特許異議申立
2023-700485
とろみ付与用組成物
- 審判番号
- 2023-700485
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-533002
- 登録番号
- 7170143
- 請求日
- 2023年05月11日
- 審決日
- 2024年07月29日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】森永乳業株式会社
- 【権利者代理人】渡邊 薫
- 【異議申立人】服部 道俊
- 【異議申立人】渡辺 伸子
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 猛
- 審判官 粟野 正明
- 審判官 相澤 啓祐
- 分類
- P1651.113-YAA(A23L) / P1651.121-YAA(A23L) / P1651.537-YAA(A23L) / P1651.112-YAA(A23L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項第2号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第7項、特許法第126条第7項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7170143号発明「とろみ付与用組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7170143号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~13〕、14について訂正することを認める。
特許第7170143号の請求項1~9、11~14に係る特許を維持する。
特許第7170143号の請求項10に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件の特許第7170143号(以下「本件特許」という。)の請求項1~14に係る特許についての出願(特願2021-533002号。以下「本願」という。)は、2020年(令和 2年) 7月 8日(優先権主張 令和 1年 7月12日(以下「優先日」という。))を国際出願日とする出願であって、令和 4年11月 2日にその特許権の設定登録がされ、同年11月11日に特許掲載公報が発行され、その後、令和 5年 5月11日に、その請求項1~14(全請求項)に係る特許について、特許異議申立人である服部 道俊(以下「申立人1」という。)により特許異議の申立てがされるとともに、同年 5月11日に、その請求項1~14(全請求項)に係る特許について、特許異議申立人である渡辺 伸子(以下「申立人2」という。)により特許異議の申立てがされたものであり、その後の経緯は以下のとおりである。
令和 5年 9月15日付け 取消理由通知
同年11月17日 特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
令和 6年 2月 2日 申立人1による意見書の提出
同年 2月 5日 申立人2による意見書の提出
同年 3月18日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年 4月25日 特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
同年 5月13日付け 手続補正指令(方式)
同年 5月29日 特許権者による手続補正書(方式)の提出
なお、令和 6年 4月25日に提出され、同年 5月29日提出の手続補正書(方式)によって補正された訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。また、本件訂正請求書による訂正請求を以下「本件訂正請求」という。)による訂正(以下「本件訂正」という。)については、すでに特許異議申立人に意見書の提出の機会が与えられ、訂正請求によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、事件において提出された全ての証拠や意見等を踏まえて更に審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となると合議体が判断した場合であって、特許法第120条の5第5項ただし書に規定する「特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情があるとき」に該当するといえるから、申立人1、2に意見書を提出する機会を与えないこととした。
第2 本件訂正請求について
1 訂正請求の趣旨、及び訂正の内容
本件訂正請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~14について訂正することを求めるものであり、本件訂正の内容は、以下のとおりである。
なお、令和 5年11月17日提出の訂正請求書による訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなされる。
(1)訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「キサンタンガム及び水溶性カルシウム塩を含み、」と記載されているのを「キサンタンガム、水溶性カルシウム塩及びクエン酸塩を含み、」と訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項10を削除する。
(3)訂正事項3
訂正前の特許請求の範囲の請求項11に「請求項10に記載」と記載されているのを「請求項1~9のいずれか一項に記載」と訂正する。
(4)訂正事項4
訂正前の特許請求の範囲の請求項12に「請求項1~11のいずれか一項に記載」と記載されているのを「請求項1~9、または11のいずれか一項に記載」と訂正する。
(5)訂正事項5
訂正前の特許請求の範囲の請求項13に「請求項1~12のいずれか一項に記載」と記載されているのを「請求項1~9、11または12のいずれか一項に記載」と訂正する。
(6)訂正事項6
訂正前の特許請求の範囲の請求項13に「キサンタンガム含有粉末」と記載されているのを「少なくともキサンタンガム及び水溶性カルシウム塩を含む粉末」と訂正する。
(7)訂正事項7
訂正前の特許請求の範囲の請求項14に「キサンタンガム及び水溶性カルシウム塩を含有し」と記載されているのを「キサンタンガム、水溶性カルシウム塩及びクエン酸塩を含有し」と訂正する。
2 訂正の適否についての当審の判断
(1)訂正の目的、特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否、及び新規事項追加の有無
ア 訂正事項1について
訂正事項1に係る訂正は、請求項1に係る「キサンタンガム及び水溶性カルシウム塩を含」む「粉末状のとろみ付与用組成物」が、さらに「クエン酸塩」を含むことを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
そして、上記訂正事項1に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
また、請求項1に係る「粉末状のとろみ付与用組成物」が、「キサンタンガム及び水溶性カルシウム塩」に加えて、さらに「クエン酸塩」を含むことは、本願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)の【請求項10】、【0017】及び【0022】に記載された事項であるといえるから、上記訂正事項1に係る訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
イ 訂正事項2について
訂正事項2に係る訂正は、訂正前の請求項10を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
そして、上記訂正事項2に係る訂正は、請求項10を削除するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
また、上記訂正事項2に係る訂正は、明らかに本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものといえるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ 訂正事項3について
訂正事項3に係る訂正は、訂正前の請求項11が請求項10を引用していたところ、上記訂正事項1に係る訂正によって、訂正前の請求項10に記載されていた特定事項が請求項1に組み入れられ、上記訂正事項2に係る訂正によって、請求項10が削除されたことに伴って、請求項11の引用請求項を「請求項1~9のいずれか一項」に修正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
そして、上記訂正事項3に係る訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
また、上記訂正事項3に係る訂正は、明らかに本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものといえるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
エ 訂正事項4、5について
訂正事項4、5に係る訂正は、上記訂正事項2に係る訂正によって、請求項10が削除されたことに伴って、請求項12、13の引用請求項から請求項10を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
そして、上記訂正事項4、5に係る訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
また、上記訂正事項4、5に係る訂正は、明らかに本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものといえるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
オ 訂正事項6について
訂正事項6に係る訂正は、訂正前の請求項13記載の「キサンタンガム含有粉末」と、訂正前の請求項13が引用する請求項1~12記載の「キサンタンガム及び水溶性カルシウム塩を含」む「粉末状のとろみ付与用組成物」との関係で不合理を生じているため不明瞭となっている記載上の不備を訂正し、その本来の意を明らかにするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
そして、上記訂正事項6に係る訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
また、訂正事項6に係る訂正は、明らかに本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるといえるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
カ 訂正事項7について
訂正事項7に係る訂正は、請求項14に係る「キサンタンガム及び水溶性カルシウム塩を含」む「粉末状のとろみ付与用組成物」が、さらに「クエン酸塩」を含有することを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
そして、上記訂正事項7に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
また、請求項14に係る「粉末状のとろみ付与用組成物」が、「キサンタンガム及び水溶性カルシウム塩」に加えて、さらに「クエン酸塩」を含有することは、本件明細書等の【0017】及び【0022】に記載された事項であるといえるから、上記訂正事項7に係る訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
(2)独立特許要件について
本件は、訂正前の全請求項について特許異議の申立てがされているので、訂正事項1~7に係る訂正について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(3)一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~13について、訂正前の請求項2~13はそれぞれ訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、請求項1の訂正に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1~13は、一群の請求項である。
そして、本件訂正請求は、当該一群の請求項ごとに訂正の請求をするものであって、特定の請求項に係る訂正事項について別の訂正単位とする求めもないから、訂正後の請求項〔1~13〕、14を訂正単位とする訂正を請求するものである。
3 本件訂正請求についてのむすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~13〕、14について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2の3のとおり、本件訂正請求による訂正は認められるから、本件特許の請求項1~14に係る発明は、本件訂正請求によって訂正された特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。なお、以下において、本件訂正後の請求項1~14に係る発明を順に「本件発明1」~「本件発明14」といい、総称して「本件発明」ということがある。
「【請求項1】
キサンタンガム、水溶性カルシウム塩及びクエン酸塩を含み、
前記キサンタンガムの含有割合が20質量%~40質量%であり、
レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定したときに、
粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の50%以下であり、且つ、
粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の15%以上である、
粉末状のとろみ付与用組成物。
【請求項2】
レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定したときに、粒子サイズが75μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の30%以下である、請求項1に記載のとろみ付与用組成物。
【請求項3】
レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定したときに、粒子サイズが250μm超であり且つ500μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の20%以下である、請求項1又は2に記載のとろみ付与用組成物。
【請求項4】
レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定したときに、粒子サイズが500μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の90%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載のとろみ付与用組成物。
【請求項5】
前記とろみ付与用組成物の比表面積が、50m2/kg~80m2/kgである、請求項1~4のいずれか一項に記載のとろみ付与用組成物。
【請求項6】
前記組成物3.0gを20℃の脱イオン水100gに3rpsで撹拌しながら5秒間で添加してさらに3rpsで30秒間撹拌した直後の当該脱イオン水の粘度が350mPa・s以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載のとろみ付与用組成物。
【請求項7】
レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定したときに、
粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の25%以上且つ50%以下であり、且つ、
粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の15%以上且つ40%以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載のとろみ付与用組成物。
【請求項8】
レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定したときに、粒子サイズが250μm超であり且つ500μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の1%以上且つ20%以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載のとろみ付与用組成物。
【請求項9】
前記水溶性カルシウム塩の含有割合が0.5質量%~10.0質量%である、請求項8に記載のとろみ付与用組成物。
【請求項10】(削除)
【請求項11】
前記クエン酸塩の含有割合が0.5質量%~10.0質量%である、請求項1~9のいずれか一項に記載のとろみ付与用組成物。
【請求項12】
前記とろみ付与用組成物が賦形剤を含み、
前記賦形剤の含有割合が50質量%~75質量%である、請求項1~9、または11のいずれか一項に記載のとろみ付与用組成物。
【請求項13】
少なくともキサンタンガム及び水溶性カルシウム塩を含む粉末を、バインダーを用いて造粒することによって製造される、請求項1~9、11または12のいずれか一項に記載のとろみ付与用組成物。
【請求項14】
キサンタンガム、水溶性カルシウム塩及びクエン酸塩を含有し且つ前記キサンタンガムの含有割合が20質量%~40質量%である粉末を、バインダーを用いて造粒する造粒工程を含み、
前記造粒工程において、レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定したときに、粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が全粒子数の50%以下となり、且つ、粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が全粒子数の15%以上となるように、造粒が行われる、
とろみ付与用組成物の製造方法。」
第4 申立理由の概要
1 申立人1は、証拠方法として、下記(5)の甲第1号証~甲第4号証(以下「甲1-1」~「甲1-4」という。)を提出し、以下の理由により、本件訂正前の請求項1~14に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
(1)申立理由1-1(新規性;取消理由として不採用)
本件訂正前の請求項1~13に係る発明は、甲1-1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由1-2(進歩性;取消理由として不採用)
本件訂正前の請求項1~14に係る発明は、甲1-1に記載された発明、及び甲1-2、甲1-3に記載された事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)申立理由1-3(新規性;取消理由として不採用)
本件訂正前の請求項1~13に係る発明は、本願の優先日前に公然実施された発明であり、特許法第29条第1項第2号に該当し、特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(4)申立理由1-4(サポート要件;取消理由として一部採用)
本件訂正前の請求項1~14の記載は、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えており、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえず、特許法第36条第6項第1号に適合しないものであるから、同請求項に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(5)証拠方法
甲1-1:特開2006-271258号公報
甲1-2:特開2007-124954号公報
甲1-3:特開2017-12112号公報
甲1-4:2018年10月29日18時44分20秒時点の「つるりんこQuickly」に係るウェブサイトのスナップショット
(https://web.archive.org/web/20181029184420/https://www.clinico.co.jp/ec/products/detail/14)
2 申立人2は、証拠方法として、下記(4)の甲第1号証~甲第5号証(以下「甲2-1」~「甲2-5」という。)を提出し、以下の理由により、本件訂正前の請求項1~14に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
(1)申立理由2-1(進歩性;取消理由として不採用)
本件訂正前の請求項1~14は、甲2-1に記載された発明、及び甲2-2~甲2-4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由2-2(サポート要件;取消理由として採用)
本件訂正前の請求項1~9、12~14の記載は、クエン酸塩を必須の構成とせず、本件特許に係る発明の課題を解決できるとは当業者が理解できない形態を包含する点で、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえず、特許法第36条第6項第1号に適合しないものであるから、同請求項に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)申立理由2-3(明確性;取消理由として不採用)
本件訂正前の請求項1~14の記載は、本件特許に係る発明で特定される「粒子の数の割合」が、体積基準の粒子数量の割合であるのか、個数基準の粒子数量の割合であるのか不明であるため、特許を受けようとする発明が明確であるとはいえず、特許法第36条第6項第2号に適合しないものであるから、同請求項に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(4)証拠方法
甲2-1:特開2007-124954号公報(甲1-2と同じ)
甲2-2:特開2008-68194号公報
甲2-3:特開2014-23478号公報
甲2-4:特開2017-55763号公報
甲2-5:「粒度分布における体積基準と個数基準について」、島津製作所ウェブサイトのスナップショット(出力日:令和5年6月19日)
(https://www.an.shimazu.co.jp/service-support/technical-support/analysis-basics/powder/lecture/practice/p01/lesson17/index.html)
第5 令和 5年 9月15日付けで通知した取消理由の概要
1 取消理由1(サポート要件:申立理由1-4の一部、及び申立理由2-2を採用)
本件訂正前の請求項1~9、12~14の記載は、請求項1~9、12~14に係るとろみ付与用組成物がクエン酸塩を含まない態様を包含している点で、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえず、特許法第36条第6項第1号に適合しないものであるから、同請求項に係る発明は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
2 取消理由2(明確性:職権による)
本件訂正前の請求項13の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるとはいえず、特許法第36条第6項第2号に適合しないものであるから、同請求項に係る発明は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
第6 令和 6年 3月18日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要
1 取消理由1(サポート要件)
上記第5の1の「取消理由1(サポート要件)」と同旨。
第7 当審の判断
当審は、以下に述べるとおり、令和 5年 9月15日付けで通知した取消理由、令和 6年 3月18日付けで通知した取消理由(決定の予告)及び特許異議申立ての理由のいずれによっても、本件特許の請求項1~9、11~14に係る特許を取り消すことはできないと判断する。
1 取消理由1、申立理由1-4及び申立理由2-2(サポート要件)について
(1)本件明細書等の記載
本件明細書等には、以下の記載がある(下線は当審が付したものであり、「・・・」は記載の省略を表す。以下同様。)。
ア 「【0004】
とろみ付与用組成物を液体に混合した場合にダマが生じることは望ましくない。ダマが生じる場合は、液体に与えられるとろみが不十分になることもある。また、ダマが生じる場合は、ダマが異物と認識され、飲み込みやすさに悪影響を与える可能性もある。そこで、本技術は、ダマを生じることなくとろみを液体に付与することができる新たなとろみ付与用組成物を提供することを目的とする。」
イ 「【0005】
本発明者らは、キサンタンガムを含むとろみ付与用組成物について検討したところ、特定の粒度分布がダマ発生を抑制するために適していることを見出した。
【0006】
すなわち、本技術は、キサンタンガム及び水溶性カルシウム塩を含み、前記キサンタンガムの含有割合が20質量%~40質量%であり、レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定したときに、粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の50%以下であり、且つ、粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の15%以上である、粉末状のとろみ付与用組成物を提供する。
・・・
【発明の効果】
【0007】
本技術のとろみ付与用組成物は、ダマを生じることなく液体にとろみを付与することができる。さらに、本技術のとろみ付与用組成物は、液体に迅速にとろみを付与することもできる。
なお、本技術の効果は、ここに記載された効果に限定されず、本明細書内に記載されたいずれかの効果であってもよい。」
ウ 「【0011】
本技術のとろみ付与用組成物は、キサンタンガムを含み、粉末状であり、且つ、レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定したときに、粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が全粒子数の50%以下であり且つ粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が全粒子数の15%以上である。
キサンタンガムを含むとろみ付与用組成物は、当該とろみ付与用組成物と液体との混合の仕方によっては、ダマが生じることもある。例えば、当該とろみ付与用組成物を液体に添加した後しばらく時間が経過してから撹拌を行った場合にはダマが生じうる。本発明者らは、キサンタンガムを含むとろみ付与用組成物について検討したところ、特定の粒度分布が、ダマの形成を防ぐために特に適していることを見出した。
また、本発明者らは、キサンタンガムを含むとろみ付与用組成物が特定の粒度分布を有する場合に、粘度の発現性に優れていることも見出した。」
エ 「【0014】・・・前記キサンタンガムの含有割合の数値範囲の上限値及び下限値は、上記で述べた値のうちからそれぞれ選択されてよく、当該含有割合は、例えば20質量%~40質量%、好ましくは22質量%~38質量%であり、より好ましくは25質量%~35質量%である。
前記キサンタンガムの含有割合が高すぎる場合は、ダマが生じやすくなることがある。また、前記キサンタンガムの含有割合が低すぎる場合は、とろみを付与するためにより多くのとろみ付与用組成物が必要となり、効率的でなくなりうる。」
オ 「【0016】・・・前記水溶性カルシウム塩の含有割合の数値範囲の上限値及び下限値は、上記で述べた値のうちからそれぞれ選択されてよく、当該含有割合は、例えば0.5質量%~10.0質量%、好ましくは1.0質量%~6.0質量%、より好ましくは1.5質量%~4.0質量%、さらにより好ましくは2.0質量%~3.0質量%である。
前記水溶性カルシウム塩が上記数値範囲内にあることが、ダマ発生を防ぐために適しており、且つ、効率的な粘度発現に適している。」
カ 「【0017】
本技術のとろみ付与用組成物はクエン酸塩をさらに含んでよい。前記クエン酸塩は、好ましくはクエン酸のアルカリ金属塩であり、より好ましくはクエン酸のナトリウム塩若しくはカリウム塩、又は、クエン酸のナトリウム塩及びクエン酸のカリウム塩の混合物であり、さらにより好ましくはクエン酸のナトリウム塩である。当該クエン酸のナトリウム塩は、より好ましくはクエン酸三ナトリウムであり、例えばクエン酸三ナトリウム二水和物である。
【0018】
・・・
前記クエン酸塩の含有割合の数値範囲の上限値及び下限値は、上記で述べた値のうちからそれぞれ選択されてよく、当該含有割合は、例えば0.5質量%~10.0質量%、好ましくは1.0質量%~6.0質量%、より好ましくは1.5質量%~4.0質量%、さらにより好ましくは2.0質量%~3.0質量%である。
前記クエン酸塩が上記数値範囲内にあることが、ダマ発生を防ぐために適しており、且つ、効率的な粘度発現に適している。」
キ 「【0022】
本技術の一つの好ましい実施態様に従い、本技術のとろみ付与用組成物は、キサンタンガムと、水溶性カルシウム塩と、クエン酸塩とを含む。特に好ましくは、当該水溶性カルシウム塩は乳酸カルシウムであり、且つ、当該クエン酸塩はクエン酸のナトリウム塩である。これら三成分を含むことが、ダマ形成の抑制のために適しており、さらには粘度発現のためにも適している。また、これら三成分を含むとろみ付与用組成物に関して以下で述べる粒度分布を採用することが、ダマ形成の抑制にとって特に好ましく、さらには粘度発現のためにも特に好ましい。」
ク 「【0023】
(2)とろみ付与用組成物の特性及び形状
【0024】
本技術のとろみ付与用組成物は粉末状であり、レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定したときに、粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が全粒子数の50%以下であり、且つ、粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が全粒子数の15%以上である。この粒度分布を有することによって、当該組成物を液体に添加及び混合した場合におけるダマの発生をより確実に防ぐことができる。例えば、当該組成物を液体に添加してしばらく経過した後に撹拌した場合においても、ダマが生じることなく、当該液体にとろみを付与することができる。
本明細書内において、「ダマ」とは、粉末を液体に加えたときに、溶解又は分散することなく集合した粉末の集合物を意味してよく、特には肉眼で確認できる程度の大きさを有する塊をいう。」
ケ 「【0036】
(3)とろみ付与用組成物の製造方法
【0037】
本技術のとろみ付与用組成物は、当該組成物に含まれる成分を混合及び造粒することにより製造することができる。本技術のとろみ付与用組成物の製造方法は例えば、キサンタンガム含有粉末をバインダーを用いて造粒する造粒工程を含む。当該造粒工程において、レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定したときに、粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が全粒子数の50%以下となり、且つ、粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が全粒子数の15%以上となるように、造粒が行われうる。
前記キサンタンガム含有粉末は、例えば、キサンタンガム、水溶性カルシウム塩(特には乳酸カルシウム)、クエン酸塩、及び賦形剤を混合して粉末状混合物であってよい。例えば、前記製造方法は、サンタンガム、水溶性カルシウム塩(特には乳酸カルシウム)、クエン酸塩、及び賦形剤を混合して粉末状混合物を得る混合工程を含みうる。
すなわち、本技術の一つの実施態様において、前記製造方法は、
キサンタンガム、水溶性カルシウム塩(特には乳酸カルシウム)、クエン酸塩、及び賦形剤を混合して粉末状混合物を得る混合工程、及び
前記粉末状混合物を、バインダーを用いて造粒して組成物を得る造粒工程
を含みうる。当該組成物が、本技術のとろみ付与用組成物であってよい。」
コ 「【実施例】
【0062】
1.とろみ付与用組成物の製造
【0063】
キサンタンガム(三栄源エフ・エフ・アイ社製)30質量部、乳酸カルシウム五水和物(第一化成社製)2.6質量部、クエン酸三ナトリウム二水和物2.4質量部、及びデキストリン(東亜化成社製)65質量部を流動層造粒装置により造粒して造粒物を得た。当該造粒物を、60M(メッシュ)(目開き250μm)、100M(目開き150μm)、及び200M(目開き75μm)の3つの篩(いずれもJIS標準篩)を用いて篩分けした。当該篩分けにより、100Mパス200Mオンの粉末状組成物(以下「実験例1の組成物」という)、60Mパス100Mオンの粉末状組成物(以下「実験例2の組成物」という)、及び60Mオンの粉末状組成物(以下「実験例3の組成物」という)を得た。
【0064】
実験例1~3の組成物それぞれについて、レーザー回折式粒度分析測定装置(Mastersizer 3000、Malvern Panalytical社)を用いてレーザー回折式粒度分析測定法により粒度分布を測定した。
・・・
【0065】
粒度分布の測定結果を以下表1に示す。
【0066】
【表1】
[図:0001416443000001.jpg]
・・・
【0069】
2.とろみ付与用組成物の評価
【0070】
(1)ダマ発生の有無についての評価
【0071】
3.0gの実験例1の組成物を、20℃に温度調節された脱イオン水100gに一度に添加し、添加直後から3rpsで10秒間撹拌し、そして20秒間静置した。同じ操作を、実験例2及び3の組成物についても行った。
【0072】
当該静置後の溶液の状態を図1上部の(A)行に示す。(A)行に示されるとおり、実験例1の組成物を水に溶解させた場合は、小さいサイズのダマが多数確認された。一方で、実験例2及び実験例3の組成物を水に溶解させた場合は、ダマは確認されなかった。
【0073】
次に、3.0gの実験例1の組成物を、20℃に温度調節された脱イオン水100gに一度に添加し3秒静置した。当該静置後、3rpsで30秒間撹拌した。同じ操作を、実験例2及び3の組成物についても行った。
【0074】
当該撹拌後の溶液の状態を図1の下部の(B)行に示す。図1に示されるとおり、実験例1の組成物を水に溶解させた場合は、大きいサイズのダマが多数確認された。一方で、実験例2及び実験例3の組成物を水に溶解させた場合は、ダマは確認されなかった。
【0075】
以上のとおり、実験例2及び3の組成物は、実験例1の組成物よりも、水に溶解した場合にダマが生じにくい。実験例1~3の組成物は、上記表1に示されるとおりの粒度分布を有する。そのため、キサンタンガムを含む組成物が、例えば粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が全粒子数の50%以下であり且つ粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が全粒子数の15%以上である粒度分布を有する場合に、当該組成物の液体への溶解時におけるダマの発生が抑制されることが分かる。」
サ 「【図1】
[図:0001416443000002.jpg]
」
(2)上記(1)アに摘記した本件明細書等の【0004】の記載からすると、本件発明が解決しようとする課題は、「ダマを生じることなくとろみを液体に付与することができる新たなとろみ付与用組成物を提供すること」にあると認められる。
(3)そして、上記(1)イ、ウ、エ、オ、ク、コに摘記した本件明細書等の【0005】、【0011】、【0014】、【0016】、【0024】、【0062】~【0075】の記載からすると、少なくとも、キサンタンガムと水溶性カルシウム塩に加えてクエン酸塩を含むとろみ付与用組成物が、特定の粒度分布、すなわち、レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定したときに、粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が全粒子数の50%以下であり、且つ、粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が全粒子数の15%以上である粒度分布を有することにより、上記(2)の課題が解決できることを当業者が認識できるといえる。
(4)一方、上記第3に摘記したとおり、本件発明1~9、11~13に係る「粉末状のとろみ付与用組成物」は、「キサンタンガム、水溶性カルシウム塩及びクエン酸塩を含み、」「レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定したときに、粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の50%以下であり、且つ、粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の15%以上である」との特定事項を備えたものであるから、上記(3)において検討したとおりの、発明の詳細な説明において、本件発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものとはいえない。
(5)また、本件発明14に係る「粉末状のとろみ付与用組成物の製造」は、「キサンタンガム、水溶性カルシウム塩及びクエン酸塩を含有」する「粉末を、バインダーを用いて造粒する造粒工程を含み、」「前記造粒工程において、レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定したときに、粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が全粒子数の50%以下となり、且つ、粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が全粒子数の15%以上となるように、造粒が行われる」との特定事項を備えたものであるから、上記(3)において検討したとおりの、発明の詳細な説明において、本件発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものとはいえない。
(6)したがって、本件特許の請求項1~9、12~14の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであり、特許法第36条第6項第1号に適合するものであるから、取消理由1、申立理由1-4及び申立理由2-2によっては、同請求項に係る特許を取り消すことはできない。
2 取消理由2(明確性)について
(1)上記第3のとおり、本件特許の請求項13には、「少なくともキサンタンガム及び水溶性カルシウム塩を含む粉末を、バインダーを用いて造粒することによって製造される、請求項1~9、11または12のいずれか一項に記載のとろみ付与用組成物。」との記載がある。
(2)そして、当該請求項13が引用する請求項1~9、11、12には、少なくとも「キサンタンガム、水溶性カルシウム塩」「を含む」「粉末状のとろみ付与用組成物」が記載されているから、これと、請求項13の「少なくともキサンタンガム及び水溶性カルシウム塩を含む粉末」との関係は明確である。
(3)そうすると、請求項13に記載された「少なくともキサンタンガム及び水溶性カルシウム塩を含む粉末」がどのような粉末であるのかを当業者が明確に把握することは十分可能である。
(4)したがって、本件特許の請求項13の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるといえるものであり、特許法第36条第6項第2号に適合するものであるから、取消理由2によっては、同請求項に係る特許を取り消すことはできない。
3 申立理由2-3(明確性)について
(1)上記第3のとおり、本件特許の請求項1には、「レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定したときに、粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の50%以下であり、且つ、粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の15%以上である」との記載があり、同じく請求項14には、「前記造粒工程において、レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定したときに、粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が全粒子数の50%以下となり、且つ、粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が全粒子数の15%以上となるように、造粒が行われる」との記載がある。
(2)上記(1)の記載について、申立人2は、「本件特許発明で特定される「粒子の数の割合」が体積基準の粒子数量の割合なのか、個数基準の粒子数量の割合なのかは明確ではない」(特許異議申立書第21頁第12~14行)と主張しているが、「全粒子数」を基準として、特定の粒子サイズの「粒子の数の割合」を特定していることからすると、粒子の個数を基準とした割合を意味することは、明らかである。
(3)したがって、本件特許の請求項1、14及び請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2~9、11~13の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるといえるものであり、特許法第36条第6項第2号に適合するものであるから、申立理由2-3によっては、同請求項に係る特許を取り消すことはできない。
4 申立理由1-1(新規性)及び申立理由1-2(進歩性)について
(1)甲1-1~甲1-3の記載事項及び甲1-1に記載された発明
ア 甲1-1の記載事項
本願の優先日前に公知となった甲1-1には、「トロミ剤組成物及びゲル状嚥下食」(発明の名称)に関して、以下の記載がある。
(ア)「【請求項1】
キサンタンガムと水溶性カルシウム塩とを含有することを特徴とするトロミ剤組成物。
【請求項2】
キサンタンガム100質量部に対して、水溶性カルシウム塩をカルシウム換算で1~4質量部含有する請求項1に記載のトロミ剤組成物。
【請求項3】
さらに、カルシウムとキレート化合物を形成するキレート剤を含有する請求項1又は請求項2に記載のトロミ剤組成物。
【請求項4】
キレート剤が水溶性クエン酸塩である請求項3に記載のトロミ剤組成物。」
(イ)「【0004】
本発明は、上記事情に鑑みて、液状食品に混合することにより、10~60℃の広い温度帯で、貯蔵弾性率G'=10~100Pa及び損失正接tanδ=0.1~1を達成することが可能であり、かつ、溶解時に溶け残り(ダマ)が生じにくいトロミ剤組成物を提供すること、及びこのようなトロミ剤組成物を用いることにより、嚥下障害者や高齢者が嚥下しやすいゲル状嚥下食を提供することを課題とする。」
(ウ)「【0008】
<トロミ剤組成物>
本発明のトロミ剤組成物は、キサンタンガムとカルシウム塩とを含有する。さらに、カルシウムとキレート化合物を形成するキレート剤を含有することが好ましい。また、取り扱いの便宜のため、適宜賦形剤を加えることができる。
【0009】
キサンタンガムとしては、通常の市販品が使用できる。
カルシウム塩としては、ダマを形成しないよう、水溶性のカルシウム塩が用いられる。水溶性カルシウム塩としては、乳酸カルシウム、塩化カルシウム等が使用できるが、特に乳酸カルシウムが好ましい。
キサンタンガムに水溶性カルシウム塩を併用することにより、キサンタンガムの使用量を減らしても必要な粘度が得られるトロミ剤とすることができる。また、10~60℃の広い温度帯で、貯蔵弾性率G'=10~100Pa及び損失正接tanδ=0.1~1を達成することが可能となる。
キサンタンガム100質量部に対して、水溶性カルシウム塩はカルシウム換算で1~4質量部であることが好ましい。
【0010】
カルシウムとキレート化合物を形成するキレート剤としては、クエン酸塩、リン酸塩、メタリン酸塩等が挙げられるが、クエン酸塩が好ましい。
クエン酸塩としては、ダマを形成しないよう、水溶性のクエン酸塩であることが好ましい。水溶性クエン酸塩としては、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム等が使用できるが、特にクエン酸ナトリウムが好ましい。・・・」
(エ)「【0030】
<実施例1>
キサンタンガム(三栄源エフ・エフ・アイ社製)30質量部、乳酸カルシウム・5水和物(第一化成社製)2.6質量部、クエン酸ナトリウム・2水和物(三栄源エフ・エフ・アイ社製)2.4質量部、デキストリン(東亜化成社製)65質量部の組成からなるトロミ剤組成物である造粒品2.5gを得た。当該造粒品2.5gを牛乳(森永乳業社)100mlに添加し、スパチュラを用いて手攪拌にて溶かした。
溶解液は適度な粘性が付与され、ARES(Advanced Rheometric Expansion System)(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社)を用いて10℃と25℃における動的粘弾性を測定したところ、表7に示すように、測定した全ての周波数帯において、嚥下食に適した貯蔵弾性率G'=10~100Pa及び損失正接tanδ=0.1~1を示した。」
イ 甲1-1に記載された発明
上記ア(ア)~(エ)に摘記した甲1-1の記載事項を総合勘案し、特に、実施例1の「トロミ剤組成物」に着目すると、甲1-1には、次の発明が記載されていると認められる。
「キサンタンガム(三栄源エフ・エフ・アイ社製)30質量部、乳酸カルシウム・5水和物(第一化成社製)2.6質量部、クエン酸ナトリウム・2水和物(三栄源エフ・エフ・アイ社製)2.4質量部、デキストリン(東亜化成社製)65質量部の組成からなる造粒品である、トロミ剤組成物。」(以下「甲1-1組成物発明」という。)
「甲1-1組成物発明のトロミ剤組成物である造粒品を得る方法。」(以下「甲1-1方法発明」という。)
ウ 甲1-2(甲2-1)の記載事項
本願の優先日前に公知となった甲1-2(甲2-1)には、「液状組成物用増粘化剤」(発明の名称)に関して、以下の記載がある。
(ア)「【0001】
本発明は、液状組成物への粘度付与を目的とする増粘化剤に関する。詳細には、あらゆる液状食品に使用することができ、手攪拌のような緩い攪拌条件でも優れた分散性(ダマになりにくい)と粘度発現性(粘度の発現が早く、増粘効果が高い)を示す液状組成物用増粘化剤に関する。」
(イ)「【0005】
また、化工澱粉水溶液をバインダーとして用いて、粉末状増粘多糖類を処理して得られる顆粒状増粘多糖類を含有する増粘化剤(特許文献4)などに見られるように、多糖類を造粒(顆粒化)することも検討されている。造粒(顆粒化)操作を行う目的の一つとして、目標粒度を中心としたシャープな粒度分布を得ることが挙げられる。しかし、実際の製造現場においては、局所的に目的粒度以上の大きな粒子が生成することによる大粒子画分と、造粒(顆粒化)が進まなかったことにより生成する小粒子画分が含まれることがあり、このような大小の粒子が混在することにより、液状組成物に添加した場合に、ダマが発生したり、或いは粘度発現が遅くなるという問題が生じることがある。このような事態に対処するため、造粒(顆粒化)後の粒度を更に調整する目的で、造粒(顆粒化)後に篩を使用して粒度を調整することが一般的に行われている。但し、使用する多糖類やバインダーによっては、多糖類を中心とする比較的小さな粒子と、バインダーを中心とする比較的大きな粒子が生じるという不均一な造粒(顆粒化)が起こることがある。このような場合に造粒(顆粒化)後に篩別を行うと、製品ロスが増えるだけでなく、小粒子画分に多く含まれる多糖類(増粘に寄与する成分)が選択的に篩過されて、調製した増粘化剤の増粘機能が弱まったりする場合があった。」
(ウ)「【0032】
(2)増粘化剤の調製
下記表3の配合に従い、キサンタンガムとデキストリン(パインデックス#1、松谷化学社製)を、流動層造粒機(大河原製作所製、商品名 UNIGRATT)を用いて造粒(顆粒化)し、増粘化剤を調製した(実施例1、比較例1~3)。キサンタンガムとデキストリンとの重量比は35:65であった。造粒(顆粒化)条件は、温風温度65℃で、仕込み量300gに対し100mLの脱イオン水を速度毎分10mL、スプレー圧4Kgf/cm2で噴霧し、噴霧終了後5分間乾燥を行った。
【0033】
【表3】
[図:0001416443000003.jpg]
」
(エ)「【0034】
(3)増粘化剤の評価
(3)-1:粒度
(2)で得られた増粘化剤の粒度を測定した。16メッシュ(1000μm)、30メッシュ(500μm)、60メッシュ(250μm)、100メッシュ(100μm)、150メッシュ(100μm)、200メッシュ(75μm)の篩を重ね合わせ、各試料(表3に記載の増粘化剤顆粒各30g)を篩過(電磁振とう機使用、振幅1mm、3分間)した際の篩上の試料及び篩を通過した試料の重量を測定した。結果を表4に示す。
【0035】【表4】
[図:0001416443000004.jpg]
【0036】
実施例、比較例ともに、造粒後の増粘化剤の粒度は、150~1000μmの粒径のものが85%以上を占めることが判った。
【0037】
(3)-2:脱イオン水への分散性
実験例1(2)で得られた増粘化剤を用いて、脱イオン水への分散性を評価した。200mLビーカーに室温の脱イオン水を100mL量りとり、スパーテルで4回転/秒程の速度で攪拌しながら、各増粘化剤を3g添加した。同じ攪拌速度で更に30秒間攪拌後、スクリューびんに充填して、増粘化剤含有水溶液を調製した(実施例1-a、比較例1-a~3-a)。ダマの発生の程度を目視にて確認した。結果を表5に示す。なお、脱イオン水への分散性は、表6の評価基準に準じた。
【0038】
(3)-3:粘度発現性
得られた増粘化剤の粘度発現性について、200mLビーカーに室温のイオン交換水100mLを測りとり、スパーテルで4回転/秒程の速度で攪拌しながら、各増粘化剤を3g添加した。溶液をスクリュー瓶に充填し、増粘化剤含有水溶液調製直後(0分)及び調製後10分後に、粘度測定を行った。粘度はB型回転粘度計、12rpm、ローターNo.3を用いて測定した。結果を表5に示す。
【0039】
【表5】
[図:0001416443000005.jpg]
【0040】
【表6】
[図:0001416443000006.jpg]
【0041】
粒子径75~250μmの割合が85%以上であるキサンタンガム粉末(粒度調整多糖類)とバインダーとを混合して造粒(顆粒化)した増粘化剤(実施例1)は、イオン交換水において良好な粘度発現性(粘度の発現が早い)を示し、更には脱イオン水への分散性についても、ダマの発生が見られず良好であった(実施例1-a)。一方、比較例1-a~2-aについては、粘度発現は良好である(粘度の発現は早い)ものの、ダマが多く見られ、更には、比較例3-aについては、ダマは見られないものの、粘度の発現が遅くなった。」
エ 甲1-3の記載事項
本願の優先日前に公知となった甲1-3には、「粉体組成物のダマの形成を抑制する方法」(発明の名称)に関して、以下の記載がある。
(ア)「【0009】
上記従来技術に鑑み、本発明は、増粘多糖類、澱粉及びタンパク質からなる群より選ばれる1種以上を含む粉体組成物を水性溶媒に添加する際のダマの形成を抑制する方法を提供することを目的とする。」
(イ)「【0031】
ステアリン酸カルシウムを含む実施例2-1及び2-2では、ステアリン酸カルシウムを含まない比較例2-1と比べて、ダマの形成が顕著に抑制された。また、キサンタンガム1質量部に対するステアリン酸カルシウムの含量が増加するに従い、ダマ形成の抑制効果が向上した。さらに、キサンタンガム1質量部に対するステアリン酸カルシウムの含量が増加するに従い、キサンタンガムの水への溶解性が向上した。増粘多糖類のメジアン径が小さくなるほど、水性溶媒に添加した際にダマが形成されやすくなるにもかかわらず、本発明によれば、キサンタンガムのメジアン径が50μmと極めて小さくても、水性溶媒に添加した際のダマの形成を抑制することができた。」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1-1組成物発明とを対比する。
(ア)甲1-1組成物発明の「キサンタンガム(三栄源エフ・エフ・アイ社製)」、「乳酸カルシウム・5水和物(第一化成社製)及び「クエン酸ナトリウム・2水和物(三栄源エフ・エフ・アイ社製)」は、それぞれ本件発明1の「キサンタンガム」、「水溶性カルシウム塩」及び「クエン酸塩」に相当する。
(イ)本件明細書等【0037】の記載によれば、本件発明1の「粉末状のとろみ付与用組成物」は、キサンタンガム含有粉末を混合及び造粒することによって製造される粒子の集合体を意味すると解されるから、甲1-1組成物発明の「造粒品である、トロミ剤組成物」は、本件発明1の「粉末状のとろみ付与用組成物」に相当するといえる。
(ウ)甲1-1組成物発明の「トロミ剤組成物」に「30質量部」含まれる「キサンタンガム(三栄源エフ・エフ・アイ社製)」の含有割合は、[30質量部/(30質量部+2.6質量部+2.4質量部+65質量部)]×100=30質量%であるから、本件発明1と甲1-1組成物発明とは、「キサンタンガムの含有割合が20質量%~40質量%であ」る点で共通する。
(エ)そうすると、本件発明1と甲1-1組成物発明とは、
「キサンタンガム、水溶性カルシウム塩及びクエン酸塩を含み、
前記キサンタンガムの含有割合が20質量%~40質量%である、
粉末状のとろみ付与用組成物。」である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1の「粉末状のとろみ付与用組成物」は、「レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定したときに、粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の50%以下であり、且つ、粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の15%以上である」ものであるのに対して、甲1-1組成物発明の「造粒品である、トロミ剤組成物」が上記の特定事項を備えたものか否か不明である点。
イ 相違点についての判断
(ア)まず、上記相違点1が実質的な相違点であるか否かについて検討する。
a 上記(1)アに摘記した甲1-1の記載事項や本願の優先日当時の技術常識を考慮しても、甲1-1組成物発明の「造粒品である、トロミ剤組成物」が「レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定したときに、粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の50%以下であり、且つ、粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の15%以上である」ものであると認めることは到底できないから、上記相違点1は実質的な相違点である。
b この点について、申立人1は、
(a)同一出願人森永乳業による2つの出願における実施例同士の比較から、本件発明における篩分け前の造粒物と、甲1-1のトロミ剤組成物である造粒品が同じものであること、
(b)造粒後に篩を使用して粒度を調整することは一般的に行われていることであり、特徴とはいい難いこと、
(c)本件発明に係る篩分け前の造粒物における「粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の50%以下であり」、かつ「粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の15%以上である」蓋然性が極めて高いこと、
(d)「ダマが生じず良好な溶解性を有する」との作用・効果の点からも、篩分けされていない造粒物そのものである甲1-1組成物発明に係るトロミ剤組成物が「粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の50%以下であり」、かつ「粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の15%以上である」蓋然性が極めて高いこと、
を根拠として、本件発明1と甲1-1組成物発明とは実質的に相違しないものである旨主張している(特許異議申立書第7頁第1行~第8頁第17行)。
c そこで、申立人1による上記bの主張について検討する。
(a)甲1-1組成物発明の認定の基礎となった甲1-1の実施例1の記載を参照しても、甲1-1組成物発明に係る造粒品を得るための造粒の具体的条件は不明であるから、造粒によって得られ、篩い分けされていない造粒物が、「粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の50%以下であり」、かつ「粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の15%以上である」ものとなっているとは認められない。この点は、作用・効果の観点から検討しても同様である。
(b)また、甲1-1には、実施例1に関して、造粒後に篩い分けを行うことは記載されていないから、甲1-1組成物発明に係る造粒品がその後篩い分けられて「粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の50%以下であり」、かつ「粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の15%以上である」ものとなっているとも認められない。
(c)したがって、申立人1による上記bの主張は、いずれも根拠を欠くものであるから、採用しない。
(イ)次に、上記相違点1の容易想到性について検討する。
a 上記(1)アに摘記した甲1-1の記載事項を参照しても、甲1-1組成物発明に係る「トロミ剤組成物」を構成する粒子サイズの個数分布に着目した記載を見出せない。
b そうすると、上記(1)ウに摘記した甲1-2(甲2-1)の記載事項(特に、【表4】の示された「比較例1」、「比較例2」の記載)や、上記(1)エに摘記した甲1-3の記載事項を参照しても、甲1-1組成物発明において、本件発明1のように「レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定したときに、粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の50%以下であり、且つ、粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の15%以上である」ものとする動機付けがあるとはいえない。
c したがって、甲1-1組成物発明において、上記相違点1に係る特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
ウ 小括
したがって、本件発明1は、甲1-1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1-1に記載された発明、及び甲1-2(甲2-1)、甲1-3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明2~9、11~13について
本件発明2~9、11~13は、本件発明1の特定事項を全て備えたものであるから、上記(2)ウのとおり、本件発明1が甲1-1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1-1に記載された発明、及び甲1-2(甲2-1)、甲1-3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、同様に、甲1-1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1-1に記載された発明、及び甲1-2(甲2-1)、甲1-3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)本件発明14について
ア 本件発明14と甲1-1方法発明とを対比すると、上記(2)アで検討したのと同様であるから、両者は、次の点で相違する。
<相違点2>
本件発明14の「とろみ付与用組成物の製造方法」は、「造粒工程において、レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定したときに、粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の50%以下であり、且つ、粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の15%以上となるように、造粒が行われる」ものであるのに対して、甲1-1方法発明は、造粒品を得る方法ではあるものの、その造粒工程が上記の特定事項を備えたものか否か不明である点。
イ そこで当該相違点2について検討するに、上記(2)イにおいて上記相違点1について検討したのと同様であるから、甲1-1方法発明において、上記相違点2に係る特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
ウ したがって、本件発明14は、甲1-1に記載された発明、及び甲1-2(甲2-1)、甲1-3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(5)まとめ
以上のとおり、本件発明1~9、11~13は、甲1-1に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものとはいえないから、申立理由1-1によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、本件発明1~9、11~14は、甲1-1に記載された発明、及び甲1-2(甲2-1)、甲1-3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえないから、申立理由1-2によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。
5 申立理由2-1(進歩性)について
(1)甲2-1(甲1-2)に記載された発明
上記4(1)ウに摘記した甲2-1(甲1-2)の記載事項を総合勘案し、特に、比較例1又は比較例2の「造粒後の増粘化剤」に着目すると、甲2-1には、次の発明が記載されていると認められる。
「粒度75~250μmの割合が56.8%で含有量が35%のキサンタンガムと、含有量が65%のデキストリン(パインデックス#1、松谷化学社製)を、流動層造粒機(大河原製作所製、商品名 UNIGRATT)を用いて造粒(顆粒化)して調製した増粘化剤であって、造粒後の増粘化剤の粒度分布が75μm以上150μm未満:6.9%、150μm以上250μm未満:16.9%である、造粒後の増粘化剤。」(以下「甲2-1増粘化剤発明1」という。)
「甲2-1増粘化剤発明1の増粘化剤を造粒する方法。」(以下「甲2-1方法発明1」という。)
「粒度75~250μmの割合が2.9%で含有量が35%のキサンタンガムと、含有量が65%のデキストリン(パインデックス#1、松谷化学社製)を、流動層造粒機(大河原製作所製、商品名 UNIGRATT)を用いて造粒(顆粒化)して調製した増粘化剤であって、造粒後の増粘化剤の粒度分布が75μm以上150μm未満:9.4%、150μm以上250μm未満:28.5%である、造粒後の増粘化剤。」(以下「甲2-1増粘化剤発明2」という。)
「甲2-1増粘化剤発明2の増粘化剤を造粒する方法。」(以下「甲2-1方法発明2」という。)
(2)甲2-2~甲2-4の記載事項
ア 本願の優先日前に公知となった甲2-2には、「粉末の造粒方法及び易分散・易溶解性顆粒組成物」(発明の名称)に関して、以下の記載がある。
(ア)「【請求項1】
塩化カルシウム、乳酸カルシウム、及びパントテン酸カルシウムからなる群から選ばれる1種以上を含有する水溶液をバインダーとして用いることを特徴とする粉末の造粒方法。
【請求項2】
粉末が水溶性高分子である、請求項1に記載の粉末の造粒方法。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれかに記載の方法で造粒された易分散・易溶解性顆粒組成物。」
(イ)「【0002】
キサンタンガム、グァーガムなどの水溶性高分子を水ないしは液状食品に粉末のまま分散・溶解させる際に、いわゆるランピングが生じて、液体に粉末が非常に溶解しにくくなることが知られている。ランピングとは、粉末を水溶液中に添加した時、当該粉末の集合体の表面部分だけが水和、溶解し、当該集合体の内部まで水分が移行しないことにより形成されるもので、別名、ママコ、ダマなどと呼ばれている。このようなランピングが起こると、なかなか水に溶解せず、完全に溶解させるには、攪拌強度を上げたり、時間を長くしたりといったことが必要である。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みて開発されたものであり、粉末、特に水溶性高分子粉末が水中でランピングを起こさず容易に分散・溶解するための粉末の造粒方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、粉末、特には水溶性高分子の造粒時に、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、及びパントテン酸カルシウムからなる群から選ばれる1種以上を含有する水溶液をバインダーとして用いることにより、この造粒した粉末造粒品を水に分散・溶解した際、水中でランピングを起こさず、容易に分散・溶解できることを見出して本発明に至った。」
(ウ)「【0015】
本発明で造粒する粉末は、特に粉末状の組成物であれば特に限定されないが、好ましくは、水溶性高分子、更にはゲル化及び/又は増粘する性質を有する水溶性高分子の粉末の造粒に適している。本発明に係る造粒方法をとることにより、特にランピングが多発する水溶性高分子、更にはゲル化及び/又は増粘する性質を有する水溶性高分子のランピングを防止することが可能となり、スパーテルなどによる手撹拌といった弱い撹拌条件においても顕著に水溶性高分子のランピングを防止することが可能となった。
【0016】
ゲル化及び/又は増粘する性質を有する水溶性高分子の粉末としては、具体的には、キサンタンガム、ガラクトマンナン(グァーガム、ローカストビーンガム、タラガム等)、カラギナン、カシアガム、グルコマンナン、ネイティブ型ジェランガム、脱アシル型ジェランガム、タマリンドシードガム、ペクチン、サイリウムシードガム、ゼラチン、トラガントガム、カラヤガム、アラビアガム、ガティガム、サイリウムシードガム、マクロホモプシスガム、寒天、アルギン酸類(アルギン酸、アルギン酸塩)、カードラン、プルラン、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)等のセルロース誘導体、水溶性ヘミセルロース、大豆多糖類、加工・化工でん粉、未加工でん粉(生でん粉)、デキストリンなどから選ばれる1種又は2種以上を挙げることができる。」
イ 本願の優先日前に公知となった甲2-3には、「錠剤型の増粘化剤」(発明の名称)に関して、以下の記載がある。
(ア)「【請求項1】
キサンタンガム、カラギナン及びグァーガムからなる群から選択される少なくとも一種以上の増粘多糖類を15~40質量%、崩壊用寒天を15~40質量%、水溶性糖類を10~70質量%及び金属塩を0.2~10質量%含有し、硬度が15~70Nである、錠剤型増粘化剤。
【請求項2】
金属塩が塩化カルシウム、塩化カリウム又はクエン酸ナトリウムからなる群から選択される一種以上である、請求項1に記載の錠剤型増粘化剤。」
(イ)「【0006】
・・・
かかる従来技術の中、本発明では、携帯性に優れ、計量性もよく、取扱いも容易で、衛生的にも優れ、しかも分散性の良い、増粘多糖類を含む錠剤型の増粘化剤を提供することを目的とする。」
(ウ)「【0018】
本発明で用いる金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、乳酸カルシウム、クエン酸ナトリウム(クエン酸一ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム)などが挙げられる。特に、塩化カルシウム、塩化カリウム及びクエン酸ナトリウムからなる群から選択される一種以上を用いることが好ましい。
錠剤型増粘化剤中に金属塩を0.2~10質量%含有することにより、増粘多糖類の分散性が大幅に向上する。0.2質量%未満の添加では増粘多糖類の分散性向上に対する影響は小さく、10質量%を超えると、最終食品に対する風味への影響が強く出るため好ましくない。好ましくは1~8質量%である。金属塩は無水物でも、結晶水を持つものであっても、その混合物でも構わないが、結晶水を持つ場合は、無水物換算した質量で含量を計算する。」
ウ 本願の優先日前に公知となった甲2-4には、「糊料製剤」(発明の名称)に関して、以下の記載がある。
(ア)「【請求項1】
5質量%以上のキサンタンガムと、カラギナン及びアラビアガムを含有する糊料製剤であり、
前記キサンタンガム1質量部に対して、0.02~5質量部のカラギナン、並びに、
前記キサンタンガム及びカラギナンの総量1質量部に対して、0.2~2質量部のアラビアガムを含有することを特徴とする、糊料製剤。」
(イ)「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来技術に鑑み、本発明では、良好な分散性(ダマの抑制)及び粘度発現性(迅速な粘度付与)を兼ね備える、糊料製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記従来技術に鑑み鋭意研究した結果、キサンタンガム、カラギナン及びアラビアガムの3成分を必須成分として使用し、糊料製剤中に5質量%以上のキサンタンガムを含有すること、キサンタンガム1質量部に対して0.02~5質量部のカラギナンを用いること、並びに、キサンタンガム及びカラギナンの総量1質量部に対して、0.2~2質量部のアラビアガムを用いることで、良好な分散性及び粘度発現性を兼ね備える糊料製剤を提供できることを見出し、更なる研究の結果、本発明を完成するに至った。」
(ウ)「【0021】
その他、本発明の糊料製剤には、更なる分散性の向上を目的として、金属塩、乳化剤等を含有させることも可能である。金属塩の種類は特に限定されないが、例えば、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、及びマグネシウム塩等が挙げられ、具体的には、これらの塩化物、水酸化物、乳酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、リン酸塩、硫酸塩、リンゴ酸塩などが挙げられる。なお、本発明では、飲食品又は経口医薬品への使用が許可されている金属塩を用いることが好ましい。例えば、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、乳酸カルシウム、クエン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム等が挙げられる。好ましい金属塩は、塩化カルシウム、塩化カリウム、クエン酸ナトリウム及びグルコン酸ナトリウムからなる群から選択される一種以上である。本発明の糊料製剤における金属塩の含量は特に制限されないが、例えば、0.1~15質量%が挙げられ、好ましくは0.5~12質量%、より好ましくは0.8~8質量%、更に好ましくは0.8~6質量%、更により好ましくは1~5質量%である。」
(3)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2-1増粘化剤発明1、2とをまとめて対比する。
(ア)本件明細書等【0037】の記載によれば、本件発明1の「粉末状のとろみ付与用組成物」は、キサンタンガム含有粉末を混合及び造粒することによって製造される粒子の集合体を意味すると解されるから、甲2-1増粘化剤発明1、2の「造粒後の増粘化剤」は、本件発明1の「粉末状のとろみ付与用組成物」に相当する。
(イ)甲2-1増粘化剤発明1、2において、「含有量が35%のキサンタンガム」は、本件発明1の「含有割合が20質量%~40質量%であ」る「キサンタンガム」に相当する。
(ウ)甲2-1増粘化発明1、2において、造粒後の増粘化剤の粒度分布が「レーザー回折式粒度分布測定法に従い測定」されたものであるかは不明であるが、粒度分布が測定方法によって大きく異なることはないとの前提に立てば、甲2-1増粘化剤発明1の「造粒後の増粘化剤の粒度分布が75μm以上150μm未満:6.9%、150μm以上250μm未満:16.9%である」点、及び甲2-1増粘化剤発明2の「造粒後の増粘化剤の粒度分布が75μm以上150μm未満:9.4%、150μm以上250μm未満:28.5%である」点は、本件発明1の
「粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の50%以下であり、且つ、粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の15%以上である」点に相当する。
(エ)そうすると、本件発明1と甲2-1増粘化剤発明1、2とは、
「キサンタンガムを含み、
前記キサンタンガムの含有割合が20質量%~40質量%であり、
粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の50%以下であり、且つ、
粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の15%以上である、
粉末状のとろみ付与用組成物。」である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点3>
本件発明1の「粉末状のとろみ付与用組成物」は、「水溶性カルシウム塩及びクエン酸塩を含」むものであるのに対して、甲2-1増粘化剤発明1、2の「造粒後の増粘化剤」は、水溶性カルシウム塩及びクエン酸塩を含まない点。
<相違点4>
「粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の50%以下であり、且つ、粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の15%以上である」点について、本件発明1では、これが「レーザー回折式粒度分布測定法に従い測定した」粒度分布に基づくものであるのに対して、甲2-1増粘化剤発明1、2では、どのような測定法による粒度分布に基づくものか不明である点。
イ 相違点についての判断
事案に鑑み、まず、上記相違点3について検討する。
(ア)上記4(1)ウ(ア)に摘記したとおり、甲2-1増粘化剤発明1、2は、「手攪拌のような緩い攪拌条件でも優れた分散性(ダマになりにくい)と粘度発現性(粘度の発現が早く、増粘効果が高い)を示す液状組成物用増粘化剤に関する」(甲2-1の【0001】)ものではあるものの、甲2-1には、分散性と粘度発現性に着目して、増粘化剤に水溶性カルシウム塩やクエン酸塩を添加することについての記載も示唆もない。
(イ)一方、上記(2)アに摘記したとおり、甲2-2には、キサンタンガム等の水溶性高分子粉末が水中でラッピングを起こさず容易に分散・溶解することを可能とするために、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、及びパントテン酸カルシウムからなる群から選ばれる1種以上を含有する水溶液をバインダーとして用いることが記載され(【0007】~【0008】)、また、上記(2)イに摘記したとおり、甲2-3には、携帯性に優れ、計量性もよく、取扱いも容易で、衛生的にも優れ、しかも分散性の良い、増粘多糖類を含む錠剤型の増粘化剤を提供することを目的として、キサンタンガム等の増粘多糖類を含む錠剤型増粘化剤に塩化カルシウム又はクエン酸ナトリウムからなる群から選択される1種以上の金属塩を含有させることが記載され(【請求項1】、【請求項2】、【0006】)、さらに、上記(2)ウに摘記したとおり、甲2-4には、良好な分散性(ダマの抑制)及び粘度発現性(迅速な粘度付与)を兼ね備える、糊料製剤を提供することを目的として、キサンタンガム等を含有する糊料製剤に塩化カルシウム、乳酸カルシウム、クエン酸ナトリウム等の金属塩を含有させることが記載されている(【請求項1】、【0008】、【0021】)。
(ウ)そうすると、甲2-1増粘化剤発明1、2において、分散性を向上させるために、甲2-2~甲2-4に記載された塩化カルシウム、乳酸カルシウム、クエン酸ナトリウム等を添加することについて、一応の動機付けはあるといえる。
(エ)しかしながら、甲2-1増粘化剤発明1、2に塩化カルシウム、乳酸カルシウム、クエン酸ナトリウム等を添加することよって、得られる増粘化剤の粒度分布が影響され、「粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の50%以下であり、且つ、粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の15%以上である」との条件を満たさなくなってしまう可能性を否定できない。
(オ)そして、甲2-2~甲2-4には、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、クエン酸ナトリウム等を添加することは記載されているにしても、これらを添加した際の粒度分布に着目した記載は見当たらないから、甲2-1増粘化剤発明1、2において、「粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の50%以下であり、且つ、粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の15%以上である」との条件が満たされることを維持しつつ、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、クエン酸ナトリウム等を添加する動機付けがあるとはいえない。
(カ)したがって、甲2-1増粘化剤発明1、2において、上記相違点3に係る特定事項を備えることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
ウ 小括
よって、上記相違点4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2-1に記載された発明、及び甲2-2、甲2-3、甲2-4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)本件発明2~9、11~13について
本件発明2~9、11~13は、本件発明1の特定事項を全て備えたものであるから、上記(3)ウのとおり、本件発明1が甲2-1に記載された発明、及び甲2-2、甲2-3、甲2-4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、同様に、甲2-1に記載された発明、及び甲2-2、甲2-3、甲2-4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(5)本件発明14について
ア 本件発明14と甲2-1方法発明1、2とを対比すると、上記(3)アで検討したのと同様であるから、両者は、次の点で相違する。
<相違点5>
本件発明14の「とろみ付与組成物の製造方法」は、「バインダーを用いて造粒する造粒工程」において、「粉末」中に、「水溶性カルシウム塩及びクエン酸塩を含」有させるものであるのに対して、甲2-1方法発明1、2の「増粘化剤を造粒する方法」は、水溶性カルシウム塩及びクエン酸塩を含有させるものではない点。
<相違点6>
「粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の50%以下であり、且つ、粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の15%以上となるように、造粒が行われる」点について、本件発明14では、これが「レーザー回折式粒度分布測定法に従い測定した」粒度分布に基づくものであるのに対して、甲2-1方法発明1、2では、どのような測定法による粒度分布に基づくものか不明である点。
イ 事案に鑑み、上記相違点5について検討するに、上記(3)イにおいて上記相違点3について検討したのと同様であるから、甲2-1方法発明において、上記相違点5に係る特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
ウ したがって、上記相違点6について検討するまでもなく、本件発明14は、甲2-1に記載された発明、及び甲2-2、甲2-3、甲2-4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(6)まとめ
以上のとおり、本件発明1~9、11~14は、甲2-1に記載された発明、及び甲2-2、甲2-3、甲2-4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえないから、申立理由2-1によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。
6 申立理由1-3(新規性)について
(1)甲1-4の記載事項
本願の優先日前に公知となった甲1-4には、「つるりんこQuickly」に関して、以下の記載がある。
「商品説明
そのままでは飲みにくいお食事に、簡単&すばやくトロミをつけることができます。
<<こんな方におすすめ>>
●食事や飲み物が飲みにくい方
●トロミづけで、味や色を変えたくない方
無味・無臭でサッと溶けるので、
温かいものにいも、冷たいものにも使えます。」
「商品特長
シリーズ とろみ調整・ゼリー化粉末
形状 粉末(顆粒)
保存方法 常温保存
アレルギー情報 不使用
栄養成分特長 許可マーク
栄養成分マークの説明 詳しい栄養成分
たんぱく質量 0.5g/100g
賞味期限 製造日より18ヶ月(在庫状況により賞味期限が短くなる場合あります)」
(2)特許異議申立書における申立人1の主張
申立人1は、特許異議申立書第12頁下から14行~第13頁下から8行において、以下の主張をしている。
「●公然実施された発明
(1)つるりんこQuickly
1)異議申立人は、デキストリン/キサンタンガム、乳酸カルシウム、クエン酸三ナトリウムを配合した出願人が販売者となって市販されているとろみ調整食品「つるりんこQuickly」(賞味期限2020.12.06)を市場で入手した(下図)。本製品の賞味期限は18ヶ月とされている*)ことから、本製品は優先日以前の2019年6月には製造され市販されていたと思われる。
*)18ヶ月の根拠は下記のECサイト(森永乳業株式会社の子会社であり、本製品の製造会社であるクリニコ社のインターネット販売サイト)である。
https://www.clinico.co.jp/ec/products/detail/14
上記サイトで閲覧できる情報は現在時点の製品の説明であるが、アメリカ合衆国カリフォルニア州にある非営利団体インターネットアーカイブ(Internet Archive)が保存しているウェブサイトを閲覧できるサービスである”Wayback Machine”を用いて2018年10月29日18時44分20秒時点での、上記サイトの記載状況が保存されているキャプチャ(画像保存)(甲4)を入手した。甲4の最上段に「Wayback Machine」と表示があり、続いて「20181029184420/~~(上記ECサイトのURL)~~」との記載があることから、この資料が、Wayback Machineによる2018年10月29日18時44分20秒の、上記ECサイトのキャプチャ(画像保存)であることが確認できる。
そして、甲4の2ページ目に「賞味期限 製造日より18ヶ月(在庫状況により賞味期限が短くなる場合あります)」との記載があることから、2018年(優先日以前)から本製品の賞味期限が18ヶ月であることがわかる。
2)本製品をレーザー回折式粒度分析測定法に従い測定した結果は下表のようになり、本発明の特定範囲に含まれる。
3)また比表面積の測定結果は80.0m2/kgであり、本件発明5の範囲に含まれる。
4)本製品のキサンタンガムの含有量が、本件発明1に特定される20~40%であるかどうかは不明であるが、とろみ調整食品として適当な粘度を付与するために必要なキサンタンガム濃度は20~40%である蓋然性がきわめて大きい。
[図:0001416443000007.jpg]
[図:0001416443000008.jpg]
[レーザー回折式粒度分析測定法の測定結果]
[図:0001416443000009.jpg]
したがって、本件発明1~13は、出願前に公然実施された発明である。」
(3)判断
上記(1)、(2)を前提として、以下判断する。
ア まず、甲1-4に係る「つるりんこQuickly」が、本願の優先日前に公然実施されたものと認められるか否かについて検討する。
(ア)上記(2)に摘記したとおり、申立人1は、特許異議申立書において、「デキストリン/キサンタンガム、乳酸カルシウム、クエン酸三ナトリウムを配合した出願人が販売者となって市販されているとろみ調整食品「つるりんこQuickly」(賞味期限2020.12.06)を市場で入手した」旨主張しているが、これを根拠付ける証拠は何ら提示されていないから、そもそもこのような事実を認定することはできない。
(イ)また、仮に上記(ア)のとおりの事実を認定し得たとしても、甲1-4の「賞味期限 製造日より18ヶ月(在庫状況により賞味期限が短くなる場合あります)」との記載を考慮すると、市場で入手したとされる賞味期限2020.12.06の「つるりんこQuickly」についても、その賞味期限が18ヶ月よりも短くなっている可能性を否定できず、本願の優先日である2019年7月12日の時点で製造され市販されていたと断言することはできない。
(ウ)したがって、甲1-4に係る「つるりんこQuickly」は、本願の優先日前に公然実施されたものとは認められない。
イ 仮に市場で入手したとされる賞味期限2020.12.06の「つるりんこQuickly」が、本願の優先日である2019年7月12日の時点で製造され市販されていたものであったとしても、当該「つるりんこQuickly」における「キサンタンガム」の含有割合が「20質量%~40質量%であ」るか否かは不明であると言わざるを得ず、少なくともこの点において、本件発明1と甲1-4に係る「つるりんこQuickly」とは、実質的に相違する。
ウ したがって、いずれにしても、本件発明1は、本願の優先権主張の日前に公然実施された発明であるとはいえない。本件発明1の特定事項を全て備えた本件発明2~9、11~13についても同様である。
(4)まとめ
以上のとおり、本件発明1~9、11~13は、本願の優先日前に公然実施された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第2号に該当し特許を受けることができないものとはいえないから、申立理由1-3によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、令和 5年 9月15日付けで通知した取消理由、令和 6年 3月18日付けで通知した取消理由(決定の予告)及び特許異議申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~9、11~14に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~9、11~14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件訂正によって特許異議の申立てがされた請求項10は削除され、特許異議の申立ての対象となる請求項10は存在しないものとなったから、請求項10に係る特許異議の申立ては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700485