特許異議申立
2024-701033
導電パターン付き基板の製造方法およびLED実装回路基板の製造方法
- 審判番号
- 2024-701033
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-163360
- 登録番号
- 7472742
- 請求日
- 2024年10月21日
- 審決日
- 2025年01月28日
- 公報発行日
- 2025年03月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】東レ株式会社
- 【異議申立人】横沢 聡
- 【異議申立人】林 誠一
- 審判長/審判官
- 審判長 高野 洋
- 審判官 馬場 慎
- 審判官 丸山 高政
- 分類
- P1651.55 -Y (H05K) / P1651.537-Y (H05K) / P1651.121-Y (H05K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第36条第6項第2号、特許法第113条第4号、特許法第17条の2第3項、特許法第113条第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7472742号発明「導電パターン付き基板の製造方法およびLED実装回路基板の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7472742号の請求項1~8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7472742号(以下「本件特許」という。)の手続の経緯の概略は、次のとおりである。
1 本件特許の出願から特許掲載公報発行までの経緯
令和 2年 9月29日 出願
令和 5年 4月 5日 上申書、手続補正書の提出
令和 6年 3月 6日付け 特許査定
令和 6年 4月15日 設定登録
令和 6年 4月23日 特許掲載公報の発行
2 本件特許異議申立の手続の経緯
令和 6年10月21日 特許異議申立人 横沢 聡(以下「申立人
Aという。)による特許異議申立書の提出
令和 6年10月22日 特許異議申立人 林 誠一(以下「申立人
Bという。)による特許異議申立書の提出
令和 6年11月12日付け 手続補正指令
令和 6年11月28日 申立人Bによる手続補正書の提出
以下では、申立人Aにより提出された特許異議申立書を「申立書A」といい、申立人Bにより令和 6年11月28日に提出された手続補正書により補正された特許異議申立書を「申立書B」という。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~8に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明8」といい、これらを総称して「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
転写基板上に有機成分と導電性粒子とを有する組成物のパターンを形成する工程と、前記転写基板の裏面側からレーザーを照射して前記パターンを被転写基板へ転写する工程とを含む導電パターン付き基板の製造方法であって、前記被転写基板が複数の電子部品が実装された基板であり、前記電子部品の欠損部に前記パターンを転写する導電パターン付き基板の製造方法。
【請求項2】
前記有機成分と導電性粒子とを有する組成物中の導電性粒子の含有量が5~55重量%である請求項1に記載の導電パターン付き基板の製造方法。
【請求項3】
前記有機成分と導電性粒子とを有する組成物のパターンが、感光性導電ペーストを露光、現像することによって得られる、請求項1または2に記載の導電パターン付き基板の製造方法。
【請求項4】
前記有機成分と導電性粒子とを有する組成物のパターン一つ当たりの前記転写基板との接触面積の平均が5~1000μm2である請求項1~3のいずれかに記載の導電パターン付き基板の製造方法。
【請求項5】
前記有機成分と導電性粒子とを有する組成物のガラス転移点が60℃以下である請求項1~4のいずれかに記載の導電パターン付き基板の製造方法。
【請求項6】
被転写基板が複数の電子部品が実装されたプリント配線板またはTFT基板である請求項1~5のいずれかに記載の導電パターン付き基板の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の導電パターン付き基板の製造方法によって得られた導電パターン付き基板上の導電パターンとLEDの電極部とを熱圧着させる工程とを含むLED実装回路基板の製造方法。
【請求項8】
前記欠損部が、前記複数の電子部品が実装された基板から不良の電子部品を除去することによって生じたものである請求項1~6のいずれかに記載の導電パターン付き基板の製造方法。」
なお、本件発明1について、後の参照の便宜のために、以下のとおり分説し、「発明特定事項A」のようにして参照する。
【請求項1】
A 転写基板上に有機成分と導電性粒子とを有する組成物のパターンを形成する工程と、
B 前記転写基板の裏面側からレーザーを照射して前記パターンを被転写基板へ転写する工程とを含む導電パターン付き基板の製造方法であって、
C 前記被転写基板が複数の電子部品が実装された基板であり、
D 前記電子部品の欠損部に前記パターンを転写する
E 導電パターン付き基板の製造方法。
第3 申立ての理由の概要
申立書A、Bに記載された申立ての理由及び証拠方法は、次のとおりである。
1 申立書Aについて
(1)申立理由
理由A1 本件発明1~8は、甲第1号証~甲第5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(特許法第113条第2号)
理由A2 本件の特許請求の範囲の記載は、本件発明1~8が明確ではないから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(特許法第113条第4号)
(2)証拠方法
甲第1号証 特開2019-10776号公報
甲第2号証 特開2020-43188号公報
甲第3号証 特表2020-513463号公報
甲第4号証 国際公開第2013/146239号
甲第5号証 国際公開第2011/114846号
以下、申立人Aが提出した「甲第1号証」~「甲第5号証」を、それぞれ「甲A1」~「甲A5」という。
2 申立書Bについて
(1)申立理由
理由B1 本件発明1~8は、甲第1号証~甲第7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(特許法第113条第2号)
理由B2 令和5年 4月 5日提出の手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、本件特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(特許法第113条第1号)
理由B3 本件の特許請求の範囲の記載は、本件発明1~8が明確ではないから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(特許法第113条第4号)
(2)証拠方法
甲第1号証 特表2020-513463号公報
甲第2号証 国際公開第2011/114846号
甲第3号証 国際公開第00/34830号
甲第4号証 特開2020-64118号公報
甲第5号証 特開2020-43188号公報
甲第6号証 特開2015-135949号公報
甲第7号証 特表2018-504771号公報
甲第8号証 令和5年 4月 5日提出の手続補正書
甲第9号証 令和5年 4月 5日提出の上申書
以下、申立人Bが提出した「甲第1号証」~「甲第9号証」を、それぞれ「甲B1」~「甲B9」という。
第4 理由B2についての判断
最初に、理由B2(補正が不適法)の有無を判断する。
1 本件補正について(補正の内容)
本件補正により、以下(1)~(4)に示すとおり補正された。(下線は、補正箇所を示す。)
(1)明細書の【0062】
補正前の「次に、100mLクリーンボトルに、20.0gの有機成分(A-2)にAg粒子8.4gを混ぜ合わせ、3本ローラーミル(EXAKT M-50;EXAKT社製)を用いて混錬し、固形分中の導電性粒子の割合が50重量%の導電ペースト2を得た。」との記載を、
「次に、100mLクリーンボトルに、20.0gの有機成分(A-2)にAg粒子8.56gを混ぜ合わせ、3本ローラーミル(EXAKT M-50;EXAKT社製)を用いて混錬し、固形分中の導電性粒子の割合が50重量%の導電ペースト2を得た。」と補正する。
(2)明細書の【0064】
補正前の「次に、100mLクリーンボトルに、20.0gの有機成分(A-3)にAg粒子8.4gを混ぜ合わせ、3本ローラーミル(EXAKT M-50;EXAKT社製)を用いて混錬し、固形分中の導電性粒子の割合が50重量%の導電ペースト3を得た。」との記載を、
「次に、100mLクリーンボトルに、20.0gの有機成分(A-3)にAg粒子9.28gを混ぜ合わせ、3本ローラーミル(EXAKT M-50;EXAKT社製)を用いて混錬し、固形分中の導電性粒子の割合が50重量%の導電ペースト3を得た。」と補正する。
(3)明細書の【0066】
補正前の「次に、100mLクリーンボトルに、20.0gの有機成分(A-4)にAg粒子8.4gを混ぜ合わせ、3本ローラーミル(EXAKT M-50;EXAKT社製)を用いて混錬し、固形分中の導電性粒子の割合が50重量%の導電ペースト4を得た。」との記載を、
「次に、100mLクリーンボトルに、20.0gの有機成分(A-4)にAg粒子9.28gを混ぜ合わせ、3本ローラーミル(EXAKT M-50;EXAKT社製)を用いて混錬し、固形分中の導電性粒子の割合が50重量%の導電ペースト4を得た。」と補正する。
(4)明細書の【0089】
補正前の
「
[図:0001420359000001.jpg]
」
を
「
[図:0001420359000002.jpg]
」
と補正する。
2 補正の適否
(1)前記1(4)(明細書の【0089】)について
ア 表1の実施例1及び2の導電ペーストの導電性粒子の含有量を「50」重量%と補正することについて
(ア)明細書の【0059】及び【0060】には、合成例1として、導電ペースト1を得る方法が詳細かつ具体的に記載されており、導電ペースト1の固形分中の導電性粒子の割合である「50」重量%という数値は、固形分42.0%の有機成分(A-1)20.0gにAg粒子8.4gを混ぜ合わせたこと(このときのAg粒子の割合は、8.4/(20.0×0.42+8.4)=0.50であるから50重量%)と整合しており、その導出に根拠がある数値である。
(イ)導電ペースト1を用いた実施例1(【0067】~【0069】)及び実施例2(【0070】~【0072】)は、前記(ア)によれば、導電ペーストの導電性粒子の含有量は「50」重量%であるが、補正前の表1には、実施例1及び2の導電ペーストの導電性粒子の含有量は「40」重量%とあり、実施例と表1の記載とが矛盾している。
(ウ)ここで、補正前の表1の「40」重量%という数値は、明細書等の全体を参酌しても、その導出根拠が示されていない。
(エ)したがって、導出根拠が示されていない表1の記載(「40」重量%)よりも、導出根拠が示されている明細書の【0059】及び【0060】における記載(「50」重量%)が正しいと解するのが妥当である。
(オ)そうすると、表1の実施例1及び2の導電ペーストの導電性粒子の含有量を「50」重量%と補正することは、正しい記載に整合させるものといえる。
イ 表1の実施例9、比較例3及び4の導電ペーストの導電性粒子の含有量を「50」重量%と補正することについて
(ア)実施例9(【0079】)、比較例3(【0086】)、比較例4(【0087】)は、導電ペーストの導電性粒子の含有量は、実施例2と同様であるから、「50」重量%であるが、補正前の表1には、実施例9、比較例2及び3の導電ペーストの導電性粒子の含有量は「40」重量%とあり、両者は矛盾している。
(イ)前記ア(エ)のとおり、導電ペースト1の導電性粒子の割合が「50」重量%である旨の記載が正しいと解されるところ、表1の実施例9、比較例3及び4の導電ペーストの導電性粒子の含有量を「50」重量%と補正することは、正しい記載に整合させるものといえる。
ウ 表1の実施例3~8、13、比較例2の導電ペーストの導電性粒子の含有量を「50」重量%と補正することについて
(ア)明細書の【0059】及び【0060】には、合成例1として、導電ペースト1の導電性粒子の割合が「50」重量%であることが記載されている。さらに、明細書の【0061】及び【0062】には、合成例2として、導電ペースト2の導電性粒子の割合が50重量%であることが記載され、明細書の【0063】及び【0064】には、合成例3として、導電ペースト3の導電性粒子の割合が50重量%であることが記載され、明細書の【0065】及び【0066】には、合成例4として、導電ペースト4の導電性粒子の割合が50重量%であることが記載されている。
(イ)実施例3~8(【0073】~【0078】)、実施例13(【0081】~【0083】)、比較例2(【0085】)は、導電ペースト1の代わりに導電ペースト2~4を用いており、前記(ア)によれば、導電ペーストの導電性粒子の含有量は50重量%であるが、補正前の表1には、実施例3~8、13、比較例2の導電ペーストの導電性粒子の含有量は「50」重量%と記載されておらず、両者は矛盾している。
(ウ)ここで、明細書の【0080】には、実施例10~12について、「導電ペースト中の導電性粒子の含有量を表1記載の値に変更した」との記載があるところ、実施例10~12以外は、導電ペースト中の導電性粒子の含有量を変更していない、すなわち、実施例1~8、13、比較例2の導電ペースト中の導電性粒子の含有量は同じであり、50重量%であると解される。このことは、実施例1~8、13、比較例2に用いられる導電ペースト1~4のいずれも導電性粒子の割合が50重量%であること(前記(ア))と整合する。
(エ)前記ア(エ)のとおり、導電ペースト1の導電性粒子の割合が「50」重量%である旨の記載が正しいと解され、前記(ウ)のとおり、導電ペースト1を用いた実施例1及び2と、導電ペースト2~4を用いた実施例3~8、13、比較例2とは、導電性粒子の含有量は同じであり、「50」重量%であると解されるところ、表1の実施例3~8、13、比較例2の導電ペーストの導電性粒子の含有量を「50」重量%と補正することは、正しい記載に整合させるものといえる。
エ 前記ア~ウによれば、明細書の【0089】でした補正は、正しい記載に整合させる補正であり、新たな技術的事項を導入するものではないので、新規事項を追加する補正に該当しない。
(2)前記1(1)(明細書の【0062】)について
ア 補正前の明細書の【0061】及び【0062】には、合成例2として、導電ペースト2を得る方法が記載されているが、導電性粒子の割合(50重量%)と、その導出根拠(固形分42.8wt%の有機成分(A-2)20.0gにAg粒子8.4gを混ぜ合わせること(このときのAg粒子の割合は49.5重量%))とが矛盾している。
イ 前記(1)ウ(エ)のとおり、導電ペースト2の導電性粒子の割合は「「50」重量%であることが正しいと解されるところ、導出根拠を補正する(固形分42.8wt%の有機成分(A-2)20.0gにAg粒子「8.56」gを混ぜ合わせることに補正する)ことは、正しい記載に整合させるものといえる。
ウ 前記ア及びイによれば、明細書の【0062】でした補正は、正しい記載に整合させる補正であり、新たな技術的事項を導入するものではないので、新規事項を追加する補正に該当しない。
(3)前記1(2)(明細書の【0064】)について
ア 補正前の明細書の【0063】及び【0064】には、合成例3として、導電ペースト3を得る方法が記載されているが、導電性粒子の割合(50重量%)と、その導出根拠(固形分46.4wt%の有機成分(A-3)20.0gにAg粒子8.4gを混ぜ合わせること(このときのAg粒子の割合は47.5重量%))とが矛盾している。
イ 前記(1)ウ(エ)のとおり、導電ペースト3の導電性粒子の割合は「「50」重量%であることが正しいと解されるところ、導出根拠を補正する(固形分46.4wt%の有機成分(A-3)20.0gにAg粒子「9.28」gを混ぜ合わせることに補正する)ことは、正しい記載に整合させるものといえる。
ウ 前記ア及びイによれば、明細書の【0064】でした補正は、正しい記載に整合させる補正であり、新たな技術的事項を導入するものではないので、新規事項を追加する補正に該当しない。
(4)前記1(3)(明細書の【0066】)について
ア 補正前の明細書の【0065】及び【0066】には、合成例4として、導電ペースト4を得る方法が記載されているが、導電性粒子の割合(50重量%)と、その導出根拠(固形分46.4wt%の有機成分(A-4)20.0gにAg粒子8.4gを混ぜ合わせること(このときのAg粒子の割合は47.5重量%))とが矛盾している。
イ 前記(1)ウ(エ)のとおり、導電ペースト4の導電性粒子の割合は「「50」重量%であることが正しいと解されるところ、導出根拠を補正する(固形分46.4wt%の有機成分(A-4)20.0gにAg粒子「9.28」gを混ぜ合わせることに補正する)ことは、正しい記載に整合させるものといえる。
ウ 前記ア及びイによれば、明細書の【0066】でした補正は、正しい記載に整合させる補正であり、新たな技術的事項を導入するものではないので、新規事項を追加する補正に該当しない。
3 申立人Bの主張についての判断
申立人Bは、本件補正の適否について、以下のとおり主張する。
・「令和5年4月5日提出の上申書(甲第9号証)において、例えば、(合成例2)におけるAg粒子の添加量の誤記は、(合成例2)における有機成分(A-2)の固形分が42.8wt%であることを根拠としているが、当初明細書の【0089】の【表1】の導電粒子含有量40重量%を根拠として誤記補正することも、当初明細書の【0062】のAg粒子8.4gを根拠として誤記補正することも可能であり、そのうちのいずれが正しいかが、当初明細書等の記載から、当業者にとって明らかではない。」(申立書Bの32頁)
・「令和5年4月5日提出の手続補正書による補正は、【実施例】において、導電粒子含有量40重量%を導電粒子含有量50重量%に拡張するものある。」(申立書Bの32頁)
・「審査基準(第IV部 第2章 新規事項を追加する補正 3.3.2 明細書の補正)には、以下の通り記載されている。
<(3)不整合記載を解消する補正の場合
明細書等の中に矛盾する二以上の記載がある場合であって、そのうちのいずれが正しいかが、当初明細書等の記載から、当業者にとって明らかな場合は、その正しい記載に整合させる補正は、新たな技術的事項を導入するものではないので許される。>
審査基準によれば、令和5年4月5日提出の手続補正書による補正は、明細書等の中に矛盾する二以上の記載がある場合であって、そのうちのいずれが正しいかが、当初明細書等の記載から、当業者にとって明らかでない場合に該当する。
よって、令和5年4月5日提出の手続補正書による補正は、新たな技術的事項を導入するものであり、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たさない。」(申立書Bの32~33頁)
以下、当該主張について検討する。
前記2のとおり、本件補正は、明細書の中に矛盾する記載があるものの、そのうちのいずれが正しいか(導電ペーストの導電性粒子の割合は「50」重量%であることが正しい)が、当初明細書等の記載から、当業者にとって明らかであり、その正しい記載に整合させる補正に該当するから、審査基準によれば、新たな技術的事項を導入するものではないので許されるとされたものである。
また、当初明細書等には、導電性粒子の含有量は「50」重量%である実施例が記載されている(前記2(1)ア(イ))から、本件補正は「【実施例】において、導電粒子含有量40重量%を導電粒子含有量50重量%に拡張するもの」とは認められない。
したがって、当該主張は採用できない。
4 理由B2についての小括
前記2のとおり、本件補正は、新たな技術的事項を導入するものではなく、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものと認められる。
以上によれば、理由B2には理由がない。
第5 理由A2及びB3についての判断
次に、理由A1及び理由B1(進歩性の欠如)の有無を判断する前に、理由A2及びB3(明確性要件違反)の有無を判断する。
1 本件発明1の明確性要件についての判断
(1)本件発明1を特定する発明特定事項の記載は、いずれも明確であり、本件発明1はその範囲が明確である。
(2)本件発明の「パターン」について、申立人A及びBが明確性要件違反を主張しているので、これについて判断すると、本件発明1の発明特定事項である「有機成分と導電性粒子とを有する組成物のパターン」との記載は、一般に、「パターン」とは、「型。類型。様式。」(広辞苑第五版)を意味するから、「有機成分と導電性粒子とを有する組成物」からなる「型」であることが、明確である。
さらに、本件発明1の発明特定事項である「前記電子部品の欠損部に前記パターンを転写する」との記載から、「パターン」が「電子部品の欠損部」に転写されるものであることが、明確に把握できると認められる。
(3)したがって、本件発明1は明確であると認められる。
2 本件発明2~8の明確性要件についての判断
請求項2~8が直接又は間接的に引用する本件発明1は、前記1のとおり明確である。
また、請求項2~8で特定される発明特定事項の記載は、いずれも明確である。
よって、請求項1を直接又は間接的に引用する本件発明2~8は明確であると認められる。
3 申立人Aの主張についての判断
申立人Aは、本件発明の明確性要件について、以下のとおり主張する。
・「本件特許発明は、複数の電子部品が実装された基板の電子部品の欠損部にパターンを転写するものであるが、請求項においては、「パターン」について何ら規定されておらず、明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮しても、「パターン」の技術的意味を理解することができない。
…(略)…
そして、基板の製造方法の発明については、「パターン」は、電子部品同士を接続するための配線であることが出願時の技術常識であり、このような技術常識を考慮すると、請求項において、「パターン」の技術的意味を理解するための事項が不足していることは明らかである。したがって、請求項の記載から発明を明確に把握することができない。」(申立書Aの21頁)
以下、当該主張について検討する。
本件発明の「パターン」について、「有機成分と導電性粒子とを有する組成物」からなること、「電子部品の欠損部」に「転写する」ことが本件発明1で特定されており、「パターン」とは、一般的に「型」を意味するところ、前記1のとおり、本件発明を明確に把握できると認められる。
したがって、当該主張は採用できない。
4 申立人Bの主張についての判断
申立人Bは、本件発明の明確性要件について、以下のとおり主張する。
・「基板の製造方法の発明において、「パターン」は、配線であることが出願時の技術常識であるが、特許発明1の「パターン」の用語がどのような意味内容を有しているのか理解できない。
…(略)…
一方、特許発明1の「組成物のパターンを形成する」との記載において、「パターン」の用語は、繰り返し現れる複数の特定の形や構造を意味するものと考えられる。
そうすると、明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮しても、特許発明1-8の「前記電子部品の欠損部に前記パターンを転写する」との記載では、電子部品の欠損部に対して、どのような形状の組成物を転写するものなのかが理解できず、また、所定形状の転写も単数なのか複数なのかが理解できないから、発明が不明確である。」(申立書Bの33~34頁)
以下、当該主張について検討する。
本件発明1の「パターン」の用語は、一般的な意味である「型」を意味し、「型」の具体的な(「繰り返し現れる複数の特定の」)形や構造をも意味するとは認められない。このことは、本件明細書の「パターンの形状としては、特に制限はない」(【0019】)との記載とも整合する。
そうすると、「「パターン」の用語は、繰り返し現れる複数の特定の形や構造を意味するものと考えられる」という申立人B独自の解釈を前提として、本件発明が不明確であるとする当該主張は採用できない。
5 理由A2及びB3についての小括
前記1~4によれば、本件の特許請求の範囲の記載は、本件発明1~8が明確であると認められる。
以上によれば、理由A2及びB3には理由がない。
第6 理由A1についての判断
次に、理由A1(進歩性の欠如)の有無を判断する。
理由A1の有無を判断するために、まず、以下の1において甲A1に記載された発明(以下「甲A1発明」という。)の認定を行い、以下の2において甲A2に記載された技術(以下「甲A2技術」という。)の認定を行う。次いで、以下の3において本件発明1と甲A1発明との対比を行い、以下の4において本件発明1と甲A1発明との相違点について判断し、以下の5に小括する。
1 甲A1発明の認定
(1)甲A1の記載
甲A1には、次の事項が記載されている。なお、下線は、甲A1発明の認定に使用する箇所を示すことを目的に、当審で付した。
「【請求項12】
パターン構造体の製造方法であって、
パターンの原料となる原料膜を成膜した第1の基材と、透明樹脂層を備える透明基材とを、用意し、
前記第1の基材と前記透明基材とを、前記原料膜と前記透明樹脂層とが対向するように接触させた状態で、前記第1の基材又は前記透明樹脂層側から、レーザー光を前記原料膜に照射して、前記原料膜の内レーザー光が照射されている部分のみを透明樹脂層側に転写堆積させるレーザー転写を行い、スタンパを製造する工程と、
前記スタンパを用いて、前記スタンパとパターン構造体用基材とを、前記スタンパの凸部パターンを前記パターン構造体用基材を対向するよう接触させた状態で、レーザー光を一様に照射することにより、前記凸パターンをパターン構造体用基材に転写させる工程とを、備えることを特徴とするパターン構造体の製造方法。」
「【0024】
パターン構造体形成用スタンパの凸部パターンは、スタンパを使用するレーザー転写工程において、転写先基材に転写される膜であるので、最終物であるパターン構造体のパターンの膜を構成する無機物を含む。パターン構造体形成用スタンパの凸部パターンの例として、スタンパを用いた、一様なレーザー照射によるレーザー転写において、レーザー転写可能な膜からなるものであれば、特に制限はない。即ち、詳しくは後述するように、透明樹脂層とスタンパ表面凸部の界面近傍で、レーザーパルスを吸収した光吸収層の一部でレーザーアブレーションを起こし、レーザーアブレーションに伴い、スタンパ表面凸部を転写的基材に転写堆積させられることが可能な膜であればよい。たとえば、固体の膜であればよい。無機物からなる固体膜や、主成分が無機物であって有機物を含む固体膜でもよい。ここで主成分とは50容量%以上の場合をいう。さらに、80容量%以上であればより好ましい。薄膜や塗布膜でもよい。ここで、スタンパにインクを付与して単に転写印刷するような従来技術は含まない。また、塗布膜として、最終物のパターンの無機物に加えてその他の溶剤を5%以下含んでいてもよい。塗布膜の具体例として、Agナノペースト膜やカーボンナノチューブ膜等が挙げられる。無機物として、Au、Ag、Cu、Mo、Cr等のいずれか1以上からなる金属又は合金、ITO、ZnO、TiO2、Al2O3、BaTiO3等のいずれか1以上からなる金属酸化物等が挙げられる。パターン構造体形成用スタンパの凸部パターンは、溶媒を実質的に有しないことがより好ましい。」
「【0027】
[パターン構造体形成用スタンパの製造方法]
パターン構造体形成用スタンパの製造は、主として次の工程からなる。
(工程A1) パターンの原料となる原料膜を成膜した第1の基材と、透明樹脂層を備える透明基材とを、用意する工程。
(工程A2) 前記第1の基材と前記透明基材とを、前記原料膜と前記透明樹脂層とが対向するように接触させた状態で、前記第1の基材又は前記透明樹脂層側から、レーザー光を前記原料膜に照射して、前記原料膜の内レーザー光が照射されている部分のみを透明樹脂層側に転写堆積させるレーザー転写を行う工程。
(工程A3) 前記第1の基材と前記透明基材を分離して、凸部パターンを有するスタンパを得る工程。」
「【0033】
(工程A2)を図示する図2A(b)は、第1の基材101とスタンパ用の透明基材とを、原料膜と透明樹脂層とが対向するように接触させた状態で、第1の基材101から、レーザーパルス107を前記原料膜102に照射して、前記原料膜102の内レーザー光が照射されている部分のみを透明樹脂層側に転写堆積させるレーザー転写を行う工程を示している。ここで、レーザー光を前記原料膜に照射する際には、レーザー光をパターン構造体のパターンと同形状のパターン状(光強度パターンなど)で、原料膜に照射する。よって、レーザー転写により、レーザー光が照射されている部分のみが転写堆積されて(工程A3)の凸部パターンとなる。」
「【0044】
[スタンパを用いたレーザー転写によるパターン構造体の製造方法]
パターン構造体の製造は、主として次の工程からなる。
(工程B1) 本発明の実施の形態のスタンパとパターン構造体用基材とを、前記スタンパの凸部パターンと前記パターン構造体用基材とが対向するよう接触させた状態で、レーザー光を照射することにより、前記凸パターンをパターン構造体用基材に転写させる工程。
(工程B2) 前記パターン構造体用基材と前記スタンパを分離して、パターンを有するパターン構造体を得る工程。
【0045】
図2B(d)(e)は、図2A(c)で作製したスタンパ110を用いて、転写先基材113に微細パターン構造体を転写作製する様子を示す。スタンパ表面凸部109と転写先基材113を対向配置させる。この状態で、スタンパの裏面即ちスタンパ用の透明基材106側から、レーザーパルス111をシングルショット照射し、透明樹脂層105とスタンパ表面凸部109の界面近傍の、光吸収層112の位置で、レーザーパルス吸収を誘起する。その結果として光吸収層112の一部でレーザーアブレーションを起こし、レーザーアブレーションに伴う固体から気体・プラズマへの相変化による急激な体積増加により生じる圧力を推進力として、スタンパ表面凸部109を転写的基材113に転写堆積させ、図2B(e)の転写先基材に、転写された無機物物質からなる、パターン構造体のパターン114を得る。スタンパ表面凸部が多層膜である場合も、同様に、転写先基材に多層膜のパターンが転写される。」
「【0048】
転写先基材としては、従来のパターン構造体の基材として使用されている部材であれば、特に制限はない。例えば、電子デバイス用の基板、フレキシブル基板、医用部材コーティング用基材等が挙げられる。材質としては、無機材、有機材、いずれでもよい。例えば、シリコン等の半導体ウェハ、アルミナ等のセラミックス、石英ガラス、ポリマーフィルム、高分子基板等が好ましい。」
「【図2A】
[図:0001420359000003.jpg]
」
「【図2B】
[図:0001420359000004.jpg]
」
(2)甲A1発明
前記(1)によれば、甲A1には、次の甲A1発明が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、甲A1発明を以下のa~dに分説し、「構成a」のようにして参照する。
「a パターンの原料となる原料膜を成膜した第1の基材と、透明樹脂層を備える透明基材とを、用意し、前記第1の基材と前記透明基材とを、前記原料膜と前記透明樹脂層とが対向するように接触させた状態で、レーザー光を前記原料膜に照射して、前記原料膜の内レーザー光が照射されている部分のみを透明樹脂層側に転写堆積させるレーザー転写を行い、凸部パターンを有するスタンパを製造する工程と、(【請求項12】、【0027】)
b 前記スタンパを用いて、前記スタンパとパターン構造体用基材とを、前記スタンパの凸部パターンを前記パターン構造体用基材を対向するよう接触させた状態で、スタンパの裏面即ちスタンパ用の透明基材側からレーザー光を照射することにより、前記凸部パターンをパターン構造体用基材に転写させる工程とを、備えるパターン構造体の製造方法であって、(【請求項12】、【0045】)
c スタンパの凸部パターンは、最終物であるパターン構造体のパターンを構成する無機物を含み、主成分が無機物であって有機物を含むものでもよく、具体例として、Agナノペーストが挙げられる、(【0024】)
d パターン構造体の製造方法。」
2 甲A2技術の認定
(1)甲A2の記載
甲A2には、次の事項が記載されている。なお、下線は、甲A2技術の認定に使用する箇所を示すことを目的に、当審で付した。
「【0033】
続いて 連結剤挿入工程(S12)で、被転写領域16にLEDチップ5と被転写基板10とを結合する導電性物質を含む連結剤3を挿入する。ここで連結剤3は、たとえば積水化学工業社のはんだ粒子入り異方導電性ペーストや金属ペースト等である。本実施例ではガイド層15は連結剤3に対する撥液性を有する材料で構成されているので、たとえば図3(D)で示すようにスキージ19を用いて容易に多くの被転写領域16に一度で挿入することができる。連結剤3に対する撥液性を有する材料で構成されていないガイド層15の場合は、たとえばディスペンサのようなもので連結剤3を被転写領域16に挿入すればよい。このようにして、図4(A)に示すような被転写基板10を製造する。ここで被転写基板10において、連結剤3が挿入された部分を連結部13という。」
「【0050】
本実施例に用いられる被転写基板30は、図7(A)に示すように検査工程(S15)で不良と判断されたLEDチップ8の近傍に新たに予備LEDチップ9用の被転写領域である予備被転写領域39を設けるスペースを有している。ここで予備被転写領域39を設けるスペースは、図7(A)に示すように転写されたそれぞれのLEDチップ5の近傍のLEDチップ5が転写されていない場所で、図7(B)、(C)に示すように対象のLEDチップ5が連結している配線部32が設けられている場所にあらかじめ予定されている。
【0051】
続いてガイド層除去工程(S16)で、予備被転写領域39上のガイド層35を、図8(B)に示すようにたとえばレーザーアブレーション法等を用いて除去し、新たに予備被転写領域39を設ける。
【0052】
続いて予備連結剤挿入工程(S17)で、図8(C)で示すようにガイド層除去工程(S16)でガイド層35を除去した予備被転写領域39とガイド層35に囲まれた窪みに連結剤3を、たとえばディスペンサー38を用いて挿入し連結部33を形成する。
【0053】
続いて予備LED転写工程(S18)で、図8(D)に示すように予備連結剤挿入工程(S17)で連結剤3を挿入された予備被転写領域39上に予備LEDチップ9をレーザーリフト法により転写する。」
「【0056】
また、検査工程(S15)で不良と判断されたLEDチップ8を除去して同じ場所に予備LEDチップを実装するリペア方法では、検査工程(S15)で不良と判断されたLEDチップ8を完全に除去しきれない場合、同じ箇所に新たに予備LEDチップを実装しても不良となる可能性がある。上述のように実施例3の実装基板の製造方法では、検査工程(S15)で不良と判断されたLEDチップ8を除去せずに新たに予備LEDチップ9を実装するため、同じ箇所に新たな予備LEDチップ9を実装するよりもリペアした箇所が再び不良となる可能性が低減され確実なリペアができる。」
(2)甲A2技術
前記(1)によれば、甲A2には、次の甲A2技術が記載されていると認められる。
「被転写基板30は、検査工程で不良と判断されたLEDチップ8の近傍に新たに予備LEDチップ9用の被転写領域である予備被転写領域39を設けるスペースを有しており、(【0050】)
ガイド層35を除去した予備被転写領域39とガイド層35に囲まれた窪みに連結剤3を、ディスペンサー38を用いて挿入し連結部33を形成し、(【0052】)
連結剤3は、はんだ粒子入り異方導電性ペーストや金属ペーストであり、(【0033】)
連結剤3を挿入された予備被転写領域39上に予備LEDチップ9をレーザーリフト法により転写し、(【0053】)
検査工程で不良と判断されたLEDチップ8を除去せずに新たに予備LEDチップ9を実装すること。(【0056】)」
3 本件発明1と甲A1発明との対比
本件発明1と甲A1発明とを対比する。
(1)発明特定事項A「転写基板上に有機成分と導電性粒子とを有する組成物のパターンを形成する工程と、」について
ア 甲A1発明の「パターンの原料となる原料膜を成膜した第1の基材と、透明樹脂層を備える透明基材とを、用意し、」「前記原料膜の内レーザー光が照射されている部分のみを透明樹脂層側に転写堆積させるレーザー転写を行い、凸部パターンを有するスタンパを製造する工程」(構成a)は、「透明樹脂層を備える透明基材」の「透明樹脂層側に」「凸部パターン」を形成するものであり、「透明樹脂層を備える透明基材」、「凸部パターン」が、それぞれ、本件発明1の「転写基板」、「パターン」に相当する。
イ 甲A1発明の「スタンパの凸部パターンは、」「主成分が無機物であって有機物を含むものでもよく、具体例として、Agナノペーストが挙げられる」(構成c)から、「凸部パターン」は、「無機物」と「有機物」とを有する組成物であり、「無機物」として「Agナノ」粒子が用いられるものである。ここで、「Agナノ」粒子が導電性粒子であることは、技術常識である。
ウ 前記ア及びイによれば、本件発明1と甲A1発明とは、「転写基板上に有機成分と導電性粒子とを有する組成物のパターンを形成する工程」(以下、「形成工程」ともいう。)を含む点で一致する。
(2)発明特定事項B「前記転写基板の裏面側からレーザーを照射して前記パターンを被転写基板へ転写する工程とを含む導電パターン付き基板の製造方法であって、」、発明特定事項E「導電パターン付き基板の製造方法。」について
ア 甲A1発明の「スタンパの裏面即ちスタンパ用の透明基材側からレーザー光を照射することにより、前記凸部パターンをパターン構造体用基材に転写させる工程」(構成b)は、「凸部パターン」が転写される「パターン構造体用基材」が本件発明1の「被転写基板」に相当するところ、前記(1)アによれば、本件発明1の「転写基板の裏面側からレーザーを照射して前記パターンを被転写基板へ転写する工程」(以下、「転写工程」ともいう。)に相当する。
イ 前記形成工程(前記(1)ウ)と前記転写工程(前記ア)とを備える、甲A1発明の「パターン構造体の製造方法」(構成b、d)は、本件発発明1の「導電パターン付き基板の製造方法」に相当する。
ウ 前記ア及びイによれば、本件発明1と甲A1発明とは、「前記転写基板の裏面側からレーザーを照射して前記パターンを被転写基板へ転写する工程とを含む導電パターン付き基板の製造方法」、「導電パターン付き基板の製造方法」である点で一致する。
(3)発明特定事項C「前記被転写基板が複数の電子部品が実装された基板であり、」、発明特定事項D「前記電子部品の欠損部に前記パターンを転写する」について
甲A1発明には、「パターン構造体用基材」が複数の電子部品が実装された基板であることは特定されていない。それに伴って、電子部品の欠損部に「凸部パターン」を転写することは特定されていない。
(4)前記(1)~(3)によれば、本件発明1と甲A1発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「転写基板上に有機成分と導電性粒子とを有する組成物のパターンを形成する工程と、
前記転写基板の裏面側からレーザーを照射して前記パターンを被転写基板へ転写する工程とを含む導電パターン付き基板の製造方法。」
<相違点>
本件発明1は「被転写基板が複数の電子部品が実装された基板」であり、「前記電子部品の欠損部に前記パターンを転写する」のに対し、甲A1発明には、それが特定されていない点。
4 本件発明1と甲A1発明との相違点についての判断
前記3(4)で示した相違点について、以下、検討する。
(1)甲A1には、「パターン構造体用基材」が複数の電子部品が実装された基板であり、電子部品の欠損部に「凸部パターン」を転写することは記載も示唆もない。
加えて、電子部品の欠損部にパターンを転写することは、甲A2やその他の証拠に開示も示唆もされていないし、技術常識でもない。
したがって、当該相違点は、当業者といえども、甲A1発明及び甲A2技術から容易に想到し得たとは認められない。
(2)申立人Aは、当該相違点について、以下のとおり主張する。
・「相違点1について、検討する。
甲第2号証には、被転写基板30が複数のLEDチップ8が実装された実装基板であり(【0050】)、LEDチップ8の欠損部に金属ペーストの連結剤3を挿入する(【0033】、【0051】、【0052】)実装基板の製造方法が記載されている。
そして、甲第2号証には、レーザーを照射して転写する事項が記載され、甲1発明と甲第2号証記載事項とは技術分野が共通するから、甲第2号証記載の実装基板の製造方法において、連結材3の挿入に変えて、甲1発明の組成物のパターン転写を採用することは当業者であれば容易に想到し得たことである。」(申立書A1の17~18頁)
以下、当該主張について検討する。
甲A2技術は、「検査工程で不良と判断されたLEDチップ8の近傍に新たに予備LEDチップ9用の被転写領域である予備被転写領域39を設け」、「予備被転写領域39」に「はんだ粒子入り異方導電性ペーストや金属ペースト」である「連結剤3」を「挿入し連結部33を形成し」、「連結剤3を挿入された予備被転写領域39上に予備LEDチップ9をレーザーリフト法により転写し、検査工程で不良と判断されたLEDチップ8を除去せずに新たに予備LEDチップ9を実装する」ものである。
そうすると、「検査工程で不良と判断されたLEDチップ8を除去せずに新たに予備LEDチップ9を実装する」(下線は、強調のため、当審で付した。)から、LEDチップ8の欠損部を有しないと認められる。
そして、「はんだ粒子入り異方導電性ペーストや金属ペースト」である「連結剤3」を「予備LEDチップ9用の被転写領域である予備被転写領域39」に挿入するのであって、LEDチップ8用の被転写領域(LEDチップ8の欠損部)に挿入することは記載されていない。
さらに、レーザーリフト法により「予備LEDチップ9」を転写するが、レーザーを照射して「連結剤3」を転写するものではない。一方、甲A1発明は、レーザーを照射して「凸部パターン」を転写するものであり、甲A2技術とは転写する対象が相違している。
したがって、甲A2には、LEDチップ8の欠損部に金属ペーストの連結剤3を挿入する実装基板の製造方法が記載されているとは認められず、甲A1発明と甲A2技術とは、レーザーを照射して転写する対象が相違しているから技術分野が共通するとも認められないので、当該主張は採用できない。
(3)本件発明1と甲A1発明との相違点についての小括
前記(1)及び(2)によれば、本件発明1と甲A1発明との相違点は、甲A1発明及び甲A2技術から容易に想到し得たものではない。
また、当該相違点は、その他の証拠及び技術常識によっても容易に想到し得たものではない。
5 理由A1についての小括
前記4(3)によれば、本件発明1は、当業者が甲A1発明及び甲A2~甲A5に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものとは認められない。
そして、本件発明2~8は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、さらに別の発明特定事項を備えるものである。
そうすると、本件発明2~8と甲A1発明とは、少なくとも前記3(4)に示した相違点を有し、当該相違点については前記4のとおりであるから、本件発明2~8も、当業者が甲A1発明及び甲A2~甲A5に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものとは認められない。
以上によれば、理由A1には理由がない。
第7 理由B1についての判断
最後に、理由B1(進歩性の欠如)の有無を判断する。
理由B1の有無を判断するために、まず、以下の1において甲B1に記載された発明(以下「甲B1発明」という。)の認定を行い、以下の2において甲B2に記載された技術(以下「甲B2技術」という。)及び甲B3に記載された技術(以下「甲B3技術」という。)の認定を行う。次いで、以下の3において本件発明1と甲B1発明との対比を行い、以下の4において本件発明1と甲B1発明との相違点について判断し、以下の5に小括する。
1 甲B1発明の認定
(1)甲B1の記載
甲B1には、次の事項が記載されている。なお、下線は、甲B1発明の認定に使用する箇所を示すことを目的に、当審で付した。
「【0001】
本発明は、レーザ誘起前方転写(LIFT)用途に適した組成物に関する。」
「【0003】
この分野における最近の進歩は、レーザ誘起前方転写(LIFT)プロセスである。LIFTでは、パルスレーザービームが、レーザ透過性のターゲット基板を通過して、ターゲット基板(ドナー層)の反対側に塗布された材料のフィルムに衝突するように向けられる。前記レーザは、レーザ放射を吸収するにつれて、フィルム材料を気化させ、運動量の移動により、前記材料をターゲット基板から除去し、ターゲット基板に近接して配置されているレシーブ基板に除去された材料を再堆積する。LIFTでは、通常、ガラス、SiO2、Al2O3、SrTiO3などのプレコートされた透明な支持基板から、通常、金属の不透明な薄膜をレシービング基板に転写する。
LIFT技術は、ジェッティング技術およびディスペンシング技術の間のベストなものを組み合わせており、LIFT技術により、高速で非常に複写性が高く、高解像度の非常に小さなドットサイズを得ることができる。LIFT技術では、毎秒1000ドットを超える処理速度で、80μm未満のドットを適用できることが証明されている。さらに、LIFTに必要なロボットシステムは、同様の精度を必要としない。LIFT技術は、部品やデバイスのさらなる小型化を可能にする。」
「【0006】
驚くべきことに、本出願人は、組成物のレオロジー挙動を変えることによって、組成物をLIFTプロセスに適用可能なように調整できることを見出した。
本発明は、a)1以上の樹脂;b)導電性粒子、および/または非導電性粒子、および/または熱伝導性粒子;およびc)組成物の総重量の5~40重量%の溶媒および/または反応性希釈剤を含み、前記溶媒および/または反応性希釈剤は130℃よりも高い沸点を有し、前記組成物は、貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G”)とが交差せず、前記貯蔵弾性率(G’)は、損失弾性率(G”)よりも低い組成物に関する。」
「【0034】
本発明の組成物は、導電性粒子および/または非導電性粒子および/または熱伝導性粒子を含む。粒子の種類は、使用目的に応じて選択される。
【0035】
本発明での使用に適した導電性粒子としては、銀、ニッケル、カーボン、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、銅、金、白金、アルミニウム、鉄、亜鉛、コバルト、鉛、すず合金;銀コート銅、銀コートグラファイト、銀コートポリマーなどの銀コートフィラー、およびこれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、導電性粒子は、銀、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、銅;銀コート銅、銀コートグラファイト、銀コートポリマーなどの銀コートフィラー、およびこれらの混合物からなる群から選択される。」
「【0039】
本発明の組成物は、組成物の総重量の20~95重量%、好ましくは50~85重量%、さらに好ましくは75~85重量%およびさらにいっそう好ましくは73~80重量%の粒子を含む。
【0040】
前記導電性粒子および/または前記熱導電性粒子の量が20%未満であると、前記組成物の導電性が失われる。一方、前記粒子の量が95%を超えると、前記組成物が乾燥しすぎるため、もはや適用できない。」
(2)甲B1発明
前記(1)によれば、甲B1には、次の甲B1発明が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、甲B1発明を以下のa~fに分説し、「構成a」のようにして参照する。
「a レーザ誘起前方転写(LIFT)プロセスであって、(【0003】)
b パルスレーザービームが、レーザ透過性のターゲット基板を通過して、ターゲット基板の反対側に塗布された材料のフィルムに衝突するように向けられ、(【0003】)
c 前記レーザは、フィルム材料を気化させ、前記材料をターゲット基板から除去し、ターゲット基板に近接して配置されているレシーブ基板に除去された材料を再堆積し、(【0003】)
d 高速で非常に複写性が高く、高解像度の非常に小さなドットサイズを得ることができ、(【0003】)
e 前記フィルム材料は、a)1以上の樹脂;b)導電性粒子;およびc)組成物の総重量の5~40重量%の溶媒および/または反応性希釈剤を含み、前記溶媒および/または反応性希釈剤は130℃よりも高い沸点を有し、前記組成物は、貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G”)とが交差せず、前記貯蔵弾性率(G’)は、損失弾性率(G”)よりも低い組成物である、(【0006】)
f レーザ誘起前方転写(LIFT)プロセス。」
2 甲B2及び甲B3技術の認定
(1)甲B2技術の認定
ア 甲B2の記載
甲B2には、次の事項が記載されている。なお、下線は、甲B2技術の認定に使用する箇所を示すことを目的に、当審で付した。
「[請求項12] 請求項1~11のいずれかに記載の感光性導電ペーストを基板上に塗布し、乾燥し、露光し、現像した後に130℃以上400℃以下の温度でキュアすることを特徴とする導電パターンの製造方法。」
「[0019] 本発明で使用する不飽和二重結合を有し、Tgが5~40℃の範囲内である感光性成分(B)のガラス転移温度は5~40℃であることが必要であり、10~30であることが好ましい。Tgが5℃以上であると乾燥膜のタック性を抑制することができ、さらに10℃以上であると特に温度変化に対する形状安定性が高くなる。また、Tgが40℃以下であると室温において屈曲性を発現し、さらに30℃以下であると屈曲時の内部応力を緩和することができ、特にクラックの発生を抑制することができる。」
「[0050] <パターニング性の評価方法>
ガラス基板上に感光性導電ペーストを乾燥厚みが12μmになるように塗布、100℃のホットプレートで3分間乾燥し、一定のラインアンドスペース(L/S)で配列する直線群を1つのユニットとし、L/Sの値が異なる9種類のユニットを有する透光パターンを有するフォトマスクを介して露光、現像、そして180℃で1時間キュアすることによって導電パターンを得た。各ユニットのL/Sの値は500/500、250/250、100/100、50/50、40/40、30/30、25/25、20/20、15/15とした(それぞれライン幅(μm)/間隔(μm)を表す)。パターンを光学顕微鏡により観察し、パターン間に残渣がなく、かつパターン剥がれのない最小のL/Sの値を持つパターンを確認し、この最小のL/Sの値を現像可能なL/Sとした。」
イ 甲B2技術
前記アによれば、甲B2には、次の甲B2技術が記載されていると認められる。
「ガラス基板上に感光性導電ペーストを塗布、乾燥し、露光、現像、そしてキュアすることによって導電パターンを得たこと。([0050])」
(2)甲B3技術の認定
ア 甲B3の記載
甲B3には、次の事項が記載されている。なお、下線は、甲B3技術の認定に使用する箇所を示すことを目的に、当審で付した。
「請求の範囲
1. (A)重量平均分子量1,000~100,000及び酸価20~50mgKOH/gを有するカルボキシル基含有樹脂、(B)光重合性モノマー、(C)光重合開始剤、及び(D)導電性粒子を含み、互いに接続すべき配線間又は端子間に介在してこれらを電気的に接続する異方性導電皮膜を形成可能であり、かつアル力リ水溶液により現像可能な光硬化型導電組成物。
2. さらに(E)一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物を熱硬化性成分として含む請求項1に記載の組成物。
…(略)…
9. 互いに接続すべき相対する配線又は端子を配設した基板のいずれか一方の、接続される配線又は端子部分のみに、前記請求項1又は2に記載の光硬化型導電組成物の皮膜パターンが露光、現像にて形成されてなる異方性導電パターン。」
イ 甲B3技術
前記アによれば、甲B3には、次の甲B3技術が記載されていると認められる。
「互いに接続すべき相対する配線又は端子を配設した基板のいずれか一方の、接続される配線又は端子部分のみに、導電性粒子を含む光硬化型導電組成物の皮膜パターンが露光、現像にて形成されてなる異方性導電パターン。(請求項1、9))」
3 本件発明1と甲B1発明との対比
本件発明1と甲B1発明とを対比する。
(1)発明特定事項A「転写基板上に有機成分と導電性粒子とを有する組成物のパターンを形成する工程と、」について
ア 甲B1発明は、「レーザ透過性のターゲット基板の反対側に塗布された材料のフィルム」(構成b)を有し、「前記フィルム材料は、a)1以上の樹脂;b)導電性粒子;およびc)組成物の総重量の5~40重量%の溶媒および/または反応性希釈剤を含」む「組成物である」(構成e)から、「レーザ透過性のターゲット基板」上に「a)1以上の樹脂;b)導電性粒子;およびc)組成物の総重量の5~40重量%の溶媒および/または反応性希釈剤を含」む「組成物である」「フィルム」を「塗布」している。
イ 甲B1発明の「レーザ透過性のターゲット基板」が、本件発明1の「転写基板」に相当するところ、前記アによれば、本件発明1と甲B1発明とは、「転写基板上に有機成分と導電性粒子とを有する組成物を形成する工程」を含む点で共通する。
ただし、本件発明1は組成物の「パターン」を形成するのに対し、甲B1発明は組成物の「フィルム」を形成する点で相違する。
(2)発明特定事項B「前記転写基板の裏面側からレーザーを照射して前記パターンを被転写基板へ転写する工程とを含む導電パターン付き基板の製造方法であって、」、発明特定事項E「導電パターン付き基板の製造方法。」について
ア 甲B1発明は、「パルスレーザービームが、レーザ透過性のターゲット基板を通過して、ターゲット基板の反対側に塗布された材料のフィルムに衝突するように向けられ」(構成b)、「前記レーザは、フィルム材料を気化させ、前記材料をターゲット基板から除去し、ターゲット基板に近接して配置されているレシーブ基板に除去された材料を再堆積」する(構成c)ところ、「レーザ透過性のターゲット基板」のフィルム材料が塗布されていない側からパルスレーザを照射して、「フィルム材料」を「レシーブ基板」に「再堆積」している。
イ そして、パルスレーザを照射して、「フィルム材料」を「レシーブ基板」に「再堆積」することで、「非常に小さなドットサイズを得る」(構成d)ところ、「レシーブ基板」には、パルスに対応する「ドット」(ドットパターン)が形成(転写)されているといえる。
ウ 甲B1発明の「レシーブ基板」が、本件発明1の「被転写基板」に相当するところ、前記ア及びイによれば、本件発明1と甲B1発明とは、「転写基板の裏面側からレーザーを照射してパターンを被転写基板へ転写する工程」を含む点で共通する。
ただし、前記(1)イのとおり、本件発明1の「パターン」は転写基板上に形成されているのに対し、甲B1発明の「ドット」はターゲット基板上に形成されていない点で相違する。
エ 前記イによれば、「ドット」が形成された「レシーブ基板」を得ることが記載されているところ、本件発明1と甲B1発明とは、「導電パターン付き基板の製造方法」である点で一致する。
(3)発明特定事項C「前記被転写基板が複数の電子部品が実装された基板であり、」、発明特定事項D「前記電子部品の欠損部に前記パターンを転写する」について
甲B1発明には、「レシーブ基板」が複数の電子部品が実装された基板であることは特定されていない。それに伴って、電子部品の欠損部に「ドット」を転写することは特定されていない。
(4)前記(1)~(3)によれば、本件発明1と甲B1発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「転写基板上に有機成分と導電性粒子とを有する組成物を形成する工程と、
前記転写基板の裏面側からレーザーを照射してパターンを被転写基板へ転写する工程とを含む導電パターン付き基板の製造方法。」
<相違点1>
本件発明1は組成物の「パターン」を転写基板上に形成するのに対し、甲B1発明は組成物の「フィルム」をレーザ透過性のターゲット基板上に形成する点で相違する。
<相違点2>
本件発明1は「被転写基板が複数の電子部品が実装された基板」であり、「前記電子部品の欠損部に前記パターンを転写する」のに対し、甲B1発明には、それが特定されていない点。
4 本件発明1と甲B1発明との相違点についての判断
前記3(4)で示した相違点1について、以下、検討する。
(1)甲B1には、レーザ透過性のターゲット基板上に、組成物の「パターン」を形成することは記載も示唆もない。
加えて、レーザーを照射して転写する部材を「パターン」とすることは、甲B2やその他の証拠に開示も示唆もされていないし、周知技術でも技術常識でもない。
したがって、当該相違点1は、当業者といえども、甲B1発明並びに甲B2技術若しくは周知技術から容易に想到し得たとは認められない。
(2)申立人Bは、当該相違点1について、以下のとおり主張する。
・「相違点1に関し、甲第2号証(【請求項12】、【0050】)には、ガラス基材上に感光性導電ペーストのパターンを形成する技術事項が記載されている。また、甲第3号証(【請求項9】)には、基板上に有機成分と導電性粒子とを有する異方性導電パターンを形成する周知技術が記載されている。」(申立書Bの27頁)
・「甲1発明と甲2技術事項とは、導電性組成物のパターンを形成する点で技術分野が共通するから、甲1発明の導電パターン付き基板の製造方法において、パターンを被転写基板へ転写する前に、甲2技術事項のパターン形成を採用することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。また、導電性組成物のパターンを形成することは、例えば甲3周知技術のように、導電性組成物の技術分野において一般的に知られている技術である。」(申立書Bの28頁)
以下、当該主張について検討する。
甲B2技術は、「ガラス基板上に感光性導電ペースト」「によって導電パターンを得」るものである。
しかしながら、甲B2において、「導電パターン」は「高い導電性を有し、屈曲性に優れた」([0009])ものであり、「回路パターン」([0026])や「バンプ、導電性パッド、配線」([0003])であることが記載されているものの、当該「導電パターン」にレーザーを照射して、当該パターンを被転写基板に転写することは記載も示唆もない。
そうすると、甲B1発明におけるレーザ透過性のターゲット基板上の「フィルム材料」に対し、甲B2技術を適用する動機付けは見いだせない。
また、甲B3技術は、「互いに接続すべき相対する配線又は端子を配設した基板のいずれか一方の、接続される配線又は端子部分のみに」「異方性導電パターン」を「形成」するものであり、「異方性導電パターン」は、「配線又は端子部分のみに」「形成」されるものであって、当該「異方性導電パターン」にレーザーを照射して、当該パターンを被転写基板に転写するものではない。
そうすると、甲B3技術が周知技術であったとしても、これを甲B1発明におけるレーザ透過性のターゲット基板上の「フィルム材料」に対して適用する動機付けは見いだせない。
したがって、当該主張は採用できない。
(3)本件発明1と甲B1発明との相違点についての小括
前記(1)及び(2)によれば、本件発明1と甲B1発明との相違点1は、甲B1発明並びに甲B2技術若しくは周知技術から容易に想到し得たものではない。
また、当該相違点1は、その他の証拠及び技術常識によっても容易に想到し得たものではない。
5 理由B1についての小括
(1)本件発明1と甲B1発明とは、前記3(4)で示した相違点1および2を有し、前記4のとおり、少なくとも相違点1は容易に想到し得たものではないから、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲B1発明、甲B2技術、及び甲B3~B7に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
(2)本件発明2~8は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、さらに別の発明特定事項を備えるものである。
そうすると、本件発明2~8と甲B1発明とは、少なくとも前記3(4)に示した相違点を有し、当該相違点については前記4のとおりであるから、本件発明2~8も、甲B1発明、甲B2技術、及び甲B3~B7に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
(3)以上によれば、理由B1には理由がない。
第8 むすび
前記第4~第7によれば、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-701033