特許異議申立
2022-700781
ヒト機能性角膜内皮細胞およびその応用
- 審判番号
- 2022-700781
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-561784
- 登録番号
- 7008337
- 請求日
- 2022年08月09日
- 審決日
- 2024年04月02日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】京都府公立大学法人
- 【権利者代理人】鎌田 光宜
- 【権利者代理人】高島 一
- 【権利者代理人】▲駒▼谷 剛志
- 【異議申立人】上田 精一
- 【異議申立人】神谷 高伸
- 審判長/審判官
- 審判長 上條 肇
- 審判官 長井 啓子
- 審判官 天野 貴子
- 分類
- P1651.14 -YB (C12N) / P1651.113-YB (C12N) / P1651.121-YB (C12N) / P1651.536-YB (C12N) / P1651.537-YB (C12N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7008337号発明「ヒト機能性角膜内皮細胞およびその応用」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7008337号の請求項1~22に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7008337号の請求項1~22に係る特許についての出願は、平成29年2月14日(優先権主張 2016年2月15日 4件、 2016年4月7日)を出願日とする出願であって、令和4年1月13日に特許権の設定登録がされ、同年2月10日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、同年8月9日に特許異議申立人上田精一(以下、「異議申立人1」という。)により、同年同月10日に特許異議申立人神谷高伸(以下、「異議申立人2」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。
令和4年12月 6日付け 取消理由通知書
令和5年 2月 7日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年 3月30日 意見書の提出(異議申立人1)
同年 3月30日 意見書の提出(異議申立人2)
同年 7月 5日付け 取消理由通知書(決定の予告)
同年 9月 8日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年10月18日付け 訂正拒絶理由通知書
第2 本件発明
上記第1の手続の経緯のとおり、令和5年9月8日に訂正請求がされたので、令和5年2月7日にされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。また、令和5年9月8日にされた訂正請求に対して、令和5年10月18日付けで訂正拒絶理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは何らの応答もなかった。そして、上記訂正拒絶理由は妥当なものと認められるので、令和5年9月8日にされた訂正請求はこの理由により拒絶すべきものである。
したがって、本件特許の請求項1~22に係る発明は、その特許権設定登録時の特許請求の範囲の請求項1~22に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
ヒト眼前房内への注入時にヒト角膜内皮機能特性を惹起し得るヒト機能性角膜内皮細胞であって、該細胞の細胞表面抗原の表現型は、CD44陰性~弱陽性表現型、CD166陽性表現型、CD133陰性表現型、CD105陰性~弱陽性表現型、CD24陰性表現型、およびCD26陰性表現型を含む、細胞。
【請求項2】
前記細胞の細胞表面抗原の表現型は、CD105陰性表現型、CD24陰性表現型、CD26陰性表現型、CD166陽性表現型、CD133陰性表現型、およびCD44陰性表現型を含む、請求項1に記載の細胞。
【請求項3】
前記細胞表面抗原の表現型は、さらに、CD200陰性表現型を含む、請求項1または2に記載の細胞。
【請求項4】
前記細胞表面抗原の表現型は、さらに、CD90陰性表現型を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項5】
前記細胞表面抗原の表現型は、さらに、LGR5陰性表現型、SSEA3陰性表現型、MHC1弱陽性表現型、MHC2陰性表現型、ZO-1陽性表現型、およびNa+/K+ATPase陽性表現型からなる群より選択される少なくとも1つの表現型を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項6】
前記細胞の平均細胞面積は、250μm2以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項7】
ミトコンドリア系におけるエネルギー代謝系の酵素を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項8】
OXPHOS活性が亢進していることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項9】
前記細胞は、PDGF-BB高産生、IL-8低産生、MCP-1低産生、TNF-α高産生、IFNγ高産生、およびIL-1Rアンタゴニスト高産生からなる群より選択される少なくとも一つの特性を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項10】
前記細胞は、成熟分化角膜内皮機能性細胞a5の細胞特性を有する少なくとも1つのmiRNAを有し、ここで、該a5の細胞表面抗原の特性は、CD44陰性~弱陽性およびCD24陰性CD26陰性である、請求項1~9のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の細胞を含む細胞集団。
【請求項12】
前記細胞集団の飽和細胞培養(培養コンフルエント)時平均細胞密度が、少なくとも1500個/mm2以上である、請求項11に記載の細胞集団。
【請求項13】
前記細胞集団を注入した後にヒトの角膜内皮面に生着した細胞の平均細胞密度が、少なくとも1000個/mm2以上となる、請求項11または12に記載の細胞集団。
【請求項14】
前記細胞集団における少なくとも70%の細胞が、請求項1~10のいずれか一項に記載の特徴を有する、請求項11~13のいずれか1項に記載の細胞集団。
【請求項15】
前房内への注入時にアロ(同種異系)拒絶反応を生じさせない、請求項1~10のいずれか1項に記載の細胞または請求項11~14のいずれか1項に記載の細胞集団。
【請求項16】
前記細胞または細胞集団は、血清のサイトカインプロファイルにおいて、生体への投与後に血清炎症性サイトカインの増量などのヒト角膜内皮組織再建に関連しない目的外生体応答を実質的に惹起しない、請求項1~10のいずれか1項に記載の細胞または請求項11~14のいずれか1項に記載の細胞集団。
【請求項17】
ヒトの眼前房内への注入時にヒト角膜内皮機能特性を惹起し得る培養ヒト機能性角膜内皮細胞の品質管理または工程管理の方法であって、細胞表面マーカー;タンパク質性産物および該産物の関連生体物質;SASP関連タンパク質;細胞内および分泌型miRNA;エキソゾーム;アミノ酸を含む細胞代謝産物および該代謝産物の関連生体物質;細胞の大きさ;細胞の密度および自己抗体反応性細胞の存在からなる群より選択される少なくとも1つの細胞機能指標を測定する工程を包含し、前記ヒト機能性角膜内皮細胞の細胞表面抗原の表現型が、CD44陰性~弱陽性表現型、CD166陽性表現型、CD133陰性表現型、CD105陰性~弱陽性表現型、CD24陰性表現型、およびCD26陰性表現型を含む、方法。
【請求項18】
請求項1~16のいずれか1項に記載の少なくとも1つの角膜機能特性によって、前記培養機能性角膜内皮細胞の亜集団を同定する工程をさらに包含する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
培養ヒト角膜内皮細胞に混在する角膜内皮非機能性細胞の検出方法であって、細胞表面マーカー;タンパク質性産物および該産物の関連生体物質;SASP関連タンパク質;細胞内および分泌型miRNA;エキソゾーム;アミノ酸を含む細胞代謝産物および該代謝産物の関連生体物質;細胞の大きさ;細胞の密度および自己抗体反応性細胞の存在からなる群より選択される少なくとも1つの細胞機能指標を測定する工程を包含し、前記ヒト角膜内皮細胞の細胞表面抗原の表現型が、CD44陰性~弱陽性表現型、CD166陽性表現型、CD133陰性表現型、CD105陰性~弱陽性表現型、CD24陰性表現型、およびCD26陰性表現型を含む、方法。
【請求項20】
ヒトの眼前房内への注入時にヒト角膜機能特性を惹起し得る培養ヒト機能性角膜内皮細胞の品質管理もしくは工程管理の方法、または培養ヒト角膜内皮細胞に混在する角膜内皮非機能性細胞の検出方法であって、以下:
(1)培養上清ELISAによる純度試験
TIMP-1:500ng/mL以下
IL-8:500pg/mL以下
PDGF-BB:30pg/mL以上
MCP-1:3000pg/mL以下
(2)細胞FACSによる純度試験
CD166=95%以上
CD133=5%以下
CD105陰性~低陽性=95%以上
CD44陰性~低陽性=70%以上
CD44中程度~高陽性=15%以下
CD24=5%以下
CD26陽性=5%以下
CD200=5%以下
(3)バリア機能(ZO-1)陽性
(4)ポンプ機能(Na+/K+ATPase)陽性
(5)細胞生存率
トリパンブルー染色で70%以上
(6)細胞形態
外観試験で形質転換細胞を認めない
(7)Claudin10 陽性
(8)エフェクター細胞(E-ratio)>50%
(9)非目的細胞
非目的細胞A(CD44強陽性細胞)<15%、非目的細胞B(CD26陽性細胞)<5%、非目的細胞C(CD24陽性細胞)<5%
(10)核型異常陰性
(11)ミトコンドリア代謝系に係る酵素の発現、および
(12)OXPHOS活性
の1または複数を確認する工程を包含し、前記ヒト機能性角膜内皮細胞 の細胞表面抗原の表現型が、CD44陰性~弱陽性表現型、CD166陽性表現型、CD133陰性表現型、CD105陰性~弱陽性表現型、CD24陰性表現型、およびCD26陰性表現型を含む、方法。
【請求項21】
ヒトの眼前房内への注入時にヒト角膜機能特性を惹起し得る培養ヒト機能性角膜内皮細胞の品質管理もしくは工程管理の方法であって、対象細胞について、(1)内皮ポンプ・バリア機能の保持、(2)特定のラミニンに対する接着・結合性、(3)分泌サイトカインプロファイル、(4)産生する代謝産物プロファイル(5)インビトロ培養時の飽和細胞密度、(6)培養時に得られる細胞の空間的大きさおよびその分布、ならびに(8)マウス角膜に対する液体窒素低温凍結損傷後に細胞注入した場合の細胞維持の1または複数の特徴を判定する工程を包含し、前記ヒト機能性角膜内皮細胞の細胞表面抗原の表現型が、CD44陰性~弱陽性表現型、CD166陽性表現型、CD133陰性表現型、CD105陰性~弱陽性表現型、CD24陰性表現型、およびCD26陰性表現型を含む、方法。
【請求項22】
前記細胞は角膜内皮組織由来細胞、角膜内皮前駆細胞、多能性幹細胞、間葉系幹細胞、または、角膜内皮から採取した角膜内皮前駆細胞、角膜内皮から採取した細胞、ならびにダイレクトプログラミング法で作製される角膜内皮前駆細胞および角膜内皮様細胞からなる群より選択される細胞を起源として作製されたものである請求項1~16のいずれか1項記載の細胞もしくは細胞集団。」
(以下、「本件発明1」、「本件発明2」等という。まとめて「本件発明」ということもある。)
第3 異議申立理由の概要
異議申立人1、2が主張する異議申立理由の概要は、次のとおりのものである。(以下、異議申立理由については、異議申立人番号と理由番号により「異議1理由1」等といい、証拠方法についても同様に、異議申立人番号と証拠番号により「異議1甲1」等という。)
1 異議申立人1が申し立てた異議申立理由の概要
(1)異議1理由1(発明非該当性)
本件特許の請求項1~16に記載されたものは、天然物を単に発見したものであり、「発明」に該当しないから、請求項1~16に係る特許は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(2)異議1理由2(新規性欠如)
本件発明1~11、13、16は、甲第1号証に記載された発明であるから、本件発明1~11、13、16に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。
(3)異議1理由3(進歩性欠如)
本件発明1~16、22は、甲第1~16、19号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~16、22に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(4)異議1理由4(実施可能要件違反)、5(サポート要件違反)
本件特許は、下記ア、イの点で、特許請求の範囲の記載が発明の詳細な説明に記載したものということができず、同様の理由により、発明の詳細な説明の記載が当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものということもできないから、特許法第36条第6項第1号及び第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
ア 本件発明1~22の「CD133陰性表現型」
イ 本件発明1~22の表現型の記載
(5)異議1理由6(明確性要件違反)
本件特許は、下記ア、イの点で、特許請求の範囲の記載が明確でないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
ア 本件発明1~22の表現型の記載
イ 本件発明15、16における達成すべき結果の記載
(6)証拠方法
異議1甲1:国際公開第2015/016371号
異議1甲2:Biomed Pap Med Fac Univ Palacky Olomouc Czech Repub., vol.154(4), pp.321-326 (2010)
異議1甲3:Pathology International, vol.62, pp.792-801 (2012)
異議1甲4:PLOS ONE, vol.8(2), e56380 (2013)
異議1甲5:Cellular & Molecular Immunology, vol.7, pp.100-103 (2010)
異議1甲6:Br J Ophthalmol, vol.91, pp.94-99 (2007)
異議1甲7:Rom J Morphol Embryol, vol.54(1), pp.29-36 (2013)
異議1甲8:Molecular vision, vol.21, pp.644-648 (2015)
異議1甲9:International Journal of Molecular Medicine, vol.29, pp.871-876 (2012)
異議1甲10:Trends in Glycoscience and Glycotechnology, vol.21, pp.197-206 (2009)
異議1甲11:特開2005-60360号公報
異議1甲12:鈴木範男著「分子細胞生物学の基礎」(2004年3月1日 三共出版発行)208~209頁
異議1甲13:杏林医会誌、23巻3号、465~476頁(1992)
異議1甲14:林純一著「ミトコンドリア・ミステリー」(2013年4月1日 講談社発行)26~29頁、52~57頁
異議1甲15:大橋裕一編「専門医のための眼科診療クオリファイ 12」(2012年7月9日 中山書店発行)2~7頁、28~29頁
異議1甲16:日眼会誌、118巻2号、81~83頁(平成26年)
異議1甲17:RT2 Profiler PCR Array(Rotor-Gene(R) Format)Human Extracellular Matrix & Adhesion Moleculesの製品説明書
異議1甲18:BD LyoplateTM Screening panels Human Cell Surface Markers/Mouse Cell Surface Markersの製品説明書
異議1甲19:Invest Ophthalmol Vis Sci, vol.55, pp.216-225 (2014)
異議1甲20:眼科術語集付録1 視覚障害の定義と標準視力検査 第6版、524~527頁
異議1甲21:Trans Vis Sci Tech, vol.8(6), Article 13 (2019)
2 異議申立人2が申し立てた異議申立理由の概要
(1)異議2理由1(新規性欠如)
本件発明1~8、10~13、15、16、22は、甲第1号証に記載された発明であるから、本件発明1~8、10~13、15、16、22に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。
(2)異議2理由2(進歩性欠如)
本件発明1~22は、甲第1~5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~22に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)異議2理由3(実施可能要件違反)、4(サポート要件違反)
本件特許は、下記ア~ウの点で、特許請求の範囲の記載が発明の詳細な説明に記載したものということができず、同様の理由により、発明の詳細な説明の記載が当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものということもできないから、特許法第36条第6項第1号及び第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
ア 本件発明17~21の課題解決手段
イ 本件発明11~13、15、16の「細胞」の割合
ウ 本件発明14の「少なくとも70%」
(4)証拠方法
異議2甲1:国際公開第2015/016371号
異議2甲2:Cellular & Molecular Immunology, vol.7, pp.100-103 (2010)
異議2甲3:Clin Cancer Res, vol.14(1), pp.123-129 (2008)
異議2甲4:Cytotherapy, vol.9(3), pp.252-258 (2007)
異議2甲5:基礎老化研究、35巻3号、29~31頁(2011)
異議2甲6:Invest Ophthalmol Vis Sci, vol.58, pp.2011-2020 (2017)
なお、上記理由のうち、異議1理由2、異議1理由3、異議2理由1、異議2理由2及び異議2理由3、4イは令和4年12月6日付け取消理由通知で通知し、それらのうち異議1理由2、異議1理由3、異議2理由1及び異議2理由2は令和5年7月5日付け取消理由通知(決定の予告)で通知したものである。これらを含め、それぞれの理由についての判断を下記第4に示す。
第4 当合議体の判断
1 異議1理由1(発明非該当性)についての判断
(1)異議申立理由の具体的内容
請求項1~10に記載の細胞は、角膜組織及び新鮮なヒト角膜内皮に対するマーカーの発現の分析に基づいて、天然物であるヒト角膜組織中に存在する角膜内皮細胞を単に発見したものであるから、特許法第29条第1項柱書でいう「発明」に該当しない。請求項11~16に記載の細胞集団も同様である。
(2)判断
発明の詳細な説明の【課題を解決するための手段】に、
「【0003】
本発明者らは、培養ヒト角膜内皮細胞が培養中の細胞の相転移(線維化、上皮間葉系移行、老化、脱分化等)により複数の亜集団から構成されていることを世界において初めて見出し、培養中の亜集団を選択的に増殖する技術を考案することで、特定の亜集団、すなわち成熟分化ヒト角膜内皮細胞の機能を十分に有する機能性細胞(effector(エフェクター)細胞とも称する。)が、細胞注入療法に最適な小型で六角形の敷石様形状を形成し、主にミトコンドリア機能によるエネルギー代謝系を利用する成熟分化内皮細胞であることを確認し、革新的な本発明を完成した。」
と記載されたとおり、本件発明は、培養ヒト角膜内皮細胞が複数の亜集団から構成されていること、及び、その中の特定の亜集団が、細胞注入療法に最適な細胞であることを見いだして完成したものである。
培養ヒト角膜内皮細胞自体、ヒト角膜内皮細胞を人為的に培養することで得られる細胞であるうえ、本件発明1~10の細胞は、当該培養ヒト角膜内皮細胞の中から人為的に単離された特定の細胞であるのだから、創作性があり、特許法第29条第1項柱書でいう「発明」に該当する。「発明」に該当する細胞を含む、本件発明11~16に係る細胞集団についても同様である。
したがって、異議1理由1は理由がない。
2 異議1理由2、3及び異議2理由1、2(新規性欠如、進歩性欠如)についての判断
異議1理由2、3及び異議2理由1、2は、上記第3の1(2)、(3)及び2(1)、(2)のとおり、本件発明について、第1優先日前に頒布された刊行物である国際公開第2015/016371号(異議1甲1、異議2甲1。以下、単に「甲1」という。)により新規性及び/又は進歩性を欠如することを主張する、同趣旨のものであるから、まとめて判断する。
(1)甲1の記載事項
本件特許優先日前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1には、次の事項が記載されている。
ア 「請求の範囲
【請求項1】
CD166、HLA-A2、CD66a、CD66c、CD66d、CD66e、CD98、CD59、CD54、CD340、CD47、EGF-R、CD29、CD74、CD165、CD221、CD49a、SSEA-4、CD130およびCD49fからなる群より選択される遺伝子の核酸および/または該核酸によってコードされるタンパク質を含む正常角膜内皮細胞マーカー:ならびに
CD26、CD9、CD49b、CD49e、CD13、CD99、CD105、CD63、CD58、CD201、CD56、CD44、CD55、CD71、CD73、CD91、HLA-DQ、CD164、CD49d、CD49c、CD90、MICA/B、CD46、CD140b、CD146、CD147、CD81、CD151、CD200およびCD10なる群より選択される遺伝子の核酸および/または該核酸によってコードされるタンパク質を含む形質転換角膜内皮細胞マーカーから選択される少なくとも1つを含む、角膜内皮細胞の正常細胞・形質転換細胞を識別するためのマーカー。
・・・
【請求項18】
a)角膜内皮細胞を含む試料を提供する工程;および
b)該サンプルにおいて、請求項1~7のいずれか1項に記載のマーカーを指標として、正常角膜内皮細胞の割合を上昇させる工程
を含む、正常角膜内皮細胞の割合が上昇した角膜内皮細胞試料を調製するための方法。
・・・
【請求項20】
請求項1~7のいずれか1項に記載のマーカーを、角膜内皮細胞を含む試料を作製する際の純度検定の指標とする方法。」(68頁2行~70頁11行)
イ 「【課題を解決するための手段】
本発明は、角膜細胞、特に角膜内皮細胞の正常細胞と形質転換細胞とを識別するマーカーを提供する。」(3頁1~3行)
ウ 「【発明の効果】
本発明によれば、角膜内皮細胞に存在する細胞の分化能を識別することができ、機能が高い細胞を識別することができ、その結果従来不可能または困難であった、角膜内皮の疾患や障害を治療または予防することができる。また、細胞を含む試料を作製する際の純度検定の方法、角膜内皮細胞の純化方法、純化された角膜内皮細胞を調製するための方法もまた提供される。」(8頁3~8行)
エ 「本明細書において「正常角膜内皮細胞マーカー」とは、正常な角膜内皮細胞において発現し、形質転換を受けると、発現量が有意に減少するマーカーをいう。」(27頁30~32行)
オ 「本明細書において「形質転換角膜内皮細胞マーカー」とは、形質転換を起こした角膜内皮細胞において発現し、正常細胞では有意に発現が低いマーカーをいう。」(28頁3~5行)
カ 「本明細書において「形質転換」とは、細胞の形質が正常ではない状態に変化することをいい、正常な動物細胞が無制限に分裂を行うようになる、つまりがん化の意味、または化生の中で特にダイナミックなもの(幹細胞まで脱分化したり組織の基本形の壁を越えて変化したりするもの)の意味を含む。」(28頁13~16行)
キ 「本明細書において、角膜内皮細胞が正常に培養されているかどうかは、角膜内皮細胞が本来有している機能(本明細書では「正常(な)機能」ともいい、そのような細胞を「正常細胞」ともいう。)等の特徴を少なくとも1つは維持しているかを確認することによって判定することができる。そのような機能としては、ZO-1およびNa+/K+-ATPase、角膜移植への適応能(・・・)等が挙げられるがそれらに限定されない。すなわち、「正常な機能」は、角膜移植を実現するのに必要な機能または十分であることを示す指標でありうることが理解される。例えば、正常化の判断方法としては、ZO-1およびNa+/K+-ATPaseのような角膜内皮細胞における機能タンパク質を指標としてその発現の変化を観察したり、あるいはサル等への移植によって生着し、機能するかどうかを調べることによって実行することができる。」(28頁17~36行)
ク 「(細胞培養)
ヒト角膜内皮細胞初代培養では、角膜組織から内皮細胞層を含むデスメ膜を剥離し、OPTIMEM-Iに溶解した2mg/ml Collagenase A(カタログ番号:70164923;Roche Applied Science,Penzberg, Germany)に入れて37℃でインキュベートした。12時間後、1000rpmで5分間遠心分離して上清を除去後、沈殿している角膜内皮細胞塊に培養培地を加えて混和し、FNC Coating Mix(カタログ番号:0407;Athena Enzyme Systems, Baltimore,MD,USA)をコートした12ウェルプレートへ全量を播種した。培養培地はOPTIMEM-I(カタログ番号:51985;Gibco-Invitrogen, Carlsbad, CA)に8%ウシ胎仔血清(カタログ番号:10437-028;fetal bovine serum;FBS;BioWest,France)、50μg/ml Gentamicin(Invtirogen)、10μM Y-27632(Calbiochem, La Jolla,CA)を加えたものを使用した。
・・・
ヒト角膜は、初代培養までの期間が14日未満のものを用いた。ヒトおよびサルの角膜内皮細胞(CEC)の培養には、以前に報告した系[Koizumi N et al.、Exp Eye Res.,2012;95:60-67;Koizumi N et al.、Invest Ophthalmol Vis Sci..2007;48:4519-4526;Okumura N et al.、Am J Pathol. 2012;181:268-277]を使用した。
培地交換は2日ごとに行った。継代は50~80%コンフルエントになった時点で行った。継代方法は、Ca2+Mg2+非含有(free)PBS(PBS-;Nissui Pharmaceutical Co., Ltd., Tokyo. Japan)で細胞を洗浄し、TrypLETM Select(カタログ番号:12563;Invitrogen)を加え、37℃で5分間インキュベートした。プレートから細胞を剥離して回収し、1000rpm 5分間遠心分離後、培養培地を加えて細胞懸濁液とした。FNC Coating Mixをコートしたプレートへ1:2~3の密度で細胞を播種した。」(54頁22行~55頁20行)
ケ 「(実施例1:形質転換角膜内皮細胞および正常角膜内皮細胞におけるフローサイトメトリー)
本発明者らは、フローサイトメトリーを用いたハイスループット解析により、正常ヒト角膜内皮細胞および形質転換した細胞の表面マーカーのスクリーニングを行い、候補マーカーの選定を進めた。
ヒト角膜内皮細胞を上述の(実験材料と方法)に記載の方法で培養して、細胞形態が正常の細胞と形質転換した細胞をHuman Cell Surface Marker Screening Panel (BD LyoplateTM、BD Bioscience)を用いてフローサイトメトリーを用いたハイスループット解析を行った。そこで、正常細胞および形質転細胞におけるそれぞれの表面抗原の発現を比較して、正常細胞において増強しているものを正常細胞のマーカー候補とした(表2)。一方、同様に形質転換細胞で発現が増強しているものを形質転換細胞のマーカーとした(表3)。
(表2 正常転換ヒト角膜内皮細胞において強発現である表面抗原)
[図:0001409068000001.jpg]
(表3 形質転換ヒト角膜内皮細胞において強発現である表面抗原)
[図:0001409068000002.jpg]
」(58頁18行~60頁)
コ 「(実施例2:培養サル角膜内皮細胞における解析)
本実施例では、培養サル角膜内皮細胞を用いて、形質転換細胞および正常細胞におけるこれらの細胞表面マーカーの解析を行った。
・・・同様の方法で培養した際に、正常の形態に培養できた角膜内皮細胞を正常角膜内皮細胞として、線維芽細胞様に形質転換を生じた細胞を形質転換細胞として以下の検討に用いた。図2の位相差顕微鏡像において左側に示す正常角膜内皮細胞は、1つ1つの細胞が小さく、六角形を主とする多角形細胞から成る様子が示されている。それに対し、右側に示す、線維芽細胞様に形質転換を起こしている細胞では、1つ1つの細胞が大きく、細長い形状をしている。」(62頁4~24行)
サ 「(実施例4:不死化ヒト角膜内皮細胞における解析)
本実施例では、調製例にて調製した不死化ヒト角膜内皮細胞を用いて、形質転換細胞および正常細胞におけるこれらの細胞表面マーカーの解析を行った。
・・・作製したヒト角膜内皮不死化細胞から、正常の細胞形態または線維芽細胞様に形質転換した細胞をそれぞれクローニングして、正常細胞、形質転換細胞として以下の検討に用いた。
そのヒト角膜内皮不死化細胞の位相差顕微鏡像を図7に示す。左は正常角膜内皮細胞を示し、右は形質転換細胞を示す。培養サル細胞と同様に、左側に示す正常角膜内皮細胞は、1つ1つの細胞が小さく、六角形を主とする多角形細胞から成る様子が示されている。それに対し、右側に示す、線維芽細胞様に形質転換を起こしている細胞では、1つ1つの細胞が大きく、細長い形状をしている。
次に、CD73を例として、本特許におけるマーカーを用いることで、正常細胞をソーティングして純化できるか否かの試験を行った。正常形態および形質転換不死化ヒト角膜内皮細胞の混合培養細胞をCD73によりフローサイトメトリー解析を行った。
結果を図8に示す。CD73によるフローサイトメトリーにより、CD73の高発現の細胞群と低発現の細胞群の2群からなることが分かる。次に、図8のP4で示されるCD73低発現の細胞と、P5で示されるCD73高発現の細胞をソーティングして細胞培養を行った。
結果を図9に示す。左はCD73低発現の細胞(CD73(-))、中はCD73高発現の細胞(CD73(+))のソーティング後の位相差顕微鏡写真である。CD73(-)では、正常細胞の形態である多角形形態の細胞であるのに対してCD73(+)では、形質転換した線維芽細胞様形態となった細胞である。右はコントロールとしてソーティングを行わずに培養した位相差顕微鏡像であるが、正常の形態での細胞と、形質転換した細胞が混在する。これらのことから、CD73をマーカーとして用いることで、正常細胞と形質転換して線維芽状となった細胞とをソーティングに用いることが可能であることが示された。
次に、CD73によりソーティングした後の候補マーカーの発現解析を行った。ここでは、CD73、CD166の発現解析を行った。プロトコールは、(実験材料および方法)に記載したものに準じた。
結果を図10に示す。上段がCD73(-)としてソーティングした細胞を示し、下段がCD73(+)としてソーティングした細胞を示す。左側はCD73による染色、右側はCD166による染色を示す。CD73(-)では、CD73が染色されないが、CD166が強く染色された。また、CD73(+)ではCD73が染色される一方で、CD166の発現がCD73(-)と比べて減弱を認めた。
次に、CD73によりソーティング下後の機能関連マーカーの発現解析を行った。ここでは、ZO-1およびNa+/K+-ATPaseの発現を解析した。プロトコールは、(実験材料および方法)に記載したものに準じた。
結果を図11に示す。上段がCD73(-)を示し、下段がCD73(+)を示す。左側は、ZO-1の発現を示し、右側は、Na+/K+-ATPaseの発現を示す。CD73(-)では、正常機能を示すZO-1およびNa+/K+-ATPaseがいずれも有意に多く発現していることが示される。したがって、CD73(-)は、機能的な面でも、正常細胞を形質転換した細胞から区別することができるマーカーであることが示される。」(63頁35行~65頁13行)
(2)甲1に記載された発明
甲1は、培養した角膜内皮細胞を細胞形態が正常な正常細胞と正常でない形質転換細胞とに分離して、両者における各種表面抗原の発現を比較して、正常細胞において増強しており、形質転換を受けると有意に減少するものを正常角膜内皮細胞マーカー、形質転換細胞において増強しており、正常細胞では有意に発現が低いものを形質転換角膜内皮細胞マーカーとして選定したことが記載されている(上記(1)ア~カ、ケ)。
そして、甲1の表2及び表3に記載される、正常ヒト角膜内皮細胞において発現が増強している表面抗原及び形質転換した細胞において発現が増強している表面抗原の解析結果から(上記(1)ケ)、次のとおりの細胞の発明が記載されていると認められる。
「培養した角膜内皮細胞を細胞形態が正常な正常細胞と正常でない形質転換細胞とに分離した場合の、細胞形態が正常なヒト角膜内皮細胞であって、該細胞の細胞表面抗原の表現型は、CD166、HLA-A2、CD66a、CD66c、CD66d、CD66e、CD98、CD59、CD54、CD340、CD47、EGF-R、CD29、CD74、CD165、CD221、CD49a、SSEA-4、CD130及びCD49fが強陽性表現型、CD26、CD9、CD49b、CD49e、CD13、CD99、CD105、CD63、CD58、CD201、CD56、CD44、CD55、CD71、CD73、CD91、HLA-DQ、CD164、CD49d、CD49c、CD90、MICA/B、CD46、CD140b、CD146、CD147、CD81、CD151、CD200及びCD10が弱陽性~陰性表現型である、細胞。」(以下、「甲1発明」という。)
(3)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、両者は、「ヒト角膜内皮細胞であって、該細胞の細胞表面抗原の表現型は、CD44陰性~弱陽性表現型、CD166陽性表現型、CD105陰性~弱陽性表現型、およびCD26陰性表現型を含む、細胞。」である点で一致し、次の点で相違する。
(相違点1) 本件発明1は、「ヒト眼前房内への注入時にヒト角膜内皮機能特性を惹起し得るヒト機能性角膜内皮細胞」であって、該細胞の細胞表面抗原の表現型として、「CD133陰性表現型」および「CD24陰性表現型」も特定されているのに対して、甲1発明は、「培養した角膜内皮細胞を細胞形態が正常な正常細胞と正常でない形質転換細胞とに分離した場合の、細胞形態が正常なヒト角膜内皮細胞」であって、CD133およびCD24の表現型は特定されていない点。
イ 判断
甲1発明は、上記(2)のとおり、「培養した角膜内皮細胞」を「細胞形態が正常な正常細胞と正常でない形質転換細胞」という2種類の細胞に分離したときの、「細胞形態が正常なヒト角膜内皮細胞」である。
一方、本件発明は、「本発明者らは、培養ヒト角膜内皮細胞が培養中の細胞の相転移(線維化、上皮間葉系移行、老化、脱分化等)により複数の亜集団から構成されていることを世界において初めて見出し、培養中の亜集団を選択的に増殖する技術を考案することで、特定の亜集団、すなわち成熟分化ヒト角膜内皮細胞の機能を十分に有する機能性細胞(effector(エフェクター)細胞とも称する。)が、細胞注入療法に最適な小型で六角形の敷石様形状を形成し、主にミトコンドリア機能によるエネルギー代謝系を利用する成熟分化内皮細胞であることを確認し、革新的な本発明を完成した。」(本件発明の詳細な説明【0003】)というものであって、実施例1の表1Gaには、【0299】記載の条件で培養したヒト角膜内皮細胞は、CD44、CD166、CD24及びCD105の4種類のマーカーの発現の有無により4~10の亜集団に分離できることが具体的データを伴って記載されており、本件発明1と甲1発明との一致点に含まれる表現型である、CD44陰性、CD166陽性、CD105陰性という表現型の細胞の中に、CD24陰性の細胞もCD24陽性の細胞も存在することが見て取れる。
また、甲1の実施例4には、不死化ヒト角膜内皮細胞のうちCD73が低発現である細胞は、CD166は高発現であって、「正常機能を示すZO-1およびNa+/K+-ATPaseがいずれも有意に多く発現していることが示される。したがって、CD73(-)は、機能的な面でも、正常細胞を形質転換した細胞から区別することができるマーカーであることが示される。」(上記(1)サ)と記載されているが、本件の発明の詳細な説明には、「ZO1およびNa+/K+ATPaseの発現からは均一性は保証されない」というタイトルで、「HCECのマーカーとして周知であるZO1およびNa+/K+ATPaseの両方は、CD44-の亜集団について染色されただけではなく、層状かつ線維芽細胞様の形態を有するCD44++CD24-の亜集団およびCD44++CD24+の亜集団についても染色された(図3)。典型的な層状かつ線維芽細胞様の形態を有するCD44+++CD24+の亜集団はこれらを発現していなかった(図3)。」(【0314】)と記載されていることから、甲1発明の細胞は均一な細胞であるとは認められない。
以上によれば、甲1発明の細胞は均一ではなく、複数種類の亜集団を含むのに対して、本件発明1の細胞は、甲1発明の細胞よりも均一性の高い亜集団細胞であると認められるから、上記相違点1は実質的な相違点であり、本件発明1と甲1発明は同一であるとはいえない。
また、甲1においては、その請求項1に記載された「角膜内皮細胞の正常細胞・形質転換細胞を識別するためのマーカー」により、機能性が高い細胞を識別することができ、その結果従来不可能または困難であった疾患や障害を治療または予防することができるものとされており、当該両マーカーにより選択された細胞である甲1発明がさらなる亜集団からなるものであることをうかがわせる記載はなく、甲1発明をさらに選別して上記相違点1に係る構成をする動機付けは見いだせないから、上記相違点1に係る構成は当業者といえども、導き出すことはできない。したがって、本件発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。
(4)本件発明2~16、22について
上記(3)のとおり、本件発明1は甲1発明に対して新規性及び進歩性を有するものであるから、本件発明1にさらなる限定を加えた本件発明2~10、22及び本件発明1の細胞を含む本件発明11~16、22も同様に、甲1発明に対して新規性及び進歩性を有する。
(5)本件発明17~21について
本件発明17、18、20、21の「培養ヒト機能性角膜内皮細胞の品質管理または工程管理の方法」において品質管理又は工程管理される「培養ヒト機能性角膜内皮細胞」、及び本件発明19、20の「培養ヒト角膜内皮細胞に混在する角膜内皮非機能性細胞の検出方法」における「ヒト角膜内皮細胞」は、「細胞表面抗原の表現型が、CD44陰性~弱陽性表現型、CD166陽性表現型、CD133陰性表現型、CD105陰性~弱陽性表現型、CD24陰性表現型、およびCD26陰性表現型を含む」ものであって、本件発明1の細胞に他ならないから、本件発明17~21も、本件発明1と同様に、甲1発明に対して新規性及び進歩性を有する。
(6)異議申立人の主張について
異議申立人1は、上記相違点1について、正常角膜内皮細胞である甲1発明が、周知のがん幹細胞マーカーであるCD133(異議1甲2~4)及び周知のがん細胞マーカーであるCD24(異議1甲5)が陰性であるという性質を有していることは、甲1に記載されているに等しい、又は、移植に用いる甲1発明を当該がん(幹)細胞マーカー陰性により選別することは当業者が容易に推考しうることである旨主張する。
また、異議申立人2は、上記相違点1について、正常角膜内皮細胞である甲1発明が、角膜実質細胞で発現が多いことが知られたCD133(異議2甲4)及び周知のがん細胞マーカーであるCD24(異議2甲2、3)が陰性であるという性質を有していることは、甲1に記載されているに等しい、又は、移植に用いる甲1発明を当該がん(幹)細胞マーカー陰性により選別することは当業者が容易に推考しうることである旨主張する。
しかし、上記(3)イで判断したとおり、本件発明1の細胞は、甲1発明の細胞よりも均一性の高い亜集団細胞であると認められ、本件発明1と甲1発明は同一であるとはいえないし、甲1発明をさらに選別する動機付けは見いだせないから、たとえ異議申立人1及び2が主張するように、CD133及びCD24が周知のマーカーであったとしても、それらのマーカーに基づいて甲1発明の細胞をさらに選別することを当業者が容易に想到し得たとは認められない。
したがって、異議申立人1及び2の上記主張は採用することができない。
(7)小括
以上のとおりであるから、異議1理由2、3及び異議2理由1、2は、理由がない。
3 異議1理由4、5及び異議2理由3、4(実施可能要件違反、サポート要件違反)についての判断
(1)異議申立理由の具体的内容
ア 異議1理由4、5のア(本件発明1~22の「CD133陰性表現型」)
本件発明1の「ヒト機能性角膜内皮細胞」は、「CD133陰性表現型」という発明特定事項を含むのに対して、実施例1ではCD133について記載はあるものの、【0319】~【0321】の記載によれば、実施例1の実験手法はCD133について解析できるものではない。また、その他のいずれの実施例にも、CD133の表現型について記載されていない。
したがって、発明の詳細な説明には、本件発明1の細胞が課題を解決できること、本件発明1の細胞をいかにして取得するのか、いかにして用いるかについて記載されていないといえる。
イ 異議1理由4、5のイ(本件発明1~22の表現型の記載)
本件発明1では、細胞表面抗原の表現型について、「陰性~弱陽性表現型」、「陽性表現型」及び「陰性表現型」といった表現で規定している。
それに対して、発明の詳細な説明(【0118】~【0121】)には、細胞指標マーカーのFACSにおけるシグナル強度に関する記載があるが、特定の測定条件におけるシグナル強度範囲の定義が記載されただけである。細胞表面抗原の表現型は、FACSに用いる装置の種類、装置の個体差、抗体のロットといった測定条件によって蛍光強度の結果が変化するため、測定条件や蛍光強度範囲が定義されていない本件発明1の範囲まで発明の詳細な説明の開示を拡張ないし一般化することはできない。また、当業者が本件発明1の細胞を得るには、測定条件を設定するのに過度の試行錯誤を要するといえる。本件発明2~22についても同様である。
ウ 異議2理由3、4のア(本件発明17~21の課題解決手段)
発明の詳細な説明の【0097】や【0100】によれば、本件発明は、機能性ヒト角膜内皮細胞と非機能性ヒト角膜内皮細胞を識別する細胞表面マーカー(CD44等)を特定し、これを利用して角膜内皮組織由来の細胞を培養した細胞集団の品質を管理することを特徴とする発明であると解される。
しかし、本件発明17~21は、角膜内皮組織由来の細胞を培養した細胞集団について、上記細胞表面マーカーの表現型を調べ、機能性ヒト角膜内皮細胞を検出する工程、すなわち課題解決手段を含んでいないから、発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない。また、発明の詳細な説明は、本件発明17~21の全範囲を実施することができるように記載したものとはいえない。
エ 異議2理由3、4のイ(本件発明11~13、15、16の「細胞」の割合)
本件発明11~13、15、16では、「細胞集団」が「請求項1~10のいずれか1項に記載の細胞」をどの程度含むかについて特定されていないから、上記発明には上記細胞をごく微量しか含まない細胞集団も含まれる。そのような細胞集団は、本件発明の効果を奏さないから、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえない。また、発明の詳細な説明は、本件発明11~13、15、16を実施することができるように記載したものとはいえない。
オ 異議2理由3、4のウ(本件発明14の「少なくとも70%」)
本件発明14の「細胞集団」は、本件発明1の細胞を少なくとも70%含むことを特徴とする。
それに対して、発明の詳細な説明の【0164】の記載によれば、本件発明14の「細胞集団」を得るためには、細胞亜集団をきっちりと確実に識別し分離することができる技術及び情報を確率することなどの、特別な手法が必要であるといえる。
また、フローサイトメトリーの結果において、閾値をどこに設定するかに応じて、陰性、陽性、中陽性及び強陽性の割合は変動し得るし、フローサイトメトリーの蛍光強度は測定条件や測定装置に応じてばらつきが出るから、細胞集団中の本件発明1の細胞の割合を特定できるとはいえない。
したがって、本件発明14は、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえない。また、発明の詳細な説明は、本件発明14を実施することができるように記載したものとはいえない。
(2)判断
ア 異議1理由4、5のア(本件発明1~22の「CD133陰性表現型」)
発明の詳細な説明の実施例1において、(結果)として、
「【0318】 フローサイトメトリー分析を、前房内への細胞注入に適応可能な亜集団を規定するためにさらに実施した。cHCECの表現型を、CD166、CD133、CD105、CD90、CD44、CD26、CD24、HLA-ABC、HLA-DR/DP/DQおよびPDL1について調べた。また、摘出直後の角膜組織中でのこれらのマーカーの発現も確認し、CD133、CD105、CD90、CD44、CD26、CD24、HLA-DR/DP/DQは発現されていないことを確認した(図6-B)。免疫組織学的試験に基づいて、CD133、CD105、CD90、CD44、CD26、CD24およびHLA-DR/DP/DQが陰性、かつCD166およびHLA-ABCが陽性である亜集団をエフェクター細胞(本発明の成熟分化角膜内皮機能性細胞に該当する)として定義して、細胞注入療法への適用を確実にした。代表的な免疫細胞学的染色を図6-Bに示した。本発明者らによる予備的ではあるがさらなる実験において、新鮮なヒト角膜内皮は、CD24、CD26、CD44、CD90およびCD133のいずれの存在も示さなかったが、明らかにCD166を強く発現していた。このことから、ここで示したcHCECの異数性を全く示さない亜集団の表現型は新鮮な角膜内皮組織中のHCECの亜集団と符合することが示される。」
と記載され、(結論)として、
「【0335】 本研究によって、cHCECが様々な細胞から構成されていることおよびCD44-、CD166+、CD133-、CD105-、CD24-、CD26-という表面発現を示すcHCECの特定の亜集団はCSTもEMTも起こさずに再現性良く培養できることを示した。上述のCDマーカーの組み合わせによって、ミトコンドリア依存的OXHOSへの傾倒を示すが、嫌気的解糖への傾倒は示さない亜集団を品質評価できる。このように識別した亜集団は核型異常を示さず、これにより安全かつ安定して治療のためにこの培養細胞を提供できるようになり、すなわち、水疱性角膜症の処置のための細胞懸濁液の形態でcHCECを前房中に移植することができるようになる。」
と記載されている。
上記記載によれば、実施例1において、cHCEC(培養ヒト角膜内皮細胞)にフローサイトメトリー分析を実施してCD133をはじめとする請求項1記載の6種類の細胞表面マーカーを含む10種類のマーカーについて表現型を調べ、摘出直後の角膜組織や新鮮なヒト角膜内皮の表現型と符号する、CD133陰性をはじめとする請求項1記載の細胞表面マーカー表現型を示す細胞亜集団をエフェクター細胞と定義したこと、cHCEC(培養ヒト角膜内皮細胞)のうち、CD133陰性をはじめとする請求項1記載の細胞表面マーカー表現型を示す細胞亜集団はCSTやEMTといった相転移を起こさずに再現性よく培養できることが具体的に示されているといえる。
異議申立人1は、【0319】~【0321】の記載によれば、実施例1の実験手法はCD133について解析できるものではない旨主張するが、当該段落は、上記【0138】及び【0335】に記載された事項に関する実験手法とは認められないから、失当である。
したがって、異議1理由4、5のアは理由がない。
イ 異議1理由4、5のイ(本件発明1~22の表現型の記載)
発明の詳細な説明においては、【0118】に、「陰性」は「発現が実質的にないもの」、「陽性」は「発現が有意に観察されるもの」、「弱陽性」は「その(発現レベルの)強度を3段階に分類」した場合の一番弱いものであることと、技術常識どおりの用語の意味が記載され、「標識の蛍光の種類、機器設定により蛍光強度が異なる」(【0120】)と注釈を付けたうえで、【0119】~【0122】に具体的な検出装置や条件下でのシグナル強度を例示しているのだから、本件発明1~22に記載された細胞表面マーカーの表現型について、当業者が理解し、実施できる程度に明確に記載されていると認められる。
したがって、異議1理由4、5のイは理由がない。
ウ 異議2理由3、4のア(本件発明17~21の課題解決手段)
本件発明17、18、20、21の「培養ヒト機能性角膜内皮細胞の品質管理もしくは工程管理の方法」の対象となる「培養ヒト機能性角膜内皮細胞」、及び本件発明19の「培養ヒト角膜内皮細胞に混在する角膜内皮非機能性細胞の検出方法」の「培養ヒト角膜内皮細胞」は、「CD44陰性~弱陽性表現型、CD166陽性表現型、CD133陰性表現型、CD105陰性~弱陽性表現型、CD24陰性表現型、およびCD26陰性表現型を含む」細胞、すなわち、本件発明が提供した課題解決手段であるヒト機能性角膜内皮細胞の細胞マーカー表現型を示す細胞であるから、本件発明17~21は、課題解決手段を含むものである。
したがって、異議2理由3、4のアは理由がない。
エ 異議2理由3、4のイ(本件発明11~13、15、16の「細胞」の割合)
発明の詳細な説明の冒頭には、
「【0001】本発明は、ヒトの眼前房内への注入時にヒト角膜内皮機能特性を惹起し得るヒト機能性角膜内皮細胞、その細胞を含む医薬、その製造法、およびその製造された細胞および製造工程の品質管理等の応用に関する。」
とあり、【0163】には、
「本発明の細胞集団は、機能性成熟分化角膜内皮細胞の比率が、天然に存在する比率よりも高められた比率で存在することが特徴である。」
と記載され、続く【0164】には、
「好ましい実施形態では、本発明の細胞集団における少なくとも5%以上の、約10%以上の、約15%以上の、約20%以上の、約25%以上の、約30%以上の、約35%以上の、約40%以上の、約45%以上の、約50%以上の、約55%以上の、約60%以上の、約65%以上の、約70%以上の、約75%以上の、約80%以上の、約85%以上の、約90%以上の、約95%以上の、約98%以上の、約99%以上の細胞が機能性成熟分化角膜内皮細胞であることが有利である。」
と記載されている。
これらの記載によれば、本件発明11~13、15、16の「細胞集団」における「請求項1~10のいずれか1項に記載の細胞」、すなわち「ヒト機能性角膜内皮細胞」の比率は、天然に存在する比率よりも高められた、例えば【0164】に記載された程度のものであることが自明である。
したがって、異議2理由3、4のイは理由がない。
オ 異議2理由3、4のウ(本件発明14の「少なくとも70%」)
発明の詳細な説明の【0164】には、
「さらに好ましい実施形態では、本発明の細胞集団は、少なくとも約70%以上の、より好ましくは少なくとも80%以上の、さらにより一層好ましくは少なくとも約90%以上の細胞が機能性成熟分化角膜内皮細胞であることが有利である。このレベルの機能性細胞の存在比を達成しようとした場合は、偶然の手法ではできず、細胞亜集団をきっちりと確実に識別し分離することができる技術および情報を確立することが必要であるからであり、従来の技術ではこのようなことは大凡不可能であったといえるからである。なお、発明の技術を用いることにより、機能性成熟分化角膜内皮細胞の比率は、さらに高めることができ、例えば、少なくとも約95%以上の、少なくとも約96%以上の、少なくとも約97%以上の、少なくとも約98%以上の、少なくとも約99%以上の細胞が機能性成熟分化角膜内皮細胞である細胞集団も提供することができる。」
と記載されており、従来の技術では機能性成熟分化角膜内皮細胞を約70%以上含むような細胞集団を確実に識別し分離することは大凡不可能であったところ、本件発明の細胞表面マーカー表現型を用いた選別により、約70%にとどまらず、約95%以上等の機能性成熟分化角膜内皮細胞を含む細胞集団を提供することができるようになったものと解される。そして、上記イで判断したとおり、陰性、弱陽性、陽性といった細胞表面マーカーの発現の程度(表現型)は、【0118】~【0122】の記載に基づいて当業者が決定できるものであり、細胞集団中の機能性成熟分化角膜内皮細胞の割合も決定できるものである。
したがって、異議2理由3、4のウは理由がない。
カ 小括
以上のとおりであるから、異議1理由4、5及び異議2理由3、4は理由がない。
5 異議1理由6(明確性要件違反)
(1)異議申立理由の具体的内容
ア 異議1理由6のア(本件発明1~22の表現型の記載)
本件発明1では、細胞表面抗原の表現型について、「陰性~弱陽性表現型」、「陽性表現型」及び「陰性表現型」といった表現で規定している。
それに対して、発明の詳細な説明(【0118】~【0121】)には、細胞指標マーカーのFACSにおけるシグナル強度に関する記載があるが、特定の測定条件におけるシグナル強度範囲の定義が記載されただけである。細胞表面抗原の表現型は、FACSに用いる装置の種類、装置の個体差、抗体のロットといった測定条件によって蛍光強度の結果が変化するため、測定条件や蛍光強度範囲が定義されていない本件発明1の範囲は不明確である。本件発明2~22についても同様である。
イ 異議1理由6のイ(本件発明15、16における達成すべき結果の記載)
本件発明15の「前房内への注入時にアロ(同種異系)拒絶反応を生じさせない」及び本件発明16の「血清のサイトカインプロファイルにおいて、生体への投与後に血清炎症性サイトカインの増量などのヒト角膜内皮組織再建に関連しない目的外生体応答を実質的に惹起しない」という発明特定事項は、発明が達成すべき結果であって、本件発明15及び16では達成するための事項は特定されていない。そして、異議1理由4、5アのとおり、発明の詳細な説明には、本件発明の細胞や細胞集団の実施例は記載されておらず、本件発明の細胞や細胞集団が、上記達成すべき結果を達成できると認識できるとはいえないから、本件発明15及び16は明確でない。
(2)判断
ア 異議1理由6のア(本件発明1~22の表現型の記載)
発明の詳細な説明において、【0118】に、「陰性」は「発現が実質的にないもの」、「陽性」は「発現が有意に観察されるもの」、「弱陽性」は「その(発現レベルの)強度を3段階に分類」した場合の一番弱いものであることと、技術常識どおりの用語の意味が記載され、「標識の蛍光の種類、機器設定により蛍光強度が異なる」(【0120】)と注釈を付けたうえで、【0119】~【0122】に具体的な検出装置や条件下でのシグナル強度を例示しているのだから、本件発明1~22における細胞表面マーカーの表現型の記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
したがって、異議1理由5のイは理由がない。
イ 異議1理由6のイ(本件発明15、16における達成すべき結果の記載)
本件発明15の「前房内への注入時にアロ(同種異系)拒絶反応を生じさせない」は、文言上、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとは認められない。そして、それに関連して、発明の詳細な説明には、本件発明のヒト機能性角膜内皮細胞は、他の亜集団に比較して免疫拒絶反応に係るHLAクラスI抗原や細胞変性関連抗原の発現が低いこと(【0095】、【0165】、【0238】)や、さらなる指標として、免疫拒絶反応に関連するMHC-1やMHC-2といった免疫関連抗原の発現強度を用いること(【0123】)が記載されており、本件発明のヒト機能性角膜内皮細胞を用いるだけで、あるいは、さらにMHC-1やMHC-2といった免疫関連抗原の発現強度により選別することで「前房内への注入時にアロ(同種異系)拒絶反応を生じさせない」ことを達成できると認識できる。
また、本件発明16の「血清のサイトカインプロファイルにおいて、生体への投与後に血清炎症性サイトカインの増量などのヒト角膜内皮組織再建に関連しない目的外生体応答を実質的に惹起しない」文言上、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとは認められない。そして、当該目的外生体応答に関連して、発明の詳細な説明には、従来の低品質の角膜内皮細胞は生体への投与後に目的外生体応答を惹起するのに対して、本件発明の機能性角膜内皮細胞は実質的に惹起しないことが具体的に示されている(図61~63、【0170】)から、本件発明のヒト機能性角膜内皮細胞自体が、「血清のサイトカインプロファイルにおいて、生体への投与後に血清炎症性サイトカインの増量などのヒト角膜内皮組織再建に関連しない目的外生体応答を実質的に惹起しない」ことが認識できる。
したがって、異議1理由6のイは理由がない。
ウ 小括
このとおり、異議1理由6は理由がない。
第5 むすび
以上のとおり、異議申立人1が主張する異議1理由1~6及び異議申立人2が主張する異議2理由1~4によっては、請求項1~22に係る特許を取り消すことはできない。また、他に請求項1~22に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、結論のとおり決定する。
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2022-700781