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特許異議申立

2023-700989

化学修飾された一本鎖RNA編集オリゴヌクレオチド

審判番号
2023-700989
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-511856外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
7244922
請求日
2023年09月20日
審決日
2024年01月31日
公報発行日
2024年03月29日
結論
維持
審判長/審判官
分類
P1651.113-Y (C12N) / P1651.121-Y (C12N) / P1651.536-Y (C12N) / P1651.537-Y (C12N)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7244922号発明「化学修飾された一本鎖RNA編集オリゴヌクレオチド」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7244922号の請求項1~26に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7244922号の請求項1~26に係る特許についての出願は、平成29年8月31日(パリ条約による優先権主張 2016年9月1日、2016年9月27日、2016年12月16日、2017年2月24日、2017年5月10日 いずれも(GB)英国(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国))を国際出願日とする出願であって、令和5年3月14日にその特許権の設定登録がされ、同年3月23日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1~26に係る特許について、同年9月20日に特許異議申立人 吉川 雅也により特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 特許第7244922号の請求項1~26の特許に係る発明(以下、「本件発明1~26」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~26に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 細胞内の標的RNA配列と二本鎖複合体を形成することができるアンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)を含む、細胞内に存在するADAR酵素による標的RNA配列中の標的アデノシンの脱アミノ化のための組成物であって、前記AONは、3つの連続したヌクレオチドのセントラルトリプレットを含み、前記標的アデノシンの真向かいのヌクレオチドは、セントラルトリプレットの中央のヌクレオチドであり、前記セントラルトリプレット中の1、2または3個のヌクレオチドは糖修飾および/または塩基修飾を含み、前記AONをより安定に、および/または、標的アデノシンの脱アミノ化の誘導をより効果的にし、ただし中央のヌクレオチドは2’-O-メチル修飾を有さず、哺乳動物のADAR酵素に結合できる分子内ステム-ループ構造を形成できる部分を含まない、組成物。 【請求項2】 前記細胞がヒト細胞である、請求項1に記載の組成物。 【請求項3】 前記セントラルトリプレットの2または3個のヌクレオチドが、2’-O-メチル修飾を有しない、請求項1または2に記載の組成物。 【請求項4】 前記セントラルトリプレットの2または3個のヌクレオチドが2’-O-アルキル修飾を有しない、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。 【請求項5】 前記セントラルトリプレットの1または2個のヌクレオチドが、イノシンで置換されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。 【請求項6】 前記セントラルトリプレットにおける中央のヌクレオチド以外の1または2個のヌクレオチドがイノシンで置換されている、請求項5に記載の組成物。 【請求項7】 前記糖修飾が、デオキシリボース(DNA)、アンロック核酸(UNA)および2’-フルオロリボースからなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。 【請求項8】 前記AONが、ホスホロチオエート、3’-メチレンホスホネート、5’-メチレンホスホネート、3’-ホスホロアミデートおよび2’-5’ホスホジエステルからなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオシド間連結修飾を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。 【請求項9】 前記AONの5’および3’末端の2、3、4、5、または6個の末端ヌクレオチドが、ホスホロチオエート連結で連結している、請求項8に記載の組成物。 【請求項10】 前記AONの前記5’および3’末端の5個の末端ヌクレオチドが、ホスホロチオエート連結で連結している、および/またはロックド核酸(LNA)を含む、請求項8に記載の組成物。 【請求項11】 前記塩基修飾が、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、3-デアザアデノシン、7-デアザアデノシン、7-メチルアデノシン、8-アジドアデノシン、8-メチルアデノシン、5-ヒドロキシメチルシトシン、5-メチルシチジン、ピロロシチジン、7-アミノメチル-7-デアザグアノシン、7-デアザグアノシン、7-メチルグアノシン、8-アザ-7-デアザグアノシン、チエノグアノシン、イノシン、4-チオ-ウリジン、5-メトキシウリジン、ジヒドロウリジン、およびシュードウリジンからなる群から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。 【請求項12】 前記セントラルトリプレットの中央のヌクレオチドが、シチジンまたはウリジンである、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。 【請求項13】 前記AON中の前記セントラルトリプレットの外側の1つまたは複数のヌクレオチドが、DNA、2’-O-メチル基などの2’-O-アルキル基、2’-O-MOE基、2’-F基、2’-NH2基、およびLNA;またはそれらの組み合わせからなる群から選択される修飾を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。 【請求項14】 前記AONが10、11、12、13、14、15、16または17ヌクレオチドより長く、前記AONが100ヌクレオチドよりも短い、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。 【請求項15】 前記AONが60ヌクレオチドよりも短い、請求項14に記載の組成物。 【請求項16】 前記AONが18~70ヌクレオチドを含む、請求項14に記載の組成物。 【請求項17】 前記AONが18~60ヌクレオチドを含む、請求項14に記載の組成物。 【請求項18】 前記AONが18~50ヌクレオチドを含む、請求項14に記載の組成物。 【請求項19】 前記標的RNA配列が、CFTR、CEP290、アルファ1-抗トリプシン(A1AT)、グアニンヌクレオチド結合タンパク質(GNAQ)、もしくはLRRK2をコードするか、または前記標的RNAがIDUA遺伝子によってコードされる、請求項1~18のいずれか一項に記載の組成物。 【請求項20】 前記標的RNA配列が、c.1096G>A変異を有するA1ATをコードするか、または 前記標的RNAが、c.1205G>A(W402X)変異を有するIDUA遺伝子によってコードされる、 請求項19に記載の組成物。 【請求項21】 請求項1~20のいずれか一項に記載の組成物であって、医薬的に許容される担体を含み、医薬組成物である、組成物。 【請求項22】 細胞内の標的RNA配列に存在する少なくとも1つの特定の標的アデノシンの脱アミノ化のためのインビトロの方法であって: (i)請求項1~20のいずれか一項に記載の組成物を前記細胞に提供するステップ; (ii)前記組成物中の前記AONを前記細胞に取り込ませるステップ; (iii)前記AONを前記標的RNA配列にアニーリングさせるステップ;および (iv)野生型酵素に見出されるような天然dsRNA結合ドメインを含む哺乳動物のADAR酵素により、前記標的RNA配列中の前記標的アデノシンをイノシンに脱アミノ化させるステップ を含む、方法。 【請求項23】 (v)前記RNA配列中の前記イノシンの存在を同定するステップをさらに含む、請求項22に記載の方法。 【請求項24】 前記ステップ(v)が: a)前記標的RNA配列を配列決定するステップ; b)脱アミノ化によってUGGコドンに編集されたUGAまたはUAG終止コドン内に前記標的アデノシンが位置する場合、機能的な、伸長した、全長のおよび/または野生型のタンパク質の存在を評価するステップ; c)両方の標的アデノシンの脱アミノ化によってUGGコドンに編集されたUAA終止コドン内に2つの標的アデノシンが位置する場合、機能的な、伸長した、全長のおよび/または野生型のタンパク質の存在を評価するステップ; d)プレmRNAのスプライシングが脱アミノ化によって変化したか否かを評価するステップ;または e)機能的読み出しを使用するステップであって、ここで前記脱アミノ化後の前記標的RNAが、機能的な、全長の、伸長したおよび/または野生型のタンパク質をコードする、ステップ を含む、請求項23に記載の方法。 【請求項25】 前記標的RNA配列が、CFTR、CEP290、アルファ1-抗トリプシン(A1AT)、グアニンヌクレオチド結合タンパク質(GNAQ)、もしくはLRRK2をコードするか、または前記標的RNAが、IDUA遺伝子によってコードされる、請求項22~24のいずれか一項に記載の方法。 【請求項26】 前記標的RNA配列が、c.1096G>A変異を有するA1ATをコードするか、または 前記標的RNAが、c.1205G>A(W402X)変異を有するIDUA遺伝子によってコードされる、請求項25に記載の方法。」 第3 申立理由の概要及び証拠方法 特許異議申立人が、本件の請求項1~26に係る特許に対して申し立てた特許異議申立理由の概要及び証拠方法は、次のとおりである。 1 申立理由の概要 (1)理由1:特許法第29条第1項第3号(甲第1号証を主引用例とする新規性欠如) 本件発明1~5、14~18、22は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、本件発明1~5、14~18、22に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。 (2)理由2:特許法第29条第2項(甲第1号証を主引用例とする進歩性欠如) 本件発明1~26は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~5号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1~26に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。 (3)理由3、4:特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号 本件発明のAON中のセントラルトリプレットは、1、2または3個のヌクレオチドに糖修飾および/または塩基修飾を含むことを規定しているが、どのような糖修飾および/または塩基修飾をどの位置に用いれば、AONをより安定に、および/または、標的アデノシンの脱アミノ化の誘導をより効果的にできるのか不明であり、任意の修飾ヌクレオシドを任意の位置、組み合わせで使用することは、本件明細書にサポートがなく、当業者といえども実施することは不可能である。 よって、本件発明の詳細な説明は、当業者が、本件発明1~26の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。 したがって、本件発明の詳細な説明は、本件発明1~26について、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件発明1~26に係る特許は、同法第113条第4号の規定により取り消すべきものである。 また、本件発明1~26は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。 したがって、本件発明1~26は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件発明1~26に係る特許は、同法第113条第4号の規定により取り消すべきものである。 2 証拠方法 (1)甲第1号証:Angew.Chem.Int.Ed.(2014)Vol.53,p.6267-6271 (2)甲第2号証:Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1995)Vol.92,p.8298-8302 (3)甲第3号証:米国特許第9650627号明細書 (4)甲第4号証:Genes Cells(2015)Vol.20,No.10,p.834-846 (5)甲第5号証:国際公開第2016/097212号 第4 甲号証の記載 甲第1号証~甲第5号証には、以下の事項が記載されている(英語で記載されている証拠は、日本語訳で摘記する。下線は合議体による。)。 1 甲第1号証:Angew.Chem.Int.Ed.(2014)Vol.53,p.6267-6271 (甲1-1)「RNA編集を指示するために、我々は、タンパク質誘導ヒトADAR1(RNAに作用するアデノシンデアミナーゼ)を、そのC末端触媒ドメインをSNAPタグに融合させることにより、ガイドRNA依存性酵素に設計した(スキーム1)[2]。SNAPタグ[3]により、5’末端にO6-ベンジルグアニン(BG)修飾を有するガイドRNAとの完全に1対1に規定されたコンジュゲートの形成が可能になる。」(第6267頁左欄下から第13行~第7行) (甲1-2)「2’-O-メチル、2’-O-フッ素、LNAなどの様々な修飾が報告されている。」(第6268頁左欄第16行~第18行) (甲1-3)「BG-ガイドRNA依存のA-to-I RNA編集における2’-O-メチル基の受け入れを試験するために、我々は、我々の最適化された17ntガイドRNAを使用して、in vitroアッセイ[2]において、ナンセンスStop66 eCFPmRNAに対する、そのような修飾の影響を体系的に研究した。予想されるように、eCFPmRNA基質の編集は、標的アデノシンの反対塩基を中心として3つの2’-メトキシ基を有するガイドRNAを含むタンパク質-RNAコンジュゲートによって完全に阻害された(図1B対1A)。高密度に修飾された核酸類似体がRNA編集を阻害することは、以前に示されていた[16]。しかし、標的アデノシンの反対塩基のみを1つの2’-メトキシ基で修飾すると、完全ではなく、およそ50%の阻害が得られた(図1C)。とりわけ、当該反対塩基から1ヌクレオチド上流または下流の単一の修飾は、全体的な編集収量にほとんど影響を与えないが、ごくわずかしか影響を与えなかった(図1D、E)。したがって、完全な阻害は、いくつかの近接した2’修飾の協調的な作用によってのみ達成できる。」(第6268頁左欄第27行~第44行) (甲1-4)「 [図:0001407855000001.jpg] 図1.eCFPmRNAにおけるStop66コドンの編集に対する化学修飾ガイドRNAの影響(mRNA 黒;ガイドRNA グレー;標的アデノシンはアスタリスクでマークされている;2’-O-メチル修飾塩基は、赤の小文字で表され、ホスホロチオエート連結は、緑の「s」で表される。)編集収量は、SNAP-ADAR1(左)およびSNAP-ADAR2(右)を使用したそれぞれのシーケンストレースにおけるアデノシン(赤)とグアノシン(青)の面積から推定される。」(図1) (甲1-5)「そのアプローチをさらに説明するために、HEK293T細胞内におけるCMVプロモーターの制御下でSNAPf-ADAR1と蛍光レポーター遺伝子を一過的に発現させ、ガイドRNAのトランスフェクションにより転写修飾を刺激した。このために、SNAPf-ADAR1とStop66 eCFPをpcDNA3.1ベクターにサブクローニングした。野生型(Trp66)eCFPは、陽性対照として機能した。両方のプラスミドの1対1の比率での同時トランスフェクションは、24ウェル形式のリポフェクタミン2000で達成された。24時間後、トランスフェクトされた細胞をトリプシンで剥がし、96ウェルプレートのいくつかのウェルに均等に分配し、24時間インキュベートしてから、様々なガイドRNA(ウェルほとに150mLにおける50pMol)でリポフェクションを行った。インキュベーションの1日後、蛍光表現型を顕微鏡で分析した。 陽性対照(図2A)は、はっきりと見える蛍光シグナルを与えたのに対し、非機能的Stop66 eCFPがSNAPf-ADAR1またはBG修飾antagomir様ガイドRNAのみの存在下でトランスフェクトされた場合、蛍光は観察されなかった(図2B、C)詳細なコントロールについては、図S6を参照されたい。対照的に、Stop66 eCFPをSNAPf-ADAR1と共発現させ、続いて2’-メトキシおよびホスホロチオエート修飾を欠く我々の標準BG修飾ガイドRNAでトランスフェクトした場合、CFP蛍光が検出可能であった(図2D)。しかし、陽性対照と比較して明るい蛍光を発する細胞の数は少なかった。さらなる化学修飾の効果を推定するために、Stop66 eCFP/SNAPf-ADAR1共発現細胞にBG修飾antagomir様ガイドRNAをトランスフェクトした。標準的なガイドRNA(図2D)と比較して、化学的に安定化されたガイドRNAは蛍光細胞の数が著しく増加し(図1E)、細胞環境における化学修飾の期待される有益な効果を明確に示している。」(第6268頁右欄第9行~第6269頁右欄第3行) (甲1-6)「 [図:0001407855000002.jpg] 図2.293T細胞内における指示されたRNA編集。細胞に等量のレポーター遺伝子(Stop66 eCFPまたは野生型)とSNAPf-ADAR1(または空のpcDNA3.1)を同時にトランスフェクションした。24時間後にガイドRNAをトランスフェクトし、24時間後に蛍光表現型を蛍光顕微鏡で分析した。)ポジティブコントロール(BG-antagomirガイドRNAおよびSNAPf-ADAR1を含むeCFP);B)ネガティブコントロール1(Stop66 eCFP/空のpcDNA3.1/BG-antagomirガイドRNA);C)ネガティブコントロール2(Stop66 eCFP/SNAPf-ADAR1/ガイドRNAなし);D)-G)Stop66 eCFP/SNAPf-ADAR1および様々なガイドRNAを使用した実験:D)標準BGガイドRNA;E)BG-antagomirガイドRNA;F)標準NH2-ガイドRNA;G)NH2-antagomirガイドRNA。スケールバーは200mmを表す。H)実験(E)のように処理された細胞から抽出されたRNAのサンガーシーケンス。細胞培養の詳細については、補足情報を参照されたい。」(図2) (甲1-7)「5’-BG修飾したガイドRNAの代わりに5’-アミノ(NH2)修飾したガイドRNAを適用すると、通常、インビトロ編集条件に応じて編集活性が低下するか、さらには消滅する。[2]」(第6269頁右欄第6行~第9行) (甲1-8)「要約すると、我々は、RNA修復のための合理的なアプローチとしての部位特異的RNA編集の強度と適用可能性を実証した。化学修飾は、過剰反応を抑制し、選択性を操作するための信頼できる手段であることが判明した。重要なことに、3つの非修飾リボヌクレオチドの小さなギャップが維持される限り、全体的な2’-メトキシおよび末端のホスホロチオエート基を含む大規模な化学修飾でさえ十分に受け入れられることを見出した。さらに、我々は、細胞内のツールの機能を実証した。我々の知る限り、これは、生きた細胞内での酵素的に活性な共有結合性タンパク質核酸(類似体)コンジュゲートのアセンブリの最初の例であり、一般的に、タンパク質アレイの空間的または時間的に制御されたアセンブリのための魅力的な戦略を表しうる[21]。MS2またはλNファージシステムを使用したタンパク質-RNA認識をアセンブリに適用する競合する戦略とは対照的に[22、21]、我々のガイドRNAは特に短く(20nt)、認識とスペーシングに必要であり、他のガイドRNAを長さ60ntにする[22]、追加のBoxBRNAヘアピン(19nt)とリンカー(10-20nt)モチーフを欠いている。我々の安定化された20ntの短いガイドRNAは、トランスフェクションに特に適しており、免疫応答を誘発するには小さすぎると考えられている[7ー15]。ガイドRNAを発現させる代わりにトランスフェクトする必要性は、光活性化などの追加の制御の層を我々のプローブに与える化学修飾をさらに導入することを検討することを我々に奨励する。我々の知見は、基礎生物学の研究と医学におけるin vivoでの応用のための指示されたRNA編集の見通しを劇的に改善する。このことには、hADAR1からのSNAP融合タンパク質のデアミナーゼドメインを、hADAR2のものに交換し、ガイドRNAを慎重に化学修飾して、その非常に困難なアデノシンリッチシーケンスコンテキストにおいてコドンをターゲットにする必要があった。SNAP-デアミナーゼの高いモジュール性と、化学修飾に対するその有用な耐性との組み合わせは、部位特異的RNA修復に対するこのアプローチの可能性を強調している。」(第6270頁右欄第19行~最終行) 2 甲第2号証:Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1995)Vol.92,p.8298-8302 (甲2-1)「治療への応用のためには、修正を行うRNAオリゴヌクレオチドがヌクレアーゼに対して安定されている必要がある。そこで、我々は、ヌクレアーゼ耐性である修正RNAオリゴヌクレオチドについて、in vitroで復帰活性を調べた。」(第8300頁右欄第24行~第27行) 3 甲第3号証:米国特許第9650627号明細書 (甲3-1)「ヌクレオシドへの化学修飾は、塩基または糖のいずれかに導入できる。リボヌクレオシドの代わりにデオキシヌクレオチドを使用することができる。」(第6欄第17行~第19行) 4 甲第4号証:Genes Cells(2015)Vol.20,No.10,p.834-846 (甲4-1)「 [図:0001407855000003.jpg] 」(図1) (甲4-2)「 [図:0001407855000004.jpg] 」(図2) 5 甲第5号証:国際公開第2016/097212号 (甲5-1)「編集特異性 オリゴヌクレオチドコンストラクトとの重なりの領域における標的RNA配列中のアデノシンの望ましくない編集を防ぐために、オリゴヌクレオチドコンストラクトのターゲティング部分を、化学的に修飾してもよい。標的RNA配列中のアデノシンに向かい合ったヌクレオシドのリボシル-部分の2’-O-メチル化が、ADARによるそのアデノシンの脱アミノ化を劇的に低減することが、当該技術分野において示されている(Vogel et al. 2014 Angewandte Chemie Int. Ed. 53, 6267-71)。故に、オリゴヌクレオチドコンストラクトの所望の位置に2’-メトキシ(2’-OMe)ヌクレオチドを含むことにより、編集の特異性が、劇的に改善されてもよい。2’-メトキシエチル(2’-MOE)および2’-O-ジメチルアリル基のような、リボシル部分の他の2’-O置換が、標的RNA配列中の対応する(向かい合った)アデノシンの望まない編集も低減し得ることが予想される。他の化学修飾は、オリゴヌクレオチド合成および設計の当業者にとって容易に入手可能である。かかる化学的に修飾されたオリゴヌクレオチドコンストラクトの合成、およびそれを本発明による方法において試験することは、不当な負担をもたらさず、他の修飾は、本発明により包含される。」(第16頁第1行~第15行) (甲5-2)「両方のターゲティング部分およびリクルート部分は、ヌクレアーゼ抵抗性を変更し、結合の親和性(融点として表される)または他の特性を変更する化学修飾を有するヌクレオチドを含むか、またはからなってもよい。化学修飾の例は、上で特定された長さを有する、糖(リボース)部分内の架橋結合している置換基(例えば、LNA、または固定した核酸などで)によるもの、2’-O原子のアルキル基での置換(例えば、2’-O-メチル)、アルキニル基での置換(2’-O-アルキニル)、アルケニル基での置換(2’-O-アルケニル)、アルコキシアルキル基での置換(例えば、メトキシエチル、2’-MOE)によるものを含む、糖部分の修飾である。加えて、骨格のホスホジエステル基を、チオエート化、ジチオエート化、アミド化などにより修飾して、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホルアミダートなどのヌクレオシド間結合を生じてもよい。ヌクレオチド間結合を、ペプチド性結合により、完全または一部置き換えて、ペプチド核酸配列などとしてもよい。あるいは、または加えて、核酸塩基を、(脱)アミノ化により修飾して、イノシン、または2’6’-ジアミノプリンなどを生じてもよい。」(第17頁第9行~第21行) 第5 当審の判断 1 特許法第29条第1項第3号(甲第1号証を主引用例とする新規性欠如)について (1)本件発明1について ア.甲第1号証に記載された発明 上記記載事項(甲1-1)から、上記記載事項(甲1-4)中の図1D)のガイドRNAは、5’-BG-GAACACCcCAGCACAGAで表されるガイドRNAであり、上記記載事項(甲1-4)中の図1E)のガイドRNAは、5’-BG-GAACACCCCaGCACAGAで表されるガイドRNA(下線は、標的アデノシンの真向かいのヌクレオチド)であると認められる。 そうすると、上記記載事項(甲1-1)、(甲1-3)~(甲1-4)から、甲第1号証には、「ADAR酵素による標的RNA配列中の標的アデノシンの脱アミノ化のための、細胞内の標的RNA配列と二本鎖複合体を形成することができるガイドRNAであって、 5’-BG-GAACACCcCAGCACAGA または、 5’-BG-GAACACCCCaGCACAGA で表されるガイドRNA(下線は、標的アデノシンの真向かいのヌクレオチド)。」の発明が記載されていると認められる。 イ.本件発明1と甲第1号証に記載された発明の対比 本件発明1と甲第1号証に記載された発明を対比すると、甲第1号証に記載された発明の「ガイドRNA」は、本件発明1の「AON」に相当する。 甲第1号証に記載されているガイドRNAは、3つの連続したヌクレオチドのセントラルトリプレットを含み、標的アデノシンの真向かいのヌクレオチドは、セントラルトリプレットの中央のヌクレオチドであることは明らかであり(上記記載事項(甲1-4))、また、標的アデノシンの真向かいのヌクレオチドが、シチジンであり、その5’側または3’側のヌクレオチドが、2’-O-メチル修飾塩基である(上記記載事項(甲1-4))から、セントラルトリプレット中の1、2または3個のヌクレオチドは糖修飾および/または塩基修飾を含み、中央のヌクレオチドは2’-O-メチル修飾を有さないものである。 そして、甲第1号証に記載されているガイドRNAは、哺乳動物のADAR酵素に結合できる分子内ステム-ループ構造を形成できる部分を含まないことは明らかである(上記記載事項(甲1-4))。 そうすると、本件発明1と甲第1号証に記載された発明は、「細胞内の標的RNA配列と二本鎖複合体を形成することができるアンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)を含む、ADAR酵素による標的RNA配列中の標的アデノシンの脱アミノ化のための組成物であって、前記AONは、3つの連続したヌクレオチドのセントラルトリプレットを含み、前記標的アデノシンの真向かいのヌクレオチドは、セントラルトリプレットの中央のヌクレオチドであり、前記セントラルトリプレット中の1、2または3個のヌクレオチドは糖修飾および/または塩基修飾を含み、ただし中央のヌクレオチドは2’-O-メチル修飾を有さず、哺乳動物のADAR酵素に結合できる分子内ステム-ループ構造を形成できる部分を含まない、組成物。」に係る発明である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1)標的RNA配列中の標的アデノシンの脱アミノ化のための組成物が、本件発明1は、細胞内に存在するADAR酵素によるのに対し、甲第1号証に記載された発明は、そのような特定はされていない点。 (相違点2)本件発明1は、AONをより安定に、および/または、標的アデノシンの脱アミノ化の誘導をより効果的にするのに対し、甲第1号証に記載された発明は、そのような特定はされていない点。 ウ.相違点についての検討 相違点1について検討する。 上記記載事項(甲1-1)、(甲1-3)~(甲1-8)から、甲第1号証に記載されているガイドRNAは、5’末端にO6-ベンジルグアニン(BG)修飾を有することを必須としており、ADAR酵素のC末端触媒ドメインをSNAPタグに融合させた融合タンパク質とのコンジュゲートにより、RNA編集が可能になるものである。 そして、その「ADAR酵素のC末端触媒ドメインをSNAPタグに融合させた融合タンパク質」は、遺伝子組換えにより発現させたものであり(上記記載事項(甲1-1)、(甲1-5)~(甲1-6))、「細胞内に存在するADAR酵素」であるとはいえないから、甲第1号証には、「細胞内に存在するADAR酵素による標的RNA配列中の標的アデノシンの脱アミノ化のための組成物」が記載されているとはいえない。 したがって、本件発明1は、相違点2について検討するまでもなく、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。 (2)本件発明2~5、14~18、22について 本件発明2~5、14~18、22は、本件発明1の発明特定事項と同様の発明特定事項を含むものであり、本件発明1と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。 (3)まとめ 以上のとおり、本件発明1~5、14~18、22は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、とすることはできない。 2 特許法第29条第2項(甲第1号証を主引用例とする進歩性欠如)について (1)本件発明1について 上記1(1)イ.で述べたように、本件発明1と甲第1号証に記載された発明は、「細胞内の標的RNA配列と二本鎖複合体を形成することができるアンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)を含む、ADAR酵素による標的RNA配列中の標的アデノシンの脱アミノ化のための組成物であって、前記AONは、3つの連続したヌクレオチドのセントラルトリプレットを含み、前記標的アデノシンの真向かいのヌクレオチドは、セントラルトリプレットの中央のヌクレオチドであり、前記セントラルトリプレット中の1、2または3個のヌクレオチドは糖修飾および/または塩基修飾を含み、ただし中央のヌクレオチドは2’-O-メチル修飾を有さず、哺乳動物のADAR酵素に結合できる分子内ステム-ループ構造を形成できる部分を含まない、組成物。」に係る発明である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1)標的RNA配列中の標的アデノシンの脱アミノ化のための組成物が、本件発明1は、細胞内に存在するADAR酵素によるのに対し、甲第1号証に記載された発明は、そのような特定はされていない点。 (相違点2)本件発明1は、AONをより安定に、および/または、標的アデノシンの脱アミノ化の誘導をより効果的にするのに対し、甲第1号証に記載された発明は、そのような特定はされていない点。 相違点1について検討する。 上記記載事項(甲1-1)、(甲1-3)~(甲1-8)から、甲第1号証に記載されているガイドRNAは、5’末端にO6-ベンジルグアニン(BG)修飾を有することを必須としており、ADAR酵素のC末端触媒ドメインをSNAPタグに融合させた融合タンパク質とのコンジュゲートにより、RNA編集が可能になるものである。 そして、上記記載事項(甲1-7)の「5’-BG修飾したガイドRNAの代わりに5’-アミノ(NH2)修飾したガイドRNAを適用すると、通常、インビトロ編集条件に応じて編集活性が低下するか、さらには消滅する。」という記載は、ADAR酵素とコンジュゲートできない場合には、編集活性が低下するか消滅することを意味しており、「ADAR酵素のC末端触媒ドメインをSNAPタグに融合させた融合タンパク質」の代わりに、「細胞内に存在するADAR酵素」を使用することを妨げる記載であり、また、甲第1号証には、「ADAR酵素のC末端触媒ドメインをSNAPタグに融合させた融合タンパク質」の代わりに、「細胞内に存在するADAR酵素」を使用することを動機付ける記載はないから、甲第1号証に記載された発明において、「細胞内に存在するADAR酵素」を使用することは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。 したがって、本件発明1は、相違点2について検討するまでもなく、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 また、甲第2~5号証に記載された事項を参照しても、甲第1号証に記載された発明において、「細胞内に存在するADAR酵素」を使用することは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。 したがって、本件発明1は、相違点2について検討するまでもなく、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~5号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2)本件発明2~26について 本件発明2~26は、本件発明1の発明特定事項と同様の発明特定事項を含むものであり、本件発明1と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~5号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)まとめ 以上のとおり、本件発明1~26は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~5号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、とすることはできない。 3 特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号について (1)本件明細書に記載された事項 本件明細書の発明の詳細な説明には、以下の事項が記載されている(下線は合議体による。)。 ア.「【0084】 図1、2および4に例示されるように、セントラルトリプレットはYXZまたはXXYとして表される。異なる塩基修飾が提供される。当業者は、これらの塩基修飾がセントラルトリプレット内のヌクレオチドと反対側のヌクレオチドに、ある程度依存することを理解している。したがって、Xが標的アデノシンの反対側の中央のヌクレオチドであるYXZの例では、Xはシチジン、5-メチルシチジン、5-ヒドロキシメチルシチジン、ウリジン、またはピロロシチジンであり得るが、Yおよび/またはZは、セントラルトリプレットの反対側のヌクレオチドに応じて、イノシン、5-メチルシチジン、ピロロシチジン、シュードウリジン、4-チオウリジン、チエノウリジン、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、チエノグアノシン、5-メトキシウリジン、ジヒドロウリジン、5-ヒドロキシメチルシチジン、5-メチルウリジン、8-アザ-7-デアザグアノシン、7-アミノメチル-7-デアザグアノシン、7-メチルアデノシン、8-メチルアデノシン、3-デアザアデノシン、7-デアザアデノシン、8-アジドアデノシンなどであり得:それゆえ、標的RNA配列およびそれに関連する疾患に依存する。ゆえに、好ましい実施形態では、前記塩基修飾は、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、3-デアザアデノシン、7-デアザアデノシン、7-メチルアデノシン、8-アジドアデノシン、8-メチルアデノシン、5-ヒドロキシメチルシチジン、5-メチルシチジン、ピロロシチジン、7-アミノメチル-7-デアザグアノシン、7-デアザグアノシン、7-メチルグアノシン、8-アザ-7-デアザグアノシン、チエノグアノシン、イノシン、4-チオ-ウリジン、5-メトキシウリジン、5-メチルウリジン、ジヒドロウリジン、シュードウリジン、およびチエノウリジンからなる群から選択される。 【0085】 別の好ましい実施形態では、糖修飾はデオキシリボース(すなわちDNA)、アンロック核酸(UNA)および2’-フルオロリボースからなる群から選択される。特に好ましい態様において、本発明は、3個の連続したヌクレオチドのセントラルトリプレットを含むAONに関し、標的アデノシンの真向かいのヌクレオチドがセントラルトリプレットの中央のヌクレオチドであり、そして前記セントラルトリプレット中の1個、好ましくは2個、さらに好ましくは、3個全てのヌクレオチドは、標的アデノシンの脱アミノ化の誘導において、AONをより安定におよび/またはより効果的にするためのDNAヌクレオチドである。別の好ましい態様では、AONの残りの部分は、好ましくは(必ずしもそうとは限らないが)2’-O-メチル修飾されているRNAヌクレオチドからなる。セントラルトリプレットの外側で他の安定化修飾を用いてもよい。本発明による標的編集と完全に互換性のある他のリボース修飾は、2’-O-メトキシエチル(2’-O-MOE)、LNA、2’-Fおよび2’-NH2である。セントラルトリプレットの外側のヌクレオチドの糖修飾(本明細書中に列挙されるような)の異なる組み合わせが適用され得る。」(【0084】~【0085】) イ.「【0100】 [実施例1] 安定性を高めるためのヒトSERPINA1 RNAを標的とするAONの化学修飾 未公開特許出願PCT/EP2017/065467は、アンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)の使用による標的化AからIへの編集のための方法を記載している。これらのAON中のほとんどのヌクレオチドは2’-O-メチル化RNAであり、ホスホロチオエート連結を有するが、それらはAONの部分に、標的アデノシンの真向かいの中央のヌクレオチドおよびその2つの隣接ヌクレオチドと共に、いくつか、通常3個の未修飾RNAヌクレオチド(「セントラルトリプレット」)を含む。これは、セントラルトリプレットのヌクレオチドが2’-O-メチル化されているとA-to-I編集が強く抑制されることが以前に示されていたためである(Vogelら、2014)。しかしながら、修飾されていないRNAヌクレオチドを含むAONは、これらの位置の残基を加水分解することができるヌクレアーゼのために本質的に生物学的に不安定である。これは、例えば治療薬としてAONを効率的に使用するためには、それらは標的に到達する前に分解され得るため、不利益となり得る。 【0101】 本発明の発明者らは、セントラルトリプレットでの未修飾RNAヌクレオチドを有するAONの安定性と、2’-O-メチル化以外の化学修飾を使用することによってそのようなAONの安定性を高めることができるか否かについて調べた。 【0102】 まず、非限定的な例として、RNA編集のために選択された標的は、A1AT欠損症(A1ATD)の原因となるSERPINA1 RNA中のc.1096G>A変異である。A1ATDは、本明細書に概説したような手法を用いたRNA編集のための疾患標的の一例である。図1AおよびBでは、SERPINA1標的に対する例示的なAONの相補性が概略的に示されている。標的配列に対するADAR60-1の相補性を図1Aに示し、ADAR60シリーズのセントラルトリプレット(5’-YXZ-3’)を図1Bに示す。骨格およびセントラルトリプレットのヌクレオチドの塩基に様々な修飾を有する変異体RNAを標的とするいくつかのAONを、15%ウシ胎児血清(FBS)を含む細胞培養培地(MEM)中でそれらを+37℃で30分間(RX)インキュベートすることによって安定性を試験した。陰性対照として、AONをリン酸緩衝生理食塩水(PBS;CTL)中でインキュベートした。次に試料を変性ポリアクリルアミドゲル(8M尿素を含む15%PAGEゲル)で分離し、続いてこれをトルイジンブルーで染色してAONおよびその断片を可視化した。そのAONをそれぞれの配列およびそれらの修飾と共に図2に示す。図3の3つのパネルは、ADAR60シリーズのAONを使用した安定性アッセイの結果を示している。修飾されていない5’-UCG-3’ RNAセントラルトリプレットを含むADAR60-1は、FBSの存在下で30分以内に効率的に切断(~分解)される(およそ50%まで)。対照緩衝液中でAONをインキュベートした場合、いくらかの分解はさらに明らかである。3つのRNAヌクレオチドの位置がシフトしても、分解速度は低下しない(ADAR60-3)。重要なことに、未修飾RNAヌクレオチドの数を(3個の代わりに)2個に減らすと、分解が減少する(ADAR60-2)。ここで陰性対照として働く完全な2’-O-メチル化AONは、セントラルトリプレットがDNAヌクレオチドに変更されたAON(ADAR60-6)のように、これらの条件下で安定している(ADAR60-4)。これは少なくとも、セントラルトリプレットが2’-O-メチル化されていない場合、AONは分解される傾向があり、セントラルトリプレットに少なくとも1つの2’-O-メチル化ヌクレオチドを付加すること、またはセントラルトリプレット全体をDNAヌクレオチドに修正することによりそれを解決することができることを示している。セントラルトリプレットの3つの位置のうち2つの位置における他の糖の修飾、ロック解除核酸(UNA)によるRNAの置換は安定性の増加をもたらし(ADAR60-8)、さらにトリプレットの中位における塩基修飾5-メチルシトシンと組み合わせるとさらに安定になる(ADAR60-9)。セントラルトリプレットの最初の位置の後に1つのホスホロチオエート連結を含んでいても(5’-U*CG-3、星印はホスホロチオエート連結を表す)、安定性はそれほど向上しない(ADAR60-5)。ホスホロチオエート連結の数の増加に向けたさらなる実験については、下記の実施例2を参照。 【0103】 また、グアノシンをイノシンで置き換えると、分解が著しく減少する(ADAR60-10)。この修飾をシチジンの5-メチルシチジンについての置き換え(ADAR60-11)と組み合わせると、安定性は維持され、両方の修飾をウリジンのシュードウリジンについての置き換えと組み合わせると(ADAR60-12)さらに向上する。 【0104】 セントラルトリプレットの3つの全てのヌクレオチドを修飾ヌクレオチドで置き換えると、安定性に最大の効果があるように見えた。各位置における精密な修飾は変えることができ、これはAONの安定性に大きく影響する。ADAR60-12以外のAONでは、シュードウリジンを4-チオウリジンで置換したもの(ADAR60-13)または2,6-ジアミノプリンで置換したもの(ADAR60-16)は、同等の安定性のAONが得られるが、対照的に5-メチルウリジン(ADAR60-14)は安定性を減少させ、チエノウリジン(ADAR60-15)は、未修飾RNAトリプレットを使用した場合よりもさらに、AONをほぼ完全に分解させる。 【0105】 セントラルトリプレットの中央のCをピロロシチジンで置換すると、5-メチルシチジンよりもさらに有意に安定化される:ピロロシチジンおよびイノシンを有するAONは、トリプレットの最初の位置にシュードウリジンまたは未修飾ウリジンを含むか否かにかかわらず、これらの条件下でほぼ完全に安定である(それぞれADAR60-18とADAR60-17)。この場合も、ウリジンをチエノウリジン(ADAR60-19)で置き換えると安定性が減少するが、ADAR60-15と同程度ではない。 【0106】 セントラルトリプレットの他の2つの位置と同様に、最後の位置も安定化を達成するために異なる塩基修飾で修飾することができる。ここでは、イノシンの代わりに、チエノグアノシンをシュードウリジンおよび5-メチルシチジンまたはピロロシチジン(それぞれADAR60-20およびADAR60-21)と組み合わせて使用した。両方のAONはこれらの条件下で完全に安定している;チエノグアノシンによる安定性の向上は、他の点では類似のADAR60-12およびADAR60-20と比較すると顕著である。 【0107】 安定化を増大させるための同様の効果を達成するためのさらなる組み合わせとしては、例えば、グアノシンについては7-メチルグアノシン、7-デアザグアノシン、8-アザ-7-デアザグアノシン、または7-アミノメチル-7-デアザグアノシン(それぞれADAR60-29、-30、-31および-32参照)、またはシチジンについては5-ヒドロキシメチルシトシン(ADAR60-28を参照)、またはウリジンでは5-メトキシウリジンまたはジヒドロウリジン(それぞれADAR60-26および-27を参照)の置き換えが考えられる。2’-フルオロ、3’-メチレンホスホネート、5’-メチレンホスホネート、3’-ホスホロアミデート、または2’-5’ホスホジエステル修飾(2’-5’骨格連結;それぞれADAR60-7、-22、-23、-24、および-25を参照)を含むセントラルトリプレットの糖および骨格修飾によっても安定化が達成された。 【0108】 この実施例に示された結果は、全ての修飾がRNA編集アンチセンスオリゴヌクレオチドの分解を減少させるのに有用であるとは限らないが多くの修飾により安定性が実際に増すこと、そしてセントラルトリプレット内およびおそらくその周辺の修飾は慎重に選択されるべきであることを示す。セントラルトリプレットのヌクレオチドを特定の化学的性質で修飾すると、オリゴヌクレオチドの安定性が確実に高まる。全体として、この実施例に提示された結果は、セントラルトリプレットにおけるヌクレオチドの(の組み合わせ)修飾が安定性を改善させることができ、一度にいくつかの塩基の修飾が徐々に安定化をもたらすことを示す。」(【0100】~【0108】) ウ.「【0109】 [実施例2] 安定性を高めるためのマウスIdua RNAを標的とするAONにおけるホスホロチオエート連結 前の例では、セントラルトリプレット内の最初の位置の後に1つのホスホロチオエート連結を含ませても、安定性はそれほど向上しないことが示された(図3A;ADAR60-5)。これをより深く調査するために、セントラルトリプレット領域内により多くのホスホロチオエート連結を含むことがなおも影響を及ぼしそして安定性を高めることができるか否かを試験した。 【0110】 このために、本発明の発明者らは、ヒトにおいてIDUA遺伝子のc.1205G>A(W402X)変異によって引き起こされる、ムコ多糖症I型-ハーラー(mucopolysaccharidosis type I-Hurler;MPS I-H)としても知られるモデル系としてハーラー症候群(Hurler syndrome)を選択した。変異ヒト遺伝子の標的配列は5’-UAG-3’(中位に標的A、図4A参照)であり、そしてAONのセントラルトリプレットは5’-CCA-3’(中央のミスマッチCを含む;5’-XXY-3’表記については図4Bを参照)または5’-CUA-3’であろう。この変異についてのマウスモデルも存在し(W392X)、そこではIdua遺伝子が変異している。Hurlerマウスモデルはまた、さらなるインビボ実験にも使用された(下記参照)。シリアル番号ADAR65を有するオリゴヌクレオチド(図2参照)は、変異マウスIdua遺伝子を標的とするように設計された。さらなるホスホロチオエート連結がオリゴヌクレオチドの安定性を増すか否かを見るために、ADAR65-1、ADAR65-18、ADAR65-20、ADAR65-21、およびADAR65-22を試験した。驚くべきことに、セントラルトリプレット領域に3つ以上のホスホロチオエートを含めると、AONの安定性が向上した(図5)。ADAR65-1にはセントラルトリプレット領域にさらなるホスホロチオエート連結がなく、明らかに分解されているが、ADAR65-22にはセントラルトリプレット領域内およびその周辺に6個のホスホロチオエート連結があり、FBSで18時間インキュベートした後も明らかにより安定である。同様に、セントラルトリプレット領域に5および3個のホスホロチオエート連結をそれぞれ有するADAR65-20およびADAR65-21の安定性は、(ADAR65-1のように)オリゴヌクレオチドの末端連結を除いてセントラルトリプレット領域にさらなるホスホロチオエートを有さないADAR65-18と比較したとき、増加した。 【0111】 5-メチルシチジンおよびデオキシ2-アミノプリンなどの塩基修飾を、デオキシリボース(DNA)、2’-O-メチル、2’-フルオロおよびリン酸骨格(ホスホロチオエート連結)などのリボース修飾と組み合わせた。ADAR65-13、-14、-15、-16、-19、-20、-21、-22、-23、-24、-25、-26、-27、-28、-29、および-30(図2)を上に記したものと同じアッセイを用いて安定性について試験した。図6に示される結果は、FBS中で18時間インキュベートした後でも、安定性を得るために様々な組み合わせを使用できることを示している。」(【0109】~【0111】) エ.「【0114】 [実施例3] セントラルトリプレットにおける化学塩基修飾を組み合わせたAONのRNA編集活性 ヌクレオチドホスホジエステル、糖および塩基修飾は、ヌクレアーゼに対するオリゴヌクレオチドの安定性を高めるために使用される。重要なことには、そのような化学的ヌクレオチド修飾は、より良好な認識を得るためにおよび/またはAONとその特異的な標的RNA配列との二本鎖複合体において作用するタンパク質の酵素活性を高めるために、それらの標的RNAに対するAONの結合の増加などの他の目的にも使用できることが本発明の本発明者によって考えられた。 【0115】 本発明者らは、AONのセントラルトリプレットにおけるヌクレオチド塩基化学修飾の組み合わせがADAR2の編集活性を増強し得るか否かを最初に知りたかった。このために、ADAR60-1およびADAR60-15(図2および3参照)を使用して、ヒト変異SERPINA1標的RNA分子に対するADAR2酵素の編集活性の増強に対するそのような影響を調べた。これら2つのAONは同じ配列と長さを共有し、どちらもセントラルトリプレットの外側にリン酸基の化学的ホスホロチオエート修飾およびリボース糖の2’-O-メチル修飾を有する。図2に示すように、ADAR60-1のセントラルトリプレットのヌクレオチドは修飾されていないが、ADAR60-15のセントラルトリプレットのヌクレオチド塩基は化学修飾されている。5-メチルシチジンは編集のための標的アデノシンの反対側である。ADAR60-1とADAR60-15の両方を、ADAR2の過剰発現されたアイソフォーム2(ADAR2a)を有するHEK293細胞溶解物、およびc.1096G>A変異を有するSERPINA1標的RNAを用いたインビトロ編集アッセイで試験した。細胞溶解物を含まないADAR60-15、および過剰発現させたADAR2aを含むが、オリゴヌクレオチドを含まないHEK293細胞溶解物を陰性対照として用いた。SERPINA1テンプレートssRNAは、T1プロモーターF1フォワードプライマー(5’-GCGAAGCTTAATACGACTC-3’;配列番号3)およびSerpina1-R2リバースプライマー(5’-CCATGAAGAGGGGAGACTTC-3’;配列番号4)を用いて当業者に公知の一般的技術を適用し、製造業者のプロトコールに従って、MEGAscript Kit(Life Technology)を用いて500ngのSERPINA1mut DNA配列(SERPINA1mut gBlocks(登録商標)遺伝子断片からPCRによって増幅された)のインビトロ転写によって得られた。SERPINA1mut DNAテンプレートは、以下の配列を有する(標的アデノシンを太字の下線付きで示す): ・・・・・・・・・・・・ 【0120】 図8は、ADAR60-1をSERPINA1mut ssRNA標的とインキュベートした場合、AからGへの変化が検出されないことを示している(パネルA、矢印で示す位置)。しかしながら、対照的に、ADAR60-15を使用すると(パネルB)、明らかに検出可能で有意なAからGへの変化を示し、標的SERPINA1 RNAの編集を裏付ける。陰性対照反応(パネルCおよびD)は、AからGへの編集を示さない。ADAR60-15におけるヌクレオチド塩基の化学修飾は、そのような修飾を有さないオリゴヌクレオチド(ADAR60-1)と比較して、ADAR2のRNA編集活性を増強することができると結論づけられる。 【0121】 [実施例4] セントラルトリプレットにおける2-アミノプリン修飾を含むAONを用いたGFP標的RNAにおける非センス変異のRNA編集 細胞ゲノムに安定に組み込まれた緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする発現構築物を含む細胞においてRNA編集も調べた(詳細および構築物については国際公開第2016/097212号パンフレットを参照)。この構築物において、終止コドン(TAG)がコドン位置57に導入され、標的RNA中にトリプレットUAGをもたらした。このトリプレットの中央にあるアデノシンでのRNAの編集は、最終的にはTrpをコードするコドンを生じさせ、その後、全長タンパク質を発現させるであろう。構築物および細胞株(安定に組み込まれたGFP W57Xプラスミドを含む細胞)は、当業者に知られている技術を使用して生成された。標的RNA内の他のアデノシンが編集されないようにするために、終止コドンの反対側のAON内の3つのヌクレオチド(オリゴヌクレオチド内の5’-CCA-3’、中央のミスマッチCと共に、図2のADAR59-2およびADAR59-10参照)は2’-O-メチル修飾を含まないが、アンチセンスオリゴヌクレオチド中の他の全てのヌクレオチドは含む。さらに、試験した全てのオリゴヌクレオチドの両側の末端の5つのヌクレオチドはホスホロチオエート連結によってつながっているが、残りの連結は正常な連結であった。ADAR59-10では、オリゴヌクレオチドのセントラルトリプレットのAが2-アミノプリンになるように化学修飾されているが、ADAR59-2にはそのような特別な修飾はない。Matthewsら(2016)の図5Bは、この位置での2-アミノプリン修飾が、活性化の減少(しかし消滅しない)をもたらすことを示す。しかしながら、修飾は、例えば増強されたヌクレアーゼ耐性を潜在的に提供すること、または細胞プロセスを増強することによって、依然として間接的にRNA編集を増強することができる。 【0122】 安定なGFP W57X含有細胞を最初に1μgのADAR2過剰発現プラスミドでトランスフェクトし(先の実施例を参照)、次いで24時間後に別々のバッチで150nMの各オリゴをトランスフェクトした(両方ともリポフェクタミン2000を用いる)。その後、AONトランスフェクションの24時間後、RNAをcDNA合成およびその後のRT-PCRのために単離し、そして配列決定を行ってRNA編集が起こったか否かを明らかにした。 【0123】 図9に示すように、ADAR59-10で観察された編集レベルは、2-アミノプリン修飾の無いコントロール(ADAR59-2)よりも改善されている。このことは、触媒活性自体への悪影響にもかかわらず、AONの修飾は間接的な手段によって全体的な編集レベルに良い影響を及ぼし得ることを示している。そのような修飾を安定性および/または編集活性の増強を支持する他の修飾ヌクレオチドと組み合わせることにより(ここに開示されるように)、RNA編集を効率的に活性化するAONを安定に作成することが今や可能である。」(【0114】~【0123】) オ.「【0136】 [実施例9] RNA編集のためのマウスIDUA RNAを標的とするAONの化学修飾 次に、本発明者らは、安定化をもたらした修飾をさらに組み合わせることができるか否か、およびそのような組み合わせを有するAONがHurlerモデルにおけるRNA編集において機能的であるか否かを検証した(実施例2もまた参照)。野生型配列の復帰におけるこれらのAONの効果を、マウスIdua遺伝子によってコードされるアルファ-L-イズロニダーゼ酵素の活性を測定するアッセイで試験した。このために、W392X変異マウス由来の不死化マウス胚性線維芽細胞(1試料あたり70000個)を増殖培地(DMEM/10%FCS)中で培養し、リポフェクタミン3000を用いて全長Idua W392X cDNAを有する発現プラスミド1μgをトランスフェクトした。24時間後、細胞をADAR65シリーズの各AONをそれぞれ100nM(最終濃度)で同様にトランスフェクトし(安定性の結果については図5および6を参照)、さらに48時間培養した。次いで細胞を回収し、そしてmPER緩衝液(Thermo Scientific #78501)中で溶解した。細胞断片を遠心分離により溶解物から除去し、そして25μlの上清を酵素5アッセイに使用した:25μlの360μM 4-メチルウンベリフェリルアルファ-L-イズロニド(0.4Mギ酸ナトリウム緩衝液(pH3.5)中)を溶解物試料に添加し、その後、37℃で2時間インキュベートした。200μlの0.17Mグリシン緩衝液(pH9.9)を添加することによって反応を停止させ、次いで得られた蛍光強度を測定した(励起波長365nmおよび発光450nm)。結果は、BCAアッセイ(Pierce(登録商標)BCAタンパク質アッセイキット、Thermo Scientific)によって10測定されるように、試料の総タンパク質濃度に対して正規化させた。 【0137】 図14に提供された結果は、トランスフェクトされたADAR65オリゴヌクレオチドの全てが、アルファ-L-イズロニダーゼ酵素活性を非トランスフェクト(NT)レベルを超えて増加させることができたことを示しており、標的(pre-)mRNAが編集されたことを示す。実際に適用されたAONのほとんどは、標的RNAを非常に効率的に編集しているようである。安定性アッセイ(図5および6)と比較して分かるように、多くのAON(特にADAR65-23からADAR65-30)は高い安定性を示し、そしてまたアルファ-L-イズロニダーゼの酵素活性を回復する良好な能力を示している。このことは、DNAヌクレオチドの使用、ならびにセントラルトリプレット内のホスホロチオエート連結および2’-フルオロ修飾が有用であり、したがって本発明の好ましい実施形態を示す。」(【0136】~【0137】) カ.「 [図:0001407855000005.jpg] [図:0001407855000006.jpg] [図:0001407855000007.jpg] [図:0001407855000008.jpg] 」(図2) キ.「 [図:0001407855000009.jpg] 」(図3) ク.「 [図:0001407855000010.jpg] 」(図5) ケ.「 [図:0001407855000011.jpg] 」(図6) コ.「 [図:0001407855000012.jpg] 」(図8) サ.「 [図:0001407855000013.jpg] 」(図9) シ.「 [図:0001407855000014.jpg] 」(図14) (2)本件発明1~26について 本件明細書の発明の詳細な説明には、アンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)のセントラルトリプレットにおける「塩基修飾」、「糖修飾」について、どのような化合物を使用することができるのか具体的に記載されており(上記記載事項ア.)、当業者であれば、それらの化合物をAONのセントラルトリプレットにおける「塩基修飾」、「糖修飾」として使用することができることを理解することができる。また、AONのセントラルトリプレットの中央のヌクレオチドとして、どのような塩基修飾を使用することができるのか、AONのセントラルトリプレットの中央以外のヌクレオチドとして、どのような塩基修飾を使用することができるのか具体的に記載されており(上記記載事項ア.)、当業者であれば、どのような塩基修飾をAONのセントラルトリプレットのどの位置に使用することができることについて理解することができる。 そして、本件明細書の発明の詳細な説明には、アンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)の具体例として、様々な「塩基修飾」、「糖修飾」を含むAONが記載されており(上記記載事項カ.)、それらのAONについて、安定性を調べた実験結果(上記記載事項イ.~ウ.及びキ.~ケ.)、編集効率を調べた実験結果(上記記載事項エ.~オ.及びコ.~シ.)が記載されている。 塩基修飾については、AONのセントラルトリプレットの中央のヌクレオチドが、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド以外の、5-メチルシチジン、ピロロシチジン、5-ヒドロキシメチルシチジンなどの塩基修飾を使用した場合に、AONをより安定にすることができたことが実施例等により具体的に記載されており(上記記載事項イ.及びキ.)、また、標的アデノシンの脱アミノ化の誘導をより効果的にすることができたことが実施例等により具体的に記載されている(上記記載事項エ.及びコ.~サ.)。また、AONのセントラルトリプレットの中央以外のヌクレオチドとして、イノシンを含むAON(ADAR60-10、ADAR60-11)、シュードウリジンを含むAON(ADAR60-12)、4-チオウリジンを含むAON(ADAR60-13)、2,6-ジアミノプリンを含むAON(ADAR60-16)、チエノグアノシンを含むAON(ADAR60-20、ADAR60-21)は、AONをより安定にすることができたことが実施例等により具体的に記載されている(上記記載事項イ.及びキ.)。 糖修飾については、セントラルトリプレットにDNAを含むAON(ADAR60-6)、アンロック核酸(UNA)を含むAON(ADAR60-8)、2’-フルオロ修飾を含むAON(ADAR60-7)は、AONをより安定にすることができたことが実施例等により具体的に記載されている(上記記載事項イ.及びキ.)。 また、図14に示されている実施例9の実験結果(上記記載事項シ.)については、「トランスフェクトされたADAR65オリゴヌクレオチドの全てが、アルファ-L-イズロニダーゼ酵素活性を非トランスフェクト(NT)レベルを超えて増加させることができた」と記載されている(上記記載事項オ.)ように、セントラルトリプレットにDNA、2’-フルオロ修飾を含むAONについても、有意な編集活性が得られたことが示されていると認められる。 そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明には、AONのセントラルトリプレットのヌクレオチドとして、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド以外の、様々な塩基修飾、糖修飾を含むAONについて、AONをより安定にすることができた実施例、標的アデノシンの脱アミノ化の誘導をより効果的にすることができた実施例が複数例示されているといえるから、本件明細書の実施例で実際に使用されている塩基修飾、糖修飾以外の塩基修飾、糖修飾を含む本件発明1に包含されるAONについても、多少の効果上の差異を伴うものの本件明細書の実施例で実際に用いられているAONの実験結果から同様の効果が得られることを当業者が容易に理解することができるといえる。 よって、本件発明の詳細な説明は、本件発明1について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。本件発明2~26は、本件発明1の発明特定事項と同様の発明特定事項を含むものであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明の詳細な説明は、本件発明2~26についても、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。 したがって、本件発明の詳細な説明は、本件発明1~26について、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない、とすることはできない。 また、本件発明の詳細な説明の記載及び本件出願時の技術常識を考慮すると、本件発明1~26は、発明の詳細な説明に記載されたものといえる。 したがって、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない、とすることはできない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立の理由によっては、本件発明1~26に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件発明1~26に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700989

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