特許異議申立
2024-700127
透析システムの管理装置およびプログラム
- 審判番号
- 2024-700127
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-227492
- 登録番号
- 7326732
- 請求日
- 2024年02月14日
- 審決日
- 2025年12月25日
- 公報発行日
- 2026年04月24日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ニプロ株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人深見特許事務所
- 【異議申立人】笠原 ケイ子
- 審判長/審判官
- 審判長 佐々木 正章
- 審判官 土田 嘉一
- 審判官 佐藤 智弥
- 分類
- P1651.111-YAA(A61M) / P1651.113-YAA(A61M) / P1651.121-YAA(A61M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第7項、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第29条第1項第1号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7326732号発明「透析システムの管理装置およびプログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7326732号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕、8について訂正することを認める。
特許第7326732号の請求項1、7及び8に係る特許を維持する。
特許第7326732号の請求項2~6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7326732号(以下「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、平成30年12月4日を出願日とするものであって、令和5年8月7日にその特許権の設定登録がされ、同年8月16日に特許掲載公報が発行された。その後、令和6年2月14日にその請求項1~8に係る特許について、特許異議申立人笠原 ケイ子(以下「異議申立人」という。)より特許異議申立書が提出された。
特許異議の申立て以降の手続の経緯は、概略以下のとおりである。
令和 6年 2月14日 特許異議申立書の提出
同年 4月25日付け 取消理由通知書
同年 7月 2日 意見書・訂正請求書の提出(特許権者)
同年 9月12日付け 訂正請求があった旨の通知書
(特許法第120条の5第5項)
同年10月16日 意見書の提出(異議申立人)
令和 7年 6月25日付け 取消理由通知書(決定の予告)
同年 8月21日 意見書・訂正請求書の提出(特許権者)
同年 9月19日付け 訂正請求があった旨の通知書
(特許法第120条の5第5項)
同年11月 5日 意見書の提出(異議申立人)
なお、令和6年7月2日提出の訂正請求書による訂正請求は、令和7年8月21日付け訂正請求がされたことにより、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和7年8月21日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の請求は、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを求めるものであり、その内容は以下のとおりである(下線部は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記出力インターフェイスを介して表示する、透析システムの管理装置。」とあるのを、
「前記出力インターフェイスを介して表示し、
前記設定の表示は、血液浄化治療を受ける患者の体重の変化が表れるように前記補液量および前記除水量の設定を表す表示を含み、
前記血液浄化治療を受ける患者の体重の変化が表れるように前記補液量および前記除水量の設定を表す表示は、
前記補液量に相当する重量だけ前記患者の体重が増加したことを示す第1表示と、
前記補液量に相当する重量だけ増加した前記患者の体重から前記除水量に相当する重量だけ前記患者の体重が減少したことを示す第2表示と、を含み、
前記制御部は、前記第1表示と前記第2表示とを前記所定期間ごとに繰り返し行うことにより折れ線グラフを表示する、透析システムの管理装置。」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項7も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1~請求項6のいずれか1項」とあるのを、「請求項1」に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8に「補液量の値として除水量の値よりも大きい値を受け付けることができる、プログラム。」とあるのを、
「補液量の値として除水量の値よりも大きい値を受け付けることができ、
前記表示するステップは、血液浄化治療を受ける患者の体重の変化が表れるように前記補液量および前記除水量の設定を表す表示を行うことを含み、
前記血液浄化治療を受ける患者の体重の変化が表れるように前記補液量および前記除水量の設定を表す表示は、
前記補液量に相当する重量だけ前記患者の体重が増加したことを示す第1表示と、
前記補液量に相当する重量だけ増加した前記患者の体重から前記除水量に相当する重量だけ前記患者の体重が減少したことを示す第2表示と、を含み、
前記表示するステップは、前記第1表示と前記第2表示とを前記所定期間ごとに繰り返し行うことにより折れ線グラフを表示することを含む、プログラム。」に訂正する。
(9)訂正事項8-1
特許請求の範囲の請求項8に「前記設定を、表示するステップと、とを実行させ、」とあるのを、「前記設定を、表示するステップと、を実行させ、」に訂正する。
2 一群の請求項について
本件訂正は、一群の請求項〔1~7〕に対して請求されたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「設定を」「表示する」ことについて、「前記設定の表示は、血液浄化治療を受ける患者の体重の変化が表れるように前記補液量および前記除水量の設定を表す表示を含み、前記血液浄化治療を受ける患者の体重の変化が表れるように前記補液量および前記除水量の設定を表す表示は、前記補液量に相当する重量だけ前記患者の体重が増加したことを示す第1表示と、前記補液量に相当する重量だけ増加した前記患者の体重から前記除水量に相当する重量だけ前記患者の体重が減少したことを示す第2表示と、を含み、前記制御部は、前記第1表示と前記第2表示とを前記所定期間ごとに繰り返し行うことにより折れ線グラフを表示する」ことを減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、上記アのとおりであるから、実質上特許請の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項(以下「本件明細書等」という。)のうち、次の段落の記載及び図6の記載に基づいて導き出される事項であるから、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
(ア)段落【0060】
「[補液量/除水量の表示の変形例]図6は、補液量/除水量の設定値の表示画面の変形例を示す図である。図6の設定内容表示画面600は、グラフ610とグラフ620とを含む。グラフ610とグラフ620も、その横軸は透析の開始からの経過時間を表す。」
(イ)段落【0062】
「グラフ620は、線L1と線L2とを含む。線L1と線L2は、補液量と除水量の設定値を用いて算出された、透析において想定される患者の体重の変化量を表す。算出される変化量は、患者の体重が、補液量に相当する重量だけ増加し、除水量に相当する重量だけ減少することを表す。」
(ウ)段落【0063】
「線L2は、本実施の形態に従った方式の透析(すなわち、I-HDF方式の透析)に対して設定された、補液量と除水量の設定値を用いて算出された変化量を表す。」
(エ)段落【0065】
「一方、I-HDFでは、除水と補液が交互に行われる。したがって、線L2では、各ステップにおいて、補液に対応する部分では体重が増加すること(グラフ620において値が上方に変化すること)を示し、除水に対応する部分では体重が減少すること(グラフ620において値が下方に変化すること)を示す。すなわち、グラフ620は、折れ線グラフの体裁を有する。」
以上より、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。
(2)訂正事項2~6
ア 訂正の目的について
訂正事項2~6は、訂正前の特許請求の範囲の請求項2~6を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2~6は、請求項2~6を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2~6は、請求項2~6を削除するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。
(3)訂正事項7
ア 訂正の目的について
訂正事項7は、請求項7が「請求項1~請求項6のいずれか1項」と引用していたところ、訂正事項2~6により請求項2~6が削除されたことに伴い、請求項2~6を引用しないものとする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項7は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項7は、上記アのとおりであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。
(4)訂正事項8
ア 訂正の目的について
訂正事項8は、訂正前の請求項8の「表示するステップ」について、「血液浄化治療を受ける患者の体重の変化が表れるように前記補液量および前記除水量の設定を表す表示を行うことを含み、前記血液浄化治療を受ける患者の体重の変化が表れるように前記補液量および前記除水量の設定を表す表示は、前記補液量に相当する重量だけ前記患者の体重が増加したことを示す第1表示と、前記補液量に相当する重量だけ増加した前記患者の体重から前記除水量に相当する重量だけ前記患者の体重が減少したことを示す第2表示と、を含み、前記表示するステップは、前記第1表示と前記第2表示とを前記所定期間ごとに繰り返し行うことにより折れ線グラフを表示することを含む」ことを減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項8は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。
ウ 願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項8は、上記(1)ウの理由と同様の理由により、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(5)訂正事項8-1
訂正事項8-1は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する「誤記の訂正」を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、同法第120の5条第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合する。
4 独立特許要件について
請求項1~8について特許異議の申立てがされているので、訂正後の請求項1、7、8に係る訂正に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
5 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号及び第3号に規定する特許請求の範囲の減縮又は明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、かつ、同法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕、8について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正により訂正された請求項1、7及び8に係る発明(以下「本件発明1」などという。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1、7及び8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
制御部と、
透析システムの血液浄化治療中の所定期間ごとに実行される制御における前記所定期間ごとの補液量および除水量の設定を受け付ける入力インターフェイスと、
出力インターフェイスとを備え、
前記入力インターフェイスは、少なくとも1つの前記所定期間について、前記補液量の設定として前記除水量の設定より大きい値を受け付けることができ、
前記制御部は、
前記入力インターフェイスを介して受け付けた前記設定を、前記出力インターフェイスを介して表示し、
前記設定の表示は、血液浄化治療を受ける患者の体重の変化が表れるように前記補液量および前記除水量の設定を表す表示を含み、
前記血液浄化治療を受ける患者の体重の変化が表れるように前記補液量および前記除水量の設定を表す表示は、
前記補液量に相当する重量だけ前記患者の体重が増加したことを示す第1表示と、
前記補液量に相当する重量だけ増加した前記患者の体重から前記除水量に相当する重量だけ前記患者の体重が減少したことを示す第2表示と、を含み、
前記制御部は、前記第1表示と前記第2表示とを前記所定期間ごとに繰り返し行うことにより折れ線グラフを表示する、透析システムの管理装置。
【請求項7】
前記制御部は、ある所定期間について、除水量の設定として補液量の1/2以下の値を受け付けた場合にはエラーを表示する、請求項1に記載の透析システムの管理装置。
【請求項8】
コンピューターによって実行される、透析システムを管理するためのプログラムであって、前記コンピューターによって実行されることにより、前記コンピューターに、
透析システムの血液浄化治療中の所定期間ごとに実行される制御における前記所定期間ごとの補液量および除水量の設定を受け付けるステップと、
前記設定を、表示するステップと、
を実行させ、
前記設定を受け付けるステップは、少なくとも1つの前記所定期間について、補液量の値として除水量の値よりも大きい値を受け付けることができ、
前記表示するステップは、血液浄化治療を受ける患者の体重の変化が表れるように前記補液量および前記除水量の設定を表す表示を行うことを含み、
前記血液浄化治療を受ける患者の体重の変化が表れるように前記補液量および前記除水量の設定を表す表示は、
前記補液量に相当する重量だけ前記患者の体重が増加したことを示す第1表示と、
前記補液量に相当する重量だけ増加した前記患者の体重から前記除水量に相当する重量だけ前記患者の体重が減少したことを示す第2表示と、を含み、
前記表示するステップは、前記第1表示と前記第2表示とを前記所定期間ごとに繰り返し行うことにより折れ線グラフを表示することを含む、プログラム。」
第4 取消理由の概要
当審が令和7年6月25日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。
請求項1、7及び8に係る特許は、その請求項に係る発明が引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項に違反してされたものであるから、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきである。
<引用文献等一覧>
1.“透析用監視装置 NCV-3 取扱説明書 操作マニュアル”、ニプロ株式会社及び澁谷工業株式会社
2.“医療機器改修の概要”、[online]、平成28年5月16日作成、厚生労働省、インターネット<URL:https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/kaisyu/2016/kaisyuu2016-2-6930.html>
3.“医療機器改修の概要”、[online]、令和4年5月9日作成、独立行政法人医薬品医療機器総合機構、インターネット<URL:https://www.info.pmda.go.jp/rgo/MainServlet?recallno=2-10656>
6.特開2004-49492号公報
7.特開2018-201772号公報
なお、引用文献1~3、引用文献6~7は、それぞれ、異議申立人が提出した甲第1~3号証、参考資料1~2である。
第5 引用文献の記載事項及び引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載事項
引用文献1には、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審にて付与した。以下同様である。)。
ア 表紙
「透析用監視装置 NCV-3」
イ iページ
「本装置はVCS(ビスカスコントロールシステム)による除水コントロール機構を内蔵した透析用監視装置です。」
「本装置はさらに以下のような特長があります。
■多様化する透析治療への対応
様々な透析治療プログラムを設定することで、患者の状態に適した治療をサポートします。
■操作性・視認性の向上
高解像度の大型モニタで遠くからでも数字が見やすくなりました。
また、タッチした部分が振動すると同時に押されたエリアを波紋で表示します。
これにより、直感的な操作ができ操作時のストレスを軽減します。」
ウ 1-2ページ
「第1章 装置の構成
1.1 各部の名称と機能
本装置は、以下のように構成されています。」
「
[図:0001434088000001.jpg]
」
エ 1-3ページ
「
[図:0001434088000002.jpg]
」
オ 1-7ページ
「第1章 装置の構成
1.3 操作パネル
操作パネルの構成について説明します。」
「
[図:0001434088000003.jpg]
」
カ 1-9ページ
「第1章 装置の構成
1.3.2 基本的な画面レイアウト
タッチパネルに表示される画面の基本的な構成について説明します。」
「
[図:0001434088000004.jpg]
」
キ 4-78ページ
「第4章 プログラム
4.5 間歇補液プログラム
4.5.1 間歇補液プログラムについて
間歇補液プログラムは、逆濾過補液と補液の回収を自動でコントロールするためのプログラムです。」
ク 4-79ページ
「第4章 プログラム
4.5.2 間歇補液プログラムに関する画面説明」
「(1)間歇補液プログラムモニタ画面
[図:0001434088000005.jpg]
」
「
[図:0001434088000006.jpg]
」
ケ 4-80ページ~4-81ページ
「(2)間歇補液プログラム設定画面
[図:0001434088000007.jpg]
」
「
[図:0001434088000008.jpg]
」
「
[図:0001434088000009.jpg]
」
コ 4-83ページ
「
[図:0001434088000010.jpg]
」
サ 4-84ページ~4-85ページ
「第4章 プログラム
4.5.3 除水設定と間歇補液プログラムパターンの設定および登録
除水設定を行ってから、間歇補液プログラムパターンの設定を行います。
間歇補液プログラムパターンを選択したら、ステップ毎に補液量と回収量を入力し任意の間歇補液プログラムパターンを設定することができます。」
「
[図:0001434088000011.jpg]
」
「
[図:0001434088000012.jpg]
」
「
[図:0001434088000013.jpg]
」
シ 4-88ページ
「第4章 プログラム
(2)運転開始
1.運転工程に移行します。
間歇補液プログラムが開始します。」
「
[図:0001434088000014.jpg]
」
ス 4-95ページ
「第4章 プログラム
4.5.6 間歇補液プログラムに関するトラブル発生時の対処方法」
「
[図:0001434088000015.jpg]
」
セ 4-96ページ
「
[図:0001434088000016.jpg]
」
ソ 11-84ページ
「第11章 設定画面の詳細
11.3.32 患者情報設定画面(オプション)
目標除水量を構成するパラメータの設定と血液ポンプ流量の設定を行います。」
「
[図:0001434088000017.jpg]
」
「
[図:0001434088000018.jpg]
」
(2)認定事項
ア 引用文献1の透析用監視装置は、操作パネル、血液ポンプ及び補液ポンプ等から構成されるとともに、除水コントロール機構を内蔵し、患者の状態に適した治療をサポートする(前記(1)ア~エ)、様々な透析治療を行う装置である。
イ 前記アの操作パネルは、主電源スイッチ、受電ランプ及びタッチパネル等から構成され、タッチパネルは、各種の設定や透析などの操作を指示する画面を表示するものであるから(前記(1)エ及びオ)、当該設定や操作に係る設定・表示を含む各種の動作を制御するCPU(内蔵された透析治療プログラムを含む)を備えることは自明である。
ウ 前記アの透析用監視装置は、様々な透析治療プログラムとして、間歇補液プログラムを設定することができ(前記(1)イ及びキ)、前記イのタッチパネルは、間歇補液プログラムが設定された場合には、間歇補液プログラムモニタ画面及び間歇補液プログラム設定画面を切り替え可能に表示する(前記(1)ク~コ、シ)。
エ 前記ウの間歇補液プログラム設定画面では、間歇補液プログラムの各ステップの補液量及び回収量を設定することができる(前記(1)ケ及びサ)。
オ 前記エの設定は、間歇補液プログラムの最終ステップ以外の各ステップにおいて、回収量が補液量の50%以上になるように設定するものである(前記(1)サ及びス)。
また、回収量が補液量の50%未満であるステップがある場合には、間歇補液プログラム設定画面の棒グラフを赤色に表示する(前記(1)ケ、サ及びス)。
カ 前記ウの間歇補液プログラムモニタ画面及び前記ウ~オの間歇補液プログラム設定画面は、間歇補液プログラムのステップ毎に、補液量を水色の棒グラフで表示し、回収量を緑色のバーで表示する(前記(1)ク及びケ)。
(3)引用発明
前記(1)の引用文献1の記載事項及び(2)の認定事項から、引用文献1には、次の二つの発明(以下「引用発明A」及び「引用発明B」という。)が記載されている。
ア 引用発明A
「様々な透析治療を行う透析用監視装置の操作パネルであって、
前記操作パネルは、
各種の設定や透析などの操作を指示する画面を表示するタッチパネルと、
前記タッチパネルの設定・表示を含む各種の動作を制御するCPUと、を備えるものであり、
前記タッチパネルは、
透析治療プログラムとして間歇補液プログラムが設定された場合には、間歇補液プログラムモニタ画面及び間歇補液プログラム設定画面を切り替え可能に表示するとともに、
前記間歇補液プログラム設定画面において、間歇補液プログラムの各ステップの補液量及び回収量を設定し、最終ステップ以外の前記設定は、前記回収量が前記補液量の50%以上になるように設定するものであるとともに、
前記間歇補液プログラムモニタ画面及び前記間歇補液プログラム設定画面において、前記ステップ毎に、前記補液量を水色の棒グラフで表示し、前記回収量を緑色のバーで表示し、
前記回収量が前記補液量の50%未満であるステップがある場合には、間歇補液プログラム設定画面の棒グラフを赤色に表示する、
透析用監視装置の操作パネル。」
イ 引用発明B
「様々な透析治療を行う透析用監視装置の動作を実行する透析治療プログラムであって、
透析治療プログラムとして間歇補液プログラムが設定された場合には、
前記透析治療プログラムは、前記透析用監視装置の動作を制御するCPUに、
間歇補液プログラム設定画面において、間歇補液プログラムの各ステップの補液量及び回収量を設定するステップと、
間歇補液プログラムモニタ画面及び前記間歇補液プログラム設定画面において、前記ステップ毎に、前記補液量を水色の棒グラフで表示し、前記回収量を緑色のバーで表示するステップと、を実行させ、
最終ステップ以外の前記設定は、前記回収量が前記補液量の50%以上になるように設定するものである、
透析用監視装置の透析治療プログラム。」
(4)引用文献1の頒布時期について
ア 引用文献2(甲第2号証)の記載事項
引用文献2の「2.対象ロット、数量及び出荷時期」に、次の記載がある。
「販売名 :透析用監視装置 NCV-3」
「製造年月日:平成27年3月25日~平成28年4月27日」
イ 引用文献3(甲第3号証)の記載事項
引用文献3の「2.対象ロット、数量及び出荷時期」に、次の記載がある。
「販売名 :透析用監視装置 NCV-3」
「製造年月日:平成27年3月25日~令和4年4月7日」
ウ 引用文献1の頒布時期
引用文献1(「透析用監視装置 NCV-3」の操作マニュアル)には、頒布時期に関する記載はないが、前記ア及びイに示した当該装置の「製造年月日」に照らすと、引用文献1は、本件特許に係る出願の出願日(平成30年12月4日)の前に、頒布された。
2 引用文献6について
引用文献6には、以下の事項が記載されている。
ア「【0002】
【従来の技術】
従来、腎機能が損なわれ、水分調節機構に障害が発生して尿の排出ができなくなった患者の治療のために、透析治療が行われている。この透析治療は、半透膜を介して透析や濾過を行うことにより、血液を浄化する治療である。このような半透膜を介して行う透析や濾過においては、血液透析装置が用いられる。
【0003】
この血液透析装置においては、血液の浄化を、安全で効果的に行う必要があるとともに、患者の体重を適正に維持することに重点が置かれている。
【0004】
すなわち、血液透析を行う目的の一つに、余剰となった水分を体外に排出することを挙げることができる。そして、この水分の体外排出は、除水ポンプにより、患者の血液から余剰水分を取り除くことにより実行される。
【0005】
このとき、血液の浄化の際に行われる水分除去を、急激もしくは過度に行うと、患者の循環血液量を過剰に減少させてしまう。このように循環血液量が過剰に減少してしまうと、患者の血圧が低下し、その身体に負担を与えてしまう。
【0006】
また、身体に必要な成分まで、過剰に除去されることになるため、影響は重大である。他方、水分除去が不十分であると、被透析者の体内に余剰な水分が蓄積され、血圧の上昇、肺機能の低下または心臓肥大などの重篤な影響を被透析者に与える可能性がある。
【0007】
そこで、患者の体重を適正に維持するために、患者に関する種々の指標が必要となる。この指標のうち、透析治療においては、「基準体重(Dry Weight)」と呼ばれる指標が重要である。そして、余剰水分の体外排除は、患者の体重がこの基準体重(Dry Weight)に到達するまで行われる。
【0008】
この基準体重(Dry Weight)とは、患者の体内にある過剰な水分がすべて除去されたときの体重、換言すると、患者の体液量が正常人と同じ状態になったときの体重と定義される。」
イ「【0067】
また、この一実施形態による血液透析装置には、透析中の透析患者の除水量を測定可能な除水量測定計5が設けられている。
【0068】
この除水量測定計5は、血液透析処理中の透析患者からの除水量を測定するためのものである。また、この除水量測定計5においては、測定された透析患者の除水量の数値を、数値データとして出力して、制御部2に供給可能に構成されている。
【0069】
そして、制御部2においては、供給された除水量の数値データと、あらかじめ入力された血液透析処理前の患者の体重値とをから、血液透析処理中の患者の体重値を算出可能に構成されている。
【0070】
また、制御部2は、算出された算出値を出力し、たとえばタッチパネルディスプレイなどの操作表示部4に表示させることができるように構成されている。なお、この算出においては、血液透析中における患者の摂取した食事量や、発汗などによって生理的に失った水分量や、補液量などを補正して算出することも可能である。
【0071】
以上のようにして、この一実施形態による血液透析装置を有する基準体重評価システムが構成されている。」
3 引用文献7について
引用文献7には、以下の事項が記載されている。
ア「【0005】
しかしながら、上記従来の血液浄化装置においては、血液浄化治療中に血液回路から患者が離脱して血液浄化治療が中断した後、血液回路による患者の血液の体外循環を行わせて血液浄化治療を再開させる場合、返血時に導入された置換液等の水分によって、治療開始時に設定された除水量や除水速度等の設定値を変更しなければならないが、このような設定値の変更は、通常、医療従事者により手作業にて行われていた。
【0006】
特に、患者がトイレへ行くための中断においては、排尿若しくは排便により体重が減少する場合があるとともに、中断している間に患者が飲食した場合は、その飲食分だけ体重が増加することがあるので、中断時における患者の体重の増減を考慮して除水に関するパラメータを変更する必要がある。また、患者が血液回路から離脱する際、緊急補液を行うこともあり、この補液量も考慮して除水に関するパラメータの変更が必要となる場合もある。」
イ「【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る血液浄化装置は、体外循環する患者の血液を浄化して透析治療(血液浄化治療)する血液透析装置1に適用されたもので、図1、2に示すように、動脈側血液回路2a及び静脈側血液回路2bを有する血液回路2と、血液浄化器としてのダイアライザ3と、透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2等の配管を有する装置本体Dと、表示手段としてのタッチパネルMと、設定手段11と、制御手段12と、算出手段13と、変更手段14とを有して構成されている。」
ウ「【0045】
そして、本実施形態に係る算出手段13で算出される患者の体重に関わる変化量、及びタッチパネルMで表示される患者の体重に関わる変化量は、補液ラインL8による液体(補液や置換液等)の送り込み量の他、患者が飲食したことによる体重の増加量を含むとともに、除水ポンプ8による水分の除去量の他、患者が排尿若しくは排便したことによる体重の減少量を含むものとされている。
【0046】
具体的には、図3に示すように、タッチパネルMにおいて、血液浄化治療の中断時の患者の体重(項目K1)及び血液浄化治療の再開時の患者の体重(項目K2)を触れ、入力手段Nにて測定した患者の体重をそれぞれ手作業で入力可能とされており、その入力された体重から患者の体重変化(項目K3)を算出して、図5に示すように、表示可能とされているのである。」
エ 「
[図:0001434088000019.jpg]
」
4 参考資料4(特開2006-288625号公報)について
令和7年11月5日に異議申立人が提出した意見書における参考資料4(特開2006-288625号公報)には、以下の事項が記載されている。
ア「【0052】
一方、PWIは、循環血漿量変化率(ΔCPV%)を患者の体重変化率(ΔBW%)で除する演算式(PWI=ΔCPV%/ΔBW%)にて算出されるもので、透析治療によって患者がドライウェイトに到達したときには、適正範囲内にあることが検証の結果明らかとされている。然るに、PWIが大きいと除水による体重減少に対する血液濃縮率が大きいことを示し、除水により血液中から水分を奪っている割に血管外への間質液の補充がなされていないことが認識できる一方、PWIが小さいと、血液から水分を奪っても間質液の補充に余裕があることが認識できる。尚、PWIの適正値は、透析時間経過とともに変化する可能性があり、或いは透析終了時のPWIの適正値も透析条件によって変化し得るものである。
【0053】
表示手段12は、例えば透析装置本体6が具備するディスプレイ(不図示)などから成り、算出手段11にて算出されたパラメータ(PWI)を表示するとともに、その経時的変化をグラフ(例えば折れ線グラフ等)として表示するものである。これにより、除水が適正に行われているか否かをリアルタイムに医師等の医療従事者に認識させることができ、透析治療中における除水の適正化を良好に行わせることができる。」
5 参考資料5(特開平6-14995号公報)について
同じく参考資料5(特開平6-14995号公報)には、以下の事項が記載されている。
ア 3欄40~49行
「データのタッチパネル・ディスプレイ上での表示は現在の透析状態のみを表示しても良いが、過去の記憶されたデータと現在の測定データをその経時的変化が分かりやすい形、たとえば折れ線グラフ等の形で表示させることによりデータの経時的変化を簡単に察知することが出来、従来の装置が最初の透析条件の設定限界を越える異常が起きて警報が鳴るまでその異常を察知できないのに対し、事前に透析条件が設定限界を越えないように指示をすることが可能である。」
イ 4欄22~30行
「【0006】図2は、タッチパネル・ディスプレイ1の具体例を示す正面図である。この例では、データの表示を行う表示部6と操作部5よりなる。表示部6は、静脈圧、透析液圧力、除水量の経時的変化をグラフ形式で表示するグラフ表示部7と現時点の透析液の濃度9、透析液の温度10、透析液流量11、静脈圧12、血液流量13、ヘパリン注入速度14、目標除水量15、除水量16、除水速度17のデータの数値を表示する表示部8よりなる。」
第6 対比・判断
1 本件発明1について
(1)対比
ア 本件発明1と引用発明Aとを対比すると、引用発明Aの各構成は、それぞれ、次の本件発明1の構成に相当する。
<引用発明A> <本件発明1>
CPU 制御部
透析用監視装置 透析システム
透析治療 血液浄化治療
間歇補液プログラムの各ステップ 血液浄化治療中の所定期間
補液量 補液量
回収量 除水量
タッチパネル インターフェイス
間歇補液プログラム設定画面 入力インターフェイス、
出力インターフェイス
間歇補液プログラムモニタ画面 出力インターフェイス
透析用監視装置の操作パネル 透析システムの管理装置
イ 引用発明Aの「透析治療プログラムとして間歇補液プログラムが設定された場合」の「CPU」の「制御」は、本件発明1の「透析システムの血液浄化治療中の所定期間ごとに実行される制御」に相当する。
したがって、引用発明Aの「タッチパネル」の「前記間歇補液プログラム設定画面において、間歇補液プログラムの各ステップの補液量及び回収量を設定」することは、本件発明1の「入力インターフェイス」が「透析システムの血液浄化治療中の所定期間ごとに実行される制御における前記所定期間ごとの補液量および除水量の設定を受け付ける」ことに相当する。
ウ 引用発明Aの「前記間歇補液プログラム設定画面において、前記ステップ毎に、前記補液量を水色の棒グラフで表示し、前記回収量を緑色のバーで表示する」ことは、本件発明1の「前記出力インターフェイスを介して表示」することに相当する。
したがって、引用発明Aの「透析治療プログラムとして間歇補液プログラムが設定された場合」の「CPU」の「制御」において、前記「補液量を水色の棒グラフで表示し、前記回収量を緑色のバーで表示」することは、本件発明1の「前記制御部は、前記入力インターフェイスを介して受け付けた前記設定を、前記出力インターフェイスを介して表示」することに相当する。
エ 引用発明Aの「間歇補液プログラムモニタ画面及び間歇補液プログラム設定画面を切り替え可能に表示する」「タッチパネル」と「各種の動作を制御するCPU」とを備える「透析用監視装置の操作パネル」は、本件発明1の「制御部と、」「入力インターフェイスと、出力インターフェイスとを備え」る「透析システムの管理装置」に相当する。
そうすると、本件発明1と引用発明Aは、次の点で一致し、相違する。
【一致点A】
「制御部と、
透析システムの血液浄化治療中の所定期間ごとに実行される制御における前記所定期間ごとの補液量および除水量の設定を受け付ける入力インターフェイスと、
出力インターフェイスとを備え、
前記制御部は、
前記入力インターフェイスを介して受け付けた前記設定を、前記出力インターフェイスを介して表示する、透析システムの管理装置。」
【相違点1】
本件発明1は、「前記入力インターフェイスは、少なくとも1つの前記所定期間について、前記補液量の設定として前記除水量の設定より大きい値を受け付けることができ」るのに対して、
引用発明Aは、「間歇補液プログラム設定画面」における「最終ステップ以外の前記設定は、前記回収量が前記補液量の50%以上になるように設定するものである」点。
【相違点2】
本件発明1は、「前記設定の表示は、血液浄化治療を受ける患者の体重の変化が表れるように前記補液量および前記除水量の設定を表す表示を含み、前記血液浄化治療を受ける患者の体重の変化が表れるように前記補液量および前記除水量の設定を表す表示は、前記補液量に相当する重量だけ前記患者の体重が増加したことを示す第1表示と、前記補液量に相当する重量だけ増加した前記患者の体重から前記除水量に相当する重量だけ前記患者の体重が減少したことを示す第2表示と、を含み、前記制御部は、前記第1表示と前記第2表示とを前記所定期間ごとに繰り返し行うことにより折れ線グラフを表示する」のに対して、
引用発明Aは、そのように特定されていない点。
(2)判断
事案に鑑み、まず上記相違点2について検討する。
引用文献1には、補液量及び回収量に相当する重量だけ患者の体重が増加及び減少したことを示す折れ線グラフを表示することについて記載されていないから、上記相違点2は実質的な相違点である。
そして、引用文献6には、供給された徐水量の数値データとあらかじめ入力された血液透析処理前の患者の体重値とから血液透析中の患者の体重値を算出すること、除水量に補液量を補正して算出することとが記載されているにすぎず、上記相違点2に係る事項は記載されていない。
また、引用文献7には、血液浄化治療中に血液回路から患者が離脱して血液浄化治療が中断した後、血液回路による患者の血液の体外循環を行わせて血液浄化治療を再開させる場合、血液浄化治療の中断時の患者の体重と血液浄化治療の再開時の患者の体重とをそれぞれ手作業で入力し、それぞれの体重と算出された体重変化量とを表示することが記載されているにすぎず、上記相違点2に係る事項は記載されていない。
また、参考資料4及び5には、それぞれ、循環血漿量変化率を患者の体重変化率で除する演算式にて算出されPWIの経時的変化を折れ線グラフとして表示すること、静脈圧、透析液圧力、除水量の経時的変化を折れ線グラフの形で表示することが記載されているものの、補液量及び徐水量に相当する患者の体重の増減の経時的変化を折れ線グラフとして表示することは記載されていない。
そうすると、上記相違点2に係る事項は、引用文献6及び7、参考資料4及び5のいずれにも記載されておらず、周知技術でもない。
さらに、引用文献1には、補液量及び徐水量に相当する患者の体重の増減の経時的変化を表示することに関して記載も示唆もないから、引用発明Aにおいて、当該経時的変化を折れ線グラフとして表示する動機もない。
したがって、引用発明Aにおいて、本件発明1の相違点2に係る発明特定事項とすることは容易であるといえず、一方、本件発明1は、当該発明特定事項を有することにより、「ユーザーは、透析において予測される患者の体重の変化を直感的に理解し得る」(本件明細書段落【0066】)という効果を奏するものである。
(3)異議申立人の主張
異議申立人は、令和7年11月5日提出の意見書において、参考資料4及び5を示しつつ、(ア)体重変化率から導かれるパラメータ(PWI)の代わりに、透析治療中に適性範囲内にあることを示すために、体重変化などの折れ線グラフで表示することは、容易である、(イ)除水量などの透析に関する様々な量を経時的変化を折れ線グラフで表示することが参考資料に記載されており、当業者であれば、体重変化なども折れ線グラフで表示しようとすることは、容易に想到する、と主張している。
しかしながら、本件発明1の「前記第1表示と前記第2表示とを前記所定期間ごとに繰り返し行うことにより折れ線グラフを表示する」第1表示と第2表示は、血液浄化治療を受ける患者の体重の変化を補液量及び除水量の設定により表示するところ、異議申立人の主張は何れも体重の変化を表す表示に関するものでないし、引用文献1には、補液量及び徐水量に相当する患者の体重の増減の経時的変化を表示することに関して記載も示唆もないから、引用発明Aにおいて、患者の体重の経時的変化を折れ線グラフとして表示する動機もない。
したがって、異議申立人の主張には理由がない。
(3)小括
よって、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 本件発明7について
(1)対比
本件発明7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに「前記制御部は、ある所定期間について、除水量の設定として補液量の1/2以下の値を受け付けた場合にはエラーを表示する」という発明特定事項を付加したものである。
よって、上記「1 本件発明1について」に記載した理由と同様の理由により、本件発明7は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 本件発明8について
(1)対比
ア 本件発明8と引用発明Bとを対比すると、引用発明Bの各構成は、それぞれ、次の本件発明8の構成に相当する。
<引用発明B> <本件発明8>
CPU コンピューター
透析用監視装置 透析システム
透析治療プログラム プログラム
透析治療 血液浄化治療
間歇補液プログラムの各ステップ 血液浄化治療中の所定期間
補液量 補液量
回収量 除水量
イ 引用発明Bの「様々な透析治療を行う透析用監視装置の動作を実行する透析治療プログラムであって」「前記透析用監視装置の動作を制御するCPUに」「実行させ」る「透析治療プログラム」は、本件発明8の「コンピューターによって実行される、透析システムを管理するためのプログラム」に相当する。
ウ 引用発明Bの「透析治療プログラムとして間歇補液プログラムが設定された場合」の「CPU」の「制御」は、本件発明8の「透析システムの血液浄化治療中の所定期間ごとに実行される制御」に相当する。
したがって、引用発明Bの「間歇補液プログラム設定画面において、間歇補液プログラムの各ステップの補液量及び回収量を設定するステップ」は、本件発明8の「透析システムの血液浄化治療中の所定期間ごとに実行される制御における前記所定期間ごとの補液量および除水量の設定を受け付けるステップ」に相当する。
エ 引用発明Bの「水色の棒グラフで表示」した「補液量」及び「緑色のバーで表示」した「回収量」は、上記イを踏まえると、本件発明8の「所定時間ごとの補液量および除水量の設定を受け付けるステップ」の「前記設定」に相当する。
したがって、引用発明Bの「間歇補液プログラム設定画面において、前記ステップ毎に、前記補液量を水色の棒グラフで表示し、前記回収量を緑色のバーで表示するステップ」は、本件発明8の「前記設定を、表示するステップ」に相当する。
オ 引用発明Bの「前記動作プログラムは、前記透析用監視装置の動作を制御するCPUに」「ステップ」「を実行させ」ることは、本件発明8の「前記コンピューターによって実行されることにより、前記コンピューターに」「ステップ」「を実行させ」ることに相当する。
そうすると、本件発明8と引用発明Bは、次の点で一致し、相違する。
【一致点B】
「コンピューターによって実行される、透析システムを管理するためのプログラムであって、前記コンピューターによって実行されることにより、前記コンピューターに、
透析システムの血液浄化治療中の所定期間ごとに実行される制御における前記所定期間ごとの補液量および除水量の設定を受け付けるステップと、
前記設定を、表示するステップと、
とを実行させる、プログラム。」
【相違点3】
本件発明8は、「前記設定を受け付けるステップは、少なくとも1つの前記所定期間について、補液量の値として除水量の値よりも大きい値を受け付けることができ」るのに対して、
引用発明Bは、「最終ステップ以外の前記設定は、前記回収量が前記補液量の50%以上になるように設定するものである」点。
【相違点4】
本件発明8は、「前記表示するステップは、血液浄化治療を受ける患者の体重の変化が表れるように前記補液量および前記除水量の設定を表す表示を行うことを含み、前記血液浄化治療を受ける患者の体重の変化が表れるように前記補液量および前記除水量の設定を表す表示は、前記補液量に相当する重量だけ前記患者の体重が増加したことを示す第1表示と、前記補液量に相当する重量だけ増加した前記患者の体重から前記除水量に相当する重量だけ前記患者の体重が減少したことを示す第2表示と、を含み、前記表示するステップは、前記第1表示と前記第2表示とを前記所定期間ごとに繰り返し行うことにより折れ線グラフを表示することを含む」のに対して、
引用発明Bは、そのように特定されていない点。
(2)判断
上記相違点4は、実質的には、上記相違点2と同じであるから、前記1(2)で検討したのと同様の理由により、本件発明8は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、本件特許発明1、7及び8は、甲第1号証(上記引用文献1)の記載内容に対して新規性(特許法29条第1項第1号及び第3号)を有しないと主張している。
しかしながら、上記第6のとおり、本件特許発明1、7及び8と、引用文献1に記載された発明との間には実質的な相違点があるから、かかる主張は採用することができない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、7及び8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、7及び8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件特許の請求項2~6に係る特許については、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項2~6に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-700127