイダルシリカは一次平均粒径25nm、二次平均粒径50nmである扶桑化学製のPL2を用いた。また、ポリビニルピロリドンは日本触媒製のポリビニルピロリドンK30、質量平均分子量40000のものを用いた。」
(2)甲1発明を主引用発明とした新規性及び進歩性についての検討
ア 本件発明1について
(ア)対比
a 甲1発明の「ケイ素を含む基板、電子工業で用いられるシリコンウエハの研磨において有用である、化学機械研磨組成物であって」、「シリコンは、ホウ素もしくはアルミニウムでドープされたp型シリコンであり、多結晶シリコンである、化学機械研摩組成物」は、本件発明1の「不純物がドープされた多結晶シリコンを含む研磨対象物を研磨するために用いられる研磨用組成物」に相当する。
b 甲1発明の「湿式法シリカ研摩粒子」は、本件発明1の「砥粒」に相当する。
c 甲1発明の「水」は、本件発明1の「分散媒」に相当する。
d 甲1発明の「(c)0.002質量%~0.2質量%のカリウム塩」「を含むとともに」、「水酸化カリウムを含み」、「炭酸ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウム」を含み、「カリウム塩は、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、または炭酸水素カリウムおよび炭酸カリウムの混合物で」あることは、アルカリ金属の水酸化物、無機酸のアルカリ金属塩からなる群より選択される少なくとも1種のアルカリ化合物を含む点で、本件発明1の「アルカリ金属の水酸化物、無機酸のアルカリ金属塩、無機酸のアンモニウム塩、有機酸のアルカリ金属塩、有機酸のアンモニウム塩、およびアンモニアからなる群より選択される少なくとも1種のアルカリ化合物」を含むことに相当する。
e 甲1発明の「9~12のpHを有」することは、本件発明1の「pHが8以上である」ことに相当する。
f 甲1発明の「化学機械研磨組成物」は、「湿式法シリカ研摩粒子」、「水」、「カリウム塩」、「水酸化カリウム」並びに「炭酸ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウム」を含む点で、本件発明1の「研磨用組成物」と一致する。
g 本件発明1は「前記砥粒の平均二次粒子径は200nm超500nm以下で」あるのに対し、甲1発明は、「湿式法シリカ研磨粒子は、縮合重合シリカ粒子であるFuso PL-2であり、」上記(1)ウの甲4の記載及び同エの甲5の記載によれば、その平均二次粒子径は50nmであるから、そのような構成を有さない点で相違する。
h 本件発明1は「R1R2R3R4N+X-、R1R2R3R4P+X-、R1R2R3S+X-、イミダゾリウム塩、およびピリジニウム塩、ここで、R1、R2、R3、およびR4のそれぞれは独立してC1~C6アルキル、C7~C12アリールアルキル、またはC6~C10アリールであり、X-はアニオンである、をいずれも含ま」ないのに対し、甲1発明は「(b)R1R2R3R4N+X-、R1R2R3R4P+X-、R1R2R3S+X-、イミダゾリウム塩、およびピリジニウム塩からなる群から選ばれた、0.01質量%~0.5質量%の安定剤化合物(R1、R2、R3、およびR4のそれぞれは独立してC1~C6アルキル、C7~C12アリールアルキル、またはC6~C10アリールであり、X-はアニオンである)」を含む点で相違する。
i 本件発明1は「ヒドロキシアルキルセルロース、カラギーナン、およびキサンタンガムをいずれも含まない」のに対し、甲1発明はそのような特定がされていない点で相違する。
j 上記a~iより、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で一致し、相違する。
<一致点>
「不純物がドープされた多結晶シリコンを含む研磨対象物を研磨するために用いられる研磨用組成物であって、
砥粒と、
分散媒と、
アルカリ金属の水酸化物、無機酸のアルカリ金属塩、無機酸のアンモニウム塩、有機酸のアルカリ金属塩、有機酸のアンモニウム塩、およびアンモニアからなる群より選択される少なくとも1種のアルカリ化合物と、
を含み、pHが8以上である、
研磨用組成物。」
<相違点1>
本件発明1は「前記砥粒の平均二次粒子径は200nm超500nm以下で」あるのに対し、甲1発明はそのような構成を有さない点。
<相違点2>
本件発明1は「R1R2R3R4N+X-、R1R2R3R4P+X-、R1R2R3S+X-、イミダゾリウム塩、およびピリジニウム塩、ここで、R1、R2、R3、およびR4のそれぞれは独立してC1~C6アルキル、C7~C12アリールアルキル、またはC6~C10アリールであり、X-はアニオンである、をいずれも含ま」ないのに対し、甲1発明は「(b)R1R2R3R4N+X-、R1R2R3R4P+X-、R1R2R3S+X-、イミダゾリウム塩、およびピリジニウム塩からなる群から選ばれた、0.01質量%~0.5質量%の安定剤化合物(R1、R2、R3、およびR4のそれぞれは独立してC1~C6アルキル、C7~C12アリールアルキル、またはC6~C10アリールであり、X-はアニオンである)」を含む点。
<相違点3>
本件発明1は「ヒドロキシアルキルセルロース、カラギーナン、およびキサンタンガムをいずれも含まない」のに対し、甲1発明はヒドロキシアルキルセルロース、カラギーナン、およびキサンタンガムを含むか否か特定されていない点。
(イ)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点2から検討する。
a 相違点2に係る本件発明1の構成は、甲1発明が含む成分を含まないことであるから、相違点2は、実質的なものである。
b また、上記(1)ア(ア)によれば、甲1の段落0004には、「慣用のシリコン研磨組成物は、高濃度ではコロイド不安定性を示し、希釈時に研磨粒子の再分散において困難を引き起こす。」と記載され、研磨組成物のコロイド不安定性は、甲1における課題であるといえる。
c さらに、上記(1)ア(ア)によれば、甲1の段落0016には、「この研磨組成物は、安定剤化合物」「を含んでいる。この安定剤化合物は、研磨組成物中での、シリカ粒子のコロイド状安定性を向上させると信じられる。この安定剤化合物は、R1R2R3R4N+X-、R1R2R3R4P+X-、R1R2R3S+X-、イミダゾリウム塩、およびピリジニウム塩からなる群から選ばれ、ここでR1、R2、R3、およびR4のそれぞれは独立してC1~C6アルキル、C7~C12アリールアルキル、またはC6~C10アリールである。C1~C6アルキル、C7~C12アリールアルキル、またはC6~C10アリールは、更に1つもしくは2つ以上のヒドロキシル基で置換されていてもよい。」「アニオンX-は、いずれかの好適なアニオンであることができる。」と記載され、甲1発明において「R1R2R3R4N+X-、R1R2R3R4P+X-、R1R2R3S+X-、イミダゾリウム塩、およびピリジニウム塩、ここで、R1、R2、R3、およびR4のそれぞれは独立してC1~C6アルキル、C7~C12アリールアルキル、またはC6~C10アリールであり、X-はアニオンである」を含むことは、「研磨組成物中での、シリカ粒子のコロイド状安定性を向上させる」ためであるといえる。
d 上記b及びcによれば、研磨組成物中での、シリカ粒子のコロイド不安定性を抑制することは、甲1発明が解決すべき課題であるといえ、甲1発明から「R1R2R3R4N+X-、R1R2R3R4P+X-、R1R2R3S+X-、イミダゾリウム塩、およびピリジニウム塩、ここで、R1、R2、R3、およびR4のそれぞれは独立してC1~C6アルキル、C7~C12アリールアルキル、またはC6~C10アリールであり、X-はアニオンである」を除くことは、上記課題に反することになり、阻害要因を有する。
e したがって、甲1発明を、相違点2に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、他の甲号証の記載にかかわらず、当業者が容易になし得たことではない。
(ウ)本件発明1についてのまとめ
上記(イ)によれば、相違点1及び3について判断するまでもなく、本件発明1は、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。そのことは、他の甲号証の記載によっても左右されない。
イ 本件発明2~3、5~11について
本件特許の請求項2~3、5~11は請求項1を引用するものであり、本件発明2~3、5~11は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記アに示した本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2~3、5~11は、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。そのことは、他の甲号証の記載によっても左右されない。
(3)甲2発明を主引用発明とした新規性及び進歩性についての検討
ア 本件発明1について
(ア)対比
a 甲2発明の「ホウ素又はアルミニウムをドープしたp型の多結晶シリコンを含む基材の研磨に特に有用である、ケミカルメカニカル研磨組成物」は、不純物がドープされた多結晶シリコンを含む研磨対象物を研磨するために用いられる研磨用組成物である点で、本件発明1の「不純物がドープされた多結晶シリコンを含む研磨対象物を研磨するために用いられる研磨用組成物」に相当する。
b 甲2発明の「シリカ」は、研磨粒子であるから、本件発明1の「砥粒」に相当する。
c 甲2発明の「水」は、本件発明1の「分散媒」に相当する。
d 甲2発明の「1種以上の塩基」を含むこと、及び「塩基は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、及びアルカリ金属重炭酸塩からなる群より選ばれる」ことは、アルカリ金属の水酸化物、無機酸のアルカリ金属塩からなる群より選択される少なくとも1種のアルカリ化合物を含む点で、本件発明1の「アルカリ金属の水酸化物、無機酸のアルカリ金属塩、無機酸のアンモニウム塩、有機酸のアルカリ金属塩、有機酸のアンモニウム塩、およびアンモニアからなる群より選択される少なくとも1種のアルカリ化合物」を含むことに相当する。
e 甲2発明の「pHが8~12で」あることは、本件発明1の「pHが8以上である」ことに相当する。
f 甲2発明の「ケミカルメカニカル研磨組成物」は、「シリカ」、「水」、「塩基」を含む点で、本件発明1の「研磨用組成物」と一致する。
g 本件発明1は「前記砥粒の平均二次粒子径は200nm超500nm以下で」あるのに対し、甲2発明は、「シリカとしてFuso PL2シリカ粒子を用い、」上記(1)ウの甲4の記載及び同エの甲5の記載によれば、その平均二次粒子径は50nmであるから、そのような構成を有さない点で相違する。
h 本件発明1が「R1R2R3R4N+X-、R1R2R3R4P+X-、R1R2R3S+X-、イミダゾリウム塩、およびピリジニウム塩、ここで、R1、R2、R3、およびR4のそれぞれは独立してC1~C6アルキル、C7~C12アリールアルキル、またはC6~C10アリールであり、X-はアニオンである、をいずれも含ま」ないのに対し、甲2発明は、そのような特定がされていない点で相違する。
i 本件発明1が「ヒドロキシアルキルセルロース、カラギーナン、およびキサンタンガムをいずれも含まない」のに対し、甲2発明は、「ヒドロキシアルキルセルロース、カラギーナン及びキサンタンガムからなる群より選ばれる1種以上のポリサッカリド」を含む点で相違する。
j 上記a~iより、本件発明1と甲2発明とは、次の点で一致し、相違する。
<一致点>
「不純物がドープされた多結晶シリコンを含む研磨対象物を研磨するために用いられる研磨用組成物であって、
砥粒と、
分散媒と、
アルカリ金属の水酸化物、無機酸のアルカリ金属塩、無機酸のアンモニウム塩、有機酸のアルカリ金属塩、有機酸のアンモニウム塩、およびアンモニアからなる群より選択される少なくとも1種のアルカリ化合物と、
を含み、pHが8以上である、
研磨用組成物。」
<相違点4>
本件発明1は「前記砥粒の平均二次粒子径は200nm超500nm以下で」あるのに対し、甲2発明は、そのような構成を有さない点。
<相違点5>
本件発明1が「R1R2R3R4N+X-、R1R2R3R4P+X-、R1R2R3S+X-、イミダゾリウム塩、およびピリジニウム塩、ここで、R1、R2、R3、およびR4のそれぞれは独立してC1~C6アルキル、C7~C12アリールアルキル、またはC6~C10アリールであり、X-はアニオンである、をいずれも含ま」ないのに対し、甲2発明は、そのような特定がされていない点。
<相違点6>
本件発明1が「ヒドロキシアルキルセルロース、カラギーナン、およびキサンタンガムをいずれも含まない」のに対し、甲2発明は、「ヒドロキシアルキルセルロース、カラギーナン及びキサンタンガムからなる群より選ばれる1種以上のポリサッカリド」を含む点。
(イ)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点6から検討する。
a 相違点6に係る本件発明1の構成は、甲2発明が含む成分を含まないことであるから、相違点は、実質的なものである。
b また、上記(1)イ(ア)によれば、甲2の段落0004には、「高い除去速度、低い粒子欠陥性及び低い曇り性を示す、改良されたケミカルメカニカル研磨組成物が当該技術分野において必要とされている。」と記載され、高い除去速度、低い粒子欠陥性及び低い曇り性を示すケミカルメカニカル研磨組成物を提供することは、甲2における課題であるといえる。
c さらに、上記(1)イ(ア)によれば、甲2の段落0022には、「本発明の研磨組成物はポリサッカリドとの組み合わせで速度向上剤を含む。」「ポリサッカリド」「は高速除去性、低い粒子欠陥及び低い曇り性を示すケミカルメカニカル研磨組成物を提供することができる。」と記載され、甲2発明において「ヒドロキシアルキルセルロース、カラギーナン及びキサンタンガムからなる群より選ばれる1種以上のポリサッカリド」を含むことは、「高速除去性、低い粒子欠陥及び低い曇り性を示すケミカルメカニカル研磨組成物を提供する」ためであるといえる。
d 上記b及びcによれば、高速除去性、低い粒子欠陥及び低い曇り性を示すケミカルメカニカル研磨組成物を提供することは、甲2発明が解決すべき課題であるといえ、甲2発明から「ヒドロキシアルキルセルロース、カラギーナン及びキサンタンガムからなる群より選ばれる1種以上のポリサッカリド」を除くことは、上記課題に反することになり、阻害要因を有する。
e したがって、甲2発明を相違点6に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、他の甲号証の記載にかかわらず、当業者が容易になし得たことではない。
(ウ)本件発明1についてのまとめ
上記(イ)によれば、相違点4及び5について判断するまでもなく、本件発明1は、甲2発明ではなく、また、甲2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。そのことは、他の甲号証の記載によっても左右されない。
イ 本件発明2~3、5~7、9~11について
本件特許の請求項2~3、5~7、9~11は請求項1を引用するものであり、本件発明2~3、5~7、9~11は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記アに示した本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2~3、5~7、9~11は、甲2発明ではなく、また、甲2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。そのことは、他の甲号証の記載によっても左右されない。
(4)取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1~3、5~11に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではなく、また、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでもない。
2 取消理由3(サポート要件)について
本件訂正により、本件発明1は、「不純物がドープされた非晶質シリコン」「を含む研磨対象物を研磨するために用いられる」ものを含まず、「不純物がドープされた多結晶シリコンを含む研磨対象物を研磨するために用いられる」ものとなった。
したがって、本件明細書等の発明の詳細な説明に実施例として記載された、不純物がドープされた多結晶シリコンを含む研磨対象物を研磨するために用いられる研磨用組成物を、本件発明1の範囲にまで拡張ないし一般化することはできないという取消理由は解消した。
よって、本件特許の請求項1に係る特許と、同項を引用する請求項2、3、5~11に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定するサポート要件を満たさない特許出願に対してされたものであるということはできない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕について訂正することを認める。
そして、当審において通知した取消理由によっては、特許7250530号の請求項1~3、5~11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に特許7250530号の請求項1~3、5~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件訂正前の請求項4は、上記のとおり削除されたから、申立人による請求項4に係る特許異議の申立てはその対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する特許法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701039