特許異議申立
2023-701062
転写フィルム付電磁波シールドフィルム、転写フィルム付電磁波シールドフィルムの製造方法及びシールドプリント配線板の製造方法
- 審判番号
- 2023-701062
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-160342
- 登録番号
- 7256618
- 請求日
- 2023年10月05日
- 審決日
- 2023年12月27日
- 公報発行日
- 2024年02月22日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】タツタ電線株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人WisePlus
- 【異議申立人】渡辺 伸子
- 審判長/審判官
- 審判長 瀧内 健夫
- 審判官 河本 充雄
- 審判官 市川 武宜
- 分類
- P1651.121-Y (H05K) / P1651.537-Y (H05K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7256618号発明「転写フィルム付電磁波シールドフィルム、転写フィルム付電磁波シールドフィルムの製造方法及びシールドプリント配線板の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7256618号の請求項1~9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7256618号の請求項1~9に係る特許についての出願は、平成30年8月29日に出願され、令和5年4月4日にその特許権の設定登録がされ、同年同月12日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1~9に係る特許に対し、令和5年10月5日に特許異議申立人 渡辺 伸子(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
特許第7256618号の請求項1~9の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明9」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
転写フィルムと、
前記転写フィルムに積層された電磁波シールドフィルムとからなる転写フィルム付電磁波シールドフィルムであって、
前記電磁波シールドフィルムは、前記転写フィルムに積層されるように位置する保護層と、前記保護層に積層されたシールド層と、前記シールド層に積層された、接着剤層とを含み、
前記転写フィルムのヤング率は、3.6GPa以上、4.5GPa以下であり、
前記転写フィルムの厚さは、20~100μmであり、
前記保護層の厚さは、1~15μmであり、
前記接着剤層の厚さは、1~50μmであることを特徴とする転写フィルム付電磁波シールドフィルム。
【請求項2】
前記接着剤層は、導電性を有する請求項1に記載の転写フィルム付電磁波シールドフィルム。
【請求項3】
前記シールド層は、金属層からなる請求項1又は2に記載の転写フィルム付電磁波シールドフィルム。
【請求項4】
前記シールド層は、導電性樹脂からなる請求項1又は2に記載の転写フィルム付電磁波シールドフィルム。
【請求項5】
転写フィルムと、
前記転写フィルムに積層された電磁波シールドフィルムとからなる転写フィルム付電磁波シールドフィルムであって、
前記電磁波シールドフィルムは、前記転写フィルムに積層されるように位置する保護層と、前記保護層に積層された導電性を有する接着剤層とを含み、
前記転写フィルムのヤング率は、3.6GPa以上、4.5GPa以下であり、
前記転写フィルムの厚さは、20~100μmであり、
前記保護層の厚さは、1~15μmであり、
前記接着剤層の厚さは、1~50μmであることを特徴とする転写フィルム付電磁波シールドフィルム。
【請求項6】
ヤング率が3.6GPa以上、4.5GPa以下である転写フィルムを準備する転写フィルム準備工程と、
前記転写フィルムに保護層、シールド層、及び、接着剤層を順次積層して電磁波シールドフィルムを形成する電磁波シールドフィルム形成工程とを含み、
前記転写フィルムの厚さは、20~100μmであり、
前記保護層の厚さは、1~15μmであり、
前記接着剤層の厚さは、1~50μmであることを特徴とする転写フィルム付電磁波シールドフィルムの製造方法。
【請求項7】
ヤング率が3.6GPa以上、4.5GPa以下である転写フィルムを準備する転写フィルム準備工程と、
前記転写フィルムに保護層、導電性樹脂からなり電磁波シールド機能を有する接着剤層を順次積層して電磁波シールドフィルムを形成する電磁波シールドフィルム形成工程とを含み、
前記転写フィルムの厚さは、20~100μmであり、
前記保護層の厚さは、1~15μmであり、
前記接着剤層の厚さは、1~50μmであることを特徴とする転写フィルム付電磁波シールドフィルムの製造方法。
【請求項8】
ベースフィルムと、前記ベースフィルムの上に形成されたグランド回路を含むプリント回路と、前記プリント回路を覆うカバーレイとを含むプリント配線板を準備するプリント配線板準備工程と、
請求項1~5のいずれかに記載の転写フィルム付電磁波シールドフィルムを準備する転写フィルム付電磁波シールドフィルム準備工程と、
前記転写フィルム付電磁波シールドフィルムの接着剤層を、前記プリント配線板の前記カバーレイに接触するように配置し、前記転写フィルム付電磁波シールドフィルムを前記プリント配線板に圧着する圧着工程と、
前記転写フィルム付電磁波シールドフィルムから転写フィルムを剥離する剥離工程とを含み、
前記接着剤層と接触する前記カバーレイの表面には段差があることを特徴とするシールドプリント配線板の製造方法。
【請求項9】
前記段差は、前記グランド回路を露出する孔であり、
前記接着剤層は、導電性を有する請求項8に記載のシールドプリント配線板の製造方法。」
第3 申立理由の概要
申立人は、証拠として甲第1号証~甲第3号証(以下、「甲1」~「甲3」という。)を提出し、以下の理由により、請求項1~9に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
(1)申立理由1(進歩性)
本件発明1~9は、甲1に記載された発明、甲2及び甲3に記載された事項に基いてその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)申立理由2(サポート要件)
本件発明1~9は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、請求項1~9に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
[証拠方法]
甲1:特許第6329314号公報
甲2:「プラスチック読本」、改訂第18版、(株)プラスチックス・エージ、1992年8月15日、主要熱可塑性樹脂の性能一覧表II(エンジニアリングプラスチック)
甲3:「飽和ポリエステル樹脂ハンドブック」、初版、日刊工業新聞社、1989年12月22日、694~699ページ
第4 甲号証の記載、甲号証に記載された発明等
1 甲1(特許第6329314号公報)
(1)甲1の記載
甲1には、以下の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。以下、同様である。)。
「【背景技術】
【0002】
プリント配線基板においては、導電性接着剤が多用される。例えば、プリント配線基板に接着される電磁波シールドフィルムは、金属箔等のシールド層とシールド層の表面に設けられた導電接着剤シートとを有する。導電性接着剤シートは、例えばシールド層の表面に導電性接着剤をシート状に塗布して形成し、シールド層をプリント配線基板の表面に接着すると共に、プリント配線基板のグランドパターンと、シールド層とを導通させる。」
「【発明を実施するための形態】
・・・
【0016】
本実施形態の導電性接着剤シートは、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の少なくとも一方と、導電性フィラーとを含み、被着物の表面と接着される面の負荷面積率(Smr(50%))が2%以上、好ましくは3%以上、14%以下、好ましくは13%以下である。負荷面積率をこのような範囲とすることにより、高い密着性と、低い接続抵抗値とを両立させることができる。
・・・
【0026】
また、金属層を有さず、導電性接着剤シートをシールドとして機能させる電磁波シールドフィルムとすることもできる。この場合には、導電性フィラーの含有量は、シールド特性を確保する観点から40質量%以上とすることが好ましい。また、電磁波シールドフィルムの耐屈曲性の観点から、導電性フィラーの上限は好ましくは90質量%以下である。
【0027】
本実施形態の導電性接着剤シートは、図1に示すような、導電性接着剤シート101、金属層102及び保護層103を有する、電磁波シールドフィルム100の導電性接着剤シート101として用いることができる。電磁波シールドフィルム100は、プリント配線基板150の表面に接着され、シールド配線基板180を形成する。プリント配線基板150は、グランドパターン152を含む回路パターンが設けられた基板本体151と、グランドパターンを覆う絶縁フィルム153とを有している。絶縁フィルム153は、グランドパターン152を露出させる開口部であるグランド接続部155を有し、導電性接着剤シート101は、絶縁フィルム153と接着されると共に、グランド接続部155に充填され、グランドパターン152と金属層102とを導通させる。
・・・
【0035】
金属層102は、金属薄膜や導電性フィラー等により構成することができる。金属薄膜である場合には、ニッケル、銅、銀、錫、金、パラジウム、アルミニウム、クロム、チタン、及び亜鉛等のいずれか、又は2つ以上を含む合金により構成することができる。金属薄膜は、金属箔を用いたり、アディティブ法によって金属を堆積したりすることにより製造することができる。アディティブ法としては、電解メッキ法、無電解メッキ法、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法、真空蒸着法、化学気相堆積(CVD)法、又はメタルオーガニック堆積(MOCVD)法等を用いることができる。
【0036】
金属層102が導電性フィラーで構成される場合には、例えば、金属フィラー、金属被覆樹脂フィラー、カーボンフィラー及びそれらの混合物を使用することができる。上記金属フィラーとしては、銅粉、銀粉、ニッケル粉、銀コ-ト銅粉、金コート銅粉、銀コートニッケル粉、金コートニッケル粉があり、これら金属粉は、電解法、アトマイズ法、還元法により作成することができる。金属粉の形状は、球状、フレーク状、繊維状、樹枝状等が挙げられる。また、金属ナノ粒子とすることもできる。金属ナノ粒子としては、例えば銀ナノ粒子、金ナノ粒子等を挙げることができる。
【0037】
金属層102の金属材料及び厚さは、求められる電磁シールド効果及び繰り返し屈曲・摺動耐性に応じて適宜選択すればよいが、厚さは、0.1μm~12μm程度とすることができる。」
「【実施例】
【0047】
以下に、本開示の導電性接着剤シートについて実施例を用いてさらに詳細に説明する。以下の実施例は例示であり、本発明を限定することを意図するものではない。
【0048】
<導電性接着剤シート及び電磁波シールドフィルムの作成>
表面に剥離層を設けたPETフィルム(厚み25μm)の表面に、保護層用樹脂組成物を、ワイヤーバーを用いて塗布し、加熱乾燥することで、厚み5μmの保護層を形成した。次いで、圧延加工により作製した厚み2μmの銅箔を、保護層の表面に貼り合わせた。次いで、導電性接着剤シート用組成物を、ワイヤーバーにより、圧延銅箔の表面に塗布した後、100℃×3分の乾燥を行うことにより、導電性接着剤シートを有する電磁波シールドフィルムを作製した。
・・・
【0055】
(実施例1)
ビスフェノールA型エポキシ系樹脂(JER1256、三菱化学製)を100質量部、硬化剤(ST14、三菱化学製)を1質量部含む熱硬化性樹脂に導電性フィラーを混合して、導電性接着剤を調製し、これを用いて電磁波シールドフィルムを形成した。導電性フィラーには、メディアン径が15μmの樹枝状の銀コート銅粉を用いた。導電性フィラーの添加量は、熱硬化性樹脂100質量部に対し、20質量部とした。乾燥硬化後の導電性接着剤シートの厚みは15μmとした。
【0056】
得られた電磁波シールドフィルムにおける導電性接着剤シートのSmr(50%)は、8.26%であり、Raは0.85μmであった。密着力は4.6N/cmであり、接続抵抗値は0.04Ωであった。
・・・
【0101】
【表1】
[図:0001406746000001.jpg]
【0102】
図2には、Smr(50%)と密着力及び接続抵抗値との相関を示す。本実施形態の導電性接着剤シートは、高い密着力と低い接続抵抗値とを両立させることができる。」
(2)甲1に記載された発明
ア(ア)上記(1)の【0048】には、表面に剥離層を設けた厚み25μmのPETフィルムと、PETフィルムの表面に形成された厚み5μmの保護層と、保護層の表面に形成された厚み2μmの圧延銅箔と、圧延銅箔の表面に形成された導電性接着剤シートを有する電磁波シールドフィルムが記載されているといえる。
(イ)上記(1)の【0016】には、「被着物の表面と接着される面の負荷面積率(Smr(50%))」と記載されているところ、上記(1)の【0055】、【0056】の実施例1及び【0101】の【表1】には、導電性接着剤シートは、熱硬化性樹脂に導電性フィラーを混合したものであって、厚みが15μmであり、被着物の表面と接着される面の負荷面積率Smr(50%)が8.26%であることが記載されているといえる。
(ウ)以上から、甲1には、以下の発明(以下、「甲1物発明A」という。)が記載されていると認められる。
「表面に剥離層を設けた厚み25μmのPETフィルムと、
PETフィルムの表面に形成された厚み5μmの保護層と、
保護層の表面に形成された厚み2μmの圧延銅箔と、
圧延銅箔の表面に形成され、熱硬化性樹脂と導電性フィラーを混合したものであって、厚みが15μmであり、被着物の表面と接着される面の負荷面積率Smr(50%)が8.26%である導電性接着剤シートを有する電磁波シールドフィルム。」
イ(ア)上記(1)の【0026】には、「金属層を有さず、導電性接着剤シートをシールドとして機能させる電磁波シールドフィルムとすることもできる」と記載され、同【0035】には、「金属層102は、金属薄膜や導電性フィラー等により構成することができる。金属薄膜である場合には、ニッケル、銅、銀、錫、金、パラジウム、アルミニウム、クロム、チタン、及び亜鉛等のいずれか、又は2つ以上を含む合金により構成することができる。金属薄膜は、金属箔を用いたり、アディティブ法によって金属を堆積したりすることにより製造することができる。」と記載されているから、甲1には、甲1物発明Aにおいて、圧延銅箔を有さず、導電性接着剤シートをシールドとして機能させることが記載されているといえる。
(イ)以上から、甲1には、以下の発明(以下、「甲1物発明B」という。)が記載されていると認められる。
「表面に剥離層を設けた厚み25μmのPETフィルムと、
PETフィルムの表面に形成された厚み5μmの保護層と、
保護層の表面に形成された、熱硬化性樹脂と導電性フィラーを混合したものであって、厚みが15μmであり、被着物の表面と接着される面の負荷面積率Smr(50%)が8.26%であり、シールドとして機能する導電性接着剤シートを有する電磁波シールドフィルム。」
ウ(ア)上記(1)の【0048】には、表面に剥離層を設けた厚み25μmのPETフィルムの表面に、厚み5μmの保護層を形成し、次いで、厚み2μmの圧延銅箔を、保護層の表面に貼り合わせ、次いで、圧延銅箔の表面に導電性接着剤シートを形成する電磁波シールドフィルムの製造方法が記載されているといえる。
(イ)上記ア(イ)で検討したとおり、導電性接着剤シートは、熱硬化性樹脂に導電性フィラーを混合したものであって、厚みが15μmであり、被着物の表面と接着される面の負荷面積率Smr(50%)が8.26%である。
(ウ)以上から、甲1には、以下の発明(以下、「甲1方法発明A」という。)が記載されていると認められる。
「表面に剥離層を設けた厚み25μmのPETフィルムの表面に、厚み5μmの保護層を形成し、
次いで、厚み2μmの圧延銅箔を、保護層の表面に貼り合わせ、
次いで、圧延銅箔の表面に、熱硬化性樹脂に導電性フィラーを混合したものであって、厚みが15μmであり、被着物の表面と接着される面の負荷面積率Smr(50%)が8.26%である導電性接着剤シートを形成する電磁波シールドフィルムの製造方法。」
エ(ア)上記イ(ア)で検討したのと同様に、甲1には、甲1方法発明Aにおいて、圧延銅箔を有さず、導電性接着剤シートをシールドとして機能させることが記載されているといえる。
(イ)以上から、甲1には、以下の発明(以下、「甲1方法発明B」という。)が記載されていると認められる。
「表面に剥離層を設けた厚み25μmのPETフィルムの表面に、厚み5μmの保護層を形成し、
次いで、保護層の表面に、熱硬化性樹脂に導電性フィラーを混合したものであって、厚みが15μmであり、被着物の表面と接着される面の負荷面積率Smr(50%)が8.26%であり、シールドとして機能する導電性接着剤シートを形成する電磁波シールドフィルムの製造方法。」
2 甲2(「プラスチック読本」、改訂第18版、(株)プラスチックス・エージ、1992年8月15日、主要熱可塑性樹脂の性能一覧表II(エンジニアリングプラスチック))
甲2には、以下の記載がある。
「
[図:0001406746000002.jpg]
[図:0001406746000003.jpg]
」
3 甲3(「飽和ポリエステル樹脂ハンドブック」、初版、日刊工業新聞社、1989年12月22日、694~699ページ)
甲3には、以下の記載がある。
「
[図:0001406746000004.jpg]
」(695ページ1~4行)
「
[図:0001406746000005.jpg]
」(698ページ)
第5 申立理由1(進歩性)について
1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1物発明Aとを対比する。
ア 甲1物発明Aの「表面に剥離層を設けた厚み25μmのPETフィルム」は、本件発明1の「転写フィルム」に相当する。
イ(ア)甲1物発明Aの「PETフィルムの表面に形成された厚み5μmの保護層」は、PETフィルムに積層されるように位置するといえから、本件発明1の「前記転写フィルムに積層されるように位置する保護層」に相当する。
(イ)甲1物発明Aの「保護層の表面に形成された厚み2μmの圧延銅箔」は、保護層に積層されているといえる。
また、甲1の【0035】には、「金属層102は、金属薄膜や導電性フィラー等により構成することができる。金属薄膜である場合には、ニッケル、銅、銀、錫、金、パラジウム、アルミニウム、クロム、チタン、及び亜鉛等のいずれか、又は2つ以上を含む合金により構成することができる。金属薄膜は、金属箔を用いたり、アディティブ法によって金属を堆積したりすることにより製造することができる。」と記載され、同【0037】には、「金属層102の金属材料及び厚さは、求められる電磁シールド効果及び繰り返し屈曲・摺動耐性に応じて適宜選択すればよい」と記載されていることから、甲1物発明Aの「圧延銅箔」は、電磁シールド効果を有しているといえる。
そうすると、甲1物発明Aの「保護層の表面に形成された厚み2μmの圧延銅箔」は、保護層に積層されたシールド層であるといえるから、本件発明1の「前記保護層に積層されたシールド層」に相当する。
(ウ)甲1物発明Aの「圧延銅箔の表面に形成され」「る導電性接着剤シート」は、圧延銅箔層に積層されているといえるから、本件発明1の「前記シールド層に積層された、接着剤層」に相当する。
(エ)上記(ア)~(ウ)の検討を参酌すると、甲1物発明Aの「PETフィルムの表面に形成された厚み5μmの保護層と、保護層の表面に形成された厚み2μmの圧延銅箔と、圧延銅箔の表面に形成され、熱硬化性樹脂と導電性フィラーを混合したものであって、厚みが15μmであり、被着物の表面と接着される面の負荷面積率Smr(50%)が8.26%である導電性接着剤シート」は、電磁波シールド効果を有するフィルム(以下、「甲1フィルムA」という。)であるといえるから、本件発明1の「前記転写フィルムに積層されるように位置する保護層と、前記保護層に積層されたシールド層と、前記シールド層に積層された、接着剤層とを含」む「電磁波シールドフィルム」に相当する。
(オ)甲1物発明Aの甲1フィルムAは、「PETフィルム」に積層されているといえるから、本件発明1の「前記転写フィルムに積層された電磁波シールドフィルム」に相当する。
また、甲1物発明Aの「電磁波シールドフィルム」は、「PETフィルム」と甲1フィルムAとからなるものであるから、本件発明1の「転写フィルムと、前記転写フィルムに積層された電磁波シールドフィルムとからなる転写フィルム付電磁波シールドフィルム」に相当する。
ウ 甲1物発明Aの「表面に剥離層を設けた」「PETフィルム」の「厚み25μm」は、本件発明1の「転写フィルムの厚さ」である「20~100μm」の範囲に含まれているから、本件発明1と甲1物発明Aとは、「転写フィルムの厚さは、20~100μm」である点で共通する。
エ 甲1物発明Aの「保護層」の「厚み5μm」は、本件発明1の「保護層の厚さ」である「1~15μm」の範囲に含まれているから、本件発明1と甲1物発明Aとは、「前記保護層の厚さは、1~15μm」である点で共通する。
オ 甲1物発明Aの「導電性接着剤シート」の「厚みが15μm」は、本件発明1の「接着剤層の厚さ」である「1~50μm」の範囲に含まれているから、本件発明1と甲1物発明Aとは、「前記接着剤層の厚さは、1~50μm」である点で共通する。
カ 甲1物発明Aの「電磁波シールドフィルム」は、「PETフィルム」付き「電磁波シールドフィルム」であるといえるから、本件発明1の「転写フィルム付電磁波シールドフィルム」に相当する。
キ 以上から、本件発明1と甲1物発明Aとの一致点と相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
「転写フィルムと、
前記転写フィルムに積層された電磁波シールドフィルムとからなる転写フィルム付電磁波シールドフィルムであって、
前記電磁波シールドフィルムは、前記転写フィルムに積層されるように位置する保護層と、前記保護層に積層されたシールド層と、前記シールド層に積層された、接着剤層とを含み、
前記転写フィルムの厚さは、20~100μmであり、
前記保護層の厚さは、1~15μmであり、
前記接着剤層の厚さは、1~50μmであることを特徴とする転写フィルム付電磁波シールドフィルム。」
<相違点>
相違点1:本件発明1は、「前記転写フィルムのヤング率は、3.6GPa以上、4.5GPa以下」であるのに対し、甲1物発明Aは、そのような構成を有しているか不明である点。
(2)相違点1についての判断
ア 本件の願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)には以下の記載がある。
「【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明の転写フィルム付電磁波シールドフィルムは、
転写フィルムと、上記転写フィルムに積層された電磁波シールドフィルムとからなる転写フィルム付電磁波シールドフィルムであって、
上記電磁波シールドフィルムは、上記転写フィルムに接触する保護層と、上記保護層に積層されたシールド層と、上記シールド層に積層された、接着剤層とを含み、
上記転写フィルムのヤング率は、2.0GPa以上であることを特徴とする。
【0009】
本発明の転写フィルム付電磁波シールドフィルムを用いてシールドプリント配線板を製造する場合、転写フィルム付電磁波シールドフィルムの接着剤層を、プリント配線板の表面に当接し、圧着することになる。
この際、転写フィルムのヤング率が2.0GPa以上であると、転写フィルムは充分に硬いので、圧着の圧力が分散しにくくなる。
そのため、プリント配線板の表面に段差がある場合であったとしても、電磁波シールドフィルムの接着剤層をしっかりと圧すことができ、接着剤層が段差をしっかりと埋めることができる。」
以上の記載によれば、本件発明1は、プリント配線板の表面に段差がある場合でも、電磁波シールドフィルムの接着剤層をしっかりと圧すことができ、接着剤層が段差をしっかりと埋めることができるようにするために、「転写フィルムのヤング率」を「3.6GPa以上、4.5GPa以下」とするものであるといえる。
イ 一方、甲1には、以下の記載がある。
「【背景技術】
【0002】
プリント配線基板においては、導電性接着剤が多用される。例えば、プリント配線基板に接着される電磁波シールドフィルムは、金属箔等のシールド層とシールド層の表面に設けられた導電接着剤シートとを有する。導電性接着剤シートは、例えばシールド層の表面に導電性接着剤をシート状に塗布して形成し、シールド層をプリント配線基板の表面に接着すると共に、プリント配線基板のグランドパターンと、シールド層とを導通させる。」
「【0016】
本実施形態の導電性接着剤シートは、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の少なくとも一方と、導電性フィラーとを含み、被着物の表面と接着される面の負荷面積率(Smr(50%))が2%以上、好ましくは3%以上、14%以下、好ましくは13%以下である。負荷面積率をこのような範囲とすることにより、高い密着性と、低い接続抵抗値とを両立させることができる。」
以上の記載によれば、甲1物発明Aの「電磁波シールドフィルム」は、プリント配線基板に接着されるものであり、その際に、高い密着性と、低い接続抵抗値を両立させることができるようにするために、「導電性接着剤シート」における「被着物の表面と接着される面の負荷面積率Smr(50%)」を「8.26%」とするものであるといえる。
ウ しかし、プリント配線基板の表面に段差がある場合でも、「電磁波シールドフィルム」の「導電性接着剤シート」をしっかりと圧すことができ、接着剤層が段差をしっかりと埋めることができるようにするために、「導電性接着剤シート」のヤング率を3.6GPa以上、4.5GPa以下とすることは、甲1~甲3には記載も示唆もされていないし、また、本件特許の出願当時において、周知技術であったともいえない。
したがって、甲1物発明Aにおいて、甲2及び甲3に記載された事項に基づいて、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
(3)小括
以上から、本件発明1は、甲1物発明A、甲2及び甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 本件発明2~4について
本件発明2~4は、本件発明1の全ての構成を有するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲1物発明A、甲2及び甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 本件発明5について
(1)対比
本件発明5と甲1物発明Bとを対比する。
ア 甲1物発明Bの「表面に剥離層を設けた厚み25μmのPETフィルム」は、本件発明5の「転写フィルム」に相当する。
イ(ア)甲1物発明Bの「PETフィルムの表面に形成された厚み5μmの保護層」は、PETフィルムに積層されるように位置するといえから、本件発明5の「前記転写フィルムに積層されるように位置する保護層」に相当する。
(イ)甲1物発明Bの「保護層の表面に形成された」「導電性接着剤シート」は、「保護層」に積層されているといえるから、本件発明5の「前記保護層に積層された導電性を有する接着剤層」に相当する。
(ウ)甲1物発明Bの「PETフィルムの表面に形成された厚み5μmの保護層と、保護層の表面に形成された、熱硬化性樹脂と導電性フィラーを混合したものであって、厚みが15μmであり、被着物の表面と接着される面の負荷面積率Smr(50%)が8.26%であり、シールドとして機能する導電性接着剤シート」は、電磁波シールド効果を有するフィルム(以下、「甲1フィルムB」という。)であるといえるから、上記(ア)、(イ)の検討を参酌すると、本件発明5の「前記転写フィルムに積層されるように位置する保護層と、前記保護層に積層された導電性を有する接着剤層とを含」む「電磁波シールドフィルム」に相当する。
(エ)甲1物発明Bの甲1フィルムBは、「PETフィルム」に積層されているといえるから、本件発明5の「前記転写フィルムに積層された電磁波シールドフィルム」に相当する。
また、甲1物発明Bの「電磁波シールドフィルム」は、「PETフィルム」と甲1フィルムBとからなるものであるから、本件発明5の「転写フィルムと、前記転写フィルムに積層された電磁波シールドフィルムとからなる転写フィルム付電磁波シールドフィルム」に相当する。
ウ 上記1(1)ウ~オで検討したのと同様に、本件発明5と甲1物発明Bとは、「転写フィルムの厚さは、20~100μmであり、前記保護層の厚さは、1~15μmであり、前記接着剤層の厚さは、1~50μm」である点で共通する。
エ 甲1物発明Bの「電磁波シールドフィルム」は、「PETフィルム」付き「電磁波シールドフィルム」であるといえるから、本件発明5の「転写フィルム付電磁波シールドフィルム」に相当する。
オ 以上から、本件発明5と甲1物発明Bとの一致点と相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
「転写フィルムと、
前記転写フィルムに積層された電磁波シールドフィルムとからなる転写フィルム付電磁波シールドフィルムであって、
前記電磁波シールドフィルムは、前記転写フィルムに 積層されるように位置する保護層と、前記保護層に積層された導電性を有する接着剤層とを含み、
前記転写フィルムの厚さは、20~100μmであり、
前記保護層の厚さは、1~15μmであり、
前記接着剤層の厚さは、1~50μmであることを特徴とする転写フィルム付電磁波シールドフィルム。」
<相違点>
相違点2:本件発明5は、「前記転写フィルムのヤング率は、3.6GPa以上、4.5GPa以下」であるのに対し、甲1物発明Bは、そのような構成を有しているか不明である点。
(2)相違点2についての判断
相違点2に係る本件発明5の構成は、相違点1に係る本件発明1の構成と同じであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明5は、甲1物発明B、甲2及び甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
(3)小括
以上から、本件発明5は、甲1物発明B、甲2及び甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 本件発明6について
(1)対比
ア 甲1方法発明Aの「表面に剥離層を設けた厚み25μmのPETフィルム」は、本件発明6の「転写フィルム」に相当する。
また、甲1方法発明Aにおいて、「表面に剥離層を設けた厚み25μmのPETフィルム」を準備する準備工程を含むことは自明の事項であるから、本件発明6と甲1方法発明Aとは、「転写フィルムを準備する転写フィルム準備工程」を含む点で共通する。
イ(ア)上記1(1)イ(ア)~(ウ)の検討を参酌すると、甲1方法発明Aの「保護層」、「圧延銅箔」、「導電性接着剤シート」は、それぞれ、本件発明6の「保護層」、「シールド層」、「接着剤層」に相当する。
(イ)甲1方法発明Aは、「表面に剥離層を設けた厚み25μmのPETフィルム」に「保護層」、「圧延銅箔」及び「導電性接着剤シート」を順次積層しているといえ、当該順次形成したものは、上記1(1)イ(エ)の検討を参酌すると、電磁波シールド効果を有するフィルムであるといえるから、甲1方法発明Aは、「表面に剥離層を設けた厚み25μmのPETフィルム」に「保護層」、「圧延銅箔」及び「導電性接着剤シート」を順次積層して電磁波シールドフィルムを形成する電磁波シールドフィルム形成工程を含んでいるといえる。
したがって、本件発明6と甲1方法発明Aとは、「前記転写フィルムに保護層、シールド層、及び、接着剤層を順次積層して電磁波シールドフィルムを形成する電磁波シールドフィルム形成工程とを含」んでいる点で共通する。
ウ 上記1(1)ウ~オで検討したのと同様に、本件発明6と甲1方法発明Aとは、「転写フィルムの厚さは、20~100μmであり、前記保護層の厚さは、1~15μmであり、前記接着剤層の厚さは、1~50μm」である点で共通する。
エ 甲1方法発明Aの「電磁波シールドフィルム」は、「PETフィルム」付き「電磁波シールドフィルム」であるといえるから、本件発明6の「転写フィルム付電磁波シールドフィルム」に相当する。
オ 以上から、本件発明6と甲1方法発明Aとの一致点と相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
「転写フィルムを準備する転写フィルム準備工程と、
前記転写フィルムに保護層、シールド層、及び、接着剤層を順次積層して電磁波シールドフィルムを形成する電磁波シールドフィルム形成工程とを含み、
前記転写フィルムの厚さは、20~100μmであり、
前記保護層の厚さは、1~15μmであり、
前記接着剤層の厚さは、1~50μmであることを特徴とする転写フィルム付電磁波シールドフィルムの製造方法。」
<相違点>
相違点3:本件発明6は、「転写フィルム」の「ヤング率が3.6GPa以上、4.5GPa以下」であるのに対し、甲1方法発明Aは、そのような構成を有しているか不明である点。
(2)相違点3についての判断
相違点3に係る本件発明6の構成は、相違点1に係る本件発明1の構成と同じであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明6は、甲1方法発明A、甲2及び甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
(3)小括
以上から、本件発明6は、甲1方法発明A、甲2及び甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
5 本件発明7について
(1)対比
ア 甲1方法発明Bの「表面に剥離層を設けた厚み25μmのPETフィルム」は、本件発明7の「転写フィルム」に相当する。
また、甲1方法発明Bにおいて、「表面に剥離層を設けた厚み25μmのPETフィルム」を準備する準備工程を含むことは自明の事項であるから、本件発明7と甲1方法発明Bとは、「転写フィルムを準備する転写フィルム準備工程」を含む点で共通する。
イ(ア)甲1方法発明Bの「保護層」は、本件発明7の「保護層」に相当する。
(イ)甲1方法発明Bの「熱硬化性樹脂に導電性フィラーを混合したものであって」、「シールドとして機能する導電性接着剤シート」は、「電磁波シールドフィルム」を構成するものであるから、導電性樹脂からなり電磁波シールド機能を有するといえる。
したがって、甲1方法発明Bの「熱硬化性樹脂に導電性フィラーを混合したものであって」、「シールドとして機能する導電性接着剤シート」は、本件発明7の「導電性樹脂からなり電磁波シールド機能を有する接着剤層」に相当する。
(ウ)甲1方法発明Bは、「表面に剥離層を設けた厚み25μmのPETフィルム」に「保護層」及び「導電性接着剤シート」を順次積層しているといえ、当該順次形成したものは、上記3(1)イ(ウ)の検討を参酌すると、電磁波シールド効果を有するフィルムであるといえるから、甲1方法発明Bは、「表面に剥離層を設けた厚み25μmのPETフィルム」に「保護層」、「熱硬化性樹脂に導電性フィラーを混合したものであって」、「シールドとして機能する導電性接着剤シート」を順次積層して電磁波シールドフィルムを形成する電磁波シールドフィルム形成工程を含んでいるといえる。
したがって、本件発明7と甲1方法発明Bとは、「前記転写フィルムに保護層、シールド層、及び、接着剤層を順次積層して電磁波シールドフィルムを形成する電磁波シールドフィルム形成工程とを含み」との点で共通する。
ウ 上記3(1)ウで検討したのと同様に、本件発明7と甲1方法発明Bとは、「転写フィルムの厚さは、20~100μmであり、前記保護層の厚さは、1~15μmであり、前記接着剤層の厚さは、1~50μm」である点で共通する。
エ 甲1方法発明Bの「電磁波シールドフィルム」は、「PETフィルム」付き「電磁波シールドフィルム」であるといえるから、本件発明7の「転写フィルム付電磁波シールドフィルム」に相当する。
オ 以上から、本件発明7と甲1方法発明Bとの一致点と相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
「転写フィルムを準備する転写フィルム準備工程と、
前記転写フィルムに保護層、導電性樹脂からなり電磁波シールド機能を有する接着剤層を順次積層して電磁波シールドフィルムを形成する電磁波シールドフィルム形成工程とを含み、
前記転写フィルムの厚さは、20~100μmであり、
前記保護層の厚さは、1~15μmであり、
前記接着剤層の厚さは、1~50μmであることを特徴とする転写フィルム付電磁波シールドフィルムの製造方法。」
<相違点>
相違点4:本件発明7は、「転写フィルム」の「ヤング率が3.6GPa以上、4.5GPa以下」であるのに対し、甲1方法発明Bは、そのような構成を有しているか不明である点。
(2)相違点4についての判断
相違点4に係る本件発明7の構成は、相違点1に係る本件発明1の構成と同じであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明7は、甲1方法発明B、甲2及び甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
(3)小括
以上から、本件発明7は、甲1方法明B、甲2及び甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
6 本件発明8、9について
本件発明8は、請求項1~5のいずれかに記載の転写フィルム付電磁波シールドフィルムを準備する転写フィルム付電磁波シールドフィルム準備工程を含むシールドプリント配線板の製造方法の発明であり、また、本件発明9は、請求項8の記載を引用するシールドプリント配線板の製造方法であり、いずれも相違点1に係る本件発明1の構成又は相違点2に係る本件発明5の構成を有するものであるから、本件発明1又は本件発明5と同様の理由により、本件発明8、9は、甲1に記載された発明、甲2及び甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
7 申立人の主張
申立人は、特許異議申立書14ページ19行~15ページ9行において、甲1のPETフィルムを使用するにあたり、甲2及び甲3に記載の市販のPETフィルムを使用する蓋然性が高いから、本件発明のヤング率(3.6GPa以上、4.5GPa以下)であるPETフィルムを使用することは、適宜選択し得る範囲内のことである旨主張している。
しかし、甲2(上記第4 2)に記載されている非強化PETの引張り弾性率は、2.81~4.22×104kgf/cm2(2.75~4.14GPa)であり、また、甲3(上記第4 3)に記載されている二軸延伸PETフィルムの弾性率は、3.63~5.98GPaであり、いずれの弾性率も、本件発明の「転写フィルムのヤング率」である「3.6~4.5GPa」の範囲から外れる範囲を含んでいる。
そうすると、甲1に記載された発明のPETフィルムに、甲2及び甲3に記載のPETフィルムを使用しても、そのヤング率は必ず3.6GPa以上、4.5GPa以下になるとはいえない。
そして、上記1(2)ウで検討したとおり、甲2及び甲3には、プリント配線基板の表面に段差がある場合でも、「電磁波シールドフィルム」の「導電性接着剤シート」をしっかりと圧すことができ、接着剤層が段差をしっかりと埋めることができるようにするために、「導電性接着剤シート」のヤング率を3.6GPa以上、4.5GPa以下とすることは、記載も示唆もされていないから、甲2及び甲3に記載された事項を参酌しても、甲1に記載された発明において、PETフィルムのヤング率を3.6GPa以上、4.5GPa以下とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
8 まとめ
以上のとおりであるから、請求項1~9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反されたものではない。
したがって、申立理由1は理由がない。
第6 申立理由2(サポート要件)について
1 本件明細書の発明の詳細な説明(以下、単に「発明の詳細な説明」という。)の記載
発明の詳細な説明には以下の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】
・・・
【0007】
本発明は、上記問題点を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、シールドプリント配線板を製造する際に、電磁波シールドフィルムの接着剤層とプリント配線板の表面との間に隙間を生じにくくさせることができる転写フィルム付電磁波シールドフィルムを提供することである。」
「【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明の転写フィルム付電磁波シールドフィルムは、
転写フィルムと、上記転写フィルムに積層された電磁波シールドフィルムとからなる転写フィルム付電磁波シールドフィルムであって、
上記電磁波シールドフィルムは、上記転写フィルムに接触する保護層と、上記保護層に積層されたシールド層と、上記シールド層に積層された、接着剤層とを含み、
上記転写フィルムのヤング率は、2.0GPa以上であることを特徴とする。
【0009】
本発明の転写フィルム付電磁波シールドフィルムを用いてシールドプリント配線板を製造する場合、転写フィルム付電磁波シールドフィルムの接着剤層を、プリント配線板の表面に当接し、圧着することになる。
この際、転写フィルムのヤング率が2.0GPa以上であると、転写フィルムは充分に硬いので、圧着の圧力が分散しにくくなる。
そのため、プリント配線板の表面に段差がある場合であったとしても、電磁波シールドフィルムの接着剤層をしっかりと圧すことができ、接着剤層が段差をしっかりと埋めることができる。
・・・
【0012】
別の本発明の転写フィルム付電磁波シールドフィルムは、
転写フィルムと、上記転写フィルムに積層された電磁波シールドフィルムとからなる転写フィルム付電磁波シールドフィルムであって、
上記電磁波シールドフィルムは、上記転写フィルムに接触する保護層と、上記保護層に積層された導電性を有する接着剤層とを含み、
上記転写フィルムのヤング率は、2.0GPa以上であることを特徴とする。
【0013】
本発明の転写フィルム付電磁波シールドフィルムでは、転写フィルムのヤング率が2.0GPa以上である。すなわち、転写フィルムは充分に硬い。従って、プリント配線板に電磁波シールドフィルムを圧着する際に、圧力が分散しにくくなる。
そのため、プリント配線板の表面に段差がある場合であったとしても、電磁波シールドフィルムの接着剤層をしっかりと圧すことができ、接着剤層が段差をしっかりと埋めることができる。
なお、本発明の転写フィルム付電磁波シールドフィルムにおいて、導電性を有する接着剤層は、電磁波シールド機能、及び、プリント配線板との接着機能の両方を有する。」
「【0021】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る転写フィルム付電磁波シールドフィルムについて図面を用いながら詳述する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る転写フィルム付電磁波シールドフィルムの一例を模式的に示す断面図である。
【0022】
図1に示すように、転写フィルム付電磁波シールドフィルム10は、転写フィルム20と、転写フィルム20に積層された電磁波シールドフィルム30とからなる。
また、電磁波シールドフィルム30は、転写フィルム20に接触する保護層31と、保護層31に積層されたシールド層32と、シールド層32に積層された、接着剤層33とを含む。
【0023】
そして、転写フィルム20のヤング率は2.0GPa以上である。
なお、転写フィルム20のヤング率の下限は2.5GPaであることが望ましく、2.7であることがより望ましい。
また、転写フィルム20のヤング率の上限は5.0GPaであることが望ましく、4.5であることがより望ましい。
転写フィルムのヤング率が5.0GPaを超えると、転写フィルム付電磁波シールドフィルムをプリント配線板に貼付する際、段差追随性が低下しやすくなる。
【0024】
転写フィルム付電磁波シールドフィルム10は、プリント配線板に貼付されてシールドプリント配線板を製造するために使用される。
転写フィルム付電磁波シールドフィルム10を用いてシールドプリント配線板を製造する場合、転写フィルム付電磁波シールドフィルム10の接着剤層33を、プリント配線板の表面に当接し、圧着することになる。
この際、転写フィルム20のヤング率が2.0GPa以上であると、転写フィルム20は充分に硬いので、圧着の圧力が分散しにくくなる。
そのため、プリント配線板の表面に段差がある場合であったとしても、電磁波シールドフィルム30の接着剤層33をしっかりと圧すことができ、接着剤層33が段差をしっかりと埋めることができる。
・・・
【0028】
転写フィルムの厚さは、10~150μmであることが望ましく、20~100μmであることがより望ましく、さらに望ましくは40~60μmである。
転写フィルムの厚さが、10μm未満であると、シールドプリント配線板の製造時に、転写フィルムが破断して電磁波シールドフィルムから剥離しにくくなる。
転写フィルムの厚さが、150μmを超えると、扱いにくくなる。
・・・
【0036】
保護層の厚さは、特に限定されず、必要に応じて適宜設定することができるが、1~15μmであることが望ましく、3~10μmであることがより望ましい。
保護層の厚さが1μm未満であると、薄すぎるので接着剤層及びシールド層を充分に保護しにくくなる。
保護層の厚さが15μmを超えると、厚すぎるので電磁波シールドフィルムが折り曲がりにくくなり、また、保護層自身が破損しやすくなる。そのため、耐折り曲げ性が要求される部材へ適用しにくくなる。
・・・
【0038】
(シールド層)
図1における転写フィルム付電磁波シールドフィルム10においてシールド層32は、金属層からなっていてもよく、導電性樹脂からなっていてもよい。
転写フィルム付電磁波シールドフィルム10では、電磁波をシールドすることができればシールド層の材料は特に限定されない。
・・・
【0050】
接着剤層の厚さは、特に限定されないが、1~50μmであることが望ましく、3~30μmであることがより望ましい。
接着剤層の厚さが1μm未満であると、接着剤層を構成する樹脂の量が少ないため、充分な接着性能が得られにくい。また、破損しやすくなる。
接着剤層の厚さが50μmを超えると、全体が厚くなり、柔軟性が失われやすい。
【0051】
接着剤層は、導電性を有していてもよい。
・・・
【0060】
次に、本発明の第1実施形態に係る転写フィルム付電磁波シールドフィルムの製造方法について説明する。
本発明の転写フィルム付電磁波シールドフィルムの製造方法は、(1)転写フィルム準備工程と、(2)電磁波シールドフィルム形成工程とを含む。
【0061】
(1)転写フィルム準備工程
本工程では、ヤング率が2.0GPa以上である転写フィルムを準備する。
転写フィルムの材料等は既に説明しているので、ここでの説明は省略する。
【0062】
(2)電磁波シールドフィルム形成工程
次に、転写フィルムに保護層、シールド層、及び、接着剤層を順次積層して電磁波シールドフィルムを形成する。
これらを積層する方法としては、従来の電磁波シールドフィルムを製造する方法と同様の方法を用いることができる。
例えば、転写フィルムに保護層及びシールド層を形成し、別の剥離フィルムに接着剤層を形成し、これらを貼り合わせることにより、転写フィルム付電磁波シールドフィルムを作製してもよい。
なお、保護層、シールド層及び接着剤層の材料等は既に説明しているので、ここでの説明は省略する。
【0063】
以上の工程により本発明の第1実施形態に係る転写フィルム付電磁波シールドフィルムを製造することができる。
【0064】
次に、本発明の第1実施形態に係る転写フィルム付電磁波シールドフィルムを用いたシールドプリント配線板の製造方法について説明する。
本発明の第1実施形態に係るシールドプリント配線板の製造方法は、(1)プリント配線板準備工程と、(2)転写フィルム付電磁波シールドフィルム準備工程と、(3)圧着工程と、(4)剥離工程とを含む。
・・・
【0066】
(1)プリント配線板準備工程
まず、図2に示すように、ベースフィルム51と、ベースフィルム51の上に形成されたグランド回路52aを含むプリント回路52と、プリント回路52を覆うカバーレイ53とを含むプリント配線板50を準備する。
プリント配線板50では、カバーレイ53に、グランド回路52aを露出する孔54が形成されており、孔54が段差となっている。
【0067】
ベースフィルム51、プリント回路52及びカバーレイ53は、従来のプリント配線板で使用されるものと同じであってもよい。
【0068】
(2)転写フィルム付電磁波シールドフィルム準備工程
次に、図3に示すように、上記本発明の第1実施形態に係る転写フィルム付電磁波シールドフィルム10を準備する。
転写フィルム付電磁波シールドフィルム10は、転写フィルム20と、転写フィルム20に積層された電磁波シールドフィルム30とからなる。
また、電磁波シールドフィルム30は、転写フィルム20に接触する保護層31と、保護層31に積層されたシールド層32と、シールド層32に積層された、接着剤層33とを含む。
そして、接着剤層33は導電性を有する。
【0069】
(3)圧着工程
次に、図4に示すように、転写フィルム付電磁波シールドフィルム10の接着剤層33を、プリント配線板50のカバーレイ53に接触するように配置し、転写フィルム付電磁波シールドフィルム10をプリント配線板50に圧着する。
【0070】
この際、接着剤層33は、可撓性を有するので、孔54を埋めることになる。
転写フィルム20のヤング率は2.0GPa以上であるので、プリント配線板50に電磁波シールドフィルム30を圧着する際に、圧力が分散しにくくなる。
そのため、電磁波シールドフィルム30の接着剤層33をしっかりと圧すことができ、接着剤層33が孔54をしっかりと埋めることができる。
したがって、接着剤層33とグランド回路52aとがしっかりと接触することになる。
【0071】
また、接着剤層33が導電性を有するので、グランド回路52aと接着剤層33とが電気的に接続可能となる。
上記の通り、接着剤層33とグランド回路52aとはしっかり接触しているので接続抵抗が低い状態となる。
【0072】
また、シールドプリント配線板の製造後において、電磁波シールドフィルムの接着剤層と外部グランドとを電気的に接続させることにより、グランド回路と外部グランドとを電気的に接続させることができる。
【0073】
本工程における圧着時の条件は特に限定されないが、例えば、圧力:1.0~5.0MPa、温度:140~190℃、時間:15~90分の条件が望ましい。
【0074】
(4)剥離工程
次に、図5に示すように、転写フィルム付電磁波シールドフィルム10から転写フィルム20を剥離する。
剥離方法は、特に限定されず、従来の方法を採用することができる。
【0075】
以上の工程を経て、シールドプリント配線板60を製造することができる。」
「【0078】
図6は、本発明の第2実施形態に係る転写フィルム付電磁波シールドフィルムの一例を模式的に示す断面図である。
図6に示すように、転写フィルム付電磁波シールドフィルム110は、転写フィルム120と、転写フィルム120に積層された電磁波シールドフィルム130とからなる。
また、電磁波シールドフィルム130は、転写フィルム120に接触する保護層131と、保護層131に積層された導電性を有する接着剤層133と含む。
【0079】
そして、転写フィルム120のヤング率は、2.0GPa以上である。
なお、転写フィルム120のヤング率の下限は2.5GPaであることが望ましく、2.7GPaであることがより望ましい。
また、転写フィルム120のヤング率の上限は5.0GPaであることが望ましく、4.5GPaであることがより望ましい。
転写フィルムのヤング率が5.0GPaを超えると、転写フィルム付電磁波シールドフィルムをプリント配線板に貼付する際、段差追随性が低下しやすくなる。
【0080】
転写フィルム付電磁波シールドフィルム110は、プリント配線板に貼付されてシールドプリント配線板を製造するために使用される。
転写フィルム付電磁波シールドフィルム110を用いてシールドプリント配線板を製造する場合、転写フィルム付電磁波シールドフィルム110の接着剤層133を、プリント配線板の表面に当接し、圧着することになる。
この際、転写フィルム120のヤング率が2.0GPa以上であると、転写フィルム120は充分に硬いので、圧着の圧力が分散しにくくなる。
そのため、プリント配線板の表面に段差がある場合であったとしても、電磁波シールドフィルム130の接着剤層133をしっかりと圧すことができ、接着剤層133が段差をしっかりと埋めることができる。
【0081】
なお、転写フィルム付電磁波シールドフィルム110において、接着剤層133は導電性を有し、電磁波シールド機能も有する。
すなわち、転写フィルム付電磁波シールドフィルム110では、接着剤層133は、電磁波シールド機能、及び、プリント配線板との接着機能の両方を有する。
・・・
【0083】
接着剤層133は、導電性粒子と、樹脂とから構成されていてもよい。
・・・
【0091】
次に、本発明の第2実施形態に係る転写フィルム付電磁波シールドフィルムの製造方法について説明する。
本発明の転写フィルム付電磁波シールドフィルムの製造方法は、(1)転写フィルム準備工程と、(2)電磁波シールドフィルム形成工程とを含む。
【0092】
(1)転写フィルム準備工程
本工程では、ヤング率が2.0GPa以上である転写フィルムを準備する転写フィルムの材料等は既に説明しているので、ここでの説明は省略する。
【0093】
(2)電磁波シールドフィルム形成工程
次に、転写フィルムに保護層、及び、接着剤層を順次積層して電磁波シールドフィルムを形成する。
これらを積層する方法としては、従来の電磁波シールドフィルムを製造する方法と同様の方法を用いることができる。
また、これらの材料等は既に説明しているので、ここでの説明は省略する。」
「【0095】
(実施例1-1~1-3)及び(比較例1-1)
(1)転写フィルム準備工程
表1に示すヤング率を有する厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる転写フィルム(実施例1-1~1-3)及び厚さ50μmのポリメチルペンテンからなる転写フィルム(比較例1-1)を準備した。なお、ヤング率は、引張試験機(島津製作所(株)製、商品名AGS-X50S)用い、JIS K 7113-1995に準拠して、25℃において測定した値である。
【0096】
(2)電磁波シールドフィルム形成工程
転写フィルムの表面に離型剤を塗布し加熱乾燥して離型剤層を形成した。保護層用組成物としてエポキシ系樹脂を準備し、離型剤層の表面に、当該エポキシ系樹脂を、ワイヤーバーを用いて塗布し、加熱乾燥することで、厚さ5μmの保護層を形成した。
次に、保護層の表面に厚さ0.1μmの銀からなるシールド層を、真空蒸着にて形成した。
次に、エポキシ系樹脂に、導電性フィラーとして平均粒子径5μmの樹枝状銀被覆銅粉を15質量%となるように添加して接着剤層用組成物を準備した。そして、シールド層の上に当該接着剤層用組成物をワイヤーバーにより塗布した後、100℃×3分の乾燥を行い、厚さ15μmの異方導電性を有する接着剤層を形成した。
以上の工程を経て、実施例1-1~1-3及び比較例1-1に係る転写フィルム付電磁波シールドフィルムを作製した。
【0097】
(実施例2-1~2-3)及び(比較例2-1)
(1)転写フィルム準備工程
表2に示すヤング率を有する厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる転写フィルム(実施例2-1~2-3)及び厚さ50μmのポリメチルペンテンからなる転写フィルム(比較例2-1)を準備した。なお、ヤング率は、引張試験機(島津製作所(株)製、商品名AGS-X50S)用い、JIS K 7113-1995に準拠して、25℃において測定した値である。
【0098】
(2)電磁波シールドフィルム形成工程
転写フィルムの表面に離型剤を塗布した。保護層用組成物としてエポキシ系樹脂を準備し、離型剤を塗布した転写フィルムの表面に、当該エポキシ系樹脂を、ワイヤーバーを用いて塗布し、加熱乾燥することで、厚さ5μmの保護層を形成した。
次に、エポキシ系樹脂に、導電性フィラーとして平均粒子径5μmの樹枝状銀被覆銅粉を60質量%となるように添加した接着剤層用組成物を準備した。
そして、保護層の上に当該接着剤層用組成物をワイヤーバーにより塗布した後、100℃×3分の乾燥を行い、厚さ15μmの等方導電性を有する接着剤層を形成した。
以上の工程を経て、実施例2-1~2-3及び比較例2-1に係る転写フィルム付電磁波シールドフィルムを作製した。
なお、実施例2-1~2-3及び比較例2-1に係る転写フィルム付電磁波シールドフィルムにおいて、導電性を有する接着剤層は、電磁波シールド機能、及び、プリント配線板との接着機能の両方を有する。
【0099】
(評価用基板の作成)
図7(a)及び(b)は、実施例1に係る評価用基板の作製方法を模式的に示す工程図である。
まず、図7(a)に示すように、ポリイミドからなるベースフィルム251上に、表面の一部に金めっき層が設けられた銅箔からなる2つのプリント回路252を形成し、その上に、プリント回路を露出する孔254(直径0.5mm)を有するポリイミドフィルムからなるカバーレイ253(厚さ37.5μm)を形成することにより評価用基板として用いるプリント配線板250を作製した。
なお、プリント配線板250において、プリント回路252は、グランド回路を模したものである。
【0100】
次に、図7(b)に示すように、実施例1-1に係る転写フィルム付電磁波シールドフィルム210の接着剤層233が、プリント配線板250のカバーレイ253に接触するように転写フィルム付電磁波シールドフィルム210をプリント配線板250に配置した。
次に、プレス機を用いて温度:170℃、時間3分、圧力:3.0MPaの条件で加熱加圧し、転写フィルム付電磁波シールドフィルムをプリント配線板に圧着した。
次に、転写フィルム220を剥離することにより実施例1に係る評価用基板を得た。
なお、図7(b)中、符号230は電磁波シールドフィルムを示し、符号231は保護層を示し、符号232はシールド層を示す。
【0101】
実施例1-2、1-3、2-1~2-3、並びに、比較例1-1及び比較例2-1に係る転写フィルム付電磁波シールドフィルムを用いた以外は、上記実施例1に係る評価用基板を得る方法と同様の方法で、実施例1-2、1-3及び2-1~2-3、並びに、比較例1-1及び比較例2-1に係る評価用基板を得た。
【0102】
(接続抵抗試験)
図8は、接続抵抗試験における実施例1-1に係る評価用基板の接続抵抗の測定方法を模式的に示す模式図である。
実施例1-1に係る評価用基板において、図8に示すように2つのプリント回路252間の電気抵抗値を抵抗計270で測定し、評価用基板のプリント回路と転写フィルム付電磁波シールドフィルムの接着剤層との接続抵抗を評価した。
また、同様の方法で、実施例1-2、1-3及び2-1~2-3、並びに、比較例1-1及び2-1に係る評価用基板における評価用基板のプリント回路と転写フィルム付電磁波シールドフィルムの接着剤層との接続抵抗を評価した。結果を表1及び表2に示す。
なお、実施例1-1~1-3、比較例1-1では接続抵抗が3000mΩ未満の場合を、実施例2-1~2-3、比較例2-1では接続抵抗が250mΩ未満の場合を、導電性に優れるものとして評価した。
【0103】
【表1】
[図:0001406746000006.jpg]
【0104】
【表2】
[図:0001406746000007.jpg]
【0105】
表1及び2に示すように、実施例1-1~1-3及び実施例2-1~2-3の転写フィルム付電磁波シールドフィルムを用いた場合、接続抵抗が低い状態になることが判明した。
すなわち、実施例1-1~1-3及び実施例2-1~2-3では、転写フィルム付電磁波シールドフィルムの接着剤層と、評価用基板のプリント回路とがしっかりと接触していることが示された。」
2 本件発明1について
(1)発明の詳細な説明の【0007】の記載によれば、本件発明が解決しようとする課題(以下、「本件課題」という。)は、「シールドプリント配線板を製造する際に、電磁波シールドフィルムの接着剤層とプリント配線板の表面との間に隙間を生じにくくさせることができる転写フィルム付電磁波シールドフィルムを提供すること」である。
(2)同【0021】、【0022】には、第1実施形態に係る転写フィルム付電磁波シールドフィルム10は、転写フィルム20と、転写フィルム20に積層された電磁波シールドフィルム30とからなること、及び、電磁波シールドフィルム30は、転写フィルム20に接触する保護層31と、保護層31に積層されたシールド層32と、シールド層32に積層された、接着剤層33とを含むことが記載されている。
また、同【0023】には、転写フィルム20のヤング率は2.0GPa以上であり、上限は4.5GPa以下がより望ましいことが記載され、同【0024】には、転写フィルム付電磁波シールドフィルム10は、プリント配線板に貼付されてシールドプリント配線板を製造するために使用されるものであること、転写フィルム付電磁波シールドフィルム10を用いてシールドプリント配線板を製造する場合、転写フィルム付電磁波シールドフィルム10の接着剤層33を、プリント配線板の表面に当接し、圧着することになること、及び、この際、転写フィルム20のヤング率が2.0GPa以上であると、転写フィルム20は充分に硬いので、圧着の圧力が分散しにくくなるため、プリント配線板の表面に段差がある場合であったとしても、電磁波シールドフィルム30の接着剤層33をしっかりと圧すことができ、接着剤層33が段差をしっかりと埋めることができることが記載されている。
さらに、同【0028】には、転写フィルムの厚さは、20~100μmが望ましいこと、同【0036】には、保護層の厚さは、1~15μmが望ましいこと、同【0050】には、接着剤層の厚さは、1~50μmが望ましいことが記載されている。
ここで、同【0095】、【0096】、【0103】の【表1】には、転写フィルムの表面に離型剤を塗布した転写フィルムの表面に、厚さ5μmの保護層を形成し、保護層の上に厚さ15μmの異方導電性を有する接着剤層を形成することにより作成した実施例1-1に係る転写フィルム付電磁波シールドフィルムにおいて、転写フィルムのヤング率は3.6GPaであることが記載されている。
(3)上記(2)から、転写フィルム20と、転写フィルム20に積層された電磁波シールドフィルム30とからなる転写フィルム付電磁波シールドフィルム10であって、電磁波シールドフィルム30は、転写フィルム20に接触する保護層31と、保護層31に積層されたシールド層32と、シールド層32に積層された、接着剤層33とを含み、転写フィルム20のヤング率は3.6GPa以上4.5GPa以下であり、転写フィルムの厚さは、20~100μmであり、保護層の厚さは、1~15μmであり、接着剤層の厚さは、1~50μmである転写フィルム付電磁波シールドフィルム10は、プリント配線板に貼付されてシールドプリント配線板を製造するために使用されるものであり、転写フィルム付電磁波シールドフィルム10を用いてシールドプリント配線板を製造する場合、転写フィルム付電磁波シールドフィルム10の接着剤層33を、プリント配線板の表面に当接し、圧着することになり、この際、転写フィルム20のヤング率は2.0GPa以上であるから、転写フィルム20は充分に硬いので、圧着の圧力が分散しにくくなるため、プリント配線板の表面に段差がある場合であったとしても、電磁波シールドフィルム30の接着剤層33をしっかりと圧すことができ、接着剤層33が段差をしっかりと埋めることができることが理解できる。
そうすると、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえ、また、発明の詳細な説明の記載により当業者が上記本件課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
3 本件発明2~4について
発明の詳細な説明の【0051】、【0038】には、本件発明2~4と同様の構成が記載されているから、本件発明2~4は、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえ、また、本件発明2~4は、いずれも本件発明1の構成を有するものであるから、本件発明1と同様に、発明の詳細な説明の記載により当業者が上記本件課題を解決できると認識できる範囲のものである。
4 本件発明5について
(1)発明の詳細な説明の【0078】には、第2実施形態に係る転写フィルム付電磁波シールドフィルム110は、転写フィルム120と、転写フィルム120に積層された電磁波シールドフィルム130とからなること、及び、電磁波シールドフィルム130は、転写フィルム120に接触する保護層131と、保護層131に積層された導電性を有する接着剤層133と含むことが記載されている。
また、同【0079】には、転写フィルム120のヤング率は、2.0GPa以上であり、上限は4.5GPa以下がより望ましいことが記載され、同【0080】には、転写フィルム付電磁波シールドフィルム110は、プリント配線板に貼付されてシールドプリント配線板を製造するために使用されること、転写フィルム付電磁波シールドフィルム110を用いてシールドプリント配線板を製造する場合、転写フィルム付電磁波シールドフィルム110の接着剤層133を、プリント配線板の表面に当接し、圧着することになること、及び、この際、転写フィルム120のヤング率が2.0GPa以上であると、転写フィルム120は充分に硬いので、圧着の圧力が分散しにくくなるため、プリント配線板の表面に段差がある場合であったとしても、電磁波シールドフィルム130の接着剤層133をしっかりと圧すことができ、接着剤層133が段差をしっかりと埋めることができることが記載されている。
さらに、同【0028】には、転写フィルムの厚さは、20~100μmが望ましいこと、同【0036】には、保護層の厚さは、1~15μmが望ましいこと、同【0050】には、接着剤層の厚さは、1~50μmが望ましいことが記載されている。
ここで、同【0097】、【0098】、【0104】の【表2】には、転写フィルムの表面に離型剤を塗布した転写フィルムの表面に、厚さ5μmの保護層を形成し、保護層の上に厚さ15μmの等方導電性を有する接着剤層を形成することにより作製した実施例2-1に係る転写フィルム付電磁波シールドフィルムにおいて、転写フィルムのヤング率は3.6GPaであることが記載されている。
(2)上記(1)から、転写フィルム120と、転写フィルム120に積層された電磁波シールドフィルム130とからなる転写フィルム付電磁波シールドフィルム110において、電磁波シールドフィルム130は、転写フィルム120に接触する保護層131と、保護層131に積層された導電性を有する接着剤層133と含み、転写フィルム20のヤング率は3.6GPa以上4.5GPa以下であり、転写フィルムの厚さは、20~100μmであり、保護層の厚さは、1~15μmであり、接着剤層の厚さは、1~50μmである転写フィルム付電磁波シールドフィルム10は、プリント配線板に貼付されてシールドプリント配線板を製造するために使用されるものであり、転写フィルム付電磁波シールドフィルム110を用いてシールドプリント配線板を製造する場合、転写フィルム付電磁波シールドフィルム110の接着剤層133を、プリント配線板の表面に当接し、圧着することになり、この際、転写フィルム120のヤング率は2.0GPa以上であるから、転写フィルム120は充分に硬いので、圧着の圧力が分散しにくくなるため、プリント配線板の表面に段差がある場合であったとしても、電磁波シールドフィルム130の接着剤層133をしっかりと圧すことができ、接着剤層133が段差をしっかりと埋めることができることが理解できる。
そうすると、本件発明5は、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえ、また、発明の詳細な説明の記載により当業者が上記本件課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
5 本件発明6について
(1)発明の詳細な説明の【0060】には、第2実施形態に係る転写フィルム付電磁波シールドフィルムの製造方法は、(1)転写フィルム準備工程と、(2)電磁波シールドフィルム形成工程とを含むこと、同【0061】には、転写フィルム準備工程では、ヤング率が2.0GPa以上である転写フィルムを準備すること、同【0062】には、電磁波シールドフィルム形成工程として、転写フィルムに保護層、シールド層、及び、接着剤層を順次積層して電磁波シールドフィルムを形成することが記載されている。
(2)上記(1)の記載、及び、上記2(2)の検討を参酌すると、ヤング率が3.6GPa以上4.5GPa以下である転写フィルムを準備する転写フィルム準備工程と、転写フィルムに保護層、シールド層、及び、接着剤層を順次積層して電磁波シールドフィルムを形成する電磁波シールドフィルム形成工程とを含み、転写フィルムの厚さは、20~100μmであり、保護層の厚さは、1~15μmであり、接着剤層の厚さは、1~50μmである転写フィルム付電磁波シールドフィルムの製造方法は、転写フィルムのヤング率は2.0GPa以上であるから、転写フィルムは充分に硬いので、圧着の圧力が分散しにくくなるため、プリント配線板の表面に段差がある場合であったとしても、電磁波シールドフィルムの接着剤層をしっかりと圧すことができ、接着剤層が段差をしっかりと埋めることができることが理解できる。
そうすると、本件発明6は、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえ、また、発明の詳細な説明の記載により当業者が上記本件課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
6 本件発明7について
(1)発明の詳細な説明の【0091】には、第2実施形態に係る転写フィルム付電磁波シールドフィルムの製造方法は、(1)転写フィルム準備工程と、(2)電磁波シールドフィルム形成工程とを含むこと、同【0092】には、転写フィルム準備工程では、ヤング率が2.0GPa以上である転写フィルムを準備すること、同【0093】には、電磁波シールドフィルム形成工程として、転写フィルムに保護層、及び、接着剤層を順次積層して電磁波シールドフィルムを形成することが記載されている。
また、同【0083】には、接着剤層133は、導電性粒子と、樹脂とから構成されていてもよいことが記載されているから、接着剤層は、導電性樹脂からなるといえる。
さらに、同【0081】には、接着剤層133は導電性を有し、電磁波シールド機能も有することが記載されている。
(2)上記(1)の記載、及び、上記4(2)の検討を参酌すると、ヤング率が3.6GPa以上4.5GPa以下である転写フィルムを準備する転写フィルム準備工程と、転写フィルムに保護層、導電性樹脂からなり、電磁波シールド機能する接着剤層を順次積層して電磁波シールドフィルムを形成する電磁波シールドフィルム形成工程とを含み、転写フィルムの厚さは、20~100μmであり、保護層の厚さは、1~15μmであり、接着剤層の厚さは、1~50μmである転写フィルム付電磁波シールドフィルムの製造方法は、転写フィルムのヤング率は2.0GPa以上であるから、転写フィルムは充分に硬いので、圧着の圧力が分散しにくくなるため、プリント配線板の表面に段差がある場合であったとしても、電磁波シールドフィルムの接着剤層をしっかりと圧すことができ、接着剤層が段差をしっかりと埋めることができることが理解できる。
そうすると、本件発明7は、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえ、また、発明の詳細な説明の記載により当業者が上記本件課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
7 本件発明8、9について
発明の詳細な説明の【0064】~【0074】には、本件発明8、9と同様の構成が記載されているから、本件発明8、9は、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえ、また、本件発明8、9は、いずれも、本件発明1~本件発明5のいずれかの構成を有するものであるから、本件発明1~5と同様に、発明の詳細な説明の記載により当業者が上記本件課題を解決できると認識できる範囲のものである。
8 まとめ
以上のとおりであるから、請求項1~9に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。
したがって、申立理由2は、理由がない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-701062