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特許異議申立

2023-701082

包装袋および包装袋の製造方法

審判番号
2023-701082
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-011043
登録番号
7259353
請求日
2023年10月10日
審決日
2024年09月19日
公報発行日
2024年12月27日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】TOPPANホールディングス株式会社
  • 【権利者代理人】松沼 泰史
  • 【権利者代理人】鈴木 史朗
  • 【権利者代理人】清水 雄一郎
  • 【権利者代理人】大槻 真紀子
  • 【異議申立人】▲高▼貫 ひとみ
審判長/審判官
  • 審判長 筑波 茂樹
  • 審判官 稲葉 大紀
  • 審判官 木原 裕二
分類
P1651.121-YAA(B65D) / P1651.536-YAA(B65D) / P1651.537-YAA(B65D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7259353号発明「包装袋および包装袋の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7259353号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。 特許第7259353号の請求項1~9に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7259353号(以下「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、平成31年1月25日に出願され、令和5年4月10日にその特許権の設定登録がされ、令和5年4月18日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1~9に係る特許に対し、令和5年10月10日に特許異議申立人▲高▼貫ひとみ(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。それ以降の経緯は以下のとおりである。 令和6年 3月26日付け 取消理由通知書 令和6年 5月31日 訂正請求書及び意見書(特許権者) なお、令和6年6月25日付けで当審から申立人に対して訂正請求があった旨の通知を行い、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、当該期間内に申立人から応答はなかった。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和6年5月31日提出の訂正請求書による訂正の請求(以下、訂正自体を「本件訂正」という。)は、「特許第7259353号の明細書及び特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~9について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、次の訂正事項からなるものである。なお、下線は、当審が訂正箇所に付したものである。 (1)訂正事項1 訂正前の請求項1に「包装袋は、シーラント層同士を対向させて三方もしくは四方の縁辺をシール部として製袋されており、」とあるのを、 「包装袋は、間に他のフィルムを挟まずにシーラント層同士を対向させて三方もしくは四方の縁辺をシール部として製袋されており、」に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項2~9も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 訂正前の請求項1に「側端部の凹凸形状を有するシール部の長さ方向の曲げ剛性が、100g/15mm以下である」とあるのを、 「側端部の凹凸形状を有するシール部の長さ方向のループスティフネス強度が、100g/15mm以下である」に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項2~9も同様に訂正する。) (3)訂正事項3 訂正前の明細書の【0011】に「請求項1に記載の発明によれば、 プラスチックフィルム層、ガスバリア層、二軸延伸ポリアミドフィルム層、シーラント層からなる積層体から構成される包装袋において、 包装袋は、シーラント層同士を対向させて三方もしくは四方の縁辺をシール部として製袋されており、 このうち側端部のシール部には、凹凸形状が形成されており、 この凹凸形状は、積層体表面から裏面までの凹凸を含めた厚さが、100μm以下であり、 側端部の凹凸形状を有するシール部の長さ方向の曲げ剛性(腰強度またはルーフスティフネス強度とも言う)が、100g/15mm以下であることを特徴とする包装袋である。」とあるのを、 「請求項1に記載の発明によれば、 プラスチックフィルム層、ガスバリア層、二軸延伸ポリアミドフィルム層、シーラント層からなる積層体から構成される包装袋において、 包装袋は、間に他のフィルムを挟まずにシーラント層同士を対向させて三方もしくは四方の縁辺をシール部として製袋されており、 このうち側端部のシール部には、凹凸形状が形成されており、 この凹凸形状は、積層体表面から裏面までの凹凸を含めた厚さが、100μm以下であり、 側端部の凹凸形状を有するシール部の長さ方向のループスティフネス強度(腰強度または曲げ剛性とも言う)が、100g/15mm以下であることを特徴とする包装袋である。」に訂正する。 (4)一群の請求項 訂正前の請求項1~9は、請求項2~9が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~9〕について請求されたものである。 また、明細書に係る訂正は、一群の請求項〔1~9〕について請求されたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1 訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載のシーラント層同士を「間に他のフィルムを挟まずに」対向させていることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件明細書の【0087】の記載に基づく訂正であるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 (2)訂正事項2 訂正事項2は、訂正前の請求項1の「曲げ剛性」との記載では、いかなる定義・試験方法・評価方法によるものであるのか理解できなかったのを、「ループスティフネス強度」に訂正することにより不明瞭な状態を解消させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、本件明細書の【0011】、【0023】の記載に基づく訂正であるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 (3)訂正事項3 訂正事項3は、訂正前の明細書の【0011】の記載を、本件訂正後の請求項の記載に整合させるためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 上記のとおり本件訂正は認められるから、本件訂正後の請求項1~9に係る発明(以下「本件発明1」等といい、まとめて「本件発明」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 プラスチックフィルム層、ガスバリア層、二軸延伸ポリアミドフィルム層、シーラント層からなる積層体から構成される包装袋において、 包装袋は、間に他のフィルムを挟まずにシーラント層同士を対向させて三方もしくは四方の縁辺をシール部として製袋されており、 このうち側端部のシール部には、凹凸形状が形成されており、 側端部の凹凸形状を有するシール部の長さ方向のループスティフネス強度が、100g/15mm以下であることを特徴とする包装袋。 【請求項2】 前記凹凸形状は、側端部の長さ方向に対して直交する、凹状線部、および凸状線部で連続して形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の包装袋。 【請求項3】 前記凹凸形状は、幅方向に一個以上の格子形状で、側端部の長さ方向に連続して形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の包装袋。 【請求項4】 前記側端部のシール部は、凹凸形状を有する前記シール部に加えて、凹凸のないシール部を有することを特徴とする、請求項1~請求項3のいずれかに記載の包装袋。 【請求項5】 前記凹凸形状を有するシール部は、縁辺のシール部のうち、包装袋外側に形成されており、包装袋内側には凹凸のないシール部が配置、形成されていることを特徴とする、請求項4に記載の包装袋。 【請求項6】 前記凹凸のないシール部の幅は、0.5mm~1.5mmであることを特徴とする、請求項5に記載の包装袋。 【請求項7】 前記包装袋は、少なくとも一辺が、1000mm以上であることを特徴とする、請求項1~請求項6のいずれかに記載の包装袋。 【請求項8】 プラスチックフィルム層、ガスバリア層、二軸延伸ポリアミドフィルム層、シーラント層からなる積層体から構成される包装袋において、 包装袋は、シーラント層同士を対向させて三方もしくは四方の縁辺をシール部として製袋する請求項1~請求項7に記載の包装袋の製造方法であって、 前記側端部には、凹凸のないヒートシール加工をしてなるシール部を形成し、続いて側端部の凹凸のないシール部に対して、シール圧力とシール温度を高くしてシールし、さらにエンボス型により凹凸形状を設けたシール部を形成することを特徴とする、包装袋の製造方法。 【請求項9】 前記凹凸のないシール部は、前記凹凸形状を設けたシール部に隣接して、かつ包装袋内側に配置、形成することを特徴とする、請求項8に記載の、包装袋の製造方法。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 当審において通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 (1)取消理由1(明確性要件) 本件特許は、請求項1~9の記載が次の点で明確でなく、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当するので、取り消すべきものである。 請求項1の「曲げ剛性が、100g/15mm以下」との記載について、特に「15mm以下」が、どのような値を意味するかが理解できない。 また、請求項1の「曲げ剛性」の、「腰強度またはルーフスティフネス強度」(【0011】、【0023】)及び一般的に用いられる「ループスティフネス強度」との異同、並びに、定義・試験方法・評価方法が理解することができない。 (2)取消理由2(サポート要件) 本件特許は、請求項1~9の記載が次の点で発明の詳細な説明に記載したものではなく、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当するので、取り消すべきものである。 請求項1の「曲げ剛性が、100g/15mm以下」は不明確であり、本件明細書の【0011】、【0023】の「ルーフスティフネス強度」等についても不明確であるから、実施例1、2(【0127】、【0130】)のシール部の 曲げ剛性についても不明確であり、本件明細書の発明の詳細な説明は、本件発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載されていない。 (3)取消理由3(実施可能要件) 本件特許は、発明の詳細な説明の記載が次の点で、当業者が請求項1~9に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでなく特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当するので、取り消すべきものである。 請求項1の「曲げ剛性が、100g/15mm以下」は不明確であり、本件明細書の【0011】、【0023】の「ルーフスティフネス強度」等についても不明確であるから、実施例1、2(【0127】、【0130】)のシール部の 曲げ剛性についても不明確であり、請求項1の「曲げ剛性が100g/15mm以下」とする構成を当業者がどのように実施することができるのか理解できない。 (4)取消理由4(進歩性) 本件発明1~9は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するので、取り消すべきものである。 [引用文献一覧](以下、申立人が提出した甲第○号証を「甲○」という。) 甲1:特開2010-83561号公報 甲2:特開2015-48093号公報 甲3:特開2005-96791号公報 甲4:特開2002-347783号公報 甲5:実願昭56-157108号(実開昭58-61759号)のマイクロフィルム 甲6:実公昭61-7149号公報 2 当審の判断 特許権者が意見書に添付して提出した乙第1~3、5、6号証(以下「乙〇」等という。)は、以下のとおりである。 乙1:特許第6217246号公報 乙2:「ループステフネステスタ○R(当審注:「○R」は○の中にRの代用表記。以下同様) No.581」、[Online]、株式会社東洋精機製作所のウェブサイト、[2024年4月18日検索]、インターネット<URL:https://www.toyoseiki.co.jp/products/jpn-581/> 乙3:「ループステフネステスタ○R No.581」、株式会社東洋精機製作所のカタログ、2020年3月 乙5:特開2013-119631号公報 乙6:特開2017-170534号公報 (1)明確性要件について 「曲げ剛性が、100g/15mm」との記載では、いかなる定義・試験方法・評価方法によるものであるのか理解できなかったところ、「ループスティフネス強度が、100g/15mm以下」と訂正することにより、当該記載は「ループスティフネス強度」の数値を特定する記載であることが明確になった。 そして、「ループスティフネス強度」とは、乙1~3、5、6に示されるように、シート状の試料をループ状に曲げたときの強度を意味すること、上記記載における「15mm」が前記シート状の試料の幅寸法を意味すること、並びに、本件明細書の【0011】、【0023】に記載されている「ループスティフネス強度」、「腰強度」及び「曲げ剛性」が同義であることはいずれも、当業者にとって技術常識であると認められる。 したがって、「ループスティフネス強度が、100g/15mm以下」との記載は、当業者にとって明確である。 (2)サポート要件及び実施可能要件について 上記(1)のとおり、請求項1の「ループスティフネス強度が、100g/15mm以下」との記載は明確であるから、当該記載不備に起因して充足していないと指摘したサポート要件及び実施可能要件も充足している。 (3)進歩性について ア 甲1の記載、甲1発明 甲1には以下の記載がある。以下、下線は当審が付した。また「・・・ 」は省略を示す。 「【請求項1】 2枚の胴部シートの上下に熱融着された折込シートによって天面部と底面部とが構成され、前記2枚の胴部シートの両端がサイドシールされて円筒胴部が形成され、前記天面部に注出口が固設された注出口付き円筒パウチであって、 前記サイドシールは、エンボス加工がなされていることを特徴とする、注出口付き円筒パウチ。 【請求項2】 前記エンボス加工は、直線、格子、ドットおよび波線からなる群から選択されるいずれか1以上の連続柄である、請求項1記載の注出口付き円筒パウチ。 【請求項3】 前記エンボス加工は、パウチに水平に形成される直線または波線からなり、前記線はピッチ幅0.5~2.0mm、深さ0.3~1.5mmであることを特徴とする、請求項2記載の注出口付き円筒パウチ。」 「【0011】 本発明の注出口付き円筒パウチによれば、サイドシールにエンボス加工を行うことで自立性を確保したままサイドシールに柔軟性を付与することができ、円筒胴部を把持した際に柔軟なサイドシールによって当たりを柔軟にすることができる。」 「【0020】 本発明の注出口付き円筒パウチは、内容物として飲料やゼリー状物を充填して使用することができる。 (2)エンボス加工 ・・・図2、右半分にエンボス加工(85)を横線で示した。図2では、サイドシール(80)と同一範囲にエンボス加工が形成される態様となっている。 【0021】 このようなエンボス加工としては、直線、格子、ドットおよび波線からなる群から選択されるいずれか1以上の連続柄であることが好ましい。直線や波線のエンボス加工は、注出口付き円筒パウチを直立させた際に、水平線に略平行に形成される直線や波線であることがより好ましい。・・・なお、図3に直線からなるエンボスの部分拡大斜視図を示す。・・・切断端から少なくとも1mmの範囲でエンボス加工が形成されると、切断端を柔軟にすることができる。 【0022】 格子の場合は、上記したピッチ幅および深さの直線または波線を相互に斜めに交差させたものを例示でき、・・・。 【0023】 本発明において、注出口付き円筒パウチの「サイドシール」とは、円筒胴部の側部にある、胴部シート(60)と胴部シート(60)との両端を熱融着してなるシール部を意味する。本発明では、前記サイドシール(80)にエンボス加工(85)を行うことで、剛性の高いサイドシールに柔軟性を付与することができ、円筒胴部を把持した際に掌へのあたりを柔軟にすることができる。」 「【0025】 本発明において、・・・胴部シートの両端にサイドシールを形成した後に、注出口付き円筒パウチの完成前のいずれかの工程で上記エンボス加工を行ってもよい。・・・」 「【0057】 前記パウチを構成する部材としては、主にプラスチックを主体とする積層フィルムが用いられるが、特に限定はされるものではなく、・・・具体的には、以下の積層フィルムを好適に使用することができる。 【0058】 (1)PETフィルム/接着剤/アルミニウム箔/接着剤/ONフィルム/接着剤/PEフィルム ・・・ 上記構成において、PETフィルムは2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、ONフィルムは2軸延伸ナイロンフィルム、・・・を指すものである。」 甲1の上記記載を参酌し、特に請求項1~3について着目すると、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。 「2枚の胴部シートの上下に熱融着された折込シートによって天面部と底面部とが構成され、前記2枚の胴部シートの両端がサイドシールされて円筒胴部が形成され、前記天面部に注出口が固設された注出口付き円筒パウチであって、 前記サイドシールは、エンボス加工がなされており、 前記エンボス加工は、直線、格子、ドットおよび波線からなる群から選択されるいずれか1以上の連続柄であり、 前記エンボス加工は、パウチに水平に形成される直線または波線からなり、前記線はピッチ幅0.5~2.0mm、深さ0.3~1.5mmである、注出口付き円筒パウチ。」 イ 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲1発明を、その機能、構造又は技術的意義を考慮し対比する。 甲1発明の「胴部シート」は本件発明1の「積層体」に相当する。 甲1発明の「注出口付き円筒パウチ」は本件発明1の「包装袋」に相当する。 甲1発明の「前記2枚の胴部シートの両端」の「サイドシール」は本件発明1の「側端部のシール部」に相当する。 甲1発明のサイドシールになされている「直線、格子、ドットおよび波線からなる群から選択されるいずれか1以上の連続柄であり、」「パウチに水平に形成される直線または波線からなり、前記線はピッチ幅0.5~2.0mm、深さ0.3~1.5mmである」「エンボス加工がなされて」いる態様は、本件発明1の側端部のシール部に「凹凸形状が形成されて」いる態様に相当する。 甲1発明の「2枚の胴部シートの上下に熱融着された折込シートによって天面部と底面部とが構成され、前記2枚の胴部シートの両端がサイドシールされて円筒胴部が形成され、前記天面部に注出口が固設された」態様は、「胴部シートの上下」において「折込シート」が「熱融着」され、「胴部シートの両端がサイドシールされて」いるから、本件発明1の「間に他のフィルムを挟まずにシーラント層同士を対向させて三方もしくは四方の縁辺をシール部として製袋されて」いる態様と、「三方もしくは四方の縁辺をシール部として製袋されて」いる態様である限りにおいて一致する。 以上を踏まえると、本件発明1と甲1発明は、以下の点で一致し、相違する。 [一致点] 「包装袋は、三方もしくは四方の縁辺をシール部として製袋されており、 このうち側端部のシール部には、凹凸形状が形成されている、包装袋。」 [相違点1] 包装体を構成する積層体が、本件発明1では、「プラスチックフィルム層、ガスバリア層、二軸延伸ポリアミドフィルム層、シーラント層からなる」のに対し、甲1発明では、胴部シートの層構成が特定されていない点。 [相違点2] 三方もしくは四方の縁辺をシール部として製袋されている点について、本件発明1では、「間に他のフィルムを挟まずにシーラント層同士を対向させて」いるのに対し、甲1発明では、「胴部シートの上下」において「折込シート」が「熱融着」され、「胴部シートの両端がサイドシールされて」いる点。 [相違点3] 本件発明1では、「側端部の凹凸形状を有するシール部の長さ方向のループスティフネス強度が、100g/15mm以下である」のに対し、甲1発明では、側端部のシール部の長さ方向のループスティフネス強度が不明な点。 (イ)判断 事案に鑑み、相違点2について検討する。 甲1発明は、「2枚の胴部シートの上下に熱融着された折込シートによって天面部と底面部とが構成され」るものであり、当該構成により甲1発明は、「内容物の充填にしたがって底面部の折込シートが広がり、胴部が円筒形状となるパウチ容器を得ることができる。このパウチ容器は、内容物を充填すると底面部の折込シートが広がって胴部が円筒形状となり、自立性を有する点で優れる。」(【0005】)という作用効果を有する円筒パウチであることを前提とするものである。 そうすると、甲1発明において、「天面部と底面部とが構成され」る「折込シート」をなくすと、自立性に関する作用効果がなくなるから、三方もしくは四方の縁辺のシール部について、2枚の胴部シートの「間に他のフィルムを挟まずにシーラント層同士を対向させ」る構成とすることには阻害要因がある。 したがって、甲1発明において、相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。 (ウ)小括 上記のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明2~9について 本件発明2~9は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記イで検討したのと同じ理由により、本件発明2~9は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 サポート要件及び実施可能要件について (1)凹凸形状について 申立人は、本件明細書等において、「凹凸形状」について効果が確認されているのは「格子の凹凸」のもののみであるから、本件明細書等は、本件発明1~9の「凹凸形状」がいかなる態様であっても本件発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されておらず、また、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないと主張する。 しかしながら、本件明細書には「この凹凸形状によって、包装袋は、折りたたみなどの曲げに対して、シール部がゆるく湾曲して折りたたまれるために、包装袋胴部に鋭角の折り目を形成することを防止する」(【0021】)と記載されており、具体的な凹凸形状にかかわらずシール部がゆるく湾曲する効果が発揮されることが当業者であれば理解でき、また、発明の詳細な説明は、当業者が本件発明を実施できる程度に記載されていることも明らかである。 したがって申立人の上記主張は採用できない。 (2)凹凸形状の厚み 申立人は、本件明細書等の【0058】の記載を踏まえると、実施例において効果が確認された試験体は「積層体表面から裏面までの凹凸を含めた厚さが100μm以下」のものであるところ、本件明細書等には、本件発明1~9の「凹凸形状」がいかなる厚みであっても本件発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されておらず、また、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないと主張する。 しかしながら、本件明細書に「100μm以下・・・を超える場合には、腰が強すぎて曲がりにくくなり、包装袋の折りたたみに際しては実用的ではなくなる。」(【0109】)と記載されているように、本件発明に係る包装用積層体の厚みの上限値は、折りたたんで流通や保管を行うという実用上においておのずと定まるものであり、当該実用上の厚みの範囲において本件発明の課題が解決できることを当業者であれば理解でき、また、発明の詳細な説明は、当業者が本件発明を実施できる程度に記載されていることも明らかである。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 (3)各層の配置関係について 申立人は、本件明細書等において、「各層の配置関係」について効果が確認されているのは、各層を特定の積層順で積層したもののみであるところ、本件明細書等には、本件発明1~9の各層がいかなる配置関係にあっても本件発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されておらず、また、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないと主張する。 しかしながら、本件発明は、「この凹凸形状によって、包装袋は、折りたたみなどの曲げに対して、シール部がゆるく湾曲して折りたたまれるために、包装袋胴部に鋭角の折り目を形成することを防止する」(【0021】)ものであり、各層の積層順によらず上記作用効果が奏されることを当業者であれば理解でき、また、発明の詳細な説明は、当業者が本件発明を実施できる程度に記載されていることも明らかである。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 2 明確性要件について (1)申立人は、請求項1の「曲げ剛性が、100g/15mm」との記載について、どのようなループ長の試験片を用いた測定結果であるのか本件明細書を参酌しても不明であるため、請求項1の「100g/15mm」がどの程度の曲げ剛性であるのか理解することができないと主張する。 しかしながら、「ループスティフネス強度」に関し、乙1(【0024】)、乙6(【0026】)を参照すると、株式会社東洋精機製作所製「ループステフネステスタ」等で測定されることは本件出願時によく知られていたことと認められ、併せて乙2及び乙3を参照すると、前記ループステフネステスタにおいては、所定範囲の寸法を有する試験片を用いることが仕様で定められていると認められる。これらの事項を踏まえると、本件発明の「ループスティフネス強度が、100g/15mm以下である」ことは、仕様で定められた寸法の試験片を用いて測定されるループスティフネス強度が100g/15mm以下であることを意味することは明確である。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 (2)申立人は、請求項9の「前記凹凸のないシール部」との記載は、請求項9が請求項8を引用するものであることから、凹凸形状が形成されたものであるようにも読み取れるし、請求項9で「前記凹凸形状を設けたシール部に隣接」するものと規定されていることから、凹凸形状が形成されていないものであるとも読み取れるから明確ではないと主張する。 上記主張について検討する。 ア 請求項8においては、「前記側端部には、凹凸のないヒートシール加工をしてなるシール部を形成し」(以下単に「ヒートシール加工」という。)、「続いて側端部の凹凸のないシール部に対して、・・・エンボス型により凹凸形状を設けたシール部を形成する」(以下「エンボス加工」という。)と記載されている。そして、当該記載においては、ヒートシール加工がなされる領域と、エンボス加工がなされる領域の差異については規定されていないから、ヒートシール加工がなされる領域よりもエンボス加工がなされる領域が狭い場合も含むものであり、その場合は、エンボス加工後においても、凹凸のないシール部が残存することとなる。 イ そうすると、請求項9に係る発明は、請求項9に「前記凹凸形状を設けたシール部」との記載があることから、エンボス加工後の時点における工程を特定していることは明らかであり、上記アで示した事項も踏まえると、請求項9の「前記凹凸のないシール部」とは、エンボス加工後においても残存している凹凸のないシール部を指していると理解できる。 ウ そして、上記ア及びイの理解は、本件明細書の【0113】~【0117】、図1、図7に記載された事項と整合する。 エ したがって、申立人の上記主張は採用できない。 第6 むすび 以上のとおり、請求項1~9に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。 また、他に請求項1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701082

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