特許異議申立
2024-700001
プラスチック製フィルム又はシート用活性エネルギー線硬化型接着剤組成物、積層体及び偏光板
- 審判番号
- 2024-700001
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-506664
- 登録番号
- 7331832
- 請求日
- 2024年01月04日
- 審決日
- 2025年01月29日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】東亞合成株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人太陽国際特許事務所
- 【異議申立人】渡辺 伸子
- 審判長/審判官
- 審判長 関根 裕
- 審判官 長谷川 真一
- 審判官 村守 宏文
- 分類
- P1652.113-YAA(C09J) / P1652.121-YAA(C09J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7331832号発明「プラスチック製フィルム又はシート用活性エネルギー線硬化型接着剤組成物、積層体及び偏光板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7331832号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~14〕について訂正することを認める。
特許第7331832号の請求項1~7、9~14に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7331832号の請求項1~14に係る特許についての出願は、2019年(平成31年)3月15日(パリ条約による優先権主張2018年3月15日(以下「本件優先日」という。) 日本国(JP))を国際出願日とする出願であって、令和5年8月15日に特許権の設定登録がされ、同年同月23日に特許掲載公報が発行された。その後、令和6年1月4日に特許異議申立人である渡辺 伸子(以下「申立人」という。)により、請求項1~7、9~14に係る特許について特許異議の申立てがされ、当審から令和6年4月18日付けで取消理由を被請求人に通知したところ(発送は、同年同月24日)、同年6月20日に特許権者から訂正の請求(以下この請求を「本件訂正請求」といい、この請求による訂正を「本件訂正」という。)がされると同時に意見書が提出され、当審から同年7月2日付けで手続補正指令を被請求人に通知したところ、同年同月22日に被請求人から当該訂正請求書を補正する手続補正書が提出され、同年8月6日付けで当審から申立人に訂正請求があった旨の通知をした。
なお、当該通知に対して、申立人からの応答はなかった。
第2 本件訂正についての判断
1 請求の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、令和6年7月22日に提出された手続補正書により補正された訂正請求書によると、「特許第7331832号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、請求項1~14について訂正することを求める。」というものである。
2 訂正事項
本件訂正は次の訂正事項からなる。下線は、訂正箇所であり、当審が付した。
請求項1の特許請求の範囲に「(B)成分:ウレタン(メタ)アクリレート」と記載されているのを、「(B)成分:ポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリレート又はポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレート」に訂正する。請求項1を引用する請求項2~14も同様に訂正する。
3 訂正要件についての判断
(1)一群の請求項
本件訂正前の請求項1~14のうち、請求項2~14は、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項であるから、本件訂正前の請求項1~14は、特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
(2)訂正の目的
上記訂正事項は、(B)成分である「ウレタン(メタ)アクリレート」を、「ポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリレート又はポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレート」に限定したものであるから、上記訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(3)実質上の拡張・変更の有無
上記訂正事項は、上記(2)に記載のとおり、「ウレタン(メタ)アクリレート」を下位概念のものに限定したものであるから、特許請求の範囲を実質的に拡張・変更するものではない。
したがって、上記訂正事項は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(4)新規事項の追加の有無
上記訂正事項は、本件特許の明細書の段落【0031】の「(B-1)成分の好ましい態様としては、接着力向上の点で、分子内に(メタ)アクリロイル基を2個有するウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。又、さらに接着力を向上させうる点で、原料ポリオールとしてポリエステルポリオールを用いたポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレート、原料ポリオールとしてポリカーボネートポリオールを用いたポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリレートが好ましく、ポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリレートがさらに好ましい。」(下線は、当審が付した。)との記載に基づいて、「ウレタン(メタ)アクリレート」を、「ポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリレート又はポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレート」に限定したものである。
したがって、上記訂正事項は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正に該当し、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(5)独立特許要件
本件訂正前の請求項1~7、9~14は、特許異議の申立てがされた請求項であるから、これらの請求項に対する訂正事項については、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項のいわゆる独立特許要件は課されない。
一方、本件訂正前の請求項8は、特許異議の申立てがされていない請求項であって、かつ、上記(2)のとおり、当該請求項に係る訂正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を含むものであるので、独立特許要件についての検討を要する。
そこで、本件訂正後の請求項8に係る発明の独立特許要件について検討すると、本件訂正後の請求項8に係る発明が引用する本件訂正後の請求項1に係る発明(下記第3の「本件発明1」)は、下記第6で述べるように取消理由及び申立理由により特許を受けることができないものでなく、また、他に特許を受けることができないとすべき理由は見当たらない。
したがって、本件訂正後の請求項8に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから、特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条7項の規定に適合するものである。
4 小括
上記3において検討した訂正要件についての判断をまとめると、上記訂正事項の訂正は、訂正要件を満たすものであるから、本件訂正は適法なものである。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~14〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められたから、本件特許の請求項1~14のうち、特許異議の申立ての対象である本件特許の請求項1~7、9~14に係る発明(以下、請求項番号にしたがって「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」ということもある。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
硬化性成分及び重合開始剤から少なくとも構成され、当該硬化性成分が下記(A)~(C)成分から少なくとも構成され、当該重合開始剤が下記(D)及び(E)成分から少なくとも構成され、
(A)成分:分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物
(B)成分:ポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリレート又はポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレート
(C)成分:分子内に水酸基及びエチレン性不飽和基をそれぞれ1個以上有する化合物
(D)成分:光カチオン重合開始剤
(E)成分:光ラジカル重合開始剤
硬化性成分全量100質量%中に、前記(A)~(C)成分を下記割合で含有し、
(A)成分:15~80質量%
(B)成分:5~30質量%
(C)成分:5~55質量%
硬化性成分全量100質量部に対して前記(D)及び(E)成分を下記割合で含有する、プラスチック製フィルム又はシート用活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
(D)成分:0.1~10質量部
(E)成分:0.1~15質量部
【請求項2】
前記(B)成分が、重量平均分子量が1,000~50,000であるウレタン(メタ)アクリレートを含有する、請求項1に記載のプラスチック製フィルム又はシート用活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
【請求項3】
前記(B)成分が、分子内に(メタ)アクリロイル基を2個有するウレタン(メタ)アクリレートを含有する、請求項1又は請求項2に記載のプラスチック製フィルム又はシート用活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
【請求項4】
前記(C)成分が、分子内に水酸基及びエチレン性不飽和基をそれぞれ1個有する化合物を含有する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のプラスチック製フィルム又はシート用活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
【請求項5】
前記(C)成分が、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及び2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1つの化合物を含有する、請求項4に記載のプラスチック製フィルム又はシート用活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
【請求項6】
前記(D)成分が、ジアリールヨードニウム塩を含有する、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のプラスチック製フィルム又はシート用活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
【請求項7】
さらに、硬化性成分として、(G)成分:(B)及び(C)成分以外の(メタ)アクリロイル基含有化合物を含む、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のプラスチック製フィルム又はシート用活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
・・・
【請求項9】
さらに、紫外線吸収剤を含有する、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載のプラスチック製フィルム又はシート用活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
【請求項10】
前記プラスチック製フィルム又はシートが、親水性プラスチック製フィルム又はシートであって、偏光板製造用として用いられる、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載のプラスチック製フィルム又はシート用活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
【請求項11】
前記親水性プラスチック製フィルム又はシートが、ポリビニルアルコール系偏光子フィルム又はシートであって、偏光板製造用として用いられる、請求項10に記載のプラスチック製フィルム又はシート用活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物から形成される硬化物層の両面に基材を配置してなる積層体であって、基材の少なくとも一方がプラスチック製フィルム又はシートである積層体。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物から形成される硬化物層の両面に基材を配置してなる偏光板であって、基材の一方がポリビニルアルコール系偏光子フィルム又はシートであり、基材のもう一方がプラスチック製フィルム又はシートである偏光板。
【請求項14】
少なくとも一方がプラスチック製フィルム又はシートである2つの基材を、請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の組成物を用いて貼着し、これに活性エネルギー線を照射する、積層体の製造方法。」
第4 特許異議申立ての理由等の概要及び証拠方法について
1 申立人は、特許異議の申立てにおいて、下記4の甲第1号証及び甲第2号証(以下「甲1」及び「甲2」ともいう。)を提出し、下記2(1)及び(2)の甲1又は甲2に基づく新規性欠如及び進歩性欠如(以下「申立理由1」、「申立理由2」ともいう。)を主張した。
2 特許異議申立て理由等の概要
(1)申立理由1(甲1に基づく新規性及び進歩性欠如)
ア 新規性欠如
本件発明1~4、7、10~14は、本件優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号の発明に該当するから、本件発明1~4、7、10~14に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
イ 進歩性欠如
本件発明1~7、9~14は、本件優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1~7、9~14に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(甲2に基づく新規性及び進歩性欠如)
ア 新規性欠如
本件発明1、4~7、10~14は、本件優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号の発明に該当するから、本件発明1、4~7、10~14に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
イ 進歩性欠如
本件発明1~7、9~14は、本件優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲2に記載された発明及び甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1~7、9~14に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
3 当審が通知した取消理由の概要
当審は、令和6年4月18日付けの取消理由通知において、前記2(1)の甲1に基づく新規性欠如及び進歩性欠如に係る理由を採用した。
4 証拠方法の一覧
甲第1号証:特開2015-40278号公報
甲第2号証:特表2013-543524号公報
第5 甲号証の記載
1 甲1の記載
甲1には、次の記載がある。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
α,β-エチレン性不飽和二重結合基含有化合物(M)と、カチオン重合性化合物(B)と、ホウ酸及び/又はホウ酸誘導体(N)とを必須成分とする活性エネルギー線重合性樹脂組成物。
【請求項2】
活性エネルギー線重合組成物100重量部中
α,β-エチレン性不飽和二重結合基含有化合物(M)9重量部~99重量部と、
カチオン重合性化合物(B) 0.5重量部~90重量部と、
ホウ酸及び/又はホウ酸誘導体(N)0.1重量部~10重量部とを含有することを特徴とする請求項1記載の活性エネルギー線重合性樹脂組成物。
【請求項3】
α,β-エチレン性不飽和二重結合基含有化合物(M)が、水酸基を有するα,β-エチレン性不飽和二重結合基含有化合物(X)を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の活性エネルギー線重合性樹脂組成物。
・・・
【請求項5】
カチオン重合性化合物(B)が、オキシラン化合物(b1)を含むことを特徴とする請求項1~4いずれか記載の活性エネルギー線重合性樹脂組成物。
・・・
【請求項7】
さらに活性エネルギー線重合開始剤(E)を含有してなる請求項1~6いずれか記載の活性エネルギー線重合性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7いずれか記載の活性エネルギー線重合性樹脂組成物からなる層を、基材(F)の片面、又は両面に積層してなることを特徴とする積層体。
【請求項9】
基材(F)が、ポリアセチルセルロース系フィルム,ポリノルボルネン系フィルム,ポリプロピレン系フィルム,ポリアクリル系フィルム,ポリカーボネート系フィルム,ポリエステル系フィルム,ポリビニルアルコール系フィルム又はポリイミド系フィルムであることを特徴とする請求項8記載の積層体。
【請求項10】
請求項8又は9記載の積層体を用いてなる光学素子用積層体。」
「【0008】
具体的な例を挙げる。液晶表示関連分野などに用いられる偏光子は、通常ポリビニルアルコール(PVA)にヨウ素や染料を吸着させたものを一軸延伸して製造されるが、このポリビニルアルコール系偏光子は、熱や水分により収縮し、偏光性能の低下をきたす。そこで、PVA系偏光子の表面に保護フィルムを貼合せたものが偏光板として用いられる。偏光子に保護フィルムを貼着するための接着剤としては、従来からポリビニルアルコール系樹脂の水溶液(PVA系接着剤)が広く使用されている(特許文献1、2参照)。しかし水性接着剤は塗工後に乾燥工程が必要であり、PVA系偏光子の耐熱性が低いため低温で長時間の乾燥が必要になり生産効率が悪い。上記のような理由から、水系接着剤の代わりに、カチオン重合性紫外線硬化型接着剤を使用することが提案されている(特許文献3参照)。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、新規な活性エネルギー線重合性及びそれを用い従来に比して打抜き加工性及び熱や湿度に対する耐久性に優れた積層体、特に薄膜基材を貼り合わせても外観不良の発生が少ない接着剤及び積層体、光学素子用積層体を提供することを目的とする。」
「【0027】
化合物(M)として、具体的には水酸基含有α,β-エチレン性不飽和二重結合基含有化合物(X)、2個以上のシクロアルカン骨格及び/又はシクロアルケン骨格を有する含有α,β-エチレン性不飽和二重結合基含化合物(C)からなる群より選ばれた1種以上の化合物が含まれることが好ましい。
【0028】
水酸基含有α,β-エチレン性不飽和二重結合基含有化合物(X)(以下化合物(X)と称す)について説明する。化合物(X)はホウ酸及び/又はホウ酸誘導体と結合を生じて、活性エネルギー線で硬化後は架橋した塗膜を形成する。また、基材(F)の表面官能基とホウ酸及び/又はホウ酸誘導体を介して結合を形成し接着性を良くする効果がある。
【0029】
化合物(X)としては、その構造中に水酸基を有するものであれば特に制限はなく、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸1-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、(メタ)アクリル酸エチル-α-(ヒドロキシメチル)、単官能(メタ)アクリル酸等の脂肪酸エステル系(メタ)アクリル酸エステル、あるいは、前記水酸基含有α,β-エチレン性不飽和二重結合基含有化合物に対してε-カプロラクトンラクトンの開環付加により末端に水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルや、前記水酸基含有α,β-エチレン性不飽和二重結合基含有化合物に対してエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを繰り返し付加したアルキレンオキサイド付加(メタ)アクリル酸エステル等の水酸基含有の脂肪族(メタ)アクリル酸エステル類;
【0030】
例えば、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシオクチルビニルエーテル、ヒドロキシデシルビニルエーテル、ヒドロキシドデシルビニルエーテル、ヒドロキシオクタデシルビニルエーテル、グリセリルビニルエーテル、あるいはエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの繰り返し付加した末端に水酸基を有するアルキレンオキサイド付加系ビニルエーテル等の水酸基含有の脂肪族ビニルエーテル類;
【0031】
例えば、(メタ)アリルアルコール、イソプロペニルアルコール、ジメチル(メタ)アリルアルコール、ヒドロキシエチル(メタ)アリルエーテル、ヒドロキシプロピル(メタ)アリルエーテル、ヒドロキシブチル(メタ)アリルエーテル、ヒドロキシヘキシル(メタ)アリルエーテル、ヒドロキシオクチル(メタ)アリルエーテル、ヒドロキシデシル(メタ)アリルエーテル、ヒドロキシドデシル(メタ)アリルエーテル、ヒドロキシオクタデシル(メタ)アリルエーテル、グリセリル(メタ)アリルエーテル、あるいはエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの繰り返し付加した末端に水酸基を有するアルキレンオキサイド付加系(メタ)アリルエーテル等の水酸基含有の脂肪族(メタ)アリルアルコール類ないしは(メタ)アリルエーテル類;
【0032】
例えば、プロペンジオール、ブテンジオール、ヘプテンジオール、オクテンジオール、ジ(メタ)アクリル酸グルセロール等の複数の水酸基を有するα,β-エチレン性不飽和二重結合基含有化合物類;
例えば、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド〔N-ヒドロキシエチルアクリルアミドとN-ヒドロキシエチルメタクリルアミドとを併せて「N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド」と表記する。以下同様。〕、N-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリルアミド等の水酸基含有の(メタ)アクリルアミド類;
【0033】
例えば、ビニルアルコール等の水酸基とエテニル基を有する単量体類等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらは、1種だけを用いてもよいし、あるいは、複数種を併用してもよい。
化合物(X)としては、基材との密着性の面より、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリル酸エステル、ε-カプロラクトン1~2mol付加(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル等の炭素数2~18であるα,β-エチレン性不飽和二重結合基含有化合物が特に好ましい。
【0034】
2個以上のシクロアルカン骨格及び/又はシクロアルケン骨格を有するα,β-エチレン性不飽和二重結合基含化合物(C)(以下化合物(C)と称す)について説明する。化合物(C)としては、2個以上のシクロアルカン骨格及び/又はシクロアルケン骨格と、1個以上のα,β-エチレン性不飽和二重結合を有する化合物である。化合物(C)としては、2個以上のシクロアルケン骨格及び/又はシクロアルケン骨格は環構造と環構造がアルキル基やエーテル基、エステル基などにより離れている化合物(c1)、及びノルボルナンやノルボルネン骨格を有する化合物(c2)、アダマンタン構造を有する化合物(c3)のようにシクロ環の橋かけ構造を有する化合物が挙げられるが、耐熱性に優れることよりノルボルナンやノルボルネン(c2)、アダマンタン骨格を有する化合物(c3)が化合物(c1)よりも好ましい。
・・・
【0038】
本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物に含まれるα,β-エチレン性不飽和二重結合基含有化合物(M)について、前記した化合物(X)、化合物(C)以外に、その他のα,β-エチレン性不飽和二重結合基含有化合物(m)(以下化合物(m)と称す)を必要に応じ使用することに制限はない。
・・・
【0063】
さらに重量平均分子量300~30,000のオリゴマー(D)(以下オリゴマー(D)と称す)も用いることができる。オリゴマー(D)は、上記化合物(X)、(C)及び化合物(m)を含まない。オリゴマー(D)は、ポリエステル系オリゴマー(d1)及び/又はポリウレタン系オリゴマー(d2)、及びポリエポキシ系オリゴマー(d3)よりなる群から選ばれた少なくとも1種類以上のオリゴマーが好ましく、特に制限が無く使用できる。
・・・
【0076】
ポリウレタン系オリゴマー(d2)は、少なくとも1個以上のイソシアネート基を有する化合物と前記化合物(X)を反応させて得られる化合物、あるいは少なくとも1個のイソシアネート基を有する化合物と上述の多価アルコールとを反応させて得られる末端イソシアネート基のウレタンプレポリマーと前記化合物(X)を反応させて得られる化合物、あるいは少なくとも1個のイソシアネート基を有する化合物と多価アルコールとを反応させて得られる末端イソシアネート基のウレタンプレポリマーと、更に少なくとも1個以上のアミノ基を有する化合物とを反応させて得られる末端イソシアネート基のウレタンプレポリマーと前記化合物(X)とを反応させて得られる化合物である。また、イソシアネート基とアミノ基とを反応させて得られるウレア結合基を含有したものもポリウレタン系オリゴマー(d2)に含む。」
「【0088】
カチオン重合性化合物(B)について説明する。
カチオン重合性化合物(B)はカチオンにより重合する化合物を全て含んでいる。カチオン重合性化合物(B)としては活性エネルギー線による反応性の観点から、環状ヘテロ化合物やビニルエーテル化合物が好ましく、3員環エーテルであるオキシラン化合物(b1)が特に好ましい。
・・・
【0100】
芳香環を有するオキシラン化合物(b1)としては耐熱性と接着力に優れるビスフェノールAのグリシジルエーテル、ビスフェノールFのグリシジルエーテルや化合物1が特に好ましい。〔化合物1〕
【化1】
[図:0001423452000001.jpg]
」
「【0108】
本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物に含まれるホウ酸及びホウ酸誘導体について説明する。ホウ酸及びホウ酸誘導体は、水酸基含有α,β-エチレン性不飽和二重結合基含有化合物(X)やカチオン重合性化合物(B)と相互作用して水や有機溶剤を含まずとも安定で均一な活性エネルギー線重合性樹脂組成物の液を形成できることを可能とし、当該接着剤を活性エネルギー線で硬化後は、化合物(X)及び/又はカチオン重合性化合物(B)が重合して生成する水酸基と結合した塗膜を形成する。また、後述の基材(F)の表面官能基と結合を形成して密着性を良くする効果がある。このような効果をもたらすものとして、ホウ酸はもとより、下記に説明するホウ酸誘導体も単独又はホウ酸と混合して使用可能である。」
「【0116】
ラジカル重合開始剤(e1)としては、公知のものから任意に選択し使用できるが、その具体例としては、例えば、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、キサントフルオレノン、ベンズアルデヒド、アントラキノン、3-メチルアセトフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4‘-ジアミノベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、4-オキサントン、カンファーキノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン等が挙げられる。市販品としては、例えば、イルガキュアー184,907,651,1700,1800,819,369,261、DAROCUR-TPO(BASF社製 2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド)、ダロキュア-1173(メルク社製)、エザキュアーKIP150、TZT(日本シイベルヘグナー社製)、カヤキュアBMS、カヤキュアDMBI(日本化薬社製)等が挙げられる。」
「【0119】
カチオン重合開始剤(e2)としては、UVACURE1590(ダイセル・サイテック製)、CPI-110P(サンアプロ製)、などのスルホニウム塩系カチオン開始剤、IRGACURE250(BASF製)、WPI-113(和光純薬製)、Rp-2074(ローディア・ジャパン製)等のヨードニウム塩系カチオン開始剤が挙げられる。」
「【0124】
本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で有れば、前記したような成分の他に添加剤を適宜配合することが可能である。例えば、重合硬化収縮率低減、熱膨張率低減、寸法安定性向上、弾性率向上、粘度調整、熱伝導率向上、強度向上、靭性向上、着色向上等の観点から有機又は無機の充填剤を配合できる。このような充填剤としては、ポリマー、セラミックス、金属、金属酸化物、金属塩、染顔料等を用いることができ、形状については粒子状、繊維状等特に限定されない。なお、上記ポリマーの配合に当っては、柔軟性付与剤、可塑剤、難燃化剤、保存安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、チクソトロピー付与剤、分散安定剤、流動性付与剤、消泡剤等、充填剤としてではなくポリマーブレンド、ポリマーアロイとして、活性エネルギー線重合性樹脂組成物中に溶解、半溶解又はミクロ分散させることも可能である。」
「【0145】
以下、光学素子用積層体の一例として偏光フィルムを挙げ、上記積層体の実施形態について、より具体的に説明する。偏光フィルムは、偏光板とも呼ばれ、ポリビニルアルコール系偏光子の両面を2枚のポリアセチルセルロース系フィルムであるポリトリアセチルセルロース系保護フィルム(以下、「TACフィルム」という)や、ポリビニルアルコール系偏光子の片面や両面をポリノルボルネン系フィルムであるポリシクロオレフィ系フィルム、ポリアクリル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリエステル系フィルム等接着剤を介して積層した多層構造のシート状の光学素子用積層体であり、当該接着剤として本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物が好適に使用できる。」
「【0152】
[実施例1~18、比較例1~3]
酸素濃度が10%以下に置換された遮光された300mlのマヨネーズ瓶に、表1に示す比率(重量部)で仕込み、ディスパーにて十分に攪拌を行い、十分に脱泡を行った後、活性エネルギー線重合性樹脂組成物をそれぞれ得た。この活性エネルギー線重合性樹脂組成物をそれぞれ、以下の手法によって積層体を作成し評価した。評価結果も表1及び2に示した。
【0153】
なお、表中の略称は以下の通りである。
4HBA:アクリル酸4-ヒドロキシブチル
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
CHDMMA:シクロヘキサンジメタノールモノメタクリレート
DCPA:ジシクロペンタニルアクリレート
IBXA:イソボニルアクリレート
FA-511AS:ジシクロペンテニルアクリレート(日立化成社製 ファンクリル511AS)
nBA:n-ブチルアクリレート
NPDA:ネオペンチルグリコールジアクリレート
PET3A:ペンタエリスリトールトリアクリレート
INATA:イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート(東亞合成化学社製:アロニックスM-315)
オリゴマー1:合成例1で得られたポリウレタンアクリレート Mw=4000
化合物1:
【化1】
[図:0001423452000002.jpg]
JER806:ビスフェノールFジグリシジルエーテル(三菱化学社製)
CEL2021P:3,4-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート (ダイセル社製 セロキサイド2021P)
OXT-121:キシリレンビスオキセタン(東亞合成社製 アロンオキセタンOXT-121)
EC:エチレンカーボネート
CPI-110P:サンアプロ社製 トリアリールスルホニウム塩タイプの光酸発生剤
IRG250:4-イソブチルフェニル(4-メチルフェニル)ヨードニウム・ヘキサフルオロホスファート(BASF社製 イルガキュア250)
TPO:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(BASF社製 ルシチンTPO)
DETX-S:日本化薬社製 チオキサントン系増感剤
【0154】
<オリゴマーの合成例1(オリゴマー1)>
撹拌機、還流冷却管、ガス導入管、温度計、滴下ロ-トを備えた5口セパラブルフラスコに、ポリテトラメチレングリコール(保土ヶ谷化学株式会社製:PTG850、水酸基価127.1mgKOH/g)を81.6部、イソホロンジイソシアネートを41.4部仕込み乾燥空気を導入しながら60℃に昇温した。ここへジブチル錫ジラウレートを0.05部添加し、1時間反応させた。別途、滴下ロートに4-ヒドロキシブチルアクリレートを27.0部、ハイドロキノンモノメチルエーテルを0.15部仕込み、1時間かけてセパラブルフラスコへ滴下した。滴下終了後、3時間80℃で攪拌を続けた後、赤外線吸収スペクトルにてイソシアナト基の吸収ピークがないことを確認し反応を終了しオリゴマー2(当審では、「オリゴマー2」は、「オリゴマー1」の誤記と解釈した。)を得た。生成物の重量平均分子量は4000であった。」
「【0156】
表1の比率で配合した活性エネルギー線重合性樹脂組成物を用い、それぞれ以下の方法で積層体を作成した。
【0157】
<積層体Aの製造例>
透明フィルム(1)として、富士フィルム社製の紫外線吸収剤含有ポリトリアセチルセルロース系フィルム:商品名「フジタック:80μm」を用い、透明フィルム(2)として、富士フィルムビジネスサプライ社製の紫外線吸収剤を含有しないポリトリアセチルセルロース系フィルム:商品名「TAC50μ」(厚み50μm)を使用し、それぞれその表面に300W・min/m2の放電量でコロナ処理を行い、表面処理後1時間以内に、表1に示す活性エネルギー線重合性樹脂組成物をワイヤーバーコーターを用いて膜厚4μmとなるように塗工し、活性エネルギー線重合性樹脂層を形成し、前記活性エネルギー線重合性樹脂層との間に上記のポリビニルアルコール系偏光子を挟み、透明フィルム(1)/樹脂層/PVA系偏光子/樹脂層/透明フィルム(2)からなる積層体を得た。透明フィルム(1)がブリキ板に接するように、この積層体の四方をセロハンテープで固定し、ブリキ板に固定した。
【0158】
<積層体Bの製造例>
透明フィルム(1)として、富士フィルム社製の紫外線吸収剤含有ポリトリアセチルセルロース系フィルム:商品名「フジタック:40μm」を用い、透明フィルム(2)として、日本ゼオン社製の紫外線吸収剤を含有しないポリシクロオレフィン系フィルム(厚み23μm)を使用し、それぞれその表面に300W・min/m2の放電量でコロナ処理を行い、表面処理後1時間以内に、表1に示す活性エネルギー線重合性樹脂組成物をワイヤーバーコーターを用いて膜厚4μmとなるように塗工し、活性エネルギー線重合性樹脂層を形成し、前記活性エネルギー線重合性樹脂層との間に上記のポリビニルアルコール系偏光子を挟み、透明フィルム(1)/樹脂層/PVA系偏光子/樹脂層/透明フィルム(2)からなる積層体を得た。透明フィルム(1)がブリキ板に接するように、この積層体の四方をセロハンテープで固定し、ブリキ板に固定した。
【0159】
活性エネルギー線照射装置(東芝社製 高圧水銀灯)で最大照度300mW/cm2、積算光量300mJ/cm2の紫外線を透明フィルム(2)側から照射して、積層体A(偏光板)を作成した。
【0160】
<積層体Cの製造例>
厚み50μmのポリエチレンテレフタレート(以下PETと略す)フィルム上に、表1及び表2の活性エネルギー線重合性樹脂組成物をバーコーターにより8μmの厚みに塗布した。これに厚さ50μmのPETフィルムをニップロールにより貼りあわせた後、活性エネルギー線照射装置(東芝社製 高圧水銀灯)で最大照度300mW/cm2、積算光量300mJ/cm2の紫外線を片側から照射して積層体Bを得た。
得られた積層体Aについて、剥離強度、打ち抜き加工性、耐熱性及び耐湿熱性、積層体外観を、積層体Bについて、積層体外観を以下の方法に従って求めた。また、積層体Cにおいて、耐湿熱試験後の透過率、着色を以下の方法に従って確認した。結果を同様に表1に示した。」
「【0167】
【表1】
[図:0001423452000003.jpg]
」
2 甲2の記載
甲2には、次の記載がある。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性基を有する1種以上のアクリル系モノマー、ラジカル重合開始剤、エポキシ樹脂及びカチオン性光重合開始剤を含む接着剤組成物。
【請求項2】
前記親水性基を有する1種以上のアクリル系モノマー20~80重量部、前記ラジカル重合開始剤0.5~10重量部、前記エポキシ樹脂30~80重量部及び前記カチオン性光重合開始剤1~10重量部を含む請求項1に記載の接着剤組成物。
・・・
【請求項16】
前記接着剤組成物は、25℃で10cP~30cPの粘度を有する請求項1から15の何れか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項17】
前記接着剤組成物は、ウレタンアクリレートを0超過4以下の重量部でさらに含む請求項1から16の何れか1項に記載の接着剤組成物。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光子と保護フィルムまたは補償フィルムを付着させるための偏光板用非水系接着剤組成物及びこれを利用し付着することで製造された偏光板に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、本発明の一側面は、接着剤の低粘度を保持しながら、接着力、耐水性及び熱衝撃特性に優れた低粘度偏光板用接着剤を提供することである。
・・・
【発明の効果】
【0031】
本発明の偏光板用接着剤組成物を利用すると、低粘度を保持しながら、接着力及び耐水性などの光学物性に優れ、特に、熱衝撃物性が向上した偏光板用接着剤組成物及びこれを利用して付着した偏光板を製造することができる。」
「【0047】
本発明は、光硬化型接着剤組成物に該当するもので、このような光硬化型接着剤は、溶剤が添加されない場合には固形分が100%であることにより、最終接着層の厚さが水系接着剤より、非常に厚くなる。従って、粘度を最小化して接着層の厚さを減少させることが好ましく、本発明による上記偏光板用接着剤組成物は、25℃で10~30cPの粘度を有することが好ましく、20cP内外の粘度を有することがより好ましい。
・・・
【0051】
上記偏光板用接着剤組成物は、必要に応じて、光増感剤、酸化防止剤、オリゴマー及び付着増進剤をさらに含んでもよく、ウレタンアクリレートを0超過4以下重量部さらに含むことが好ましい。上記のように、ウレタンアクリレートが追加される場合、粘度が上昇する傾向があるが、温度を加えて接着剤の上昇した粘度を下げることができる。
【0052】
上記のようにウレタンアクリレートが追加される本発明の偏光板用接着剤組成物は、アクリル系フィルムに対する使用において、より適切な接着力を付与することができる。」
「【0064】
<実施例>
製造例1:偏光子保護フィルムの製造
【0065】
(1)アクリル系高分子フィルム
ポリ(N-シクロヘキシルマレイミド-co-メチルメタクリレート)、スチレン-無水マレイン酸共重合体樹脂及びフェノキシ系樹脂を100:2.5:5の重量比で均一に混合した樹脂組成物を、原料ホッパー(hopper)から圧出器までを窒素置換した24φの圧出器に供給し、250℃で溶融して原料ペレット(pellet)を製造した。
【0066】
フェノキシ系樹脂はInChemRez(登録商標)社のPKFE(Mw=60,000、Mn=16,000、Tg=95℃)を使用し、スチレン-無水マレイン酸共重合体樹脂はスチレン85重量%、無水マレイン酸15重量%であるDylaeck 332を使用し、ポリ(N-シクロヘキシルマレイミド-co-メチルメタクリレート)樹脂はNMR分析の結果、N-シクロヘキシルマレイミドの含量が6.5重量%であった。
【0067】
得られた原料ペレットを真空乾燥し、260℃にて圧出器で溶融、コートハンガー型Tダイ(T-die)に通過させ、クロムメッキキャスティングロール及び乾燥ロールなどを経て厚さ150μmのフィルムを製造した。該フィルムをパイロット延伸装備を用い、125℃でMD方向にロールの速度差を利用して下記表1に記載された比率で延伸した後、125℃でTD方向にテンダーを利用して下記表1に記載された比率で延伸することでフィルムを製造した。上記フィルムの面内位相差値及び厚さ方向の位相差値を下記表1に示した。
【0068】
【表1】
[図:0001423452000004.jpg]
【0069】
(2)TAC系高分子フィルム
TAC系高分子フィルムとして、V TAC(富士社)、N TAC(コニカ社)及びUZ TAC(富士社)を商業的に入手し使用した。
【0070】
実施例1
(1)接着剤の製造
モノマーとして、2-HEA(2-Hydroxyethyl acrylate)38.5重量%、PEA(Phenoxyethyl acrylate)10重量%、IBOA(Isobornyl acrylate)15重量%、ラジカル開始剤としてCGI 819 3重量%、カチオン性光重合開始剤としてヨウ素開始剤(Irgacure 250、Ciba社)3重量%、光増感剤(イソプロピルチオキサントン、アルドリッチ)0.5重量%、エポキシ樹脂としてセロキサイド(Celloxide)2021P 15重量%、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル(CHDMGDE)(HAJIN CHEM TECH CO.LTD)15重量%を混合して偏光板用接着剤組成物を製造した。
【0071】
(2)偏光板の製造
上記実施例1の(1)で製造された接着剤をPVA素子の両面にスポイトで塗布した後、V TAC(またはN TACまたは製造例1の(1)アクリルフィルム)(基材1)とTAC(UZ TAC)(基材2)を夫々積層してラミネーター(5m/min)に通過させる。最終接着層の厚さが1~2μmとなるように条件を設定した後、貼り合せられた偏光板をUV照射装置(Metal halide lamp)のベルト上に配置し、2000mJ/cm2の紫外線を照射する。
・・・
【0081】
実験例1:偏光板の剥離力の評価
上記実施例及び比較例で製作した偏光板に対し、偏光子と偏光板保護フィルムの剥離力を測定した。剥離実験は、幅20mm、長さ100mmの偏光板を用い、速度300m/min、90度で剥離時の剥離力を測定し、その結果を下記表2に示した(2N/cm超過:OK、2N/cm以下:NG)。
【0082】
実験例2:粘度の測定
上記実施例及び比較例で製造された接着剤の粘度を25℃で測定し、粘度測定にはViscometer TV-22(TOK SANGYO)を用い、その結果を下記表2に示した。
【0083】
実験例3:ガラス転移温度(Tg)の測定方法
示差走査熱量計(DSC Mettler社)を利用して接着層のガラス転移温度(Tg)を確認した。上記のような硬化条件で製造された偏光板の接着層を分離してから、-50~150℃に昇温させてセカンドラン(second run)でのガラス転移温度を測定し、その結果を下記表2に示した。
【0084】
実験例4:熱衝撃物性評価
ガラスラミネーション(glass lamination)された偏光板の耐久評価(-40度~80度、100cycle)を行った後、偏光板の外観を評価し(変形なし:OK、PVAクラック発生時:NG)、その結果を下記表2に示した。
【0085】
その結果を下記表2に示した、これはコロナ処理後のデータである。
【0086】
【表2】
[図:0001423452000005.jpg]
」
第6 当審の判断
1 前記第4の3の取消理由通知に記載した取消理由1(新規性欠如)及び取消理由2(進歩性欠如)について
(1)甲1に記載された発明
甲1の段落【0152】~【0154】及び段落【0167】の表1に記載された活性エネルギー線重合性樹脂組成物の実施例7についての記載、並びに、同段落【0156】~【0159】の積層体Bについての記載に着目して整理すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
(甲1発明)
「CHDMMA(シクロヘキサンジメタノールモノメタクリレート)を24重量%と、DCPA(ジシクロペンタニルアクリレート)を10重量%と、オリゴマー1を10重量%と、JER806(三菱化学社製 ビスフェノールFジグリシジルエーテル)を50重量%と、ホウ素を1重量%と、CPI-110P(サンアプロ社製 トリアリールスルホニウム塩タイプの光酸発生剤)を3重量%と、TPO(BASF社製 ルシチンTPO(2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド))を1重量%とを含む活性エネルギー線重合性樹脂組成物であって、
オリゴマー1は、撹拌機、還流冷却管、ガス導入管、温度計、滴下ロ-トを備えた5口セパラブルフラスコに、ポリテトラメチレングリコール(保土ヶ谷化学株式会社製:PTG850、水酸基価127.1mgKOH/g)を81.6部、イソホロンジイソシアネートを41.4部仕込み乾燥空気を導入しながら60℃に昇温し、ジブチル錫ジラウレートを0.05部添加し、1時間反応させ、別途、滴下ロートに4-ヒドロキシブチルアクリレートを27.0部、ハイドロキノンモノメチルエーテルを0.15部仕込み、1時間かけてセパラブルフラスコへ滴下し、滴下終了後、3時間80℃で攪拌を続けた後、赤外線吸収スペクトルにてイソシアナト基の吸収ピークがないことを確認し反応を終了して得られた、重量平均分子量が4000のオリゴマー1であり、
富士フィルム社製の紫外線吸収剤含有ポリトリアセチルセルロース系フィルムからなる透明フィルム(1)及び日本ゼオン社製の紫外線吸収剤を含有しないポリシクロオレフィン系フィルムからなる透明フィルム(2)とポリビニルアルコール系偏光子とを接合して積層体を形成するために用いられる、活性エネルギー線重合性樹脂組成物。」
(2)対比・判断
ア 本件発明1
(ア)対比
本件発明1と甲1発明を対比すると、甲1発明の「JER806(三菱化学社製 ビスフェノールFジグリシジルエーテル)」は、分子内に2個のエポキシ基を有する化合物であるから、本件発明1の「(A)成分:分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物」に相当し、「CHDMMA(シクロヘキサンジメタノールモノメタクリレート)」は、分子内に水酸基を1個、エチレン性不飽和基を1個有する化合物であるから、「(C)成分:分子内に水酸基及びエチレン性不飽和基をそれぞれ1個以上有する化合物」に相当する。
また、甲1発明の「オリゴマー1」は、ポリエーテルであるポリテトラメチレングリコールとイソホロンジイソシアネートを反応させて得られたものであるから、「ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレート」であると認められるところ、本件発明1の「(B)成分:ポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリレート又はポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレート」と、「(B)成分:ウレタン(メタ)アクリレート」である点で共通する。
さらに、甲1の段落【0119】には、活性エネルギー線重合開始剤のうちのカチオン重合開始剤として、CPI-110が例示されているから、甲1発明の「CPI-110P(サンアプロ社製 トリアリールスルホニウム塩タイプの光酸発生剤)」は、本件発明1の「(D)成分:光カチオン重合開始剤」に相当する。
加えて、甲1の段落【0116】には、活性エネルギー線重合開始剤のうちのラジカル重合開始剤として、DAROCUR-TPO(BASF社製 2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド)が例示されているから、甲1発明の「TPO(BASF社製 ルシチンTPO(2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド))」は、本件発明1の「(E)成分:光ラジカル重合開始剤」に相当する。
そして、甲1発明の「JER806(三菱化学社製 ビスフェノールFジグリシジルエーテル)」、「オリゴマー1からなる重量平均分子量が4000のポリウレタンアクリレート」、「CHDMMA(シクロヘキサンジメタノールモノメタクリレート)」、「DCPA(ジシクロペンタニルアクリレート)」はいずれも、本件発明1の「硬化性成分」に相当し、これらの成分の合計量を100質量%として、甲1発明の各成分の含有量を算出すると、「JER806(三菱化学社製 ビスフェノールFジグリシジルエーテル)」の含有量は53(≒50/(24+10+10+50)×100)質量%、「オリゴマー1からなる重量平均分子量が4000のポリウレタンアクリレート」の含有量は11(≒10/(24+10+10+50)×100)質量%、「CHDMMA(シクロヘキサンジメタノールモノメタクリレート)」の含有量は26(≒24/(24+10+10+50)×100)質量%となり、本件発明1の(A)成分、(B)成分、(C)成分の含有量の数値範囲をそれぞれ充足する。
また、甲1発明の上記「硬化性成分」の合計量100質量部に対する、甲1発明の各重合開始剤の含有量を算出すると、「CPI-110P(サンアプロ社製 トリアリールスルホニウム塩タイプの光酸発生剤)」の含有量は3.2(≒3/(24+10+10+50)×100)質量部、「TPO(BASF社製 ルシチンTPO(2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド))」の含有量は1.1(≒1/(24+10+10+50)×100)質量部となり、本件発明1の(D)成分、(E)成分の含有量の数値範囲をそれぞれ充足する。
さらに、甲1発明の「富士フィルム社製の紫外線吸収剤含有ポリトリアセチルセルロース系フィルムからなる透明フィルム(1)」、「日本ゼオン社製の紫外線吸収剤を含有しないポリシクロオレフィン系フィルムからなる透明フィルム(2)」、「ポリビニルアルコール系偏光子」は、本件発明1の「プラスチック製フィルム又はシート」に相当し、甲1発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物は、上記フィルムやシートを積層するために用いられるものであるから、本件発明1の「プラスチック製フィルム又はシート用活性エネルギー線硬化型接着剤組成物」に相当する。
そうすると、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
硬化性成分及び重合開始剤から少なくとも構成され、当該硬化性成分が下記(A)~(C)成分から少なくとも構成され、当該重合開始剤が下記(D)及び(E)成分から少なくとも構成され、
(A)成分:分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物
(B)成分:ウレタン(メタ)アクリレート
(C)成分:分子内に水酸基及びエチレン性不飽和基をそれぞれ1個以上有する化合物
(D)成分:光カチオン重合開始剤
(E)成分:光ラジカル重合開始剤
硬化性成分全量100質量%中に、前記(A)~(C)成分を下記割合で含有し、
(A)成分:15~80質量%
(B)成分:5~30質量%
(C)成分:5~55質量%
硬化性成分全量100質量部に対して前記(D)及び(E)成分を下記割合で含有する、プラスチック製フィルム又はシート用活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
(D)成分:0.1~10質量部
(E)成分:0.1~15質量部
(相違点1)
(B)成分のウレタン(メタ)アクリレートが、本件発明1は、ポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリレート又はポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレートであるのに対し、甲1発明は、ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレートである点。
(イ)判断
甲1発明の認定に用いた甲1の段落【0167】の表1には、ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレートである「オリゴマー1」は、「本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物に含まれるα,β-エチレン性不飽和二重結合基含有化合物(M)」の中の「化合物(m)」として整理される成分である旨記載されている。
そして、甲1の段落【0038】には、「本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物に含まれるα,β-エチレン性不飽和二重結合基含有化合物(M)について、前記した化合物(X)、化合物(C)以外に、その他のα,β-エチレン性不飽和二重結合基含有化合物(m)(以下化合物(m)と称す)を必要に応じ使用することに制限はない。」と記載され、同段落【0039】~【0087】(当審注:上記第5において、摘記は一部省略した。)には、「化合物(m)」として整理される様々な成分についての説明がなされており、特に、同段落【0063】には、「化合物(m)」のうち、「オリゴマー(D)」として、「ポリエステル系オリゴマー(d1)及び/又はポリウレタン系オリゴマー(d2)、及びポリエポキシ系オリゴマー(d3)よりなる群から選ばれた少なくとも1種類以上のオリゴマーが好ましく、特に制限が無く使用できる。」ことが記載されている。
しかしながら、甲1には、「化合物(m)」として、上記「オリゴマー(D)」の「ポリウレタン系オリゴマー(d2)」以外のポリウレタン化合物を用いることについての記載はない。
また、甲1の段落【0076】には、「ポリウレタン系オリゴマー(d2)」は、
・少なくとも1個以上のイソシアネート基を有する化合物と前記化合物(X)を反応させて得られる化合物
・少なくとも1個のイソシアネート基を有する化合物と上述の多価アルコールとを反応させて得られる末端イソシアネート基のウレタンプレポリマーと前記化合物(X)を反応させて得られる化合物
・少なくとも1個のイソシアネート基を有する化合物と多価アルコールとを反応させて得られる末端イソシアネート基のウレタンプレポリマーと、更に少なくとも1個以上のアミノ基を有する化合物とを反応させて得られる末端イソシアネート基のウレタンプレポリマーと前記化合物(X)とを反応させて得られる化合物
である旨記載されている。
そして、甲1の段落【0028】には、「水酸基含有α,β-エチレン性不飽和二重結合基含有化合物(X)(以下化合物(X)と称す)について説明する。」と記載され、同段落【0029】~【0033】には、化合物(X)として整理される様々な成分についての説明がなされている。
しかしながら、上記「ポリウレタン系オリゴマー(d2)」の形成に用いられる化合物(X)の中に、ポリカーボネート系の化合物やポリエステル系の化合物については記載も示唆もされていない。
そうすると、甲1に記載された事項に基づいて、当業者が、甲1発明の「ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレート」であり、「化合物(m)」である「オリゴマー1」を、ポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリレート又はポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレートに置き換える動機付けはないといえるから、甲1発明において、相違点1の構成を導くことは、当業者といえども容易に想到し得たこととはいえない。
なお、申立人は、異議申立書において、甲1発明の「ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレート」を、「ポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリレート又はポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレート」に置き換えることについて何ら主張しておらず、この論点についての意見書等の提出もしていない。
(ウ)まとめ
したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明でなく、また、甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。
イ 本件発明2~7、9~14について
本件発明2~7、9~14は、本件発明1を実質的に包含し、さらに特定事項を追加したものであるから、上記アで検討したのと同様の理由により、甲1に記載された発明でなく、また、甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。
(3)小括
以上のとおり、本件発明1~7、9~14は、甲1に記載された発明でなく、また、甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたものでもないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、同法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるとはいえない。
2 取消理由通知に採用しなかった申立理由2(甲2に基づく新規性及び進歩性欠如)について
(1)甲2に記載された発明
甲2の段落【0070】における実施例1の偏光板用接着剤組成物及び同【0071】偏光板の製造についての記載に着目し、【0064】~【0069】及び【0086】の表2の記載を参酌して整理すると、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているといえる。
(甲2発明)
「モノマーとして、2-HEA(2-Hydroxyethyl acrylate)38.5重量%、PEA(Phenoxyethyl acrylate)10重量%、IBOA(Isobornyl acrylate)15重量%、ラジカル開始剤としてCGI 819 3重量%、カチオン性光重合開始剤としてヨウ素開始剤(Irgacure 250、Ciba社)3重量%、光増感剤(イソプロピルチオキサントン、アルドリッチ)0.5重量%、エポキシ樹脂としてセロキサイド(Celloxide)2021P 15重量%、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル(CHDMGDE)(HAJIN CHEM TECH CO.LTD)15重量%を混合して得られた、粘度が16cPである、偏光板用接着剤組成物であって、
PVA素子のそれぞれの面に、V TAC、またはN TAC、または製造例1のアクリルフィルムからなる基材1と、TAC(UZ TAC)からなる基材2とを貼り合わせるための偏光板用接着剤組成物。」
(2)対比・判断
ア 本件発明1
(ア)対比
本件発明1と甲2発明を対比すると、甲2発明の「セロキサイド(Celloxide)2021P」及び「1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル(CHDMGDE)(HAJIN CHEM TECH CO.LTD)」は、分子内に2個のエポキシ基を有する化合物であるから、本件発明1の「(A)成分:分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物」に相当し、「2-HEA(2-Hydroxyethyl acrylate)」は、分子内に水酸基を1個、エチレン性不飽和基を1個有する化合物であるから、「(C)成分:分子内に水酸基及びエチレン性不飽和基をそれぞれ1個以上有する化合物」に相当する。
また、甲2発明の「ヨウ素開始剤(Irgacure 250、Ciba社)」は、「カチオン性光重合開始剤」であるから、本件発明1の「(D)成分:光カチオン重合開始剤」に相当する。
さらに、甲2発明の「CGI 819」は、「ラジカル開始剤」であり、光によりラジカルを発生させるものであるから(必要であれば、Longchang Chemical Co., Ltd.の以下のホームページを参照、https://longchangchemical.com/product/photoinitiator-819-irgacure-819-cas-162881-26-7/)、本件発明1の「(E)成分:光ラジカル重合開始剤」に相当する。
そして、甲2発明の「セロキサイド(Celloxide)2021P」、「1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル(CHDMGDE)(HAJIN CHEM TECH CO.LTD)」、「2-HEA(2-Hydroxyethyl acrylate)」、「PEA(Phenoxyethyl acrylate)」、「IBOA(Isobornyl acrylate)」はいずれも、本件発明1の「硬化性成分」に相当し、これらの成分の合計量を100質量%として、甲2発明の各成分の含有量を算出すると、「セロキサイド(Celloxide)2021P」及び「1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル(CHDMGDE)(HAJIN CHEM TECH CO.LTD)」の含有量は32.1(≒(15+15)/(15+15+38.5+10+15)×100)質量%、「2-HEA(2-Hydroxyethyl acrylate)」の含有量は41.2(≒38.5/(15+15+38.5+10+15)×100)質量%となり、本件発明1の(A)成分、(C)成分の含有量の数値範囲をそれぞれ充足する。
また、甲2発明の上記「硬化性成分」の合計量100質量部に対する、甲2発明の各重合開始剤の含有量を算出すると、「ヨウ素開始剤(Irgacure 250、Ciba社)」の含有量は3.2(≒3/(15+15+38.5+10+15)×100)質量部、「CGI 819」の含有量は3.2(≒3/(15+15+38.5+10+15)×100)質量部となり、本件発明1の(D)成分、(E)成分の含有量の数値範囲をそれぞれ充足する。
さらに、甲2発明の「PVA素子」、「V TAC、またはN TAC、または製造例1のアクリルフィルムからなる基材1」、「TAC(UZ TAC)からなる基材2」は、本件発明1の「プラスチック製フィルム又はシート」に相当し、甲2発明の「偏光板用接着剤組成物」は、上記フィルムやシートを積層するために用いられるものであり、光により硬化する成分を含む接着剤組成物であるから、本件発明1の「プラスチック製フィルム又はシート用活性エネルギー線硬化型接着剤組成物」に相当する。
そうすると、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
硬化性成分及び重合開始剤から少なくとも構成され、当該硬化性成分が下記(A)及び(C)成分から少なくとも構成され、当該重合開始剤が下記(D)及び(E)成分から少なくとも構成され、
(A)成分:分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物
(C)成分:分子内に水酸基及びエチレン性不飽和基をそれぞれ1個以上有する化合物
(D)成分:光カチオン重合開始剤
(E)成分:光ラジカル重合開始剤
硬化性成分全量100質量%中に、前記(A)及び(C)成分を下記割合で含有し、
(A)成分:15~80質量%
(C)成分:5~55質量%
硬化性成分全量100質量部に対して前記(D)及び(E)成分を下記割合で含有する、プラスチック製フィルム又はシート用活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
(D)成分:0.1~10質量部
(E)成分:0.1~15質量部
(相違点2)
本件発明1の組成物は、(B)成分として、ポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリレート又はポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレートを、硬化性成分全量100質量部に対して5~30質量%含むことが特定されているのに対して、甲2発明の組成物は、それが特定されていない点。
(イ)判断
本件発明1は、ポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリレート又はポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレートである(B)成分、すなわち、ウレタン(メタ)アクリレートである(B)成分を、硬化性成分全量に対して100質量部に対して5~30質量%含むことが特定されている。
これに対し、甲2発明はウレタン(メタ)アクリレートを含むものではないが、甲2の段落【0051】には、「上記偏光板用接着剤組成物は・・・ウレタンアクリレートを0超過4以下重量部さらに含むことが好ましい。上記のように、ウレタンアクリレートが追加される場合、粘度が上昇する傾向があるが、温度を加えて接着剤の上昇した粘度を下げることができる。」と記載され、同段落【0052】には、「上記のようにウレタンアクリレートが追加される本発明の偏光板用接着剤組成物は、アクリル系フィルムに対する使用において、より適切な接着力を付与することができる。」と記載されている。
そして、甲2発明の硬化性成分の含有量は、93.5質量部であるところ、上記甲2の示唆に従うと、0超過4以下質量部のウレタンアクレートを添加する場合、硬化性成分全量は、93.5超~97.5(=93.5+4)質量部となり、ウレタンアクリレートは、硬化性成分全量100質量%中に、0超~4.1(≒4/(93.5+4)×100)質量%の範囲で含有させることができると解される。
しかしながら、甲2の段落【0010】には、「接着剤の低粘度を保持しながら、接着力、耐水性及び熱衝撃特性に優れた低粘度偏光板用接着剤を提供すること」が発明の課題として記載されており、同段落【0047】には、接着剤の粘度について、光硬化型接着剤組成物では、最終接着層の厚さが水系接着剤より、非常に厚くなるため、粘度を最小化して接着層の厚さを減少させることが好ましく、上記偏光板用接着剤は、25℃で10~30cPの粘度を有することが好ましく、20cP内外の粘度を有することがより好ましい。」と記載されている。
そして、甲2発明の粘度は14cPであり、上記好ましい数値範囲の粘度である。
そうすると、上記甲2における「ウレタンアクリレートが追加される場合、粘度が上昇する傾向がある」との記載、上記甲2に記載された発明の課題を踏まえれば、既に粘度が好ましい範囲にある甲2発明において、甲2に示唆されたウレタンアクリレートの添加量の数値範囲の上限を超えて、当業者が、ウレタンアクリレートを添加する動機はないし、加えて、ウレタンアクリレートの種類として、「ポリカーボネート系」又は「ポリエステル系」のものを選択する動機付けもない。
よって、甲2発明において、相違点2の構成を導くことは当業者といえども容易に想到し得たこととはいえない。
(ウ)申立人の主張
申立人は、異議申立書において、「甲第2号証では、低粘度の組成物の提供という課題があるからウレタンアクリレートを0超過4以下重量部が好ましいとされているものの、組成物の粘度が公知、慣用的な10~1,000mPa・sであれば、ウレタンアクリレートを0超過4以下重量部を超えて、5~30重量%とすることは適宜設定し得る数値範囲内のものということができる。」と主張する。
しかしながら、接着剤組成物の粘度として、10~1,000mPa・sとすることが公知、慣用的なものだったとしても、甲2発明が、低粘度の組成物を提供することが前提であることを考慮すると、甲2に記載された上限を超えて、ウレタンアクリレートを添加することには阻害要因があるといえる。
よって、上記申立人の主張は採用できない。
なお、申立人は、異議申立書において、甲2発明の「ウレタン(メタ)アクリレート」を、「ポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリレート又はポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレート」に置き換えることについて何ら主張しておらず、この論点についての意見書等の提出もしていない。
(エ)まとめ
したがって、本件発明1は、甲2に記載された発明でなく、また、甲2に記載された発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。
イ 本件発明2~7、9~14について
本件発明2~7、9~14は、本件発明1を実質的に包含し、さらに特定事項を追加したものであるから、上記アで検討したのと同様の理由により、甲2に記載された発明でなく、また、甲2に記載された発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。
(3)小括
以上のとおり、本件発明1~7、9~14は、甲2に記載された発明でなく、また、甲2に記載された発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたものでもないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、同法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるとはいえない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、申立人による特許異議申立書の理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1~7、9~14に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~7、9~14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-700001