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特許異議申立

2023-700892

VaRTM成形用樹脂組成物、成形材料、成形品及び成形品の製造方法

審判番号
2023-700892
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-231625
登録番号
7243164
請求日
2023年08月31日
審決日
2023年12月14日
公報発行日
2024年01月26日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】DIC株式会社
  • 【権利者代理人】小川 眞治
  • 【権利者代理人】岩本 明洋
  • 【権利者代理人】大野 孝幸
  • 【異議申立人】笠原 ケイ子
  • 【異議申立人】久保 靖則
審判長/審判官
  • 審判長 ▲吉▼澤 英一
  • 審判官 藤井 勲
  • 審判官 海老原 えい子
分類
P1651.121-Y (C08F) / P1651.536-Y (C08F) / P1651.537-Y (C08F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7243164号発明「VaRTM成形用樹脂組成物、成形材料、成形品及び成形品の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7243164号の請求項1~3に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7243164号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成30年12月11日の出願であって、令和5年3月13日にその特許権の設定登録がされ(請求項の数3)、同年3月22日に特許掲載公報が発行されたものである。 その後、令和5年8月31日に、本件の請求項1~3に係る特許に対して、特許異議申立人 笠原 ケイ子(以下「申立人1」という。)により特許異議の申立てがされ、同年9月19日に、本件の請求項1~3に係る特許に対して、特許異議申立人 久保 靖則(以下「申立人2」という。)により特許異議の申立てがされた。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~3に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下請求項1~3に係る発明を「本件発明1」~「本件発明3」といい、これらをまとめて「本件発明」という。また、本件の願書に添付された明細書を「本件明細書」という)。 【請求項1】 エポキシ(メタ)アクリレート(A)及びスチレン(B)を含有するVaRTM成形用樹脂組成物であって、前記エポキシ(メタ)アクリレート(A)の原料であるエポキシ樹脂のエポキシ当量が250~450の範囲であり、前記エポキシ(メタ)アクリレート(A)と前記スチレン(B)との質量比(A/B)が60/40~45/55の範囲であり、25℃における粘度が50~300mPa・sの範囲であることを特徴とするVaRTM成形用樹脂組成物。 【請求項2】 請求項1記載のVaRTM成形用樹脂組成物、重合開始剤(C)、及び繊維強化材(D)を含有することを特徴とする成形材料。 【請求項3】 請求項2記載の成形材料の硬化物であることを特徴とする成形品。 第3 特許異議申立理由および取消理由の概要 1 特許異議申立書に記載された申立理由 (1)申立人1による申立理由 ア 進歩性(以下「申立理由1(1)」という。) 本件発明1~3は、本件特許の出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明又は甲第4号証に記載された発明に基づいてその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 イ 実施可能要件(以下「申立理由2(1)」という。) 本件発明1~3に係る特許は、下記の理由により、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから,同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 記 (ア)本件明細書には「スチレン等反応性モノマーとの共重合では伸びに優れる硬化物が得られる。」(【0013】)と記載され、実施例2と比較例1を比較するとスチレンの質量比の値が小さい比較例1は実施例2よりも粘度が高く引張伸びが低くなっている一方、追加比較例1及と追加比較例2(甲第9号証)においては、スチレンの質量比の値が小さい追加比較例2は、追加比較例1よりも粘度が高いにもかかわらず、引張伸びが高くなっていることからみると、粘度(スチレンの質量比)と引張伸びの関係に相関は特にないといえる。また、追加比較例1及び2は、本件明細書の上記【0013】の記載と矛盾するから、実験データの真偽に関して疑義を生じる。 (イ)本件明細書の「粘度は、成形型内への注入時間及び繊維への含浸性がより向上することから、25℃において、50~300mPa・sの範囲が好ましく」(【0023】)の記載から、粘度が樹脂組成物の含浸性に影響を与えることが考えられるが、本件明細書には、粘度の調整方法について何ら記載はなく、実施例には、粘度が上記範囲内であることによる、樹脂組成物の含浸性についての評価の記載もない。 (ウ)本件特許出願の出願当初明細書(甲第6号証)には「前記エポキシ樹脂のエポキシ当量が250~500の範囲であることが重要であり、280~450の範囲であることが好ましく、300~400の範囲であることがより好ましい。」(【0013】)と記載され、請求項1には「エポキシ当量が250~500の範囲」と記載されているにもかかわらず、手続補正書(甲第8号証)により「エポキシ当量が250~450の範囲」に補正され、意見書(甲第9号証)で追加実験の結果が提出されてエポキシ当量が485であると、成形品の伸び及び耐熱性が得られないことが示されたことからみれば、本件明細書の実験データには、何ら信憑性がなく、「エポキシ当量の250~450の範囲」においても、本件発明の効果を十分に立証する証拠が適切に記載されているとは到底いうことができない。 ウ サポート要件(以下「申立理由3(1)」という。) 本件発明1~3に係る特許は、下記の理由により、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから,同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 記 上記イ(ア)~(ウ)と同旨 (2)申立人2による申立理由 ア 進歩性(以下「申立理由1(2)」という。) 本件発明1~3は、本件特許の出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、同法113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 イ 実施可能要件(以下「申立理由2(2)」という。) 本件発明2及び3に係る特許は、下記の理由により、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから,同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 記 本件発明2の成形材料について、本件明細書の記載から「混合する」ことで得られることが読み取れ、また、本件明細書には「取り扱い性が優れる」こと及び「常温でのライフが長い」ことが示唆されている(【0013】、【0024】、【0026】、【0032】、【0033】及び【0040】)。そして、一般には成形材料を製造する際、当業者であれば成形品の用途や硬化の条件に応じ、製造する成形材料の製造条件も種々変更させるが、本件明細書には、かかる条件等について一切記載がない。また、本件明細書の「取り扱い性が優れる」「常温でのライフが長い」(【0013】、【0026】)との記載から、成形材料が何らかの方法で取り扱われ、常温で保管されることが示唆されるものの、その形状や製造方法に関する記載はない。 よって、当業者は本件明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて、本件発明2の成形材料を製造することはできず、当該成形材料を硬化させてなる本件発明3の成形品を製造することもできない。 ウ 明確性(以下「申立理由3(2)」という。) 本件発明1~3に係る特許は、下記の理由により、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから,同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 記 (ア)本件発明1について 表1には「RTM成形用樹脂組成物」との記載があるところ、当該「RTM成形用樹脂組成物」と本件発明1の「VaRTM成形用樹脂組成物」とが同じものであるならば、本件発明の「VaRTM成形用」という限定は明確ではない。 また、本件明細書には「実施例1及び2の本発明のVaRTM成形用樹脂組成物は、成形性に優れ、得られる成形品は引張強さ、伸び及び耐熱性に優れることが確認された。」(【0062】)と記載され、実施例1及び2の評価結果によって本件発明の課題が解決されたことが確認されているが、実施例1及び2の成形品は、VaRTM成形によって得られた成形品ではなく、なんら強化材を含まず、真空減圧をされずに製造された汎用の注形板であるから、実施例には、本件課題が、本件発明1に記載のVaRTM成形用樹脂組成物を用いずとも解決できることが示されていることに他ならない。 したがって、本件発明1の「VaRTM成形用」なる限定は明確ではない。 (イ)本件発明2及び3について 実施例1には、VaRTM成形用樹脂組成物をVaRTM成形によって繊維強化材に含浸させた後、成形材料として一度も取り出されることなく硬化させた成形品Y(1)の製造方法が開示されている(【0052】)。 本件発明3は、本件発明2の成形材料の硬化物であることを特徴とする成形品であるから、仮に上記実施例に記載の成形品Y(1)が本件発明3の「成形品」であるとするならば、どのような状態を本件発明2の「成形材料」と呼ぶのか不明確である。逆に、成形品Y(1)が本件発明3の「成形品」でないならば、本件発明3は、当業者が理解できるように記載されていない。 2 申立人が提出した証拠 (1)申立人1が提出した証拠方法は、以下のとおりである。 甲第1号証:特開平9-296016号公報 甲第2号証:特開2013-245268号公報 甲第3号証:特開2012-102193号公報 甲第4号証:国際公開第2018/105380号 甲第5号証:国際公開第2011/021516号 甲第6号証:本件発明の平成30年12月11日出願当初明細書 甲第7号証:令和4年7月26日に発送された最初の拒絶理由通知書 甲第8号証:令和4年10月20日に提出された手続補正書 甲第9号証:令和4年10月20日に提出された意見書 (2)申立人2が提出した証拠方法は、以下のとおりである。 甲第1号証:特開2007-84701号公報 甲第2号証:特開2002-370288号公報 甲第3号証:「FRPポケットブック」、強化プラスチック協会、1997年3月31日発行、p.70-71 甲第4号証:大角重明他、「CFRP-VaRTM成形用ビニルエステル樹脂の開発」強化プラスチックス Vol.63、No.3、強化プラスチック協会、2017年3月24日発行、p.128-130 以下、申立人1が提出した特許異議申立書を「申立書1」といい、申立人1が提出した甲第1号証~9号証を「甲1(1)」~「甲9(1)」という。また、申立人2が提出した特許異議申立書を「申立書2」といい、申立人2が提出した甲第1号証~4号証を「甲1(2)」~「甲4(2)」という。 第4 当審の判断 以下では、まず進歩性に係る申立理由1(1)及び1(2)について順に検討し(下記1及び2)、次に実施可能要件に係る申立理由2(1)及び2(2)についてまとめて検討し(下記3)、さらにサポート要件に係る申立理由3(1)について検討し(下記4)、最後に明確性要件に係る申立理由3(2)について検討する(下記5)。 1 申立理由1(1)(進歩性)について (1)甲1(1)を主引例とする申立理由1(1)について ア 甲1(1)に記載された発明 甲1(1)の実施例13に着目すると、甲1(1)には、以下の発明が記載されていると認められる。 「反応容器中に、エピコート1001(油化シェル社製エポキシ樹脂、エポキシ当量484)を0.5モル(484g)、メタクリル酸を0.95モル(82g)及びトリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ハイドロキノンをエポキシ樹脂とメタクリルの合計量100部に対してそれぞれ0.2部.0.015部及びスチレンモノマーを116.5部仕込み、空気を吹き込みながら反応させ、酸価が0mgKOH/gになった時点で反応を終了した後全スチレンモノマー量がビニルエステル樹脂に対して45%となるようにスチレンモノマーを加えて得たビニルエステル樹脂VE-1を100部に、末端マレイン酸タイプオリゴマーMK-1を10部と、スチレンモノマーを20部を添加した、粘度が75センチポアズ/25℃のRTM成形用の樹脂組成物。」(以下「甲1(1)発明」という)。 イ 本件発明1について (ア)対比 甲1(1)発明の「反応容器中に、エピコート1001(油化シェル社製エポキシ樹脂、エポキシ当量484)を0.5モル(484g)、メタクリル酸を0.95モル(82g)及びトリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ハイドロキノンをエポキシ樹脂とメタクリルの合計量100部に対してそれぞれ0.2部.0.015部及びスチレンモノマーを116.5部仕込み、空気を吹き込みながら反応させ、酸価が0mgKOH/gになった時点で反応を終了した後全スチレンモノマー量がビニルエステル樹脂に対して45%となるようにスチレンモノマーを加えて得たビニルエステル樹脂VE-1」はエピコート1001とメタクリル酸との反応生成物であるビニルエステル樹脂を含有するところ、これは本件発明1の「エポキシ(メタ)アクリレート(A)」に、「エポキシ(メタ)アクリレート」である限りにおいて一致する。 甲1(1)発明の樹脂組成物の粘度は75センチポアズ/25℃、すなわち25℃における粘度が75mPa・sであり、本件発明1の「25℃における粘度が50~300mPa・s」の範囲内にある。 そうすると本件発明1と甲1(1)発明とは、 「エポキシ(メタ)アクリレート(A)及びスチレン(B)を含有する、25℃における粘度が50~300mPa・sの範囲である樹脂組成物。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 【相違点1】 樹脂組成物について、本件発明1は「VaRTM成形用」であるのに対して甲1(1)発明では「RTM成形用」である点 【相違点2】 エポキシ(メタ)アクリレート(A)の原料であるエポキシ樹脂のエポキシ当量について、本件発明1では「250~450の範囲」であるのに対して甲1(1)発明では「484」である点 【相違点3】 エポキシ(メタ)アクリレート(A)とスチレン(B)との質量比(A/B)について、本件発明1では60/40~45/55であるのに対して甲1(1)発明では、全スチレンモノマー量がビニルエステル樹脂に対して45%となるようにスチレンモノマーを加えたVE-1を100部に対して、スチレンモノマー20部添加した点 (イ)判断 事案に鑑み、相違点2について検討する。 a 本件明細書には、「エポキシ当量の小さいエポキシの両末端に対して(メタ)アクリル酸を反応させると架橋間距離すなわち架橋密度の高いエポキシ(メタ)アクリレートとなりスチレン等反応性モノマーとの共重合では耐熱性の高い硬化物が得られる。逆に、エポキシ当量の大きいエポキシの両末端に対して(メタ)アクリル酸を反応させると架橋間距離すなわち架橋密度の低いエポキシ(メタ)アクリレートとなりスチレン等反応性モノマーとの共重合では伸びに優れる硬化物が得られる。このように、エポキシ(メタ)アクリレートとスチレン等反応性モノマーとの共重合により得られる樹脂硬化物の耐熱性と伸びは相反する傾向にあり、得られる成形品の優れた耐熱性及び伸びを両立するため、前記エポキシ樹脂のエポキシ当量が250~500の範囲であることが重要であり、280~450の範囲であることが好ましく、300~400の範囲であることがより好ましい。」と記載されている(【0013】)。 そうすると、本件発明1では、エポキシ(メタ)アクリレートの原料エポキシ樹脂のエポキシ当量は、硬化物の耐熱性と伸びを両立させるという観点から特定されたものと解される。 b これに対して、甲1(1)は、「(A)重合性不飽和化合物(B)繊維強化剤及び/またはフィラー及び(C)一般式(1)で表される有機ホウ素化合物及び酸性化合物からなる重合開始剤を含有することを特徴とする硬化性複合材料組成物(当審注:一般式(1)は省略)」(請求項1)を開示し、その具体例である甲1(1)発明の「ビニルエステル樹脂VE-1」は上記「(A)重合性不飽和化合物」にあたると解されるところ、甲1(1)には、「(A)重合性不飽和化合物」としてのビニルエステル樹脂に関し「エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート」と記載されている(【0023】)ものの、原料エポキシ樹脂のエポキシ当量を調整することについては記載も示唆もされておらず、ましてや、硬化物の耐熱性と伸びを両立させるという観点から、エポキシ樹脂のエポキシ当量を調整することなど何ら記載も示唆もされていない。 よって、甲1(1)全体の記載をみても、甲1(1)発明において、ビニルエステル樹脂VE-1の原料エポキシ樹脂のエポキシ当量を「250~450」にすることの動機付けは見出せない。 c (a)甲5(1)には、熱硬化性樹脂成分として、ポリ(グリシジルオキシアリール)系化合物(A)、不飽和カルボン酸又はその無水物であって、分子量160以下の重合性単量体(B)、芳香族ビニル化合物又は(メタ)アクリル酸エステル(C)、及びラジカル重合開始剤(D)を所定の割合で含む繊維強化複合材料用樹脂組成物が記載され(【請求項1】)、当該樹脂組成物をイン・サイチュー重合反応(グリシジルオキシ基と酸基との反応と、ラジカル重合性基の重合反応とを特に反応工程として区別することなく両反応を同時乃至連続的に行う)ことにより硬化前においては流動性が著しく高くなる一方で、硬化物における耐熱性や機械的強度を飛躍的に向上させることができることが記載されている(【0017】)。また、ポリ(グリシジルオキシアリール)系化合物(A)としてビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましいこと、常温での流動性や強化繊維への含浸性の観点からエポキシ当量500g/eq.以下のものが好ましく、組成物の流動性の点から100~300g/eq.の範囲であることが特に好ましいことが記載されている(【0019】)。 (b)そこで、甲1(1)発明において上記甲5(1)に記載されたエポキシ当量の好ましい範囲を採用することが当業者にとって容易であったかについて検討する。 上記のとおり、甲5(1)は、ポリ(グリシジルオキシアリール)系化合物(A)と不飽和カルボン酸又はその無水物であって、分子量160以下の重合性単量体(B)をあらかじめ反応させることなくイン・サイチュー重合反応させるものであるから、上記好ましいエポキシ当量も、かかる反応における、流動性や強化繊維への含浸性の観点からの好ましいエポキシ当量であると解される。 これに対して、甲1(1)発明の樹脂組成物はあらかじめ製造されたビニルエステル樹脂VE-1をその構成成分として含むのであって、「イン・サイチュー重合反応」に供されるものではないのだから、上記甲5(1)に記載の好ましいエポキシ当量を、甲1(1)発明に適用する動機付けはない。 (c)また、仮に甲1(1)発明において甲5(1)に記載されたエポキシ当量を採用することが動機付けられるとしても、甲5(1)が記載するエポキシ当量は上記(a)のとおり「500g/eq.以下」又は「100~300g/eq.」であり、必ずしも「250~450」の範囲にあたるというものではなく、実際に実施例でもエポキシ当量188、212、178、186、208、171と「250~450」の範囲外にあるエポキシ樹脂が用いられているから(【0058】)、「ビニルエステル樹脂VE-1」の原料エポキシ樹脂のエポキシ当量を「250~450」とすることがただちに動機付けられるものではない。 (d)よって、甲1(1)発明と甲5(1)に記載された事項を併せ考えても甲1(1)発明において、「ビニルエステル樹脂VE-1」の原料エポキシ樹脂のエポキシ当量を「250~450」にすることの動機付けは見出せない。 d その他の証拠をみても、甲1(1)発明においてビニルエステル樹脂VE-1の原料エポキシ樹脂のエポキシ当量を「250~450」とすることが動機付けられるとする根拠は見出せない。 e よって、相違点2に係る事項は当業者が容易に想到し得た事項ではない。 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲1(1)発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ)申立人1の主張について 申立人1は申立書1において以下のとおり主張する。 a エポキシ(メタ)アクリレートを含有する繊維強化複合材料組成物は、成形性や含浸性の観点から、該組成物が低粘度であることを要するから、低粘度の樹脂組成物を使用することは周知の事項である一方で、甲5(1)には「ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、特に常温での流動性に優れ、強化繊維への含浸性が良好となる点からエポキシ当量500g/eq.以下のものが好ましく」、「該ビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ当量は、組成物の流動性の点から100~300g/eq.の範囲であることが特に好ましい。」と記載されており、樹脂組成物の用途に応じて、その粘度や流動性を調整するために原料となるエポキシ樹脂のエポキシ当量等を調整することは、当業者の通常の創作能力の発揮の範疇である(13頁22行~14頁12行)。 b 本件発明1の効果と甲1(1)に記載された効果とは「耐熱性・強度(伸び)の向上」で共通しており、また、本件発明1と甲1(1)に記載された発明との相違点は、エポキシ樹脂のエポキシ当量のみであるから、本件発明1のエポキシ当量を規定する数値範囲限定に臨界的意義を有する場合に、本件発明1の有利な効果が顕著性を有していることを認定することができるが、そのようなことは確認できないから、本件発明1は有利な効果を奏するとはいえない(14頁13行~15頁15行)。 上記主張について検討する。 主張aについて、 甲1(1)発明と甲5(1)に記載された事項を併せ考えても甲1(1)発明において、「ビニルエステル樹脂VE-1」の原料エポキシ樹脂のエポキシ当量を「250~450」にすることの動機付けは見出せないことは、上記(イ)cのとおりである。 また、上記(イ)aのとおり、本件発明1では硬化物の耐熱性と伸びを両立させるという観点からエポキシメタクリレート(メタ)アクリレートの原料エポキシ樹脂のエポキシ当量を「250~450」と特定したと解されるところ、仮に申立人1の主張するとおり、低粘度の樹脂組成物を使用することが周知の事項であったとしても、甲1(1)発明において低粘度の樹脂組成物を使用するとの観点から「ビニルエステル樹脂VE-1」の原料エポキシ樹脂のエポキシ当量を調整した場合、その値が「250~450」となる根拠はない。 よって、上記主張aは採用できない。 主張bについて 本件明細書には、発明の効果として「VaRTM組成物から得られる成形品は、外観、強度、弾性率等の一般的な特性に加え、耐熱性、伸びに優れる」(【0011】)と記載され、実施例では、本件発明1のVaRTM組成物から得られる成形性は引張強さ、引張伸び、荷重たわみ温度、成形性(成形品の未含浸部の有無)に優れていることが具体的な実験データで示されている(【0053】、【表1】、【0062】)。 そうすると、本件発明1の効果は、VaRTM組成物から得られる成形品が、外観、強度、弾性率等の一般的な特性に加え、耐熱性、伸びに優れるという効果を奏するものと認められる。 これに対して、甲1(1)の効果は「硬化すべき組成物が比較的厚かったり、あるいは繊維強化材及び/またはフィラーなど、光透過を阻害する構成の組成物であっても、安全かつ簡便な方法で速やかに複合材料組成物を硬化させることができる。・・・特に本発明の複合材料組成物により、従来の光硬化性組成物の問題であった、繊維強化材やフィラーなどの光透過を阻害する構成要素を含む組成物の硬化が困難なこと、加熱硬化性組成物の問題であった、低温分解性の過酸化物を配合することから生じる貯蔵安定性が悪いことを同時に解決することができる。」(【0096】、【0097】)というものであり、成形品の引張強さ、引張伸び、荷重たわみ温度、成形性に優れることについては記載がない。 甲1(1)には、わずかに「反応性希釈剤」が「繊維強化材との含浸性を高め」、「成形製品の」「強度」等を「調製するために重要である」こと(【0028】)、「低収縮剤の使用量が40重量部を越える量では」「耐熱性が低下する恐れがある」こと(【0034】)が記載されているものの、これらについての具体的な実験データはない。 そうすると、本件発明1の効果と甲1(1)に記載された効果とは「耐熱性・強度(伸び)の向上」で共通しているということはできず、主張bは前提において誤りがある。 そして、上記のとおり甲1(1)には成形品の引張強さ、引張伸び、荷重たわみ温度、成形性に優れることの記載がなく、上記本件発明1の効果を予測することができると認めるに足りる根拠がない以上、本件発明1においてエポキシ当量を規定する数値範囲限定に臨界的意義があるか否かを検討するまでもなく、本件発明1は甲1(1)から予測をすることのできない効果を奏すると解すべきである。 よって、主張bは採用できない。 (エ)小括 したがって、本件発明1は甲1(1)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明2及び3について 本件発明2及び3は本件発明1を直接又は間接的に引用しており、本件発明1が甲1(1)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明2及び3も甲1(1)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)甲2(1)を主引例とする申立理由1(1)について ア 甲2(1)に記載された発明 甲2(1)の比較例3(【0061】、【0070】)に着目すると、甲2(1)には以下の発明が記載されていると認められる。 「ビスフェノールA系エポキシ樹脂(エポキシ当量375部)とメタクリル酸を反応させたエポキシメタクリレートを58部と、スチレン42部を含む均一溶液。」(以下「甲2(1)発明」という。) イ 本件発明1について (ア)対比 甲2(1)発明の「ビスフェノールA系エポキシ樹脂(エポキシ当量375部)とメタクリル酸を反応させたエポキシメタクリレートを58部」は、本件発明1の「エポキシ(メタ)アクリレート(A)」であって「エポキシ(メタ)アクリレート(A)の原料であるエポキシ樹脂のエポキシ当量が250~450の範囲であ」るものに相当する。 甲2(1)発明の「エポキシメタクリレートを58部と、スチレン42部」の配合比は、本件発明1の「エポキシ(メタ)アクリレート(A)と前記スチレン(B)との質量比(A/B)」である「60/40~45/55」の範囲内の値である。 甲2(1)発明の「均一溶液」は、「ビスフェノールA系エポキシ樹脂(エポキシ当量375部)とメタクリル酸を反応させたエポキシメタクリレート」を含むことから、「樹脂組成物」であるといえる。 そうすると本件発明1と甲2(1)発明とは、 「エポキシ(メタ)アクリレート(A)及びスチレン(B)を含有する樹脂組成物であって、前記エポキシ(メタ)アクリレート(A)の原料であるエポキシ樹脂のエポキシ当量が250~450の範囲であり、前記エポキシ(メタ)アクリレート(A)と前記スチレン(B)との質量比(A/B)が60/40~45/55の範囲である樹脂組成物。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 【相違点4】 本件発明1では樹脂組成物は「25℃における粘度が50~300mPa・s」であるのに対して、甲2(1)発明ではこの点についての特定がない点。 【相違点5】 本件発明1では樹脂組成物は「VaRTM成形用」であるのに対して、甲2(1)発明ではこの点についての特定がない点 (イ)判断 a 相違点4について 甲2(1)は、特定の(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン(A)と、特定のラジカル重合性不飽和単量体(B)と、有機過酸化物(C)とを含有する、炭素繊維強化プラスチック用樹脂組成物を開示する文献であり(【請求項1】)、通常のビニルエステル樹脂と炭素繊維を含むFRPは、樹脂自体の靱性強度が十分高くなく、樹脂と炭素繊維との界面密着性が十分でないために、機械的強度や疲労特性等の機械的特性が不十分である等の従来技術の問題点を踏まえ、優れた機械的特性を有し、樹脂の臭気が少なく、低粘度化及び硬化性に優れる炭素繊維強化プラスチック用樹脂組成物等を提供することを課題とするものである(【0004】、【0009】)。 そして、甲2(1)発明である比較例3は、上記特定の(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン(A)の代わりにビニルエステル樹脂を使用したものであり、そこで得られる硬化物は、上記特定の(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン(A)を用いた実施例1及び2に比して、曲げ強さ及び圧縮強さが劣っていたことが具体的に記載されている(【表2】)。 そうすると、甲2(1)には甲2(1)発明の樹脂組成物について甲2(1)の課題を解決するものではないことが具体的な実験データの裏付けをもって記載されているのだから、甲2(1)に接した当業者が甲2(1)発明の樹脂組成物に基づいて粘度を調整し「25℃における粘度が50~300mPa・s」とすることが動機付けられるとはいえない。 また、その他の証拠をみても、甲2(1)発明において粘度を「25℃における粘度が50~300mPa・s」とすることの動機付けは見出せない。 よって、相違点4に係る事項は当業者が容易に想到しうる事項ではない。 b 相違点5について 上記aのとおり、甲2(1)には比較例である甲2(1)発明が甲2(1)の課題を解決するものではないことが具体的な実験データをもって示されているのだから、甲2(1)発明の樹脂組成物を「VaRTM成形用」とすることの動機付けは見出せないし、その他の証拠をみてもかかる事項が動機付けられるとするに足りる根拠はない。 よって、相違点5に係る事項は当業者が容易に想到しうる事項ではない。 (ウ)申立人1の主張について 申立人1は甲2(1)発明において樹脂組成物の粘度の数値範囲を調整することは当業者の技術常識の範疇であって単なる設計変更に過ぎないとした上で、本件発明1が甲2(1)発明と比して有利な効果を奏するという根拠が見出せないと主張する(申立書1の15頁32行~16頁12行)。 しかしながら、上記(イ)のとおり甲2(1)発明において粘度を調整することの動機付けは見出せないから、本件発明1が甲2(1)発明と比して有利な効果を奏するか否かについて検討するまでもなく、上記主張は採用できない。 (エ)小括 よって、本件発明1は甲2(1)発明、すなわち甲2(1)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明2及び3について 本件発明2及び3は本件発明1を直接又は間接的に引用しており、本件発明1が甲2(1)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明2及び3も甲2(1)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)甲3(1)を主引例とする申立理由1(1)について ア 甲3(1)に記載された発明 甲3(1)の比較合成例2(【0062】)に着目すると、甲3(1)には以下の発明が記載されていると認められる。 「ビスフェノールA系エポキシ樹脂(エポキシ当量390)830部とメタクリル酸365部を反応させて得たエポキシメタクリレート樹脂を、不揮発成分が60%となるようにスチレンモノマーにて希釈した、エポキシメタクリレート樹脂(VII)をスチレンに溶解させた粘度が12dPa・sである樹脂組成物。」(以下「甲3(1)発明」という。) イ 本件発明1について (ア)対比 甲3(1)発明の「ビスフェノールA系エポキシ樹脂(エポキシ当量390)830部とメタクリル酸365部を反応させて得たエポキシメタクリレート樹脂」は、本件発明1の「エポキシ(メタ)アクリレート(A)」であって「エポキシ(メタ)アクリレート(A)の原料であるエポキシ樹脂のエポキシ当量が250~450の範囲であ」るものに相当する。 甲3(1)発明の「樹脂組成物」は、エポキシメタクリレート樹脂を、不揮発成分が60%となるようにスチレンモノマーにて希釈したものであり、エポキシメタクリレート樹脂を60質量部、スチレンモノマーを40質量部含むから(【0076】の【表2】)、その配合比は、本件発明1の「エポキシ(メタ)アクリレート(A)と前記スチレン(B)との質量比(A/B)」である「60/40~45/55」の範囲内の値である。 そうすると本件発明1と甲3(1)発明とは、 「エポキシ(メタ)アクリレート(A)及びスチレン(B)を含有する樹脂組成物であって、前記エポキシ(メタ)アクリレート(A)の原料であるエポキシ樹脂のエポキシ当量が250~450の範囲であり、前記エポキシ(メタ)アクリレート(A)と前記スチレン(B)との質量比(A/B)が60/40~45/55の範囲である樹脂組成物。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 【相違点6】 本件発明1では、樹脂組成物は「25℃における粘度が50~300mPa・s」であるのに対して甲3(1)発明の樹脂組成物では、12dPa・sである点 【相違点7】 本件発明1では、樹脂組成物は「VaRTM成形用」であるのに対して甲3(1)発明ではこの点についての特定がない点 (イ)判断 a 相違点6について 甲3(1)は、特定の(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン(A)と、特定のラジカル重合性不飽和単量体(B)を含有するラジカル重合性樹脂組成物を開示する文献であり(請求項1、8)、高い引張伸び率と、引張弾性率及び引張強さ等の高い機械的強度とを両立した硬化物を形成可能なラジカル重合性樹脂組成物等を提供すること課題としている(【0006】)。 そして、具体的に実施例及び比較例として、上記特定の(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン(A)を含む樹脂組成物から得られる注型板は、引張伸び率と、引張弾性率及び引張強さ等の機械的強度のバランスに優れていることが確認されたが、甲3(1)発明である比較合成例2の樹脂組成物を用いた比較例2で得られる注型板は、上記特定の(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン(A)の代わりにエポキシアクリレート樹脂を用いたところ、上記バランスに劣るものであったことが示されている(【0078】、【表2】)。 そうすると、甲3(1)には比較例である甲3(1)発明が甲3(1)の課題を解決するものではないことが具体的な実験データをもって示されているのだから、甲3(1)発明の樹脂組成物の粘度を調整して「25℃における粘度が50~300mPa・s」とすることの動機付けは見出せない。 また、その他の証拠をみても、甲3(1)発明において粘度を調整し「25℃における粘度が50~300mPa・s」とすることの動機付けは見出せない。 よって、相違点6に係る事項は当業者が容易に想到しうる事項ではない。 b 相違点7について 上記aのとおり、甲3(1)には甲3(1)発明が甲3(1)の課題を解決するものではないことが具体的な実験データをもって示されているのだから、甲3(1)発明の樹脂組成物を「VaRTM成形用」とすることの動機付けは見出せないし、その他の証拠をみてもかかる事項が動機付けられるとするに足りる根拠は見出せない。 よって、相違点7に係る事項は当業者が容易に想到しうる事項ではない。 (ウ)申立人1の主張について 申立人1は、甲3(1)発明において樹脂組成物の粘度の数値範囲を調整すること及びVaRTM成形用とすることは単なる設計変更に過ぎないと主張する(申立書1の17頁9~25行)が、これらの事項について動機付けが見出せないことは上記(イ)のとおりであり、当該主張は採用できない。 (エ)小括 よって、本件発明1は甲3(1)発明、すなわち甲3(1)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明2及び3について 本件発明2及び3は本件発明1を直接又は間接的に引用しており、本件発明1が甲3(1)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明2及び3も甲3(1)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)甲4(1)を主引例とする申立理由1(1)について ア 甲4(1)に記載された発明 甲4(1)の比較例1(【0042】、【0054】、【0059】表1)に着目すると、甲4(1)には以下の発明が記載されていると認められる。 「ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量188)677質量部とメタクリル酸310質量部を反応させて得たエポキシメタクリレート(A-1)とスチレンとを質量比55/45で含む、粘度50mPa・sであるVaRTM成形用樹脂組成物。」(以下「甲4(1)発明」という。) イ 本件発明1について (ア)対比 甲4(1)発明の「ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量188)677質量部とメタクリル酸310質量部を反応させて得たエポキシメタクリレート(A-1)」は、本件発明1の「エポキシ(メタ)アクリレート(A)」に「エポキシ(メタ)アクリレート」である限りにおいて一致する。 甲4(1)発明の「VaRTM成形用樹脂組成物」は、エポキシメタクリレート(A-1)とスチレンとを質量比55/45で含むところ、かかる質量比は、本件発明1の「エポキシ(メタ)アクリレート(A)と前記スチレン(B)との質量比(A/B)」である「60/40~45/55」の範囲内の値である。 甲4(1)発明の「VaRTM成形用樹脂組成物」の粘度は「50mPa・s」であるところ、当該粘度は25℃における粘度であると解される(【0033】)から、「25℃における粘度が50~300mPa・s」の範囲内である。 そうすると本件発明1と甲4(1)発明とは、 「エポキシ(メタ)アクリレート(A)及びスチレン(B)を含有するVaRTM成形用樹脂組成物であって、前記エポキシ(メタ)アクリレート(A)と前記スチレン(B)との質量比(A/B)が60/40~45/55の範囲であり、25℃における粘度が50~300mPa・sの範囲であるVaRTM成形用脂組成物。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 【相違点8】 エポキシ(メタ)アクリレート(A)の原料であるエポキシ樹脂のエポキシ当量について、本件発明1では250~450の範囲であるのに対して甲4(1)発明では188である点 (イ)判断 a 相違点8について (a)甲4(1)は、ラジカル硬化性樹脂(A)、常圧での沸点が200℃以上の不飽和単量体(B)、及び重合開始剤(C)を含有するVaRTM成形用樹脂組成物を開示し、成形品の生産性に優れ、外観及び曲げ強さ等の各種物性に優れるVaRTM成形用樹脂組成物等を提供することを課題としている(【0007】)。 そして、実施例及び比較例をみると、常圧での沸点が200℃以上の不飽和単量体(B)を含む樹脂組成物は成形性に優れ、得られる成形品は曲げ強さ、曲げ弾性率及びバーコル硬さに優れることが確認されたのに対して、甲4(1)発明である、沸点が200℃未満であるスチレンを使用した比較例1は、減圧下での樹脂注入時の樹脂中のモノマーの沸騰が生じ、成形品の一部に未含浸・硬化不良が生じたため、曲げ強さ・曲げ弾性率の評価ができなかったことが記載されている(【0060】、【0061】)。 そうすると、甲4(1)発明の樹脂組成物は甲4(1)の課題を解決するものではなく、甲4(1)に接した当業者が甲4(1)発明においてエポキシ(メタ)アクリレート(A)の原料であるエポキシ樹脂のエポキシ当量を調整することの動機付けは見出せない。 (b)さらに、上記(1)イ(イ)のとおり、本件発明1では、エポキシ(メタ)アクリレート(A)の原料エポキシ樹脂のエポキシ当量は、硬化物の耐熱性と伸びを両立させるという観点から特定されたものと解されるところ、甲4(1)には、エポキシ(メタ)アクリレートのエポキシ当量を調整することなど記載も示唆もされておらず、ましてや、硬化物の耐熱性と伸びを両立させるという観点から、エポキシ樹脂のエポキシ当量の値を調整することなど記載も示唆もされていない。 (c)よって、甲4(1)全体の記載をみても、甲4(1)発明において、エポキシ(メタ)アクリレート(A)の原料エポキシ樹脂のエポキシ当量を「250~450」にすることの動機付けは見出せないし、その他の証拠を見ても、かかる事項が動機付けられるとするに足りる根拠は見出せない。 よって、相違点8に係る事項は当業者が容易に想到しうる事項ではない。 b よって、本件発明1は甲4(1)発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ)申立人1の主張について 申立人1は、樹脂組成物の用途に応じて、その粘度や流動性を調整するために原料となるエポキシ樹脂のエポキシ当量を調整することは当業者の通常の製作能力の発揮の範疇であり、単なる設計事項にすぎないと主張するが(申立書1の17頁26行~18頁13行)、甲4(1)発明において、エポキシ(メタ)アクリレート(A)の原料エポキシ樹脂のエポキシ当量のエポキシ当量を「250~450」にすることの動機付けが見出せないことは上記(イ)のとおりであり、当該主張は採用できない。 (エ)小括 よって、本件発明1は甲4(1)発明、すなわち甲4(1)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明2及び3について 本件発明2及び3は本件発明1を直接又は間接的に引用しており、本件発明1が甲4(1)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明2及び3も甲4(1)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)申立理由1(1)についてのまとめ よって、申立理由1(1)は理由がない。 2 申立理由1(2)について (1)甲1(2)に記載された発明 甲1(2)の実施例66に着目すると、甲1(2)には、以下の発明が記載されていると認められる(【0035】、【0036】、【0041】~【0047】、【0052】、【表2】。ここで、「実施例66」は【表2】の「実施例6」と同じ実施例を示すことは明らかである)。 「不飽和ポリエステル(UPE-1)を45.3質量%、エピクロン830(大日本インキ化学工業(株)製エポキシ樹脂:エピクロルヒドリンとビスフェノールFの反応物:エポキシ等量180、数平均分子量344)2970部、メタクリル酸1456部を反応させて得られたエポキシアクリレート(EPA-1)を14質量%、スチレンを30.7質量%含む、粘度が1.7dPa・sである成形用樹脂組成物。」(以下「甲1(2)発明」という。) (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1(2)発明とを対比する。 甲1(2)発明のエピクロン830(大日本インキ化学工業(株)製エポキシ樹脂:エピクロルヒドリンとビスフェノールFの反応物:エポキシ等量180、数平均分子量344)2970部、メタクリル酸1456部を反応させて得られたエポキシアクリレート(EPA-1)は、本件発明1のエポキシ(メタ)アクリレートに、エポキシ(メタ)アクリレートである限りにおいて、一致する。 そうすると、本件発明1と甲1(2)発明とは、 「エポキシ(メタ)アクリレート(A)及びスチレン(B)を含有する樹脂組成物。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 【相違点9】 エポキシ(メタ)アクリレート(A)について、本件発明1ではエポキシ(メタ)アクリレート(A)の原料であるエポキシ樹脂のエポキシ当量が250~450の範囲であるのに対して、甲1(2)発明では180である点 【相違点10】 エポキシ(メタ)アクリレート(A)とスチレン(B)との質量比(A/B)について、本件発明1では60/40~45/55の範囲であるのに対して、甲1(2)発明ではエポキシアクリレート(EPA-1)を14質量%、スチレンを30.7質量%含む点 【相違点11】 樹脂組成物について、本件発明1はVaRTM成形用樹脂組成物であるのに対して甲1(2)発明ではこの点について特定されていない点 【相違点12】 樹脂組成物について、本件発明1は25℃における粘度が50~300mPa・sの範囲であるのに対して甲1(2)発明では1.7dPa・sであるものの、測定温度が不明である点 イ 判断 (ア)相違点9について 事案に鑑み、相違点9について検討する。 a 上記1(1)イ(イ)のとおり、本件発明1では、エポキシ(メタ)アクリレート(A)の原料エポキシ樹脂のエポキシ当量は、硬化物の耐熱性と伸びを両立させるという観点から特定されたものと解されるところ、甲1(2)には、エポキシ(メタ)アクリレートのエポキシ当量を調整することなど記載も示唆もされておらず、ましてや、硬化物の耐熱性と伸びを両立させるという観点から、エポキシ樹脂のエポキシ当量を調整することなど何ら記載も示唆もされていない。 そうすると甲1(2)全体をみても甲1(2)発明においてエポキシアクリレート(EPA-1)の原料エポキシ樹脂のエポキシ当量を「250~450」とすることは何ら動機付けられない。 b 甲2(2)には、高分子材料からなる表層(A)、中間層(B)、および繊維強化プラスチック層(C)を有する繊維強化プラスチック成形品の中間層を構成する硬化性樹脂組成物が重合性不飽和単量体と重合硬化性不飽和樹脂とからなること、前記重合硬化性不飽和樹脂がエポキシ(メタ)クリレート樹脂であること、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、平均エポキシ当量が好ましくは150~450なる範囲内にあるようなエポキシ樹脂と不飽和一塩基酸をエステル化触媒の存在下で反応せしめて得られることが記載されている(請求項1、5、【0036】)。 しかしながら、甲2(2)には、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂を製造するためのエポキシ樹脂の平均エポキシ当量を150~450とすることについての技術的意義については一切記載がない上、「150~450」のうちの特に「250~450」とすることについても記載がなく、具体的に実施例で使用されているエポキシ樹脂のエポキシ当量も189である(【0078】)。 そうすると、甲1(2)発明と甲2(2)に記載の事項を併せ考えても、甲1(2)発明においてエポキシアクリレート(EPA-1)の原料エポキシ樹脂のエポキシ当量を「250~450」とすることは何ら動機付けられない。 さらに、その他の証拠をみてもかかる事項が動機付けられるとするに足りる根拠は見出せない。 c よって、相違点9に係る事項は当業者が容易に想到し得たものではない。 (イ)したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲1(2)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 申立人2の主張について 申立人2は、申立書2において本件発明1と甲1(2)に記載された発明との相違点として、 a VaRTM成形用樹脂組成物において、本件発明1がエポキシ(メタ)アクリレート(A)を含むのに対し、甲1(2)に記載された発明では不飽和ポリエステル樹脂を含む点 b 本件発明1がエポキシ(メタ)アクリレート(A)を含み、その原料であるエポキシ樹脂のエポキシ当量が250~450の範囲である点 c 本件発明1がエポキシ(メタ)アクリレート(A)を含み、スチレン(B)との質量比(A/B)が60/40~45/55の範囲である点 を挙げた上で、いずれの相違点も当業者であれば容易に想到し得たものであると主張する(申立書2の8頁19~9頁28行)。 そこで検討するに、上記aに関しては、上記(1)のとおり甲1(2)にはエポキシ(メタ)アクリレートの記載があるものの、上記bに関して、かかる事項が当業者にとって容易想到ではないことは上記イ(ア)のとおりであるから、上記cについて検討するまでもなく本件発明1は甲1(2)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 よって、上記主張は採用できない。 (3)本件発明2及び3について 本件発明2及び3は本件発明1を直接又は間接的に引用しており、本件発明1が甲1(2)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明2及び3も甲1(2)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)小括 よって、申立理由1(2)は理由がない。 3 申立理由2(1)及び2(2)(実施可能要件)について (1)判断基準 発明の詳細な説明が物の発明について実施可能要件を満たすためには、当業者が発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識とに基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができる程度の記載があることを要するものと解される。 (2)本件発明の実施可能要件について 本件発明1は、エポキシ(メタ)アクリレート(A)及びスチレン(B)を含有する「VaRTM成形用樹脂組成物」に係る発明であり、本件発明2は本件発明1のVaRTM成形用樹脂組成物、重合開始剤(C)、及び繊維強化材(D)を含有する「成形材料」に係る発明であり、本件発明3は本件発明2の成形材料の硬化物である「成形品」に係る発明である。 これに対して、本件明細書には、VaRTM成形用樹脂組成物はエポキシ(メタ)アクリレート(A)及びスチレン(B)及び必要に応じて他の成分を混合することにより得られること(【0023】)、本件発明2の成形材料は、VaRTM成形用樹脂組成物、重合開始剤(C)、繊維強化材(D)及び必要に応じて他の成分を混合することにより得られること(【0040】)、本件発明3の成形品は、公知のVaRTM成形方法により得られるが、例えば、繊維強化材(D)を賦形した成形型内を10kPa以下に減圧し、室温もしくは生産性を上げる目的で40~60℃に型温調した状態で、必要により100kPa~12MPaで前記VaRTM成形用樹脂組成物を圧入し、繊維強化材(D)に含浸させ、さらに後硬化も兼ね、型温度を80~140℃に加熱し5~60分間硬化させた後、脱型することで得られることが記載されている(【0041】)。 さらに、実施例1、2として具体的に、VaRTM成形用樹脂組成物、成形材料及び成形品を製造することが記載されている(【0045】~【0055】)。 そうすると、本件明細書の記載に接した当業者は過度の試行錯誤を要することなく、本件発明の「VaRTM成形用樹脂組成物」、「成形材料」及び「成形品」を製造し、使用することができるといえる。 (3)申立人の主張について ア 申立人1の主張について 申立人1は、上記第3の1(1)イのとおり、 (ア)本件明細書には「スチレン等反応性モノマーとの共重合では伸びに優れる硬化物が得られる。」(【0013】)と記載され、実施例2と比較例1を比較するとスチレンの質量比の値が小さい比較例1は実施例2よりも粘度が高く引張伸びが低くなっている一方、追加比較例1及と追加比較例2(甲9(1))においては、スチレンの質量比の値が小さい追加比較例2は、追加比較例1よりも粘度が高いにもかかわらず引張伸びが高くなっていることからみると、粘度(スチレンの質量比)と引張伸びの関係に相関は特になく、また、追加比較例1及び2は、本件明細書の上記【0013】の記載と矛盾するから、実験データの真偽に関して疑義を生じる、 (イ)本件明細書の「粘度は、成形型内への注入時間及び繊維への含浸性がより向上することから、25℃において、50~300mPa・sの範囲が好ましく」(【0023】)の記載から、粘度が樹脂組成物の含浸性に影響を与えることが考えられるが、本件明細書には、粘度の調整方法について何ら記載はなく、実施例には、粘度が上記範囲内であることによる、樹脂組成物の含浸性についての評価の記載もない、 (ウ)本件特許出願の出願当初明細書(甲6(1))には「前記エポキシ樹脂のエポキシ当量が250~500の範囲であることが重要であり、280~450の範囲であることが好ましく、300~400の範囲であることがより好ましい。」(【0013】)と記載され、請求項1には「エポキシ当量が250~500の範囲」と記載されているにもかかわらず、意見書(甲9(1))で追加実験の結果が提出されてエポキシ当量が485であると成形品の伸び及び耐熱性が得られないことが示されたことからみれば、本件明細書の実験データには、何ら信憑性がなく、「エポキシ当量の250~450の範囲」においても、本件発明の効果を十分に立証する証拠が適切に記載されているとは到底いうことができない、 として、本件発明が実施可能要件を満たさないと主張する。 しかしながら、実施可能要件は上記(1)の判断基準に従って判断されるべきであり、その場合、本件明細書の記載に接した当業者は過度の試行錯誤を要することなく、本件発明の「VaRTM成形用樹脂組成物」、「成形材料」及び「成形品」を製造し、使用することができるといえることは上記(2)のとおりである。 そして、上記(ア)に関し、申立人が指摘する【0013】の記載は、エポキシ(メタ)アクリレートの原料エポキシ樹脂に関し、エポキシ当量の小さい場合とエポキシ当量の大きい場合を対比して、後者の場合には「スチレン等反応性モノマーとの共重合では伸びに優れる硬化物が得られる」ことを述べているのであって、スチレンの質量比や粘度と硬化物の伸びとの関係を述べているとは解されないから、仮に追加比較例1及び2(甲9(1))から、粘度(スチレンの質量比)と引張伸びの関係に相関は特にないことが理解されたとしても、これらの実験結果と上記【0013】の記載とが矛盾するとはいえない。 なお、追加比較例1及び2は、エポキシ(メタ)アクリレートの原料エポキシ樹脂のエポキシ当量が本件発明1の範囲外であるし、実施例1及び実施例2と比較するにしても、追加比較例1及び2と実施例1及び2とは、原料エポキシ樹脂のエポキシ当量に加え、エポキシ(メタ)アクリレートとスチレンとの量比の点において異なっているから、追加比較例1及び2の「成形品の引張伸び」が実施例1及び2のものよりも小さいからといって、ただちにこれらの実験データが上記【0013】の記載と矛盾すると断じることもできない。 そうすると、追加比較例1及び2に関し、実験データの真偽に関して疑義を生じるとみる理由はない。 また、上記(イ)に関し、上記(2)のとおり、本件明細書にはVaRTM成形用樹脂組成物を製造する方法が記載され、「25℃において、50~300mPa・s」である樹脂組成物を製造した具体例も記載されているのだから、粘度の調整方法について何ら記載がないとはいえないし、上記粘度についての規定を満たす樹脂組成物を用いた硬化物は未含浸部分がなかったことが記載されているのだから(【0053】、【0061】)、粘度が上記範囲内であることによる樹脂組成物の含浸性についての評価の記載もないともいえない。 さらに上記(ウ)に関し、申立人1も認めるとおり当初明細書にはエポキシ当量に関して、「280~450の範囲であることが好ましく、300~400の範囲であることがより好ましい」と記載されていたのだから(【0013】)、審査段階の意見書(甲9(1))の追加比較例はさらに好ましい範囲の効果を説明するものであると解されるのであって、当該追加比較例により本件明細書の実験データに信憑性がないということにはならない。 よって、申立人1の主張は採用できない。 イ 申立人2の主張について 申立人2は、上記第3の1(2)イのとおり、本件発明2の成形材料について、本件明細書には、成形材料が何らかの方法で取り扱われ、常温で保管されることが示唆されるものの、その形状や製造方法に関する記載はないから、当業者は本件明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて、本件発明2の成形材料を製造することはできず、当該成形材料を硬化させてなる本件発明3の成形品を製造することもできないと主張するが、本件発明2の成形材料及び本件発明3の成形品を、本件明細書の記載にしたがって製造できるといえることは上記(2)のとおりであり、申立人2の主張は採用できない。 (4)小括 よって、申立理由2(1)及び2(2)はいずれも理由がない。 4 申立理由3(1)(サポート要件)について (1)判断基準 特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。 (2)本件発明のサポート要件について ア 本件発明の課題 本件明細書の記載によれば、本件発明の課題は、成形性に優れ、耐熱性及び伸び等の各種物性に優れる成形品を得られるVaRTM成形用樹脂組成物、成形材料及び成形品を提供すること(【0007】)であると認められる。 イ 発明の詳細な説明の記載 本件明細書の発明の詳細な説明には、エポキシ当量の小さいエポキシの両末端に対して(メタ)アクリル酸を反応させると、架橋密度の高いエポキシ(メタ)アクリレートとなりスチレン等反応性モノマーとの共重合では耐熱性の高い硬化物が得られ、逆に、エポキシ当量の大きいエポキシの両末端に対して(メタ)アクリル酸を反応させると架橋密度の低いエポキシ(メタ)アクリレートとなりスチレン等反応性モノマーとの共重合では伸びに優れる硬化物が得られるというように、エポキシ(メタ)アクリレートとスチレン等反応性モノマーとの共重合により得られる樹脂硬化物の耐熱性と伸びは相反する傾向にあり、エポキシ樹脂のエポキシ当量が250~500の範囲であることが重要であり、280~450の範囲であることが好ましく、300~400の範囲であることがより好ましいこと(【0013】)が記載されている。 また、実施例には、所定のエポキシ当量のエポキシ樹脂を原料とするエポキシ(メタ)アクリレートとスチレンを所定の量比で配合した樹脂組成物は、成形性に優れ、得られる成形品は引張強さ、伸び及び耐熱性に優れることが確認されたことが記載されている(【0061】、【0062】)。 そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明の記載に接した当業者は、特定のエポキシ当量を有するエポキシ樹脂を原料とするエポキシ(メタ)アクリレートとスチレンを所定の量比で配合した樹脂組成物を使用した場合、成形材料は成形性に優れ、得られる成形品は引張強さ、伸び及び耐熱性に優れること、すなわち、上記アの課題が解決されることを、具体的な裏付けをもって理解する。 よって、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明である。 (3)申立人1の主張について 上記第3の1(1)イのとおり、申立人1は上記3(3)アと同旨の主張をする。 しかしながら、サポート要件は上記(1)の判断基準に従って判断されるものであって、その場合、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえることは上記(2)のとおりである。 また、申立人1の上記主張を採用できないことは、上記3(3)アのとおりである。 よって、申立人1の主張は採用できない。 (4) 小括 よって、申立理由3(1)は理由がない。 5 申立理由3(2)(明確性)について (1)判断基準 特許法第36条第6項第2号は、特許請求の範囲の記載に関し、特許を受けようとする発明が明確でなければならない旨規定する。この趣旨は、特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合には、特許の付与された発明の技術的範囲が不明確となり、第三者に不測の不利益を及ぼすことがあり得るため、そのような不都合な結果を防止することにある。そして、特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 (2)本件発明の明確性要件について 本件発明1~3はいずれも明確であり、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるといった特段の事情は見出せない。 (3)申立人2の主張について 申立人2は、上記第3の1(2)ウのとおり、 (ア)本件発明1について、表1の「RTM成形用樹脂組成物」と本件発明1の「VaRTM成形用樹脂組成物」とが同じものであるならば、本件発明の「VaRTM成形用」は明確ではない、また、実施例1及び2の成形品は、VaRTM成形によって得られた成形品ではないから、実施例には、本件課題が、本件発明1に記載のVaRTM成形用樹脂組成物を用いずとも解決できることが示されていることに他ならず、本件発明1の「VaRTM成形用」は明確ではない、 (イ)本件発明2及び3について、実施例1には、VaRTM成形用樹脂組成物をVaRTM成形によって繊維強化材に含浸させた後、成形材料として一度も取り出されることなく硬化させた成形品Y(1)の製造方法が開示されているが、本件発明3は、本件発明2の成形材料の硬化物であることを特徴とする成形品であるから、仮に上記実施例に記載の成形品Y(1)が本件発明3の「成形品」であるとするならば、どのような状態を本件発明2の「成形材料」と呼ぶのか不明確である。逆に、成形品Y(1)が本件発明3の「成形品」でないならば、本件発明3は、当業者が理解できるように記載されていない、 として、本件発明が明確性要件を満たさないと主張する。 しかしながら、上記(2)のとおり本件発明1~3はいずれも明確であり、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるといった特段の事情は見出せない。 上記(ア)に関し、申立人2は、「VaRTM成形用」なる語が明確でないと主張するが、本件明細書には「バキュームアシストレジントランスファーモールディング(VaRTM)」(【0003】)と記載され、さらに「VaRTM成形は繊維強化材を予め型内に賦形し、型締後、減圧下で、液状樹脂を型内に注入し、型内で繊維強化材にマトリックス樹脂を含浸し、硬化させる成形方法である」(【0004】)と記載されており、「VaRTM成形用」なる語は明確である。 そして、本件明細書全体の記載からみれば、表1の「RTM成形用」は「VaRTM成形用」を意味することは明らかであるし、実施例における成形品Y(1)は(【0052】)の記載からみれば「VaRTM成形」によるものであることも明らかである。 また、上記(イ)について、本件発明2の「成形材料」は、本件発明1の「VaRTM成形用樹脂組成物」と「重合開始剤(C)、及び繊維強化材(D)を含有する」ものであり、本件発明3の「成形品」は、本件発明2の「成形材料」の「硬化物」であることは請求項1~3の記載から明確である。 申立人2は、実施例1で、VaRTM成形用樹脂組成物が成形材料として一度も取り出されることなく硬化させて成形品Y(1)が製造されていることを指摘するが、仮にそうであったとしても、そのことにより、上記本件発明1~3が明確でないということにはならない。 よって、申立人2の主張は採用できない。 (4)小括 よって、申立理由3(2)は理由がない。 第5 まとめ 以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1~3に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700892

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