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特許異議申立

2023-701014

積層体及び該積層体で構成される袋

審判番号
2023-701014
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-186111
登録番号
7245445
請求日
2023年09月22日
審決日
2025年08月07日
公報発行日
2025年11月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】大日本印刷株式会社
  • 【権利者代理人】宮嶋 学
  • 【権利者代理人】堀田 幸裕
  • 【権利者代理人】岡村 和郎
  • 【権利者代理人】高田 泰彦
  • 【権利者代理人】柏 延之
  • 【権利者代理人】永井 浩之
  • 【権利者代理人】朝倉 悟
  • 【異議申立人】▲高▼貫 ひとみ
審判長/審判官
  • 審判長 金丸 治之
  • 審判官 田口 傑
  • 審判官 神山 茂樹
分類
P1651.121-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7245445号発明「積層体及び該積層体で構成される袋」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7245445号の特許請求の範囲及び図面を、令和7年2月13日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び図面のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕、6について訂正することを認める。 特許第7245445号の請求項1~6に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7245445号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成30年9月28日(優先権主張 平成30年2月28日、平成30年8月9日)に出願され、令和5年3月15日に特許権の設定登録がされ、令和5年3月24日に特許掲載公報が発行された。 本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和5年 9月22日 :特許異議申立人高貫ひとみ(当審注:「高」は異字体のはしごだか。以下「申立人」という。)による請求項1~6に係る特許に対する特許異議の申立て 令和5年12月22日付け:取消理由通知書 令和6年 2月21日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和6年 3月 7日 :特許権者による令和6年2月21日提出の訂正請求書の手続補正書の提出 令和6年 4月12日 :申立人による意見書の提出 令和6年 6月14日付け:取消理由通知書(決定の予告) 令和6年 8月 6日 :特許権者による意見書・訂正請求書の提出 令和6年 9月12日 :特許権者による令和6年8月6日提出の訂正請求書の手続補正書の提出 令和6年10月24日 :申立人による意見書の提出 令和6年12月13日付け:取消理由通知書(決定の予告) 令和7年 2月13日 :特許権者による意見書・訂正請求書の提出 令和7年 4月17日 :申立人による意見書の提出 なお、令和6年2月21日及び令和6年8月6日提出の訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の適否 令和7年2月13日に提出された訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)は、「特許第7245445号の特許請求の範囲及び図面を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲及び図面のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、次のとおりである。なお、下線は、当審が訂正箇所に付したものである。 1 請求項1~6に係る訂正について (1)本件訂正の内容 ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1において、 「前記シーラントフィルムの厚みが、30μm以上80μm以下であり、」 と記載されているのを、 「前記シーラントフィルムの厚みが、50μm以上60μm以下であり、」 に訂正する(請求項1の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項2~5も同様に訂正する。)。 イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1において、 「流れ方向における前記シーラントフィルムの引張伸度(%)と前記シーラントフィルムの厚み(μm)の積が、45000以上である、」 と記載されているのを、 「流れ方向における前記シーラントフィルムの引張伸度(%)と前記シーラントフィルムの厚み(μm)の積が、45000以上であり、 流れ方向における前記シーラントフィルムの引張弾性率(MPa)と前記シーラントフィルムの厚み(μm)の積が、35000以下である、」 に訂正する(請求項1の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項2~5も同様に訂正する。)。 ウ 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項2において、 「流れ方向における前記シーラントフィルムの引張弾性率(MPa)と前記シーラントフィルムの厚み(μm)の積が、38000以下である、」 と記載されているのを、 「前記シーラントフィルムにおける前記第1の熱可塑性樹脂の質量比率は、70質量%以上である、」 に訂正する(請求項2の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項3~5も同様に訂正する。)。 エ 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項3において、 「前記試験片の前記シール部の面方向に対して直交する方向における、一方の前記積層体に固定された前記治具と他方の前記積層体に固定された前記治具との間の距離は40mmである、」 と記載されているのを、 「前記試験片の前記シール部の面方向に対して直交する方向における、一方の前記積層体に固定された前記治具と他方の前記積層体に固定された前記治具との間の距離は40mmであり、 前記衝撃は、前記試験片の前記シール部の面方向に対して直交する方向において前記試験片に加えられる、」 に訂正する(請求項3の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項4、5も同様に訂正する。)。 オ 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項6において、 「前記シーラントフィルムは、プロピレン・エチレンブロック共重合体からなる第1の熱可塑性樹脂と、α-オレフィン共重合体又はポリエチレンからなる第2の熱可塑性樹脂と、を含み、」 と記載されているのを、 「前記シーラントフィルムは、プロピレン・エチレンブロック共重合体からなる第1の熱可塑性樹脂と、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン又は高密度ポリエチレンからなる第2の熱可塑性樹脂と、を含み、」 に訂正する。 カ 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6において、 「前記シーラントフィルムの厚みが、30μm以上80μm以下であり、」 と記載されているのを、 「前記シーラントフィルムの厚みが、50μm以上60μm以下であり、」 に訂正する。 キ 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項6において、 「流れ方向における前記シーラントフィルムの引張伸度(%)と前記シーラントフィルムの厚み(μm)の積が、45000以上である、」 と記載されているのを、 「流れ方向における前記シーラントフィルムの引張伸度(%)と前記シーラントフィルムの厚み(μm)の積が、45000以上であり、 流れ方向における前記シーラントフィルムの引張弾性率(MPa)と前記シーラントフィルムの厚み(μm)の積が、35000以下である、」 に訂正する。 (2)一群の請求項 本件訂正前の請求項1~5は、請求項2~5が、本件訂正前の請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正請求は、一群の請求項〔1~5〕、6について請求されたものである。 (3)訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について ア 訂正事項1、6 訂正事項1、6は、訂正前の請求項1、6に記載のシーラントフィルムの厚みの数値範囲をより狭い範囲に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、本件特許明細書の【0116】の記載に基づく訂正であるから新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。 イ 訂正事項2、7 訂正事項2、7は、「流れ方向における前記シーラントフィルムの引張弾性率(MPa)と前記シーラントフィルムの厚み(μm)の積が、35000以下である」との記載により、訂正前の請求項1、6に記載のシーラントフィルムの構成を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、本件特許明細書の【0090】の記載に基づく訂正であるから新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。 ウ 訂正事項3 訂正事項3は、訂正前の請求項2の「流れ方向における前記シーラントフィルムの引張弾性率(MPa)と前記シーラントフィルムの厚み(μm)の積が、38000以下である」との記載を、請求項2で引用する請求項1に対する訂正事項2による訂正で、積の値の数値範囲をより狭い範囲に限定するものであり、「前記シーラントフィルムにおける前記第1の熱可塑性樹脂の質量比率は、70質量%以上である」との記載により、訂正前の請求項2に記載のシーラントフィルムの構成を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、本件特許明細書の【0082】の記載に基づく訂正であるから新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。 エ 訂正事項4 訂正事項4は、「前記衝撃は、前記試験片の前記シール部の面方向に対して直交する方向において前記試験片に加えられる、」との記載により、訂正前の請求項3に係る発明における衝撃強度を測定する際に試験片に加えられる衝撃の方向を規定することで、衝撃強度をどのように測定するのかを明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、訂正事項4により限定された、衝撃強度を測定する際に試験片に加えられる衝撃の方向は、一方の積層体30と他方の積層体30とを、治具102をハンマー104で叩くことにより分離させることを考慮すれば、シール部101の面方向に対して直交する方向に衝撃を加える必要があることは、当業者にとって自明なことであるといえる。 よって、「前記衝撃は、前記試験片の前記シール部の面方向に対して直交する方向において前記試験片に加えられる、」との記載を追加する訂正事項4は、新たな技術的事項を導入するものではないため新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。 オ 訂正事項5 訂正事項5は、訂正前の請求項6における第2の熱可塑性樹脂の構成を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、本件特許明細書の【0077】の記載に基づく訂正であるから新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。 (4)小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合する。 したがって、特許請求の範囲及び図面を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕、6について訂正することを認める。 2 図面に係る訂正について (1)本件訂正の内容 本件訂正のうち、図面に係る訂正の内容は、次のとおりである。 ア 訂正事項8について 図面の図9において、ハンマー104を削除し、更に、治具102に加えられる衝撃の向きを、試験片100のシール部101の面方向に対して直交する方向に訂正する。 (2)訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否、図面の訂正に係る請求項について 訂正事項8は、図面の図9において、ハンマー104を削除し、さらに、治具102に加えられる衝撃の向きを、試験片のシール部の面方向に対して直交する方向に訂正することにより、段落【0120】の「一方の積層体30と他方の積層体30とが分離する際の衝撃強度を測定した」との記載との関係で矛盾している図9の記載を訂正するものであるから、誤記の訂正を目的とするものである。 そして、上記1(3)エの訂正事項4で検討したとおり、衝撃強度を測定する際に試験片に加えられる衝撃の方向は、一方の積層体30と他方の積層体30とを、治具102をハンマー104で叩くことにより分離させることを考慮すれば、シール部101の面方向に対して直交する方向に衝撃を加える必要があることは、当業者にとって自明なことであるといえる。 よって、図9における衝撃の方向を、シール部101の面方向に対して直交する方向に訂正することは、新たな技術的事項を導入するものではないため、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。 そして、訂正事項8は、一群の請求項である請求項〔1~5〕、6の全てについて行ったものである。 (3)小括 以上のとおりであるから、本件訂正のうち訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第4~第6項の規定に適合する。 したがって、本件特許の図面を、訂正請求書に添付された図面のとおり訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 上記のとおり、本件訂正は認められるから、本件訂正後の請求項1~6に係る発明(以下「本件発明1」等といい、まとめて「本件発明」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 積層体であって、 第1延伸プラスチックフィルム、第2延伸プラスチックフィルム及びシーラントフィルムをこの順で少なくとも備え、 前記第1延伸プラスチックフィルム又は前記第2延伸プラスチックフィルムの一方は、ポリエステルを主成分として含み、他方は、ポリアミドを主成分として含み、 前記シーラントフィルムは、プロピレン・エチレンブロック共重合体からなる第1の熱可塑性樹脂と、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン又は高密度ポリエチレンからなる第2の熱可塑性樹脂と、を含み、 前記シーラントフィルムにおける前記第1の熱可塑性樹脂の質量比率は、51質量%以上であり、 前記第1の熱可塑性樹脂の質量比率は、前記第2の熱可塑性樹脂の質量比率よりも高く、 前記シーラントフィルムの厚みが、50μm以上60μm以下であり、 流れ方向における前記シーラントフィルムの、JIS K7127による引張伸度が、900%以上であり、 流れ方向における前記シーラントフィルムの引張伸度(%)と前記シーラントフィルムの厚み(μm)の積が、45000以上であり、 流れ方向における前記シーラントフィルムの引張弾性率(MPa)と前記シーラントフィルムの厚み(μm)の積が、35000以下である、積層体。 【請求項2】 前記シーラントフィルムにおける前記第1の熱可塑性樹脂の質量比率は、70質量%以上である、請求項1に記載の積層体。 【請求項3】 前記積層体の衝撃強度が1050kJ/m以上であり、 前記衝撃強度は、内面同士が部分的にヒートシールされてシール部が形成された2枚の前記積層体からなる試験片に、ハンマーを用いて衝撃を加える評価において、一方の前記積層体と他方の前記積層体とが分離する際の衝撃値であり、 前記試験片は、50mmの長さ及び15mmの幅を有する長方形の形状を有し、 前記シール部は、長さ方向における前記試験片の端部から、長さ方向において10mmにわたって形成されており、 前記衝撃は、一方の前記積層体のヒートシールされていない部分と他方の前記積層体のヒートシールされていない部分を、前記シール部の面方向に対して直交する方向において互いに逆向きになるようにした後、一方の前記積層体のシールされていない部分の端部と他方の前記積層体のシールされていない部分の端部をそれぞれ治具に固定し、一方の前記積層体に固定された前記治具を、一方の前記積層体の前記第1延伸プラスチックフィルムの側の面から前記ハンマーで叩くことによって、前記試験片に加えられ、 前記試験片の前記シール部の面方向に対して直交する方向における、一方の前記積層体に固定された前記治具と他方の前記積層体に固定された前記治具との間の距離は40mmであり、 前記衝撃は、前記試験片の前記シール部の面方向に対して直交する方向において前記試験片に加えられる、請求項1又は2に記載の積層体。 【請求項4】 前記積層体の、JIS Z1707 7.4による突き刺し強度が14N以上である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の積層体。 【請求項5】 前記第1延伸プラスチックフィルムと前記第2延伸プラスチックフィルムとの間に位置する第1接着剤層と、前記第2延伸プラスチックフィルムと前記シーラントフィルムとの間に位置する第2接着剤層と、を更に備え、 前記第1接着剤層及び前記第2接着剤層はいずれも、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物を含み、且つ、2μm以上の厚みを有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の積層体。 【請求項6】 袋であって、 外面及び内面を含む積層体と、 前記積層体の内面同士を接合するシール部と、を備え、 前記積層体は、第1延伸プラスチックフィルム、第2延伸プラスチックフィルム及びシーラントフィルムをこの順で少なくとも備え、 前記第1延伸プラスチックフィルム又は前記第2延伸プラスチックフィルムの一方は、ポリエステルを主成分として含み、他方は、ポリアミドを主成分として含み、 前記シーラントフィルムは、プロピレン・エチレンブロック共重合体からなる第1の熱可塑性樹脂と、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン又は高密度ポリエチレンからなる第2の熱可塑性樹脂と、を含み、 前記シーラントフィルムにおける前記第1の熱可塑性樹脂の質量比率は、51質量%以上であり、 前記第1の熱可塑性樹脂の質量比率は、前記第2の熱可塑性樹脂の質量比率よりも高く、 前記シーラントフィルムの厚みが、50μm以上60μm以下であり、 流れ方向における前記シーラントフィルムの、JIS K7127による引張伸度が、900%以上であり、 流れ方向における前記シーラントフィルムの引張伸度(%)と前記シーラントフィルムの厚み(μm)の積が、45000以上であり、 流れ方向における前記シーラントフィルムの引張弾性率(MPa)と前記シーラントフィルムの厚み(μm)の積が、35000以下である、袋。」 第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 訂正前の請求項1~6に係る発明に対して、当審が令和6年12月13日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。 理由2(進歩性) 請求項1~6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 引用文献一覧 引用文献1:特開2015-168766号公報(甲第1号証) 引用文献2:特開平7-188432号公報(当審が発見した文献) 引用文献3:特開2016-93894号公報(当審が発見した文献) 引用文献4:寺西,外1名,”東レフィルム加工の高機能フィルム”,会報153号,一般社団法人日本食品包装協会,2017年1月,5.論文-4(甲第2号証) 引用文献6:特開2015-134615号公報(甲第5号証) 2 当審の判断 (1)引用文献 ア 引用文献1に記載された発明 段落【0055】には、「PET/ON/AL箔/本フィルム」の順に積層される積層体の層構成が記載されている。そして、段落【0002】を参照すれば、「PET」は「ポリエチレンテレフタレート延伸フィルム」であり、「ON」は「ナイロン延伸フィルム」であるから、段落【0055】には、ポリエステルを主成分とする「ポリエチレンテレフタレート延伸フィルム」と、ポリアミドを主成分とする「ナイロン延伸フィルム」を有することが記載されている。 以上を踏まえると、引用文献1(特に、段落【0002】、【0024】~【0025】、【0039】~【0041】、【0049】、【0055】~【0056】、【0070】)には、以下の発明(以下「引用発明1」という)が記載されていると認められる。 「ポリエチレンテレフタレート延伸フィルム、ナイロン延伸フィルム、及び、シール層となるフィルムをこの順で備えており、 当該シール層となるフィルムは、プロピレン・エチレンブロック共重合体(a)、及び直鎖状低密度ポリエチレン(住友化学(株)製GA401)である低密度のポリエチレン系重合体(c)を含み、 シール層となるフィルムにおけるプロピレン・エチレンブロック共重合体(a)は80重量%であって、低密度のポリエチレン系重合体(c)は15重量%であり、 シール層となるフィルムの厚みが、70μmである積層体。」 また、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明2」という)が記載されていると認められる。 「ポリエチレンテレフタレート延伸フィルム、ナイロン延伸フィルム、及び、シール層となるフィルムをこの順で備えており、 当該シール層となるフィルムは、プロピレン・エチレンブロック共重合体(a)、及び直鎖状低密度ポリエチレン(住友化学(株)製GA401)である低密度のポリエチレン系重合体(c)を含み、 シール層となるフィルムにおけるプロピレン・エチレンブロック共重合体(a)は80重量%であって、低密度のポリエチレン系重合体(c)は15重量%であり、 シール層となるフィルムの厚みが、70μmである積層体の内面同士を接合した袋。」 イ 引用文献2に記載された事項 引用文献2(特に、段落【0001】、【0026】~【0027】)には、以下の技術事項が記載されていると認められる(引用文献2に記載の技術事項を、以下「周知技術1」という。)。 「包装材料に用いられるフィルム及び積層体において、当該フィルムの引張伸度と耐衝撃性には相関があり、引張伸度が増加すれば耐衝撃性が向上する。」 ウ 引用文献3に記載された事項 引用文献3(特に、段落【0009】、【0012】)には、以下の技術事項が記載されていると認められる(引用文献3に記載の技術事項を、以下「周知技術2」という。)。 「包装材料に用いられる積層体において、シーラント層の厚みが増加すれば耐衝撃性が向上する。」 エ 引用文献4に記載された事項 (ア)引用文献4(特に、第8ページの表6「ハイレトルト用CPPフィルムグレード」、第11ページの図12「落袋強度試験」、図13「落袋強度のCPP厚み依存性」における「ZK500」に関する記載)には、以下の技術事項が記載されていると認められる。 a「ハイレトルト用CPPフィルム」は、低温下での耐衝撃性を向上させた、レトルト食品用の包装材料のヒートシール層として用いられるフィルムであること。 b「ハイレトルト用CPPフィルム」の内、タイプ「ZK500」は、「MD方向」のヤング率(MPa)が「500MPa」であり、「MD方向」の破断伸度(%)が「920%」であること。 c「ハイレトルト用CPPフィルム」の「落袋強度」を検証する試験において、「ラミ製袋品」を「(PET#12/ON#15/AL#9/CPP#70)」の層構成を有する積層体とし、このうち「CPP#70」を「ZK500」とし、当該「ZK500」の厚みを「50μm」、「60μm」、「70μm」としたものが作製され、比較試験が行われていること。 そして、「ZK500」のそれぞれの厚みにおける「MD方向」の破断伸度「920%」と厚みとの積を取ると、「50μm」で「46000」、「60μm」で「55200」、「70μm」で「64400」となること。また、「ZK500」のそれぞれの厚みにおける「MD方向」のヤング率「500MPa」と厚みとの積を取ると、「50μm」で「25000」、「60μm」で「30000」、「70μm」で「35000」となること。 (イ)上記(ア)の技術事項を総合すると、引用文献4には以下の技術事項が記載されていると認められる。 「レトルト食品用の包装材料に用いられる積層体のヒートシール層として用いられるフィルムであるZK500であって、破断伸度(引張伸度)が920%、ヤング率が500MPaであり、破断伸度と厚みとの積が、厚みを50μmとした場合に46000、厚みを60μmとした場合に55200、厚みを70μmとした場合に64400であり、ヤング率と厚みとの積が、厚みを50μmとした場合に25000、厚みを60μmとした場合に30000、厚みを70μmとした場合に35000となるZK500。」 (2)本件発明1について ア 本件発明1と引用発明1とを対比する。 引用発明1の「ポリエチレンテレフタレート延伸フィルム」はポリエステルを主成分とするものであり、「ナイロン延伸フィルム」はポリアミドを主成分とするものであるから、引用発明1の「ポリエチレンテレフタレート延伸フィルム」、「ナイロン延伸フィルム」は、それぞれ本件発明1の「第1延伸プラスチックフィルム」、「第2延伸プラスチックフィルム」に相当し、かつ、「第1延伸プラスチックフィルム又は前記第2延伸プラスチックフィルムの一方は、ポリエステルを主成分として含み、他方は、ポリアミドを主成分として含」むことに相当する。 引用発明1の「シール層となるフィルム」は本件発明1の「シーラントフィルム」に相当する。 引用発明1の積層体は「ポリエチレンテレフタレート延伸フィルム」、「ナイロン延伸フィルム」、「シール層となるフィルム」の順に積層される層構成を有するものであるから、本件発明1の「積層体であって、第1延伸プラスチックフィルム、第2延伸プラスチックフィルム及びシーラントフィルムをこの順で少なくとも備え」ることに相当する。 引用発明1の「シール層となるフィルム」が「プロピレン・エチレンブロック共重合体(a)と、直鎖状低密度ポリエチレン(住友化学(株)製GA401)である低密度のポリエチレン系重合体(c)」を含むことは、本件発明1の「シーラントフィルム」が「プロピレン・エチレンブロック共重合体からなる第1の熱可塑性樹脂と、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン又は高密度ポリエチレンからなる第2の熱可塑性樹脂と、を含」むことに相当する。 引用発明1の「シール層となるフィルムにおけるプロピレン・エチレンブロック共重合体(a)は80重量%であって、低密度のポリエチレン系重合体(c)は15重量%」であることは、本件発明1の「シーラントフィルムにおける前記第1の熱可塑性樹脂の質量比率は、51質量%以上であり、前記第1の熱可塑性樹脂の質量比率は、前記第2の熱可塑性樹脂の質量比率よりも高い」ことに相当する。 以上のことから、本件発明1と引用発明1とは、以下の一致点及び相違点を有する。 【一致点1】 「積層体であって、 第1延伸プラスチックフィルム、第2延伸プラスチックフィルム及びシーラントフィルムをこの順で少なくとも備え、 前記第1延伸プラスチックフィルム又は前記第2延伸プラスチックフィルムの一方は、ポリエステルを主成分として含み、他方は、ポリアミドを主成分として含み、 前記シーラントフィルムは、プロピレン・エチレンブロック共重合体からなる第1の熱可塑性樹脂と、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン又は高密度ポリエチレンからなる第2の熱可塑性樹脂と、を含み、 前記シーラントフィルムにおける前記第1の熱可塑性樹脂の質量比率は、51質量%以上であり、 前記第1の熱可塑性樹脂の質量比率は、前記第2の熱可塑性樹脂の質量比率よりも高い、積層体。」 【相違点1-1】 前者は、「流れ方向における前記シーラントフィルムの、JIS K7127による引張伸度が、900%以上であり、流れ方向における前記シーラントフィルムの引張伸度(%)と前記シーラントフィルムの厚み(μm)の積が、45000以上であり、流れ方向における前記シーラントフィルムの引張弾性率(MPa)と前記シーラントフィルムの厚み(μm)の積が、35000以下である」のに対して、後者は、シール層となるフィルムの流れ方向における引張伸度、及び、引張伸度と厚みの積、並びに、流れ方向における引張弾性率と厚みの積が不明である点。 【相違点1-2】 前者は、「シーラントフィルムの厚みが、50μm以上60μm以下」であるのに対して、後者は「シール層となるフィルムの厚みが、70μm」である点。 イ 判断 (ア)相違点1-1について 引用発明1は、耐低温衝撃性を向上させることを1つの課題とするもの(段落【0001】)であるから、上記周知技術1、2を考慮してシール層となるフィルムの引張伸度や厚みを増加させて耐低温衝撃性を向上させることは、当業者であれば容易になし得たことである。 そして、本件特許の請求項1で特定しているシーラントフィルムの引張伸度(%)を「900%以上」とし、シーラントフィルムの厚み(μm)との積を「45000以上」とする点について、引用文献4には、破断伸度が920%であり、厚みを50、60、70μmとした場合に、破断伸度と厚みとの積がいずれも45000を超え、かつ 、厚みを50、60、70μmとした場合に、ヤング率と厚みとの積がいずれも35000以下を満たす「ZK500」が提示されている。 しかしながら、本件発明1のシーラントフィルムは、プロピレン・エチレンブロック共重合体からなる第1の熱可塑性樹脂と、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン又は高密度ポリエチレンからなる第2の熱可塑性樹脂を含むものであるところ、仮に、引用発明1のシール層となるフィルムのプロピレン・エチレンブロック共重合体(a)と、直鎖状低密度ポリエチレン(住友化学(株)製GA401)である低密度のポリエチレン系重合体(c)に代えてZK500を採用したとしても、ZK500は上記第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂を含むものではないので、そのようなものは、本件発明1の「シーラントフィルムは、プロピレン・エチレンブロック共重合体からなる第1の熱可塑性樹脂と、直鎖状低密度ポ。リエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン又は高密度ポリエチレンからなる第2の熱可塑性樹脂と、を含」むことを満たさないものとなり、本件発明1の構成とはならない。 また、引用発明1の引張弾性率(MPa)とシーラントフィルムの厚み(μm)の積の数値範囲を検討するにあたり、第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂とからなるものではないZK500の数値を参考にして、数値範囲を決定することはできない。 よって、引用発明1において、相違点1-1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 (イ)申立人の主張について 申立人は令和7年4月17日提出の意見書において、引用発明1の積層体において、引用文献4に開示されるシーラント用フィルムであるZK500を適用することは、当業者であれば容易に想到し得たことであり、相違点1-1に係る構成は当業者が容易に想到し得たものである旨を主張するが、仮に、引用発明1の積層体において、引用文献4に開示されるシーラント用フィルムであるZK500を適用することが、当業者であれば容易に想到し得たことであったとしても、相違点1-1に係る本件発明1の構成とはならないことは、上記(ア)で説示したとおりである。 よって、申立人の主張を採用することはできない。 (ウ)小括 以上によれば、相違点1-2を検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明1、申立人により提出された他の証拠及び取消理由通知に記載した他の証拠に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件発明2~5について 本件発明2~5は、本件発明1の全ての発明特定事項を含み、更なる限定を付加するものであるから、上記(2)で説示したのと同様の理由により、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件発明6について ア 本件発明6と引用発明2とを対比すると、両者は相違点1-1、1-2において相違する。 イ 判断 相違点1-1については、上記(2)イ(ア)の判断と同様の理由により、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 ウ 小括 以上によれば、相違点1-2を検討するまでもなく、本件発明6は、引用発明2、申立人により提出された他の証拠及び取消理由通知に記載した他の証拠に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第5 取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった申立理由について 1 申立理由の概要 (1)申立理由1(明確性要件) 訂正前の請求項3~6に係る特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 ア 訂正前の請求項3においては、積層体の衝撃強度(kJ/m)がいかなる種類の衝撃強度であるかを特定するにあたって、「前記衝撃強度は・・・距離は40mmである」と衝撃強度の測定方法が規定されている。 しかしながら、訂正前の請求項3では、「一方の前記積層体のシールされていない部分の端部と他方の前記積層体のシールされていない部分の端部をそれぞれ治具に固定し、一方の前記積層体に固定された前記治具を、一方の前記積層体の前記第1延伸プラスチックフィルムの側の面から前記ハンマーで叩くことによって、前記試験片に加えられ」た時に、ハンマーによって叩かれた「一方の前記積層体に固定された前記治具」がどのように動き(移動し)、積層体がどのように動いて、積層体にどのような力が作用するかが不明であるため、訂正前の請求項3で規定された積層体の衝撃強度(kJ/m)がどのような衝撃強度であるかを、明確に理解することができない。請求項3を引用する請求項4及び5についても同様である。 イ 訂正前の請求項6には、「前記シーラントフィルムは、プロピレン・エチレンブロック共重合体からなる第1の熱可塑性樹脂と、α-オレフィン共重合体又はポリエチレンからなる第2の熱可塑性樹脂と、を含み、前記シーラントフィルムにおける前記第1の熱可塑性樹脂の質量比率は、51質量%以上であり、前記第1の熱可塑性樹脂の質量比率は、前記第2の熱可塑性樹脂の質量比率よりも高く、」と記載されているが、プロピレンもα-オレフィンの一種であるから、「プロピレン・エチレンブロック共重合体」も「α-オレフィン共重合体」であることに変わりがない。 そうすると、上記記載において、「プロピレン・エチレンブロック共重合体からなる第1の熱可塑性樹脂」と、「α-オレフィン共重合体又はポリエチレンからなる第2の熱可塑性樹脂」とを別個の配合成分として明確に区別することができない。 よって、訂正前の特許の請求項6に係る発明は明確でない。 2 当審の判断 特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 そこで、以下検討する。 (1)請求項に係る発明が明確か否かについて 請求項に係る発明が明確に把握されるためには、請求項に係る発明の範囲が明確であること、すなわち、ある具体的な物や方法が請求項に係る発明の範囲に入るか否かを当業者が理解できるように記載されていることが必要である。 ここで、本件特許の請求項1~5の記載は積層体の構成を規定するものとして、請求項6の記載は積層体を備える袋を規定するものとして、それぞれ明確であり、ある具体的な物や方法が請求項に係る発明の範囲に入るか否かを当業者が理解できるものである。すなわち、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるということはできない。 (2)申立理由1について ア 本件発明3は、「前記衝撃は、前記試験片の前記シール部の面方向に対して直交する方向において前記試験片に加えられる、」との記載を訂正前の請求項3に追加したものであり、衝撃強度を測定する際に試験片に加えられる衝撃の方向が、試験片のシール部の面方向に対して直交する方向であることが規定された。 したがって、本件発明3によれば、試験片に治具を介して衝撃が加えられた際に、治具がシール部の面方向に対して直交する方向に移動することで、試験片のシール部に外力が作用してシール部の一方の積層体と他方の積層体とが分離するに至ることを、当業者が把握することができる。 したがって、本件発明3及び本件発明3を引用する本件発明4及び5は、申立人の主張する記載不備は有しない。 イ 本件発明6においては、「直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン又は高密度ポリエチレンからなる第2の熱可塑性樹脂」としており、第2の熱可塑性樹脂が、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン又は高密度ポリエチレンからなると限定されているので、本件発明6では「プロピレン・エチレンブロック共重合体からなる第1の熱可塑性樹脂」と「直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン又は高密度ポリエチレンからなる第2の熱可塑性樹脂」とを別個の配合成分として明確に区別することができる。 したがって、本件発明6は、申立人の主張する記載不備は有しない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、本件発明1~6に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議の申立ての理由によって取り消すことはできない。 また、他に本件発明1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701014

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