特許異議申立
2023-701004
口唇化粧料
- 審判番号
- 2023-701004
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-046117外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7245677
- 請求日
- 2023年09月21日
- 審決日
- 2024年06月07日
- 公報発行日
- 2024年09月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】花王株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人アルガ特許事務所
- 【異議申立人】荒井 健之
- 分類
- P1651.113-YAA(A61K) / P1651.121-YAA(A61K) / P1651.537-YAA(A61K) / P1651.536-YAA(A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項、特許法第120条の8
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7245677号発明「口唇化粧料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7245677号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。
特許第7245677号の請求項1~3、6及び7に係る特許を維持する。
特許第7245677号の請求項4、5及び8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7245677号(以下「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願(特願2019-46117号)は、平成31年3月13日に出願され、令和5年3月15日にその特許権の設定登録がされ、同年同月24日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、令和5年9月21日に特許異議申立人 荒井 健之 (以下「申立人」という。)により、本件特許の請求項1~8(全請求項)に係る特許に対し、特許異議の申立てがされ、令和6年1月19日付けで当審合議体は特許権者に対して取消理由を通知し、その指定期間内である同年3月22日に特許権者から意見書及び訂正請求書が提出され、同年同月29日付けで当審合議体は申立人に対して特許法第120条の5第5項の規定に基づく訂正請求があった旨の通知をし、その指定期間内である同年5月2日に申立人から意見書の提出があったものである。
第2 訂正請求について
1 訂正の趣旨
令和6年3月22日付けの訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の趣旨は、
「特許第7245677号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを求める。」
というものである。
2 訂正の内容
本件訂正の内容は、訂正請求書の記載及び訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の記載からみて、次の訂正事項1~9からなるものであると認められる。下線は、訂正による記載の変更箇所を示す。
なお、訂正前の請求項1~8について、請求項2~8は、いずれも請求項1の記載を引用するものであって、訂正事項1~3によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~8にそれぞれ対応する訂正後の請求項1~8に係る本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してされたものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「(A)油成分」
と記載されているのを、
「(A)(A-1)融点が30~61℃未満の油成分、及び(A-2)20℃で液状の油成分からなる油成分」
に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項2~8も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に
「(D)油ゲル化剤」
と記載されているのを、
「(D)融点が61℃以上の固形のワックス、金属石鹸、有機変性粘土鉱物、ナノシリカ及びデキストリン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上の油ゲル化剤」
に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項2~8も同様に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に
「(D)油ゲル化剤」
と記載されているところ、これに続けて、
「 1~13質量%」
と追記する訂正をする。
請求項1の記載を引用する請求項2~8も同様に訂正する。
(4)訂正事項4
ア 訂正事項4-1
特許請求の範囲の請求項1に
「口唇化粧料」
と記載されているのを、
「液状口紅」
に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項2~8も同様に訂正する。
イ 訂正事項4-2
特許請求の範囲の請求項2に
「口唇化粧料」
と記載されているのを、
「液状口紅」
に訂正する。
請求項2の記載を引用する請求項3~8も同様に訂正する。
ウ 訂正事項4-3
特許請求の範囲の請求項3に
「口唇化粧料」
と記載されているのを、
「液状口紅」
に訂正する。
請求項3の記載を引用する請求項4~8も同様に訂正する。
エ 訂正事項4-4
特許請求の範囲の請求項6に
「口唇化粧料」
と記載されているのを、
「液状口紅」
に訂正する。
請求項6の記載を引用する請求項7及び8も同様に訂正する。
オ 訂正事項4-5
特許請求の範囲の請求項7に
「口唇化粧料」
と記載されているのを、
「液状口紅」
に訂正する。
請求項7の記載を引用する請求項8も同様に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項6に
「請求項1~5のいずれか1項記載の」
と記載されているのを、
「請求項1~3のいずれか1項記載の」
に訂正する。
請求項6の記載を引用する請求項7及び8も同様に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項7に
「請求項1~6のいずれか1項記載の」
と記載されているのを、
「請求項1~3、6のいずれか1項記載の」
に訂正する。
請求項7の記載を引用する請求項8も同様に訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項8を削除する。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否についての判断
(1)訂正事項1について
訂正事項1による訂正は、訂正前の請求項1に記載の口唇化粧料に含まれる成分(A)の「油成分」を、「(A-1)融点が30~61℃未満の油成分」及び「(A-2)20℃で液状の油成分」からなる「油成分」に特定して限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、訂正事項1による訂正は、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下「本件明細書等」という。)の【0008】に「本発明で用いる成分(A)は、油成分であり、(A-1)融点が30~61℃未満の油成分を含有する。」と記載され、【0012】に「成分(A)の油成分としては、(A-2)20℃で液状の油成分を含有するのが好ましい。」と記載されており、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(2)訂正事項2及び3について
事案に鑑み、訂正事項2による訂正と訂正事項3による訂正を、まとめて検討する。
訂正事項2による訂正は、訂正前の請求項1に記載の口唇化粧料に含まれる成分(D)の「油ゲル化剤」を、「融点が61℃以上の固形のワックス、金属石鹸、有機変性粘土鉱物、ナノシリカ及びデキストリン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上」の「油ゲル化剤」に特定して限定するものである。また、訂正事項3による訂正は、訂正前の請求項1に記載の口唇化粧料に含まれる成分(D)の「油ゲル化剤」について、上記訂正事項2による訂正を前提とし、訂正前は規定されていなかった、その含有量を、「1~13質量%」に特定して限定するものである。
したがって、訂正事項2による訂正及び訂正事項3による訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、訂正前の請求項4において「成分(D)の油ゲル化剤が、固形のワックス、金属石鹸、有機変性粘土鉱物、ナノシリカ及びデキストリン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上である請求項1~3のいずれか1項記載の口唇化粧料」と記載され、本件明細書等の【0026】に「成分(D)の油性ゲル化剤としては、通常の化粧料に用いられるもので、例えば、固形のワックス、金属石鹸、有機変性粘土鉱物、ナノシリカ、デキストリン脂肪酸エステル等が挙げられる。」と記載され、【0027】に「固形のワックスとしては、融点が61℃以上のワックスが挙げられる。」と記載されており、また、本件明細書等の【0038】には「成分(D)は、・・・、含有量は、全組成中に1質量%以上が好ましく、・・・、13質量%以下がさらに好ましい。」と記載されている。
そうすると、訂正事項2による訂正及び訂正事項3による訂正は、いずれも、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項2による訂正及び訂正事項3による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(3)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正事項4-1~4-5からなるものであるところ、訂正事項4-1、4-2、4-3、4-4及び4-5による訂正は、それぞれ訂正前の請求項1、2、3、6及び7に記載の「口唇化粧料」を、その性状が「液状」である「液状口紅」に特定して限定するものであるから、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、訂正事項4による訂正は、本件明細書等の【0041】に「本発明の口唇化粧料は、通常の方法により、製造することができ、固形状、非固形状のものとして得ることができる。」と記載され、【0043】~【0055】の【実施例】において「口唇化粧料(液状口紅)を製造」と記載されており、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項4による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(4)訂正事項5、6及び9について
訂正事項5、6及び9による訂正は、それぞれ請求項4、5及び8を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(5)訂正事項7及び8について
訂正事項7及び8による訂正は、いずれも記載を引用する請求項から、請求項4及び5を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(6)独立特許要件について
本件特許異議申立事件においては、訂正前の全ての請求項である請求項1~8に係る特許に対して特許異議の申立てがされているから、訂正事項1~9による訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるが、訂正後の請求項1~8に係る発明については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(「独立特許要件」)は課されない。
4 訂正請求についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
よって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正後の本件特許の請求項1~8の記載は、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1~8に記載された以下のとおりのものである(下線は、訂正による記載の変更箇所を示す。)。
本件訂正により請求項4、5及び8が削除されたところ、本件訂正請求項1~3、6及び7に係る発明は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~3、6及び7に記載された以下の事項により特定されるとおりのものである(以下、請求項の番号順に「本件訂正発明1」などといい、これらをまとめて「本件訂正発明」ということがある。)。
「【請求項1】
次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)(A-1)融点が30~61℃未満の油成分、及び(A-2)20℃で液状の油成分からなる油成分、
(B)体質顔料 20~70質量%、
(C)着色顔料、
(D)融点が61℃以上の固形のワックス、金属石鹸、有機変性粘土鉱物、ナノシリカ及びデキストリン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上の油ゲル化剤 1~13質量%
を含有し、(A)油成分として、(A-1)融点が30~61℃未満の油成分を全組成中に0.01~4.5質量%含有する液状口紅。
【請求項2】
成分(A)の含有量が全組成中に15~75質量%である請求項1記載の液状口紅。
【請求項3】
成分(A-1)に対する成分(B)の質量割合(B)/(A-1)が、6~2000である請求項1又は2記載の液状口紅。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
成分(A-1)に対する成分(D)の質量割合(D)/(A-1)が、0.8~1000である請求項1~3のいずれか1項記載の液状口紅。
【請求項7】
成分(A)に対する成分(A-1)の質量割合(A-1)/(A)が、0.001~0.10である請求項1~3、6のいずれか1項記載の液状口紅。
【請求項8】
(削除)」
第4 特許異議の申立ての理由及び取消理由の概要
1 特許異議申立人が申し立てた理由の概要
申立人は、証拠方法として、特許異議申立書(以下「申立書」という。)に添付して下記(6)に示す甲第1号証~甲第5号証(以下、それぞれ番号順に「甲1」~「甲5」ともいう。)を提出し、申立書の全体の記載からみて、本件訂正前の請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由として、下記(1)~(5)に概要を示す特許異議の申立ての理由(以下「申立理由」という。)を主張しているものと認められる。
(1)申立理由1(甲1に基づく新規性欠如)
本件特許の請求項1~8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、これらの請求項に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(甲2を主引例とする進歩性欠如)
本件特許の請求項1~8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明(及び甲3~4に記載された事項)に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)申立理由3(明確性要件違反)
本件特許の特許請求の範囲の記載は、甲5に記載された技術常識も参酌すれば、「(A)成分」と「(D)油ゲル化剤」を明確に区別できないため、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、本件特許の請求項1~8に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(4)申立理由4(サポート要件違反)
本件特許の特許請求の範囲の記載は、「(A)成分」と「(D)油ゲル化剤」を明確に区別できないため、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本件特許の請求項1~8に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(5)申立理由5(実施可能要件違反)
本件特許の発明の詳細な説明の記載は、「(A)成分」と「(D)油ゲル化剤」を明確に区別できないため、特許法第36条第4項第1号に適合するものではないから、本件特許の請求項1~8に係る特許は、同法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(6)証拠方法
甲1:特開平9-295914号公報
甲2:特開2014-152146号公報
甲3:特開2000-119134号公報
甲4:鈴木一成監修,「改訂・完全版 化粧品成分用語事典2008」,
中央書院,2008年2月15日,p.532-533
甲5:田上八朗 外4名監修,「化粧品科学シリーズ第1巻 化粧品科学
ガイド」,フレグランスジャーナル社,2007年2月28日,
p.212-214
2 当審合議体が通知した取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~8に係る特許について、当審合議体が令和6年1月19日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
なお、取消理由1及び3は、それぞれ、上記1(1)の申立理由1及び同(3)の申立理由3と同旨であり、取消理由4及び5は、上記1(4)の申立理由4及び同(5)の申立理由5を含むものである。
(1)取消理由1(甲1に基づく新規性欠如)
本件特許の請求項1~8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~8に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)取消理由2(甲1を主引例とする進歩性欠如)
本件特許の請求項1~8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)取消理由3(明確性要件違反)
本件特許の特許請求の範囲の記載は、「(A)成分」と「(D)油ゲル化剤」を明確に区別することができないため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(4)取消理由4(サポート要件違反)
本件特許の特許請求の範囲の記載は、「(A)成分」と「(D)油ゲル化剤」を明確に区別することができないことに起因して、成分(A)が成分(A-1)及び成分(A-2)からなり、成分(D)が固形のワックス、金属石鹸、有機変性粘土鉱物、ナノシリカ又はデキストリン脂肪酸エステルである、液状口紅以外の場合についてまで、課題が解決できることを当業者が認識できるように記載されているとはいえないため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(5)取消理由5(実施可能要件違反)
本件特許の発明の詳細な説明の記載は、「(A)成分」と「(D)油ゲル化剤」を明確に区別することができないことに起因して、成分(A)及び成分(D)について、例示されているもの以外として、どのようなものを選択すればよいのか不明なため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
第5 当審合議体の判断
当審合議体は、本件特許の請求項1~3、6及び7に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由及び申立人が申し立てた申立理由によっては、取り消すことはできないものと判断する。その理由は以下のとおりである。
なお、以下の証拠の記載事項の摘記において、下線は当審合議体が付したものであり、「・・・」は摘記の省略を示す。また、証拠の記載事項の摘記は、全て全角で表記する。本決定全体についても同様である。
1 取消理由1(甲1に基づく新規性欠如)及び取消理由2(甲1を主引例とする進歩性欠如)について
(1)甲1に記載された事項
甲1には、以下の事項が記載されている。
(甲1a)
「【請求項1】短径:0.6~2.0μm、長径:5~40μmの粒子径を有するウィスカー状炭酸カルシウム粉末を含有することを特徴とする化粧料。
・・・
【請求項5】請求項1~4記載の成分に加え、更に、固形状油剤及び/又は油ゲル化剤を含有することを特徴とする化粧料。
【請求項6】固形状油剤が融点80~105℃のワックスであることを特徴とする請求項5記載の化粧料。
【請求項7】固形状油剤の含有量が5~40重量%であることを特徴とする請求項5又は6のいずれかに記載の化粧料。
【請求項8】油性固型化粧料であることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の化粧料。」
(甲1b)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は化粧料に関し、更に詳細には、使用感に優れ、塗布後の感触も良好なうえ充分な強度並びに形状保持性があり、また、安定性も良好な新規な化粧料を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】・・・
【0003】口紅等のスティック状化粧料の強度を向上させるには、高融点ワックスを多量に配合したり、ショ糖脂肪酸エステルや有機変性粘土鉱物等の油ゲル化剤を添加して固化させる等の方法がこれまで採用されてきた。・・・
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した従来の技術では成型性を保持するための強度を向上させるものの、反面、配合量や他の成分との組み合わせによっては使用感触上問題を生じる場合があった。・・・
【0005】・・・従って、使用性や使用感を損ねることなく、良好な強度並びに形状保持性を有する化粧料の開発が望まれていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記実情に鑑み、本発明者らは鋭意研究の結果、特定の粒子径を有するウィスカー状炭酸カルシウム粉末を必須成分として含有すれば、良好な使用性、使用感を有し、且つ、強度並びに形状保持性に優れた化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち本発明は、短径:0.6~2.0μm、長径:5~40μmの粒子径を有するウィスカー状炭酸カルシウム粉末を含有することを特徴とする化粧料である。以下、本発明を詳細に説明する。」
(甲1c)
「【0008】本発明におけるウィスカー状炭酸カルシウム粉末の含有量は、特に限定されないが、好ましくは、1~45重量%(以下、単に「%」と記す)配合される。この範囲内で用いれば、本発明の効果をより発揮することができる。
【0009】更に、口紅等に代表される、形状がスティック状の油性固型化粧料においては、上記必須成分に加えて、固形状油剤及び/又は油ゲル化剤を配合することが好ましい。固形状油剤としては、通常の油性固形化粧料に使用される、いわゆるワックス類であり、例えば、キャンデリラワックス、ビーズワックス、カルナウバワックス、モクロウ、モンタンワックス、セレシンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリエチレンポリプロピレンコポリマー等が挙げられ、油ゲル化剤としては、デキストリン脂肪酸エステル、アミノ酸脂肪酸エステル、12-ヒドロキシステアリン酸等のオキシ脂肪酸エステル、有機変性粘土鉱物等が挙げられる。
【0010】特に、固形状油剤の中でも融点が80~105℃のワックスを用いると高温での安定性がより良好なものとなり好ましい。特に好ましいワックスとしては、セレシンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリエチレンポリプロピレンコポリマー等が挙げられる。
【0011】これら固形状油剤の含有量は、好ましくは5~40%である。また、油ゲル化剤の含有量は、好ましくは0.1~5%である。この範囲内で用いれば使用感が良好で形状保持性にも優れた化粧料を得ることができる。
【0012】本発明の化粧料には、上記した必須成分以外に、他の通常の化粧料に使用される、例えば、スクワラン、流動パラフィン、ヒマシ油、液状ラノリン、シリコーン油、フッ素系油剤等の液状油分、ワセリン、ラノリン等の半固形状油分、体質顔料、有機あるいは無機の着色顔料、白色顔料、パール剤、有機粉末等の粉体成分(これらは、金属石鹸、界面活性剤、シリコーン化合物、フッ素化合物等で表面処理したものでもよい)、有機シリコーン樹脂、有機シリコーンガム、界面活性剤、高分子化合物、ゲル化剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、多価アルコール類、香料、美容成分、塩類、水等を本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択して用いることができる。」
(甲1d)
「【0015】実施例1~6及び比較例1~3 口紅
表1に示す組成の口紅を製造し、使用感並びに強度について評価を行った。
【0016】
【表1】
[図:0001414187000001.jpg]
【0017】(製造方法)
A:成分1~6を105℃に加熱した後、成分7を添加して95℃にて均一に溶解する。
B:Aに成分8~12を添加して混合分散する。
C:Bを容器に充填してスティック状の口紅を得た。
【0018】(評価方法)
1.使用感
粧歴10年以上の女性50名を評価パネルとし、上記口紅を唇に塗布した際の「のび・広がり」、「なめらかさ」並びに「べたつきのなさ」について評価した。各々の使用感が良好であると評価した人数から以下の基準で判定した。
[判定][人数]
◎:41~50人
○:31~40人
△:21~30人
×:11~20人
××:0~10人
【0019】2.強度
上記口紅を30℃の恒温槽にセットし、24時間後に取り出して折れ荷重を測定した。測定は、レオメーターNRM-2002D(不動工業社製)を用いて行い、実施例1及び2は比較例1の折れ荷重値を100とした時の相対値、実施例3及び4は比較例2を100とした時の相対値、実施例5及び6は比較例3を100とした時の相対値で比較評価した。以上の評価方法により得られた結果を表1に併せて示す。
【0020】上記結果から明らかなように、本発明に係わる実施例1~6は、使用感が良好で、且つ、充分な強度を有する口紅であった。それに対し、比較例においては、全ての項目を満足するものは得られなかった。」
(2)甲1に記載された発明
甲1に記載された、請求項1及び5~8の化粧料(甲1a)の具体例である実施例3、実施例4及びその比較例である比較例2(甲1d)からみて、甲1には、次の「甲1発明A」(実施例3)、「甲1発明B」(実施例4)及び「甲1発明C」(比較例2)が記載されていると認める。
甲1発明A:
「次の組成からなる、スティック状の口紅。
(重量%)
パラフィンワックス 15.0
マイクロクリスタリンワックス 5.0
イソオクタン酸セチル 6.0
ワセリン 3.0
ポリイソブチレン 3.0
デカメチルシクロペンタシロキサン 20.0
ウィスカー状炭酸カルシウム(注2) 1.0
着色顔料 2.9
香料 適量
マイカ 残量
(注2)長径:40μm、短径:1.8μm、
かさ:15ml/g、比表面積:1.8m2/g」
甲1発明B:
「次の組成からなる、スティック状の口紅。
(重量%)
パラフィンワックス 15.0
マイクロクリスタリンワックス 5.0
イソオクタン酸セチル 6.0
ワセリン 3.0
ポリイソブチレン 3.0
デカメチルシクロペンタシロキサン 20.0
ウィスカー状炭酸カルシウム(注2) 40.0
着色顔料 2.9
香料 適量
マイカ 残量
(注2)長径:40μm、短径:1.8μm、
かさ:15ml/g、比表面積:1.8m2/g」
甲1発明C:
「次の組成からなる、スティック状の口紅。
(重量%)
パラフィンワックス 15.0
マイクロクリスタリンワックス 5.0
イソオクタン酸セチル 6.0
ワセリン 3.0
ポリイソブチレン 3.0
デカメチルシクロペンタシロキサン 20.0
着色顔料 2.9
香料 適量
マイカ 残量 」
(3)甲1発明Aについて
ア 本件訂正発明1について
(ア)対比
本件訂正発明1と甲1発明Aとを対比する。
a 甲1発明Aにおける「ワセリン」は、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の【0009】に「成分(A-1)の油成分としては、・・・、例えば、ワセリン(57℃)・・・等が挙げられる。」と記載されていることから、本件訂正発明1における「(A-1)融点が30~61℃未満の油成分」に該当する。
また、甲1発明Aにおける「イソオクタン酸セチル」、「ポリイソブチレン」及び「デカメチルシクロペンタシロキサン」は、本件明細書の【0012】に「成分(A)の油成分としては、(A-2)20℃で液状の油成分を含有するのが好ましい。・・・。かかる油成分としては、・・・例えば、・・・ポリイソブチレン、・・・2-エチルヘキサン酸セチル、・・・等のエステル油;・・・ジメチルシクロポリシロキサン、・・・等のシリコーン油・・・などが挙げられる。」と記載されていることから、本件訂正発明1における「(A-2)20℃で液状の油成分」に該当する。
したがって、甲1発明Aにおける「ワセリン」、「イソオクタン酸セチル」、「ポリイソブチレン」及び「デカメチルシクロペンタシロキサン」は、本件訂正発明1における「(A)(A-1)融点が30~61℃未満の油成分、及び(A-2)20℃で液状の油成分からなる油成分」に該当する。
そして、甲1発明Aにおける「ワセリン 3.0(重量%)」は、本件訂正発明1における「(A)油成分として、(A-1)融点が30~61℃未満の油成分を全組成中に0.01~4.5質量%含有する」ことに該当する。
なお、「重量%」と「質量%」は、組成物中の成分の割合を示す数値としては同じ値になることは技術常識である。
b 甲1発明Aにおける「マイカ」は、本件明細書の【0016】に「成分(B)の体質顔料としては、例えば、・・・マイカ・・・等の無機体質顔料・・・が挙げられる。」と記載されていることから、本件訂正発明1における「(B)体質顔料」に該当する。
そして、甲1発明Aのスティック状の口紅は、「香料 適量」を含むところ、口紅では、0.5~2%程度の賦香率であることが技術常識といえるから(例えば、日本化粧品技術者会編、「最新化粧品科学-改訂増補II-」、株式会社薬事日報社、平成4年7月10日、p.412を参照。)、甲1発明Aにおける「マイカ 残量」の量は、42.1~43.6重量%程度と算出され、本件訂正発明1における「20~70質量%」に該当する。
c 甲1発明Aにおける「着色顔料」は、本件訂正発明1における「(C)着色顔料」に該当する。
d 甲1発明Aにおける「パラフィンワックス」及び「マイクロクリスタリンワックス」は、本件明細書の【0026】~【0027】に「成分(D)の油性ゲル化剤としては、・・・例えば、固形のワックス・・・等が挙げられる。・・・固形のワックスとしては、融点が61℃以上のワックスが挙げられる。・・・かかるワックスとしては、・・・例えば、・・・パラフィン、マイクロクリスタリンワックス・・・などが挙げられる。」と記載されていることから、本件訂正発明1における「(D)融点が61℃以上の固形のワックス、金属石鹸、有機変性粘土鉱物、ナノシリカ及びデキストリン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上の油ゲル化剤」に該当する。
e 甲1発明Aにおける「スティック状の口紅」は、本件訂正発明1における「液状口紅」と、「口紅」である点で共通する。
f 甲1発明Aは、さらに「香料」及び特定の粒子径を有する「ウィスカー状炭酸カルシウム」を含むが、本件訂正発明1は、成分(A)~(D)を含有する液状口紅であり、本件明細書の【0040】に「本発明の口唇化粧料は、前記成分のほか、本発明の効果を損なわない範囲で、通常の化粧料に用いられる成分、例えば、・・・香料・・・等を含有することができる。」と記載されているから、この点は、本件訂正発明1との対比において、相違点とはならない。
また、特定の粒子径を有する「ウィスカー状炭酸カルシウム」は、本件明細書の【0016】に「本発明で用いる成分(B)の体質顔料としては、・・・例えば、・・・炭酸カルシウム・・・等の無機体質顔料・・・が挙げられる。」と記載されていることから、本件訂正発明1における「(B)体質顔料」に該当するともいえ、その含有量1.0重量%を42.1~43.6重量%程度のマイカの含有量に加えても、本件訂正発明1における「(B)体質顔料 20~70質量%」の要件を満たす。
g したがって、本件訂正発明1と甲1発明Aとの間には、次の一致点及び相違点1-1及び相違点1-2があるものと認められる。
一致点:
「次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)(A-1)融点が30~61℃未満の油成分、及び(A-2)20℃で液状の油成分からなる油成分、
(B)体質顔料 20~70質量%、
(C)着色顔料、
(D)融点が61℃以上の固形のワックス、金属石鹸、有機変性粘土鉱物、ナノシリカ及びデキストリン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上の油ゲル化剤
を含有し、(A)油成分として、(A-1)融点が30~61℃未満の油成分を全組成中に0.01~4.5質量%含有する口紅。」
相違点1-1:
本件訂正発明1は、成分(D)の油ゲル化剤の含有量が「1~13質量%」であるのに対し、
甲1発明Aは、成分(D)の油ゲル化剤に該当する「パラフィンワックス 15.0(重量%)」及び「マイクロクリスタリンワックス 5.0(重量%)」の合計含有量が「20重量%」である点。
相違点1-2:
本件訂正発明1は、「液状口紅」であるのに対し、
甲1発明Aは、「スティック状の口紅」である点。
(イ)判断
a 取消理由1(甲1に基づく新規性欠如)について
上記(ア)gのとおり、本件訂正発明1と甲1発明Aとは、相違点1-1及び相違点1-2で相違しているところ、相違点1-1は、成分(D)の含有量に係る事項であり、相違点1-2は、口紅の性状に係る事項であるから、いずれの相違点も実質的な相違点である。
したがって、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明ではない。
b 取消理由2(甲1を主引例とする進歩性欠如)について
事案に鑑み、相違点1-2について検討する。
甲1は、特定の粒子径を有するウィスカー状炭酸カルシウム粉末を含有する化粧料、特に油性固型化粧料に関する技術的事項を開示するものであって(甲1a)、口紅等のスティック状化粧料の使用感と強度の課題について、特定の粒子径を有するウィスカー状炭酸カルシウム粉末を必須成分として含有すれば、良好な使用性、使用感を有し、且つ、強度並びに形状保持性に優れた化粧料が得られることを見出したものである(甲1b)。
また、口紅に関しては、「口紅等に代表される、形状がスティック状の油性固型化粧料」(甲1c)との記載があり、甲1発明Aの認定の根拠とした実施例3を含む実施例1~5においては、スティック状の口紅を製造し、それらが、特定の粒子径を有するウィスカー状炭酸カルシウム粉末を配合しない比較例のスティック状の口紅に比べて、使用感が良好で、且つ、充分な強度を有する口紅であったことが示されている(甲1d)。
そして、甲1には、口紅以外の化粧料に関しても、パウダーファンデーションやスティック状ファンデーションなどの油性固型化粧料を製造し、使用感と強度について評価を行った実施例が示されているだけで、液状の化粧料に関する記載は一切ない。
そうすると、甲1に開示された技術的事項から、スティック状の口紅である甲1発明Aについて、液状の口紅とする動機付けがあるとはいえないし、ほかにスティック状の口紅を液状の口紅という全く性状の異なる化粧料に変更する理由も見当たらない。
よって、相違点1-1について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
イ 本件訂正発明2、3、6及び7について
本件訂正発明2、3、6及び7は、いずれも本件訂正発明1の液状口紅の特定事項を全て備え、さらに限定したものである。
すなわち、本件訂正発明2は、本件訂正発明1について「成分(A)の含有量が全組成中に15~75質量%である」と特定したものであり、本件訂正発明3は、本件訂正発明1又は2について「成分(A-1)に対する成分(B)の質量割合(B)/(A-1)が、6~2000である」と特定したものであり、本件訂正発明6は、本件訂正発明1~3について「成分(A-1)に対する成分(D)の質量割合(D)/(A-1)が、0.8~1000である」と特定したものであり、本件訂正発明7は、本件訂正発明1~3又は6について「成分(A)に対する成分(A-1)の質量割合(A-1)/(A)が、0.001~0.10である」と特定したものである。
そうすると、本件訂正発明1の発明特定事項を全て備え、さらに限定した本件訂正発明2、3、6及び7についても、上記ア(イ)で検討したのと同様の理由により、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 甲1発明Aについてのまとめ
よって、本件訂正発明1~3、6及び7は、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(4)甲1発明Bについて
ア 対比・判断
甲1発明Bは、甲1発明Aが、特定の粒子径を有する「ウィスカー状炭酸カルシウム」を「1.0重量%」含有するのに対し、特定の粒子径を有する「ウィスカー状炭酸カルシウム」を「40.0重量%」含有する点で、甲1発明Aと相違し、それに伴い「マイカ 残量」の含有量も3.1~4.6重量%程度と算出され、異なっている。
そうすると、本件訂正発明1と甲1発明Bとの間には、上記(3)ア(ア)で認定した本件訂正発明1と甲1発明Aとの間の相違点1-1及び相違点1-2と同じ相違点に加えて、さらに、次の相違点1-3があるものと認められる。
相違点1-3:
本件訂正発明1は、成分(B)の体質顔料の含有量が「20~70重量%」であるのに対し、
甲1発明Bは、成分(B)の体質顔料に該当する「マイカ」の含有量が「3.1~4.6重量%程度」である点。
したがって、本件訂正発明1~3、6及び7と、甲1発明Bとは、上記の相違点1-1、相違点1-2及び相違点1-3で相違するところ、これらの相違点のうち、相違点1-1及び相違点1-2については、上記(3)ア(イ)aで述べたとおり、いずれも実質的な相違点であり、相違点1-3についても、成分(B)の含有量に係る事項であるから、実質的な相違点である。
また、「マイカ」は、甲1の化粧料における任意成分に過ぎないところ(甲1c)、甲1発明Bにおける「マイカ」の含有量に敢えて着目して、「3.1~4.6重量%程度」から「20~70重量%」へと大幅に増量することを動機付ける根拠も見いだせない。
そうすると、上記(3)ア(イ)b及び上記段落で述べたように、甲1発明Bにおいて、相違点1-2及び相違点1-3に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たものではないから、相違点1-1について検討するまでもなく、本件訂正発明1~3、6及び7は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
なお、特定の粒子径を有する「ウィスカー状炭酸カルシウム」が、本件訂正発明1における「(B)体質顔料」に該当するとしても、甲1発明Bにおける「マイカ」と、特定の粒子径を有する「ウィスカー状炭酸カルシウム」の合計量は、甲1発明Aのそれと同量となるから、上記(3)で甲1発明Aについて検討したことが全て当てはまる。
イ 甲1発明Bについてのまとめ
よって、本件訂正発明1~3、6及び7は、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(5)甲1発明Cについて
ア 対比・判断
甲1発明Cは、特定の粒子径を有する「ウィスカー状炭酸カルシウム」を含有しない点で、甲1発明Aと相違し、それに伴い「マイカ 残量」の含有量も43.1~44.6重量%程度と算出され、異なっているが、その差は1.0重量%に過ぎない。
そうすると、本件訂正発明1と甲1発明Cとの間には、上記(3)ア(ア)gで認定した甲1発明Aとの間の相違点1-1及び相違点1-2と同じ相違点があるものと認められる。
したがって、本件訂正発明1~3、6及び7と、甲1発明Cとは、上記の相違点1-1及び相違点1-2で相違するところ、これらの相違点については、上記(3)ア(イ)aで述べたとおり、いずれも実質的な相違点である。
また、上記(3)ア(イ)bで述べたように、甲1発明Cにおいて、相違点1-2に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たものではないから、相違点1-1について検討するまでもなく、本件訂正発明1~3、6及び7は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
加えて、甲1発明Cは、スティック状の口紅に関する比較例から認定した発明であり、それを液状の口紅に変更しようとする動機付けはない。
なお、特定の粒子径を有する「ウィスカー状炭酸カルシウム」が、本件訂正発明1における「(B)体質顔料」に該当するとしても、甲1発明Cにおける「マイカ」の含有量は、甲1発明Aにおける「マイカ」と特定の粒子径を有する「ウィスカー状炭酸カルシウム」の合計量と同量となるから、上記(3)で甲1発明Aについて検討したことが全て当てはまる。
イ 甲1発明Cについてのまとめ
よって、本件訂正発明1~3、6及び7は、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(6)申立人の主張について
申立人は、甲1を主引例とする進歩性欠如について、特許異議の申立てをしていないが、本件訂正により、成分(D)の含有量が特定され、口唇化粧料が液状口紅に特定されたことに伴い、令和6年5月2日付けの意見書の2~4ページの「3-2 新規性および進歩性について」において意見を述べているので、以下検討する。
申立人は、上記(3)ア(ア)gの相違点1-1及び相違点1-2について、甲1における固形状油剤の好ましい含有量の範囲を示した記載や(甲1c)、実施例1の含有量の記載から(甲1d)、相違点1-1に係る構成である成分(D)の含有量は、甲1に記載されているか、甲1から容易に想到し得たことであり、同様な処方の液状口紅と固形口紅を記載する参考資料1(特許第6309825号公報)を提示して、相違点1-2に係る構成である液状口紅も、甲1に記載されているか、甲1から容易に想到し得たことである旨主張する。
しかしながら、口紅の性状を液状又は固形とするには、それぞれに適切な成分・組成を選択する必要があるところ、参考資料1には、口紅(液状)の実施例1~11と固形口紅の実施例12の記載はあるものの、全く同じ成分及び含有量で液状口紅と固形口紅を調製することについての一般的な記載はないし、口紅(液状)の実施例1~11と固形口紅の実施例12の処方も、全く同じ成分及び含有量のものでもないから、参考資料1を考慮しても、相違点1-2に係る構成である液状口紅を採用することが、当業者が容易になし得たということにはならない。
そして、相違点1-1及び相違点1-2についての判断は、上記(3)ア(イ)で述べたとおりである。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
(7)取消理由1(甲1に基づく新規性欠如)及び取消理由2(甲1を主引例とする進歩性欠如)についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正発明1~3、6及び7に係る特許は、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してされたものではなく、取消理由1(甲1に基づく新規性欠如)及び取消理由2(甲1を主引例とする進歩性欠如)には、理由がない。
2 取消理由3(明確性要件違反)について
本件訂正前の請求項1の記載は、「(A)油成分」及び「(D)油ゲル化剤」を明確に区別することができなかったところ、本件訂正発明1の記載は、「(A)(A-1)融点が30~61℃未満の油成分、及び(A-2)20℃で液状の油成分からなる油成分」及び「(D)融点が61℃以上の固形のワックス、金属石鹸、有機変性粘土鉱物、ナノシリカ及びデキストリン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上の油ゲル化剤」であり、両成分は明確に区別することができるものである。
本件訂正発明2、3、6及び7も同様に明確である。
なお、甲5に、ロウ類などの固形のワックスが油成分に含まれることが記載されているが、融点からみて、本件訂正発明1においては、成分(A)の油成分に、成分(D)の固形のワックスが含まれないことは明らかである。
したがって、本件訂正発明1~3、6及び7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではなく、取消理由3(明確性要件違反)は、解消している。
3 取消理由4(サポート要件違反)及び取消理由5(実施可能要件違反)について
(1)本件訂正発明の解決しようとする課題
本件明細書の記載、特に【0004】~【0005】及び【0007】の記載からみて、本件訂正発明の解決しようとする課題は、
「塗布時にムラづきせず、薄く均一に塗布することができ、きれいなマット感のある仕上がりを得ることができ、間欠使用時においても、容器内での油染みがなく、ムラなく薄く塗布することができ、マット感のある仕上がりが得られる液状口紅」
を提供することにあると認める。
(2)検討
ア 従来技術、解決課題とその解決手段及び効果に関する記載について
本件明細書の【0002】~【0005】及び【0007】には、口紅等の口唇化粧料は、様々な仕上がりや効果が求められているものであるが、特に、体質顔料を多量に含有する場合には、唇に伸び広げて塗布する際に、ムラづきして、不均一になり、きれいなマット感のある仕上がりが得られない、という課題があったところ、特定融点の油成分を特定の割合で含む油成分と、油性ゲル化剤を用いれば、多量の体質顔料を含有していても、塗布時にムラづきせず、薄く均一に塗布することができ、きれいなマット感のある仕上がりの口唇化粧料が得られることができ、間欠使用時においても、容器内での油染みがなく、ムラなく薄く塗布することができ、マット感のある仕上がりが得られる液状口紅を提供できることが記載されている。
イ 実施例以外の一般記載について
本件明細書の【0008】~【0042】において、成分(A)の(A-1)融点が30~61℃未満の油成分及び(A-2)20℃で液状の油成分、成分(B)の体質顔料、成分(C)の着色顔料、並びに成分(D)の油ゲル化剤それぞれについて、具体例が記載され、また、各成分それぞれの含有量、成分(A)に対する成分(A-1)の質量割合、成分(A-1)に対する成分(B)の質量割合、成分(A-1)に対する成分(D)の質量割合について、塗布性、マット感、口紅の適度な硬さや油の染み出し抑制などの観点と関連した好ましい範囲が記載され、ほかに配合できる成分や、液状口紅を収納する塗布用具及びそれで取り出す容器などについて記載されている。
ウ 実施例の記載について
本件明細書の【0043】~【0055】において、実施例として液状口紅の組成及び製造方法が具体的に記載されており、得られた液状口紅について、各液状口紅を唇に塗布したとき、塗布時に薄く塗布できる、塗布時にムラなく塗布できる、初期使用時のマットな仕上がり、間欠使用時(上腕部に塗布してボトルに戻す動作を5回繰り返してから、25℃で2週間静置した後)の塗布時に薄く塗布できる、間欠使用時の塗布時にムラなく塗布できる、間欠使用時のマットな仕上がり及び間欠使用時の容器内での油染みのなさ(容器を傾けて目視評価後、更に塗布具及びしごきを外して容器内を目視評価)を評価した記載がある。
そして、成分(A-1)の含有量、成分(A)に対する成分(A-1)の質量割合、成分(A-1)に対する成分(B)の質量割合又は成分(A-1)に対する成分(D)の質量割合の条件を満たさない比較例1~2の液状口紅に比べて、本件訂正発明1~3、6及び7の発明特定事項を全て備えた実施例1~5、7及び8の液状口紅が、優れた効果を奏することが具体的に示されている。
エ 取消理由4(サポート要件違反)について
上記ア~ウの実施例を含めた本件明細書の発明の詳細な説明の記載全体を考慮すれば、本件訂正発明の液状口紅とすることによって、上記(1)の本件訂正発明の課題を解決できることを当業者は理解できるといえる。
したがって、本件訂正発明1~3、6及び7は、本件明細書の発明の詳細な説明において、その課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲のものであるから、本件特許の請求項1~3、6及び7の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。
オ 取消理由5(実施可能要件違反)について
上記ア~ウの実施例を含めた本件明細書の発明の詳細な説明の記載全体を考慮すれば、本件訂正発明の液状口紅を製造し使用できることを当業者は理解できるといえる。
したがって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件訂正発明1~3、6及び7の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものである。
カ 申立人の主張について
申立人は、本件訂正により、口唇化粧料が液状口紅に特定されたことに伴い、令和6年5月2日付けの意見書の4~5ページの「3-4 実施可能要件及びサポート要件について」において、意見を述べているので検討する。
申立人の主張は、
(i)「液状口紅」という文言は、実施例に関連する部分にしか記載されていないこと、及び
(ii)本件明細書の「実施例3」、特許権者が本件特許の審査において提出した意見書(参考資料2)に記載された「比較例A」、甲1の実施例1である「甲1発明D」及び甲3の実施例3である「甲3発明」の各処方について、本件訂正発明1の成分(A)~(D)に該当する成分の含有量を比較すると、「実施例3」と「比較例A」とは、成分(A-1)であるワセリンの含有量が1質量%相違しているがいずれも液状口紅であるのに対し、ワセリンの含有量が「比較例A」と同一であり、ほかの成分の含有量は本件訂正発明の条件を満たす「甲1発明D」及び「甲3発明」は固形口紅であり、また、口紅を固形とするのに寄与することが周知(参考資料1)の固形ワックスの含有量が「実施例3」及び「比較例A」より少ない「甲1発明D」が固形となっていることから、
本件訂正発明1~3、6及び7の液状口紅は、サポート要件及び実施可能要件を満たさないというものと認められる。
しかしながら、(i)については、上記イでも述べたとおり、本件明細書には、実施例以外にも液状口紅に関して記載されているといえる。
また、(ii)については、「甲1発明D」は、上記1(3)ア(イ)bで述べたとおり、特定の粒子径を有するウィスカー状炭酸カルシウム粉末を含有することで強度及び形状保持性に優れた油性固型化粧料としたものである上、ワセリンや固形ワックスの含有量を調整することのみで固形口紅としたものではない。また、甲3の【0004】に「油性固型化粧料において特定成分を特定量配合することにより、外観色が白くならず、塗布膜の仕上がりは自然なマット感が得られ、使用性、充填成型性に優れる油性固型化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、成分(A)低融点ワックス5~25重量%(以下、単に「%」で示す。)、成分(B)板状粉体10~50%と成分(C)球状粉体5~25%とを含有することを特徴とする油性固型化粧料に関するものである。」と記載されているとおり、「甲3発明」も、甲3に開示される技術的事項を採用することによって固形口紅としたものといえる。
したがって、「甲1発明D」及び「甲3発明」が、本件訂正発明と類似した処方を有しているが、その性状が固形の口紅であるとしても、口紅の性状には、本件訂正発明が特定していない成分やそれらの含有量も影響することから、本件訂正発明1~3、6及び7について、特許請求の範囲の記載及び本件明細書の発明の詳細な説明の記載が、サポート要件及び実施可能要件を満たさないことの根拠とはならない。
そして、本件特許の請求項1~3、6及び7の記載及び本件明細書の発明の詳細な説明の記載がサポート要件及び実施可能要件を満たすことは、上記エ及びオで述べたとおりである。
よって、申立人の上記主張はいずれも採用できない。
(3)取消理由4(サポート要件違反)及び取消理由5(実施可能要件違反)についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正発明1~3、6及び7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号又は同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願にされたものではなく、取消理由4(サポート要件違反)及び取消理由5(実施可能要件違反)は、解消している。
4 取消理由で採用しなかった申立理由について
申立理由2(甲2を主引例とする進歩性欠如)について検討する。
(1)甲2に記載された事項
(甲2a)
「【請求項1】
次の成分(a)~(d);
(a)一次粒子の厚みが0.001~0.1μm、比表面積当たりのシラノール基(SiOH)が20~70μmol/m2である鱗片状シリカを構成要素として形成された、平均粒子径が1~50μmであり、易崩壊性である造粒シリカ粒子
(b)固形油又は油ゲル化剤から選ばれる1種又は2種以上の油剤
(c)炭酸ジアルキル
を配合することを特徴とする油性化粧料。
・・・
【請求項4】
前記成分(a)の造粒シリカ粒子が、造粒シリカ粒子中に水不溶性成分又は水溶性成分から選ばれる1種又は2種以上を内包せしめた複合粉体であることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の油性化粧料。
・・・
【請求項10】
前記成分(b)の油ゲル化剤がデキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、イヌリン脂肪酸エステル、12-ヒドロキシステアリン酸、金属石鹸、煙霧状無水ケイ酸、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル、有機変性粘土鉱物から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1~9の何れかに記載の油性化粧料。
【請求項11】
前記成分(b)の油ゲル化剤がデキストリン脂肪酸エステルであることを特徴とする請求項1~10の何れかに記載の油性化粧料。
【請求項12】
さらに、成分(d)高粘度油剤を配合することを特徴とする請求項1~11の何れかに記載の油性化粧料。
【請求項13】
前記成分(d)の高粘度油剤がポリイソブチレン、ポリブテン、重質流動イソパラフィン、α-オレフィンオリゴマー、リンゴ酸ジイソステアリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、デカイソステアリン酸ポリグリセリル、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビスイソステアリル、酢酸液状ラノリン、高重合度ジメチルポリシロキサン、高重合メチルフェニルポリシロキサン、フッ素変性オルガノポリシロキサン、パーフルオロポリエーテルから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1~12の何れかに記載の油性化粧料。」
(甲2b)
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、塗布膜のツヤや付着性に優れ、べたつきが少なく伸び広がりが軽く油っぽさのない使用感が得られるとともに使用部位へのなじみが良く、負担感のない油性化粧料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる実情において、本発明者は上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の平均粒子径と圧縮強度を有する造粒シリカ粒子と、固形油又は油ゲル化剤から選ばれる1種又は2種以上の油剤と、炭酸ジアルキルとを組み合わせて配合することにより、塗布膜のツヤや付着性に優れ、べたつきが少なく伸び広がりが軽く油っぽさのない使用感が得られるとともに使用部位へのなじみが良く、負担感のない油性化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。」
(甲2c)
「【0034】
本発明で用いられる成分(b)の固形油又は油ゲル化剤から選ばれる1種又は2種以上の油剤としては、通常化粧料に用いられるもので、油性成分を固化ないしゲル化できるものであれば特に限定されず、固形状、ペースト状等の化粧料の性状に応じて、適宜選択して配合することができる。・・・
【0035】
リップスティックやスティックファンデーションのような固形状の油性化粧料には、固形油を用いることが好ましく、この中でも、炭化水素ワックスが好ましく、・・・、ポリエチレンワックス、・・・等が挙げられ・・・
・・・
【0037】
また、リキッドルージュやリキッドアイシャドウのようなペースト状の油性化粧料には、油ゲル化剤を用いることが好ましく・・・
・・・具体例としては・・・、ミリスチン酸デキストリン、・・・等が挙げられ・・・
ショ糖脂肪酸エステルとしては、・・・ベヘン酸、オレイン酸、及びラウリン酸等の脂肪酸エステルが好ましい。
・・・
【0039】
本発明に用いられる成分(c)の炭酸ジアルキルは、次式(1)で示されるものが挙げられる。
O=C(ORa)ORb ・・・(1)
上記式中、Ra及びRbは、直鎖又は分岐鎖の炭化水素残基である。成分(a)の効果をより向上させる点において、その炭素数はそれぞれ同じでも異なってもよく、8~25が好ましく、10~22がさらに好ましく、特に、14と15が好ましい。
・・・
市販品としては、例えば、LIALCARB SR-1000/R(三井化学ファイン社製)等が挙げられる。
・・・
【0040】
本発明において、さらに成分(d)高粘度油剤を配合することにより、塗布膜のツヤと付着性が著しく向上し、成分(a)~成分(c)と組み合わせることで、成分(d)の効果を充分に引き出す反面、べたつきや伸び広がりの悪さを抑えることができる。
本発明に用いられる成分(d)の高粘度油剤は、・・・。・・・例えば、・・・ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)、・・・等が挙げられ・・・」
(甲2d)
「【0046】
本発明において油性化粧料としては、メイクアップ化粧料、スキンケア化粧料、頭髪化粧料が挙げられ、具体的に例えばメイクアップ化粧料としては、口紅、グロス、リップトリートメント、リップクリーム、リップ下地、アイカラー、チーク、ファンデーション、ファンデーション下地、マスカラが挙げられる。好ましくは口唇化粧料である口紅、グロス、リップトリートメント、リップクリーム、リップ下地が挙げられ、その中でも特にグロス、口紅であることが好ましい。剤形は固形状、ペースト状、液状等に適用できるが、ペースト状、液状において特に塗布膜のツヤや付着性、及び伸び広がりの軽さが発揮される。」
(甲2e)
「【実施例】
【0048】
(製造例1)
スクワラン内包複合粉体
シラノール基密度が60μmol/m2である鱗片状シリカの15%濃度水性溶媒コロイド懸濁物(サンラブリー-LFS-C;旭硝子エスアイテック社製)70質量部に、スクワラン(植物性)30質量部をデスパーミルにて分散させ、スラリーとした。このものを噴霧装置としてディスク式アトマイザーを持つスプレードライヤー(L-8型;大川原化工機社製)を用い、アトマイザー回転数30000rpm、流量50ml/min、入口温度設定200℃、出口温度設定135~140℃の条件で噴霧乾燥した。
【0049】
得られた複合粉体のスクワラン内包率を強熱減量から測定したところ、62%であった。また、得られた複合粉体の圧縮強度を微小圧縮試験機により測定したところ、0.36MPaであった。更にレーザー型乾式粒度分布測定装置(セイシン企業社製PRO7000S)により複合粉体の平均粒子径を測定したところ、22μmであった。
・・・
【0054】
(実施例1~8及び比較例1~3)液状グロス
表1に示す処方及び下記に示す製造方法により、液状グロスを製造した。得られた各液状グロスについて、官能評価により、塗布膜のツヤ、付着性、べたつきのなさ、伸び広がりの軽さ、負担感のなさを評価した。
【0055】
【表1】
[図:0001414187000002.jpg]
【0056】
*1:製造例1に示すスクワラン内包複合粉体
*2:製造例2に示す造粒シリカ粒子
*3:サンスフェアL-51-c(旭硝子エスアイテック社製)
*4:レオパールKL2(千葉製粉社製)
*5:レオパールTT2(千葉製粉社製)
*6:精製ポリブテンHV-100F(SB)(日本ナチュラルプロダクツ社製)
*7:LIALCARB SR-1000/R(三井化学ファイン社製)
*8:KLEAROL(SONNEBORN,INC社製)
*9:AEROSIL 380S(日本アエロジル社製)
・・・
【0066】
実施例17:固形状アイカラー
(成分) (%)
1.ポリエチレンワックス 10
2.ロジン酸ペンタエリスリット 5.5
3.ラウリン酸デキストリン 2
4.ミリスチン酸デキストリン 5
5.ベヘニン酸デキストリン 5
6.炭酸ジアルキル*7 0.1
7.トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル 20
8.流動パラフィン*8 残量
9.ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/
フィトステリル/ベヘニル) 3
10.無水ケイ酸*9 6
11.ナイロン末*12 10
12.スクワラン内包シリカ*1 10
13.シリコーン処理タルク*13 5.5
14.赤色202号 0.05
15.黄色4号アルミニウムレーキ 0.05
16.青色1号アルミニウムレーキ 0.05
17.雲母チタン 1.5
18.防腐剤(パラオキシ安息香酸メチル) 適量
19.香料 適量
*12:ナイロン粉末 SP-500(東レ社製)
*13:ジメチルポリシロキサン5%処理
(製造方法)
A:成分1~9を110℃で溶解混合する。
B:Aに成分10~19を加え、均一に混合分散する。
C:Bを容器に流し込み、冷却固化してアイカラーを得た。
実施例17のアイカラーは、塗布膜のツヤや付着性に優れると共に、べたつきが少なく伸び広がりが軽く、油っぽさのない使用感に優れるとともにまぶたへのなじみが良く、負担感のないアイカラーであった。」
(2)甲2に記載された発明
甲2に記載された、請求項1の油性化粧料(甲2a)の具体例である、実施例17の固形状アイカラー(甲2e)からみて、甲2には、次の「甲2発明」が記載されていると認める。
なお、実施例17における「(%)」は、甲2の【0009】に「・・・質量%(以下、単に「%」とする。)」と記載されていることから、「質量%」のことである。
甲2発明:
「次の組成からなる、固形状アイカラー。
(質量%)
ポリエチレンワックス 10
ロジン酸ペンタエリスリット 5.5
ラウリン酸デキストリン 2
ミリスチン酸デキストリン 5
ベヘニン酸デキストリン 5
炭酸ジアルキル*7 0.1
トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル 20
流動パラフィン*8 残量
ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/
フィトステリル/ベヘニル) 3
無水ケイ酸*9 6
ナイロン末*12 10
スクワラン内包シリカ*1 10
シリコーン処理タルク*13 5.5
赤色202号 0.05
黄色4号アルミニウムレーキ 0.05
青色1号アルミニウムレーキ 0.05
雲母チタン 1.5
防腐剤(パラオキシ安息香酸メチル) 適量
香料 適量
*1:製造例1に示すスクワラン内包複合粉体
*7:LIALCARB SR-1000/R(三井化学ファイン社製)
*8:KLEAROL(SONNEBORN,INC社製)
*9:AEROSIL 380S(日本アエロジル社製)
*12:ナイロン粉末 SP-500(東レ社製)
*13:ジメチルポリシロキサン5%処理」
(3)本件訂正発明1について
ア 対比
本件訂正発明1と甲2発明とを対比する。
(ア)甲2発明における「ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル」は本件明細書の【0009】に「成分(A-1)の油成分としては、・・・ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)(33℃)・・・等が挙げられる」。」と記載されていることから、本件訂正発明1における「(A-1)融点が30~61℃未満の油成分」に該当する。
また、甲2発明における「炭酸ジアルキル*7」、「*7:LIALCARB SR-1000/R(三井化学ファイン社製)」は、炭素数14~15のジエステルである液状の油性基剤であり(甲2c)(必要ならば、化粧品成分オンライン<https://cosmetic-ingredients.org/base/11456/>を参照。)、「トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル」及び「流動パラフィン」は、本件明細書の【0012】に「(A-2)・・・としては、・・・流動パラフィン、・・・トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル」と記載されていることから、いずれも本件訂正発明1における「(A-2)20℃で液状の油成分」に該当する。
したがって、甲2発明における「ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル」、「炭酸ジアルキル」、「トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル」及び「流動パラフィン」は、本件訂正発明1における「(A)(A-1)融点が30~61℃未満の油成分、及び(A-2)20℃で液状の油成分からなる油成分」に該当する。
そして、甲2発明における「ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル 3(質量%)」は、本件訂正発明1における「(A)油成分として、(A-1)融点が30~61℃未満の油成分を全組成中に0.01~4.5質量%含有する」ことに該当する。
(イ)甲2発明における「無水ケイ酸 6(質量%)」、「ナイロン末 10(質量%)」、「スクワラン内包シリカ 10(質量%)」及び「シリコーン処理タルク 5.5(質量%)」は、本件明細書の【0016】に「成分(B)の体質顔料としては、・・・シリカ、・・・タルク、・・・ナイロン」と記載され、【0018】に「成分(B)の体質顔料は、そのまま使用することができ、疎水化処理、親水化処理して用いることもできる。」と記載されていることから、本件訂正発明1における「(B)体質顔料」に該当し、その合計含有量は31.5質量%(6+10+10+5.5)であるから「20~70質量%」に該当する。
(ウ)甲2発明における「赤色202号」、「黄色4号アルミニウムレーキ」、「青色1号アルミニウムレーキ」及び「雲母チタン」は、本件明細書の【0023】~【0024】に「成分(C)の着色顔料としては、・・・赤色202号、・・・黄色4号、・・・青色1号、・・・マイカ・・・の表面を酸化チタン・・・で被覆したもの」と記載されていることから、本件訂正発明1における「(C)着色顔料」に該当する。
(エ)甲2発明における「ポリエチレンワックス」、「ラウリン酸デキストリン」、「ミリスチン酸デキストリン」及び「ベヘニン酸デキストリン」は、本件明細書の【0026】~【0027】に「成分(D)の油性ゲル化剤としては、・・・例えば、固形のワックス、・・・デキストリン脂肪酸エステル等が挙げられる。・・・固形のワックスとしては、融点が61℃以上のワックスが挙げられる。・・・かかるワックスとしては、・・・例えば、・・・ポリエチレンワックス・・・などが挙げられる。」と記載され、【0036】に「デキストリン脂肪酸エステルとしては、・・・ミリスチン酸デキストリン・・・等が挙げられる。」と記載されていることから、本件訂正発明1における「(D)融点が61℃以上の固形のワックス、金属石鹸、有機変性粘土鉱物、ナノシリカ及びデキストリン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上の油ゲル化剤」に該当する。
(オ)甲2発明における「固形状アイカラー」は、本件訂正発明1における「液状口紅」と、「化粧料」である点で共通する。
(カ)甲2発明は、さらに「ロジン酸ペンタエリスリット」、「防腐剤(パラオキシ安息香酸メチル)」及び「香料」を含むが、本件訂正発明1は、成分(A)~(D)を含有する液状口紅であり、本件明細書の【0040】に「本発明の口唇化粧料は、前記成分のほか、本発明の効果を損なわない範囲で、通常の化粧料に用いられる成分、例えば、・・・酸化防止剤、香料、・・・防汚剤、・・・等を含有することができる。」と記載されているから、この点は、本件訂正発明1との対比において、相違点とはならない。
なお、「ロジン酸ペンタエリスリット」は、甲4に「マツ科植物から得られる樹脂酸・モノテルペン酸の一種であるロジン酸(シトロネル酸)と多価アルコールの一種であるペンタエリスリトールのエステルで、薄黄色から薄褐色の透明ガラス状の原料である。ネイルエナメルや口紅のベースに配合して光沢や密着性を与える目的で用いられる。」と記載されていることから、本件訂正発明1の成分(A)及び成分(D)には該当しないが、通常の化粧料に用いられる成分に該当するものといえる。
(キ)したがって、本件訂正発明1と甲2発明との間には、次の一致点及び相違点2-1及び相違点2-2があるものと認められる。
一致点:
「次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)(A-1)融点が30~61℃未満の油成分、及び(A-2)20℃で液状の油成分からなる油成分、
(B)体質顔料 20~70質量%、
(C)着色顔料、
(D)融点が61℃以上の固形のワックス、金属石鹸、有機変性粘土鉱物、ナノシリカ及びデキストリン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上の油ゲル化剤
を含有し、(A)油成分として、(A-1)融点が30~61℃未満の油成分を全組成中に0.01~4.5質量%含有する化粧料。」
相違点2-1:
本件訂正発明1は、成分(D)の油ゲル化剤の含有量が「1~13質量%」であるのに対し、
甲2発明は、成分(D)の油ゲル化剤に該当する「ポリエチレンワックス 10(質量%)」、「ラウリン酸デキストリン 2(質量%)」、「ミリスチン酸デキストリン 5(質量%)」及び「ベヘニン酸デキストリン 5(質量%)」の合計含有量が「22質量%」である点。
相違点2-2:
本件訂正発明1は、「液状口紅」であるのに対し、
甲2発明は、「固形状アイカラー」である点。
イ 判断
相違点2-1及び相違点2-2は、関連するので、まとめて検討する。
甲2は、特定の平均粒子径を有する易崩壊性である造粒シリカ粒子と、固形油又は油ゲル化剤から選ばれる1種又は2種以上の油剤と、炭酸ジアルキルとを配合する油性化粧料に関する技術的事項を開示するものであって(甲2a)、そのような油性化粧料とすることにより、塗布膜のツヤや付着性に優れ、べたつきが少なく伸び広がりが軽く油っぽさのない使用感が得られるとともに使用部位へのなじみが良く、負担感のない油性化粧料が得られることを見出したものである(甲2b)。
そして、油性化粧料としては、甲2発明を認定した実施例17の固形状アイカラーのほか、口紅、グロスが例示され、剤型も固形状、液状等に適用できることが記載されており(甲2d)、実施例においても、例えば実施例1~8では、着色顔料を含有する液状グロスを製造したことが示されている(甲2e)。
しかしながら、実施例1~8の液状グロスは、いずれも本件訂正発明1の成分(A-1)に該当する成分を含有していない。
そうすると、甲2に開示された技術的事項から、処方が示されている液状グロスではなく、たまたま、本件訂正発明1と、成分(D)の含有量のみが異なる固形状アイカラーについて、甲2の課題を解決するための成分の1つである固形油又は油ゲル化剤から選ばれる1種又は2種以上の油剤についてのみ着目し、その含有量を変更するとともに、化粧料として全く異なる液状口紅とする動機付けがあるとはいえないし、油性固型化粧料に関する技術的事項を開示する甲3(請求項1を参照。)における、固形の口紅の処方を示した実施例1~5の記載事項を考慮しても、固形状アイカラーを化粧料として全く異なる液状口紅に変更する理由も見当たらない。
よって、本件訂正発明1は、甲2に記載された発明及び甲3~4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件訂正発明2、3、6及び7について
本件訂正発明2、3、6及び7は、いずれも本件訂正発明1の液状口紅の特定事項を全て備え、さらに限定したものである。
すなわち、上記1(3)イで説示したとおりである。
そうすると、本件訂正発明1の発明特定事項を全て備え、さらに限定した本件訂正発明2、3、6及び7についても、上記(3)イで検討したのと同様の理由により、甲2に記載された発明及び甲3~4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)申立理由2(甲2を主引例とする進歩性欠如)についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正発明1~3、6及び7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、申立理由2(甲2を主引例とする進歩性欠如)には、理由がない。
第6 むすび
以上のとおり、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。
そして、取消理由通知書に記載した取消理由及び証拠、並びに、申立人の特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~3、6及び7に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに請求項1~3、6及び7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件訂正により、請求項4、5及び8は削除されたため、申立人の請求項4、5及び8に係る特許に対する特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しないものとなったので、請求項4、5及び8に係る特許についての特許異議の申立ては不適法であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8において準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701004