特許異議申立
2024-700959
往復式電気かみそり
- 審判番号
- 2024-700959
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-172178
- 登録番号
- 7465400
- 請求日
- 2024年10月02日
- 審決日
- 2025年01月22日
- 公報発行日
- 2025年03月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】マクセルイズミ株式会社
- 【異議申立人】足立 幸子
- 審判長/審判官
- 審判長 本庄 亮太郎
- 審判官 田々井 正吾
- 審判官 大山 健
- 分類
- P1651.121-Y (B26B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7465400号発明「往復式電気かみそり」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7465400号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7465400号の請求項1に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、令和2年7月1日(優先権主張 令和元年9月26日)に出願された特願2020-114291の一部を、令和5年10月3日に新たな特許出願である特願2023-172178としたものであって、令和6年4月2日にその特許権の設定登録がされ、同月10日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許の請求項1に係る特許に対し、令和6年10月2日に特許異議申立人足立幸子(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明1」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
外刃と、前記外刃の内面に摺接しつつ左右に往復動する内刃と、前記内刃を往復動させるオシレータとを備えた往復式電気かみそりであって、
前記オシレータは、往復動可能な可動台と、前記可動台に立設固定されて上端部が前記内刃に連結されるアーム部とを有し、前記オシレータは、第1オシレータと第2オシレータの2つからなり、
前記第1オシレータと前記第2オシレータは、前記往復動する方向と直交する前後方向に並んで配置されており、
前記外刃は、複数の第1外刃と当該第1外刃と異なる形状の複数の第2外刃とが配されており、
前記内刃は、前記第1外刃と対応する第1内刃と前記第2外刃と対応する第2内刃とが配されており、
前記第1外刃と前記第1内刃とでカット刃が構成されており、前記第2外刃と前記第2内刃とでトリマ刃が構成されており、
前記カット刃、前記トリマ刃、前記カット刃、前記カット刃、前記トリマ刃、前記カット刃が、前側から後側に向かって記載順に並んで設けられており、
前記第1オシレータにおける前記アーム部は、前記第1内刃に連結される第1腕、前記第2内刃に連結される第2腕、前記第1内刃に連結される第3腕の3つの腕を有しており、
前記第2オシレータにおける前記アーム部は、前記第1内刃に連結される第1腕、前記第2内刃に連結される第2腕、前記第1内刃に連結される第3腕の3つの腕を有しており、
前記第1オシレータにおける前記アーム部の、前記第2腕の突出長さが、前記第1腕、前記第3腕の突出長さに比べて短くなるように設定されており、
前記第2オシレータにおける前記アーム部の、前記第2腕の突出長さが、前記第1腕、前記第3腕の突出長さに比べて短くなるように設定されていることを特徴とする往復式電気かみそり。」
第3 申立ての理由
1 申立人が特許異議申立書で主張する申立ての理由の概要
(進歩性)請求項1に係る発明は、甲第1~3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2 証拠方法
申立人が特許異議申立書に添付して提出した証拠は、以下のとおりである。
(1)甲第1号証:特開2017-127384号公報
(2)甲第2号証:特表2002-521105号公報
(3)甲第3号証:特開2010-99493号公報
以下、甲第○号証を「甲○」という。
第4 証拠の記載内容について
1 甲1
(1)甲1の記載事項
ア 発明の詳細な説明
「【0001】
本発明は、可動刃と固定刃を有する切断刃を備えている電気かみそりに関する。
・・・
【0005】
本発明の目的は、ひげ剃り時の肌当りを向上させることができる電気かみそりを提供することにある。
・・・
【0017】
(実施例1) 図1ないし図13は、本発明に係る電気かみそりの実施例1を示す。本発明における前後、左右、上下とは、図2および図3に示す交差矢印と、矢印の近傍の前後・左右・上下の表記に従う。図2、図3において電気かみそりは、グリップを兼ねる本体ケース1と、本体ケース1で上下動可能かつ左右傾動可能に支持したかみそりヘッド2を備えている。かみそりヘッド2は本体ケース1の上部に設けられる。本体ケース1の内部には、モーター3、2次電池4、および制御基板5などの電装品が配置されている。制御基板5には、モーター3への通電状態を切換えるスイッチや、電池残量を発光表示するLED6などが実装されている。本体ケース1の前面には、先のスイッチを切換え操作するスイッチボタン8が配置されている。また、図3に示すように、本体ケース1の後面側には、きわ剃り刃9と、きわ剃り刃9を駆動位置へ押し上げ操作するスライドノブ10が設けられている。この実施例では、かみそりヘッド2が本体ケース1で、上下動可能かつ左右傾動可能に支持してある電気かみそりについて説明するが、かみそりヘッド2は本体ケース1に固定してあってもよい。図1、図2において、符号3aはモーター3の出力軸である。
【0018】
図3に示すようにかみそりヘッド2は、ヘッドベース13と、同ベース13に着脱可能に装着される固定刃ホルダー14を基体にして構成されており、ヘッドベース13は、モーターホルダー(図示していない)に固定したケース体15に締結固定されている。モーターホルダーの下部と本体ケース1の間に、かみそりヘッド2を上下動可能かつ左右傾動可能に支持するフロート構造が設けられている。固定刃ホルダー14には、前側から順に仕上げ剃り用の第1メイン刃(切断刃)16と、粗剃り用のセンター刃(切断刃)17と、仕上げ剃り用の第2メイン刃(切断刃)18と、粗剃り用のサブ刃(切断刃)19が配置されている。
【0019】
図4に示すように各メイン刃16・18は、網刃からなる固定刃(外刃)22と、固定刃22の内面に摺接するスリット刃からなる可動刃(内刃)23を備えており、主に短毛を仕上げ切断する。固定刃22は固定刃フレーム24に固定されて逆U字状に湾曲しており、可動刃23は可動刃フレーム25に固定されて逆U字状に湾曲している。第1メイン刃16と第2メイン刃18は同じ大きさになっており、両者の外形寸法に違いはない。
【0020】
センター刃17およびサブ刃19は、それぞれスリット刃からなる固定刃26と、固定刃26の内面に摺接する櫛刃からなる可動刃27を備えており、主に長毛やくせ髭を切断する。固定刃26は固定刃フレーム28に支持されており、可動刃27は可動刃フレーム29でそれぞれ支持されている。各固定刃フレーム24・28は、固定刃支持ベース30に組付けられている。この状態の各固定刃フレーム24・28は、固定刃支持ベース30と固定刃フレーム24・28の間に配置した弾性手段である固定刃ばね(ばね)31(図5参照)で上方に押上げ付勢されて、各固定刃フレーム24・28の左右両端に設けたスライド片32が、固定刃支持ベース30に設けたガイド溝33の上端で受け止められている(図6参照)。そのため、固定刃26および固定刃フレーム24・28は、肌面から押付け反力を受けるとき固定刃支持ベース30側(下方)へ沈込む。センター刃17およびサブ刃19の固定刃26を押し上げ付勢する固定刃ばね31のばね荷重は、各メイン刃16・18の固定刃22を押し上げ付勢する固定刃ばね31のばね荷重より小さく設定されている。これは、センター刃17およびサブ刃19の固定刃26を、各メイン刃16・18の固定刃22より沈ませやすくして、肌当りをソフトにするためである。スイッチボタン8を操作しモーター8を回転駆動することにより、固定刃22・26の内面にて可動刃23・27が摺動する。
・・・
【0027】
各メイン刃16・18とセンター刃17およびサブ刃19の合計4個の可動刃23・27を左右および前後に往復駆動するために、モーター3と可動刃23・27の間に可動刃駆動構造を設けている。この実施例では、第1メイン刃16とセンター刃17で前側の切断刃群C1を構成し、第2メイン刃18とサブ刃19で後側の切断刃群C2を構成し、各切断刃群C1・C2ごとに可動刃駆動構造D1・D2を設けている。図1および図9において可動刃駆動構造D1・D2は、モーター3と、モーター3と可動刃23・27の間に配置されるカム構造(動作変換構造)および駆動レバー55・56と、駆動レバー55・56の揺動動作を可動刃23・27に伝動する4個の連結ピン(連結体)57・58・59・60などで構成する。カム構造は、モーター3の出力軸3aに固定した偏心カム62・63と、各駆動レバー55・56の揺動先端に形成したカム溝64・65で構成する。
【0028】
図1に示すように、前側の切断刃群C1に対応する可動刃駆動構造D1の駆動レバー55は、モーター3の中心軸線を通り左右に延びる垂直平面より前側に配置されて、その前端が揺動中心軸68で左右揺動可能に軸支されている。また、後側の切断刃群C2に対応する可動刃駆動構造D2の駆動レバー56は、モーター3の中心軸線を通り左右に延びる垂直平面より後側に配置されて、その後端が揺動中心軸69で左右揺動可能に軸支されている。なお、揺動中心軸68・69はヘッドベース13に設けた前後一対のブラケット70・70に固定されている。図9に示すように、一対の駆動レバー55・56の揺動先端にはそれぞれ受動腕71・72が設けられており、各受動腕71・72の板面に、各偏心カム62・63と係合するカム溝64・65が形成されている。各受動腕71・72は、モーター3の中心軸上で上下に間隔をあけて隣接する状態で設けられている。このように、可動刃駆動構造D1と可動刃駆動構造D2は、モーター3を共通の駆動源としており、1個のモーター3のみで4個の可動刃23・27を往復駆動する。
【0029】
前側の駆動レバー55には、同レバー55の往復動作を第1メイン刃16とセンター刃17の可動刃23・27に伝動する連結ピン(連結体)57・58が所定の間隔をあけて固定されている。また、後側の駆動レバー56には、同レバー56の往復動作を第2メイン刃18とサブ刃19の可動刃23・27に伝動する連結ピン(連結体)59・60が、所定の間隔をあけて固定されている。このように、各連結ピン57~60の配置位置を異ならせることにより、各連結ピン57・58と揺動中心軸68の間の前後距離が異なり、各連結ピン59・60と揺動中心軸69の間の前後距離が異なることになる。図5に示すように、各連結ピン57~60の上端は、各可動刃フレーム25・25・29・29に設けた連結穴73~76に係合しており、両者の間には各可動刃23・27を固定刃22・26へ向かって押し上げ付勢する弾性手段である可動刃ばね(ばね)77が配置されている。センター刃17およびサブ刃19の可動刃27を押し上げ付勢する可動刃ばね77のばね荷重は、各メイン刃16・18の可動刃23を押し上げ付勢する可動刃ばね77のばね荷重より小さく設定されている。これにより、センター刃17およびサブ刃19の固定刃26を、各メイン刃16・18の固定刃22より沈ませやすくして、肌当りをソフトにすることができる。なお、可動刃駆動構造D1・D2の構成部品の内、モーター3を除く各部材はケース体15の内部に収容されて、ケース体15の上面をシールするパッキン(図示していない)で封止されており、各連結ピン57・58・59・60のみがパッキンを貫通して、各可動刃23・27に駆動レバー55・56の揺動動作を伝動する。
【0030】
ひげ剃り時には、前側の可動刃駆動構造D1の駆動レバー55と、後側の可動刃駆動構造D2の駆動レバー56をモーター動力で同時に揺動駆動して、4個の各可動刃23・27を往復駆動する。このとき、モーター3の回転方向は、一方向(図1に向かって時計回転方向)であるので、各駆動構造D1・D2における駆動レバー55・56は、互いに逆向きに同期した状態で揺動駆動され、前側の切断刃群C1の可動刃23・27と、後側の切断刃群C2の可動刃23・27は、互いに逆向きに往復駆動される。そのため、前後の可動刃23・27が往復移動するときの振動を互いに打消し合って肌面に不快な振動が作用するのを解消でき、より滑らかにひげ切断を行うことができる。
【0031】
また、図10に示すように、各可動刃23・27は、対応する固定刃22・26に対して左右に往復移動しながら、僅かに前後移動する。そのため、各可動刃23・27は、固定刃22・26に捕捉されたひげを、引切り作用を発揮して、ひげ切断を円滑にしかも的確に行える。また、前側の切断刃群C1においては、駆動レバー55の揺動中心軸68の中心から各連結ピン57・58の中心までの前後距離が異なるため、揺動中心軸68に近い側の可動刃23の左右の往復ストロークS1、および前後移動量T1は、揺動中心軸68から遠い側の可動刃27の左右の往復ストロークS2、および前後移動量T2に比べて小さくなる。後側の切断刃群C2においても同様の差が生じる。
【0032】
詳しくは、前側の切断刃群C1においては、センター刃17の可動刃27の左右ストロークS2と前後移動量T2と往復速度が、第1メイン刃16の可動刃23の左右ストロークS1と前後移動量T1と往復速度より大きくなる。そのため、センター刃17で長毛やくせ髭を効果的に切断したのち、前後に隣接する各メイン刃16・18で短毛を効果的に仕上げ切断できる。また、後側の切断刃群C2においては、第2メイン刃18の可動刃23の左右ストロークS2と前後移動量T2と往復速度が、サブ刃19の可動刃27の左右ストロークS1と前後移動量T1と往復速度がより大きくなる。後側の切断刃群C2におけるサブ刃19の可動刃27を駆動する連結ピン60と揺動中心軸69の中心間距離は、第2メイン刃18の可動刃23を駆動する連結ピン59と揺動中心軸69の中心間距離より小さい。そのため、サブ刃19の可動刃27には、第2メイン刃18の可動刃23に比べて、より大きな揺動トルクが作用する。そのため、刃穴の開口面積が大きなサブ刃19の固定刃26に捕捉された長宅やくせ毛を効果的に切断して、効率よくひげ切断を行える。
【0033】
上記のように構成した電気かみそりは、センター刃17およびサブ刃19の固定刃26がスリット刃として構成してあるため肌当りが悪く、網刃構造の固定刃22に比べて滑らかな肌当り感が得られにくい。しかも、全ての可動刃23・27が前後に振動するので、ひげ剃り後にヒリヒリ感を生じやすい傾向がある。こうした使用感を改善し、滑らかな肌当り感を得るために、各メイン刃16・18の固定刃22の左右両端と、センター刃17およびサブ刃19の固定刃26の左右両端のそれぞれに、肌当り突部81~84を設けている。具体的には、各メイン刃16・18の固定刃22を支持する固定刃フレーム24において、左右の側端枠24aの上端に各固定刃22の頂部より上方へ突出する肌当り突部81・83を設けている。また、センター刃17およびサブ刃19の固定刃26を支持する固定刃フレーム28において、左右の側端枠28aの上端に各固定刃26の頂部より上方へ突出する肌当り突部82・84を設けている。
・・・
【0049】
(別実施例5) 図19は切断刃群C1・C2と可動刃駆動構造D1・D2を変更した別実施例5を示す。そこでは、前側の切断刃群C1を3個の切断刃16・17・20で構成し、後側の切断刃群C2を3個の切断刃18・19・21で構成した。駆動レバー55は、全ての切断刃16~21と直交する状態で1個のみ設け、その前後中央部を支軸101でシーソー揺動できるように軸支した。また、駆動レバー55の後部下面にカム溝102と、同溝102を駆動する偏心カム103を設け、偏心カム103をモーター3で回転駆動するようにした。支軸101と、同軸101に隣接する連結ピン61・59の中心間距離L1は、前後に隣接する連結ピン57~61・66の中心間距離L1と同じにした。この実施例では、前側の切断刃群C1の可動刃23・27と、後側の切断刃群C2の可動刃23・27は、互いに逆向きに往復揺動する。」
イ 図面
「【図1】
[図:0001420349000001.jpg]
【図2】
[図:0001420349000002.jpg]
【図3】
[図:0001420349000003.jpg]
【図4】
[図:0001420349000004.jpg]
【図5】
[図:0001420349000005.jpg]
・・・
【図9】
[図:0001420349000006.jpg]
【図10】
[図:0001420349000007.jpg]
・・・
【図19】
[図:0001420349000008.jpg]
」
(2)甲1の記載事項の整理
ア 段落0018~0020、0027、0049、図1、4~5、19の記載からみて、甲1記載の電気かみそりは、固定刃22、26と、この固定刃22、26の内面に摺接しつつ左右に往復動する可動刃23、27を備える。
イ 段落0027~0030、0049、図1、19の記載からみて、甲1記載の電気かみそりは、前記可動刃23、27を往復駆動させる可動刃駆動構造D1とを備えている。
ウ 段落0027~0029、0049、図19の特に別実施例5の記載からみて、上記可動刃駆動構造D1は、支軸101でシーソー揺動できるように軸支した駆動レバー55を有する。
そして、可動刃駆動構造D1は1つのみ設けられる。
エ 段落0018~0020、0049、図3~4、19の記載からみて、甲1記載の電気かみそりの固定刃22、26は、複数の固定刃22と当該固定刃22と異なる形状の複数の固定刃26とが配されており、可動刃23、27は、固定刃22と対応する可動刃23と固定刃26と対応する可動刃27とが配されている。
そして、特に段落0049及び図19に記載された別実施例5において、固定刃22と可動刃23とでメイン刃16、20、18、21が構成されており、固定刃26と可動刃27とでセンター刃17及びサブ刃19が構成されていることが記載されている。
さらに、この別実施例5においては、メイン刃16、センター刃17、メイン刃20、メイン刃18、サブ刃19、メイン刃21が、前側から後側に向かって記載順に並んで設けられている。
オ 段落0049及び図19の記載からみて、可動刃駆動構造D1が有する駆動レバー55における支軸101の前側には、可動刃23に連結される連結ピン57、可動刃27に連結される連結ピン58、前記可動刃27に連結される連結ピン61の3つの連結ピンを有している。
そして、この駆動レバー55における支軸101の後側には、可動刃23に連結される連結ピン59、可動刃27に連結される連結ピン60、可動刃23に連結される連結ピン66の3つの連結ピンを有している。
(3)甲1に記載された発明
上記(1)~(2)より、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「固定刃22、26と、前記固定刃22、26内面に摺接しつつ左右に往復動する可動刃23、27と、前記可動刃23、27を往復駆動させる可動刃駆動構造D1とを備えた電気かみそりであって、
前記可動刃駆動構造D1は、支軸101でシーソー揺動できるように軸支した駆動レバー55を有し、前記可動刃駆動構造D1は1つのみ設けられ、
前記固定刃22、26は、複数の固定刃22と当該固定刃22と異なる形状の複数の固定刃26とが配されており、
前記可動刃23、27は、前記固定刃22と対応する可動刃23と前記固定刃26と対応する可動刃27とが配されており、
前記固定刃22と前記可動刃23とでメイン刃16、20、18、21が構成されており、前記固定刃26と前記可動刃27とでセンター刃17及びサブ刃19が構成されており、
前記メイン刃16、前記センター刃17、前記メイン刃20、前記メイン刃18、前記サブ刃19、前記メイン刃21が、前側から後側に向かって記載順に並んで設けられており、
前記可動刃駆動構造D1が有する前記駆動レバー55における前記支軸101の前側には、前記可動刃23に連結される連結ピン57、前記可動刃27に連結される連結ピン58、前記可動刃23に連結される連結ピン61の3つの連結ピンを有しており、
前記可動刃駆動構造D1が有する前記駆動レバー55における前記支軸101の後側には、前記可動刃23に連結される連結ピン59、前記可動刃27に連結される連結ピン60、前記可動刃23に連結される連結ピン66の3つの連結ピンを有している電気かみそり。」
2 甲2
(1)甲2の記載事項の整理
ア 段落0001、段落0030~0031、図3、5の記載からみて、甲2記載の電気髭剃機において、二つの短毛カッターユニットKHS(本件特許発明1のカット刃に相当。)のそれぞれに連結された駆動要素48と、その間に設けられ、長毛カッターユニットLHS(本件特許発明1のトリマ刃に相当。)に連結された駆動要素47とが、往復動されるようになっている連結要素Kに連結している。
イ 図5の図示内容から、上記駆動要素47の長さは、上記駆動要素48の長さに比べて短くなっていることが看取される。
(2)甲2記載の技術的事項
上記(1)より、甲2には次の技術的事項(以下「甲2記載の技術的事項」という。)が記載されている。
「電気髭剃機において、二つの短毛カッターユニットKHSのそれぞれに連結された駆動要素48と、その間に設けられ、長毛カッターユニットLHSに連結された駆動要素47とが、往復動されるようになっている連結要素Kに連結し、駆動要素47の長さを駆動要素48の長さに比べて短くすること。」
3 甲3
(1)甲3の記載事項の整理
ア 段落0001、段落0028~0032、図5の記載からみて、甲3記載の電気かみそりにおいて、スリット刃4cに対応するスリット内刃15c(本件特許発明1のトリマ刃に相当。)に駆動桿13cが基台14cを介して連結され、第2のネット刃4dと対応する内刃15d(本件特許発明1のカット刃に相当。)に駆動桿13dが基台14dを介して連結されている。
イ 図2、5の図示内容から、上記駆動桿13cの長さは、上記駆動桿13dの長さに比べて短くなっていることが看取される。
(2)甲3記載の技術的事項
上記(1)より、甲3には次の技術的事項(以下「甲3記載の技術的事項」という。)が記載されている。
「電気かみそりにおいて、スリット刃4cに対応するスリット内刃15cに連結される駆動桿13cの長さを、第2のネット刃4dと対応する内刃15dに連結される駆動桿13dの長さに比べて短くすること。」
第5 当審の判断
1 本件特許発明1の進歩性
(1)本件特許発明1と甲1発明の対比
ア 甲1発明の「固定刃22、26」は本件特許発明1の「外刃」に相当し、以下同様に「可動刃23、27」は「内刃」に、「往復駆動」は「往復動」に、「可動刃駆動構造D1」は「オシレータ」に、「電気かみそり」は「往復式電気かみそり」にそれぞれ相当する。
イ 甲1発明の「固定刃22」は本件特許発明1の「第1外刃」に相当し、同様に「固定刃26」は「第2外刃」に相当する。
ウ 甲1発明の「可動刃23」は本件特許発明1の「第1内刃」に、同様に「可動刃27」は「第2内刃」に相当する。
エ 甲1発明の「メイン刃16、20、18、21」は本件特許発明1の「カット刃」に相当し、甲1発明の「センター刃17」及び「サブ刃19」はいずれも本件特許発明1の「トリマ刃」に相当する。
オ 甲1発明の「前記メイン刃16、前記センター刃17、前記メイン刃20、前記メイン刃18、前記サブ刃19、前記メイン刃21が、前側から後側に向かって記載順に並んで設けられており、」は本件特許発明1の「前記カット刃、前記トリマ刃、前記カット刃、前記カット刃、前記トリマ刃、前記カット刃が、前側から後側に向かって記載順に並んで設けられており、」に相当する。
カ 甲1発明の「連結ピン57、59」は「第1腕」に相当し、以下同様に「連結ピン58、60」は「第2腕」に、「連結ピン61、66」は「第3腕」に、それぞれ相当する。
次に、甲1発明の
「前記可動刃駆動構造D1が有する前記駆動レバー55における前記支軸101の前側には、前記可動刃23に連結される連結ピン57、前記可動刃27に連結される連結ピン58、前記可動刃23に連結される連結ピン61の3つの連結ピンを有しており、
前記可動刃駆動構造D1が有する前記駆動レバー55における前記支軸101の後側には、前記可動刃23に連結される連結ピン59、前記可動刃27に連結される連結ピン60、前記可動刃23に連結される連結ピン66の3つの連結ピンを有して」いることと、
本件特許発明1の
「前記第1オシレータにおける前記アーム部は、前記第1内刃に連結される第1腕、前記第2内刃に連結される第2腕、前記第1内刃に連結される第3腕の3つの腕を有しており、
前記第2オシレータにおける前記アーム部は、前記第1内刃に連結される第1腕、前記第2内刃に連結される第2腕、前記第1内刃に連結される第3腕の3つの腕を有して」いることを対比すると、
両者は、「前記オシレータは、前側の3つの刃群における前記第1内刃に連結される第1腕、前記第2内刃に連結される第2腕、前記第1内刃に連結される第3腕の3つの腕を有しており、及び後側の3つの刃群における前記第1内刃に連結される第1腕、前記第2内刃に連結される第2腕、前記第1内刃に連結される第3腕の3つの腕を有して」いるという点に限り、一致する。
(2)本件特許発明1と甲1発明の一致点
本件特許発明1と甲1発明とは、次の点で一致する。
外刃と、前記外刃の内面に摺接しつつ左右に往復動する内刃と、前記内刃を往復動させるオシレータとを備えた往復式電気かみそりであって、
前記外刃は、複数の第1外刃と当該第1外刃と異なる形状の複数の第2外刃とが配されており、
前記内刃は、前記第1外刃と対応する第1内刃と前記第2外刃と対応する第2内刃とが配されており、
前記第1外刃と前記第1内刃とでカット刃が構成されており、前記第2外刃と前記第2内刃とでトリマ刃が構成されており、
前記カット刃、前記トリマ刃、前記カット刃、前記カット刃、前記トリマ刃、前記カット刃が、前側から後側に向かって記載順に並んで設けられており、
前記オシレータは、前側の3つの刃群における前記第1内刃に連結される第1腕、前記第2内刃に連結される第2腕、前記第1内刃に連結される第3腕の3つの腕を有しており、及び後側の3つの刃群における前記第1内刃に連結される第1腕、前記第2内刃に連結される第2腕、前記第1内刃に連結される第3腕の3つの腕を有している
往復式電気かみそり。
(3)本件特許発明1と甲1発明の相違点
ア 相違点1
オシレータについて、本件特許発明1は「第1オシレータと第2オシレータの2つからなり、前記第1オシレータと前記第2オシレータは、前記往復動する方向と直交する前後方向に並んで配置されて」いるのに対して、甲1発明のオシレータは1つのみである点。
イ 相違点2
前側の3つの刃群における第1内刃に連結される第1腕、第2内刃に連結される第2腕、第1内刃に連結される第3腕の3つの腕を有しており、及び後側の3つの刃群における第1内刃に連結される第1腕、第2内刃に連結される第2腕、第1内刃に連結される第3腕の3つの腕を有しているオシレータについて、本件特許発明1が「往復動可能な可動台と、前記可動台に立設固定されて上端部が前記内刃に連結されるアーム部とを有し」、3つの腕が「第1オシレータ」及び「第2オシレータ」の往復動可能な「可動台」に立設固定された「アーム部」にそれぞれ設けられているのに対して、甲1発明は「支軸101でシーソー揺動できるように軸支した駆動レバー55を有し」、3つの腕が「1つのオシレータ」の「駆動レバー55」における「支軸101の前側」及び「支軸101の後側」にそれぞれ設けられている点。
ウ 相違点3
本件特許発明1が「前記第1オシレータにおける前記アーム部の、前記第2腕の突出長さが、前記第1腕、前記第3腕の突出長さに比べて短くなるように設定されており、前記第2オシレータにおける前記アーム部の、前記第2腕の突出長さが、前記第1腕、前記第3腕の突出長さに比べて短くなるように設定されている」のに対して、甲1発明は第1腕と第2腕と第3腕の長さの関係が不明である点。
(4)相違点の検討
ア 相違点2について
事案に鑑み、相違点2から検討する。
本件特許発明1の3つの腕は、往復動可能な可動台に腕支持部とアーム取付部を介して固定されていることから、第1オシレータに取り付けられた3つの内刃は、いずれも左右方向に可動台と同じ往復動、すなわち、ストローク、速度、及び位置が揃った往復動を行うものであり、第2オシレータにおいても、取り付けられた3つの内刃は、いずれも左右方向に可動台と同じ往復動を行う点で同様である。
これに対して、甲1発明の3つの腕は、支軸101でシーソー揺動できるように軸支した駆動レバー55に設けられるものであることから、甲1の段落0031(実施例1に関する記載であるが、図19の別実施例5も同様の機序で作用することが明らかである。)に記載されているとおり、各可動刃のストロークが異なり、左右方向における位置、速度、あるいはトルクも異なる。
ここで、甲1発明は、甲1の段落0032にも説明されているように、段落0031に記載された各可動刃の往復動の態様の差違を用いて効率よくひげ切断を行うものであるから、相違点2に関し、甲1発明の構成を、可動刃の往復動の態様に差違のない本件特許発明1の構成に置き換える動機が存在しない。また、甲1の段落0033において、電気かみそりの肌当りが悪いことについて説明されているが、その改善のために肌当り突部を設けるという手段を甲1の課題(段落0005)解決のための手段としており、この可動刃の往復動の態様を変更しようとはしていないから、この説明もやはり上記の動機になるとはいえない。
イ 特許異議申立書の主張について
次に、特許異議申立書(以下、単に「申立書」という。)の進歩性に関する申立人の主張について検討する。
(ア)申立書3.4.3(2)の主張
申立書3.4.3(2)(申立書第18~19ページ)においては、甲1の実施例1(段落0017~0042)に係る電気かみそりに関して、「可動刃駆動構造はD1及びD2の2つからなり、可動刃駆動構造D1及び可動刃駆動構造D2は、可動刃(内刃)が往復動する方向と直交する方向に並んで配置され、前側のメイン刃(切断刃)16、センター刃(切断刃)17で構成される切断刃群C1が、連結ピン(連結体)57、58により可動刃駆動構造D1の駆動レバー55に固定され、後側のメイン刃(切断刃)18、サブ刃(切断刃)19で構成される切断刃群C2が、連結ピン(連結体)59、60により可動刃駆動構造D2の駆動レバー56に固定されている」ものであることが説明され、甲1の主に別実施例5(段落0049)に基づく甲1発明に対し、この実施例1の構成を採用することは、適宜行うことができる技術的な設計的事項である旨が記載されている。
しかしながら、甲1発明に実施例1の構成を適用して、オシレータ(可動刃駆動構造)の数(相違点1)を本件特許発明1と同じく2つにし得るとしても、実施例1における、第1腕と第2腕と第3腕が固定される可動刃駆動構造D1の駆動レバー55及び可動刃駆動構造D2の駆動レバー56は、それぞれ揺動中心軸68及び揺動中心軸69を中心に揺動可能(段落0028)であり、いずれも「シーソー揺動できるように軸支した駆動レバー」である点で甲1発明と同じであるから、甲1発明に実施例1の構成を適用しても、少なくとも第1オシレータ及び第2オシレータに取り付けられた3つの内刃をそれぞれ可動台と同じ往復動をさせる相違点2に係る本件特許発明1の構成を充足するものではない。したがって、上記申立書3.4.3(2)に記載の主張によって、本件特許発明1の進歩性を否定するには到らない。
(イ)申立書3.4.3(3)の主張
申立書の3.4.3(3)(申立書第19ページ)に関し、上記第4の2~3における甲2~3記載の技術的事項についてみると、申立書の3.4.2(4)「甲第2号証及び甲第3号証に記載された技術常識」(第16ページ)において説明されるような技術常識であるか否かに関わらず、いずれも相違点2について開示するものではなく、また、甲1発明において上記の動機が存在することを示唆するものでもないから、甲1発明に適用して相違点2に係る本件特許発明1に想到することが、当業者にとって容易であるとはいえない。したがって、上記申立書3.4.3(3)記載の主張によっても、本件特許発明1の進歩性を否定するには到らない。
(5)本件特許発明1の進歩性についてのまとめ
上記(4)のとおりであるから、相違点1、3について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明、及び甲2~3記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 小括
したがって、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項に規定に違反してされたものではない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700959