審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2024-700982

接合体、セラミックス銅回路基板、接合体の製造方法、およびセラミックス銅回路基板の製造方法

審判番号
2024-700982
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-508228
登録番号
7470181
請求日
2024年10月08日
審決日
2024年12月26日
公報発行日
2025年03月28日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社東芝
  • 【権利者代理人】弁理士法人iX
  • 【権利者】東芝マテリアル株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人iX
  • 【異議申立人】寺澤 佳奈美
審判長/審判官
  • 審判長 土居 仁士
  • 審判官 馬場 慎
  • 審判官 丸山 高政
分類
P1651.113-Y (H05K) / P1651.121-Y (H05K) / P1651.537-Y (H05K) / P1651.536-Y (H05K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第113条第2号、特許法第113条第4号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7470181号発明「接合体、セラミックス銅回路基板、接合体の製造方法、およびセラミックス銅回路基板の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7470181号の請求項1ないし15に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7470181号(以下「本件特許」という。)の請求項1~15に係る特許についての出願は、2021年(令和3年)3月8日(優先権主張 令和2年3月18日)を国際出願日とする出願であって、令和6年4月9日にその特許権の設定登録がされ、同年4月17日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和6年10月8日に特許異議申立人 寺澤 佳奈美(以下「申立人」という。)は特許異議申立書(以下では単に「申立書」という。)を提出して特許異議の申立てを行った。その後、令和6年11月20日に申立人は手続補正書を提出して申立書の補正を行った。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~15に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明15」といい、これらを総称して「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 セラミックス基板と、 接合層を介して前記セラミックス基板に接合された銅板と、 を備えた接合体であって、 前記銅板は、前記セラミックス基板と前記銅板とが接合された方向に垂直な表面を有し、 前記表面に含まれる5mm×5mmの3つの領域において、長径が400μmを超える銅結晶粒の個数割合は、0%以上5%以下であることを特徴とする接合体。 【請求項2】 前記個数割合は1%以下であることを特徴とする請求項1記載の接合体。 【請求項3】 前記3つの領域において、前記銅結晶粒の長径の平均値は、30μm以上300μm以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項2のいずれか1項に記載の接合体。 【請求項4】 前記3つの領域において、前記銅結晶粒の長径の平均値は、50μm以上150μm以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の接合体。 【請求項5】 前記3つの領域において、長径が平均範囲内である前記銅結晶粒の個数割合は、80%以上であり、 前記平均範囲は、前記3つの領域における前記銅結晶粒の長径の平均値の0.5倍以上2倍以下である、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の接合体。 【請求項6】 前記セラミックス基板のうねり曲線の算術平均高さWaが2μm以下、前記うねり曲線の最大断面高さWtが10μm以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の接合体。 【請求項7】 前記接合層は、Ag、CuおよびTiを含有することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の接合体。 【請求項8】 前記セラミックス基板は、窒化珪素基板または窒化アルミニウム基板のいずれか一方であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の接合体。 【請求項9】 請求項1ないし8のいずれか1項に記載の接合体を用いたことを特徴とするセラミックス銅回路基板。 【請求項10】 請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の接合体の製造方法であって、 前記セラミックス基板と前記銅板との間に、前記接合層用のろう材を配置させる工程と、 接合温度が800℃以下である接合工程と、 を備えたことを特徴とする接合体の製造方法。 【請求項11】 前記接合温度は700℃以下であることを特徴とする請求項10記載の接合体の製造方法。 【請求項12】 接合前の前記銅板の平均粒径をA(μm)、接合後の前記銅板の平均粒径をB(μm)としたとき、B/A≦10を満たすことを特徴とする請求項10ないし請求項11のいずれか1項に記載の接合体の製造方法。 【請求項13】 1.1≦B/A≦5を満たすことを特徴とする請求項12記載の接合体の製造方法。 【請求項14】 前記ろう材のDSC曲線において、最も大きな吸熱ピークが700℃以下にあることを特徴とする請求項10ないし請求項13のいずれか1項に記載の接合体の製造方法。 【請求項15】 請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の接合体の製造方法と、 接合された前記銅板に回路構造を付与する工程と、 を備えたセラミックス銅回路基板の製造方法。」 なお、本件発明1について、後の参照の便宜のために、以下のとおり分説し、「発明特定事項A」のようにして参照する。 【請求項1】 A セラミックス基板と、 B 接合層を介して前記セラミックス基板に接合された銅板と、 C を備えた接合体であって、 D 前記銅板は、前記セラミックス基板と前記銅板とが接合された方向に垂直な表面を有し、 E 前記表面に含まれる5mm×5mmの3つの領域において、長径が400μmを超える銅結晶粒の個数割合は、0%以上5%以下である F ことを特徴とする接合体。 第3 申立ての理由の概要 申立書に記載された申立理由及び証拠方法は、次のとおりである。 1 申立理由 理由1 本件発明1~5、7~15は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~5、7~15に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。(特許法第113条第2号) 理由2 本件発明1~15は、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が甲第1号証に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであり、本件発明7及び8は、当業者が甲第1号証に記載された発明並びに甲第2号証及び甲第3号証に記載された周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~15に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(特許法第113条第2号) 理由3 本件の特許請求の範囲の記載は、本件発明1~5、7~9が発明の詳細な説明に記載したものではないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(特許法第113条第4号) 理由4 本件の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1~13、15の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(特許法第113条第4号) 2 証拠方法 甲第1号証 特開2007-66995号公報 甲第2号証 国際公開第2018/021472号 甲第3号証 国際公開第2018/199060号 以下、申立人が提出した「甲第1号証」~「甲第3号証」を、それぞれ「甲1」~「甲3」という。 第4 理由1及び2についての判断 理由1(新規性)及び理由2(進歩性)の有無を判断するために、まず、以下の1において甲1発明の認定を行う。次いで、以下の2において本件発明1と甲1発明との対比を行い、以下の3において本件発明1と甲1発明との相違点について判断し、以下の4に小括する。 1 甲1発明の認定 (1)甲1の記載 甲1には、次の事項が記載されている。なお、下線は、甲1発明の認定に使用する箇所を示すことを目的に、当審で付した。 「【請求項1】 セラミックス基板と、銅又は銅を主成分とする銅合金からなり前記セラミックス基板の一面に接合された金属回路板と、銅又は銅を主成分とする銅合金からなり前記セラミックス基板の他面に接合された金属放熱板とから構成されたセラミックス配線基板において、 前記金属回路板の前記銅又は前記銅合金の平均再結晶粒子径は、前記金属放熱板の前記銅又は前記銅合金の平均再結晶粒子径と等しいか又はそれより小さいことを特徴とするセラミックス配線基板。 【請求項2】 前記金属回路板の前記銅又は前記銅合金の平均再結晶粒子径と、前記金属放熱板の前記銅又は前記銅合金の平均再結晶粒子径の比が0.1~1.0であることを特徴とする請求項1記載のセラミックス配線基板。 【請求項3】 前記金属回路板の前記セラミックス基板との接合界面近傍における前記銅又は前記銅合金の平均再結晶粒子径は、前記金属回路板の前記銅又は前記銅合金の平均再結晶粒子径より小さく、その比が0.12~0.50であることを特徴とする請求項1又は2記載のセラミックス配線基板。 【請求項4】 前記金属放熱板の前記セラミックス基板との接合界面近傍における前記銅又は前記銅合金の平均再結晶粒子径は、前記金属放熱板の前記銅又は前記銅合金の平均再結晶粒子径はより小さく、その比が0.12~0.50であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のセラミックス配線基板。 【請求項5】 前記金属回路板の前記銅又は前記銅合金の平均再結晶粒子径は、100~400μmであることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のセラミックス配線基板。 【請求項6】 前記銅合金は、前記銅と、少なくともニッケル、亜鉛、ジルコニウム又はスズの何れかを含むことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のセラミックス配線基板。 【請求項7】 前記セラミックス基板は、窒化珪素からなることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載のセラミックス配線基板。 【請求項8】 銅又は銅を主成分とする銅合金からなる金属回路板と、銅又は銅を主成分とする銅合金からなる金属放熱板とを、それぞれろう材を介してセラミックス基板の表裏に加熱接合する際に、 前記金属回路板及び前記金属放熱板を構成する前記銅又は前記銅合金の種類毎に予め設定された接合温度及び平均再結晶粒子径のデータに基づいて、前記金属回路板の前記銅又は前記銅合金の平均再結晶粒子径が、前記金属放熱板の前記銅又は前記銅合金の平均再結晶粒子径と等しいか又はそれより小さくなるように前記接合温度を設定する ことを特徴とするセラミックス配線基板の製造方法。 【請求項9】 請求項1乃至7の何れかに記載のセラミックス配線基板と、前記セラミックス配線基板に搭載された半導体素子とからなることを特徴とする半導体モジュール。 【請求項10】 前記セラミックス配線基板の前記金属放熱板に、前記銅又は前記銅合金からなる放熱ベース板を結合したことを特徴とする請求項9記載の半導体モジュール。」 「【0001】 本発明は、セラミックス基板と、このセラミックス基板の両面にそれぞれ接合された金属回路板及び金属放熱板とから構成されたセラミックス配線基板、その製造方法及びこのセラミックス配線基板を用いた半導体モジュールに関する。」 「【0003】 …(略)…一方、活性金属ろう付け法とは、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)又はハフニウム(Hf)等の活性金属と低融点合金を作る銀(Ag)、銅等の金属を混合又は合金としたろう材を用いて銅板やAl板をセラミックス基板の一面又は両面にろう材相を介して不活性ガス又は真空雰囲気中で加熱圧着接合するものである。…(略)…」 「【0009】 上記したように、第3の従来例によれば、ろう材の金属回路板の表面への流出、これに起因する電子部品と金属回路板との接続信頼性低下という問題を解決することはできる。しかし、上記した第1及び第2の従来例が解決した、熱衝撃等により生じる損傷に対する耐久性低下という課題を解決することはできない。 さらに、第3の従来例では、金属層及びその形成工程が必要であるため、その分コストアップにつながってしまう。 【0010】 本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、上述のような課題を解決することができるセラミックス配線基板、その製造方法及び半導体モジュールを提供することを目的とする。」 「【0017】 以下、さらに詳しく本発明の実施の形態について説明する。まず、本発明の実施の形態で用いられるセラミックス基板の材質としては、窒化珪素(Si3N4)基板が望ましい。この窒化珪素基板の詳細については、後述する。 次に、金属回路板及び金属放熱板は、いずれも銅又は銅を主成分とする銅合金からなるが、本発明の実施の形態では、上記金属回路板の銅又は銅合金の平均再結晶粒子径と、上記金属放熱板の銅又は銅合金の平均再結晶粒子径との比が制御されていることに特徴がある。この銅又は銅合金の平均再結晶粒子径の比は、金属回路板及び金属放熱板のそれぞれについて所望の銅又は銅合金の平均再結晶粒子径を得ることにより制御される。金属回路板及び金属放熱板のそれぞれについて所望の銅又は銅合金の平均再結晶粒子径を得るためには、金属回路板又は金属放熱板としてセラミックス基板に接合する前の圧延された銅板又は銅合金板の銅又は銅合金の初期結晶粒子径と、金属回路板又は金属放熱板としてセラミックス基板に接合する際の接合温度と、加熱条件(温度の制御方法)とを適宜設定すれば良い。この制御手法の詳細については、後述する。」 「【0020】 以上のことから、接合処理後のセラミックス基板に加えられる応力を低減する観点では、銅の降伏強度が小さく変形しやすいような状態にしておくことが肝要であり、さらに、冷熱サイクル性を向上させる観点では、温度変化による応力を銅の変形に分散させることにより、冷熱繰り返しで銅の加工硬化度を抑制して、セラミックス基板に加えられる応力値の増大を抑止することが肝要である。ここで、加工硬化度とは、金属組織中の欠陥に転位が集中して硬化(降伏応力が高くなる)が進む現象のことをいう。銅の降伏強度、加工硬化度は、用いる銅の結晶組織に大きく関与している。何れも素材の持つ軟化点以上の温度での熱処理を実施した場合には、再結晶成長が促進され再結晶粒子が増大して降伏強度は低下する。この際、同じ温度での熱処理では、素材として用いる銅の初期結晶粒子の大きさに影響を受ける。即ち、銅結晶粒子中に欠陥(転位、格子欠陥、固溶原子など)が存在する場合には、軟化点温度が高く、また熱処理に伴う再結晶粒子の成長挙動は抑制される。…(略)…」 「【0023】 まず、金属回路板は、(a)半導体モジュール稼動時の冷熱サイクル等においてセラミックス基板に対して強い接合強度を維持する機能と、(b)半導体モジュール組立時に半導体素子及びその他の電子部品が、鉛(Pb)-スズ(Sn)系あるいはスズ(Sn)-銀(Ag)系、スズ(Sn)-銀(Ag)-銅(Cu)系などのはんだを介して接合された場合に強固な接合強度を有する機能と、(c)各電子部品で発生した熱を効率的にセラミックス基板の厚さ方向に伝導できる機能と、が要求される。一方、金属放熱板は、(a)'半導体モジュール稼動時の冷熱サイクル等においてセラミックス基板に対して強い接合強度を維持する機能と、(c)'各電子部品で発生した熱を効率的にセラミックス基板の厚さ方向に伝導できる機能と、が要求される。 【0024】 金属回路板の機能(a)及び金属放熱板の機能(a)'は、いわゆる接合に介するろう材との濡れ性が高ければ高いほど良い。このろう材との濡れ性は、セラミックス基板との接合面積が広いほど高いことが要求される。この点、金属回路板には回路パターンが形成されるのに対し、金属放熱板は、ほぼその全面がセラミックス基板と接合される。従って、金属放熱板の機能(a)'は金属回路板の機能(a)と等しいか又はより高いことが望ましい。 一方、金属回路板の機能(c)及び金属放熱板の機能(c)'は、金属回路板の機能(c)が金属放熱板の機能(c)'より高い場合には、金属放熱板に熱が滞留することになり、ひいては半導体素子が熱破壊してしまう。従って、金属放熱板の機能(c)'は金属回路板の機能(c)と等しいか又はより高いことが望ましい。 【0025】 次に、金属回路板の機能(a)~(c)並びに金属放熱板の機能(a)'及び(c)'と、銅の平均結晶粒子径との関係について考察する。まず、接合に介するろう材には、銀(Ag)-銅(Cu)-チタン(Ti)系の活性金属ろう材を用いることが多い。このろう材とセラミックス基板との濡れ性は、ろう材に含まれるTi量、ろう材粒子径及びセラミックス基板の表面粗さが関与している。…(略)… 一方、上記したように、金属放熱板の機能(a)'は金属回路板の機能(a)と等しいか又はより高いことが望ましい。従って、金属回路板の機能(a)と金属放熱板の機能(a)'との観点からは、上記金属回路板の銅の平均再結晶粒子径は、上記金属放熱板の銅の平均再結晶粒子径と等しいか又はそれより小さいことが望ましい。また、金属回路板の機能(a)及び金属放熱板の機能(a)'の観点からは、上記第1及び第2の従来例からもわかるように、金属回路板及び金属放熱板は、銅の平均結晶粒子径が400μm以上又は断面における銅の平均結晶粒子径が300μm以上であることが望ましい。 【0026】 次に、金属回路板の機能(b)の観点からは、上記第3の従来例からもわかるように、金属回路板の平均結晶粒子径は、200μm以下であることが望ましい。一方、金属回路板の機能(c)及び金属放熱板の機能(c)'の観点からは、銅結晶の粒子間に存在する結晶粒界が熱伝導において抵抗となることから、結晶粒界が少ない方が良い。上記したように、結晶粒界を少なくするには、銅の結晶粒子径をできるだけ大きくすれば良い。 【0027】 以上の考察から、金属回路板の銅の平均再結晶粒子径は、金属放熱板の銅の平均再結晶粒子径と等しいか又はそれより小さく、金属回路板の銅の平均再結晶粒子径と、金属放熱板の銅の平均再結晶粒子径の比が0.1~1.0であることが望ましい。この場合、金属回路板の銅の平均再結晶粒子径は、用いる圧延された銅板素材の調質及びセラミックス基板との接合時の接合温度等にもよるが、100~400μmであることが望ましい。 ここで、金属回路板及び金属放熱板の銅の平均再結晶粒子径のそれぞれの下限については、銅とろう材との濡れ性が良好であるという観点から規定される。一方、金属回路板の銅の平均再結晶粒子径の上限については、接合される半導体素子との関係、例えば、ソルダーレジストが不要となる、半導体素子が規定位置に留まる性質(セルフアライメント)が良好であるという観点から規定される。また、金属放熱板の銅の平均再結晶粒子径の上限については、金属放熱板の変形能を抑制して、冷熱サイクル時のセラミックス配線基板の反りの変形挙動を抑制して耐冷熱サイクル寿命を維持するという観点から規定される。」 「【0031】 …(略)…銅の再結晶温度が200~250℃であるので、銅の結晶粒子は、上記加熱接合により大きくなり、上記加熱接合前後において、金属回路板及び金属放熱板を構成する銅の状態は大きく異なっている。 従って、金属回路板及び金属放熱板のそれぞれについて所望の銅の平均再結晶粒子径を得るためには、金属回路板又は金属放熱板としてセラミックス基板に接合する前の圧延された銅板の銅の初期結晶粒子径と、上記加熱接合時の接合温度と、加熱条件(加熱温度の制御方法)とが重要な要素である。 まず、金属回路板又は金属放熱板としてセラミックス基板に接合する前の圧延された銅板素材の銅の初期結晶粒子径は、上記銅板素材の調質の影響を受ける。ここで、調質とは、焼き入れや焼き鈍しなどの熱的操作や圧延などの機械的操作を行うことにより、結晶粒子を微細にして材質を調整し、靱性などを向上させることをいう。銅板素材の場合、硬度等に応じて以下に示す調質を有するものがある。 【0032】 調質記号 F 製造したまま、加工又は熱処理について特別の調整をしないもの。 O 完全に再結晶又は焼きなまししたもの。 1/4H 引張強さが1/8Hと1/2Hとの中間のもののように加工をしたもの。 1/2H 引張強さが1/4HとHとの中間のもののように加工をしたもの。 3/4H 引張強さが1/2HとHとの中間のもののように加工をしたもの。 H 引張強さが3/4HとEHとの中間のもののように加工をしたもの。 EH 引張強さがHとSHとの中間のもののように加工をしたもの。 SH 引張強さが最大になるように加工をしたもの。…(略)…」 「【0034】 次に、セラミックス基板は、上記したように、実装信頼性及び冷熱サイクル特性の観点から、特に厚さ方向に対する高靭性を有し、かつ、高強度であって、放熱性の観点から高熱伝導性を備えた窒化珪素(Si3N4)基板が好ましく、本発明者らが先に提案した窒化珪素基板を一例として以下に示す。…(略)…」 「【0042】 次に、上記構成のセラミックス配線基板の製造方法について説明する。 活性金属ろう付け法の金属回路板及び金属放熱板をそれぞれ構成する銅の初期結晶粒子径は、例えば、10~100μmである。 ろう材の代表的なものには,銀(Ag)-銅(Cu)-チタン(Ti)系、銅(Cu)-スズ(Sn)-チタン(Ti)系、コバルト(Co)-チタン(Ti)系、ニッケル(Ni)-チタン(Ti)系、アルミニウム合金系等がある。これらの中では、銀(Ag)-銅(Cu)-チタン(Ti)系のろう材が最も多く使われるが、これはいわゆる銀ろうにチタンを添加したものである。チタン量は、多量に添加すると、ろう材そのものが脆化するので、1~3質量%の範囲が一般的である。 【0043】 まず、窒化珪素基板の上面にスクリーン印刷等により、ろう材ペーストを予め設計された回路パターン形状に沿って塗布し、所定の厚さのろう材層を形成する。…(略)… 【0044】 一方、ろう材層のパターンと相似形の回路パターンの銅からなる金属回路板を別途用意する。この金属回路板の回路パターンを予め形成する方法としては、例えば、プレス加工、エッチング法、放電加工等がある。次に、ろう材層が金属回路板と窒化珪素基板との間に配置されるように部材同士を重ねる。また、窒化珪素基板の下面には、ろう材層を形成した後、銅からなる金属放熱板を載置し、それぞれ加圧状態で保持する。…(略)… 【0045】 次に、金属回路板と金属放熱板を載置した窒化珪素基板を所定温度と時間にわたって熱処理した後、冷却することにより、窒化珪素基板に金属回路板と金属放熱板を強固にろう材層を介して接合する。この場合、ろう材が窒化珪素基板と銅からなる金属回路板及び金属放熱板を十分に濡らし、また、回路パターンつぶれが発生しないようにするため、さらに両者の熱膨張係数の違いからくる残留応力による耐熱衝撃性の低下を防止するために、接合温度は、700~800℃、また、冷却速度は、保持温度から400℃までの降温が2℃/min以下であることが好ましい。…(略)… 【0046】 (実施例) 以下、本発明の実施例について説明する。ただし、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。 図1は、本発明の実施例に係るセラミックス配線基板1を適用した電力装置2の構成の一例を示す断面図である。セラミックス配線基板1は、窒化珪素基板からなるセラミックス基板11の上面に図示せぬろう材を介して接合された金属回路板12と、下面に図示せぬろう材を介して接合された金属放熱板13とから構成されている。このセラミックス配線基板1の金属回路板12の上面にMOSFET等からなる半導体素子14が半田15により接合されて半導体モジュール3が構成されている。」 「【0048】 図3に加工度0%のO材(◆印)、加工度10%の1/2H材(■印)、加工度20%のH材(▲印)、銅(Cu)-ジルコニウム(Zr)(0.15%)系合金(×印)及び銅(Cu)-スズ(Sn)(0.1%)系合金(*印)における熱処理温度と再結晶粒子径の関係の一例を示す。ここで、加工度とは、銅板素材又は銅合金板素材の最終板厚さに至る前段の厚さに対する厚さ変化率を示したものをいい、加工度が高いほど結晶粒子径は小さくなる。 図3からは、銅又銅合金の再結晶粒子径は、熱処理(接合)温度が高くなるに従って大きくなるが、銅板素材の調質種又は銅合金板素材の種類によって異なっていることが分かる。従って、例えば、銅の再結晶粒子径を100~400μmに制御する場合、無酸素銅によるO材では約400~900℃の間で、1/2H材では約500~950℃の間で、H材では約500~1050℃の間でそれぞれ接合処理を行って制御することになる。 一方、図3には図示していない範囲があるが、銅(Cu)-ジルコニウム(Zr)(0.15%)系合金(×印)及び銅(Cu)-スズ(Sn)(0.1%)系合金(*印)における熱処理温度と再結晶粒子径の関係は、処理温度の全範囲に亘ってほぼ同じ傾向を示すため、これらの銅合金の再結晶粒子径を100~400μmに制御するには、約760~1200℃の間でそれぞれ接合処理を行って制御することになる。このように、金属板の再結晶粒子径は、銅又は銅合金の種類及び接合温度によって適宜を制御することができる。 【0049】 次に、本発明の実施例に係るセラミックス配線基板の評価方法について説明する。 初期結晶粒子径及び再結晶粒子径としては、キーエンス社製の超深度レーザ顕微鏡を用いて、金属板の2×2mmの視野において無作為に選択した粒子20個の最長径を測定した平均値を用いた。一方、金属回路板とセラミックス基板との接合界面のボイド率は、日立建機社製の超音波探査映像装置Mi-Scopeを用いて、上記接合界面の白黒の256階調の評価画像についてしきい値を92として2値化処理を行い、反射法にて評価面積(黒色部)に対する白色部の割合を測定することにより得た。」 「【0051】 次に、金属回路板及び金属放熱板の調質の種類、厚さ、接合温度をパラメータとしてセラミックス配線基板を製造した場合の実施例1~16の製造条件及び製造結果を表1に示す。 【0052】 【表1】 [図:0001420353000001.jpg] 【0053】 以下、表1について説明する。まず、左から2番目及び3番目の列「金属回路板」及び「金属放熱板」における各数値は、金属回路板及び金属放熱板に用いる銅板素材及び銅合金板素材のそれぞれの調質の種類及び加工度を意味している。即ち、「0%」は加工度0%のO材、「5%」は加工度5%の1/4H材、「10%」は加工度10%の1/2H材、「20%」は加工度20%のH材を意味している。 次に、左から4番目及び5番目の列「金属回路板」及び「金属放熱板」における各数値は、金属回路板及び金属放熱板に用いる銅板素材及び銅合金板素材のそれぞれの厚さをミリメートル単位で表している。また、左から6番目及び7番目の列「金属回路板」及び「金属放熱板」における各数値は、金属回路板及び金属放熱板としてセラミックス基板に接合する前の圧延された銅板素材又は銅合金板素材の銅又は銅合金の初期結晶粒子径を上記した評価方法で測定し、マイクロメートル単位で表している。 【0054】 次に、左から8番目の列「接合温度(℃)」における各数値は、金属回路板及び金属放熱板をセラミックス基板に接合する際の接合温度を摂氏で表している。また、左から9番目及び10番目の列「金属回路板」及び「金属放熱板」における各数値は、セラミックス基板に金属回路板及び金属放熱板を熱処理して接合することにより金属回路板及び金属放熱板のそれぞれにおいて再結晶した銅又は銅合金の粒子径をマイクロメートル単位で表している。また、左から11番目の列「金属回路板/金属放熱板」における各数値は、対応する「金属回路板」の平均再結晶粒子径と「金属放熱板」の平均再結晶粒子径との比を表している。さらに、最右列「Da/Db」における各数値は、金属回路板とセラミックス基板との接合界面近傍における接合処理後の銅の再結晶粒子径Daと金属回路板の接合処理後の銅の再結晶粒子径Dbとの比を意味している。なお、表1には記載していないが、金属放熱板とセラミックス基板との接合界面近傍における接合処理後の銅の再結晶粒子径と金属放熱板の接合処理後の銅の再結晶粒子径との比についても、Da/Dbと同様な傾向であった。」 「【0059】 表1において、実施例1は、0.6mmの厚さを有し、初期結晶粒子径が35μmであって、加工度5%の1/4H材からなる金属回路板と、0.5mmの厚さを有し、初期結晶粒子径が39μmであって、加工度0%のO材からなる金属放熱板を接合温度760℃でセラミックス基板の両面に接合した。その結果、表1に示すように、熱処理後の金属回路板の再結晶粒子径;280μm、金属放熱板の再結晶粒子径;350μm、金属回路板の再結晶粒子径と金属放熱板の再結晶粒子径の比;0.80、Da/Db;0.24がそれぞれ得られた。…(略)… 【0060】 熱処理後の金属回路板の再結晶粒子径が280μm、金属放熱板の再結晶粒子径が350μmであり、金属回路板の再結晶粒子径と金属放熱板の再結晶粒子径との比が0.80であるため、冷熱サイクルが3000サイクルより多く、熱衝撃(ヒートショック)や冷熱サイクル等によって生じる損傷に対して十分な耐久性があり、信頼性が高く、しかも、電子部品と金属回路板との接続信頼性も高いセラミックス配線基板及び半導体モジュールを構成することができた。また、半導体モジュールを構成した際の熱抵抗が0.2℃/W以下となり、パワー半導体用の放熱基板とし十分に使用可能である値となった。さらに、金属回路板とセラミックス基板との接合界面のボイド率及び金属放熱板とセラミックス基板との接合界面のボイド率が何れも5%以内であるため、半導体素子の下面と金属回路板の上面との密着性・接合性を良好に保持することができるとともに、金属放熱板の下面と放熱ベースの上面との密着性・接合性を良好に保持することができる。 【0061】 表1において、実施例2は、0.6mmの厚さを有し、初期結晶粒子径が32μmであって、加工度10%の1/2H材からなる金属回路板と、0.5mmの厚さを有し、初期結晶粒子径が39μmであって、加工度0%のO材からなる金属放熱板を接合温度760℃でセラミックス基板の両面に接合した。その結果、表1に示すように、熱処理後の金属回路板の再結晶粒子径;250μm、金属放熱板の再結晶粒子径;350μm、金属回路板の再結晶粒子径と金属放熱板の再結晶粒子径の比;0.71、Da/Db;0.20がそれぞれ得られた。…(略)… 【0062】 表1において、実施例3は、0.6mmの厚さを有し、初期結晶粒子径が30μmであって、加工度20%のH材からなる金属回路板と、0.5mmの厚さを有し、初期結晶粒子径が39μmであって、加工度0%のO材からなる金属放熱板を接合温度760℃でセラミックス基板の両面に接合した。その結果、表1に示すように、熱処理後の金属回路板の再結晶粒子径;180μm、金属放熱板の再結晶粒子径;350μm、金属回路板の再結晶粒子径と金属放熱板の再結晶粒子径の比;0.51、Da/Db;0.18がそれぞれ得られた。…(略)… 【0063】 表1において、実施例4は、0.6mmの厚さを有し、初期結晶粒子径が30μmであって、加工度20%のH材からなる金属回路板と、0.5mmの厚さを有し、初期結晶粒子径が32μmであって、加工度10%の1/2H材からなる金属放熱板を接合温度760℃でセラミックス基板の両面に接合した。その結果、表1に示すように、熱処理後の金属回路板の再結晶粒子径;180μm、金属放熱板の再結晶粒子径;250μm、金属回路板の再結晶粒子径と金属放熱板の再結晶粒子径の比;0.72、Da/Db;0.18がそれぞれ得られた。…(略)… 【0064】 表1において、実施例5は、0.4mmの厚さを有し、初期結晶粒子径が32μmであって、加工度10%の1/2H材からなる金属回路板と、0.3mmの厚さを有し、初期結晶粒子径が39μmであって、加工度0%のO材からなる金属放熱板を接合温度760℃でセラミックス基板の両面に接合した。その結果、表1に示すように、熱処理後の金属回路板の再結晶粒子径;245μm、金属放熱板の再結晶粒子径;358μm、金属回路板の再結晶粒子径と金属放熱板の再結晶粒子径の比;0.68、Da/Db;0.22がそれぞれ得られた。…(略)… 【0065】 表1において、実施例6は、1.0mmの厚さを有し、初期結晶粒子径が31μmであって、加工度10%の1/2H材からなる金属回路板と、0.8mmの厚さを有し、初期結晶粒子径が40μmであって、加工度0%のO材からなる金属放熱板を接合温度760℃でセラミックス基板の両面に接合した。その結果、表1に示すように、熱処理後の金属回路板の再結晶粒子径;248μm、金属放熱板の再結晶粒子径;352μm、金属回路板の再結晶粒子径と金属放熱板の再結晶粒子径の比;0.70、Da/Db;0.23がそれぞれ得られた。…(略)… 【0066】 表1において、実施例7は、1.2mmの厚さを有し、初期結晶粒子径が32μmであって、加工度10%の1/2H材からなる金属回路板と、1.0mmの厚さを有し、初期結晶粒子径が39μmであって、加工度0%のO材からなる金属放熱板を接合温度760℃でセラミックス基板の両面に接合した。その結果、表1に示すように、熱処理後の金属回路板の再結晶粒子径;242μm、金属放熱板の再結晶粒子径;355μm、金属回路板の再結晶粒子径と金属放熱板の再結晶粒子径の比;0.68、Da/Db;0.25がそれぞれ得られた。…(略)… 【0067】 表1において、実施例8は、1.4mmの厚さを有し、初期結晶粒子径が33μmであって、加工度10%の1/2H材からなる金属回路板と、1.2mmの厚さを有し、初期結晶粒子径が39μmであって、加工度0%のO材からなる金属放熱板を接合温度760℃でセラミックス基板の両面に接合した。その結果、表1に示すように、熱処理後の金属回路板の再結晶粒子径;252μm、金属放熱板の再結晶粒子径;352μm、金属回路板の再結晶粒子径と金属放熱板の再結晶粒子径の比;0.71、Da/Db;0.27がそれぞれ得られた。…(略)… 【0068】 表1において、実施例9は、2.0mmの厚さを有し、初期結晶粒子径が32μmであって、加工度10%の1/2H材からなる金属回路板と、2.0mmの厚さを有し、初期結晶粒子径が40μmであって、加工度0%のO材からなる金属放熱板を接合温度760℃でセラミックス基板の両面に接合した。その結果、表1に示すように、熱処理後の金属回路板の再結晶粒子径;250μm、金属放熱板の再結晶粒子径;361μm、金属回路板の再結晶粒子径と金属放熱板の再結晶粒子径の比;0.69、Da/Db;0.3がそれぞれ得られた。…(略)… 【0069】 表1において、実施例10は、3.0mmの厚さを有し、初期結晶粒子径が32μmであって、加工度10%の1/2H材からなる金属回路板と、3.0mmの厚さを有し、初期結晶粒子径が39μmであって、加工度0%のO材からなる金属放熱板を接合温度760℃でセラミックス基板の両面に接合した。その結果、表1に示すように、熱処理後の金属回路板の再結晶粒子径;250μm、金属放熱板の再結晶粒子径;349μm、金属回路板の再結晶粒子径と金属放熱板の再結晶粒子径の比;0.72、Da/Db;0.29がそれぞれ得られた。…(略)… 【0070】 表1において、実施例11は、0.6mmの厚さを有し、初期結晶粒子径が31μmであって、加工度10%の1/2H材からなる金属回路板と、0.5mmの厚さを有し、初期結晶粒子径が39μmであって、加工度0%のO材からなる金属放熱板を接合温度500℃でセラミックス基板の両面に接合した。その結果、表1に示すように、熱処理後の金属回路板の再結晶粒子径;120μm、金属放熱板の再結晶粒子径;160μm、金属回路板の再結晶粒子径と金属放熱板の再結晶粒子径の比;0.75、Da/Db;0.22がそれぞれ得られた。…(略)… 【0071】 表1において、実施例12は、0.6mmの厚さを有し、初期結晶粒子径が31μmであって、加工度10%の1/2H材からなる金属回路板と、0.5mmの厚さを有し、初期結晶粒子径が39μmであって、加工度0%のO材からなる金属放熱板を接合温度900℃でセラミックス基板の両面に接合した。その結果、表1に示すように、熱処理後の金属回路板の再結晶粒子径;320μm、金属放熱板の再結晶粒子径;398μm、金属回路板の再結晶粒子径と金属放熱板の再結晶粒子径の比;0.80、Da/Db;0.24がそれぞれ得られた。…(略)… 【0072】 表1において、実施例13は、0.6mmの厚さを有し、初期結晶粒子径が15μmであって、加工度20%のH材からなる金属回路板と、0.5mmの厚さを有し、初期結晶粒子径が13μmであって、加工度10%の1/2H材からなる金属放熱板を接合温度760℃でセラミックス基板の両面に接合した。その結果、表1に示すように、熱処理後の金属回路板の再結晶粒子径;110μm、金属放熱板の再結晶粒子径;130μm、金属回路板の再結晶粒子径と金属放熱板の再結晶粒子径の比;0.84、Da/Db;0.48がそれぞれ得られた。…(略)… 【0073】 表1において、実施例14は、0.6mmの厚さを有し、初期結晶粒子径が15μmであって、加工度20%のH材からなる金属回路板と、0.5mmの厚さを有し、初期結晶粒子径が13μmであって、加工度10%の1/2H材からなる金属放熱板を接合温度1000℃でセラミックス基板の両面に接合した。その結果、表1に示すように、熱処理後の金属回路板の再結晶粒子径;210μm、金属放熱板の再結晶粒子径;280μm、金属回路板の再結晶粒子径と金属放熱板の再結晶粒子径の比;0.75、Da/Db;0.39がそれぞれ得られた。…(略)… 【0074】 表1において、実施例15は、0.6mmの厚さを有し、初期結晶粒子径が11μmであって、加工度20%のH材からなる金属回路板と、0.5mmの厚さを有し、初期結晶粒子径が12μmであって、加工度10%の1/2H材からなる金属放熱板を接合温度760℃でセラミックス基板の両面に接合した。その結果、表1に示すように、熱処理後の金属回路板の再結晶粒子径;105μm、金属放熱板の再結晶粒子径;124μm、金属回路板の再結晶粒子径と金属放熱板の再結晶粒子径の比;0.85、Da/Db;0.45がそれぞれ得られた。…(略)… 【0075】 表1において、実施例16は、0.6mmの厚さを有し、初期結晶粒子径が11μmであって、加工度20%のH材からなる金属回路板と、0.5mmの厚さを有し、初期結晶粒子径が12μmであって、加工度10%の1/2H材からなる金属放熱板を接合温度1000℃でセラミックス基板の両面に接合した。その結果、表1に示すように、熱処理後の金属回路板の再結晶粒子径;190μm、金属放熱板の再結晶粒子径;240μm、金属回路板の再結晶粒子径と金属放熱板の再結晶粒子径の比;0.79、Da/Db;0.36がそれぞれ得られた。…(略)…」 「【0086】 ここで、図4に加工度10%の1/2H材からなる金属回路板の表面において再結晶化した銅の再結晶粒子の光学顕微鏡観察写真の一例を示す。また、図5に加工度0%のO材からなる金属放熱板の表面において再結晶化した銅の再結晶粒子の光学顕微鏡観察写真の一例を示す。図4と図5を比較して分かるように、金属回路板の銅の再結晶粒子に比べて金属放熱板の銅の再結晶粒子の方がサイズが大きい。さらに、図6にセラミックス基板と銅板との接合界面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真の一例を示す。図6からは、接合界面近傍に存在する銅の再結晶粒子よりも接合界面から離れた位置に存在する銅の再結晶粒子の方がサイズが大きいことが分かる。これは、上記したように、例えば、金属回路板及び金属放熱板とセラミックス基板との接合に活性金属ろう付け法を用いた場合、ろう材を構成する銀(Ag)成分が銅(Cu)/銀(Ag)-銅(Cu)界面において、銅結晶に固溶しているため、この銀(Ag)成分が銅の再結晶を遅らせ、金属回路板及び金属放熱板のセラミックス基板との接合界面近傍における銅の平均再結晶粒子径は、他の部分における銅の平均再結晶粒子径よりも小さくなるためである。」 「【図4】 [図:0001420353000002.jpg] 」 (2)甲1に記載された発明 前記(1)によれば、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、甲1発明を以下のa~gに分説し、「構成a」のようにして参照する。 「a セラミックス基板と、銅又は銅を主成分とする銅合金からなり前記セラミックス基板の一面に接合された金属回路板と、銅又は銅を主成分とする銅合金からなり前記セラミックス基板の他面に接合された金属放熱板とから構成されたセラミックス配線基板であって、(【請求項1】) b 前記金属回路板の前記銅又は前記銅合金の平均再結晶粒子径は、前記金属放熱板の前記銅又は前記銅合金の平均再結晶粒子径と等しいか又はそれより小さく、(【請求項1】) c 前記金属回路板の前記銅又は前記銅合金の平均再結晶粒子径は、100~400μmであり、(【請求項5】) d 上記構成のセラミックス配線基板の製造方法については、(【0042】) d1 窒化珪素基板の上面に、ろう材ペーストを予め設計された回路パターン形状に沿って塗布し、所定の厚さのろう材層を形成し、(【0043】) d2 ろう材層のパターンと相似形の回路パターンの銅からなる金属回路板を用意し、(【0044】) d3 ろう材層が金属回路板と窒化珪素基板との間に配置されるように部材同士を重ね、(【0044】) d4 窒化珪素基板の下面には、ろう材層を形成した後、銅からなる金属放熱板を載置し、(【0044】) d5 金属回路板と金属放熱板を載置した窒化珪素基板を所定温度と時間にわたって熱処理した後、冷却することにより、窒化珪素基板に金属回路板と金属放熱板をろう材層を介して接合する(【0045】)ものであり、 e 再結晶粒子径としては、金属板の2×2mmの視野において無作為に選択した粒子20個の最長径を測定した平均値を用い、(【0049】) f セラミックス配線基板を製造した場合の実施例11は、金属回路板の再結晶粒子径;120μm、金属放熱板の再結晶粒子径;160μm、がそれぞれ得られている、(【0051】、【0070】) g セラミックス配線基板。」 2 本件発明1と甲1発明との対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 (1)発明特定事項A「セラミックス基板と、」について 甲1発明の「セラミックス基板」(構成a)は、本件発明1の「セラミックス基板」に相当する。 (2)発明特定事項B「接合層を介して前記セラミックス基板に接合された銅板と、」について ア 本件発明の「銅板」は、本件特許の明細書の「銅板としては、純銅板や銅合金板を用いることができる。」(【0027】)との記載によれば、銅(純銅)又は銅合金からなるものである。 また、本件特許の明細書の「接合体1の銅板に回路構造を付与することにより、セラミックス銅回路基板が製造される。回路構造の付与には、エッチング工程が有効である。・・・または、上述した接合体の製造において、回路構造に加工された銅板が、セラミックス基板に接合されても良い。この場合、接合体としてセラミックス銅回路基板が得られる。」(【0030】)との記載によれば、本件発明1の「接合体」が備える「銅板」は、回路構造を付与する前の銅板を意味するだけでなく、回路構造に加工された銅板をも意味するものである。 イ 甲1発明の「金属回路板」は、「銅又は銅を主成分とする銅合金からな」る(構成a)ものである。 また、甲1発明において、「セラミックス配線基板の製造方法については」(構成d)、「回路パターンの銅からなる金属回路板を用意し」(構成d2)、「窒化珪素基板に金属回路板」「をろう材層を介して接合する」(構成d5)から、「回路パターンの銅からなる金属回路板」が、「セラミックス基板」である「窒化珪素基板」に接合されて、「セラミックス配線基板」が得られている。 ウ 前記ア及びイによれば、甲1発明の「銅又は銅を主成分とする銅合金からな」る「金属回路板」は、本件発明1の「銅板」に相当する。また、甲1発明の「ろう材層」は、本件発明1の「接合層」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲1発明とは、「接合層を介して前記セラミックス基板に接合された銅板」を備える点で一致する。 (3)発明特定事項C「を備えた接合体であって、」、発明特定事項F「ことを特徴とする接合体。」について ア 前記(2)アのとおり、本件特許の明細書の「・・・または、上述した接合体の製造において、回路構造に加工された銅板が、セラミックス基板に接合されても良い。この場合、接合体としてセラミックス銅回路基板が得られる。」(【0030】)との記載によれば、本件発明1の「接合体」は、セラミックス銅回路基板をも意味するものである。 イ 前記ア及び前記(2)イによれば、甲1発明の「セラミックス配線基板」は、本件発明1の「接合体」に相当する。 (4)発明特定事項D「前記銅板は、前記セラミックス基板と前記銅板とが接合された方向に垂直な表面を有し、」について 甲1発明において、「窒化珪素基板に金属回路板」「をろう材層を介して接合する」(構成d5)から、板状の「金属回路板」は、「セラミックス基板」である「窒化珪素基板」と「金属回路板」とが接合された方向に垂直な表面を有することは、明らかである。 そうすると、本件発明1と甲1発明とは、「前記銅板は、前記セラミックス基板と前記銅板とが接合された方向に垂直な表面を有」する点で一致する。 (5)発明特定事項E「前記表面に含まれる5mm×5mmの3つの領域において、長径が400μmを超える銅結晶粒の個数割合は、0%以上5%以下である」について 甲1発明には、「再結晶粒子径としては、金属板の2×2mmの視野において無作為に選択した粒子20個の最長径を測定した平均値を用い」(構成e)、「前記金属回路板の前記銅又は前記銅合金の平均再結晶粒子径は、100~400μm」(構成c)であることが特定されているが、「金属回路板」の「表面に含まれる5mm×5mmの3つの領域において、長径が400μmを超える銅結晶粒の個数割合は、0%以上5%以下」であることは特定されていない。 (6)一致点及び相違点 前記(1)~(5)によれば、本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「 セラミックス基板と、 接合層を介して前記セラミックス基板に接合された銅板と、 を備えた接合体であって、 前記銅板は、前記セラミックス基板と前記銅板とが接合された方向に垂直な表面を有する 接合体。」 <相違点> 本件発明1は、「銅板」の「表面に含まれる5mm×5mmの3つの領域において、長径が400μmを超える銅結晶粒の個数割合は、0%以上5%以下である」のに対し、甲1発明は、「再結晶粒子径としては、金属板の2×2mmの視野において無作為に選択した粒子20個の最長径を測定した平均値を用い」、「金属回路板の」「銅又は」「銅合金の平均再結晶粒子径は、100~400μm」である点。 3 本件発明1と甲1発明との相違点についての判断 前記2(6)で示した相違点について、以下、検討する。 (1)当該相違点は、接合体の構成に関わるものであるから、実質的な相違点である。 したがって、本件発明1は、甲1発明と同一ではない。 (2)甲1発明には、「再結晶粒子径としては、金属板の2×2mmの視野において無作為に選択した粒子20個の最長径を測定した平均値を用い」(構成e)、「前記金属回路板の前記銅又は前記銅合金の平均再結晶粒子径は、100~400μm」(構成c)であることが特定されており、甲1には、金属回路板における銅の平均再結晶粒子径(再結晶粒子の長径の平均値)を所定の範囲とすることが記載されているが、長径が400μmを超える銅結晶粒の個数割合を所定の範囲とすることについて、記載も示唆もない。 (3)加えて、接合層を介してセラミックス基板に接合された銅板の表面に含まれる5mm×5mmの3つの領域において、長径が400μmを超える銅結晶粒の個数割合を、0%以上5%以下とすることは、技術常識でもない。 (4)前記(2)及び(3)によれば、当該相違点は、当業者といえども、甲1発明から容易に想到し得たものとは認められない。 (5)申立人は、当該相違点について、以下のとおり主張する。 ア 「甲第1号証において、初期結晶粒子径及び再結晶粒子径は顕微鏡観観察によって無作為に選択した粒子20個の最長径を測定した平均値であり(段落0049)、甲1a発明において「金属回路板」の再結晶粒子径が「120μm」であり、「金属放熱板」の再結晶粒径が「160μm」であるから、いずれであっても再結晶粒子径が「400μmを超える」ものでなく、本件発明1における「前記表面に含まれる5mm×5mmの3つの領域において、長径が400μmを超える銅結晶粒の個数割合は、0%以上5%以下である」の範囲内にあるといえる。」(申立書の27頁) イ 「なお、甲第1号証の実施例1~10,12~16,比較例1~3,6~8,10を甲1a発明として捉えても同様である。」(申立書の27頁) 以下、当該主張について検討する。 甲1において、実施例及び比較例の再結晶粒子径の値は、粒子20個の最長径を測定した平均値(長径の平均値)を示すものであって、長径が400μmを超える粒子の個数割合を示すものではない。 そして、結晶粒子径の平均値と結晶粒子径が所定値以上である結晶粒子の個数割合との間に一対一の相関関係は存在しないことが技術常識であるところ、例えば、結晶粒子径の平均値が「120μm」である場合、結晶粒子径が「400μm」以上である結晶粒子の個数割合は、当該技術常識をふまえれば、不明であって、「0%以上5%以下である」とは必ずしもいえない。 請求人は、「再結晶粒子径が「400μmを超える」ものでなく、本件発明1における「前記表面に含まれる5mm×5mmの3つの領域において、長径が400μmを超える銅結晶粒の個数割合は、0%以上5%以下である」の範囲内にあるといえる。」と主張しているが、再結晶粒子径は粒子径の平均値であって粒子径の上限値ではないところ、「再結晶粒子径が「400μmを超える」ものでな」いことが、なぜ「「前記表面に含まれる5mm×5mmの3つの領域において、長径が400μmを超える銅結晶粒の個数割合は、0%以上5%以下である」の範囲内にあるといえる。」との結論の根拠となるのかが何ら説明されていない。よって、申立人の主張は、論理に飛躍があるうえ、前記技術常識にも反すると認められるため、当該主張は採用できない。 (6)本件発明1と甲1発明との相違点についての小括 前記(2)~(5)によれば、本件発明1と甲1発明との相違点は、甲1発明から容易に想到し得たものではない。 また、当該相違点は、その他の証拠及び技術常識によっても容易に想到し得たものではない。 4 理由1及び2についての小括 (1)前記3(1)によれば、本件発明1は、甲1発明であるとは認められない。 そして、本件発明2~5、7~15は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、さらに別の発明特定事項を備えるものである。 そうすると、本件発明2~5、7~15と甲1発明とは、少なくとも前記2(6)に示した相違点を有するから、本件発明2~5、7~15は、甲1発明であるとは認められない。 以上によれば、理由1には理由がない。 (2)前記3(6)によれば、本件発明1は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。 そして、本件発明2~15は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、さらに別の発明特定事項を備えるものである。 そうすると、本件発明2~15と甲1発明とは、少なくとも前記2(6)に示した相違点を有し、当該相違点については前記3のとおりであるから、本件発明2~15も、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められず、また、本件発明7及び8も、甲1発明並びに甲2及び3に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。 以上によれば、理由2には理由がない。 第5 理由3についての判断 理由3(サポート要件違反)の有無を判断する。 1 本件発明1のサポート要件についての判断 以下、本件の特許請求の範囲の記載は、本件発明1が発明の詳細な説明に記載したものであるか否かについて検討する。 (1)本件発明1を特定する発明特定事項は、いずれも本件の発明の詳細な説明に記載されたものである。 (2)本件の発明の詳細な説明に記載された、「…(略)…例えば、セラミックス基板を大きくすると接合体の反り量が大きくなるといった課題が生じていた。その原因を追究したところ、その課題は、銅板の粒成長に起因することが分かった。本発明は、このような課題に対応するためのものである。本発明は、銅板の粒成長を抑制したセラミックス銅回路基板を提供するためのものである。」(【0004】)、「長径が400μmを超える銅結晶粒は、熱処理に伴い粒成長した粗大粒である。接合層を介してセラミックス基板と銅板を接合する場合、銅板は800℃程度の高温にさらされる。銅板は、高温化で粒成長する。表面と平行な方向に粒成長が生じ、粗大粒が形成されると、接合体に反りが生じ易くなる。本願発明の発明者らは、表面において単位面積5mm×5mmに長径400μmを超える銅結晶粒が6%以上になると、反りが大きくなることを見出した。特に、接合体が大きくなると、反りが生じ易かった。実施形態にかかる接合体では、長径が400μmを超える銅結晶粒の個数が抑えられているため、反りを低減できる。…(略)…」(【0009】)、実施例1~8及び比較例1~3(特に【0042】の表5)、「表から分かる通り、実施例にかかる接合体は、銅板の銅結晶粒が制御されていた。また、反り量、接合強度についても、良好な結果が得られた。…(略)…」(【0043】)によれば、本件発明が解決しようとする課題は、「接合体の反り量が大きくなるといった課題」に対応する(【0004】)ことであり、「その課題は、銅板の粒成長に起因することが分か」り(【0004】)、「表面において単位面積5mm×5mmに長径400μmを超える銅結晶粒が6%以上になると、反りが大きくなることを見出し」(【0009】)、「実施形態にかかる接合体では、長径が400μmを超える銅結晶粒の個数が抑えられているため、反りを低減できる」(【0009】)ことから、本件発明1の発明特定事項E(「前記表面に含まれる5mm×5mmの3つの領域において、長径が400μmを超える銅結晶粒の個数割合は、0%以上5%以下である」)により、接合体の反りを低減でき、当該課題を解決すると認識できる。(なお、下線は、強調のため、当審で付した。) (3)前記(1)及び(2)によれば、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載したものであると認められる。 2 本件発明2~5、7~9のサポート要件についての判断 本件発明2~5、7~9は、本件発明1の発明特定事項を全て備えているから、前記1(2)のとおり、本件発明2~5、7~9も本件発明が解決しようとする課題を解決すると認識できる。 また、請求項2~5、7~9で特定される発明特定事項は、いずれも発明の詳細な説明に記載されたものである。 よって、本件発明2~5、7~9は、発明の詳細な説明に記載したものであると認められる。 3 申立人の主張についての判断 申立人は、本件発明1のサポート要件について、以下のとおり主張する。 (1)「本件発明の解決課題は、銅板の粒成長を抑制することであり、実際、「銅板の粒成長を抑制したセラミックス銅回路基板を提供する」(段落0004)と記載されている。」(申立書の36頁) (2)「本件請求項1は、本件発明の達成すべき結果である、銅板における粗大粒子(長径400μmを超える銅結晶粒)の個数割合が少ないことを規定したものとなっている。本件発明の詳細な説明には、特定の製法が銅結晶粒の成長を抑制することが記載されているのみであり、本願出願時の技術常識に照らしても、請求項に係る発明の範囲にまで、発明の詳細に説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。」(申立書の36頁) (3)「本件発明が、銅板の粒成長を抑制するものであり、そのための製法を特徴としようとするものであるように見受けられるところ、本件請求項1には発明の課題を解決するための手段が反映されているともいえない。」(申立書の36~37頁) 以下、当該主張について検討する。 繰り返しになるが、前記1(2)のとおり、本件発明の解決課題は「接合体の反り量が大きくなるといった課題」に対応することであり、本件発明1の発明特定事項E(「前記表面に含まれる5mm×5mmの3つの領域において、長径が400μmを超える銅結晶粒の個数割合は、0%以上5%以下である」)により、前記課題を解決すると認識できる。 申立人は、前記(1)のように、本件発明が解決すべき課題を「銅板の粒成長を抑制すること」であると主張するが、これは本件発明が解決すべき課題ではない。 また、申立人は、前記(2)のように、発明特定事項Eが「本件発明の達成すべき結果」を特定したものであると主張するが、当該主張は申立人が課題を正解していないことに起因した誤解であり、発明特定事項Eは課題解決手段を特定するものである。 そして、申立人は、前記(3)のように、本件発明の課題解決手段は「銅板の粒成長を抑制する」「ための製法」であると主張するが、当該主張も申立人が課題を正解していないことに起因した誤解である。 以上によれば、前記(1)~(3)を根拠に、本件発明1は、サポート要件を充足するものとはいえないとする主張は、採用できない。 4 理由3についての小括 前記1~3によれば、本件の特許請求の範囲の記載は、本件発明1~5、7~9が発明の詳細な説明に記載したものと認められる。 以上によれば、理由3には理由がない。 第6 理由4についての判断 理由4(実施可能要件違反)の有無を判断する。 1 本件発明1の実施可能要件についての判断 以下、本件の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるか否かについて検討する。 (1)本件発明1の発明特定事項A~D、Fは、本件発明の構成要素を特定しており、本件の発明な詳細な説明には、これらの発明特定事項に対応する具体的な説明が具体例とともに記載されており、発明特定事項A~D、Fの具現化のための明確かつ十分な記載があると認められる。 (2)本件発明1の発明特定事項E「前記表面に含まれる5mm×5mmの3つの領域において、長径が400μmを超える銅結晶粒の個数割合は、0%以上5%以下である」について、本件の発明な詳細な説明には、次の記載がある。 ア 「【0010】 銅結晶粒7の長径の平均値は、30μm以上300μm以下が好ましい。 …(略)…また、長径の平均値が300μmを超えると、長径が400μmを超える銅結晶粒の数が増える可能性が高くなる。このため、長径の平均値は、30μm以上300μm以下、さらには50μm以上150μm以下が好ましい。」 イ 「【0021】 次に、接合温度が800℃以下である接合工程を行う。接合温度とは、接合工程において一定時間保持された温度のうち、最高の温度を指す。接合温度が高いと、銅板を構成する銅結晶粒の粒成長が促進される。…(略)…接合温度が800℃を超えると、銅板の粒成長が大きくなる。銅板の粒成長が大きいと、長径が400μmを超えた大きな銅結晶粒が生成され易くなる。 接合温度は、800℃以下、さらには700℃以下が好ましい。…(略)…」 ウ 「【0027】 銅板としては、純銅板や銅合金板を用いることができる。…(略)…また、接合前の銅板において、銅結晶粒の長径の平均値は、10μm以上200μm以下が好ましい。長径の平均値が10μm未満では、粒成長し易い微細な銅結晶粒が増える可能性がある。また、平均値が200μmを超えると、接合後に、長径が400μmを超える銅結晶粒の数が増える可能性がある。このため、接合前の長径の平均値は、10μm以上200μm以下、さらには20μm以上150μm以下が好ましい。…(略)…」 エ 前記ア~ウによれば、長径が400μmを超える銅結晶粒の個数割合は、(接合後の銅板における)銅結晶粒の長径の平均値、接合温度、接合前の銅板における銅結晶粒の長径の平均値を調節することで、制御できることが理解できる。 オ そして、発明特定事項Eに対応する具体例(実施例1~8)が記載されている。 カ 前記エ及びオによれば、本件の発明な詳細な説明には、発明特定事項Eの具現化のための明確かつ十分な記載があると認められる。 (3)前記(1)及び(2)によれば、本件の発明な詳細な説明には、本件発明1の全ての発明特定事項を具現化するための明確かつ十分な記載があると認められるから、本件の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであると認められる。 2 本件発明2~13、15の実施可能要件についての判断 本件発明2~13、15は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、さらに請求項2~13、15で特定される発明特定事項を備えるものである。 本件発明1の発明特定事項については、前記1のとおりである。 そして、請求項2~13、15で特定される発明特定事項についても、本件の発明な詳細な説明には、明確かつ十分な記載があると認められる。 よって、本件の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明2~13、15の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであると認められる。 3 申立人の主張についての判断 申立人は、本件発明1~9の実施可能要件について、以下のとおり主張する。 (1)「「長径が400μmを超える銅結晶粒の個数割合は、0%以上5%以下であることを特徴とする接合体」を実施するためには、少なくとも、活性金属を有し、且つ800℃以下の加熱温度によって溶融する低融点であるろう材を使用する必要があると当業者であれば把握する。 これに対して、本件請求項1~6,8~9には、ろう材の成分、組成についてはなんら限定が無い。そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明及び本件出願時の技術常識を考慮したとしても、接合層の成分組成についての限定のなくあらゆる接合層を許容しつつ、長径が400μmを超える銅結晶粒の個数割合は、0%以上5%以下であるような本件請求項1~6,8~9に係る接合体及びセラミックス銅回路基板をどのように作るかを当業者は理解できない。なお、本件請求項7には「Ag、Cu及びTiを含有する」ことが特定されており本件明細書における「活性金属ろう材」が使用されたことは特定されると考えられるものの、その他成分、組成については不明でありろう材の融点は特定されず、やはり、請求項7に係る接合体をどのように作るかを当業者は理解できない。」(申立書の37~38頁) また、申立人は、本件発明10~13、15の実施可能要件について、以下のとおり主張する。 (2)「本件請求項10~13,15に係る接合体の製造方法及びセラミックス銅回路基板の製造方法においても、ろう材の成分、組成についてはなんら限定が無い。そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明及び本件出願時の技術常識を考慮したとしても、ろう材の成分組成についての限定のない接合体の製造方法及びセラミックス銅回路基板の製造方法によって、「銅板の粒成長を抑制したセラミックス銅回路基板」(段落0004)をどのように製造することができるのかを理解できず、当業者は請求項10~13,15に記載の製造方法により物を生産できることを理解できない。この点、本件明細書の比較例1~3では、融点が「760℃」である「ろう材4」が使用されており、その接合温度を高める必要があったことが示されている(表3、表4)。このことは、接合温度を低下させ、銅の粒成長を抑制するためには、ろう材層の成分組成を調整し、融点を低下させることが必須であることを示しているに外ならず、このような限定無しに、長径が400μmを超える銅結晶粒の個数割合は、0%以上5%以下であるような接合体をどのように作ることができるのかを当業者は理解できない。」(申立書の38頁) 以下、当該主張について検討する。 前記1(2)のとおり、発明特定事項Eを実施する(銅板の粒成長を抑制する)には、本件の発明な詳細な説明及び本件出願時の技術常識を考慮すれば、(接合後の銅板における)銅結晶粒の長径の平均値、接合温度、接合前の銅板における銅結晶粒の長径の平均値を調節することで、制御できることが、当業者であれば理解できる。 そして、当該理解によれば、発明特定事項Eを実施できるか否かは、接合温度のみに依存するわけではないので、発明特定事項Eを実施するためには、接合温度を特定する(所定以下、例えば、800℃以下とする)ことが必須であるとは認められない。(例えば、接合温度が800℃以下であっても、接合前の銅板における銅結晶粒の長径の平均値が大きいと、発明特定事項Eを実施できないことが想定され、接合温度が800℃を超えても、接合前の銅板における銅結晶粒の長径の平均値が小さいと、発明特定事項Eを実施できることが想定される。)これは、本件の発明の詳細な説明における「接合温度が800℃を超えると、銅板の粒成長が大きくなる。銅板の粒成長が大きいと、長径が400μmを超えた大きな銅結晶粒が生成され易くなる。」(【0021】)との記載(接合温度が800℃を超えると、長径が400μmを超えた大きな銅結晶粒が生成され易くなることが記載されているが、発明特定事項Eが実施できないとは記載されていない)とも整合する。 そうすると、前記(1)で主張するように、「「長径が400μmを超える銅結晶粒の個数割合は、0%以上5%以下であることを特徴とする接合体」を実施するためには、少なくとも、活性金属を有し、且つ800℃以下の加熱温度によって溶融する低融点であるろう材を使用する必要があると当業者であれば把握する」(つまり、発明特定事項Eを実施するには、800℃以下の接合温度とする必要があると当業者であれば理解する)とは認められないので、これを前提とする主張は採用できない。 また、前記(2)で主張するように、「接合温度を低下させ、銅の粒成長を抑制するためには、ろう材層の成分組成を調整し、融点を低下させることが必須である」とは認められないので、これに基づく主張は採用できない。 したがって、前記(1)及び(2)を根拠に、本件の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1~13、15の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえないとする主張は、採用できない。 4 理由4についての小括 前記1~3によれば、本件の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1~13、15の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものと認められる。 以上によれば、理由4には理由がない。 第7 むすび 前記第4~第6によれば、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2024-700982

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決300件(寺澤 佳奈美、東芝マテリアル株式会社、株式会社東芝)
  • 2024-700045異議申立 / 2024-11-22 / 訂正認容セラミックス銅回路基板およびその製造方法
    同じ当事者: 寺澤 佳奈美、東芝マテリアル株式会社、株式会社東芝
  • 2024-700284異議申立 / 2024-11-22 / 訂正認容シンチレータアレイ、シンチレータアレイの製造方法、放射線検出器、および放射線検査…
    同じ当事者: 東芝マテリアル株式会社、株式会社東芝
  • 2022-700413異議申立 / 2023-03-27 / 訂正認容セラミックス銅回路基板およびそれを用いた半導体装置
    同じ当事者: 東芝マテリアル株式会社、株式会社東芝
  • 2021-701038異議申立 / 2022-09-20 / 訂正認容スパッタリングターゲット、窒化チタン膜の製造方法、および半導体素子の製造方法
    同じ当事者: 東芝マテリアル株式会社、株式会社東芝
  • 2021-700552異議申立 / 2021-09-30 / 維持セラミックス金属回路基板およびそれを用いた半導体装置
    同じ当事者: 東芝マテリアル株式会社、株式会社東芝
同じ論点・分野の審決(審決分類)841件(113・H05K、121・H05K、536・H05K ほか)
  • 2025-700287異議申立 / 2025-11-18 / 訂正認容多層配線基板及び多層配線基板の製造方法
    共通の審決分類: 113・H05K、121・H05K、536・H05K、537・H05K
  • 2023-700915異議申立 / 2024-09-09 / 訂正認容セラミックス基板、セラミックス分割基板、及びセラミックス基板の製造方法
    共通の審決分類: 113・H05K、121・H05K、536・H05K、537・H05K
  • 2024-700149異議申立 / 2024-07-10 / 維持接着性樹脂シート、プリント配線板および、電子機器。
    共通の審決分類: 113・H05K、121・H05K、536・H05K、537・H05K
  • 2023-701147異議申立 / 2024-02-14 / 維持配線基板、積層型配線基板、及び配線基板の製造方法
    共通の審決分類: 113・H05K、121・H05K、536・H05K、537・H05K
  • 2023-700440異議申立 / 2023-08-24 / 維持セラミック基板、複合基板及び回路基板並びにセラミック基板の製造方法、複合基板の製…
    共通の審決分類: 113・H05K、121・H05K、536・H05K、537・H05K

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存