特許異議申立
2024-700960
往復式電気かみそり
- 審判番号
- 2024-700960
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-172179
- 登録番号
- 7465401
- 請求日
- 2024年10月02日
- 審決日
- 2025年09月09日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】マクセルイズミ株式会社
- 【権利者代理人】森本 聡
- 【異議申立人】足立 幸子
- 審判長/審判官
- 審判長 本庄 亮太郎
- 審判官 大山 健
- 審判官 田々井 正吾
- 分類
- P1651.121-YAA(B26B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第6項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7465401号発明「往復式電気かみそり」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7465401号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを認める。
特許第7465401号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7465401号の特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、令和2年7月1日(優先権主張 令和元年9月26日)に出願された特願2020-114291の一部を、令和5年10月3日に新たな特許出願である特願2023-172179としたものであって、令和6年4月2日にその特許権の設定登録がされ、同月10日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許についてこの特許異議申立てがされ、経緯は次のとおりである。
1 令和6年10月 2日 :
特許異議申立人足立幸子(以下「申立人」という。)による請求項1に係る特許に対する特許異議の申立て
2 令和7年 1月22日付け:
特許権者マクセルイズミ株式会社(以下「特許権者」という。)に対して取消しの理由(以下「取消理由」という)を通知(以下、この通知を「取消理由通知」という。)。
3 令和7年 3月27日 :
特許権者による訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)、及び意見書の提出
4 令和7年 4月 9日付け:
申立人に対して訂正請求があった旨を通知
5 令和7年 5月15日 :
申立人による意見書(以下「申立人意見書」という。)の提出
第2 本件訂正請求による訂正の適否
本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の適否について検討する。
1 請求の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、本件特許の明細書、及び特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正明細書、及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを求めるものである。
2 一群の請求項
本件特許の特許請求の範囲は請求項1のみであるから、一群の請求項は存在せず、願書に添付した特許請求の範囲の訂正をする場合に特許法第120条の5第4項の適用はなく、願書に添付した明細書又は図面の訂正をする場合に同条第9項で準用する同法第126条第4項の適用はない。
3 独立特許要件
本件特許異議申立ては、本件訂正前の全ての請求項である請求項1が対象とされているので、本件訂正に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
4 請求項1の訂正(下線は訂正箇所。以下、第2において同じ。)
(1)訂正事項1
請求項1に記載した「外刃と、前記外刃の内面に摺接しつつ左右に往復動する内刃とを備えた往復式電気かみそりであって、」を、「外刃と、前記外刃の内面に摺接しつつ左右に往復動する内刃と、前記内刃を往復させる2つのオシレータとを備えた往復式電気かみそりであって、」に訂正する。
(2)訂正事項2
請求項1に記載した「前記カット刃、前記トリマ刃、前記カット刃、前記カット刃、前記トリマ刃、前記カット刃が記載順に6つ並んで設けられており、」を、「前記カット刃、前記トリマ刃、前記カット刃、前記カット刃、前記トリマ刃、前記カット刃が記載順に前方から後方に向かって6つ並んで設けられており、」に訂正する。
(3)訂正事項3~5
訂正事項3~5は、いずれもオシレータに関する訂正を内容とするため、一括して検討する。
請求項1に記載した
「 前記記載順に6つ並んだ前記カット刃、前記トリマ刃、前記カット刃、前記カット刃、前記トリマ刃、前記カット刃において、1番目に並んだ前記カット刃に比べて2番目に並んだ前記トリマ刃の昇降量が小さくなるように設定されており、かつ、6番目に並んだ前記カット刃に比べて5番目に並んだ前記トリマ刃の昇降量が小さくなるように設定されていることを特徴とする往復式電気かみそり。」を、
「 前記記載順に6つ並んだ前記カット刃、前記トリマ刃、前記カット刃、前記カット刃、前記トリマ刃、前記カット刃において、1番目に並んだ前記カット刃に比べて2番目に並んだ前記トリマ刃の昇降量が小さくなるように設定されており、かつ、6番目に並んだ前記カット刃に比べて5番目に並んだ前記トリマ刃の昇降量が小さくなるように設定されており、
2つの前記オシレータのそれぞれは、左右方向に往復動可能な可動台と、前記可動台に立設固定されて上端が前記内刃に連結されるアーム部とを有し、
一方のオシレータにおける前記アーム部が、第1番目に並んだ前記カット刃を構成する前記第1内刃に連結される第1腕と、第2番目に並んだ前記トリマ刃を構成する前記第2内刃に連結される第2腕と、第3番目に並んだ前記カット刃を構成する第1内刃に連結される第3腕とを有しており、
他方のオシレータにおける前記アーム部が、第4番目に並んだ前記カット刃を構成する前記第1内刃に連結される第1腕と、第5番目に並んだ前記トリマ刃を構成する前記第2内刃に連結される第2腕と、第6番目に並んだ前記カット刃を構成する第1内刃に連結される第3腕の3つの腕を有していることを特徴とする往復式電気かみそり。」に訂正する。
(4)訂正事項1~5の訂正要件(特許法第120条の5第6項に該当するか否か)について
ア 訂正の目的について
(ア)訂正事項1
訂正事項1は、本件特許発明1の往復式電気かみそりが、内刃を往復させる2つのオシレータを備えたことを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)訂正事項2
訂正事項2は、請求項1における記載順に6つ並んで設けられている本件特許発明1のカット刃、トリマ刃、カット刃、カット刃、トリマ刃、カット刃について、「前方から後方に向かって」並んで設けられていることを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(ウ)訂正事項3~5
訂正事項3~5は、上記(ア)で限定した2つのオシレータのそれぞれが、「左右方向に往復動可能な可動台」と「前記可動台に立設固定されて上端が前記内刃に連結されるアーム部」とを有することを限定し、さらに2つの上記オシレータのそれぞれのアーム部が有している第1腕、第2腕、及び第3腕に関する事項を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(エ)訂正事項1~5の目的について
上記(ア)~(ウ)より、訂正事項1~5はいずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加について
上記アのとおり、訂正事項1~5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて検討する。
(ア)訂正事項1
本件明細書等の段落0013には、「図2に示すように、本体2には、モータ5における駆動軸5aの回転運動を直線運動に変換するクランク部6と、クランク部6を介してモータ5の駆動力によって内刃12を往復動させる第1オシレータ7及び第2オシレータ8が備わっており、」と記載され、図2~3、5には、第1オシレータ7及び第2オシレータ8が図示されている。
したがって、本件明細書等には、訂正事項1で限定する「内刃を往復させる2つのオシレータ」が記載されているといえる。
(イ)訂正事項2
本件明細書等の段落0017には、「図4に示すように、第1外刃11a、第2外刃11b、第1外刃11a、第1外刃11a、第2外刃11b、第1外刃11aの順に前後に対称配置している。」と記載され、段落0015の記載からみて、第1外刃11aはカット刃、第2外刃11bはトリマ刃である。段落0011には、「なお、往復式電気かみそり1の各部の位置関係を説明し易くするため、図中に矢印で向きを示しており、本明細書では、本体2の正面を「前」と表記し、本体2の背面を「後」と表記する場合がある。」と記載され、図1~2、4においては、本体2について、正面を前方(front)、背面を後方(back)と矢印で示している。
したがって、本件明細書等には、訂正事項2で限定するカット刃、トリマ刃、カット刃、カット刃、トリマ刃、カット刃について、「前方から後方に向かって」並んで設けられていることが記載されているといえる。
(ウ)訂正事項3~5
本件明細書等の段落0033には、「第1オシレータ7は、往復動可能な可動台7aと、可動台7aの両端に配設されて可動台7aを吊持する支持部7bと、支持部7bの両端に配設されて本体2の内部にねじ等の固定手段によって取付けられた取付部7cと、可動台7aに立設固定されて上端部が内刃12に着脱可能に取付けられたアーム部7dを有する。また、第2オシレータ8は、往復動可能な可動台8aと、可動台8aの両端に配設されて可動台8aを吊持する支持部8bと、支持部8bの両端に配設されて本体2の内部にねじ等の固定手段によって取付けられた取付部8cと、可動台8aに立設固定されて上端部が内刃12に着脱可能に取付けられたアーム部8dを有する。」と記載され、図5にはこの第1オシレータ7及び第2オシレータ8の構造が図示されている。
これらの段落0033及び図5の記載事項からみて、2つのオシレータのそれぞれが可動台とアーム部を有すること、そして、可動台は、左右方向に往復動可能であること、また、アーム部は、可動台に立設固定されて上端部が内刃に着脱可能に取り付けられており、このアーム部は、内刃と別体に構成されていたものが、当該内刃に着脱可能に取り付けられるのであるから、内刃に連結されるものであることが理解できる。
そうすると、本件明細書等には、訂正事項3~5の
(a)「2つの前記オシレータのそれぞれは、左右方向に往復動可能な可動台と、前記可動台に立設固定されて上端が前記内刃に連結されるアーム部を有し」ていることについて記載されているといえる。
次に、段落0022には、「第1オシレータ7におけるアーム部7dは、上下方向の第1中心線P1の線上に内刃12のうちの1つが取付けられる。ここでは、第1腕17aに第1内刃12aが取付けられ、第2腕17bに第2内刃12bが取付けられ、第3腕17cに第1内刃12aが取付けられる。」と、段落0023には、「第2オシレータ8におけるアーム部8dは、第1中心線P1と平行な第2中心線P2の線上に内刃12のうちの1つが取付けられる。ここでは、第1腕18aに第1内刃12aが取付けられ、第2腕18bに第2内刃12bが取付けられ、第3腕18cに第1内刃12aが取付けられる。」と記載され、図5には、第1オシレータ7におけるアーム部7dが第1腕17a、第2腕17b、第3腕17cを有し、第2オシレータ8におけるアーム部8dが第1腕18a、第2腕18b、第3腕18cを有することが図示されている。
これらの段落0022~0023及び図5の記載事項からみて、オシレータの2つのそれぞれが第1~3腕部を有すること、そして、第1~3腕部が、それぞれ、第1~2内刃に着脱可能に取り付けられていること、及び一方のオシレータにおけるアーム部の第1、3腕部、及び他方のオシレータのアーム部の第4、6腕部に取り付けられる第1内刃がカット刃を構成し、一方のオシレータにおけるアーム部の第2腕部、及び他方のオシレータにおけるアーム部の第5腕部に取り付けられる第2内刃がトリマ刃を構成することが理解できる。
また、この第1~3腕部は、第1~2内刃と別体に構成されているものであって、当該第1~2内刃に取り付けられるものであるから、第1~2内刃に連結されることが理解できる。
そうすると、本件明細書等には、訂正事項3~5の
(b)「一方のオシレータにおける前記アーム部が、第1番目に並んだ前記カット刃を構成する前記第1内刃に連結される第1腕と、第2番目に並んだ前記トリマ刃を構成する前記第2内刃に連結される第2腕と、第3番目に並んだ前記カット刃を構成する第1内刃に連結される第3腕とを有しており、
他方のオシレータにおける前記アーム部が、第4番目に並んだ前記カット刃を構成する前記第1内刃に連結される第1腕と、第5番目に並んだ前記トリマ刃を構成する前記第2内刃に連結される第2腕と、第6番目に並んだ前記カット刃を構成する第1内刃に連結される第3腕の3つの腕を有していること」について記載されているといえる。
したがって、本件明細書等には、上記(a)及び(b)の事項からなる訂正事項3~5について、いずれも記載されていることが認められる。
(エ)申立人意見書における訂正事項3~5に関する主張
申立人意見書の「3.1 訂正請求について」において、申立人は、上記(3)の訂正事項3~5に関し、請求項1に新たに「連結される」の用語が記載されたことにより、「上端が前記内刃に連結されるアーム部」、「第1内刃に連結される第1腕」、「第2内刃に連結される第2腕」、及び「第1内刃に連結される第3腕」という、「内刃」に対して「アーム部」及び「腕」が「連結される」ことが新たに発明特定事項となったことが、新規事項を追加するものであり、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでない旨の主張をする。
そして、その根拠としては、「連結」という用語が、本件明細書等の段落0012、0014、0029、0036~0038、0042、0044で用いられているが、いずれも、「内刃」に対して「アーム部」及び「腕」が「連結される」ことを記載したものでなく、また、訂正請求書において特許権者が訂正事項3~5の訂正の根拠として列挙する本件明細書等の段落0033、0022~0023では、「内刃」に対して「アーム部」及び「腕」が「取付けられる」ことが記載され、「連結される」の用語は用いられていないこと、さらに、申立人意見書に添付して提出された甲第6号証の「広辞苑(第五版)」によれば、「取付け」あるいは「取り付ける」は、「連結」は同義でないことを説明する。
これに対して、上記(ウ)でも検討したように、本件明細書等の段落0033及び図5の記載より、アーム部及び腕について、内刃と別体に構成されていたものが、当該内刃に着脱可能に取り付けられるものであることが把握され、0022~0023及び図5の記載より、この第1~3腕部は、第1~2内刃と別体に構成されていたものであって、当該第1~2内刃に取り付けられるものであることが把握される。
そして、訂正事項3~5について、内刃と別体に構成されていたアーム部あるいは第1~3腕部が取り付けられて一体になることに対して、上記甲第6号証の広辞苑(第五版)において「つらねむすぶこと」、あるいは「むすびあわせること」を語義としている「連結」の用語を選択することが誤りであるとまではいえないし、また、この用語を選択することにより、上記本件明細書等の段落0033、0022~0023及び図5の記載内容とは異なった技術的思想を導入するものとまでもいえない。
また、申立人意見書で指摘されている本件明細書等の上記段落0012、0014、0029、0036~0038、0042、0044で用いられている「連結」の用語が、内刃と別体に構成されていたアーム部あるいは第1~3腕部が取り付けられて一体になることとは区別して用いられている事情も見出せず、訂正事項3~5において、この「連結」の用語の選択をして用いることが不都合であるという事情も認められない。
したがって、申立人意見書における「3.1 訂正請求について」の主張は採用することができない。
(オ)訂正事項1~5における新規事項の追加の有無について
上記(ア)~(エ)より、訂正事項1~5は、本件明細書等に新規事項を追加するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更について
(ア)訂正事項1
訂正事項1は、本件特許発明1の往復式電気かみそりが、オシレータを備えたことを限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(イ)訂正事項2
訂正事項2は、本件特許発明1のカット刃、トリマ刃、カット刃、カット刃、トリマ刃、カット刃について、「前方から後方に向かって」並んで設けられていることを限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(ウ)訂正事項3~5
訂正事項3~5は、訂正事項1でオシレータの2つのそれぞれについて、可動台とアーム部とを有することを限定し、さらにそれぞれのアーム部が有している第1腕、第2腕、及び第3腕に関する事項を限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(エ)訂正事項1~5における特許請求の範囲の拡張・変更の有無について
上記(ア)~(ウ)より、訂正事項1~5は、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
5 明細書の訂正
(1)訂正事項6
明細書の段落0006に記載した
「本発明に係る往復式電気かみそりは、外刃と、前記外刃の内面に摺接しつつ左右に往復動する内刃とを備えた往復式電気かみそりである。前記外刃は、複数の第1外刃と当該第1外刃と異なる形状の複数の第2外刃とが配されている。前記内刃は、前記第1外刃と対応する第1内刃と前記第2外刃と対応する第2内刃とが配されている。前記第1外刃と前記第1内刃とでカット刃が構成されており、前記第2外刃と前記第2内刃とでトリマ刃が構成されている。前記カット刃、前記トリマ刃、前記カット刃、前記カット刃、前記トリマ刃、前記カット刃が記載順に6つ並んで設けられていることを特徴とする。また、前記カット刃及び前記トリマ刃は昇降可能に設けられている。前記記載順に6つ並んだ前記カット刃、前記トリマ刃、前記カット刃、前記カット刃、前記トリマ刃、前記カット刃において、1番目に並んだ前記カット刃に比べて2番目に並んだ前記トリマ刃の昇降量が小さくなるように設定されており、かつ、6番目に並んだ前記カット刃に比べて5番目に並んだ前記トリマ刃の昇降量が小さくなるように設定されている。」を、
「本発明に係る往復式電気かみそりは、外刃と、前記外刃の内面に摺接しつつ左右に往復動する内刃と、前記内刃を往復させる2つのオシレータとを備えた往復式電気かみそりである。前記外刃は、複数の第1外刃と当該第1外刃と異なる形状の複数の第2外刃とが配されている。前記内刃は、前記第1外刃と対応する第1内刃と前記第2外刃と対応する第2内刃とが配されている。前記第1外刃と前記第1内刃とでカット刃が構成されており、前記第2外刃と前記第2内刃とでトリマ刃が構成されている。前記カット刃、前記トリマ刃、前記カット刃、前記カット刃、前記トリマ刃、前記カット刃が記載順に前方から後方に向かって6つ並んで設けられていることを特徴とする。また、前記カット刃及び前記トリマ刃は昇降可能に設けられている。前記記載順に6つ並んだ前記カット刃、前記トリマ刃、前記カット刃、前記カット刃、前記トリマ刃、前記カット刃において、1番目に並んだ前記カット刃に比べて2番目に並んだ前記トリマ刃の昇降量が小さくなるように設定されており、かつ、6番目に並んだ前記カット刃に比べて5番目に並んだ前記トリマ刃の昇降量が小さくなるように設定されている。2つの前記オシレータのそれぞれは、左右方向に往復動可能な可動台と、前記可動台に立設固定されて上端が前記内刃に連結されるアーム部とを有する。一方のオシレータにおける前記アーム部が、第1番目に並んだ前記カット刃を構成する前記第1内刃に連結される第1腕と、第2番目に並んだ前記トリマ刃を構成する前記第2内刃に連結される第2腕と、第3番目に並んだ前記カット刃を構成する第1内刃に連結される第3腕とを有する。他方のオシレータにおける前記アーム部が、第4番目に並んだ前記カット刃を構成する前記第1内刃に連結される第1腕と、第5番目に並んだ前記トリマ刃を構成する前記第2内刃に連結される第2腕と、第6番目に並んだ前記カット刃を構成する第1内刃に連結される第3腕の3つの腕を有する。」に訂正する。
(2)訂正事項6の訂正要件(特許法第120条の5第6項に該当するか否か)について
ア 訂正の目的について
訂正事項6は、訂正事項1~5による請求項1の訂正に伴い、明細書の記載を整合させることを目的としており、特許法第120条の5第2項ただし書第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とする。
イ 新規事項の追加、及び特許請求の範囲の拡張・変更について
上記アのとおり、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて検討する。
訂正事項6は、訂正事項1~5により訂正した特許請求の範囲に、明細書の記載を整合させることを目的とし、訂正事項1~3の内容を明細書に反映するものである。
したがって、訂正事項6は、訂正事項1~5で検討したのと同様に、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(3)明細書又は図面の訂正と関係する請求項について
上記2のとおり、本件特許について、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の適用はなく、訂正事項6は、請求項1に関係する訂正である。
6 小括
以上のとおりであるから、本件訂正の訂正事項1~5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とし、これら訂正事項1~5のいずれも、同条第9項で準用する同法第126条の第5項及び第6項の規定に適合するものである。
そして、本件訂正の訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とし、同条第9項で準用する同法第126条の第5項及び第6項の規定に適合するものである。
したがって、訂正事項1~6を内容とする本件訂正に関し、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおり本件訂正を認めたから、本件請求項1に係る特許発明(以下「本件特許発明1」という。)は、本件訂正により訂正をした特許請求の範囲の請求項1に記載した次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
外刃と、前記外刃の内面に摺接しつつ左右に往復動する内刃と、前記内刃を往復させる2つの オシレータとを備えた往復式電気かみそりであって、
前記外刃は、複数の第1外刃と当該第1外刃と異なる形状の複数の第2外刃とが配されており、
前記内刃は、前記第1外刃と対応する第1内刃と前記第2外刃と対応する第2内刃とが配されており、
前記第1外刃と前記第1内刃とでカット刃が構成されており、前記第2外刃と前記第2内刃とでトリマ刃が構成されており、
前記カット刃、前記トリマ刃、前記カット刃、前記カット刃、前記トリマ刃、前記カット刃が記載順に前方から後方に向かって6つ並んで設けられており、
前記カット刃及び前記トリマ刃は昇降可能に設けられており、
前記記載順に6つ並んだ前記カット刃、前記トリマ刃、前記カット刃、前記カット刃、前記トリマ刃、前記カット刃において、1番目に並んだ前記カット刃に比べて2番目に並んだ前記トリマ刃の昇降量が小さくなるように設定されており、かつ、6番目に並んだ前記カット刃に比べて5番目に並んだ前記トリマ刃の昇降量が小さくなるように設定されており、
2つの前記オシレータのそれぞれは、左右方向に往復動可能な可動台と、前記可動台に立設固定されて上端が前記内刃に連結されるアーム部とを有し、
一方のオシレータにおける前記アーム部が、第1番目に並んだ前記カット刃を構成する前記第1内刃に連結される第1腕と、第2番目に並んだ前記トリマ刃を構成する前記第2内刃に連結される第2腕と、第3番目に並んだ前記カット刃を構成する第1内刃に連結される第3腕とを有しており、
他方のオシレータにおける前記アーム部が、第4番目に並んだ前記カット刃を構成する前記第1内刃に連結される第1腕と、第5番目に並んだ前記トリマ刃を構成する前記第2内刃に連結される第2腕と、第6番目に並んだ前記カット刃を構成する第1内刃に連結される第3腕の3つの腕を有していることを特徴とする往復式電気かみそり。」
第4 申立人の証拠方法
1 特許異議申立書に添付した証拠方法
申立人が特許異議申立書に添付した証拠方法は、次の甲第1号証~甲第5号証(以下、甲第○号証を甲○という)である。
(1)甲1:意匠登録第1545153号公報
(2)甲2:特開2011-67347号公報
(3)甲3:特開2011-67420号公報
(4)甲4:特開平5-293258号公報
(5)甲5:特開平11-267376号公報
2 申立人意見書に添付した証拠方法
申立人が申立人意見書に添付した証拠方法は、次の甲6~7である。
(1)甲6:新村出、「広辞苑」、株式会社岩波書店、1998年11月11日、第五版、第1950、2838ページ
(2)甲7:特開2017-127384号公報
第5 当審で通知した取消理由の概要
当審が令和7年1月22日付けで特許権者に対して通知した取消理由の概要は次のとおりである。
(進歩性)請求項1に係る発明は、甲第3号証、及び甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
第6 証拠の記載
1 甲1
(1)甲1の記載事項
ア 書誌事項(第1ページ)
「(54)【意匠に係る物品】電気かみそり・・・
(55)【意匠に係る物品の説明】
この意匠に係る物品は、ひげをせん断することができる電気かみそりである。電気かみそりのヘッド部には、網刃とスリット刃が並設されている。断面図において、逆U字状の刃が網刃であり、左回りに90°回転したコ字状の刃がスリット刃である。」
イ 図面(第1~5ページ)
(ア)【斜視図】
[図:0001429999000001.jpg]
(イ)【正面図】
[図:0001429999000002.jpg]
(ウ)【背面図】
[図:0001429999000003.jpg]
(エ)【右側面図】
[図:0001429999000004.jpg]
(オ)【左側面図】
[図:0001429999000005.jpg]
(カ)【平面図】
[図:0001429999000006.jpg]
(キ)【底面図】
[図:0001429999000007.jpg]
(ク)【内部機構を省略したA-A断面図】
[図:0001429999000008.jpg]
(ケ)【B-B間の部分拡大図】
[図:0001429999000009.jpg]
(2)甲1に記載された技術的事項
上記(1)より、甲1には次の技術的事項(以下「甲1記載の技術的事項」という。)が記載されている。
「ひげをせん断することができる電気かみそりであって、
網刃、スリット刃、網刃、網刃、スリット刃、網刃が記載順に6つ並んで設けられている電気かみそり。」
2 甲2
甲2の段落0001、0019~0029、図1~4の記載からみて、甲2には次の技術的事項(以下「甲2記載の技術的事項」という。〔 〕内に根拠箇所を記載。)が記載されている。
「外刃20と、前記外刃20の内部側に、往復駆動可能で外刃20内に導入された体毛を挟んで切除するために設けられた内刃30を備えた往復動作をする電気かみそりであって〔段落0001、0019、図1〕、
前記外刃20は、複数のネット刃21~23と、当該ネット刃21~23と形状の異なるスリット刃24~25が並設されており〔段落0020~0021、図1~4〕、
前記内刃30は、前記ネット刃21~23の内部側に設けられたものと、前記スリット刃24~25の内部側に設けられたものが並設されており〔段落0020~0021、図1~4〕、
前記ネット刃21~23と前記ネット刃21~23の内部側に設けられた内刃30が、短いくせ髭が剃りやすいように形成されており、前記スリット刃24~25と前記スリット刃24~25の内部側に設けられた内刃30が、長毛が剃りやすいように設定されており〔段落0020~0021、図1~4〕、
前記ネット刃21、スリット刃24、ネット刃23、スリット刃25、ネット刃22が、記載順に前後方向Xに5つ並設されており〔段落0020~0021、図1~4〕、
前記外刃20のそれぞれは、ネット刃21~23の係合凹部21a~23aとスリット刃24~25の係合凸部24a~25aが上下方向に隙間を有して遊嵌されることによって前後方向Xに隣り合う外刃20の下動に連動して下動するように設けられている〔段落0021~0029、図2~4〕往復動作をする電気かみそり。」
3 甲3
(1)甲3の記載事項
ア 発明の詳細な説明
「【技術分野】
【0001】
本発明は、髭等の体毛を剃るための電気かみそりに関するものである。
・・・
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、肌の凸部分にフィットする構成としつつも、製造し易く、低コスト化を図ることができる電気かみそりを提供することにある。
・・・
【0019】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態の電気かみそり11は、使用者が把持可能な把持部12と、該把持部12の上端部に設けられたヘッド部13とを備える。ヘッド部13は、把持部12に対して例えば前後方向X(剃り方向)及び幅方向Yに傾動可能に支持されている。尚、電気かみそり11の前後方向X、幅方向Y、及び上下方向Zは、それぞれ互いに直交する方向である。
【0020】
ヘッド部13の上端、詳しくはヘッドケース13aの上端開口部には、体毛を導入可能な外刃20が自身の短手方向であってヘッド部13の前後方向Xに沿って複数並設されるとともに、それぞれ上方に付勢された状態で下動可能(フロート可能)に設けられている。尚、各外刃20は、図示しない樹脂支持枠に固定されて該樹脂支持枠と共に外刃ブロックを構成し、その外刃ブロック全体がヘッドケース13aに対して所定の範囲で上下動可能に支持されるとともに、ばね14 a,14b(図3参照)にて上方に付勢されることで、上方からの圧力にて下動可能(フロート可能)に設けられている。【0021】
また、ヘッド部13において、各外刃20の内部側にはそれぞれ、外刃20の長手方向であってヘッド部13の幅方向Yにおいて沿って往復駆動可能で外刃20内に導入された体毛を挟んで切除するための内刃30が設けられている。内刃30は、図示しない樹脂支持枠に固定されて該樹脂支持枠と共に内刃ブロックを構成し、その樹脂支持枠が前記幅方向Yに沿って往復駆動可能な図示しない駆動軸に連結されて設けられている。また、この駆動軸は、例えばヘッド部13の内部、又は把持部12の内部に設けられた駆動源(モータ)にて駆動可能とされている。
【0022】
ここで、本実施形態の外刃20は、前後方向Xに沿って5つ並設され、所謂5枚刃とされている。そして、5つの外刃20は、前後方向X(並設方向)の両端のものがそれぞれ湾曲外刃21とされ、前後方向X中間の3つがそれぞれ直線外刃22とされている。
【0023】
各湾曲外刃21は、図2に示すように、前後方向Xから見てその上端21aが上側に凸となるように所定の曲率で湾曲する形状をなしている。一方、各直線外刃22は、前後方向Xから見て、上端22aが幅方向Yに沿った直線形状をなしている。尚、各直線外刃22は、初期位置(上方からの荷重が掛かっていない状態での位置)では、その各上端21a,22aが前後方向Xから見て互いに重なっている。また、初期位置において、湾曲外刃21は、前後方向Xから見てその上端21aの頂点部21b(幅方向Y中央部)が直線外刃22の上端22aと重なるように構成されている。また、各湾曲外刃21及びその1つ内側の直線外刃22は、その上端部が幅方向Yから見て湾曲するように形成されている(図3参照)。また、各湾曲外刃21及び各直線外刃22内の内刃30は、各湾曲外刃21及び各直線外刃22にそれぞれ対応する形状をなしている(図1参照)。
【0024】
また、各湾曲外刃21は前記ばね14aにて上方に付勢され、各直線外刃22 はばね14bにて上方に付勢されている。そして、ばね14aの付勢力は、ばね14bよりも大きくなるように設定されている。即ち、各湾曲外刃21のフロート力は、直線外刃22のフロート力よりも大きくなるように構成されている。尚、各ばね14a,14bは、各外刃20(外刃ブロック)とヘッドケース13a に形成されたばね支持部13bとの間に介在されている。
【0025】
尚、本実施形態では、各外刃20のうち、前後方向X両端のもの(湾曲外刃21)は粗剃り用のネット刃とされ、その粗剃り用の各ネット刃のそれぞれ1つ内側に配置された直線外刃22は仕上げ用のネット刃とされ、前後方向X中央に配置される直線外刃22が自身の短手方向(前後方向X)に沿ったスリット(図示略)を有するスリット刃とされている。粗剃り用のネット刃(湾曲外刃21)は、網目を構成する多数の枠状の外刃部(一方向に略沿って多数並設される第1外刃部と、該第1外刃部同士を連結すると共に第1外刃部と直交する方向に略沿って多数並設される第2外刃部)の厚さが略一定に設定されている。また、仕上げ用のネット刃は、網目を構成する多数の枠状の外刃部(一方向に略沿って多数並設される第1外刃部と、該第1外刃部同士を連結すると共に第1外刃部と直交する方向に略沿って多数並設される第2外刃部)の厚さが部分的に(例えば第2外刃部のみが)薄く形成され、短いくせ髭等においても剃れやすいように形成されている。また、前後方向X中央のスリット刃は、長毛が剃りやすいように前後方 向Xに沿って延びるスリットの長さ幅が設定されている。
・・・
【0037】
・上記実施形態では、湾曲外刃21のフロート力と直線外刃22のフロート力とが異なるように構成されたが、これに特に限定されるものではなく、湾曲外刃21のフロート可能量と直線外刃22のフロート可能量とが異なるように構成してもよい。例えば図6に示すように、各外刃20の前記樹脂支持枠には、ヘッドケース13aに形成された上下方向に延びる係合溝51,52と係合する係合凸部61が形成されている。各係合溝51,52は、その上端部の上下方向Z位置は互いに等しく形成されており、各外刃20の前記初期位置では、各外刃20はばね15により上方に付勢されて、各係合凸部61は各係合溝51,52の上端部と係合している。そして、各外刃20のフロート可能量は、各係合溝51,52の上下方向Zの寸法で決定されるようになっており、湾曲外刃21の係合凸部61と係合する係合溝51の上下方向Zの寸法は、直線外刃22の係合凸部61 と係合する係合溝52の上下方向Zの寸法よりも短く形成されている。即ち、湾曲外刃21のフロート可能量は、直線外刃22のフロート可能量よりも小さく設定されている。これにより、各外刃20を肌Sに押し当てたときに、湾曲外刃2 1が直線外刃22より上方へ突出し易くなるため、湾曲外刃21にて例えば剃り残しの体毛等を狙って剃り易くすることができる。
【0038】
尚、図6に示す構成では、湾曲外刃21のフロート可能量が直線外刃22のフロート可能量よりも小さくなるように構成されたが、反対に湾曲外刃21のフロート可能量が直線外刃22のフロート可能量よりも大きくなるように構成してもよい。この構成によれば、使用の際に湾曲外刃21が強く肌Sに当たることが抑制され、肌Sに対する刺激を小さく抑えることが可能となる。また、図6に示すような、湾曲外刃21のフロート可能量と直線外刃22のフロート可能量とが異なる構成に、本実施形態のような湾曲外刃21のフロート力と直線外刃22のフロート力とが異なる構成を加えてもよい。
・・・
【0041】
・上記実施形態では、前後方向X両側の外刃20(湾曲外刃21)をそれぞれ粗剃り用の各ネット刃とし、それらの1つ内側の外刃20をそれぞれ仕上げ用のネット刃とし、前後方向X中央の外刃20をスリット刃として構成したが、特にこれに限定されるものではなく、その外刃20の種類は構成に応じて適宜変更してもよい。
【0042】
・上記実施形態では、外刃20を5つ有する所謂5枚刃の構成であったが、特にこれに限定されるものではなく、2枚刃、3枚刃、4枚刃又は6枚刃以上の構成としてもよい。
・・・」
イ 図面
「【図1】
[図:0001429999000010.jpg]
【図2】
[図:0001429999000011.jpg]
【図3】
[図:0001429999000012.jpg]
・・・
【図6】
[図:0001429999000013.jpg]
」
(2)甲3の記載事項の整理
ア 段落0020~0021、図1の記載からみて、甲3記載の電気かみそり11は、外刃20、及び外刃20の内部側で往復駆動可能に設けられて外刃20内に導入された体毛を挟んで切除するための内刃30を備えている。
イ 段落0022~0023、図1~3の記載からみて、電気かみそり11の外刃20は、複数の前後方向X両端の湾曲外刃21と、当該湾曲外刃21と異なる形状であり当該複数の湾曲外刃21の一つ内側に配置された複数の直線外刃22と、前後方向X中央に配置される直線外刃22が配されている。
ウ 段落0022~0023、図1の記載からみて、電気かみそり11の内刃30は、湾曲外刃21と対応する形状の内刃30と、湾曲外刃21の一つ内側に配置された直線外刃22と対応する形状の内刃30と、前後方向X中央に配置される直線外刃22と対応する形状の内刃30が配されている。
エ 段落0025、図1~3の記載からみて、電気かみそり11の湾曲外刃21は粗剃り用のネット刃であり、湾曲外刃21の一つ内側に配置された直線外刃22は仕上げ用のネット刃であり、前後方向X中央に配置される直線外刃22は長毛が剃りやすいスリット刃である。
オ 段落0022、0025、図1、3の記載からみて、電気かみそり11は、粗剃り用のネット刃21、仕上げ用のネット刃22、長毛が剃りやすいスリット刃22、仕上げ用のネット刃22、粗剃り用のネット刃21が記載順に前後方向Xに5つ並んで設けられている。
カ 段落0020、0024、図3の記載からみて、電気かみそり11の粗剃り用のネット刃21、仕上げ用のネット刃22、及び前記長毛が剃りやすいスリット刃はフロート可能に設けられている。
キ 段落0022、0037~0038、図1、6の記載について、特に段落0037には、「湾曲外刃21のフロート可能量と直線外刃22のフロート可能量とが異なるように構成してもよい」と記載されている。そして、同段落には「各外刃20のフロート可能量は、各係合溝51,52の上下方向Zの寸法で決定される」ことが記載され、図6には「湾曲外刃21のフロート可能量は、直線外刃22のフロート可能量よりも小さく設定されている」ものが図示されている。
この図6の構成に対して、段落0038には、「尚、図6に示す構成では、湾曲外刃21のフロート可能量が直線外刃22のフロート可能量よりも小さくなるように構成されたが、反対に湾曲外刃21のフロート可能量が直線外刃22のフロート可能量よりも大きくなるように構成してもよい。」と記載され、このように構成されたものは、電気かみそり11における記載順に5つ並んだ粗剃り用のネット刃21、仕上げ用のネット刃22、長毛が剃りやすいスリット刃22、仕上げ用のネット刃22、粗剃り用のネット刃21について、1番目に並んだ粗剃り用のネット刃21に比べて2番目に並んだ仕上げ用のネット刃22のフロート量が小さくなるように設定され、かつ、5番目に並んだ粗剃り用のネット刃21に比べて4番目に並んだ仕上げ用のネット刃22のフロート量が小さくなるように設定されることが認められる。
(3)甲3記載の発明
上記(1)~(2)より、甲3には次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されている。
「外刃20と、前記外刃20の内部側で往復駆動可能に設けられて外刃20内に導入された体毛を挟んで切除するための内刃30とを備えた電気かみそり11であって、
前記外刃20は、複数の前後方向X両端の湾曲外刃21と、当該湾曲外刃21と異なる形状であり当該複数の湾曲外刃21の一つ内側に配置された複数の直線外刃22と、前後方向X中央に配置される直線外刃22が配されており、
前記内刃30は、前記湾曲外刃21と対応する形状の内刃30と、前記湾曲外刃21の一つ内側に配置された直線外刃22と対応する形状の内刃30と、前記前後方向X中央に配置される直線外刃22と対応する形状の内刃30が配されており、
前記湾曲外刃21は粗剃り用のネット刃であり、前記湾曲外刃21の一つ内側に配置された直線外刃22は仕上げ用のネット刃であり、前記前後方向X中央に配置される直線外刃22は長毛が剃りやすいスリット刃であり、
前記粗剃り用のネット刃21、前記仕上げ用のネット刃22、前記長毛が剃りやすいスリット刃22、前記仕上げ用のネット刃22、前記粗剃り用のネット刃21が記載順に前後方向Xに5つ並んで設けられており、
前記粗剃り用のネット刃21、前記仕上げ用のネット刃22、及び前記長毛が剃りやすいスリット刃22はフロート可能に設けられており、
前記記載順に5つ並んだ前記粗剃り用のネット刃21、前記仕上げ用のネット刃22、前記長毛が剃りやすいスリット刃22、前記仕上げ用のネット刃22、前記粗剃り用のネット刃21において、1番目に並んだ前記粗剃り用のネット刃21に比べて2番目に並んだ前記仕上げ用のネット刃22のフロート量が小さくなるように設定されており、かつ、5番目に並んだ前記粗剃り用のネット刃21に比べて4番目に並んだ前記仕上げ用のネット刃22のフロート量が小さくなるように設定されている電気かみそり11。」
4 甲4
甲4の段落0001、0005~0012、図1~8の記載からみて、甲4には次の技術的事項(以下「甲4記載の技術的事項」という。)が記載されている
「外刃と、前記外刃の内面に摺接して往復動する内刃6a~6cと、前記内刃6a~6cを往復させるモータ9の回転を往復に変換する一対の駆動子10b、10cとを備えた往復式電気かみそりであって〔段落0001、0008、図1~2〕、
前記外刃は、2つの外側刃ヘッド2b、2cにおける外刃と中央刃ヘッド2aにおける外刃が設けられており〔段落0007~0008、図1〕、
前記内刃は、前記2つの外側刃ヘッド2b、2cにおける外刃の内面に摺接する可動刃6b、6cと前記中央刃ヘッド2aにおける外刃の内面に摺接する可動刃6aとが設けられており〔段落0008、図1~2〕、
前記中央刃ヘッド2aで荒削り用トリマー刃が構成されており、前記外側刃ヘッド2b、2cで仕上げ用のネット刃が構成されており〔段落0007、図1〕、
前記仕上げ用のネット刃、前記荒削り用トリマー刃、前記仕上げ用のネット刃が記載順に3つ並んで設けられており〔段落0007~0008、図1、4~5、7〕、
前記仕上げ用のネット刃及び前記荒削り用トリマー刃はフロート自在に設けられており〔段落0005~0006、0009~0012、図1~7〕、
少なくとも片方の前記外側刃ヘッド2b、2cに凸部34を設け、前記中央刃ヘッド2aに形成した長孔35に凸部34をはめ込み、前記外側刃ヘッド2bが所定量以上上下方向に移動した際に前記中央刃ヘッド2aが追従して移動するように凸部34と長孔35との位置関係を設定してあり〔段落0005~0006、0012、図1、5~7〕、
前記一対の駆動子10b、10cのそれぞれは、両外側刃ヘッド2b、2cにおける外刃の内面に摺接する可動刃6b、6cが連結される連結筒部14b、14cを有し、このうち一方の駆動子10bは、中央刃ヘッド2のくし刃状の可動刃6aに嵌合して往復動するようになっている連結部11を有している〔段落0007~0008、図1~7〕往復式電気かみそり。」
5 甲5
甲5の段落0001、0015~0022、図1~7の記載からみて、甲5には次の技術的事項(以下「甲5記載の技術的事項」という。)が記載されている。
「外刃2、12と、前記外刃2、12の内面に摺接して往復動する内刃3、13と〔段落0016、図1~2、4~5〕、
前記内刃3、13を往復させる、2つのリニアモータ14の往復振動を伝える駆動子70とを備えた往復式電気かみそりであって〔段落0001、0015~0016、0022、図7〕、
前記外刃2、12は、2つのネット状の外刃12とスリット外刃2とが備えられており〔段落0016,0019、図1~2、4〕、
前記内刃3、13は、前記ネット状の外刃12の内面に摺接する内刃13と前記スリット外刃2と対応するスリット内刃3が備えられており〔段落0016,0017、0019、図1~2、5〕、
前記ネット状の外刃12と前記ネット状の外刃12の内面に摺接する内刃13とでネット刃11が構成されており、前記スリット外刃2と前記スリット内刃3とでスリット刃1が構成されており〔段落0016、0018~0019、図1~2、4~5〕、
前記ネット刃11、前記スリット刃1、前記ネット刃11が記載順に3つ並んで設けられており〔段落0016、図2、7〕、
前記ネット刃11及び前記スリット刃1はフロート可能に設けられており、
2つの前記駆動子70のそれぞれは、内刃3、13に連結され〔段落0015~0016、0022、図7〕、
一方の駆動子70は、上端が一方のネット状の外刃12の内面に摺接する内刃13に連結されると共に、そのスリット駆動子71がスリット内刃3のスリット継手41に連結されており、他方の駆動子70は、上端が他方のネット状の外刃12の内面に摺接する内刃13に連結される〔段落0015~0016、段落0019~0022〕往復式電気かみそり。」
6 甲6
甲6の第1950ページには、「取付け」の語義として「機器・器具などをとりつけること。装置すること。」が、及び「取り付ける」の語義として「機器などを一定の場所に設置したり他の物に装置したりする。」が、記載されている。
第2838ページには、「連結」の語義として「つらねむすぶこと。むすびあわせること。」が記載されている。
7 甲7
甲7の段落0001、0015~0022、0027~0032、0049、図1~7、19の記載からみて、甲7には次の(1)~(2)の技術的事項が記載されている。
そして、(1)の技術的事項は主に明細書の実施例1によるものであって以下「甲7記載の技術的事項1」といい、(2)の技術的事項は主に明細書の別実施例5によるものであって以下「甲7記載の技術的事項2」という。
(1)甲7記載の技術的事項1
固定刃22、26と、前記固定刃22、26の内面に摺接しつつ左右に往復動する可動刃23、27と、前記可動刃23、27を往復させる前端が揺動中心軸68で左右揺動可能に軸支されている前側の駆動レバー55と後端が揺動中心軸69で左右揺動可能に軸支されている後側の駆動レバー56とを備えた電気かみそりであって〔段落0001、0017~0021、0027~0032、0049、図1~5、19〕、
前記固定刃22、26は、複数の網刃からなる固定刃22と当該網刃からなる固定刃22と異なる形状の複数のスリット刃からなる固定刃26とが配されており〔段落0018~0021、図1~5〕、
前記内刃23、27は、前記網刃からなる固定刃22と対応するスリット刃からなる可動刃23と前記スリット刃からなる固定刃26と対応する櫛刃からなる可動刃27が配されており〔段落0018~0021、図1~5〕、
前記網刃からなる固定刃22と前記スリット刃からなる可動刃23とで仕上剃り用の切断刃16、18が構成されており、前記スリット刃からなる固定刃26と前記櫛刃からなる可動刃27とで粗剃り用の切断刃17、19が構成されており〔段落0018~0021,図1~5〕、
前記仕上剃り用の切断刃16、前記粗剃り用の切断刃17、前記仕上剃り用の切断刃18、前記粗剃り用の切断刃19が記載順に前側から後側に向かって4つ並んで設けられており〔段落0018~0021,図1~5〕、
前記仕上剃り用の切断刃16、18及び前記粗剃り用の切断刃17、19は肌あたりをソフトにするために沈ませることができるように設けられており〔段落0020、0029、図5〕、
前記記載順に4つ並んだ前記仕上剃り用の切断刃16、前記粗剃り用の切断刃17、前記仕上剃り用の切断刃18、前記粗剃り用の切断刃19において、粗剃り用の切断刃17、19のスリット刃からなる固定刃26を、各仕上剃り用の切断刃16、18の外刃の網刃からなる固定刃22より沈ませやすくして〔段落0020、0029、図5〕、
前記前側の駆動レバー55及び前記後側の駆動レバー56は、前記前側の駆動レバー55に固定されスリット刃からなる可動刃23及び櫛刃からなる可動刃27に上端が連結される連結ピン57、58と前記後側の駆動レバー56に固定されスリット刃からなる可動刃23及び櫛刃からなる可動刃27に上端が連結される連結ピン59、60とを有し〔段落0027~0032、図1~5〕、
前記前側の駆動レバー55が、第1番目に並んだ前記仕上剃り用の切断刃16を構成する前記スリット刃からなる可動刃23に連結される連結ピン57と、第2番目に並んだ前記粗剃り用の切断刃17を構成する前記櫛刃からなる可動刃27に連結される連結ピン58とを有しており〔段落0027~0032、図1~5〕、
前記後側の駆動レバー56が、第3番目に並んだ前記仕上剃り用の切断刃18を構成する前記スリット刃からなる可動刃23に連結される連結ピン59と、第4番目に並んだ前記粗剃り用の切断刃19を構成する前記櫛刃からなる可動刃27に連結される連結ピン60とを有している〔段落0027~0032、図1~5〕電気かみそり。
<甲7記載の技術的事項1に関する図1>
【図1】
[図:0001429999000014.jpg]
(2)甲7記載の技術的事項2
「固定刃22、26と、前記固定刃22、26の内面に摺接しつつ左右に往復動する可動刃23、27と、前記可動刃23、27を往復させるためにシーソー揺動できるように支軸101で軸支した駆動レバー55とを備えた電気かみそりであって〔段落0001、0017~0021、0027~0032、図1~5〕、
前記固定刃22、26、複数の網刃からなる固定刃22と当該網刃からなる固定刃22と異なる形状の複数のスリット刃からなる固定刃26とが配されており〔段落0018~0021,図1~5〕、
前記内刃23、27は、前記網刃からなる固定刃22と対応するスリット刃からなる可動刃23と前記スリット刃からなる固定刃26と対応する櫛刃からなる可動刃27が配されており〔段落0018~0021、図1~5〕、
前記網刃からなる固定刃22と前記スリット刃からなる可動刃23とで主に短毛を仕上げ切断する仕上剃り用の切断刃16、20、18、21が構成されており、前記スリット刃からなる固定刃26と前記櫛刃からなる可動刃27とで主に長毛やくせ髭を切断する粗剃り用の切断刃17、19が構成されており〔段落0018~0021、0049、0056、図1~5、19〕、
前記仕上剃り用の切断刃16、前記粗剃り用の切断刃17、前記仕上剃り用の切断刃20、前記仕上剃り用の切断刃18、前記粗剃り用の切断刃19、前記仕上剃り用の切断刃21が記載順に前側から後側に向かって6つ並んで設けられており〔段落0018~0021、0049、図1~5、19〕、
前記仕上剃り用の切断刃16、20、18、21及び前記粗剃り用の切断刃17、19は肌あたりをソフトにするために沈ませることができるように設けられており〔段落0020、0029、0049、図5、19〕、
前記記載順に6つ並んだ前記仕上剃り用の切断刃16、前記粗剃り用の切断刃17、前記仕上剃り用の切断刃20、前記仕上剃り用の切断刃18、前記粗剃り用の切断刃19、前記仕上剃り用の切断刃21において、粗剃り用の切断刃17、19のスリット刃からなる固定刃26を、各仕上剃り用の切断刃16、20、18、21の外刃の網刃からなる固定刃22より沈ませやすくして〔段落0020、0029、0049、図5、19〕、
前記シーソー揺動できるように支軸101で軸支した駆動レバー55は、上記駆動レバー55に固定され、スリット刃からなる可動刃23及び櫛刃からなる可動刃27に上端が連結される連結ピン57、58、61、59、60、66とを有し〔段落0027~0032、0049、図1~5、19〕、
前記シーソー揺動できるように支軸101で軸支した駆動レバー55が、仕上剃り用の切断刃16を構成する前記スリット刃からなる可動刃23に連結される連結ピン57と、第2番目に並んだ前記粗剃り用の切断刃17を構成する前記櫛刃からなる可動刃27に連結される連結ピン58と、第3番目に並んだ前記仕上剃り用の切断刃20を構成するスリット刃からなる可動刃23に連結される連結ピン61と〔段落0027~0032、0049、図1~5、19〕、
第4番目に並んだ前記仕上剃り用の切断刃18を構成する前記スリット刃からなる可動刃23に連結される連結ピン59と、第5番目に並んだ前記粗剃り用の切断刃19を構成する前記櫛刃からなる可動刃27に連結される連結ピン60と、第6番目に並んだ前記仕上剃り用の切断刃21を構成するスリット刃からなる可動刃23に連結される連結ピン66の3つの腕を有している〔段落0027~0032、0049、図1~5、19〕電気かみそり。」
<甲7記載の技術的事項2に関する図19>
【図19】
[図:0001429999000015.jpg]
第7 当審の判断
1 本件特許発明1の進歩性
(1)本件特許発明1と甲3発明の対比
本件特許発明1と甲3発明を対比する。
ア 甲3発明の「外刃20」は本件特許発明1の「外刃」に相当し、以下同様に「外刃20の内部側で往復駆動可能に設けられて外刃20内に導入された体毛を挟んで切除するための」は「外刃の内面に摺接しつつ左右に往復動する」に、「内刃30」は「内刃」に、「電気かみそり11」は「往復式電気かみそり」に相当する。
イ 甲3発明の「前後方向X両端の湾曲外刃21」は本件特許発明1の「第1外刃」に相当する。
そして、甲3発明の「前記外刃20は、複数の前後方向X両端の湾曲外刃21と、当該湾曲外刃21と異なる形状であり当該複数の湾曲外刃21の一つ内側に配置された直線外刃22と、前後方向X中央に配置される直線外刃22が配されており、」は、本件特許発明1の「前記外刃は、複数の第1外刃と当該第1外刃 と異なる形状の複数の第2外刃とが配されており、」を対比すると、「前記外刃は、複数の第1外刃と当該第1外刃と異なる形状の複数の第1外刃以外の外刃とが配されており、」という点に限り一致する。
ウ 甲3発明の「湾曲外刃21と対応する形状の内刃30」は本件特許発明1の「第1外刃と対応する第1内刃」に相当する。
そして、甲3発明の「前記内刃30は、前記湾曲外刃21と対応する形状の内刃30と、前記湾曲外刃21の一つ内側に配置された直線外刃22と対応する形状の内刃30と、前記前後方向X中央に配置される直線外刃22と対応する形状の内刃30が配されており、」と、本件特許発明1の「前記内刃は、前記第1外刃と対応する第1内刃と前記第2外刃と対応する第2内刃とが配されており、」とを対比すると、「前記内刃は、前記第1外刃と対応する第1内刃と前記第1外刃以外の外刃と対応する第1内刃以外の内刃とが配されており、」という点に限り一致する。
エ 甲3発明の「前記湾曲外刃21は粗剃り用のネット刃であり、前記湾曲外刃21の一つ内側に配置された直線外刃22は仕上げ用のネット刃であり、前記前後方向X中央に配置される直線外刃22は長毛が剃りやすいスリット刃であり、」と、本件特許発明1の「前記第1外刃と前記第1内刃とでカット刃が構成されており、前記第2外刃と前記第2内刃とでトリマ刃が構成されており、」を対比すると、甲3発明の湾曲外刃21の粗剃り用のネット刃は湾曲外刃21と対応する形状の内刃30と“粗剃りに用いられる刃”を構成し、直線外刃22の仕上用のネット刃は直線外刃22と対応する形状の内刃30と“仕上げに用いられる刃”を構成し、前後方向X中央に配置される直線外刃22は前後方向X中央に配置される直線外刃22と対応する形状の内刃30と“長毛が剃りやすい刃”を構成し、上記の甲3発明の“粗剃りに用いられる刃”及び“仕上げに用いられる刃”は本件特許発明1の「カット刃」に、同様に“長毛が剃りやすい刃”は「トリマ刃」に相当する。
そうすると、両発明は、「前記第1外刃と前記第1内刃とでカット刃が構成されており、前記第1外刃以外の外刃と前記第1内刃以外の内刃とでカット刃及びトリマ刃が構成されており、」という点に限り一致する。
オ 甲3発明の「前記粗剃り用のネット刃21、前記仕上げ用のネット刃22、前記長毛が剃りやすいスリット刃22、前記仕上げ用のネット刃22、前記粗剃り用のネット刃21が記載順に前後方向Xに5つ並んで設けられており、」と本件特許発明1の「前記カット刃、前記トリマ刃、前記カット刃、前記カット刃、前記トリマ刃、前記カット刃が記載順に前方から後方に向かって6つ並んで設けられており、」を対比すると、甲3発明の「前後方向Xに」は本件特許発明1の「前方から後方に向かって」に相当し、また、甲3発明の粗剃り用のネット刃21、仕上げ用のネット刃22、長毛が剃りやすいスリット刃22は、上記エのとおり、それぞれ対応する形状の内刃と “粗剃りに用いられる刃”、“仕上げに用いられる刃”、“長毛が剃りやすい刃”を構成するから、「前記カット刃と前記トリマ刃が合わせて前方から後方に向かって5つ以上並んで設けられており、」という点に限り一致する。
カ 甲3発明の「フロート」は本件特許発明1の「昇降」に相当する。
キ 甲3発明の「前記記載順に5つ並んだ前記粗剃り用のネット刃21、前記仕上げ用のネット刃22、前記長毛が剃りやすいスリット刃22、前記仕上げ用のネット刃22、前記粗剃り用のネット刃21において、1番目に並んだ前記粗剃り用のネット刃21に比べて2番目に並んだ前記仕上げ用のネット刃22のフロート量が小さくなるように設定されており、かつ、5番目に並んだ前記粗剃り用のネット刃21に比べて4番目に並んだ前記仕上げ用のネット刃22のフロート量が小さくなるように設定されている」と、本件特許発明1の「前記記載順に6つ並んだ前記カット刃、前記トリマ刃、前記カット刃、前記カット刃、前記トリマ刃、前記カット刃において、1番目に並んだ前記カット刃に比べて2番目に並んだ前記トリマ刃の昇降量が小さくなるように設定されており、かつ、6番目に並んだ前記カット刃に比べて5番目に並んだ前記トリマ刃の昇降量が小さくなるように設定されている」を対比すると、両発明は「合わせて5つ以上並んで設けられている前記カット刃と前記トリマ刃において、前後方向の最も前に並んだ刃に比べてその隣に並んだ刃の昇降量が小さくなるように設定されており、かつ、最も後ろに並んだ刃に比べてその隣に並んだ刃の昇降量が小さくなるように設定されている」という点に限り一致する。
(2)本件特許発明1と甲3発明の一致点
上記(1)より、本件特許発明1と甲3発明は次の点で一致する。
外刃と、前記外刃の内面に摺接しつつ左右に往復動する内刃とを備えた往復式電気かみそりであって、
前記外刃は、複数の第1外刃と当該第1外刃と異なる形状の複数の第1外刃以外の外刃とが配されており、
前記内刃は、前記第1外刃と対応する第1内刃と前記第1外刃以外の外刃と対応する第1内刃以外の内刃とが配されており、
前記第1外刃と前記第1内刃とでカット刃が構成されており、前記第1外刃以外の外刃と前記第1内刃以外の内刃とでカット刃及びトリマ刃が構成されており、
前記カット刃と前記トリマ刃が合わせて前方から後方に向かって5つ以上並んで設けられており、
前記カット刃及び前記トリマ刃は昇降可能に設けられており、
合わせて5つ以上並んで設けられている前記カット刃と前記トリマ刃において、前後方向の最も前に並んだ刃に比べてその隣に並んだ刃の昇降量が小さくなるように設定されており、かつ、最も後ろに並んだ刃に比べてその隣に並んだ刃の昇降量が小さくなるように設定されている往復式電気かみそり。
(3)本件特許発明1と甲3発明の相違点
そして、本件特許発明1と甲3発明は、次のア~イの点で相違する。
ア 相違点1
前方から後方に向かって合わせて5つ以上並んで設けられているカット刃とトリマ刃において、前後方向の最も前に並んだ刃に比べてその隣に並んだ刃の昇降量が小さくなるように設定されており、かつ、最も後ろに並んだ刃に比べてその隣に並んだ刃の昇降量が小さくなるように設定されている電気かみそりについて、本件特許発明1と甲3発明では、第1外刃以外の外刃と第1内刃以外の内刃が構成するカット刃及びトリマ刃の数と位置が異なることから、本件特許発明1は「前記カット刃、前記トリマ刃、前記カット刃、前記カット刃、前記トリマ刃、前記カット刃が記載順に6つ並んで設けられており、前記記載順に6つ並んだ前記カット刃、前記トリマ刃、前記カット刃、前記カット刃、前記トリマ刃、前記カット刃において、1番目に並んだ前記カット刃に比べて2番目に並んだ前記トリマ刃の昇降量が小さくなるように設定されており、かつ、6番目に並んだ前記カット刃に比べて5番目に並んだ前記トリマ刃の昇降量が小さくなるように設定されている」のに対して、甲3発明は、トリマ刃が1つのみで本件特許発明1より1つ少なく、「前記カット刃、前記カット刃、前記トリマ刃、前記カット刃、前記カット刃が記載順に5つ並んで設けられており、前記記載順に5つ並んだ前記カット刃、前記カット刃、前記トリマ刃、前記カット刃、前記カット刃において、1番目に並んだ前記カット刃に比べて2番目に並んだ前記カット刃の昇降量が小さくなるように設定されており、かつ、5番目に並んだ前記カット刃に比べて4番目に並んだ前記カット刃の昇降量が小さくなるように設定されている」点。
イ 相違点2
本件特許発明1が、「内刃を往復させる2つのオシレータ」を備え、「2つの前記オシレータのそれぞれは、左右方向に往復動可能な可動台と、前記可動台に立設固定されて上端が前記内刃に連結されるアーム部とを有し、一方のオシレータにおける前記アーム部が、第1番目に並んだ前記カット刃を構成する前記第1内刃に連結される第1腕と、第2番目に並んだ前記トリマ刃を構成する前記第2内刃に連結される第2腕と、第3番目に並んだ前記カット刃を構成する第1内刃に連結される第3腕とを有しており、他方のオシレータにおける前記アーム部が、第4番目に並んだ前記カット刃を構成する前記第1内刃に連結される第1腕と、第5番目に並んだ前記トリマ刃を構成する前記第2内刃に連結される第2腕と、第6番目に並んだ前記カット刃を構成する第1内刃に連結される第3腕の3つの腕を有している」のに対して、甲3発明は、内刃を往復させる駆動機構が不明である点。
(4)相違点の検討
ア 相違点1
甲1には、上記4(3)の甲1記載の技術的事項である「ひげをせん断することができる電気かみそりであって、網刃、スリット刃、網刃、網刃、スリット刃、網刃が記載順に6つ並んで設けられている電気かみそり。」が、記載されている。
この電気かみそりの網刃、スリット刃は、外刃として機能し、外刃の内面に摺接しつつ左右に往復動する内刃と共にひげを剪断することが明らかであり、これらの形態から見て、甲1記載の技術的事項の「網刃」は本件特許発明1の「カット刃」に相当し、同様に「スリット刃」は「トリマ刃」に相当することが明らかである。
これに対して、甲3の段落0041には「・上記実施形態では、前後方向X両側の外刃20(湾曲外刃21)をそれぞれ粗剃り用の各ネット刃とし、それらの1つ内側の外刃20をそれぞれ仕上げ用のネット刃とし、前後方向X中央の外刃20をスリット刃として構成したが、特にこれに限定されるものではなく、その外刃20の種類は構成に応じて適宜変更してもよい。」と記載され、段落0042には「・上記実施形態では、外刃20を5つ有する所謂5枚刃の構成であったが、特にこれに限定されるものではなく、2枚刃、3枚刃、4枚刃又は6枚刃以上の構成としてもよい。」と記載されている。
これらの記載は、「前記粗剃り用のネット刃21、前記仕上げ用のネット刃22、前記長毛が剃りやすいスリット刃22、前記仕上げ用のネット刃22、前記粗剃り用のネット刃21が記載順に5つ並んで設けられて」いる甲3発明に、甲1記載の技術的事項の「網刃(カット刃)、スリット刃(トリマ刃)、網刃(カット刃)、網刃(カット刃)、スリット刃(トリマ刃)、網刃(カット刃)が記載順に6つ並んで設けられている電気かみそり」を適用することが可能であることを示唆するものである。
そして、甲3発明の「1番目に並んだ前記カット刃に比べて2番目に並んだ前記カット刃の昇降量が小さくなるように設定されており、かつ、5番目に並んだ前記カット刃に比べて4番目に並んだ前記カット刃の昇降量が小さくなるように設定されている」という構成は、「使用の際に湾曲外刃21が強く肌Sに当たることが抑制され、肌Sに対する刺激を小さく抑える」(甲3の段落0038)ことを可能とするために、「前後方向の最も前に並んだ刃に比べてその隣に並んだ刃の昇降量が小さくなるように設定されており、かつ、最も後ろに並んだ刃に比べてその隣に並んだ刃の昇降量が小さくなるように設定されている」という関係性を5枚の刃の電気かみそりで具現化した構成であることが把握されるところ、上記段落0041~0042の示唆に基づき、この関係性を、甲3発明に、甲3発明よりもトリマ刃が1枚多く、刃が6つ並んで設けられている甲1記載の技術的事項の6枚の刃の電気かみそりを適用して、相違点1に係る本件特許発明1の「1番目に並んだ前記カット刃に比べて2番目に並んだ前記トリマ刃の昇降量が小さくなるように設定されており、かつ、6番目に並んだ前記カット刃に比べて5番目に並んだ前記トリマ刃の昇降量が小さくなるように設定されている」構成を想到することは、当業者が容易になし得たものである。
イ 相違点2(下線は当審で付与。)
相違点2に関し、甲1~2、甲5記載の技術的事項は、モータにおける駆動軸の回転運動を直線運動に変換するクランク部を介して、モータの駆動力によって内刃を往復動させる(本件明細書の段落0013)機能を有する本件特許発明1の「オシレータ」を備えていない。
そうすると、相違点2の(a)「内刃を往復させる2つのオシレータ」を備え、(b)「2つの前記オシレータのそれぞれは、左右方向に往復動可能な可動台と、前記可動台に立設固定されて上端が前記内刃に連結されるアーム部とを有し」ていること、及び(c)「一方のオシレータにおける前記アーム部が、第1番目に並んだ前記カット刃を構成する前記第1内刃に連結される第1腕と、第2番目に並んだ前記トリマ刃を構成する前記第2内刃に連結される第2腕と、第3番目に並んだ前記カット刃を構成する第1内刃に連結される第3腕とを有しており、他方のオシレータにおける前記アーム部が、第4番目に並んだ前記カット刃を構成する前記第1内刃に連結される第1腕と、第5番目に並んだ前記トリマ刃を構成する前記第2内刃に連結される第2腕と、第6番目に並んだ前記カット刃を構成する第1内刃に連結される第3腕の3つの腕を有している」ことについて、これら(a)~(c)の事項のいずれも記載されていない。
次に、甲4記載の技術的事項は、「外刃と、前記外刃の内面に摺接して往復動する内刃6a~6cと、前記内刃6a~6cを往復させるモータ9の回転を往復に変換する一対の駆動子10b、10cとを備えた往復式電気かみそり」の内容を含み、モータ9の回転を往復に変換する一対の駆動子10b、10cは、本件特許発明1のオシレータに相当するから、相違点2の上記(a)の事項を備えるとはいえる。
しかしながら、甲4記載の技術的事項の一対の駆動子10b、10cのそれぞれは、「両外側刃ヘッド2b、2cにおける外刃の内面に摺接する可動刃6b、6cが連結される連結筒部14b、14cを有し、このうち一方の駆動子10bは、中央刃ヘッド2のくし刃状の可動刃6aに嵌合して往復動するようになっている連結部11を有している」ものであって、上記(b)の事項とは構成が異なり、連結筒部14b、14c、連結部11も本件特許発明1の可動台に立設固定されたアーム部が有しているものとはいえないから、上記(c)の事項も備えていない。
さらに、上記相違点2に係る本件特許発明1の上記(a)~(c)の事項のいずれも、甲3発明から容易に想到し得たものではない。
したがって、本件特許発明1は、甲3発明、及び甲1~2、甲4~5記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(5)申立人意見書における本件特許発明1の容易想到性に関する主張
ア 主張の概要
申立人意見書の「3.2 本件訂正により生じる新たな構成に対して」においては、本件訂正で請求項1に追加された発明特定事項を、次の新たな構成[1]~[5]に分説して、下記(ア)~(イ)のように本件特許発明1の容易想到性を主張する。
[1]外刃と、前記外刃の内面に摺接しつつ左右に往復動する内刃と、前記内刃を往復させる2つのオシレータとを備えた往復式電気かみそりであって
[2]前記カット刃、前記トリマ刃、前記カット刃、前記カット刃、前記トリマ刃、前記カット刃が記載順に前方から後方に向かって6つ並んで設けられており
[3]2つの前記オシレータのそれぞれは、左右方向に往復動可能な可動台と、前記可動台に立設固定されて上端が前記内刃に連結されるアーム部とを有し
[4]一方のオシレータにおける前記アーム部が、第1番目に並んだ前記カット刃を構成する前記第1内刃に連結される第1腕と、第2番目に並んだ前記トリマ刃を構成する前記第2内刃に連結される第2腕と、第3番目に並んだ前記カット刃を構成する第1内刃に連結される第3腕とを有しており
[5]他方のオシレータにおける前記アーム部が、第4番目に並んだ前記カット刃を構成する前記第1内刃に連結される第1腕と、第5番目に並んだ前記トリマ刃を構成する前記第2内刃に連結される第2腕と、第6番目に並んだ前記カット刃を構成する第1内刃に連結される第3腕の3つの腕を有している
(ア)新たな構成[2]は、甲1記載の技術的事項である。(申立人意見書3.2(1)イ)
(イ)新たな構成[1]、[3]~[5]は、申立人意見書に添付され、新たに引用する甲7に記載されたような技術常識を甲3発明に適用することにより、当業者が容易になし得たことである。(申立人意見書3.2(1)ウ)
イ 主張の検討
上記ア(ア)の新たな構成[2]は、上記(4)アの相違点1で検討したとおり、甲1記載の技術的事項であるといえる。
以下では上記ア(イ)の新たな構成[1]、[3]~[5]についての主張について検討する。
(ア)甲7記載の技術的事項1~2が、本件特許発明1のオシレータを備えていないことについて
上記本件特許発明1の新たな構成[1]、[3]~[5]のうち新たな構成[1]について、甲7記載の技術的事項1~2は、「オシレータ」を備えておらず、その代わりに、甲7記載の技術的事項1は「固定刃22、26と、前記固定刃22、26の内面に摺接しつつ左右に往復動する可動刃23、27と、前記可動刃23、27を往復させる前端が揺動中心軸68で左右揺動可能に軸支されている前側の駆動レバー55と後端が揺動中心軸69で左右揺動可能に軸支されている後側の駆動レバー56とを備えた」ものとなっており、甲7記載の技術的事項2は「固定刃22、26と、前記固定刃22、26の内面に摺接しつつ左右に往復動する可動刃23、27と、前記可動刃23、27を往復させるためにシーソー揺動できるように支軸101で軸支した駆動レバー55とを備えた」ものとなっている。
(イ)本件特許発明1のオシレータの動作について
本件特許発明1の「オシレータ」は、モータにおける駆動軸の回転運動を直線運動に変換するクランク部を介して、モータの駆動力によって内刃を往復動させる(本件明細書の段落0013)機能を有し、2つの「オシレータ」のアーム部は、往復動可能な可動台に立設固定されていることから、それぞれのアーム部が有する第1~3腕に取り付けられた3つの内刃は、いずれも左右方向に可動台と同じ往復動、すなわち、ストローク、速度、及び位置が揃った往復動を行うものである。
(ウ)甲7記載の技術的事項1~2の駆動レバーによる動作について
これに対して、甲7記載の技術的事項1の前側の駆動レバー55の2つの連結ピン57、58は、当該前側の駆動レバー55が前端の揺動中心軸68で左右揺動可能に軸支され、と後側の駆動レバー56の2つの連結ピン59、60は、当該前側の駆動レバー55が前端の揺動中心軸68で左右揺動可能に軸支されているから、甲7の段落0031に記載されているように、前側の駆動レバー55と後側の駆動レバー56において、各駆動レバーにおける2つの連結ピンに連結された各可動刃のそれぞれのストロークが異なり、左右方向における位置、速度、あるいはトルクもそれぞれ異なり、また、各可動刃23、27は、対応する固定刃22、26に対して左右に往復移動することに加えて、僅かに前後移動もするものである。
そして、甲7記載の技術的事項2においても、支軸101の前側の3つの連結ピン57、58、61(第1~3腕)と後側の3つの連結ピン59、60、66(第1~3腕)は、支軸101でシーソー揺動できるように軸支した駆動レバー55に立設固定されていることから、支軸101の前側、後側のいずれにおいても、3つの連結ピンに連結された各可動刃のそれぞれのストロークが異なり、左右方向における位置、速度、あるいはトルクもそれぞれ異なり、各可動刃は左右に往復移動するだけでなく、僅かに前後移動もするものである。
(エ)甲7記載の技術的事項1~2が相違点2の機構にはあたらないことについて
そうすると、甲7記載の技術的事項1~2は、本件特許発明1と、機構的に異なることが明らかであるから、相違点2の機構にはあたらないことは明らかである。
(オ)甲7記載の技術的事項1~2を相違点2の構成に変更することについて
ここで、甲7記載の技術的事項1~2は、甲7の段落0032にも説明されているように、段落0031に記載された各可動刃の往復動の態様の差違を用いて効率よくひげ切断を行うものであるから、甲3発明に、甲7記載の技術的事項1あるいは甲7記載の技術的事項2の構成を適用しても、可動刃の往復動の態様に差違のない構成とすることはできず、相違点2に係る本件特許発明1の構成とする動機が存在しない。
また、甲7の段落0033において、電気かみそりの肌当りが悪いことについて説明されているが、その改善のために肌当り突部を設けるという手段を甲7の課題(段落0005)解決のための手段としており、この可動刃の往復動の態様を変更しようとはしていないから、この説明もやはり上記の動機になるとはいえない。
(カ)申立人意見書の3.2(1)イ~ウで主張されている本件特許発明1の容易想到性について
申立人意見書の3.2(1)イにおいては、本件明細書の段落0056に複数の切断刃の数や配列は発明の主旨を逸脱しない限り種々変更できることが記載されていること、甲7の別実施例5に、前側のメイン刃(切断刃)16、センター刃(切断刃)17、メイン刃(切断刃)20で切断刃群Clを構成し、後側のメイン刃(切断刃)18、サブ刃(切断刃)19、メイン刃(切断刃)21で切断刃群C2を構成することが記載されていること、本件明細書における実施例1には、電気かみそりにおいて、可動刃駆動構造(本件特許発明1の「オシレータ」に相当。)については、実施例1では1つであるものが、別実施例5では2つであるものが開示されていることから、1つにするか2つにするかは必要により適宜選択すればよい技術的な設計事項であることが説明されている。
また、3.2(1)ウにおいては、本件特許発明1においては、6つ並んだカット刃、トリマ刃、カット刃、カット刃、トリマ刃、カット刃において、 1番目に並んだカット刃に比べて2番目に並んだトリマ刃の昇降量が小さく、かつ、6番目に並んだカット刃に比べて5番目に並んだトリマ刃の昇降量が小さくなるように設定され、6つの外刃の肌への接触面積を広くし、6つの外刃が前後に対称配置されていることで、本体の持ち方を問わず、前後どちらからでも同様の剃り味が得られるという本件訂正前から請求項1に記載された構成要件を本質的部分とすることが、説明されている。
これらの説明から見て、申立人意見書3.2(1)イ~ウにおいて、本件特許発明1の新たな構成要件[1]、[3]~[5]は、甲7に記載され、あるいは適宜選択すればよい技術的な設計事項であって、甲3発明に、甲7記載の技術的事項1~2を適用して、可動刃駆動構造を2つにした際に、それぞれの可動刃駆動構造に3個の連結ピン(本件特許発明1における第1~3腕に相当。)を設けて、本件特許発明1とすることが当業者にとって容易であることが主張されていると解される。
(キ)上記(カ)の主張が採用できないことについて
しかしながら、上記(エ)のとおり、甲7記載の技術的事項1~2は、相違点2の機構にはあたらず、また、上記(オ)のとおり、相違点2のオシレータを含む構成にすることの動機も見いだせないから、申立人の主張は採用することができない。
(6)本件特許発明1の進歩性についてのまとめ
上記(4)~(5)のとおりであるから、相違点2により、本件特許発明1は、甲3発明、及び甲1~2、4~5、7記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 小括
したがって、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項に規定に違反してされたものではない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、当審で通知した取消理由、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700960