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特許異議申立

2023-700798

発光装置

審判番号
2023-700798
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-089539
登録番号
7226789
請求日
2023年08月02日
審決日
2024年12月18日
公報発行日
2025年05月30日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】国立研究開発法人物質・材料研究機構
  • 【異議申立人】足立 幸子
審判長/審判官
  • 審判長 岡田 吉美
  • 審判官 濱野 隆
  • 審判官 貝沼 憲司
分類
P1651.113-YAA(H01L) / P1651.121-YAA(H01L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7226789号発明「発光装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7226789号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~20〕について訂正することを認める。 特許第7226789号の請求項1、2、5~10、13~20に係る特許を維持する。 特許第7226789号の請求項3、4、11、12に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 1 本件特許についての手続の経緯 特許第7226789号(請求項の数12。以下「本件特許」という。)の出願日、特許権の設定登録日及び特許掲載公報の発行日は、次のとおりである。 出願日 令和元年5月10日 特許権の設定登録日 令和5年2月13日 特許掲載公報の発行日 同月21日 2 本件特許異議の申立てについての手続の経緯 令和5年 8月 2日 :特許異議申立書の提出 (特許異議申立人:足立 幸子 全請求項1~12に対して) 同年10月 6日付け:取消理由通知書 同年12月 7日 :訂正請求書及び意見書の提出(特許権者) 同月28日 :手続補正書(方式)の提出(特許権者) 令和6年 3月 7日 :意見書の提出(特許異議申立人) 同年 5月30日付け:取消理由通知書(決定の予告) 同年 7月23日 :訂正請求書及び意見書の提出(特許権者) 同年 8月 9日付け:通知書(訂正請求があった旨の通知) 令和6年8月9日付けの通知書において、特許異議申立人に対して期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許異議申立人は応答しなかった。 第2 本件訂正について 1 請求の趣旨 (1) 先にした訂正の請求について 令和5年12月7日に提出された訂正請求書による訂正の請求(先にした訂正の請求)は、令和6年7月23日に提出された訂正請求書による訂正の請求がされたため、取り下げられたものとみなされる(特許法120条の5第7項)。 以下、令和6年7月23日に提出された訂正請求書を、「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。 (2) 本件訂正の請求の趣旨 本件訂正に係る請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~20について訂正することを求めるものである。 2 本件訂正前の特許請求の範囲の記載 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~12の記載(登録時における特許請求の範囲の記載)は、次のとおりである。 「【請求項1】 発光光源と蛍光体とを備える発光装置であって、 前記発光光源は、300nm以上480nm以下の波長範囲にピークを持つ光を発し、 前記蛍光体は、前記発光光源によって励起されて600nm以上800nm以下の波長範囲にピークを持つ光を発する赤色蛍光体と、前記600nm以上800nm以下の波長範囲にピークを有する光によって励起されて近赤外光を発する近赤外発光蛍光体とを含有する、発光装置。 【請求項2】 前記近赤外光は、1050nm以上1350nm以下の波長範囲にピークを有し、 前記ピークの半値幅は、150nm以上である、請求項1に記載の発光装置。 【請求項3】 前記近赤外発光蛍光体は、4価のCrを含む無機結晶を含有し、前記4価のCr由来の発光により近赤外光を発する、請求項1または2に記載の発光装置。 【請求項4】 前記無機結晶は、M(1)2M(2)M(3)O4結晶(ただし、M(1)は、Liおよび/またはNaである金属元素、M(2)は、Zn、Mg、CaおよびSrからなる群から少なくとも1つ選択された金属元素、M(3)はSiおよび/またはGeである元素)にCrが添加されている、請求項3に記載の発光装置。 【請求項5】 前記無機結晶は、Siを含有し、 前記Siに対し1原子%以上6原子%以下のCrを含有する、請求項3または4に記載の発光装置。 【請求項6】 前記蛍光体は、0.1μm以上50μm以下の範囲のメジアン平均粒径を有する粉末である、請求項1~5のいずれかに記載の発光装置。 【請求項7】 前記蛍光体は、20以下の一次粒子の平均アスペクト比を有する粉末である、請求項1~6のいずれかに記載の発光装置。 【請求項8】 前記発光光源は、発光ダイオード(LED:light emitting diode)、レーザダイオード(LD)、無機エレクトロルミネッセンス(無機EL)、および、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)からなる群から少なくとも1つ選択される、請求項1~7のいずれかに記載の発光装置。 【請求項9】 前記発光光源は、LEDまたはレーザダイオードである、請求項8に記載の発光装置。 【請求項10】 前記赤色蛍光体が、αサイアロン:Eu、Ca2Si5N8:Eu、(Ca,Sr)2Si5N8:Eu、CaAlSiN3:Eu、および、(Ca,Sr)AlSiN3:Euからなる群から少なくとも1つ選択される蛍光体である、請求項1~9のいずれかに記載の発光装置。 【請求項11】 前記近赤外発光蛍光体は、Zn2SiO4:Cr4+、Mg2SiO4:Cr4+、Li2MgSiO4:Cr4+、Li2ZnSiO4:Cr4+、Li2CaSiO4:Cr4+、Li2MgGeO4:Cr4+、および、Li2ZnGeO4:Cr4+からなる群から少なくとも1種選択される、請求項1に記載の発光装置。 【請求項12】 前記近赤外発光蛍光体は、Li2CaSiO4:Cr4+、Li2MgGeO4:Cr4+、および、Li2ZnGeO4:Cr4+からなる群から少なくとも1種選択される、請求項11に記載の発光装置。」 3 本件訂正後の特許請求の範囲の記載 本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~20の記載は、次のとおりである。下線は訂正箇所である。 「【請求項1】 発光光源と蛍光体とを備える発光装置であって、 前記発光光源は、300nm以上480nm以下の波長範囲にピークを持つ光を発し、 前記蛍光体は、前記発光光源によって励起されて600nm以上800nm以下の波長範囲にピークを持つ光を発する赤色蛍光体と、4価のCrを含む無機結晶を含有すると共に前記600nm以上800nm以下の波長範囲にピークを有する光によって励起されて前記4価のCr由来の発光により近赤外光を発する近赤外発光蛍光体とを含有し、 前記無機結晶は、Na2M(2)SiO4結晶(ただし、M(2)は、Zn、Mg、CaおよびSrからなる群から少なくとも1つ選択された金属元素)又はLi2SrSiO4結晶にCrが添加されている、発光装置。 【請求項2】 前記近赤外光は、1050nm以上1350nm以下の波長範囲にピークを有し、 前記ピークの半値幅は、150nm以上である、請求項1に記載の発光装置。 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 (削除) 【請求項5】 前記無機結晶は、Siに対し1原子%以上6原子%以下のCrを含有する、請求項1に記載の発光装置。 【請求項6】 前記蛍光体は、0.1μm以上50μm以下の範囲のメジアン平均粒径を有する粉末である、請求項1、2、5のいずれかに記載の発光装置。 【請求項7】 前記蛍光体は、20以下の一次粒子の平均アスペクト比を有する粉末である、請求項1、2、5、6のいずれかに記載の発光装置。 【請求項8】 前記発光光源は、発光ダイオード(LED:light emitting diode)、レーザダイオード(LD)、無機エレクトロルミネッセンス(無機EL)、および、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)からなる群から少なくとも1つ選択される、請求項1、2、5~7のいずれかに記載の発光装置。 【請求項9】 前記発光光源は、LEDまたはレーザダイオードである、請求項8に記載の発光装置。 【請求項10】 前記赤色蛍光体が、αサイアロン:Eu、Ca2Si5N8:Eu、(Ca,Sr)2Si5N8:Eu、CaAlSiN3:Eu、および、(Ca,Sr)AlSiN3:Euからなる群から少なくとも1つ選択される蛍光体である、請求項1、2、5~9のいずれかに記載の発光装置。 【請求項11】 (削除) 【請求項12】 (削除) 【請求項13】 発光光源と蛍光体とを備える発光装置であって、 前記発光光源は、300nm以上480nm以下の波長範囲にピークを持つ光を発し、 前記蛍光体は、前記発光光源によって励起されて600nm以上800nm以下の波長範囲にピークを持つ光を発する赤色蛍光体と、4価のCrを含む無機結晶を含有すると共に前記600nm以上800nm以下の波長範囲にピークを有する光によって励起されて前記4価のCr由来の発光により近赤外光を発する近赤外発光蛍光体とを含有し、 前記無機結晶は、M(1)2M(2)GeO4結晶(ただし、M(1)は、Liおよび/またはNaである金属元素、M(2)は、Zn、Mg、CaおよびSrからなる群から少なくとも1つ選択された金属元素)にCrが添加されている、発光装置。 【請求項14】 前記近赤外光は、1050nm以上1350nm以下の波長範囲にピークを有し、 前記ピークの半値幅は、150nm以上である、請求項13に記載の発光装置。 【請求項15】 前記蛍光体は、0.1μm以上50μm以下の範囲のメジアン平均粒径を有する粉末である、請求項13または14に記載の発光装置。 【請求項16】 前記蛍光体は、20以下の一次粒子の平均アスペクト比を有する粉末である、請求項13~15のいずれかに記載の発光装置。 【請求項17】 前記発光光源は、発光ダイオード(LED:light emitting diode)、レーザダイオード(LD)、無機エレクトロルミネッセンス(無機EL)、および、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)からなる群から少なくとも1つ選択される、請求項13~16のいずれかに記載の発光装置。 【請求項18】 前記発光光源は、LEDまたはレーザダイオードである、請求項17に記載の発光装置。 【請求項19】 前記赤色蛍光体が、αサイアロン:Eu、Ca2Si5N8:Eu、(Ca,Sr)2Si5N8:Eu、CaAlSiN3:Eu、および、(Ca,Sr)AlSiN3:Euからなる群から少なくとも1つ選択される蛍光体である、請求項13~18のいずれかに記載の発光装置。 【請求項20】 発光光源と蛍光体とを備える発光装置であって、 前記発光光源は、300nm以上480nm以下の波長範囲にピークを持つ光を発し、 前記蛍光体は、前記発光光源によって励起されて600nm以上800nm以下の波長範囲にピークを持つ光を発する赤色蛍光体と、前記600nm以上800nm以下の波長範囲にピークを有する光によって励起されて近赤外光を発する近赤外発光蛍光体とを含有し、 前記近赤外発光蛍光体は、Li2MgGeO4:Cr4+、および、Li2ZnGeO4:Cr4+からなる群から少なくとも1種選択される、発光装置。」 4 本件訂正の内容 本件訂正は、一群の請求項〔1~20〕について訂正するものであるところ、本件訂正の内容を訂正される記載のある請求項ごとに整理すると、以下の(1)から(18)に示す訂正事項1~訂正事項18からなる。 (1) 訂正事項1(請求項1の記載に係る訂正) ア 訂正事項1-1 特許請求の範囲の請求項1における 「前記600nm以上800nm以下の波長範囲にピークを有する光によって励起されて近赤外光を発する近赤外発光蛍光体」 との記載を、 「4価のCrを含む無機結晶を含有すると共に前記600nm以上800nm以下の波長範囲にピークを有する光によって励起されて前記4価のCr由来の発光により近赤外光を発する近赤外発光蛍光体」 に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項2、5~10も同様に訂正する。) イ 訂正事項1-2 特許請求の範囲の請求項1における 「近赤外発光蛍光体とを含有する、発光装置。」 との記載を、 「近赤外発光蛍光体とを含有し、 前記無機結晶は、Na2M(2)SiO4結晶(ただし、M(2)は、Zn、Mg、CaおよびSrからなる群から少なくとも1つ選択された金属元素)又はLi2SrSiO4結晶にCrが添加されている、発光装置。」 に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項2、5~10も同様に訂正する。) (2) 訂正事項2(請求項3の記載に係る訂正) 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (3) 訂正事項3(請求項4の記載に係る訂正) 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 (4) 訂正事項4(請求項5の記載に係る訂正) ア 訂正事項4-1 特許請求の範囲の請求項5における 「前記無機結晶は、Siを含有し、 前記Siに対し1原子%以上6原子%以下のCrを含有する、」 との記載を、 「前記無機結晶は、Siに対し1原子%以上6原子%以下のCrを含有する、」 に訂正する。 (請求項5の記載を引用する請求項6~10も同様に訂正する。) イ 訂正事項4-2 特許請求の範囲の請求項5における 「請求項3または4に記載の発光装置。」 との記載を、 「請求項1に記載の発光装置。」 に訂正する。 (請求項5の記載を引用する請求項6~10も同様に訂正する。) (5) 訂正事項5(請求項6の記載に係る訂正) 特許請求の範囲の請求項6における 「請求項1~5のいずれかに記載の発光装置。」 との記載を、 「請求項1、2、5のいずれかに記載の発光装置。」 に訂正する。 (請求項6の記載を引用する請求項7~10も同様に訂正する。) (6) 訂正事項6(請求項7の記載に係る訂正) 特許請求の範囲の請求項7における 「請求項1~6のいずれかに記載の発光装置。」 との記載を、 「請求項1、2、5、6のいずれかに記載の発光装置。」 に訂正する。 (請求項7の記載を引用する請求項8~10も同様に訂正する。) (7) 訂正事項7(請求項8の記載に係る訂正) 特許請求の範囲の請求項8における 「請求項1~7のいずれかに記載の発光装置。」 との記載を、 「請求項1、2、5~7のいずれかに記載の発光装置。」 に訂正する。 (請求項8の記載を引用する請求項9~10も同様に訂正する。) なお、訂正請求書の6(2)キにおいて、「特許請求の範囲の請求項7に」とあるのは、「特許請求の範囲の請求項8に」の明らかな誤記であると認める。 (8) 訂正事項8(請求項10の記載に係る訂正) 特許請求の範囲の請求項10における 「請求項1~9のいずれかに記載の発光装置。」 との記載を、 「請求項1、2、5~9のいずれかに記載の発光装置。」 に訂正する。 (9) 訂正事項9(請求項11の記載に係る訂正) 特許請求の範囲の請求項11を削除する (10) 訂正事項10(請求項12の記載に係る訂正) 特許請求の範囲の請求項12を削除する。 (11) 訂正事項11(新請求項13(訂正前の請求項3)の記載に係る訂正) ア 訂正事項11-1 前記訂正事項2による請求項3の削除を前提としつつ、訂正前の請求項3のうち請求項1を引用するものについて次のとおりの独立形式に改め、新たに請求項13とする。 「発光光源と蛍光体とを備える発光装置であって、 前記発光光源は、300nm以上480nm以下の波長範囲にピークを持つ光を発し、 前記蛍光体は、前記発光光源によって励起されて600nm以上800nm以下の波長範囲にピークを持つ光を発する赤色蛍光体と、4価のCrを含む無機結晶を含有すると共に前記600nm以上800nm以下の波長範囲にピークを有する光によって励起されて前記4価のCr由来の発光により近赤外光を発する近赤外発光蛍光体とを含有する、発光装置。」 イ 訂正事項11-2 訂正事項11-1を前提とし、さらに、「含有する、発光装置。」との記載を、次の記載に訂正する。 「含有し、 前記無機結晶は、M(1)2M(2)GeO4結晶(ただし、M(1)は、Liおよび/またはNaである金属元素、M(2)は、Zn、Mg、CaおよびSrからなる群から少なくとも1つ選択された金属元素)にCrが添加されている、発光装置。」 (12) 訂正事項12(新請求項14(訂正前の請求項2)の記載に係る訂正) 訂正前の請求項2は請求項1を引用するところ、前記訂正事項2及び前記訂正事項11を前提としつつ、訂正前の請求項2を請求項1を引用しないものに改めて次のとおりの記載とし、新たに請求項14とする。 「前記近赤外光は、1050nm以上1350nm以下の波長範囲にピークを有し、 前記ピークの半値幅は、150nm以上である、請求項13に記載の発光装置。」 (13) 訂正事項13(新請求項15(訂正前の請求項6)の記載に係る訂正) 訂正前の請求項2、3を引用する訂正前の請求項6は、間接的に請求項1を引用するところ、前記訂正事項2、前記訂正事項11及び前記訂正事項12を前提としつつ、訂正前の請求項6を請求項1を引用しないものに改めて次のとおりの記載とし、新たに請求項15とする。 「前記蛍光体は、0.1μm以上50μm以下の範囲のメジアン平均粒径を有する粉末である、請求項13または14に記載の発光装置。」 (14) 訂正事項14(新請求項16(訂正前の請求項7)の記載に係る訂正) 訂正前の請求項2、3、6を引用する訂正前の請求項7は、間接的に請求項1を引用するところ、前記訂正事項2及び前記訂正事項11から前記訂正事項13までを前提としつつ、訂正前の請求項7を請求項1を引用しないものに改めて次のとおりの記載とし、新たに請求項16とする。 「前記蛍光体は、20以下の一次粒子の平均アスペクト比を有する粉末である、請求項13~15のいずれかに記載の発光装置。」 (15) 訂正事項15(新請求項17(訂正前の請求項8)の記載に係る訂正) 訂正前の請求項2、3、6、7を引用する訂正前の請求項8は、間接的に請求項1を引用するところ、前記訂正事項2及び前記訂正事項11から前記訂正事項14までを前提としつつ、訂正前の請求項8を請求項1を引用しないものに改めて次のとおりの記載とし、新たに請求項17とする。 「前記発光光源は、発光ダイオード(LED:light emitting diode)、レーザダイオード(LD)、無機エレクトロルミネッセンス(無機EL)、および、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)からなる群から少なくとも1つ選択される、請求項13~16のいずれかに記載の発光装置。」 (16) 訂正事項16(新請求項18(訂正前の請求項9)の記載に係る訂正) 訂正前の請求項8を引用する訂正前の請求項9は、間接的に請求項1を引用するところ、前記訂正事項2、前記訂正事項11及び前記訂正事項15を前提としつつ、訂正前の請求項9を請求項1を引用しないものに改めて次のとおりの記載とし、新たに請求項18とする。 「前記発光光源は、LEDまたはレーザダイオードである、請求項17に記載の発光装置。」 なお、訂正請求書の6(2)タにおいて、「訂正前の請求項3」とあるのは、「訂正前の請求項8」の明らかな誤記であると認める。 (17) 訂正事項17(新請求項19(訂正前の請求項10)の記載に係る訂正) 訂正前の請求項2、3、6~9を引用する訂正前の請求項10は、間接的に請求項1を引用するところ、前記訂正事項2及び前記訂正事項11から前記訂正事項16までを前提としつつ、訂正前の請求項10を請求項1を引用しないものに改めて次のとおりの記載とし、新たに請求項19とする。 「前記赤色蛍光体が、αサイアロン:Eu、Ca2Si5N8:Eu、(Ca,Sr)2Si5N8:Eu、CaAlSiN3:Eu、および、(Ca,Sr)AlSiN3:Euからなる群から少なくとも1つ選択される蛍光体である、請求項13~18のいずれかに記載の発光装置。」 (18) 訂正事項18(新請求項20(訂正前の請求項11)の記載に係る訂正) 特許請求の範囲の請求項11における 「前記近赤外発光蛍光体は、Zn2SiO4:Cr4+、Mg2SiO4:Cr4+、Li2MgSiO4:Cr4+、Li2ZnSiO4:Cr4+、Li2CaSiO4:Cr4+、Li2MgGeO4:Cr4+、および、Li2ZnGeO4:Cr4+からなる群から少なくとも1種選択される、請求項1に記載の発光装置。」 との記載を独立形式に改めた上で、「Zn2SiO4:Cr4+、Mg2SiO4:Cr4+、Li2MgSiO4:Cr4+、Li2ZnSiO4:Cr4+、Li2CaSiO4:Cr4+、」という記載を選択肢から削除して、次のとおりの記載とし、新たに請求項20とする。 「発光光源と蛍光体とを備える発光装置であって、 前記発光光源は、300nm以上480nm以下の波長範囲にピークを持つ光を発し、 前記蛍光体は、前記発光光源によって励起されて600nm以上800nm以下の波長範囲にピークを持つ光を発する赤色蛍光体と、前記600nm以上800nm以下の波長範囲にピークを有する光によって励起されて近赤外光を発する近赤外発光蛍光体とを含有し、 前記近赤外発光蛍光体は、Li2MgGeO4:Cr4+、および、Li2ZnGeO4:Cr4+からなる群から少なくとも1種選択される、発光装置。」 5 本件訂正の適否についての当合議体の判断 (1) 訂正の目的 ア 訂正事項1 (ア) 訂正事項1-1の訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「蛍光体」が「含有する」「近赤外発光蛍光体」について、 「前記600nm以上800nm以下の波長範囲にピークを有する光によって励起されて近赤外光を発する近赤外発光蛍光体」 としていたものを 「4価のCrを含む無機結晶を含有すると共に前記600nm以上800nm以下の波長範囲にピークを有する光によって励起されて前記4価のCr由来の発光により近赤外光を発する近赤外発光蛍光体」 として、「近赤外発光蛍光体」を限定するものであり、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする。 (イ) 訂正事項1-2の訂正は、前記訂正事項1-1を前提として、「近赤外発光蛍光体」が「含有する」「無機結晶」について、 「前記無機結晶は、Na2M(2)SiO4結晶(ただし、M(2)は、Zn、Mg、CaおよびSrからなる群から少なくとも1つ選択された金属元素)又はLi2SrSiO4結晶にCrが添加されている、」 として、「無機結晶」を限定するものであり、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする。 (ウ) したがって、訂正事項1-1及び訂正事項1-2からなる訂正事項1の訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 イ 訂正事項2、3、9、10 訂正事項2、3、9、10の訂正は、それぞれ請求項3、4、11、12を削除するものであるから、いずれも特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 ウ 訂正事項4 (ア) 訂正事項4-1の訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項5の「無機結晶」について、 「前記無機結晶は、Siを含有し、 前記Siに対し1原子%以上6原子%以下のCrを含有する、」 としていたものを 「前記無機結晶は、Siに対し1原子%以上6原子%以下のCrを含有する、」 とするものである。 ここで、請求項5が引用する請求項1は、前記訂正事項1-2により、「前記無機結晶は、Na2M(2)SiO4結晶(ただし、M(2)は、Zn、Mg、CaおよびSrからなる群から少なくとも1つ選択された金属元素)又はLi2SrSiO4結晶にCrが添加されている」と訂正されており、無機結晶がSiを含有することは明らかであるにも関わらず、請求項5において、「前記無機結晶は、Siを含有し」としたままであると、無機結晶がSiを含有することを重ねて規定したことになってしまう。 この点において、訂正事項4-1の訂正は、請求項1の記載との関係で不合理を生じているために不明瞭となっている請求項5の記載を正すものであり、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 (イ) 訂正事項4-2の訂正は、訂正事項2及び訂正事項3により請求項3及び請求項4を削除することに伴い、請求項5と削除された請求項との引用関係を解消しつつ、削除された請求項3の構成を全て含む訂正後の請求項1の記載を引用するものに変更することにより引用請求項数を削減するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 (ウ) したがって、訂正事項4-1及び訂正事項4-2からなる訂正事項4の訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 エ 訂正事項5~8 訂正事項5~8の訂正は、以下の(ア)~(エ)に示すとおり、いずれも多数項を引用している請求項において、訂正事項2及び訂正事項3により請求項3及び請求項4を削除することに伴い、削除された請求項との引用関係を解消して引用請求項数を削減するものであるから、いずれも特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 (ア) 訂正事項5 請求項6の引用請求項を請求項1~5のいずれかから請求項1、2、5のいずれかに訂正する。 (イ) 訂正事項6 請求項7の引用請求項を請求項1~6のいずれかから請求項1、2、5、6のいずれかに訂正する。 (ウ) 訂正事項7 請求項8の引用請求項を請求項1~7のいずれかから請求項1、2、5~7のいずれかに訂正する。 (エ) 訂正事項8 請求項10の引用請求項を請求項1~9のいずれかから請求項1、2、5~9のいずれかに訂正する。 オ 訂正事項11 (ア) 訂正事項11-1の訂正は、訂正前の請求項1の記載を間接的に引用する訂正前の請求項3について独立形式に改め新たな請求項13とするものであるから、特許法120条の5第2項ただし書4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。 (イ) 訂正事項11-2の訂正は、訂正事項11-1の訂正をした上で、さらに「前記無機結晶は、M(1)2M(2)GeO4結晶(ただし、M(1)は、Liおよび/またはNaである金属元素、M(2)は、Zn、Mg、CaおよびSrからなる群から少なくとも1つ選択された金属元素)にCrが添加されている[こと]」を限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 カ 訂正事項12~17 訂正事項12~17の訂正は、次の(ア)~(カ)に示すとおり、新請求項13の記載を直接又は間接的に引用するものとして訂正するものであるところ、これらの訂正事項は、訂正事項11を前提として、訂正前の請求項3を引用することにより訂正前の請求項1の記載を間接的に引用するものとなっていた訂正前の請求項の記載を、請求項1の記載を引用しないものとするものであるから、特許法120条の5第2項ただし書4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。 (ア) 訂正事項12 訂正前の請求項2の記載を新たな請求項14の記載として、請求項14が請求項13の記載を引用するものとする。 (イ) 訂正事項13 訂正前の請求項6の記載を新たな請求項15の記載として、請求項15が請求項13又は請求項14の記載を引用するものとする。 (ウ) 訂正事項14 訂正前の請求項7の記載を新たな請求項16の記載として、請求項16が請求項13~請求項15のいずれかの記載を引用するものとする。 (エ) 訂正事項15 訂正前の請求項8の記載を新たな請求項17の記載として、請求項17が請求項13~請求項16のいずれかの記載を引用するものとする。 (オ) 訂正事項16 訂正前の請求項9の記載を新たな請求項18の記載として、請求項18が請求項17の記載を引用するものとする。 (カ) 訂正事項17 訂正前の請求項10の記載を新たな請求項19の記載として、請求項19が請求項13~請求項18のいずれかの記載を引用するものとする。 キ 訂正事項18 訂正事項18の訂正は、訂正前の請求項11を削除する訂正事項9を前提として、訂正前の請求項1の記載を引用する請求項11について独立形式に改めた上で、「Zn2SiO4:Cr4+、Mg2SiO4:Cr4+、Li2MgSiO4:Cr4+、Li2ZnSiO4:Cr4+、Li2CaSiO4:Cr4+、」という記載を選択肢から削除して、新たな請求項20とするものであるから、特許法120条の5第2項ただし書4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」及び同1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 (2) 新規事項の追加、特許請求の範囲の実質的拡張・変更 訂正事項1~18の訂正は、特許法120条の5第2項ただし書2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものに該当しないから、これらの訂正における新規事項の追加の有無を判断する際の基準となる明細書等は、特許権の設定の登録がされた時点での願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面である。 ア 訂正事項1 (ア) 訂正事項1-1について、以下に示す明細書の段落【0019】及び【0042】の記載を踏まえると、「蛍光体」が「含有する」「近赤外発光蛍光体」について、「4価のCrを含む無機結晶を含有すると共に前記600nm以上800nm以下の波長範囲にピークを有する光によって励起されて前記4価のCr由来の発光により近赤外光を発する近赤外発光蛍光体」とする訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものであると認められる。 「【0019】 本発明の近赤外発光蛍光体7は、主に赤色光、好ましくは、600nm以上800nm以下の波長範囲を有する光で励起されて、1050nm以上1350nm以下の波長範囲にピークを有し、その半値幅が150nm以上の光の成分を発光する材料であれば、その種類を特に規定しないが、好ましくは、4価のCrを含む無機結晶であり、4価のCr由来の発光により近赤外光を発する蛍光体を用いると、発光強度が高いので好ましい。」 「【0042】 赤色蛍光体は、発光光源が発する300nm以上480nm以下の波長範囲にピークを持つ光によって励起され、600nm以上800nm以下の波長範囲にピークを持つ光(赤色光)を発する。これにより、赤色蛍光体からの赤色光は、近赤外発光蛍光体を励起し、近赤外光、例えば、1050nm以上1350nm以下の波長範囲にピークを有し、その半値幅は150nm以上である光を発する。」 (イ) 訂正事項1-2について、以下に示す明細書の段落【0020】の記載を踏まえると、「近赤外発光蛍光体」が「含有する」「無機結晶」について、「前記無機結晶は、Na2M(2)SiO4結晶(ただし、M(2)は、Zn、Mg、CaおよびSrからなる群から少なくとも1つ選択された金属元素)又はLi2SrSiO4結晶にCrが添加されている、」とする訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであると認められる。 「【0020】 本発明の近赤外発光蛍光体7の無機結晶は、好ましくは、M(1)2M(2)M(3)O4結晶(ただし、M(1)は、Liおよび/またはNaの金属元素、M(2)は、Zn、Mg、CaおよびSrからなる群から少なくとも1つ選択される金属元素、M(3)はSiおよび/またはGeである元素)にCrが添加されている。これにより、特に発光強度が高いので好ましい。このような蛍光体としては、Zn2SiO4:Cr4+、Mg2SiO4:Cr4+、Li2MgSiO4:Cr4+、Li2ZnSiO4:Cr4+などを挙げることができる。ここで、「:Cr4+」とは、それぞれの母体材料に4価のCrが添加されていることを意図する。」 (ウ) 前記(ア)及び(イ)の検討結果を踏まえると、訂正事項1の訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。 また、訂正事項1の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。 イ 訂正事項2、3、9、10 訂正事項2、3、9、10の訂正は、それぞれ請求項3、4、11、12を削除するものであるから、いずれも本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。 また、訂正事項2、3、9、10の訂正は、いずれも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。 ウ 訂正事項4 (ア) 訂正事項4-1について、以下に示す明細書の段落【0023】及び【0072】の記載を踏まえると、「無機結晶」について、 「前記無機結晶は、Siに対し1原子%以上6原子%以下のCrを含有する、」とする訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであると認められる。 「【0023】 なかでも、本発明の近赤外発光蛍光体7の無機結晶は、好ましくは、Siを含み、無機結晶中のSi元素に対し1原子%以上6原子%のCrを含有する。これにより、特に近赤外域の発光強度が高いので、好ましい。Crが10原子%を超えると、濃度消光が生じ外部量子効率が低下する恐れがある。」 「【0072】 さらに、表2によれば、Crの添加量が多くなるにつれて、発光強度が高くなり、好ましくは、Crの添加量xが0.01以上0.06以下(Siに対して1原子%以上6原子%以下)において、発光強度が増大し得、より好ましくは、Crの添加量xが0.03以上0.05以下(Siに対して3原子%以上5原子%以下)において、発光強度がより増大し得ることが分かった。」 (イ) 訂正事項4-2の訂正は、多数項を引用している請求項において、引用請求項数を削減するものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであると認められる。 (ウ) 前記(ア)及び(イ)の検討結果を踏まえると、訂正事項4の訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。 また、訂正事項4の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。 エ 訂正事項5~8 訂正事項5~8の訂正は、多数項を引用している請求項において、引用請求項数を削減するものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。 また、訂正事項5~8の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。 オ 訂正事項11 訂正事項11の訂正は、訂正前の請求項1の記載を間接的に引用する請求項3について独立形式に改めた上で、さらに「M(3)」を「Ge」に限定するものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。 また、訂正事項11の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。 カ 訂正事項12~17 訂正事項12~17の訂正は、いずれも訂正前の請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2、6~10の記載を、請求項13の記載を直接又は間接的に引用する新たな請求項の記載とするものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。 また、訂正事項12~17の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。 キ 訂正事項18 訂正事項18の訂正は、訂正前の請求項1の記載を引用する請求項11について独立形式に改めた上で、「Zn2SiO4:Cr4+、Mg2SiO4:Cr4+、Li2MgSiO4:Cr4+、Li2ZnSiO4:Cr4+、Li2CaSiO4:Cr4+、」という記載を選択肢から削除するものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。 また、訂正事項18の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。 (3) 独立特許要件 訂正後の請求項1~20は、前記のとおり、訂正前の請求項1~12に対応するものであり、本件特許異議の申立てにおいては請求項1~12について特許異議の申立てがされているから、特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条7項に規定する独立特許要件は課されない。 (4) 本件訂正の適否についての当合議体の判断のまとめ 前記(1)~(3)において検討したとおり、訂正事項1~18の訂正は、いずれも、特許法120条の5第2項ただし書1号、3号又は4号に掲げる事項を目的とするものであって同項の規定に適合し、かつ、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するから、本件訂正は適法なものである。 よって、前記結論のとおり、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~20〕について訂正することを認める。 第3 取消理由の概要 本件特許について、令和6年5月30日に特許権者に通知した取消理由通知書(決定の予告)の取消理由(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。なお、特許異議申立人が提出した各甲号証の文献を、単に「甲1」などという。 令和5年12月6日に提出された訂正請求書に添付した特許請求の範囲の請求項1、2、4、5、7~10に係る発明は、下記の文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、前記請求項に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 記 <主たる文献> 甲1 :国際公開第2019/063309号 甲1の1:特表2020-524392号公報 <その他の文献> 甲2 :青島紳一郎、外2名、「可視波長可変レーザー」、光学、一般社団法人日本光学会、1996年9月、25巻9号、505~511頁 甲3 :田部勢津久(研究代表者)、「異常原子価3d遷移金属を発光中心とする広帯域光増幅器用結晶化ガラス材料の開発」、科学研究費助成事業2014年度研究成果報告書、独立行政法人日本学術振興会 甲4 :Cecile Jousseaume、外5名、「Structural and spectroscopic characterisation of Cr:Li2MgSiO4(γ0)」、Journal of Materials Chemistry、2002年3月28日、12、1525~1529頁 甲5 :特許第5360370号公報 甲6 :Yixi Zhuang、外4名、「Temperature-dependent broadband near-infrared luminescence in silicate glass ceramics containing Li2MgSiO4:Cr4+ nanocrystals」、Journal of Materials Research、2010年9月、25巻、9号、1833~1837頁 甲7 :M.Yu Sharonov、他3名、「Cr4+ -doped Li2CaSiO4 crystal: growth and spectroscopic properties」、Optics Communications、2004年、231巻、273~280頁 引用文献1:国際公開第2017/057454号 引用文献2:特開2018-43912号公報 引用文献3:特開2013-40236号公報 なお、甲1~甲7は、特許異議申立人が提出した文献であり、引用文献1~3は、職権調査により発見した文献である。 第4 当合議体の判断 1 本件訂正発明について 前記第2のとおり、本件訂正は認められたから、本件特許の請求項1、2、5~10、13~20に係る発明(以下、請求項の番号に従い「本件訂正発明1」等という。)は、それぞれ、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1、2、5~10、13~20に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1、2、5~10、13~20の記載は、前記第2の3に示したとおりである。 2 各文献の記載事項及び甲1発明の認定等 (1) 甲1の記載事項と甲1発明の認定 ア 甲1の記載事項 甲1(国際公開第2019/063309号)には、次の記載がある。 なお、甲1の日本語パテントファミリー文献である特表2020-524392号公報(甲1号証の1(以下「甲1ファミリー」という。))の対応する段落の記載を括弧内に日本語翻訳文として記載した。下線は合議体が付した。以下同様である。 (ア) 2頁9~12行 「 Embodiments of the invention include devices such as PCLEDs that emit infrared, particularly near- infrared (NIR) radiation, for example via a NIR emitting luminescent material such as a phosphor. For economy of language, infrared radiation may be referred to herein as "light." NIR emitting PCLEDs may be used for any suitable purpose such as for example, NIR spectroscopy.」 (【0006】 本発明の実施例は、赤外放射線、例えば、蛍光体のような、NIR放射発光材料を介して、特に近赤外(NIR)放射線を放射する、PCLEDのような装置を含む。記載の簡略化のため、赤外放射線は、「光」と称される。NIR放射PCLEDは、例えば、NIR分光法のような、いかなる好適な目的にも使用することができる。) (イ) 2頁13~19行、FIG. 1 「 Fig. 1 illustrates a NIR emitting device according to some embodiments. A light source 100, which may be an LED or any other suitable source, emits first light 104. A portion of the first light 104 is incident on a NIR phosphor 108. The NIR phosphor 108 absorbs the first light 104 and emits second light 112. A portion of the first light 104 is incident on a second phosphor 102. The second phosphor absorbs the first light 104 and emits third light 106. Third light 106 may be visible, though this is not required. The third light 106 is incident on the NIR phosphor 108. The NIR phosphor 108 absorbs all or a portion of the third light 106 and emits fourth light 110.」 (【0007】 図1には、ある実施例によるNIR放射装置を示す。LEDまたは他の任意の好適なソースである光源100は、第1の光104を放射する。第1の光104の一部は、NIR蛍光体108に入射される。NIR蛍光体108は、第1の光104を吸収し、第2の光112を放射する。第1の光104の一部は、第2の蛍光体102に入射される。第2の蛍光体は、第1の光104を吸収し、第3の光106を放射する。第3の光106は、可視光であってもよいが、これは必ずしも必要ではない。第3の光106は、NIR蛍光体108に入射される。NIR蛍光体108は、第3の光106の全てまたは一部を吸収し、第4の光110を放射する。) 「 [図:0001422384000001.jpg] 」 (ウ) 2頁23~26行 「 In some embodiments, first light 104 is blue light. First light 104 may have a peak wavelength between, for example, 440 nm and 460 nm in some embodiments. In some embodiments, both second light 112 and the fourth light 110 are near- infrared and have different peak wavelengths. In some embodiments, the third light 106 is red.」 (【0009】 ある実施例では、第1の光104は、青色光である。ある実施例では、第1の光104は、例えば、440nmと460nmの間にピーク波長を有してもよい。ある実施例では、第2の光112と第4の光110の両方が、近赤外光であり、異なるピーク波長を有してもよい。ある実施例では、第3の光106は、赤色である。) (エ) 2頁27~33行 「 Wavelength converting materials such as phosphors typically include a host lattice and at least one dopant species. The atoms of the dopant species function as light emitting centers. In some embodiments, NIR phosphor is at least one phosphor with at least Cr(III) (Cr3+) as the dopant species. The Cr(III) phosphor is excited by the first light 104 via 4A2→4T1 electron transitions. The third light 106 excites the Cr(III) phosphor via 4A2→4T2 electron transitions. The combined excitation lights lead to emission light by the Cr(III) phosphor via 4A2→4A2 (second light 112) and 2E→4A2 (fourth light 110) emission channels.」 (【0010】 通常、蛍光体のような波長変換材料は、ホスト格子と、少なくとも一つのドーパント種とを有する。ドーパント種の原子は、発光中心として機能する。ある実施例では、NIR蛍光体は、ドーパント種として少なくともCr(III)(Cr3+)を有する、少なくとも一つの蛍光体である。Cr(III)蛍光体は、第1の光104により、4A2→4T1電子遷移を介して励起される。第3の光106は、4A2→4T2電子遷移を介してCr(III)蛍光体を励起する。組み合わされた励起光により、4A2→4A2(第2の光112)、および2E→4A2(第4の光110)放射チャネルを介して、Cr(III)蛍光体により光が放射される。) (オ) 3頁9~11行 「 The device illustrated in Fig. 1 may have a very broad infrared emission range between 700 nm and 1200 nm, with only one type of pump light. The broad emission range may be useful for NIR spectroscopy applications.」 (【0012】 図1に示す装置は、一種類の励起光のみで、700nmから1200nmの間の極めて広い赤外放射範囲を有してもよい。広い放射範囲は、NIR分光用途に有益であり得る。) (カ) 3頁12~16行 「 The NIR phosphor 108 may emit light having a peak wavelength of at least 700 nm in some embodiments and no more than 1100 nm in some embodiments. NIR phosphor 108 may have a distributed emission intensity within the 700 - 1100 nm range; for example, in some embodiments, NIR phosphor 108 may have a full width at half maximum of at least 1700 cm-1in some embodiments and no more than 3000 cm-1 in some embodiments.」 (【0013】 NIR蛍光体108は、ある実施例では、少なくとも700nmのピーク波長を有する光を放射し、ある実施例では、1100nm以下のピーク波長を有する光を放射してもよい。NIR蛍光体108は、700-1100nmの範囲内に分布放射強度を有してもよい。例えば、ある実施例では、NIR蛍光体108は、少なくとも1700 cm-1の半値全幅を有し、ある実施例では、3000cm-1以下の半値全幅を有してもよい。) (キ) 3頁17~20行 「 NIR phosphor 108 may be excited, for example, by light in the visible spectral range, meaning that it absorbs visible light, and in response, emit NIR light. The band gap of the NIR phosphor 108 may be at least 4.8 eV in some embodiments and greater than 5 eV in some embodiments.」 (【0014】 NIR蛍光体108は、例えば、可視スペクトル範囲の光により、励起されてもよい。これは、NIR蛍光体108が可視光を吸収して、応答として、NIR光を放射することを意味する。NIR蛍光体108のバンドギャップは、ある実施例では少なくとも4.8eVであり、ある実施例では5eVよりも大きい。) (ク) 3頁21~31行 「 In some embodiments, as described above NIR phosphor 108 includes trivalent cations such as Cr(III) (Cr(III) is the same as Cr3+) as emitting centers. In some embodiments, the host lattice of NIR phosphor 108 includes tetravalent cations that show effective ionic radii that are at least 10% smaller than the effective ionic radius of Cr(IV) (Cr(IV) is the same as Cr4+). The tetravalent cation may be Si4+ with an effective ionic radius for fourfold coordination that is 38% smaller than the effective ionic radius of Cr4+. The small tetravalent cation size may suppress the formation of unwanted Cr(IV), which may improve the stability of the NIR phosphor and may increase the luminescence conversion efficiency of the NIR phosphor at elevated temperatures. The NIR phosphor contains less than 10% Cr(IV) in some embodiments, less than 5% Cr(IV) in some embodiments, less than 1% Cr(IV) in some embodiments, and 0% Cr(IV) in some embodiments, relative to the total chromium content in the NIR phosphor.」 (【0015】 ある実施例では、前述のNIR蛍光体108は、放射中心として、Cr(III)(Cr(III)は、Cr3+と同じである)のような、3価のカチオンを有する。ある実施例では、NIR蛍光体108のホスト格子は、4価のカチオンを有し、これは、Cr(IV)(Cr(IV)は、Cr4+と同じである)の有効イオン半径よりも少なくとも10%小さい有効イオン半径を示す。4価のカチオンは、Si4+であってもよい。これは、4配位の場合、Cr4+の有効イオン半径よりも38%小さい有効イオン半径を有する。小さな4価のカチオンサイズは、好ましくないCr(IV)の形成を抑制し、これにより、NIR蛍光体の安定性が向上し、高温でのNIR蛍光体の発光変換効率が向上する。NIR蛍光体は、NIR蛍光体中の全体のクロム量に対して、ある実施例では10%未満のCr(IV)を有し、ある実施例では5%未満のCr(IV)を有し、ある実施例では1%未満のCr(IV)を有し、ある実施例では0%のCr(IV)を有する。) (ケ) 4頁26行~5頁2行 「 Any suitable second phosphor 102 may be used. In some embodiments, second phosphor 102 is an Eu2+ doped red emitting material such as BSSNE type phosphors of composition M2-xSi5- yAlyOyN8-y:Eux (M = Ba, Sr, Ca), such as, for example Ba0.2Ca0.06Sr1.64Si4.98Al0.0200.02N7.98:Eu0.1; CASN or SCASN type phosphors of composition M1-xSiAlN3:Eux (M = Sr, Ca) such as, for example Ca.985SiAlN3:Eu0.015; or M1-xLiAl3N4:Eux (M = Ba, Sr, Ca) such as, for example, (Ba0.5Ca0.5)0.095LiAl3N4:Eu0.005, which may crystallize in an ordered structure variant of the UCr4C4 structure type with Ba and Ca occupying specific lattice sites. Similar ordered variants are known for oxides like RbNaLi6Si208. In (Ba0.5Ca0.5)1-xLiAl3N4:Eux narrow band emission at -630 nm is obtained for Eu on Ba sites while NIR emission at wavelengths > 700 nm is obtained for Eu on Ca sites.」 (【0021】 いかなる好適な第2の蛍光体102が使用されてもよい。ある実施例では、第2の蛍光体102は、Eu2+ドープされた赤色放射材料であり、例えば、Ba0.2Ca0.06Sr1.64Si4.98Al0.02O0.02N7.98:Eu0.1のような、組成M2-xSi5-yAlyOyN8-y:Eux(M=Ba,Sr,Ca);例えばCa.985SiAlN3:Eu0.015のような、組成がM1-xSiAlN3:Eux(M=Sr,Ca)の、CASNもしくはSCASNタイプの蛍光体;または例えば(Ba0.5Ca0.5)0.995LiAl3N4:Eu0.005のような、M1-xLiAl3N4:Eux(M=Ba,Sr,Ca)である。これらは、BaおよびCaが特定の格子サイトを占める、UCr4C4構造タイプの規則構造異形に結晶化してもよい。同様の規則化異形は、RbNaLi6Si2O8のような酸化物において、知られている。(Ba0.5Ca0.5)1-xLiAl3N4:Euxでは、~630nmにおいて、BaサイトのEuの狭小バンド放射が観測され、波長700nm超において、CaサイトのEuのNIR放射が観測される。) (コ) 5頁19~24行 「 The NIR phosphor 108 and the second phosphor 102 described above can be manufactured, for example, in powder form, in ceramic form, or in any other suitable form. The NIR phosphor 108 and the second phosphor 102 may be formed into one or more structures that are formed separately from and can be handled separately from the light source, such as a prefabricated glass or ceramic tile, or may be formed into a structure that is formed in situ with the light source, such as a conformal or other coating formed on or above the source.」 (【0024】 前述のNIR蛍光体108および第2の蛍光体102は、例えば、粉末形態、セラミックの形態、または他の任意の好適な形態で製造され得る。NIR蛍光体108および第2の蛍光体102は、1または2以上の構造に形成され、これらは、事前作製されたガラスまたはセラミックタイルのような光源から別個に形成され、別個に処理されてもよい。あるいは、光源上に形成された共形の、または他のコーティングのような、光源を用いてin-situで形成された構造に形成されてもよい。) (サ) 5頁25~30行 「 The NIR phosphor 108 and the second phosphor 102 may be mixed together in a single wavelength converting layer, or formed as separate wavelength converting layers. In a structure with separate wavelength converting layers, NIR phosphor 108 and the second phosphor 102 may be stacked such that the second phosphor 102 may be disposed between the NIR phosphor 108 and the light source, or the NIR phosphor 108 may be disposed between the second phosphor 102 and the light source.」 (【0025】 NIR蛍光体108および第2の蛍光体102は、単一の波長変換層において相互に混合され、あるいは別個の波長変換層として形成されてもよい。分離波長変換層を有する構造では、NIR蛍光体108および第2の蛍光体102は、NIR蛍光体108と光源の間に第2の蛍光体102が設置されるように積層されてもよい。あるいは、NIR蛍光体108が、第2の蛍光体102と光源の間に設置されてもよい。) (シ) 5頁31行~6頁4行 「 In some embodiments, the NIR phosphor 108 and the second phosphor 102 may be powders that are dispersed for example in a transparent matrix, a glass matrix, a ceramic matrix, or any other suitable material or structure. Phosphor dispersed in a matrix may be, for example, singulated or formed into a tile that is disposed over a light source. The glass matrix may be for example a low melting glass with a softening point below 1000°C, or any other suitable glass or other transparent material. The ceramic matrix material can be for example a fluoride salt such as CaF2 or any other suitable material.」 (【0026】 ある実施例では、NIR蛍光体108および第2の蛍光体102は、例えば、透明マトリクス、ガラスマトリクス、セラミックマトリクス、または他の任意の好適な材料もしくは構造内に分散された粉末であってもよい。マトリクスに分散された蛍光体は、例えば、単体化され、または光源にわたって分散されたタイルに形成されてもよい。ガラスマトリクスは、例えば、軟化点が1000℃未満の低融点ガラスであり、あるいは他の任意の好適なガラスまたは他の透明材料であってもよい。セラミックマトリクス材料は、例えば、CaF2のようなフッ化物塩、または他の好適な材料であってもよい。) (ス) 6頁5~13行 「 The NIR phosphor 108 and second phosphor 102 may be used in powder form, for example by mixing the powder phosphor with a transparent material such as silicone and dispensing or otherwise disposing it in a path of light. In powder form, the average particle size (for example, particle diameter) of the phosphors may be at least 1 μm in some embodiments, no more than 50 μm in some embodiments, at least 5 μm in some embodiments, and no more than 20 μm in some embodiments. Individual phosphor particles, or powder phosphor layers, may be coated with one or more materials such as a silicate, a phosphate, and/or one or more oxides in some embodiments, for example to improve absorption and luminescence properties and/or to increase the material's functional lifetime.」 (【0027】 NIR蛍光体108および第2の蛍光体102は、例えば、粉末状の蛍光体をシリコーンのような透明材料と混合し、光源の光路にこれを分散または配置させることにより、粉末の形態で使用されてもよい。粉末形態では、蛍光体の平均粒子サイズ(例えば粒子直径)は、ある実施例では少なくとも1μmであり、ある実施例では50μm以下であり、ある実施例では少なくとも5μmであり、ある実施例では20μm以下である。ある実施例では、個々の蛍光体粒子または粉末蛍光体層は、ケイ酸塩、リン酸塩、および/または1もしくは2以上の酸化物のような、1または2以上の材料でコーティングされてもよく、例えば吸収および発光特性が改善され、および/または材料の機能寿命が増加する。) (セ) 6頁14~18行 「The NIR phosphor 108 and second phosphor 102 may be used, for example, in a light source including a light emitting diode (LED). Light emitted by the light emitting diode is absorbed by the phosphors according to embodiments of the invention and emitted at a different wavelength. Fig. 4 illustrates one example of a suitable light emitting diode, a III-nitride LED that emits blue light.」 (【0028】 NIR蛍光体108および第2の蛍光体102は、例えば、発光ダイオード(LED)を含む光源に使用されてもよい。発光ダイオードにより放射される光は、本発明の実施例による蛍光体により吸収され、異なる波長の光が放射される。図4には、青色の光を放射する、好適な発光ダイオードであるIII-窒化物LEDの一例を示す。) (ソ) 6頁19~22行 「 Though in the example below the semiconductor light emitting device is a III-nitride LED that emits blue or UV light, semiconductor light emitting devices besides LEDs such as laser diodes and semiconductor light emitting devices made from other materials systems such as other III-V materials, III-phosphide, III-arsenide, II-VI materials, ZnO, or Si-based materials may be used.」 (【0029】 以下の例では、半導体発光装置は、青色光またはUV光を放射するIII-窒化物LEDであるが、LEDに加えて、レーザダイオードのような半導体発光装置、および他のIII-V材料、III-リン化物材料、III-ヒ素化物、II-VI材料、ZnO、またはSi系材料のような、他の材料系で構成された半導体発光装置が使用されてもよい。) イ 甲1発明の認定 前記アにおいて摘記した事項を総合すると、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。なお、括弧内には、甲1ファミリーの該当段落の番号を示している。 [甲1発明] 「蛍光体のような、NIR放射発光材料を介して、特に近赤外(NIR)放射線を放射する装置であって、(【0006】) 一種類の励起光のみで、700nmから1200nmの間の極めて広い赤外放射範囲を有するものであり、(【0012】) 第1の光104を放射する、LEDまたは他の任意の好適なソースである光源100と、 第1の光104の一部が入射されるNIR蛍光体108と、 第1の光104の一部が入射される第2の蛍光体102と、 を備えており、(【0007】) NIR蛍光体108は、第1の光104を吸収し、第2の光112を放射するものであり、 第2の蛍光体は、第1の光104を吸収し、第3の光106を放射するものであり、 第3の光106が、NIR蛍光体108に入射されると、NIR蛍光体108は、第3の光106の全てまたは一部を吸収し、第4の光110を放射するものであり、(【0007】) 第1の光104は、青色光であり、例えば、440nmと460nmの間にピーク波長を有するものであり、 第2の光112と第4の光110の両方は、近赤外光であり、異なるピーク波長を有するものであり、 第3の光106は、赤色であり、(【0009】) NIR蛍光体108は、少なくとも700nmのピーク波長を有する光を放射し、少なくとも1700cm-1の半値全幅を有するものであり、(【0013】) NIR蛍光体108のホスト格子は、4価のカチオンを有し、NIR蛍光体は、NIR蛍光体中の全体のクロム量に対して、10%未満のCr(IV)を有し、(【0015】) 第2の蛍光体102は、Eu2+ドープされた赤色放射材料であり、組成がM2-xSi5-yAlyOyN8-y:Eux(M=Ba,Sr,Ca)や、M1-xSiAlN3:Eux(M=Sr,Ca)の蛍光体であり、(【0021】) NIR蛍光体108および第2の蛍光体102は、例えば、粉末形態、セラミックの形態、または他の任意の好適な形態で製造され得るものであり、(【0024】) NIR蛍光体108および第2の蛍光体102は、単一の波長変換層において相互に混合され、(【0025】) NIR蛍光体108および第2の蛍光体102は、例えば、粉末状の蛍光体をシリコーンのような透明材料と混合し、光源の光路にこれを分散または配置させることにより、粉末の形態で使用されてもよく、粉末形態では、蛍光体の平均粒子サイズ(例えば粒子直径)は、少なくとも1μmであり、50μm以下であり、(【0027】) NIR蛍光体108および第2の蛍光体102は、例えば、発光ダイオード(LED)を含む光源に使用されてもよく、(【0028】) LEDに加えて、レーザダイオードが使用されてもよい、(【0029】) 近赤外(NIR)放射線を放射する装置。」 (2) 引用文献1~3の記載事項と技術常識1の認定 ア 引用文献1の記載事項 引用文献1の段落[0092]~[0093]には、次の記載がある。 「[0092] 蛍光体は粒子状のものを好ましく用いることができる。蛍光体の平均粒子径は、特に制限はないが、D50が0.05μm以上のものが好ましく、3μm以上のものがより好ましい。また、D50が30μm以下のものが好ましく、20μm以下のものがより好ましい。 [0093] 本発明において平均粒子径とはメジアン径、すなわちD50のことをいう。蛍光体層に含まれる蛍光体のD50は、蛍光体層断面の走査型電子顕微鏡(SEM)による測定画像を画像処理して粒径分布を求め、そこから得られる体積基準粒度分布において、小粒径側からの通過分積算50%の粒子径をメジアン径D50とする方法で測定する。粒子が球形である場合、粒子直径を粒径とする。粒子が球形でない場合、最も長い径の長さと最も短い径の長さの平均値を粒径とする。D50が上記範囲であると、蛍光体シート中の蛍光体の分散性が良好で、安定な発光が得られる。」 イ 引用文献2の記載事項 引用文献2の段落【0049】には、次の記載がある。 「【0049】 蛍光体粒子の50%粒子直径(以下、本明細書では50%粒径と略す)D50は、1~30μmが好ましい。蛍光体粒子の50%粒径D50が1μm未満であると、蛍光体粒子の比表面積が大きくなり、失活しやすくなるおそれがある。この50%粒径D50は、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上、特に好ましくは7μm以上である。一方、蛍光体粒子の50%粒径D50が30μm超では、光変換部材中で分散性が悪くなり、光の変換効率が悪くなると共に、色度ムラが生じるおそれがある。そのため、50%粒径D50は、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。なお、本明細書において、50%粒径D50は、レーザ回折式粒度分布測定により得られた粒度分布から、体積基準での積算%における50%値として算出した値である。」 ウ 引用文献3の記載事項 引用文献の段落【0036】には、次の記載がある。 「【0036】 上記蛍光体の粒子径としては特に限定されないが、中央粒径(D50)で通常0.1~100μm範囲内であることが好ましく、より好ましくは1.0~50μm、さらに好ましくは5.0~30μmである。上記D50が小さすぎると、輝度が低下するだけではなく、基体蛍光体自体が凝集しやくなり、均一な被覆処理が困難になる。また、D50が大きすぎると、樹脂における分散性が悪くなり、発光素子の特性に悪影響を与える恐れがある。」 エ 技術常識1の認定 前記ア~ウにおいて摘記した事項に例示されるように、次の技術事項は技術常識である(以下「技術常識1」という。)。 [技術常識1] 「蛍光体粒子の代表粒子径としてメジアン平均粒径D50用い、安定した発光が得られるようにするために、メジアン平均粒径を数μmから数十μmの範囲の値にすること。」 (3) 甲5の記載事項と技術常識2の認定 ア 甲5の記載事項 甲5の段落【0073】~【0074】には、次の記載がある。 「【0073】 <平均粒径> 蛍光体7の平均粒径は、0.1μm以上50μm以下の範囲にあることが好ましい。平均粒径が0.1μmより小さいと表面欠陥の影響が顕著となり、発光強度が低下するとともに、平均粒径が50μmより大きいと励起光の吸収が不十分となり、発光が低下するため、何れも好ましくない。尚、蛍光体7の粒度はレーザー回折・散乱法を用いて測定することができる。 【0074】 蛍光体7は、α-サイアロン粉末を構成する一次粒子の平均アスペクト比を3以下とすることが好ましい。これにより、樹脂中への分散性が向上するばかりか、励起光を効率的に吸収し、十分に高い発光強度が得ることができる。 平均アスペクト比が3より大きいと、樹脂への混練が困難となり、樹脂と蛍光体粒子との界面に空隙が生じやすくなるとともに、粒子が交絡したり、励起光と平行に配列した蛍光体粒子の励起光の吸収が不十分となったりして、十分に高い発光強度が得られないため好ましくない。」 イ 技術常識2の認定 前記アにおいて摘記した事項に例示されるように、次の技術事項は技術常識であるといえる(以下「技術常識2」という。)。 [技術常識2] 「蛍光体粒子の樹脂中への分散性を良好なものとするために、蛍光体粒子の平均アスペクト比を3以下の小さい値にすること。」 (4) 甲2~甲4、甲6、甲7の記載事項 ア 甲2の記載事項 甲2の505頁右欄の1.2には、次の記載がある。 「1.2 Cr4+ドープ結晶 Cr4+:Mg2SiO4(クロムフォルステライト),Cr4+:Y3Al5O12(Cr:YAG),Cr4+:Y2SiO5(Cr:YSO)などがあり、1.2μm付近で発振する。500nm付近に大きな吸収帯が存在するため,Nd:YAGレーザーの基本波,その2倍波,クリプトンレーザー,チタンサファイアレーザーなど,種々のレーザーによる励起が行われている.これらのうち,最初にレーザー発振が報告されたのは,クロムフォルステライトレーザーであり,当初はCr3+による発振であると考えられていたが,現在では,Cr4+による発振であることが知られている.」 イ 甲3の記載事項 甲3の研究成果の概要(和文)には、次の記載がある。 「研究成果の概要(和文) :近赤外波長域に広帯域発光を示す光増幅器用3d遷移金属イオン含有透明結晶化ガラスの開発を目指した.Cr4+イオンを安定に固溶し得る結晶化ガラスを作製,熱処理前後の基礎光物性評価を行った.Zn2SiO4,Mg2SiO4,Li2ZnSiO4結晶はd2電子配置=4価の状態で安定に固溶する. 作製した試料の発光スペクトル,蛍光寿命,量子収率を評価した所,結晶化後はCr4+に基づく1.1~1.5μmの波長領域に広帯域発光を示した.Mg2SiO4試料のみ,Cr3+イオンに基づく,0.9μm付近の発光を示した.他の2試料に比べ,Li2ZnSiO4析出結晶化ガラス試料は長い蛍光寿命と高い量子効率を示した.」 ウ 甲4の記載事項 甲4の1525頁の左欄には、次の記載がある。 「Introduction Chromium(IV) ions in a tetrahedral environment, as found in single crystals of forsterite Mg2SiO4 and yttrium aluminium garnet Y3Al5O12(YAG), have found several applications in optics, for example, tunable laser action around 1.2-1.5 μm used in optical fiber communications, ultra-short laser pulse generation and passive Q-switching of neodymium activated laser operating at around 1 μm. In YAG and forsterite, chromium ions occur in the III and IV valence states, with CrIII in octahedral sites and CrIV distributed between the tetrahedral and octahedral sites. In YAG for instance, it has been suggested that tetrahedral CrIV, the active species, represents only a small percentage of the total chromium content. 」 (序章 フォルステライトMg2SiO4の単結晶やイットリウムアルミニウムガーネットY3Al5O12(YAG)に見られるような、四面体環境内のクロム(IV)イオンは、光学分野でいくつかの用途が発見されている。例えば、1.2~1.5μm付近の波長可変レーザー動作などであり、これらは、光ファイバー通信、超短レーザーパルス生成、及び、約1μmで動作するネオジウム励起レーザーのパッシブQスイッチングで使用される。YAG及びフォルステライトでは、クロムイオンは、III及びIV価数状態で発生する。八面体サイトにCrIIIがあり、四面体サイトと八面体サイトの間にCrIVが分布している。例えば、YAGでは、活性種である四面体CrIVは、総クロム含有量のわずかなパーセントにすぎないことが示唆されている。) エ 甲6の記載事項 甲6の1833頁のAbstractの欄には、次の記載がある。 「Transparent glass ceramics containing Li2MgSiO4: Cr4+ nanocrystallites were prepared. Intense broadband near-infrared emission with full width at half-maximum larger than 200 nm and long fluorescence lifetime (τ > 100 μs) were observed. The temperature-dependent optical characteristics of the glass ceramics containing Li2MgSiO4: Cr4+ crystallites were compared to those of Li2MgSiO4: Cr4+ single crystals. The reason for extra-long near-infrared fluorescence lifetime was illuminated by the mixed effect between 3T2 and 1E levels. The crystal-filed-induced particular energy-level scheme makes the fluorescence lifetime of the glass ceramics containing Li2MgSiO4: Cr4+ crystallites one order longer than those of other Cr4+-doped glass ceramics.」 (Li2MgSiO4:Cr4+ナノ微結晶を含む透明なガラスセラミックを調整した。半値全幅が200nmを超える強力な広帯域近赤外放射と長い蛍光寿命(τ>100μs)が観察された。Li2MgSiO4:Cr4+微結晶を含むガラスセラミックの温度依存性光学特性を、Li2MgSiO4:Cr4+単結晶の光学特性と比較した。近赤外蛍光寿命が非常に長い理由は、3T2レベルと1Eレベルの間の混合効果によって解明された。結晶場誘起の特定のエネルギーレベルスキームにより、Li2MgSiO4:Cr4+微結晶を含むガラスセラミックの蛍光寿命が、他のCr4+ドープガラスセラミックの蛍光寿命よりも1桁長くなる。) オ 甲7の記載事項 甲7の273頁のAbstractの欄には、次の記載がある。 「The growth and optical properties of Cr4+-doped Li2CaSiO4 single crystals are described. Absorption spectroscopy together with calculations of energy levels shows distortion of tetrahedral sites with Cr4+ doping. The symmetry of the local environment was assigned to D2d; ligand field parameters were determined for both undistorted and distorted tetrahedral sites. Emission spectra show broadband fluorescence from 1000 to 1500 nm. The fluorescence spectrum is structureless at room temperature and exhibits sharp lines at low temperature. The temperature dependence of nonradiative relaxation shows a quantum efficiency ~46%. From the experimental data and the best fit with the Struck and Fonger model, the following spectroscopic parameters were obtained: effective energies of odd- and even-parity phonons are hωodd = 158 and hωeven = 564 cm-1, respectively, Huang-Rhys parameter S=2.1, nonradiative constant Knr=1014 s-1, and the number of phonons bridging the energy gap is ~19. Long lifetime (41 μs at 300 K) and high quantum efficiency make this crystal a new promising tunable laser medium for the near-infrared region.」 (Cr4+ドープLi2CaSiO4単結晶の成長と光学特性について説明する。吸収分光法とエネルギー準位の計算により、Cr4+ドーピングによる四面体サイトの歪みが示される。ローカル環境の対称性はD2dに割り当てられた。リガンド場のパラメーターは、歪んでいない四面体部位と歪んでいる四面体部位の両方について決定された。発光スペクトルは、1000~1500nmの広帯域蛍光を示す。蛍光スペクトルは室温では構造がないが、低温では鋭い線を示す。無輻射緩和の温度依存性は量子効率~46%を示す。実験データとStruckとFongerモデルの最適な適合から、次の分光パラメーターが得られた。奇数パリティフォノンと偶数パリティフォノンの有効エネルギーは、hωodd=158及びhωeven=564cm-1、それぞれ、Hung-RhysパラメーターS=2.1、非放射定数Knr=1014s-1、エネルギーギャップを埋めるフォノンの数は~19である。この結晶は長い寿命(300Kで41μs)と高い量子効率により、近赤外領域の新しい有望な波長可変レーザー媒質となる。) 3 本件訂正発明1について (1) 対比 本件訂正発明1と甲1発明を対比する。 ア 甲1発明の「第1の光104を放射する、LEDまたは他の任意の好適なソースである光源100」は、本件訂正発明1の「発光光源」に相当し、甲1発明の「蛍光体」は、本件訂正発明1の「蛍光体」に相当する。 そうすると、甲1発明の「光源100」を備える「蛍光体のような、NIR放射発光材料を介して、特に近赤外(NIR)放射線を放射する装置」は、本件訂正発明1の「発光光源と蛍光体とを備える発光装置」に相当する。 したがって、本件訂正発明1と甲1発明は、「発光光源と蛍光体とを備える発光装置」の発明である点において一致する。 イ 甲1発明の「光源100」が「放射する」「第1の光104」は、「青色光であり、例えば、440nmと460nmの間にピーク波長を有するもの」であるから、本件訂正発明1の「発光光源」が発する「300nm以上480nm以下の波長範囲にピークを持つ光」に相当する。 したがって、本件訂正発明1と甲1発明は、「前記発光光源は、300nm以上480nm以下の波長範囲にピークを持つ光を発[する]」点において一致する。 ウ(ア) 甲1発明の「第1の光104の一部が入射される第2の蛍光体102」は、「第1の光104を吸収し、第3の光106を放射するものであり」、「第3の光106は、赤色」であるところ、赤色光の波長帯は概ね625~780nmの範囲にあるから、甲1発明の「第1の光104の一部が入射され」、「第1の光104を吸収し、第3の光106(赤色)を放射する」「第2の蛍光体102」は、本件訂正発明1の「前記発光光源によって励起されて600nm以上800nm以下の波長範囲にピークを持つ光を発する赤色蛍光体」に相当する。 (イ) さらに甲1発明においては、「第3の光106(赤色)が、NIR蛍光体108に入射されると、NIR蛍光体108は、第3の光106(赤色)の全てまたは一部を吸収し、第4の光110を放射するものであり」、「第4の光110」は「近赤外光」であるから、甲1発明の「少なくとも700nmのピーク波長を有する光を放射」する「NIR蛍光体108」は、本件訂正発明1の「前記600nm以上800nm以下の波長範囲にピークを有する光によって励起されて近赤外光を発する近赤外発光蛍光体」に相当する。 (ウ) 甲1発明では、「NIR蛍光体108および第2の蛍光体102は、単一の波長変換層において相互に混合され」るものであるから、甲1発明の「蛍光体」は、「NIR蛍光体108および第2の蛍光体102」を含有するものであるといえる。 (エ) 前記(ア)~(ウ)を踏まえると、本件訂正発明1と甲1発明は、次の点において一致する。 「前記蛍光体は、前記発光光源によって励起されて600nm以上800nm以下の波長範囲にピークを持つ光を発する赤色蛍光体と、前記600nm以上800nm以下の波長範囲にピークを有する光によって励起されて近赤外光を発する近赤外発光蛍光体とを含有する」点。 (2) 一致点及び相違点の認定 前記(1)の対比の結果をまとめると、本件訂正発明1と甲1発明は、次の一致点Aにおいて一致し、以下の相違点Aにおいて相違する。 ア 一致点A 「発光光源と蛍光体とを備える発光装置であって、 前記発光光源は、300nm以上480nm以下の波長範囲にピークを持つ光を発し、 前記蛍光体は、前記発光光源によって励起されて600nm以上800nm以下の波長範囲にピークを持つ光を発する赤色蛍光体と、前記600nm以上800nm以下の波長範囲にピークを有する光によって励起されて近赤外光を発する近赤外発光蛍光体とを含有する、発光装置」である点。 イ 相違点A 「蛍光体」が「含有する」、「前記600nm以上800nm以下の波長範囲にピークを有する光によって励起されて近赤外光を発する近赤外発光蛍光体」について、 本件訂正発明1においては、 「4価のCrを含む無機結晶を含有すると共に」「前記4価のCr由来の発光により近赤外光を発する」ものであり、 「前記無機結晶は、Na2M(2)SiO4結晶(ただし、M(2)は、Zn、Mg、CaおよびSrからなる群から少なくとも1つ選択された金属元素)又はLi2SrSiO4結晶にCrが添加されている」のに対して、 甲1発明においては、 「NIR蛍光体108のホスト格子は、4価のカチオンを有し、NIR蛍光体は、NIR蛍光体中の全体のクロム量に対して、10%未満のCr(IV)を有[する]」ものの、Cr(IV)由来の発光により近赤外光を発する点について明示されておらず、NIR蛍光体108の組成も具体的に明示されていない点。 (3) 判断 ア 前記2(4)のア~オに摘記したとおり、甲2~甲4、甲6、甲7の各文献には、4価のCr(Cr4+)がドープされた無機結晶であって4価のCr由来の広帯域の近赤外光を発する、Zn2SiO4、Mg2SiO4、Li2ZnSiO4、Li2CaSiO4、Li2MgSiO4が記載されている。 イ しかしながら、前記相違点Aに係る「Na2M(2)SiO4結晶(ただし、M(2)は、Zn、Mg、CaおよびSrからなる群から少なくとも1つ選択された金属元素)又はLi2SrSiO4結晶にCrが添加されている」「無機結晶」であって、「4価のCrを含[み]」「前記4価のCr由来の発光により近赤外光を発する」ものは、甲2~甲4、甲6、甲7の各文献のほか、技術常識1、2の立証に用いた引用文献1~3及び甲5まで含めても、いずれの文献にも記載も示唆もされていない。 ウ そうすると、甲1発明に甲2~甲7、引用文献1~3の記載事項をいかに適用しても、前記相違点Aに係る本件訂正発明1の構成とすることは当業者にとって容易に想到し得たことではない。 エ したがって、本件訂正発明1は、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 4 本件訂正発明2、5~10について 本件訂正発明2、5~10は、本件訂正発明1の全ての構成を含むから、前記3において説示した理由と同様の理由により、本件訂正発明2、5~10は、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 5 本件訂正発明13について (1) 一致点及び相違点の認定 前記3(1)の対比の結果を踏まえると、本件訂正発明13と甲1発明は、前記一致点Aにおいて一致し、以下の相違点Bにおいて相違する。 <相違点B> 「蛍光体」が「含有する」、「前記600nm以上800nm以下の波長範囲にピークを有する光によって励起されて近赤外光を発する近赤外発光蛍光体」について、 本件訂正発明13においては、 「4価のCrを含む無機結晶を含有すると共に」「前記4価のCr由来の発光により近赤外光を発する」ものであり、 「前記無機結晶は、M(1)2M(2)GeO4結晶(ただし、M(1)は、Liおよび/またはNaである金属元素、M(2)は、Zn、Mg、CaおよびSrからなる群から少なくとも1つ選択された金属元素)にCrが添加されている」のに対して、 甲1発明においては、 「NIR蛍光体108のホスト格子は、4価のカチオンを有し、NIR蛍光体は、NIR蛍光体中の全体のクロム量に対して、10%未満のCr(IV)を有[する]」ものの、Cr(IV)由来の発光により近赤外光を発する点について明示されておらず、NIR蛍光体108の組成も具体的に明示されていない点。 (2) 判断 ア 前記3(3)に示した、相違点Aについての判断と同様に、前記相違点Bに係る「M(1)2M(2)GeO4結晶(ただし、M(1)は、Liおよび/またはNaである金属元素、M(2)は、Zn、Mg、CaおよびSrからなる群から少なくとも1つ選択された金属元素)にCrが添加されている」「無機結晶」であって、「4価のCrを含[み]」「前記4価のCr由来の発光により近赤外光を発する」ものは、甲2~甲4、甲6、甲7のほか、技術常識1、2の立証に用いた引用文献1~3及び甲5まで含めても、いずれの文献にも記載も示唆もされていない。 イ そうすると、甲1発明に甲2~甲7、引用文献1~3の記載事項をいかに適用しても、前記相違点Bに係る本件訂正発明13の構成とすることは当業者にとって容易に想到し得たことではない。 ウ したがって、本件訂正発明13は、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 6 本件訂正発明14~19について 本件訂正発明14~19は、本件訂正発明13の全ての構成を含むから、前記5において説示した理由と同様の理由により、本件訂正発明14~19は、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 7 本件訂正発明20について (1) 一致点及び相違点の認定 前記3(1)の対比の結果を踏まえると、本件訂正発明20と甲1発明は、前記一致点Aにおいて一致し、以下の相違点Cにおいて相違する。 <相違点C> 「蛍光体」が「含有する」、「前記600nm以上800nm以下の波長範囲にピークを有する光によって励起されて近赤外光を発する近赤外発光蛍光体」について、 本件訂正発明20においては、 「前記近赤外発光蛍光体は、Li2MgGeO4:Cr4+、および、Li2ZnGeO4:Cr4+からなる群から少なくとも1種選択される」のに対して、 甲1発明においては、 「NIR蛍光体108のホスト格子は、4価のカチオンを有し、NIR蛍光体は、NIR蛍光体中の全体のクロム量に対して、10%未満のCr(IV)を有[する]」ものの、NIR蛍光体108の組成は具体的に明示されていない点。 (2) 判断 ア 前記3(3)に示した、相違点Aについての判断と同様に、前記相違点Cに係る「Li2MgGeO4:Cr4+、および、Li2ZnGeO4:Cr4+からなる群から少なくとも1種選択される」「近赤外発光蛍光体」は、甲2~甲4、甲6、甲7のほか、技術常識1、2の立証に用いた引用文献1~3及び甲5まで含めても、いずれの文献にも記載も示唆もされていない。 イ そうすると、甲1発明に甲2~甲7、引用文献1~3の記載事項をいかに適用しても、前記相違点Cに係る本件訂正発明20の構成とすることは当業者にとって容易に想到し得たことではない。 ウ したがって、本件訂正発明20は、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第5 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について 1 申立理由の概要 特許異議申立人は、次の(1)及び(2)に示す申立理由1、2を主張している。 (1) 申立理由1(新規性欠如) 請求項1、2、6、8、9及び10に係る発明は、甲1に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当するから、請求項1、2、6、8、9及び10に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し取り消すべきものである (2) 申立理由2(進歩性欠如) 請求項3~5、7、11及び12に係る発明は、甲1に記載された発明並びに周知技術(甲2参照)及び甲3~7の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、請求項3~5、7、11及び12に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し取り消すべきものである。 2 申立理由の検討 特許異議申立人の主張する申立理由1、2は、いずれも甲1を主たる引用文献として、新規性・進歩性が欠如するというものである。 しかしながら、前記第4の3~7において説示したとおり、本件訂正発明1、2、5~10、13~20は、甲1号証を出発点とし、甲2~甲7の記載事項を踏まえて検討しても、当業者が容易に発明できたものではない。 したがって、申立理由1、2はいずれも理由がない。 第6 むすび 前記第4において検討したとおり、請求項1、2、5~10、13~20に係る特許は、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由により取り消すことはできない。 また、前記第5において検討したとおり、請求項1、2、5~10、13~20に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっても、取り消すことができない。 そして、他に請求項1、2、5~10、13~20に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 請求項3、4、11、12に係る特許についての特許異議の申立てについては、これらの請求項3、4、11、12は本件訂正により削除され、当該申立てに係る特許が存在しないこととなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700798

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