特許異議申立
2023-700884
剥離性フィルム
- 審判番号
- 2023-700884
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-105562
- 登録番号
- 7259214
- 請求日
- 2023年08月29日
- 審決日
- 2024年11月14日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】王子ホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】田中 順也
- 【権利者代理人】水谷 馨也
- 【異議申立人】キム, ボン ソプ
- 【異議申立人代理人】池田 成人
- 【異議申立人代理人】吉住 和之
- 【異議申立人代理人】酒巻 順一郎
- 【異議申立人】浅野 幸義
- 【異議申立人】永田 怜
- 審判長/審判官
- 審判長 金丸 治之
- 審判官 藤井 眞吾
- 審判官 小出 直也
- 分類
- P1651.161-ZDA(B32B) / P1651.113-ZDA(B32B) / P1651.121-ZDA(B32B) / P1651.536-ZDA(B32B) / P1651.537-ZDA(B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条の2、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7259214号発明「剥離性フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7259214号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕、〔4~6〕、7について訂正することを認める。
特許第7259214号の請求項4に係る特許を取り消す。
特許第7259214号の請求項1~3、5~7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7259214号の請求項1~7に係る特許についての出願は、平成30年5月31日の出願であって、令和5年4月10日にその特許権の設定登録がされ、令和5年4月18日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和5年 8月29日 :特許異議申立人キム, ボン ソプ(以下「申立人1」という。)による請求項1~7に係る特許に対する特許異議の申立て(以下「申立1」という。)
令和5年 9月25日 :特許異議申立人浅野幸義(以下「申立人2」という。)による請求項1~5、7に係る特許に対する特許異議の申立て(以下「申立2」という。)
令和5年10月12日差出:特許異議申立人永田怜(以下「申立人3」という。)による請求項1~7に係る特許に対する特許異議の申立て(以下「申立3」という。)
令和6年 1月19日付け:取消理由通知書
令和6年 3月25日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和6年 4月16日付け:手続補正指令書
令和6年 4月19日付け:手続補正指令書
令和6年 5月22日 :特許権者による、意見書を対象とする手続補正書、及び訂正請求書を対象とする手続補正書の提出(以下、この手続補正書により補正された訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)
令和6年 6月22日 :申立人3による意見書の提出
令和6年 7月 2日差出:申立人2による意見書の提出
令和6年 7月29日 :申立人1による意見書の提出
令和6年 8月 9日付け:取消理由通知書(決定の予告)
なお、令和6年8月9日付け取消理由通知(決定の予告)に対して、指定期間内に特許権者から応答はなかった。
第2 本件訂正の適否
1 訂正の内容
本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。
(1)訂正事項1
本件訂正前の請求項1に記載された
「前記表面層中の前記樹脂(B)の含有量は、前記表面層を構成する前記変性アクリル系樹脂(A)と前記樹脂(B)の合計を100質量部として、50質量部未満である、剥離性フィルム」を、
「前記表面層中の前記樹脂(B)の含有量は、前記表面層を構成する前記変性アクリル系樹脂(A)と前記樹脂(B)の合計を100質量部として、50質量部未満であり、
前記樹脂(B)は、ポリエステル樹脂及びアクリル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種である、剥離性フィルム」に訂正する(請求項1の記載をに引用する請求項2、3も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
本件訂正前の請求項4に記載された、「前記表面層中の前記樹脂(B)の含有量は、前記表面層を構成する前記変性アクリル系樹脂(A)と前記樹脂(B)の合計を100質量部として、2質量部以上である、請求項1~3のいずれかに記載の剥離性フィルム。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改めたうえで、さらに、「前記表面層中の前記樹脂(B)の含有量は、前記表面層を構成する前記変性アクリル系樹脂(A)と前記樹脂(B)の合計を100質量部として、2質量部以上である」を「前記表面層中の前記樹脂(B)の含有量は、前記表面層を構成する前記変性アクリル系樹脂(A)と前記樹脂(B)の合計を100質量部として、10質量部以上である」に訂正する(請求項4の記載をに引用する請求項6も同様に訂正する)。
(3)訂正事項3
本件訂正前の請求項5に記載された、「前記アルコキシアルキル基は、炭素数が2~5であり、前記アルカノール基は、炭素数が1~3である、請求項1~4のいずれか1項に記載の剥離性フィルム。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改めたうえで、さらに、「前記アルコキシアルキル基は、炭素数が2~5であり、前記アルカノール基は、炭素数が1~3である」の前に「前記表面層中の前記樹脂(B)の含有量は、前記表面層を構成する前記変性アクリル系樹脂(A)と前記樹脂(B)の合計を100質量部として、20質量部以上であり、」を追加する(請求項5の記載をに引用する請求項6も同様に訂正する)。
(4)訂正事項4
本件訂正前の請求項6に記載された、「前記変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)は、ポリエステル樹脂及びアクリル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種である、請求項1~5のいずれか1項に記載の剥離性フィルム。」を、「前記変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)は、ポリエステル樹脂及びアクリル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種である、請求項4又は5に記載の剥離性フィルム。」に訂正する。
(5)訂正事項5
本件訂正前の請求項7に記載された、「前記表面層中の前記樹脂(B)の含有量は、前記表面層を構成する前記変性アクリル系樹脂(A)と前記樹脂(B)の合計を100質量部として、50質量部未満である、剥離フィルムの製造方法。」を、「前記表面層中の前記樹脂(B)の含有量は、前記表面層を構成する前記変性アクリル系樹脂(A)と前記樹脂(B)の合計を100質量部として、50質量部未満であり、
前記樹脂(B)は、ポリエステル樹脂及びアクリル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種である、剥離フィルムの製造方法。」に訂正する。
2 一群の請求項、及び別の訂正単位とする求めについて
(1)一群の請求項
本件訂正前の請求項1~6は、請求項2~6が、本件訂正請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~6〕、7について請求されている。
(2)別の訂正単位とする求め
本件訂正後の請求項4~6に係る訂正について、特許権者は、当該訂正が認められるときに請求項1とは別の訂正単位として扱われることを求めている。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1の「樹脂(B)」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項1は、本件特許の明細書の【0070】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項4が、請求項1の記載を引用する記載であったものを当該請求項1の記載を引用しないものとするものとし、本件訂正前の請求項4の「前記表面層中の前記樹脂の含有量」を限定するものであるから、訂正事項2は、請求項間の引用関係の解消、及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項2のうち「前記表面層中の前記樹脂の含有量」の限定は、本件特許の明細書の【0077】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項2は、本件訂正前の請求項4に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、本件訂正前の請求項5が、請求項1の記載を引用する記載であったものを当該請求項1の記載を引用しないものとするものとし、本件訂正前の請求項5の「前記表面層中の前記樹脂の含有量」を限定するものであるから、訂正事項3は、請求項間の引用関係の解消、及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項3のうち「前記表面層中の前記樹脂の含有量」の限定は、本件特許の明細書の【0077】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項3は、本件訂正前の請求項5に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、本件訂正前の請求項6について、引用する請求項の数を減少させるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項4は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)訂正事項5について
訂正事項5は、本件訂正前の請求項7の「樹脂(B)」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項5は、本件特許の明細書の【0070】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項5は、本件訂正前の請求項7に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
4 本件訂正の適否のまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕、〔4~6〕、7について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正請求が認められたことから、本件特許の請求項1~7に係る発明(以下「本件発明1」等という。また、本件発明1~7を「本件発明」と総称することもある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1~7の記載は、次のとおりである。
【請求項1】
基材層上に表面層を有する剥離性フィルムであって、
前記表面層を形成する主成分が樹脂成分であり、
前記樹脂成分は、アルキル成分及び架橋性官能基を有する変性アクリル系樹脂(A)と、前記変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)と、架橋剤(D)とを含み、
前記変性アクリル系樹脂(A)は、少なくとも、下記一般式(I):
【化1】
[図:0001424547000001.jpg]
(前記一般式(I)において、R1は、メチル基又は水素原子を示し、R2は、炭素数10~18のアルキル基を示す。)
で表される構成単位を含んでおり、
前記架橋剤(D)は、アミノ基の水素原子が全てアルコキシアルキル基及びアルカノール基の少なくとも一方で置換された構造を有しているメラミン化合物であり、
前記メラミン化合物は、下記一般式(IV):
【化2】
[図:0001424547000002.jpg]
[一般式(IV)において、置換基Rの全てがアルコキシアルキル基であり、nは、1以上の数である。]
で表され、
前記表面層中の前記樹脂(B)の含有量は、前記表面層を構成する前記変性アクリル系樹脂(A)と前記樹脂(B)の合計を100質量部として、50質量部未満であり、
前記樹脂(B)は、ポリエステル樹脂及びアクリル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種である、剥離性フィルム。
【請求項2】
前記変性アクリル系樹脂(A)は、下記一般式(II):
【化3】
[図:0001424547000003.jpg]
[前記一般式(II)において、Raは、メチル基又は水素原子を示し、Rbは、-CH2CH2OH、-CH2-CHOH-CH3、-CH2CH2CH2OH、-CH2-CHOHCH2CH3、-CH2CH2-CHOH-CH3、又は-CH2CH2CH2CH2OHを示す。]
で表される構成単位を含んでいる、請求項1に記載の剥離性フィルム。
【請求項3】
変性アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量が、5×104~15×104である、請求項1又は2に記載の剥離性フィルム。
【請求項4】
基材層上に表面層を有する剥離性フィルムであって、
前記表面層を形成する主成分が樹脂成分であり、
前記樹脂成分は、アルキル成分及び架橋性官能基を有する変性アクリル系樹脂(A)と、前記変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)と、架橋剤(D)とを含み、
前記変性アクリル系樹脂(A)は、少なくとも、下記一般式(I):
【化1】
[図:0001424547000004.jpg]
(前記一般式(I)において、R1は、メチル基又は水素原子を示し、R2は、炭素数10~18のアルキル基を示す。)
で表される構成単位を含んでおり、
前記架橋剤(D)は、アミノ基の水素原子が全てアルコキシアルキル基及びアルカノール基の少なくとも一方で置換された構造を有しているメラミン化合物であり、
前記メラミン化合物は、下記一般式(IV):
【化2】
[図:0001424547000005.jpg]
[一般式(IV)において、置換基Rの全てがアルコキシアルキル基であり、nは、1以上の数である。]
で表され、
前記表面層中の前記樹脂(B)の含有量は、前記表面層を構成する前記変性アクリル系樹脂(A)と前記樹脂(B)の合計を100質量部として、50質量部未満であり、
前記表面層中の前記樹脂(B)の含有量は、前記表面層を構成する前記変性アクリル系樹脂(A)と前記樹脂(B)の合計を100質量部として、10質量部以上である、剥離性フィルム。
【請求項5】
基材層上に表面層を有する剥離性フィルムであって、
前記表面層を形成する主成分が樹脂成分であり、
前記樹脂成分は、アルキル成分及び架橋性官能基を有する変性アクリル系樹脂(A)と、前記変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)と、架橋剤(D)とを含み、
前記変性アクリル系樹脂(A)は、少なくとも、下記一般式(I):
【化1】
[図:0001424547000006.jpg]
(前記一般式(I)において、R1は、メチル基又は水素原子を示し、R2は、炭素数10~18のアルキル基を示す。)
で表される構成単位を含んでおり、
前記架橋剤(D)は、アミノ基の水素原子が全てアルコキシアルキル基及びアルカノール基の少なくとも一方で置換された構造を有しているメラミン化合物であり、
前記メラミン化合物は、下記一般式(IV):
【化2】
[図:0001424547000007.jpg]
[一般式(IV)において、置換基Rの全てがアルコキシアルキル基であり、nは、1以上の数である。]
で表され、
前記表面層中の前記樹脂(B)の含有量は、前記表面層を構成する前記変性アクリル系樹脂(A)と前記樹脂(B)の合計を100質量部として、50質量部未満であり、
前記表面層中の前記樹脂(B)の含有量は、前記表面層を構成する前記変性アクリル系樹脂(A)と前記樹脂(B)の合計を100質量部として、20質量部以上であり、
前記アルコキシアルキル基は、炭素数が2~5であり、前記アルカノール基は、炭素数が1~3である、剥離性フィルム。
【請求項6】
前記変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)は、ポリエステル樹脂及びアクリル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種である、請求項4又は5に記載の剥離性フィルム。
【請求項7】
基材層上に表面層を有する剥離性フィルムの製造方法であって、
前記基材層上に、前記表面層を形成する工程を備えており、
前記表面層を形成する主成分が樹脂成分であり、
前記樹脂成分は、アルキル成分及び架橋性官能基を有する変性アクリル系樹脂(A)と、前記変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)と、架橋剤(D)とを含み、
前記変性アクリル系樹脂(A)は、少なくとも、下記一般式(I):
【化4】
[図:0001424547000008.jpg]
(前記一般式(I)において、R1は、メチル基又は水素原子を示し、R2は、炭素数10~18のアルキル基を示す。)
で表される構成単位を含んでおり、
前記架橋剤(D)は、アミノ基の水素原子が全てアルコキシアルキル基及びアルカノール基の少なくとも一方で置換された構造を有しているメラミン化合物であり、
前記メラミン化合物は、下記一般式(IV):
【化5】
[図:0001424547000009.jpg]
[一般式(IV)において、置換基Rの全てがアルコキシアルキル基であり、nは、1以上の数である。]
で表され、
前記表面層中の前記樹脂(B)の含有量は、前記表面層を構成する前記変性アクリル系樹脂(A)と前記樹脂(B)の合計を100質量部として、50質量部未満であり、
前記樹脂(B)は、ポリエステル樹脂及びアクリル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種である、剥離フィルムの製造方法。
なお、以下、本件特許の請求項中の化学式の記載を省略することもある。
第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
請求項4に係る特許に対して、当審が令和6年8月9日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(拡大先願)請求項4に係る発明は、本件特許出願の日前の特許出願であって、本件特許出願後に出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者が本件特許出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないから、請求項4に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。
<引用文献等一覧>
先の特許出願:特願2017-4858号(特開2018-115224号:申立人3が提出した甲第3号証(以下「申立3甲3」という。))
2 当審の判断
当審合議体は、上記取消理由で通知した取消理由(拡大先願)によって、訂正後の請求項4に係る特許は取り消されるべきものと判断する。
(1)申立3甲3に記載された事項及び発明
ア 申立3甲3に記載された事項
申立3甲3には次の事項が記載されている。
「【請求項1】
(A)一般式(1)
【化1】
[図:0001424547000010.jpg]
(式中、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は炭素数12~28のアルキル基である。)
で表わされる構成単位1および一般式(2)
【化2】
[図:0001424547000011.jpg]
(式中、R1は水素原子またはメチル基であり、R3はNHR3’またはOR3’であり、R3’は水酸基含有アルキル基または水酸基含有シクロアルキル基である。)で表わされる構成単位2を含む、ポリマー
(B)メチル化メラミン樹脂および
(C)酸触媒
を含む、熱硬化剥離コーティング剤。
・・・
【請求項4】
前記(B)メチル化メラミン樹脂は、フルエーテル型メチル化メラミン由来の構成単位を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱硬化剥離コーティング剤。
・・・
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の熱硬化剥離コーティング剤の硬化膜およびプラスチックフィルムを含む、熱硬化剥離フィルム。
・・・
【請求項9】
請求項1~6のいずれか1項に記載の剥離コーティング剤をプラスチックフィルムの少なくとも片面に塗工し、加熱処理する工程を含む、熱硬化剥離フィルムの製造方法。」
「【0036】
本発明の熱硬化剥離コーティング剤における、(A)ポリマーの含有率の上限は、熱硬化剥離コーティング剤の95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、46重量%であり、下限は、94、90、85、80、75、70、65、60、55、50、46、45重量%である。
本発明の熱硬化剥離コーティング剤における、(B)メチル化メラミン樹脂の含有率の上限は、熱硬化剥離コーティング剤の50、45、40、35、30、25、20、15、10、5重量%であり、下限は、45、40、35、30、25、20、15、10、5、4.5重量%である。
本発明の熱硬化剥離コーティング剤における、(C)酸触媒の含有率の上限は、熱硬化剥離コーティング剤の5、4.5、4、3.5、3、2.5、2、1.5、1、0.6重量%であり、下限は、4.5、4、3.5、3、2.5、2、1.5、1、0.6、0.5重量%である。
上記(A)ポリマー、(B)メチル化メラミン樹脂、(C)酸触媒の含有率の範囲は上記上限および下限の値を適宜選択して設定することができ、軽剥離化と耐溶剤性が両立できる観点から上記(A)ポリマーを45~95重量%、上記(B)メチル化メラミン樹脂を4.5~50重量%、および上記(C)酸触媒を0.5~5重量%含むことが好ましい。」
「【0040】
本発明の熱硬化剥離コーティング剤は、上記成分以外に(D)添加剤(以下、「(D)成分」ともいう)として各種公知のもの、例えば、バインダー、消泡剤、防滑剤、防腐剤、防錆剤、pH調整剤、酸化防止剤、顔料、染料、滑剤、レベリング剤、導電剤、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ポリペンタジエン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリスチレン、イソプレン・ブタジエン共重合体、スチレン・イソプレン共重合体、ポリオレフィンおよびこれらの誘導体等、シリコーン樹脂、イソシアネート基含有化合物、エポキシ基含有化合物、アミン、カルボン酸無水物、長鎖アルキル基含有アルコールを配合することもできる。上記バインダーは、特に限定されず周知のアクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂等を用いることができる。(D)添加剤を含む場合、1つの実施形態において、その使用量は、熱硬化剥離コーティング剤の重量の合計に対し、その上限は、10、9、8、7、6、5、4、3、2、2、0.5重量%であり、その下限は、9、8、7、6、5、4、3、2、2、0.5、0.1重量%である。(D)添加剤の使用範囲は上記上限および下限の値を適宜選択して設定することができ、熱硬化剥離コーティング剤の重量の合計に対し、通常0.1~10重量%である。また別の実施形態において上記(A)成分の重量に対し、(D)添加剤の使用量の上限は、9、5、2重量%であり、下限は、5、2、1重量%、(A)成分の重量に対する(D)添加剤の使用量の範囲は上記上限および下限の値を適宜組み合わせて設定することができるが、例えば、1~9重量%がその例として挙げられる。
また添加剤としてステアリルアルコールなどの長鎖アルキル基含有アルコールを添加すると、剥離性能が向上する。長鎖アルキル基含有アルコールの使用量は耐溶剤性の観点からその使用量は、上記(A)~(C)成分の重量の合計に対し、10~50重量%である。」
イ 申立3甲3に記載された発明
申立3甲3には、特に、請求項1を引用する請求項4を引用する請求項7の記載に着目すると、次の「甲3発明」が記載されている。
「(A)一般式(1)
【化1】
[図:0001424547000012.jpg]
(式中、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は炭素数12~28のアルキル基である。)で表わされる構成単位1および一般式(2)
【化2】
[図:0001424547000013.jpg]
(式中、R1は水素原子またはメチル基であり、R3はNHR3’またはOR3’であり、R3’は水酸基含有アルキル基または水酸基含有シクロアルキル基である。)で表わされる構成単位2を含む、ポリマー
(B)メチル化メラミン樹脂および
(C)酸触媒を含み、
前記(B)メチル化メラミン樹脂は、フルエーテル型メチル化メラミン由来の構成単位を含む、熱硬化剥離コーティング剤の硬化膜
およびプラスチックフィルムを含む、熱硬化剥離フィルム。」
(2)本件発明4について
ア 対比
以下、モノマーの表記を、本件発明の【化1】等、甲3発明の【化1】等の記載で代表する。
本件発明4と甲3発明とを対比する。
甲3発明の「(A)・・・ポリマー」に含まれる「構成単位1」においてR2は炭素数12~28のアルキル基であることから「アルキル成分」を有するといえ、「構成単位2」は、水酸基含有アルキル基または水酸基含有シクロアルキル基を有するから「架橋性官能基」を有するといえる。このことから、甲3発明の「(A)一般式(1)【化1】(式中、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は炭素数12~28のアルキル基である。)で表わされる構成単位1および一般式(2)【化2】(式中、R1は水素原子またはメチル基であり、R3はNHR3’またはOR3’であり、R3’は水酸基含有アルキル基または水酸基含有シクロアルキル基である。)で表わされる構成単位2を含む、ポリマー」と、本件発明4の「少なくとも、下記一般式(I):【化1】(前記一般式(I)において、R1は、メチル基又は水素原子を示し、R2は、炭素数10~18のアルキル基を示す。)で表される構成単位を含んで」いる「アルキル成分及び架橋性官能基を有する変性アクリル系樹脂(A)」とは、少なくとも、「下記一般式(I):【化1】(前記一般式(I)において、R1は、メチル基又は水素原子を示す。)で表される構成単位を含んでいるアルキル成分及び架橋性官能基を有する変性アクリル系樹脂(A)」の限りで一致する。
甲3発明の「フルエーテル型メチル化メラミン由来の構成単位を含む」「(B)メチル化メラミン樹脂」は、本件発明4の「アミノ基の水素原子が全てアルコキシアルキル基及びアルカノール基の少なくとも一方で置換された構造を有しているメラミン化合物であり、前記メラミン化合物は、下記一般式(IV):【化2】[一般式(IV)において、置換基Rの全てがアルコキシアルキル基であり、nは、1以上の数である。]で表され」る「架橋剤(D)」に相当する。
甲3発明の「硬化膜」は本件発明4の「表面層」に相当し、以下同様に、「プラスチックフィルム」は「基材層」に、「熱硬化剥離フィルム」は「剥離性フィルム」に相当する。
そうすると、本件発明4と甲3発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「基材層上に表面層を有する剥離性フィルムであって、
前記表面層を形成する主成分が樹脂成分であり、
前記樹脂成分は、アルキル成分及び架橋性官能基を有する変性アクリル系樹脂(A)と、
架橋剤(D)とを含み、
前記変性アクリル系樹脂(A)は、少なくとも、下記一般式(I):
【化1】
(前記一般式(I)において、R1は、メチル基又は水素原子を示す。)
で表される構成単位を含んでおり、
前記架橋剤(D)は、アミノ基の水素原子が全てアルコキシアルキル基及びアルカノール基の少なくとも一方で置換された構造を有しているメラミン化合物であり、
前記メラミン化合物は、下記一般式(IV):
【化2】
[一般式(IV)において、置換基Rの全てがアルコキシアルキル基であり、nは、1以上の数である。]
で表される、剥離性フィルム。」
[相違点1]
少なくとも、下記一般式(I):【化1】(前記一般式(I)において、R1は、メチル基又は水素原子を示す。)で表される構成単位を含んでいるアルキル成分及び架橋性官能基を有する変性アクリル系樹脂(A)に関して、本件発明4が、「一般式(I)」において「R2は、炭素数10~18のアルキル基」であるのに対して、甲3発明は、「一般式(1)」の式中「R2は炭素数12~28のアルキル基」である点。
[相違点2]
本件発明4の「前記樹脂成分」は「前記変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)」を「含み」、「前記表面層中の前記樹脂(B)の含有量は、前記表面層を構成する前記変性アクリル系樹脂(A)と前記樹脂(B)の合計を100質量部として、50質量部未満であり、前記表面層中の前記樹脂(B)の含有量は、前記表面層を構成する前記変性アクリル系樹脂(A)と前記樹脂(B)の合計を100質量部として、10質量部以上である」のに対して、甲3発明はそのような特定がなされていない点。
イ 判断
(ア)相違点1について
甲3発明の「構成単位1」について、申立3甲3の【0017】、【0018】に記載されたものの中には、「R2」が10~18のアルキル基が含まれており、「入手の容易性および軽剥離化の点から好ましい」ものとして「ステアリル(メタ)アクリレート」(R2の炭素数が18)が挙げられており、また、実施例1~9でも、「ステアリルメタクリレート」(R2の炭素数が18)が用いられている。
そうすると、甲3発明として、「構成単位1」においてR2の炭素数が10~18のアルキル基のものを発明特定事項としたものを把握することができ、相違点1は実質的な相違点ではない。
(イ)相違点2について
申立3甲3の【0036】には、「(A)ポリマー」の「熱硬化剥離コーティング剤」における含有率について、上限として「95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、46重量%」、下限として「94、90、85、80、75、70、65、60、55、50、46、45重量%」、その好ましい範囲が「45~95重量%」とされている。
また、申立3甲3の【0040】には、「(D)添加剤」としてバインダーを配合できることが記載され、その樹脂は「特に限定されずに周知のアクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂等を用いることができる。」とされ、また、「熱硬化剥離コーティング剤の重量の合計」に対する「(D)添加剤」の使用量として、「その上限は、10、9、8、7、6、5、4、3、2、2、0.5重量%であり、その下限は、9、8、7、6、5、4、3、2、2、0.5、0.1重量%である」とし、「通常0.1~10重量%である」とされている。
ここで、申立3甲3の「(D)添加剤」としてのバインダーは、甲3発明の「ポリマー」とは異なるものであるから、本件発明4の「前記変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)」に相当するものである。
また、申立3甲3の上記記載によると、「ポリマー」に対する割合は0.1(=0.1/(0.1+95)×100)~18.2(=10/(10+45)×100)質量部と計算でき、これは、「前記表面層中の前記樹脂(B)の含有量は、前記表面層を構成する前記変性アクリル系樹脂(A)と前記樹脂(B)の合計を100質量部として、50質量部未満であり、前記表面層中の前記樹脂(B)の含有量は、前記表面層を構成する前記変性アクリル系樹脂(A)と前記樹脂(B)の合計を100質量部として、10質量部以上である」という本件発明4の範囲と重複するものである。
したがって、相違点2に係る本件発明4の構成は、申立3甲3の記載を踏まえ、課題解決のための具体化手段における微差といえる。
(ウ)小括
よって、本件発明4は甲3発明と実質同一である。
第5 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立理由の概要
取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由の概要は次のとおりである。
(1)申立理由1(進歩性)(申立1)
請求項1~7に係る発明は、申立人1が提出した甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許を受けることができないものであるため、請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)申立理由2(進歩性)(申立1)
請求項1~7に係る発明は、申立人1が提出した甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許を受けることができないものであるため、請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)申立理由3(進歩性)(申立2)
請求項1~5、7に係る発明は、申立人2が提出した甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許を受けることができないものであるため、請求項1~5、7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(4)申立理由4(新規性・進歩性)(申立3)
本件発明1~3、5、7は、申立人3が提出した甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるため、請求項1~3、5、7に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
また、請求項1~7に係る発明は、申立人3が提出した甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許を受けることができないものであるため、請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(5)申立理由5(進歩性)(申立1、申立3)
請求項1~7に係る発明は、申立人1が提出した甲第3号証(申立人3が提出した甲第2号証と同じ)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許を受けることができないものであるため、請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(6)申立理由6(拡大先願)(申立3)
請求項1~7に係る発明は、本件特許出願の日前の特許出願であって、本件特許出願後に出願公開がされた、申立人3が提出した甲第3号証に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者が本件特許出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないから、請求項1~7に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。
(7)申立理由7(実施可能要件)(申立2)
本件特許の発明の詳細な説明の記載が、次の点で、請求項1~5、7に係る発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでなく、特許法第36条第4項第1号に適合しないため、請求項1~5、7に係る特許は、同法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
請求項1~5、7に係る発明の樹脂(B)に関して、請求項1~5、7に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえず、請求項1~5、7に係る発明は、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えている。
そうすると、請求項1~5、7に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、実施可能要件違反である。
(8)申立理由8(サポート要件)(申立2、申立3)
本件特許の請求項1~7に係る発明は、次の点で発明の詳細な説明に記載したものでないから、本件特許の特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に適合しないため、請求項1~7に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
ア 樹脂(B)について(申立2)
請求項1に記載された樹脂(B)について、実施例で検証されたもの以外の樹脂の全てが、実施例で示したような効果を奏するとは予測できず、そのことは当業者の技術常識でもない。
そうすると、請求項1~5、7に係る発明の樹脂(B)に関して、請求項1~5、7に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
イ 変性アクリル系樹脂(A)について(申立3)
実施例には、一般式(I)で表される構成単位と一般式(II)で表される構成単位を所定の割合で用いた変性アクリル系樹脂(A)を、所定の割合で含む組成物を用いたものしか記載されておらず、また、長鎖アクリル含有樹脂の含有量によって剥離力が変化することは当業者によく知られた技術的事項であるところ、請求項1~7に係る発明は、これら割合について限定されていない。
そうすると、出願時の技術常識に照らしても、請求項1~7に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
(9)申立理由9(明確性)(申立2、申立3)
本件特許の請求項1~7に係る発明は、次の点で明確でないから、本件特許の特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に適合しないため、請求項1~7に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
ア 「メラミン化合物」について(申立2:請求項1、5、7、申立3:請求項1~7)
請求項1における「前記架橋剤(D)は、アミノ基の水素原子が全てアルコキシアルキル基及びアルカノール基の少なくとも一方で置換された構造を有しているメラミン化合物であり」の記載と「前記メラミン化合物は、下記一般式(IV):【化2】[一般式(IV)において、置換基Rの全てがアルコキシアルキル基であり、nは、1以上の数である。]で表され」の記載とが矛盾している。
請求項7についても同様。
イ 「剥離フィルムの製造方法」について(申立3:請求項7)
請求項7に記載された「剥離性フィルムの製造方法」と「剥離フィルムの製造方法」の関係が不明である。
(10)証拠方法
ア 申立1
甲第1号証 特開2006-8981号公報(以下「引用文献1」という。)
甲第2号証 国際公開第2012/020673号(以下「引用文献2」という。)
甲第3号証 特開2017-165818号公報(以下「引用文献3」という。)
甲第4号証 特許第6299829号公報
甲第5号証 特表2017-510666号公報
イ 申立2
甲第1号証 特開2014-208465号公報(以下「引用文献4」という。)
甲第2号証 国際公開第2016/158592号
ウ 申立3
甲第1号証 特表2010-144046号公報(以下「引用文献5」という。)
甲第2号証 特開2017-165818号公報(引用文献3)
甲第3号証 特願2017-4858号(特開2018-115224号)(申立3甲3)
甲第4号証 特開2000-136332号公報
甲第5号証 特開2004-105785号公報
甲第6号証 中道敏彦、“バインダー基礎講座(第XI講) 架橋剤”、色材、社団法人色材協会、平成4年8月20日、Vol.65、No.8、511~525ページ
2 当審の判断
以下、上記第4において取消理由を判断した請求項4以外の請求項に係る特許について申立理由を検討する。
(1)申立理由1について
ア 引用文献に記載された発明等
(ア)引用文献1
引用文献1には、特に請求項1、4、5を引用する請求項6に記載された剥離材に着目すると、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。
「基材の少なくとも片面に、剥離剤組成物からなる剥離層を有する剥離材であって(【請求項6】)、
前記剥離剤組成物は、
下記一般式(1)で表わされる構成単位(1)を含有する(メタ)アクリル酸エステルからなるポリマー(A)と、アミノ樹脂からなる架橋剤(B)とを含み、
該ポリマー(A)と架橋剤(B)との重量比(A)/(B)が、99.99/0.01~30/70であり(【請求項1】)、
前記ポリマー(A)が、前記構成単位(1)以外の構成単位(2)を0~50重量%含有し(【請求項4】)、
前記構成単位(2)が、炭素数1~11のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミドまたは酢酸ビニルから導かれる構成単位である剥離剤組成物である、
剥離材。
【化1】
[図:0001424547000014.jpg]
(式中、R1は、水素原子またはメチル基を示し、R2は、炭素数12~28の長鎖アルキル基を示す。)」
(イ)引用文献2
引用文献2には、次の記載がある。
「発明が解決しようとする課題
[0008] そこで、本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、電気部品等に悪影響を与えることなく、剥離シートをロール状に巻き取って保管するときに剥離シート両面間のブロッキングを生じにくくし、さらには、剥離性や耐熱性に優れた剥離剤組成物、剥離シート及び粘着体を提供することを目的とする。」
「[0032] 剥離剤組成物において、ポリエステル樹脂(A)の配合量をA質量部とし、アクリル系ポリマー(B)の配合量をB質量部としたとき、質量比A/Bは、50/50~95/5の範囲である。質量比A/Bは、上記範囲よりポリエステル樹脂(A)の割合を多くすると、アクリルポリマー(B)の剥離面における偏析が少なくなり、剥離剤の剥離性能を良好なものとすることができない。一方、上記した範囲よりアクリルポリマー(B)の割合を多くすると、ブロッキングが発生しやすくなる。質量比A/Bは、より良好な剥離性能や耐ブロッキング性を得るためには、60/40~90/10であることが好ましい。」
「[請求項1] ポリエステル樹脂(A)と、下記一般式(1)で表される構成単位を含むアクリル系ポリマー(B)と、架橋剤(C)とを含有し、前記ポリエステル樹脂(A)の配合量をA質量部とし、前記アクリル系ポリマー(B)の配合量をB質量部としたとき、質量比A/Bが、50/50~95/5の範囲であることを特徴とする剥離剤組成物。
[化1]
[図:0001424547000015.jpg]
(一般式(1)において、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2は炭素数12~16のアルキル基を示す。)」
(ウ)引用文献3
引用文献3には、次の記載がある。
「【請求項1】
液状ポリマー(A)と、アクリルポリマー(B)とを含む剥離剤組成物であって、アクリルポリマー(B)が、以下の式(1)で表される長鎖アルキル(メタ)アクリレート(b1)由来の構成単位と、以下の式(2)で表されるアルキル(メタ)アクリレート(b2)由来の構成単位とを含有する剥離剤組成物。
【化1】
[図:0001424547000016.jpg]
(式(1)において、R1は水素原子又はメチル基、R2は炭素数10~30の分岐アルキル基である。)
【化2】
[図:0001424547000017.jpg]
(式(2)において、R11は水素原子又はメチル基、R12は炭素数4~9の直鎖又は分岐のアルキル基である。)
・・・
【請求項7】
液状ポリマー(A)が、ゴム系エラストマー及びポリエステル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1~6のいずれか1項に記載の剥離剤組成物。
・・・
【請求項9】
液状ポリマー(A)の含有量とアクリルポリマー(B)の含有量の比率が、質量比で、(A)/(B)=1/99~99/1の範囲である請求項1~8のいずれか1項に記載の剥離剤組成物。」
「【発明が解決しようとする課題】
・・・
【0007】
・・・
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、剥離力を容易に調整可能であり、例えば、両面粘着シートの剥離シートにも好適に使用可能な剥離剤組成物を提供することである。」
「【0039】
剥離剤組成物において、液状ポリマー(A)とアクリルポリマー(B)の含有量の比率は、質量比で、(A)/(B)=1/99~99/1の範囲にあることが好ましい。この範囲内とすることで、剥離剤組成物に(A)成分及び(B)成分の2成分を配合した効果を得やすくなる。
また、上記(A)/(B)は、30/70~95/5であることがより好ましく、50/50~90/10であることがさらに好ましい。質量比をこれら下限値以上とすることで剥離剤組成物中に(A)成分が適度な量で含有され、剥離剤と基材等との密着性が高めやすくなる。さらに、これら上限値以下とすることで(B)成分が適度な量で剥離剤組成物中に含有され、剥離力が必要以上に重くなったりすることを防止する。」
イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明1とは、次の点で相違し、その余の点で一致する。
[相違点1-1]
本件発明1は、「前記変性アクリル系樹脂(A)は、少なくとも、下記一般式(I):
【化1】
[図:0001424547000018.jpg]
(前記一般式(I)において、R1は、メチル基又は水素原子を示し、R2は、炭素数10~18のアルキル基を示す。)
で表される構成単位を含んで」いるのに対して、引用発明1は、「(メタ)アクリル酸エステルからなるポリマー(A)」が「一般式(1)」「
【化1】
[図:0001424547000019.jpg]
(式中、R1は、水素原子またはメチル基を示し、R2は、炭素数12~28の長鎖アルキル基を示す。)」で「表わされる構成単位(1)を含有する」点。
[相違点1-2]
本件発明1は、「記変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)」を「含み」、「前記表面層中の前記樹脂(B)の含有量は、前記表面層を構成する前記変性アクリル系樹脂(A)と前記樹脂(B)の合計を100質量部として、50質量部未満であり、前記樹脂(B)は、ポリエステル樹脂及びアクリル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種である」のに対して、引用発明1は、そのような「樹脂(B)」を含んでいない点。
[相違点1-3]
本件発明1は、「前記架橋剤(D)は、アミノ基の水素原子が全てアルコキシアルキル基及びアルカノール基の少なくとも一方で置換された構造を有しているメラミン化合物であり、
前記メラミン化合物は、下記一般式(IV):
【化2】
[図:0001424547000020.jpg]
[一般式(IV)において、置換基Rの全てがアルコキシアルキル基であり、nは、1以上の数である。]で表され」るのに対して、引用発明1は、「架橋剤(B)」が「アミノ樹脂からなる」点。
(イ)判断
事案に鑑み、相違点1-2について検討する。
相違点1-2に係る本件発明1の技術的事項のうち、「記変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)」を「含み」、「前記表面層中の前記樹脂(B)の含有量は、前記表面層を構成する前記変性アクリル系樹脂(A)と前記樹脂(B)の合計を100質量部として、50質量部未満であ」ることに関して、本件特許の明細書には次の記載がある。
「【0068】
<樹脂(B)>
表面層を形成する樹脂成分は、変性アクリル系樹脂(A)とともに、変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)を含んでいる。
【0069】
表面層に当該樹脂(B)を含有することにより、変性アクリル系樹脂(A)との相溶性の違いを利用して、変性アクリル系樹脂(A)のアルキル基を表面に偏析させやすく、加熱前後の剥離力の差を小さくし、さらには表面層の成分を物品に移行し難くすることができる。」
「【0077】
表面層中の樹脂(B)の含有量は限定的ではないが、加熱前後の剥離力の差を小さくし、さらには表面層の成分を物品に移行し難くする観点から、表面層を構成する樹脂(A)と樹脂(B)の合計を100質量部として、2質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、20質量部以上であることがさらに好ましく、30質量部以上であることが特に好ましく、40質量部以上であることが特段好ましい。また、同様の観点から、表面層を構成する樹脂(A)と樹脂(B)の合計を100質量部として、70質量部以下であることが好ましく、60質量部以下であることがより好ましく、50質量部以下であることがさらに好ましく、50質量部未満がさらに一層好ましく、45質量部以下であることが特に好ましい。」
以上の記載を総合すると、本件発明1において、「記変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)」を「含」むことにより、変性アクリル系樹脂(A)との相溶性の違いを利用して、変性アクリル系樹脂(A)のアルキル基を表面に偏析させやすくし、加熱前後の剥離力の差を小さくし、さらには表面層の成分を物品に移行し難くし、また、同じく、「前記表面層中の前記樹脂(B)の含有量は、前記表面層を構成する前記変性アクリル系樹脂(A)と前記樹脂(B)の合計を100質量部として、50質量部未満であ」ることにより、さらに一層、加熱前後の剥離力の差を小さくし、さらには表面層の成分を物品に移行し難くするという技術的意義を有するものである。
引用文献1には、「(メタ)アクリル酸エステルからなるポリマー(A)」とは異なる樹脂(B)を含み、表面層中の樹脂(B)の含有量を、表面層を構成する「(メタ)アクリル酸エステルからなるポリマー(A)」と樹脂(B)の合計を100質量部として、50質量部未満とすることが記載も示唆もされていない。
そうすると、引用発明1において、加熱前後の剥離力の差を小さくし、さらには表面層の成分を物品に移行し難くするために、「記変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)」を「含み」、「前記表面層中の前記樹脂(B)の含有量は、前記表面層を構成する前記変性アクリル系樹脂(A)と前記樹脂(B)の合計を100質量部として、50質量部未満」である構成とすることの着想は得られない。
次に、引用文献2、3について検討する。
引用文献2には、ポリエステル樹脂(A)とアクリル系ポリマー(B)とを含む剥離材組成物が記載されているものの、剥離シート両面間のブロッキングを生じにくくし、さらには、剥離性や耐熱性に優れたものとするため、ポリエステル樹脂(A)の配合量をA質量部とし、アクリル系ポリマー(B)の配合量をB質量部としたとき、質量比A/Bが、50/50~95/5の範囲としたものであるから、ポリエステル樹脂(A)の含有量を、アクリル系ポリマー(B)とポリエステル樹脂(A)の合計を100質量部として、50質量未満とすることは記載も示唆もされていない。
引用文献3には、剥離力を容易に調整可能とするために、ゴム系エラストマー及びポリエステル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である液状ポリマー(A)とアクリルポリマー(B)の含有量の比率を、質量比で(A)/(B)=1/99~99/1の範囲とすることが記載されているものの、加熱前後の剥離力の差を小さくし、さらには表面層の成分を物品に移行し難くするために、液状ポリマー(A)の含有量を、アクリルポリマー(B)と液状ポリマー(A)の合計を100質量部として、50質量部未満とすることは記載も示唆もされていないし、引用文献3の【0039】には、むしろ50質量部以上とすることが「さらに好ましい」と記載されている。
また、他の証拠にも、加熱前後の剥離力の差を小さくし、さらには表面層の成分を物品に移行し難くするために、「記変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)」を「含み」、「前記表面層中の前記樹脂(B)の含有量は、前記表面層を構成する前記変性アクリル系樹脂(A)と前記樹脂(B)の合計を100質量部として、50質量部未満であ」る構成とすることは、記載も示唆もされていない。
したがって、相違点1-2に係る本件発明1の構成は、引用発明1や他の証拠に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。
(ウ)小括
よって、本件発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものではない。
ウ 本件発明2、3、5~7について
本件発明5、7は、「記変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)」を「含み」、「前記表面層中の前記樹脂(B)の含有量は、前記表面層を構成する前記変性アクリル系樹脂(A)と前記樹脂(B)の合計を100質量部として、50質量部未満であ」るという発明特定事項を有しているため、上記イと同様の理由により、引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものではない。
また、本件発明2、3は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であり、本件発明6は、本件発明5の発明特定事項を全て含む発明であるから、同様の理由により、引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)申立理由2について
ア 引用文献に記載された発明
引用文献2には、特に実施例1([0049]、[0050])に記載された剥離シートに着目すると、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。
「ポリエステル樹脂溶液68質量部(固形分換算)と、ラウリルアクリレート(LA)99質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)1質量部、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2質量部、トルエン100質量部、酢酸エチル100質量部を重合反応させて得た、LA-HEA共重合体(以下、「ポリマーA」という)の溶液32質量部(固形分換算)と、架橋剤としてのメラミン樹脂(寿化工社製、商品名「TF200」、固形分80質量%)7質量部(固形分換算)と、トルエン:メチルエチルケトン(MEK)=30:70(質量比)の混合溶媒2115質量部とを混合し攪拌した後、さらに触媒としてのp-トルエンスルホン酸のメタノール溶液(p-トルエンスルホン酸50質量%含有)を2.8質量部添加、攪拌して得た、塗工液1を、基材としてのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、塗布した後、乾燥させ硬化させることにより基材の上に剥離層を形成して得た、基材及び剥離層から成る剥離シート。」
イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明2とは、次の点で相違し、その余の点で一致する。
[相違点2-1]
架橋剤(D)について、本件発明1は、「前記架橋剤(D)は、アミノ基の水素原子が全てアルコキシアルキル基及びアルカノール基の少なくとも一方で置換された構造を有しているメラミン化合物であり、前記メラミン化合物は」、「一般式(IV):[一般式(IV)において、置換基Rの全てがアルコキシアルキル基であり、nは、1以上の数である。]で表され」るのに対して、引用発明2は、「メラミン樹脂(寿化工社製、商品名「TF200」、固形分80質量%)」である点。
[相違点2-2]
本件発明1は、「前記表面層中の前記樹脂(B)の含有量は、前記表面層を構成する前記変性アクリル系樹脂(A)と前記樹脂(B)の合計を100質量部として、50質量部未満であ」るのに対して、引用発明2は、「剥離層」を形成する「塗工液1」が、「ポリエステル樹脂溶液68質量部(固形分換算)と、ラウリルアクリレート(LA)99質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)1質量部、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2質量部、トルエン100質量部、酢酸エチル100質量部を重合反応させて得た、LA-HEA共重合体(以下、「ポリマーA」という)の溶液32質量部(固形分換算)」を混合して得たものである点。
(イ)判断
事案に鑑み相違点2-2について検討する。
引用発明2において、ポリマーAが固形分換算で32質量部であり、ポリエステル樹脂が固形分換算で68質量部であるから、ポリエステル樹脂の含有量は、ポリマーAとポリエステル樹脂の合計を100質量部として、68質量部である。
これら樹脂の割合に関して、引用文献2には、「剥離シートをロール状に巻き取って保管するときに剥離シート両面間のブロッキングを生じにくくし、さらには、剥離性や耐熱性に優れた剥離剤組成物」([0008])とするために、「剥離剤組成物において、ポリエステル樹脂(A)の配合量をA質量部とし、アクリル系ポリマー(B)の配合量をB質量部としたとき、質量比A/Bは、50/50~95/5の範囲」([0032])としたものであるから、ポリエステル樹脂の含有量を、ポリマーAとポリエステル樹脂の合計を100質量部として、50質量部未満とすることに阻害要因がある。
したがって、相違点2-2に係る本件発明1の構成は、引用発明2に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。
(ウ)小括
よって、本件発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、引用文献2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものではない。
ウ 本件発明2、3、5~7について
本件発明5、7は、「前記表面層中の前記樹脂(B)の含有量は、前記表面層を構成する前記変性アクリル系樹脂(A)と前記樹脂(B)の合計を100質量部として、50質量部未満であ」るという発明特定事項を有しているため、上記イと同様の理由により、引用文献2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものではない。
また、本件発明2、3は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であり、本件発明6は、本件発明5の発明特定事項を全て含む発明であるから、同様の理由により、引用文献2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)申立理由3について
ア 引用文献に記載された発明
引用文献4には、特に請求項1に記載された積層フィルム及び【0001】の記載に着目すると、次の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されている。
「ポリエステルフィルムの少なくとも一面に、樹脂(α)を用いてなる樹脂層(X)が設けられた積層フィルムであって、以下の(1)~(6)の条件を満たす、離型性に優れる層を有する積層フィルム。
(1)樹脂層(X)の厚みが80~1000nmであること
(2)樹脂(α)はガラス転移点温度が50℃以上である樹脂であること
(3)樹脂層(X)の表面自由エネルギーが40mN/m以上、50mN/m未満であること
(4)樹脂層(X)の鉛筆硬度が「F」以上であること
(5)樹脂(α)が、水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A)と、メチロール基及び/又はアルコキシメチル基を有するメラミン化合物(B)を含む樹脂組成物から得られる樹脂であること
(6)積層フィルムの樹脂層(X)を有する面のうち、少なくとも一面の中心線粗さSRaが8nm以上12nm以下、十点平均粗さSRzが400nm以下であること」
イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明4とは、次の点で相違し、その余の点で一致する。
[相違点4-1]
アクリル系樹脂について、本件発明1は、「アルキル成分及び架橋性官能基を有する変性アクリル系樹脂(A)」であって、「前記変性アクリル系樹脂(A)は、少なくとも」、「一般式(I):(前記一般式(I)において、R1は、メチル基又は水素原子を示し、R2は、炭素数10~18のアルキル基を示す。)で表される構成単位を含んで」いるのに対して、引用発明4は、「水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A)」である点。
[相違点4-2]
樹脂(B)について、本件発明1は、「前記樹脂成分は、前記変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)」を含み、「前記表面層中の前記樹脂(B)の含有量は、前記表面層を構成する前記変性アクリル系樹脂(A)と前記樹脂(B)の合計を100質量部として、50質量部未満であり、前記樹脂(B)は、ポリエステル樹脂及びアクリル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種である」のに対して、引用発明4は、「樹脂(α)」がそのような樹脂(B)を含むか不明である点。
[相違点4-3]
架橋剤(D)について、本件発明1は、「前記架橋剤(D)は、アミノ基の水素原子が全てアルコキシアルキル基及びアルカノール基の少なくとも一方で置換された構造を有しているメラミン化合物であり、前記メラミン化合物は、下記一般式(IV):[一般式(IV)において、置換基Rの全てがアルコキシアルキル基であり、nは、1以上の数である。]で表され」るのに対して、引用発明4は、「メチロール基及び/又はアルコキシメチル基を有するメラミン化合物(B)」である点。
(イ)判断
相違点4-1について検討する。
相違点4-1に係る本件発明1の技術的事項に関して、本件特許の明細書には次の記載がある。
「【0025】
<変性アクリル系樹脂(A)>
アルキル成分及び架橋性官能基を有する変性アクリル系樹脂(A)は、主鎖であるアクリル系樹脂に対してアルキル基を側鎖として有する樹脂である。変性アクリル系樹脂(A)は、少なくとも下記一般式(I)で表される構成単位(後述の単量体aにより形成される)を含んでいる。
【化6】
[図:0001424547000021.jpg]
【0026】
一般式(I)において、R1は、メチル基又は水素原子を示し、R2は、炭素数10~18
のアルキル基を示す。
【0027】
一般式(I)において、アルキル基R2の炭素数は10~18である。炭素数が9未満になると一般的に変性アクリル系樹脂(A)に離形性を発現させることが難しい。また、炭素数が18を超えると結晶性が高くなること等により剥離力が高くなり過ぎて、剥離性フィルムとしての剥離性能が劣る。変性アクリル系樹脂(A)が炭素数10~18の長鎖アルキル基を有することにより、剥離性能は優れたものとなる。なお、剥離性能を良好にするために、一般式(I)のR2は直鎖のアルキル基であることが好ましい。また、R2の炭素数は、12~18が好ましく、12~14がより好ましい。R2は、炭素数12~18の直鎖アルキル基がさらに一層好ましく、炭素数12~14の直鎖アルキル基が特に好ましい。」
以上の記載を総合すると、本件発明1において、「変性アクリル系樹脂(A)」が「アルキル成分及び架橋性官能基を有」し、「前記変性アクリル系樹脂(A)は、少なくとも」、「一般式(I):(前記一般式(I)において、R1は、メチル基又は水素原子を示し、R2は、炭素数10~18のアルキル基を示す。)で表される構成単位を含」むことにより、剥離性能を優れたものとするという技術的意義を有するものである。
一方で、引用文献4には、「水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A)」の主骨格を形成するモノマーである化合物(a)に関して、「化合物(a)は、樹脂(A)の主骨格を形成するモノマーである。化合物(a)の具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸i-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸i-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸i-オクチル、アクリル酸t-オクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸i-プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸i-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸n-オクチル、メタクリル酸i-オクチル、メタクリル酸t-オクチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等のアクリル酸及び/またはメタクリル酸の炭素数1~18のアルキルエステルやその他、アクリル酸シクロヘキシル等のシクロ炭素数5~12のシクロアルキルエステル、アクリル酸ベンジル炭素数7~12のアラルキルエステルなどを挙げることができる。」(【0047】)と記載されている。
引用文献4の当該記載には、「メタクリル酸の炭素数1~18のアルキルエステル」が挙げられているものの、引用発明4において、本件発明の技術的意義のうち、剥離性能を優れたものとするために、「前記変性アクリル系樹脂(A)は、少なくとも」、「一般式(I):(前記一般式(I)において、R1は、メチル基又は水素原子を示し、R2は、炭素数10~18のアルキル基を示す。)で表される構成単位」を選択することは記載も示唆もされておらず、そのような構成とすることの着想は得られない。
したがって、相違点4-1に係る本件発明1の構成は、引用発明4に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。
(ウ)小括
よって、本件発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、引用文献4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものではない。
ウ 本件発明2、3、5、7について
本件発明5、7は、「アルキル成分及び架橋性官能基を有する変性アクリル系樹脂(A)」であって、「前記変性アクリル系樹脂(A)は、少なくとも」、「一般式(I):(前記一般式(I)において、R1は、メチル基又は水素原子を示し、R2は、炭素数10~18のアルキル基を示す。)で表される構成単位を含んで」いるという発明特定事項を有しているため、上記イと同様の理由により、引用文献4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものではない。
また、本件発明2、3は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、同様の理由により、引用文献4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)申立理由4について
ア 引用文献に記載された発明
引用文献5には、特に実施例3(【0030】)に記載された離型シートに着目すると、次の発明(以下「引用発明5」という。)が記載されている。
「構成単位(A)のモノマーとしてメトキシトリエチレングリコールアクリレート45g、構成単位(B)のモノマーとしてラウリルアクリレート50g、反応性官能基含有(メタ)アクリレート単位のモノマーとしてヒドロキシエチルアクリレート5g、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.375g、及び溶媒として酢酸エチル200gを添加し、重合反応を行うことにより得た共重合体3に、架橋剤としてTMP-HDI(日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートHL」)5gを添加し、固形分が1質量%となるように、トルエン/メチルエチルケトン混合溶媒(質量比3:7)で希釈して得た塗工液を、PETフィルムに塗布して、乾燥させて得た離型シート。」
イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明5とは、次の点で相違し、その余の点で一致する。
[相違点5-1]
本件発明1は、「前記樹脂成分は、前記変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)」を含み、「前記表面層中の前記樹脂(B)の含有量は、前記表面層を構成する前記変性アクリル系樹脂(A)と前記樹脂(B)の合計を100質量部として、50質量部未満であり、前記樹脂(B)は、ポリエステル樹脂及びアクリル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種である」のに対して、引用発明5は、「塗工液」がそのような樹脂(B)を含むか不明である点。
[相違点5-2]
架橋剤(D)について、本件発明1は、「前記架橋剤(D)は、アミノ基の水素原子が全てアルコキシアルキル基及びアルカノール基の少なくとも一方で置換された構造を有しているメラミン化合物であり、前記メラミン化合物は、下記一般式(IV):[一般式(IV)において、置換基Rの全てがアルコキシアルキル基であり、nは、1以上の数である。]で表され」るのに対して、引用発明5は、「TMP-HDI(日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートHL」)」である点。
(イ)判断
相違点5-1について検討する。
引用文献5には、「共重合体3」とは異なる樹脂(B)を含み、表面層中の樹脂(B)の含有量を、表面層を構成する「共重合体3」と樹脂(B)の合計を100質量部として、50質量部未満とすることが記載も示唆もされていない。
そうすると、引用発明5において、加熱前後の剥離力の差を小さくし、さらには表面層の成分を物品に移行し難くするために、「記変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)」を「含み」、「前記表面層中の前記樹脂(B)の含有量は、前記表面層を構成する前記変性アクリル系樹脂(A)と前記樹脂(B)の合計を100質量部として、50質量部未満」である構成とすることの着想は得られない。
また、他の証拠にも、加熱前後の剥離力の差を小さくし、さらには表面層の成分を物品に移行し難くするために、「記変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)」を「含み」、「前記表面層中の前記樹脂(B)の含有量は、前記表面層を構成する前記変性アクリル系樹脂(A)と前記樹脂(B)の合計を100質量部として、50質量部未満であ」る構成とすることは、記載も示唆もされていない。
したがって、相違点5-1に係る本件発明1の構成は、引用発明5や他の証拠に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。
(ウ)小括
よって、本件発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、引用文献5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものではない。
ウ 本件発明2、3、5~7について
本件発明5、7は、「記変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)」を「含み」、「前記表面層中の前記樹脂(B)の含有量は、前記表面層を構成する前記変性アクリル系樹脂(A)と前記樹脂(B)の合計を100質量部として、50質量部未満であ」るという発明特定事項を有しているため、上記イと同様の理由により、引用文献5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものではない。
また、本件発明2、3は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であり、本件発明6は、本件発明5の発明特定事項を全て含む発明であるから、同様の理由により、引用文献5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)申立理由5について
ア 引用文献に記載された発明等
(ア)引用文献3
引用文献3には、特に実施例3(【0079】~【0083】)に記載された剥離シートに着目すると、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されている。
「ヒドロキシ基両末端液状ポリブタジエン(商品名「POLY BD R-45HT」、出光興産株式会社製、数平均分子量(Mn):4,400、水酸基価:46.6mgKOH/g、1,4付加単位重合割合80.8%)のトルエン溶液(固形分濃度:35質量%)100質量部(固形分換算:35質量部)と、2-ヘキシルデシルアクリレート(2HDA)と2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)と2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)とを質量比(2EDA/2EHA/HEA)60/39/1で共重合したアクリル酸エステル共重合体(アクリルポリマー(B))のトルエン溶液(固形分30質量%)50質量部(固形分換算:15質量部)と、メラミン系化合物(商品名「TF200」、寿化工株式会社製、メチル化メラミン樹脂、固形分濃度:80質量%)5質量部(固形分換算:4質量部)を混合溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=70:30(質量比))中に溶解させた後、触媒としてp-トルエンスルホン酸のメタノール溶液(p-トルエンスルホン酸50質量%含有)を2質量部添加し攪拌して、得た剥離剤組成物Aの溶液を、基材としてのPETフィルム(商品名「ダイアホイルT100」、三菱樹脂株式会社、厚さ:50μm)上に塗布した後、乾燥させ硬化させることにより剥離剤層を形成し、エージングして得た、基材及び剥離剤層からなる剥離シート。」
イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明3とは、次の点で相違し、その余の点で一致する。
[相違点3-1]
架橋剤(D)について、本件発明1は、「前記架橋剤(D)は、アミノ基の水素原子が全てアルコキシアルキル基及びアルカノール基の少なくとも一方で置換された構造を有しているメラミン化合物であり、前記メラミン化合物は、下記一般式(IV):[一般式(IV)において、置換基Rの全てがアルコキシアルキル基であり、nは、1以上の数である。]で表され」るのに対して、引用発明5は、「メラミン系化合物(商品名「TF200」、寿化工株式会社製、メチル化メラミン樹脂、固形分濃度:80質量%)5質量部(固形分換算:4質量部)」である点。
[相違点3-2]
本件発明1は、「前記表面層中の前記樹脂(B)の含有量は、前記表面層を構成する前記変性アクリル系樹脂(A)と前記樹脂(B)の合計を100質量部として、50質量部未満であ」るのに対して、引用発明3は、「ヒドロキシ基両末端液状ポリブタジエン(商品名「POLYBD R-45HT」、出光興産株式会社製、数平均分子量(Mn):4,400、水酸基価:46.6mgKOH/g、1,4付加単位重合割合80.8%)のトルエン溶液(固形分濃度:35質量%)100質量部(固形分換算:35質量部)と、2-ヘキシルデシルアクリレート(2HDA)と2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)と2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)とを質量比(2EDA/2EHA/HEA)60/39/1で共重合したアクリル酸エステル共重合体(アクリルポリマー(B))のトルエン溶液(固形分30質量%)50質量部(固形分換算:15質量部)」である点。
[相違点3-3]
本件発明1は、「前記樹脂(B)は、ポリエステル樹脂及びアクリル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種である」のに対して、引用発明3は、「ヒドロキシ基両末端液状ポリブタジエン」である点。
(イ)判断
相違点3-2について検討する。
引用発明3において、ヒドロキシ基両末端液状ポリブタジエン(本件発明1の「前記変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)」)の含有量は、アクリルポリマー(B)(本件発明1の「変性アクリル系樹脂(A)」)とヒドロキシ基両末端液状ポリブタジエンの合計を100質量部として、70質量部と計算できる。
ここで、引用文献3の【0039】(上記(1)ア(ウ))には、液状ポリマー(A)(引用発明3の「ヒドロキシ基両末端液状ポリブタジエン」)とアクリルポリマー(B)の含有量の比率は、「1/99~99/1の範囲にあることが好ましい」と記載されているものの、「50/50~90/10であることがさらに好ましい」と記載され、「質量比をこれら下限値以上とすることで剥離剤組成物中に(A)成分が適度な量で含有され、剥離剤と基材等との密着性が高めやすくなる。さらに、これら上限値以下とすることで(B)成分が適度な量で剥離剤組成物中に含有され、剥離力が必要以上に重くなったりすることを防止する」と記載されている。
引用発明3におけるヒドロキシ基両末端液状ポリブタジエンとアクリルポリマー(B)の含有量の比率は70/30であり、最も好ましい50/50~90/10の範囲に含まれている。
そうすると、引用発明3において、ヒドロキシ基両末端液状ポリブタジエンの含有量を70質量部から50質量部未満に減らすことで、上記最も好ましい範囲から外れるようにすることの着想は得られない。
したがって、相違点3-2に係る本件発明1の構成は、引用発明3や他の証拠に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。
(ウ)小括
よって、本件発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、引用文献3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものではない。
ウ 本件発明2、3、5~7について
本件発明5、7は、上記相違点3-2に係る本件発明1と同じ発明特定事項を有しているため、上記イと同様の理由により、引用文献3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものではない。
また、本件発明2、3は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であり、本件発明6は、本件発明5の発明特定事項を全て含む発明であるから、同様の理由により、引用文献3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(6)申立理由6について
上記第4の2(1)イで認定した甲3発明は、本件発明1、7の「前記樹脂(B)は、ポリエステル樹脂及びアクリル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種である」構成、及び本件発明5の「前記表面層中の前記樹脂(B)の含有量は、前記表面層を構成する前記変性アクリル系樹脂(A)と前記樹脂(B)の合計を100質量部として、20質量部以上であ」る構成を有しておらず、この点は実質的な相違点である。
したがって、本件発明1、5、7と甲3発明とは実質同一ではなく、また、本件発明2、3は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であり、本件発明6は、本件発明5の発明特定事項を全て含む発明であるから、同様の理由により、甲3発明とは実質同一ではない。
(7)申立理由7について
本件明細書には、発明を解決しようとする課題が【0006】~【0008】に、発明を解決するための手段が【0009】、【0010】に、発明の効果が【0011】に、発明を実施するための形態が【0012】~【0118】に、実施例が【0119】~【0149】に記載されているから、発明の詳細な説明は、当業者が本件発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されている。
なお、本件発明が発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えているか否かは、サポート要件で判断されることである。
よって、申立人2の主張は採用できない。
(8)申立理由8について
本件発明が解決しようとする課題(以下「本件課題」という。)は、「剥離性フィルムの成分が物品に移行し難く、加熱前後の剥離力の差が小さい剥離性フィルムを提供すること」(【0008】)である。
発明の詳細な説明の「表面層を形成する樹脂成分は、変性アクリル系樹脂(A)とともに、変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)を含んでいる。表面層に当該樹脂(B)を含有することにより、変性アクリル系樹脂(A)との相溶性の違いを利用して、変性アクリル系樹脂(A)のアルキル基を表面に偏析させやすく、加熱前後の剥離力の差を小さくし、さらには表面層の成分を物品に移行し難くすることができる。」(【0068】、【0069】)の記載によると、表面層を形成する樹脂成分が、変性アクリル系樹脂(A)と、変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)とを含む「剥離性フィルム」(以下「課題解決手段」という。)は、当業者が本件課題を解決できると認識できるものである。
特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載とを対比すると、本件発明は、本件課題を解決できる課題解決手段を備える剥離性フィルムをさらに限定したものである。
したがって、本件発明は、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
よって、申立人2、3の主張は採用できない。
(9)申立理由9について
ア 上記1(9)アについて
請求項1、7に記載された「メラミン化合物」は、「アミノ基の水素原子が全てアルコキシアルキル基及びアルカノール基の少なくとも一方で置換された構造を有し」たものであり、かつ、「下記一般式(IV):【化2】[一般式(IV)において、置換基Rの全てがアルコキシアルキル基であり、nは、1以上の数である。]で表され」るものである。
すなわち、「メラミン化合物」は、「アミノ基の水素原子が全てアルコキシアルキル基で置換された構造を有し」たものであり、かつ、「下記一般式(IV):【化2】[一般式(IV)において、置換基Rの全てがアルコキシアルキル基であり、nは、1以上の数である。]で表され」るものであることは明らかである。
したがって、申立人2、3の主張は採用できない。
イ 上記1(9)イについて
「剥離フィルム」は剥離性を有しているから、「剥離性フィルムの製造方法」と「剥離フィルムの製造方法」は、いずれも剥離性フィルムである剥離フィルムの製造方法を意味することは明らかである。
したがって、申立人3の主張は採用できない。
第6 むすび
以上のとおり、本件発明4は、甲3発明と実質同一であり、しかも、本件特許出願の発明者が本件特許出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないから、請求項4に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。
したがって、本件発明4に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件発明1~3、5~7に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に請求項1~3、5~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2023-700884