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特許異議申立

2023-700629

剥離性フィルム

審判番号
2023-700629
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-120900
登録番号
7192265
請求日
2023年06月13日
審決日
2023年10月24日
公報発行日
2023年12月28日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】王子ホールディングス株式会社
  • 【権利者代理人】田中 順也
  • 【権利者代理人】水谷 馨也
  • 【異議申立人】浅野 幸義
  • 【異議申立人】弁理士法人 朝日奈特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 井上 茂夫
  • 審判官 久保 克彦
  • 審判官 西本 浩司
分類
P1651.113-Y (B32B) / P1651.121-Y (B32B) / P1651.536-Y (B32B) / P1651.537-Y (B32B)
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特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
データ出所
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特許第7192265号発明「剥離性フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7192265号の請求項1~5に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7192265号の請求項1~5に係る特許についての出願は、平成30年6月26日(優先権主張 平成29年6月27日、平成30年6月5日)の出願であって、令和4年12月12日にその特許権の設定登録がされ、同年12月20日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和5年6月13日に、特許異議申立人浅野幸義(以下「申立人A」という。)により、全請求項に対して、本件特許異議の申立てがされ、同年同月19日に、特許異議申立人弁理士法人朝日奈特許事務所(以下「申立人B」という。)により、全請求項に対して、本件特許異議の申立て(全請求項に対して)がされたものである。 第2 本件発明 特許第7192265号の請求項1~5に係る発明(以下「本件発明1」等という。また、本件発明1~5を「本件発明」と総称することがある。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項によりそれぞれ特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 基材層上に表面層を有する剥離性フィルムであって、 前記表面層中の最表面から基材層に向けて垂直に深さ5nmの位置に存在する全元素含有量に対する炭素の含有量比MC5(atomic%)が98以上であり、 前記表面層を形成する主成分が樹脂成分であり、 前記樹脂成分は、アルキル成分及び架橋性官能基を有する変性アクリル系樹脂(A)と、前記変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)と、架橋剤(D)とを含み、 前記変性アクリル系樹脂(A)は、少なくとも、下記一般式(I): 【化1】 [図:0001404818000001.jpg] (前記一般式(I)において、R1は、メチル基又は水素原子を示し、R2は、炭素数10~18のアルキル基を示す。) で表される構成単位を含み、 前記樹脂(B)は、ポリエステル樹脂及びアクリル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種であり、 前記表面層中の前記樹脂(B)の含有量は、前記表面層を構成する前記変性アクリル系樹脂(A)と前記樹脂(B)の合計を100質量部として、2質量部以上45質量部以下である、剥離性フィルム。 【請求項2】 基材層上に表面層を有する剥離性フィルムであって、 前記表面層中の最表面から基材層に向けて垂直に深さ5nmの位置に存在する全元素含有量に対する炭素の含有量比MC5(atomic%)が98以上であり、 前記表面層を形成する主成分が樹脂成分であり、 前記樹脂成分は、アルキル成分及び架橋性官能基を有する変性アクリル系樹脂(A)と、前記変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)と、架橋剤(D)とを含み、 前記変性アクリル系樹脂(A)は、少なくとも、下記一般式(I): 【化2】 [図:0001404818000002.jpg] (前記一般式(I)において、R1は、メチル基又は水素原子を示し、R2は、炭素数10~18のアルキル基を示す。) で表される構成単位を含み、 前記樹脂(B)は、ポリエステル樹脂及びアクリル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種であり、前記ポリエステル樹脂の水酸基価が10~40mgKOH/gである、剥離性フィルム。 【請求項3】 前記表面層中の前記樹脂(B)の含有量は、前記表面層を構成する前記変性アクリル系樹脂(A)と前記樹脂(B)の合計を100質量部として、2質量部以上である、請求項2に記載の剥離性フィルム。 【請求項4】 前記表面層中の前記樹脂(B)の含有量は、前記表面層を構成する前記変性アクリル系樹脂(A)と前記樹脂(B)の合計を100質量部として、50質量部未満である、請求項2又は3に記載の剥離性フィルム。 【請求項5】 前記MC5と、前記表面層中の最表面から基材層に向けて垂直に深さ40nmの位置に存在する全元素含有量に対する炭素の含有量比MC40(atomic%)との比率MC5/MC40が、1.01≦MC5/MC40≦1.10である、請求項1~4のいずれかに記載の剥離性フィルム。」 第3 申立理由の概要 (1) 申立人Aの申立理由 申立人Aは、令和5年6月13日に提出した特許異議申立書(以下「申立書A」という。)に添付して、下記エに示す甲第1号証~甲第3号証(以下、「甲1-1」等という。)を提出し、本件発明1~5に係る特許は、大要、以下の理由により、取り消すべきものである旨を主張する。 ア 申立理由1-1(甲1-1を主たる引用例とする新規性)(申立書Aの28~34頁) 本件発明2は、甲1-1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 イ 申立理由1-2(甲1-1を主たる引用例とする進歩性)(申立書Aの16~37頁) 本件発明1~5は、甲1-1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 ウ 申立理由1-3及び申立理由1-4(実施可能要件及びサポート要件) (ア) 本件発明1~5は、実施例によって十分に裏付けられていないから、実施可能要件及びサポート要件を満たさない。なお、以下の記載において、「○1」等は、数字を○かこみしたものの代用表記である。(申立書Aの39~44頁の○2) (イ) 本件発明2~5は、「アクリル樹脂の水酸基価」を特定していない点、及び、「変性アクリル樹脂(A)に対する樹脂(B)の含有割合」を特定していないから、実施可能要件及びサポート要件を満たさない。(申立書Aの37~39頁の○1) エ 証拠方法 甲第1号証:国際公開第2012/020673号 甲第2号証:特開2014-104705号公報 甲第3号証:特開2015-98095号公報 (2) 申立人Bの申立理由 申立人Bは、特許異議申立書(以下、「申立書B」という。)に添付して、下記エに示す甲第1号証~甲第2号証(以下、「甲2-1」等という。)を提出し、本件発明1~5に係る特許は、以下の理由により、取り消すべきものである旨を主張する。 ア 申立理由2-1(甲2-1を主たる引用例とする新規性・進歩性)(申立書Bの36~48頁) 本件発明1~4は、甲2-1に記載された発明であるか、甲2-1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第1項第3号に該当し、又は、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができない。 イ 申立理由2-2(甲2-2を主たる引用例とする新規性・進歩性)(申立書Bの48~55頁) 本件発明2は、甲2-2に記載された発明であるか、甲2-2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は、同法同条条第2項の規定により、特許を受けることができない。 ウ 申立理由2-3及び2-4(実施可能要件及びサポート要件)(申立書Bの55~56頁) 本件発明5は、樹脂(B)がアクリル樹脂である場合について、実施可能要件及びサポート要件に違反している。 エ 証拠方法 甲第1号証:特開2015-66805号公報 甲第2号証:特開2003-221428号公報 第4 当審の判断 以下に記載のとおり、申立人Aの申立理由1-1~申立理由1-4並びに申立人Bの申立理由2-1~申立理由2-4には理由がない。 1 申立理由1-1及び申立理由1-2(請求項1~5に対しての甲1-1を主たる引用例とする新規性・進歩性)について (1) 甲1-1の記載及び甲1-1に記載された発明 ア 甲1-1の記載事項 甲1-1には、以下の記載がある。下線については当審において付与した。以下同じ。 「【技術分野】 [0001] 本発明は、剥離剤組成物、剥離シート及び粘着体に関し、特に、電気部品用途等で使用される非シリコーン系の剥離剤組成物、剥離シート及び粘着体に関する。」 「【背景技術】 ・・・剥離層の構成材料としては、通常シリコーン樹脂が使用される。 [0004] しかし、シリコーン樹脂を用いた剥離シートでは、剥離層中の低分子量シリコーン樹脂、シロキサン、シリコーンオイル等のシリコーン化合物が、粘着層に移行することがある。また、剥離シートは、製造後ロール状に巻き取られるが、このとき、剥離シートの裏面と剥離層とが接触し、剥離層中のシリコーン化合物が、剥離シートの裏面にも移行されることがある。剥離シートの裏面に移行したシリコーン化合物は、剥離シートが粘着シートに貼着された後ロール状に巻き取られるとき、さらに粘着シート基材に移行することがある。 ・・・ [0006] 従来、このようなシリコーン汚染の問題を解決するために、オレフィン樹脂系剥離剤や長鎖アルキル系剥離剤等、シリコーン化合物を含まないいわゆる非シリコーン系剥離剤の開発が進められている・・・。しかし、これら非シリコーン系剥離剤は、耐熱性に劣るため、剥離層上に粘着剤を直接塗工した後、加熱乾燥して粘着層を形成することが難しいという問題がある。また、非シリコーン系剥離剤を用いた剥離シートは、ロール状に巻き取って保管され繰り出される際に剥離シート両面間のブロッキングが発生しやすいという問題もある。」 「【発明が解決しようとする課題】 [0008] そこで、本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、電気部品等に悪影響を与えることなく、剥離シートをロール状に巻き取って保管するときに剥離シート両面間のブロッキングを生じにくくし、さらには、剥離性や耐熱性に優れた剥離剤組成物、剥離シート及び粘着体を提供することを目的とする。」 「[0021] ポリエステル樹脂(A)は、架橋剤(C)と反応するために反応性官能基を有することが好ましく、その反応性官能基は水酸基であることがより好ましい。そして、ポリエステル樹脂(A)の水酸基価は、5~500mgKOH/gであることが好ましく、10~300mgKOH/gであることがより好ましい。」 「[0032] 剥離剤組成物において、ポリエステル樹脂(A)の配合量をA質量部とし、アクリル系ポリマー(B)の配合量をB質量部としたとき、質量比A/Bは、50/50~95/5の範囲である。質量比A/Bは、上記範囲よりポリエステル樹脂(A)の割合を多くすると、アクリルポリマー(B)の剥離面における偏析が少なくなり、剥離剤の剥離性能を良好なものとすることができない。一方、上記した範囲よりアクリルポリマー(B)の割合を多くすると、ブロッキングが発生しやすくなる。質量比A/Bは、より良好な剥離性能や耐ブロッキング性を得るためには、60/40~90/10であることが好ましい。」 請求の範囲 [請求項1] ポリエステル樹脂(A)と、下記一般式(1)で表される構成単位を含むアクリル系ポリマー(B)と、架橋剤(C)とを含有し、 前記ポリエステル樹脂(A)の配合量をA質量部とし、前記アクリル系ポリマー(B)の配合量をB質量部としたとき、質量比A/Bが、50/50~95/5の範囲であることを特徴とする剥離剤組成物。 [図:0001404818000003.jpg] (一般式(1)において、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2は炭素数12~16のアルキル基を示す。) [請求項2] 前記アクリル系ポリマー(B)が、さらに水酸基、アミノ基、及びカルボキシル基から成る群から選択される官能基を有する構成単位を含むことを特徴とする請求項1に記載の剥離剤組成物。 [請求項5] 前記ポリエステル樹脂(A)が、官能基として水酸基を有することを特徴とする請求項1に記載の剥離剤組成物。 [請求項9]基材と、その基材上に設けられ、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の剥離剤組成物の硬化物から成る剥離層とを備えることを特徴とする剥離シート。」 イ 甲1-1に記載された発明 甲1-1に記載された、特許請求の範囲の請求項1、2、5及び9及び発明の詳細な説明の実施例等の記載からみて、以下の発明(以下、「甲1-1発明」という。)が記載されていると認める。 <甲1-1発明> 「基材と、その基材上に設けられ、剥離剤組成物の硬化物から成る剥離層とを備える、剥離シートであって、 剥離剤組成物が、ポリエステル樹脂(A)と、下記一般式(1)で表される構成単位を含むアクリル系ポリマー(B)と、架橋剤(C)とを含有し、 前記ポリエステル樹脂(A)の配合量をA質量部とし、前記アクリル系ポリマー(B)の配合量をB質量部としたとき、質量比A/Bが、50/50~95/5の範囲であり、前記アクリル系ポリマー(B)が、さらに水酸基、アミノ基、及びカルボキシル基から成る群から選択される官能基を有する構成単位を含み、前記ポリエステル樹脂(A)が、官能基として水酸基を有する、剥離シート。 [図:0001404818000004.jpg] (一般式(1)において、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2は炭素数12~16のアルキル基を示す。) 」 (2) 本件発明1との対比・判断 本件発明1と甲1-1発明とを対比する。 甲1-1発明の「剥離層」、「基材」、「剥離シート」は、それぞれ、本件発明1の「表面層」、「基材層」、「剥離性フィルム」に相当する。 甲1-1発明の「下記一般式(1)で表される構成単位」 「 [図:0001404818000005.jpg] 」 は、本件発明1における「下記一般式(I): 【化1】 [図:0001404818000006.jpg] (前記一般式(I)において、R1は、メチル基又は水素原子を示し、R2は、炭素数10~18のアルキル基を示す。)で表される構成単位」に相当し、「アクリル系ポリマー(B)が、さらに水酸基、アミノ基、及びカルボキシル基から成る群から選択される官能基を有する構成単位を含」んでいることから、甲1-1発明の「下記一般式(1)で表される構造単位を含むアクリル系ポリマー(B)」は、本件発明1の「アルキル成分及び架橋性官能基を有する変性アクリル系樹脂(A)」であって、「前記変性アクリル系樹脂(A)は、少なくとも、下記一般式(I): 【化2】 [図:0001404818000007.jpg] (前記一般式(I)において、R1は、メチル基又は水素原子を示し、R2は、炭素数10~18のアルキル基を示す。)で表される構成単位を含」む「変性アクリル系樹脂(A)」に相当する。 甲1-1発明の「架橋剤(C)」、「ポリエステル樹脂(A)」は、それぞれ、本件発明1における「架橋剤(D)」、「前記変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)」に相当し、甲1-1発明は、本件発明1の「前記樹脂(B)は、ポリエステル樹脂及びアクリル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種であ」るを満たす。 甲1-1発明における「剥離層」(表面層)は、ポリエステル樹脂(A)が主な成分であるから、本件発明1の「表面層を形成する主成分が樹脂であり」を満たしている。 そうすると、本件発明1と甲1-1発明とは、 「基材層上に表面層を有する剥離性フィルムであって、 前記表面層を形成する主成分が樹脂成分であり、 前記樹脂成分は、アルキル成分及び架橋性官能基を有する変性アクリル系樹脂(A)と、前記変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)と、架橋剤(D)とを含み、前記変性アクリル系樹脂(A)は、少なくとも、下記一般式(I): 【化1】 [図:0001404818000008.jpg] (前記一般式(I)において、R1は、メチル基又は水素原子を示し、R2は、炭素数10~18のアルキル基を示す。)で表される構成単位を含み、 前記樹脂(B)は、ポリエステル樹脂及びアクリル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種である、 剥離性フィルム。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1-1-1> 表面層に存在する元素について、本件発明1は、「前記表面層中の最表面から基材層に向けて垂直に深さ5nmの位置に存在する全元素含有量に対する炭素の含有量比MC5(atomic%)が98以上であり」と特定するのに対し、甲1-1発明は、この点について特定がなされていない点 <相違点1-1-2> 表面層の樹脂成分に関し、本件発明1は、「前記表面層中の前記樹脂(B)の含有量は、前記表面層を構成する前記変性アクリル系樹脂(A)と前記樹脂(B)の合計を100質量部として、2質量部以上45質量部以下である」と特定するのに対し、甲1-1発明は、「前記ポリエステル樹脂(A)の配合量をA質量部とし、前記アクリル系ポリマー(B)の配合量をB質量部としたとき、質量比A/Bが、50/50~95/5の範囲であ」ると特定する点。 以下、相違点について検討する。 相違点1-1-1について 甲1-1には、剥離層(表面層)中の最表面から基材層に向けて垂直に深さ5nmの位置に存在する全元素含有量に対する炭素の含有量比MC5(atomic%)についての記載はなく、申立人の提出した他の証拠にも記載されているものはないし、甲1-1発明の剥離性フィルムの剥離層のMc5がどの程度かを示す証拠もない。 そうすると、相違点1-1-1は実質的な相違点であるから、相違点1-1-2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1-1発明ではない。 また、甲1-1発明において、相違点1-1-1に係る発明特定事項とすることは、当業者においても容易に想到し得たこととはいえない。 よって、本件発明1は、その余の相違点について検討するまでもなく、甲1-1発明でないし、甲1-1発明に基いて容易に発明をすることができたものともいえない。 (3) 本件発明2との対比・判断 本件発明2と甲1-1発明とを対比する。 上記(2)と同様な対比が成り立つから、本件発明2と甲1-1発明とは、 「基材層上に表面層を有する剥離性フィルムであって、 前記表面層を形成する主成分が樹脂成分であり、 前記樹脂成分は、アルキル成分及び架橋性官能基を有する変性アクリル系樹脂(A)と、前記変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)と、架橋剤(D)とを含み、前記変性アクリル系樹脂(A)は、少なくとも、下記一般式(I): 【化1】 [図:0001404818000009.jpg] (前記一般式(I)において、R1は、メチル基又は水素原子を示し、R2は、炭素数10~18のアルキル基を示す。)で表される構成単位を含み、 前記樹脂(B)は、ポリエステル樹脂及びアクリル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種である、 剥離性フィルム。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1-1-3> 表面層に関し、本件発明2は、「前記表面層中の最表面から基材層に向けて垂直に深さ5nmの位置に存在する全元素含有量に対する炭素の含有量比MC5(atomic%)が98以上であり」と特定するのに対し、甲1-1発明は、この点について特定がなされていない点 <相違点1-1-4> 本件発明2は、「前記ポリエステル樹脂の水酸基価が10~40mgKOH/gである」と特定するのに対し、甲1-1発明は、「ポリエステル樹脂の水酸基価5~500mgKOH/gである」との特定である点 以下、相違点について検討するに、<相違点1-1-3>は、上記(2)における相違点1-1-1と同じであるから、上記(2)における<相違点1-1-1>と同様に判断できるので、本件発明2は、その余の相違点について検討するまでもなく、甲1-1発明でないし、甲1-1発明に基いて容易に発明をすることができたものともいえない。 (4) 本件発明3~4について 本件発明3及び4は、本件発明2の発明特定事項を全て含み、更に限定するものであるから、上記(3)で検討したとおり、甲1-1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (5) 本件発明5について 本件発明5は、本件発明1又は本件発明2の発明特定事項を全て含み、更に限定するものであるから、上記(2)又は(3)で検討したとおり、甲1-1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (6) まとめ 以上のとおりであるから、申立人Aの申立理由1-1及び申立理由1-2はその理由がない。 2 申立理由1-3(請求項1~5に対しての実施可能要件)について (1) 実施可能要件の判断基準 上記第2のとおり、本件発明1ないし5は物の発明であるところ、発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するというためには、物の発明にあっては、当業者が明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基いて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産でき、かつ、使用できる程度の記載があることを要する。 そこで、検討する。 (2) 発明の詳細な説明の記載 本件特許の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。 ・「【技術分野】 【0001】 本発明は、剥離性フィルム及びその製造方法に関する。特に、本発明は、医療分野及び工業分野において、例えば、電子部品若しくは電子基板の製造工程、又は繊維強化プラスチック等の熱硬化性樹脂部材の製造工程等に使用される剥離用のフィルム等に関する。さらに詳しくは、本発明は、表面保護フィルム及び粘着テープ等に使用する剥離フィルム、剥離ライナー又はセパレータフィルム、半導体製品製造時に使用される工程(ダイシング、ダイボンディング、バックグラインド)テープのセパレータ、セラミックコンデンサ製造時の未焼成シート形成用キャリアーならびに複合材料製造時のキャリアー、保護材のセパレータフィルム等として特に有用な、剥離性フィルムに関する。 【背景技術】 【0002】 電子部品、電子基板などの製造工程や、繊維強化プラスチック等の熱硬化性樹脂部材の製造工程などの工業分野、さらには湿布、絆創膏などの医療分野などにおいて、剥離性フィルムが使用されている。 【0003】 このような剥離性フィルムとしては、例えば、表面保護フィルムや粘着テープなどとして使用されるものや、剥離ライナー、セパレータフィルムなどとして使用されるもの、半導体製品の製造工程(ダイシング、ダイボンディング、バックグラインドなど)で使用されるセパレータ、セラミックコンデンサ製造時の未焼成シート形成用キャリアーや複合材料製造時のキャリアー、保護材のセパレータフィルムなど様々なものが知られている。 【0004】 シリコーン系剥離性フィルムは、耐候性、耐熱性、耐寒性、耐薬品性、及び電気絶縁性に優れており、剥離性フィルムとして広く用いられている。しかしながら、シリコーン系剥離性フィルムを使用する際、当該フィルムに貼られる物品にシリコーンが転写(移行)してしまう場合がある(この問題をシリコーン移行の問題ともいう)。そこで、シリコーン系剥離性フィルム中のシリコーンの組成を改良したり、シリコーン使用量を極力抑えたり、またはシリコーンを使わないことが検討されてきた。例えば、特許文献1では、ヒドロキシ基含有長鎖アルキルポリマーを用いた剥離フィルムが提案されている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0005】 【特許文献1】特開2015-030795号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 しかしながら、特許文献1に記載された剥離フィルムは、剥離力が大きく、しかも耐熱性が不十分である。一例として、剥離フィルムをセラミックコンデンサ製造時の未焼成シート形成用キャリアーとして用いる場合について説明する。前記未焼成シートを作製するためには、剥離フィルムの上に塗工層を設けて乾燥させる。耐熱性が不十分であると、前記未焼成シートは、前記乾燥を行った後にその乾燥の熱によって、不意に剥離フィルムから剥がれにくくなる場合がある。このような問題があるため、当該剥離フィルムは、シリコーン系剥離フィルムの代替フィルムとして使用することは困難である。そこで、剥離力が軽いという良好な剥離性を有すると共に、耐熱性に優れる(熱処理された後においても上記良好な剥離性を維持する)剥離性フィルムがなお求められている。 【0007】 本発明の課題は剥離力が軽いという良好な剥離性を有すると共に、耐熱性に優れる剥離性フィルムを提供することである。」 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、基材層上に表面層を有する剥離性フィルムであって、前記表面層中の最表面から基材層に向けて垂直に深さ5nmの位置に存在する全元素含有量に対する炭素の含有量比MC5(atomic%)が98以上である、剥離性フィルムは、良好な剥離性を有する(即ち剥離力が軽い)とともに、耐熱性に優れることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいてさらに検討を重ねることにより完成したものである。」 ・「【発明の効果】 【0011】 本発明によれば、剥離力が軽いという良好な剥離性を有するとともに、耐熱性にも優れる剥離性フィルムを提供することができる。そのため、特に、電子部品若しくは電子基板の製造工程、又は繊維強化プラスチック等の熱硬化性樹脂部材の製造工程等に使用される剥離フィルム等として適している。」 ・「【発明を実施するための形態】 【0012】 本実施形態に係る剥離性フィルムは、基材層上に表面層を有する剥離性フィルムであって、前記表面層中の最表面から基材層に向けて垂直に深さ5nmの位置に存在する全元素含有量に対する炭素の含有量比MC5(atomic%)が98以上であることを特徴としている。 【0013】 本実施形態に係る剥離性フィルムは、このような構成を備えていることにより、 (1)常温における良好な剥離性(即ち、当該剥離性フィルムの表面層に対して対象物(被着体)を貼り付け、その後に当該表面層と当該対象物との間で剥がす場合、当該表面層と当該対象物との間に剥離力を有しつつも当該剥離力が低い(剥離力が軽いともいう)性質)という効果とともに、 (2)耐熱性に優れる、即ち高温(例えば90~160℃程度)に晒された後においても、上記良好な剥離性を保持することができる、 という効果を兼ね備える。 【0014】 特に、上記(1)の効果においては、通常のシリコーン系剥離性フィルムの剥離性と同等の良好さを有する。本発明の剥離性フィルムは、上記(1)~(2)の効果を兼ね備えるため、当該剥離性フィルムは、電子部品若しくは電子基板の製造工程(一例として、セラミックコンデンサ製造時の未焼成シート形成用キャリアーとしての使用工程)、又は繊維強化プラスチック等の熱硬化性樹脂部材の製造工程、さらには湿布、絆創膏などの医療分野などにおいて、好適に使用し得る。本実施形態に係る剥離性フィルムは、上記特性だけでなく、90~160℃程度といった高温に加熱される前後の剥離力の差が小さい場合、及び/又は、後述の残留接着率が大きい場合は、前記各分野において、さらに好適に使用し得る。」 ・「【0017】 〔基材層〕 基材層としては、樹脂を含有する層(例:樹脂製のフィルム)の他、紙、不織布、金属箔等の薄いシートが使用できる。・・・ 」 ・「【0024】 〔表面層〕 本実施形態の剥離性フィルムは、基材層上に表面層を有する。表面層は、剥離性フィルムに剥離性を付与するための層である。表面層は、基材層との間に接着剤層等の各層を介して基材層の上に形成されていてもよいが、表面層の主面が基材層の主面と接するように表面層が形成されていることが好ましい。 【0025】 本実施形態に係る剥離性フィルムは、表面層中の最表面から基材層に向けて垂直に深さ5nmの位置に存在する全元素含有量に対する炭素の含有量比MC5(atomic%)が98以上(より具体的には、98.0以上)である(即ち、98≦MC5、さらには98.0≦MC5ともいえる)。上記MC5が98atomic%を下回る(即ち、MC5<98)である場合、アルキル鎖が表面層の最表面側に偏析していないこととなり、十分な剥離性を付与できなくなる虞がある。MC5の上限値については、限定的ではないが、MC5≦99(より具体的には、MC5≦99.0であり、MC5が99以下、さらには99.0以下)が好ましい。MC5を調整する手段としては、後述する変性アクリル系樹脂(A)成分の割合の調整、層の厚さの調整、等が挙げられる。 【0026】 <MC5とMC40との関係> 前記表面層中の最表面から基材層に向けて垂直に深さ5nmの位置に存在する全元素含有量に対する炭素の含有量比をMC5(atomic%)とし、前記表面層中の最表面から基材層に向けて垂直に深さ40nmの位置に存在する全元素含有量に対する炭素の含有量比をMC40(atomic%)とすると、MC5とMC40との関係は1.01≦MC5/MC40≦1.10であることが好ましい。MC5/MC40が1.01≦MC5/MC40≦1.10である場合、よりアルキル鎖が表面層の最表面側に偏析していることを示し、十分な剥離性が得られる。 【0027】 本実施形態において、MC5とMC40との関係は、1.03≦MC5/MC40≦1.10が好ましく、1.04≦MC5/MC40≦1.10がより好ましく、1.04≦MC5/MC40≦1.09がさらに好ましい。上記MC5とMC40との関係における各好ましい態様は、良好な剥離性という観点から見出されたものである。 【0028】 ここで、MC5/MC40の技術的意義を説明する。MC5/MC40はアルキル基の鎖が最表面に偏析することの程度(度合)を示すものである。MC5/MC40値が大きいとアルキル鎖が最表面に対して、より偏析していることを示す。ここで、表面層において、1.01≦MC5/MC40≦1.10である場合、表面層の最表面にアルキル鎖が偏析するので、当該アルキル鎖以外の基や成分が基材層や基材層と隣接するその他の層と相互作用する、と考えられる。このような機構のため、本実施形態の剥離性フィルムは、前記アルキル鎖による良好な剥離性という効果と、高温下に晒された後において、表面層に貼られた対象物に対して良好な剥離性を維持するという効果を兼ね備える、と推測される。 【0029】 MC5、MC40、及びMC5/MC40の値を調整する手段としては、それぞれ、後述の変性アクリル系樹脂(A)内のアルキルアクリレート成分の種類及びその含有量;後述の樹脂(B)の種類およびその含有量;などが挙げられる。一例として、本実施形態に係るフィルムにおいて、表面層が後述の変性アクリル系樹脂(A)と後述の樹脂(B)を含み、且つ前記樹脂(B)がポリエステル樹脂である場合、前記樹脂(B)の含有量が多ければ多いほど、MC5値は小さくなる傾向であり、MC5/MC40値は大きくなる傾向にある。 【0030】 本発明及び本明細書において、MC5及びMC40の値は、それぞれ実施例に記載された手法によって測定し、MC5/MC40の値は上記測定値から算出される。」 ・「【0031】 剥離性フィルムの表面層中の最表面から基材層に向けて垂直に深さ5nmの位置に存在する全元素含有量に対する炭素の含有量比MC5(atomic%)は、Arイオンスパッタリングによって表面層を最表面側から削りながらXPS分析を実施し、測定した値である。測定器としてX線電子分光(XPS)測定器 ESCA LAB250(Thermo VG scientific社製)を用い、測定モード:モノクロメータ、X線源:Al、測定面積:500μmφ、測定元素:炭素(C)で測定する。スパッタリングの条件は、照射イオン:アルゴン(Ar)、電流値:2.5(μA)、電圧:120(V)、スパッタレート:0.1(nm/sec)とする。 【0032】 剥離性フィルムの表面層中の最表面から基材層に向けて垂直に深さ40nmの位置に存在する全元素含有量に対する炭素の含有量比MC40(atomic%)は、MC5と同様、Arイオンスパッタリングによって表面層を最表面側から削りながらXPS分析を実施し、測定した値である。また、MC40の測定条件(測定器、測定モード、X線源、測定面積、測定元素等)及びスパッタリングの条件(照射イオン、電流値、電圧、スパッタレート等)については、上記MC5の測定条件のときと同様である。」 ・「【0033】 表面層を形成する主成分は、樹脂成分である。また、前記樹脂成分は、アルキル成分及び架橋性官能基を有する変性アクリル系樹脂(A)と、前記変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)と、架橋剤(D)とを含むことが好ましい。すなわち、表面層は、樹脂成分としてアルキル成分及び架橋性官能基を有する変性アクリル系樹脂(A)、前記変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)、及び架橋剤(D)とを含む樹脂組成物の硬化物によって構成されていることが好ましい。本実施形態の剥離性フィルムにおいて、表面層を形成する主成分が樹脂成分であって、前記樹脂成分が、アルキル成分及び架橋性官能基を有する変性アクリル系樹脂(A)と、前記変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)と、架橋剤(D)とを含む場合、剥離力が軽いという良好な剥離性を有すると共に、耐熱性に優れる剥離性フィルムがより得られ易い。以下、変性アクリル系樹脂(A)、前記変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)、及び架橋剤(D)について詳述する。」 ・「【0034】 <変性アクリル系樹脂(A)> アルキル成分及び架橋性官能基を有する変性アクリル系樹脂(A)は、主鎖であるアクリル系樹脂に対してアルキル基を側鎖として有する樹脂である。変性アクリル系樹脂(A)は、少なくとも下記一般式(I)で表される構成単位(後述の単量体aにより形成される)を含んでいる。 【0035】 【化2】 [図:0001404818000010.jpg] 【0036】 一般式(I)において、R1は、メチル基又は水素原子を示し、R2は、炭素数10~18のアルキル基を示す。 【0037】 一般式(I)において、アルキル基R2の炭素数は10~18である。炭素数が9未満になると一般的に変性アクリル系樹脂(A)に離形性を発現させることが難しい。また、炭素数が18を超えると結晶性が高くなること等により剥離力が高くなり過ぎて、剥離性フィルムとしての剥離性能が劣る。変性アクリル系樹脂(A)が炭素数10~18の長鎖アルキル基を有することにより、剥離性能は優れたものとなる。なお、剥離性能を良好にするために、一般式(I)のR2は直鎖のアルキル基であることが好ましい。また、R2の炭素数は、12~18が好ましく、12~14がより好ましい。R2は、炭素数12~18の直鎖アルキル基がさらに一層好ましく、炭素数12~14の直鎖アルキル基が特に好ましい。 【0038】 変性アクリル系樹脂(A)において、架橋性官能基(反応性官能基)としては、例えば、カルボキシル基、イソシアノ基、エポキシ基、N-メチロール基、N-アルコキシメチル基、ヒドロキシ基、アミノ基、チオール基、加水分解性シリル基等が挙げられる。架橋性官能基の数は、1つであってもよいし、2以上であってもよい。また、架橋性官能基は、1種単独で含有されていてもよく、2種以上が含有されていてもよい。 【0039】 変性アクリル系樹脂(A)は、少なくとも、単量体として、前記一般式(I)で表される構成単位を形成する単量体a(1分子中に、炭素-炭素不飽和二重結合と、炭素数10~18のアルキル基を有するアクリル系単量体)を重合させることにより得られる重合体である。変性アクリル系樹脂(A)は、単量体aとともに、さらに、後述の単量体b(1分子中に、炭素-炭素不飽和二重結合と架橋性官能基を有する単量体)、単量体c(1分子中に、炭素-炭素不飽和二重結合と炭素数1~9または19以上のアルキル基を有するアクリル系単量体)、及び単量体d(単量体a,b,cとは異なる単量体であって、単量体a,b,cのうち少なくとも1種と共重合可能な単量体)からなる群より選択された少なくとも1種の単量体を共重合させて得られる共重合体であってもよい。特に、少なくとも単量体a及び単量体bを共重合させて得られる共重合体は、変性アクリル系樹脂(A)として好ましい。 【0040】 [単量体a] 単量体aとしては、エステル部分が炭素数10~18の長鎖アルキル基である(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。具体的には、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート(ラウリル(メタ)アクリレートともいう)、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート(ミリスチル(メタ)アクリレートともいう)、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート(パルミチル(メタ)アクリレートともいう)、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。 【0041】 変性アクリル系樹脂(A)における単量体aから導かれる構成単位の含有割合は、剥離力を軽くし、さらに耐熱性を向上させる観点から、変性アクリル系樹脂(A)に含まれる構成単位の合計を100質量部として、好ましくは50~99.99質量部程度、より好ましくは70~99.9質量部程度、さらに好ましくは85~99.8質量部程度、さらに好ましくは85~99.5質量部である。単量体aは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。 【0042】 [単量体b] ・・・ 【0057】 [単量体c] ・・・ 【0063】 [単量体d] ・・・ 」 ・「【0081】 <樹脂(B)> 表面層を形成する樹脂成分は、変性アクリル系樹脂(A)とともに、変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)を含んでいることが好ましい。 【0082】 表面層に当該樹脂(B)を含有することにより、変性アクリル系樹脂(A)との相溶性の違いを利用して、変性アクリル系樹脂(A)のアルキル基を表面に偏析させやすく、結果として剥離力を軽くし、さらに耐熱性を向上させる。 【0083】 樹脂(B)としては、特に限定されないが、好ましくはポリエステル樹脂及びアクリル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。なかでも、樹脂(B)としてポリエステル樹脂がより好ましい。また、ポリエステル樹脂及びアクリル樹脂としては、ポリエステル樹脂及びアクリル樹脂として知られている公知のものの中から適宜選択して用いることができる。例えば、ポリエステル樹脂として、(i)多価アルコールと多塩基酸との縮合反応によって得られる樹脂であって、二塩基酸と二価アルコールとの縮合物又は不乾性油脂肪酸等で変性したものである不転化性ポリエステル樹脂、(ii)二塩基酸と三価以上のアルコールとの縮合物である転化性ポリエステル樹脂などが挙げられる。本実施形態において、ポリエステル樹脂(B)は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。 ・・・ 【0087】 また、アクリル樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。(メタ)アクリル樹脂として、より具体的には、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。アクリル樹脂は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。 【0088】 変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)は、後述する架橋剤(D)と反応するために、反応性官能基を有することが好ましい。特に、当該反応性官能基としては、カルボキシル基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれた少なくとも一種であることが好ましい。樹脂(B)がヒドロキシ基を有する場合、その樹脂(B)の水酸基価は、5~500mgKOH/gであることが好ましく、10~300mgKOH/gであることがより好ましく、10~100mgKOH/gであることがさらに好ましく、10~40mgKOH/gが特に好ましい。樹脂(B)の水酸基価が前記各好ましい範囲内である場合、後述の架橋剤(D)による架橋網目構造の密度が適度になるため剥離力がより軽くなる。特に、樹脂(B)が、水酸基価が前記各好ましい範囲内のポリエステル樹脂である場合、上記傾向が強いものとなる。」 ・「【0091】 表面層中の樹脂(B)の含有量は限定的ではないが、剥離力を軽くし、さらに耐熱性を向上させる観点から、表面層を構成する樹脂(A)と樹脂(B)の合計を100質量部として、2質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることがさらに好ましく、20質量部以上であることがさらに一層好ましく、30質量部以上であることが特に好ましく、40質量部以上であることが特段好ましい。また、同様の観点から、表面層を構成する樹脂(A)と樹脂(B)の合計を100質量部として、50質量部未満が好ましく、48質量部以下がより好ましく、45質量部以下であることがさらに好ましい。ここで、前記樹脂(B)の含有量が、樹脂(A)と樹脂(B)の合計を100質量部として50質量部未満であるということは、前記樹脂(B)の質量部をMA、と前記樹脂(B)の質量部をMBとした場合において、1<MA/MBであることと同義である。また、同様に、前記樹脂(B)の含有量が48質量部以下であることは1.083≦MA/MBであること、45質量部以下であることは1.222≦MA/MBであること、3質量部以上であることはMA/MB≦32.333であることと、それぞれ同義である。前記樹脂(B)の含有量が、樹脂(A)と樹脂(B)の合計を100質量部として50質量部未満である場合、剥離力を軽くし、さらに耐熱性を向上させることができるとともに、加熱後と加熱前の剥離力の差が非常に少なく、残留接着率にも優れている。 【0092】 <架橋剤(D)> 表面層を形成する樹脂成分は、変性アクリル系樹脂(A)及び樹脂(B)とともに、架橋剤(D)を含んでいることが好ましい。架橋剤(D)は、変性アクリル系樹脂(A)同士、樹脂(B)同士、または変性アクリル系樹脂(A)と樹脂(B)とを架橋する機能を有する。架橋剤(D)は、一種又は二種以上を組み合わせて使用することができる。 ・・・ 【0110】 表面層において、架橋剤(D)の含有量は、剥離力を軽くし、さらに耐熱性を向上させる観点から、変性アクリル系樹脂(A)及び変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)の合計100質量部に対して、3質量部以上であることが好ましく、4質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることがさらに好ましい。また、同様の観点から、変性アクリル系樹脂(A)及び変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)の合計100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることがさらに好ましい。」 ・「【実施例】 【0135】 以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特記しない限り、部及び%はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。 【0136】 〔測定方法及び評価方法〕 実施例及び比較例における、各種測定方法及び評価方法は、次のとおりである。 【0137】 〔表面層の厚み〕 試料を切り出し後、試料表面にOsコーティングを施し、樹脂包埋した。次にダイヤモンドナイフ装着のウルトラミクロトームでトリミング・面出し及び超薄切片作製後、透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行なった。 切片作成装置:ウルトラミクロトーム(ライカ株式会社製LEICA EM UC7) ナイフ;DIATOME社製ULTRADRY 観察装置:TEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ製HT7700型) 加速電圧:100kV 写真倍率:×300,000倍 【0138】 〔基材層及び剥離性フィルムの厚み〕 剥離性フィルム及び基材層の厚みは、マイクロメーター(JIS B-7502)を用いて、JIS C-2151に準拠して測定した。 【0139】 〔X線電子分光(XPS)分析〕 Arイオンスパッタリングによって表面層を最表面側から削りながらXPS分析を実施し、剥離性フィルムの表面層から基材層に向けて垂直に深さ5nmの位置に存在する全元素含有量に対する、当該位置に存在する炭素の含有量の比Mc5(atomic%)を下記の条件で測定した。 測定器:X線電子分光(XPS)測定器 ESCA LAB250(Thermo VG scientific社製) 測定モード:モノクロメータ、X線源:Al、測定面積:500μmφ 測定元素:炭素(C) スパッタリングの条件は以下の通りで実施した。 照射イオン:アルゴン(Ar)、電流値:2.5(μA)、電圧:120(V)、スパッタレート:0.1(nm/sec) 【0140】 〔XPS深さ方向分析〕 Arイオンスパッタリングによって表面層を最表面側から削りながらXPS分析を実施し、表面層中の最表面から基材層に向けて垂直に深さ40nmの位置に存在する全元素含有量に対する炭素の含有量比MC40(atomic%)を測定した。XPSの測定条件は、上記MC5の測定条件のときと同様である。 【0141】 〔T字ピール剥離力〕 剥離性フィルムの表面層側のフィルム表面に幅50mm×長さ200mmのポリエステル粘着テープ(日東電工株式会社製NO.31Bテープ、アクリル系粘着剤)を、2kgのローラーを2往復させることにより貼付し、処理前貼付品を得た。 次いで、当該貼付品に対して、5KPaの荷重となるように錘を載せ、70℃で湿度50%の環境下で、20時間静置した。 次に、室温の環境下で、得られた各処理後貼付品を25mm幅に切り出した試料を各測定試料とし、剥離試験機(ミネベア株式会社製 万能引張試験機 テクノグラフTGI-1kN)を用いて、1000mm/分の速度でT字ピール剥離試験を行い、その際の剥離力を計測した。測定は、それぞれ3回行い、その平均値を各剥離性フィルムのT字ピール剥離力(加熱前T字ピール剥離力)とした。結果を表1に示す。 【0142】 〔加熱後T字ピール剥離力(耐熱性評価)〕 剥離性フィルムの表面層側のフィルム表面に幅50mm×長さ200mmのポリエステル粘着テープ(日東電工株式会社製NO.31Bテープ、アクリル系粘着剤)を、2kgのローラーを2往復させることにより貼付し、処理前貼付品を得た。 次いで、当該貼付品に対して160℃で90秒間の加熱処理をした。なお、当該加熱処理においては、熱風乾燥機を使用した。ここで、160℃で90秒間の加熱処理とは、160℃に設定された熱風乾燥機中に当該貼付品を載置したことを意味する。 次いで、当該貼付品に対して、5KPaの荷重となるように錘を載せ、70℃で湿度50%の環境下で、20時間静置した。次に、前記の〔T字ピール剥離力〕におけるT字ピール剥離力の測定方法及び算出方法と同様の方法により、加熱後T字ピール剥離力を得た。結果を表1に示す。 【0143】 〔残留接着率評価〕 前記の〔T字ピール剥離力〕において、各剥離性フィルムの表面層側のT字ピール剥離力を測定した際に使用したポリエステル粘着テープ(前記測定の際に剥離した後のポリエステル粘着テープ)を、それぞれ、ステンレス鋼板(SUS板)上に2kgのローラーを2往復させることにより貼付した。次に、前記貼付して得られたステンレス鋼板を有する貼付品に対して、1000mm/分の速度でT字ピール剥離試験を行い、その際の剥離力(X)を計測した。 一方、前記の〔T字ピール剥離力〕において、剥離性フィルムの表面層側のフィルム表面の代わりに、テフロン(登録商標)シート(中興化成工業株式会社製 スカイブドテープMSF-100 厚み100μm)の表面にポリエステル粘着テープを貼付したこと以外は、同様にして、T字ピール剥離試験を行い、さらに当該剥離試験によって剥離した後のポリエステル粘着テープを、ステンレス鋼板(SUS板)上に2kgのローラーを2往復させることにより貼付した。次に、前記貼付して得られたステンレス鋼板を有する貼付品に対して、1000mm/分の速度でT字ピール剥離試験を行い、その際の剥離力(Y)を計測した。 次いで、下記式によって残留接着率を求めた。残留接着率が小さいほど、剥離性フィルムの表面層の成分が、ポリエステル粘着テープに移行しやすいと評価される。残留接着率が100%である場合、テフロン(登録商標)シートの表面の成分がポリエステル粘着テープに移行しない程度と同程度に、剥離性フィルムの表面層の成分もポリエステル粘着テープに移行していないことを意味する。 結果を表1に示す。 残留接着率(%)=(X)/(Y)×100 残留接着率は、84%以上が好ましく、87%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、93%以上がよりさらに好ましく、97%以上が特に好ましい。残留接着率は100%であってよい。 【0144】 <実施例1> 攪拌機、窒素導入管、温度計及び冷却管を備えた1リットルのフラスコに、単量体aとしてラウリルアクリレート(LA)99質量部、単量体bとして2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)1質量部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2質量部、トルエン100質量部、酢酸エチル100質量部を添加した。次に、前記フラスコ内において、窒素気流下、80℃で2時間重合反応を行い、さらにアゾビスイソブチロニトリル0.2質量部を加えた上で2時間重合を行い、変性アクリル系樹脂(A)含有溶液(固形分30質量%)を得た。得られた変性アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量は10.5×104であった。 また、変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)としてポリエステル樹脂α(バイロン(登録商標)M802(東洋紡績社製、数平均分子量(Mn):3×103、水酸基価:37mgKOH/g 固形分70質量%、 Tg=60℃)、メラミン架橋剤(D)として構成単位あたり3つ結合しているアミノ基の置換基R(即ち6つのアミノ基の置換基R)の全てが、メトキシメチル基又はメチロール基のいずれかであり、且つ、前記置換基Rの1つ以上がメチロール基であるメラミン化合物であるニカラック(登録商標)MS-11(日本カーバイド工業株式会社製、平均1.8量体 60質量%)、酸触媒(E)としてドライヤー900(日立化成株式会社製 pトルエンスルホン酸50質量%)を、それぞれ用意した。 次に、変性アクリル系樹脂(A)含有溶液、変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)、及びメラミン架橋剤(D)を、トルエン:メチルエチルケトン(MEK)=30:70(質量比)の混合溶媒に混合し攪拌した後、さらに酸触媒(E)を混合し攪拌した。ここで、前記変性アクリル系樹脂(A)含有溶液、変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)、メラミン架橋剤(D)、及び酸触媒(E)について、それぞれ固形分換算で、前記変性アクリル系樹脂(A)56質量部、前記ポリエステル樹脂44質量部、前記メラミン架橋剤6質量部、前記酸触媒(E)1.2質量部となるように混合し攪拌した。これにより、固形分濃度4.4質量%、酸触媒濃度0.05質量%の塗工液1を得た。 次に、基材層として、厚さ38μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(二軸延伸PETフィルム、東洋紡株式会社製「E5100」)を用意した。 次いで、マイヤーバー(株式会社安田精機製作所製シャフト直径:6.35mmφ、ROD No.4)を用いて、当該基材層の上に前記塗工液1を塗工し、防爆型乾燥機中150℃で60秒間乾燥させた。これにより、基材層及び表面層(表面層の厚み:0.2μm)を有する実施例1の剥離性フィルムを得た。 【0145】 <実施例2> 前記変性アクリル系樹脂(A)含有溶液、樹脂(B)、メラミン架橋剤(D)、及び酸触媒(E)について、それぞれ固形分換算で、前記変性アクリル系樹脂(A)75質量部、前記ポリエステル樹脂(B)25質量部、前記メラミン架橋剤(D)6質量部、前記酸触媒(E)1.1質量部となるように混合し攪拌して塗工液2(固形分濃度4.4質量%、酸触媒濃度0.05質量%)を得た。その他の操作については、実施例1と同様の操作を行うことにより、実施例2の剥離性フィルムを得た。 【0146】 <実施例3> 前記変性アクリル系樹脂(A)含有溶液、樹脂(B)、メラミン架橋剤(D)、及び酸触媒(E)について、それぞれ固形分換算で、前記変性アクリル系樹脂(A)95質量部、前記ポリエステル樹脂(B)5質量部、前記メラミン架橋剤(D)6質量部、前記酸触媒(E)1.2質量部となるように混合し攪拌して塗工液3(固形分濃度4.4質量%、酸触媒濃度0.05質量%)を得た。その他の操作については、実施例1と同様の操作を行うことにより、実施例3の剥離性フィルムを得た。 【0147】 <実施例4> 樹脂(B)としてポリエステル樹脂(バイロン(登録商標)M802)に代えて、アクリル樹脂(アクリディック(登録商標)WMG-521、DIC株式会社製、Tg=30℃、酸価:6.5mgKOH/g 固形分60質量%)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4の剥離性フィルムを得た。 【0148】 <比較例1> 前記変性アクリル系樹脂(A)含有溶液、樹脂(B)、メラミン架橋剤(D)、及び酸触媒(E)について、それぞれ固形分換算で、前記変性アクリル系樹脂(A)32質量部、前記ポリエステル樹脂(B)68質量部、前記メラミン架橋剤(D)6質量部、前記酸触媒(E)1.2質量部となるように混合し攪拌して塗工液4(固形分濃度4.4質量%、酸触媒濃度0.05質量%)を得た。その他の操作については、実施例1と同様の操作を行うことにより、比較例1の剥離性フィルムを得た。 【0149】 <比較例2> 前記変性アクリル系樹脂(A)含有溶液、樹脂(B)、メラミン架橋剤(D)、及び酸触媒(E)について、それぞれ固形分換算で、前記変性アクリル系樹脂(A)10質量部、前記ポリエステル樹脂(B)90質量部、前記メラミン架橋剤(D)6質量部、前記酸触媒(E)1.2質量部となるように混合し攪拌して塗工液5(固形分濃度4.4質量%、酸触媒濃度0.05質量%)を得た。その他の操作については、実施例1と同様の操作を行うことにより、比較例2の剥離性フィルムを得た。 【0150】 <比較例3> 前記変性アクリル系樹脂(A)含有溶液、樹脂(B)、メラミン架橋剤(D)、及び酸触媒(E)について、それぞれ固形分換算で、前記変性アクリル系樹脂(A)0質量部、前記ポリエステル樹脂(B)100質量部、前記メラミン架橋剤(D)6質量部、前記酸触媒(E)1.2質量部となるように混合し攪拌して塗工液6(固形分濃度4.4質量%、酸触媒濃度0.05質量%)を得た。その他の操作については、実施例1と同様の操作を行うことにより、比較例3の剥離性フィルムを得た。 【0151】 <比較例4> 前記変性アクリル系樹脂(A)含有溶液、樹脂(B)、メラミン架橋剤(D)、及び酸触媒(E)について、それぞれ固形分換算で、前記変性アクリル系樹脂(A)46質量部、前記ポリエステル樹脂(B)54質量部、前記メラミン架橋剤(D)6質量部、前記酸触媒(E)1.2質量部となるように混合し攪拌して塗工液7(固形分濃度4.4質量%、酸触媒濃度0.05質量%)を得た。その他の操作については、実施例1と同様の操作を行うことにより、比較例4の剥離性フィルムを得た。 【0152】 実施例1~4並びに比較例1~4で得たフィルムの、 (i) MC5/MC40(ここで、MC5は表面層中の最表面から基材層に向けて垂直に深さ5nmの位置に存在する全元素含有量に対する炭素の含有量の比率を示す。MC5は単に深さ5nmの炭素元素比ともいう。また、MC40は表面層中の最表面から基材層に向けて垂直に深さ40nmの位置に存在する全元素含有量に対する炭素の含有量の比率を示す。MC40は単に深さ40nmの炭素元素比ともいう。) (ii) MA/MB(ここで、MAは、表面層中に含まれる、上記構造式(I)で表される構成単位を含む変性アクリル系樹脂(A)の質量部であり、MBは表面層中に含まれるポリエステル樹脂(B)の質量部である。上記MA及びMBはいずれも固形分換算である。) (iii) T字ピール剥離力、 (iv) 耐熱性評価(加熱後T字ピール剥離力) (v) 剥離力差(加熱後T字ピール剥離力-加熱前T字ピール剥離力) (vi) 残留接着率、 の結果を表1に示す。なお、上記(v)剥離力差は、上記(iv)と上記(iii)との差で算出される。 【0153】 【表1】 [図:0001404818000011.jpg] 【0154】 実施例1~4の剥離性フィルムは、上記の通り、(加熱前の)T字ピール剥離力が低く、且つ、加熱後のT字ピール剥離力が低い。さらには、実施例1~4の剥離性フィルムは、加熱後と加熱前の剥離力の差が非常に少なく、残留接着率にも優れていることがわかった。そのため、実施例1~4を包含する本実施形態に係るフィルムは、特に、電子部品若しくは電子基板の製造工程、又は繊維強化プラスチック等の熱硬化性樹脂部材の製造工程等に使用される剥離フィルム等として好適に使用できる。」 (3) 判断 本件特許の発明の詳細な説明には、本件発明1~5について、基材層、表面層を形成するアルキル成分及び架橋性官能基を有する変性アクリル系樹脂(A)、変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)、架橋剤(D)について、発明の詳細な説明の【0017】~【0110】において詳細に記載されており、「前記表面層中の最表面から基材層に向けて垂直に深さ5nmの位置に存在する全元素含有量に対する炭素の含有量比MC5(atomic%)が98以上であ」ることの技術的意義と調整方法が段落【0025】に記載され、「前記MC5と、前記表面層中の最表面から基材層に向けて垂直に深さ40nmの位置に存在する全元素含有量に対する炭素の含有量比MC40(atomic%)との比率MC5/MC40が、1.01≦MC5/MC40≦1.10である」ことの技術的意義と調整方法が、段落【0026】~【0029】に記載され、その測定方法は、段落【0138】~【0140】に記載されている。 そして、本件特許の発明の詳細な説明には、本件発明の実施例である実施例1~4について、その製造方法を含め具体的に記載されている(【0135】~【0153】の【表1】)。 したがって、本件発明1~5について、発明の詳細な説明に、当業者が、明細書の記載並びに本件出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産でき、かつ、使用できる程度の記載があるといえる。 よって、本件発明1~5に関して、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件に適合する。 (4) 申立人Aの主張について 申立人Aの上記第3(1)ウ(ア)及び(イ)主張について検討すると、上記(3)に示したように、実施例のものに加え、剥離性フィルムに含まれる材料の選定例及び含有量、さらに調整方法、測定方法が記載されているから、申立人Aの主張はいずれも採用できない。 (5)まとめ 以上のとおりであるから、申立人Aの申立理由1-3はその理由がない。 3 申立理由1-4(サポート要件)について (1) サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 そこで、検討する。 (2) 特許請求の範囲の記載 本件特許の特許請求の範囲の記載は、上記第2のとおりである。 (3) 発明の詳細な説明の記載 本件特許の発明の詳細な説明には、上記2(2)のとおりの記載がある。 (4) 判断 上記2(2)に摘記した、本件特許の発明の詳細な説明の【0002】~【0007】によると、本件発明1~5が解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は「シリコーン使用量を極力抑えたり、またはシリコーンを使わないことが検討されてきた」ことを前提に、「剥離力が軽いという良好な剥離性を有すると共に、耐熱性に優れる剥離性フィルムを提供すること」である。 そして、本件特許の発明の詳細な説明の【0008】には、「前記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、基材層上に表面層を有する剥離性フィルムであって、前記表面層中の最表面から基材層に向けて垂直に深さ5nmの位置に存在する全元素含有量に対する炭素の含有量比MC5(atomic%)が98以上である、剥離性フィルムは、良好な剥離性を有する(即ち剥離力が軽い)とともに、耐熱性に優れることを見出した。」と記載され、【0025】には「表面層中の最表面から基材層に向けて垂直に深さ5nmの位置に存在する全元素含有量に対する炭素の含有量比MC5(atomic%)が98以上である」ことの技術的意義が記載されている。 さらに、本件特許の発明の詳細な説明の【0135】~【0154】には、「基材層上に表面層を有する剥離性フィルムであって、表面層を形成する主成分が樹脂成分であり、前記樹脂成分は、アルキル成分及び架橋性官能基を有する変性アクリル系樹脂(A)と、前記変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)と、架橋剤(D)とを含み、 前記変性アクリル系樹脂(A)は、少なくとも、下記一般式(I): 【化1】 [図:0001404818000012.jpg] (前記一般式(I)において、R1は、メチル基又は水素原子を示し、R2は、炭素数10~18のアルキル基を示す。)で表される構成単位を含み、前記樹脂(B)は、ポリエステル樹脂kubo及びアクリル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種であ」る剥離性フィルムにおいて、実施例1~4の「前記表面層中の最表面から基材層に向けて垂直に深さ5nmの位置に存在する全元素含有量に対する炭素の含有量比MC5(atomic%)が98以上であ」ること、及び比較例1~4が「前記表面層中の最表面から基材層に向けて垂直に深さ5nmの位置に存在する全元素含有量に対する炭素の含有量比MC5(atomic%)が98以上であり」との条件を満足しないことが記載されているとともに(【0153】の【表1】)、実施例1~4の「T字ピール剥離力」は比較例のそれと比較して小さく、耐熱評価においても優れていて、上記発明の課題を解決するのに対し、比較例1~4は実施例に比べて劣っており、上記発明の課題を解決しないことを確認する記載もある。 そうすると、当業者は、「基材層上に表面層を有する剥離性フィルムであって、表面層を形成する主成分が樹脂成分であり、前記樹脂成分は、アルキル成分及び架橋性官能基を有する変性アクリル系樹脂(A)と、前記変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)と、架橋剤(D)とを含み、 前記変性アクリル系樹脂(A)は、少なくとも、下記一般式(I): 【化1】 [図:0001404818000013.jpg] (前記一般式(I)において、R1は、メチル基又は水素原子を示し、R2は、炭素数10~18のアルキル基を示す。)で表される構成単位を含み、前記樹脂(B)は、ポリエステル樹脂及びアクリル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種であ」る剥離性フィルムにおいて、「前記表面層中の最表面から基材層に向けて垂直に深さ5nmの位置に存在する全元素含有量に対する炭素の含有量比MC5(atomic%)が98以上であ」ることを充足することにより、発明の課題を解決できると認識でき、本件発明1~5は、当該事項を満足する剥離性フィルムについて、さらに限定したものである。 したがって、本件発明1~5は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件発明1~5に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。 (5) 申立人Aの主張について 申立人Aの上記第3(1)ウ(ア)及び(イ)の主張について検討すると、上記(4)で述べたとおり、本件特許の特許請求の範囲の記載は、サポート要件適合するから、申立人Aの主張はいずれも採用できない。 (6) まとめ 以上のとおりであるから、申立人Aの申立理由1-4はその理由がない。 4 申立理由2-1(請求項1~4に対する甲2-1を主たる引用例とする新規性・進歩性)について (1) 甲2-1の記載 甲2-1には、以下の記載がある。 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかしながら、特許文献1、2に記載されたフィルムは、マット調には優れるものの、離型面の耐熱性が不十分なため、加熱プレス後に塗膜層の転写や粒子の移行が発生し、回路作製工程での工程安定性を保つことが難しい。 【0006】 本発明の課題は上記した従来技術の問題点を解消することにある。すなわち、光沢度が低いマット調外観を示し、耐熱性に優れた塗膜層を有することで、マット調が必要な回路用工程フィルム用途に用いられる耐熱離型フィルムに適した二軸配向ポリエステルフィルムを提供することにある。」 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 無機粒子および/または有機粒子を、ポリエステルA層全体を100質量%として0.1質量%以上10質量%以下含有するポリエステルA層を最外層に有する基材フィルムのA層にメラミン樹脂を主成分とする塗膜層が積層されてなり、該塗膜層が積層された面の光沢度が30以下である離型用二軸配向ポリエステルフィルム。」 「【0025】 本発明に用いられる塗膜層は、熱プレス時の耐熱性と強度を高める観点から、メラミン樹脂を主成分とすることが好ましい。ここで、メラミン樹脂を主成分とするとは、離型層の樹脂成分のうち、40質量%以上がメラミン樹脂であることを示す。メラミン樹脂を40質量%より多く含むことにより、加熱時にバインダー樹脂との架橋反応、およびメラミン樹脂の自己縮合が進行し、塗膜層の耐熱性が大幅に向上する。メラミン樹脂の濃度が40質量%以下の場合には、架橋反応が不十分となり、塗膜層の耐熱性が不十分となる場合や、強度が低下し、プレス時に粒子が塗膜層を突き抜け剥離が困難になる場合がある。メラミン樹脂の濃度について、好ましくは、60質量%以上90質量%以下である。」 「【0027】 本発明に用いられる塗膜層は、バインダー樹脂を含むと、基材フィルムとの密着性が向上し、また、剥離させる対象物との剥離力を調整でき、或いは成形同時転写における成形時の延伸追従性を良好とすることができるため好ましい。バインダー樹脂の具体例としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニル、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、セルロース類、でんぷん類等が挙げられるが、延伸追従性、離型時の剥離力、および剥離安定性の観点からアクリル樹脂が最も好ましく用いられる。」 「【0029】 また、本発明に用いられる塗膜層は、目的とする耐熱性、成形延伸追従性を損なわない範囲で、離型剤を含有することが好ましい。離型剤を塗膜層の表面に均一に分散させると、塗膜層上に積層、剥離する剥離層との密着性、剥離性を適度な範囲とすることができる。離型剤としては、例えば、フッ素化合物、長鎖アルキル化合物およびワックスなどが挙げられる。これらの離型剤は単独で用いてもよいし、複数種使用してもよい。」 「【0031】 長鎖アルキル化合物とは、炭素数が6以上、特に好ましくは8以上の直鎖または分岐のアルキル基を有する化合物のことである。具体例としては、特に限定されるものではないが、長鎖アルキル基含有ポリビニル樹脂、長鎖アルキル基含有アクリル樹脂、長鎖アルキル基含有ポリエステル樹脂、長鎖アルキル基含有アミン化合物、長鎖アルキル基含有エーテル化合物、長鎖アルキル基含有四級アンモニウム塩等が挙げられる。長鎖アルキル化合物は高分子化合物であると、剥離時に貼り合わせている相手方基材表面への塗膜層由来の成分が転着することを抑制できるため好ましい。」 「【0086】 ・・・ ・架橋剤I:メチル化メラミン/尿素共重合の架橋性樹脂(((株)三和ケミカル製”ニカラック”(登録商標)「MW12LF」) ・・・ ・離型剤III:ガラス製反応容器中に、パーフルオロアルキル基含有アクリレートであるCF3(CF2)nCH2CH2OCOCH=CH2(n=5~11、nの平均=9)80.0g、アセトアセトキシエチルメタクリレート20.0g、ドデシルメルカプタン0.8g、脱酸素した純水354.7g、アセトン40.0g、C16H33N(CH3)3Cl1.0gおよびC8H17C6H4O(CH2CH2O)nH(n=8)3.0gを入れ、アゾビスイソブチルアミジン二塩酸塩0.5gを加え、窒素雰囲気下で攪拌しつつ60℃で10時間共重合反応させて得られた共重合体エマルション。 ・・・ 」 「【0087】 (実施例1) 組成を表の通りとして、原料をそれぞれ酸素濃度0.2体積%とした別々の単軸押出機に供給し、A層押出機シリンダー温度を270℃、B層押出機シリンダー温度を270℃で溶融し、A層とB層合流後の短管温度を275℃、口金温度を280℃に設定し、樹脂温度280℃で、Tダイより25℃に温度制御した冷却ドラム上にシート状に吐出した。その際、直径0.1mmのワイヤー状電極を使用して静電印加し、冷却ドラムに密着させ未延伸シートを得た。次いで、長手方向への延伸前に加熱ロールにてフィルム温度を上昇させ、延伸温度85℃で長手方向に3.1倍延伸し、すぐに40℃に温度制御した金属ロールで冷却化した。その後、コロナ放電処理を施し、表の組成で調整した塗膜層形成用溶液(水分散体)をメタリングバーを用いてウェット厚みが13.5μmとなるように塗布し、次いでテンター式横延伸機にて延伸前半温度100℃、延伸中盤温度130℃、延伸後半温度150℃で幅方向に3.4倍延伸し、そのままテンター内にて230℃で熱処理を行い、徐冷温度170℃で、幅方向に5%のリラックスを掛けながら熱処理を行い、フィルム厚み50μm(積層比は表の通り)、塗膜層厚み0.038μmのA層/B層/A層の3層構成の二軸配向ポリエステルフィルムを得た。 ・・・ 【0110】 (実施例25) 塗膜組成を表の通りに変更した以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み50μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。 」 「 【表4】 [図:0001404818000014.jpg] 」 (2) 甲2-1に記載された発明 離型剤IIIを用いている唯一の実施例25に着目すると、甲2-1には、実施例25として記載されている以下の発明(以下、「甲2-1発明」という。)が記載されていると認める。 <甲2-1発明> 「塗膜層として架橋剤I(メチル化メラミン/尿素共重合の架橋製樹脂((株)三和ケミカル製“ニカラック” (登録商標)「MW12LF」))を70質量%、バインダー樹脂としてバインダーI(アクリルモノマー共重合体(日本カーバイド製))を13質量%、離型剤として離型剤III(ガラス製反応容器中に、パーフルオロアルキル基含有アクリレートであるCF3(CF2)nCH2CH2OCOCH=CH2(n=5~11、nの平均=9)80.0g、アセトアセトキシエチルメタクリレート20.0g、ドデシルメルカプタン0.8g、脱酸素した純水354.7g、アセトン40.0g、C16H33N(CH3)3Cl1.0gおよびC8H17C6H4O(CH2CH2O)nH(n=8)3.0gを入れ、アゾビスイソブチルアミジン二塩酸塩0.5gを加え、窒素雰囲気下で攪拌しつつ60℃で10時間共重合反応させて得られた共重合体エマルション)を17質量%である塗膜層の原料、基材フィルムの原料として、ポリエステルBを100質量%、表層に含有粒子として平均粒径5.5μmの粒子を4.5質量%を含有させ、原料をそれぞれ酸素濃度0.2体積%とした別々の単軸押出機に供給し、A層押出機シリンダー温度を270℃、B層押出機シリンダー温度を270℃で溶融し、A層とB層合流後の短管温度を275℃、金温度を280℃に設定し、樹脂温度280℃で、Tダイより25℃に温度制御した冷却ドラム上にシート状に吐出し、その際、直径0.1mmのワイヤー状電極を使用して静電印加し、冷却ドラムに密着させ未延伸シートを得、次いで、長手方向への延伸前に加熱ロールにてフィルム温度を上昇させ、延伸温度85℃で長手方向に3.1倍延伸し、すぐに40℃に温度制御した金属ロールで冷却化し、その後、コロナ放電処理を施し、表の組成で調整した塗膜層形成用溶液(水分散体)をメタリングバーを用いてウェット厚みが13.5μmとなるように塗布し、次いでテンター式横延伸機にて延伸前半温度100℃、延伸中盤温度130℃、延伸後半温度150℃で幅方向に3.4倍延伸し、そのままテンター内にて230℃で熱処理を行い、徐冷温度170℃で、幅方向に5%のリラックスを掛けながら熱処理を行い、フィルム厚み50μm(積層比は表の通り)、塗膜層厚み0.038μmのA層/B層/A層の3層構成の二軸配向ポリエステルフィルム。」 (3) 本件発明1との対比・判断 甲2-1発明の「塗膜層」、「基材フィルム」、「二軸配向ポリエステルフィルム」は、それぞれ、本件発明1の「表面層」、「基材層」、「剥離性フィルム」に相当する。 甲2-1発明の塗膜層の70質量%を形成する架橋剤I(メチル化メラミン/尿素共重合の架橋製樹脂((株)三和ケミカル製“ニカラック” (登録商標)「MW12LF」))は、本件発明1の「架橋剤(D)」に相当し、樹脂ともいえるから、本件発明1の「表面層を形成する主成分が樹脂であり」を満たしている。 甲2-1発明の「離型剤として離型剤III(ガラス製反応容器中に、パーフルオロアルキル基含有アクリレートであるCF3(CF2)nCH2CH2OCOCH=CH2(n=5~11、nの平均=9)80.0g、アセトアセトキシエチルメタクリレート20.0g、ドデシルメルカプタン0.8g、脱酸素した純水354.7g、アセトン40.0g、C16H33N(CH3)3Cl1.0gおよびC8H17C6H4O(CH2CH2O)nH(n=8)3.0gを入れ、アゾビスイソブチルアミジン二塩酸塩0.5gを加え、窒素雰囲気下で攪拌しつつ60℃で10時間共重合反応させて得られた共重合体エマルション)」は、アルキル基をフルオロ化したアルキル基を有するアクリルモノマーであるパーフルオロアルキル基含有アクリレートと架橋性反応基を有するモノマーであるアセトアセトキシエチルメタクリレートを重合させたアクリル樹脂であるから、本件発明1の「「アルキル成分及び架橋性官能基を有する変性アクリル系樹脂(A)」であって「前記変性アクリル系樹脂(A)は、少なくとも、下記一般式(I): 【化1】 [図:0001404818000015.jpg] (前記一般式(I)において、R1は、メチル基又は水素原子を示し、R2は、炭素数10~18のアルキル基を示す。) で表される構成単位を含み」と、一般式(I)である構成単位を含んでいない点を除き、「アルキル成分及び架橋性官能基を有する変性アクリル系樹脂」の限りで相当する。 甲2-1発明の塗膜層のバインダー樹脂として利用されている「バインダーI(アクリルモノマー共重合体(日本カーバイド製))」は、本件発明1の「変性アクリル樹脂(A)とは異なる樹脂(B)」に相当し、本件発明1の「前記樹脂(B)は、ポリエステル樹脂及びアクリル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種であり」を満足している。 そうすると、本件発明1と甲2-1発明とは、 「基材層上に表面層を有する剥離性フィルムであって、 前記表面層を形成する主成分が樹脂成分であり、 前記樹脂成分は、アルキル成分及び架橋性官能基を有する変性アクリル系樹脂(A)と、前記変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)と、架橋剤(D)とを含み、 前記樹脂(B)は、ポリエステル樹脂及びアクリル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種である、 剥離性フィルム。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点2-1-1> 表面層に関し、本件発明1は、「前記変性アクリル系樹脂(A)は、少なくとも、下記一般式(I): 【化1】 [図:0001404818000016.jpg] (前記一般式(I)において、R1は、メチル基又は水素原子を示し、R2は、炭素数10~18のアルキル基を示す。) で表される構成単位を含み」と特定するのに対し、甲2-1発明は、離型剤IIIである点 <相違点2-1-2> 表面層に関し、本件発明1は、「前記表面層中の最表面から基材層に向けて垂直に深さ5nmの位置に存在する全元素含有量に対する炭素の含有量比MC5(atomic%)が98以上であり」と特定するのに対し、甲2-1発明は、この点について特定がなされていない点 <相違点2-1-3> 本件発明1は、「前記表面層中の前記樹脂(B)の含有量は、前記表面層を構成する前記変性アクリル系樹脂(A)と前記樹脂(B)の合計を100質量部として、2質量部以上45質量部以下である」と特定するのに対し、甲2-1発明は、上記相違点2-1-1の特定の構成単位を含む変性アクリル樹脂でなく、このような特定はない点 以下、相違点について検討する。 <相違点2-1-1>について まず、新規性について検討する。 甲2-1発明の離型剤IIIを形成している変性アクリル樹脂のアルキル成分は、フルオロアルキル基であって、本件発明1の下記一般式(I)で示される構成単位のアルキル成分である炭素数10~18のアルキル基とは異なるものである。 そうすると、<相違点2-1-1>は、実質的な相違点であるから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2-1発明でない。 ついで、進歩性について検討する。 甲2-1発明における離型剤IIIについて、離型を容易にするために、その構成成分であるアルキル基の水素をフッ素に置換したフルオロアルキル基を、アルキル基に変える動機はないから、<相違点2-1-1>は、当業者においても容易に想到し得たこととはいえない。 よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2-1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4) 本件発明2について 甲2-1発明の「塗膜層」、「基材フィルム」、「二軸配向ポリエステルフィルム」は、それぞれ、本件発明2の「表面層」、「基材層」、「剥離性フィルム」に相当する。 甲2-1発明の塗膜層の70質量%を形成する架橋剤I(メチル化メラミン/尿素共重合の架橋製樹脂((株)三和ケミカル製“ニカラック” (登録商標)「MW12LF」))は、本件発明2の「架橋剤(D)」に相当し、樹脂ともいえるから、本件発明2の「表面層を形成する主成分が樹脂であり」を満たしている。 甲2-1発明の「離型剤として離型剤III(ガラス製反応容器中に、パーフルオロアルキル基含有アクリレートであるCF3(CF2)nCH2CH2OCOCH=CH2(n=5~11、nの平均=9)80.0g、アセトアセトキシエチルメタクリレート20.0g、ドデシルメルカプタン0.8g、脱酸素した純水354.7g、アセトン40.0g、C16H33N(CH3)3Cl1.0gおよびC8H17C6H4O(CH2CH2O)nH(n=8)3.0gを入れ、アゾビスイソブチルアミジン二塩酸塩0.5gを加え、窒素雰囲気下で攪拌しつつ60℃で10時間共重合反応させて得られた共重合体エマルション)」は、アルキル基をフルオロ化したアルキル基を有するアクリルモノマーであるパーフルオロアルキル基含有アクリレートと架橋性反応基を有するモノマーであるアセトアセトキシエチルメタクリレートを重合させたアクリル樹脂であるから、本件発明2の「「アルキル成分及び架橋性官能基を有する変性アクリル系樹脂(A)」であって「前記変性アクリル系樹脂(A)は、少なくとも、下記一般式(I): 【化1】 [図:0001404818000017.jpg] (前記一般式(I)において、R1は、メチル基又は水素原子を示し、R2は、炭素数10~18のアルキル基を示す。)で表される構成単位を含み、」」と、一般式(I)である構成単位を含んでいない点を除き、「アルキル成分及び架橋性官能基を有する変性アクリル系樹脂」である限りで相当する。 甲2-1発明の塗膜層のバインダー樹脂としてバインダーI(アクリルモノマー共重合体(日本カーバイド製))は、本件発明2の「変性アクリル樹脂(A)とは異なる樹脂(B)」に相当し、本件発明2の「前記樹脂(B)は、ポリエステル樹脂及びアクリル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種であり」を満足している。 そうすると、本件発明2と甲2-1発明とは、 「基材層上に表面層を有する剥離性フィルムであって、 前記表面層を形成する主成分が樹脂成分であり、 前記樹脂成分は、アルキル成分及び架橋性官能基を有する変性アクリル系樹脂(A)と、前記変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)と、架橋剤(D)とを含み、 前記樹脂(B)は、ポリエステル樹脂及びアクリル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種である、 剥離性フィルム。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点2-1-4> 表面層に関し、本件発明2は、「前記変性アクリル系樹脂(A)は、少なくとも、下記一般式(I): 【化1】 [図:0001404818000018.jpg] (前記一般式(I)において、R1、メチル基又は水素原子を示し、R2は、炭素数10~18のアルキル基を示す。) で表される構成単位を含み」と特定するのに対し、甲2-1発明は、離型剤IIIである点 <相違点2-1-5> 表面層に関し、本件発明2は、「前記表面層中の最表面から基材層に向けて垂直に深さ5nmの位置に存在する全元素含有量に対する炭素の含有量比MC5(atomic%)が98以上であり」と特定するのに対し、甲2-1発明は、この点について特定がなされていない点 <相違点2-1-6> 本件発明2は、「前記ポリエステル樹脂の水酸基価が10~40mgKOH/gである」と特定するのに対し、甲2-1発明は、このような特定はない点 以下、相違点について検討する。 <相違点2-1-4>は、上記(3)における<相違点2-1-1>と同じであるから、上記<相違点2-1-1>と同様に判断される。 よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲2-1発明でないし、甲2-1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 (5) 本件発明3及び4について 本件発明3及び4は、本件発明2の発明特定事項を全て含み、さらに減縮するものであるから、上記(4)と同様に甲2-1発明でないし、甲2-1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 (6) まとめ 以上のとおりであるから、申立人Bの申立理由2-1はその理由がない。 5 申立理由2-2(請求項2に対する甲2-2を主たる引用例とする新規性・進歩性)について (1) 甲2-2の記載 甲2-2には、以下の記載がある。 「【0004】上記の長鎖アルキル系離型剤は、長鎖アルキル基を有するアクリル系共重合体を主剤とし、粘度や均質性を確保するため、通常、有機溶剤を使用した塗布液として調製されているが、耐溶剤性に問題がある。近年、粘着剤の材料系の変化により、剥離力に優れ且つ耐溶剤性に優れる離型剤の要求が高まっている。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の実情に鑑みなされたものであり、その目的は、作業性(塗工作業性)の問題がなく、耐溶剤性に優れ、しかも、粘着面に対する離型性能に優れ、離型剤としての本来の要求特性を十分に満足する長鎖アクリル系の離型剤および当該離型剤を使用した離型フィルムを提供することにある。」 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 以下の式(1)及び(2)で表される各繰り返し単位を含有する(メタ)アクリル系重合体と2個以上のイソシアネート基を有する脂肪族ポリイソシアネート化合物との反応生成物を有効成分とすることを特徴とする離型剤。 【化1】 [図:0001404818000019.jpg] 【請求項2】 式(2)におけるR4が水酸基を有するアルキル基である請求項1に記載の離型剤。 【請求項3】 基材フィルムの少なくとも一方の表面に請求項1又は2に記載の離型剤を含有する離型層を形成して成ることを特徴とする離型フィルム。」 「【0039】製造例1 窒素置換されたコンデンサー、窒素導入管、撹拌機および温度計付きのフラスコに、ステアリルメタクリレート33.5g(99mmol)、ヒドロキシエチルメタクリレート0.13g(1mmol)、トルエン35gを入れ、15分窒素バブリングした。これにアゾビスイソブチロニトリル657mg(4mmol)を加え、75℃で5時間重合した。得られた共重合体について、ポリスチレン標準で校正したサイズ排除クロマトグラフィーで測定したところ、数平均分子量は20800、分子量分布は3.10であった。重合終了後、アセトン500mlに再沈し、30gの共重合体を得た。」 「【0041】実施例1 製造例1で得た重合体1g、3官能イソシアネート「NY710A」11mg、ジブチル錫ジオクトエート10mgをトルエン49gに溶解し、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム(株)製「ダイアホイルT100-38」)にバーコーターNo.7で塗布した。これを熱風循環式乾燥機で120℃で2分間加熱して硬化被膜を形成させることにより、離型フィルムを作成した。評価結果を表1に示す。」 (2) 甲2-2に記載された発明 甲2の実施例1に着目すると、甲2-2には、以下の発明(以下、「甲2-2発明」という。)が記載されていると認める。 <甲2-2発明> 「窒素置換されたコンデンサー、窒素導入管、撹拌機および温度計付きのフラスコに、ステアリルメタクリレート33.5g(99mmol)、ヒドロキシエチルメタクリレート0.13g(1mmol)、トルエン35gを入れ、15分窒素バブリングし、これにアゾビスイソブチロニトリル657mg(4mmol)を加え、75℃で5時間重合して得られた共重合体1g、3官能イソシアネート「NY710A」11mg、ジブチル錫ジオクトエート10mgをトルエン49gに溶解し、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム(株)製「ダイアホイルT100-38」)にバーコーターNo.7で塗布し、これを熱風循環式乾燥機で120℃で2分間加熱して硬化被膜を形成させることにより得られた離型フィルム。」 (3) 本件発明2との対比・判断 甲2-2発明の「硬化皮膜」、「ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム(株)製「ダイアホイルT100-38」)」、「離型フィルム」は、それぞれ、本件発明2の「表面層」、「基材層」、「剥離性フィルム」に相当する。 甲2-2発明の「ステアリルメタクリレート」は、本件発明2における「下記一般式(I): 【化2】 [図:0001404818000020.jpg] (前記一般式(I)において、R1は、メチル基又は水素原子を示し、R2は、炭素数10~18のアルキル基を示す。)で表される構成単位」に相当し、「ヒドロキシエチルメタクリレート」は、架橋性反応基を有するモノマー成分であって本件特許の詳細な説明に記載されている「単量体b」に相当しているから、甲2-2発明においての「得られた共重合体」は、本件発明2の「アルキル成分及び架橋性官能基を有する変性アクリル系樹脂(A)」であって、「前記変性アクリル系樹脂(A)は、少なくとも、下記一般式(I): 【化2】 [図:0001404818000021.jpg] (前記一般式(I)において、R1は、メチル基又は水素原子を示し、R2は、炭素数10~18のアルキル基を示す。)で表される構成単位を含」むものといえる。 甲2-2発明における「ジブチル錫ジオクトエート」は、当業者の技術常識から、本件発明2の「架橋剤(D)」に相当する。 甲2-2発明における硬化皮膜(表面層)は、「共重合体」が主な成分であるから、本件発明2の「表面層を形成する主成分が樹脂であり」を満たしている。 そうすると、本件発明2と甲2-2発明とは、 「基材層上に表面層を有する剥離性フィルムであって、 前記表面層を形成する主成分が樹脂成分であり、 前記樹脂成分は、アルキル成分及び架橋性官能基を有する変性アクリル系樹脂(A)と、架橋剤(D)とを含み、前記変性アクリル系樹脂(A)は、少なくとも、下記一般式(I): 【化2】 [図:0001404818000022.jpg] (前記一般式(I)において、R1は、メチル基又は水素原子を示し、R2は、炭素数10~18のアルキル基を示す。)で表される構成単位を含む 剥離性フィルム。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点2-2-1> 表面層に関し、本件発明2は、「前記表面層中の最表面から基材層に向けて垂直に深さ5nmの位置に存在する全元素含有量に対する炭素の含有量比MC5(atomic%)が98以上であり」と特定するのに対し、甲2-2発明は、この点について特定がなされていない点 <相違点2-2-2> 樹脂成分に関し、本件発明2は、「前記変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)」を含み、「前記樹脂(B)は、ポリエステル樹脂及びアクリル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種であ」り、「前記ポリエステル樹脂の水酸基価が10~40mgKOH/gである」と特定するのに対し、甲2-2発明は、このような樹脂を含まない点 事案に鑑み、<相違点2-2-2>から検討する。 まず、新規性から検討する。 <相違点2-2-2>は実質的な相違点であるから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲2-2発明でない。 ついで、進歩性について検討する。 <相違点2-2-1>について 甲2-2発明において、「前記表面層中の最表面から基材層に向けて垂直に深さ5nmの位置に存在する全元素含有量に対する炭素の含有量比MC5(atomic%)」についての記載はなく、申立人Bの提示した証拠にも、甲2-2発明におけるMC5の値がどの程度かを示すものはないし、「前記表面層中の最表面から基材層に向けて垂直に深さ5nmの位置に存在する全元素含有量に対する炭素の含有量比MC5(atomic%)」についての記載されている証拠もない。申立人Bは、甲2-2発明の硬化皮膜(表面層)の樹脂成分が本件発明2の樹脂成分と同じであることから、甲2-2発明は相違点2-2-1を満たす旨主張するが、上記相違点2-2-2で検討したとおり、甲2-2発明の硬化皮膜(表面層)における樹脂成分には「前記変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)」が含まれていない点で異なるから、当該主張は採用できない。 そうすると、甲2-2発明において、相違点2-2-1に係る発明特定事項を採用することは、当業者においても容易でない。 よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲2-2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4) まとめ 以上のとおりであるから、申立人Bの申立理由2-2はその理由がない。 6 申立理由2-3及び申立理由2-4(請求項5に対しての実施可能要件、サポート要件)について (1) 当審の判断 上記2及び3で検討のとおり、本件発明5は、実施可能要件及びサポート要件を充足している。 (2) 申立人Bの主張について 上記2及び3で検討したとおり、実施可能要件及びサポート要件は、それぞれの(1)で記載の判断基準で判断されるものであるから、申立人の主張は失当であって採用できない。 (3) まとめ よって、申立人Bの申立理由2-3及び申立理由2-4はその理由がない。 第5 むすび 以上のとおり、申立人A及び申立人Bの特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件特許の請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700629

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