特許異議申立
2023-700914
合成樹脂製容器、プリフォーム、及び合成樹脂製容器の製造方法
- 審判番号
- 2023-700914
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-231190
- 登録番号
- 7242174
- 請求日
- 2023年09月05日
- 審決日
- 2024年05月07日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社吉野工業所
- 【権利者代理人】杉村 憲司
- 【権利者代理人】杉村 光嗣
- 【権利者代理人】塚中 哲雄
- 【権利者代理人】片岡 憲一郎
- 【権利者代理人】真能 清志
- 【異議申立人】▲高▼貫 ひとみ
- 審判長/審判官
- 審判長 森藤 淳志
- 審判官 藤井 眞吾
- 審判官 神山 茂樹
- 分類
- P1651.121-YAA(B65D) / P1651.537-YAA(B65D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7242174号発明「合成樹脂製容器、プリフォーム、及び合成樹脂製容器の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7242174号の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕、8、〔9~12〕について訂正することを認める。
特許第7242174号の請求項1~12に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7242174号(以下「本件特許」という。)の請求項1~12に係る特許についての出願は、平成29年11月30日の出願であって、令和5年3月10日にその特許権の設定登録がされ、令和5年3月20日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和5年 9月 5日 :特許異議申立人高貫ひとみ(当審注:「高」は正しくは異字体のはしごだか。以下「申立人」という。)による本件特許に対する特許異議の申立て
令和5年12月 8日付け:取消理由通知書
令和6年 2月 7日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出(以下、この訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)
なお、当審から令和6年2月14日付けで申立人に対して訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)を、期間を指定して行ったが、当該期間内に申立人からは応答がなかった。
第2 本件訂正請求
1 訂正の内容
本件訂正請求の趣旨は、「特許第7242174号の明細書、特許請求の範囲を本請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~12について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
本件訂正前の請求項1に記載された
「前記胴部は、基材層を、該基材層の径方向外側に配置され1又は複数の樹脂層を有する外層と共に延伸ブロー成形することにより形成されており、
前記胴部における前記基材層、及び前記外層を構成する各樹脂層は、高さ方向の全ての位置及び全周方向位置において厚み方向に隣接する径方向外側の樹脂層の方が径方向内側の樹脂層よりも炭酸ガスの透過係数が大きいことを特徴とする合成樹脂製容器。」を、
「前記胴部は、基材層を、該基材層の径方向外側に配置され複数の樹脂層を有する外層と共に延伸ブロー成形することにより形成されており、
前記胴部における高さ方向の全ての位置及び全周方向位置において、前記外層を構成する複数の樹脂層は前記基材層を構成する樹脂層よりも炭酸ガスの透過係数が大きく、前記外層を構成する複数の樹脂層は厚み方向に隣接する径方向外側の樹脂層の方が径方向内側の樹脂層よりも炭酸ガスの透過係数が大きいことを特徴とする合成樹脂製容器。」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~7も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
本件訂正前の請求項6に記載された
「前記外層は、複数の樹脂層を含み、前記複数の樹脂層の最内層は、オレフィン系樹脂を主体とする樹脂によって形成されている、請求項5に記載の合成樹脂製容器。」を、
「前記複数の樹脂層の最内層は、オレフィン系樹脂を主体とする樹脂によって形成されている、請求項5に記載の合成樹脂製容器。」に訂正する(請求項6の記載を引用する請求項7も同様に訂正する)。
(3)訂正事項3
本件訂正前の請求項8に記載された
「前記胴部は、基材層と、該基材層の径方向外側に形成され1又は複数の樹脂層を有する外層とを有し、
前記胴部における前記基材層、及び前記外層を構成する各樹脂層は、高さ方向の全ての位置及び全周方向位置において厚み方向に隣接する径方向外側の樹脂層の方が径方向内側の樹脂層よりも炭酸ガスの透過係数が大きいことを特徴とするプリフォーム。」を、
「前記胴部は、基材層と、該基材層の径方向外側に形成され複数の樹脂層を有する外層とを有し、
前記胴部における高さ方向の全ての位置及び全周方向位置において、前記外層を構成する複数の樹脂層は前記基材層を構成する樹脂層よりも炭酸ガスの透過係数が大きく、前記外層を構成する複数の樹脂層は厚み方向に隣接する径方向外側の樹脂層の方が径方向内側の樹脂層よりも炭酸ガスの透過係数が大きいことを特徴とするプリフォーム。」に訂正する。
(4)訂正事項4
本件訂正前の請求項9に記載された
「基材層をなす前記プリフォームの前記胴部の径方向外側に、1又は複数の樹脂層を有する外層を配置するステップと、
前記プリフォームを前記外層と共に延伸ブロー成形して合成樹脂製容器を成形するステップと
を含み、
前記合成樹脂製容器の成形後において、前記胴部における前記基材層、及び前記外層を構成する各樹脂層は、高さ方向の全ての位置及び全周方向位置において厚み方向に隣接する径方向外側の樹脂層の方が径方向内側の樹脂層よりも炭酸ガスの透過係数が大きいことを特徴とする合成樹脂製容器の製造方法。」を、
「基材層をなす前記プリフォームの前記胴部の径方向外側に、複数の樹脂層を有する外層を配置するステップと、
前記プリフォームを前記外層と共に延伸ブロー成形して合成樹脂製容器を成形するステップと
を含み、
前記合成樹脂製容器の成形後において、前記胴部における高さ方向の全ての位置及び全周方向位置において、前記外層を構成する複数の樹脂層は前記基材層を構成する樹脂層よりも炭酸ガスの透過係数が大きく、前記外層を構成する複数の樹脂層は厚み方向に隣接する径方向外側の樹脂層の方が径方向内側の樹脂層よりも炭酸ガスの透過係数が大きいことを特徴とする合成樹脂製容器の製造方法。」に訂正する(請求項9の記載を引用する請求項10~12も同様に訂正する)。
(5)訂正事項5
本件訂正前の明細書の【0006】に記載された
「前記胴部は、基材層を、該基材層の径方向外側に配置され1又は複数の樹脂層を有する外層と共に延伸ブロー成形することにより形成されており、
前記胴部における前記基材層、及び前記外層を構成する各樹脂層は、高さ方向の全ての位置及び全周方向位置において厚み方向に隣接する径方向外側の樹脂層の方が径方向内側の樹脂層よりも炭酸ガスの透過係数が大きいことを特徴とする。」を、
「前記胴部は、基材層を、該基材層の径方向外側に配置され複数の樹脂層を有する外層と共に延伸ブロー成形することにより形成されており、
前記胴部における高さ方向の全ての位置及び全周方向位置において、前記外層を構成する複数の樹脂層は前記基材層を構成する樹脂層よりも炭酸ガスの透過係数が大きく、前記外層を構成する複数の樹脂層は厚み方向に隣接する径方向外側の樹脂層の方が径方向内側の樹脂層よりも炭酸ガスの透過係数が大きいことを特徴とする。」に訂正する。
(6)訂正事項6
本件訂正前の明細書の【0011】に記載された
「また、本発明の合成樹脂製容器は、上記構成において、前記外層は、複数の樹脂層を含み、前記複数の樹脂層の最内層は、オレフィン系樹脂を主体とする樹脂によって形成されていることが好ましい。」を、
「また、本発明の合成樹脂製容器は、上記構成において、前記複数の樹脂層の最内層は、オレフィン系樹脂を主体とする樹脂によって形成されていることが好ましい。」に訂正する。
(7)訂正事項7
本件訂正前の明細書の【0013】に記載された
「前記胴部は、基材層と、該基材層の径方向外側に形成され1又は複数の樹脂層を有する外層とを有し、
前記胴部における前記基材層、及び前記外層を構成する各樹脂層は、高さ方向の全ての位置及び全周方向位置において厚み方向に隣接する径方向外側の樹脂層の方が径方向内側の樹脂層よりも炭酸ガスの透過係数が大きいことを特徴とする。」を、
「前記胴部は、基材層と、該基材層の径方向外側に形成され複数の樹脂層を有する外層とを有し、
前記胴部における高さ方向の全ての位置及び全周方向位置において、前記外層を構成する複数の樹脂層は前記基材層を構成する樹脂層よりも炭酸ガスの透過係数が大きく、前記外層を構成する複数の樹脂層は厚み方向に隣接する径方向外側の樹脂層の方が径方向内側の樹脂層よりも炭酸ガスの透過係数が大きいことを特徴とする。」に訂正する。
(8)訂正事項8
本件訂正前の明細書の【0014】に記載された
「基材層をなす前記プリフォームの前記胴部の径方向外側に、1又は複数の樹脂層を有する外層を配置するステップと、
前記プリフォームを前記外層と共に延伸ブロー成形して合成樹脂製容器を成形するステップと
を含み、
前記合成樹脂製容器の成形後において、前記胴部における前記基材層、及び前記外層を構成する各樹脂層は、高さ方向の全ての位置及び全周方向位置において厚み方向に隣接する径方向外側の樹脂層の方が径方向内側の樹脂層よりも炭酸ガスの透過係数が大きいことを特徴とする。」を、
「基材層をなす前記プリフォームの前記胴部の径方向外側に、複数の樹脂層を有する外層を配置するステップと、
前記プリフォームを前記外層と共に延伸ブロー成形して合成樹脂製容器を成形するステップと
を含み、
前記合成樹脂製容器の成形後において、前記胴部における高さ方向の全ての位置及び全周方向位置において、前記外層を構成する複数の樹脂層は前記基材層を構成する樹脂層よりも炭酸ガスの透過係数が大きく、前記外層を構成する複数の樹脂層は厚み方向に隣接する径方向外側の樹脂層の方が径方向内側の樹脂層よりも炭酸ガスの透過係数が大きいことを特徴とする。」に訂正する。
2 一群の請求項
本件訂正前の請求項1~7は、請求項2~7が、本件訂正請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあり、本件訂正前の請求項9~12は、請求項10~12が、本件訂正請求の対象である請求項9の記載を引用する関係にある。
また、明細書に係る訂正事項5、6は一群の請求項〔1~7〕に対して、訂正事項7は請求項8に対して、訂正事項8は一群の請求項〔9~12〕に対して請求されたものである。
よって、本件訂正は、一群の請求項〔1~7〕、8、〔9~12〕について請求されている。
3 訂正の適否
(1)訂正事項1について
訂正事項1における、本件訂正前の請求項1の「外層」が「複数の樹脂層を有する」と訂正する点は、当該「樹脂層」を「複数」のものに限定するものであるから、この訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、「基材層」と各「樹脂層」の炭酸ガスの透過係数の関係を特定する点は、各層の炭酸ガスの透過係数の関係を明らかにするものであるから、この訂正は特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そうすると、訂正事項1は特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項1は、本件特許の明細書の【0065】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正事項1により請求項1において「複数の樹脂層を有する外層」と訂正したことに伴い、重複する記載を削除するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項2は、重複する記載を削除するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3、4について
訂正事項3、4は、上記(1)と同様、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項5、6について
訂正事項5、6は、上記訂正事項1、2に係る特許請求の範囲の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載の整合を図るための明細書の訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正事項5、6は、訂正前の請求項1、6を説明する明細書の【0006】、【0011】の記載を、訂正後の請求項1、6の記載に整合させるものであるから、訂正後の請求項1~7に関係する訂正である。
(5)訂正事項7について
上記(4)と同様に、訂正事項7は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、訂正後の請求項8に関係する訂正である。
(6)訂正事項8について
上記(4)と同様に、訂正事項8は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、訂正後の請求項9~12に関係する訂正である。
4 本件訂正請求についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第4~6項の規定に適合する。
よって、訂正後の請求項〔1~7〕、8、〔9~12〕について訂正を認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおり本件訂正が認められたことから、本件特許の請求項1~12に係る発明(以下「本件発明1」等という。また、本件発明1~12を「本件発明」と総称することもある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1~12の記載は、次のとおりである。
【請求項1】
口部と、該口部の下端に連なり炭酸ガスを含む内容物の収容空間を形成する胴部と、該胴部の下端を閉塞する底部とを有する合成樹脂製容器であって、
前記胴部は、基材層を、該基材層の径方向外側に配置され複数の樹脂層を有する外層と共に延伸ブロー成形することにより形成されており、
前記胴部における高さ方向の全ての位置及び全周方向位置において、前記外層を構成する複数の樹脂層は前記基材層を構成する樹脂層よりも炭酸ガスの透過係数が大きく、前記外層を構成する複数の樹脂層は厚み方向に隣接する径方向外側の樹脂層の方が径方向内側の樹脂層よりも炭酸ガスの透過係数が大きいことを特徴とする合成樹脂製容器。
【請求項2】
前記外層を構成する少なくとも1つの樹脂層は、前記基材層よりも水の透過係数が小さい、請求項1に記載の合成樹脂製容器。
【請求項3】
前記基材層は、ポリエステル系樹脂を主体とする樹脂によって形成されている、請求項1又は2に記載の合成樹脂製容器。
【請求項4】
前記基材層は、ポリエチレンテレフタレートを主体とする樹脂によって形成されている、請求項3に記載の合成樹脂製容器。
【請求項5】
前記外層は、オレフィン系樹脂を主体とする樹脂を含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の合成樹脂製容器。
【請求項6】
前記複数の樹脂層の最内層は、オレフィン系樹脂を主体とする樹脂によって形成されている、請求項5に記載の合成樹脂製容器。
【請求項7】
前記外層は、30μm~100μmの範囲の厚みを有する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の合成樹脂製容器。
【請求項8】
炭酸ガスを含む内容物を収容する合成樹脂製容器の製造に用いられる、延伸ブロー成形用のプリフォームであって、
口部と、該口部の下端に連なる筒状の胴部と、該胴部の下端を閉塞する底部とを有し、
前記胴部は、基材層と、該基材層の径方向外側に形成され複数の樹脂層を有する外層とを有し、
前記胴部における高さ方向の全ての位置及び全周方向位置において、前記外層を構成する複数の樹脂層は前記基材層を構成する樹脂層よりも炭酸ガスの透過係数が大きく、前記外層を構成する複数の樹脂層は厚み方向に隣接する径方向外側の樹脂層の方が径方向内側の樹脂層よりも炭酸ガスの透過係数が大きいことを特徴とするプリフォーム。
【請求項9】
延伸ブロー成形による、炭酸ガスを含む内容物を収容する合成樹脂製容器の製造方法であって、
射出成形によって、口部と、該口部の下端に連なる筒状の胴部と、該胴部の下端を閉塞する底部とを有するプリフォームを成形するステップと、
基材層をなす前記プリフォームの前記胴部の径方向外側に、複数の樹脂層を有する外層を配置するステップと、
前記プリフォームを前記外層と共に延伸ブロー成形して合成樹脂製容器を成形するステップと
を含み、
前記合成樹脂製容器の成形後において、前記胴部における高さ方向の全ての位置及び全周方向位置において、前記外層を構成する複数の樹脂層は前記基材層を構成する樹脂層よりも炭酸ガスの透過係数が大きく、前記外層を構成する複数の樹脂層は厚み方向に隣接する径方向外側の樹脂層の方が径方向内側の樹脂層よりも炭酸ガスの透過係数が大きいことを特徴とする合成樹脂製容器の製造方法。
【請求項10】
前記外層を配置するステップは、前記プリフォームを金型に挿入して前記外層をインサート成形するステップである、請求項9に記載の合成樹脂製容器の製造方法。
【請求項11】
前記外層を配置するステップは、筒状の前記外層を前記プリフォームの外側に重ね合わせるステップである、請求項9に記載の合成樹脂製容器の製造方法。
【請求項12】
前記外層を配置するステップは、シート状の前記外層を前記プリフォームの周囲に巻き付けるステップである、請求項9に記載の合成樹脂製容器の製造方法。
第4 取消理由通知書に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~12に係る特許に対して、当審が通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1)取消理由1(明確性)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が次の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
請求項1に記載された「前記基材層、及び前記外層を構成する各樹脂層」における「各樹脂層」の意味について、「外層」を構成する「複数の樹脂層」という意味、あるいは「基材層」を構成する「樹脂層」と「外層」を構成する「樹脂層」の意味と多義的に解することができるので、この点、上記記載が不明確である。
請求項8、9に係る発明についても同様の点が指摘される。
よって、請求項1~12に係る発明は、明確でない。
(2)取消理由2(進歩性)
本件特許の請求項1~5、7~12に係る発明は、下記甲第2号証に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~5、7~12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<引用文献等一覧>
甲第1号証:特開2017-36069号公報
甲第2号証:特開2016-88603号公報
甲第3号証:葛良忠彦、「基礎講座2 プラスチック包装容器の科学」、初版、日本包装学会、2003年(平成15年)6月25日、40~41ページ
(以下、「甲第1号証」等を「甲1」等という。)
2 取消理由1(明確性)について
本件訂正前の請求項1、8、9における「前記胴部における前記基材層、及び前記外層を構成する各樹脂層は、高さ方向の全ての位置及び全周方向位置において厚み方向に隣接する径方向外側の樹脂層の方が径方向内側の樹脂層よりも炭酸ガスの透過係数が大きい」の記載は、訂正事項1により「前記胴部における高さ方向の全ての位置及び全周方向位置において、前記外層を構成する複数の樹脂層は前記基材層を構成する樹脂層よりも炭酸ガスの透過係数が大きく、前記外層を構成する複数の樹脂層は厚み方向に隣接する径方向外側の樹脂層の方が径方向内側の樹脂層よりも炭酸ガスの透過係数が大きい」と訂正された。
当該訂正により、「各樹脂層」は、「外層」を構成する「複数の樹脂層」という意味であることが明らかとなった。
よって、請求項1~12に係る発明は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるということはできない。
3 取消理由2(進歩性)について
(1)甲2に記載された発明
甲2(【0008】、【0021】、【0034】、【0060】、【0085】)には、特に実施例(【0085】)に着目すると、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。
「複合容器10Aにおいて、第1のプラスチック材料製の容器本体10と、容器本体10の外側に密着して設けられ、熱収縮性をもつ第2のプラスチック材料製のプラスチック製部材40とを備え、容器本体10およびプラスチック製部材40は、ブロー成形により一体として膨張され(【0008】)、
容器本体10は、口部11と、口部11下方に設けられた首部13と、首部13下方に設けられた肩部12と、肩部12下方に設けられた胴部20と、胴部20下方に設けられた底部30とを備えており(【0021】)、
プラスチック製部材40は、容器本体10を取り囲むようにその周方向全域にわたって設けられており、略円形状の水平断面を有しており(【0034】)、
飲料等の内容物が充填され(【0060】)、
容器本体10の材料としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)を用い、プラスチック製部材40の材料としては、PP(ポリプロピレン)を用いた(【0085】)、複合容器10A。」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明を対比する。
甲2発明の「複合容器10A」は本件発明1の「合成樹脂製容器」に相当し、以下同様に「容器本体10」は「基材層」に、「プラスチック製部材40」は「外層」に、「口部11」は「口部」に、「胴部20」は「胴部」に、「底部30」は「底部」に相当する。
甲2発明における「ブロー成形により一体として膨張され」る「容器本体10およびプラスチック製部材40」と、本件発明1における「基材層を、該基材層の径方向外側に配置され複数の樹脂層を有する外層と共に延伸ブロー成形することにより形成され」る「胴部」は、「基材層を、該基材層の径方向外側に配置される樹脂層を有する外層と共にブロー成形することにより形成され」る「胴部」の限りで一致する。
甲2発明において充填される飲料等の内容物は、胴部に収容されることは明らかであるから、甲2発明の「飲料等の内容物」と本件発明1の「炭酸ガスを含む内容物」とは「内容物」の限りで一致する。
以上のことから、本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点1]
「口部と、該口部の下端に連なり内容物の収容空間を形成する胴部と、該胴部の下端を閉塞する底部とを有する合成樹脂製容器であって、
前記胴部は、基材層を、該基材層の径方向外側に配置される樹脂層を有する外層と共にブロー成形することにより形成されている合成樹脂製容器。」
[相違点1]
内容物に関して、本件発明1は「炭酸ガスを含む内容物」であるのに対して、甲2発明は「飲料等の内容物」である点。
[相違点2]
「基材層を、該基材層の径方向外側に配置される樹脂層を有する外層と共にブロー成形することにより形成され」る「胴部」に関して、本件発明1は、「外層」が、「複数の樹脂層を有」し、「延伸ブロー成形」されるのに対して、甲2発明は、「プラスチック製部材40」が、「複数の樹脂層」か不明であり、「ブロー成形により一体として膨張され」る点。
[相違点3]
本件発明1は「前記胴部における高さ方向の全ての位置及び全周方向位置において、前記外層を構成する複数の樹脂層は前記基材層を構成する樹脂層よりも炭酸ガスの透過係数が大きく、前記外層を構成する複数の樹脂層は厚み方向に隣接する径方向外側の樹脂層の方が径方向内側の樹脂層よりも炭酸ガスの透過係数が大きい」のに対して、甲2発明はそのようなものであるか不明である点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点2、3について検討する。
甲2及び他の証拠には、「プラスチック製部材40」を複数の樹脂層としつつ、複数の樹脂層が「容器本体10」を構成する樹脂層よりも炭酸ガスの透過係数を大きくし、複数の樹脂層が厚み方向に隣接する径方向外側の樹脂層の方が径方向内側の樹脂層よりも炭酸ガスの透過係数を大きくすることについて、記載も示唆もされていない。
したがって、甲2発明において、相違点2、3に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
ウ 小括
よって、本件発明1は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明8、9について
本件発明8、9は、本件発明1と発明のカテゴリーのみが異なるものであるから、上記(2)と同様の理由により、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明2~7、10~12について
本件発明2~7は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であり、本件発明10~12は、本件発明9の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記(2)、(3)と同様の理由により、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第5 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立理由の概要
本件特許の請求項1~12に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2 甲1に記載された発明について
甲1(【請求項1】、【0005】、【0007】、【0028】、【0036】、【0040】)には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「複合容器において、
容器本体と、
前記容器本体の外側に密着して設けられたプラスチック製部材とを備え、
前記プラスチック製部材は、ガス透過性樹脂層と、前記ガス透過性樹脂層に覆われるように配置され、前記ガス透過性樹脂層よりもガス透過性が低いガスバリア層とを有し、
前記ガスバリア層は、前記プラスチック製部材の垂直方向又は水平方向に沿った断面において断続的に形成されており、
容器本体は、口部と、口部下方に設けられた首部と、首部下方に設けられた肩部と、肩部下方に設けられた胴部と、胴部下方に設けられた底部とを備えており、
容器本体は、合成樹脂材料を射出成形して製作したプリフォームを二軸延伸ブロー成形することにより作製されたものであり、
プラスチック製部材はプリフォームの外側を取り囲むように設けられ、プリフォームの外側に密着された後、プリフォームとともに2軸延伸ブロー成形されることにより得られたものである、炭酸飲料が充填される複合容器。」
3 本件発明1について
本件発明1と甲1発明とは、少なくとも次の点で相違する。
[相違点A]
本件発明1は、「前記胴部における高さ方向の全ての位置及び全周方向位置において、前記外層を構成する複数の樹脂層は前記基材層を構成する樹脂層よりも炭酸ガスの透過係数が大きく、前記外層を構成する複数の樹脂層は厚み方向に隣接する径方向外側の樹脂層の方が径方向内側の樹脂層よりも炭酸ガスの透過係数が大きい」のに対して、甲1発明は、「前記プラスチック製部材は、ガス透過性樹脂層と、前記ガス透過性樹脂層に覆われるように配置され、前記ガス透過性樹脂層よりもガス透過性が低いガスバリア層とを有し、前記ガスバリア層は、前記プラスチック製部材の垂直方向又は水平方向に沿った断面において断続的に形成されて」いる点。
相違点Aについて検討するに、甲1及び他の証拠には、「プラスチック製部材」の樹脂層が「容器本体」を構成する樹脂層よりも炭酸ガスの透過係数を大きくし、複数の樹脂層が厚み方向に隣接する径方向外側の樹脂層の方が径方向内側の樹脂層よりも炭酸ガスの透過係数を大きくすることについて、記載も示唆もされていない。
したがって、甲1発明において、相違点Aに係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、本件発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 本件発明8、9について
本件発明8、9は、本件発明1と発明のカテゴリーのみが異なるものであるから、上記3と同様の理由により、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
5 本件発明2~7、10~12について
本件発明2~7は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であり、本件発明10~12は、本件発明9の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記3、4と同様の理由により、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由又は特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、請求項1~12に係る特許を取り消すことはできない。また、他に請求項1~12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700914